「OTO」と一致するもの

vol.5 『Hotline Miami』 - ele-king

 みなさんこんにちは。一年は早いもので、もう年末です。海外ゲーム市場も10月~12月はホリデー・シーズンといって、その年の目玉を中心に、数多くのゲームが集中的にリリースされる時期です。当然ゲーマーとしてもいまは一年でいちばん遊びまくる時期。それもあってこれから数回は新作を連続で紹介していくことになりそうです。

 今回ご紹介するのは10月にPCゲームとして発売された『Hotline Miami』。知り合いに薦められて遊んでみたのですが、これがすごく良かった。ゲームプレイ、物語、ビジュアルや音楽ともに文句なしで、今年遊んだなかでも屈指の満足度でした。ただ暴力表現が激しい作品なので、そういうのが苦手な人は注意です。

 この『Hotline Miami』は区分としては前回ご紹介した『Fez』と同じくインディーズのゲームなのですが、『Fez』がいわばインディーズ内におけるメジャーな立ち位置なのに対し、本作はインディーズ内においてもマイナーな存在と言えるでしょう。かくいう自分も本作を開発した〈Dennaton Games〉なんて知らなかったし、同スタジオの中心人物のひとり、“Cactus”ことJonatan Söderström氏のことももちろん知りませんでした。

  Cactusはスウェーデンで活動するゲーム・クリエイター。猛烈な多作ぶりで知られており、その数なんと40作以上! とはいえ、それらには一般的な意味での作り込みは皆無で、とにかくワン・アイディアのプリミティヴなゲーム・デザインをそのまますばやく形にすることを信条にしているのだとか。彼の公式HPを訪れると、荒削りのドットと極彩色で形成されたゲームの数々に触れることができます。


Cactusの過去作の映像。後の『Hotline Miami』につながるセンスを感じさせる。

 もっともこれまでの知名度はインディーズ・ゲーム界でも知る人ぞ知るという感じで、大舞台に出てくることはなかったようです。しかし今回の『Hotline Miami』の開発では、かつて上記映像にもある『Keyboard Drumset Fucking Werewolf 』をともに作ったDennis Wedin氏と合流し、〈Dennaton Games〉を設立。パブリッシャーにDevolver Digitalを据えて、満を持しての商業デビューを飾ったのです。

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■現代に蘇った暴力ゲーム

 そんな経緯から生まれた『Hotline Miami』は、これまでの下積みの厚さを感じさせるすばらしい出来栄えです。とくに過去作で多々見られた極彩色のエフェクトと偏執的な作風が、「80年代風サイコスリラー」というコンセプトに結実しており、その明快さが全体の完成度の高さにつながっていると言えます。今回はそれをさらに暴力表現、ゲームプレイ、物語の3点に噛み砕いて見ていきましょう。

 ゲームのタイプとしては8ビット・スタイルの見下ろし型のアクション・ゲームで、ひたすら敵を倒していくだけのシンプルなもの。この部分だけ抜き出して見れば、凡百のレトロ調インディーズ・ゲームと大差ありません。しかしながら血出まくり・惨すぎ・殺しまくりな猛烈なヴァイオレンス表現は近年見ない異質なもので、さらに眩いネオンやゆらゆら揺れるエフェクト、それにハイテンションな音楽が加わると、その体験はまさにサイコ或いはドラッギーという形容詞で言い表す以外にない強烈なものとなります。

ゲーム序盤の様子。ハイスピードで展開されるゲームに血とネオンと音の洪水。

 このような作風を見て真っ先に思い出すのが、かつて〈Rockstar Games〉が開発した『Grand Theft Auto: Vice City』か、あるいは『Manhunt』という作品。とくにタイトルからして物騒な『Manhunt』はスナッフ・フィルムの都市伝説をゲーム化した作品で、残虐な方法で敵を殺せば殺すほど高得点が得られるという狂った内容。シチュエーションから映像表現、ゲーム性まで『Hotline Miami』が影響を受けていることは明らかです。


『Manhunt』より。いままさに人を狩らんとするところ。ここから先はグロ過ぎるのでお見せできません!

 少し話が逸れますが、この手の作品は暴力ゲームと呼ばれ、ひと昔前までは少数ながらつねに存在していたジャンルです。しかし発売されるたびに世界各国で発禁処分になったり、ゲームは犯罪を助長する云々の論争の槍玉に挙げられたりと、なにかと物議をかもすジャンルでもありました。

 ここにはゲーム表現の限界や、超えてはならない倫理の壁といった命題がつねにあり、単なる愉快犯的な作品もあれば(大半はそれなんだけど)問題提起的な側面を備えた作品も存在して、独特の熱さがあったのです。ただ近年はそういった従来の事情とは別に、元々のニッチさが開発規模の巨大化の割に合わなくなってきたという商売上の問題から、廃れてきてしまっているように思えます。

 〈Rockstar〉もいまでこそ落ち着いた感がありますが、かつては『Manhunt』にしろ『Grand Theft Auto IV』以前の同シリーズにしろ、容赦ないセクシャル&ヴァイオレンス表現の常習犯だったのです。ただ〈Rockstar〉の場合はそんな暴力表現のなかに、いまの作風にも見られるセンスの良さが共存していて、それが独特の魅力やブランド性をかたち作っていました。

 『Hotline Miami』はそんな途絶えつつある文脈の上に立っている作品です。パッと見こそ荒削りの8ビット調ですが、それでも過剰な暴力は確かに表現されており、むしろ見た目の抽象性があらぬ想像力を掻き立てさえします。そして数々のエフェクトと音楽、80年代風で妙にハイ・テンションな雰囲気が織り成すインモラルなクールさは、まさにかつての〈Rockstar〉を引き継いでいると言えましょう。

■目くるめく殺しのルーティン・ワーク

 暴力ゲームと呼ばれるものは、実際のところそのセンセーショナルさに頼ってゲーム性をおざなりにしてしまったり、暴力表現の必然性の証明、ゲーム・プレイとの一致という部分で問題を抱えることが多いです。しかし『Hotline Miami』はその命題に、たしかな完成度と巧妙なトリックで応えています。

 本作のゲーム・ルールについて改めて説明すると、これは建物内にいる敵を倒していくアクション・ゲームで、プレイヤーは敵の落とした近接武器や銃器をとっかえひっかえしながら殲滅を目指します。具体的な様子は前項の映像にあるとおりで、幕間の日常シーンを含めても1ステージ3分に満たない、非常にハイ・スピードでインスタントなゲーム性が特徴です。

 ただしそれはノー・ミスでクリアできればの話であって、よっぽど慣れた人でもないかぎり、まずゲーム・オーヴァーになりまくります。なにせ敵の攻撃はすべて一撃死。反応もはやいし、複数人固まっているのが普通なので、何も考えずに突っ込めば間違いなく死ぬし、考えてもやっぱり死ぬ。


殺っては殺られてまた殺って・・・

 なので、プレイヤーは幾度となくゲーム・オーヴァーになりながら敵の配置を覚え、パターンを構築してクリアを目指すことになります。こういうゲームを一般的には”覚えゲー”と言いますが、クリア時の達成感とゲーム・オーヴァーの連続によるストレスとのさじ加減が難しいゲーム・システムでもあります。

 しかし本作はチェック・ポイントの感覚が絶妙で、且つやられても本当に一瞬、0.5秒ぐらいでやり直せるのがうまいストレス緩和になっていますね。敵を倒すのが爽快なのも、リトライのモチヴェーションになってくる。

 また敵を倒すというシンプルな目的ながら、発見されずに近づくというステルス要素もあれば、見つかった後どう捌くかというアクション要素もあり、そのアクションも近接武器を使うか銃器を使うかで事情はまったく変わってきます。そして何よりこれらがハイ・スピードなゲーム・プレイのなかで渾然一体となっているのがとてもおもしろい。

 ステルスとアクションのハイブリット作品というのはいまではなんら珍しいものではありません。ただ僕がいままで遊んできた作品はどれも、敵に見つかるまではステルス、見つかった後はずっとアクションという具合に、両者の境界とゲーム・プレイの差異は明確に線引きされていました。

 しかし『Hotline Miami』にはそのゲーム・プレイがシフトする境界というものがありません。と言うよりも目まぐるしく変わりまくる。映像を見ていただくとわかりますが、敵への接近から攻撃までが本当に一瞬の出来ごとで、ステルスしている1秒後には殴り合いになり得るし、さらにその1秒後には倒した敵の銃を奪って遠方の敵を狙い撃っていることも普通にあるのです。これらが継ぎ目なくシームレス移行しつづけていくゲームというものは、いままでにない体験でした。

 当然、操作中はなかなかの忙しさになるので、パターン化が重要になってきます。敵を殺しまくっては殺されて、より最適なパターンを導き出すため、さらに殺して殺されまくる。殺されまくってイライラが募ろうとも、それさえも糧にして再び挑む。それだけの中毒性が本作にはあるのです。

