「OTO」と一致するもの

Chart by STRADA RECORDS 2010.10.01 - ele-king

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KEM

KEM WHY WOULD YOU STAY -TIMMY REGISFORD & ADAM RIOS REMIXES RESTRICTED ACCESS/SHELTER (US) / »COMMENT GET MUSIC
近代MOTOWNレーベルを代表するシンガーKEMの3rdアルバム「Intimacy」に収録されている極上バラードがTIMMY REGISFORD & ADAM RIOSコンビの手によってハウス・リミックスされました!シルキーなオリジナルが、タフなビートやオルガンで完全フロア仕様に。。。!右肩上がりの展開も最高で、これは感動的に盛り上る!インストも収録!

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TODD OMOTANI

TODD OMOTANI I LEFT MY ...-CHARLES WEBSTER REMIXES AMENTI(US) / »COMMENT GET MUSIC
OSUNLADEやDANNY KRIVIT、JIMPSTER、RALF GUM、NICK HOLDER、MASTER KEVらが絶賛!CHARLES WEBSTERが幻想的且つディープなミックスを施した女性ヴォーカルもので、硬質なようで柔らかいCHARLES WEBSTERならではの何とも言えない質感がたまりません!ダブ・ヴァージョンが3曲も収録されているのがミソ!

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VA

VA LATIN SOUL BROTHERS REMIXES WHITE (US) / »COMMENT GET MUSIC
【限定プレスのホワイト盤!】VEGA RECORDSなどからのリリースで知られるRICARDO MIRANDAがLATIN SOUL BROTHERS名義にてエディット/リミックス盤をリリース!B面のSANTANAのエディットがキラーで、スリリングなドラムやベース、パーカッションが渾然一体となって展開する怒涛のラテン・インスト!これはJOE CLAUSSELL系のファンにもオススメ!A面には以前LOUIE VEGAもリミックスして自分のレーベルVEGAからリリースしていたHECTOR LAVOE「MI GENTE」のリミックスを収録!こちらはメロウで浮遊感溢れる心地良い仕上がりです!

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SESSION VICTIM

SESSION VICTIM MLLION DOLLAR FEELING DELUSIONS OF GRANDEUR(UK) / »COMMENT GET MUSIC
そのクオリティーの高さに加えハイ・ペースなリリースで早くも誰もが認めるトップ・レーベルのとなった感のあるUKのDELUSIONS OF GRANDEURからSESSION VICTIMが再登場!往年のディープ・ハウスを彷彿とさせるエレピ系のコード・サンプルが優しく包みこむタイトル曲が超オススメ!この音だけで買ってしまう人も多いはず!

5

VA

VA TESSERA REMIXES SUSHITECH(GER)l: / »COMMENT GET MUSIC
【売れています!】KERRI CHANDLERによるリミックスを2ヴァージョン収録!初期ケリチャン・サウンド全開のズンドコ系トラックにヤラれるB1、そして打って変わって洗練された音作りのB2のミックスと、彼の魅力が2度楽しめるオイシイ内容!さらにA面に収録されているMR.Gによるリミックスもかなりイイので見逃し厳禁です!

6

THE HEELS OF LOVE

THE HEELS OF LOVE CRAZY-WALTER JONES REMIX UNDER THE SHADE(UK) / »COMMENT GET MUSIC
Bearfunkからのリリースでも知られるMichele Tessadriと、Tirkからのリリースでお馴染みのLove SupremeのメンバーLuca "Sapo" Saponaraによるスペシャル・プロジェクトThe Heels Of Loveによる12インチ!ナント体重150KGを超える実力派巨漢シンガーHard Tonをフィーチャーしたブギー・ディスコで、特にWalter Jonesによるディープで心地良いミックスがグッド!

7

CRAZY P

CRAZY P STAR WAR-GREG WILSON EDIT PAPER(UK) / »COMMENT GET MUSIC
CRAZY Pの楽曲を豪華なメンツがリエディットした強力EP!グルーヴ感満点で洗練されたファンク・ディスコのA面はGREG WILSON、そしてドープでぶっ飛んだダブ・ディスコのB面はRAY MANGが手掛けております!

8

VAKULA

VAKULA RING OF NIGHT EP BEST WORKS(GER) / »COMMENT GET MUSIC
UZURIやFIRECRACKERなどからリリースのあるウクライナ人アーティスト・VAKULAがドイツのBEST WORKSから登場!ディープ&ジャジーなだけでなく幻想的でどこかしら異国感を漂わせるオーガニックで深みのある響きが魅力!テック・ハウスからビート・ダウンまで幅広くアピールする質の高さとオリジナリティーにやられます!

9

BLACKLODGE

BLACKLODGE LAY IT ON THE LINE(feat.GUESTS OF NATURE) LAZY DAYS(FR) / »COMMENT GET MUSIC
Danny Krivit、Tortured Soul、Franck Roger、Lovebirdsらがプッシュ!メロウでグルーヴィーなトラックにマッタリとした男性ヴォーカルがフィーチャーされた極上のミッド・テンポもの!シンセがタップリ入った気持ちの良いサウンドが◎!

10

VA

VA DEVELOPED INCONSISTENCIES:AKAPELLA 2 SLOW TO SPEAK (US) / »COMMENT GET MUSIC
SLOW TO SPEAKからのアカペラ集第2弾!ニュースや映画などから使えるセリフやフレーズを大量に収録しております!DJバックに是非入れておきたい1枚!

Chart by JAPONICA 2010.09.29 - ele-king

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HOLGER CZUKAY

HOLGER CZUKAY PERSIAN LOVE CLAREMONT 56 / UK / 2010/8/24 »COMMENT GET MUSIC
クラウト・ロックの伝説グループCANのベーシストであり、バンド解散後も活発なソロ活動を続けきたHOLGER CZUKAYが1979年にリリースした傑作アルバム「MOVIE」に収録、美しいギターの旋律と短波ラジオから流れてきたコーランやノイズをテープ・コ ラージュしたこの曲は、日本でもかつて、あのスネークマンショーの「戦争反対」に収録されたり、「サントリー・ウィスキー角」のCMに使われて大 ヒットした一曲。今回もゴールド・ヴァイナル&特色印刷ジャケという豪華仕様!

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DUBDUB ON-SENG

DUBDUB ON-SENG SURF ON-SENG JAPONICA / JPN / 2010/9/16 »COMMENT GET MUSIC
待望のファースト・アルバム「TROPICAL GARAGE」に収録のサーフ・ギターとタイトなドラムが炸裂、あの大ヒット作「CALYPSO ON-SENG」にも匹敵する超絶キラーチューン「SURF ON-SENG」が7インチでシングルカット!BASED ON KYOTOで活躍、先日<RUDIMENTS>からリリースされたソロ・シングル「mbilie EP」も好評のDAICHIによるユル・ブロークンなリミックスをB面に収録です!

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DISCREET UNIT

DISCREET UNIT SHAKE YOUR BODY DOWN PRIME NUMBERS / UK / 2010/9/23 »COMMENT GET MUSIC
過去に<PRIME NUMBERS>コンピレーションCD/EP等に参加し、持前のアンダーグランド感溢れるディスコ~アーリー・ハウス的サウンドを披露してきた注目株DISCREET UNIT。今作も絶妙なバランス感覚で調和されたディスコ/ハウス・サウンドにてディープなリズム/グルーヴを構築で、ディスコ、ハウス・サイドはもちろ んこのドープ&ファットで深い音像の鳴りはテクノ・サイドも虜にしてしまうハズ!

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ORGONE

ORGONE KILLION VAULTS UBIQUITY / US / 2010/9/24 »COMMENT GET MUSIC
約3年ぶりのリリースとなった前作「CALI FEVER」から間髪入れず早くも新作アルバムが到着!タフなファンク・ビートを軸にアフロ、ボッサ、ダブ、そしてエレクトロやガラージ/ディスコまで柔 軟に取り込み、抜群のバランス感覚でアウトプットしたLA産ならではのORGONEオリジナル・サウンド!世界各地でのライブ活動の日々で磨き上 げられた、熱気滾るファンク・ビートがダイレクトに突き刺さる気合のこもった全編インスト・アルバム!!最高過ぎ!

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APIENTO & CO.

APIENTO & CO. SHE WALKS LENG / UK / 2010/9/22 »COMMENT GET MUSIC
<LENG>第4弾は、先頃<CLAREMONT 56>からリリースされた限定スプリット7インチも大好評のニューカマーAPIENTO & CO.による12inchシングル!ピアノのリフを軸にストリングス・シンセやエフェクトで高揚感を高めていくメロウでイビザ・ムード満載のバレアリッ ク・チューン傑作に。そしてフロア向けのディスコ・チューンへとアップデートした、PETE HERBERTによるリミックスをB面に収録です!

6

BLAST HEAD

BLAST HEAD IN WATER DISCO RUDIMENTS / JPN / 2010/9/1 »COMMENT GET MUSIC
高揚感/疾走感を掻き立てるベース・ラインにフルート、サックス、パーカッション等がワイルドに絡み合いトライバル感覚溢れるアフロ・ファンクな 激烈ダンス・グルーヴ"IN WATER DISCO"はアルバム中でもハイライトとなっていた一曲でほんとヴァイナル化を待ち望んでいた方も多いのでは!?そして本盤はさらにC/Wにマルチ・プ レイヤー=GLYN BIGGA BUSHによるアフロ・ブレイクビーツ・リミックスを収録!こちらもオリジナル・ヴァージョンのテンションそのままにクロスオーヴァーした土着的な鳴りを 響かせる絶品リミックスに!

