「OTO」と一致するもの

Satoshi & Makoto - ele-king

 ele-kingに寄稿したCHAI『PINK』のレヴューで、「いま、80年代のカルチャーが注目されている」と書いたが、それはエレクトロニック・ミュージックも例外ではない。なかでも特筆したいのは、ヴェロニカ・ヴァッシカが主宰する〈Minimal Wave〉の活動だ。〈Minimal Wave〉は、2000年代半ばから現在まで、チープで味わい深い電子音が映える80年代のミニマル・シンセやニュー・ウェイヴを数多くリイシューしてきたレーベル。いまでこそ、80年代の作品を発掘する流れはブームと言えるほど盛りあがっているが、そんな流れの先駆けという意味でも重要な存在だ。

 そうしたブームは、日本で生まれた音楽を再評価する動きにも繋がっている。この動きに先鞭をつけた作品といえば、ヴィジブル・クロークスが2010年に発表したミックス、『Fairlights, Mallets And Bamboo ― Fourth-World Japan, Years 1980-1986』だろう。細野晴臣やムクワジュ・アンサンブルなどの曲を繋ぎあわせたそれは、ここではない想像上の風景を示すレトロ・フューチャーな雰囲気が漂うもので、時間という概念から解き放たれた自由を感じさせる。
 その雰囲気はさまざまな人たちに伝染した。アムステルダムの〈Rush Hour〉は、パーカッショニストの橋田正人がペッカー名義で残した作品をはじめ、坂本龍一、吉田美奈子、大野えりといったアーティストの作品を再発して大いに注目された。さらに先述の〈Minimal Wave〉も、トモ・アキカワバヤが80年代に残した珠玉のミニマル・シンセが収められた、『The Invitation Of The Dead』をリリースしている。
 変わり種でいえば、ストックホルムを拠点とするナットリア・トゥナーも見逃せない。2016年にウクライナのウェブマガジン『Krossfingers』へ提供したミックスで彼は、アドバルーンス、比企理恵、インプル加工など、80年代のポップスやインディーものを繋いでみせたのだ。彼もまた、〈Rush Hour〉や〈Minimal Wave〉とは違う角度から、80年代の日本の音楽を再評価した1人と言える。

 そして2017年、またひとつ日本のアーティストに注目した作品が生まれた。サトシ&マコトの『CZ-5000 Sounds & Sequences』である。本作は、1986年から日本で活動してきた2人のアーカイヴ音源をまとめたアルバムで、全曲カシオのCZ-5000というシンセサイザーで制作されたそうだ。リリース元の〈Safe Trip〉が選曲し、マスタリングに至るまでの過程もサポートするなど、かなり熱烈なバックアップを受けている。〈Safe Trip〉を主宰するヤング・マルコが、YouTubeにアップされた音源を聴いてサトシ&マコトに連絡したのがリリースのキッカケという物語も、非常にドラマチックだ。
 こうした背景をふまえて聴くと、確かにヤング・マルコが好みそうな音だと感じた。彼はイタロ・ハウス好きとしても知られ、それが高じて『Welcome To Paradise (Italian Dream House 89-93)』というコンピを〈Safe Trip〉からリリースしている。このコンピは、リスナーの心を飛ばすトリッピーなサウンドが印象的で、それは本作にも見られるものだ。さらに本作は、ジ・オーブやYMOを引きあいに語られることも多い。確かに80年代から90年代前半のエレクトロニック・ミュージックの要素が随所で見られ、インターフェロンやフロム・タイム・トゥ・タイムといった、日本テクノ・シーンの礎を築いたアーティストたちの音が一瞬脳裏に浮かんだりもする。

 一方で本作は、2010年代以降の音楽とも共振可能だ。たとえば、本作を覆う夢見心地な音像は、チルウェイヴ以降に一般的となったドリーミーなインディー・ポップとも重なる。エレクトロニック・ミュージックに馴染みがない者でも、サファイア・スロウズや『Visions』期のグライムスなどを通過した耳なら、本作にもコミットできるだろう。
 もちろん、本作は過去の音源を集めた作品だから、現在の潮流を意識して作られたものではない。だが、その過去が時を越えて現在と深く繋がるのは非常に面白い。そこに筆者は、“表現”という行為のロマンと、それを残すことの尊さを見いだしてしまう。

Nicola Cruz - ele-king

 〈MULTI CLUTI〉や〈ZZK〉からのリリースで知られるニコラ・クルースが初来日、神戸Troop Cafeと東京・代官山Unitでライヴを行います。ニコラ・クルースは、ニコラス・ジャーのステージでフロント・アクトをつとめたり、彼の主宰レーベル〈クラウン&サンセット〉のコンピにその名を連ねたことをきっかけに注目を集めた南米エクアドルの首都キトを拠点とするエレクトロニック・プロデューサーです。〈MULTI CLUTI〉や〈ZZK〉に加え、ニコ・デマスのワンダーホイールやエジプトのマジック・ムーヴメントにも楽曲やリミックスを残し、直近では、現在日本をツアー中のトーマッシュ主宰、ヴードーゥー・ホップのコンピ『Entropia Coletiva』のCD版にも新曲「Elephant」を提供しています。
 東京公演は野外フェスティバルRe:Birth主催のパーティで、ミニローグ、クニユキ・タカハシ、ミックスマスター・モリスも出演します。

■Nicola Cruz Japan Tour in Kobe

2017.11.23 THU

16:00 START - 23:00 CLOSE
Mail Resevation \2000(w/1D)Door \3000(w/1D)Under23 \1500(w/1D)

LINE UP :
Nicola Cruz -Live-
Shhhhh
KND -Live-
halptribe
FUKAMIDORI
職人
TAIPEIROD
KEYWON

SHOP :
DUMBO

FOOD :
tamu tamu cafe
Beinelmilel

COFFEE :
nomadika

https://troopcafe.jp/music-program/1388

■Nicola Cruz Japan Tour in Tokyo
Re:birth feat. El Folclore Paradox supported by Global Chillage

2017.11.24 FRI

OPEN : 23:00
START : 23:00
CHARGE :
ADV 3,000yen
DOOR 3,500yen
You must be 20 and older with photo ID

【UNIT】

LIVE :
Nicola Cruz
Marcus Henriksson aka Minilogue x Kuniyuki

DJ:
Shhhhh (El Folclore Paradox)
Kojiro (Re:birth)

【UNICE】

[new album "KiraKira" release special]
Mixmaster Morris
Peter Power (voodoohop)
Koss aka Kuniyuki
Hiyoshi (Labyrinth/Global Chillage)
7e

DECO:
聖紅 (seiko-nose.com)

LIGHTING:
Yamachang

https://www.unit-tokyo.com/schedule/2017/11/24/171124_rebirth_featefp.php

【Nicola Cruz ~ニコラ・クルス~】
彼は自分のサウンドを”andez step”と定義するDJ / プロデューサー。南米はエクアドルの都市キト在住。パーカッショニストとしてキャリアをスタートし、次第にそのリズムの感性と興味はエレクトリック・ミュージックにも向かう。同時に自身のルーツである南米大陸の儀式や音楽現象への探求を開始。2015年にデジタル・クンビアのレーベルとして日本でも紹介されたZZK Recordsよりアルバム、"Prender el Alma"をリリース。Nicolas Jaarの前座に指名され、翌年のバルセロナのソナー・フェスティバルを始めとする、欧米から南米のビッグフェスやBoiler Room にも出演。2017年、モントリオールのレーベル、Multi CultiよりEPを数タイトルリリース、他にもsoundcloudやBandcampにて、クオリティの高いトラックをハイペースで発表し続けている。2018年には新アルバムをリリース予定。
2010年代中盤から南米を中心に勃発した、過去と未来、伝統とモダンを行き来する進行系の現象。ナチュラルでオーガニック、世界各地の土着性を吸収した、BPM控えめで、ミニマル、スローハウス、ラテン/クンビアらを通過した酩酊しトランスするダンス・ミュージック・ムーヴメント。その動きの中でも代表的なアーティストである。待望の初来日。

Taylor Deupree & Marcus Fischer - ele-king

 最近ではマーカス・フィッシャーの『Loss』など、順調に優良な作品のリリースを続けているブルックリンのレーベル、〈12k〉。その主宰者であり、坂本龍一や青葉市子とのコラボでも知られるサウンド・アーティスト、テイラー・デュプリーが、マーカス・フィッシャーとともに急遽来日することが発表された。11月18日のTokyo Festival of Modular 2017を皮切りに、奈良、岡山、東京を巡回する。ILLUHA伊達伯欣の相棒を務めているコーリー・フラーらも参加。最終日の東京公演は、今年で20周年を迎える同レーベルの記念公演となっており、世界で唯一のアニヴァーサリー・イベントだそう。いやあ、これは行きたい。

坂本龍一や青葉市子とのコラボレーションも行なうサウンド・アーティスト、テイラー・デュプリー主宰の電子音響レーベル〈12k〉が今年20周年を迎えます。

これまで数多くのアーティストを輩出した同レーベルは20年間の長きに渡り電子音楽界において多大なる功績を残してきました。 その主宰であるテイラー・デュプリーと所属アーティスト、マーカス・フィッシャーが来日し、Tokyo Festival of Modularを皮切りに、奈良、岡山、東京と4公演に出演します。奈良、岡山、東京公演には日本在住の〈12k〉アーティストCorey Fuller(ILLUHA)、Sawako、Moskitooらも出演し、最終日の東京公演は、世界で唯一の〈12k〉による20周年記念イベントが開催されます。すべてのアンビエント~実験音楽~電子音楽ファンに。絶対にお見逃しなく!

■Tokyo Festival of Modular 2017
日時:11月18日(土) 17:00~21:00
会場:渋谷contact (渋谷区道玄坂2-10-12 新大宗ビルB2)
料金:1day Pass ¥3,000(当日券のみ)(※2day Passもあり。詳細はTokyo Festival of Modular公式ウェブサイトをご覧ください)
出演:Marcus Fischer & Taylor Deupree, Baseck, Sarah Davashi, Hataken featuring SUGIZO, Rodent, Hisashi Saito and more...

