Home > Regulars > Random Access N.Y. > vol.113:感動! オルダス・ハーディング・ハーディングのライヴ- Aldous Harding @ rough trade 4/8/2019
沢井陽子 Apr 11,2019 UP
ディアハンターのオープニングで彼女を見てからというもの、大ファンになった。NYに来るたびに欠かさず見に行った。日本にも行くと聞き、日本まで見に行こうかと真剣に考えた(キャンセルになりましたが)。ニュージーランドの歌姫オルダス・ハーディング。
〈4AD〉と契約する前の、彼女のファーストがツボにハマり、一時そればかり聴いていた。『パーティ』が出てからは、それを繰り返し聴いた。教会でのショーを見たあかつきには、胸を打たれて涙が出てしまった。そこにいた人たちはみんな同じ気持ちだったはず。スタンディング・オベーションが止まらず、彼女は二回アンコールをした。それでも人びとの拍手はまだ鳴り止まなかった。最初に見たときは一人、教会で見たときは、NYで仲良くなったインヴィジブル・ファミリアーズのジャレッドの二人体制だった。
彼女はこの春、新作『デザイナー』をリリースした。そしてNYのラフ・トレードから北米ツアーがはじまった。
11日間、その大半がソールドアウトだった。最初のラフトレードもソールド・アウトだった。
会場は、集まった人の熱気で熱かった。今回のショーはフルバンドで、ドラム、ギター、ベース、キーボード、そしてオルダス・ハーディング。グレーのTシャツに白いパンツというカジュアルな格好に、少しカールがかかった髪型。ツアー初日のため、緊張していたのか「昔ほど自信がないのよ」「なんだか初めからまたスタートするみたいね」と笑っていた。
彼女の伸びやかで艶のある声。マラカスを振りながら、軽いグルーヴィーなタイトルトラックではじまった。アコースティック・ギター、キーボードなど楽器を持ち替えながら、彼女はニュー・アルバムの曲を最初から最後までプレイした。シングル曲の“バレル”では歓声が起こり、“ズーアイズ”では彼女のハスキーヴォイスからハイヴォイスまでの多彩なレンジを楽しんだ。“トレジャー”での、バンド・メンバーとのコーラスも美しく素敵だった。
@brooklyn vegan
とくに印象的だったのは、アコースティック・ギターだけで演奏された“ヘブン・イズ・エンプティ”。彼女の本来の姿というか、何も飾りのないむき出しの彼女の深い深い声が大きな会場にこだました。もう何もいらなかった。
彼女の動きはとてもゆっくりで丁寧で、ときには鋭く、ときには笑いかける、ロボットのようなダンスも可愛かった。
ラストは『パーティ』からの“ブレンド”で、水着(?)を着た彼女の印象的なミュージック・ヴィデオを思い出しながら聞き入った(フランシス・フォード・コッポラの『地獄の黙示録』に影響されて作ったらしい)。
アンコールの声援は止まらなかった。戻ってきた彼女は、驚きの選曲、スコティッシュ・ロック・シンガーソングライター、ゲリー・ラファティの定番ソング“ライト・ダウン・ザ・ライン”」のカヴァーを演奏した。さらに『デザイナー』にも入っていない新曲“オールドピール”を披露。ラフトレードのマグカップをカウベルの代わりに使い、アップテンポで、楽しい演奏はクライマックスでドラマーのマラカス(スティック)が爆発し、スモークが巻き起こるという最高のパフォーマンスになった。オルダスはメンバーを紹介し、オーディエンスは、ラヴコールをバンドに送った。
余韻を残しつつショーは終了。誰もが、その足でマーチテーブルに走った。最高のツアー第1日目、彼女の旅ははじまったばかり。