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COFFEE & CIGARETTES BAND

COFFEE & CIGARETTES BAND ELECTRIC ROOTS FM VOL.5 -BACK 2 LIFE- ELECTRIC ROOTS / JPN / 2010/9/23 »COMMENT GET MUSIC
毎度お馴染みにバック・トゥ・バック・スタイルで仮想ラジオを念頭にミックスしていく二人のリアルタイムな「今」が聴ける人気シリーズ最新作!今 作第5弾はとびきりスウィートでダンサブルなグルーヴ感満点(!)、80年代後半~90年代初頭にクラブ・ミュージック界で一世を風靡した「グラウンドビート」にフォーカスして贈るシリーズ中最もコンセプチュアルかつ説得力のある一枚に仕上がってます!

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SUN RA

SUN RA PARIS TAPES ART YARD/KINDRED SPIRITS / NL / 2010/9/28 »COMMENT GET MUSIC
71年フランス/パリで行われたライブ録音音源の世界初音盤化!スタジオ録音音源よりも気持ちダンサブルかつDJフレンドリーな仕上がりのSUN RA代表曲"SAPCE IN THE PLACE"(もちろん世界初出ヴァージョン!)、そして軽快なパーカッション・プレイに土着的なコーラス・ワーク、女性ヴォーカルとが絶妙なアンサンブルで奏でる"SOMEBODY ELSE'S IDEA"、そして締めはスピリチュアル・グルーヴ盛り立つ密林ジャズ"WATUSI"!

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TURN ON THE SUNLIGHT [CARLOS NINO & JESSE PETERSON]

TURN ON THE SUNLIGHT [CARLOS NINO & JESSE PETERSON] TURN ON THE SUNLIGHT DISQUES CORDE / JPN / 2010/9/8 »COMMENT GET MUSIC
ご存知LAシーンを牽引する天才CARLOS NINOと、ギタリスト/インプロヴァイザー=JESSE PETERSONによる日本オリジナル企画となる新生ユニット=TURN ON THE SUNLIGHT。フォーキーでいてアンビエンス感をも兼ね備えたアコーステックギター・サウンドをCARLOS NINOによる抜群のプロデューサー/アレンジャーとしてのスキルで極上の音像へと築き上げられた今作は終始心地よい雰囲気に浸らせてくれるエヴァー・グ リーンな大傑作です!

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DANNY KRIVIT

DANNY KRIVIT EDITS BY MR. K VOL.2 LIMITED 12" SAMPLER 1 STRUT / UK / 2010/9/11 »COMMENT GET MUSIC
70年代から活動を続けNYアンダーグラウンド・ダンスミュージック・シーンを代表するDJにしてMR.K名義でも多数のエディット作品を手掛け てきた重鎮DANNY KRIVITによるレア・ディスコ・リエディット作品の数々をオフィシャル・ライセンスでコンパイルした<STRUT>によるコンピレーション 「EDITS BY MR.K VOL.2」からのアナログ・カット第1弾!限定プレスです!!

interview with Phew - ele-king


Phew / ファイヴ・フィンガー・ディスカウント(万引き)
E王 BeReKet / P-vine

Amazon

 彼女はこの国におけるオリジナル・パンク・ロッカーのひとり......である。1979年、ザ・スリッツやザ・レインコーツのデビュー・アルバムと同じ年に発表されたアーント・サリーのアルバムは、怒りと絶望の頂点に達した少女がまばたきもせず無表情に、そしてぬかりなく正確に、相手の急所に一撃を食らわすようなレコードだ。しかも(最近、再結成が囁かれている)ザ・ポップ・グループの"ウィ・アー・オール・プロスティテューツ"よりも1年前だ、"すべて売り物"とはよく言ったもので、ジョン・サヴェージ流に言い表すなら、「アーント・サリーこそ中曽根政権によって変えられた日本のその後の暗い未来を最初に予感したパンク・バンドである」となるのだろう(その観点で言えば、彼女が坂本龍一と組んだのは必然だったとも......、いまあらためて思い返せば)。
 
 それから30年の月日が流れた。ポスト・パンクが欧米の若い世代を中心にリヴァイヴァルしたように、日本でもフューの音楽はいまより強く必要とされている。ザ・レインコーツが初めて日本で演奏したとき、彼女たちの出演前のステージで歌うフューを見ながら僕はそう思った。そんなわけで、ele-kingはいま、誇りを持って彼女のインタヴューをお届けする。

ピストルズは同じ世代なんです。ジョン・ライドンが私よりふたつぐらい年上なのかな。あのファッションから音楽から何もかもがすべて衝撃でした。彼の持っていた気分というのが、ある種、私たち世代の気分を代表していたんですね。70年代の音楽にうんざりしていたわけですよ。

ザ・レインコーツのライヴが良かったとおっしゃいましたが、フューさんから見てどこが良かったんですか?

Phew:昔の曲も良かったですけど、いまの彼女たちの身体を通して出てくる音楽が最高に良かったですよね。楽しかったです。

楽しかったって感じですか?

Phew:ファーストからの曲もたくさんやっていましたけど、なつかしいという感じではなかったです。私、ピストルズが再結成していちばん最初に来たときに観に行ったんですね。

えー、武道館に行かれたんですか(笑)! 僕はあれ、チケット買って行かなかったんですよ。

Phew:行ったんですよ~(苦笑)。あれはね、もう、出てきただけで......、最初は"ボディーズ"からはじまったのかな? はじまった瞬間、それでもうオーケーなんですよ。「あ、生のピストルズだ」って。レインコーツは、それとはぜんぜん違うものですよね。

女性バンドとしての共感はあったんですか?

Phew:むしろそれはいちばんわからない部分というか、共感しにくい部分。〈オン・エアー〉でも、ミキサーの人が「女の人だ」みたいなこと言ってるんですけど、それがいちばんよくわかない。

そうですか。ところでdommuneに出演されたときにスーサイドをかけてましたが、いまでもあの時代のパンクにシンパシーを抱いているんですか?

Phew:それはしょうがないですよね。いちばん多感なときに聴いたということもあるし、何もかもが好きです。スーサイドの1枚目とシングル「ドリーム・ベイビー・ドリーム」は本当に好きです。2枚目になるとちょっとわからなくなるんですけど(笑)。

やっぱアラン・ヴェガの叫び声ですかね(笑)。

Phew:あの時代のリズムボックスの質感とか、ぜんぶひっくるめて好きですね。

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私の若いときっていうのは精神的に危ない場所にいたと思うんですよ。まあ、いまも危ないと思うんですけどね(笑)。あの二行はね、決意表明というか、「そうするんだ」っていう、意思表明みたいなものなんです。あの二行は、いまの気分でもありますよ。

最初に聴いたパンクって何だったんですか?

Phew:たぶんね、ジョナサン・リッチマンだったと思うんですよ。パンクって名前はあったのかな? なかったと思うんですよね。

当時、ジョナサン・リッチマンを聴いていた日本人ってどれぐらいいたんですか?

Phew:日本盤で買いましたよ。私が高校1年のときでしたね。

モダン・ラヴァーズですね。

Phew:そう、ジョン・ケイルがプロデュースしていてね。"ロードランナー"という曲があって、それはいまでも好きです。ただ、それはパンクっていうよりも、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの延長上で気になって、買ったんです。で、それからラモーンズ、ブロンディ、パティ・スミス......その後ですよ、ピストルズは。

フューさんにとってどんな衝撃だったんですか?

Phew:ジョナサン・リッチマンに関してはそれほど衝撃はなかったんですけど。私、とにかくヴェルヴェット・アンダーグラウンドが好きだったんですね。中学3年生のときにルー・リードが来日しているんですけど、行ってるんですよ。グラム・ロックの頃ですね。同じ頃にニューヨーク・ドールズとか大好きで。当時はまだリリースの量もそんなに多くないですし、だからプロデュースがジョン・ケイルであったりすると、ジョナサン・リッチマンとかパティ・スミスとか、わりとたやすく辿れるんです。衝撃という点で言えば、何と言ってもピストルズでしたね。本当にあれは......、良かったです。

それはちょっと意外ですね。

Phew:だってそれはね、パティ・スミスにしたってブロンディにしたってひとつ上の世代じゃないですか。ピストルズは同じ世代なんです。ジョン・ライドンが私よりふたつぐらい年上なのかな。あのファッションから音楽から何もかもがすべて衝撃でした。ピストルズ=ジョン・ライドンだと思うんですけど、彼の持っていた気分というのが、ある種、私たち世代の気分を代表していたんですね。70年代の音楽にうんざりしていたわけですよ。私は、(日本では)そう感じていた極々少数派かもしれないけれど、世界中にそう感じていた人は多かったと思うんですね。だから、ピストルズが起爆剤になったというか、彼の言動やファッションが、当時のティーンエイジャーを代弁していたんです。

僕の勝手な想像は、ブリジット・フォンテーヌとか、ダグマー・クラウゼとか......。

Phew:あ、そういうのも聴いていましたよ。シャンソンも好きで聴いてました。

まあでも、モストをやられているくらいですし、『秘密のナイフ』にも"ひとのにせもの"というパンク・ソングがあるし。

Phew:そうですね(笑)。

アーント・サリー時代からずっとあるように思うんですけど、フューさんが定義するパンクって何でしょうか?

Phew:当時は、77年は定義できたと思うけど、いまはとても......、パンクというのはとても難しい。

解釈がいろいろありますからね。

Phew:だってもう、現実の世界で実現しているじゃないですか。(すでにいろんな人が)勝手なことやっているし、あの当時の「既成の価値観を破壊する」とか言っていたのがほぼ実現しているし、だから、何かに対してのアンチテーゼ、反対するっていうのはあまり意義がないっていうんですかね。70年代後半のパンクの精神みたいなものはつねに持ち続けているし、音楽活動を通じて表現していると思うんですけど、それは私だけじゃなくて、インディペンデントなスタイルを貫いている人たちみんなに言えるんじゃないですか。

DIY主義ということですよね。

Phew:ですね。

ちなみにアーント・サリー以前に音楽活動はされていたんですか?

Phew:ピアノを弾く同級生の女の子と何かをカヴァーしたりとか、遊びでそういうことはしていましたけど、バンドはやっていないですよね。

どんな少女時代を過ごされたんですか?

