「OTO」と一致するもの

vol.41:「サンディ」の憂鬱 - ele-king

 大型ハリケーン「サンディ」の襲来で、現在北東部沿岸は厳戒態勢下にある。オバマ大統領が対策のため選挙集会出席をやめてワシントンに戻るなど、大統領選にすら影響が出ている状況だ。NYでは10月28日(日)の夜7時、ハリケーン・サンディ(別名フランケン・ストーム)接近のため、公共交通機関がいっせいにストップした。NYの公共交通機関(MTA)の歴史のなかで、全面ストップというのは、2回めらしい(1回めはハリケーン・アイリーン)。いままでにない非常事態なのである。

https://alert.mta.info/

 思えば、1999年にNYに移って以来、2001年の9.11、2003年のNY大停電、2011年のハリケーン・アイリーンなど、著者はいくどとなく大きな災禍に遭遇している。(日本では1995年の阪神大震災を経験した。)そして今年は、アメリカ史上最悪の台風と言われるハリケーン・サンディに遭遇しているというわけだ。ただいま通過真っただなか。

 それに応じ、10月28日(日)のお昼からニューヨーカーの戦争がはじまった。お店ははやく閉まり、グロセリーストアで、食料、水、懐中電灯などの非常用の買いだめがはじまり、水際に住む人たちに避難勧告が出される。予定されていたショーもほとんどがキャンセル(スワンズ@バワリーボール・ルームとシック・アルプス@ニッティング・ファクトリーは敢行)。スワンズは、2ディズで10月29日(月)の正午ぐらいまで、「今日もショーを行う」としていたのだが、会場のミュージックホールより正式に延期が発表された。知るかぎり、今日10月29日(月)のショーはすべてキャンセルになっている。


ストームにも関わらず、ニッティング・ファクトリーで演奏したシック・アルプス
写真は前日の公演@ラン・ティー・ハウスの模様

 10月28日(日)、交通手段のなくなったニューヨーカーたちは、7時前に大挙して家へと移動しはじめた。去年のアイリーンの折も、お風呂に水をためたり、ろうそくを買いだめしたり、地下に住んでいる人は階上へ避難するなど、想像される緊急事態に備えて行動したが、思ったほどの被害はなかった(少なくとも著者のまわりは)。が、今回のサンディは、CNNや『ニューヨーク・タイムズ』で情報のアップデートがつぎつぎと流され、日本領事館も緊急本部を設置し、避難警告を呼びかけている。10月29日(月)の朝10時の時点で、すでにレヴェルはアイリーン並み(まだサンディは上陸していない)、バッティー・パークは浸水し、ロッカウェイ・ビーチは、波が大変なことになっている。


ロッカウェイ・ビーチの波の様子

https://www.huffingtonpost.com/
https://news.yahoo.com/

 コンエディソンは、コンエディソンの歴史以来最悪のストームで、ローワー・マンハッタン、ブルックリン、クイーンズの浸水エリアで、電気をストップすると発表(家の電話がすでに止まっているエリアも)。さらに、ホーランド・トンネル(ダウンタウンとニュージャージーを結ぶトンネル)やヒュー・ケリー・トンネル(ダウンタウンとブルックリンを結ぶ)をクローズ。ブルームバーグ市長は、明日火曜日も引きつづき、学校、銀行、郵便局などの公立機関を休みにすると発表した。いまのところ、公共交通機関の復旧の見込みは立っていない。

https://www.nyc.gov/html/oem/html/home/home.shtml

 電気が止まると、インターネットもない、電話もつながらない、ライトもない、家に閉じこもってサンディが過ぎるのを待つしかないのだが、史上最悪のストームは、これからどんな脅威をもたらすのか。現在NY時間10月29日(月)午後4時、サンディが上陸するのは今日の夜といわれている。窓の外では、雨が激しく降り、ヒュー~~~~ン! という突風の音が聞こえ、木々が激しく揺れている。いつもは人がたくさん歩いているストリートには、誰もいない。家から出られないストレスと、開き直りが交差し、淡々と家事をこなしているのだろう。情報も徐々にとだえてきた。次のアップデートができることを祈って。


著者宅の窓より。すべてのお店がクローズ

Avalanche - ele-king

 書かなければ、と思っている間に2ヵ月が経ってしまった! ああぁぁ、記憶は、やはり薄らいでいる。まったく、自分の怠惰を呪いたくなる。しかし、いまからでも遅くはない。それだけ素晴らしく充実したライヴ・イヴェントだった。去る8月26日、僕はインディ・ヒップホップ・レーベル〈サミット〉が主催する〈アバランチ2〉に行った。〈サミット〉はいち早くPSGやシミ・ラボに注目して契約を交わしたレーベルで、僕はこのレーベルの"嗅覚"というものを信じている。〈アバランチ2〉のラインナップを見たとき、絶対観に行こうと決意した。

 シミ・ラボやパンピー、キエるマキュウやエラも観ることができる。あの瑞々しい"Pool"のミュージック・ヴィデオ一本で巷の話題をさらった新星、ザ・オトギバナシズも出演する。僕は彼らのライヴを、その前の週に青山の〈オース〉という小さなDJバーで観ていた。やけのはらやパンピーという人気者がいながら、オーディエンスの熱い視線はザ・オトギバナシズの3人に注がれていた。彼らは少し戸惑っているように見えたが、その状況を乗り切るだけの気迫と若さがあった。フロントのふたりがアグレッシヴな態度でラップする姿が印象的で、僕は〈ユニット〉規模のステージで改めて彼らのライヴを観たいと思った。

 イヴェントは夕方4時から始まり、僕が会場に到着した直後、ちょうどザ・オトギバナシズがステージに姿を現した。3人は堂々というよりも飄々としていた。インターネットを通じて、彼らのスタイリッシュな映像や"チルウェイヴ以降"の音、その抑制の効いたラップだけを聴いている人は、もしかしたらチャーミングな彼らの、とくにビムの強気なステージングに戸惑うかもしれない。"Pool"と、その日会場で販売していた『Avalanche 2 Bonus CD-R』に収められた"Kemuri"、"Closet"、どの楽曲もたしかに現実逃避的で、幻惑的であるのだけれど、ライヴではそこに生々しい感情が込められていく。そのどこかちぐはぐな感じが、彼らの現在の瑞々しさであり、魅力だと思う。

 会場を見渡すと、男も女もシュッとしたおしゃれな人が多い。夜中のクラブにはない、爽やかな雰囲気が漂っている。そのフロアにD.J.エイプリルは、ジュークを次々と投下し、フットワークのダンサーは扇動者となって輪を作り、ダンスの渦を巻き起こしていった。みんな笑顔で、手足をアクロバティックに動かしている。フットワークというダンスには、人の奥底にある何かを解放する陽性の魔力があるようだった。僕はといえば、スピーカーの前に陣取って、腰をくねくねしながら、はじめて大音量で聴くジュークを堪能していた。ソウル・シンガーのヴォーカルがずたずたに切り裂かれ、ベースはうなりをあげ、キックとスネアとハイハットがびゅんびゅん飛び交っていた。身も蓋もないが、「こりゃ、すごい! ジュークには黒人音楽のすべてが詰まっている!」、そう感じて熱くなった。はじめてムーディーマンの黒さに魅了されたときのような興奮を覚えた。

 ジュークの嵐のあと、エラがステージに颯爽と現れ、いい感じに脱力したメロウでルードなパフォーマンスを見せた。エラのあの渋い声とスペーシーなトラックが会場に響くだけで充分だった。ラウ・デフとゲストとして登場したQNの人を食ったような、挑発的な態度から繰り出すラップは、ラッパーとしてのスキルの裏づけがあるからこそ成立する鋭い芸当だった。ふたりは現在、ミュータンテイナーズ(ミュータントとエンターテイナーを掛け合わせた造語)の活動をスタートさせている。

