「OTO」と一致するもの

Karinga(REXITL) - ele-king

8月の現状。8月の現場SOUND。8/14

interview with YKIKI BEAT (Nobuki Akiyama) - ele-king


YKIKI BEAT
When the World is Wide

Pヴァイン

Indie Rock

Tower HMV iTunes

 昨年、シングル”フォーエヴァー”のMVが公開されるや、東京インディ・シーン発のブライテストホープとして注目される存在となっていた、YKIKI BEAT。待望のデビュー・アルバム『When the World is Wide』が遂にリリースされた。
 インターネットを前提に育った世代以降の洋楽に対するフラットな感覚と、市井のインディ・バンドに収まらないスケールの大きなソングライティング、正々堂々と真ん中をいける風貌と若さ、何だかいろいろ揃いすぎていて、ファンも然ることながら、業界関係者の先走った期待感もくるくる旋回中……。アルバムは、その前のめりのギラギラした期待感そのままで聴くと、これは、ちょっと姿勢を正してもう一回、となる。何なのでしょうか、このハイプの邪推を一蹴する頼もしさとクソ真面目さ。ギミックなし、非の打ち所なしの傑作です。
 バンドのメインソングライターでヴォーカルの秋山に、バンドの成り立ちから、アルバムのこと、シーンの中での立ち位置まで語ってもらった。

■YKIKI BEAT / ワイキキビート
2012年に結成され、東京を拠点として活動する5人組バンド。EP『Tired of Dreams』が2013年 12 月に Bandcamp にてリリースされ、2014年 2 月にはSummer Camp の初来日ライヴの前座としてミツメと共に出演、過去には Last Dinosaurs、Metronomy の Olugbenga 等と共演している。2014年 4 月にはフランス・パリの有名セレクトショップ Collette と Bonjour Records によるコンピレーション・アルバムにも参加し、ファッション方面からも支持を受ける。2014 年 9 月、7inch でリリースされた“Forever”のリリック・ビデオが数々のメディアに取り上げられ、同年12 月にはThe Drums のオープニング・アクトに抜擢。このたびデビュー・アルバム『When the World is Wide』がリリースされた。
メンバーは、Nobuki Akiyama(ボーカル、ギター)、Kohei Kamoto(ギター)、Koki
Nozue(シンセサイザー)、Yotaro Kachi(ベース)、Mizuki Sekiguchi(ドラム)

SEでジャスティスを流しながら、ヒッピーみたいな変な格好して出てきたバンドがいたんですよ。途端にみんなが「何だ!?」ってなって。

バンドの結成はいつ頃なんだっけ。

秋山:結成が2011年か2012年だったと思います。

そもそもはどういうつながりなの。

秋山:メンバーはみんな大学がいっしょなんですけど、もともと嘉本(康平)とは高校生の頃に知り合っていて。嘉本が隣の高校にいて、僕の学校との合同ライヴみたいなところで知り合ったんです。

嘉本くんが出演していたわけだ。

秋山:SEでジャスティスを流しながら、ヒッピーみたいな変な格好して出てきたバンドがいたんですよ。途端にみんなが「何だ!?」ってなって。俺はそのときジャスティスとかそんなに聴いていなかったんですけど、「これは好きなタイプのやつだな」と思って前に行ってみたら、嘉本がギター・ヴォーカルの3ピースで。なぜかジョン・メイヤーとエリック・クラプトンのカヴァーを交えながら、オリジナル曲をやっていて(笑)。

カオスだね(笑)。

秋山:オリジナルがすごくかっこよくて。あいつはオーストラリアに1年留学して、帰ってすぐのときだったんで、英語も完全にフレッシュで、音楽性もデス・フロム・アバヴ1979みたいなことをやっていて。完全に他のやつとちがうと思いました。それで楽屋に遊びにいって「よかったよ!」って言ったんですけど、あいつには半分くらい無視されて(笑)。で、彼のバンドの他のメンバーと仲良くなったんですよ。大学に入って嘉本のほうから「僕も同じ大学だよ」って連絡が来て。

結成の前に秋山くんがやっていた音楽はどういう感じだったの。

秋山:そのときから英語で歌って「インディ・ロックです」みたいな感じのをやっていましたね。

じゃあ、YKIKI BEATにいたるまでブレていないんだね。

秋山:そうですね。変わってないと思います。大学1年の終わりに、嘉本が聴かせてくれた30秒くらいのループ音源がおもしろかったので、それを編集して“ロンドン・エコーズ”という曲を作ったんですよ。その曲をいろんなひとに聴いてもらえて、「どうせならバンドでやろうよ」と。

そこからすぐにバンド編成になったの。

秋山:どうしようって相談していたときに、高校時代のバンド繋がりでおもしろいやつがいるって聞いて、それが野末(光希)で、しかも同じ大学だったんです。「音楽性も近いしいっしょにやろうよ」って話しつつも、まだメンバーが足りなかったから、それぞれに入っていたサークルからドラムの(關口)瑞紀とベースの加地(洋太郎)を見つけてきて。バンド編成になったのが2012年の頭くらいですね。

初期からの曲をまとめたのがバンドキャンプで出した『タイアード・オブ・ドリームズ』だったので、その時点で、アルバムは次の段階に行きたいと思っていました。

それが2012年か。僕はYKIKI BEATの存在を、2012年のうちには知っていたと思うんだよ。東京のインディ・シーンの中で、わりと最初から好意的に迎え入れられていた印象なんだけど。

秋山:最初のライヴは2012年の夏で、いまはなくなっちゃった屋根裏でやったんです。そのときに“フォーエヴァー”のPVを撮ってくれたセッキー(関山雄太)さんが遊びに来てくれていて。それから「こんなブッキングにお金払ってやるライヴに出なくていいよ」って、東京のインディ・シーンの他のバンドが出ているところに呼んでくれるようになったんです。

そこから“フォーエヴァー”までは、しっかり時間をかけた印象だったけれど、ちょうど1年くらい前なのかな。

秋山:“フォーエヴァー”は去年の6月にデジタルで出して、9月にレコードを出しましたね。

YKIKI BEATというバンドの名前をいろんな人が知るきっかけになった曲だよね。手応えみたいなものはあったの。

秋山:ありました。でもどういうふうに感じてたかな……。PVがすごくデカかったかもしれないですね。それまでワイキキは「宅録です」みたいな音源しかなかった上に、映像もなかったんですが、スタジオで録音した音源とPVができたことによってフックアップしてくれるひとも増えたんです。

アルバムは8曲入りだけど、楽曲としては初期からの曲とかも入っているの?

