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Random Access N.Y.

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vol.72:日本の文芸誌『モンキービジネス』の挑戦

pen world voice festival of international literature & monkey business new voice from japan issue 5 launch lecture

沢井陽子 May 20,2015 UP

 数年前にも同じ話題で記事を書いたが、5月上旬は、文芸界のCMJと呼んでいる、ペン・ワールド・ヴォイス・フェスティヴァルがNYで開催される。5月は文芸月なのだ(http://worldvoices.pen.org/)。

 http://worldvoices.pen.org/event/2015/02/19/monkey-business-japanamerica-writers-dialogue-words-pictures

 その時期に合わせ「日本で有名なのは村上春樹だけではない」と、古典と新作の枠を越えつつ、新しい声を拾い広めていく文芸誌『モンキービジネス』も日本からNYにやって来た。
 ポール・オースター、リチャード・パワーズなどの翻訳者としても知られる柴田元幸氏が責任編集する『モンキービジネス』(英語版と日本語版あり)は、今年英語版の第5版目を刊行した。それにともない4月末〜5月上旬にかけ、ミッドウエストからNYで講演ツアーを行ったのだ。1年に1回、今回で5回目である。

 NYは、ブック・コート、アジア・ソサエティー、マクナリー・ジョンソン、ジャパン・ソサエティーの計4回の講演が行われたが、どの日も少しずつ参加する作家が違い、本格的な講演会だったり、カジュアルな本屋だったりで、『モンキービジネス』や作家をいろんな角度から知ることができる。毎回緊張感がありながら、先生たちのユーモアも交わう知的な講演会だった。

 ペン・フェスティバルのプログラムの一環としての、5/4のアジアン・ソサエティーでの公演。
http://asiasociety.org/new-york/events/monkey-business-japanamerica-writers-dialogue-words-and-pictures

 ノリータの本屋さん、マクナリー・ジョンソンでのカジュアル公演。
http://mcnallyjackson.com/event/evening-monkey-business-kelly-link-ben-katchor-and-others-8pm

 上2講演に関してのレポートである。編集長の柴田元幸氏とテッド・グーセン、編集のローランド・ケルツに加え、漫画家のベン・カッチャー、作家のケリー・リンク、絵本作家、イラストレーターのきたむらさとし氏、小説家、翻訳家の松田青子氏が参加。日本、アメリカ、ロンドン(きたむら氏は30年間ロンドン在住、現東京在)を背景とする文化的、文学的な会話を通し、それぞれの作品をリーディング(日本語、英語)、漫画、紙芝居などで紹介した。


柴田元幸氏とテッド・グーセン


テッド・グーセンと松田青子氏

ベン・カッチャー

 ベン・カッチャーの漫画は、今はなき『ニューヨーク・プレス』という新聞で、きたむらさとし氏の作品は子供の時読んだ絵本で、よく見かけていたので、今回作家本人に会えるのはかなりの特別感があった。

 リーディングだけでなく、グラフィックを重視した、漫画、紙芝居は、耳からだけでなく、目でも訴えかけることができる。講演をよりバラエティーに富んだ物にしていた。アメリカ人にも日本人にも、手作りの紙芝居は珍しく(カーテンが手動で開くようになっている!)、3作品の発表が終わった後の温かい拍手から、今は亡き物を讃えるのは、文学も音楽も同じと納得した。
 紙芝居の内容は、氏のロンドン背景もあり、イギリスの絵本を紙芝居に仕立てた感じ。主人公が暇なライオンの床屋で、人気のライオン・ロックンローラーが散髪に来て、友だちの象のイラストレーターと、ああでもないこうでもないとロックンローラーの髪型のネタを練る。コンサートでその髪型を見たファンたちが、暇だった床屋に殺到する、という内容だ。
 きたむら氏の淡々とした声と、そして癖あるキャラクターがリズミカルに動き、社会を程好く風刺している所が大人のための紙芝居と言っても良さそうだった。


きたむらさとし氏

 ちなみに『モンキー・ビジネス』の霊感の源は、チャック・ベリー不朽の名作「トゥー・マッチ・モンキー・ビジネス」。
 「誰もが知る日々生きることのかったるさをあれほどストレートに歌って、それであれほどユーモラスかつ解放的になっている芸術作品を僕は他に知らない。あの名作の解放性を我々もめざすのである、なんて大きなことはとうてい言えないが、いちおうあのスピリットをはるか向こうに見えてきている導きの星だということにしておこう」
 という柴田先生の姿勢は、この最新号にも十分に表れている。

 この英語版も翻訳者のおかげか、英語が苦手な人にも読みやすいし、アメリカ人の友だちにも「いまいちばん面白い文芸誌」だと薦めやすい。私はすでに、自分が死んだ後幽霊になり、自分の夫の行方を観察する、川上未映子の「the thirteenth month」(十三月怪談)に夢中だ。読み進めていけば、もっとお気に入りが増えるだろう。
 音楽が聴こえる文芸誌から、新しい出会いがあった。

 全ての講演の情報は以下の通りです。
http://monkeybusinessmag.tumblr.com/post/116878099492/monkey-business-issue-5-midwest-and-new-york

https://mobile.twitter.com/monkeybizjapan

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Profile

沢井陽子沢井陽子/Yoko Sawai
ニューヨーク在住20年の音楽ライター/ コーディネーター。レコード・レーベル〈Contact Records〉経営他、音楽イヴェント等を企画。ブルックリン・ベースのロック・バンド、Hard Nips (hardnipsbrooklyn.com) でも活躍。

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