 そして、僕ははじめて観るキエるマキュウのライヴがどんなものなのかと期待しながら、待った。ソウルやファンクの定番ネタを惜しみなく引っ張り出した彼らの9年ぶりの新作『Hakoniwa』はサンプリング・アートとしてのヒップホップがいまも未来を切り拓けることを証明し、フェティシズムとダンディズムの美学を追及したマキ・ザ・マジックとCQのラップは、感動的なほどナンセンスで、下世話で、ファンキーだった。
 誰もが正しいことを言おうとする時代に、彼らは徹底して正しさを拒絶した。それは言ってしまえば、Pファンク的であり、ふたりのラップはゴーストフェイス・キラーとレイクウォンのコンビを連想させた。僕はこのアルバムを聴きながら、笑いながら泣いた。
 彼らのライヴに期待していたのは僕だけではなった。多くの人が期待していた。イリシット・ツボイは、ブースの前でスタンバイすると、唐突にCDJをステージの床に置き、会場を爆笑に包む支離滅裂な言葉を吐き、クラウドを激しく煽った。そして、ビートが鳴り響いた瞬間、僕はその音の太さに一瞬にして痺れた。マキ・ザ・マジックとCQのラップは、上手さではなく、味わいで勝負していた。まさにベテランの凄みと粋だった。
 マキ・ザ・マジックはよく喋り、イリシット・ツボイと絡み合う謎の身体パフォーマンスを見せた。会場からは終始笑いが起こり、僕の後ろで観ていた女性は、「なに、あれ、意味不明、自由過ぎる! アハハハハ」と笑っていたが、僕もその通りだと思った。彼らは昨今なかなかお目にかかることのない最高のアホで、素晴らしく自由だった。その時点で、この日のMVPはキエるマキュウだと確信した。

 一息つこうとぶらぶらしていると、会う人、会う人、キエるマキュウのライヴを賞賛している。ある人はエラが良いと言っていた。いろんな意見があった。その後すかさず始まったDJのセックス山口とサイドMCのゼン・ラ・ロックのショータイムは、サービス精神の塊だった。セックス山口は、僕がパフュームの曲の中で唯一大好きな"マカロニ"のイントロを執拗にループさせたかと思えば、マイケル・ジャクソンの"ビート・イット"をスピンした。こんなにベースがかっこいい曲だったのか、と思った。セックス山口のDJには、誰もが知っている有名曲の新鮮な魅力を引き出す面白さがあった。大きな眼鏡をかけ、奇抜なファッションをしたゼン・ラ・ロックは体を激しくバウンスさせて、フロアのダンサーたちを煽り、女の子をきゃあきゃあ言わせていた。その流れでのパンピーのソロ・ライヴも大盛り上がりだった。パンピーは生涯2回目(だったか?)というソロ・ライヴを大いに楽しんでいるようだった。PSGと曽我部恵一が共作したサマー・チューン「サマーシンフォニーver.2」のイントロが流れた瞬間、フロアの盛り上がりはピークに達し、その日いちばんの黄色い歓声があがった。あの曲は、完璧にアンセム化していた。パンピーは今年こそソロ・アルバムを出すとMCで語っていたから期待しよう。

 パンピーやゼン・ラ・ロック、シミ・ラボといった面々の功績も大きいのだろうが、いま、ラッパーやヒップホップのDJがちょっと意外なところに呼ばれることもあるようだ。アイドルとブッキングされるとか、そういう話もちらほらと聞く。
 〈アバランチ2〉から数週間後の9月15日、QNとロウパスのギヴン、ビムが出演するという噂を聞きつけ、下北沢で早朝近くまで飲んだあとに、〈トランプルーム〉という渋谷のタワーレコードの近くのビルの一角にあるスペースで開かれるパーティに行って、驚いたことがある。
 足を踏み入れた瞬間に僕は、その熱気に大きな衝撃を受けた。身動きできないほどの人の多さと西洋の貴族の屋敷を思わせるゴージャスの内装にも驚いたが、まるで仮装パーティのように着飾った男女の豪奢なファッションに圧倒された。べらぼうに高価な服というわけではないのだろうが、それぞれに独自の個性があり、男も女もセクシーで若く、尖がっていた。僕は赤いパンツを履いていたのにもかかわらず、「こんな地味な格好で来て、しまったな~」と気まずくなった。ビールが500円だったのにはほっとした。
 さらに僕を興奮させたのは、5、6割が外国人だったことだ。白人もいれば、黒人もいれば、ラテン系やアジア系もいる。そして、その場はとにかく底抜けにエネルギッシュだった。僕はファッション事情にはまったく疎いし、そのパーティの背景も実はよくわからない。レディ・ガガは日本に来ると、原宿あたりの服屋で大量に服を買っていくらしいという噂はよく耳にするが、そのあたりの文化圏につながっている雰囲気をなんとなく嗅ぎ取ることはできた。〈トランプルーム〉も元々もは服屋だったそうだ。
 たまたま酒を飲み交わしたフランス人は不服そうな顔をして、「スノッブだ」とこぼしたが、僕は、おしゃれに着飾ったいろんな人種や国籍の若者が入り乱れながらパワフルに踊る光景を見て、〈KAWAII TOKYO〉と銘打たれたこの開放的なパーティにQNとギヴン、ザ・オトギバナシズのような新世代のラップ・アーティストが呼ばれていることに、なんだか明るい未来を感じた。

 とにもかくにも、〈アバランチ2〉には、豪華な面子が集まっていた。そして、彼らは素晴らしいパフォーマンスを見せた。僕は途中まで、キエるマキュウがこの日のMVPを持っていったと思っていた。が、その日のトリを飾ったシミ・ラボがひっくり返した。彼らは間違いなくその日のベスト・アクトだった。マリア、ジュマ、オムスビーツ、ウソワ、ディープライド、DJハイスペックの6人の凄まじい気迫がこもったライヴは、僕がこれまで観た中でも最高のパフォーマンスだったと思う。彼らは相変わらずファニーで、ファンキーだったが、シリアスな態度も忘れなかった。彼らはジョークを言いながらも、主張することは主張した。オムスビーツとジュマは、スピーカーの上に乗って、激しく体を揺らし、ラップした。マリアとディープライドは彼らのソロ曲を披露し、オムスビーツは、「いろんな意見があるだろうし、自分も本当は言いたくはないけれど、言わせてくれ」というような主旨の前置きをしてから、「ファック・ザ・ポリス!」と職質に対する不満を痛烈な言葉にして吐き出した。それはリアルに心に響く言葉だった。シミ・ラボの新曲"We Just"のたたみかける怒涛のビートと5人の隙のないマイク・リレーも圧巻だった。彼らは見るたびにラップのキレが増している。ライヴとはアーティストの変化を楽しむものでもある。

 オムスビーツは数日前にファースト・ソロ・アルバム『Mr. "All Bad" Jordan』をリリースした。不覚ながら、僕はまだ聴けていないが、ユニークな作品に仕上がっているに違いない。聴くのが楽しみだ。11月3日には町田で彼のリリース・パーティがある。ザ・オトギバナシズは、〈サミット〉とディールを交わすことをこの日のステージで宣言していた。『Avalanche 2 Bonus CD-R』にはエラとパンピーの共演曲も収められていた。とにかく、僕がここで伝えたいのは、2ヶ月経ってしまっていようが、レポートを書く意義を感じるほど、〈アバランチ2〉はライヴ・イヴェントとして充実していたということだ。次も僕はきっと行くだろう。

(special thanks to 増田さん@summmit)

vol.4 『Fez』 - ele-king

 みなさんこんにちは。連載もあっという間に4回めですが、今回は前回の予告通り今年発売されたインディーズのゲームから1本、『Fez』をご紹介したいと思います。

 『Fez』はカナダのインディーズ・スタジオ〈Polytron〉が開発で、今年4月にXbox Live Arcadeで発売されたアクション・パズルゲームです。このゲームは内容的にも業界内の立ち位置的にも、いろいろな意味で現代のインディーズ・ゲームを体現している作品で、本連載でもインディーズ・ゲーム紹介の第1号としてこの上なく適任だと判断しました。

