「OTO」と一致するもの

ele-king presents PARAKEET Japan Tour 2013 - ele-king

 いよいよ9月5日(木)から初ジャパン・ツアーがスタートするパラキート(PARAKEET)! UK産ロック・バンド、ヤック(YUCK)のメンバーである日本人ベーシスト、マリコ・ドイと、同じくUKで活動し、今年リリースのデビュー・アルバムが絶賛を浴びている若手注目バンド、ザ・ヒストリー・オブ・アップル・パイ(THE HISTORY OF APPLE PIE)のジェームス・トーマスによって結成されたこのバンドは、ピクシーズ(PIXIES)からディアフーフ(DEERHOOF)、ポルヴォ(POLVO)などにも通じるミラクルでユニークなギター・サウンドがとってもス・テ・キ。ぜひこの目でこの肌でヒリヒリと感じ取って欲しいものです。
 そしてこのツアーにスペシャル・ゲストとしてお付き合いしていただくのがTHE GIRL!! シンプルでキッチュなガレージ・ロックンロール・テイストにニューウェイヴィーなポップ・アプローチが絡まって、これまた超ス・テ・キ。夢のドリーム・マッチですな! そんな二組から来日直前インタヴュー......っちゅーかアンケートに答えていただきました。さぁ、タッチ&ゴーしてそのまま会場にお越し下さい!



PARAKEET

■最初に買った(買ってもらった)レコード(CD)は?

PARAKEETジェームス:ニルヴァーナ(NIRVANA)の『ネヴァーマインド』。

THE GIRL:ザ・モンキーズ(THE MONKEES)のベスト。

■バンドをやろう! というきっかけになったアーティストは?

PARAKEETマリコ:単に音楽が好きだったから。13歳のときにギターを弾きはじめて洋楽への道がどかっと開かれました。それからバンドを組むようになって、そのままズルズルとイギリスまで来てしまいました。

PARAKEETジェームス:10歳のとき、ニルヴァーナの『MTVライヴ&ラウド』を見てから。

THE GIRL:特にこれといったアーティストは最初いなかったけど、ソニック・ユース(SONIC YOUTH)かな。

■最初に結成したバンドの名前は?

PARAKEETジェームス:ミラージュ(MIRAGE)というバンドを弟と、10歳、8歳のときに。父の親友がベースを弾きました。

THE GIRL(日暮愛葉):Seagull Screaming Kiss Her Kiss Her。

THE GIRL(おかもとなおこ):free alud

■それはどんなサウンドでした?

PARAKEETジェームス:最悪。TOTOのコピーを。

THE GIRL(日暮愛葉):いまで言うオルタナティヴ。

THE GIRL(おかもとなおこ):ファンク・ロック。

■初めて人前でライヴをやったときの思い出を。

PARAKEETジェームス:両親がハウス・パーティーをしたときに居間で演奏しました。両親の友だちが見ていて当然奇妙でした。そのときはレディオヘッド(RADIOHEAD)のコピーをしました。

THE GIRL(日暮愛葉):ギターウルフとジャッキー&ザ・セドリックスが対バンだったことです。

THE GIRL(おかもとなおこ):機材トラブルばかりだった。

■PARAKEET/THE GIRL結成のいきさつを。

PARAKEETマリコ:レヴェルロード(LEVELLOAD)というバンドをやっていて、アルバムを出してからその後解散しました。それでそのときドラムを叩いていたジェームスとツー・ピースでパラキートの原型ができあがって、曲を作りはじめたときにヤックへの参加のオファーがありました。ツー・ピースも面白かったんですが、ギター・バンドもやっぱり好きなので、浮気をした訳です。パラキートがはじまった頃はトランザム(TRANS AM)の赤ちゃんみたいな感じで、ベース・リフとドラムの絡みがタイトな楽曲ばっかりで、それが今回のEPの軸みたいになってます。
 いまの形になったのはBO NINGENのコウヘイ君と1枚目のシングルにギターを付けてもらうようになってから。他の曲はわたしがギターを弾いたりして、楽曲上スリー・ピースになりました。

THE GIRL:日暮はLOVES.を経て、おかもとも男性とばかり組んでいたのでガールズ・バンドをやってみたくなったのです。

■PARAKEET/THE GIRLをはじめるにあたりコンセプトなどありましたか?

PARAKEETジェームス:ふたりだけでとてもうるさい感じで......だったんですが、何か足りない、何か完成されてないと思い、BO NINGENのコウヘイとしばらくいっしょにやって、去年はジョンといっしょに、そしていまはトムがギターを弾くようになりました。

THE GIRL:特に無いけど、華奢な女の子が芯のあるソリッドな音を出すということをやりたかったかも?

■PARAKEET/THE GIRLの長所や武器みたいなものを教えてください。

PARAKEETジェームス:音を作ることにしても、その他すべてのことに関しても、自分たちでコントロールできるので、すごく満足している。そういうところです。

THE GIRL:かっこいいこと、信じてることをちゃんと表現できているところ。あと曲の短さです。

■逆に短所・マイナス点は?

PARAKEETジェームス:いまの段階でパラキートはサイド・プロジェクトと見られていて、そのためにあまりちゃんとしたバンドとは認識されていないところです。そして他の自分たちのバンドを優先しなくちゃいけなくって、自分たちが好きなだけ時間を費やせていないところです。次にアルバムをリリースするときにはその状況が変わっていればいいと思います。

THE GIRL:とくにありません。

■現在いいなぁ〜と思えるアーティスト/バンドはいますか?

PARAKEETマリコ:コロコロ変わります。最近はマック・デマルコ(Mac DeMarco)です。いまいちばん会いたくて、彼のセカンドをずっと聴いています。きっとそのうち会うと思いますが、そのとき何を話そうかぼんやり考えています。とりあえず彼の化粧をわたしがするという感じでいこうかな。しかしながら、自分のなかでずっとヒーローでいる人は作家の方が強いかもしれません。それを考えたら松本隆さんがヒーロー的な存在かもしれないです。バンド・マンとしても、あと詩人としても尊敬しています。いま、彼の本『風街詩人』を読んでいて、面白くて、たまりません。

PARAKEETジェームス:ロンドンに拠点を置いているバンドのなかでもザ・ホラーズ(THE HORRORS)は、素晴らしいレーベル(〈XL〉)に所属して、自分たちのスタジオも持っている。彼らはそこで自分たちの好きなように曲を書いてレコーディングしていて、そういう環境があるというのはいいなあと思います。

THE GIRL:バンドであることも大切だけれど、そのなかでどれだけ自由にオリジナルを表現できるかが重要だから、ソニック・ユースやザ・キルズ(THE KILLS)、ザ・ホワイト・ストライプス(THE WHITE STRIPES)、ドーター(DAUGHTER)などの秀逸なバンドが支えになってます。

■そうはなりたくないけど、アイドル的アーティストはいますか?

PARAKEETジェームス:たぶんほとんどのバンド......。

THE GIRL:マドンナ(なれるならなってみたいけど)。

■お互いの音楽性についてどのような点が魅力だと思いますか?

PARAKEETマリコ:シンプルで即効性のある楽曲と、脱力ボーカルがいいなと思いました。

PARAKEETジェームス:オンラインで聴いてみていいなと思いました。いっしょにツアーできることを楽しみにしています。

THE GIRL:COOL でありつづけているところです。

■それぞれの国で活動したいとは思いませんか? だとしたらその理由は?

PARAKEETマリコ:日本はやっぱり生まれ育った場所だし、なんでもかんでも直接自分に入ってくる。そのへんは創造性やらも掻き立てられるし、反面プレッシャーも倍に感じる。日本は何においてもやりやすいようにすべてが上手に整った国だと思うので、バンド活動もやりやすいかなと思います。

PARAKEETジェームス:日本大好きです。日本はイギリスよりもとってもリラックスしていて、友好的だと思います。

THE GIRL:いつでもどこの国でもやってみたいとは思ってます。

■それぞれの国で活動する際、注意すべき点、素敵だと思える点をお互いに教えてあげてください。

PARAKEETマリコ:イギリスは不便な面が多いぶん、人間がゆるいのです。だから平均や常識から外れないことをしろというプレッシャーがなく、個性が生かせる国ではないかと思います。日本に比べて、変わった人が多いというか、個人差があるのが歓迎されていると思います。ハコの環境やら質やら、そんなのは日本のハコの細やかさとかと比べると雲泥の差ですが、とりあえずみな遊び上手なので、お客さんも楽しんでいるということが日本に比べてわかりやすいかなと思います。

PARAKEETジェームス:あんまりいいところはないです。イギリス、特にロンドンはライヴをするには最悪なところです。一般的に待遇も悪いし、ギャラも低い。まあ例外もあって、UKには数カ所素晴らしいハコもありますが。しかし他のヨーロッパの国の方が断然いいです。

THE GIRL:素敵なことしか思いつかない。素敵なバンドとライヴすることです。

■このツアーでいちばん楽しみにしていることは何ですか?

PARAKEETマリコ:THE GIRLをはじめ、たくさんのバンドと共演することで、また新しい音楽や人間に会えることです。

PARAKEETジェームス:マリコと4年前に別のバンドでツアーをしたことがあって、そのときが自分にとって人生で最高の時間でした。だから今回も楽しみで待てないです。日本の文化も、人も食べ物も大好きです。そして日本のハコも最高です。機材もいいし、待遇もすごくいい。まったくイギリスとは逆です。

THE GIRL:パラキートをいろんな角度から見られることと、ツアーそのものが楽しみ。

■では心配していることは?

PARAKEETマリコ:楽しすぎて二日酔いですかね。

PARAKEETジェームス:Gejigeji(ゲジゲジ)。

THE GIRL:ホテルでよく眠れるか、パラキートのメンバーに日本食のおいしいところを紹介できるか。

■お互いに一言お願いします。

PARAKEETマリコ:飲みましょう!

PARAKEETジェームス:ハローーーー!!

THE GIRL:パラキートみたいなかっこいいバンドとツアーできることがほんとうに光栄です。パラキートにもTHE GIRLの良さを見てもらいたい、そしていっしょにおいしいものを食べて飲みたいです。

■最後にファンにひと言お願いします。

PARAKEETジェームス:ハローーーー!!

PARAKEETマリコ:飲みましょう!

THE GIRL:おかもとなおこと二人組になった新生THE GIRLとイギリスのパラキートとの初日本ツアーなのでスペシャルなライヴをお見せできると思います。ぜひ皆さん足を運んでいただいて楽しんでほしいです! 新生THE GIRLは新曲満載です! お楽しみに!


THE GIRL

ele-king presents
PARAKEET Japan Tour 2013
special guest : THE GIRL

詳細はこちらです!
https://www.ele-king.net/event/003112/

■9/5 (木) 渋谷O-nest (03-3462-4420)
PARAKEET / THE GIRL
special guest : uri gagarn
adv ¥3,800 door ¥4,300 (+1drink)
open 18:30 start 19:00
チケットぴあ(Pコード:205-168)
ローソンチケット(Lコード:74729)
e+

■9/6 (金) 名古屋APOLLO THEATER (052-261-5308)
PARAKEET / THE GIRL
adv ¥3,800 door ¥4,300 (+1drink)
open 19:00 start 19:30
チケットぴあ(Pコード:205-387)
ローソンチケット(Lコード:42027)
e+

■9/7 (土) 心斎橋CONPASS (06-6243-1666)
PARAKEET / THE GIRL
adv ¥3,800 door ¥4,300 (+1drink)
open 18:30 start 19:00
チケットぴあ(Pコード:205-168)
ローソンチケット(Lコード:56704)
e+

■9/8 (日)「BON VOYAGE ! 〜渡る渡船は音楽ばかり〜」
尾道JOHN burger & cafe(0848-25-2688)、 福本渡船渡場沖船上
PARAKEET / THE GIRL / NAGAN SERVER with 韻シスト BAND / ウサギバニーボーイ他
adv ¥3,500 door ¥4,000 (渡船1day pass付 / +1drink)
open / start 12:00
ローソンチケット(Lコード:66873)*7/6よりチケット発売
主催:二◯一四(にせんじゅうよん)
共催:Buono!Musica!実行委員会
後援:尾道市、世羅町、尾道観光協会、世羅町観光協会、ひろしまジン大学、三原テレビ放送、中国放送
協力:福本渡船、ユニオン音楽事務所
INFO : 二◯一四(にせんじゅうよん)080-4559-6880
www.bon-voyage.jp

【追加公演】
9/10 (火) 渋谷O-nest (03-3462-4420)
PARAKEET / toddle / TADZIO (この日のTHE GIRLの出演はございません)
adv ¥3,800 door ¥4,300 (+1drink)
open 18:30 start 19:00
チケットぴあ(Pコード:209-089)
ローソンチケット(Lコード:71161)
e+

*尾道公演を除く各公演のチケット予約は希望公演前日までevent@ele-king.netでも受け付けております。お名前・電話番号・希望枚数をメールにてお知らせください。当日、会場受付にて予約(前売り)料金でのご精算/ご入場とさせていただきます。

