教会内部に設置されたサーカス・テント
2/2(土)、NYのミッドタウンの教会で、ミュージック・テープスの「トラヴェリング・イマジナリー〜空想の旅」ツアーが行われた。ジョン・ケール、バトルズ、ロウ、ライアーズ、ダーティ・プロジェクターズなどのショーを企画する〈ワードレスミュージック〉のオーガナイズ。雪の降るなか、普段は来慣れない教会に入ると、目の前にデーンと、サーカス・テントがあり、周りにも催し物のサインが出ている。
日本の初詣(屋台やゲームなどがある)のガヤガヤ、ワクワク感に少し似ている。7:30pm、9:30pmからの2部形式で、著者は9:30pmの部に来た。「1部を見た」という男の子と話をするが「内容は言わないで」と口止めをする。「トラヴェリング・イマジナリー」はミュージック・テープスが、10数年間あたためてきた、夢のツアーなのである。簡単に種明かしはされたくない。
バンダナで目隠しをするオーディエンス
9:30pmきっかりにドアが開き、紺色のバンダナがお客さんに渡される。教会なので、ドリンクは売っていない。最後の人が入り終わると、左方から、ピアノの音が近づいてくる。バンジョーを弾くジュリアンが、グランド・ピアノの上に座って、クルクル回されながら、教会中を練り歩いている。ピアノを歩きながら弾くのがアンディで、ピアノを押して、回して引っ張っているのがイアン。どちらも、前回のクリスマス・キャロリングにもいた。
何か面白いことがはじまる予感。
テントの左側で「ザ・ペニー・アンド・ザ・ベル」というゲームがはじまる。目隠しをして(ドアでもらったバンダナの登場)、カップに入ったペニーをベルめがけて投げ、ペニーがベルに当たった人の勝ち。これが難しい。
真ん中の方でも別のゲームがはじまっている。こちらは、お手玉見たいな布玉を、穴にいれるゲーム。
なかなか難しい「パリ・イン・ベルス」
「ペニー・アンド・ザ・ベル」の後は、ベルつながりで、「パリ・イン・ベルス」というゲームがはじまった。目隠しした人が円になり、ベルを持つ。当たりのベルを決め、鳴らしながら左側の人にベルを渡していく。ジュリアンが「ミラノ」、「東京」、「上海」などいろんな都市の名前を言っていくのだが「パリ」と言ったときに、当たりベルを持っていた人と、真ん中の人が音だけで当たりベルを当てたら勝ち。これもなかなか高度なのだが、勝者はふたり出た。ジュリアンは幼稚園の先生のようにみんなにゲーム参加を呼びかけ、率先してゲームを行い、賞品を用意し、司会をしてと大忙し。
テントのなかはとても楽しい!
ゲームでウォーム・アップした後は、サーカス・テントが開いてショーのはじまり。みんながどんどん前から座っていくので、いちばん前には行けなかったが、セットや流れの全体が見渡せた。ステージに白いスクリーンが張られ、フィリックス・ザ・キャット風の白黒アニメが始まる。ヴィンテージのアナログ・フィルム上映である。
アニメ鑑賞の後は、スクリーンが落ち、ミュージック・テープスのショーのはじまり。ジュリアン、ロビー、アンディ、アンディG(マシュマロウ・コースト)の4人で、イアンが大道具周りを担当。もちろん、7フィート・メトロノームやオルガン・タワー、スタティックTVなどの手作り楽器仲間も健在。今回は、ジュリアンのトーク部分が多く「祖父が子どもの頃にサーカスに行ったが、人気者の牛がまったく動かなかった」、という話や、「雪の日に子どもたちがみんな突然いなくなった」、など、子供を寝かすときのベッドタイム・ストーリーのようだった。
ステージに出現した巨大雪だるま
ショーの間にも、はしごが出てきて、その上で歌ったり(足長人として)、巨大雪だるまが出現し、その雪を投げて、客席に設置した月を割るゲーム、テントの上にぶら下げられたプレゼント(中身はミニチュアのサーカス・テント!)を開けるゲームなど、オーディエンス参加型の、ディズニーランドのようなワクワク感が持続した。
童心やピュアネスをごちゃ混ぜにした、夢いっぱいのショーには、ジュリアンの頭のなかの地図がそのまま表されている。ここしばらく、これほど心から純粋に楽しめることなんてあっただろうか......いや、楽しめずにいたのではなく、単にこの感情を忘れていただけだったのではないか? ジュリアンは終始笑顔で、何よりもいちばん楽しんでいるように見えた。入り口で、バンダナを回収しながら、ひとりひとりのお客さんと話しているジュリアンを見ながら、自然に笑顔が溢れていた。