秋山:初期からの曲をまとめたのがバンドキャンプで出した『タイアード・オブ・ドリームズ』だったので、その時点で、アルバムは次の段階に行きたいと思っていました。ただ曲作りがぜんぜん進んでいなくて……。じつは4月のプリプロの時点では『タイアード・オブ・ドリームス』に入っていた曲もけっこう混じっていました。新曲をちょっとと、これまでの楽曲のスタジオ録音ヴァージョンが合わさったアルバムになるイメージだったんですけど……けっきょく、やっぱりそれじゃ嫌だなとなって(笑)。プリプロが終わってから本番のレコーディングがはじまるまで、なんならレコーディング中にも新曲をどんどんあげて、最終的に昔からの曲は“フォーエヴァー”だけという感じになりましたね。

『タイアード・オブ・ドリームズ』以前とは、バンドのモードが変わったということなのかな。

秋山:そうです。完全に違います。

色味があるものはいまでも好きなんですけど、これまでは表面的な感じがあったんです。でも今回は、曲を作っていくなかで「これは自分の曲だ」と思える部分までやるというか……。

僕の受けた印象からまとめてしまうと、以前はもうちょっとキラキラした感じとか、疾走感が前に出ていたし、色味もカラフルだった感じがするんだけど、今回のアルバムはわりとモノトーンに近いというか。

秋山:ちょっと意識したかもしれないですね。色味があるものはいまでも好きなんですけど、これまでは表面的な感じがあったんです。でも今回は、曲を作っていくなかで「これは自分の曲だ」と思える部分までやるというか……。下地となる部分をもっと固めて、後から色味を付け足していく流れにしたほうが、自分たちはやりやすくなるのかなと。『タイアード・オブ・ドリームズ』以前は、いろいろ試していたところがあって、メロディがどうとか、「こういう感じで弾くとこうなる」とか。いまはもう少し自分たちのやりたいことに集中していて。しっかり土台を作りたいなと思って。

土台という意味では、ソングライティングは気になった。以前とはけっこう印象が違うよ。“フォーエヴァー”なんかは、USカレッジ・バンドみたいなメインストリームのポップ・ミュージックの高揚感があるけれど、アルバム全体を聴くと、むしろUKのトラディショナルなインディ・ロックを思わせる曲調が多い。ストレートに、すごくいい曲を書けるバンドなんだということは、今回のアルバムで伝わる。

秋山:それはうれしいですね。

今回は自分たちのルーツを考えてみて、その上でいまっぽくできたらいいなと話をしていて。それこそヴェルヴェット・アンダーグラウンドとか、ジーザス・アンド・メリーチェインとか、ジョイ・ディヴィジョン。

以前とは、自分たちのバックボーンとして見せている部分が違うのかなっていう気もしたけれど。

秋山:意識的にやる部分もあれば、無意識でやっているところもあるので、全部きちんと説明できるかはわからないんですけど。今回は自分たちのルーツを考えてみて、その上でいまっぽくできたらいいなと話をしていて。それこそヴェルヴェット・アンダーグラウンドとか、ジーザス・アンド・メリーチェインとか、ジョイ・ディヴィジョン。

たしかにメリーチェインは入っていたね。

秋山:そういう意味ではUKっぽさがわりと多い。当時はヴェルヴェット・アンダーグラウンドもUKっぽいと言われていたようなので。

ソングライティングは、嘉本くんも参加しているのかな。

秋山:“ダンシズ”って曲のイントロはあいつが持ってきて、それを最初につくった“ロンドン・エコーズ”みたいにループさせた上で、ギターと歌をつけてって感じになったんですけど。あとの曲は基本的に俺が作ってきたやつですね。
ただ、アレンジの段階であいつが口出してきたのがすごく効いていて。俺がひとりでやっていてわからなくなっていたところとかも、あいつには「これがいい」とかって見えていて。でもあんまり「どうどう?」って訊くと、あいつは構えちゃって、みんなに任せるって感じになるから、自然に訊き出すみたいな作業をしたんですけど。

秋山くんは全部を自分で決めたいって感じでもないの。

秋山:基本的には自分で決めたいんですけど、あいつのことは信頼しています。最終的に嘉本がいいと判断したことはいいことがほとんどなので。

Ykiki Beat - The Running (Official Video)

『When the World is Wide』の冒頭を飾る楽曲“The Running”のミュージック・ビデオ。監督・編集はYkiki Beatのアーティスト写真他、American Apparelなどの広告写真も手掛けるフォトグラファーMitch Nakanoによるもの。

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英語の受験用教材で発音記号を見つけて、「このθみたいなやつは舌がここなんだ」って。勉強のためじゃなくて、歌のために勉強してました。


YKIKI BEAT
When the World is Wide

Pヴァイン

Indie Rock

Tower HMV iTunes

あと、ヴォーカルのスタイルは最初からいまみたいな歌いかたをしているの。

秋山:いまみたいというと、どういう感じに聴こえるんですか?

すごくいいなぁと思います。声質の魅力もあると思うんだけど、日本人がやっている英語詞バンドに独特の「洋楽やっていますよ」的な違和感がぜんぜんない。

秋山:ありがとうございます。

研究したの?

秋山:したと思います。高校のときからバンドをやろうとしていて、単純に普段から英語のバンドをたくさん聴いていたから、英語で歌うバンドをやろうって流れでやっていただけなんです。でもバンドをやるにあたって、いかにも日本のバンドで「英語でやってます」みたいなのはすごく嫌だったので。

じゃあ、たぶん何が嫌なのかを研究したってことだよね(笑)。

秋山:実際それはあると思います。歌はすごい研究しましたね。英語の発音記号表を見つけて、「あ、こんなのあるんだ」と思って。発音の舌の位置が書いてあったりするやつなんですけど、「このθみたいなやつは舌がここなんだ」ってみながら歌のためにずっと勉強していましたね。

でも、対バンするのは日本語詞のバンドも多かったりするわけじゃない。そこで横並びでいっしょにやることって、そんなに違和感はないの。

秋山:難しい質問ですね……違和感はあると思います(笑)。

はははは(笑)。なんか違うかなって思ったりするわけだ。

秋山:東京のインディ・シーン以外の場所でやると、ジャンルは関係ないじゃないですか? 呼ぶ基準っていうのが、どれくらい名前が知られているかってことなので。そのぶん、いろんな場所やお客さんの前でライヴをする機会が増えてきていると思うんですけど。

もうひとつ大きなシーンの中では、浮いていると。

秋山:中学生のときとかは絶対に自分たちでやりたいイメージがあって、日本のゼロ年代のいろんな洋楽バンドに影響を受けてますみたいなバンドをiTunesで聴きながら、なんか違うなって思ってました。自分は絶対によりよい形でアウトプットできると感じていて、そういう野心を持っていたんです。でも考え過ぎてしまうと、ヘンな形で影響を受けてしまうと思うので、自分の納得いかないものに注目するよりは自分たちのやりたいことに集中したいなと。いまは対バンがどうであれ、どのシーンにいると言われようが、自分たちのやりたいことにフォーカスできればと思っていますけど。