 まずそもそもインディーズ・ゲームとは何かという説明からはじめると、その業態は音楽におけるインディーズ・シーンと似たようなものだと考えてもらっておおむね間違いないでしょう。メジャーの流通や資本に頼らず、小規模な体制で自主制作的に開発・販売が行われるゲームを指します。

 2000年代中頃からゲーム業界では既存の流通にかわりダウンロード販売が台頭しはじめ、それによって後ろ盾のない個人でも、容易に自作のゲームを販売できる手段として注目されるようになりました。インディーズでもゲームを世界規模で販売できる時代がやってきたのです。

 現代のインディーズ・ゲームのほとんどはパッケージとして店頭販売されることはありません。しかし〈Steam〉や〈GOG〉、〈Xbox Live Arcade〉等のゲームのダウンロード販売サービスを見ると、インディーズ・ゲームはメジャー作品たちと並んで確たる市場を形成しているのが見てとれるでしょう。


ダウンロード販売サービス最大手の〈Steam〉では、毎日のようにインディーズの新作が発売されている。

 『Fez』はこうした近年勢いを増すインディーズ・ゲーム業界内で、ひとつの象徴としてかねてから注目を集めつづけていた作品です。2007年の開発開始から5年という長い歳月をかけて作られた本作は、その斬新なアイディアが発売前から高く評価され、インディーズ・ゲームの一大祭典、IGF(Indie Game Festival) での08年の受賞をはじめ、各方面で多くの賞を獲得しています。

 また今年公開されたインディーズ・ゲームの開発現場にスポットを当てたドキュメンタリー映画、『Indie Game: The Movie』で中心的に取り上げられていたことも記憶に新しいでしょう。

『Fez』以外にも『Super Meat Boy』や『Braid』といった数々のヒット作の舞台裏が描かれている。

 本作のディレクターで〈Polytron〉代表のPhil Fish氏もなにかと話題になることが多い人物です。彼は過激な言動で知られており、今年のGDC(Game Developer Conference)では最近の日本のゲームはひどいという趣旨の発言をしたり、ゲームのパッチの配信の際には〈Xbox Live Arcade〉のオーナーであるMicrosoftと規約の件で揉めることもありました。その姿勢は常識知らずとも呼べれば、勇敢とも言えるでしょう。とにかく彼は業界の慣習やタブーに臆しません。

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■多くのインディーズゲームにとっての理想の体現者

 以上駆け足で『Fez』の周辺事情について解説してみましたが、既存のゲーム業界に対するカウンターとしての存在感の強さを感じていただけたかと思います。そしてそれは肝心のゲーム内容においても同様だと言えます。

 『Fez』はパッと見は昔懐かしい8bitスタイルの2Dプラットフォーマーです。しかしそれは半分は当たっていますが、もう半分は間違っている。本作の画面は、じつは奥行きのある空間が平面に錯視して見えているのです。ゲーム中は基本的にいつでも画面を90度ずつ回転させることができ、そうすることで平面に見えていたマップも、遠近感がないだけでしっかり奥行きがあることがわかります。


ちょうど45度の角度から見るとこんな感じ。

 本作がユニークなのはここからで、画面を回転させると当然奥行きに応じて物の角度や位置関係は変わるわけですが、プレイヤーは画面に映っているものは手前奥の関係を無視して、地続きの同一平面として歩き回れるのです。

 これは例えればエッシャーの騙し絵のなかを歩き回っている感覚とでも言いましょうか。しかしこう説明してもたぶんサッパリわからないでしょうし、僕もこれ以上うまく説明できる自信がありません。なので論より証拠ということで、実際のゲーム中の映像を見ていただきましょう。どういうことか一発で理解できるはずです。

まさにヴァーチャルでしか表現できない空間である。

 本作はまさに「発想の勝利」のゲームであり、3Dの概念を一風変わった方法で2Dプラットフォーマーに落とし込んだそのスタイルは、いままでにない新鮮な魅力があります。

 またその発想をプレゼンテーションする術に長けているのも評価できるポイントです。本作は全編を通じてこの錯視を利用したパズルで構成されていますが、この錯視効果はともすればかなり複雑で難解になってしまうおそれもあります。しかしそれを回避し直感で遊べるとっつき易さと錯視の不思議さをうまく両立できているのはみごとと言うしかありません。

 少し話が逸れますが、インディーズ・ゲームでは『Fez』のような8bitスタイルの2Dプラットフォーマーは非常によく見るジャンルのひとつです。それはメジャー・ゲームへのアンチテーゼ=過去の2D時代のゲームの復権という意識がインディーズ業界全体にあるからでしょうし、また限られた開発環境でも作りやすいスタイルであるという現場の事情もあるでしょう。

 ただ多くの作品はそこからもうひとつアイディアが足りず、流行の後追いどまりだったり、単なる懐古趣味に落ちついてしまったりすることがほとんどです。『Fez』もまたその王道路線の上に立っている作品であるのは間違いありませんが、しかしひたすらに典型的な立ち位置でありながら、錯視というアイディアによって並みの作品とは一線を画す存在になっています。

 おそらくはそれが本作がインディーズ・ゲーム業界内で多くの支持を集める理由でもあるのでしょう。ビジュアルからゲーム・システム、はたまた作中に散りばめられたオマージュの数々に至るまで、本作はかつての2Dゲーム時代の郷愁に満ちています。あるいはそれは現在のメジャー・ゲームへの痛烈な批判にも映るでしょう。その上で他にはない最高のアイディアを持っている。

 これはまさに多くのインディーズ・ゲームが望み、求め、しかし得られない条件をすべてクリアしているのです。言うなればインディーズ・ゲームの黄金比。このへんの事情は業界を普段から眺めていないと見えてこないかもしれませんが、確かなおもしろさや新しさとしては誰しも等しく感じとることができるはずです。

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■面倒くささはおもしろさたり得るのか

 ここまで褒めちぎってみましたが、それだけではフェアじゃないので問題点も挙げてみることにしましょう。ご愛嬌といえばそれまで程度のものかもしれませんが、しかし決して無問題というわけでもありません。

 問題は大きくわけてふたつあり、ひとつは難易度がやさしめか激ムズの両極端で中間領域がやや貧しいという点。先ほどの項で本作は直感で遊べてとっつきやすいと書きましたが、それは言いかえれば難易度が低いということでもあるのです。通常のステージは全体的に難易度は低めに抑えられており、後半はもう少し歯ごたえがほしいと感じる場面がいくつかありました。

 一方でクリアのために絶対必要というわけではない、一種のチャレンジ的なパズルも用意されているのですが、こちらはうって変わって非常に難易度が高い。ほとんどの場合はノー・ヒントで、ヒントがあってもそれ自体もまた謎のひとつになっており、相当注意深くないとそれがヒントであることすら気づけません。本気で解こうと思ったらすべてを疑う心持ちと、メモは必須と言えるでしょう。


大きな謎のヒントがここに......ってわかるかい!

 もうひとつの問題はアクションの鈍重さや複雑なマップ構成等による、移動にまつわる部分での快適さに欠けている点です。本作のステージは相互に連なるハブ状になっており、同じ箇所を何度も通ることが多い。それは一度解いたパズルをもう一度解き直すということでもあり、プレイヤー・キャラのノソノソした動作も相まって次第に面倒になってきます。またファストトラベルも限定的。

 この移動にまつわる問題は、ひとつめの難易度の問題とも連動してくるのが厄介です。なぜなら本作のパズルは複数のステージをまたぐものも多いからです。ときには正反対のステージへ向かわなければいけない場合もあり、ファストトラベルを駆使してもたどり着くだけでひと苦労。また先ほども述べたようにゲーム側からのヒントはほぼ無くプレイヤー自身の推理に頼るしかないので、思い違いによる骨折り損も多々起こり得たりと、情報の整理を難しくしています。


全体マップ。わかりやす......くない!