Phew:少女時代(笑)! 難しいですねー。

反抗的な少女時代だったんですか?

Phew:ハハハハ、そうですね。

学校みたいなところでもアウトサイダーだったみたいな。

Phew:真面目でしたよ。家は朝出て、神戸だったんですけど、三宮に出て公衆電話から親のフリして「今日は欠席します」とか電話して、そういうことはやってるんです(笑)。そうやって、学校をさぼるんです。不良という言葉が生きていた時代ですけど、不良って言われていたかもしれない(笑)。

いやー、フューさんの少女時代ってどうだったのかなーと思って。

Phew:少女っていつぐらいですか?

それはやっぱり小、中、高までですかね。......まあ、小、中、高ではぜんぜん違いますけどね。

Phew:それ違うでしょ(笑)。

ぜんぜん違いました(笑)。

Phew:ただ、自分持っている自己イメージと他人から言われることがものすごく離れてたりするんですね。自分では暗い、暗い、学生時代だったと思っていたとするじゃないですか。そうすると、「面白い子だった」みたいなね。よくわからないんですよ(笑)。

僕はフューさんの作品を聴いたときに、音もそうですけど、言葉にも感銘を受けたんですね。やはり早い時期から言葉を書いていたんですか?

Phew:それはなかったです。歌詞を書くようになって書きはじめました。もちろん、本を読んだりしてましたし、いつも現実ではないものを求めていたというか、いつも本を読んだり映画を観たり音楽を聴いたり、そういったものは子供のときから自分には必要なものでしたね。よくね、先生には「ぼーっとしてる」とか「どこ見てるかわからない」とか言われてましたね(笑)。

なんですかね、頭が良すぎて男を寄せ付けないような(笑)。

Phew:いやそれが、ずーっと女子校だったんですよ。

でもやっぱ、フューさんってそういうイメージありますよ。

Phew:いや、そんなことないですよ。ただね、男の子って嫌いだったかな。中学生とか高校生ぐらいのときとか、同年代の男の子がわからないっていうか、なんか汚いし(笑)。

ハハハハ。

Phew:まあ、女の子ってそういうものじゃないですか。

では、言葉の面で影響を受けた人っていうのは誰かいないんですか?

Phew:作家とかですか?

作家とか。......たとえばアーント・サリー時代の"フランクに"って曲あるじゃないですか。ああいう言葉って「いったいどこから来るんだろう?」って思ってましたね。

Phew:どういう歌詞だっけ?

「飢えて植えた上には上がある/認って慕った下には下がある」とか。

Phew:あー。寺山修司の短歌、塚本邦雄の短歌ですとか、そういうものが好きでしたね。いわゆる現代詩みたいなものよりも、定型詩みたいなほうが好きでしたね。散文みたいなのは好きじゃなかった。

短歌とか俳句とか......。

Phew:だけど、文学少女という感じではなかったんです。

違ったんですか?

Phew:まったく違います。

へー。

Phew:文芸部に入っているような友だちはいましたけど、私はそういう感じではなかったですね。

「返り血を浴びて大きくなるわ」とか......。

Phew:ああ、あの短い曲、"転機"ですね。

そう、「なんであれが"転機"なんだろう?」って。

Phew:あれはね......、私の若いときっていうのは精神的に危ない場所にいたと思うんですよ。まあ、いまも危ないと思うんですけどね(笑)。あの二行はね、決意表明というか、「そうするんだ」っていう、意思表明みたいなものなんです。あの二行は、いまの気分でもありますよ。

「夜な夜な目を凝らしても出口なんか見つからない」って、なるほど。ちなみにあの詞はいくつのときに書かれたんですか?

Phew:18ですね。肉体をもった存在として決意表明なんですね。私、今週末で51になるんですけど、いまはそういう気分です。

なるほど。そういえば、レインコーツといっしょにライヴをやったときにアーント・サリー時代の曲をやってましたね。

Phew:"醒めた火事場で"。

ちょっとびっくりしましたけど。

Phew:アーント・サリー以降、あの歌を歌ったことがなかったんですよ。でも、なんか、あの歌で歌っていたイメージ、風景みたいものがいまの時代と重なる。いまの気分にぴったりというか、向島ゆり子さんのピアノのアレンジで蘇りましたよね。

アーント・サリー以降、あの歌を歌ったことがなかったというのは、やっぱり、フューさんのなかにアーント・サリー時代に対する複雑な気持ちを持ってらっしゃるというのもあるんですか?

Phew:アーント・サリー自体は純粋無垢なバンドで、ビッケにしてもマユにしても、メンバーもほぼ初めて楽器を持った人たちばかりが集まって、純粋に自分たちのやりたいことを手探りで探していって、曲を作っていったわけです。で、なんとなく、〈ヴァニティ〉の阿木(譲)さんという方が出してくれて、でまあ、ぱっと売れたんですよ。でも、いわゆる評判というものは最低だったんです。地元のライヴハウスとか、つまらない雑誌が関西にあって、「学芸会バンド」とか、「下手くそで最悪」とかね、書かれてたんです(笑)。もう、憶えてますよ、そういう意見ばっかり。それで坂本龍一さんプロデュースでシングルを出したじゃないですか。

「終曲/うらはら」(1980年)ですよね、僕もそれが初めてでしたね。

Phew:東京に来て、坂本龍一さんプロデュースで、メジャーからシングルを出した。そうしたら、さんざんボロクソに言っていた人たちが手のひらを返したように、こんどは「すごいモノが出てきた」みたいな評価になっていたんですね。

ハハハハ。

Phew:だから実にくだらない......最初から夢を見ていたわけじゃないですけど、「はぁ、こんなもんなんだ」とか。20歳になるかならないかの頃でしたから、「はぁ、こんなもんなんだ」と思って、そのなかで上手にやっていこうっていう発想がなかったですね。あまりにも若くて、ナイーヴだったのかな。10年前だったら違ったと思いますけど。

そうですね。

Phew:人はそういう反応の仕方をしなかったと思うし、実際にライヴハウスを中心に別のやり方で続けていくってことはできたと思うんです。それが70年代末の関西には......なかったですね(笑)。

ハハハハ、相当、冷たいリアクションだったんですね。

Phew:だけど、唯一、田中唯士さんだけが......。

田中唯士さんって、S-Kenですね?

Phew:そうです。東京ロッカーズが関西に来たときに彼にテープを渡したのかな? そうしたら、「SSといっしょにぜひS-Kenスタジオに来てください」って話をもらって。

そういう風にレコードを出して、ツアーまでしようっていうくらいですから、フューさんのなかの気持ちのテンションも相当に高かったわけですよね。

Phew:それはもう、ムチャクチャ高かったですよね。だけど、なにもかもがピストルズの解散で終わりましたけどね。

そうですか。

Phew:だからあれは時代のものだったんですよ。あのときに何か絶対にやらなければならないという気分、しかも自分たちの世代でって。

パンクの熱で突き動かされていたんですね。

Phew:そうですね。

僕が中2のときにピストルズが解散しているので、解散したということにショックを受けるほどではなかったんですよね。

Phew:でしょ。いわゆる90年代のパンクやピストルズの評価って、シド・ヴィシャスが評価されていたり、あとマルコム? 「どうして?」って。私にとってピストルズの解散の原因って、マルコムなんですよ。もちろんマルコムの功績もわからないでもないんですけど、パンクの流れとして、マルコムがいてヴィヴィアンがいてみたいなのは......「はぁ?」というか(笑)。この感覚は、レインコーツの人とかわかってもらえると思うんですけどね。

僕は、リアルタイムではもちろんジョン・ライドンの発言をすべて信じていたし、インタヴューを読むととにかく彼がマルコムの悪口を言っていたから、最初はすごく印象悪かったんですけど、その後、イギリスのジャーナリストの書いたものを読んで、やっぱりマルコム・マクラレンがジェイミー・リードとともに60年代の夢みたいモノを抱いていて、それがやがてジョン・ライドンみたいな天才と出会ってスパークしたという話を知ってしまうと、マルコムに対する見方もずいぶん変わりましたけどね。

Phew:読んでみようかな、それ。はははは。

60年代後半の学生運動をかじっているんですよね。

Phew:団塊の世代でしょ。

はい。

Phew:私ね、それが嫌だったんですよ。子供が音楽やって、大人が儲けるみたいなのが。

なるほど(笑)。でも、ポップ・カルチャーのなかで最初に"アナーキー"という言葉を使ったのはマルコムだし。「アナーキストこそ美しい」っていう言葉が描かれた有名なシャツがありますけど。

Phew:たしかにそういう要素があったから売れたとは思うんですけどねー。

マルコムのお店にやって来たジョン・ライドンを見たときに、リチャード・ヘルに似ていて、しかもディケンズの小説に出てくる労働者階級の少年そのものってことでジョン・ライドンを気に入るわけで、彼にもそれなりに夢があったんだと思いますけどね。

Phew:ジョン・ライドンはミュージシャンだったし、結局そこでうまく合わなかったんでしょうね。

ピストルズのアメリカ・ツアーの最後のライヴの、ジョン・ライドンがステージ去る前のいちばん最後の言葉があるじゃないですか。「騙されていたと思ったことがあるかい?」っていうの。

Phew:私、あのアメリカ・ツアーのヴィデオを観ていると泣きそうになるんですよね、あのジョン・ライドンの顔を見ていると。

あー、それはわかります。しかもあれ、客席からモノ投げられてものすごく空虚に笑っているんですよね。

Phew:そういえばアーント・サリーもモノ投げられたな(笑)。

フューさんから見て、当時の関西のシーンは評価できないんですね。

Phew:シーンなんかなかったですから。バンドはありましたよ。数は少なかったですけど、みんなすごく良いバンドでした。ただ、シーンと呼ぶにはあまりに......だって、お客さんは多くて30人とか? アーント・サリーの頃なんてそんなものですよ。解散ライヴをいちばん最初にライヴをやったお店でやったんですね。そのときお店から溢れるぐらいの人が入ったんですけど、それでも50人いなかったんじゃないかな。そのぐらい狭いところ。それをシーンと呼ぶのはどうかなー(笑)。