チケット・イベント詳細:Tokyo Festival of Modular
https://tfom.info/tfom-2017/

■岡山公演
日時:11月19日(日) OPEN 17:30 / START 18:00
会場:cafe moyau (岡山市北区出石町1−10−2)
料金:予約 ¥3,500 / 当日 ¥4,000(全席自由)
出演:Corey Fuller (ILLUHA), Taylor Deupree, Marcus Fischer, 松本一哉, nensow

◎メール予約:madronemu@gmail.com
※公演名・お名前・人数・連絡先をご明記のうえお申し込み下さい。
チケット取扱店:padang padang、cafe moyau、グリーンハウス倉敷店、グリーンハウ
ス岡山店、レコード屋、FOLKLORE
協力:全ド連 / padang padang / night cruising / moderado music / cafe moyau
詳細:moderado music
https://moderado.jugem.jp/?eid=360&PHPSESSID=rd5ok709t6gpb8romtglih3391

■奈良公演
日時:11月22日(水) OPEN 18:30 / START 19:00
会場:sonihouse (奈良市四条大路1-2-3)
参加費:¥3,600(1drink order)
出演:Corey Fuller (ILLUHA), Taylor Deupree, Marcus Fischer

◎メール予約:「11/22の参加予約」をタイトルに「お名前・人数・電話番号」を記載の
うえinfo@sonihouse.netまでご連絡ください。
*静寂を大切にした音楽のため、小学生未満のお子様のご来場はご遠慮いただいております。
詳細:sonihouse
https://www.sonihouse.net/journal/?p=8096

■東京公演 / 12k 20th anniversary in Tokyo
日時:11月25日(土) OPEN 16:30 / START 17:00
会場:光明寺 (港区虎ノ門3-25-1)
料金:予約 ¥2,500 / 当日 ¥3,000
出演:Taylor Deupree & Corey Fuller (Illuha), Marcus Fischer & Sawako, Moskitoo

◎ご予約:Peatixご予約受付ページ
https://12k20.peatix.com/
※Peatixへのご登録が必要となります。
※前売りが予定枚数に達した際は当日券の発売はございません。
主催・制作:cubic music
協力:Fly sound、誰そ彼、Inpartmaint Inc./ p*dis、安永哲郎事務室
詳細:cubic music
https://12k20th.cubicmusic.com/

日本では否定的なレヴューがタブーとなっているのはなぜか?

松田聖子から渋谷系、ナンバーガールからAKB48まで
英国人ジャーナリストによる日本のロック/ポップスおよび文化批評

日本に住んで13年、イアン・マーティンが描いた、日本のオーヴァーグラウンド/アンダーグラウンドの大衆音楽史、アイドルにおけるセクシャル・ポリティクスと後期資本主義、音楽メディアや公共性、伝統の問題……。

「日本メディアの側が自分たちの国をなんとも不思議な四つの季節を持ち、使うのがややこしい食器の数々を備えた神秘の地として描写したがるのと同じくらい、西洋側メディアも喜んでそのお返しとして奇妙でカラフルで派手やか、突飛なものなら何でも強調した東洋風な日本報道をおこなっている。こんな風にして日本の音楽は西側においては主に歪んだレンズを通して認知されることになるのだし、僕がイギリスで大きくなる中で抱いていた日本の音楽に対するイメージもまたこの点に大いに影響されたものだった。」(本書より)

BBCから取材され、The Quietusで記事が組まれ、Crack Magazineが「今年読むべき本」のNo.1に選んだ、イギリス人ジャーナリストによる噂の日本ロック/ポップス批評、ついに翻訳刊行!


■目次

パート1:僕はどんな風に日本の音楽シーンにたどり着いたのか、
そしてそこで僕が発見したのは何だったか

'97の世代
日本の音楽について書くということ

パート2:総合的かつ完全に正確きわまりない
日本のポピュラー・ミュージック通史

日本のポピュラー・ミュージックの初期展開
ロックンロール、日本上陸
ニュー・ロック
ロックンロールとガソリンの臭い
薬物不法所持逮捕からニューミュージックまで
成熟を迎えたポップと演歌の硬直化
パンク
ニュー・ウェイヴ
アイドルと歌謡曲の死
J-ポップと現代日本音楽の誕生
渋谷系、そしてインディを発見した日本
日本音楽の歴史の終わりと永遠のナウの誕生

パート3:ライヴ・アクトたちを見舞う経済的、政治的、そして実際的な
危険の数々、もしくはバンドをやめずに続けるにはどうしたらいいか

高円寺、東京にて
海外へ
日本の音楽は海外でどう受け取られているのか
日本音楽の海外進出作戦
愛のためでも金のためでもなく――ライヴ・ハウス事情
シーン内の政治をさばくには
シーンにある制約を克服するということ
レーベルはくたばれ
言い分は分かるけど、なんでCDの話になるの?
言語と日本人らしさ
すべてのアートは政治的である
サブカルとアイドル
おがくずの詰まった操り人形、音を出す操り人形:――“夢見るシャンソン人形”
ピンクのギター
何だって好きなことを言うのも、何も言わないのも同じこと
とは言っても、結局は……

ほか


●著者紹介
イアン・F・マーティン Ian F. Martin
イアン・マーティンが執筆した日本の音楽に関する文章は『ジャパンタイムズ』、『CNNトラヴェル』、『ザ・ガーディアン』他が掲載してきた。マーティンは東京を拠点に活動しており、そのかたわら〈コール・アンド・レスポンス・レコーズ〉も運営中。

●訳者紹介
坂本麻里子 Mariko Sakamoto
1970年(昭和45年)、東京生まれ。日本芸術大学映画学科卒業。『ロッキング・オン』を中心にライター/通訳として活動。本書が初の書籍翻訳。

interview with doooo - ele-king

doooo ”Pain feat. 仙人掌”


doooo
PANIC

Pヴァイン

Hip Hop

Amazon Tower HMV

 「あのビデオに出てる高津のレゲエバーで飲んでるの?」そんな話題からゆっくりとインタヴューははじまった。ちなみにその店は台風で少し壊れたりもしたらしい。CREATIVE DRUG STOREに所属。昨年、ファースト・シングル「STREET VIEW feat. BIM & OMSB」をリリースしたdoooo。1年と少しの時間を経てファースト・アルバム『PANIC』は噂のMPCと共に世に公開された。dooooというアーティスト、そしてその音楽を知ることは「PANIC」という言葉の新しい意味を知ること。陽気な狂気の渦巻く世界へようこそ。


これは、普通に聴いた人をパニックにおとしいれたいという理由で。曲作ってる時に、作ってる自分もパニックになってしまったり。自分が「どうしようみたい」になったりもしたんで(笑)。自分もパニックになってるし、聴いてる人もパニックになって楽しんで欲しい。

doooo 君は出身は盛岡ですよね?

doooo ( 以下D ) : そうです。22まで盛岡にいて、大学卒業してこっちに来ました。

盛岡から出てすぐにいま住んでる川崎辺りに引っ越してきた感じですか?

D:はい。

それでCREATIVE DRUG STOREのメンバーと知り合っていく?

D:そうですね。最初にDJ のMIX をサウンドクラウドにあげてたんですけど、僕とBIMの共通の知り合いが気に入ってくれて、それでBIMにも彼が聞かせて気に入ってくれて。そこからですね。BIMと僕と家が500mくらいしか離れてなくて、それで、僕が「うちに遊びに来る?」って。BIMもフットワーク軽いからすぐに遊びに来て。デモを作ってるからビートを聴かせて欲しいという話をして、その時にMPCに入ってた曲がTHE OTOGIBANASHI`Sのファーストに入ってる“KEMURI”って曲ですね。

それで気がつけば一緒にやってるような感じ?今までにトラックを提供してるのはTHE OTOGIBANASHI’Sが多い?

D:圧倒的ですね。

ん。他のアーティストの作品への参加って何があります?

D:ほとんどないです。KANDYTOWNのRYOHUくんもラップしてたりするグループ、Aun Beatzのリミックスくらいですね。リリースされてるの。僕、インストで完結するビートがばっか作ってて。岩手時代それしか作ってない。リミックスを最初に作り出して、そこからオリジナルで作りたいって思うようになって、そういういいタイミングでBIMとかにも出会って作るようになった。そのときは本当に知り合いのラッパーがCREATIVE周りしかいなかったんですよ。インストの曲はたくさん作ってますね。

トラックメイクは盛岡のときからしてたんですね。

D:はい。曲も作ってましたけど、活動はDJばっかって感じですかね。

どういうDJっていう聞き方もなんか趣き無いですけど(笑)、どういうDJをしてたんですか? それと最近はビートライヴ以外のDJってしてますか?

D:最近はDJしてますけど、回数減りましたね。DJのときはソウルとかディスコからテクノとか、それこそ色々かけてます。盛岡がレコードが色んな種類あるんで。イベントも何でもかかるイベントばかりだったんで、自然にそうなりました。そのなかで、もちろんヒップホップかけるんですけどね。とにかく好きなものをなんでもかけるDJが多かったですね。

盛岡のときに制作したビートで発表してるものってありますか?

D:THE OTOGIBANASHI'Sの1stに入っている曲で“Froth On Beer”って曲があるんですけど、それが岩手で作ったビートですね。

DJはいつからはじめたんですか?

D:19ですね。高校出た時から始めました。

きっかけは?

D:兄ちゃんがいるんですけど、兄ちゃんが僕が13歳の時にターンテーブルを買って。ずっとICE CUBEが流れてたんですけど。ICE CUBEの“YOU CAN DO IT”だけずーっと(笑) 。それでかっけーってなって。その時まで知らなかったんですけど、それでかっこいいなってなりまして。俺もやりたいってずっと思っていて、高校出てターンテーブルを買って始めました。

ターンテーブルを買う前にレコードは買ってましたか?

D:レコードはたまに買ってて、ほとんどCDでしたね。ほとんどTSUTAYAでしたね。TSUTAYAで借りまくってました。

TSUTAYAで借りまくってた時代、俺もあります。渋谷のTSUTAYAって入れて欲しい作品リクエスト出来たんですよ。

D:僕いまでも渋谷のTSUTAYA結構行くんですよ。

音楽の聴き方の話なんですけど、自分の場合は、買うもの以外はストリーミングで聴く感じになってきてるんですよね。持っていたいもの以外はデータでもいらないやとか思ってきてしまっていて。

D:あー。僕はDJでかける用に借りてるのがほとんどなんで。レコードしか持っていないものであったりとか、昔持っていたけどどっかいってしまったものとかそういう作品を借りることがほとんどです。借り直してるものが多いですね。タイトルが揃ってるので、レコードで探すのが難しいものもあったりするじゃ無いですか。例えば和物のJAZZとか。そういうのも借りてますね。

なるほど。そう考えるとレンタルCDって確かに便利ですね。


 気づくとレンタルCDについて考える良い機会に恵まれてしまった。dooooはフットワークが軽く色々なとことに行くイメージの人物だ。目に見える選択肢の中から自由に選んで楽しむ。そんなイメージが浮かぶ。


今回のアルバムの話をさせてください。1曲目に収録されている“STREET VIEW”ですが、これはアルバムのなかでは一番最初に作った曲になるんですか?

D:1年前の夏ですね。そもそもが僕、最初に作る曲はG FUNKが作りたいってずっと思っていて。この曲のビデオ作って、レコード出したときに、どうせならアルバムを作りたいと思って。だからこの曲が軸になってますね。他にもやりたいことがたくさんあったなかで最初に作った曲で、その制作があってやりたいことを全部やろうって思うようになりました。

doooo "Street View feat. BIM,OMSB & DEEQUITE"

“STREET VIEW”でゲスト参加しているBIM、OMSBはどのように決めたの?