 しかしこれがいまどきのメジャー・ゲームだったら、「ユーザビリティがなっていない」と即批判の対象になりかねないところですが、本作にいたってはそんな頭ごなしの批判をすべきかやや迷ってしまいます。上記の問題点はかなり意識的にそうデザインされている節があるからです。

 メモが必須であること、それがすべての意図になっている気がします。思えば昔のゲームもそうでした。かつてのゲームはいまほど親切ではなかったし、理不尽な難易度のものも少なくありませんでした。インターネットを使って攻略サイトという便利な方法もなかったので、必然メモを取る機会がいまよりずっと多かったのです。本作はわざと不親切、高難易度にすることで過去のプレイ・スタイルを復刻しようとしたのかもしれません。

 だとすればその意図はうまく実現できていると言えるでしょう。それを愛嬌ととるか欠陥ととるかはプレイヤーの嗜好次第というわけです。こうした前提の上で意見を述べると、少ないヒントから自ら推理しメモを使いながら解いていく楽しさは確かにあるでしょう。しかしそこに面倒くささが介在してはならないというのが僕の考えです。

 面倒くさいこと、それ自体は郷愁を取りのぞくと何のおもしろみもありません。同じおもしろさの遊びでより面倒くさい要素の少ないゲームがあれば、そっちの方がいいはずだし、それを信条にして面倒くささを徹底して省いていったことが、今日のメジャー・ゲームの広範な訴求力につながったと思っています。

 たとえノスタルジーがテーマの作品でも、現代で作る以上そこは追求するべきであって、『Fez』の場合はマップの使い勝手の悪さ、移動の億劫さが足を引っ張っているように思えます。現状の全体マップでは各ステージが小さいサムネイルで表示されるのですが、ここで個々のステージの全体像をもっとしっかり確認できれば、思い違いもなくなりかなり効率が上がるでしょう。

 またステージの気になる箇所をスクリーン・ショットを撮っていつでも参照できる機能があってもいいかもしれません。もちろんファストトラベルはもっと拡充するべき。以上ざっと思いつくことを書いてみましたが結局は面倒くささが払拭されればそれでいいのです。こうしたユーザビリティへの配慮がもっと全体に行き届いていれば、『Fez』はより完璧に近い作品になれたのでしょう。その点がやはり少し残念でした。

■まとめ

 インディーズ・ゲーム入門に最適な1本です。枝葉の部分で多少の問題点はありますが、ゲームの核心部のできは確かなものがあり、とくに錯視のシステムのユニークさはメジャーもインディーズも問わず突出した魅力があります。またいろいろな面で王道路線を行く作品なので、インディーズ・ゲームとは何たるかを理解する上でも非常にわかりやすい実例のひとつと言えます。

 最後に本文中ではほとんど触れませんでしたが、Phil Fish氏の過激な言動についてひとつ。何かと槍玉に挙げられやすい彼の発言ですが、とりわけ今年のGDCでの日本のゲームへの批判は国内外問わず大きな議論を呼ぶことになりました。

 それでなくとも近年は日本のゲーム業界の衰退論が話題に上がりやすく、そのたびに日本は終わったいや終りじゃない等といった水掛け論が繰り返されています。そうした状況下で、インディーズ畑出身のPhil Fish氏がGDCという場で、しかも日本人質問者に対して強い口調で批判的な回答をしたことは、相当センセーショナルなできごとだったのです。

 しかし彼の発言の是非はおき、個人的にはインディーズの開発者の発言がここまで話題になるということ自体に、時代は変わったのだと感慨深く思わされます。数年前まではこんなことは考えられなかったわけで、それだけインディーズの重要度が高まったということなのでしょう。

 もちろん彼の発言内容は聞き捨てならないところが多々ありますが、そこでちゃんと議論が起こるのはむしろ健全で、喜ばしささえ感じます。願わくばPhil Fish氏においては今後もひるむことなく、その挑戦的な姿勢で引き続き業界を引っ掻き回してほしいと思う次第であります。

vol.3 ジョジョ展 - ele-king

 「ジョジョ展」ッ! その素敵な好奇心がわたしを行動させたッ!
 本コラムでは、初回から『平清盛』という、このサイトではアウェーすぎる題材を扱い、さらに2回連続でねちっこく語ったことにより、空気が読めないパーソナリティを十二分に見せつけてしまった。たぶん旧来のele-king読者の方は、まだこのコラムの存在に気づいていないと思う。
 しかし今回のテーマは、世界的な漫画家・荒木飛呂彦先生の原画展である「ジョジョ展」ッ! ご本人は50代にして20代と見まごう若々しさを保っていることでも有名であり、控えめに言っても美の化身である。また、作品内に洋楽ネタがディ・モールト(非常に)ふんだんに取り入れられていることが有名だ。ele-king読者も当然、200%の方が『ジョジョの奇妙な冒険』を愛読していることだろう(来世にも読む計算)。

 とはいえ、わたしはけっして人気取りのためにジョジョを扱うのではない。ジョジョ第6部のあおり文句「愛=理解」にならって言えば、わたしにとっては「ジョジョ=人生」であり、それはコーラを飲んだらゲップが出るっていうぐらい確実である。さらに、わたしは他人から見たら気持ち悪いほど荒木飛呂彦先生を敬愛しているがため、本コラムでは「氏」ではなく「先生」という敬称をつけさせてもらう。
 今年は荒木飛呂彦先生の画業32周年、ジョジョ連載25周年の節目であり、豪華企画が目白押しとなっている。さきごろ始まった地上波アニメと、年末に発売されるゲームはじつに「ふるえるぞハート」だが、数ある企画のなかで最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も「燃え尽きるほどヒート」なのは、やはり原画展であろう。

荒木飛呂彦原画展 ジョジョ展 (11月4日まで)
https://www.araki-jojo.com/gengaten/

 本来、マンガやアニメは、使い捨ての大量複製商品として作られ、安価に流通するポピュラー・カルチャーである。しかし今日では、そのなかでも価値があると認められた作品について、原画や資料が、美術館やそれに準ずる機関で展示されるようになった。ジブリや、昭和を彩った漫画界の巨匠たちにいたっては、常設のための施設(水木しげる記念館など)まで擁している。荒木飛呂彦先生に関して言えば、本格的な原画展がようやく今年開催というのは、遅すぎるぐらいである。

 しかしほんの10数年前まで、一般的に美術館で展示されていたのは、ゴーギャンやロダン、また古文書や仏像といった、いわゆる「アート」もしくは「文化財」であった。マンガに見た目が近いものに、村上隆氏や会田誠氏の一連の作品があるが、これらは「ポピュラー・カルチャーの商品として作られたものがたまたま後にアートとしての価値を得た」というわけではなく、初めからアートとして制作されたものである。
 美術館に展示される栄誉に浴したからには、それが何であろうと等価に扱われるべきではないか、という考え方もある。もちろん美術的な価値に関しては、わたしもそれに異論はない。しかしここでは、前者を「エンタメ系」、後者を「アート系」と分けて考えたい。なぜならこの二者は、そもそも生産の目的や様式がまったく異なるだけでなく、展示の際に観客から求められるものも異なるという意味で鋭く対比されるからである。

 これまで両者の展示を少しばかり観てきて、しろうと目にもわたしが強く感じたのは、展示において、エンタメ系作品は、アート系作品ならば起こりにくい(起こってもいいはずだが、起こることが抑制されている)難題を抱えている、ということである。

 エンタメ系の展示の抱える難題とは何か。それは「作品世界に入りたい」という読者(観客)の典型的な願望と、「原画展示」という形式とが、明らかに相容れず、アンビバレントな関係にあることである。
 『ジョジョの奇妙な冒険』を読んだなら、たいていの人は、「トニオさんのうンま~い料理が食べたァい!」だとか、「ブチャラティたちが戦ったローマのコロッセオに行ってみたいッ!」といった、「作品世界に入りたい」という素朴にして強固な願望を持つだろう。白紙にインクで生み出された世界のなかに入りたいとまで読者に思わせるのは、簡単にできることではない。まさに「俺たちにできないことを平然とやってのけるッ! そこにシビれる! あこがれるゥ!」といったところか。ちなみに、現実ならぬ夢の世界に肉体ごと入りたいという、この手の願望を満たす施設のなかで最も有名な場所は、ディズニーランドであろう。

