「OTO」と一致するもの

interview with Shinya Tsukamoto - ele-king

 生まれて初めてNHKの朝ドラを観ている。笠置シズ子にも興味はあったけれど、塚本晋也の新作で主人公を演じる趣里が朝ドラでも主役を張っていると知り、その振り幅にまずは興味が湧いた(ついでに『東京貧困女子』も最初だけ観た)。内覧会で一足先に『ほかげ』を観ていたので、朝ドラで歌劇団のルーキーを演じる趣里がとても幼く感じられ、『ほかげ』では生活に疲れて先の見えない人物像がしっかりと造形されていたのだなと改めて趣里の演技力に感心した。『ほかげ』は戦後の闇市を舞台にした作品で、居場所のなくなった人々が暗中模索を続ける群像劇。前半と後半で異なる主題を扱い、戦争によって滅茶苦茶になった日本の心象を様々な視点から洗い出す。誰もが無表情のままで、喜怒哀楽のどこにも触れないのは塚本作品の本質が剥き出しになっている気がする。


©2023 SHINYA TSUKAMOTO/KAIJYU THEATER

 『鉄男』シリーズや『六月の蛇』といったカルト作品のイメージが強かった塚本晋也が8年前に『野火』でいきなり政治的な話題に首を突っ込んだ時はけっこう驚かされた。とはいえ、政治的なテーマばかり撮り続ける「専門家」よりもアレックス・コックスやアダム・マッケイのようにアホなことばかりやっていた人が自分たちの領域を政治に侵された途端、一気に作風が変わり、自分たちがやっていたことを守るために政治的になるという姿勢が僕はとても好きなので『野火』には喝采を叫んだし、同じ衝動に突き動かされている『ほかげ』にも同じように拍手を送りたい。そして、ブレインフィーダー別冊で取材した際に「塚本晋也に会いたい!」と吠えていたフライング・ロータスのCDをごっそり携えた野田努と共に塚本晋也が待つユーロ・スペースに向かうのであった。渋谷の街はそろそろハロウィンの気運が高まっていた頃である。

戦争が終わったら「終わったー」といってみんな伸び伸びするというイメージがあったんですけど、『野火』をつくってから、戦争が終わっても、ぜんぜん戦争は終わってないと思っていた人たちがたくさんいたことがわかったんですね。

(フライング・ロータスについて少し説明してから)40年前に1週間ほど熊野の山のなかで水木しげるさんとご一緒する機会があったんですね。

塚本:おう、おう。

『ゲゲゲの鬼太郎』を描いた人だということぐらいしか僕は知らなかったので、水木さんに片腕がないことも知らなくて。驚いてしまって。その1週間で、戦争の話をたくさん聞かせてくれたんですね。で、東京に戻って水木さんの戦記物を全部読んだんです。変わった話もいろいろあったんですけど、それまで考えてもみなかったのが復員兵の話で。戦争に行った兵士が日本に帰ってきて居場所がないなんてことがあるとは想像もしなかったんですね。で、日本の映画をいろいろ思い出して見たんですけど、復員兵の話なんてあったかなあと思って。スケキヨぐらいしか思い当たらなかったんです。(*スケキヨ=『犬神家の一族』の登場人物)

塚本:(笑)ツボにはまりますね。世代が似てる。

『ほかげ』には大雑把に言って3パターンの復員兵が出てきますけど、どうしてあの3パターンにしようと思ったんですか?

塚本:子どもの主観でそれぞれの復員兵には出喰わしてるから、ひとりひとりの背景はわからないんですね。その3つが合わさると何があったかということが浮き彫りになって、どうしてみんなこんなことになってるんだろうと、みんなに共通の歴史があったんだということがわかるようになっています。確かに、その3つを関係づけないで観ちゃうと「なんで?」となっちゃいますよね。でも、どうしても結びつけるとは思うんですよ。最初の復員兵が夜中にわめき散らして、どうしてあんなことになってるのか、最初はわからないと思うんだけど、彼に何があったかは最後でわかると思うんです。最初にあの3パターンを考えたわけではなくて、頭から脚本を書いていって、自分で納得がいくように進めていった結果なんです。シンプルな構造が最初にできたので、自然にああなったんですね。

座敷牢に閉じ込められていた復員兵はどの段階で?

塚本:わりと最初からいましたね。

短いですけど、強烈な印象が残りました。

塚本:そうですね。俳優さんが素晴らしく演じてくれて。セリフがないわけですから、演技にかかってるところがありますよね。とても存在感を感じさせてくれました。

彼らはみな『野火』の戦場から生きて戻ってきた人たちと考えていいんですよね?

塚本:そうですね、僕はそのつもりです。

戦争の後始末というか、戦争が起きた後のことをどうするんだという意識ですよね?

塚本:それはありました。戦争が終わったら「終わったー」といってみんな伸び伸びするというイメージがあったんですけど、『野火』をつくってから、戦争が終わっても、ぜんぜん戦争は終わってないと思っていた人たちがたくさんいたことがわかったんですね。

高齢の方にたくさん取材をされたと聞いたんですが。

塚本:それは『野火』の時ですね。皆さん、80歳を越えられてたんで。資料も少ないし、実際の声を聞いとかなきゃと思って。今回は資料がかなりあったので、そこまではしませんでした。

そうなんですね。

塚本:戦争孤児の資料はかなりあったんですよ。でも、復員兵の話はほぼないんです。本当の「加害性」について書いてあるのは。ベトナム戦争に比べるとほんのちょっとだけしかない。

ベトナム戦争だと『ディア・ハンター』だとか『シザーハンズ』だとか映画もわりとありますよね。ストレートなのはウイリアム・ワイラーの『我が生涯の最良の時』ですか。

塚本:ああ、それ、観てないです。

え、意外ですね。それこそ3人の帰還兵の話でPTSDに苦しめられる話です。タイトルも皮肉です。

塚本:それは観よう(と、タイトルをメモする)。

『我が生涯の最良の時』はリアリズムで、『ほかげ』もそれに近いし、『野火』もそうですけれど、塚本作品に期待する荒唐無稽さとは違いますよね。

塚本:前は戦争が迫ってるとか、そういった危機感を感じないでつくってたし、それどころか『マトリックス』が出た時に、ああ、先にやられちゃったと思ったぐらいで(笑)。

あー(笑)。

塚本:どちらかというとヴァーチャル・リアリティの世の中に生きている自分がいて、暴力もファンタジーとして描いてたんです。人間のなかには暴力性があるんだし、観たいんだから、観ればいいし、それがガス抜きになって、実際に(暴力を)やる人も減るだろうという方便をつけていたんですけど、『野火』の3年ぐらい前から戦争を身近に感じるようになっちゃって。ファンタジーとして描くには暴力があまりに近づいてきたと思って、むしろ近づきたくないという思いがあったんですね。こんなに嫌なものに近づきたくないよっていう表現なんです。

逆の印象ですけどね、『野火』は。

塚本:どっちにしろ暴力描写は出てきちゃうんですけど(笑)。以前とは使い方が違います。

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©2023 SHINYA TSUKAMOTO/KAIJYU THEATER

いまは変態性がなくなっちゃったんです(笑)。変態の時は、人間の肌は鉄みたいな硬いものに接している時にフェティシズムが香り立ってエロが際立っていたんですけど。

なるほど。黒沢清さんの『トウキョウソナタ』は、当時観た時、最後に天才的なピアニストが出てきて問題が全部解決しちゃうという安易な終わり方に思えちゃったんですけど、安倍政権になってから見直したら、ぜんぜん印象が変わって、日本人がそんな奇跡みたいなものにしかすがるものがなくなっているという皮肉に観えたんですよ。息子がアメリカ軍に入隊するというエピソードも安倍政権が安保法制を強行採決した後だと、もはや予言みたいだったなと。実際にいま、自衛隊は米軍の傘下にいるようなものですからね。黒沢さんは早かったのかなって。

塚本:黒澤監督はそこまでお考えになってつくったんですね。

……と、思いましたけど。塚本監督が『野火』を撮らなくちゃと感じたのも同じ流れだったということですよね?

塚本:時期は合いますよね。急に近づいた気がして。安倍政権がもう一回、戻ってきちゃった時ですね。前の内閣の時も嗅覚的にはあったんですが、心配な感じは。きっと一回、引っ込んでいる間に設計図をしっかりつくったんでしょうね。早く憲法を変えてとか。どういう段取りでやるか決めて、復活してから着実にやってたんでしょう。『野火』をつくった時も、世の中的にはまだそれほどの危機感はなかったんですよ。だから、つくってはみたものの響かない可能性もあるかなとか、すぐ(上映も)終わっちゃうかもなとは思ってたんですよ。でも、公開してる時に、その時は戦後70年の年だったんですけど、その年にちょうどキナ臭さを感じる人が大勢出てきたので、その人たちの琴線に引っかかったと思うんです。『野火』を上映してる時に、いろんな法案が強行採決されていって。

僕は日本は本気で戦争をやる気はないと思いますけど、それこそ中国軍200万人に対して自衛隊は18万しかいないし、いますぐに10倍にしようという気配もないし。ただ、戦争が近づいてくるというムードだけで塚本作品のようなエロ・グロ・ナンセンスは最初に取り締まられると思うんですよね(笑)。

塚本:そうですよね、気配はありますよね(笑)。そうなったらめちゃくちゃやられるんじゃないですかね。

『野火』で作風を変えたにしても、塚本作品には武器に対するオブセッションがずっとありますよね?

塚本:そうですね、(武器に対する興味が)もっとあれば、もっと複雑で映画も面白くなると思うんですけど、これが案外、嫌いだったんです(笑)。こんなにヤなものなのに、武器が大好きで、頬ずりしたいというのだったら、映画がもっと複雑になると思うんですけど、案外嫌いなんで、どっかあっさりしちゃうんですよ。

なるほど。

塚本:でも、僕の映画で武器をペロペロしたりすると喜ぶ人がいるんで、実感としてちょっと薄い癖に、そのテーマに惹きつけられているという感じがあって。『鉄男』は当時、僕は変態だったので……

いまは違うんですか?(笑)

塚本:いまは変態性がなくなっちゃったんです(笑)。変態の時は、人間の肌は鉄みたいな硬いものに接している時にフェティシズムが香り立ってエロが際立っていたんですけど。

実感を込めて『鉄男』はつくっていたわけですね(笑)。でも、『斬、』の刀も同じじゃないですか?