じゃあ、逆にいま日本で共感できるバンドはいるの。

秋山:そういう意味ではすっごく難しいですけどね。好きな音楽の話をしたりする友だちとかではバットマン・ウィンクスとか、グルーミーとか。コンドミニマムっていう自分たちで映像なんかを発信している集団がいて、そこのひとたちとかとはすごく話が合うんですけど。それでもピッタリ合うひとがいるかと言ったら、たぶんそこまでいないかなと思います。

俺たちのことを洋楽っぽいと認識せずに、日本でやっているおもしろいバンドとして聴いてくれている人もたくさんいて。

居心地が悪いわけでもないんだろうけど、東京で活動していることにプラスの部分っていうのはあるの。

秋山:それもときどき感じるんですけど、チャンスは多いというか。ザ・ドラムスの前座をやったときに思ったんですが、これがもしアメリカだったら、いいバンドがたくさんいて、ドラムスのオープニング・アクトなんかに選ばれるバンドはすごく成功したり注目されているバンドだったりしますよね。日本だったら母数が少ないので、やっぱりそこは得かもしれません。それでいて世界的に見ても日本の音楽マーケットの大きさはアメリカに次いで第2位だったりしますし。まあ、それはAKBが助けているだけかもしれないんですけど、それでも日本は特異な立ち位置にいると思います。
でも俺たちのことを洋楽っぽいと認識せずに、日本でやっているおもしろいバンドとして聴いてくれている人もたくさんいて。“フォーエヴァー”のYouTube再生回数が16万いく現象っていうのは、アメリカでやっていたらまた違った形になったかもしれないと思います。そういう意味でも、アジアの中でも大きな都市である東京で活動するというのも、おもしろい状況だとは思うんですけど。

今回のアルバムが出たことで、また活動の拡がりかたは大きく変わっていきそうだよね。

秋山:いったんは様子を見てみようというところではありますけど、個人のレベルで言えば、自分で納得できる曲を書くか書かないかというところだけなので。それこそさっき言ったみたいに、野心があって「シーンを変えてやる」って時期もあったし。そういう野心も悪いことではないと思うんですけど、いざ注目される状況になってみて、べつにこれがやりたかったわけじゃないなと思って。いろんなひとが聴いてくれるのはおもしろいけど……なんだろうな。自分の好きな音楽をやって、それを発表して、その先のひとりひとりが音楽を楽しんでくれたらいいなっていう。知名度どうこうと言うよりは、自分のやりたい音楽ができるかだけです。

フェニックスとか、テーム・インパラのように、英米とは別の地域出身でありながら世界で活躍するバンドのようになれたらと思っています。

ひとまず自分たちの音楽性を突き詰めていきたいと。

秋山:そうですね。いまに限らず、これからもずっとそうでありたいと思うんですけれど。インディに落ち着きたいということではなくて、いい曲を書いて出して評価されることがいちばんいいと思うので。理想としてはフェニックスとか、テーム・インパラのように、英米とは別の地域出身でありながら世界で活躍するバンドのようになれたらと思っています。

スタンスはずっと一貫しているバンドだよね。

秋山:メジャーっぽいことを特別やっているわけでもないし、イギリス出身でもアメリカ出身でもないのに、フェスのヘッドライナーをやるみたいな。あのバランスはすごくいいなと思っていて。自分たちが本当に納得できる音楽にフォーカスしていきながら、バンドの下地を作っていけたらいいなと思います。


Time out free copy
駅で配布するスタッフ

 長らくコラムを書いているが、2003年にはじまったポケット・サイズのバイ・ウィークリーの『Lマガジン』(thelmagazine.com)は、インディ好きの、そして著者の良きガイド役である。まだまだ紙が中心だった2003年、ショーのインフォを得るために、毎週水曜日になると『ヴィレッジ・ヴォイス』(villagevoice.com)をピックアップするのと一緒に、『Lマガジン』をピックアップする選択が増え、いつの間にか『Lマガジン』しかピックアップしなくなった。『Lマガジン』のLは、Lトレイン(地下鉄の線、ヒップスター率高し)のLらしく、そのあたりの層をターゲットにしているからか、音楽だけでなく、アート、映画、シアター、フード、レジャーなど、文化全般に焦点を置き、タイム・アウトより、小規模でブルックリンの話題を中心にした情報の源なのである。

 『Lマガジン』はその後、ノースサイド・フェスティヴァル、『ブルックリン・マガジン』、サマー・スクリーン(野外映画)、バム・ビル(シアター・ガイド)、テイスト・トークス(フード・イベント)など、イベントや媒体を広げ、現在会社はノースサイド・メディア・グループとして統括されている。
https://www.northsidemediagroup.com

 ノースサイド・フェスティヴァルもサマー・スクリーンも毎年のようにレポートしているが、その母体である『Lマガジン』については、あまり触れていなかった。
ノースサイド・フェスティヴァル2012
サマー・スクリーン2013 -2-

 彼らはいつも新しい試みに挑戦し、媒体をより良い方向に持って行こうとしている。今日2015年7月15日、『Lマガジン』に新たな変化があった。ポケット・サイズのプリント・マガジンがが廃止されたのである。
https://www.thelmagazine.com/2015/07/2003-2015-12-years-life-one-big-borough-one-tiny-magazine/

 『Lマガジン』をオンラインでチェックするようになって久しいので、大きなダメージはないが、町からオレンジのマガジン・スタンド(ちなみに『ヴィレッジ・ヴォイス』は赤)がなくなるのは寂しいものである。それを記念(?)に、2003年から2015年に渡り『Lマガジン』が見てきたブルックリンの音楽(&その他)シーンを振り返っている。
 「音楽がフリーなのに、誰が音楽雑誌を読むのか?」と、最近『タイムアウト』や『NME』もフリーに。いまや『ヴィレッジ・ヴォイス』をチェックしなくてもバンドのショーはBandsintownやsongkickをチェックすれば良いし、音楽はスポティファイやアップル・ミュージックでいくらでも聞ける。


Village voice のマガジンスタンド

 こんな2015年なので、『Lマガジン』がプリントを廃止するのも納得だが、それにともない、姉妹雑誌の『ブルックリン・マガジン』と統合するらしい。『ブルックリン・マガジン』は季刊から月刊誌へ。内容が被ることもあったのでこの選択は正しいと思うし、彼らのことだから紙の力を使って既に内容の濃い『ブルックリン・マガジン』をパワーアップさせるだろう。