 ジョジョ展は、優れたエンタメ作品につきものの、読者のこの願望に大いに配慮している。たとえば人気キャラクターの等身大フィギュアや、作品内のキーアイテムを数多く作成・展示している。個人的に気に入ったのは、ちょっと奥まった壁面から飛び出していて見落としがちなところが奥ゆかしい、「シャーロットちゃん」である。
 最新技術を駆使した方法として特にすばらしいのは、ARカメラによる波紋体験である(東京展のみ)。これは床に投影された円形の水面の映像なのだが、円の中に観客の影を感知すると、映像に本物の水のような波紋が生じる。これにより、ツェペリさんになりきって水面を歩く体験が可能なのである。
 また、仙台展限定であるが、実在のLAWSONの1店舗が「OWSON」になるという付属イベントがあった。限定グッズを買うために長蛇の列ができてしまい、作中の閑静なOWSONとは似ても似つかぬ大賑わいになってしまったのはご愛嬌だが、S市(仙台市)に突如として現れたOWSONには、わたしも感極まり少々漏らしかけた。ジョジョ展の仕掛けではないのだけども、わたしは「花京院」「広瀬」というS市内の地名(ジョジョには同名のキャラクターが登場する)にすらも大興奮し、同行者に「ただの地名ですよ」とあきれられた。


仙台市のLAWSON。このジョジョ展に合わせ、原作中に登場する「S市杜王町OWSON」へと様変わりした

 しかしながら。ここまででお気づきの方も多いだろうが、この展覧会の眼目は「原画展」であり、「ジョジョランド」ではない。いわゆる「アート」として鑑賞する対象は、あくまでも壁に掛けられた原画なのであり、作品世界を三次元に立体化したオブジェや、町ぐるみの仕掛けなどはおまけにすぎない。アート系の展示においては、作品世界に入りたいという願望が生じるかどうかもあやしいし、そのような願望が推奨されることもほとんどないだろう。ルノワールの静物画の中に入ってりんごをつかみたいという人に配慮して、同じ構図でりんごを置いたりする展示は、別にあったとしても問題はないと思うが、少なくともわたしは見たことがない。(ちなみに、近代芸術の成立以前は、むしろエンタメ系に近い鑑賞がなされていたことは、木下直之『美術という見世物――油絵茶屋の時代』を参照。)

 もちろん、ジョジョ展の主役たる200枚以上の原画は、掛け値なしにすばらしいものだ。独特の大胆なアングル、人体をひねるポーズ(ジョジョ立ち)、エロティックにして意志の強い表情、色彩のコントラスト。荒木飛呂彦先生の作品は常に新しく、「絵」という最も古くて単純な芸術の形式に、まだまだ未踏の地があったのかという驚きを与えてくれる。特にこの1年の間に描かれた新作の、ピンクを基調とするポップな透明感には、ピンクという色はこんなにも美しかったのか、と新たなときめきを覚えさせられた。初期の作品では、余白に「ためし塗り」の筆あとが見られたり、なぜかストレイツォが描いてあったり、バックが白いまま残されていたりするが、こうしたところに作画の現場を盗み見た気がして、新鮮でとてもうれしい。

 アートとして鑑賞する態度というのは、大雑把にいってこのようなものだと思うが、このとき、「作品」と「わたし」は分離される。「わたし」が肉体のまま「作品」のなかに入ってしまうような夢(錯覚ともいう)は、物としての原画を目の前にすることによって、打ち消されてしまう。
 だがひとたび作品から視線をそらすと、自分の足が水面に波紋を刻んでいたり、作品内のアイテムが現れたりする。こうしてジョジョ展では、夢と現実を行き来するような奇妙な感覚が、(現実が圧倒的に優勢ではあるのだが、)間断なく訪れる。
これがもしディズニーランドなら、ウォルト・ディズニーの原画を見せる必要などなく、等身大で現れ愛想をふりまいて踊るキャラクター(中の人などいない)や、あたかも本物のようにそびえたつシンデレラ城など、夢を見せるだけでいいのである。アート系の展示なら、作品の世界を現実化しようなどと努力する必要はなく、原画を並べるだけでいい。「夢を見せる」「原画も見せる」"両方"やらなくっちゃあならないってのが「エンタメ系の展示」のつらいところだ。

 原理的に考えて、このふたつを両立させるのは無理難題であると思う。「これは絵です(現実)」「これは絵ではありません(夢)」という、真逆の命題を同時に立てようとしているのである。スタンド能力でもないと、実現できそうにもない。しかし、二次元のキャラクターを現実化するスタンドである「ボヘミアン・ラプソディ」をもってしても、その作動によって作品中(二次元)のキャラクターは消えてしまうという設定なのだから、せっかくの原画が穴だらけになってしまう。

 溶けたチョコレートでグラスの底に作ったわずかな傾きのような、このきわどい角度をすり抜けることは可能なのか。さまざまなエンタメ系の展示で方法が模索されてきていると思うが、ジョジョ展においてそれは、漫画家「岸辺露伴」の存在にかかっている。

 岸辺露伴(通称、露伴ちゃん)は『ジョジョの奇妙な冒険』のキャラクターで、『週刊少年ジャンプ』に連載を持つ天才漫画家である。この設定からわかるように、このキャラクターは全キャラクターのなかで唯一、わたしたちの生きている「この現実」との接点を持つ。
 岸辺露伴は、ジョジョ展以前のルーブル展(2009年)、GUCCI展(2011年)からトリビュートされていた。『岸辺露伴 グッチに行く』においてはGUCCIの実在の衣装とバッグを身に着けた姿で描かれ、このとき作られた等身大フィギュアも実在のスニーカーを履いていた(これらの衣装、バッグ、スニーカーは実際の商品であり、購入することができる......「お金」があればだがッ!)。今回の仙台展で発行された『杜王新報』ではついに、荒木飛呂彦先生その人との対談までもなしとげた(ちなみにここで、荒木飛呂彦先生が波紋戦士であることが、おそらく初めて公式に証言された)。
 さらにジョジョ展では、岸辺露伴の仕事机と、荒木飛呂彦先生の仕事机が、まるで等価のもののように近く展示されている。わたしははじめ、岸辺露伴の仕事机が、他のさまざまなものをさしおいてまで展示されなければならない理由がよくわからなかった。しかし、こうは考えられないか。荒木飛呂彦先生の仕事机は、本物を持ってきたわけはないので(それだったら仕事ができないから)、よく似た偽物。岸辺露伴の仕事机は、偽物を展示する意味がないので、本物。この地点で「本物」と「偽物」、「現実」と「夢」が逆転する。

 巧妙なことに、荒木飛呂彦先生の仕事机には、キャラクターの岸辺露伴を描いた生原稿が載っている。一方で、先述の『杜王新報』では、岸辺露伴が荒木飛呂彦先生について心中でさまざまに思い描いている。いったい、どちらがどちらを描いているのか? 図と地、夢と現実が反転していくトリックアートのような効果が、こんなにも入念に作りこまれた例を、わたしはほかにしらない。もういちど言うが、原画がすばらしいことは論をまたない。それとは別に、展示をひとつの作品として見たとき、ジョジョ展がエンタメ系においても突出した存在感を示したのは確かであろう。
 
 とはいえ、岸辺露伴のようなメタ的立ち位置のキャラクターを登場させ、原作で活躍させることも含めて、長い年月をかけて展示を作りこむことは、エンタメ系の展示においていつでもできることではない。そもそも岸辺露伴のように現実との接点を緊密に結ぶことができるキャラクター造形は、今日のマンガやアニメにおいてかなり特異であると思う(架空のキャラクターに混じって実在の編集者や漫画家が描かれる『バクマン。』にすら、岸辺露伴ほどのメタ的キャラクターはいない)。だからほかのエンタメ系の展示は、夢と現実をきわどく両立させるための、ほかの方法をそれぞれに模索しなければならない。難題である。しかしだからこそわたしは、アート系よりもエンタメ系の展示で新しいものが生まれるのではないか、という期待を持つのである。