 そしてこの何度もリトライをする、せざるを得ないゲーム・メカニックが、じつは本作の物語、ひいては暴力表現の正当化につながる巧妙なトリックにもなっているのです。

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■『Hotline Miami』はプレイヤーを道づれにする

 なぜ何度繰り返してでも殺しをつづけるのか、その果てに何を求めているのか、またなぜ何度も繰り返すことができるのか。これが『Hotline Miami』の物語における、重要なテーマになっています。

 本作の物語開始時の設定は、ガール・フレンドを殺された主人公が復讐のため留守番電話の謎のメッセージに従いながら、暗黒街の殲滅を行っていくというもの。しかし程なくして殺されたというガール・フレンドとの出会いの場面が出てきて(上記プレイ動画の後半)設定に矛盾を感じさせたり、中盤以降は日常パートで頻繁に幻覚が出てくるなど混迷の色を濃くしていきます。


ステージ前後に挟まれる日常パートはストーリーを読み解く重要な場面だ

 その末にどのような結末をたどるのかは、ネタバレになるのでここでは書くことはできません。しかしたしかに言えることは、主人公が終始抱いていた復讐願望に、何度リトライしてでもクリアしたいプレイヤーの願望が重ね合わせられている節があるということですね。

 要はプレイヤーは主人公の共犯者に仕立て上げらてしまうわけです。本作は主人公のことを最終的に哀れで空虚な存在として描いている。それはつまり、クリアを妄執するプレイヤーのことをも同様に断罪しているのです。否定しようにも、何度もリトライを重ね、その度に暴力が振るわれることを是認し、その末にクリアしたという事実が言い逃れを許さない。お前もこの主人公と同じ、妄執に生きる哀れな存在だ、このゲームの暴力に意味があろうがなかろうが、ここまでクリアした時点でお前に意見する資格はないんだ! という具合です。

 容赦なくプレイヤーの努力を踏みにじるこの結末は、かつての『BioShock』でAndrew Ryanに対峙する場面、あるいはもっと古い作品なら『たけしの挑戦状』でクリア後に「こんなげーむにまじになっちゃってどうするの」と言われることに匹敵するメタな手のひら返しと言えましょう。

 それでも、いやそれだからこそ、僕はこの作品の物語が好きなんです。プレイヤー自身を当事者として巻き込んでしまうこと。これはゲームでしか成立しないストーリー・テリングのひとつです。それも丁寧なお膳立てをしてプレイヤーに能動的に没入させるのではなく、プレイヤーの無意識に働きかけて気づいたときには取り込まれてしまっていた、という状況を作る。これは相当至難の技のはず。僕も本作の仕掛けに気づいたときには、これは一本取られたと、痛快な気分になりました。

■まとめ

 傑作です。恐らく暴力表現とゲーム・プレイがひとつでもわずかに欠けていたら、本作の物語は成立しなかったことでしょう。それは他ふたつの要素を個々に見ていった場合でも同じです。暴力表現、ゲーム・プレイ、物語の3本柱がそれぞれを絶妙に補完し合い、それが”80年代風サイコスリラー”としての総体を抜群の完成度でかたち作っています。

 いまさらですが唯一欠点らしきものを挙げれば、ステージ・クリア後に手に入るマスクや武器の性能がイマイチ差別化できていないことが挙げられますが、そんなの些細な枝葉の要素に過ぎません。根幹のデザインが非常に優れているため、小技に頼らなくても十分すぎるほどおもしろい。この点は小技に頼りすぎで根幹が空っぽな最近のメジャー・ゲームはぜひ見習ってほしいところ。

 過激な表現の数々から、人をものすごく選ぶ作品なのは否定できませんが、最近の主流のゲームにはないアナーキーさを求めている人、または単純に完成度の高いゲームを求めている人に強くお薦め。このレヴューでひとりでも多くの人に興味を持っていただければ幸いです。



「REPUBLIC」 - ele-king

 2012年12月1日。日本のオーディオ・ヴィジュアル・イヴェントのパイオニア「REPUBLIC」が遂に終焉を迎える。書籍「映像作家100人」とのコラボレーションなどでも多くの話題を呼んだ本イヴェントが初回開催された2007年5月から5年の月日を経て、多くの映像作家や、ミュージシャン、DJ、VJといったアーテイストに「音と映像」の新しい関係を提示してきた。そんな「REPUBLIC」も10回目で遂に最終回となりフィナーレを迎える。

 そんな、最終回となる今回は、もっともフラットで自由な表現に溢れており、ホームグランドである「WOMB」のDAY TIMEでの開催となる。

 出演陣も豪華で、「bonobos」や「OGRE YOU ASSHOLE」、「ハイスノナサ」、「ATATA」などのバンド勢に、今年最も話題を呼んだMCでもある「田我流」、ネクストブレイクを期待される「転校生」、巷で話題のガールズラッパーのニューカマー「泉まくら」などのフレッシュな面々も揃える。
 さらに、sasakure.UK、TeddyLoid、okadada、DJ WILDPARTYなどネットから新しい音楽カルチャーを発信する面々に、骨太のビートを生み出すトラックメーカーの「Fragment」、「Himuro Yoshiteru」、「SUNNOVA」に、「dot i/o (a.k.a. mito from clammbon)」、「aus」といったジャパニーズ・エレクトロニカの雄と「DUB-Russell」、「metome」、「Avec Avec」、「Seiho」などの新世代のエレクトロニカ・シーン牽引するアーテイストが一挙に渋谷に集結する。

 また、映像面も「伊藤ガビン」や「原田大三郎」などのレジェンドとともにVimeoでの映像が海外でも高い評価を受ける「yusukeshibata + daiheishibata」、「吉田恭之」、「Kezzardrix」。そして、日本を代表するメデイア・アーテイストの「exonemo」と「FREEDOM」で一躍世にその名を知らしめた「神風動画」に気鋭のデザイン・チームの「TYMOTE」、「FREEDOMMUNE」や「TOWER RECORDOMMUNE」のヴィジュアルを手がけた「yasudatakahiro」など新旧のTOPヴィジュアル・クリエイターが最後の宴に映像で花を添える。

 そして、その豪華面々がこの日にしか見れない極上のオーディオヴィジュアル・ショーケースを準備。また、前回好評を博した各フロアの映像演出もさらにスケールアップ。プロジェクターと液晶モニターを大量に特設で用意し、「WOMB」の全フロアを余すところなく映像で包み込む。もちろん長時間にわたる開催にあたってのホスピタリティとしてFOODもご用意。


2012年12/01(Sat)
REPUBLIC VOL.10~THE FINAL~
@WOMB
13:30-21:30(予定)
当日¥4,500 / 前売り¥3,500 ※ドリンク代別途

【SOUND ACT× VJ】
bonobos × TYMOTE
OGRE YOU ASSHOLE × TBA
okadada × exonemo with 渋家 (VideoBomber set)
ジェイムス下地 × 神風動画
dot i/o (a.k.a. mito from clammbon) × Kezzardrix
Daizaburo Harada -Audio Visual Set-
田我流 × スタジオ石×SNEEK PIXX
sasakure.UK × まさたかP
ATATA ×伊藤ガビン+hysysk+matt fargo
aus × TAKCOM
ハイスイノナサ × 大西景太
DUB-Russell×(yusukeshibata+daiheishibata)
転校生 × 大橋史(metromoon)
TeddyLoid × COTOBUKI
Avec Avec × 超常現象 [水野健一郎. 水野貴信 (神風動画). 安達亨 (AC部). 板倉俊介 (AC部)]
DJ WILDPARTY × SUPERPOSITION
Fragment × ogaooooo
shhhhh × 最後の手段
泉まくら × 大島智子
Inner Science × Takuma Nakata
Yaporigami × yasudatakahiro
Hiroaki OBA - Machine Live - × らくださん
metome × 吉田恭之
Himuro Yoshiteru × maxilla
Seiho (Day Tripeer Records, +MUS, Sugar's Campaign)× 子犬+UKYO Inaba
munnrai(TYMOTE/ALT) × leno
hiroyuki arakawa × Shinji Inamoto
Free Babyronia × NOISE ELEMENT
Licaxxx × DEJAMAIS

【SOUND ACT】
SECRET GUEST LIVE!!!
SUNNOVA
MASTERLINK
i-sakurai with passione Team B
specialswitch
Narifumi Ueno ( Ourhouse / Arabesque )
neonao(futago traxx)
M'OSAWA
SHIGAMIKI
MAYU
motoki
iYAMA(konnekt, MESS)

【VJ】
BENZNE by VMTT
VideoNiks
blok m
アサヒ
VJ PLUM

【映像装飾】
S.E.E.D

【プロジェクション コーディネート】
岸本智也

【FOOD】
浅草橋天才算数塾
錦糸町izakaya渦

【ORGANAIZED BY】
ishizawa(sonicjam Inc.)