 そして、今日は今年第2回目のサマー・スクリーン。毎年映画はもちろん、映画の前の音楽が楽しみなのである。何故なら、ブッキングはトッドP

 今年も例年のように彼がブックを担当し、ラインナップ(Z's, リーガル・ディガル、ブルース・コントロール、エクセプター、ジャー・ディヴィジョン )まで発表されていたのに、直前になって突然のキャンセル。と言うのは、サマー・スクリーンがトッドPの確認を取らず、ヴィタミン・ウォーターと勝手にブランディング契約をしたからである。その分入る額は上がるが、彼にとってお金は問題でないようだ。
 「ビジネスを知れ」、「一番迷惑しているのはバンド」、「ヴィタミン・ウォーターは良くて、クルーレス(上映される映画)は良いのか」、など、様々な辛辣な意見が飛び交ったが、ほとんどは初心を忘れずDIY精神を貫く彼を賞賛するものだった。
 著者は、トッドPの判断に賛成だが、彼があと10歳若かったらどうだろう。彼らの世代(40代前半)は、音楽に対する姿勢が純粋なのである。アナログ・レコードを必死に探した世代に、ブランディングや企業とのタイアップは単純にできる判断ではない。が、現在のメイン・ターゲットは彼らの世代より下で、直前にバンドは、その世代のウォーリーズ、ビッグ・アップス、プリンス・ラマなどに代えられたが、元々プリンス・ラマなどはトッドPがブックしていただけあり、オーディエンス側としては微妙な気分である。さまざまな思いがよぎるが、今日はウエット・ホット・アメリカン・サマー、音楽はビッグ・アップス!


サマー・スクリーンの様子

今年の映画とバンドのラインナップ:
7/8 「Clueless」 1995
Z's→ウォーリーズ

7/15 「Wet Hot American Summer 」2001
リーガル・ディーガル→ビッグ・アップス
7/22 「Dirty Dancing」1987
ブルース・コントロール→プリンス・ラマ
7/29 「Dazed and Confused」 1993
エクセプター→TBA

8/5 「Jurassic Park」1993
ジャー・ディヴィジョン→TBA
8/12 Audience Pick
基本、野外映画は野次が飛ばせるピクニック。わかりやすい映画が良いのはわかるが、何ともチージーで、最近ウィリアムス・バーグに引っ越してきたカレッジ・キッズを対象にしていると思うのは、著者だけか。どちらにしても、サマー・スクリーンは、ブルックリンのヒップ・スターが集まる場所なので、トッドPのブックする硬派バンドには、少し勿体無い気もする。因みに今日もサマースクリーンは満員御礼!


サマー・スクリーンの様子

vol.74:アメリカの法律が変わった日 - ele-king

Pride week 2015 NYC-celebrate Brooklyn -Paris is burning
プライド・ウィーク2015ーセレブレイト・ブルックリンーパリは燃えている

 毎年この時期になると、訪れるプロスペクト・パーク。NYは夏になるとたくさんの野外コンサートが行われるが、ブルックリンを代表するプロスペクト・パークは、音も良いし、行くまでの道のりが全面緑(公園)で、それだけでも気分が高揚する。バンドのラインナップが豪華で、過去には、ベル・アンド・セバスチャン、ワイルド・フラッグ、ミッション・オブ・バーマ、テッド・レオ、チボ・マットセイント・ヴィンセントなどのバンドを見た。

 バンドを見たければ一番前まで行けるし、ピクニック気分でレジャーシートをひいて寛げるし、家族やカップル、グループで楽しめる場なのである。

photos: Via celebrate Brooklyn Facebook

 今年初めてのプロスペクト・パークのイベント(著者にとって)は、映画『Paris is burning (パリは燃えている)』。70~80年代のニューヨークにおけるゲイ・ピープルのダンス・カルチャーを描いたドキュメンタリーで、ドラッグ・クイーンたちが様々なダンス・スタイルを生み出し、黄金時代を築いていた当時のニューヨークのクラブ・シーンが描かれている。公開されたのは1990年で、今年2015年は25周年にあたる。

 偶然にも、この日6/27は、全米で同性婚が合法化した歴史的な日で、監督や関係者は、「今日、アメリカの何処でも結婚できるようになった。我々は、大きな一歩を踏み出した。これからも性、人種差別など、様々な社会問題をなくしていけるように、そして今日25周年を迎えたこの映画を、素晴らしい公園で上映する機会に恵まれた事に感謝する」と挨拶すると、会場からは割れんばかりの拍手。たくさんの人びと、老若男女が笑顔でひとつになった瞬間だった。

 この週は、プライド・ウィークで、ただでさえ人びとは、1年でもっとも華やかな週を過ごしているのに、同性婚の合法化で、お祭りムードにはさらに磨きがかかった。

 上映前は、映画のシーンと同じように、映画のキャスト・メンバーたちが美しい衣装を着て、ダイナミックなダンスを披露した。圧倒的なファンもたくさんいて、名前を叫んだり、歓声が絶えない。最後にはステージからフロアに降りて、一般客も交えてダンス・パーティ状態になった。こうして見ると、ドラッグ・クイーン文化は25年前と変わっていない。みんなの目は輝いていて、個性的な衣装ダンスで、自分を最大に表現している。

 映画上映がはじまると、知ってるキャスト・メンバーたちが映るたびに歓声が上がり、ダンスが披露されるたびにまた歓声。なかにはセリフを覚えていて、一緒にセリフを叫ぶ人までいた。映画だが、ライヴを見ているような生々しいショーで、人びとがシーン毎に反応する。25年経った今も同感覚で鑑賞できるのは、ゲイ・カルチャーにやっと時代が追いついた証かもしれない。アメリカの重要な法律が変わった日に、歴史的なイベントに参加できたことを誇りに思う。

photos: Via celebrate Brooklyn Facebook

Matmos - ele-king

 木津毅と言えばマトモス、マトモスと言えば木津毅。ユーモアの込められたミュジーク・コンクレートの発想で1枚のIDMポップを作り上げたのは、ハーバートよりもマトモスが先だよ。先にやればいいってものじゃないけれど、実際、マトモスの片割れはハーバートのレーベルから作品出しているし、その音の採取において政治性をヒモづけてもいる。ゲイ・カルチャーの表現においても、一芸に秀でている。ビョークも一時期マトモスとはべったりだった。
 そんなマトモスが久しぶりに来日する! 四国の高知にも行くそうだし、関東では秩父でやるというから、これは観光もできるし、楽しそうだ。梅雨が明けていることを祈る。

 1年間の沈黙の後、満を持して行われる今回の「東京BOREDOM」は、ビョークのリミックスを手がけた事でも知られる実験的電子音楽デュオ”Matmos"と、ゲームパッド、ジョイスティックによる自作コントローラーでノイズとストロボライトを操る、アメリカ、ボルチモアのノイジシャン“Jeff Carey”を招いてのスペシャル版。
 舞台となるのは、埼玉県は秩父市のライヴハウスLadderLadder。その周辺の古着屋なども使っての観光地ヴァージョン。
 他の出演も、PHEW、切腹ピストルズ、YOLZ IN THE SKY、SuiseiNoboAz、ドラびでお等と超個性的な上に、当日は、秩父最大の夏祭り「秩父川瀬祭り」も行われているとのことなので、ライヴハウスの中と外両方でお祭り気分を堪能出来そう。
 また7/18には、「東京BOREDOM #11東京」と題して、今回のMATMOSのツアーの中打ちと、秩父のボアダムへ繋ぐ意味でのオールナイト・パーティが行われる。MATMOS来日ツアーのチケット(及び半券)を持参された方はチャージフリーで入場出来るとのこと。