主催・制作:ele-king / P-VINE RECORDS
協力:シブヤテレビジョン ジェイルハウス 二◯一四(にせんじゅうよん)
TOTAL INFO:ele-king 03-5766-1335
event@ele-king.net
www.ele-king.net


vol.53:サマー・エスケープ - ele-king

 ニューヨークは過ごしやすい涼しい日が続き、このまま秋突入かと思える。平日は、サマーステージ(@セントラルパーク)、ウォームアップ(@モマPS1)、リバー・ロックス(@ハドソン・リバー・ピア84)、セレブレート・ブルックリン(@プロスペクト・パーク)、サマースクリーン(@マカレンパーク)などの野外コンサートへ通っているが、週末は、ニュージャージー、コネチカット、プロヴィデンス、フィラデルフィアと、ニューヨークからの遠征を試みた。

 ニュージャージーは、マクロバイオティックのコンファレンス。大学、ブティック時代の知り合いが、デザートシェフをしていて、遊びにこないかと誘って頂いた。「マクロバイオティックとは」の講義を受けたり、エクササイズ、クッキングクラスなど、至れり尽くせりの授業を体験する。コンファレンスの会場のホテル以外にそこには何もなく、ひたすら勉強のみ。ニュージャージーと言えば、ヨ・ラ・テンゴが毎年11月にハヌカショーをしていたマックスウェルズという老舗の音楽会場が7月末にクローズ。CBGBがクローズした時ぐらいのショックだが、ニューヨークの図書館が、22,000枚のレコードの在庫を一斉放出(1枚1ドル!)するなど、ひとつの時代が終わった空虚感。

 コネチカットは、スピーク・イージー・ドールハウスという劇団の夏イヴェントに参加した。テーマはサーカスで、主催者のシンシア(トリコロールの水着の女の子)のコネチカットの別荘にはメリーゴーラウンドが回り、湖がすぐ横にある。キャンプに来るのは劇団に属するアーティストがほとんどで、日中は、湖で泳ぐ人、絵を書く人、アコーディオンを弾く人、フラフープなど、自分のやりたい事をする。著者は知り合いのアーティスに誘って頂いたのだが、自然と戯れ、行動をともにしていると、最初はよそよそしかった人も、キャンプが終わる頃には、大きな家族のようになっていた。さすがアーティスト、と思ったのは、料理でも、メイクでも、音楽でもなんでも器用にこなす事。ひとつの発想がどんどん転換して、形が作られていく。

 プロヴィデンスはバンドのツアー。ウーリー・フェアという3日間のアート・コミュニティのイヴェントに参加した。
https://woolytown.com/wooly-town-events/wooly-townfair-2013/

 フェスは、スティール・ヤードという一角で行われ、人びとが仮装し、カラフルな風船が飛び、木からぶら下がったブランコがあり、露店が並んでいる。Tシャツを印刷してくれたり、アンティーク機械でコーヒーを淹れてくれるダンディがいたり、ファンタジーの世界。ヒッピーのコミュニティに紛れ込んだようである。ダウンタイムの昼はビーチでまったりし、夜はライトニングボルトのメンバー宅でキャンプ・ファイアーをする。
 ライトニングボルトのDVD「パワー・オブ・サラダ」を監修したピーター・グランツhttps://imaginarycompany.org)にも会い、近況報告をうける。ピーターがアート・ディレクションをする、ラベンダー・ダイアモンドのベッキーとのプロジェクト「ウィ・キャン・ドゥ・イット」が興味深い。豪華なゲストも登場している。ライトニング・ボルトのブライアン・ギブソンがやっているバークレイズ・バーンヤード・クリッターズと言い、最近はアニメーションが面白そうだ。

 ニューヨークの話題としては、3年ぶりに復活したAa (ビッグAリトルa)を見に、この夏最後のサマー・スクリーンに行った。
 トッド・Pがキュレートする共演バンドは、ラットキング、アモン・デューンズ、チョタ・マドル。ラットキングは、ヒップホップ・アーティスト男の子3人組、XLのアーティスト。
 XLといえば、キング・クルールの新作も待ち遠しい。ターンテーブルの男子はバックパックを背負ったまま演奏していた。下ろす暇はなかったのか(暗くて写真とれず)?

 ビッグ・エー・リトル・エーAaは、ライトニング・ボルトや、ブラック・ダイス辺りのノイズ、エクスペリメンタル系バンドが活発だった頃(2006〜9?)によく見ていた。ドラム3人、シンセひとりというラインナップは当時は珍しかったが、今回は、メンバーひとりを除いて総変わりしていた。曲も新しかったが、Aa音はそのままで、メンバーが変わっても、音は受け継がれていた。周りを見るとラットキングの若いオーディエンスと変わって、ぐっと年配になっていた。その後見た映画は「ネヴァー・エンディング・ストーリー」。懐かしい。夏の終わりだ。

 カフェで働いていた頃は、昼も夜も週末も関係なく、ニューヨークから遠征することなどほとんどなかった。周りの音楽関係者が、週末はアップステートに、夏はヨーロッパへなどいろんな所に行っているのを見ていたが、実際自分がそれを体験すると、オンとオフを切り替えることができて良い。頭がリセットされ、いろんなヒントが見えるようだ。

 来週は、フェミニスト・アートガレージ・ポップ・パンク・バンドのプリティ・グリーンズから招待を受け(メンバーのふたりがグリーンという名字を名乗る)、フィラデルフィアへ遠征予定。みなさんの夏はいかがでしたか?

GOLDIE x DEGO - ele-king

 ゴールディとディーゴと言えば、泣く子も黙るドラムンベース界の2大巨匠。シカゴ・ハウスで言えば、マーシャル・ジェファーソンとラリー・ハード、NYハウスで言えばフランキー・ナックルズとフランソワ・ケヴォーキアン、デトロイト・テクノで言えばホアン・アトキンスとデリック・メイが一緒に来るようなもの。あまりにでっっっっっかいブッキングだ。とくにディーゴはいま何を回すのだろう? すっっっっっっごく興味あるんですけど......。では、9月21日、代官山ユニット。待ってるぜ。


DBS presents
"GOLDIE x DEGO (2000Black/4hero)"
W Birthday bash!
2013.09.21 (SAT) @ UNIT

feat.
GOLDIE (Metalheadz)

with:
DX
DJ MIYU
DJ ICHI a.k.a DIGITAL ONE

vj/laser:
SO IN THE HOUSE

Painting : The Spilt Ink.

saloon:
DEGO (2000Black/4hero)

Yoshihiro Okino (Kyoto Jazz Massive)
Yukari BB (Juno Records)
Toshimitsu "Tiger" Takagi
OKA (DESTINATION)
SAYURI (DESTINATION)
ZuKaRoHi (ブロークンビーツ酒場)
Shimoda

open/start 23:30

adv.¥3,300 door ¥3,800

info. 03.5459.8630 UNIT

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Ticket outlets:NOW ON SALE!
PIA (0570-02-9999/P-code: 208-636)、 LAWSON (L-code: 70076)、
e+ (UNIT携帯サイトから購入できます)
clubberia https://www.clubberia.com/store/

渋谷/disk union CLUB MUSIC SHOP (3476-2627)、TECHNIQUE(5458-4143)、GANBAN(3477-5701)
代官山/UNIT (5459-8630)、Bonjour Records (5458-6020)
原宿/GLOCAL RECORDS (090-3807-2073)
下北沢/DISC SHOP ZERO (5432-6129)、JET SET TOKYO (5452-2262)、
disk union CLUB MUSIC SHOP (5738-2971)
新宿/disk union CLUB MUSIC SHOP (5919-2422)、Dub Store Record Mart (3364-5251)
吉祥寺/Jar-Beat Record (0422-42-4877)、disk union (0422-20-8062)
町田/disk union (042-720-7240)
千葉/disk union (043-224-6372)

★90年代初頭ロンドンのアンダーグラウンドから勃発したUKブレイクビーツ革命はジャングル/ドラム&ベースから今日のベースミュージックの潮流を生んだ。そんなシーンのパイオニアはゴールディー、そして4ヒーロー/ディーゴに他ならない。20数年前、活動を共にして以来、それぞれの音楽を追求して行ったゴールディーとディーゴが9/21(土) 代官山UNIT&SALOONで再会する。GOLDIE x DEGOのW Birthday bash!!!! 奇跡の一夜!伝説を見逃すな!

GOLDIE (aka RUFIGE KRU, Metalheadz, UK)
"KING OF DRUM & BASS"、ゴールディー。80年代にUK屈指のグラフィティ・アーティストとして名を馳せ、92年に4ヒーローのReinforcedからRUFIGE KRU名義でリリースを開始、ダークコアと呼ばれたハードコア・ブレイクビーツの新潮流を築く。94年にはレーベル、Metalheadzを始動。自身は95年にFFRRから1st.アルバム『TIMELESS』を発表、ドラム&ベースの金字塔となる。98年の『SATURNZ RETURN』はKRSワン、ノエル・ギャラガーらをゲストに迎え、ヒップホップ、ロックとのクロスオーヴァーを示す。その後はレーベル運営、DJ活動、俳優業に多忙を極めるが07年、RUFIGE KRU名義で『MALICE IN WONDERLAND』をMetalheadzから発表、08年に自伝的映画のサウンドトラックとなるアルバム『SINE TEMPUS』を配信で発表。09年にはRUFIGE KRU名義の『MEMOIRS OF AN AFTERLIFE』をリリース、またアートの分野でも個展を開催する等、英国が生んだ現代希有のアーティストとして精力的な活動を続けている。12年、Metalheadzの通算100リリースに渾身のシングル"Freedom"を発表。13年3月には新曲"Single Petal Of A Rose"を含む初のコンピレーション『THE ALCHEMIST: THE BEST OF 1992-2012』がCD3枚組でリリースされ、まさにアルケミストなゴールディーの不朽の音楽性を再認識させる。
https://www.goldie.co.uk/
https://www.metalheadz.co.uk/
https://www.facebook.com/Goldie
https://twitter.com/MRGOLDIE

DEGO (2000Black/4hero, UK)
 ロンドンに生まれたDEGOはサウンドシステムや海賊放送でのDJ活動を経て90年にReinforced Recordsの設立に参加、4HEROの一員として実験的なハードコア/ブレイクビーツ・トラックのリリースを開始。やがて4HEROはDEGOとMARC MACの双頭ユニットとなり、タイムストレッチング等、画期的な手法を編み出し、ドラム&ベースのパイオニアとなる。傑作『PARALLEL UNIVERSE』(94年)、『TWO PAGES』(98年)以降、4HEROはD&Bのフォーマットを捨て、『CREATING PATTERNS』(01年)、『PLAY WITH THE CHANGES』(07年)で豊潤なクロスオーヴァーサウンドを打ち出す。DEGOはTEK9名義でダウンテンポを追求する等、オープンマインドかつ実験的な制作活動は多岐に及び、98年に自己のレーベル、2000Blackを始動し、革新的な音楽共同体としてのネットワークを拡張、ブロークンビーツ/ニュージャズの潮流を生む。KAIDI TATHAMらBUGZ IN THE ATTIC周辺と密に交流し、dkd、SILHOUETTE BROWN、2000BLACK名義のアルバムを制作。11年には満を持してDEGO名義の初アルバム『A WHA' HIM DEH PON?』を発表、ジャズ、ファンク、ソウルetcへの深い愛情を反映した傑作となる。その後も精力的な活動を続け、12年に『TATHAM,MENSAH,LORD & RANKS』を発表している。
https://www.2000black.com/
https://mrgoodgood.com/
https://www.facebook.com/2000blackrecords
https://twitter.com/2000black_dego

〈UNIT〉
Za HOUSE BLD. 1-34-17 EBISU-NISHI, SHIBUYA-KU, TOKYO
tel.03-5459-8630
www.unit-tokyo.com

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〈GOLDIE JAPAN TOUR 2013〉
9/20(金) 高知 X-pt. GOLDIExDEGO (問)088-885-2626
9/21(土) 東京 UNIT GOLDIExDEGO (問)03-5459-8630
9/22(日) 広島 cafe Jamaica (問)082-240-0505
9/23(月) 札幌 DUCE (問)011-596-8386

〈DEGO JAPAN TOUR 2013〉
9/20(金) 高知 X-pt. GOLDIExDEGO(問)088-885-2626
9/21(土) 東京 UNIT GOLDIExDEGO(問)03-5459-8630
9/22(日) 大阪CIRCUS ---(問)06-6241-3822



SEIHOU
Abstraktsex

DAY TRIPPER

Interview Amazon

 勢いが止まらない! そして夏休みは終らない! 先月インタヴューにてele-kingにも登場してもらったSeihoのセカンド・アルバム、『ABSTRAKTSEX』リリース・パーティーがすごいぞ。ゲストにはUltrademonが参加! Seapunkがモニターを飛び出す! 迎えうつゲスト勢も、tomadからAvec Avecら盟友がズラリと一同に会した豪華な布陣。いま彼らのまわりに何が起こっているのか、目撃するチャンスは今日&明日。今年最高の「陸の海」へと、さあ、繰り出そう!


いよいよ今週! トロピカルなモチーフでファッションのトレンドにもなった10年代のネット/ユース・カルチャーを象徴する #Seapunk のオリジネーター Ultrademonが遂に日本へ初上陸!東京公演では新世代ビートメーカーの旗手Seihoのセカンド・アルバム『ABSTRAKTSEX』のリリパにゲスト出演!!