塚本:あの頃になると、そうですね、あれも『鉄男』なんですけどね、SFじゃないだけで。

そうですよね。

塚本:刀という鉄と一体化するまでの話ですからね。武器はもうヤだと思っているのに、自分でも変態性を思い出すために奮い立たせたんですよ。

そういう感じだったんですか。なるほど。そのヤだと思っているものを今回の『ほかげ』では子どもに持たせましたよね? いまの話の流れでいくとロクなことをしてませんよね(笑)。

塚本:そうですね、いま、あまりに大事なことなので、どこからいえばいいかな。たとえば宮崎駿さんとかも戦争大っ嫌いだと言ってるのに零戦の映画つくったり、けっこう皆さん、戦争は嫌いなのに武器が好きな人は多いから、難しいところなんですけど。えーと、『2001年宇宙の旅』の最初で、猿が木の棒で別な猿を叩き殺して欲しいものを勝ち取った時に人類の夜明けが始まって、その木を空に投げると宇宙船になってピューっと落っこってくるというシーンが全部を物語っているというか、あれは木でしたけれど、人って、こう、鉄と出くわした時に、恋愛がそこから始まっているので、いくらそこから鉄とか武器が憎いものになっても別れようとはならないんですね。憎くても切り離せない。人間と武器はどうしても切り離せないというのが自分のテーマにはなっています。

世界中のあらゆる国家が捨てませんよね。どうしても武器は持ってる。

塚本:そう、みんな鉄が大好きだから、交通事故が多くても自動車を止めようとはならないし、機械と恋愛しているというのがまずはあります。『鉄男』もそうだし、『斬、』の刀をピュッと空に投げると『野火』の世界になって戦車やらなにやら爆発的な量の鉄になるんです。自分の映画では自分というものと鉄の歴史を描いていたんですけど、自分と都市やテクノロジーの関係が、『野火』をつくった頃から、年齢のせいもあると思うんですけど、ついに自分よりも次の世代のことが心配になって、心配で心配でたまらなくなって、あえて子どもに一番恐ろしい武器をもたせちゃったんだなって、いま、言われて気づいたので、それを子どもがどう扱うのかなという話を無意識につくっていたんだなと思いました。

『トウキョウソナタ』で息子がアメリカ軍に入る話と少し重なるのかもしれませんね。『斬、』の時には核武装の話も出ていたので、一般の人にも刀を持つ気持ちになれますかというメッセージに受け取れたんですよ。

塚本:はい、そういう話ですね。

武装する覚悟はありますかと。選挙権を持つような人には『斬、』の問いも有効だと思うんですけど、でも、もっと小さな子どもが武器を持ってしまうと、そのレベルではないですよね。いままでの武器と見せ方も違うし、『ほかげ』の子どもも隠して持っていたし。

塚本:そうですね。無意識ですね。最後に趣里さんが自分の映画にしては珍しくストレートなことを子どもに言うんですけど、すごいじわっと来るのは、やっぱりそういうことがあったからなんですね。また趣里さんがすごいはっきり言うんですよ。あれは感動しましたよ。

確かに。

塚本:趣里さん、ありがとうって。よくぞそこまではっきり言ってくれたって。

塚本監督が書いたセリフなんですよね。

塚本:そうなんですけどね。

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©2023 SHINYA TSUKAMOTO/KAIJYU THEATER

前は映画をつくるのは楽しくてやってたんですけど、戦争映画はやらなきゃいけないという感じなんです。あと1本でやめますけど。そのあとは変態に戻りたい。変態が生きられる世の中にしないといけませんよ(笑)。

現場ではアドリブなんかもあったんですか?

塚本:あんまりないですね。遊んでるシーンぐらいかな。遠足ごっこで。

上官の家に向かっている時に男の子が鼻を啜り上げるシーンがすごくよかったんですけど、不思議な感動があって。

塚本:観てますね(笑)。あれは演出ではないです。自然な成り行きで、そのまま使わせてもらいました。

あの子は動きだけで表現しますよね。感情がすり切れちゃってるというか。

塚本:親が死んでるところから始まってますからね。

とはいえ、あの子が報酬を受け取らないのはさすがに大人っぽすぎると思ったんですけど。

塚本:あの年代になると、もう自意識はあるので、人を撃った行為でお金を受け取ることはできないと思いますよ。

そうですか。

塚本:あるいは直感的にイヤだと思ったか。

塚本監督の視点はあの子に一番近いんですか? 銃だけ持っていて、どうやって生きていくのかなとか考えちゃうんですけど。

塚本:あの子に近いのかもしれないですね。戦争孤児のエピソードにもすごい共感があったんですよ。

戦後、実際に見かけたわけではないですよね。

塚本:そうですね。資料から浮かび上がって来るものです。自分が戦争孤児だったことは、皆さん、隠してるんですよ。戦争孤児だというといじめられたみたいで。


©2023 SHINYA TSUKAMOTO/KAIJYU THEATER

ああ。国というのは、戦争はするけど、まったくケツを拭いてないというか、後ろにいろんなものを残したまんまなんですね。

塚本:本当にそうなんですよ。戦争後遺症になった人はいなかったということにしたみたいなんです、日本は。大和魂で片づけられちゃったみたいで。戦争で気分が悪くなるような奴は日本にはいないと。いないって言われると家族は隠さないといけないし、国は実際には後遺症の研究はしてたみたいで、資料もたくさん残ってるんですけど、戦争が終わった途端に研究もやめちゃったんですね。

研究をしてたこと自体は最低限の良心があったように感じますけど。

塚本:いや、良心というよりヤベエっていう感じじゃないですか。みんな、こんなんなっちゃってるよーとか。でも、そういう人がいると認めたら賠償もしなくちゃいけなくなるから、なかったことにしたんでしょうね。

そうか。

塚本:そういう人たちは、その後、高度成長期の時は仕事をしていて忘れられたんだけど、定年になってから、夜、悪夢が蘇ってきて死ぬまで続いたそうです。

『野火』と『ほかげ』を足すと、やっぱり『ゆきゆきて神軍』を思い出しますよね。

塚本:戦争は調べれば調べるほど人間のどうしようもなさが露呈してくるんですよ。あともう一発は作らないといけないと思うんですけど、調べているとうんざりしますよ。

やらなきゃいけないって(笑)。

塚本:前は映画をつくるのは楽しくてやってたんですけど、戦争映画はやらなきゃいけないという感じなんです。あと1本でやめますけど。そのあとは変態に戻りたい。

(笑)。

塚本:変態が生きられる世の中にしないといけませんよ(笑)。

どうして高校生の時に『野火』を読もうと思ったんですか?

塚本:偶然なんですよ。日本の文学に目覚めてあれこれ読んだんです。薄いわりに濃密そうだなと思って。『野火』とか『黒い雨』とか『砂の女』とかシンプルなタイトルで、濃密そうだと惹かれるんです(笑)。

『万延元年のフットボール』とかダメなんですね。

塚本:それは未読でした。外国の本も読めなかった。登場人物の名前が長いのもダメだったんです(笑)。

『ほかげ』はそれ以前に誰にも名前がついてないですよね。「女」とか「復員兵」とかもはや記号ですよね。

塚本:僕ね、3人以上出るとダメなんです。4人、5人になると、もう分かんなくなるんです(笑)。

『ほかげ』は前半と後半で視点が変わるし、人数が多いというほどではないですけど、塚本作品にしては複雑ですよね。

塚本:複雑ではないけど、パタッと様変わりするのは珍しいですね。

最近は都市よりも自然を撮りたいということでしたし、後半はほとんど自然の風景でしたね。

塚本:前半のシチュエーションで行くのもストイックでいいんですけど、自分のなかでは黒澤明監督の『天国と地獄』のパロディの気分があるんですよ。

ああ。でも、塚本監督は自然を撮っていても、『斬、』なんか密室みたいでした。

塚本:そうですね。

開放感がまったくない。武器と同じで塚本監督には抜け出られないものがあるというか。

塚本:ああ。密室も嫌いなんだけど好きというか。『HAZE』とか撮ってますから。(*『HAZE』=狭い空間に男が閉じ込められた短編)

閉所恐怖症でしたよね、そういえば。僕もそうなんですけど。

塚本:僕は金縛りにしょっちゅう会うんですけど、あれが閉所の極限です。

いまでも?

塚本:いまでもしょっちゅうですね。子どもの時からずっと恐怖です。


『ほかげ』にちらっと出てくる傷痍軍人は僕も当時、見たことがある。大島渚『日本春歌考』の冒頭にもちょっと出てくる。しかし、戦後すぐの闇市はさすがに見たことがない。塚本監督も実際に体験したわけではないものの、その痕跡に惹かれて、最初は短編のつもりで撮り始めたのが『ほかげ』だったそうである。それが思いの外、長い作品になってしまったと。「(闇市は)憧れだったんですね。ヤクザとか愚連隊とかテキ屋とかパンパンとかオカマとか、そういう人たちが活躍していて、もうカオスで」と塚本監督は話していた。『ほかげ』が闇市だけの作品にならなかったのは、やはり『野火』のインパクトがまだ監督のなかで衰えていなかったからだろう。そして、もう一本、戦争映画を撮るつもりだとは本文中にあった通り。これも覚悟して待つこととしたい。『ほかげ』の試写を観た夜、帰りに渋谷の道玄坂を下りながらメイド服の女の子がズラっと並んでいるのを目にして、闇市のエネルギーはまだ続いているのかもしれないと僕は思った。

『ほかげ』

11月25日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開

監督・脚本・撮影・編集・製作:塚本晋也
出演:趣⾥、森⼭未來、塚尾桜雅、河野宏紀、利重剛、⼤森⽴嗣
助監督:林啓史/照明:中⻄克之/⾳楽:⽯川忠
⾳響演出:北⽥雅也/ロケーションコーディネート:強瀬誠
美術:中嶋義明/美術デザイン:MASAKO/⾐装:佐々⽊翔/ヘアメイク:⼤橋茉冬
製作:海獣シアター/配給:新⽇本映画社
2023年/⽇本/95 分/ビスタ/5.1ch/カラー
配給:新日本映画社
©2023 SHINYA TSUKAMOTO/KAIJYU THEATER
https://hokage-movie.com/#about

AMBIENT KYOTO 2023最新情報 - ele-king

 好評開催中の「AMBIENT KYOTO 2023」、最新情報のお届けです。会場ごとに撮りおろした参加アーティストの作品動画が本日より公開となります。坂本龍一+高谷史郎、コーネリアスバッファロー・ドーター山本精一の4組分、2023年末までの限定公開です。

 あわせて、イベント情報も発表されています。12月10日(日)、坂本高谷作品が公開されている京都新聞ビル地下1階にて、原摩利彦+中山晃子、古舘健+YPY(日野浩志郎)、E.O.U.+Saeko Ehara、小松千倫+jvnpeyによるパフォーマンスが披露されます。その後京都メトロにてアフターパーティも予定されているとのこと。ぜひ足を運んでみてください。

AMBIENT KYOTO 2023
-撮り下ろし作品 スペシャルムービーを2023年11月20日(月)より期間限定公開
-コラボレーションイベント ACTIONS in AMBIENT KYOTO 12月10日(日)開催決定
会期:2023年10月6日(金) - 12月24日(日)

2023年10月6日(金)より12月24日(日)まで、京都の2会場を舞台に開催されている、アンビエントをテーマにした音・映像・光のインスタレーション展「AMBIENT KYOTO 2023」より最新情報をお送りします。

参加アーティスト 坂本龍一 + 高谷史郎、コーネリアス、バッファロー・ドーター、山本精一 の作品動画を、会場ごとに撮り下ろし、11月20日(月)より2023年末まで、期間限定で公開いたします。

また、「AMBIENT KYOTO 2023」とのコラボレーションイベントとして、「ACTIONS in AMBIENT KYOTO」の開催が決定しました。12月10日(日)には、「坂本龍一 + 高谷史郎 | async - immersion 2023」作品が展開されて いる京都新聞ビル地下1階にて、ライブ・パフォーマンスが行われます。
その他、「Farmoon x Miu Sakamoto "wonder" X AMBIENT KYOTO 2023」が開催されるなど、会期終了まで様々 なコラボレーションイベントも実施する予定です。