小さすぎたと。

Phew:しかも(アーント・サリーは)半年ぐらいしかやってなかったんです。シーンが大きくなったのは80年代になってからじゃないですか。イエロー・マジック・オーケストラ以降ですよ。

ニューウェイヴ色が強くなってからですかね。

Phew:だいたい私はレコード・マニアだったんです。そういう音楽を聴いたり、やっていた人たちは、ほぼ全員マニアだったんです。新譜が入ってくるお店にみんな集まるわけです。そういう繋がりなんです(笑)。

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「なんでいまさら」っていうのがあったんですよ。アーント・サリー時代に誰にも評価されなくて、メディアとまではいなくても、そういうモノに対する幻滅というか......だから、インタヴューに来る人すべてに対して攻撃的だった(笑)。

なるほど。僕はでも、高校生のときにフューさんの「終曲/うらはら」を買って聴いて、ものすごく好きになって、で、コニー・プランクとホルガー・シューカイが参加した『Phew』も買って聴いて、で、アーント・サリーのアルバムをものすごく聴きたかったんですけど、すでに廃盤となっていて聴けなかったんです。中古でもかなり高値がついていて。再発盤でようやくちゃんと聴けましたね。それまでは友だちが雑誌の『ZOO』とかの文通コーナーで知り合った人からテープを送ってもらったり、ライヴのカセットテープを買ったりして。

Phew:はははは。海賊カセット、一時、売ってましたね。

ハハハハ。〈PASS〉で出すきっかけは何だったんですか?

Phew:〈PASS〉レコードの後藤(美孝)さんという方がアーント・サリーのライヴを神戸に見に来たんです。そのときに「〈PASS〉で何かやりませんか?」と言ってくれたんですけど、アーント・サリーが解散することが決まっていたんですね。だったら、後藤さんの知り合いに「坂本龍一という人がいてて、いっしょにやりませんか」ということで、はじまったんですね。私は坂本龍一さんのことはあんま知らなくて、イメージしていたのはフュージョンの人だったんです。実際に当時はキリンとかやって、渡辺香津美なんかといっしょにやっていたし。

そうでしたよね。

Phew:「でも、ぜんぜんフュージョンとかではなくて」っていう説明を受けたのを憶えています。

それで、その後はドイツのコニーズ・スタジオで『Phew』(1981年)を録音するわけですよね。僕ね、当時、音楽雑誌をよく読んでいたから、フューさんのインタヴューもけっこう読んだんです。で、当時のフューさんのインタヴューの発言って、とにかく恐いというか、トゲがあるというか。

Phew:トゲだらけでしたね(笑)。

「ホルガー・シューカイはどうでしたか?」みたいな質問で、「いや、別に」みたいに答えていて。

Phew:そんなこと言ったかな?

正確にはどうだったかまでは憶えてませんが、たしかそんなような、質問に対してすごくぞんざいな態度というか......、やっぱあの頃は構えていたんですか?

Phew:「なんでいまさら」っていうのがあったんですよ。甘えというのもあったと思うんですけど、でも、アーント・サリー時代に誰にも評価されなくて、メディアとまではいなくても、そういうモノに対する幻滅というか......だから、インタヴューに来る人すべてに対して攻撃的だった(笑)。

ハハハハ。本当にそんなインタヴューでしたよ。

Phew:実際に、私はマニアだったから、カンなんか値段の高い輸入盤で買って......、大好きだったわけですよ。コニー・プランクにしたって、クラフトワークにしたってね。だけど、インタヴューに来る人たちが何にも知らないわけです。全国流通の音楽雑誌の人たちが、そういう音楽のことをまったく知らない。だから取材で大好きな音楽の話ができるわけじゃない、「だったら......」という感じで(笑)。

なーるほど(笑)。

Phew:いまそういう仕事をしている人たちのなかには音楽が好きな人がいっぱいいると思うし、レコード会社にもそういう人がいると思うんですけど、80年当時はほとんどいなかったと思います。自分で見つけてきた音楽について書くのではなくて、有名になったから近寄ってきたみたいな人が多くて。

まあ、僕もカンを意識しはじめたのは『メタル・ボックス』や『Phew』以降でしたけどね。だって音楽雑誌にもほとんど載ってなかったですから。

Phew:でも実はそういうの、日本に入ってきてたんですよ。高かったけど。

では、『Phew』のあとに活動を休止してしまうのも、そのあたりの業界への幻滅が原因だったんですか?

Phew:ていうか、あらゆる要素です。自分が出したモノがわりと注目されてしまって、だけど、自分のなかにはその準備がなかったんですよね。多くの人に聴いてもらいたいとか、そういう感覚がまったくなかったんです。それが、時代のなかで「変な少女」みたいなね(笑)、ちょっと「変わった少女」みたいな扱いですよね。そのへんのことも、自分のなかで最初に「もうこれで食べていくんだ」ぐらいの覚悟があれば大人の対応もできたと思うんですけど、なんだかわけのわからないままに、「変な女の子」という扱いを受けて、来る取材も、コマーシャルの出演とか、グラビア雑誌のモデルとか......。

えー、そんなのもあったんですね。

Phew:いっぱいありましたね。ぜんぶ断りましたけど。

さすがっす。

Phew:いや、だから、出て行く用意がなかったんですよ。かといって、音楽はやっていきたいなという気持ちがあって。それをやるにはもっとしたたかさが必要だったんですよね。時代のなかの象徴的な何某みたいなことはできなかった。

『Phew』を出されたあとに、ご自身で辞めることを決めたんですね。

Phew:次にどういうものをやったらいいのかというのが、像を結ばなかったんです。誰とこういうことをやってとか、イメージが浮かばなかったんです。ショービジネスを否定したところからはじまったパンクだったのが、ニューウェイヴになってショービジネスになってしまったじゃないですか。スリッツがソニーと契約して、ポップ・グループもメジャーと契約して、で、「契約金がいくら」「どひゃー」みたいなね。そういう風になっていった。だから、ものすごく幼稚な感覚なんですけど、「私のファンタジーは終わった」みたいなね、81年にはそう思ってました。ロンドンではニュー・ロマンティックのムーヴメントがあって、いっぽうでスロッビング・グリッスルみたいな人たちはどんどん地下に潜っていった。で、私は......どっちかというと地下のほうかなって(笑)。

まあ、80年代はパンクのDIYもインディ・ブームになっていきますしね。

Phew:85年ぐらいからですか、それが商売になるからですよね。

それでも、『View』(1987年)によってカムバックしたのは、表現に対する欲望みたいなものを抑えきれなかったというのがあったんですね?

Phew:そうですね。時代とはまったく別のところでやっていくぞという意思表示が『View』ですね。当時は、それこそバンド・ブーム、インディ・ブームでした。それらとはまったく違うところでやっていきたいという気持ちでしたね。だから音楽的にもオーソドックスというか......。

なるほど。そして『View』以降は、わりと精力的な活動をされていますよね。とくに90年代後半あたりからはすごくありません?

Phew:そんなことはないですよ。毎年出しているわけではないし。

ソロだけではなく、ノヴォ・トノやモストやビッグ・ピクチャーみたいな別プロジェクトもやってますし、先日dommuneで演奏した山本精一さんとの『幸福のすみか』(1998年)もありました。

Phew:ああ、そういうのは増えましたね。

山本(精一)さんや大友(良英)さんのような人たちと共演されたり......そういった精力的な活動の背景には何があったんですか?

Phew:ライヴハウスで活動するなかで、人に伝わることをやらないとダメだなというのがあって、で、嘘がなくて人に伝えられるものということを考えていたときにモストが生まれた。初期パンクのスタイルで、ストレートな音ですよね。はじまりは、山本さんなんかとスラップ・ハッピーの前座をやったときに、1曲パンクをやって、気持ちよかったというのがあるんですけど。だけど、アルバムを作って、ライヴを続けていくっていうことは、そういうことですね。

いやー、でもフューさんのパンク・ソングはいいっすよ。

Phew:そうですかね。

僕、アーント・サリーのアレとかすごい好きだったなー。なんて曲名だっけな......。

Phew:"すべて売り物"。

そう、"すべて売り物"!

Phew:ハハハハ。

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 彼女の15年振りのソロ・アルバムは、全曲カヴァー曲となっている。時代の大きな流れに背を向けて、ときには苛立ちや失意を表してきた彼女が、カヴァー曲を歌うことで、いまま で表現してこなかった領域に侵入しているようにも思える。そしてその作品、『ファイヴ・フィンガー・ディスカウント(万引き)』は、素晴らしい力強さと大らか さを持っている。


Phew / ファイヴ・フィンガー・ディスカウント(万引き)
E王 BeReKet / P-vine

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ところで、ソロ作品ということで言うと、1995年の『秘密のナイフ』以来なんですね。

Phew:そうですね。

で、通算5枚目となるんですね(1981年の『Phew』、1987年の『View』、1992年の『Our Likeness』、1995年の『秘密のナイフ』)。

Phew:え、そうなの? あ、そうか、そうですね。

で、15年振りなんですよね。

Phew:そうですね。

で、15年振りのソロ・アルバムがカヴァー・アルバムなったことが興味深いんですけど。先ほども話したように、フューさんの独自性の強い言語センスはフューさんの音楽の一部としてずっとあったと思うんです。でも、カヴァーって他人の言葉を歌うじゃないですか。

Phew:ただね、カヴァーはずっとやりたかったんです。他人の言葉で歌うっていうのを。自分で歌詞を書いてメッセージを届けるということではなくて、いち歌手として音楽をやりたいというのがあったんですよ。

もうちょっと具体的に言うとどういうことなんですか?