 ジョジョ展とはあまり関係ないのだが、最後にひとつ、小咄を。
 先述のとおり、S市内には花京院という地名がある。今夏、ぶらりジョジョ散歩をしていて、「花京院スクエア」という建物を発見した。それだけならば特筆すべきことはないのだが、なんと、「花京院スクエア」と書いてある礎石のようなもの(?)が、「三角形」なのである。これを見たときわたしは「スタンド攻撃を......受けているッ!?」と戦慄した。さらにこの建物について少し調べてみたら、「三菱地所」の所有なのだという。いったい、スクエアなのか、三角なのか、菱なのか。さらに写真をよく見ると、「SQUARE」の「S」が抜けているのも地味に怖い。このようなミステリーが偶然にも開催地域に仕込まれているのが、「ジョジョ展」の持つ凄み、その血(地)の運命(さだめ)なのだ。


スクエアなのに三角形。これも開催地域に仕込まれたミステリーなのか

 もしかしたら、S市花京院だけではなく、六本木にも恐ろしいスタンド使いが潜んでいるかもしれない。それでも、いやそれだからこそ、読者はジョジョ展に行かざるを得ないに違いない。
 覚悟はいいか? オレはできてる。

Ryoma Takemasa - ele-king

10/17にファース・トアルバム『Catalyst』をUNKNOWN seasonからリリースしました。かなり濃い内容になってますので是非チェックお願いします。また、『Catalyst』のミュージック・クリップをYoutubeで配信中 です。テンポ良くモダンな映像でかなりかっこいい作品に出来上がってますのでこちらも是非宜しくお願いします。
Ryoma Takemasa "Catalyst (Autumn Evening Mix)"

10/26@原宿Lily
DJ : Ryoma Takemasa、TBA
10/27@恵比寿Zubar
Music : Yoshi Horino、Ryoma Takemasa、Kyoko Kamichika
11/24@恵比寿Zubar
Music : Yoshi Horino、Ryoma Takemasa、Kyoko Kamichika
11/30@Loop
DJ : Shinya Okamoto、DJ Nori(Posivision)、Ryoma Takemasa
Live : Cherry、ngt.

Link
soundcloud | facebook | twitter

CHART


1
Ryoma Takemasa "Catalyst" UNKNOWN season

2
Yoshio Ootani "Strange Fruits (Gonno Remix)" Black Smoker

3
Manzel "Manzel2" Manzel

4
Ryoma Takemasa "Deepn'(Gonno Remix)" UNKNOWN season

5
Ryoma Takemasa "Deepn'(The Backwoods Remix)" UNKNOWN season

6
Sutekh DIrty Needles Drop Beat Records

7
Kenlou "The Bounce" MAW

8
Unbalance "Unbalance5" Unbalance

9
Milton Bradley "Reality is Wrong" Prologue

10
Reality Check "Fantasy" Strictly Rhythm

Goku Green - ele-king

 今年の3月のことである。写真家の植本一子は「とうとう眉毛を整えたラッパーが出てきたぞ! と石田さん(夫であるECDのこと)が鼻息荒く教えてくれた」とツイートしていた。SALUのことだ。それがひどく印象に残ってしまい、機会あってECDにインタビューした際に、「SALUをはじめとする若手ラッパーについて、どう思いますか?」とたずねてみた。返答は思いがけないものだった。「SALUは作られているといった感じがするんだけれど、北海道のGoku Greenというラッパーは天然で......どちらかというと、僕に近い気がする」。もちろんこれは眉毛の話なんかではなく。

 ECDが1996年の七夕の日に日本語ラップ史に残るイベント「さんピンCAMP」を主催したのは有名な話だが、Goku Greenはそのちょうど1年後に生まれた。音楽好きの両親のもと、スヌープやボブ・マーリーを師と仰ぎながら育ち、高校入学と同時に本格的に音楽制作をはじめる。そして、昨年秋に無料ダウンロードで発表されたミックステープ『ハッパ・スクール』を契機にシーンの注目を集めることになる。ウィズ・カリファやカレンシーといった、いわゆるUSストーナー・ラップ直系のスムースでメロディがかったフローが持ち味で、SALUとはラップ・スタイルが近似しているためによく比較されていた(ともに影響を受けたアーティストとしてボブ・マーリーを挙げている)。しかし、前出のECDの言葉が端的に表しているように、この二者には違いがある。似たようなフローのなかにおいても、アクセントや節回しから90年代~00年代の日本語ラップの潮流を汲んでいるSALUに対して、GOKU GREENは、荒削りな原石としての輝きがある。発声法やトラックへ合わせたデリヴァリーしかり、洗練という意味では、SALUの方が上手かもしれない。だが、必ずしもスキルの優劣が音楽の良し悪しに直結するものではないことを僕らは知っているし、彼はそういうタイプの歌い手でもない。ヴォーカルのかぶせやエディットも最小限の簡素なつくりで、少々危うさもつきまとうボーカルだが、なにより華があるのだ。彼が「生まれながらのMC/ナチュラル・ボーン・ラッパー」と言われるゆえんであり、ECDに「天然」と指摘されもするそんな屈託のなさは、あるいは、かつての5lackの「テキトー」と言いかえてもいいのかもしれない。

 そんな彼のデビュー作は『ハイ・スクール』と題された。それはたんに、彼の日常の大きな比重を占めている場所を指しているのだろうか。大半の曲で歌われる内容は、ショーティー、マネーにウィ―ド......いずれもオーソドックスなヒップホップ・テーマの例に漏れないものばかりだが、「高校」という主題からはおおよそかけ離れているし、自分が高校生ということに言及している詞も少ない。にもかかわらず、こうしたタイトルをつけているのは、全編にただようモラトリアムなムードと、それを許している自身の生活・環境を考えてのことだろう。いわば、想像と夢に耽ることを許された時間。"キャン・ユー・フィール・イット"で聴けるライン「人生の計画は考えないでノリはEasy」なんてすがすがしいほどだ。また、"ネボー・ギャング"なんていう、彼らの仲間内で使われているキュートなスラングのように、ヒップホップ・マナーでもっていかに日々を楽しむかというゲームを行っているようなフシも感じとれる。今作が描き出す彼の日常は、"ドリーム・ライフ"の意味を「夢の日々」、もしくは「夢のような日々」のいずれに解釈するにしろ、現実感に付随する重さをきらい、若さに満ちた確証の持てない希望を、個人的な願望に置きかえて歌っている。ラップ・スタイルとしては、やはり5lackの系譜に連なるとは思うが、ストーナー・ラップの括りでいえば、ファンタジーを織り交ぜて東京という街を描出し、楽観的にも厭世的にもとれる平熱的な語り口を持つ詩人、ERAをも思い出させる。だがGOKU GREENはより初々しく甘酸っぱく、ドリーミーでポップだ。つまり、グリーンはグリーンでも、ストーンというよりはエヴァー・グリーン。思いがけないドラマに導かれた彼に言わせれば、ヒップホップのクリシェ「Life's A Bitch(人生はクソだ)」よりは、「Ma Life Iz Like A Movie」なのである。



 『ハイ・スクール』リリース後、GOKU GREENは8月にフリーのミックステープ『ダーティ・キッズ』を発表。こちらは発表直後から長らくダウンロードできなかったのだが、つい先ごろ2曲追加した形で再度発表された(ダウンロードはコチラ→)。『ダーティ・キッズ』はミックステープらしいつくりで、というのも、いくつかは既存の曲のビート・ジャックもので、フリースタイルでサクッと録ったような印象。だが、前半部を聴くだけでもビート・アプローチが確段にうまくなっていることがわかる。キャッチーなフックとフローのメロディ・センスは健在で、多幸感あふれるクローザー・トラック(その名も"ネボー!!!")まで心地よく聴かせられてしまう。総じて言えることではあるが、非常に軽い聴きざわりで、それが快い。目玉はLil'諭吉プロデュースの"キャンディ・キャンディ!!!!"で、テーマ・パークのメルヘンチックなBGMをサウス寄りのバウンシーなトラックにアレンジしたような好トラックだ。また、ニコラップをフィールドに活躍する気鋭のラッパーRAqやYURIKAといった客演陣は、非常に完成度の高いヴァースを提供しており、こちらも聴きごたえ十分。