7/20(月祝) 東京BOREDOM#11<秩父>
@秩父LadderLadder&STUDIO JOY&anbai works(古着屋)
11:30/12:30 ¥2500/¥3000(+1drink)

MATMOS (U.S.A)
JEFF CAREY (U.S.A) ×ドラびでお
PHEW
切腹ピストルズ
in the sun
GROUNDCOVER.
SuiseiNoboAz
ビイドロ
YOLZ IN THE SKY
HAVE A NICE DAY!
Bossston Cruizing Mania
GOMESS
mmm
マヒトゥー・ザ・ピーポー(GEZAN)
とうめいロボ
原嶋卓哉
DOTAMA【術ノ穴】
エンヤサン【術ノ穴】
ヒロネちゃん【術ノ穴】
ifax!【BLACKSHEEP】

<DJ>
DJ MEMAI
DJ:COGEE【BLACKSHEEP】
DJ:SUNGA【BLACKSHEEP】
kussy(fragment)【術ノ穴】

<VJ>
eetee
GENOME
…and more!!!!!

<DECO>
COLORgung【BLACKSHEEP】
<LASER>
NxOxT【BLACKSHEEP】

7/18(土All night) 東京BOREDOM#11<東京>
@下北沢THREE
23:30/24:00
charge:¥2000(+1drink)/女性¥1500(+1drink)
MATMOSツアーチケット持参:2drink\1000のみ

transkam
worst taste&specialmagic
HALBACH
otori
HIKO×bonstar
ニーハオ!
galcid+齋藤久師
GuruConnect (skillkills)
※スペシャルゲスト有り!

<FOOD>
SPICE ADDICTS
eetee

<VJ>
IROHA
GENOME

Matmos & Jeff Carey Japan Tour 2015 スケジュール

7.17 落合 Soup
7.18 西麻布 Super Deluxe
7.19 東高円寺 二万電圧
7.20 秩父 ladderladder
7.23 心斎橋 CONPASS
7.24 京都 METRO
7.25 高知 DAHLIA

 

東京BOREDOM
オフィシャルサイト
https://tokyoboredom.tumblr.com
Facebookページ
https://www.facebook.com/tokyoboredom

Matmos & Jeff Carey Japan Tour 2015
オフィシャルサイト
https://matmos2015.multipletap.com
Facebookページ
https://www.facebook.com/matmos2015


Booty Tune presents DJ PAYPAL Japan Tour 2k15 - ele-king

 シカゴのジュークは、瞬く間に世界的な音楽になった。UK、日本、そしてUSからベルリンへ。とくに DJラシャド以降は、「DJラシャド以降」という言い方が通用するほど、シーンは世界規模で拡張しているのだ。その中心には、シカゴのTEKLIFE がある。
 いや、しかし、DJ Paypalというネーミングが最高ですね。Paypalこそまさしく悪魔的なシステムです。深夜酔っぱらって、いつの間にかレコードやCDを買っていたなんてことはザラです。現代消費社会の象徴です。それをDJネームにするとは……なんて不遜な人でしょうか。
 しかも、この人のDJは、そうとうにポップなようです。
 これは期待するかありません。7月19日(東京)〜20日(大阪)です。みんなでこの謎のDJを冷やかしつつ、彼のハッピー・ジュークを楽しみましょう。

 世界を沸かす覆面ジューク DJ、ついに来日!
 ついに謎のジューク DJ が来日を果たす!  ジューク好きの間で密かに話題になりはじめた 2012年の活動開始から、この3年でまたたく間にシーンの中心に躍り出た、正体不明の覆面トラックメーカーDJ Paypal。その人を食ったDJ ネームゆえ、出演時はいつもTシャツを頭から被り、その素顔を見せることは決してない。最近、ネット決済会社の本家 Paypal から名称の未許可使用のクレームを受け、フェイスブックでも強制的に名前を変えさせられるほど、知名度も アップ中。
 大ネタを惜しげもなく使いまくる、老若男女問わず踊らせるアッパーかつポップなディスコ・スタイルは、北欧の Slick Shoota とともに現行パーティ・ジュー クのひとつの到達点と言える。自身のレーベル〈MallMusic〉からリリースされたファースト・シングル「Why」に収録された“Over”がクラブ・ヒット。さらに、新世代ベースを牽引するレーベル〈LuckyMe〉からもシングルをリリー スし、Machinedrum、Ikonikaらの著名アーティストたちのサポートを受けながら、UKベースやドラムンベースなど、ジューク・シーンに留まらない幅広い活躍を見せ続けている。2014 年からは現在のジューク・シーンの中心とも言える、シカゴ最大派閥の TEKLIFE クルーにも所属。UK の老舗レーベル〈Hyperdub〉の10周年コンピレーションにもその名を連ねた。
 今回の来日公演は Booty Tune が主宰となり、東京の大阪の 2 箇所で公演。日本勢の出演者陣もジューク・シーンをはじめ、タイトな顔ぶれがそろう。会場は、 日本フットワーク・ダンス・シーンの総本山「Battle Train Tokyo」の恵比寿KATA と大阪 Circus。全日本のジューク・ファンが待ち望んだ、ヨーロッパ最強のジューク・アーティストの来日公演。アッパーでハッピーなジュークに乗っ て、Let Me See Yo Footwork!!!

【東京】
Still Pimpin' feat.DJ Paypal
会場:KATA + Time Out Cafe & Diner [LIQUIDROOM 2F]
日程:7 月 19 日(日/祝前日)22:00~
出演:DJ Paypal (TEKLIFE, LuckyMe/Berlin, Germany)、D.J.Kuroki Kouichi、Guchon、TEDDMAN、D.J.APRIL(Booty Tune)、Dx (Soi Productions)、SUBMERSE、Boogie Mann (SHINKARON)、食品まつり aka Foodman、Kent Alexander(PPP/Бh○§†)、Frankie Dollar & Datwun (House Not House)、Dubstronica(GORGE.IN)、 Samurai08、コレ兄(珍盤亭)料金:Door Only ¥2,500 (With Flyer ¥2,000)

【大阪】
SOMETHINN vol.12
会場:CIRCUS
日程:7 月 20 日(月/祝日)19:00~
出演:DJ Paypal (TEKLIFE, LuckyMe /Berlin, Germany)、D.J.Fulltono (Booty Tune)、Keita Kawakami (Dress Down)、Hiroki Yamamura(Booty Tune)、AZUpubschool (Maltine Records / Sequel One Records)etc...
料金:TBA