D:オムス君はこういうビートにすごく映えるラップをするイメージがあって最初に頼みました。どうせやるなら、もう1人はテイストの違うラッパーに頼みたくて、攻撃的じゃないラップがいいかなと思って、BIMに。意外なんだけど、バッチリハマるイメージあってそれ通りに出来ました。

そこからアルバムの制作で色々とゲストも参加してますが、イメージは?

D:全体のイメージは、本当に好きなこと全部やってやろうと思うって。ビートメイカーですけど、DJとしての自分も出してやろうって思って。自分の全部入ってるものにしたくて。

色んなゾーンが散りばめられていて流れもあって、濃いけど聴きやすいアルバムだと感じました。

D:やりたい曲を作りつつ。DJとしての自分も出したかったので曲順はすごくこだわりました。フューチャリング陣もこういうアーティストが自分は好きなんだぜっていうのも見せてくて。

HUNGERはやっぱり東北地方で元々つながりがあったんですか? この曲すごく印象に残りますよね。

D:HUNGERさんは僕がすごく好きで。ライヴとかに行きまくって追っかけて、向こうも「また来たんだ」みたいな感じで(笑)、それで参加してもらいました。

MONY HORSEの参加はすごく意外な気がしました。

D:MONY君も大好きだったのですが元々は面識が無くて、JUNKMANさんが繋げてくれて(JUNKMANは青森出身) 。MONY君のいままでの曲も聴いていて、それで、自分のビートでやったら面白いかなと思って頼みました。

うん。面白いですね。そして、このアルバムはゲストが出てくるたびに、新鮮な面白さを感じます。

D:それはプロデューサーとしては嬉しい意見ですね。

過度に尖った音作りにはしてないように感じます。

D:そうですね。普段のライヴ用の音源は攻撃的なものを作っちゃったりするんですけど、アルバムは長く聞いて欲しかったのでそこは気をつけてますね。あとはTSUBOIさん( ILLICIT TSUBOI ) がうまくバランスを整えてくれてますね。

曲順はどのように決めたんですか?

D:最初にやりたい曲をだーっと作って、ある程度揃った時に選んでいきました。最初から全体の構想があったというよりは出来た曲を並べて作っていった感じです。

アルバムの曲にもありますけどdoooo君は酒のイメージがあります。

D:最初に、仙人掌と会ったときにすごく飲んでしまって、その印象ですよね。今回参加してもらった曲でもその話がリリックに出てきていて嬉しかったです。

個人的にも、そのエピソード仙人掌から聞いてたので、あのリリックは凄く面白かったです。ビールのなくなり方がおかしいっていう。俺もたまに言われるんですけどね。スタジオに買ってきたビール全部飲んでしまったりとか。ちなみに酒って作業の時のみますか?

D:そうですね。飲むとめちゃくちゃはかどりますね。

没頭できる感じですよね?文章書くとき夜中に酒ずっと飲んでることあります(笑)。

D:昼間っから酒飲むことありますね。本当、24時間近く飲み続けることとか。

家で?

D:はい。

どれくらい家にストックしてますか?

D:いま、家にASAHIの350が20本くらいありますね。

それ凄いね。

D:困らないくらいの量が。

前に仙人掌とERAとCREATIVEのメンバーと飲んだことがあって、そのときはdooo君いなかったんだけど、その後、仙人掌のツアーで会って、いまがあるのってなんか面白いですね。

D:そういうリンク、岩手で見てて憧れてたんで嬉しいですね。

こういうリンクを繋げていけたら面白いですよね。

[[SplitPage]]

 仙人掌のアルバム『VOICE』のリリースに伴いおこなわれた「BACK 2 MAC TOUR」の東北場所の盛岡MAD DISCOで、dooooというアーティストに初めて出会った。凄まじいテンションでの最高なビートライヴと、ファニーな人柄がとても印象的だった。その後、聴かせてもらったビートはdooooという人間そのものを感じた。

機材巡りが好きで、ハードオフ行って使い方わからないけど面白そうな機材を買ったり。レコード8円 ~ 108円で売ってるんですけど、そういうの買うのが好きですね。それみんなで聞いたりとか。それこそ、仙人掌君とのPVにも出てくるんですけど、赤白の線差すのが両方にあるだけの箱。使い方はわかりません。


doooo
PANIC

Pヴァイン

Hip Hop

Amazon Tower HMV

アルバム作ってみて、次にやってみたいこととかって生まれました?

D:もう次のを作りたいです。いまある曲のなかでも続きを勝手に考えてるものがあるし。それはAru-2とモンキー君とやってるビートメーカーだけで作った曲があるんだけど、そこにもっと色んな人に参加してもらって、ビートメーカーのマイクリレーみたいなものを作ってみたい。ビートだけで成立するビートメーカーって意外にいない気がしていて。そういうビートメーカーを集めて曲やったら面白いなと思っていて。

それ面白そう。ぜひ聴きたいです。

D:スピードは遅いですけどやってきたいです。

ビートメーカーの作る音源でなかなか再現難しいと思うんですよ。ゲストが入ると。そこでどういう風にライヴをやりたいとかってありますか?この音源を聴いてdoooo君を知った人は、この音源のイメージを持ってdoooo君のライヴに来ると思うんです。

D:ライヴのときは、自分という人間を見て欲しいという形で。一番好きなものはDOPEな感じというか、ぶっ飛んでる感を凝縮したくて、それがアルバムなんですけど。和物で気持ちい良いミックスも作ってるんで、そういうこともやってるんだよっていうのも知って欲しいし、とにかく色んな自分を見に来て欲しいですね。

アルバム・タイトルの『PANIC』を決めた理由は?

D:これは、普通に聴いた人をパニックにおとしいれたいという理由で。曲作ってる時に、作ってる自分もパニックになってしまったり。自分が「どうしようみたい」になったりもしたんで(笑)。自分もパニックになってるし、聴いてる人もパニックになって楽しんで欲しい。

いいパニックですよね。遊園地みたいな、色々あるけどパニック。

D:CREATIVE DRUG STOREで活動してるので、聴いてる人がヒップホップのファンが多いと思うんですが、ヒップホップ以外の音楽も入れて作ったと思ってます。こういう音楽もあるんだよっていう、驚きを与えられたらなって。上から目線みたいな意見になっちゃってるかもしれないですけど、そんな気持ちで作りました。

たしかにいままでとテイストがかなり違いますもんね。そして作品のなかでも変わっていく。

D:今回の作品は、参加してもらう人によって変えたのもあるので、それはあるかもしれません。それもDJとしての自分を見て欲しいっていうのがあって、このラッパーならこのビートが合うなとか。ビート決まった後に、展開を変えたりして。そいういのでまた変わるってったかもしれない。

アルバムはれくらいの期間で作ったビート?

D:制作期間は1年半くらいですかね。それぞれの長さはバラバラですね、1曲1週間かかったのもあれば、1日でできたものもありますし。

この作品がリリースされたことによってdoooo君の謎が解き明かされますね。

D:それは嬉しいですね。

OMSBとかdoooo君は狂ってるっていつも嬉しそうに言ってますね。

D:オムスくんとは人肉MPCの事とか楽しく話せて嬉しいです。

このMPCライヴで使って欲しいですけどね。

D:渋谷音楽祭で飾ったときもみんなめっちゃ写真で撮ってくれて嬉しかったです。本当に気持ち悪いんで、笑っていない人も多くて。写真だと洒落た感じだけど、(といってdooooのinstagramにある全体像の動画を見せる)この端の部分いつか触って欲しいんですけど。気持ち悪いんですよ。端っこが。何回もやり直して作ってもらいました。

総制作費は……?

D:結構お金はかけました(笑)。だから触ってほしくて。一番長く使ってたのがMPC 2000XLなんですけど、だから。僕っぽさも出したくて、マッド・サイエンティスト感を。で、人肉にして。仙人掌さんとのビデオでHEIYUUの肉にして。

トラックメーカーのアルバムのジャケットって機材が出てるもの多いけど、これは新しいですよね。そうだ、ホラー映画ってどういうのが好きですか?

D:生々しいというか、ヒューマン・ドラマというか。『オールナイトロング』っていう映画があるんですけど。かなりトラウマ系ですね。上手に人を嫌な気持ちにさせる。女の子がアキレス健を切られる描写とかがすごく上手いというか。

俺、日本のホラー苦手なんですよ。やな気分になるやつ。ホラーとかそういうの以外でライフワーク的に好きなもの何があります?

D:コミックですね。曲作るきっかけも漫画とか映画とか音楽以外のものが多い。こういうの作りたいっていう。

そう思う時って頭の中に曲の設計図があるんですか?

D:最初は感覚でこういう。日野日出志の「日野日出志の地獄変」って漫画を読んだときに、漫画の世界観、地獄絵図みたいな曲を作りたいって思って、その段階ではあまり考えてないんですけど、音を入れていくなかでヒップホップにしようとか、まあ、感覚ですね。

日野日出志。苦手だったけど、ここ1年くらいで結構はまってきて。

D:おどろおどろしい絵いいですよね。

おどろおどろしいけどファニーですよね。

D:おどろおどろしいだけじゃなくて、そういうさじ加減が良いんですよね。ただただ気持ち悪いんじゃなくて、ちょっとファニーさもあるのに惹かれるんですよね。それこそ、曲も、怖いなかにファニーな感じ。仙人掌の曲でもそういうのも意識していて。

たしかにそうですね。リリックも含めてそういう印象がある。

D:怖そうなテンションのわりに、面白いですよね。そして、なんというか、僕のことをわかりやすく言ってくれて。めっちゃ嬉しかったです。

ラッパーがトラックメーカーを紹介してる構成も面白いと思う。

D:アルバムの曲で僕のことをここまで歌ってるのこの曲だけですね。

この曲でdoooo君のことはわかりますよね。酒の情報とか余計な情報はあるけど。それありきでdooo君を見ると面白い気がします。

D : 笑。


 まだ発表できない予定の話を聞いて、テープを一度止めて。気がつくと機材の話をしてた。ジャンクというよりは何かの塊というような。なんだか禍々しい話。でもdooooとの会話には禍々しさよりも、なんだかファンシーなイメージ。


D:機材巡りが好きで、ハードオフ行って使い方わからないけど面白そうな機材を買ったり。レコード8円 ~ 108円で売ってるんですけど、そういうの買うのが好きですね。それみんなで聞いたりとか。それこそ、仙人掌君とのPVにも出てくるんですけど、赤白の線差すのが両方にあるだけの箱。使い方はわかりません。

それはいくらだったの?

D:108円でしたね。形がかっこいいから買いました。いまも何かわからないですね

アルバムでそういう面白い機材制作に使ったものあります?

D:ありますね。ノイズとかそういう音が出るだけですけど。本当に気づかれないくらいのノイズだけなるシンセの音をサンプリングしていじって入れてますね。

dooo君が制作するコクピットはどうなってるの?