2012/12/01(SAT)渋谷WOMBにて終焉を迎える「映像と音の共和国」を見逃すな!!

https://republic.jpn.org/

Photodisco - ele-king

聴いていて気持ちの良い、最近の楽曲を選びました。
よろしくお願いします。

■2012/11/12 CASSETTE TAPE - EP "BETA" Release!!!
https://diskunion.net/portal/ct/detail/IND11111

■Profile
https://p-vine.jp/artists/photodisco

■Photodisco Official Website
https://www.photodisco.net/

■YouTube
https://www.youtube.com/user/Photodisco

最近、よく聴いてる音楽10選


1
Madalyn Merkey - Scent - Siren

2
How To Dress Well - Total Loss - Ocean Floor For Everything

3
Teams - Dxys Xff - Stunts

4
Wishmountain - Tesco - Dairy Milk

5
Toro Y Moi - June 2009 - Talamak (First Version)

6
V.A. (100% SILK) - The SIlk Road

7
KINK GONG - XINJIANG

8
Southern Shores - New World - Sankasa

9
Piano Overlord - Aninha Mission - En Sveno

10
ICE CHOIR - AFAR - Teletrips

interview with Evade - ele-king

E王
Evade
Destroy & Dream

Kitchen

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 11月下旬に発売予定のレコード・カタログ、『テクノ・ディフィニティヴ 1963−2013』を野田努と共に書き進めていて、最後の章に設けられた「PRESENT」があと1枚書ければ終わりというところで僕は迷っていた。カナダのピュリティ・リングにするか、マカオのイーヴェイドにするか。香港が中国へと返還されたタイミングで法律が変わることを怖れた弁護士や医者はほとんどがヴァンクーヴァーに移住したという話は聞いたことがあるけれど(いまやホンクーヴァーと呼ばれている)、続いてポルトガルからマカオが返還された際にモントリオールに人が動いたという話は聞いたことがないから、カナダとマカオには何ひとつ接点はないだろうし、どちらもいわゆる4ADタイプのサウンドだという以外、共通点はない。この比較は難しい。強いていえばどちらがよりテクノかなーということを考えるだけである。どちらにしたかは...発売日を待て(なんて)。

 前号のエレキングに載せるつもりで『デストロイ&ドリーム』をリリースしたばかりのイーヴェイドにインタヴューを申し込み、さっそく質問を送った直後に尖閣問題が浮上。東京都民が4度に渡って選んだ男が中国との戦争も辞さずなどと快気炎を上げてしまったためか、中国での暴動は官製デモというやつだったらしいけれど、肝心のイーヴェイドからもまったく返事が来なくなってしまった。チン↑ポムに聞いたところでは上海ビエンナーレにも日本の芸術家はほとんどが欠席だったそうで(林くんは夜の街で大変なことに...!)、政治と芸術が絡み合う楽しい季節の到来かと思いきや、質問に対して真剣に考えていたら遅くなってしまったということで日中問題を超えて届けられたインタヴューを以下にお送りいたしましょう。ヴォーカルと歌詞を担当するソニア・カ・イアン・ラオ、ギターのブランドン・L、プログラム担当のフェイ・チョイの3人がそれぞれに答えてくれました。


ソニア

"インサイド/アウトサイド"は、自分たちの運命をコントロールできない人たちについて書きました。時々、私たちはなぜこの世界に存在しているのかわかなくなります。たくさんの疑問に取り囲まれていて、たくさんの状況が私たちの心や価値を苦しめます。

マカオではあなた方は突然変異? それとも同好の音楽仲間はけっこういるんですか? マカオの音楽状況も併せて教えてください。

ブランドン:マカオは人口50万の小さな都市なので、大きな音楽シーンはありません。ほとんどの人は広東のポップ・ミュージックを演奏していて、ほんのわずかな人たちがエレクトロニックやインディを演奏しています。でも、幸運な事に状況はここ数年良くなってきていて、たくさんの若者たちが音楽で新しい事に挑戦し、発展しているところです。将来は、より大きな音楽シーンができるだろうと信じています。

ソニア:私見ではマカオのミュージック・シーンは多様だといえます。しかし、それは音楽の砂漠ともいえます。多様な理由はたくさんのポップス、ロック、ポスト・ロック、メタルロック、ジャズなどのミュージシャンがいるからです。そして、音楽の砂漠という意味は、お金になる音楽しか作らなかったり演奏しないミュージシャンが多く、そのような人たちは政府の助成金を利用することが可能なのです(マカオの政府はアートのグループや、ミュージシャン、ドラマ制作などに助成金を出しています)。助成金のせいで自分の作品に自己満足してしまうアーティストたちがいて、私はそのような状況に不安を覚えます。

マカオが中国に返還されて13年。マカオでは日常的にポルトガル文化と中国文化がせめぎあったりしているんでしょうか? 可能ならあなたがたの文化的バックボーンを教えて下さい。

ソニア:過去、マカオはとても平和な場所で、マカオの人たちはとても純粋でした。現在、マカオにはたくさんのカジノが建ち、たくさんの観光客が毎日訪れていますが、そのことによって私たちは平穏を失ってしまいました。さらにマカオの人たちは物の考え方も変わってしまったようです。健康、家族、友情、愛とは対照的に、彼らはお金や地位がすべてに勝ると思っています。この社会が発展しているのか後退しているのか私にはわかりません。私は昔の平穏なマカオが好きでした。一方では、複雑になったマカオについて深く考えさせられることもたくさんあり、それは私の音楽にいろいろなアイデアを与えてくれます。もしマカオが昔のように平穏だったら、社会や世界の問題についておそらくはあまり考える事はなかったでしょう。

(注*外側から見ればマカオはいま、カジノができたりして様々なことが起きつつあり、「もっとも面白い街」といったようなことが言われているけれど、住んでいた人たちにとっては単に「面白い」では済まない変化だということが彼女の答えからは察せられる。東京都民が4度に渡って選んだ男が東京にカジノをつくろうとしているのは、彼が目の敵にしているパチンコ店を壊滅させ、ウソかホントか半島への送金を止めさせたいのが主な動機で、要するに人種差別が発想の根幹にはある。それは東京に「面白い」変化をもたらすだろうか)

8年前にイーヴェイドを結成したきっかけは? 〈4daz-le Records〉というのは、あなたたちのセルフ・レーベル?

ブランドン:最初はソニアと僕が同じバンドで演奏していました。2004年に僕らはダンス・ミュージックのパーティでフェイと出会い、お互いエレクトロニック・ミュージックを作りたかったので、イーヴェイドを結成しました。〈4daz-le Records〉はマカオのエレクトロニック・ミュージック・レーベルで、有名なマカオのミュージシャン(Lobo lp)のレーベルです。僕たちのファーストEPは2009年に〈4daz-le Records〉からリリースされました。

ソニア:私たち3人の相性はぴったりです。みんな音楽が大好きで、音楽を作るのも大好きです。自分たちのやりたい事ができることをとてもラッキーだと思います。

ファーストEPに収録された"シーサイド"では「会社にいて、窒息しそう(In the company,I can't breath)」、"インサイド/アウトサイド"では「外に出たくない(I don't go outside)」「先のことは考えたくない(I don't see the future)」と、追い詰められて死にそうな人たちに思えるのですが、辛い毎日を送っているのですか?

ソニア:私が両方の曲の歌詞を書きました。"シーサイド"は、毎日、オフィスで働いている女性がいつか海辺に行って休暇を取りたいと思っていることを書きました。でも、実際には思っているだけで仕事のせいで海辺に行くことができなかかったのです。"インサイド/アウトサイド"は、自分たちの運命をコントロールできない人たちについて書きました。時々、私たちはなぜこの世界に存在しているのかわかなくなります。たくさんの疑問に取り囲まれていて、たくさんの状況が私たちの心や価値を苦しめます。私たちは自分たちの人生を理解するために「外側」へは行けなくて、ただ漠然と「内側」に留まっているのです。私は本を読んで、人生、死、魂、運命、UFO、昔の宇宙人、神秘的なことなどを調べるのが好きです。自分が書いた曲のどれかがリスナーにちょっと重いと思わせるのは、たぶんそのせいだと思います。

フェイ:僕の意見では、"イエス"と言えます。人生は難しいし、この社会にはうんざりすることがあります。もしこの街で生き延びたいのなら、自分の人生を意味のない仕事や教育に費やす必要があるでしょう...。しかし、悲しいことにそれが高水準な生活をもたらすわけではないのです。たとえ一生懸命働いたとしても。なぜなら、僕たちの街ではすべての物価が狂ったように高いからです。この社会に僕たちはゆっくりと殺されていくでしょう。でも、他に選択がないのです...。

「回避する」というバンド名は逃避的な気分を表していますか?