■DJ Paypal(TEKLIFE, LuckyMe / Berlin, Germany)
アメリカ出身、ベルリン在住、本名不詳の謎の覆面トラックメーカー。DJ Spinn と故 DJ Rashad によって結成された世界的クルー「TEKLIFE」のメンバー。2012 年頃から徐々に頭角を現し始め、その後 Machinedrum、Jimmy Edger、Ikonika、Daedelus らからの熱烈なサポートを受け、そのキッチュな 名前に違わぬプロップスと実績を積み上げてきた。イーブンキック主体のサン プリングジュークを得意とし、アッパーかつポップなトラックメイキングで、 Juke/Footwork の枠を超え、多くの DJ に愛されている。これまでも前出の アーティストのほか、同じ TEKLIFE の盟友、DJ Earl や DJ Taye、DJ Rashad らのほか、Nick Hook や Sophie などともコラボ、リミックスワーク などを手がけている。
※20 歳未満の方のご入場はお断り致します。年齢確認のため、顔写真付きの公的身分証明書をご持参ください。(You must be 20 and over with photo ID.)


 ここ何年か、K-POPにはまる友人がたくさんいて、なんだか友だちの一人や二人がつねに韓国にいるような錯覚を覚えるほどなのだが、ぼく自身もチャン・ギハと顔たちやヤマガタ・ツイークスター、フェギドン・タンピョンソンといった面々の来日ライヴやら、顔たちのメンバーにしてプロデューサーである長谷川陽平の『大韓ロック探訪記』(DU BOOKS)などを通じて新旧の韓国ロックには大いに興味のあるところなのだ。
 最近だと、韓国でも数少ない(と思われる)D-BEATノイズ・クラスト・バンド、スカムレイドのライヴが素晴らしかったですよね。新宿ロフトのバーステージがぐっちゃぐちゃになる盛り上がりっぷりで。

https://scumraid.bandcamp.com/album/rip-up-2015-ep

 さて、そんな韓国インディの中でもヤマガタやタンピョンソンら、ホンデ(弘大)地区で活動する「51+系」とも言われるシーンには音楽的なおもしろさとトンチのきいたポリティカルなメッセージ性を特徴とするバンドが現れている。紙版『ele-king』vol.9のヤマガタ・インタヴューにも出てくるが、彼らのそうした政治的スタンスには〈トゥリバン〉という食堂の強制撤去に反対する運動の経験が大きく影響しているという。
 その運動の経緯を記録したドキュメンタリー映画があるというので前々から見たくて仕方がなかったのだ(新宿のIrregular Rhythm Asylumで自主上映が行わていたのだが情弱なもんで行けなくて……)。その映画、『Party51』がいよいよ正式に日本公開される。

 一連の運動はホンデのうどん屋〈トゥリバン〉が、再開発のため一方的に「300万ウォンやるから出て行け」と宣告されたことに端を発する。しかし、女主人(これがまた肝っ玉母さんな感じでかっこいいんですよ)はそこで諦めずに立て籠りを開始。それを支援するミュージシャンたちがそこに集まり、毎週ライヴを行うようになる。

 もともとライヴハウスみたいなところだったのかなと思ってたのだけど、この映画で観るかぎりどうも普通に食堂だったようだ。彼らを動かしているのは「こういうことを許してしまうと、また同じことが起こる」という危機意識である。この「明日は我が身」っていう感覚はすごく大事だと思う。他人事だと思っているうちに取り返しのつかないところまで動いてしまってることって普通にありますからね。

 やがてライヴ以外にも活発な議論が展開されていき、「インディ」に替わる「自立音楽」を名乗って「自立音楽生産者組合」を立ち上げ、メーデーには51組のバンドを集めたフェス〈Newtown Culture Pary 51+〉を開催。運動は店内にとどまらず、食えないミュージシャンたちが自分たちの環境を改善するために情報や意見を活発に交換していく。労組の大会で演奏して会場のおばさんたちにドン引きされる場面なども(笑)。

 ヤマガタ・ツイークスターがライヴでラーメンを作るパフォーマンスは〈トゥリバン〉での経験がルーツにある。また、後に韓国のレコード大賞みたいなので新人賞を受賞するほどの成功を収める404などは、初ライヴが〈トゥリバン〉だった。〈トゥリバン〉での運動が終わった後もさまざまなかたちで「自分たちの場所を作る」ための工夫を続けている姿が映画では描かれており、東京でいう桜台の〈pool〉や落合の〈Soup〉といったオルタナティヴ・スペースを思い起こさせもする。

 そういえば、〈トゥリバン〉の運動でも大きな役割を演じたノイズ・ミュージシャンのパク・ダハムはレーベル・オーナー兼オーガナイザーとして日韓を頻繁に行き来している(磯部亮・九龍ジョー『遊びつかれた朝に』でも言及されてますね)のだが、ぼくがパクさんに初めて会ったのは〈pool〉で行われたジンのイベントだった。

 ブラックジョーク満載のステージングがとくに印象的なパンク・バンド「バムサム海賊団」と素人の乱の交流も描かれているけれど、こうした国際企業や国家主導のグローバリゼーションとはちがった等身大の草の根コミュニケーションがアジアの地下シーンで活発に行われている最近の状況は個人的にいちばんワクワクするところ。

 ということで、すごく身近ですごく勇気のもらえる映画である。日本でもある程度なじみのあるバンドマンたちがたくさん登場するので、まずはそんな彼らの考えや歌詞の内容を知ろうという興味で観にいってもいいと思う。映像祭〈オール・ピスト〉の一環として東京と京都で先行公開された後、10月に全国上映が行われる予定。(大久保潤)



『Party 51』
ドキュメンタリー映画 2013年/韓国/101分/韓国語/日本語字幕
監督:정용택 JUNG Yong-Taek
製作:パク・ダハム(Helicopter Records主宰)

韓国ソウル、弘大(ホンデ)地区で自立した活動を続けるソウルの音楽家たち。都市開発により弘大の家賃は上昇。ライブハウスの数も年々減少。30歳前後の年齢になった彼らは、不安定な収入に不安も抱く。2010年頃、音楽家たちは不動産屋からの立ち退き要請を拒否し立てこもった弘大の食堂オーナー夫婦と出会う。彼らはお互いに協力し、立てこもり真っ最中の食堂で連日あらゆる音楽ライブを開催する──。
『Party 51』は、ユーモアを取り入れながら自分たちの場づくりと人集めに奔走するソウルの音楽家たちを追った力強いドキュメンタリー作品。来日公演が話題を呼んだYamagata Tweaksterやタンビョンソン、日本の即興・実験音楽シーンとの交流の深いパク・ダハムといった、韓国インディー音楽シーンのキーパーソンたちが多数出演。