Phew:自分で歌詞を書くと、どうしてもメッセージ性が出てきてしまう。いまの時代、顔の見えない人たちに向けてメッセージを吐くというのは、私にとってちょっと難しい。それをやるには慎重にならざる得ない時代っていうのかな。

それは何でなんですか?

Phew:世のなかの風潮っていうのかな、言ったものが勝ち、やったものが勝ちみたいな、人の評価を得たものが勝ちみたいな、それに対する反抗......というわけでもないんですけど、ミュージシャンとして敢えて黙っていたい。

言ったものが勝ち、というのは昔からありませんでした?

Phew:昔からあるんですけど、その傾向がね......、ネットを観察しているとものすごいスピードで......気が変わるのがすごく早い(笑)。だから、そのなかに乗り込んでいく気はないってことですね。そこまでの強いものがないんです。逆に言えば、そこまで強いものをいま大きな声で言うっていうのは、すごく恐いことだと思うんです。顔が見えている相手に、どんどん話していくことは逆にいまやりたいことなんです。見えない相手にいまそれはできない。だから......なんかもう、ものすごい小さいレヴェルの話なんですけど(笑)。

いえいえ(笑)。

Phew:世のなかの風潮に背を向けたいんです。いっぽうで、目に入る人たちとのコミュニケーションはすごく大事。そこをいまの出発点に置きたい。このアルバムに関わったすべての人たち、ミュージシャン、絵を描いてくれた人、デザインをやってくれた人......すべての人たちが個人の繋がりで、説得ではなく共感をもってやってくれたんですね。それが誇りというか、出発点というか、それで自主制作というか。

背を向けるというのは、いかにもフューさんらしいというか。いまのお話は今回の選曲には関係しているんでしょうね。

Phew:かもしれないですね。

好きな曲といえば、まあ、キリがないんでしょうけど、今回は選曲も興味深いんですよね。ただ好きな曲を並べたわけではないと思いますが、どんなコンセプトで選曲されたのでしょうか? ポップスというコンセプトはあったんですか?

Phew:「言葉が届く歌」というのが選ぶときの基準でしたね。

ある時代のものが多いですよね。加藤和彦関係、寺山修司が2曲、永六輔、中村八大というのも目につきますね。

Phew:たぶん............

はい。

Phew:批評性のようなものを感じ取られたかと思いますが......って、いま言おうとしたら固まってしまった(笑)。

ハハハハ。それは松村正人による素晴らしいライナーノーツに書いている通りなんですね。

Phew:それはもう、音楽を通して感じてもらえればと思っています。ミュージシャンが言葉で言ってしまのは良くないかなと思います。

松村正人が書いていますが、アーカイヴ化に対する批評性?

Phew:はい、そんなたいそうなものではないですけど、まあ、多少は(笑)。

古い歌の力を証明したかったというのはあるんですか?

Phew:歌でこれだけ風景が変わるってことはやってみたかったですね。もちろん音楽の力もあるんですけど。歌と音楽でこれだけ風景を変えられるってことはやってみたかったですね。

プレスリーの曲はときどきライヴでやってたんです。これはいつか録音しておきたいなというのがありました。"Thatness and Thereness"に関してはすごく好きな曲だったんですよ。あの曲はデニス・ボーヴェルのミックスで、ダブで、だったら、それが21世紀に違うアプローチでできないかなと思ったんです。なんて言うか、21世紀の風景を作れないかなと。

アルバム・タイトルの『万引き』という言葉はカヴァー集というところに起因していると思うのですが、いろんな言葉があるなかでなぜそれを万引という言葉で表したのですか? 

Phew:レコーディングの合間に雑談していたとき、ジム(・オルーク)が「英語で可愛い言葉がある」って、で、「5本の指のディスカウント(five finger discount)、万引き」って。「あ、それアルバム・タイトルにいただき!」って。

なるほど(笑)。そういえば、選曲という観点で言えば、坂本龍一さんの"Thatness and Thereness"とプレスリーの"Love Me Tender"の2曲が特殊というか、浮いていると言えるんじゃないでしょうか?

Phew:浮いてるかなー。

音楽的には浮いていませんが、選曲ということで言えば、発表された時代とか違うじゃないですか。

Phew:なるほどね。プレスリーの曲はときどきライヴでやってたんです。これはいつか録音しておきたいなというのがありました。"Thatness and Thereness"に関してはすごく好きな曲だったんですよ。あの曲はデニス・ボーヴェルのミックスで、ダブで、だったら、それが21世紀に違うアプローチでできないかなと思ったんです。なんて言うか、21世紀の風景を作れないかなと。石橋英子さんがドライヴ感のあるピアノを弾いてくれたおかげで、とても面白くできたと思います。最初はドラムも入っていたんですけど、それを抜いて、自分でつまみもいじったりして。

なるほど。それで......しつこいかもしれませんが、他の8曲が60年代の曲であるのに対して、その2曲だけが違うというのはどうしてなんですか?

Phew:ああ、それは......、もう、いつかやってみたいと思っていたんでしょうね。年代に関しては、特別なこだわりは、あまりなかったです。

音楽性に関しては、フューさんはどの程度仕切っているんですか? あらかじめ方向性なり全体像は決まっていたんですか?

Phew:曲によりますね。"世界の涯まで連れてって"は「せーの」ではじめた完全なセッションでベーシックを録音して、山本精一のギターや向島ゆり子さんのヴァイオリンは後からダビングしました。

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ないです......いや、まったくない。だけど、訊かれることはアーント・サリーや『Phew』になってしまうのは、もう仕方がないかなと思ってますけどね。でも、私のなかに愛着はないんです。愛着があるのは、強いて言えば、最新作ですよね。

フューさんの作品って、つねにどんな作品でもトゲというか、ささくれ立ったものがあると思うんでけど。

Phew:あるのかなー(笑)

と、思うんですけど、今回は音楽に対して違ったアプローチをしていますよね? 

Phew:トゲがないですかね?

ないことはないと思うんですけど、今回はより柔らかく、より寛容な感覚を感じるんですよね。

Phew:それはね、曲の力だと思います。やっぱり......ちゃんとしいてます(笑)。歌い継がれてきたポップスというのかな、すごくちゃんとしいてますね。曲の力が大きいと思います。

もちろんすべての曲が好きなんでしょうけど、とくに歌詞の点で好きな曲ってどれですか?

Phew:"どこか"ですかね。永六輔さんの歌詞が好きです。

当時、リアルタイムで好きだったんですか?

Phew:いや、あとからですね。でもね、永六輔さんの書く歌詞は憶えているんですよ。"遠くへ行きたい"とかね、なんとなく子供心にあって......。"青年は荒野をめざす"も、なんとなくは憶えていて、あとから好きになった曲ですね。私がリアルタイムで好きだったのは、パンクですよ(笑)。

そうでしたね(笑)。

Phew:パンクとドイツのニューウェイヴ。DAFも数ヶ月間、ものすごく夢中になりましたね(笑)。

音楽家が歳を取っていくことについてはどのようにお考えですか? 

Phew:いわゆる天才、私がみて「この人すごい人だ」という人はみんな死んでいるんです。限りなく自殺に近い死だったり、非業の死じゃないですけど、結局、自分の場所が見つけられなくて死んでしまった。いつもその人のことがあります。生きているんだったら、なんか作らないといけないなというのがあります。本当に天才だけど、そういう人が認められなかった、音楽業界というか......。

それは身近な方なんですか?

Phew:野田さんも知ってる人ですよ。クリスロー・ハース(元DAF、元リエゾン・ダンジェルース、Chrislo名義で〈トレゾア〉からテクノの作品も発表している。2004年に死去)。

あー。

Phew:彼は本当にすごい天才で、彼の残した未発表がものすごいんですよ。たとえばノイバウテンの(アレキサンダー・)ハッケとか、「クリスローがいたから僕はシンセができないと思った」とか......。だから、ミュージシャン仲間ではものすごく認められていた。ああいう人が、力を発揮できずに終わってしまった音楽の世界ってどうよ、っていうのがあります。それだけにこだわるのは良くないと思うんですけど。あ、質問とちょっとずれてしいましたね(笑)。

まあ、パンクも初期衝動における純粋な情熱みたいなものがあったと思いますし、それって強いものがありますけど、しかしアーティストも歳を取っていかなければならないわけですし、またリスナーの年齢層もずいぶん幅広くなっているし......。

Phew:歳なんか関係ないという人もいますけど、私は自覚してますね。51歳になるということも、すごく自覚している。初期衝動なんかとっくにないです。そんなものがいまもあったらただのアホですよね(笑)。でも、これ(音楽)でご飯を食べているわけではないので、止めたほうが楽だったりするんですけど、でも、別のところでやっていかないと、半分死んだ感じになる。それは身体感覚なんです。

なるほど。

Phew:いまだにアーント・サリーや1枚目のアルバムについてよく話をされるんですけど、塚本邦雄の「表現者は処女作に向かって退行していく」という格好いい言葉があるんですけど、それを踏まえつつ作り続けるっていうことなのかなぁ。それは、「自分からは死なないよ」という感覚と近いものじゃないかと思うんです。

フューさんのなかにはいまでもアーント・サリーに対する愛着もあるわけですよね?

Phew:ないです......いや、まったくない。だけど、訊かれることはアーント・サリーや『Phew』になってしまうのは、もう仕方がないかなと思ってますけどね。でも、私のなかに愛着はないんです。愛着があるのは、強いて言えば、最新作ですよね。

なるほど。

Phew:新しいものを作っていかなくちゃという強迫観念はないです。でも、生きている限り、何かをやっていくだろうなと、死んだ人たちといっしょに(笑)。

ちなみに、最近、家でよく聴く音楽は何ですか?

