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Random Access N.Y.

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vol. 133 : NYインディ界のサウナ達人

沢井陽子 Feb 04,2022 UP

 日本ではここ数年サウナ・ブームが続いているが、パンデミックの最中のNYインディ・シーンにも、サウナにハマってサウナのための音楽『Music for Saunas Vol.1』を発表した人物がいる。ブルックリンはイーストウィリアムバーグで男4人のルームメイトと住むカイル・クリュー(Kyle Crew)その人である。
 彼は、Consumablesというインディ・ロック・バンドのギター兼ヴォーカリスト、マンハッタンのマーキュリー・ラウンジやリッジウッドのTVeyeなどでプレイするローカル・バンドで、オーディエンスは友だちがほとんどだが、友だちが多いのでフロアはいつも満杯。夏には彼のルーフトップに機材を運んでショーも披露する。マンハッタンが見渡せる絶景のルーフトップには、いつも人が押し寄せ、夜な夜なパーティになる。
 現在カイルはパートナーと一緒にオイスター・ビジネスをやっている。メイン州からのオイスターをNYのレストランに卸したり、バーでポップアップをしたり、配達したりと忙しい。私はポップアップでよく一緒になる。
 ほかにもカイルは手品をしたり、バスケットボールのコーチをしたりしているが、今回はサウナに重点をおいて話を訊いた。

■サウナにハマったきっかけは?

カイル:10年以上の前の話だけど、マリファナで捕まって刑務所で数ヶ月過ごしたことがあるんだけど、その後も5年間、定期的にドラッグのテストをされていたんだ。そんなとき、サウナで汗をかくと、どんな有毒な薬もオシッコとなって流れるという話を本で読んだ。それから僕のサウナ愛がはじまった。2009年だったな。

■あなたがサウナに求めるモノは?

カイル:明らかな期待は、めちゃくちゃ暑くなって汗だくになることだね。それを何度もやってるから、いまはサウナの後に来る冷たいシャワーの静穏を期待してる。何度もサウナを利用することで健康にも利点があるみたいだし。基本的に、身体は熱い温度に晒されると熱でショックを受けたタンパク質を放出する。これは身体が「死んじゃダメ」と言ってるんだ。このストレス反応が、運動と同様に体を弾力的にさせるんだよ。

■自宅にサウナを作った理由は?

カイル:パンデミックで強制的に隔離され、自分の「巣」を最高に繁栄させたいと思った。家で植物を育てたり、家をリノベーションしたり……、で、サウナは最高の付け足しだった。ニューヨーク市から車で数時間のところに住む年配の女性が出した広告を見つけたんだ。彼女は未使用のそれを市場価格より下($600≠7万円弱)で売ってくれた。良いディールだったよ。

■1日にどのくらい入ってるの?

カイル:1日に1回以上入るね。1日に30〜45分は欠かさない。

■日本はここ数年空前のサウナブームで、サウナに行って「ととのう」ことが目的になっているのですが、「ととのう」という感覚は、サウナに6分以上入ったあとに水風呂に1分ほど入って出た後にやってくる、ドラッギーな感覚のことです。わかりますか?

カイル:わかるなー、その気分! 僕もだいたいサウナの後は冷たいシャワーを浴びて、身体にショックを与える。スピードボールみたいにね。これは二日酔いにもいいよ。

■日本のサウナ室の多くがテレビが設置されていて、ぜんぜん瞑想的ではないんです。あなたがサウナの音楽を作ろうと思ったきっかけはなんだったのでしょうか?

カイル: 退屈が強いモチベーションで、それがたぶん、このアンビエント・アルバムを作ろうと思った主な理由かな。それと、サウナに入っている30分のあいだに聞けるバックグラウンド音楽として、究極にカタルシスなモノを作りたかった。エッセンシャル・オイルと一緒に合わせて、自分の感覚を剥離する別の見地だね。「サウナのための音楽」は、ヨガ、メディテーション、ウォーキングなど、いろんな文脈でプレイできる。

■インディ・ロックとサウナに共通することってなんだと思いますか?

カイル:たくさんあるだろうけど、どちらもニッチで、熱いことだろうね。

■あなたにとって理想的な人生とはどんな生き方ですか?

カイル:遊びがあって、コミュニティがあって、親切さがある生活かな。自分の趣味を商品化することに躍起になってしまったたくさんの友だちを見てきて思うのは、野心は大切だと思うけど、ずっとそればかりでは疲れるってことかな。

■パンデミックがなかなか終わりそうにないですが、現在の状態にいつまで耐えられますか?

カイル:多くの人と同じで、ぼくはパンデミックには疲れているよ。すでにコロナに2回も感染しているんだ。ライヴ・ミュージックがまたキャンセルになるのも、もう勘弁してほしい。でも、じつは思ったほど悪くもないとも言える。刑務所にいたから隔離、退屈、恐怖などについて人に教えることができるし、自分の適応力には誇りを持ってるよ。

■あなたが昨年もっとも愛した音楽は?

カイル:友だちのバンドbodegaが2022年に出るアルバムを真っ先に聞かせてくれたんだけど、もう何回も聞いてる。あとは古いカントリー・ミュージックをたくさん聞いてる。ぼくは大好きなんだよね。Buck Owens, Lee Hazlewood, Townes Van Zandtとか。

*なお、カイルは現在、『Music for Saunas』の「Vol.2」を制作中。

[編集部註:サウナに関する上記の発言はあくまでカイル・クリュー氏個人の見解であり、科学的根拠に基づいているかどうかは不明です。]

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Profile

沢井陽子沢井陽子/Yoko Sawai
ニューヨーク在住20年の音楽ライター/ コーディネーター。レコード・レーベル〈Contact Records〉経営他、音楽イヴェント等を企画。ブルックリン・ベースのロック・バンド、Hard Nips (hardnipsbrooklyn.com) でも活躍。