【Ultrademon Japan Tour 2013】

■8.16 (FRI) @ Circus Osaka with idlemoments
OPEN/START 18:00
ADV 1,500 yen / Door 2,000 yen (+1drink)

LINE UP:
Ultrademon
gigandect
Avec Avec
Terror Fingers (okadada+keita kawakami)
SEKITOVA
eadonmm
doopiio
kibayasi
Alice
?
VJ:
Tatsuya Fujimoto

FOOD:
カレー屋台村山ねこ

more info: https://idlemoments-jp.com

■8.17 (SAT) @ UNIT with Seiho ABSTRAKTSEX Release Party
OPEN/START 23:00 | ADV 3,000yen / DOOR 3,500yen

LINE UP:
[UNIT]
Seiho
Ultrademon
LUVRAW & BTB + Mr.MELODY
RLP
Taquwami
terror fingers (okadada & Keita Kawakami)
tomad
eadonmm

VJ:
ネオカンサイ
Kazuya Ito as toi whakairo

[SALOON]
Licaxxx
Redcompass
Mismi
Hercelot
FRUITY
andrew/Eiji Ando

more info: https://www.unit-tokyo.com


Savages - ele-king

 ライヴの翌日の取材で『AMBIENT defintive』を差し上げたらとんでもなく喜ばれた。とくにヴォーカルのジェニーさん。彼女は本を見ると、「これは私のよ!」と本気で奪い取る。「ドゥ・ユー・ライク・アンビエント?」「オブコース!!」、それからミュジーク・コンクレートやピエール・アンリについて語りはじめる。ページをめくりながら「これ国別? ああ、年代順になっているのね」とか何とか言いながら、デジカメで表紙の写真を写して誰かにメール。サヴェージズは、形(スタイル)だけのロックンロール・バンドではないし、その音楽はメッセージのための伴奏でもない。

 ライヴでは、ジェニーさんのシンプルな言葉はバンドの音のひとつの要素となっていることがよくわかる。くどくど言葉を並べないが、意味を与え、音の構成要素としても機能する。『メタル・ボックス』時代のジョン・ライドンと似ている。コードチェンジのないところも。
 コードチェンジがないことは、無闇やたらに高揚しない、泣き叫ばない、感情を露わにしない、という態度を表している。白けている状態の前向きな解釈で、サヴェージズにもそれがある。ドラマーはシンバルはほとんど叩かない。バスドラとハイハット、スネアで、リズムはミニマルに刻まれる。ジェニーさんの髪型のように削ぎ落とされている。エイスさんのベースがしっかり噛み合っているので身体が動く。
 昔、女性4人組のバンドが出たら、「~ガールズ」とか「ガールズ~」とか、なにかと女性性がタタキ文句に使われたものだが、サヴェージズにはもうその手のエクスキューズは必要ない。むしろ鬱陶しいかもしれない。カメラマンの小原は、今年見たライヴでもっとも良かったと上機嫌だった。それは演っているのが女性だからではなく、サヴェージズだからだ。僕も本当に格好いいと思う。(野田努)

photos : Yasuhiro Ohara

 というわけで、時間は再びライヴの翌日へ。菊地祐樹と一緒にほんの数十分だけど、取材した。以下のやり取りはジェニーさんがアンビエントについて熱くと話した続きである。


『サイレンス・ユアセルフ』を聴かせていただいて、エネルギッシュかつストイックなサウンドに興奮したのですが、それと同時に、抑えきれないフラストレーションに内在する力強さみたいなものをもの凄く感じました。実際、いまのシーンにおいて、あなたたちが一番憤りを感じることや、怒りを感じること、また、自分たちの敵だと思う対象ってなんですか?

ジェニー:「抑えきれないフラストレーションに内在する力強さ」......あなたの言葉好きだわ(笑)。フラストレーションっていうのはそれによって動かずにはいられなくなる衝動であり、感情のことよね。自分で行動を起こさざるを得ない感覚や、フラストレーションに推されて、そこから先がないぎりぎりのところまで突き詰めてるフィーリングが表れてる音楽が私たちも好きなの。
 私たちとBO NINGENがやってる、ワーズ・フォー・ザ・ブラインドっていうプロジェクト知ってる? 本当に彼らと私たちって姉妹や兄弟みたいな関係だと思うくらい似たようなところがあると思うの。いまはコラボレーションって言っても、1曲やってすぐに終わっちゃう関係がほとんどよね。それじゃあつまんないし、そこからなにかもっと違うことをやりたい、そしてその先を突き詰めたいっていうことで、彼らと一緒に考えてこのプロジェクトは始まったんだけれど、それはひとつの部屋にそれぞれのバンドが集まって演奏をするプロジェクトなんだけれど、40分の曲をお互いで一緒に書いて、ふたつのバンドがU字型に並んだ場所の真ん中にお客さんを入れて、バトルともいえるようなパフォーマンスを繰り広げるんだけど、ライヴを観てるお客さんも、そのあまりにもパワフルで直球な私たちの音楽にじっとしてられなくて、思わず身体の角度を変えてしまったり、あるいは音楽っていうものの考え方が変えられてしまったり、いろんな反応が聴いている側にも生まれてくるの。そのくらいの熱量を持って展開される音楽が私たちは好きなのよね。ごめんなさい、長くなってしまったわね(笑)。

どうぞ、続けてください。

ジェニー:質問に応えるわね。邪魔する人たちは皆敵ね。アーティストになりたかった理由や、音楽をはじめたかった理由っていうのはそもそもあるわけで、そこから私たちを違うところに反らそうとする邪魔者の存在すべてが敵だと言えるわ。理由は様々だけれど、ビジネスにかまけるあまりとかね。アーティストの核にあるものは本当の自分のなかの初期衝動であるべきなのに、そこから目を反らそうとする人たちがあまりにも多い気がするわ。それは個人であったり、組織であったりいろいろだけれど、本当にむかつく。自分を取り囲む環境っていうのは、自分から奪っていくんじゃなくって、自分の栄養になってくれるものであるべきだと私はそう思うの。だから、私は自分の内面っていうものをそのまま保っていける環境を大切にしたい。

原宿のアストロホールで行われた昨日のライヴ、お客さんも本当に踊っていたりノっいて、とてもエキサイティングだったんですが、アンコールをやらなかったのはなぜなんでしょうか? メッセージだったりしますか?

ジェニー:アンコールをやらなかったのはそこにいま述べたような敵がいたからよ(笑)。ジョークはこれくらいにして、それはどういう意味のメッセージかしら?

例えば、「ベストを尽くしてライヴをやったんだから、これ以上サーヴィスはしない」というか、予定調和への反抗みたいなものですかね。

エイス:それはもちろんあるわね。期待されてるから無理にやらなきゃいけないみたいなノリは嫌なの。それに実際、本編のライヴのなかで与えるものは与えたし、もうこれ以上いらないはずでしょ? っていう思いもあったの。

ジェニー:クリニックっていうリヴァプールのバンドは絶対にアンコールをやらないわよね。そういうやりかたが私も潔いと思うし、セット・リストを考えた時点でそれがひとつのジャーニーだし、ひとつの作品だから。クリニックの場合は事前にアナウンスが入るのよね。「今日は20分のセットを2回やります。もちろん途中で休憩はあります。ただし、それで終わりです」こんな具合にね。実際、本当にその通りに行われるのよ。まるでそれは演劇のようであり、舞台のような見せ方で、面白いなと思ったの。あとやっぱり、アンコールってサプライズであるべきだと私は思うのよね。だから、本当はやる予定だったけど、1曲やり忘れちゃったからアンコールをやるっていうんだったらありだと思うわ。

これだけいろんなジャンルがあり、選択があるなかで、どうしていまのようなバンド・サウンドに行き着いたんですか?

エイス:だからこそだと思うわ。いろんなジャンルがあって選択があるからこそ、こういったベーシックな、ギター、ドラム、ベース、ヴォーカルっていうフォーマットに立ち返って、そういうものが持つパワーをまた私たちは鳴らしたいの。

ジェニー:いろんな選択肢ね、よく言うけど、私はそれは幻想だと思うの。だって選択肢がたくさんあって、制約がないはずなのに、みんな同じような音を出しているわよね。その逆で、制約があるからこその自由みたいなものって絶対に私はあると思うし、特にアートの世界においては、制約のなかで工夫するところに表現の醍醐味があるでしょ? やり方はもちろんいろいろあるかもしれないけれど、自分がやろうとしてることにフォーカスするっていう意味では、いまの形が一番理想的だと思っているの。

「私はシンガーではなく詩人なんだという意識があって、歌うという行為に抵抗があった」というパティ・スミスが歌いはじめたときの話がありますが、あなたはどの程度自分がシンガーであることを自覚し、意識していましたか? 

ジェニー:すごく昔のことだから思い出せないけれど、小さい頃シャワーでよく歌っていたのはたしかね(笑)。8歳のときにジャズ・ピアノをはじめて、10年近く夢中になって練習したわ。10歳~13歳の頃はジャズ・スタンダードが多かったんだけれど、女性のピアノの先生に、レッスンの一環として歌を習うようになったの。当時は声量が本当になくて苦労したわ。で、チェット・ベイカーみたいだと呼ばれてね(笑)。
 その後、クラシック・オペラを習いはじめたときからわりと声量も付いてきて、きちんと歌えるようになったんだけれど、それを人前でやることへの経験不足をすごく感じたし、そういうことをやる自分が嘘っぽく感じてしまって、当時は歌うことに対してコンプレックスに似たものさえ抱いていたわね。その後、自然と演技のほうに興味が移ってしまったんだけれど、そのときジョニー・ホスタイルと出会って、私の人生は変わったの。そこから彼とジョニー&ジェニーのプロジェクトをはじめて、そこからいまのサヴェージズに繋がるのよね。
 ただ、サヴェージズをはじめた当初も、ステージに出ることが本当に苦手だったし、スタジオに入るごとにパニックを起こしてしまったり、そんなことがしょっちゅうあった。でも、もう大丈夫。私は成長したの。ここに至るまで長った。いまとなってはそう感じるわね。
 パティ・スミスはそもそも詩の朗読をやっていて、人前でも朗読のパフォーマンスをはじめて、それが演奏や曲に発展していったのよね。最近ギターのジェマとかと実験的にはじめたスポークン・ワーズをサヴェージズでも取り入れるようになって、所謂メロディなしで、言葉だけを使って自由さを楽しむプロジェクトをはじめたんだけどね。
 そもそもパティと私とではまったくプロセスが違うし、私自身、自分のことを詩人だとは思っていない。でもパティ・スミスはいつでも私にインスピレーションを与えてくれるし、新鮮みがあって、『ジャスト・キッズ』も素晴らしかったし本当に尊敬してるわ。ただ、サヴェージズっていうバンドにおいて、詩は間違いなく曲作りの念頭にないし、私たちはサウンドを重視しているの。繰り返すけれど、私自身も詩人ではない。私はシンガーなの。

ドリーミーなサウンドがシーンの主流にあるなかで、サヴェージのストイックなアテュテュードは際立っているように思いますが、いかがでしょう?

ジェニー:アイデアはそれぞれのメンバーで山ほど持っているから、それを無理せず自然に選び出していくっていう作業が私たちの曲作りなの。だからそうしたプロセスはある種引き算とも言えるわね。でもその作業って得てしていろんなところから邪魔(敵)が入るから、つい気をとらわれがちだけれど、曲の核心になるのは本当に必要なものだけだと思ってる。
 ロンドンにおいてはとくにそうなのだけれど、所謂トラディショナルなロックンロールが消えたとされるなかにあって、「そうじゃないでしょ?」っていう周囲に対する反発からこういう音を突き詰めてるっていう気持ちも少なからず私たちのなかにはあるし、必要最低限のシンプルなものだけで、立派にショーとして成り立つっていうのは本当にすごいことだと私は思うの。日本にもそれを体現しているBO NINGENっていうバンドがいるわね。私たちは無駄なものを削ぐことに躊躇はまったくしない。なぜなら、私たちがそもそもなにが言いたかったのかっていう、もとにある主張みたいなものが音で埋まって欲しくないから。
 そして、それがちゃんといろんな人に伝わって皆に理解してもらう、それを恥ずかしがってなにかで覆い隠すのは一切しない。それが私たちサヴェージズだから。

工藤キキのTHE EVE - ele-king

 285 KENTはサウスウィリアムズバーグにある中箱のウェアハウスで、がらんとしたダンスフロアとステージとチープなバーがあるだけのシンプルな箱だ。その285 KENTで月1ペースで開催している「Lit City Rave」は、Jamie Imanian-Friedmanこと J-Cushが主宰するJuke / Footworkのレーベル〈Lit City Trax〉がオーガナイズするパーティ。たぶん私が出入りをしているようなダウンタウンまたはブルックリンのパーティのなかでも極めてクレイジーで、この夜ばかりはステージの上も、DJの仲間たちの溜まり場になるステージ裏も、一応屋内喫煙が禁止されているNYで朝の5時までもうもうもと紫の煙が立ちこめている。
 基本的には、Chicago House直系のベース・ミュージック──Ghetto Houseから、Grime、Dub Step、UK Garageなどのビート中心で、特にJuke/FootworkをNYで逸早く取り上げたパーティだと思うし、例の'Teklife'という言葉もここではCrewの名前として日常的に、時に冗談めかしで使われている。