ブランドン:バンド名は僕がつけました。実のところ、この名前には特別な意味はなく、聴く人の解釈に任せています。

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フェイ

僕たちのサウンドを統一したかったし、「世界の終わり」についての物語を僕たちの考えや文化で語りたかったからです。だから僕たちの母国語である広東語を用いる事がベストな方法でした。

E王
Evade
Destroy & Dream

Kitchen

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自分たちで音楽を始める前はどんな音楽をよく聞いていましたか?

ブランドン:アンビエント、UKベース、シューゲイズなどです。フェネス、スロウダイヴ、ウールリッヒ・シュナウス、ソロウ、ディスクロージャーみたいな(注*ソロウはおそらくネオ・フォークのバンド、ディスクロージャーはUKガラージ)

ソニア:コクトー・ツインズ、ニーサ、オータム・グレイ・ソレイス、ビヨーク、RF&リリ・デ・ラ・モラ、マーゴ・グリアン、レイト・ナイト・アラムナイ、ピアーナ、サマンサ・ジェイムズ、キンブラ、マジー・スター、ファニー・フィンク、キャロライン、ザ・ポストマークス、ケレン・アン、テレポムジークなど(注*ニーサはスペインのポップ・デュオ、オータム・グレイ・ソレイスはアメリカのシューゲイザー、RF&リリ・デ・ラ・モラはライアン・フランチェスコーニが一度だけ組んだジョイント・プロジェクト、マーゴ・グリアンはアメリカのSSW、レイト・ナイト・アラムナイはアメリカのハウス・ユニット、ピアーナはたぶん、盛岡のIDM、サマンサ・ジェイムズもハウス、キンブラはオーストレイリアのロック、キャロラインはたぶん、J‐ポップ、ポストマークスはUSインディ・ロック、ケレン・アンはシャンソン、テレポムジークもフランスのダウンテンポ)。

フェイ:ブロンド・レッドヘッド、デヴィッチ、エリージャン・フィールズ、アスピーディストラフライ、コールドカット、DJクラッシュ、マッシヴ・アタック、ザ・バグ、ゴス−トラッド、クリプティック・マインズ、ブレイケイジ、DJマッド、AM444、サウンドプルーフ、サブモーション・オーケストラ、エイジアン・ダブ・ファウンデイション、スミス&マイティ、ベリアルなど(注*デヴィッチはアメリカのポスト・ロック、エリージャン・フィールズはアメリカのポップ・バンド、アスピーディストラフライはシンガポールのフォークトロニカで、イーヴェイド『デストロイ&ドリーム』をリリースした〈キッチン〉の主宰者、クリプティック・マインズ以下はイギリスのダブステップ、AM444はオランダと上海を行き来するトリップ・ホップ、エミカもイギリスのダブステップ、サウンドプルーフはニュージーランドのハウスでユニトーン・ハイファイの別名義、サブモーション・オーケストラは広義のダブステップ)

ギター・ロックとダブステップを等価に扱い、共存させようとするスタイルは意識的につくりあげたのですか? それとも自然にこうなった?

ブランドン:このスタイルは自然にできてきました。僕たちが新しいトラックを作るとき、最初は自由に演奏してみて、それからトラックのテーマに合うようにアレンジしています。特に僕たちにはルールがないのです。たぶん、あるトラックはアンビエント、ある曲はアコースティック、ある曲はピュアなダブステップのスタイル、またはドリーム・ポップという形になりますが、僕らはただトラックのテーマを決めているだけで、どんな音楽のスタイルも受け入れようと思います。

フェイ:僕もこのスタイルは自然にできてきたと思います。なぜなら、最初、僕たちはどんな種類の音楽を作りたいか良くわかっていなかったからです。だから個人的なテイストやコンセプトをただ合わせてみようとしました。僕たちの中の誰かはドリーム・ポップが好きで、また他のメンバーはシューゲイズが好きで、また他のメンバーはダンス・ミュージックが好きで...。だから僕たちはこの感覚で何か新しいものを作り出そうとしました。そしてそれが最終的にはあなたが聴いている僕たちの音楽になっているのです。

ダブやレゲエの影響は否定できないと思いますけど、好きなダブ・アルバムを1枚だけあげるとしたら?

フェイ:ハイ・トーンかな? 『アンダーグラウンド・ウォッブル』。

ファーストEPが2009年のリリースですから、ジェームズ・ブレイクの影響はないと思いますけど、彼の音楽性に共感はありますか?

フェイ:はい、僕はジェームス・ブレイクのミニマルなスタイルが好きです。彼らのライヴ・パフォーマンスはシンプルだけど、とてもカッコよくて、僕たちのライブパフォーマンスをシンプルにするための良いお手本になっています。

ブランドン:ジェームス・ブレイクの音楽はスゴいですね。彼は、ポスト・ダブステップ、ソウル、エクルペリメンタルなどたくさんのクールなジャンルをミックスして、彼自身のユニークなサウンドを作り出しています。昨年のデビュー・アルバムのほかにも、2010年にリリースされた"CMYK"というトラックは素晴らしかったです。とくに僕たちはUKエレクトロニック・ダンス・ミュージックとエクスペリメンタル・ミュージックの要素に感化されています

広東語で歌ったり、英語で歌ったりするのは、なぜそうしようと?

フェイ:僕たちは最初のEPでは広東語と英語の両方を使っていました。最初は特に明確な方向性を持っていなくて、あれは僕たちのサウンドとテクニックのテストのようなものだったのです。しかし、『デストロイ&ドリーム』ではソニアは広東語だけで歌っています。僕たちのサウンドを統一したかったし、「世界の終わり」についての物語を僕たちの考えや文化で語りたかったからです。だから僕たちの母国語である広東語を用いる事がベストな方法でした。

『デストロイ&ドリーム』がシンガポールの〈キッチン〉から出ることになった経緯を教えてください。

ブランドン:すべては2009年に始まりました。その年の3月にアスピーディストラフライとフリカのアジア・ツアーがあって、僕たちはマカオでサポートをやりました。その縁で、アスピーディストラフライのリックス・アングにファーストEPのマスタリングを頼みました。2010年には〈キッチン〉が僕たちの新作に興味を持ってくれて、それからまたいろいろあって、ようやく今年に入ってリリースされたんです。〈キッチン〉のリックスとエイプリルにはとても感謝しています。

『Destroy & Dream』はいわゆる前作よりもスキル・アップした状態で、完成度の高さを感じます。方向性には初めから迷いがなかったんですね?

フェイ:ありがとうございます! このアルバムでは最初からとてもクリアな方向性を持っていました。昔やったことのあることではなく、なにか新しくてユニークなものを作りたかったのです。前のEPみたいに「テスト」ではもうなく、僕たちの心の中にあるコンセプトがゴールだということに気がつきました。僕たちは心の中に、世界がどのようなものなのかとか、どのように終わるのかを想像した絵コンテがありました。あなたや僕の目の前で世界が崩壊し、破壊されるとき、どんな気持ちになるかということをサウンドを使って描写しようとしたのです。何もできなかったり、何も変えられないときの落胆の気持ちや、ただ死を待つか自殺するしかないときの気持ちなど。このアルバムを作り始める前は、マイクを使って映画や録音からサンプリングをして、自分たちのサウンド・ライブラリーを構築しました。これがこのアルバムの「トーン」を作り出す鍵になっていると思います。

ソニア:歌詞の点から言うと、『デストロイ&ドリーム』は解体と再生について書きました。最初から私たちはみんなこの方向性で固まっていました。このアルバムを聴くオーディエンスたちに人生、世界、宇宙との関係について考えてもらえたらいいなと思っています。

ジョン・ケージを思わせる具体音を頻繁にミックスするなど、主旋律が表現していることとは正反対のイメージを1曲のなかで表現しようとするのはなぜですか? 情報量の多い音楽にしたいということ? それともその方がメロディが引き立つと考えている? フロイトの考え方を表すには適しているように思えましたが。

ソニア:最初に私たちはメロディと歌詞を合わせます。なぜならば、私はいつも曲と歌詞を最初に書くからです。それからフェイとブランドンに曲のコンセプトを話して、フェイがミックスとアレンジをします。

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ブランドン

僕たちはフルタイムのミュージシャンではなく、みんな働いていて、だから実際にこのアルバムを完成させるための時間はあまりありませんでした。でも僕たちがやりたかったことは、細部まで気を配った良質なアルバム作りでした。だから時間の問題に打ち勝たなければいけなかったのです。その唯一の方法は睡眠時間を削ることでした...zzzzzzz

E王
Evade
Destroy & Dream

Kitchen

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『デストロイ&ドリーム』を仕上げるまでに最も大変だったことは?