D:台所に機材とかレコードとかの物置があるんですけど、ガラクタが積んであるみたいな。そこに人肉MPCもあるんですけど。

それおぞましいですね(笑)。メカ的なのも好きですよね!? ギーガー好きだよね?

D:ギーガー!! 重厚感がありますね。

ギーガーもえぐさありますよね。バイオメカ。

D:いかついですよね。ゴツい。エイリアンもそうなんですけど重厚感があるものに影響を受けてて、そういう。

金属音とか?

D:影響を受けてますね。

バイオMPC。

 dooooの作り出す空間はやはりどこか歪んでるような気がする、だけれど心地よい、遊んでいて心地よいような空間だ。余計なものがたくさんあるけど、それで遊べる。説明とか書いてない。その感覚って音楽のひとつの魅力なんじゃないかなって思った。そんな感覚を持って『PANIC』を楽しくパニックしてください。ちょっとまだ公開しちゃいけないinfoが多かったのですが、今後もdooooのまわりは楽しそうだ。

D:ゲストを呼んだリリース・ライヴをいくつか考えていて。全員呼んだパーティもやりたいと思ってます。来年またアルバムからビデオを公開する予定です。

doooo 『PANIC』 Teaser

(了)

interview with Mount Kimbie - ele-king

 ケンドリック・ラマーは今年リリースした新作で、驚くべきことにU2をフィーチャーしている。さらに彼は来年、ジェイムス・ブレイクとともにヨーロッパを回るのだという。いまでも黒人たちの一部は心の底から白人たちを嫌っているという話も聞くが、どうやらケンドリックはそうではないらしい。彼の選択はたぶん、そういう対立を少しでも突き崩していこうという試みなのだろう。それがどこまで成功するのかはわからない。過度な期待はいつだって裏切られる。そう相場は決まっている。
 そんなケンドリックの果敢な試みに代表されるように、近年ブラックのサイドが積極的にホワイトのサイドへとアプローチしていく動きが目立っている。その起点となったのはおそらく去年のビヨンセのアルバムだろう。彼女はその力強く気高い作品で、ジャック・ホワイトやジェイムス・ブレイクといった白人のアーティストたちを積極的に起用した。その横断的なチャレンジは、エリオット・スミスやギャング・オブ・フォーをサンプリングしたフランク・オーシャンや、デイヴ・ロングストレスとの共作を試みたソランジュへと受け継がれることになる。そして今春、ついにジェイ・Zまでもが自身のアルバムにジェイムス・ブレイクを招待するに至った。そのトラックでブレイクとともにプロダクションを手掛けていたのが、マウント・キンビーの片割れ、ドミニク・メイカーである。つまり、引く手あまたのブレイクだけでなく、その盟友たるマウント・キンビーもまた、そのような越境ムーヴメントの一端をホワイトの側から支える存在になったということだ。
 そんな背景があったので、以下のインタヴューではドミニクにそういう昨今の傾向について尋ねているのだけれど、どうもうまく質問の意図が伝わらなかったようで、「近年はUSのメジャーとUKのアンダーグラウンドが結びついていっているよね」という話になってしまっている。こうして期待は裏切られるのである。


Mount Kimbie
Love What Survives

Warp / ビート

ElectronicKrautrockPost-Punk

Amazon Tower HMViTunes

 それはさておき、最初にマウント・キンビー4年ぶりのアルバムがリリースされると聞いたときは、それはもう胸が躍った。“We Go Home Together”や“Marilyn”といったトラックが公開される度に、勝手にイメージを膨らませては「今回はぐっとR&B~ソウルに寄った作品になるんじゃないか」「いや、彼ららしいダウンテンポなムードをより洗練させたものになるんじゃないか」などと予想を繰り返していた。そうして迎えた夏の終わり、いざ蓋を開けてみると――これがクラウトロックなのである。冒頭の“Four Years And One Day”からしてそうだ。完全にやられた。アルバム全体が、何やらパンキッシュなエナジーに満ち溢れている。いや、たしかにバンド・サウンドそれ自体は前作『Cold Spring Fault Less Youth』でも試みられていたけれど、それがここまで大胆に展開されるとは思いも寄らなかった。こうして期待は裏切られるのである。
 クラウトロックだけではない。マウント・キンビーの新作『Love What Survives』には、さまざまな音楽の断片がかき集められている。本作を聴き込めば聴き込むほど、それらの断片たちが要所要所で効果的な役割を果たしていることに気がつくだろう。そういえば本作をインスパイアした楽曲を集めたという彼らのプレイリストでは、ロックからアフリカ音楽まで多様な楽曲がセレクトされていたし、彼らがやっているNTSのラジオ番組には、ジェイムス・ブレイクやキング・クルールといったお馴染みの面子に加え、ウォーペイントケイトリン・アウレリア・スミスアクトレスからウム・サンガレ(!)まで、じつに興味深いアーティストたちがゲストとして招かれていた。つい先日も、アルバム収録曲の“You Look Certain (I'm Not So Sure)”をケリー・リー・オーウェンスがリミックスしたばかりである(彼女はマウント・キンビーの欧州ツアーのサポート・アクトにも抜擢されている)。そんな彼らのレンジの広さや音楽的探究心の断片を、クラウトロック~ポストパンクというムードのなかにさりげなく、だがこの上なく巧みに落とし込んでみせたのが、この『Love What Survives』というアルバムなのだ。

 10月9日、この取材の後に渋谷WWWXにておこなわれた彼らのライヴは、荒削りな部分が目立つ場面もあったものの、アルバム以上にエネルギッシュな熱を帯びており、まるで新人ロック・バンドのステージを観覧しているような気分になった(ファーストやセカンドの曲が新たに生まれ変わっている様もじつにスリリングだった)。いや、じっさい、4人編成という点において彼らは新人である。つまり……マウント・キンビーは今回のアルバムやパフォーマンスで、いわゆる「初期衝動」のようなものを演出しようとしているのではないか。そう考えると、なぜ彼らがこの新作に『Love What Survives』という意味深長なタイトルを与えたのか、その動機が浮かび上がってくる。「生き残るもの」とは要するに、かれらが最初に音楽を作り始めたときに抱いていた気持ちや勢い、刺戟のことだったのである。
 そんなわけで、「生き残るもの」というのはきっと政治的・社会的に虐げられている人びとを暗示しているのだろう、という小林の浅はかな先入観は見事に覆されることとなった。そして、ファースト・アルバム『Crooks & Lovers』のジャケに映っていたのはおそらくチャヴだろう、という編集部・野田の予想も外れてしまった。こうして期待は裏切られるのである。そんな素敵な裏切り者ふたりの言葉をお届けしよう。

 

よくわかっていないからこそ、そういう音楽のスペースのなかで、自分たちなりの解釈で何かをやってみるのもおもしろいんじゃないかと思ったんだ。 (カイ)

マウント・キンビーの音楽について、日本ではいまでも「ポスト・ダブステップ」という言葉が使われることがあるんですが、UKでもまだそう括られることはありますか?

カイ・カンポス(Kai Campos、以下カイ):いまその括りは死につつあるね(笑)。たしかに、僕らが初めてのアルバムを作った2010年当時、その言葉と一緒にその手の音楽がバーッと出てきて、ほんの短期間のうちにダブステップという音楽の概念がガラッと入れ替わった時期があったと思うんだけど、いまはだいぶ死に絶えてきているね。たぶんこのアルバムが出たあとには完全になくなるんじゃないかな(笑)。

これまでそう括られることにストレスは感じていましたか?

ドミニク・メイカー(Dominic Maker、以下ドム):いや、けっしてその呼び名に納得はしていなかったけど、とくに気にもしていなかったよ。とにかく自分たちの音楽がひとつの箱に収まりきらないようなものであってほしい、ジャンルの境界を跨いでいるようなものであってほしいという意識で音楽を作ってきたし、じっさいいろんなことをやっているから、それが「ポスト・ダブステップ」だろうがなんだろうが、ひとつの言葉で括ってしまうのは僕らの音楽にはふさわしくないんじゃないか、という思いはつねにあったね。

今回のアルバムからはクラウトロック~ジャーマン・ロックの影響を強く感じました。

カイ:たしかにいままでやっていたエレクトロニック系の音楽よりも、ちょっと前の時代のエレクトロニック・ミュージックに遡ったようなところはあるよね。クラウトロックやジャーマン系の音に聴こえるというのは僕らも認めるところだけれども、僕らはけっしてそのジャンルに詳しいというわけではないんだ。(クラウトロックを)ずっと聴いてきてよくわかっているからそれをいまやってみた、ということではないんだよ。逆に、よくわかっていないからこそ、そういう音楽のスペースのなかで、自分たちなりの解釈で何かをやってみるのもおもしろいんじゃないかと思ったんだ。「セミ・エレクトロニック・ミュージック」とでも言うのかな。過去を振り返って、リズムや楽器の編成といったところからアイデアを引っ張ってきて作ったのが今回のアルバムかな。

他方で本作からは80年代のポストパンク~ニューウェイヴの匂いも感じられます。そのあたりの音楽も参照されたのでしょうか?

カイ:その手の音楽はUKではかなり広く愛されていたから、僕らも自ずと踏んできてはいると思う。当時はブリティッシュ・ミュージックのなかでもおもしろい時代だったと思うし。ただ僕らの場合、たとえばスクリッティ・ポリッティとか、ああいったバンドは最近になって聴いているんだよね。あの頃の音楽が持っていた、とくにパンクのアティテュードに見られるようなポジティヴな要素を自分たちのアルバムの制作過程に持ち込んだというか、そういうことは今回あったような気がする。あと他にもこのアルバムには、自分たちの音のパレットが幅広くなればと思って、ソウルやディスコみたいなものも組み込んだつもりなんだ。だからいろんな音が聴こえてくると思う。でもけっして後ろばかり振り返っているわけではなくて、あくまで前に進もうとしている作品だと思っているよ。

昨年リリースされたパウウェルのアルバムはお聴きになりました?

ドム:聴いたと思う。バンドっぽいやつだよね? 僕は好きだったよ。聴いていて楽しかった。

エレクトロニック畑の人がパンキッシュなサウンドをやるという点で、今回のアルバムと繋がりがあるように思ったんですよね。

カイ:そりゃそうだろうね。だってこういう発想は僕らが思いついたものではないし、大きな流れのなかで、いろんな人が同時発生的にやってみたくなった時期なのかもしれないからね。


Photo by Masanori Naruse

じつを言うとキング・クルールとの曲の歌詞はいまだに意味がわかっていないんだ(笑)。まだ解読中だね(笑)。 (カイ)

今回のアルバムに影響を与えた楽曲のプレイリストが公開されていますが、そこではロバート・ワイアットやアーサー・ラッセル、スーサイドやソニック・ユース、ウィリアム・バシンスキからアフリカのバンドまで、かなり多様な楽曲がピックアップされていました。それらはおふたりが今回のアルバムを作っていく過程で発見していったものなのでしょうか?