会期も折り返し地点を迎えた「AMBIENT KYOTO 2023」をさまざまな角度からお楽しみください。

◉会場: 京都新聞ビル地下1階
坂本龍一 + 高谷史郎 | async - immersion 2023

動画リンク: https://youtu.be/6TzTRUlqb9A

坂本龍一が2017年に発表したスタジオ・アルバム『async』をベースに制作 された高谷史郎とのコラボレーション作品の最新版。京都新聞ビル地下の広 大な空間を使い展開するサイトスペシフィックなインスタレーション。

作品詳細・アーティストコメント
https://ambientkyoto.com/exhibition

◉会場:京都中央信用金庫 旧厚生センター
Cornelius、Buffalo Daughter、山本精一 3組のアーティスト作品

動画リンク: https://youtu.be/70Y0hRh3EjM

Cornelius : QUANTUM GHOSTS / TOO PURE / 霧中夢 -Dream in the Mist-
Buffalo Daughter : Everything Valley / ET(Densha)
山本精一 Silhouette

詳細は下記よりご覧ください。
作品詳細・アーティストコメント https://ambientkyoto.com/exhibition
作品&アーティスト概要資料 https://www.how-pr.co.jp/pressrelease/2023_AmbientKyoto_works.pdf

【コラボレーションイベント】
ACTIONS in AMBIENT KYOTO

京都新聞本社ビル地下1階の坂本龍一+高谷史郎による「async - immersion 2023」のために設置された横幅20mを超えるLEDスクリーン、そして、30台以上のスピーカーを活用した4組のコラボレーション・ライブ・パフォーマンスを開催します。広大な空間にエクスペリメンタルな音響が漂います。終演後にはmetroにてアフターパーティーを開催予定。詳細は、下記ウェブサイトをご覧ください。
https://interference-resonance.ekran.jp/

開催概要 日時:12月10日(日)
会場: 京都新聞ビル地下1階

ライブパフォーマンス
・原摩利彦と中山晃子が初のコラボレーション。
・古舘 健とYPYこと日野浩志郎によるオーディオビジュアルのデュオパフォーマンス。
・近年、クラブ/レイブシーンで大きく注目を集めるE.O.U.のパフォーマンスに、AIとジェネラティブアートを組み合わせたビジュアル作品を発表しているSaeko Eharaが映像で参加。
・現代美術と音楽の間で活動する小松千倫と新進ビジュアルアーティストであるjvnpeyによるコラボレーションパフォーマンス。

公式ホームページ. https://ambientkyoto.com
X.  https://twitter.com/ambientkyoto
Instagram. https://www.instagram.com/ambientkyoto
Facebook. https://www.facebook.com/ambientkyoto

仙人掌 & S-kaine - ele-king

 ソロMONJU、〈DOGEAR RECORDS〉の一員として東京を中心に活動を続けているラッパー、仙人掌。その新作は、大阪の若きラッパー/ビートメイカー、S-kaine との共作アルバムだ。『82_01』というタイトルにあらわれているように、82年生まれと01年生まれによるこのタッグは、地域のみならず世代も超えたコラボとなっている。
 配信ではすでに聴くことができるが、1曲追加収録曲のあるCD盤は11月20日にリリースとのこと。チェックしておきましょう。

11/20 (MON) より全国CDショップにて販売開始予定

82年生まれ、東京のHIPHOPをリードするMC・仙人掌の久々のまとまったリリースは、01年生まれ、大阪は西成で育った次世代のHIPHOPを担うMC/ビートメイカー・S-kaineとガッツリ組んだジョイント作、その名も『82_01』だ。場所も世代も越えて絡み合う二頭の龍が耳元で火を噴けば、彼らが見つめた街の景色、フロアで踊る友達や仲間の姿......痛みや救いの混じり合った、たくさんの夜の記憶がすぐさま鮮明に立ち上がる。とりわけ目を見張るのは、仙人掌とS-kaineの両者が刺激し合い、それぞれのラップに新たなフィーリングを宿らせていることだ。成熟した仙人掌のラップはより深く街の声に呼応して軽快に躍動し、若きS-kaineは自身の存在をHIPHOP史へとさらに色濃く書き記すようにドープな夜を鋭くライムしている。そう、『82_01』は彼らが夜の街へ繰り出し、繋がり、お互いのこれまでに触れて、それぞれが自らを更新したことの証明なのだ。そうして生まれた、このみずみずしく強靭なグルーヴは、再生するたびに強度を増して、あなたの身体に染み付いた夜の痕跡を、何度でも明日の希望へと書き換えていくだろう。ここにある可能性を、その耳でたしかめて欲しい。

Title : 82_01
Artist : 仙人掌 & S-kaine
Release Date : 2023/11/20 (MON)
Format : CD
Price:¥2.500- (税別)

■Track List

01. STEEL ATTITUDE Prod By ENDRUN
02. SWITCH ON Prod By ENDRUN
03. BIRDS (feat. CHAKRA) Prod By GWOP SULLIVAN
04. STRANGE LENS Prod By LAF
05. 残党2023 (feat. MC Spirytus) Prod By Juda
06. UNDER THE MOON Prod By DJ GQ
07. RETURN TRIP (feat. SEDY NEZZ) Prod By Juda
08. WISH Prod By Juda
09. OUR MUSIC Prod By Juda
10. 82_01 TO CONTINUE Prod By Juda

All Produced By 82_01
Track 3,4 Cuts By DJ K-FLASH
Mix&Mastered By TAKANOME
Design&Layout By SPECDEE
Photo By CAYO IMAEDA
Recorded By J.Studio Tokyo,BMJ Studio Fukuoka,WMI Studio Osaka,103LAB.

[仙人掌 & S-kaine プロフィール]

東京を中心に活動するMONJU / DOGEAR RECORDSの一員であるラッパーの仙人掌と、大阪の次世代を担う気鋭のラッパー/ビートメイカーのS-kaine。
82年生まれと01年生まれという場所も世代をも超えて、HIPHOPという共通言語のみで繋がり生まれたスペシャルジョイント。

Coucou Chloe & Meth Math - ele-king

 音楽を中心としたプラットフォーム〈AVYSS〉が立ち上げから5周年を迎え、11月18日(金)の深夜に渋谷WWW Xにて「AVYSS X」を開催。今回はロンドンよりクク・クロエ(Coucou Chloe)、メキシコよりメス・マス(Meth Math)が来日する。国内からはAVYSSに所縁のあるアーティストを中心に30名以上が集結。5年間をそれほど総括せずに、現在と少しの未来を噛み締めたり見据えたりしつつ、出来る範囲で未知のもの(X)に向き合いたい気持ちを込めたアニヴァーサリー・パーティ。

 クク・クロエは、フランス出身でロンドン拠点に活動するシンガー/プロデューサー/ダーク・ロマンティック・アイコン。以前はセガ・ボデガとのユニットY1640としても活動し、セガ・ボデガやシャイガールとともにレーベル〈NUXXE〉を立ち上げたひとり。近年ではレディ・ガガのリミックスを手掛け、コブラ(COBRAH)やアースイーターと共作もおこなっている。

COUCOU CHLOE – DRIFT (Official Video)

 メス・マスはメキシコ・ソノラ州の州都エルモシージョ出身、パンクとレイヴのシーンで育った音楽家。その音楽性は「ラテン・ミュージックのインディ悪魔解体」「デモニック・ネオペレオ」などと呼ばれ、ウィッチ・ハウス以降のモードとラテン・ミュージックがユニークなバランスで溶け合う。これまでにセガ・ボデガ、Dinamarca、マシーン・ガールなどとコラボレーションを果たした。現在デビュー・アルバムの制作が進行中とのこと。

Meth Math - Mantis (Official Video)

 また、AVYSS Xのフライヤーヴィジュアルを反映したゲーム「X散歩」が公開。Windowsのみ対応。〈みんなのきもち〉のKazuma Watanabeが手掛けたヴィジュアルをもとに、JACKSON kakiがゲームプログラムと映像を制作。BGMとして流れる音楽を〈AVYSS〉ファウンダーの音楽家・CVN(ex. Jesse Ruins)が手掛けた。

 当日は会場内でAVYSS X記念Tシャツを販売。ホワイトとブラックの2色展開(サイズ:L/XL)。イベントのメイン・ヴィジュアルを発展させたデザインは、引き続き〈みんなのきもち〉のKazuma Watanabeが手掛けている。さらに入場者には先着でAVYSS X蓄光ステッカーをエントランスで配布(なくなり次第終了)。

 なお、XフロアでのDJとVJの組み合わせを含めたフロア分けやタイムテーブルはAVYSSのSNSにて後日発表される。

イベント詳細

公演タイトル AVYSS X -5th Anniversary-
日時 11月18日(土)
会場 WWW X + 4F https://www-shibuya.jp/
OPEN 23:30

TICKET https://t.livepocket.jp/e/20231118wwwx
ADV: ¥4,000+1d

Live
COUCOU CHLOE
Meth Math
+
BBBBBBB feat. aeoxve, 徳利(video)
CVN feat. DAFTY RORN, Milky, π
cyber milkちゃん
Emma Aibara
skeleton538
UNIT KAI
Yoyou

Shot Live

lllllilbesh ramkooo!!!!
safmusic
Saren

DJ
cityofbrokendolls
divine oracle (Yurushite Nyan×in the pool)
Lily Fury
みんなのきもち
music fm
noripi and seaketa
okadada
Shine of Ugly Jewel
SxC Loser (NordOst×YONEDA)
tomodachi100
Uztama

VJ
fantaneruran
不吉霊二
JACKSON kaki
naka renya

Video
Kenji

POP-UP
MOTHER

FOOD
駒澤零
投擲 food team(anymo, atri, kappa, munéo, Ranz Jigoku, 鬼車, 水母娘娘, 星山星子)

(A-Z)

Staging : yoh
Photo shoot : マ
Staff : yoen
Flyer : Kazuma Watanabe
Direction : CVN

Over 20 only・Photo ID required
20歳未満入場不可・要顔写真付ID
公演詳細はこちら

Road Trip To 全感覚祭 - ele-king

 GEZANが主宰するレーベル〈十三月〉による野外イヴェント、「Road Trip To 全感覚祭」が急遽開催されることになった。これまで「全感覚祭」は入場フリーの投げ銭制という独自のアイディアで運営されてきたフェスだが、パンデミックをはさみ、あらためて「Road Trip To 全感覚祭」としてひさびさに敢行される。
 会場は川崎のちどり公園。今回はチケット制で、明日8日より発売開始。GEZANのほか渋さ知らズ、ゆるふわギャング、踊ってばかりの国などなど、出演者30組も発表されている。マヒトゥ・ザ・ピーポーによるメッセージとともに、下記からご確認ください。

GEZAN主宰レーベル・十三月が主催する野外イベント『Road Trip To 全感覚祭』、開催地詳細や出演者30組を発表! (※マヒトゥ・ザ・ピーポーよりコメントあり)

GEZAN主宰レーベル・十三月が11月18日(土)深夜に開催する野外イベント『Road Trip To 全感覚祭』の現時点での詳細が明らかになった。今回発表されたのはライブアクト15組、展示やマーケットなどで参加する作家/アーティスト16組の計31組で、更なる追加発表も予定されているとのこと。

【全感覚祭】は十三月が “面白さの価値は自分で決めてほしい” というコンセプトで入場フリーの投げ銭制で開催してきた野外フェス。2019年以来、コロナ禍を経て久々となる今回は『Road Trip To 全感覚祭』と題しての緊急開催。
開催地は全感覚祭では初となる川崎・ちどり公園。20時オープン21時スタート、全感覚祭ならではの濃厚ラインナップが明け方まで展開される。