 DJ RashadやDJ Manny 、DJ SpinnそしてTraxmanはこのパーティのレジデントと言っていいほど「Lit City Rave」のためだけにChicagoからNYにやって来て、彼らのNYでの人気もここ数年の〈Lit City Trax〉の動きが決定づけたと言ってもいいんじゃないかな? さらに興味深いのがTRAXを経由したChicagoのミュージック・ヒストリーをマッピングするように、DJ DeeonなどのOGのDJ/プロデューサーから、Chicagoローカルの新人ラッパーのTinkやSASHA GO HARDが登場したり、ARPEBUことJukeのオリジネイターRP BOOのNY初DJ(!)などを仕掛けるなど、そのラインナップはかなりマニアックだ。
 本場ChicagoのようにMCがフロアーを煽るものの、Footworkersが激しくダンスバトルをしている......というような現場は実はNYでは遭遇したことがないかも。人気のパーティなので毎回混んでいるし、誰しも踊り狂っているけど、パーティにRAVEと名はついているものの俗にいう"RAVE"の快楽を共有するようなハッピーなものではない。はっきり言って毎回ハード。アンダーグラウンドで生み出された新しい狂気に満ちたビートを体感し、自らファックドアップしに行くといったとこだろう。振り落とされないようにスピーカーの横にかじりつきながら、踊るというよりもビートの粒を前のめりで浴びにいくような新感覚かつドープでリアルなセッティングで、本場Chicagoのパーティには行ったことがないけど毎回「果たしてここはNYなのか?」と思ってしまう。

Pphoto by / Wills Glasspiegel

 J-Cushは実はとてもとても若い。LONDONとNYで育った彼は、Juke/FootworkがGhetto Houseの進化系としてジャンル分けされる以前からDJ DeeonなどのChicago Houseには絶えず注意を払っていた。2009年頃からChicago Houseの変化の兆候をいち早く読み取り、一体Chicagoでは何が起きているのか? とリサーチをはじめた。それらの新しいChicagoのサウンドは彼にとってはアフリカン・ポリリズムスまたはアラビック・マカームのようにエキゾチックであり、UKのグライムのようにフューチャリスティックなサウンドに聴こえたそうだ。それからはJuke/Footworkを意識して聴くことになり、〈Ghettotechnicians〉周辺や〈Dance Mania〉のカタログを総ざらいした。
 その後NYでDJ Rashadと出会うことになり彼が生み出すビート、圧倒的かつ精密なまでにチョッピング、ミックスし続ける素晴らしくクレイジーなプレイに未だかつてない程の衝撃を受け、それに合わせて踊るQue [Red Legends, Wolf Pac] や Lite Bulb [Red Legends, Terra Squad]というFootworkersにもやられた彼は、Chicagoのシーンにのめり込むことになり〈Lit City Trax〉というレーベルを立ち上げるに至る。

 NYのパーティは割とノリと気分、ファッション・ワールドの社交の場になっているものも多く、「Lit City Rave」のようにビートにフォーカスし、かつ毎回趣向を凝らしたラインナップで続けているパーティは案外少ない。東京とブリティッシュの友人たちに多いギーク度、新旧マニアックに掘る気質がやはりJ-Cushにもあるし、そして彼は単なるプロモーターでは無い。ジャンルを越境できるしなやかなパーソナリティを持っているし、ストリートからの信頼もあつく、気鋭のビートメイカーたち、Kode9、Oneman、Visionist、Brenmar、Dubbel Dutch、Durban、Fade to Mindのkingdom、Mike Q、Nguzunguzu、もちろんTotal FreedomやKelelaなども早い段階から「Lit City Rave」に招聘している。

Photo by Erez Avis

 J-Cush自身もDJであり、常日頃から新しいビートを吸収しているだけあってスタイルはどんどん進化しエクスペリメンタルなGarageスタイルがまた素晴らしい。そのプレイは先日『THE FADER』や『Dis Magazine』のwebにMixが上がっているので是非チェックしてみて。
 さらにJ-CushとNguzunguzuとFatima Al Qadiriで構成された'Future Brown'というCrewでトラックを作りはじめていたり、今後の「Lit City Rave」ではUSのGrimeや、さらに地下で起きているアヴァンギャルドなダンスシーンを紹介していきたいと語っていた。
 そんなわけで、先週の「Lit City Rave」ではドキュメンターリー映画『Paris Is Burning』で知られたBallのダンス・パーティの若手DJとしても知られている〈Fade To Mind〉のMike Qがメインで登場。こっちのダンスシーンもプログレッシヴに進化を遂げているんだなと、ヴォーギング・ダンサーズのトリッピーな動きに釘付けになったのでした。

https://soundcloud.com/litcity

Lit City Traxからのリリース
https://www.beatport.com/release/teklife-vol-1-welcome-to-the-chi/919453
https://www.beatport.com/release/teklife-vol-2-what-you-need/982622

Download a Mix from Lit City Trax
https://www.thefader.com/2013/08/02/download-a-mix-from-lit-city-trax/

J-Cush XTC MIX
https://dismagazine.com/disco/48740/j-cush-xtc-mix/

Vol.9 「Razer Edge」 - ele-king

 

 みなさんこんにちは。夏真っ盛りですね。今回は少し趣旨を変えて、いつものゲーム・ソフトではなく、ハードウェアの方を取り上げたいと思います。というのも、面白いガジェットを手に入れたのですよ。

 それが上記写真のこちら。まるでiPadの左右に無理やりコントローラーを付けたかのような豪快なデザインのこのガジェットこそ、今年3月末に発売された、PCゲームが遊べるタブレットPC(史上初!)、「Razer Edge」です。

 近年多種多様な機種が出ているタブレットPCですが、その中でもRazer Edgeはトップ・クラスのスペックを誇り、また専用のゲーム・パッドと組み合わせれば、まさに携帯機さながらの感覚で最新のPCゲームを遊ぶことができるのです。いままでこういうハードウェアはありませんでした。

 これを作った〈Razer〉というメーカーは、マウスやキーボード等PCゲーム用の周辺機器を中心に手掛けていて、普通のコスト感覚から外れたハイ・スペックと高価格を併せ持つ、変態的デバイスを数多く世に送り出しています。かく言う僕もこのRazer Nagaという17ボタンマウスには、趣味と仕事の両面でお世話になっています。何かもう17ボタンって聞くだけで変態的でしょ。

 
12個のテンキーをそのままサイドにくっつけた暴力的とも言えるデザイン。しかしこれが意外と使いやすいんです。

 そしてこの『Razer Edge』もご多分に洩れず、じつに〈Razer〉らしい変態的な製品です。ていうかまぁ、変態なのは見るからに明らかなのですが、外見以外でも、たとえば価格は本体が約14,5000円に専用のゲーム・パッドが2,4000円と、ゲーム機としては有り得ない高さ。また本製品はアメリカとカナダの限定販売だったので、今回僕は輸入代行業者を挟んで購入し、その手数料や送料も含めると総額180,000円以上になりました。知り合いにこの話をしたら「命懸けてるね」と言われましたよ。

 いやー、でも、外でPCゲームを遊びたかったんですよ。普段忙しくてゲームをやっている暇がなかなか無いから、せめて電車のなかとか移動中の時間を有効活用したかった。それに本製品のOSはWindows 8なので、持ち前のハイ・スペックと組み合わせるといろいろと遊べるんじゃないかという期待もありました。

 果たしてRazer Edgeはそんな期待に応えられる製品だったのか。180,000円も出すに値するものだったのか。そこのところを今回のレヴューで明らかにしていきたいと思います。

『Razer Edge』のプロモーションビデオ。大体どんなものかわかるはず。

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■ゲーム機としてのRazer Edge

 さっそく、ゲーム機としてどうなのよって点について語っていきたいと思いますが、その前に基本的なスペックの説明をすませましょう。

 Razer Edgeには複数のモデルがありますが、今回僕が手に入れたのは最上位に当たる「Razer Edge Pro 256GB」。CPUはCore i7-3517U 1.9GHz、メモリが8GB DDR 3、256GBのSSDにディスプレイが10.1インチで解像度が1364x768、さらにそこにグラフィック・カードのGT 640M LE(2GB DDR3)が加わり、そこらのコンバーチブルPCと同等以上のスペックを誇ります。

 なので、約14,5000円の本体価格も、ゲーム機としてとらえるとギョッとしますが、本製品と同等のスペックのコンバーチブルPCの価格と比較すると決して法外な値段ではありません。ただしゲーム・パッドの方はぼったくってますね。これ単体で2,4000円というのは正直有り得ないと思いますが、これが無いと本製品の真価が発揮されないので仕方がない。

 
本体の外見は厚めのiPadといった感じ。〈Razer〉にしてはシンプルなデザインに好感。

 さて肝心の使い心地ですが、良い点から挙げると、まずは没入感がとても高い。ディスプレイの大きさも解像度もタブレットPCとしては最大級ではありませんが、ゲーム・パッドを装着して持ったときの視界の占有率はとても高く、市販の携帯ゲーム機を遥かに凌駕しています。それこそ感覚的には24インチのディスプレイで遊ぶときとほとんど遜色ありません。

 実際にゲームを遊んだときのパフォーマンスはまずまずといったところでしょうか。いくらタブレットPCとしてハイ・スペックとは言え、最新のPCゲームを最高画質で且つ60FPSで動かすのは不可能です。どうしても動かしたい場合は相当設定を下げざるを得ません。

 ただし30FPSを基準にすれば、最高設定とまではいかないものの、かなりの品質を出すことができます。これは人によって考えが違うとは思いますが、現行のコンシューマ用のゲームがほとんど30FPSで動いていることを考えれば、コンシューマと同等のパフォーマンスでより高い品質で遊べる、というふうにとらえればアリかな、というのが僕の感想です。

 あまり専門的な話にしたくないので今回は詳細なベンチマークは行いませんが、あくまでもザックリとした観測として30FPS基準で大体これぐらいの画質で動くよ、という感じで最近のゲーム4本のスクリーン・ショットを用意しました(クリックで拡大できます)。

 
『BioShock: Infinite』は今回の4本のなかでは最もコスト・パフォーマンスが良かった。グラフィックス設定をすべてHighにしても30~40FPSを維持し、快適に遊べた。

 
次いでパフォーマンスが良かったのがウクライナ産ポスト・アポカリプスFPSの『Metro: Last Light』。SSAAとTessellationをオフにする以外はすべて最高設定。これで屋内はほぼ30FPS以上を維持。屋外では20FPS代前半に落ち込む場面もあり。

 
いちばん厳しかったのが『Crysis 3』。PCゲーム・グラフィックスのベンチマーク的存在の同作は、元々重いこともあり、30FPSを出すにはすべての設定を中以下に落とす必要があった。

 
脱メスゴリラを遂げた、等身大のララ・クロフトが売りの新生『Tomb Raider』。画質は簡易プリセットのままではコスト・パフォーマンスが良くないが、各項目を個別に設定すれば大分改善される。

 もうひとつ良かった点が、〈Steam〉のゲームを遊ぶ際のSteam Cloudによる連携ですね。最近の〈Steam〉のゲームはセーブ・データをクラウド管理でき、すべての環境でそれを読み出すことができます。これを利用することで、ひとつのゲームを出先ではRazer Edgeで遊び、家に着いたら続きをデスクトップPCでやるといったことが可能なのです。まさにハードウェアに縛られないクラウド時代ならではのゲーミングと言え、じつは今回いちばん感動したのもこの点でした。

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■携帯し難い携帯機

 良い点を先に挙げてみましたが、悪い点ももちろんあります。というか、本製品は良い点も相殺しかねないぐらいの弱点を抱えており、それはズバリ物理的に重くて長いということです。

 まず重さ。本体自体が約960gでiPad 2の1.5倍近い重さがあり、これにさらにゲーム・パッドを装着すると約1.9kgになる。それを左右のグリップで支えると手首にとても負担が掛かります。とてもじゃないけど普通の携帯機と同じ感覚で持つことはできず、座って膝に置くなり何らかの支えが不可欠です。

 次に長さ。これも本体だけなら約280x180mmとiPadより少し細長い程度なのですが、ゲーム・パッドを装着すると横幅が約410mmになります。これは電車の座席で利用すると両サイドに手がはみ出る長さ。普通に迷惑であり、使う際は状況をよく考えなければいけません。

 またこの長さは持ち運ぶ際にも何かと不便。まずリュックサックは必携。個別のケースにしてもゲーム・パッドを装着したときの約410x190mmという変則的な大きさをピッタリ収めてくれるものは見つかりませんでした。ここは公式でケースを販売してほしかった。

 
持ち運びが不便な携帯機。良くも悪くも常識を打ち破っていると言える。

 加えてバッテリーの短さについても触れておかなければなりません。平常時は大体4~5時間程ですが、いざゲームを動かすと、保って1時間半といったところ。ヘヴィなゲームを動かすには大量に電力が必要なのはわかりますが、これだけ短いと携帯機としては何とも心許ない。一応ゲーム・パッド側に内臓させる拡張バッテリーも別売りされていますが、それを積むとさらに重くなるというジレンマにも悩まされます。

 要するに携帯機としてはあまりにも取り回しが悪すぎるわけです。ただ、これについては初めからわかっていないはずがなく、普通は取り回しも考えてベターな仕様に着地させるものを、たとえ本末転倒になっても極端な大画面・高性能に舵を切ってしまうのが〈Razer〉らしいというか、変態たるゆえんだと思います。

 良さも悪さも理解した上で、それでも使いたいやつだけが使えばいい。むしろこれだけ高額のものを購入した時点で、覚悟はできているんだろ? そうとでも言いたげな開き直りさえ感じます。

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■タブレットPCとしてのRazer Edge

 ここまではゲーム機としてのRazer Edgeについて触れてきましたが、前述したように本製品はそれだけに留まるものではありません。ここからは汎用タブレットPCとして見た場合にどうなのかという点について書いていきましょう。

 ズバリ言ってしまえば、本製品のタブレットPCとしての最大の長所であり同時に短所でもあるのは、OSがWindows 8であるということです。

 周知のとおり、Windows 8は新たにタッチパネル操作に最適化されたModern UIが採用されていますが、使い勝手は良くありません。というか、従来のデスクトップ型のUIと混合していて、両者を行ったり来たりするのが非常に煩雑なのです。

 
Modern UIもそれだけなら決して悪くはないのだが......