ドム:あれはじつは、僕らはラジオ番組をやっていたんだけど、それ用のプレイリストという側面が大きいんだ。曲をかけるためにいろんなものをチェックして聴いていくなかで幅が広がっていったんだけど、その作業で見つけた曲もプレイリストに入っている。番組をやっていく過程でかなり大量の音楽を吸収して消化したんだ。それは今回のアルバムにも影響を与えていると思う。あと、番組に来てくれたゲストから教えてもらったものもあるね。僕らがリスペクトしている人が来てくれたんだけど、どんなふうに音楽を作っていくのか聞いていくなかでおもしろいものと出会ったりして、そういうこともすべてあのプレイリストには詰め込まれているんだよね。

カイ:そうやって考えるとおもしろいね。そういう流れがあってあのアルバムに至っている、ということがプレイリストからもわかるよね。

今回のアルバムには4組のゲストが招かれています。キング・クルールは前作にも参加していましたが、4曲目の“Marilyn”にフィーチャーされているミカチューはどのような経緯で参加することになったのでしょう?

カイ:ミカチューは、僕らふたりが音楽を作り始める前からファンだったんだ。知り合ったときに「いつか一緒にやろう」という話をしていたんだけど、それから2年くらい話が続いていて(笑)。今回いよいよ一緒にやる機会に恵まれたわけだけど、作ってみたらあっという間で、すごく相性がいいのかなと思える時間だったよ。だから、僕らにとってはようやく実現できたスペシャルなトラックなんだ。

その“Marilyn”はアルバムの他の曲と趣が異なっていますが、7曲目の“Poison”や、ジェイムス・ブレイクが参加している8曲目の“We Go Home Together”と11曲目の“How We Got By”の2曲も他の曲と雰囲気が異なっているように感じました。本作をこのような構成にしたのはなぜですか?

ドム:今回のアルバムは全体を通してすごくヴァラエティに富んでいると思う。いま挙げてくれた曲に限らず、個性的な曲ばかりが詰まっていると思うんだけど、それだけにアルバム全体の流れというか、全体で聴いたときの消化具合がうまくいくように、ということをすごく考えて曲順を決めたんだ。ミカチューとの曲もジェイムスとの曲もそうだけど、自分の頭のなかで曲順を組んでみたときに、“Marilyn”は突出しているという印象があって。(この曲は)アーサー・ラッセルの影響がすごく大きいと思うんだけど、とくにユニークな曲だからアルバム全体の流れのなかで活かしたいと考えたんだ。

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ジェイ・Zから「ジェイムス(・ブレイク)に歌ってほしい」というオファーがあったんだ。そのときちょうど僕がジェイムスが歌うことを想定して書いていた曲があって、それをやろうかってことになったから、僕も関わることになったんだよ。 (ドム)


Mount Kimbie
Love What Survives

Warp / ビート

ElectronicKrautrockPost-Punk

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春頃から少しずつアルバムの収録曲が公開されていきましたが、先行公開曲のセレクションに関しては何か意図があったのでしょうか? 公開された曲からぼんやりとアルバムのイメージを膨らませていたのですが、蓋を開けてみると想像していたのとはまったく違い、とてもパンキッシュで驚きました。

カイ:最初に何を公開するかみんなと話し合ったときに意見が一致したのは、ゲスト・ヴォーカルの入っている曲から公開するのが理に適っているんじゃないか、ってことだった。やっぱりヴォーカルが入っているというのはみんなに伝わりやすいだろうし、わかりやすいよね。それを聴いて「アルバムはどんな感じなんだろう」という期待感を煽る狙いで最初の2曲(“We Go Home Together”、“Marilyn”)を選んだんだ。でも、その2曲はみんなが消化するのにちょっと苦労する曲だったかもしれない。それをあらかじめ出しておいて、他の曲より先に聴いてもらうことによって、あとでアルバムを聴いたときに、その曲のあいだにあるどの曲もフィットしたものに聴こえるようになる、という枠組みを提示することができたかもしれないね。

ドム:ジェイムスの曲もミカの曲もそうだけど、僕らはしばらく鳴りを潜めていたから、タイトルのなかにそういう有名な人の名前(ビッグ・ネーム)が入っていることによって注目を集めることができるんじゃないか、という意図もあったね。

いまヴォーカル曲の話が出ましたが、今回のアルバムにはハードな生活を送っている人たちの登場する曲が多いように感じました。リリックに関して何かコンセプトやテーマのようなものはあったのでしょうか?

カイ:歌詞は、僕らと客演してくれたシンガーとで一緒になって作ったんだけど、基本的には彼らが伝えたいストーリーをそのまま語ってもらえればいいと思っていたんだ。だから僕らが影響を与えたというか、注文をつけたことがあるとすれば、「この曲にはこういうふうに(言葉を)乗せてほしい」という、歌い回しやフレージングに関することだね。「ここに乗せるためには音節はこうじゃないほうがいい」とか、そういう注文はしたけれど、歌詞の内容に関しては自由にやってもらったよ。だから、(それぞれの)曲のメッセージには一貫性がないんだ。でも、そういうふうにやってもらったほうが幅の広さという意味でいいレコードになるんじゃないかと思って。ただ、レコーディングの段階では僕らも完全には歌詞を咀嚼しきれていなくて、じつを言うとキング・クルールとの曲の歌詞はいまだに意味がわかっていないんだ(笑)。まだ解読中だね(笑)。でもライヴでやるときは、あくまでも僕らのものとして消化してやっているから、歌詞の内容もレコードよりももっとフォーカスした内容になっているんじゃないかな。

ドミニクさんはいまLAに住んでいるんですよね。

ドム:そうだね。

LAへ移住したのはなぜ?

ドム:ガールフレンドが向こうに住んでいたからだよ。(移住して)もう2年になるね。天気もいいし、楽しんでいるよ。

ということは、今回のアルバムの制作はカイさんとデータをやり取りする形で進めていったのでしょうか?

ドム:いや、行ったり来たりしながら作ったよ。(UKには)しょっちゅう行くから。ノルウェー航空とかの安い航空券を買ってね(笑)。

なるほど。ではおふたりはわりと頻繁に会われているんですね。

ドム:そうだね。メインのスタジオはロンドンにあるんだけど、レコーディングの終盤には感覚やリズムを取り戻したいと思ってライヴを始めたんだ。今度のバンド編成はわりかし新しいものだから、アルバムが出る前からライヴに打ち込みたくて、ロンドンでライヴ活動はしていたよ。そういう意味ではLAに住んでいるからどう、ということもないかな。

ドミニクさんはジェイムス・ブレイクと一緒に、今年出たジェイ・Zの新作『4:44』に参加しています(“MaNyfaCedGod”)。それはどういう経緯で実現したのですか?

ドム:そもそもはジェイ・Zから「ジェイムスに歌ってほしい」というオファーがあったんだ。そのときちょうど僕がジェイムスが歌うことを想定して書いていた曲があって、それをやろうかってことになったから、僕も関わることになったんだよ。結局2曲で参加する形になったけど、作り方が僕らの慣れているやり方とぜんぜん違っていて、でもそれだけ勉強になったね。いい経験だったよ。


Photo by Masanori Naruse

音楽を作るときの刺戟って僕らがファーストを作ったときと何も変わっていないんだよね。そういう気持ちや勢いが「Survive(生き残る)」ってことなんだ。 (カイ)

ジェイムス・ブレイクは昨年ビヨンセのアルバムに参加していました。また、昨年話題になったフランク・オーシャンのアルバムではエリオット・スミスやギャング・オブ・フォーなど、いわゆる白人の音楽がサンプリングされていて、今回のドミニクさんとジェイ・Zとのコラボもそうなのですが、最近ブラック・ミュージックのビッグなミュージシャンたちが積極的にホワイトの文化を取り入れていっている印象があります。10年前や20年前にはあまりなかったことだと思うのですが、そういう昨今の流れについてはどうお考えですか?

ドム:ドレイクもジャマイカのアクセントを真似して歌ってみたり、グライムが好きで聴いていたりするから、そういう流れはたしかにあるよね。

カイ:カイラの“Do You Mind”(2008年)というUKファンキーの曲があって、むかしUKでビミョーに、ちょっとだけヒットした曲なんだけど、ドレイクの“One Dance”(2016年)ではそれをバックトラックに使っているんだ。もとの曲自体はUKでは大して注目されなかったんだけど、それがいまになってUSの超メインストリームの曲のなかで鳴っているというのはすごくおもしろいことだと思ったよ。そういうのって、(もとの曲に)興味を持ったR&B系のプロデューサーなんかが引っ張ってくるんだろうけど、たとえばビヨンセとかもそうで、メインストリームの人なのにオープンにいろんなものに興味を持ってそれらを取り入れたりしていて、彼女がやればそれに続く人が出てくるし、UKのアンダーグラウンドとUSのメインストリームのあいだにあった大きな壁が、ここ5年、10年くらいのあいだに崩れていっているという実感はあるね。

今作のタイトル『Love What Survives』は「生き残るものを愛せ」ということで、とても意味深長なのですが、これにはどのような思いが込められているのでしょう?

カイ:今回に限らず、レコードを作っているときに考えすぎてしまうのはよくないと思っているから、いつも感覚でいいと思うものを作っていくんだけど、いざどういうタイトルにするか考える際には、「何がモティヴェイションとなって自分たちはこれを作ったのか」ということを振り返るんだ。今回ふたりでこのアルバムを作りながら話していたのは、とにかく(これまでと)違うことをやりたいということや、変化が訪れたらそれをどんどん受け入れて前に進んでいこうということだった。そういう音楽を作るときの刺戟って僕らがファーストを作ったときと何も変わっていないんだよね。そういう気持ちや勢いが「Survive(生き残る)」ってことなんだ。新しいことをやったり、刺戟を絶やさないことで生き残っていくというか、自分たちのまわりにあるものを受け入れて、ケアをしながら大事に音楽を作っていくというか。そういう気持ちを可能にするには好奇心が必要だったり、変化に対するオープンな気持ちが必要だったり、あとは違うアプローチを恐れないということが必要だったりして、(『Love What Survives』は)そうやって生き残ってきたものを大事にするというような作り方に対する考えなんだ。でもこれは僕の解釈であって、聴いた人がどう解釈しても構わないんだけどね。

ドム:同感だね。

今回のアルバムはアートワークもユニークですが、被写体の彼は何をしているんでしょう?