 今年に入ってAKLO、LBとOtowaなど、ミックステープを主戦場として活動していたアーティストが有償かつフィジカルでのリリースを果たしている。そんななかでもGOKU GREENはミックステープ『ハッパ・スクール』のみを足がかりに、1年と経たずインディ・ヒップホップ専門の新興レーベル〈BLACK SWAN〉の第1弾アーティストとしてデビューを果たした。このアクションのはやさには「非メインストリームに潜むすばらしい音楽やアーティストを自由に紹介すること」をレーベル・ポリシーとして掲げる〈BLACK SWAN〉の強い思いがあったようだ。それにしても、THE OTOGIBANASHI'Sをはじめ、『REV TAPE』にも収録され話題となっていたdodoや、早くから騒がれていたRIKKIに、12月に〈LOW HIGH WHO?〉からデビューする女子高生ラッパーdaokoなどなど新たな世代の胎動と加速する若年化の波は、けっしてアイドル業界にかぎった話ではない。そんな過渡期ともいえるなか、先鞭をつけるかたちで若干16歳のGOKU GREENがアルバム・リリースを果たしたことの意味は大きい。長い目でみれば、『ハイ・スクール』は、ひとつの指標になり得る作品なのではないか。そう思ってしまうほどに、GOKU GREENはフレッシュで、ヒップホップ・ドリームをふたたび、僕らに夢見させてくれるのだ。

あらべぇ - ele-king

こんにちは。あらべぇです。
最近はあるコトで忙しくて活動していないのですが、そのコトが終わったら音に限らず映像作品やArt Bookなど、いろいろなモノに挑戦していきたいなと思っています。あとは、いろんな人といっしょに曲を作りたいです。Beatmakerの方など、よろしくお願いします。

https://soundcloud.com/ovovovvovo
https://twitter.com/ovolooowv
https://www.calmlamp.net/

これからの季節に自分がよく聴きそうだなーって感じの曲をチョイスしました。
というか、ただ単純にいま聴きたい曲です笑

いま聴きたい曲


1
Erik Satie / Nocturnes - 2.

2
Kazumasa Hashimoto / -1 degree

3
Frank Ocean / Thinkin Bout You

4
Underworld / Twist

5
坂本龍一 / To Stanford

6
RAJA / My Crosshairs

7
小林大吾 / 歩く Stray Sheep

8
環ROY / 蒼い日

9
KILLER BONG / The Cold In Moscow

10
PANAMA / Full of Nothing

会いに行ける〈raster-noton〉。 - ele-king

 Olaf Benderとともにドイツのエレクトロニック・ミュージック・レーベル〈raster-noton〉の共同設立者として知られるFrank Bretschneiderの来日ツアーが行われる。東京公演は落合soupの6周年記念イベントとともなっており、スタッフ諸氏にも熱が入る。

 新宿区の落合を拠点として東京のDIYスペースの中でも異彩を放つsoupは、これまでに5周年記念としてMika Vainio(ex-Pan sonic)を迎える他、Mark Fell (SND)の単独ソロ公演やMark McGuire (Emeralds)のアンコール公演&DJ、日本初の100% Silkレーベル・ナイト、Dustin Wongの100分間ノンストップ・ソロ公演等々、「銭湯下のDIYスペース」という特殊な場所性を彩ってきた。配管工事や内装、音響設計、現場の進行やPAにいたるまですべてをDIYに行っているばかりか、スタッフ全員がノー・ギャランティ(売り上げはすべてサウンド・システムや店舗工事に回しているとのこと!)でイヴェントに携わるといった驚くべきアティテュードで運営されている。それぞれにラーメン屋を、電気技師を、保育士をと別々の仕事に従事しながら、音楽を紐帯として結びつく彼らは、みな90年代後半から2000年代の〈raster-noton〉などウルトラ・ミニマリズムに強く影響を受けてきたといい、今回の招聘にいたった背景がほの見えてくる。

 ツアーにはFrank Bretschneiderによるプロデュースのもと〈raster-noton〉初の女性アーティストとして注目を集めるkyokaが全公演に帯同。公演によってはフランク自身によるレクチャーなども開催予定とのことで見逃せない。

https://ochiaisoup.tumblr.com/post/..

 追加のDJに関しては、お客さんにライヴに集中していただきたいということで公表はしない方針のようである。

Frank Bretschneider & kyoka Japan Tour 2012

カールステン・ニコライ(aka. Noto/Alva Noto)らと共にベルリンを拠点に活動する、raster-notonの共同設立者、フランク・ブレットシュナイダーが来日ツアーを行います。
演奏家/作曲家/映像作家であり、レーベルraster-notonの運営と並行してエレクトロニック・ミュージックの過激な還元化と、サウンドとヴィジュアルとの相互作用から生じる美学の最前線を切り拓いてきた彼は、90年代後半のウルトラ・ミニマリズムやサウンドアートを強力に牽引、現在に至るまで絶大な影響力を誇っています。

■2012.10.10 (Wed) at Sapporo Provo
Open/Start 20:00/20:30

Frank Bretschneider
kyoka
sofheso
jealousguy

DJ: Mitayo

https://d.hatena.ne.jp/meddle/20121010

■2012.10.12 (Fri) "時間の音楽" at Kanazawa beta lounge
START 23:00

Frank Bretschneider
kyoka
Riow Arai
Kyosuke Fujita
Susumu Kakuda

https://susumukakuda.tumblr.com/post/31120576060

■2012.10.12 (Fri) Frank Bretschneider 特別レクチャー
"音と映像との相互アクション" at Kanazawa NEW ACCIDENT

20:00-21:00

*20名の入場制限があります。当日はお早めにご来場ください。
https://susumukakuda.tumblr.com/post/31120371870/frank

■2012.10.14 (Sun) "patchware on demand
-shrine.jp 15th anniversary party-" at Kyoto Metro

Open/Start 18:00

guest live :
Frank Bretschneider (Komet, raster-noton)
Christopher Willits (12k, Ghostly International, Sub Rosa)
kyoka (raster-noton)

shrine.jp live :
Toru Yamanaka
Marihiko Hara
dagshenma(higuchi eitaro) + Ikeguchi Takayoshi
genseiichi
HIRAMATSU TOSHIYUKI
plan+e
(大堀秀一[armchair reflection]&荻野真也&糸魚健一[PsysEx]+古舘健[ekran])

act :
tsukasa (post or dry?)
tatsuya (night cruising)

https://www.metro.ne.jp/schedule/2012/10/14/index.html

more lectures to be announced.