Phew:最近、クラスターが来日していたじゃないですか。そのときにメビウスから彼の作品をもらったんです。一昨年でたアルバムなんですが、それをよく聴いています。彼も取材されれば昔のクラスターのことをよく訊かれるだろうし、コニーズ・スタジオで録音した頃の話をよく訊かれるだろうし......。

僕も初めて取材したときにそうしましたからね。

Phew:でも、いまでもシンプルなメビウス節っていうのがあるんですよね。そのねばり強さというか、体力というか、これは音楽の中心にあるものだなと思います(笑)。それを持ち続けることって大変なことだと思うんです。マニアの人たちからすれば「最近のクラスターなんか......」という意見があると思うんですけど、だけど「最近のもすごいな」と思います。これは初期衝動じゃないんです。もっと、生きているということに近いところにあるものだと思うんですけど。

なるほど。

Phew:私、犬をずっと飼ってて、犬の写真をメビウスに見せたんですよ。「かわいいでしょ」って。そしたら「ベトナムで犬を食べた」とか。

ハハハハ。

Phew:すっごい面白い人なのよね(笑)。ICCで取材を受けていたときも、態度悪いんですよ。「どんなアートの影響を受けたんですか?」と訊かれても「知らない。俺は何の影響も受けてない」とかね。66歳の言葉とは思えない。素敵だなと思いましたね(笑)。

面白い人たちですよね。

Phew:実はファーストのとき、コニー・プランクがメビウスにも声をかけていたらしいんです。でも、ちょうどそのとき都合が合わなくて。それでメビウスのほうから絶対にいっしょにやりたいって、一時期やりとりしていたことがあったんですけどね。コニーズ・スタジオがつぶれてしまいましたし......。

コニー・プランクが亡くなってからもスタジオは続いていたんですね。

Phew:2005年まで奥さんがやってました。スタジオの切り盛りをした奥さんが亡くなって、それで終わりましたね。機材とか売ってましたよ。「これはユーリズミックスの弾いたギターだ」とか。最初に行ったときにはすごく小さなスタジオでしたけど、2度目に行ったときは立派なスタジオになっていて、びっくりしましたけど。

ところで、ご自身の作品をお子さんに聴かせることはあるんですか?

Phew:あー、ないない。人に教えられるんじゃなくて、自分で見つけて欲しいです。よく言うんですけどね、湘南乃風とか買ってます。

ハハハハ! 家で聴いているんですね。

Phew:いまはマキシマム ザ ホルモンが好きですね。

いい話を聞かせていただきました(笑)。

Phew:いやいや、親の趣味を強制するのはよくないなと思って。

「カンを聴きなさい」とは言わないわけですね(笑)。

Phew:絶対に言わない(笑)。前に「パンクを聴きたい」と言うからイギー・ポップを聴かせたんです。そうしたら、「古い」って言うんです。マキシマム ザ ホルモンなんかすごい情報量だし、楽曲もよくできているんですね。だから、あれ聴いていたらイギー・ポップが古く聴こえるんだと思います。

なるほど。そういえば、新作は、ジャケットが可愛らしいイラストになっていますよね。いままでは、マン・レイ風のフューさんのポートレイトがジャケットになっていましたけど......。

Phew:いやいや、これはもう、カヴァー集ということで第三者の視点を入れたかったんです。イラストを描いてくれた小林エリカさんはまだ30ぐらいの若い人で、こういう絵を描いてくれて、とても嬉しかったですね。

Chart by Lighthouse Records 2010.09.13 - ele-king

Shop Chart


1

Jackson 5

Jackson 5 Dancing Machine (Henrik Schwarz Remixes) Motown [GER] »COMMENT GET MUSIC

2

Holger Czukay

Holger Czukay Persian Love Claremont 56 [UK] »COMMENT GET MUSIC

3

Nebraska

Nebraska Four For Four EP Rush Hour [NED] »COMMENT GET MUSIC

4

Blast Head

Blast Head In Water Disco EP Rudiments [JPN] »COMMENT GET MUSIC

5

Los Massieras

Los Massieras Better Than Italians EP Bananamania »COMMENT GET MUSIC

6

Dave Aju & The Sol Percussion Ensemble

Dave Aju & The Sol Percussion Ensemble Two Tone Circus Company [FRA] »COMMENT GET MUSIC

7

Mark E

Mark E Nobody Else Running Back [GER] »COMMENT GET MUSIC

8

Filipsson & Ulysses

Filipsson & Ulysses Escape From New York Internasjonal Spesial [NOR] »COMMENT GET MUSIC

9

Roberto Bosco

Roberto Bosco Berlin Music City Figure [GER] »COMMENT GET MUSIC

10

Nacho Marco & Raoul Lambert

Nacho Marco & Raoul Lambert Cinnamon EP We Play House Recordings [BEL] »COMMENT GET MUSIC

Chart by UNION 2010.09.10 - ele-king

Shop Chart


1

EYヨ

EYヨ Sky Size Sea TBA / JPN / »COMMENT GET MUSIC
昨年リリースの『Cassette Acid Garage Punk Mix』に続きメタモルフォーゼ先行リリースとなったこの1枚はEYEさん本人が言うようにDJ光光光の延長線上に位置する1枚。ジャンルとかではなくて、好き放題にキャンバスからはみ出したようなアーティスティックな選曲をコラージュ的にミックス、使われているトラックが生命を帯びとても躍動的。定位置を決めて聴くことが許されないこの振りの広さを、是非手にして体験してみてください。

2

CMT

CMT Observacion Astronomica BLACK SMOKER RECORDS / JPN / »COMMENT GET MUSIC
毎回本当に「作品」と呼べるミックスを放つCMTがBlack Smokerから新作をドロップ。洞窟の奥深くで鳴り響く反復ビートに意識も時間もがゆがめられるような「ロウなグルーヴを」ベースに、緊張と弛緩を繰り返すハメな展開に圧倒されるばかり。それだけではなくドラマティックなギミックも散りばめ、エンディングで解き放たれる様は映画のよう。渦巻く宇宙をイメージさせるアートワークと内容がバッチリはまっています。

3

CALM / カーム

CALM / カーム Drive To Home Daylight Edition MUSIC CONCEPTION / JPN / »COMMENT GET MUSIC
「メタモルフォーゼ~フェスの帰りに聴ける気持ち良い音」をコンセプトに、昨年大好評を得た「清流」に続き今年もディスクユニオン限定でCALMのミックスCDがリリース!!昨年のコンセプトを踏襲した、「帰路に向かう車の中」をダイレクトに表現。様々な音の嗜好を持った車内みんなの好みを全て満たすかのような、様々なジャンル・新旧を織り交ぜ拾い上げて表現。疾走感と心地よいオーガニックな生音、程よく散りばめられたシンセがいかにも選曲師Calmらしい。タイムレスに楽しめる傑作コンピミックスの誕生です!

4

RICK WILHITE PRESENTS

RICK WILHITE PRESENTS Vibes New & Rare Music RUSHHOUR / JPN / »COMMENT GET MUSIC
Theo ParrishやMoodymannと共にデトロイトのアンダーグラウンドシーンを築き上げてきた3 ChairsのRick Wilhiteが監修、アーチスト個々が持つソウルを余すことなく注ぎこんだハウス・コンピレーションアルバムがここに完成した。多くのフォロワーを生み出すデトロイト・シカゴのアンダーグラウンドハウスの「今」をいち早く体感すべく、各アーチストの新作をセレクトした珠玉の一枚だ。

5

JACKSON 5 & HENRIK SCHWARZ

JACKSON 5 & HENRIK SCHWARZ Dancing Machine Remixes MOTOWN / GER / »COMMENT GET MUSIC
極少ロットで初回プレスは瞬く間に完売。既に各方面でプレイされ、入荷の問合せもものすごい頂いていた1枚が再プレス!ヒプノティックなビートと生音の絶妙なミックス感と存在感、さすがと思わせられる仕事ぶりに感服!!!オフィシャルプロモですのでお早めに!

6

NDF

NDF Since We Last Met DFA / US / »COMMENT GET MUSIC
VILLALOBOSリミックス!DFAから、意外にもBRUNO PRONSATOとSERGIO GIORGINI(BIRDS & SOULS)による・ユニット・NDFのデビュー作が登場! アコギやフルートなどが散りばめられた夏向きの清涼感溢れるチルアウト・ミニマルがすばらしい! B面には御大VILLALOBOSによるヒプノティックでモノトーンなリミックスを収録した話題盤!

7

MODESELEKTOR/MODERAT

MODESELEKTOR/MODERAT 50 Weapons Of Choice #2-9 FIFTY WEAPONS / UK / »COMMENT GET MUSIC
RadioheadのThom Yorkeからファンだと公言され多方面でブレイクしているModeselektor、またそのModeselektorとApparatのユニットModeratの音源をミステリアスなホワイト盤でリリースするFifty Weaponsから750枚限定盤コンピレーションCD。Boysnoize RecordsからもリリースするSiriusmo、鬼才Shackleton(Skull Disco)、Torsten Profrock(exe. Monolake)のユニットT++、M.I.A.のリミキサーSBTRKTなど豪華なメンツが名を連ねる1枚。

8

MR RAOUL K FEAT.WAREIKA

MR RAOUL K FEAT.WAREIKA Le Triangle Peul BAOBAB MUSIC / GER / »COMMENT GET MUSIC
強力盤!ASH RA直系のサイケデリック・トリップ・ミュージック!自身のレーベルBAOBABからリリースされた凄い一枚。得意とする、生音フューチャーのトライバルなHOUSEトラックに、ミニマルなフレーズとサイケなギターがかまされるMANUEL GOTTSCHINGバリの展開!ギターのブルージーなメロディーとか本家なみにカッコいい!