また今回は投げ銭ではなく、金額別のチケット制となることも併せて発表された。チケット金額については先着順で来場者が選べる形となっている。
来場予定の方は特設サイトに掲載されている『Road Trip To 全感覚祭』に向けてのマヒトゥ・ザ・ピーポーからのステートメント、そして注意事項を熟読の上で明日、11月8日(水)21時からPeatixにて販売されるチケットを申し込んでほしい。

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Road Trip To 全感覚祭

act :
GEZAN
渋さ知らズ
ゆるふわギャング
踊ってばかりの国
切腹ピストルズ
moreru
鎮座DOPENESS
Glans
やっほー
KOPY
abos
penisboys
高倉健
YELLOWUHURU
THE GUAYS
and more…

artist :
STANG
飯田団紅
Masahiro Yoshimoto
Teji
高橋盾(UNDERCOVER)
harune.h
とんだ林蘭
前田流星
ソノダノア
北山雅和
YUICHIRO TAMAKI
佐藤円
NAZE
蝉丸
名越啓介
池野詩織

2023.11.18 saturday midnight
Chidori Park, Kawasaki
open/start 20:00/21:00

Ticket : Peatix 【 https://zenkankakusai2023.peatix.com
A : ¥3,000 / B : ¥5,000 / C : ¥7,000
11/8 wed. 21:00 ON SALE

※18歳未満のお客様は保護者様同伴の上ご来場ください。保護者様がいらっしゃらない18歳未満のお客様の入場はお断りいたします。
※23時~4時の間は18歳未満のお客様は会場内に滞在出来ませんので必ずご退場お願いいたします。
※会場受付にてIDチェックを行います。顔写真付き身分証明書をご持参ください。
※チケットを複数枚ご購入される方は、ご入場時必ずチケット分の人数が揃った状態でご入場ください。

info : zenkankaku@gmail.com

ビジュアルとアーティストと作家の第一弾を公開しました。
2023/11/18、Road trip to 全感覚祭を川崎ちどり公園で20:00から日の出にかけて開催します。期間の限られた中でチーム一丸、火ついた矢のごとく駆け抜けています。
来場する方は下にある注意事項やステートメントを必ず読んでからエントリーお願いします。

会場のキャパは2000人になります。この人数以上は来場できません。
販売方法はPeatixで¥3000¥5000¥7000のチケットを11/8(水) 21:00より販売します。チケット枠にはそれぞれ限りがある購入制で当日はこれにプラス、投げ銭を募集し、2000円以上で全感覚手ぬぐいを手に入れられます。
今日までに事前投げ銭やTシャツなどサポートしてくれた方、本当にありがとう。できることできないこと、たくさんの気持ちがありますが今祭はもちろん、このRoad tripを来年の全感覚祭につなげていきます。

駐車場は使用できないので車は原則禁止です。渋谷駅からJR川崎駅まで約30分、川崎駅よりタクシー 約10分、バスで約20分でこれるアクセスのいい場所になります。都内からタクシーでも8000円くらいでこれるので、相乗りしてくるのも推奨です。

アーティストの告知してから10日前後で本番という興行目線をぶっちぎった開催で、人が集まるのか、集まったとて予算がはまるのか、無事走り切れるのか、億万の不安はありますが全集中力を総動員していい時間をたぐりよせる。
会場で必要な資材やは準備がギリギリなのもあってコストがあがってしまった。とにかく背伸びせずに今やれることの全力をやる。

祭りをはじめると当たり前のことなんて何一つないんだと実感する。ステージ一つ、音響一つ、ゴミ箱一つ、演者や裏方の気持ち一つ、何一つ当たり前のことなんてないのだと気づく。
出演してくれる演者も二つ返事でのってきてくれたアーティストばかりで、同調ではなく同時代を並走する気概に心あおられる。

11/18 レーザーで祭壇をつくろうと思ってる。先日出演したfrueでも色んな人とたくさんOLAibiの話をした。祭りでそんな風に話すことは健全だと思う。距離が近かった人も遠い人もいるだろうけど、音楽を生きてきた人はピュアな意識を世界に溶かしてきたのだから、友達とお客さんも境界もないし、さよならのためじゃない花をそなえたい。きっと笑ってくれると思うんだな。

ルールはルールで、それ以上にその場所その瞬間で想像力と思いやりが交錯するところをイメージしています。
2023年、終わりに向かっていく今、わたしたちがやり残したこと、Road Trip To 全感覚祭よろしくお願いします。

(マヒトゥ・ザ・ピーポー)

CS + Kreme, Kassem Mosse, livwutang & YPY - ele-king

 今年精力的にパーティを開催してきたファッション・ブランドの〈C.E〉。その2023年最後のパーティの内容が発表されている。〈The Trilogy Tapes〉から作品をリリースするメルボルンのCS + Kremeは今回が初来日。
今年充実のアルバムを送り出したカッセム・モッセ。さらにそこに〈C.E〉のパーティには初出演となるlivwutangYPYの2組が加わる。全4組中3組がライヴでの出演とのことで、新しい試みに満ちた〈C.E〉のパーティを堪能しよう。会場はおなじみの表参道VENTです。

[11月27日追記]
 新たに追加出演者が発表されました。ロンドンをベースに活動するDJのCõvcoが登場。また、会場のみ限定で販売されるTシャツについても告知されています。


RP Boo Japan Tour 2023 - ele-king

 これまた見逃せない情報の到着だ。シカゴのフットワークの偉大なる先達、RP・ブーがひさしぶりに来日する。東京・名古屋・大阪の3都市を巡回。今年は、10年前に出たファースト・アルバム『Legacy』の続編となる新作『Legacy Volume 2』をリリースしている彼だ。その最新スタイルがどうなっているのか、この目と耳で確認しにいくしかない。

interview with Gazelle Twin - ele-king

 作曲家、プロデューサー、シンガーであるエリザベス・バーンホルツの別名として知られるガゼル・ツインの作品は、トランスフォーメイション(変化・変容)によって定義されてきた。2011年に『The Entire City』でデビューした際には、マックス・エルンストの鳥のような分身、ロプロップに触発された衣装でパフォーマンスを行った。2014年の『Unflesh』では、彼女の学校の運動着をモチーフにした衣装を身に着け、ナイロン・ストッキングを頭にかぶって顔を覆い、内臓をえぐるような(ホラーな)音楽を演奏した。これまででもっとも高い評価を得た2018年のアルバム『Pastoral』では、バーンホルツは、アディダスのトレーナーに野球帽をかぶり、ブレグジット派とリトル・イングランドの有害な遺産を標的にした邪悪なハーレクインに扮している。

 ニュー・アルバム『Black Dog』では、仮面ははずされたものの、彼女はまだ自分自身に戻ったわけではない。このアルバムでは、イギリス・ケント州にある農家を改造した家で過ごした幼少期に遡り、彼女を含む家族の何人かが遭遇した超自然的存在で、アルバム・タイトルとなった黒い犬が取り上げられている。一家は彼女が6歳の時に引っ越しをしたのだが、彼女のなかには漠然とした恐怖が残っており、一人目の子を出産した後にそれが余計に強くなっていた。そこで、彼女は古い記憶を掘り起こして幽霊話に没頭し、自分を悩ませているものの正体を解明しようとしたのだ。
 以前、バーンホルツはガゼル・ツインを操り人形に例えていたが、今回は自分自身を媒体として声をチャネリングさせている。アルバム中に撹拌された、薄気味悪いエレクトロニクスの響きは、時折不穏な静けさに中断され、聴く者を不安にし、時には不気味なサウンド・デザインと激しいヴォーカル・パフォーマンスの両面で、後期のスコット・ウォーカーを彷彿とさせる。完璧なハロウィーン向きのサウンドトラックともいえる。このアルバムは、ホラー映画『Nocturne』などの彼女の最近のスコアをリリースしているInvada Recordsからの初のソロ・アルバムとなっている。

だから子どもたちには、反抗心を植え付ける必要がある。学校では無理なら、家庭でね。

数日前に初めて『Black Dog』を聴いたのですが、ジェニファー・ケントの『The Babadook(ババドック 暗闇の魔物)』を思い出しました。この映画はご覧になりましたか?

GT:一度飛行機のなかで観たのだけど、もう一度観なくてはと思っています。自分が親になる前に観ていて、映画については微かな記憶があるだけ。いま観ると、また違ってみえると思う。

かなり不快に思われるかもしれませんね。ホラー的な要素がありながら、実生活での難しい子供の母親であることの痛みが混ざり合っていますから。見ているものが本当に超自然的なものなのか、あるいは母親の経験が明示されているのかがわからなくなります。

GT:この映画が公開され、自分が母親になってから、この映画について書かれたことをたくさん読みました。おそらくもう一度観たら、ショッキングだと思う。このレコードで出てきた表現のように。親にとっては間違いなく普遍的なものなのに、ほとんど語られることがないように思う。

その理由は、子どもを持つ経験をした人たちが、他の人が親になるのを怖がらせないようにするためでもあるのでしょうか?

GT:それもあるでしょう。そして、それは自分だけの唯一無二の経験だと思っていて、他の人が同じような経験をするとは想像したくないのかもしれない。そして、一定の人たちは、このことをどこかへ埋めて忘れてしまい、前に進みたい気持ちもあるのだと思います。女性が出産について語るときにも似ていて、あんなに痛くて大変な思いをするのは無理だと思いつつ、次の日には「ふむふむ。私はやり遂げた!」という感じ。でもときには、その経験があまりにも強烈で、無視できないこともある。想像以上に物事がひっくり返るような経験だから、みんながもっとそれについて語ればよいのにと思っている。それはすごく大きなトランスフォーメイションで、人間関係や、個人的な感覚や肉体的な感覚においてもそう。とても壮大で重大な出来事だから。これほど長い間、人間がそれを続けてきたことが信じられない! うまくいかないこともあるようだけど、それは起こり続けているしね。

幽霊や不吉なことに付きまとわれる性質には、ほとんど不安や憂鬱、そしてストレスがテンプレートのようにセットになっているのだと思う。物事には生理学的な繋がりがあって、幽霊のループでは、同じことを繰り返す幽霊と、同じ音を繰り返し出すことが繋がっているのではないかと感じる。

『Babadook』を思い浮かべたもうひとつの理由は、映画の結末を覚えていらっしゃるかわからないけれど、彼らを恐怖に陥れていた生物が、まるで手に負えないペットのように、地下室に住み着くことになってしまったからです。関係性が変わり、もはや恐怖の対象ではなく、共存することを学ぶようになった。あなたがアルバムで書いた黒い犬が、アルバムを通してヌメっと現れる存在であるところにも、共通点を感じました。

GT:そうね、それは魅力的な繋がりかもしれない。今晩、絶対に映画『Babadook』をもう一度観てみるわ(笑)。アルバムを制作する過程で、こういうものを観たり、接したりした微かな記憶を辿ったのだけど、当時は怖く感じていなかったことに気付いた。その奇妙さを思い出したのは歳をとってからで、兄弟や父と話して、彼らの同じような体験のヴァージョンを共有することで、これは奇妙で、変で、怖いことだと気がついたのです。このレコードでは、最初はごく大雑把に幽霊について書いたものだったのだけど、子ども時代から10代、大人、そして親に成長するまでの間に経験した不安や鬱との関係性と深くからみついたものになった。幼少期の記憶というのはずっと残っていて、ループされて止めることができないの。

ご兄弟やお父さんも経験したことだったのですね?