 それを象徴しているのがWin 8版Internet Explorer 10。こいつはなんとModern UI版とデスクトップ版の2種類が混在している。Modern UI版はタッチパネル操作に最適化されていますが、履歴機能が欠けており、また一部動作しないプラグインもあって、ブラウザとして十分ではありません。

 一方のデスクトップ版はModern UI版の物足りなさはありませんが、各ボタンが小さくてタッチパネル操作では使い難い。さらにModern UI版とデスクトップ版はCookieやブックマーク等の情報が共有されない!

 こうしたちぐはぐさはOS全般に見られ、何をするにもまずはこのオペレーションの煩雑さに慣れなければいけません。Windowsではいまにはじまった話ではありませんが、改めて普段使っているiPhoneとの差を実感してしまう次第です。

 ただしどんなに腐ってもWindowsであり、巷に溢れる多種多様のソフトウェアやハードウェアを使うことができるのが何よりの利点。従来のWindowsと同じく、OSそのものの煩雑ささえ克服できれば、スペックの高さも利用していろいろなことができるでしょう。

 ゲーマーとしてまず思いつくのが、Frapsを使ったスクリーン・ショットや動画の撮影。またはゲームの内部データを弄ったり、ネットからMODをダウンロードしてきて適用したりも思いのままです。

 しかしそれ以上に僕がやりたかったのが、Photoshopを動かして絵を描くということ。これさえできれば僕にとってはPCで行うことのおよそ8割が実現できるも同然なのです。とは言えPhotoshopを十分に使うにはさまざまな周辺機器も不可欠です。マウスとかキーボードとかペンタブレットとか。そんなわけで、半ば強引に必要なものを揃えてみました。

 
何か根本的に間違っている気がする。

 じゃん。出オチ感が半端ないですが一応解説すると、マウスは例の17ボタンのRazer Naga、ペンタブレットはIntuos 4のLargeとそれぞれ普段愛用しているものを転用。キーボードはBuffaloのワイヤレス・キーボード、SRKB04BKを新調。テンキー付きで大分横長ですが、そもそもRazer Edge自体横長なので、いっしょに持ち歩くなら関係あるまいとこれを選択。またRazer Edge自体はひとつしかUSBポートがないので、ElecomのUSBハブ、U3H-A401BBKも合わせて用意。

 結論から言えばPhotoshopを動かすこと自体は可能でした。今回この連載のタイトルバナーを新調しましたが、この絵の原寸が4320x2080px。これだけの大きさの画像でも軽快に動作し、ほぼストレス無く作業ができたのは感激です。ただし前述した本製品の携帯機としての意義以上に、本末転倒感が拭えません。

 少なくともこういうことをやるのであれば、ゲーム・パッドと同じくアタッチメントとして販売されているキーボード・ドックやドッキングステーションが必要不可欠でしょう。またマウスとタブレットもさらにコンパクトで且つワイヤレスにするのが望ましい。言うまでもないことですが、今回のセッティングはまったく実用的ではありません。

 理想は液晶タブレットのようにタッチパネルを直接ペンで操作できることですが、現状のスタイラスペンでは実用に耐える精度は出せませんし、この辺は今後の技術向上に期待といったところでしょうか。PCゲームの携帯化が実現できたいま、僕が次に待ち望むのはCG制作環境の完全な携帯化に決まりました。

 
ちなみにRazer Edgeでの制作は早々に切り上げ、結局普段通りデスクトップでの作業に戻っていきました......

■まとめ

 個人的には、この『Razer Edge』は大満足です。180,000円出した価値はありました。やはりPCゲームを野外で遊べるというのは、他には代え難い体験です。しかしその体験を得るために犠牲にしなければいけないこと、克服しなければいけない課題がたくさんあり、その点で他人にはまったく薦められないデバイスなのも確か。これは一般人を端から度外視した、どうしても使いたいやつだけが使うものなのです。

 ただこうしたゲーム体験は現状こそ『Razer Edge』のみで得られる特異なものですが、あと数年すればわりと近いことは一般のタブレットPCでもできるようになるんじゃないかと僕は思っています。先日iOS7がゲーム・パッドへの正式対応を発表し、それとともに出回った装着型のゲーム・パッドの画像は、まんまRazer Edgeを彷彿させるものでした。一般向けタブレットPCの性能向上も著しく、そう遠くないうちに現行機レベルのゲームをそこらのタブレットPCで動作させられる環境が整ってくるはずです。

 そんな、来るかもしれない未来を想像しつつ、現状においてはその未来を唯一体現できるこのRazer Edgeを、僕はこれからも満喫したいと思います。


P.S.
本記事でもサラッと触れましたが、今回長らく仮のままだったタイトル・バナーを一新しました。日本人の立場から洋ゲーを遊ぶ、レヴューするという意味で、日本的美少女を中心にした絵になりました。

 装いも新たにした当連載を、引き続きよろしくお願い致します。
 

Marcellus Pittman - ele-king

 欧米のいまのテクノ/ハウスの盛り上がりは本当にすごい。NHK'Koyxeиとスカイプで話して、向こうの状況を聞いていると羨ましくなる。まず何がすごいかって、NHK'Koyxeиもローレル・ヘイローもマーク・フェルもディーン・ブラントも、そしてピート・スワンソンもネイト・ヤングもホアン・アトキンスもURもジュリアン・バーウィックもミカ・ヴァイニオもアンソニー・ネイプルスもアンディ・ストットも、同じようなイヴェントに出演している。境界線は取っ払われて、拡張し、開かれているというわけだ。『TECHNO definitive 1963-2013』で取りあげていた連中が、いま見事に合流している。ハウス・シーンが新旧入り乱れて活性化しているように。
 ジェイムス・ブレイクやエア・ヘッドらがデトロイト・ハウスに触発されている話は前にしたが、デトロイト・ハウスは何もセオ・パリッシュとムーディーマンだけではない。マルセラス・ピットマンも代表的なひとりだ。彼は3 Chairsの第4のメンバーでもあり、ジャジーでメロウなトラックは自らのレーベル〈Unirhythm〉から出している。ブラック・ミュージックとしてのハウスの最良なモノが彼の音楽にもある。この夏のお盆、君の魂をケアするのは、破産した米国の工業都市からやって来るマルセラス・ピットマンになるだろう。


Marcellus Malik Pittman Japan Tour 2013


8.9(FRI)Osaka@Triangle

Music by Maurice Fulton & Marcellus Pittman

open/start 21:00
Door 3000yen with 1Drink
With Flyer/Advanced 2500yen with 1Drink
Pia, e+

Info: Triangle https://www.triangle-osaka.jp
大阪市中央区西心斎橋2丁目18-5 TEL 06-6212-2264

AHB Production https://www.ahbproduction.com

Red Bull Music Academy Radio
https://www.redbullmusicacademy.jp
https://www.rbmaradio.com

8.10(SAT)Niigata @goldenpigs yellow
- Lights Down Low -

Guest DJ: Marcellus Pittman
DJ: Ichiya TAKIO KAIZU & smook
LJ: CON
SOUND SYSTEM: february audio

open 22:00
Door 3500yen
Advanced 3000yen

Info: Golden Pigs Yellow https://www.goldenpigs.com/yellow.html
新潟市中央区東掘通6番町1051-1 G.Eビル3F TEL 025-201-9981
WAXIN' https://waxin-essence.blogspot.com
Cave Records TEL 025-201-8878

8.11(SUN)Ueda @LOFT
- Sound of LOFT -

Guest DJ: Marcellus Pittman
DJ: Masahiko Uchikawa(Rhythm Of Elements, LOFTSOUL), Atsushi Fujisawa(H.R.N), Tatsuga&Tetsuta

open 21:00
Door 3000yen
With Flyer 3000yen with 1Drink

Info: LOFT https://www.facebook.com/loft0268
長野県上田市中央2-13-10ツカサビル3F TEL 0268-25-6220


8.15(THU)Kyoto @COLLAGE
- welcome Marcellus Pittman -

Guest: Marcellus Pittman
Act: hanky and friends

open 20:00
Adm 3000yen with 1Drink
With Flyer 2500yen with 1Drink

Info: COLLAGE https://www6.ocn.ne.jp/~collage/collage/
京都市中京区西木屋町通四条上ル紙屋町336?レイホウ会館3F TEL 075-256-6700


8.16(FRI)Tokyo @Amate-Raxi
- Marcellus Pittman Feat. Re:Funk -

B1F
Marcellus Pittman
AYUMU OKADA (yes. / disk union)
KAJI (JMC / XXX)
OHISHI (JMC / SODEEP)

DANCE PERFORMANCE...
Lagos APT. +SODEEP (NAO, UEMATSU)

1F
STOCK (JMC / World Spin)
konsin (WALKERS)
Dee Jay

open 22:00
Door 3500yen with 1Drink
With Flyer 2500yen with 1Drink

Info: AMATE-RAXI https://www.amrax.jp
東京都渋谷区渋谷3-26-16 TEL 03-3486-6861


8.17(SAT)Nagoya @Club Mago
- audi. -

Guest DJ: Marcellus Pittman
DJ: Sonic Weapon, Jaguar P
Lighting: Kool Kat

open 22:00
Door 3000yen
With Flyer 2500yen

Info: Club Mago https://club-mago.co.jp
名古屋市中区新栄2-1-9 雲竜フレックスビル西館B2F TEL 052-243-1818

TOTAL TOUR INFO: AHB Production 06-6212-2587 www.ahbproduction.com



我がためにある音楽は聴いた瞬間にわかるというもの
ブライオン・ガイシン

The 4000 year old Rock and Roll Band
ティモシー・リアリー/ウィリアム・バロウズ

 ブライオン・ガイシン、ウィリアム・バロウズ、ポール・ボウルズ、ブライアン・ジョーンズ、ティモシー・リアリー、オーネット・コールマン......世界のつわものを魅了してきたこの古代の響きを受け止められるだけの精神力が自分にあるのだろうか......? でも、たとえ精神的に戻れなくなってもいい、私にはその覚悟はできているんだ! 
 2012年6月、期待と不安に飲み込まれながら、私も先達と同じく、ジャジューカの魅力にとりつかれ村に吸い寄せられるように行ったひとりとなった。私の音楽観や人生観を一瞬にして変えてしまった3日間。村を後にしてからジャジューカを思い出さなかった日は1日もなかった。あれから丸一年、今年6月、私はまたジャジューカに戻ってきた。今回は友人たちとともに──。

 北アフリカ、モロッコ王国の北部、リフ山脈南に位置するアル・スリフ山にある小さな村ジャジューカ。この村で、アル・スリフ族のスーフィー音楽家たち‘The Master Musicians of Joujouka(ザ・マスター・ミュージシャンズ・オブ・ジャジューカ)’(アラビア名:マレミーン・ジャジューカ)によって、息子たち、甥たち、村の子供たちへと千年以上も時代を超えて守られ受け継がれてきた音楽がある。
 それは、村から1キロくらい離れた、背の低い緑が茂る緩やかな山の斜面に鎮座する大きな岩の横腹にポッカリと口をあけた洞窟、このブゥジュルード洞窟の伝説が起源になっている。


緑の山の斜面にいきなり大きな岩がある。

  昔々──、ヤギを放牧していた村人のアターが、みんな恐れて近づかなかったこの洞窟でうたた寝をしていると、どこからともなく美しい音色が聞こえてくる。ふと目が覚めると半人半獣(人間とヤギ)のブゥジュルードが自分の目の前に立っていた。そして、ブゥジュルードが村の女性のひとりを花嫁にする代わりに、他の村人に教えてはならないと約束させ、アターに笛を渡し音楽を教える。しかし、アターは約束を破り音楽を村人に伝授してしまう。村から音楽が聞こえ、怒り狂ったブゥジュルードは村に行く。慌てた村人たちは、頭がクレイジーな村の女性アイーシャを花嫁として差出し、激しい音楽で彼らを踊らせた。踊り疲れたブゥジュルードは満足して洞窟に帰り、それから毎年一度村に来て踊るようになった。それ以来、やせていた村の土地は肥え、村には健康な子供がたくさん生まれた。