9

DANJEL ESPERANZA

DANJEL ESPERANZA In The Bottle BACKDOOR BEAUTY / GER / »COMMENT GET MUSIC
ドイツ最深部、自身のレーベルBACKDOOR BEAUTYからDANJEL ESPERANZAの新作。深海、または宇宙空間を漂うようなドローンが根底をうごめく中、独創的なグリッチ音がリズムを構成する全3トラック。深い時間に効果を発揮する中毒性高いGROOVE。DANJELの個性・地下ドイツシーンの感覚が爆発している注目の1枚。

10

PATRICE SCOTT

PATRICE SCOTT Deep End SISTRUM / US / »COMMENT GET MUSIC
Ron HardyやDerrick Mayに影響を受け80年代にキャリアをスタートさせたデトロイトのアーティスト・Patrice Scott。現在絶好調のレーベルSISTRUMを運営し、その作品はヨーロッパでも人気が高い。先日待望の初来日も果たし、今最も勢いに乗ってるアーティストの一人といえるだろう。本作は渋谷クラブミュージックショップのリニューアルを記念しての独占入荷。ハウシーで深い鳴りをかます力強いグルーヴを是非チェックしてみてください。

DJ Shibata - ele-king

夏を惜しんでパーティが続くテンションで選びました


1
Mijangos - Music & Soul - Junior London

2
Sare Havlicek - Dreams In Light(Ray Mang Dub) - Nang

3
El Chavo - Hola Muneca - Vinyl Vibes

4
Unknown - Dri - Ricardo And Luciano

5
Coyote - Moving feat.Nesreen Shah - International Feel

6
Dreamhouse feat.Ceasar - Jump & Prance - White Label Recordings

7
Nelue - Pierced Heart(LSB Remix) - Lovemonk

8
Martyn - Minilub - Ostgut Ton

9
Sparkling Experiences - Hardswing Vision - Basenotic Records

10
Diesel & Jarvis - Maringa - Moton

Kazuhiro Tanabe(mokmal sound, orbit) - ele-king

最近のお気に入りです


1
Erykah Badu - Out My Mind, Just In Time - universalmotown

2
Daniel Mehihart - Deep Crazy Synth (Minilogues Dismantling The Storm Remix) - WIR

3
Abultnapper - Almost Nothing (Patrick Chardronnet Remix) - Audiomatique Recordings

4
Julia Biel, Stimming, Ben Watt - Bright Star (Sunset Mix) - Buzzin' Fly Records

5
Cio D'or - Goldbrokat - Prologue

6
Peter Van Hoesen, Donato Dozzy - Talis - Curie Recordings

7
Bird Show - Two Organs & Dumbek - Kranky

8
Kuniyuki Takahashi - Ocean Waves (Minilogue Pulsating The 3rd Remix) - mule electronic

9
Mirko Violi - Pelican (Yakine Remix) - Catwash Records

10
DENPUN - Mirage Land - dplab.

ele-king - ele-king

Current Top 10 Chart


1
Candy Claws - Hidden Lands - Twosyllable

2
Julian Lynch - Mare - Old English Spelling Bee

3
Emeralds - Does It Look Like I'm Here? - Editions Mego

4
Actress - Splazsh - Honest Jon's

5
The Stamps - Wizard's Sleeve, etc(12") - Mexican Summer

6
Gold Panda - Lucky Shiner-Notown/Yoshimoto

7
Digital Mystikz - Return II Space - DMZ

8
Baths - Cerulean - Anticon

9
High Wolf - Shangri L.A. -Moamoo/Artunion

10
Donovan Quinn & The 13th Month - Your Wicked Man - Soft Abuse

Toshiyuki Goto - ele-king

TG's Recent Chart 2010


1
Staffan Linzatti - Absence Of Waypoints - Rrygular

2
Adam Port & Sante - Faire Des Siennes - Rockets & Ponies

3
Carl Craig - At Les "Remix" - Tronic

4
Meadow - Low Volume "Remix" - Fof???

5
The Bayaka Citizens - Electric Africa - Sacred Rhythm Music

6
Stephen Brown - Stress Free - Music Man Recording

7
Mos Dub - Mos Dub EP - Unknow

8
Phace + Misanthrop - From Deep Space - Neosignal

9
6th Borough Project - Slow Down Baby - Instruments Of Rapture

10
Agoria - Grande Torino - Infine

 ぼくがロマンの語り手になり切れない部分は、つまりロマンがしばしば語り手の自己肯定を前提にして、ナルシズムに陥りやすいからで、対立物を内包するとくずれてしまう性格をもっているからだ、という気がする
寺山修司(唐十郎との対談『劇的空間を語る』76年3月)

 これは丑三つ時に見た奇天烈な夢の話
 夢の中で夢が夢であると自覚したばかりに
 私は私と分裂した悲しき性に
 汝の半身を探し闇の中
志人"ジレンマの角~Horns of a Dilemma~"


 現在の志人の凄みとは、00年代初頭にヒップホップ・グループ降神のラッパーとして日本語ラップ・シーンに鮮烈に登場してから約10年間、悩み、懊悩し、思想や価値観やラップのスタイルを劇的に変化させながらも決して歩みを止めなかったからこそ獲得できた代物だと思う。


志人 / ジレンマの角 EP ―Horns of a Dilemma EP―
Temple Ats

 今回、志人のシングルはアナログでリリースされている。もしかしたら、「お、久々のリリースじゃん」と思う人もいるかもしれないが、実は昨年も、家族を主題にした「円都家族~¥en Town Family~」というシングルをポストカード・レコードという特殊なレコードでリリースしている。さらに、今回のアナログにも収録された、志人が志虫という名でいくつもの虫に成り代わり物語を紡ぐ(宮沢賢治の『よだかの星』を彷彿とさせる)"今此処 ~Here Now~"とDJ DOLBEEのインストを加えた増補盤を懐かしの8cmCDという形態で発表してもいる。
 それらは、失われていくメディアに焦点を当てるという企画の一環で、ダウンロード配信など、急激に変化する昨今のメディア環境に対する彼らなりのレスポンスなのだろう。志人らが主宰するインディペンデント・レーベル〈Temple ATS〉のアートワークの要である画家の戸田真樹の絵も含め、手作りの「モノ」を残すことへの強いこだわりが感じられる。
 "今此処"のクレイアニメーションのMVなどが収められた『明晰夢シリーズvol.1』やポエトリー・リーディングのイヴェントに飛び込みで参加する志人の姿を撮影した『森の心』といったDVDもひっそりと世に出回っている。また、「ジレンマの角 EP」に収められた"夢境"のクレイアニメのMVは秋に、NHKで放映される予定だという。ヒップホップ・シーンから遠く離れた場所で、彼らは変わらず自分たちの活動を続けてきたのだ。
 そして、"ジレンマの角"をリード曲とするアナログも〈Temple ATS〉のHPで購入すると、特典としてCDとポストカードが付いてくるという仕組みになっている。ラップ入りの曲が3曲、インストが2曲収められているが、すべてのトラックを担当したのはDJ DOLBEEで、音楽的に言えば、エレクトロニカ、アンビエント、ヒップホップとなるだろうか。とはいえ、何をおいてもやはり特筆すべきは志人のラップの圧倒的なオリジナリティである。

 "ジレンマの角"は、志人が、無実の思想犯、警察官、裁判官、医者、看守、死刑執行人、囚人、ガーゴイルなどに扮し、国家権力に囚われ死刑を宣告された主人公と思しき、野蛮思想に侵されたとされる無実の思想犯を中心に展開するストーリーテリング・ラップで、まるでATG映画のような重苦しいムードに満ちている。意図的に劣化させたノイジーな音質はまさにATG映画のざらついた映像のようで、その世界観は大島渚が死刑制度をテーマに撮った映画『絞死刑』を連想させる。危険な香りを漂わせながら、鬼気迫るラップを披露する、一聴して率直に「ヤバイ!」と思わせる志人は久々だ。
 このアナーキーな感覚は、2005年にリリースされたアナログでしか聴くことのできない"アヤワスカ"以来だろう。ちなみに僕は、三島由紀夫、チェ・ゲバラ、ジミヘン、ジャニス・ジョプリン、サン・ラ、バスキアといった過去の文学者や革命家やミュージシャンらの名前をリリックに盛り込み、路上の怒りが渦を巻きながら天空に舞い昇り優しさに変わっていく、麻薬的な快楽の潜むこの曲が、志人の作品のなかでも1位、2位を争うぐらいに好きだ。

 リーマン フリーター ディーラー 
 ブリーダー Dremaer ハスラー やくざ 
 Jasrac シャーマン ターザン 
 ターバン巻くサーバント 
 We are Music Mafia have No Fear 
 FREEDOMを作り出し 救い出すビーナス 
 Winner Loser Who is the Luler(ママ) in this earth?
 I ask You やさしく言う まさしく 君だ
"アヤワスカ"

 ◆無実の思想犯
 そうだ あのとき私は確かにアナーキーな連中とばかりつるみ
 社会からは脱藩人よばわり 盛り場の話題はいつも中身無き冗談か
 国家権力から逃れる方を夜長に語りあかした
 空が白むまで 朝もやが稲妻で 引き裂かれて行くのをただ睨むだけ
 気が付けばそこにはもう誰もいなくなって
 周りには口を尖らした どたま来たお巡りが

 ◆警察官A......「野蛮思想に冒された犯罪人よ じたんだ踏もうが時間だ
 お前にもう夢を見る権利は無い」

 逃げなきゃ 後ろ手に回される 絞め縄
 二メーターはある権力者達に上から押さえつけられ
 あっという間に 前後塞がり 暗がりに砂を噛み
 不渡りつまはじきものの姿に
"ジレンマの角"

 "アヤワスカ"にも近い部分はあるが、"ジレンマの角"は明確に戯曲という形式が採られている。が、しかし、この曲は紛れもなくラップ・ミュージックとして成立している。この2曲に関して言うと、苛烈さという点において、ソウル・ウィリアムズやマイク・ラッドなんかと同じ匂いを嗅ぎ取ることができる。
 いずれにせよ、日本でこんな芸当をやってのけるラッパーを志人以外に僕は知らない。詩人が朗読しているかと思えば、役者のセリフ回しのような語りに切り替え、一瞬ラガ調の声音でかましてみせたりもする。志人のとどまることを知らない自己内対話のエナジー放出するために必然的に発明されたスタイルなのだろう。

