Home > Regulars > Random Access N.Y. > vol.75:音楽がフリーなのに誰が音楽雑誌を読むの?
Time out free copy
駅で配布するスタッフ
長らくコラムを書いているが、2003年にはじまったポケット・サイズのバイ・ウィークリーの『Lマガジン』(thelmagazine.com)は、インディ好きの、そして著者の良きガイド役である。まだまだ紙が中心だった2003年、ショーのインフォを得るために、毎週水曜日になると『ヴィレッジ・ヴォイス』(villagevoice.com)をピックアップするのと一緒に、『Lマガジン』をピックアップする選択が増え、いつの間にか『Lマガジン』しかピックアップしなくなった。『Lマガジン』のLは、Lトレイン(地下鉄の線、ヒップスター率高し)のLらしく、そのあたりの層をターゲットにしているからか、音楽だけでなく、アート、映画、シアター、フード、レジャーなど、文化全般に焦点を置き、タイム・アウトより、小規模でブルックリンの話題を中心にした情報の源なのである。
『Lマガジン』はその後、ノースサイド・フェスティヴァル、『ブルックリン・マガジン』、サマー・スクリーン(野外映画)、バム・ビル(シアター・ガイド)、テイスト・トークス(フード・イベント)など、イベントや媒体を広げ、現在会社はノースサイド・メディア・グループとして統括されている。
http://www.northsidemediagroup.com
ノースサイド・フェスティヴァルもサマー・スクリーンも毎年のようにレポートしているが、その母体である『Lマガジン』については、あまり触れていなかった。
■ノースサイド・フェスティヴァル2012
■サマー・スクリーン2013 -2-
彼らはいつも新しい試みに挑戦し、媒体をより良い方向に持って行こうとしている。今日2015年7月15日、『Lマガジン』に新たな変化があった。ポケット・サイズのプリント・マガジンがが廃止されたのである。
http://www.thelmagazine.com/2015/07/2003-2015-12-years-life-one-big-borough-one-tiny-magazine/
『Lマガジン』をオンラインでチェックするようになって久しいので、大きなダメージはないが、町からオレンジのマガジン・スタンド(ちなみに『ヴィレッジ・ヴォイス』は赤)がなくなるのは寂しいものである。それを記念(?)に、2003年から2015年に渡り『Lマガジン』が見てきたブルックリンの音楽(&その他)シーンを振り返っている。
「音楽がフリーなのに、誰が音楽雑誌を読むのか?」と、最近『タイムアウト』や『NME』もフリーに。いまや『ヴィレッジ・ヴォイス』をチェックしなくてもバンドのショーはBandsintownやsongkickをチェックすれば良いし、音楽はスポティファイやアップル・ミュージックでいくらでも聞ける。
Village voice のマガジンスタンド
こんな2015年なので、『Lマガジン』がプリントを廃止するのも納得だが、それにともない、姉妹雑誌の『ブルックリン・マガジン』と統合するらしい。『ブルックリン・マガジン』は季刊から月刊誌へ。内容が被ることもあったのでこの選択は正しいと思うし、彼らのことだから紙の力を使って既に内容の濃い『ブルックリン・マガジン』をパワーアップさせるだろう。
そして、今日は今年第2回目のサマー・スクリーン。毎年映画はもちろん、映画の前の音楽が楽しみなのである。何故なら、ブッキングはトッドP。
今年も例年のように彼がブックを担当し、ラインナップ(Z's, リーガル・ディガル、ブルース・コントロール、エクセプター、ジャー・ディヴィジョン )まで発表されていたのに、直前になって突然のキャンセル。と言うのは、サマー・スクリーンがトッドPの確認を取らず、ヴィタミン・ウォーターと勝手にブランディング契約をしたからである。その分入る額は上がるが、彼にとってお金は問題でないようだ。
「ビジネスを知れ」、「一番迷惑しているのはバンド」、「ヴィタミン・ウォーターは良くて、クルーレス(上映される映画)は良いのか」、など、様々な辛辣な意見が飛び交ったが、ほとんどは初心を忘れずDIY精神を貫く彼を賞賛するものだった。
著者は、トッドPの判断に賛成だが、彼があと10歳若かったらどうだろう。彼らの世代(40代前半)は、音楽に対する姿勢が純粋なのである。アナログ・レコードを必死に探した世代に、ブランディングや企業とのタイアップは単純にできる判断ではない。が、現在のメイン・ターゲットは彼らの世代より下で、直前にバンドは、その世代のウォーリーズ、ビッグ・アップス、プリンス・ラマなどに代えられたが、元々プリンス・ラマなどはトッドPがブックしていただけあり、オーディエンス側としては微妙な気分である。さまざまな思いがよぎるが、今日はウエット・ホット・アメリカン・サマー、音楽はビッグ・アップス!
サマー・スクリーンの様子
今年の映画とバンドのラインナップ:
7/8 「Clueless」 1995
Z's→ウォーリーズ
7/15 「Wet Hot American Summer 」2001
リーガル・ディーガル→ビッグ・アップス
7/22 「Dirty Dancing」1987
ブルース・コントロール→プリンス・ラマ
7/29 「Dazed and Confused」 1993
エクセプター→TBA
8/5 「Jurassic Park」1993
ジャー・ディヴィジョン→TBA
8/12 Audience Pick
基本、野外映画は野次が飛ばせるピクニック。わかりやすい映画が良いのはわかるが、何ともチージーで、最近ウィリアムス・バーグに引っ越してきたカレッジ・キッズを対象にしていると思うのは、著者だけか。どちらにしても、サマー・スクリーンは、ブルックリンのヒップ・スターが集まる場所なので、トッドPのブックする硬派バンドには、少し勿体無い気もする。因みに今日もサマースクリーンは満員御礼!
サマー・スクリーンの様子