ブゥジュルード洞窟の岩。『Joujouka Black Eyes』のカヴァーで使われている。

  しかし、ある日突然ブゥジュルードが洞窟から姿を消した。そして、アイーシャも村からいなくなった。心配したアターはヤギの群れを連れてブゥジュルード探しの長い旅に出る。自分のヤギを順番に食べながら旅するが見つからない。ついに最後の4匹になった時、アターはそのヤギを殺しその皮をまとい変装して村に戻る。村人は彼をブゥジュルードが帰ってきたと思い込み、少年たちにアイーシャの恰好をさせ一緒に踊らせる。それ以来、アターはこの洞窟で生涯ブゥジュルードとして生きる。彼に死が近づいてきた時、村のある若い男に自分の変装の秘密を打ち明ける。そして、彼はその少年にジャジューカが繁栄するようにブゥジュルードとして踊ることを約束させた。


洞窟の中からリフの山々を望む。

  この音楽は1週間続くイスラームの祝祭エイド・エル・カビールで子孫繁栄と豊穣のため伝統的に毎年演奏されてきた。
 ギリシャ神話の牧羊神パーンに似通っているといわれるブゥジュルードのその音楽を私が初めて耳にしたのは今から2年数か月前、2011年春のことだった。1970年代後半から電子音に魅了され、それからずっと電子音楽だけを追い続け、94年に渡英し、気がつけば私はクラブ・カルチャーの真ん中にいた。自分の音楽史にロックを通過した跡がほとんどない私は、当然ローリング・ストーンズの元リーダー/ギタリストであるブライアン・ジョーンズのアルバム『Brian Jones Presents The Pipes of Pan at Joujouka』の存在など知るはずもなかった。
 ジャジューカに魅了されたブライアンが、68年に村で現地録音したテープをロンドンに持ち帰り、フェージングやクロス・フェード・エディティングによって完成させたこの作品は、69年、彼が不慮の事故死を遂げたことによって、残念ながらリリースがペンディングになっていた。しかし、彼の死から2年後の71年、ローリング・ストーンズ自身のレーベル第一弾として発売される。このアルバムの登場はジャジューカを世界的に知らしめ、その後世界中から人びとを村に引き寄せることになる。


ブライアン・ジョーンズのアルバム。カヴァーの絵はハムリ。レコードジャケットを広げると、並んだジャジューカのミュージシャンたちの真ん中に金髪のブライアンが描かれている。

  2009年末にモロッコへ旅し現地で音楽に触れたことがきっかけで、30年以上聴き続けた電子音楽を捨てるようにアラブ諸国の音楽にどっぷりと浸かっていった私に、友人はこのアルバムを教えてくれた。チャルメラに似た高い音を出すダブル・リードの木管楽器‘ライタ(ガイタ/Ghaitaともいう)のヒリヒリとした直線的な音と両面にヤギ革を張った木製のタイコ‘ティベル’がつくる原始的なリズムはとてもパワフルで、いきなり私の心を、いや、脳を直撃した。
 何度も何度もループさせて聴きかえす。出会いから約2ヶ月間、毎晩このアルバムをかけ続けた。窓から差し込む朝日の中でふと気がつくと、いつも私は居間のスピーカー前で倒れていた。私を2ヶ月間もベッドで寝かせてくれなかったジャジューカ! 周囲の心配をよそに、私はこの不思議な力を持った音に心をつかまれ、ジャジューカの世界にのめり込んでいったのだ。

 この小さな村の局所的な音楽が世界に知られる最初のキッカケは、ジャジューカ出身の母を持つモロッコ人画家モハメッド・ハムリが、カナダ人アーティストのブライオン・ガイシンを村に連れて行った1950年代初頭まで遡る。
 ガイシンが村へ行く前に、実は彼はボウルズと一緒にこの地域のとある町の祭りで、偶然この音楽に出会っている。その時彼はこの音楽を一生聴き続けたいと思ったという。しかし、それがハムリの村の音楽だったとは、実際に村で耳にするまでは知らなかった。
  ジャジューカにすっかり魅了されていたガイシンは54年ハムリと一緒に「1001 Nights Restaurant」をタンジェ(タンジール)に開き、村のミュージシャンたちを15人交代で呼び寄せ店で2週間ずつ演奏させ、次々と西洋のオーディエンスに紹介していった。そうすることによって、同時にハムリは、戦後とても貧しかった村のミュージシャンたちの生活をサポートした。
 タンジェに住みハムリやガイシンと交流があったアメリカ人作家のウィリアム・バロウズが村を訪れることは自然な流れだった。カットアップの手法で書かれた彼の小説『The Soft Machine』(61年)の中でジャジューカの音楽を思わせる‘Pan God of Panic piping’という言葉を使い、ガイシンの作品『The Dreamachine』が登場するバロウズのショートフィルム『Towers Open Fire』(64年)ではサウンドトラックにジャジューカを起用している。
 こうして、ガイシンやバロウズを通して、ジャジューカはビート・ジェネレーションと共振し、深く関わっていった。
 そして、ガイシンとハムリが先述のブライアン・ジョーンズを村に連れて行く。60年代を通じて、ティモシー・リアリー、ミック・ジャガー他、73年には、フリージャズの巨匠のひとり、オーネット・コールマンが村に滞在し、マスターズ(ザ・マスター・ミュージシャンズ・オブ・ジャジューカ)とセッション。この曲「Midnight Sunrise」は76年に発売されたアルバム『Dancing in Your Head』に収録されている。
 また、80年代には、ついにザ・マスター・ミュージシャンズ・オブ・ジャジューカは3ヶ月間の長いヨーロッパ・ツアーに出た。
 このようなユニークなバックグラウンドを持つ彼らは、国内よりむしろ海外でより知られた存在になっていく。

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 ガイシン、バロウズ、ブライアンたちと同じようにジャジューカの生演奏を現地で体験できるというフェスティヴァルが、ザ・マスター・ミュージシャンズ・オブ・ジャジューカと20年来彼らのマネージャー/プロデューサーを務めるフランス在住のアイルランド人、フランク・リンによってはじめられた。
 ジャジューカの音楽に“Brahim Jones Joujouka Very Stoned”という曲もあるほど彼らに敬愛されているブライアン・ジョーンズの村訪問40周年を記念して、村で行われた「The Master Musicians of Joujouka Brian Jones 40th Anniversary Festival 2008」は、ブライアンの元ガールフレンド、アニータ・パレンバーグも参加し大成功を収めた。それ以来、世界限定50人の3日間フェスティヴァル「The Master Musicians of Joujouka Festival」として、毎年6月に村で開催されている。
 このフェスティヴァルによって、年1回、村のミュージシャンたちは確実な収入をひと週末で保障され、これはハーベスト(収穫)のようになった。そのお金は、食糧や村の学校に教科書を購入したり、村を何ヶ月か維持するために使われる。このフェスティヴァルには毎年、大学教授、作家、音楽ライター、ミュージシャン、アーティスト、フォトグラファー、学生などなど、ジャジューカ音楽へ様々な入り口から辿りついたファンたちが世界各国から集まっている。
 実は、現在はもうひとつ、バシール・アッタール率いるThe Master Musicians of Jajouka(ジャジューカのスペルがJaで始まり、その後にLed by Bachir Attarなどと彼の名が続く)が対立して存在するのだが、このフェスティヴァルは実際にずっと村に住んでいるThe Master Musicians of Joujouka(ジャジューカのスペルがJoではじまる)のもので、彼らはスーフィー音楽家たちとして村にしっかりと根づき、人びとに尊敬され、今日も子供たちにジャジューカの音楽を教え続けている。このマスターズを率いるのは、村のコミュニティの中で選ばれたリーダー、アハメッド・エル・アターで、彼はミュージシャンたちのリーダーであり、部族のリーダーでもあるのだ。
 私が2012年から足を運んでいるこのフェスティヴァルの参加者たちは、タンジェから電車で約1時間半行ったところにあるクサール・エル・ケビールという駅に集合する。そこで用意されたタクシーに分乗し約20分、伝説のジャジューカ村へ着く。実はジャジューカはいくつかの村が集まるこの地域の名前でもあり、伝説の音楽が残るこの村そのものの名前でもある。そのジャジューカ村はそんなに山奥に位置するのでもなく、主要道路から斜めに入る山道を車で3分ほど上っていったところにある。村に行こうと試みて辿りつけなかったファンが日本に少なからずいるのは、単に村を示す標識のないこの山道を見つけられなかったからかもしれない。
 しかし、比較的大きな町のそばに位置しながら、電気と携帯のアンテナが同時に設置されてまだ10年くらい。舗装されて2年も経っていない山道は村の途中で突然途切れ、あとはウチワサボテンが茂る足場の悪いオレンジがかった砂利道がずっと続く。村にはモスク、小学校があり、そして、村に点在する井戸が村人の水源になっている。それを運ぶのはロバの仕事で、ポリタンクに入った水を背負ったロバがのんびりと歩いていく。


ジャジューカ村。向かって左にある角柱の塔はモスク。

  こののどかな村は、15世紀末に村に辿り着き生涯をここで過ごしたスーフィー(イスラーム神秘主義)の聖者・シィディ・アハメッド・シェイクのサンクチュアリーがあり、人びとの巡礼の地でもある。この聖者はここの音楽には治癒の力があると感じ、平穏、心の病気の治療、平和と調和を促進する精神的な目的として彼らに曲を書き、音楽を治癒のツールとして使った。村のミュージシャンたちは彼からバラカ(恩寵)、精神的なパワーをもらい、スーフィーである彼らが演奏することによってバラカはライタ自身の中に入り、したがってライタはバラカを持っているとされ、楽器で患者に軽く触れることで治癒することもできるという。この治癒の音楽はフェスティバルでは演奏されないのだが、約500年前から今日も続く聖者が起源の音楽が存在し、ジャジューカ全体にはバラカがかかっているとされるのだ。
 巡礼の地ではあるが、ここはいわゆるガイドブックに載る様な外国人向けの観光地ではない。小さなキオスクが2軒と地元の人たちが集う(彼らはカフェと呼んでいる)場所があるだけで、当然ホテルのような宿泊施設などない。フェスティヴァルの間、参加者たちはそれぞれマスターズの家にホームステイする。つまり、マスターズのコミュニティに入り彼らと一緒に音楽漬けの濃厚な3日間を過ごすのだ。
 今年の参加者は約40名。その2割は私を含めリピーターだ。日本人は全部で5名、その他、ガイシンの「ドリームマシーン」をジャジューカの生演奏で体験しようと、大きな「ドリームマシーン」のレプリカを担いで来たカナダの若者もいた。結局壊れていて使い物にならず、「The most Dreamachine experienceだったのにー!」という彼の悲痛な叫びとともに実験は失敗に終わった。
 村にはマスターたちがいつも集まる場所が村の広場から少し先に行ったところにある。ここがフェスの会場で、半分テントで覆われ片側が開いた半野外のその場所には赤い絨毯が敷いてあり、前方にはリフ山脈の美しい緑の山並みが目線と同じ位置に見える。普段も彼らはここに集いおしゃべりをしたり演奏したりして過ごす。マスターたちに憧れる子供たちはこのような環境の中で、マスターたちから音楽を教わる。


昼間のセッション。音楽に合わせて踊る村の少年たち。


バイオリンが入る昼間のセッション。

 フェスティヴァルではもちろんアンプもスピーカーも通っていないマスターズの生の音を昼夜聴き続ける。タイムテーブルもなく、マスターズの周りで参加者たちはゆったりとしたジャジューカ時間を過ごす。昼間に演奏される音楽はジベルという山の生活や民族的なテーマを歌った伝統的な民謡が主で、宗教的なものや恋心を歌ったラヴソングもあり、バイオリン、ダラブッカ(ゴブレット形太鼓)、ティベル、ベンディール(枠太鼓)、リラ(笛)などで演奏される。その他、ブゥジュルードの音楽のリラ・バージョンや「Brahim Jones Joujouka Very Stoned」のようにゲストが来た時に作られた比較的新しい曲も存在する。
 マスターズの数人が楽器を手にして音を出しはじめると、他のマスターたちも楽器を持って集まってくる。私は2回目だからもちろんわかるが、村のおじさんたちも私服のマスターズに交じっているので、楽器を持つまで誰がマスターかはっきりわからない。他の村人と全く変わらないこの男たちがひとたび楽器を持つとたちまちあの伝説のマスター・ミュージシャンズ・オブ・ジャジューカに変身する。今でも音楽だけで生活する彼らにとって音楽は生活の一部であり、演奏することがとても自然なのだ。


リラが中心の昼間のセッションで踊るマスター。

 そんな感じでゆるくはじまる1曲30分近くの音楽は、10分を過ぎたころからじょじょに盛り上がりグルーヴが出てくる。これでもか! とあおるようにじょじょにリズムも早くなり、ダラブッカを打つ手が腫れるのではないかと聴いている方が心配になるほどリズムも激しく音も大きくなって、「アイワ! アイワ!」(そうだ、そうだ! いいぞ!)の掛け声が飛ぶ。そんな掛け合いのコミュニケーションの中でグルーヴが生まれるのだと感じる。マスターズや村のおじさんたちに手を引かれ一緒に踊ったりしている中、ある者は散歩に行ったり、ある者はおしゃべりしたり――。こうして、地元の甘いミントティーでまったりしながらとても自由で贅沢な1日がゆっくりと過ぎていくのだ。