GT:たぶんね。いま、そのことを話そうとすると、兄弟はすごく積極的で真剣に語るから。彼にとっても多くのことが未解決なのだと思う。父の方は、いつもそのことを喜んで話してくれるんだけど、多くのことが、なんというか……ありがちだけど、時間がたつにつれて内容が変わっていくの。ストーリーが洗練されていったり、語り口も少し変化したり。でも、私と、特に兄弟が100%の確率で覚えているのは、それが小さな黒い犬だったということ。彼は犬がベッドの下で鳴いているのを聞いたというし、興味深いことに、犬を見たこと、匂いを嗅いだことも覚えているの。私が覚えているのはそれとはかなり違って、それはいつも、ただの影で、ベッドの横に存在する小さな頭部だった。父の話だと、夜中に犬が唸り声をあげたのを覚えていると。それはかなり怖いと思うけど(笑)。それらが、このアルバムのイメージの原動力になっているのはたしかね。でも同時に私のなかでも、それは、実存的で象徴的なものになった。幽霊や不吉なことに付きまとわれる性質には、ほとんど不安や憂鬱、そしてストレスがテンプレートのようにセットになっているのだと思う。物事には生理学的な繋がりがあって、幽霊のループでは、同じことを繰り返す幽霊と、同じ音を繰り返し出すことが繋がっているのではないかと感じる。このアルバムの制作時に、例えば何度もトラウマのような経験を思い返してしまうPTSDの仕組みと似ている部分が多くあることに気がついた。自分で助けを求めて行動を起こさなければ、そのサイクルを断ち切ることはできない。怪談も同じで、断ち切らなければならないループがあって、そのループは、トラウマになるような、精神的な苦痛をともなう経験によって引き起こされるのだと考えられる。ごめんなさい、話がゴチャゴチャになってしまった……。もう4杯もコーヒーを飲んでしまったわ。

いえいえ、全部いい話ですよ。Bandcampの『Black Dog』 のページには、このアルバムの制作期間が5年にわたったとありますが、かなり長い時間の作業だったのですね。

GT:そう、本当に長かったです。予想していたより長くかかってしまったけど、2年間は、COVIDで中断されてしまったし。COVIDよりも前に、もう一人子どもを産もうと決めていて、最初のロックダウン中にその子供が生まれた。これには良いこと、悪いことの両方があったけど、より時間をかけて考えを煮詰めることができたわ。このアルバムを作ろうと思ったのは、本当に瞬間的なことで、『Pastoral』ツアーの最終公演の会場が幽霊の出そうな場所で、一歩足を踏み入れると、瞬時に違和感と不快感に襲われた。そこに何か得体のしれないものがいるような。その場所に居るのが嫌で、ショウの間は本当に不安だった。でもその日、ショウの後に「次のアルバムは幽霊をテーマにして、自分はその霊媒になろう」と思いついた(笑)。複数の声を通す導管になるというのが2019年頃の計画だった。それ以降、その計画が頭にあって、超常現象や幽霊や祟りについての話や理論に浸っていた。ポッドキャストや映画、本などを通じて、本当に怖くなり、心が高ぶっていった。知人にもそれぞれの物語を語ってもらった。できるだけ多くのヴァージョンを集めたかったし、これまでに自分の超常現象について語ったことのない人たちの話も聞きたかったから。

このような探求プロセスを経た後、どのようにして音楽で表現するに至ったのですか?

GT:おかしな話だけど、そのこととの繋がりを意識する前に、すでに多くの曲を作っていた気がします。アルバムの大半は、今年のはじめ頃に作ったの。音楽をわりと早く完成させることができたのは、それまでに大量の感情や思考を貯め込んでいて、今にも吹き出しそうだったから(笑)。その前年の夏に友人の家でサンプルをたくさん作っていた。Moog (Sound) Labという、基本的には可動式の素晴らしいアナログ・スタジオを使用する機会を得たの。全部ヴィンテージのMoogの機材で、さらにサリー大学のものだと思われるヴィンテージのVCS3もあって、光栄にも、夏の間、借りることができた。私の家にはそれを置く場所がなくて、友人の家に置かせてもらったというわけ。私は友人の家に行って奇妙な音を出して、音源を家に持ち帰り、コンピュータに入れるだけであまり触らなかった。そして、今年の初めにまたその作業を再開し、曲に編み込み始めた。音楽作りはとても幽玄なことだと思う(笑)。私にとって、完成するまでは、それが何の意味も持たないものに思えるし、私の脳がそうなっているのかわからないけれど、半分ぐらいはやったことを覚えてもいないの。ただ、何曲かは、レコーディングするのにかなりの苦痛が伴う作業だったことは覚えている。すべてが一気に出てきて、歌詞も溢れ出てくる。レコーディング中、私はとても感情的になり、自分を律する必要があった。それと同時に、溢れ出てくるものに驚いてもいた。「これは何? 私から溢れ出てくるこれは何なの?」と。

このアルバムについてあなたが言っていた、媒体としての役割についてですが、過去にあなたはガゼル・ツインをご自身のアイディアを表現する操り人形のようなものだと説明しました。表面的には、操り人形と媒体は似たような機能を持つものだと思えるのですが、あなたにとっては違いがあるのでしょうか?

GT:そうね、とても近いものだとは思います。たぶん、媒体という概念は、幽霊のルートを辿る以前から頭にあったことだと思う。ガゼル・ツインについては、何枚かアルバムを出したり、プロジェクトを進めたりするうちに、自分自身のキャラクターやヴァージョンが乗っとられるのを許容した自分を感じたのだけれど、でも実はそれとはまた何か違うものだったりする。過去2枚のアルバム『Pastoral』と『Unflesh』では、それらのキャラクターに独自の方法で命が吹き込まれたのです。ライヴ・パフォーマンスでは、私の体のなかで事前に計画したわけではない動きが生まれ、それがぴたりと合って、自分の体のなかを力強く流れているように感じました。まるで憑かれているような、ほとんど悪魔的な奇妙な出来事で、その体験が、まるで霊媒になって自分のなかに霊魂を流し込むようなことだと感じた。その時、幽霊のことを思いついて、そのふたつを掛け合わせてみたというのが本当のところかな。

11月には、このツアーが予定されていますよね。どのような内容になるのでしょう?
この音楽のレコーディングは苦痛の伴うものだったとお話されましたが、そのような経験を何度も繰り返すことになるのでしょうか。あるいは、繰り返すうちに楽になるのでしょうか?

GT:最終的には後者の方であってほしいです。ライヴについては、おそらくそれが理由で、これまででいちばんアンビヴァレントな気持ちになっています。まず、今回は仮面を伴わずに、自分をさらけだすことになるので。完全な自分自身であるとは言わないけれど、私という者の正体が見えやすいでしょう。音楽も、このレコードでは鼓動が高まるような激しく容赦のないビートは多くない。瞬間的にはそのような場面もあるけど、今回は大きく、感情的に歌いあげる部分や大きなコード・チェンジもあります。レコードを通じてムードが大きく変化する。これまでのライヴでは、容赦なく鼓動が高まるような、まるでワークアウトのような状態を、深く考えることなくできていましたが、今回はより多くの思考や、うまくペースを作ることも必要になる。正しいウォームアップが必須だし、自分の身の置き所を間違えないようにしないといけない。

そうそう、このアルバムであなたは本当に歌いあげていますよね。思いっきり!

GT:本当に、大きく歌い上げる場面が多いんです。ツアー中に風邪でもひいたら台無し。

そういう季節でもありますしね。

GT:そうなの。すでにCOVIDや胃腸炎などの悪夢へと向かう時期だし。ツアーに出るには最悪の時期だけど、なぜかいつもこの季節になってしまう。秋にアルバムを出し、寒くて皆が体調を崩しやすいときにツアーに出るという……。

長い間、インディーズで音楽をリリースしてきたガゼル・ツインのソロ・アルバムを、初めてレーベルからリリースする理由は何でしょうか?

GT:長年、私をサポートしてくれている〈Invada Records〉との継続的で本当に素晴らしい友情と関係を築くことができ、彼らが私にチャンスを与えてくれたからです。『Pastoral』の後、私はそれを喜んで受け入れました。それまでは、すべてのレコード発売のためにPRS基金(イギリスの新しい音楽と才能開発のための慈善資金提供団体)やその他から資金を調達し、関係者に報酬を支払い、作品を制作して世に送り出すまで、あらゆることをする必要があった。いずれはレーベルと契約したいという野心は常に持っていました。誰かと一緒に仕事をすることで、スケール感を大きくすることができるし。オファーされたとき、頭を悩ます必要はまったくなかった。私は物心ついた頃からポーティスヘッドの大ファンだったし、ジェフ・バロウが〈Invada Records〉と関係があることは知っていたから。私は彼に少しばかり恐れを抱いていたと同時に、いつかは出会えるかもしれないと密に期待していました。まだ会えてはいないけど、会えることを願っています。

まだ会えていないのですか。

GT:そうなんです。彼らはブリストルにいるし、ロックダウンやら、子どもたちの誕生やら色々なことがあったので、まだブリストルに挨拶しに行けていません。でも2月にブリストルでショウをやるので、その前には彼らに会えるといいいのだけど……。これまではすべてがリモートで行われていたし。皆信じられないほどのハードワーカーで、思いやりにあふれた人たち。長いお付き合いになるといいのだけど。いまこの時というのは、音楽業界にとって非常に厳しい時期で、Brexit(英国EU離脱)がそれをさらに悪化させている。彼らには、『ストレンジャー・シングス』のサウンドトラックのような大きなリリースもあるのに、それさえも利益を出すのが難しいと聞いて、とても憂鬱な気分になります! でも、彼らは仕事を続けていて、それを目の当たりにするのはすごく刺激的。彼らはその仕事を愛しているから、やらずにはいられない。そのような姿勢の人たちと仕事をするのは最高です。

多少、頑なで血の気の多いぐらいの方が、長い道程を歩めることもありますよね。

GT:その通り。粘り強く、できることをやり続ける。沈没しない限りは。タイタニック状態でない限り!

ただただ、希望の光が差し込むことを願うばかり。トーリー党はもう終わらせなければならない。彼らが一掃されなければ、おかしいと思う。そうでなければ、その時点で私は絶望してしまう。だからこそ、私はファンタジーの世界に引きこもるの(笑)。

『Pastoral』の話に戻りますが、これはBrexitの後、私が最初に聴いたアルバムのなかで、イギリスで起こった大きな分裂について、心の中を整理する方法を教えてくれたもののひとつでした。他の多くの人にとっても、同じように心に響いたようですね。

GT:そのようですね。なぜだかはわからないけれど……。まず、タイミングはよかったのだと思う。インディーズでのリリースで、少々PRSの資金提供は受けていたけど、広く流通させるつもりはなかった。でも、なぜか人びとの心に響いたようで、いくつか素晴らしいレヴューや書き込みがありました。ただ自分が田舎に引っ越したときの気分をレコードにしたつもりだったから、驚いたというのが本当のところ(笑)。イギリス人であること、突然そのアイデンティティについて少し疑問を感じてしまうこと。私は常に歴史に興味を抱いてきたけれど、歴史と宗教などがアイデンティティを形成し、それがイギリス人のアイデンティティにどのように使われてきたのか。私は親になったばかりだったので、少し変になりそうだった。そのことを心底バカにしたり、からかったりしたいと思っていた。少しパンクな態度をとろうと思った。本当に悔しかったし、腹立たしく感じていから!