 「私」への深い疑念からくるラップへの苛烈な欲求、言い換えれば、近代的自我の解体への欲望と言えるかもしれない。近代的自我に亀裂を入れて、その危うさや不確定さを炙り出そうとするのは、志人の表現の底流にあるもので、我を忘れるほどの限界状態から真実を手繰り寄せるために志人はラップの技術を鍛え、進化させ、ときに驚異的な速度に身を任せているように思える。
 まるで千手観音の手が、五感に物凄い勢いで襲いかかってくるような変幻自在のラップには、聴く者の視覚や聴覚などの感覚を統一させる力を感じる。それはいわば明確なトリップ体験であり、個々の枝分かれした感覚のその奥にある根源的な感覚に触れてしまうような、共感覚の稲妻に打たれる経験である。志人のラップのスピードは共感覚へ到達するための、未来を生み出す生命力に溢れた速度である。
 ことばは生きものである、ということを志人は全身を楽器にすることで体現し、また彼のラップを聴く者はそのことを全身で痛いほど感じることになる。志人は日本語のラップ表現を意味と音声と物語の構成といったいくつかの点において、明らかに次元が違うところまで持って行ってしまった。韻を踏むことでイメージを膨らませ、物語を予期せぬ方向へ転がし、ことばとことばの連なりがまた新たなイメージを喚起させる。

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 「とりたて何の理由も無いですが、鳥だって色んな色を持っているはずなのに
 どうして僕はこんなに真っ黒で小汚ねー色をしているんでしょう?」と問いかける
 「お日様の様にどうしたら成れるの あの真っ赤っかな色に成りたかったんだ
 時たま邪な気持ちを残したお星様に聞いてもさっぱり分からなんだ
 名前も知らないカラスが一匹飛んで来たとき
 浜辺の白波 黒く汚れたこの身を洗い
 何万年後も流れ星追い 嫌がってもやがて年老いる僕らは
 今までのままこれからのカラーを探して どんくらい根比べ重ねてどんぶら大海原
 日溜まりの中で暗闇を焼き払い給え 名前の無い僕は
 猛スピードでモスグリーンに曇った街を行くモスキート
 もう救い様の無い都市はホスピタル 夜の持つ魅了に取り憑かれたヒーローは
 次の朝、ポルノスターになりました
 アスリートの吹かすウィード
 唐墨色に染まる空のオリオン座に恋をした少女は
 君の心なら全てお見通しさ ってな具合にカラカラとただ笑うんだ
"私小説家と黒カラス"(『Heaven's恋文』)

 「ことばの偶発的な干渉=共鳴の自由を許す」(今福龍太)とでも言えようか。ことばとことばの隙間に壮大な冒険への扉を無数に用意し、そして、どの扉を開けるかは、そのラップを聴く人間次第なのである。志人は日本語ラップ界のダダイストであり、モダン・ビートニクの詩人である。そんな形容さえ、僕はまったく大袈裟に思わない。
 2002年に降神がCDRによるデビュー・アルバム『降神』を発表した後、志人のフォロワーが大量に現れたが、「THA BLUE HERB以降」や「SHING02以降」という日本語ラップの歴史認識が仮に成立するのであれば、間違いなく「志人(降神)以降」というのも成立することになる。まあ、誤解されないように一応書いておくが、それは商業的成功という意味ではなく、あくまでも芸術的観点から考えた場合である。


photo by 新井雅敏

 ところで、『降神』の2曲目を飾る、ファンのあいだではクラシックの呼び声も高い"時計の針"の最後で、「血染めの鉢巻き絞めて印税もらって勝ち負け気にして死んでろ 特に お前と彼等」と、商業主義に走るBボーイたちを唾を吐きながらディスしていたことを思えば、ある時期から志人は随分優しくなった。いまは口が裂けても「死んでろ」と言い切ることはないだろうし、「hate=憎しみ」の感情をあからさまに表に出すこともなくなった。
 何が原因でそうなったかは知らない。年齢のせいもあるだろう。デビュー当時の降神には感じられなかった友愛をいつからか率直に表現するようになった。初期の攻撃性や狂気を愛したリスナーは戸惑ったに違いない。だから、もちろん降神や志人をずっと追い続けているファンはいるだろうが、一方で、彼らのリスナー層は変わっていっているように思える。
 実際のところ、僕もある時期、志人のラップとことばを素直に受け入れることができなかった。何年か前、湘南の江ノ島の海の家だったと思うが、志人のライヴをオレンジ色の夕陽が深い闇に沈まんとする美しいロケーションのなかで観たことがある。具体的には思い出せないが、志人が放った自然回帰やエコロジーや友愛のことばは、僕にはあまりに無垢なことばに聴こえ、愕然としたことがある。正直、最後まで観ていられなかった。

 「それは、お前が偏屈で心が汚れているんだよ」、ということであればむしろ話は早いが、しかし、似たような感想を持つ人間は少なくないということだ。いや、これは本当にきわどく、危うい現代的な問題なのである。
 僕は志人というラッパーが、宇宙の真理や自然の偉大さを考えもなしに漠然とペラペラと喋るスピリチュアリズムかぶれの軽薄な人間などではないことをよく知っている。豊かな知性と感情と表現力を持つラッパーであることを知っている。裏を返せば、そんな志人であっても、いまの時代に自然回帰やエコロジーという切り口から平和を訴えることは、共感と同じぐらいの拒絶を引き出してしまう困難さがあるのだ。それぐらい自然回帰やエコロジーというのは、一筋縄ではいかないものだ。
 その意味で、「野は枯れ 山枯れ 海は涸れ すきま風が吹き 国は荒れ果てた 放火魔に 連続殺人 原子力発電所 核戦争 終わらせよう 今日からでも 君は地球さ 地球は君なのだとしたら」というリリックから穏やかに滑り出すアンビエント的な"夢境~Mukyo~"の平和主義は、果たしてリスナーにどう受け止められるだろうか。
 ともあれ、"ジレンマの角"、"今此処"、"夢境"といったまったく異なる表情の曲を1枚のアナログに収めたことには意味があるだろう。それが志人の懐の深さでもある。これは取って付けたフォローではなく、真実だ。

 そしてまた、志人の豊穣さの底を支えるものにはノスタルジアがある。それは単に幼年時代や少年時代や過去を懐かしみ感傷に浸るということではなく、人間の奥深くにある記憶を呼び覚まさせるようなノスタルジアのことだ。それはどこか稲垣足穂の「宇宙的郷愁」と相通じるし、あるいは、志人が思想的にも、芸術的にも大きくインスパイアされたであろう寺山修司の土俗的な、ある種屈折したノスタルジアを思い起こさせもする。
 "今此処"や"夢境"にももちろん滲み出ているが、2005年に発表したファースト・アルバム『Heaven's恋文』に収録された"LIFE"はとくに、ノスタルジアを結晶させた、豊かな色彩感覚に彩られた名曲である。KOR-ONEによるファンクとソウルの感性が映えるトラックも本当に素晴らしい。

嫌というほどに見た現実に疲れては/まぼろしの公園でいつもひなたぼっこLIFE

忘れかけたユーモアというものや/君にとってとっても重要な日々の匂いや色は、
街で見かけたチンドン屋/なびかせた黄色いハンカチーフ
やさしくなった自分をふと思い出すのさ/
どこもかしこも/立ち止まる足場も無く/暇も無く/芝も無い/
僕の居場所を探し出そう/この 都会に お帰り
LIFE

 しかし、こればっかりは歌詞の引用だけでは伝えられないものがあるので、聴いて感じてもらうしかない。他にも、日本の庶民的な家庭を描いているようだが、よく聴くと、現実と虚構が入り組んでいて、どこかズレが生じている"円都家族"の奇妙なノスタルジアも面白い。
 詳述は避けるが、『Heaven's恋文』のあるスキットでは、実際に寺山の映画のワンシーンが引用されている。それは、インテリ批判とも読める志人らしい軽妙なやり口で、その映画を観た人間から言わせると、「ああ、そこなのか!」と膝を打ちたくなるような風刺の効いた場面を拾っている。
 ただ、志人に寺山修司や稲垣足穂や宮沢賢治といった過去の芸術家や詩人の影を感じたとしても、志人がやっていることは、当然過去の意匠の焼き回しではないし、ましてや懐古趣味や権威主義、または衒学趣味とは程遠いものだ。
 「いまの時代がいちばん面白いと言わせたい」というのは、かつて志人が放ったことばだが、その情熱の炎がいまだ燃え盛っているということは、この新しいアナログを聴いても実感できる。さきほど、異なる表情の3曲を1枚のアナログに収めたのが懐の深さだと書いたのは、対立物を内包しながらもロマンを語ることはできる、ということに志人が挑戦しているように思える故である。

 さて、最後に、志人の刺激的な今後について書いておこう。まず、そのうち志人と渋さ知らズとの共演(競演)があるかもしれないという噂が耳に入ってきている。また、MSCのTABOO1のファースト・ソロ・アルバムにゲスト・ラッパーとして参加する予定だが、"禁断の惑星"と名付けられたSF風の曲のバックトラックを制作したのは、なんとDJ KENSEIである。さらに、〈アンチコン〉とも縁の深いカナダのラッパー、BLEUBIRDと録音した数曲は、おそらく日本のヒップホップ・シーンに小さくない衝撃を与えることになるだろう。そして願わくば、ごく少数しか流通しない(させない)「ジレンマの角 EP」の楽曲が、なんらかの形でより多くの人に届くようになればと思う。まあ、ということで、志人の今後の展開を楽しみに待とう。

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