フェイ:僕にとって一番挑戦しなければいけなかったことは時間です。僕たちはフルタイムのミュージシャンではなく、みんな働いていて、だから実際にこのアルバムを完成させるための時間はあまりありませんでした。でも僕たちがやりたかったことは、細部まで気を配った良質なアルバム作りでした。だから時間の問題に打ち勝たなければいけなかったのです。その唯一の方法は睡眠時間を削ることでした...zzzzzzz

ブランドン:僕にとって一番難しかった挑戦は、トラックを何度も調整することでした。トラックができあがるたびに、もう数日、時間をかければこのトラックはもっと良くなるのではないかと思いました。だから、何度も何度も細かく調整していました。

ソニア:私に取って一番難しかった挑戦は解体と再生といったテーマの歌詞を広東語で書くことでした。広東語には9つの音の高低があるので。

韓国のグーゴルプレックスとカナダのピュリティ・リングでは、どっちが気になりますか?

ブランドン;カナダのピュリティ・リング。

ソニア:カナダのピュリティ・リングに興味があります。

フェイ:両方。

クアラルンプールやジャカルタにもいいミュージシャンはけっこういると思いますけど、なぜ、リミックスは3曲とも日本のミュージシャンに依頼したんでしょう? とくにフィヨーネ(Fjordne)のリミックスはフリージャズのセンスを大胆に持ち込んでいて、イーヴェイドにはない雰囲気を出しているのは面白い広がりでした。

ブランドン:マカオに「ピントムジカ(Pintomusica)」 というCDショップがあって、素晴らしい日本のアルバムをたくさん売っているんです。〈プログレッシヴ・フォーム〉や〈ノーブル〉、〈スコーレ〉、〈フラウ〉などの日本のレーベルのアルバムは簡単に見つかります。そういった日本の素晴らしいミュージシャンたちの音楽を僕たちはずっと聴いていたので、日本のミュージシャンにリミックスをしてもらおうと決めました。フィヨーネの『ザ・セッティング・サン』 は素晴らしいアルバムで、彼のジャズからの影響やアコースティック・ピアノ、それからユニークなサウンドスケープを僕たちの新しいアルバムに持ち込むのは面白いと思いました。同じくサーフ(Serph)やオカモトノリアキもリミックスに誘いました。僕たちは彼らのアルバム『ハートストリングス』や『テレスコープ』が大好きだからです。彼らがリミックスをやってくれてとても嬉しかったです。

ソニア:それからフィヨーネのフリージャズは私たちが作リ出すことができないものなので、この曲はイーヴェイドの違う面を表しています。彼にはとても感謝しています!

東京でやったライヴは映像だけ観ましたけれど、暗くてノイジーで様子がよくわかりませんでした。演奏の手応えはありましたか? ちなみにいままでで、どこでやったライヴが最もいい感触を得られましたか?

ソニア:あの時、私たちはまだ『デストロイ&ドリーム』の制作中でした。だから、このパフォーマンスは『デストロイ&ドリーム』スタイルの初期段階のようなパフォーマンスでした。実際に暗くてノイジーな感じを表現したかったのです。

ブランドン:これは僕たちの日本での初ライヴでした。すべての準備やスタッフの人たちもプロフェッショナルでした。ハルカ・ナカムラ、kadan、ミヤウチ・ユリ、Ngatariそして Luis Nanookみたいな素晴らしいミュージシャンたちと同じステージをシェアできて、とても光栄でした。

24時間以内にLAかベルリンのどちらかに移住しなければならないとしたら、どちらを選びますか?

ブランドン:ベルリン。

ソニア:ベルリン。

フェイ:ベルリン。

『デストロイ&ドリーム』は「関係性(relationship)」がテーマだと聞きましたが、なぜそれをテーマにしようと思ったのですか?

ソニア:2009年に黙示録やUFOといった神秘的なことに興味を持つようになりました。人間の魂や生命、死などに。それらについて曲を作りたいと思ったのです。

いわゆる中国からの移民は中国人同士でソサエティを築き上げ、他の人種と交流を持たないと聞きます。あなた方はこうした習慣には反対だと考えていいのですか?

ブランドン:私たちは長年、マカオに住んでいるので、移民の人たちの実際の気持ちについてははっきりとはわかりません。自分たちのここでの経験から言うと、世界には異なる人たちや異なる人種いて、ここではそういった異なる文化が受け入れられています。

アルジャジーラのメリッサ・チャンが国外に追い出された件について意見があれば教えてください。アルジャジーラ・イングリッシュの北京支局が閉鎖されたことにも。この質問はスルーでも可です。

ソニア: メリッサ・チャンさんは素晴らしいジャーナリストだと思います。彼女が中国政府のダークサイドをリポートしこことで、人びとは考えや疑問を持ちはじめました。マカオや香港は幸運で、世界中のニュースや情報にケーブルテレビやチャンネルによって簡単に素早くアクセスできます。一方、これはわたしの個人的な好みですが、電気を生み出すために石油や原子力を使う国々は資源のリサイクルをしないのかとか、なぜ政府はUFOの存在を隠すのかとか、なぜケムトレイルやハープ計画があるのかといった他の問題にも興味を持っています。

歌詞を書く上で制限を感じたことはありますか?

ソニア:私の問題はひとつの曲にたくさんのアイデアを持ち込み過ぎることです。だからそのことに気をつけないと。

いま、具体的に「デストロイ」したいことは?

フェイ:法律、政府、社会のシステム。僕たちが必要なのものは"真の"自由です。(了)

TIMEWARP feat. BRAWTHER @eleven - ele-king

 ジョイ・オービソンやボディカ、あるいはジェイミーXXらUKベース・ミュージックの若手がハウス・ミュージックへとアプローチするなか、ラッシュ・アワーのような長年そのシーンをサポートしているレーベルが活気づいたり、シカゴの巨匠のひとり、シェ・ダミエが脚光を浴びたり、ブラック・ジャズ・コンソーティアムのセカンド・アルバムが時間をかけながらじわじわ広まったり、ディープ・ハウスらしく地味ながらも、ここ数年、ソウル/ジャズ・テイストのハウス・ミュージックが活気づいている(井上薫も新作を出したばかりですよね)。そんななかで、アレックス・フロム・トーキョー率いる「TIMEWARPクルー」がよりによって11月23日に夜にハウスの密会を企んでいる。
 今回は、ロンドンのパーティ・シーンを牽引し続ける「secretsundaze」をはじめ、各国のフェスティヴァルでオーディエンスを沸かせている期待の若き才能、ブラウザー(BRAWTHER)がゲストDJで初登場! 
 日本でのプレイは初となる彼ですが、盟友シェ・ダミエも認める古き良きディープ・ハウスをアップデイトさせたような作品、モダンかつトラディショナルなメロディを共存させたようなプレイから広がるサウンドスケープでオーディンスを魅了する。ファンキー&エクレクティックなアレックス・フロム・トーキョーによるロングセットもお聴き逃しなく!!
 VJもフロアに多数のスクリ-ンをセットし会場一面を異空間に彩ります。ラウンジも「TIMEWARP」フレンズのDJ陣に加え、JMCで活躍中のTomouyki YasudaとDJ Stockがグルーヴ感溢れる空間にエスコートしてくれることでしょう。ファンキーなアーバン・サウンド&ヴァイブスがParis・New York・ London・Tokyoを繋ぐ熱い一夜。ディープ&モダンなダンス・パーティにご期待下さい!