それを発表して反響を得たいま、あなたはイギリスについてどのように感じていますか? 遠くから見ていると、どんどん悪化しているように見えるのですが。

GT:相当ひどい状況だと思う。私の知り合いでも億万長者でないほとんどの人は宮殿のなかでほんの数人によって決められたことのせいで、突然、ライフスタイルのダウングレイドを余儀なくされた。私は自分の正気を保つために、政治の話についての記事や、それにまつわる日々更新されていく負のループから距離をとる必要があった。私は自分の子どもたちの幼少期を、常に絶対的な落胆や鬱々とした感覚に覆われたものにはしたくない。でも、残念ながら彼らはすでにそれらの影響を受けているし、これからの彼らの人生にもかなり影響すると思う。腹立たしいのは、1980年代のトーリー党(保守党)の時代でさえ、私はもっと良い時間を過ごしていたということ。学校では、私に親切ではなかった数人を除けば、楽しく過ごせたし、良い教育、音楽教育を受けることができた。

(音楽教育は)いつも真っ先にカットされるものですよね?

GT:本当に信じられない!  トーリー党のイデオロギーのどこかに、アーティストたちが物のわかった人たちであることを知っていて(笑)、彼らの繁栄を許せば、自分たちの所にやってくるという認識があるのではないかと思う。それはあるんじゃないかな。だから子どもたちには、反抗心を植え付ける必要がある。学校では無理なら、家庭でね。

次の総選挙に期待。

GT:ただただ、希望の光が差し込むことを願うばかり。トーリー党はもう終わらせなければならない。彼らが一掃されなければ、おかしいと思う。そうでなければ、その時点で私は絶望してしまう。だからこそ、私はファンタジーの世界に引きこもるの(笑)。まったく異なる方向に興味を持つことの方が、よほど見返りがあるというものよ。ところで、あなたは日本のどのあたりに居るの?

東京です。

GT:ああ、そうなの! 本当にいつか東京に行ってみたいと思っているの。ショウをしにでも、旅行でもいいから。息子たちがスタジオ・ギブリの大ファンだし。私、正しく発音できてた? 「ギブリ」?「ジブリ」?

「ジブリ」ですね。

GT:なるほど。これでわかったわ!

いまは、ジブリ・パークもあるんですよ。映画に出てきた場所などが再現されていて、『となりのトトロ』の家に行ったりできる。

GT:ああ、それは子どもたちより私の方が興奮するかもしれない。今日も家を出るとすぐに「Hey Let’s Go」(「さんぽ」の歌詞〝あるこう〟の英語版)を口ずさんでいたぐらいだから。うちの子のひとりは、レインコートを着て、もうひとりは小さな虎のつなぎを着ていたのだけど、車のなかではこの曲をかけさせてくれず、かわりにヒューイ・ルイス・アンド・ザ・ニュースの“パワー・オブ・ラヴ”をかけさせられたわ。

それは興味深いチョイスですね。

GT:彼らは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が大好きだからね。とくに車のデロリアンが。実は、私が子どもの頃に好きだったものばかりなんだけど。

 

interview with Gazelle Twin

by James Hadfield

The work of Gazelle Twin – the alias of composer, producer and singer Elizabeth Bernholz – has been defined by transformation. When she debuted with “The Entire City” in 2011, she performed in a costume inspired by Max Ernst’s birdlike alter ego, Loplop. With 2014’s “Unflesh,” she donned an outfit based on her school PE kit and pulled a nylon stocking over her face while performing visceral body(-horror) music. 2018’s “Pastoral,” her most acclaimed album to date, found Benrholz she adopting the guise of a malevolent harlequin in Adidas trainers and baseball cap, as she took aim at Brexiteers and the toxic heritage of Little England.

On new album “Black Dog,” the masks are off, but she still isn’t quite herself. The album reaches back to the early years of her childhood, spent in a converted farmhouse in Kent, where she and some of her family had encounters with a supernatural presence – the black dog of the title. Although the family moved when she was six, an inchoate fear stayed with her, and grew stronger after the birth of her first child. So she started dredging up old memories and immersing herself in ghost stories, trying to understand what exactly was haunting her.

While Bernholz has previously compared Gazelle Twin to a puppet, this time she saw herself as a medium, channeling voices. The album’s churning, eldritch electronics, punctured by moments of uneasy calm, make for a disquieting listen, at times recalling late-period Scott Walker both in the uncanniness of the sound design and the intensity of the vocal performances. A perfect Halloween soundtrack, in other words. It’s her first solo album for Invada Records, which has also released some of her recent scores, including for the horror film “Nocturne.”

I listened to “Black Dog” for the first time a few days ago, without reading anything about it beforehand, and it was making me think of Jennifer Kent’s “The Badadook.” Have you seen the film?

I’ve seen it once, on a plane, and I really need to revisit it. I have a faint memory of what that film is, and I watched it before becoming a parent. I think it would be very different watching it now.

Yeah, it might be quite uncomfortable. The way it has this horror element, but then just mixed in with the real-life pains of being a mother to a very difficult child. It makes you question whether what you’re seeing is something genuinely supernatural, or if it’s this manifestation of what the mother is going through.

I’ve read a lot about it since it came out, and since I’ve become a parent. I think it’s going to be a bit mind-blowing if I watch it again, in terms of what has come out on this record – which is a universal thing, no doubt, for parents. It’s just rarely spoken about, I think.

Do you think that’s partly because people who've gone through the experience of having kids don't want to scare anyone off from becoming parents themselves?

I think it is partly that. I think also, you know that it’s your experience, and unique, and you don’t want to presume that anyone else will necessarily have that same experience. I think also, there’s a certain degree of wanting to just bury it, and just move on. It’s kind of similar to how women talk about childbirth. You can’t believe that it’s possible to go through so much pain and effort, but then the next day you’re like: “Hmm! I've done it.” But sometimes, the experience can be so intense that you can’t really ignore it. I wish people did talk more about it, because it really does turn things upside down, in many ways – many more ways than I ever imagined it would. It’s a huge transformation that happens: in a relationship, but then in your own individual sense, and your physical sense. It’s just an epic, momentous thing. I can’t believe people have been doing it for so long! It doesn’t seem to work that well, sometimes, but it does keep happening.

I guess another reason I was thinking of “The Babadook” is because – I’m not sure if you remember the ending of the film, but this creature that’s been terrorising them, they end up with it living down in the basement, almost like an unruly pet. It’s like the relationship has changed, so it’s not this object of fear any more, but something that they're learning to coexist with. Reading what you’ve written about the black dog – which is this presence that looms throughout the album – it seemed like maybe there was some similarity there as well.

Yeah, that’s a really fascinating connection to make. I'm definitely going to go and watch “The Babadook” again tonight (laughs). Through the process of making the album, I went from these very faint memories of this sort of thing that I would see, and interact with – which I was never afraid of at the time. It was only through the bizarreness of remembering it when I was older, and then conversations with my brother and my dad about their version of it, that made me think: God, that’s creepy and weird, and scary. The record started out as something, very broadly, about ghosts, and became much more intertwined with my development from childhood into teenhood, into adulthood, into parenthood, and the connection with anxiety and depression. These memories of childhood just linger, and they stay with you – it's just like this loop that doesn’t stop, and I couldn't put it to bed.

So this is something that your brother and dad also experienced?

Well, supposedly. I mean, when I try to talk to them about it now, my brother’s very active and very serious about it. For him, a lot of it, I think, is unresolved too. I know that my dad was always really happy to talk about this stuff, but a lot of it’s kind of... you know, things change over time, the way people tell their story. The story gets refined, or the narrative slightly shifts. But from what I remember – and my brother absolutely, 100% remembers this – it was a small dog, a small black dog. He remembers hearing it under his bed, he remembers seeing it and smelling it – which is quite interesting. For me, it was very different: It was just a shadow, it was a small head that was by the bedside. My dad, I think, had a story about seeing it growling at him in the night, which is pretty terrifying (laughs). And obviously, that drives a lot of the imagery of the album. But also, it’s become something that's really quite symbolic to me, as an existential thing, really. I think there’s so much in the nature of ghosts and hauntings that is almost like a template for anxiety and depression, and stress. I feel like there’s connections in the physiology of things, the looping of ghosts – if you're talking about a ghost that does the same thing over and over again, or the same sounds. I became aware, when I was making this album, just how many similarities there are with how PTSD works, for example, and you’re reliving a traumatic moment, over and over again. You can’t break the cycle until you seek help and you do something about it, and it feels like ghost stories are the same. They’re this kind of loop that needs to be broken, somehow, and those loops are supposedly caused by these emotionally traumatic events. Sorry, I’m really, really waffling. I’ve had four coffees.

No, it’s all good. Looking at the Bandcamp page for “Black Dog,” it says you were working on the album over a five-year period. So it was quite a drawn-out process, right?

Yeah, really long. Longer than I really expected, but we had a couple of years’ interruption with COVID. I’d already decided before COVID that I was going to have one more child, and it just so happened that I had that child in the first lockdown – which was good and bad, really, but it gave me more time to just sort of stew. I made the decision to make the album, really, on a split-second moment – on the last show of the “Pastoral” tour, in fact, in what I felt was a haunted venue. I’d walked in and felt instantly different and weird. I just had that instant sense of, like: There’s something in this room. I really didn’t like being in there, and I was really anxious during that show. But that day, at the end of that show, I thought: I’m going to make the next album about ghosts, and I’m going to be a medium (laughs). I'm going to be like a conduit for multiple voices to come through – that was the plan, back in 2019. Then over that period of time, I kind of kept that in my head, and I just lived and breathed stories and theories about the supernatural, and about hauntings and ghosts. I was listening to podcasts, watching films, reading books – getting myself really scared and worked up. I was asking people I knew, as well, to send me their stories, because what I wanted was to have as many versions of paranormal events as I could, stuff from people that have never really spoken about it before.

When you’re going through all this process of exploration, how did you then go about expressing that in music?

Well, it’s funny, because I think I'd probably made a lot of the music before I’d clocked the connections. I think that the majority of the album was made this year, the beginning of this year. It came out quite quickly, and I think I’d just stored up so much of these feelings and thoughts that I was ready to blow (laughs). I’d made a lot of samples in my friend’s house the previous summer. I had the chance to use the Moog (Sound) Lab, which is a really amazing analogue studio, basically, that’s mobile. It’s all vintage Moog equipment – plus there was a vintage VCS3, which I believe belongs to the University of Surrey, that lent it to me for the summer. I was really privileged to have that, and my friend had to put it in their house, because I didn’t have space for it. I’d be going there and making these weird sounds, and then bringing them home and just putting them on my computer and not really touching them. But then I went back to it early this year, and started to kind of weave them into songs. Making music is a very ethereal thing, I think (laughs). For me, it doesn’t really seem to make any sense until it’s all done. I don’t remember even doing half of it – I don’t know if that’s just the way my brain is – but I do remember that quite a few of the songs were very wrenching to record. They would come out in one go, and the lyrics would just sort of pour out. I’d be very emotional during the process of recording, trying to sort of gather myself up, but also kind of surprised at what was coming out. It was like: What is this? What’s this thing flowing out of me?

With what you were saying about acting as a medium on this album: In the past, you've described Gazelle Twin as being like a puppet for your ideas. On the face of it, a puppet and a medium would both seem to serve a similar function, but what’s the distinction for you?