会場のテントからリフ山脈を眺める。

 マスターズの妻たちが会場の裏手にある家で作る新鮮な地元野菜をふんだんに使った家庭的なモロッコ料理、タジン、クスクス、サラダ、スープなどどれも優しい味でとても美味しい。モロッコは6回目だが、やはり私にとってジャジューカでの食事が一番美味しい。朝食は各自宿泊先の家庭でいただき、昼食と夕食は会場でみんな一緒に食べる。しかし、妻たちは一切表に出てこない。女の子供たちまでも入ってこないのだ。そんなジャジューカの女性たちにも実は彼女たちの音楽があるのだが、フェスティヴァルでは聞くチャンスはない。


北アフリカの伝統料理のひとつ、クスクス。


地元野菜のサラダ。

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 この時期の昼間は日差しが強く暑いジャジューカも夜になると涼しくなる。辺りもすっかり暗くなりテントに裸電球がいくつか灯る中、遅い夕食をとる。食事が終わり少ししてから夜0時頃、ブゥジュルード音楽の演奏のため準備がはじめられる。この音楽は、既述した木管楽器ライタとタイコのティベルのみというシンプルな楽器編成で演奏され歌はない。
 昼間は私服でいるマスターズは全員、この演奏のために一変して黄色のターバンを頭に巻き、カラフルなボンボンが付いた茶色の分厚い生地の正装ジュラバに着替え、向かって右側にティベル奏者が4人、その横から左側に7人のライタ奏者が、横一列に並んだオレンジ色のパイプ椅子に座る。
 演奏がはじまる前は期待でいつも緊張する。自分の目の前にあのザ・マスター・ミュージシャンズ・オブ・ジャジューカが勢ぞろいしているのだ! と、夢のような現実をもう一度自分に言い聞かせる。これからブゥジュルード伝説の音楽が目の前ではじまるのだ!   
 横一列に揃ったマスターズは数分間みなそれぞれライタで少し音を出した後、みんなの準備が整ったタイミングを見計らって、リードのライタ奏者がちょっとしたメロディでスタートの合図を出す。そのとたん、他の6本のライタと大小4台のティベルが続き、いきなり演奏がはじまる。そして、待ったなしの音のローラーコースターに乗った私たちはディープな世界へと連れていかれるのだ。
 ジャジューカをCDやレコードで聴くと、残念ながら何本ものライタ音は一本の大きな束になって平たくなってしまう。当たり前のことだが、ボリュームを上げればその束は大きくなりうるさくなる。しかし、生の演奏を目を閉じて聴くと、各ライタの直線的な音は一本一本きちんと分かれていて、それらがそれぞれ一直線状に額から飛び込んでそのまま脳をまっすぐ突き抜ける。今どこのライタの直線が脳を突き抜けたかがわかり、それはとても立体的で、耳で聴いているというより、他の感覚を使って音を捉えているとしか思えない。ライタ音は信じられないくらいにパワフルな音を出す。ところが、もの凄い大きさの音にもかかわらず、とても澄んでいて美しくまったくうるさくないのだ。
 循環呼吸で演奏するライタ奏者たちは向かって左にドローン、真ん中にメロディ、右にリードと三つのセクションに分かれ、ヒリヒリとした直線的なライタの高音が上をすべるように走る。その下を二台の小さいティベルが高速で回転するようなリズムを刻み、二台の大きいティベルが地に響く低音の力強いリズムでしっかりとテンポをキープしていく。そして、今度はティベルの真正面で目を閉じてみると、それぞれのタイコが生み出す複雑かつ立体的で跳ねるようなリズムがライタ音の前にググッと出る。ライタの前に立つかティベルの前に立つかで、また聞こえ方が変わる。


ライタを演奏するマスターズ。

 中央に座っているリードのライタ奏者が他のライタ奏者を目で伺いながら、次の曲に入る合図らしきメロディを出す。曲を移行させるのはティベルではなくリードのライタなのだ。リードのライタ奏者の合図に従い、他のライタ奏者たちが続く。それと同時にティベル奏者たちがリズムを変え、一瞬にして曲が変わる。曲は次の曲へとシームレスに変わり、一回のセッションに5〜6曲演奏される音のジャーニーはすべるようにノンストップで続いていく。
「現地で実際に体験しないとこの音楽の本当の凄さはわからないよなぁ......ガイシンやブライアンがハマったのがわかる......」なんて遠い思考の中でぼんやりと思うのだが、次々と押し寄せるライタの線の嵐にすぐにかき消されてしまう。そのうち、ライタのパワフルな音とティベルの原始的なリズムはさらにパワーを増し、私の思考を完全に破壊していく。私は目を閉じたまま意識の向こう側へ、意識を超えた感覚だけの世界へ深く入っていく。弾むようなティベルのリズムと待ったなしに次から次へとすべるように走り抜けるライタが織りなすグルーヴの中で、私の脳と身体は自由自在に音の世界を泳いでいく。


ライタを演奏するドローン・セクションのマスターズ。

 音のローラーコースターがどんどん奥に進んでいき、観客がうねるようなグルーヴにのみ込まれ興奮も最高潮に達しはじめたころ、急に電気が消え、テント前の芝の真ん中で火が燃え上がる。火は見る見るうちに真っ暗な空に向かって大きくなっていく。子供たちや村人たちも集まっている中、建物の横で隠れるようにみている村の女性たちの姿が炎で照らし出される。みんなが大きく燃え盛る焚火に釘づけになっていると、突然、黒いヤギの毛皮をまとい麦わら帽子をかぶった伝説のブゥジュルードがオリーブの枝を両手に持ち現れる。暗闇に立ちのぼる原始的な火をバックに、ブゥジュルードは狂乱したように踊る。オレンジ色の荒々しい炎に激しく揺れるブゥジュルードの黒いシルエットが重なる。


焚き火の前で踊るブゥジュルード。

 アイーシャに変装した3人の少年たちも現れ、腰を振りながら乱舞する。私たちも押し寄せるグルーヴの中に身をゆだね、踊る、踊る、踊る。音に操られるように全身が激しく動いていく。自分がどこの誰かなんて関係ない、今がいつなのかもどうでもいい。この音を全身に浴びて裸になった自由な精神があることだけで十分なのだ。


マスターズとブゥジュルード。

  最後の一音がバンッと大きく鳴り、音旅の終わりを告げる。パワフルな音の刺激とうねるグルーヴの大きな波にのみ込まれて、私は完全に圧倒されていた。大きな拍手が沸き起こる中で、私は「アズィーム ジッダン!」(とても素晴らしい!)と叫び、村人も何か叫びながらマスターズを称える。やがて拍手が止むと、辺りはいつもののどかな村の夜の顔に戻る。ぼわ~んとなった私の耳に人びとの話し声と虫の音がぼんやり聞こえてくる。夜露で湿った絨毯や自分の服の重たい感触に気づく。そして、腕時計をのぞいてみる。
 夜0時くらいにはじまった演奏が終わったのは夜中2時半過ぎだった。私たちは約2時間半の間、ノンストップでぶっ飛ばされ続けたのだった。息つく暇もないくらいに「もの凄かった!」としか言えないくらいもの凄かった......! としか言えない......。そして、マスターズの信じがたいタフさにもただただ感服するのだ。その凄すぎた世界からしばし出られずまだ余韻を引き摺って座っていると、あっという間に私服に着替えた私たちの宿泊先のマスター、ティベル奏者のムスタファが、テント前の芝から私たちを目で呼ぶ。そして、ついさっきまで2時間半休みなくティベルを叩き続けていた彼と一緒に真っ暗なオフロードを、彼の家までトボトボと15分くらい歩いて帰る。そして、寝るのは毎晩夜中の3時過ぎ。この生活が3日続く。

 繁栄や豊穣のための祭りや儀式で演奏されてきたこの音楽は、ブゥジュルードを踊らせる、つまり生粋のダンス・ミュージックであり、ダンス・ミュージックの源泉、そして、本物のトランス・ミュージックなのだと感じる。この音楽は耳で「聴く」のではなく、全身で「体験」する音楽なのだ。
 ふだん私は淋しいような切ないようなメロディを持つ曲を聴くとネガティヴな思い出とくっ付いて悲しい気持ちになることがある。私はメロディに自分の感情をコントロールされるのがあまり好きではない。記憶という時間軸に縛られているようで鬱陶しく、感情にわざとらしく訴えかけてくるようなおせっかいなメロディの音楽に心地良さをあまり感じない。
 しかし、ブゥジュルードの音楽は、感情に訴えかけてくるようなメロディを持っていない。この音楽は、「感情」の向こう側の時間軸を外れた「今」だけが連続する精神にダイレクトに届くような気がするのだ。だからこそ、この音楽は私の精神を自由にさせ、精神が自由になるからとても気持ちいいのかもしれない。そして、時間軸に縛られていないからこそ、この音楽は千年以上経った今でも常に新しく、どこの時代で切り取っても、ジャジューカの音楽は永遠に「今」の音楽なのだ。

 現在この村で音楽を守り続けているのは、ブライアンが村に来た時まだ11歳だったリーダーのアハメッド・エル・アター率いる最大で19人、普段は10〜12人のミュージシャンたちである。その他にもミュージシャンになるだろうと思われる10代半ばの少年が何人かいて、また、20代の少年たちも地域にいるが、マスターズの基準に達するにはまだまだ時間がかかるようだ。
 大きなセレモニーでは大きなグループで演奏し、比較的小さなセレモニーでは4~5人が2~3のグループに分かれ交代で演奏することも可能で、地元の生活のすべての宗教的な機会、大きな地域では、割礼、結婚式などのセレモニー、地元の公式なセレモニー、そして、ロイヤル・セレモニーで演奏する。
 昔ジャジューカのマスターたちはある王朝のスルターン(君主)に音楽を気に入られ、長い間に渡り援助を受けながら専属の音楽家として、セレモニーや軍の一部として戦場へ行き演奏していたこともあった。しかし1912年、モロッコがヨーロッパ列強の保護領になりスルターンからの援助が打ち切られた。
 過去には65人いたこともあったというザ・マスター・ミュージシャン・オブ・ジャジューカは、村がスペイン領だったときに兵士としてスペインへ内戦及び第二次世界大戦に連れて行かれた者たち、モロッコの近代化に伴い村を出て行った者たちなど......その他、時代のいろいろな困難を乗り越えて生き残ってきた。
 世界が目まぐるしく変化していく中で、伝統を継続させることはとても難しい。ここモロッコのジャジューカも例外ではない。
 マスターになるのは職人のようなシステムで、マスターたちについて訓練して訓練して、その後ティベル奏者なら半ドラマーになって、ライタ奏者なら半ライタ奏者になって、パンを取りに行ったり店に飲み物を買いに行ったりと、日々のマスターズのタスクをこなしながら一人前になっていく。そして、まず何よりも第一に音楽のために全てを犠牲にできるほどジャジューカの音楽を十分に愛していなければならない。しかし、全員が最終的にマスターになれるわけではない。マスターズの一員になるには、彼らに受け入れられ永遠に行動をともにし、仲間として仲良くやらなければならない。この音楽は集合体として連結しながら演奏されることからもわかるように、彼らは仲間同士の信頼と強い絆が必要なのだ。
 マスターになるのは決して強制ではない。だからこそ、子供たちや若者たちがジャジューカの音楽に魅力を感じ、この音楽の素晴らしさを理解し、そして、「マスターになりたい」と自発的に思うことが大切だ。そのために、マスターズは子供たちや若者たちが尊敬し憧れる存在であること、また音楽家として音楽で生活ができることを示し、伝統を継続させる大切さを自らみせることが必要なのだ。そうでなければ、若者たちは村を出てタンジェの工場に働きに行ってしまうだろう。しかし、フェスティヴァルでリズムに乗って激しく楽しそうに踊る子供たちをみると、この子たちの身体の中には確実にジャジューカの音楽の血が流れていることがわかる。どうかこの子供たちが大きくなったらマスターズになってジャジューカの伝統を担って欲しい、そして、どうかこの素晴らしい音楽が絶えることなくいつまでも続いて欲しいと切実に願う。

 2011年には、ザ・マスター・ミュージシャンズ・オブ・ジャジューカはイギリスの野外音楽フェスティヴァル「グラストンベリー・フェスティヴァル」に出演。メインステージであるピラミッド・ステージにてオープニングを飾った。演奏していることが日常で自然な彼らはステージ以外の場所でも何度も演奏していた。それを聴きつけたクスリでぶっ飛んだ連中がマスターズの周りに集まってくる。そして、エレクトロニックのダンス・ミュージックで踊るように、この古代からのダンス・ミュージックで踊るのだった。

 今年6月初旬には、イギリスのDJ・エロル・アルカンも出演したイタリア・ローマのVilla Mediciで開催された「Villa Aperta 2013 IV edition」に招かれ、ダンス・ミュージックのオーディエンスからも喝采を浴びた。

 そして、今年2月6日DOMMUNEで配信された「21世紀中東音楽TV2 ジャジューカNOW!!」でサラーム海上氏と一緒に、今まで日本では詳しく明かされていなかったジャジューカについて語り、トークの最後に2012年のフェスティヴァルで録音してきたブゥジュルードの音源をスタジオの電気を消し暗闇から放送。視聴者は延べ2万5千人を超えた。

 現在のザ・マスター・ミュージシャンズ・オブ・ジャジューカはジャジューカの伝統的な音楽スタイルを忠実に守りながらも、ダンス・ミュージックという入り口から新しいオーディエンスを魅了し始めているようだ。ビート・ジェネレーションやブライアンとの出会いがそうだったように、ジャジューカにとってまた新しい何かがはじまろうとしているのかもしれない。

 精神の音楽を演奏し続ける素朴なマスターズに心打たれ、その純粋な音に自分の魂をすっかり裸にされた。私の音楽観や人生観までも変えてしまったジャジューカに、私は来年もまた行く。

赤塚りえ子

ザ・マスター・ミュージシャンズ・オブ・ジャジューカ公式サイト
https://www.joujouka.org/

ザ・マスター・ミュージシャンズ・オブ・ジャジューカ・フェスティバル 2014
日程:2014年6月20日~22日
フェスティヴァルの申し込みはこちらから
https://www.joujouka.org/the-festival/more-about-the-festival-and-booking/

ディスコグラフィー
『Joujouka Black Eyes』(1995年/Sub Rosa)

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『Boujeloud』(2006年/Sub Rosa)

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vol.52:NYサマータイム・ブルース - ele-king

 夏、NYの野外活動は拡大する。サマーコンサート、サマーフィルムが毎日何処かで開催される。夏のショーは、ビッグネームでもインディ・バンドでも、フリーで野外ということも多いが、先週までのNYは天候が不安定で、コニーアイランドのチープトリックも(最高!)、リバーロックスのジェネレーショナルも、サマースクリーンも雨模様だったが、今週に入ると、マーサ&ザ・ヴァンデラスさながらヒート・ウェイヴが押し寄せ日中は98°F(=37℃)超え! 週末はみんなビーチに出かけ、夜からようやく外に出はじめる。普段ビーチに行かない著者も、先週はロングアイランドに行って、水に浸ってきた。そのままボードゲームにはまり、帰りの電車のなかまで続ける有様......