「TIMEWARP- feat. BRAWTHER -」
日時:2012年11月23日(金) 22:00~
会場:西麻布eleven
東京都港区西麻布1-10-11セソーラス西麻布B1/B2
https://go-to-eleven.com/
料金:3,500円 / 3,000円(w/f) /
1000円(first 50 people before 23:30)
★11月生まれの方は入場無料!
(※ドリンクチャージとして1000円頂戴します。
要写真付き身分証明書)

Guest DJ:
Brawther(The Secret Agency/Balance)

DJ:
Alex from Tokyo(Tokyo Black Star/Innervisions/Worldfamous NYC)
Ryo Watanabe(FACE/ESCAPE)
TR(:SYNTHESIZE)

VJ:
SATI. (HUEMM)、 KOCCI & VJ HAJIME

Lounge DJ:
CANA (MOON'S A BALLOON)
Alixkun(Konnekt)
T.B. Brothers
Tomoyuki Yasuda(JMC/WAVE MUSIC)
DJ Stock(WORLD SPIN/JMC)

Photo:
Kenjiro Abe

Food:
OSTERIA SCHUMACHER

https://go-to-eleven.com/schedule/detail/761/2012/11

Produced by :Synthesize inc.
https://www.synthesize-inc.com/

Supported by adidas originals
https://www.adidas.com/jp/originals/

Dum Dum Girls - ele-king

 名前を捨てた女。パンク・ロックに憧れ、イギー・ポップとラモーンズとヴァセリンズに徽章を借りて、カリフォルニアのリヴィング・ルームから世に現れた女。タイトなスカートにブラック・レザーをまとい、ファズの騒音とゴシックによる世界の暗転を好みながら、破れたストッキングを気にも留めずに、砕かれた愛を切々と歌うその女、ディー・ディーは、"ロード・ノウズ"でいま、神々しいまでのロック・バラードを歌う。男(ロック)への同一化願望や、母(保守)への反発といったライオット・ガール的なテーゼも、ここでは古くさいものに思える。ディー・ディーは、もっともっと遠い場所を仰ぎ見ているようだ。「ベイビー/これ以上、あなたを傷付けることはできない/神様なら知っているわ/私は自分の愛をずっと傷付けてきた/私の愛を」
 
 わたしはこの曲の感想を、もうロックなど聴いていないだろうと思っていた人とも共有した。それはとても久しぶりのことだった。流通環境的にも、単純に内容的にも、ポップ音楽ほど激しい変化にさらされつづけている文化も珍しいのかもしれない。もはや「特定のものが蒸し返される背景には、時代を支える無意識ではなくて個人的な動機が存在するだけだ」、橋元優歩が言うように。あるいはロックが自意識の容器になったと評されて20年以上経過しているが、別にいいではないか、それでも。ディー・ディーは、それこそごく個人的でしかない動機によって――この世界で生きることを引き受けようとするときに――ロックの緩衝を必要としているようにさえ見える。



 さて、このEP『エンド・オブ・デイズ』を何度か聴いてみて、良くも悪くも冒頭の"マイン・トゥナイト"と"アイ・ゴット・ナッシング"にどこか違和感を覚えたなら、あなたの直感は正しい。この2曲は前作、『オンリー・イン・ドリームス』のセッション時に生まれたもので、録音は2011年だ。既定のガレージ路線に沿って進む序盤の展開には、控えめに言っても、特筆すべき新鮮さはない。つづく"トゥリーズ・アンド・フラワーズ"の、輝くようなアンビエント・ギターで世界が一変するが、これはストロベリー・スウィッチブレイドが1983年にヒットさせたデビュー曲のカヴァー。母性の象徴としてか、「アイ・ヘイト・ザ・トゥリーズ/アンド・アイ・ヘイト・ザ・フラワーズ」というリリックをそのまま引き継ぎつつ、原曲に漂うある種の陽気さを取り払っている。地に根を張って、花に囲まれながらフォークを奏でることなどできない、とでも言うかのように。

 個人的なことを言えば、ダム・ダム・ガールズのレパートリーでは、アルバムに数曲だけ収録される、素直にポップで、センチメンタルで、狂おしいまでにロマンティックな曲を好いてきたが、その名も『オンリー・イン・ドリーム』(2011)のフォロー・アップにふさわしく、『エンド・オブ・デイズ』は、"トゥリーズ・アンド・フラワーズ"以降の3曲でドリーミーな時間をゆったりと過ごしている。同郷のガレージ・ポップ・デュオ、ベスト・コーストのセカンド『ジ・オンリー・プレイス』が演出していた、とろけるようなメロウ・アウトと共振するようでもあるが、あちらがミニマムな実人生に寄り添ったFMポップだったのに対し、本作の構えはもっと超然としている、啓示的なまでに。ホーリーでありながらドラッギーな傑作"ロード・ノウズ"のあと、EPをクローズするギター・ポップ"シーズン・イン・ヘル"は、バンドの結束とエナジーがまだ失われていないことを丁寧に補足している。


 彼女らはこの冬、ツアーを回っているが、その報告写真にしばし見とれた。そこに写されるのは、人生から逸脱しながらも、人生を引き受けて生きる女の姿である。単純なドロップアウトがアートにおける正義ならどんなに楽だろう。古いロック・スター・ライフへの同一化に誘惑されながら、そしてライオット・ガール史の現在地で引き裂かれながら、ディー・ディーは結局のところ、すべてを引き受けている。社会に含まれつつも真実に生きる逸脱者として、あるいはまた、夫を持つ一介の既婚者、妻として――。だからこそ『エンド・オブ・デイズ』は最高だ。つねにダブル・スタンダードを抱えてきたロック音楽の成熟と浄化、そして変わらぬ美しさを、ダム・ダム・ガールズは2012年に伝えている。

僕らがエレグラに行く理由 - ele-king

竹内:エレクトラグライド2012〉、いよいよ開催がせまって参りました。とりあえず、木津さんのお目当ては?

木津:今年で言うと、アンドリュー・ウェザオールとコード9の親父ズかな。

竹内:それは見た目的な話ですか?(笑)

木津:それも込みで(笑)。ウェザオールはヒゲ生やして圧倒的にセクシーになったから......。トゥナイトも超楽しみ。竹内くんは?

竹内:僕はフライング・ロータスです。あとは電気(グルーヴ)。

木津:おお! すごくいいエレグラ参加者だ! ちょっと先にそっちの話からしよう。そもそも、竹内くんはエレグラ初めて?

竹内:初めてです。というか、この規模の会場でダンス音楽を聴くこと自体、初めてです(笑)。

木津:そうか、じゃあ2009年の〈ワープ〉20周年のイベントのときも行ってないってことやんね?

竹内:あのときはさすがに盛り上がりを感じていて、記念コンピレーションを買って家で聴いていました(笑)。LCDの"ダフト・パンク・イズ・プレイング・アット・マイ・ハウス"を地で行っている人間なわけです。

木津:へええ! じゃあ、今年参加するのはどうして?

竹内:カジュアルに言うと、今年からライヴをわりと見るようになって、「ライヴっていいもんだなあ」と素直に思えるようになったから、くらいのものなんですけど(笑)。クラブ音楽って、「この曲がどうしても聴きたい」っていうような目的性からは離れているわけですよね。つながった時間のまとまりを享受するという。それがこの規模になったときにどうなるのか、単純に興味があります。

木津:なるほど。じゃあ僕の話をすると、エレグラには何回も行っておりまして、フジロックのときに発表があったんだけど、すんなり「お! 行こう」という感じで。いま関西に住んでいて、ある程度ダンス・ミュージック好きだったら、オールナイト自体が貴重なので。

竹内:そうなると、多少、政治性を帯びる可能性もある?

木津:うん、今年はやっぱり少しはね。でも、みんな基本的には楽しみたいだけですよ。今年も大阪でも開催するし、みんなすごく楽しみにしていると思う。

竹内:なるほど。僕のことを言うと、「地方の因縁から離れて、誰も自分を知らない空間に逃避したい」というのがあります。暗い(笑)。

木津:いやあ、好き勝手に楽しめばいいんですよ!(笑) 以前も書いたけど、僕のオールナイト体験で、いちばん強烈だったのがオウテカのライヴで。

竹内:あらためて教えてください。

木津:フロントがLFOで最高に盛り上がった後、電気が全部消えて、真っ暗闇のなかであのビートの応酬っていう。

竹内:おお(笑)。

木津:あれは凄まじかった。で、2005年のエレグラでオウテカがやったときは、大きい会場だからそこまで真っ暗にはできないんだけど、彼らのことを全然知らなかったひともけっこう衝撃を受けたと思う。

竹内:なるほど。

木津:この規模のイベントの醍醐味はそういうところなんじゃないかな。

竹内:未知との遭遇ということですか?

木津:うん。〈ソナー〉のときに、スクエアプッシャーが観てみたいという、クラブに行ったことのない2こ下の男子を連れて行ったんだけど、アフリカ・ハイテックをすごく好きになってた。

竹内:いい話ですねー。

木津:電気だけを目当てで来たひとが、コード9にやられる可能性だってあるだろうしね。

竹内:ところで、ゼロ年代の後半にエレグラは沈黙を強いられたわけですよね。内部的な事情はともかく、この期間になにか文化事情的な意味はあると思いますか?

木津:うーん。まあ理由はいろいろあるんだろうけど、ダンス・アクトに大物が目立たなくなったということはあるのかなあ。だって、いつまでもアンダーワールドに頼るのもねえ。

竹内:その話は重要な気がします。当時の現実的でシニカルな若者は、本当はダンス・ミュージックを聴きたくても、たぶん「こんな単純な4/4に乗れるか!」とか思っていたんじゃないでしょうか。まあ、僕の話ですけど(笑)。

木津:ほお。

竹内:そこでいうと、やはりダブステップは大きいのかも。

木津:ダンス・ミュージックの本質がアンダーグラウンドに潜ったってこと?