■HORS PISTES 2015 / オールピスト2015
https://www.horspistestokyo.com/ja/

東京 TOKYO
『Party 51』 上映+トーク
〈UPLINKセレクション〉
6月20日(土)
at UPLINK FACTORY(東京都渋谷区宇田川町37-18 トツネビル1階)
★上映終了後 トーク(Skype出演:パク・ダハム、聞き手:山本佳奈子/Offshore)
18:45開場 / 19:00上映開始
料金:¥1,800 一律
チケット予約:https://www.uplink.co.jp/event/2015/37967

京都 KYOTO
『Party 51』プレミア上映
6月21日(日)
at アンスティチュ・フランセ関西・京都
※上映前後のトークはありません。
14:30上映開始
料金:¥800


■『遊びつかれた朝に
──10年代インディ・ミュージックをめぐる対話』

磯部涼×九龍ジョー

ホンデのシーンや韓国のインディ・ミュージックについても、興味深い情報や状況の紹介、また、東京のシーンと比較しながらの深い考察が加えられています。
詳しくは第2章を。
刊行から1年、まったく内容に古さを感じさせない、いや、ますます予言じみてくる言葉の数々に驚かされる対話集!

Satomimagae - ele-king

 うっとおしい梅雨ですが、曇った空や雨降りを味方につけてしまいそうな音楽もあります。しかも、日本のお寺でそれを聴くことは、
まるでトラベルマシンです。いつも利用している電車から降りて歩くいつもの風景だというのに、そこは異次元の入口です。
 昨年、USのグルーパーに匹敵する作品をリリースしたサトミマガエが、その作品『koko』のリリース・ライヴをやる。場所は、東京は大田区大森の成田山圓能寺。
 共演者は、ele-kingではお馴染みですよ。Family Basikの加藤りま、34423=ミヨシ・フミ、そして畠山地平伊達先生オピトープです。
 そう、これ、かなかり良いメンツなんですよ。しかも、何度も書いているように、お寺でのライヴは、本当に気持ちいいです。


■開催日時場所■
2015年7月4(土曜日)
open 15:30 / Start 16:00
入場料:AD:2,500 Door 3,000
会場:大森 成田山圓能寺 Ennouji (Omori St JR)
住所:東京都大田区山王1丁目6-30
1-6-30 Sannou Ota-Ku Tokyo
 JR京浜東北線大森駅北口(山王口)より徒歩3分
ホームページ https://ennoji.or.jp/index.html
(当イベントについて圓能寺へのお問い合わせはお控え下さい)


■前売り応募方法
下記メールアドレスまでお名前、人数を書いて、メールを送ってください。
katsunagamouri@gmail.com


■Live■
Satomimagae
加藤りま (Rima Kato)
34423
Opitope + 智聲(Chisei)


■Satomimagae
Satomimagae は1989年に生まれ、2003年から現在まで作曲を続けています。東京を中心に活動中です。2012年3月に初のアルバム「awa」をリリース、11月に映画「耳をかく女」の音楽担当。2014年12月にセカンド・アルバム『koko』をWhite Paddy Mountainよりリリース。現在精力的にライヴ活動を展開中。

■加藤りま Rima Kato
2009年よりライヴ活動を始める。ローファイ・ポップを通過しフリー・フォークを経たような哀愁を帯びながらも透明感のある歌声は、ぽつぽつと進むシンプルなアレンジの楽曲によって際立って響く。2010年ASUNA 主宰のカセット・テープ・レーベル WFTTapes から2本の作品をリリース。2012年同氏による3インチCDレーベル aotoao からミニ・アルバム 『Harmless』をリリース。2015年1月、フル・アルバム『faintly lit』をflauよりリリース。2月から5月にかけて日本各地、韓国と断続的に続いたツアーを無事終える。2014年11月に実兄とのユニット Family Basikのファースト・アルバム『A False Dawn And Posthumous Notoriety』をWhite Paddy Mountainよりリリースしている。

■34423
愛媛県出身、東京都在住のサウンドアーティスト。幼少より録音機器や楽器にふれ、音創りと空想が生活の一部となる。 切り取られた日常はサウンドコラージュによって独自のリズムを構築し、電子音に混ざり合い、より空間の広がりを感じさせる。 過去7枚の作品発表し、容姿と相対する硬派なサウンドと鮮烈なヴィジュアルイメージで注目を集め、2013年7月17日に待望の世界デビュー盤"Tough and Tender"(邂逅)をリリースし話題をさらった。その後も都内の大型フェスなどの参加や、ビジュアル面を一任するアートディレクターYU­KA TANAKAとのコラボ作を発表するなど勢力的に活動を重ね、2015年2月に最新作”Masquerade”(邂逅)をリリースした。
また、今夏上映、鈴木光司原作のホラー映画「アイズ」などをはじめ様々な映画の劇伴をつとめている。

■Opitope
Opitope は2002年の秋に伊達伯欣と畠山地平により結成。伊達伯欣はソロやILLUHA、Melodiaとして活動するほか、中村としまる、KenIkeda、坂本龍一、TaylorDeupreeとも共作を重ね、世界各国のレーベルから14枚のフルアルバムをリリース。 西洋医学・東洋医学を併用する医師でもある。漢方と食事と精神の指南書『からだとこころと環境』をele-king booksより発売。畠山地平はKranky、Room40, Home Normal, Own Records, Under The Spire, hibernate, Students Of Decayなど世界中のレーベルから現在にいたるまで多数の作品を発表。デジタルとアナログの機材を駆使したサウンドが構築する美しいアンビエント・ドローン作品が特徴。ヨーロッパ、オーストラリア、アメリカ、韓国など世界中でツアーを敢行し、2013年にはレーベルWhite Paddy Mountainを設立。

 以前、海外の古い古い映画をみていたら、明らかに字幕におかしい箇所があり、首をかしげたことがある。どう考えても画面に映っているできごとと字幕があっていない。調べてみると誤訳だそうで、それを誰も指摘するものがいないまま公開に至ってしまったのだそうだ。結局は正確な訳が明かされることもなく、また英語ならまだしも、わたしに何の知識もない言語……いまだにあの映画のあのシーンを思い返すと、ミスマッチな字幕のイメージがありありと浮かびあがってくる。文字の印象というのは、認識するのは容易であってもなかなか消すことができない。字幕は暴力なのだということを、そのときに知った。