ドム:いい質問だね(笑)。

カイ:本当は実際にアートワークを制作してくれたデザイナーのフランク(・レボン)に聞いてもらうのがいいんだけどね(笑)。フランクは今回のヴィデオもほぼすべて手がけることになっているんだ。このジャケットは彼が撮影してくれたものをもとにデザインしたものなんだけど、僕らと彼とではアルバムに対する見方がちょっと違っていて、だからこそおもしろいんだと思う。レコードにあのジャケットが付いたことによって、作品として僕らふたりのアイデア以上の存在になったんじゃないかなと思っている。けっこうインパクトは大きいよね(笑)。見た目もそうだし、フィーリング的にも。僕らだけの作品じゃなくなった気がして好きなんだ。まあ詳しいことはフランクに聞いて(笑)。彼はキャラクターになって何かをやるのが好きなんだ。

このジャケットを見て、ファースト・アルバムのジャケットを思い出したんですが――

カイ:フランクはファーストのアートワークを手がけたタイロン(・レボン)の弟なんだ。

へえ!

カイ:ファーストから今回のアルバムまでのあいだに僕らのなかですごくいろんなことが変わったんだけど、そこ(アートワーク)で繋がっているというのはおもしろいよね。

ファースト・アルバム『Crooks & Lovers』の被写体の女性は、いわゆるチャヴなのでしょうか?

ドム:あの女の子? ぜんぜんわからないな(笑)。

カイ:デザイナーに聞かないとわからないし、たぶんデザイナー本人もわかってないよ(笑)。

いまはこうして来日されて、ツアーの真っ最中だと思いますが、それが一段落ついたら何かやってみたいことはありますか?

カイ:ここ4年はけっこうおとなしくしていたから(笑)、いまは動きたくて、このツアーができるのが嬉しいよ。もうオフはいいや(笑)。

ドム:僕はこのあとホリデイで、フィリピンに行くんだ。日本ではカイとツアー・メンバーみんなで一緒に京都に行く予定だよ。そうやってちょっと休んで、また動き出したいね。


僕たちのLOVEい曲10選〜AUTUM編~

New Sounds of Tokyo - ele-king

 ラウドで、ダーーーークで、挑発的。鋭く尖った音は未来に突き刺さる。覚悟しとけよ。
 愛情の問題もある。黎明期のテクノがいまだ特別な美をほこるのも、その純粋さと関係なくはないだろう。このレポートのモチベーションのひとつもそこにある。
もうひとつ、ここ10年ほどの欧米のエレクトロニック・ミュージック……たとえばUK(インスト)グライム、ダーク・アンビエントやインダストリアル、まあなんでもいいのだが……こうした比較的新しい、若い世代が主導した、刺々しい海外の動向とリンクする音源を探したくなった。 
 2008年~2009年あたりに欧米の四方八方で発展した「新しい」流れも、気が付けば、行くところまで行っている。サウンドトラックがカンヌで賞を取ったOPN、ケンドリック・ラマーとツアー予定のジェイムス・ブレイク、世界各国のフェスを飛び回るザ・xx、アナログ盤化される昔のヴェイパーウェイヴ、歌モノをやるアルカやローレル・ヘイロー、ストーンズ・スロウから新作を出したウォッシュト・アウト……などなど……などなどに象徴されるように。はじまったと思っていたら、おー、もうこんなになっている。じゃ、日本は?
 今日もまたひどい日だった。新しい景色に飢えていた。ぼくは、いま東京でもっとも尖っている音楽を作っている、若い人間の話を無性に聞いてみたくなった。

■「覚悟しとけよ」──Double Clapperz


ShintaとUKDによるDouble Clapperz。

俺はすげーカッコいいことやってるつもりなんだけど、なかなか理解されなかったり、ブッキングされなかったり、ムカつくからタイトルはこれでいいやって。

 彼らは若い。速いし、突風だ。ダブル・クラッパーズ(略称:ダブクラ)は、すでに名前が知られている。どこまでかって? ロンドンにまで。
いまの彼らの音楽は、現代のもっともエネルギッシュな英国ブラック・ミュージック=グライムに、すさまじく強い影響を受けている。
さて、DJのSintaとトラックメイカーのUKDが出会ったのは2012年。「最初にクラブで会ったとき、ようやく音楽の話が合うヤツがいたと思ったんですよ」とUKD。「グライムの話もしたけど、それだけじゃなかったよね。トラップとか……」とSinta。
 UKDにとって最初の影響はDex Pistolsだった。Bボーイ風なUKDは柔らかい声で話す。「18歳のときにDexのミックスCDを聴いて、それでメジャー・レイザーを知って、ディプロ知って、レゲエやダンスホールを聴くようになった」
 続いて、C.E.のTシャツを着た長身のSinta。StormzyやNovelist、Skeptaについて日本でもっとも熱く語れるライターとしても活躍している米澤慎太朗が言う。「俺は日本語ラップ。高校時代は日本語ラップおたくみたいな感じで、そこからR&Bっぽいところとダンスっぽいところがあったんで2ステップ・ガラージが好きになって。そのあとにガラージ。まだグライムもガラージも明確な違いがなかったような時代でしたね」
「グライムのことも最初は、新しいダンスホールと思って聴いましたから」とUKD。「そこは大事っぽい話ですね」とすかさずSintaが言うとUKDが相づちを打つ。「グライムって、ダンスホール・レゲエの一種かなと」。ふたたび間髪おかずにSinta。「つまりグライムをグライムとしてガッツリ入っていったわけじゃないというか、流れというか。レゲエのMCとか、好きなポイントがあったんだよね」。「あったね。早口のパトワが好きだった」とUKD。「Riko Danとか、あとはPay As You GoとかあのへんのサウンドとMCが好きだよね。レゲエ、ジャマイカンのノリがずっと好きだよね。でもどう考えてもいろんな意味でスケプタはデカいんじゃない? ファッションと音楽を結びつけたのもスケプタだし、UKDはファッションも音楽も好きだし、そういうのもあるとは思うけど。最初のきっかけは音楽がカッコいいし、見た目もカッコいいしってところだよね」とSintaがまとめる。
 ふたりの音楽制作は、「WarDub」が契機になっている。

Shinta:ワーダブっていうオンラインでやっていたグライムのコンペというか、MCたちがバトルで相手を口撃するように、DJたちもDJ同士で相手を攻撃しあう企画があったんですよ。

UKD:曲を送りあうんですよね。Twitterで@マークをつけて送るんですけど」

Shinta:けっこう毎年やっているっすけど、すごかったのは2013年ですね。グライムがまたおもしろくなってきたというのもそのへんからで、そこでいま活躍しているアーティストがほぼ全員参加しているんですよね……まあ、曲を作ってSound Cloudに出しただけなんですけど。そんなことしてもまず話題にもならないんですけど、マーロ(Murlo)っていうプロデューサーがいて、ロンドンのリンスFMで番組をやっているんですけど、その人が〈Butterz〉のショウに(ダブル・クラッパーズの)曲を送ったんですよ。Twitterで「曲をくれ」っていう@マークが来たんで送ったら、それをリンスFMでかけてくれたんですよ。そこからSoundcloudにDMがガーッと来たりしましたね」

このリアクションが、「日本でもやるけどUKとかを通じて世界中のリスナーにも届けたいという活動スタイルの原点」となった。で、その曲こそが、後にダブル・クラッパーズの最初のEPになる「Say Your Prayers」のオリジナル。

UKD:「Say Your Prayers」とは「覚悟はいいか」っていう意味ですね。

シンタ:「覚悟しとけ」みたいな(笑)。「お前の祈っている奴に言っとけ」って意味。しかも当時はジャージー・クラブとかの影響もめっちゃあったよね。聴いてもらったらわかるっすけど、グライムだけじゃないんですよ。

 この話は、ゴス・トラッドがUKで受け入れられた話を彷彿させる。たまたま自分が好きなことをやったらダブステップのシーンで受けたように、ダブル・クラッパーズもダンスホールやジャジー・クラブ、ボルチモアを自分たちなりに咀嚼したらそれがグライムのシーンで受けたというわけだ。
 ゴス・トラッドがディストピアを表現していたとしたら、ダブル・クラッパーズはより直球にダンスフロアに突き刺さるサウンドを目指している。“Say Your Prayers”の新ヴァージョンを収録した2016年に自主で制作した12インチには、なかばブートのような作りで、そのB面にはUKのグライム集団、Ruff Sqwadの曲のリメイクが収録されているが、すでにSintaはロンドンのギグに呼ばれているし、スケプタとも共演している。今年初頭には、ディジー・ラスカル以来の天才と言われる若きMC、カニエ・ウエストもお気に入りのノヴェリストを日本に招聘している。

 しかしながら、グライムとはUKならではの、ローカル色がもっとも強いスタイルだ。ぼくが今回もっとも聴きたかったのは、彼らが〈東京のサウンド〉をどう思っているのかということだ。「俺はその答えを持っているけど」とSintaが言う。「それは……俺たちがこれから作るモノ」
 こうした彼らの強気な姿勢、若さゆえの良き暴走は10月にリリース予定のセカンド・シングル「Get Mad」に集約されている。印象的なメロディとハードなドラミングで、人を駆り立てるような迫力満点のこの曲は、ある程度名前が浸透してからのダブル・クラッパーズの最初のシングルになる。 

「UKDが最初に出してきた曲が“Get Mad”って名前なんですけど、だからそもそもなにかしらブチ切れているんですよね(笑)」とSintaがが曲名について説明する。「Madというのはふたつの意味があるというか、『この曲はMadだね』と言ったら『ヤバい!』という意味だけど、“Get Mad」”と言ったら『キレる』って意味もあるじゃないですか。しかし……なんでそんなタイトルつけたんだろうって思うけどね」
「僕はけっこう承認欲求とかが強くて」とUKDが答える。その場は笑いに包まれたが、彼は冷静に話しを続けた。「俺はすげーカッコいいことやってるつもりなんだけど、なかなか理解されなかったり、ブッキングされなかったり、全然注目されないというのが、(だんだん認められて)自信がついてくると『なんでだろう?』って。けっこう頑張ってるのになと思って、あの曲を作ったんですよ。ムカつくからタイトルはこれでいいやって」
「というかまずあのヴァイオリンのリフが出来ていて、その時点でこれは狂気だなと思って(笑)。BoylanっていうUKのプロデューサーを起用したんですけど、そのときヴァイオリンのリフが超マッドだから使おうってことになって……」

