ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Memotone - How Was Your Life? | メモトーン、ウィル・イエイツ (review)
  2. interview with Squid 期待が高まるなか、ついにリリースされるセカンド・アルバムを語る | スクイッド、インタヴュー (interviews)
  3. Kelela - Raven | ケレラ (review)
  4. Jam City - Jam City Presents EFM (review)
  5. Boris ──02年作『Heavy Rocks』がジャック・ホワイトのレーベルから再発、メルヴィンズとの合同USツアーも | ボリス (news)
  6. 韓国からポン復興の使者、イオゴンが日本上陸 (news)
  7. interview with Kassa Overall ジャズ×ラップの万華鏡 | カッサ・オーヴァーオール、インタヴュー (interviews)
  8. B. Cool-Aid - Leather BLVD | ピンク・シーフ (review)
  9. 250 ──韓国からポンチャックの救世主、イオゴン待望のアルバムが発売開始 (news)
  10. Kelela ──話題の新作を送り出したオルタナティヴR&Bシンガー、ケレラの来日公演が決定 (news)
  11. Columns グレッグ・テイト『フライボーイ2』日本版に寄せて、それからグレッグを師とした、東京在住のKinnara : Desi Laとの対話へ (columns)
  12. Columns そもそも私たちに「音楽」だけを純粋に聴くことはできない ──ダニエル・クオン、概評 | Daniel Kwon (columns)
  13. Columns 追悼ジョン・ハッセル ──その軌跡を振り返る (columns)
  14. Ben Vida, Yarn/Wire & Nina Dante - The Beat My Head Hit (review)
  15. Cornelius ──2023年、私たちはあらためてコーネリアスと出会い直す。6年ぶりのニュー・アルバムとともに (news)
  16. aus - Everis | アウス、ヤスヒコ・フクゾノ (review)
  17. Jean Grae - (Church of the Infinite You's Minister Jean Grae Presents) You F**king Got This Sh!t: Affirmations For The Modern Persons | ジーン・グレイ (review)
  18. Lucy Railton & YPY - @表参道 WALL&WALL (review)
  19. interview with Alfa Mist UKジャズの折衷主義者がたどり着いた新境地 | アルファ・ミスト、インタヴュー (interviews)
  20. JPEGMAFIA x Danny Brown - SCARING THE HOES | Jペグマフィアとダニー・ブラウン (review)

Home >  Regulars >  Random Access N.Y. > vol.1:2009年のニューヨーク

Random Access N.Y.

Random Access N.Y.

vol.1:2009年のニューヨーク

沢井陽子 Dec 14,2009 UP


Williamsburg water front park

Williamsburg fashion week @ glasslands

 また、例えばフリーのショーでもやりっ放しではなく、バンドの人たちにはドネーションとしてお金が入るようになっているし(多くの場合は)、同じようにニューヨークでは地下鉄ミュージシャンがたくさんいるのだけれど、良いと思ったらみんなきちんとドネーションをします。エンターテイメントには"お金"と言う物差しによる評価がある、この辺がとてもニューヨーク的というか、チップ社会のアメリカを良く表しているように思います。ショーに行っても自分が好きでなかったら途中で帰ったり、直接「何がだめだったか」など具体的なコメントをもらうし、反対に良かったら、すぐに「何々が良かった!」などの反応もある。そんな感じで、何回でもショーに足を運びます。いろんな意味でシビアだけれど、良いことをしていたらきちんと評価される、それゆえどんな時代でも何かが起こっている町なのでしょう。

 2009年もまた、ニューヨークのバンドが大活躍した年でした。思いつくだけでも、たくさんの名が挙がります。ダーティ・プロジェクターズ、アニマル・コレクティブ、グリズリー・ベアー、MGMTなどの活躍は目覚ましかったし、個人的にはサンティ・ゴールド、ホワン・マクリーン、ソニック・ユース、TV・オン・ザ・レィディオが印象に残っています。ニューヨーク以外のバンドでは、オブ・モントリオール、ライアーズ、リッキー・リーを良く聴いた。

 新しい所では、ALのアトラス・サウンド、LAのガールズ、ウエーブス、ダムダム・ガールズ、ヘルス、ギャングリアンズ、ニューヨークのトーク・ノーマル、ティース・マウンテン、リーズ・ア・パワーズ、リアル・エステイト、ベア・イン・ヘヴン、ドラゴンズ・オブ・ジンズ、ハード・ニップス......等々、キリがありません。


Fake Male Voice @ glasslands

 とにかく現在のシーンは、マイスペース、フェイスブック、ツイッターからiphoneなどのテクノロジーの登場も含め、確実に新しい局面を迎えて、新しい盛り上がりをみせていると言えます。なにしろ......いままでレコード屋に行って購入しないと聴けなかった音楽がいまではMP3で簡単に聴ける。試聴するのもクリックひとつ、それが好きだったら1曲単位で購入できる(1曲でそのバンドを評価するのもどうかと思うが)。家から一歩もでなくて良い。いままでレコード屋に行ってフライヤーをチェックしたり張り紙を見たりしてライヴ情報を得ていたのが、emailはもちろん、テキストメッセージやフェイスブックなど、どんな所からでも流れるように情報が手に入るようになりました。情報がありすぎて、どれを取るか、どれを捨てるか迷っているうちに、結局どれにも行けなかったりとか、自己管理が大切になってきます。だから逆に言えば、意思がなく、情報に流され、友だちに流され、本当に見たいモノや聴きたいモノをいとも簡単に逃してしまうこともあります。好む好まざるに関わらず、これがいま私が生きている世界です。そしてだからこそ、みんながカフェに何となく集まってくる、そんな状況に繋がっているのかもしれません。

 こちらでたったいま生まれた音楽が、遠く離れた日本でもすぐに聴くことができて、ライヴ映像も見ることができるのはすごいことです。ただし、やはりどうしても、実際その場所に行って生で体験することは特別な感動があります。それがひょっとしたら、ニューヨークと日本の音楽シーンの活気の温度差にも表れているのかもしれません。それでもできるだけ、その温度差を埋めていけるように、ここニューヨークからダイレクトに情報をお伝えしていきたいと思います。

Top 10 Albums of 2009 by Yuko Sawai
1. Sonic Youth/ The Eternal (Matador)
2. Dirty projectors/ Bitte Orca (Domino)
3. N.A.S.A./ The Sprit of Apollo (Anti-)
4. Juan Maclean/ The Future Will Come (DFA)
5. Lightning Bolt/Earthly Delights (Load)
6. Pylon/ Chomp More (DFA)
7. Health/ Get Color (Lovepump United)
8. Simian Mobile Disco/ Temporary Pleasure (Wichita)
9. Talk Normal/ Sugarland (Rare book room)
10. Fuck Buttons/ Tarot Sport (ATP)

12

Random Access N.Y. - Back Number

Profile

沢井陽子沢井陽子/Yoko Sawai
ニューヨーク在住20年の音楽ライター/ コーディネーター。レコード・レーベル〈Contact Records〉経営他、音楽イヴェント等を企画。ブルックリン・ベースのロック・バンド、Hard Nips (hardnipsbrooklyn.com) でも活躍。

COLUMNS