 範宙遊泳の山本卓卓は、字幕が暴力だということにいち早く気づいたのみならず、その特殊な暴力性を演劇という形態と調和させることに成功した稀有な劇作家・演出家である。

 範宙遊泳 × Democrazy Theatre『幼女X(日本‐タイ共同制作版)』は、この作品をはじめて目撃した者はもちろんのこと、過去に初演を新宿眼科画廊で、再演をKAATで目撃した者にこそ驚愕をもたらした作品であっただろう。というのも再演にはあるまじき行為、「戯曲に書かれたセリフをいっさい喋らない」という決断をしていたからである。てっきりタイ人が喋ったセリフの日本語訳字幕が逐一表示されていくものだとばかり思い込んでいたらまったくちがった。舞台上には〈待っている間、国家の安定を脅かす人を探しなさい〉〈2時間髪型をセットしなさい〉〈あなたがいったい何をしているのか人に伝わるまでハンマーを食べなさい〉といった理不尽な命令がつねに表示されており、俳優たちはその命令に服従しなければならない、その悲哀を観察するという異質な作品だった。動物実験ですでに薬を打ったあとのラットがどうなるか、檻に入れてじっくりみつめているときの気分がもっとも近いだろうか。そこに再演と呼ぶべきものがあるとするならば思想、あるいは「追い詰められたものが無我夢中で反逆を試みてしまうが稚拙な計画はあえなく頓挫する」という戯曲全体を覆う仄暗いテーマのみである。

***

 Baobabの北尾亘と範宙遊泳の山本卓卓の共同プロジェクトであるドキュントメント『となり街の知らない踊り子』でも、山本特有の仄暗い思想は見受けられるが、こちらの作品は被害者の葛藤、社会のシステムに疲れた生活者たちの行き場のなさに、よりフォーカスをあてている。

ドキュントメント『となり街の知らない踊り子』

 B女 高速で過ぎ去っていくタイムラインの中で、こんな人フォローしていたっけーっていう人が夜中に「母がとてもうざい」っていう書き込みをしててソッコーでフォロー外した。こういうやつが日本の闇なんだよなー。振りまくなよ、貴様の闇を。うざくても、うざいとか、言うな。いうんじゃねー。「ねえ、ひろくん、そう思わない?」 (山本卓卓『となり街の知らない踊り子』

 興味深いのは、一人芝居で北尾が演じるB女に対して、字幕で「そうだね」「思うよ」「え、なんで?」などという、本人の性格がさっぱりみえてこないひろくんの相槌が表示されていくのだが、B女は唐突にひろくんに別れを切り出すのである。6日しか付き合っていないにもかかわらず、である。ここにはただ連帯してほしいだけ、共感してほしいだけ、なぐさめあっていたいだけで、用がなければすぐに切り捨ててしまう、現代社会特有の情のなさが透けて見える。B女は、まるでツイッターの気に入らないアカウントのフォローを外すような気軽さで、ひろくんにあっさりと別れを告げるのだ。

ひろくん 6日間しか付き合ってないのに……。6日で僕の何がわかるんだ。
(同前)

 『となり街の知らない踊り子』にはこのほかにも多数の登場人物が出てくるが、共通しているのは「他者への無関心が、別の誰かの憎しみや苛々を増幅させ、それがなお事態を悪化させる」という夢も希望もない状況である。しかしわたしは残念ながらこの状況を現代の前提として当たり前のように設定する残酷さに未来への期待を見出してしまう。フェイクの夢や希望を掴まされて大けがを負う物語より、よっぽどスマートな人生訓をそこから拾い上げることができるように思えるからだ。山本卓卓は2010年代の、不穏な空気からけっして目を逸らすことのない、誠実なアーティストである。

loadedを“reloaded(再装填)”! - ele-king


久保憲司写真集loaded
ele-king books

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 ノイバウテンやSPKからストロベリー・スウィッチブレイドまで! ロックを中心に洋邦さまざまな媒体で活躍するフォトグラファー、久保憲司。とくに活発に活動を展開し、ロック・ジャーナリズムを支えた80年代半ば~90年代の仕事をたっぷり収録した写真集『loaded』を覚えておられるだろうか。刊行から1年半、「reloaded(再装填)」と題して久保憲司氏が新たに展示会を開催する。期間中にはDJイヴェントやトーク・イヴェントも予定されており、毎回いわくいいがたいテーマが掲げられているようだ。ぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。

日本を代表するロック・フォトグラファー、久保憲司。
今回は、これまでの展示にはなかった氏のアナザーサイドにスポットを当て、写真集「loaded」を“reloaded”(再装填)。
80年代を中心にニューウェイブ/ノイズ/インダストリアルのアーティストの貴重な現場写真を展示します。

今回の展示を記念したDJイベント、東瀬戸悟氏(Forever Records)とのトークイベントもありますのでぜひご参加下さい。

■久保憲司 exhibition「reloaded」

2015/6/6(sat) - 6/15(sun) ※closed on 6/10(wed)
mon-fri 15:00-20:00
sat,sun 13:00-20:00

at Pulp
(map https://pulpspace.org/contact)

Einstürzende Neubauten
SPK
Foetus
Depeche Mode
Psychic tv
Strawberry Switchblade
Laibach
Suicide
Soft Cell
Fad Gadget …more

■同時イヴェント

6/6 sat | opening talk event
「狂気の音楽 人はなぜ気が狂うのか」
久保憲司 ×流れの精神科医
19:30-21:30
charge : 1000yen
※ご参加希望の方は、pulp.space.gallery@gmail.com まで
※定員25名(スペースに限りがありますので埋まり次第、終了となります。)

■6/7 sun | talk event
「80年代インダストリアル、ノイズ、ニューウェイブ再検証語り」
久保憲司×東瀬戸悟
19:30-
charge : 1000yen
※ご参加希望の方は、pulp.space.gallery@gmail.com まで
※定員25名(スペースに限りがありますので埋まり次第、終了となります。)

■6/14 sun | closing party
DJ:MR.A(from DAMAGE) / KENJI KUBO
19:00-21:00

::PROFILE::
久保 憲司 Kenji Kubo

https://twitter.com/kuboken999

1981年に単身渡英し、フォトグラファーとしてのキャリアをスタート。
ロッキング・オンなど、国内外の音楽誌を中心にロック・フォトグラファー、ロック・ジャーナリストとして精力的に活動中。
また、海外から有名DJを数多く招聘するなど、日本のクラブ・ミュージック・シーンの基礎を築くことにも貢献した。
著書久保憲司写真集『loaded(ローデッド)』『ダンス・ドラッグ・ロックンロール 〜誰も知らなかった音楽史〜』『ダンス・ドラッグ・ロックンロール 2 ~“写真で見る"もうひとつの音楽史』、『ザ・ストーン・ローゼズ ロックを変えた1枚のアルバム』など。

Moved to England in 1981, and started his career as a photographer.
Kenji Kubo also works as a journalist specialized in rock ‘n’ roll music for various music magazines such as Rockin'on.
He also invited a number of big DJs to Japan and helped to establish the Japanese club music scene.
He has published numerous book in which he photographed and wrote, such as "loaded” , “Dance Drug Rock-on-Roll”, “Dance Drug Rock-on-Roll 2”, and “The Stone Roses, the album that changed the world”.


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