竹内:快楽が形骸化した一面はあるのでは、みたいな感じです。

木津:なるほど。

竹内:その反発はジューク/フットワークにまでもつれ込むのだと思っていて。ダンス・ミュージックが新しいステップを踏むには、ある種のアングラにならざるを得なかったのかなあ、みたいな。

木津:まあ、〈ワープ〉の第一世代が完全にクラシックになったタイミングでもあるよね。だから、今年はフライング・ロータスがいちばんの顔になっているのはいいことじゃない?

竹内:ですね。そこでいうと、今回フライング・ロータス(〈ワープ〉の新たな顔役)とコード9(〈ハイパーダブ〉代表)が来るのは大きい。ハドソン・モホークとルナイスが組んだトゥナイトもですね。

木津:フォー・テットも最近、かなりフロア・ミュージックになってるしねえ。

竹内:出所はエレクトロニカですもんね。それでいうと、ロータスはヒップホップですよ。やはり、どこかのタイミングでダンスへの再接近があったと。フォー・テットもブリアルとやっていますね。あれは凄まじかった。

木津:うん。わりと最近ライヴ観たときはかなりダンサブルだったよ。とまあ、今年は本当に「ダンス」のあり方が多様でいいと思う。

竹内:ですよね。これまでの話とまったく逆をたどれば、クラブのオリジナル世代からしたらダンスと呼びたくないようなものまで、もしかしたら入っているかもしれない。

木津:そっか。でも、DJクラッシュやDJケンタロウのようなベテランもいるし。

竹内:ですね。年長組で言うと、木津さんはアンドリュー・ウェザオール? ファック・ボタンズのセカンドで名前を聴きましたね。

木津:うん、ソロではロカビリーをやったりするんだけど、DJのときはしっかりハウスのときがけっこう多いかな。あとオールドスクールのエレクトロ。でも、新しい音もけっこうかけるのかなあ。

竹内:どうでしょうかね。僕はやっぱり、電気が観てみたい。ライヴの間くらい、馬鹿になるのが目標なので(笑)。

木津:はっはっは。このラインアップに電気がいるのは、けっこう面白いよね。ある意味、いちばん浮いてる。

竹内:ですよね。それだけ、信頼が厚いと?

木津:そうなのかな。いちばん、変な感じになりそうやけど(笑)。

竹内:楽しみです(笑)。あと、視覚を活かしたアーティストが何組かいますね。

木津:それで言うと、まずはアモン・トビンでしょう! 前作の『アイサム』のときのフィールド・レコーディングのコンセプトを、ライヴで具現化したものになる......らしい。この前のDVD作品もすごく評判だけど、ライヴだとパワー・アップするでしょう。これが観たいので、僕は大阪から幕張に行きます(笑)。映像ものはクリス・カニンガムのときもすごく盛り上がったけど、大きいイベントならではやね。スクエアプッシャーは〈ソナー〉のときにLEDヴィジョンを使ってたんだけど、今回はそれに加えてベースもプレイするとか。

竹内:ほお。それはフィジカルな。

木津:スクエアプッシャー最近、妙に元気やんね。ライヴに燃えてる。

竹内:オービタルは?

木津:僕は、2004年でいったん活動やめるっていうからその年の〈WIRE〉に観に行ったよ! 往復青春18きっぷで(笑)。

竹内:愛だ!(笑)

木津:だから、最近ふつうに再活動しててちょっと納得がいかない(笑)。でも、あの大らかなテクノは大バコに映えるでしょうな。

竹内:他のイベントとの差別化って、どんなところにあるんでしょう?

木津:エレグラは〈ワープ〉周辺がとくに好きなひとに訴えるような作りになっている気がするなー。いち時期、LCDとか!!!とかも出てたんだけど、そういう意味ではインディ・ロック好きにもちょっと寄ってるし。普段クラブ・ミュージックは聴かないけどフライング・ロータスは聴くってひともけっこういるんじゃない?

竹内:ですね。どんなプレイ・セットになるのかなあ。

木津:前回観たときは生ベースがあったりで、かなりグルーヴィーだった。

竹内:アルバムからいくと、また今回は違った雰囲気かもしれないですね。

木津:もうちょっとチルな感じなのかなあ。でも、そのときはドラゴンボールのコスプレで「カメハメハー!」って言ってたよ(笑)。

竹内:うわああ(笑)。

木津:いやいや、でも今回の顔なのは間違いないでしょう!

竹内:でしょう!

木津:でも、2ステージに分かれてこれだけアクトが揃ってると、ほんとにそれぞれ好きに楽しめそうやね。

竹内:ですね。「しばらくクラブから遠ざかってたけど、さすがに今回のエレグラは行くかなあ」なんて声も聞きました。

木津:おお、いいことですなあ。それは特定のアクト目当てで?

竹内:というより、ダンス・ミュージックに再燃の兆しを認めている感じかもしれません。

木津:お! でもたしかにそういう説得力のあるラインアップですよ。

竹内:どんと来いと(笑)! 「僕がエレグラに行った理由」を、みんなでぜひ語り合いましょう!

木津:そうやね。じゃあ、最後にお互いイチオシを挙げときましょうか。僕はウェザオールとコード9......としつこく言いたいところだけど、アモン・トビンとTNGHTで。

竹内:僕はいろいろあるけど、フォー・テットで。ゼロ年代インディ以降の代表格が見つけたダンス・ミュージックを生で聴いてみたい。彼のキャリアの軌跡って、いまの若いリスナーが通った道ともかなり近い気がするんですよね。

木津:うん、フォー・テットのいまのモードは、シーンのモードだと思うよ。それはともかく、飲まされすぎないようにしないと、僕はトイレが近いので......。〈ソナー〉のときも、ひたすら飲まされ続けたからなあー。

竹内:ははは、今回は各自楽しみましょう(笑)。

木津:そうやね(笑)。

竹内:願わくは、レポのことなんて気にしないで......。馬鹿になりましょう!(笑)


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〈ワープ〉の新世代を象徴するアンファン・テリブル、ハドソン・モホークが盟友ルナイスと組んだコラボレーション・プロジェクト、トゥナイトの5曲入りEP。それぞれのレーベル〈ワープ〉と〈ラッキーミー〉からリリースされた2012年作だ。ミニマルかつエクストリームなウォンキー良盤。

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『コズモグランマ』から2年。マシューデイヴィッドやマーティン、ライアット、ジェレマイア・ジェイなど、〈ブレインフィーダー〉レーベルにおける活動もますます興味深いものとなっているなかで発表され、自身が「神秘的事象、夢、眠り、子守唄のコラージュ」と呼ぶ本年重要作。

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https://www.electraglide.info/

Chart JET SET 2012.11.05 - ele-king

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Poolside - Pacific Standard Time (Poolside Sounds)
Future Classicからの『Do You Believe』が大ヒットとなったL.a.のニュー・ディスコ・デュオによるファースト・アルバム!!

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Ltj X-perienceによるカヴァーもヒットしたラテン・ソウル・クラシックを絶品メロウ・グルーヴに。プロモの時点で話題となっていた1曲が遂にリリース!

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Kindness - That's Alright (Female Energy)
説明不要の1st.アルバムから、彼のセンスを見せ付ける大傑作曲がカット!!B面のBbcライヴ・ヴァージョンは、さらにソリッドでクールな80'sファンク全開の必聴音源です。

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オージー・インディ・ディスコの牙城、Future Classicからの新提案。シドニーのエレクトロニカ・クリエイター、Flumeの初ヴァイナル・リリース!!ダウンロード・コード封入。

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2012年Sonarsound Tokyoで初来日を果たした大注目シンガー=Jesse Boykins lllと、ニューヨーク出身のMc/Dj/プロデューサーMelo-xのタッグ・アルバムが、Ninja Tuneよりリリース!

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セオ・パリッシュJAPANツアー決定 - ele-king

 古いやつだとお思いでしょうが、わたしは1NIGHT-1DJというスタイルが大好きである。気の合ったDJ同士が織りなすひと晩のプレイも悪くはないが、ひとりのDJとしてそのひと晩をどのように演出してくれるのか、前者のほうがその力量がハッキリと出る。もちろんそれには確かな技量、知識、経験、情熱、そして興行としての成否もあり、名の知れた箱でそれを許されるのはある意味「選ばれし者」だけが得ることのできる名誉と言っても過言ではないと思っている。

 わたしが2度めの東京生活をはじめた以降も心に残る名場面がいくつかあり、LOOPでのNORIさんの30時間セットを筆頭に、同じくLOOPでのDJ CHIDA君、マイクロオフィスでのMOODMAN、最近ではリキッドルームでのDJ NOBU君の7時間セットも記憶に新しい。

 とくに近年はお客さんも短時間で簡単に判断してしまう傾向が強く、ひと晩その人の叙事詩をじっくり愛でるといった遊び方が少し敬遠される向きがあり、こういった思い切った興行が少なくなったのもさびしいところだ。何百何千の人をフォローして140文字のタイムラインを眺めるのも結構だが、タマには大家の長編小説をじっくり腰を据えて読んでみてほしい! といったところでしょうか。

 さてさてそんなことを思っていた折も折、恵比寿に移って以降めでたく8周年を迎えたリキッドルームがまたまたやってくれます。前述のDJ NOBU君のOPEN - LASTを終えて以降、メインフロアのスピーカーを一新して初の「OPEN - LAST」に指名されたのは、やはりセオ・パリッシュでした。ご存知の方も多いとは思うが、セオはあのフロアにとてもよく似合う。「デトロイトのやんちゃ坊主」といった感じもすでに過去の話で、リキッドルームで見る彼の姿はすでに風格さえ漂う。

 余談だが12インチばかりでなくLPも多用する彼のスタイルがリキッドルームの新しいスピーカーでどのように響くのか? という個人的な楽しみもある。えっちゃんの粘土を使ったフライヤーも最高だ!!!