 彼らの音楽に直結する強い気持ちは、彼らが所属する世代、20代半ばという若さと結びついている。たしかに90年代の東京には、20代が安く借りられてパーティできる場所がまだあった。新しいことをやる実験の場と週末の夜の娯楽の場とのバランスが取りやすかった。
 もちろん500人以上の集客を義務づけられているような商業クラブがあることが必ずしも悪いことではない。が、そればかりというのはまずい。自分がいま20代だったら、自分がかつて20代のときだったように、毎週末をクラブで過ごしたいと思っただろうか。
「だからぼくらが変えていくしかない」とSintaが言う。彼らは去る8月の半ばに「Get Mad」のリリース・パーティを終わらせたばかりだ。「ぼくらのリリース・パーティに集まっている子ってそういう(クラブで盛り上がった世代の下の下の)世代だし、遠慮なく楽しめるし。お金を持っていないと楽しめないみたいなパーティばっかりになっているから、ぼくらのリリース・パーティはエントランス・フリーでやった。そうしたら平日の夜なのに40人ぐらい集まって、20枚ぐらいのTシャツが売れた(笑)」
 実際のリリースまでまだ3ヶ月もあるのに、リリース・パーティをやるには早するだろう(※この取材は8月末)。「いや、それがいいんですよ」と彼らは不敵な笑いを見せる。最後にぼくは彼らの当面の目標を訊いてみた。「とくにああいう風になりたいというのはないんですけど……」こう前置きしたうえでUKDが力強く答える。「ゴス・トラッドさんの次に続くのは俺らでありたいと思いますね」
ダブル・クラッパーズの時代が近づいていると思うのはぼくだけじゃないだろう。

※出演情報
10/27 (金) 23:00- @Circus Tokyo dBridge & Kabuki pres. New Form
https://circus-tokyo.jp/event/dbridge-kabuki-pres-new-forms-tokyo/
11/3 (金) 23:00- @恵比寿Batica
Newsstand 2nd Anniversary


ようやくリリースされた待望の2nd EP「GET MAD」。
取扱店はDisc Shop Zero,Dubstore 、Naminohana Records、Disk Union Jet Set。Bandcamp : https://doubleclapperz.bandcamp.com/

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■ダブの新解釈──Mars89 

新しい動きとして面白いと思うのは、食品まつりさん。DJでは、セーラーかんな子ちゃんがおもしろいですね。彼女のDJは、毎回そう来るかという驚きがあって。DJとしてすごくユニークですね。

 パッションの塊のようなダブル・クラッパーズに対し、飄々としているのがMars89。彼は台湾で買ったという台湾語がデザインされた鮮やかなオレンジ色のTシャツを着て自転車に乗って現れた。待ち合わせ場所は都内の図書館の入口。ぼくは彼の顔を(そして電話番号も)知らない。しかし、彼が現れた瞬間に彼だとわかった。
 下北のレコード店、ZEROのカウンターに「Lucid Dream EP 」は売っていた。このカセットテープがMars89にとって2作目らしい。
 ちなみにブリストルのレーベル〈Bokeh Versions〉は、最近は、EquiknoxxのTime CowとLow Jackによる「Glacial Dancehall 2」、70年代末から80年代にかけて活躍したUKのレゲエ・バンド、 Traditionによる『Captain Ganja And The Space Patrol』のリイシュー盤を出している。
 Mars89の音楽もドープな残響音が拡がるダブだ。ヤング・エコー的な折衷を感じる。
「影響を受けているというか、毎回新鮮なインスピレーションをもらうのはOn-U Soundsとかですね」、彼はオールドスクーラーの名前を挙る。「アフリカン・ヘッドチャージは大好きだし、(トレヴァー・ジャクソンが監修した)『Science Fiction Dancehall Classics』というコンピレーションも好きですね。レゲエは好きだけど、実験的なダブが好きなわけで、ブリストル・サウンドも好きですけど、そんなに意識しているわけじゃない」

 Mars89がDJをはじめたきっかけは、兵庫県にいたときの「最初に遊びにいったパーティでやってたDJがめちゃくちゃヘタクソで。これでステージ立ってるんだったら自分がやったほうがいい」と思ったからだった。18か19で、エレクトロのパーティだった。いざやってみると自分よりもうまいDJが多いことに気が付いて、それならまだ誰も知らないような音楽をかけようとUKのアンダーグラウンド・ミュージックに手を出すようになった。
 ただし、「クラブ・ミュージックにいく前は、クラウトロックやポストパンク、ノイズ/インダストリアル、民族音楽系のエスノサイケとか、そういうのを聴いていた」。こうした感覚が、2010年代の〈L.I.E.S〉やLivity Sound、あるいはアイク・ヤードなどとリンクしたのだろう。

 彼と話しているとじつにたくさんのアーティスト名やジャンル名が出てくる。わずか10分も話せば、彼がどうしようもないほど音楽にどっぷりつかった人間であることがわかる。しかし、「境界線はない」とMars89は言う。「雑食的なんですよ。和ものも聴きますよ。浅川マキも好きだし、グループ・サウンズとかも好きだったんで、ブルー・コメッツとか聴いてましたね。ドラムとかがすごくファンキーなのがよくて。テクノ・ポップ系というか、YMOの派生系のものも好きですね」
 ポップという言葉ほど彼の作品から遠く感じられるのは事実だが……

 「僕の作品は、DJとしても使いにくいし、リスニングとしても多くの人に向いているわけではないと思うんですけど」と彼も認める。「ただ、メディテーションになるかもしれないですね(笑)」
 Mars89が曲を作りはじめたのは2年前だった。「本当に軽いノリだったんですけど、知り合いが新宿のDuusraaでビート・バトルみたいなイベントをやっていて、優勝したらヴァイナルを100枚刷れたんですね。それに参加してみなよと言われて、ノリで参加してみて初めて曲を作りましたね」
 彼はその後自主でカセットテープ作品をリリースして、〈Diskotopia〉のパーティで知り合ったAquadab & MC Aに渡したカセットが〈Bokeh Versions〉の手に渡り、気に入られて、今回のリリースとなった。幻想的なアートワークは画家をやっている彼の弟によるもの。

 Mars89にとっての音楽は、すなわちレベル・ミュージックである。踊って自由になることが重要、それがメッセージになればいいと彼は言う。
 音楽以外では映画からの影響が大きい。「曲を作るときにストーリーを与えないと曲が作れなくて。それこそ映画のサントラとかああいう感じのイメージじゃないと作れないんですよね。そのときに夢なのか現実なのかわからないような世界とか、知らない街にいるような感じをイメージしていて。夢のなかでいま夢だとわかっている状態とかそういう世界をイメージしていましたね」

 彼にも訊いてみよう。東京のサウンドってあると思う?
 彼は答える。「いまはなくて、これからできてくるかなと思いますね」
 この答えは、ダブル・クラッパーズのShintaと同じ。Mars89はさらに具体名を挙げて説明する。「新しい動きとして面白いと思うのは、食品まつりさんですかね」
日本からシカゴのフットワークへの回答のように捉えられた食品まつりだが、圧倒的なオリジナリティでいまや国際舞台でもっとも評価されているプロデューサーのひとり。
 Mar89は続ける。「DJでは、セーラーかんな子ちゃんがおもしろいですね。彼女のDJは、毎回そう来るかという驚きがあって。DJとしてすごくユニークですね。ほかにDJでは、年上ですけど、100madoさんも好きです」
 若い世代に絞って言うと、他に彼は〈CONDOMINIMUM〉も面白いと言う。「なかでも名古屋の人なんですけど、CVNって人の音が好きですね。アジアだったらTzusing(ツーシン)っていう上海のテクノの人ももしかしたら歳が近いかもしれない。〈L.I.E.S〉からよく出している人で、すごくアジア的なサウンドをうまく使いながらカッコいい曲を作っていて。BPM90~130くらいまでいろんな曲を作っていてカッコいいですよ」

 かつてはほとんど客がいないForestlimitで、1 Drinkと数時間ぶっ通しのバック2バックをやった経験もあるMars89は、「DJをやるといつも最年少だった」というが、最近はようやくダブル・クラッパーズのような彼より年下が出てきた。「ずっと自分が一番下だったというのもありましたし、年は気にしなかったんですけど、最近は少し意識するようになりましたね」

  Mars89は現在、UKDやKNK WALKSらといっしょに渋谷のRubby Roomで定期的にパーティをやっている。
「トライバル・ミュージックとか民族音楽的なものを含んだダンス・ミュージックをやっているパーティがあったら面白いんじゃないかと思ってはじめましたね。ダンスホール系とか、アフロ系の音ですね。クンビアとか、南米のローカル・ダンス・ミュージック的なものを取り入れて、それをUKやUSのダンス・ミュージックと同列で扱うようなパーティがやりたかったんですよね。アフロのパーカッションを聴くと絶対だれでも踊りたくなるし。そのへんで飲んでいる人がフラッと入ってきたりすることも多いですよ」

  渋谷の道玄坂の脇道からダンスホールが聴こえたら、冒険心を出して入ってみよう。東京の未来が鳴っている。

※出演情報
毎月第一水曜日 Noods Radio ( https://www.noodsradio.com/ )
毎月第二木曜日 Radar Radio ( https://www.radarradio.com/ )

酎酎列車 vol.7 @galaxy銀河系
11.25(sat)17:00~23:00
door/2000(+1D)
LIL MOFO
Mars89
speedy lee genesis
荒井優作

セーラーかんな子
テクノウルフ+テンテンコ

ブリストルのレーベルから出た、Mars89「Lucid Dream EP」。

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■クソヤバいものをブチ聴かす──Modern Effect

後ろ向きなModern Effectのふたり。

言葉の入っている音楽をあんまり聴きたくないというのがいまは強くなってきている。

 今回のレポートで紹介するなかで、あらゆる集団からもっとも孤絶しているのが、目黒/世田谷の外れで日夜音に埋没しているModern EffectのBack Fire CaffeとDocumentary aka Smoke Fable。ドレクシアの“リヴィング・オン・ジ”がお似合いの、ふたりである。
 なにしろ彼らときたら16ヶ月間ただひたすら作り続け、アルバム16枚分の曲が貯まったものの、自分たちの音源をどう発表すればいいのかわかっていなかった。

「ただひたすら作ってましたね」とBack Fire Caffe。彼は声が大きい。その人柄は、表面上では、作品のダークさの真逆と言えそうだ。「歩いているときもiPhoneでフィールド・レコーディングして、それを家に帰ってからピッチを変えたりして曲にしちゃおうとか」
「それは1日のサイクルですよね」とDocumentaryが静かに付け足す。「仕事が終わって空いた時間はできるだけこっちに来てもらって。作る以外でも映画を見るでも美術館に行くでも」

 ふたたびBack Fire Caffeがしゃべり出す。「全部音を作るために生活しているという感覚になっていちゃったよね!」
  彼の声は、取材に使った喫茶店の全席に響き渡ったことだろう。「もうひとりルームシェアしているやつがいて、そいつと作っていて。自分も初めはiPadのアプリで作りはじめて、そこから突拍子もないものができたんですけど。それがとにかく攻撃的だったんで“アタック”っていうジャンルをつけたんですね。その“アタック”っていうジャンルでやろうよ、というところからはじまりましたね」
 こういうベッドルーム・テクノ話が、お茶の時間を楽しんでいるご婦人たちやカップルたちの耳に入ってしまうのが、公共的喫茶店の面白さだ。