*ライヴ公演は10/10(水)札幌Provo、10/12(金)金沢beta lounge、10/13(土)落合soup、10/14(日)京都Metroとなります。

■Frank Bretschneider

プロフィールはこちらから

■Kyoka (onpa/raster-noton)

2012年にドイツのraster-notonより、レーベル初の女性ソロアーティストとなる作品『iSH』をリリース。これまでに坂本龍一等とのStop Rokkasho 企画、及び、chain music、Nobuko HoriとのユニットGroopies、Minutemen/The Stoogesのマイク・ワットとのプロジェクト、onpa)))))レーベルから3枚のソロアルバムなど、ヨーロッパを中心に活躍してきたKyoka。
ポップと実験要素がカオティックに融合された大胆かつ繊細なサウンドは、これまでも世界の多くの人を魅了してきた。
2012年4月にはSonar Sound Tokyoに出演、6月にはパリのセレクトショップcoletteのコンピレーションに楽曲「ybeybe (ybayba editon)」を提供。現在、フルアルバム制作中。

「どういう音楽を聴いてきたら、こういうものを作る女性になっちゃうんだろう?」─坂本龍一─

DJ Nobu - ele-king

 昨年から今年にかけてDJ NOBUには何度落ちた気分を救われたことだろう? 3月ASIAでのPARTY、Liquidroomでの7時間セット、そしてFREEDOMMUNEのときの名だたる世界中のアーティストの中でのPLAY。どれも私にとっては年間BEST PARTYに入ると言っても過言では無い感動をもらった。そんなDJ NOBUが新たに始動したレーベル〈Bitta〉と、彼の地元千葉で様々なPARTYを展開する「SOUND BAR mui」による共同オーガナイズPARTYが原宿神宮前の新スポット「garaxy」にて開催される。

 今回彼らが招聘するのはドイツのアンダーグラウンド・クラブ・ミュージック最重要レーベル〈Workshop〉だ。
 レーベルにスタンプのみをプリントしただけの謎めいたアートワークと、その優れた空間性を持つユニークかつ越境的なサウンドにより 世界中に熱狂的な信者を持つ、ドイツのアンダーグラウンド・ヴァイナル・レーベル。
 今回はレーベル・ショーケースということで同レーベルの看板アーティストであるKassem Mosse(カッセム・モッセ)によるLiveとレーベルを主催するLowtec(ロウテック)によるDJ、そしてDJ NOBU、GENKI NAGAKURAのDJというラインナップ。聞き覚えの無い方もいるかもしれないが、かつてMo' Waxのメイン・ヴィジュアル・ディレクターとして名を馳せ、いまはHonest Jon'sやスケートボード・ブランドのPalaceのアートワークを手掛ける英国の人気グラフィック・デザイナー、Will Bankhead(ウィル・バンクヘッド)のお気に入りのアーティストがKassem Mosseだ。またWillが運営する自主レーベル"Trilogy Tapes"から10年にKassem Mosseによる無題のカセットテープ作品が、また今年に入ってMix Mupとの共作LP"MM/KM"がリリースされており、その縁もあってかKassemのUKでの活動は純粋なテクノ/ハウス系というよりはダブステップ以降のボーダーレスな感覚を共有するパーティへの出演が多い。

 なお、前日は名古屋で良質なPARTYを発信し続けるClub MAGOでも同レーベルのショーケース・パーティが開催される。(五十嵐慎太郎)

workshop night

Featuring 
KASSEM MOSSE (WORKSHOP / MIKRODISKO / FXHE - LIVE) *EXCLUSIVE LIVE IN TOKYO
LOWTEC (WORKSHOP / NONPLUS / LAID - DJ)
DJ NOBU (FUTURE TERROR / BITTA - DJ)
GENKI NAGAKURA (STEELO - DJ)

2012.10.20 saturday night
at Galaxy

B1F 5-27-7 Jingu-mae, Shibuya-ku, Tokyo
open/start 22:00
adv 2,500yen  door 3,000yen

presented by Bitta & SOUND BAR mui

Ticket available at DISK UNION(SHIBUYA CLUB MUSIC SHOP, SHINJUKU CLUB MUSIC SHOP, SHIMOKITAZAWA CLUB MUSIC SHOP, CHIBA)、TECHNIQUE

*limited 200 people only 
*If you buy a ticket, you can enter with precedence
*You must be 20 and over with photo ID

*本公演は入場者200名限定での公演となります。
*開演時のご入場は前売り券をお持ちの方を優先させていただきます。
*20歳未満の方、写真付身分証明書をお持ちでない方のご入場はお断りさせて頂きます。

https://www.futureterror.net/news/dj_nobu/workshop_night.html 

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workshop night (Nagoya)

Featuring
Kassem Mosse (Workshop / Mikrodisko / FXHE (live))
Lowtec (Workshop / Nonplus+ / Laid - DJ & Live)
DJ Nobu (Future Terror / Bitta - DJ)
Se-1 (Black Cream - DJ)

Second Floor "旅路" @ Lounge Vio
DJs
Chee (Discosession/Organic Music)
Kaneda
DJ Avan (Pigeon Records)

2012.10.19 friday night
at CLUB MAGO

open/start 23:00
adv 2,500yen(1day) door: 3,000yen

presented by Gash & Black Cream
tour coodinated by Bitta

https://club-mago.co.jp/


 さらに、10/19(Fri)@名古屋MAGO、10/20(Sat)@ 神宮前Galaxyでのworkshopレーベルショーケースの開催を記念して、今回workshopが来日企画として特別に制作した日本限定発売の12インチ盤を各会場にて販売する事が決定!
 いまのところ詳細不明ですが内容はKassem MosseとLowtecの楽曲を収録したものとなる模様。
 プレス枚数は全世界で超限定50枚というプレミア必至の激レア盤です!

 昨年開催した一回目の「シブカル祭。」は、アート(立体、平面)からファッションから写真からパフォーマンスからフードまで、「女の子のための」と謳われていただけあって、妙齢のオッサンである私なんか、その、なんというか陽(ヤン)なパワーに圧倒されて、会場の渋谷のパルコから走って家に帰った憶えがあるが、前回の好評を受け、「シブカル祭。」が帰ってきました!

 2012年の「女子」たちに課せられたテーマは「女子のミックスカルチャー祭」。なんでも、昨年秋の第一回で、展示で隣り合ったクリエイター同士が意気投合して、合同展や共同制作の話がもちあがるなど、個を集めたフェスティヴァルから横軸の視点へ、「シブカル」という器そのものが参加クリエイターとの相互作用で、変質しつつあることを象徴するテーマが、今回は設けられました。つまり「ガーリー」のいいかえだと思われた「女子」カルチャーがその射程をじょじょに広げつつある現状を体現する文化祭が「シブカル祭。2012」といえるわけで、そんなこともあり、われわれ「ele-king」も、「シブカル」とコラボレートすることになりました。

 10月22日(月)の渋谷クラブ・クアトロ。

 この日は「ele-king LIVE at シブカル」と銘打って、TADZIO、平賀さち枝、Sapphire Slows、石橋英子、2012年秋にele-kingがレコメンドしたい4組のアーティストにご登場いただきます。
 今年リリースした『23歳』で、躍動感あふれるキュートな歌世界を構築した平賀さち枝、その風貌に似つかわしくないささくれだったガレージ・サウンドで好事家のみならず、ファンが急増中のTADZIO、紙『ele-king』Vol.6の特集でもブレないスタンスを表明し、海外での評価も高いSapphire Slows、ライヴの1週間前にピアノ・ソロ作『I'm armed』(傑作です)をリリースする石橋英子。かそけき音から轟音まで、フォークからIDMまで、弾き語り女子から宅録女子まで、ほかでは考えつかない、まさに「ele-king」らしいダイナミック・レンジを体感できる「ele-king LIVE at シブカル」にぜひおこしください! 当日は、メイン・アクト以外にも、DJやパフォーマンスで、意外なゲストもあるかもしれません。 (編集部M)

 ele-kingでは「ele-king LIVE at シブカル」に読者ご招待します。info@ele-king.netに、お名前とご連絡先、件名に「シブカル祭読者招待」と明記の上、メールしてください。抽選の上、当選者の方にご連絡さしあげます。締切は10/19(金)までとさせていただきます。


平賀さち枝

Sapphire Slows

TADZIO

石橋英子


シブカル祭。音楽祭2012
ele-king LIVE at シブカル

10.22 (Mon) @渋谷CLUB QUATTRO

石橋英子
平賀さち枝
Sapphire Slows
TADZIO
and more...

18:00 OPEN/START

チケット前売り:¥2,000(tax in / 1 drink order ¥500 / 整理番号付)

チケットぴあ:0570-02-9999(Pコード:181-353)
ローソンチケット:0570-084-003(Lコード:72495)
e+:https://eplus.jp

主催:シブカル祭。2012実行委員会 www.shibukaru.com

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