野外映画を観ている人たち。

 NYの夏の、野外映画も素晴らしい。ブライアント・パーク、イースト・リバー・パーク、ハドソン・リバーパークなどの公園で上映、日没になると人が集まりだす。知らない人たちが一同に同じ映画を見るのは可笑しいが、大体は、映画は関係なく飲んだり食べたりのんびり状態。なかには折り畳みいす持参で徹底的に楽しむ上級者もいる。子供向け、ファミリー向け、公園によって映画は違うが、『L・マガジン』が、毎夏ブルックリン、グリーンポイントのマカレンパークで開催するサマースクリーンが、インディ音楽ファンの心をついている。映画の前には、いまNYでホットなニュー・バンドがプレイするし、キュレーションはNYのアンダーグラウンド・ブッキングを代表するトッド・P。彼には去年、ブルックリンのインディ・シーンについてのインタビューしているので、未読の方はどうぞ

 参考までにサマースクリーン、今年2013年のラインナップ:

Wednesday, July 10
映画:キャント・ハードリー・ウェイト
音楽:SILENT BARN presents: Jeffrey Lewis and the Sunny Skies、Weed Hounds、Ganjatronics

Wednesday, July 17
映画:ピーウィーの大冒険
音楽:JMC AGGREGATE presents: Oberhofer, Lodro and Bueno

Wednesday, July 24
映画:ザ・クラフト
音楽:285 KENT AVE + AD HOC present: La Misma, Potty Mouth, Divorce Money (Dustin of Beach Fossils, Ren of Herzog Rising, Alex of Dream Diary)

Wednesday, July 31
映画:グーニーズ
音楽:DEATH BY AUDIO + ENTERTAINMENT 4 EVERY 1 present: Hector's Pets, The Numerators, Juniper Rising

Wednesday, August 7
映画:スピード
音楽:SHEA STADIUM presents: Hubble (member of The Men, Zs and Pygmy Shrews), GDFX (member of Liturgy, Man Forever and Guardian Alien)

Wednesday, August 14
映画:オーディエンス・ピック(オーディエンスの投票で映画が決まる)
音楽:MARKET HOTEL presents: Aa (aka Big A Little A), Amen Dunes

 トッド・Pのウェブ・サイトにもリンクが張られている、DIYブッカーたちがバンドをピックする。バンドはまだ若く日本ではほとんど知られていないが、このなかでは、Aa(ビッグエー・リトルエー)が大御所。彼らはライトニング・ボルトやライアーズあたりと良くプレイしている。映画もバンドも偏ってはいるが、このラインナップには少しチージー(良い意味で)な、現在のブルックリンが表されていると思う。ただ、最近のブルックリンは選択肢が多すぎて、結局どれにも行かないという人が増えている(著者の周辺情報)。
 たしかに、インターネットで音楽も聴け映像も見れると、バンドを知った気になってしまう。著者の場合、音楽業界周辺からの口コミや、普段の何気ない会話から生まれるサプライズに託しているが、ライヴに行きたいと思わせるバンド、それをオーガナイズするブッカーがやはり大事だ。そこで、DIYブッカーとしては少し規模が大きくなるが、NYとサンフランシスコにオフィスを持つパナシェがある。パナシェは、その名があるというだけで「見に行こう」と思える数少ないブッカーで、何十年も同じスタンスでいる。彼らがスペシャルでいれる理由は、所属バンドの質と、パナシェだったらという信頼、パナシェ・チームが考える人とのつながり。
 そこで、代表のミシェルに、パナシェ、NY、ブッキング他、彼女が興味のあることまで、ランダムに語ってもらった。彼女のパーソナリティにも注目してほしい。

ミシェル (パナシェ・ブッキング)インタヴュー

取材に応えてくれたパナシェ・ブッキングのミシェルさん。
取材に応えてくれたパナシェ・ブッキングのミシェルさん。

自己紹介をお願いします。NYの音楽業界で働いてどれくらいになるのでしょうか。

ミシェル(M):私はミシェル・ケーブルです。北アメリカのおよそ120バンドのブッキングを扱うタレント・エージェンシーのパナシェ・ブッキングを経営しています。オフィスはブルックリンとサンフランシスコにあり、音楽業界で働いて15年になります。パナシェはファンジンとしてはじまり、私は地元のカリフォルニア、ユリイカのプロモーターになり、1年で約100本のショーをブックしました。最終的に私が尊敬するアーティストのツアーをブッキングすることになり、パナシェ・ブッキングを設立しました。

NYには何年、どこに住んでいますか? NYに住むこと、近所を紹介してください。

M:ブルックリンのグリーンポイントに6年住んでいます。マンハッタンに行くL線とクイーンズとサウスブルックリンに行くG線が走るふた駅へは数ブロックです。近辺はポーランドとイタリア人が住んでいて、家族的な雰囲気で、バーやレコード屋、ライヴハウスがたくさんある、ウィリアムスバーグにも面しています。このエリアは数年で、大きく変わりました。私はNYが好きで、6年経ったいまでも、毎日が映画のようにインスパイアされる瞬間でいっぱいです。その角に何があるか、普通の人びとに驚かされたりと予想がつきません。人は都市の脈で、24時間エネルギーを感じます。ここで強く支持のあるコミュニティを発見し、素晴らしいコラボレーションに繋がって行きました。

いまパナシェでブックしているメインのバンドは?

M:タイ・シーガル、ジ・オーシーズ、マック・デマルコ、ザ・メン、ブリーチド、クール・キース、DJジョナサン・トゥビン、ミカル・クロニンなどです。

どれぐらいの割合でショーに行きますか? 最近で面白かったショーは? 人びとは昔に比べて音楽を見に出かけていると思いますか?

M:時期やツアー時もよりますが、週に2、3回。最近の良かったショーは、NYのリンカンセンターでの、$100を賞金としたダンス・コンテスト、DJジョナサン・トゥビン・ソウル・クラップ&ダンス・オフです。R&Bシンガーのヤング・ジェシーがオープニングで、観客が、7インチのソウル・レコードをヘッドフォンで聴く、初の無音ディスコ・ソウル・クラップでした。歴史的な会場のリンカン・センターなので、老若男女が音楽に合わせてお尻を振っていました。ヘッドフォンをとったら、人が音のないリズムで踊っているのでかなり面白かったです。ライヴ音楽はもちろん、私はダンスとふたつの世界を繋げるのが好きなので、人びとのつながりを強くするこういうイヴェントをもっとやりたいです。人は、まだよく出かけていると思いますが、大多数の人は、小さなインディショーに行くより、フェスティヴァルなどの大きなショーに行くのを好むと思います。

NYで好きな会場はありますか?

M:ブルックリンのディス・バィ・オーディオはまだホームを感じます。200人ぐらい収容できるウィリアムスバーグの真んなかにあるDIYクラブで、壁がカラフルなアートワークで覆われていて、スタッフも家族みたいです。この地上げ地域で、生き残っている数少ないアンダーグラウンド会場で、いつでも良いショーがあると信頼出来るし、音設備も上々で、毎回ショーのレコーディングをしています。他の会場では、ブルックリン・ボウル、マーキュリー・ラウンジ、ユニオン・プールなどです。

どのようにパナシェでブックするバンドを見つけるのですか?

M:大体は、他のバンドを通してか、一緒に働いている人からの推薦です。たまにCMJ、SXSWなどの国際フェスティバルで発見することもあります。

前と比べて、今年のNYの音楽シーンはどう変わっていますか? 注目の会場があれば教えてください。

M:NYのDIYやアンダーグラウンドの会場は閉まったり、立ち退きを強要され、リーズナブルな場所に引っ越しています。いろんな新しい場所ができていますが、NYは大きいので、まだ自分が楽しんで仕事ができる会場があると感じます。

情報を交換したりなど、音楽業界の人と遊んだりしますか?

M:NYの良いところは、アートや音楽において、刺激を受ける人たちに囲まれていることです。回転ドアのように、入れ替わり人がやってきて、Eメールで話していた人に簡単に会え、関係を発展させたり、コラボレートするには良いところです。たくさんのことがはじまっては終わり、いつでも素晴らしいアイディアが生まれています。私は、レーベル、ブッカー、PRの友だちがたくさんいるし、NYに住んでいるバンド、ザ・メン、ティーンガール・ファンタジー、マーニー・ステーン、マック・デマルコ、ジュリアナ・バーウィック、ジョナサン・トゥビンなどと仕事をしているので、NYに住むことはエージェンシーの軌道を早めてくれます。

過去にDMBQ、あふりらんぽなどをブックしていましたが、日本の音楽シーンはどう見ていますか? 新しい日本のバンドでブックしたいバンドはいますか?

M:エージェンシーをはじめたとき、半分が日本のバンドでした。サンフランシスコに住んでいたときに、DMBQ、 あふりらんぽ、ワツシ・ゾンビ、キング・ブラザーズ、ハイドロ・グル、ルインズなどの日本のバンドに会いました。DMBQは、9~10年前のSXSWで、関係を発展させ、自分でニッチェなブッキングの世界を作り、日本のサイケやノイズ・バンドを北アメリカに連れてきました。日本にはDMBQのツアーで2回行き、ある日本のバンドの北アメリカでのツアー・マネージャーもしました。いまはDMBQ、キング・ブラザーズ、そして少年ナイフやバッファロー・ドーターと仕事をしています。

最近、著者が発見する面白いバンド(ソフト・ムーン、ソニー・アンド・ザ・サンセッツ、リトル・ウィング)は、西海岸のバンドが多く、NYは少ないのですが、どう思いますか?

M:ザ・メン、ジュリアンナ・バーウィック、マーニー・ステーンなど、NYにもまだまだ良いアーティストやバンドがいますよ。私は、そのなかの最高のバンドと仕事できることを幸運に思っています。いま、パナシェに所属するバンドは、タイ・シーガル、オーシーズ、ホワイト・フェンスなど、西海岸のバンドが多いです。そこは、明らかにエキサイティングなことが起こっていると思えますが、NYは面白いバンドが来るまでの、凪状態にあると思います。しばらくのあいだは、オーディエンスをインスパイアできる面白く楽しいイベントをキュレートしようと思ってます。

パナシェのこれからの予定を教えてください。音楽以外の事柄や付け加える事があれば是非お願いします。

M:パナシェはあっという間に大きくなりましたが、これからも、オーガニックに行きたいと思います。選ぶバンドは特別で、量より質に集中しています。LAにオフィスを構えたり、オーストラリア、中国、日本、南アメリカなど、海外でのブッキングも考えています。パナシェがはじめた、ブルーズ・クルーズ・フェスティヴァルなどのフェスティヴァルも、もっとキュレートしていきたいです。その他、何人かのミュージシャンの管理もはじめました。アートショーをキュレートしたり、音楽業界代表として、海外のスピーキング・ツアーに参加したり、NYUなどの大学で講義をホストしたりもしています。
 音楽以外では、1年に1回トロピカルなビーチを見つけるようにしています。旅は、私にとって別の情熱なので、音楽に関係なく、最低でも1年に1回は休暇を取るようにしています。次は、この冬にジョシュア・ツリーに行く予定です。
 もうひとつ付け加えたいのは、何年か前にNYで、悲劇の車の事故で亡くなってしまった、DMBQと少年ナイフのドラマーで、私の最愛の友だち、チャイナへ。彼女は、私が見たなかで、最高の素晴らしいドラマーで、最高に美しく、親切で、ゴージャスで、知り合いになれたことを光栄に思っています。チャイナ、あなたがいなくて寂しいです。

 パナシェ・ブッキング:www.panacherock.com

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