 ぜひぜひ皆さんお誘いあわせの上、セオ・パリッシュ一晩の叙事詩をじっくり楽しんで朝方ゾンビ顔で再会しましょう!!

五十嵐慎太郎


Theo Parrish Japan Tour 2012

■11.16(FRI) Fukuoka @Kieth Flack
DJ: Theo Parrish, DJ Saita(Back To Basic)
Groove Drops Lounge
DJ: Osaki, Shibata, Ikeda, MANTIS(3rd Stone)

open 19:00 - close 1:00
Advanced 3000yen
Door 3500yen

INFO: KIETH FLACK https://www.kiethflack.net
TEL 092-762-7733
福岡県福岡市中央区舞鶴1-8-28 マジックスクウェアビル 1F/2F

■11.17(SAT) Tokyo Ebisu @LIQUIDROOM
- BLACK EMPIRE feat.THEO PARRISH -

DJ: Theo Parrish(open-last set)

open/start: 23:00
Door 3500yen
With Flyer 3000yen

INFO: LIQUIDROOM http:/www.liquidroom.net
TEL 03-5464-0800
東京都渋谷区東3-16-6

20歳未満の方のご入場はお断り致します。年齢確認のため、顔写真付きの公的身分証明書をご持参ください。You must be 20 and over with photo ID.

■11.22(THU) Nagoya @Club Mago
- AUDI.-

Guest DJ: Theo Parrish
DJ: Sonic Weapon, Jaguar P
Lighting: Kool Kat

Advanced 3000yen
With Flyer 3500yen
Door 4000yen

INFO: Club Mago https://club-mago.co.jp
TEL 052-243-1818
名古屋市中区新栄2-1-9 雲竜フレックスビル西館B2F

■11.23(FRI/祝日) Akita @JAMHOUSE
- TIME&SPACE -

Guest DJ: Theo Parrish
DJ: SOU(codomoproduction), DOVE CREW

open/start 21:00
Door 3000yen
INFO: JAMHOUSE http:/www.jamhouse-akita.com
TEL 090-7796-9608
秋田県秋田市中通4-5-9

■11.24(SAT) Kobe @troopcafe
- Deep Sessions -

Special Guest: Theo Parrish
Act: Telly, Mituo Shiomi

open/start 23:00
With Flyer MB 3000yen with 1Drink
Door MB 3500yen with 1Drink

INFO: troopcafe https://troopcafe.tumblr.com
TEL 078-321-3130
兵庫県神戸市中央区北長狭通2-11-5

TOTAL TOUR INFO: AHB Production www.ahbproduction.com
TEL 06-6212-2587



Theo Parrish (Sound Signature)

デトロイトに拠点をおくプロデューサー、DJ。ワシントンDCに生まれ、年少期をシカゴで育つ。またその後カンザスシティー、Kansas City Art InstituteではSound Sculpture(音の彫刻)を専攻。1994年、デトロイトに移住。1997年、レ-ベルSound Signatureを立ち上げ、常に新しい発想と自由な表現で次々に作品を世に送り出す。現在Plastic People(London)にて毎月第一土曜日のレギュラーパーティーをもつ。

"Love of the music should be the driving force of any producer,performer or DJ. Everything else stems from that core, that love. With that love, sampling can become a method of tasteful assembly, collage, as opposed to a creative crutch, plagiarism. Using this same understanding openly & respectfully, can turn DJing into spiritual participation. It can turn a few hours of selection into essential history, necessary listening through movement."(Theo Parrish)

「音楽への愛」こそがプロデューサー、パフォーマー、DJたちの原動力であるべきだ。この想いがあれば、サンプリングという方法は、盗作でもなく、音作りへの近道でもなく、個性ある音のコラージュになる。それと同じ理解と想いを持つことにより、DJもまたスピリチュアルな行為となり得る。数時間分の選曲が、本質を伴った歴史の物語となり、動きを伴った音楽体験となる。
(セオ パリッシュ  訳: Yuko Asanuma)

こんにちは、マシューデイヴィッド! - ele-king

 アメリカ、ロサンゼルスを代表する非営利ネットラジオ局、ご存じ〈dublab〉の日本ブランチdublab.jpが、MatthewdavidとAnenonを招聘しての楽しいイヴェントを開催!

 「はじめはアンビエント・サイケのカセットを作ろうと思っていた」......のちに〈ダブラブ〉を通して本格始動した〈リーヴィング・レコーズ〉の立ち上げに際して、マシューデイヴィッドは創設メンバーのジェシリカ・モリエッティと長い時間をかけてサウンドのキュレーションを行ったという。ほぼ全リリースに及ぶというマスタリング作業を通じて、彼はズブズブに夢見心地なサウンドを確立し、鮮やかなレーベル・イメージを提示した。いまそれは時代と切り結びながらより広いリスナー層へと波及しつつある。彼の周辺にはサン・アローなど刺激的なアーティストも多く、現在のLAのもっともおもしろい部分を体現する存在としても今回の初来日は貴重であり、学ぶところは多いはずだ。一方のアネノンは〈ダブラブ〉のDJとしても活躍する新鋭プロデューサー。サックスとピアノが印象的なEP『Acquiescence』につづき、アルバム『Inner Hue』をリリースして間もない新鋭であり、やはりLAのエレクトロニックなシーンとの関わりが深い。
 詳細は明らかになっていないが、この企画ではマシューによる音楽制作についてのワークショップもあるという! 企画自体が彼らの来日公演であるという以上の性格を持った複合的なカルチャー・イヴェントであり、その他のワークショップや上映会等を含んだ意欲的なものだ。ライヴとあわせて楽しみたい。

LAからは、dublabに深く関わる2アーティスト、MatthewdavidとAnenonを招聘します。
Matthewdavidは、Flying Lotus率いるBrainfeederに所属し(アルバム『Outmind』をリリース)、LAでいま最も神秘的なレーベルといっていいLeaving Recordsを主宰しています。
Anenonは2011年のRed Bull Music Academyにも招待されたアカデミックなキャリアをバックボーンに持つプロデューサーで、レーベルNonprojectsを主宰しています。
日本からは、今年LAに赴きdublabにもライヴ出演したBUN/Fumitake Tamura、dublabでエソテリックなDJミックスを配信しているShhhhhというdublab.jpの核となるアーティストに、ワールドワイド に活動するChihei Hatakeyamaを迎えます。

また、当イヴェントは単にライヴやDJのみならず、子供のためのワークショップの開催や、dublabが制作した映像作品の上映など、複合的 な催 しとなります。開催場所となる東京芝浦の新しいコミュニティ・スペースSHIBAURA HOUSEにもぜひご注目ください。

詳細→ https://www.shibaurahouse.jp/event/dublab-jp1/

■dublab.jp & SHIBAURA HOUSE present
"Future Roots" feat. Matthewdavid & Anenon


Matthewdavid


Anenon

■日時
2012.12.9(日)
13:00~
WORKSHOP for children
14:30~
WORKSHOP feat Matthewdavid
16:00~20:30
Live:
Matthewdavid
Anenon
Bun / Fumitake Tamura
Chihei Hatakeyama

DJ:
Shhhhh

■場所
SHIBAURA HOUSE/ 1F, 5F
東京都港区芝浦3-15-4

■料金
1500円(出入り自由、中学生以下無料、ワークショップ参加の場合:2000円)

主催:dublab.jp(https://dublab.jp)/ SHIBAURA HOUSE
協賛:Sound & Recording Magazine
サウンドシステム:Forestlimit
協力:PowerShovel,Ltd

*子供のワークショップには、必ず保護者の方が同伴の上、参加ください。保護者1名に付きワークショップ参加料金は2000円となります (16時以降の音楽イヴェントも入場いただけます)。申込フォームは詳細が決まり次第用意します。

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