Yeah, I think it’s very close. I think the idea of the medium thing had already been in my head, before I’d gone down the ghost route. I’d actually thought of Gazelle Twin – you know, having come a few albums down the line, and a few projects down the line – I thought it’s like I'm allowing myself to be taken over by these characters, or these versions of myself, but they’re kind of something else. With the previous two albums, “Pastoral” and “Unflesh,” those characters came to life in their own, very unique ways. In the live performance of them, there would be movements that would just happen, in my body, that I didn’t plan, but they felt really right – like it was fully flowing through me, that energy. It’s almost like being possessed. It’s this almost demonic, strange event. So I had it in my head – I was thinking it’s like being a medium, and letting these spirits flow through me. Then I hit on the ghost thing, and I just put those two things together, really.

You're going to be taking this on tour in November. What’s that going to involve? You were just saying how wrenching it was to record some of these songs – do you think you’ll be having to go through that experience again and again, or will it perhaps become easier with repetition?

Well, I hope the latter, by the end. I am more ambivalent than ever about the live shows – for that reason, I think. Firstly, I don’t have the mask thing going on: I’m very much revealed. I wouldn't say I’m completely myself, but I’m very much visible. And with the music, there isn’t so much pounding, intense, unrelenting beats on this record. There are moments of that, but there’s a lot of moments of big, emotional singing – and chords, lots of big chord changes. There’s a lot of shifts in mood throughout the record. I think where I’ve previously been able to put on a live show that’s just relentless and pounding, and it’s kind of a workout situation – I can do it without thinking too much about it, and really go for it – this time it’s going to require a lot more thought, and a lot more pacing. I’m going to need to really warm up properly, and get myself in the right space and stuff.

Yeah, because you really belt it on this album. I mean, God!

There’s a lot of big singing, yeah. I’ll be buggered if I have a cold or anything throughout the tour.

Yeah, it’s that time of year as well, isn't it?

Yeah, exactly, I know. We’re already heading into the nightmare of COVID and stomach bugs and all that. It’s the worst time of year for me to ever be going out on the road, but it just happens that way every time. I always end up doing autumn records, and going and touring when it’s freezing, and everyone’s ill.

Having released all your music independently for such a long time, this is the first Gazelle Twin solo album that’s coming out on a label. What was the reason for that?

Just a sort of ongoing, really nice friendship and relationship with Invada Records, who had begun to support me over the years, and they just offered me that chance. I was all for it, after “Pastoral.” I’d gone through various stages of funding to release every record that I’d done; I had to have funding from the PRS Foundation and elsewhere to make that happen, to pay people, to get it made and get it out there. I’d always had the ambition to be signed, eventually, because it’s potentially a really nice thing to have – to work with somebody, and to be able to increase the scale of what you do. It was a no-brainer for me when they offered. For as long as I can remember, I was a huge Portishead fan, and I always knew that Geoff (Barrow) was associated with Invada Records. Whilst I was a bit terrified of him, I was secretly hoping that one day I might be able to meet him – I haven’t yet, actually, but I hope to.

Oh, have you not?

No, because they’re in Bristol, and since all this stuff’s been happening, it’s been lockdown and kids, so I’ve never been able to get back to Bristol to say hi or anything. But I’m doing a show in Bristol in February. Hopefully I’ll see them before then – but no, everything’s been remote so far. They all work so hard – I can’t believe how hard they work – and they really care. I hope it’s a longterm relationship. It just happens to be a really bad time for the music industry at the moment, where Brexit makes it even harder. Some of the records that they’ve released, like the “Stranger Things” soundtrack – these are huge, huge things. And to know that even that is hard to make a profit, or whatever, it’s so depressing! But they carry on doing it, which is more impressive, because they just love it so much. It’s all they know. I love working with people who have that attitude.

A bit of bloody-mindedness gets you a long way, sometimes.

Absolutely. Yeah, you’ve got to be persistent, and just carry on if you can. As long as things aren’t sinking. As long as you’re not in a Titanic situation!

Just going back to “Pastoral”: After Brexit, it was one of the first albums I’d heard that really gave me a way of, I guess, processing this great schism that had happened in the UK. It seems like it resonated with a lot of other people, too.

Yeah, I mean, I don’t know... well, I do know why. Firstly, I think just the timing was probably quite lucky. You know, it’s an independent release. I had a bit of PRS funding, but we hadn’t planned for it to get really widely distributed. But it did seem to chime with people, and there were a couple of really excellent reviews and write-ups about it. I was surprised, really, because I thought I’d just made a record about what it feels like to move to the countryside (laughs). And being English, and then suddenly facing that identity and questioning it a bit, and wondering. You know, I’ve always been interested in history as well – history and religion, and how these things make an identity, and how they’ve been used in English identity. But I was also a new parent, and going a bit crazy. Also, I felt like I really wanted to mock things. I really wanted to take the mickey a bit, and just have a little bit of a punk attitude towards it. I was really frustrated, really angry.

Having put that out and seen the response it got, I was wondering how you feel about England now? Because looking from afar, it seems like stuff just gets worse and worse.

It’s a bit of a shit show, I think. For most people I know who aren’t millionaires, they are suddenly having to downgrade their lifestyle because of decisions made by a few people in a palace. I have had to step away from reading all about political life, being connected to the eternal loop of misery that is generated on a day-to-day basis, just for my sanity. I don’t want my children’s early years to be constantly overshadowed by this sense of absolute dejection and gloom – but unfortunately, it’s affecting them, and is going to affect them for a lot of their lives. It makes me so mad that this stuff is even... you know, I had a better time in the 80s, and it was still a Tory government. I had an amazing time at school – apart from individuals who weren’t kind to me – but in terms of education, music education.

It's always the first thing that gets cut back, isn't it?

It begs belief, doesn’t it? I think, somewhere in the Tory ideology, they know that artists are enlightened (laughs) and they know that they’ll be coming for them if they’re allowed to flourish. That’s part of it, really. There’s that rebelliousness that needs to be instilled (in children) – if it’s not at school, then at home.

Roll on the next general election.

I hope that genuinely brings a glimmer of hope. I mean, the Tory party have to be finished. I’d find it ludicrous if they didn’t get wiped out. I’d be in despair at that point, I think. But I think this is why I retreat into a world of fantasy (laughs). It’s so much more rewarding, isn’t it, just to be interested in a completely other dimension. Whereabouts in Japan are you, by the way?

Tokyo.

Oh, wow. I really hope to come to Tokyo one day, whether for a show or just to visit. I’ve promised to bring my boys there one day, because they’re massive Studio Ghibli fans. Have I said that right? Is it “Gib-lee” or “Jib-lee”?

“Jib-lee."

Right. Now I know!

They have the Ghibli Park now, as well. They’ve recreated some of the locations from the films, so you can go to the house from “My Neighbour Totoro” and stuff like that.

Oh, I’d probably be more excited than my children. I was literally singing “Hey let’s go!” as we left the house this morning. My little one was in a raincoat and one in a little tiger suit. They didn’t let me put it on in the car – we had to listen to "The Power of Love" by Huey Lewis and the News instead.

That’s a curious choice.

Well, they love it because of “Back to the Future.” They love the car, the DeLorean. It’s all stuff that I loved, really, when I was a kid.

DETROIT LOVE TOKYO - ele-king

 これは絶対に見逃せない。カール・クレイグの主宰するデトロイトのショウケース的なパーティ「Detroit Love」が、初めて日本で開催されることになった。カール・クレイグ本人に加え、まさかのムーディーマン、そして2020年デビューの新世代、DJホログラフィックの3組が出演する。12月2日、会場は今年オープンしたばかりの歌舞伎町 ZEROTOKYO。デトロイトといえば先日のワジード公演もすばらしかったけれど、きっとこの「DETROIT LOVE TOKYO」も忘れられない夜となるにちがいない。

 なお、3組それぞれの単独公演も決定しているので、下記よりチェックを。カール・クレイグは江ノ島で、ムーディーマンは名古屋で、ホログラフィックは渋谷と新宿でプレイします。

2023.12.2 (Sat) DETROIT LOVE TOKYO @ZEROTOKYO

OPEN 23:00 CLOSE 04:30
HP:https://zerotokyo.jp/event/detroit-love-tokyo1202/

DOOR: ¥8,000 ADV: ¥7,000
TICKET: 【zaiko】https://zerotokyo.zaiko.io/e/DETROITLOVETOKYO1202

【Z HALL】
CARL CRAIG
MOODYMANN
DJ HOLOGRAPHIC

【RING】
DSKE
Kana Mechaniker
MAYUDEPTH
Shingo Suwa (Acid camp)

DETROIT LOVE

ブルース、ジャズ、モータウン、パンク、ヒップホップ、ポップス、そしてもちろんテクノに至るまで、豊かな音楽文化を有する都市であり、その音楽的アウトプットにおいて世界最高峰の都市のひとつとして知られているデトロイト。
そんなデトロイトのアーティストを世界中のクラブやフェスティバルで紹介し、デトロイトのエレクトロニック・ミュージック・シーンの奥深さ、ユニークさを一晩を通して体験出来る画期的パーティー「DETROIT LOVE」が遂に待望の日本初開催!
初となる今回のDETROIT LOVE TOKYOでは、DETROIT LOVEの主宰者である重鎮Carl Craig、デトロイトハウスを代表するMoodymann、また新世代DJとして注目を集めるDJ Holographicが参加。伝説的な一夜を見逃すな!

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各アーティスト単独公演情報

11.25 (Sat) DJ Holographic @ Shibuya Enter
12.1 (Fri) DJ Holographic @ Shinjuku Bridge
12.3 (Sun) Carl Craig @ Oppa-la, Enoshima
12.3 (Sun) Moodymann @ Club Mago, Nagoya

interview with Nubya Garcia - ele-king


3日連続公演の初日にあたる10月2日、ブルーノート東京でのステージ。向かって左からライル・バートン(キーボード)、ヌバイア・ガルシア、マックス・ルサート(ベース)、サム・ジョーンズ(ドラムス)。

 2010年代後半以降の音楽、その見過ごせない潮流のひとつにUKジャズがある。先日エズラ・コレクティヴがジャズ・アーティストとして初のマーキュリー・プライズ受賞を果たしたのは、かれらの活動だけが評価されたからではないはずだ。それはシーン全体が無視できない成果をあげてきたことの帰結であり、ムーヴメントが成熟に至ったことの象徴だったのではないか。
 さまざまなプレイヤーやグループが切磋琢磨し、それぞれの独創性を追求しつづけている。あまたの才能ひしめくなか、サックス奏者のみに的を絞るなら、筆頭はシャバカ・ハッチングスとそして、ヌバイア・ガルシアということになるだろう。まさにエズラ・コレクティヴとも浅からぬ関係にある彼女だけれど、その音楽を特徴づける要素のひとつにダブがある。ブルーノート東京での3日連続公演の中日、10月3日のステージでもそれはひしひしと感じられた。バンドはサム・ジョーンズ(ドラムス)、マックス・ルサート(ベース)、ライル・バートン(キーボード)からなるカルテットだったが、メンバー紹介では客席後方のダブ・マスターにもしっかり感謝が述べられていた。以下でも語られているとおり、ダブにはなみなみならぬ思い入れがあるにちがいない。
 力強いサックスを支えるドラムスにはエレクトロニック・ミュージックからの影響もうかがえる。最新シングル曲 “Lean In” はUKガラージから触発された曲だという。あるいはパッケージとしての現時点での最新作はクルアンビンとのライヴ盤だ。それら一見ジャズとは異なる文脈に属しているように映るものへの貪欲さこそ、ガルシアの音楽を豊かなものにしているのだろう。
 取材は翌日の10月4日。まだ公演を控えているにもかかわらず、終始気さくな態度で彼女は話に応じてくれた。

すごく自由な空間を与えてくれる場所、というのがわたしにとってのダブかなと思う。自分が解放されるというか。ツアーが終わったとき、いつも最初にやりたいのが、サウンドシステムを組んでいる場所で8時間ぐらい休みなしにそういう音楽を聴きにいくことで(笑)。

昨日のライヴ、すばらしかったです。ふだんロンドンでギグをするときはオールスタンディングの会場が多いのですよね? ブルーノート東京はいかがでしたか?