 それはさておき、こう見えても、Modern Effectには閉塞的な傾向がある。SNSの類はいっさいやらないというModern Effectの音楽をぼくが聴けたのは、ある偶然からぼくの手元に届いた、ヤバいものでも入っているんじゃないかというそのパッケージにそそのかされたらであるが、聴いて最初に感じたのは、何もかもを拒絶している感覚だ。誰も信用しない、絶対に希望はない、清々しいまでのネガティヴィティ……見せかけの繋がりは要らないと。ふたりにはクラブやレイヴで遊んでいた過去を持っているが、それがつまらないと感じたからこそ彼らはそれらの場から離れ、そして孤絶した現在を選んだ。

 ここで彼らに影響を与えたと思わしき音楽/好きな音楽をいくつか列挙してみよう。D/P/I(彼らにとっての大きな影響)、OPN(ただし『Replica』以前、ぎりぎり許せるのは『R Plus Seven』まで)、ARCA(とくに『ミュータント』)、Emptyset(音源を送ったら返事をもらった)、デムダイク・ステア、ティム・ヘッカー、〈Triangle Recordings〉や〈Subtext Recordings〉から出ている音源……彼らは最近のベリアルも気に入っている。
 彼らが目指すのは「クソヤバいものをブチ聴かす」こと。Back Fire Caffeが静かに言う。「クソヤバいものをブチ聴かすというのと、無国籍なものを考えていきたいと思っていますね」

 それぞれ別の飲食店で働きながら生活費を得ているふたりだが、在日インド人の下でハードに働くDocumentaryは、その環境を楽しんでいる。日本のなかの日本らしくない場所が彼らには居心地がいいのだ。
 Documentaryが続ける。「言葉の入っている音楽をあんまり聴きたくないというのがいまは強くなってきている。言葉の意味が出てくると音を純粋に追えないというか。もともとは歌や言葉が入っているものが好きだったんですけどね」

  現在のModern Effectは、自分たちの音楽をどのように届けるのかを模索中だ。初期ヴェイパーウェイヴのように、彼らにはまだ、自分たちの作品を売る気がない。値段付けられずに悩んでいるのだ。たしかなのは、作り続けること。HDの容量の限界まで。
 こうした悶々とした現状を変えようと、最近彼らは自分たちのホームページを立ち上げた(https://www.moderneffect.net/)。ここで彼らの音源は聴けるし、bandcanpでも彼らの音源は無料で聴ける(https://moderneffect.bandcamp.com/)。これらの作品のいくつかはUSBにコピーされて、ビニールにパックされるわけだが、リスナーがそれを購入できる機会がこの先どのような形で実現されるのかは神のみぞ知るだ。
 これからどうなるのか予測のできないModern Effectだが、彼らは音楽を作る上でもっとも重要なことを知っている。好きだからやる。たとえダンスフロアから人が逃げだそうと、彼らにとって最高の音が鳴っていればいいのだ。

※今後の予定
1年で365作品アップ(予定だそうです)

彼らのUSB作品の数々。この怪しげなデザインに注目。

(※この取材は8月下旬にほぼおこなっています。筆者の怠惰さゆえに掲載が遅れたことを、協力してくれた3組のアーティストにお詫びします)
(※※もちろん、今回取り上げた3組以外にもいるでしょう。いまいちばん尖っている音を出している人〈DJ以外〉をご存じの方は、ぜひぜひ編集部にご一報をー)

Mount Kimbie × Kelly Lee Owens - ele-king

 ほらね。彼らがアルバムだけで終わるはずがないと思っていたんだ。そしたらやっぱり来ました。マウント・キンビー最新作『Love What Survives』収録の“You Look Certain (I'm Not So Sure)”を、なんとケリー・リー・オーウェンスがリミックスしています。マウント・キンビーのふたりは今回のアルバムを制作する前にかなりの量の音楽を聴き込んでいたようだけれど、その新作収録曲のリミキサーに、今年出たデビュー・アルバム『Kelly Lee Owens』で高い評価を得た彼女を起用するあたり、かれらの音楽に対する探究心はいまだ衰えていないようである(ケリー・リー・オーウェンスは、これから始まるマウント・キンビーの欧州ツアーのサポート・アクトにも抜擢されている)。要チェック。

label: WARP RECORDS
artist: Mount Kimbie
title: You Look Certain (I'm Not So Sure)

iTunes: https://apple.co/2l7iEdd
Apple Music: https://apple.co/2z0nyyS
Spotify: https://spoti.fi/2xYKK02

label: BEAT RECORDS / WARP RECORDS
artist: Mount Kimbie
title: Love What Survives

release date: 2017/09/08 ON SALE
BRC-553 ¥2,200(+税)
国内盤特典:ボーナストラック追加収録/解説・歌詞対訳付き

beatkart: https://shop.beatink.com/shopdetail/000000002180
amazon: https://amzn.asia/hYzlx5f
iTunes Store: https://apple.co/2uiusNi
Apple Music: https://apple.co/2t3YEeV
Spotify: https://spoti.fi/2uiwx

アルバム詳細はこちら:
https://www.beatink.com/Labels/Warp-Records/Mount-Kimbie/BRC-553

shrine.jp × Daniel Miller - ele-king

 地域密着文化フェスティヴァル、(( ECHO KYOTO ))。6月にジェシー・カンダを迎えて開催された同イベントですが、2回目となる今回は、京都の電子音楽レーベル〈shrine.jp〉の20周年記念企画。しかもスペシャル・ゲストとして、なんと〈Mute〉の創始者であるダニエル・ミラーの参加も決定! これはなんとも気になる組み合わせです。12月3日はぜひとも京都METROまで足を運びましょう。なお、〈shrine.jp〉は20周年を記念した全国ツアーも開催するとのことで、詳細は下記をご覧ください。

[11月29日追記]
本日、(( ECHO KYOTO ))のタイムテーブルが発表されました。こちらからご確認ください。また、イベント直前の12月1日(金)には、ダニエル・ミラーがDOMMUNEに出演することも決定(20:00~21:00)。弊誌編集長の野田努も出演します。お見逃しなく!

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(( ECHO KYOTO )) にMUTE創始者ダニエル・ミラーの出演が決定!
shirine.jp 20周年記念 × ダニエル・ミラー(MUTE)
2017.12.3 (Sun) @METRO
特別先行早割チケット、本日23日より発売開始!

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(( ECHO KYOTO ))
shirine.jp 20周年記念 × ダニエル・ミラー(MUTE)

12月3日(日)に京都METROで行われる (( ECHO KYOTO )) に、〈MUTE〉レーベル創始者のダニエル・ミラーの追加出演が決定した。なおダニエル・ミラーは、TOKYO DANCE MUSIC EVENT(11月30日~12月2日)にてカンファレンスへの登壇とWOMBでのDJ(12月1日)を行うことが決定している。

電子音楽界のパイオニアにしてゴッドファーザーであり、過去40年の音楽世界史における最重要人物のひとりであるダニエル・ミラーと、糸魚健一主宰の京都を代表する電子音楽レーベル〈shirine.jp〉20周年を記念してレーベルゆかりのアーティストが出演! 京都と世界の電子音楽が会場のMETROから京都盆地にこだまして、脈々と続く京都の電子音楽史にまた新たなページが加わることでしょう!

また本日23日(月)より2週間限定で特別先行早割チケットを発売する。

今年6月に行われた第1回目の (( ECHO KYOTO )) は、ビョーク、Arcaなどのビジュアルを手がけるジェシー・カンダによる「クラブを寺院化する」というコンセプトのインスタレーションが行われ大きな成功を収めた。今回が2回目の開催となる。

■公演概要
(( ECHO KYOTO ))
shrine.jp 20周年記念 × ダニエル・ミラー
2017/12/3 (Sun) @METRO
Open/Start 18:00
ADV ¥3,800 / DOOR ¥4,300 (共にドリンク代別途)

LINEUP:
ダニエル・ミラー (Daniel Miller)
Acryl (dagshenma + Madegg)
Hideo Nakasako
HIRAMATSU TOSHIYUKI
kafuka
Ken'ichi Itoi
masahiko takeda
TOYOMU

*出演者プロフィール詳細 https://trafficjpn.com/news/ek

★2週間限定!特別先行早割チケットを発売!!
 ¥3,300 ドリンク代別途
[受付期間:10/23 12:00~11/6 09:59] ←枚数限定!
※『特別先行早割お申し込み方法』→タイトルを「12/3 ECHO KYOTO 早割希望」として頂いて、お名前と枚数を明記して 宛でメールして下さい。

・・・11/6 10:00より発売開始・・・
ローソン Lコード:54946
ぴあ Pコード:348-946
e+ https://eplus.jp/
※前売りメール予約:
上記早割チケット期間以降は、前売予約として、ticket@metro.ne.jpで、前売料金にてのご予約を受け付けています。前日までに、公演日、お名前と枚数を明記してメールして下さい。前売料金で入場頂けます。

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世界有数の文化都市 京都、その豊かな文化土壌において、真のアーティストによる比類なき地域密着文化フェスティヴァルを開催し、日本国内、そして世界へ発信する。
ECHO/ 廻向(えこう):参加アーティストと地域が作り出す卓越した表現がこだまし、広く人々に廻らし向けられる。
https://www.facebook.com/ECHOKYOTOECHO/
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「MUTEは偉大なレーベルのひとつだが、その偉業はポップと実験の両立のなかでなしえたもので、ことエレクトロニック・ミュージックの発展においてはもっとも重要な役割を果たしている。1978年に創設されたインディペンデント・レーベルが、いまだに刺激的で、いまだに冒険的で、そして相変わらずポップであるということは、偉業というよりも、もはや奇跡といったほうが適切かもしれないが、しかし、それこそがMUTEというレーベルなのだ」--- 野田努 (ele-king)
https://mute.com/
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shrine.jp (シュラインドットジェイピー)
shrine.jpは、京都在住の電子音楽家 糸魚健一によるエレクトロニック・エクスペリメンタル・レーベルである。1997年に音楽への可能性への探究心を表現する為に発足された。これまでデザインとプロダクトを利用したメディア実験ともとれるリリースを繰り返してきている。
また、ダンスミュージックに特化するサブレーベルMYTHがある。shrine.jpが社、形あるもの、すなわちコンテンツ(内容)を主体とし、MYTHは話=コンテクスト(文脈)あるいはコンジャクチャ(推測)を示す。
www.shrine.jp

shrine.jpは20周年を記念し全国ツアーを行う。
日程は以下の通り。

shrine.jp 20th Anniversary Tour
12/2 shrine.jp 20th Anniversary Exhibition& Reception Party
@FORUM KYOTO

12/3 shrine.jp 20th Anniversary Tour in Kyoto
meets (( ECHO KYOTO ))
@METRO

12/21 shrine.jp 20th Anniversary Tour in Fukuoka
meets MIND SCAPE
@Kieth Flack

12/24 shrine.jp 20th Anniversary Tour in Sendai
Emotional electronic music for X’mas
@CLUB SHAFT

12/30 shrine.jp 20th Anniversary Tour in Tokyo
Grand Tour Final!
@KAGURANE

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