NG:スタンディングも着座も、わたしは両方好き。ヨーロッパでも座席指定のショウをやることはあって。シートとべつにスタンディング・エリアのような場所を設けてどちらも楽しめるようにするときもある。今回はブルーノートでパフォーマンスができてすごく嬉しかった。東京のアイコニックな場所だし、シート・チェンジがあって、それで場のエナジーが変わる感じも楽しい。光栄でした。

以前ジョー・アーモン・ジョーンズのバンド・メンバーとして来日したことがあるかと思いますが、ご自身がメインの公演としては今回が初来日になります。どこか訪れた場所はありますか?

NG:ちょっと忙しくて、まだあまりいろんな場所には行けてないんだけど……新宿で「ガルシア」っていう(自分とおなじ)名前のバーを見つけて、そこは最高だった! 明日からようやくオフだから、日本のスタイリッシュな洋服を買いに行きたい。あと、アイウェアのお店に行ったり、ボートで東京湾をまわったり、お寺を見に行ったり……いろいろ楽しもうと思ってる。

ぜひ楽しんでいってください。ではまずあなたの音楽キャリアのことからお伺いしたいのですが、初めて学んだ楽器はヴァイオリンだったんですよね。

NG:ええ、そのとおり。

クラシック音楽を学んでいたということでしょうか?

NG:そう、18歳までは。17歳ごろまではジャズを習ったり学んだりした経験はなくて。ティーンエイジャーのとき、週末だけちょっと習いにいったりグループでやってみたりもしたけれど。

現在あなたはサックス奏者/フルート奏者として活躍していますが、それらの楽器を選ぶことになったきっかけ、そしてジャズをやっていくことになったきっかけはなんだったのですか?

NG:じつはサックス自体は10歳のことからやっていて。あとクラリネット、ヴァイオリンも。兄や姉とコンサートに行ってビッグ・バンドの演奏を観たりするようになってから、ほかの楽器にも興味を持つようになった。サックスはひとつのジャンルに限らずさまざまな音楽にとりいれられているから、いろんな楽曲に挑戦できそうだなと思って。そのかわり、ちゃんとグレード(学年、成績)もとって、ほかのことも勉強するという条件でね。17歳まではクラシック音楽のサクソフォンをやってて、それ以降本格的にジャズへ打ちこみはじめた。

今年の9月、エズラ・コレクティヴがジャズ・ミュージシャンとして初めてマーキュリー・プライズを受賞しましたよね。そのスピーチでリーダーのフェミ・コレオソが、これは自分たちだけの力ではなく(無償のプログラムである)トゥモローズ・ウォリアーズをはじめとする多くのサポートのおかげでもある、というような感謝を述べていました。

NG:わたしも16歳か17歳ぐらいのころに(トゥモローズ・ウォリアーズに)入って、そこでエズラ・コレクティヴのメンバーの何人かと出会った。ほんとうに人生を変えてくれた機関だと思ってる。ちゃんと若者の個性を育てて、似たような感性を持つひとが集まっていて。自分たちは移民の二世なんだけど、そういうひとにもチャンスを与えてくれて。そういうひとたちがイギリスで経験してきたことを踏まえて音楽を教えてくれた。だから、ジャズ以上のことも学べたと思う。音楽的にも社会的にも文化的にも金銭的にもそう。それら全部を踏まえて自分たちの音楽活動をサポートしてくれる、すばらしい場所。


Nubya Garcia
Nubya's 5ive

Jazz Re:freshed / Pヴァイン

UK Jazz

Amazon

ファースト・アルバムの『Nubya's 5ive』が2017年ですが、以降はジェイク・ロングのマイシャに参加したり、ネリヤをやったり、ほかのひとたちとのグループでの活動にも積極的ですよね。そういった集団やコレクティヴでの活動は、いまのあなたになにをもたらしていますか?

NG:わたしはサイド・ミュージシャンとして活動するのもすごく好き。グループやコレクティヴとして活動することのよさは、ひとりだとすべて自分自身にかかってくる音楽への責任のようなものを、みんなとシェアできる点だと思っていて。内容や方向性だとか、どんな演奏の機会を選ぶかとかをいろんなひとと話しあって決められるし、さまざまな意見を参考にすることもできる。みんなで一緒に決めていくってすごくいいこと。あと、自分のソロ・プロジェクトではソング・ライティングをだれかとやることはないけど、ひとと一緒に曲を書くということもいい経験だったと思う。そしてなによりも、楽しいんだよね。いろんなスタイル、いろんな楽器を探究できるし。それがほかのプロジェクトで活動することの醍醐味。


Nubya Garcia
Source

Concord Jazz / ユニバーサル

UK Jazz

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前作『Source』から3年が経ちますが、いま振り返ってみてそれは自分にとってどういう作品だと思いますか?

NG:やっぱり、あれは自分が正直に表現したものが作品になった音楽だったと思う。当時自分が聴いていたジャンルや音楽、世界をめぐって経験したこと、そういったものがそのまま作品に映し出されているような感じのね。

あなたの音楽の見過ごせない特徴のひとつに、ダブがあります。それは昨日のライヴでも感じられました。なぜダブに惹かれるのでしょう?

NG:フリー・スペースのような……すごく自由な空間を与えてくれる場所、というのがわたしにとってのダブかなと思う。自分が解放されるというか。ツアーが終わったとき、いつも最初にやりたいのが、サウンドシステムを組んでいる場所で8時間ぐらい休みなしにそういう音楽を聴きにいくことで(笑)。あのエナジーはすばらしい。たくさんの人びとが、お酒を飲みに来ているわけでもなく、話しに来ているわけでもなく、純粋に音楽を楽しみに来ているあの状況、みんなでダブ・プレートを聴いてインスパイアを受けてひとつになっているあの空間の一体感が大好き。
 やっぱり、ロンドンで暮らしている影響はあると思う。サウンドシステムの文化も60年代にジャマイカから入ってきて、その子どもたちにどんどん受け継がれて、歴史が深まっていったわけだし。それがあるからこそ、ダンス・ミュージックにエネルギーが生まれて、イギリスという土地でどんどん発展していったんだと思う。わたしはロンドンでああいうカーニヴァルを観て育ってきたけど、いまはレイヴやサウンドシステムを体感できる場所も機会も減ってきてるよね。でもやっぱりツアーをしているとすばらしい音楽に出会えたり、それらを聴きたい人びとがたくさんいるんだな、ってことがわかるからほんとうに嬉しい。(そういった体験に恵まれているのは)自分がロンドンにいてさまざまな文化に触れてきたことがいまにつながっているからだと思う。

ネリヤの『Blume』でもご自身の『Source』でも、プロデューサーとしてクウェズ(Kwes)が参加していました。彼は制作にどこまで関わっているのですか?

NG:共同プロデューサーというかたち。わたし自身も彼もプロデューサーだし。だから一緒につくる感じかな。前回の『Source』のときも互いに曲を書いて、スタジオに行ってレコーディングして、一緒にミックスして一緒にポスト・プロダクションをやった。いつもそんな感じ。こないだリリースしたシングル(“Lean In”)もそう。

いまお話に出たシングル “Lean In” ですが、UKガラージにインスパイアされた曲だそうですね。

NG:(これまでのほかの取材でも)ずっとそのことを訊かれてた(笑)。

あなたの音楽的背景にはエレクトロニック・ダンス・ミュージックもあるのでしょうか?

NG:わたし自身はそうだと思ってるし、そう思いたい。エレクトロニック・ダンス・ミュージックのひとたちがそう思ってくれるかはわからないけど。ちなみにいま自分がいっているエレクトロニック・ダンス・ミュージックというのはEDMとはぜんぜんべつのもので。EDMからの影響はまったくないけど、ダンス・ミュージックという観点から(エレクトロニックなダンス・ミュージックは)インスピレイションのひとつだし、バップやフリー・ジャズとおなじぐらいたいせつな存在の音楽。確実に自分の音楽の要素に入っているひとつだと思う。

(エレクトロニックなダンス・ミュージックは)インスピレイションのひとつだし、バップやフリー・ジャズとおなじぐらいたいせつな存在の音楽。

いま注目しているエレクトロニックなダンス・ミュージックのプロデューサーはいますか?

NG:ティーブス。去年ロンドンで初めて観ることができて。ロンドン・コンテンポラリー・オーケストラとやったショウだったんだけど、オーケストレイションのなかにモダンな感じもあって素晴らしかった。私は彼のアルバムの大ファンだし、それまでとぜんぜん違う空間で彼が活躍してるのを観る体験自体も刺激的だった。それと、キーファー。アメリカのピアノ奏者でビートメイカーでもあるひと。ヒップホップとエレクトロニックの中間的なサウンドをつくりながら伝統的なジャズ・ピアノを弾けるところがほんとうに好きで。ロンドンだと、スウィンドルが好きかな。

ああ! 以前彼のアルバムに参加していましたよね。

NG:いろんな音楽をどんどん拡げていって、ジャンルレスに開拓している姿勢が素晴らしい。

最近だと、春に出た『Bitches Brew』50周年を祝うアルバム『London Brew』にもあなたは参加していました。マイルスが成し遂げた最大の功績はなんだと思いますか?

NG:もちろん全部(笑)。まったく他人に左右されずに、自分の信念を貫いて音楽をやりつづけ、みんなの概念を変えつづけたひとはほかに存在しないと思う。

マイルスでいちばん好きなアルバムは?

NG:うーん……ライヴ・アルバムだったと思うんだけど、1966年の。たしか1年間で4枚のアルバムを出してて、その最後のリリース(注:1966年リリースのライヴ盤であれば『Four & More』だが、4枚の発言から推すに、1956年録音のマラソン・セッション4部作のことかもしれない)。でもお気に入りといえるかはわからない。それぞれべつの魅力があるし。『Nefertiti』はトップ・リストに入るかな。……選ぶのは難しいな。(『Nefertiti』を)最初に聴いたときは「なにこれ?」って感じで、子どものころは理解できなかった。でも歳を重ねるごとにあの作品のすごさに気づくことができた。

今後の予定で話せることはありますか?

NG:ニュー・シングルについてなら少し。1月にリリースするんだけど、それはみなさんが楽しみにしている内容だと思う。

最後の質問です。レコーディングやライヴに臨むうえで、あなたがもっともたいせつにしていることはなんですか?

NG:やっぱり、自分に正直にありつづけることかな。誠実で、リアルでありつづけることがたいせつだと信じてる。その日の自分のベストを引き出せるよう努力しつづけること、それがキーだと思う。あとは、自分自身の境界線上に立ちつづけることかな。質問してくれてありがとう。

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