「OTO」と一致するもの

KM - ele-king

 KM の特徴は何かと考える。まず思いつくのはユニークなメロディライン。次はさまざまな音楽のエレメントを感じること。仮にヒップホップのトラックでも、同時にレゲエやハウス、ディスコなどを感じる。だから予測がつかない。同じことがビートにも言える。細かい要素が複雑に絡み合ってグルーヴを作っている。そして最後はメロディとビートを裏から支える分厚いベースだろう。単純なものがひとつもない。これが1曲の中に落としこまれる。ビート提供の場合は相手の個性に合わせるが、自分の名義だと KM の個性は全開になる。

 僕は音楽に驚きを求めている。別に根本から概念を変えるようなものでなくてもいい。ちょっとしたアイデア。言葉の響き、選び方、言い方、並び方、歌い方。音でも同じ。どこか似てるものより、どこか違うものがいい。アメリカっぽい音楽だったらアメリカの音楽を聴く。例えば、K-POP はいろんな国のトラックメーカーたちが共作していることが多くて、大枠はアメリカのトレンドに沿っているけど、あのビビンパのような雑な混ざり方は韓国ならでは。しかもそれがかっこいい。だから驚くし、面白い。グローバル化してるからこそ、ローカルに意味があると思う。いまの時代はサンプリングが当たり前。だけどアウトプットの段階では絶対的な個性が必要だ。最近 Black Sherif の “Second Sermon” というMV を見た。何言ってるかさっぱりわからなかったが、どうやらガーナのラッパーらしく、謎の凶暴さがあって最高だった。ネットで世界中はつながってはいるが、結局現地に行かないとわからないことはたくさんある。音楽はそのストリートの息づかいみたいなものを如実に感じることができる。

 さて私は神奈川で生まれ、神奈川で育って、なんなら神奈川以外には住んだことがないので、海外の人が KM をどう聴くのか検討もつかない。だが彼の音の精緻さ、混ざり方の緻密さ、つまり偏執的なまでにコツコツと丁寧に作られた音は日本的なのではないだろうか。

 正直『EVERYTHING INSIDE』は全曲好きだ。Daichi YamamotoJJJCampanella田我流、C.O.S.A.、SPARTA といった大好きなラッパーが最高のスピットを聴かせてくれているし、Lil’ Leise But Gold、HNC&MANON、NTsKi はプロデューサーとして個性を引き出す力を感じさせる。(sic)boy、LEX、Kvi baba、Taeyoung Boy(現:TAEYO)といった若手が歌う楽曲はポップ・ソングとして非常に優れている。

 だがこの1曲と言われれば、迷うことなく “Filter (feat. JJJ & Campanella)” を挙げる。

 実を言うと、今年の頭くらいまでは多すぎる情報量の中から自分に合う音楽を見つけられなくて、それが自分のシングルタスクの脳みそと感性の劣化によるものだと思って、結構凹んでいたのだ。だけど “Filter” を聴いた瞬間に拳を握った。「俺が聴きたかった音楽はこれだ!」と。

 世界中のダンス・ミュージックに影響を受けていながらも世界中のここにしかない日本語の曲。イントロではUKファンキーを想起させるアフロなリズムに四つ打ちが重なる。そこに Campanella の「吸い込む空気 緑色」というかっこよすぎるラップと不思議と頭に残るメロディが絡み合った瞬間、胸が締め付けられた。

 そこから深いキックにマーチング・バンドのようなスネアと、規則的に刻むクラップなどがエネルギーを増幅させていく。Campanella と JJJ が掛け合うブリッジでは、それまで控えめだったベースにエフェクトがかかってメロディに呼応する。さらにフックでは裏に入るレゲエ的なリフレインと噛み合って楽曲をドライヴさせる。しかもこの曲は単に足し算しているのではなく、基本要素はほぼループで、抜き差しと強弱、エフェクトで曲を展開させているのだ。

 ちなみに私は “Filter” の実演を Campanella のワンマンで目撃した。その高揚感は想像以上に凄まじいものだった。爆音で鳴る KM のビートでラップする Campanella と JJJ を見て、ちょっと凹んでた時期もあったけど、もはや理屈じゃなくて「俺、やっぱラップが大好きだ」と思った。

 “Filter” で特に好きなのはフックのリリック。「世界は壮大らしい」。そう。世界は壮大なのだ。驚きを求めているにもかかわらず、僕はあまりに圧倒的な情報量の前に、どうすることもできず途方に暮れてしまっていたのだ。だがそれも捉え方で変わる。ネットに溢れかえる聴きれないほどの新譜は喜びなのだ。『EVERYTHING INSIDE』。解釈は全然間違ってるかもしれないけど、僕はそう捉えた。もしもまだこのアルバムを聴いてない人がいるなら、騙されたと思っていますぐ聴いたほうがいい。というか聴け。

Daichi Yamamoto - ele-king

 『Andless』は Daichi Yamamoto が表現者として、自身の殻を破るための作品だった。タイトルは「undress(服を脱ぐ)」をパラフレーズしたもの。生々しい内面の告白を、アブストラクト・ヒップホップやグライムなどUKのダンス・ミュージックをアップデートしたサウンドに乗せて、ラップ、レゲエ、ソウルなど多様な歌唱法を複雑に使い分けて楽曲に昇華していった。個人的にはリリックもトラックも “How”(Produced by Kojoe!)が特に好きだ。

 2nd アルバムとなる『WHITECUBE』は前作をさらに一歩前に進めた作品だ。Apple Music のレヴューによると本作は「白い立方体のアートスペースをイメージ」したという。ならば、そこで展示されている作品のテーマは「混乱」「愛」だろう。収録された13曲は、すべてベクトルが異なる愛を多角的に表現している。

 展示会場の入り口にあたる1曲目の “Greetings” の冒頭でシャウアウトしてるのはなんと Daichi の実父であるニック山本。嫌が応にも親子の愛を感じた。続く “Love+” では古橋悌二のインタヴューがサンプリングされる。古橋は、京都出身の芸術家で、アーティストグループ・ダムタイプの中心メンバーだった。HIV感染が明らかになり、1995年に35歳で敗血症で亡くなるまで、愛、性、差別、資本主義、搾取、矛盾、混乱をテーマに、繊細で、複雑で、洗練されていて、同時に猥雑でもある作品を発表していた。不勉強ながら “Love+” で古橋を知った。

 一夜漬けの私が古橋の多くを語るのは失礼だ。だがダムタイプの「S/N」を見て、“Love+” を聴くと、Daichi は古橋の芸術観に共感し、加えて、サンプリングやローカリズムというヒップホップのルールを用いて、26年前から変わらぬ問題に改めて一石を投じる意図があるように感じた。

 そして興味深いことに、続く “Simple” で客演の釈迦坊主はクラブで見つけた女の子を「お持ち帰り」しつつ、最近会えてない友達に「死んだりしてなきゃいいな」と思いを巡らせる。大上段の「愛」においては矛盾しているかもしれないが、それも確かに愛なのだ。

 『WHITECUBE』ではこういった矛盾が続く。それを否定も肯定もしない。あるがままを受け入れる。以降アルバム中盤は音楽についてのトピック。4曲目 “Cage Birds feat. STUTS” は音楽がもたらす解放性をバレアリックな音で肯定的に表現するが、次の5曲目 “Ego feat. JJJ” では一転して攻撃的なドリルでエゴイズムの暗黒に浸る快楽を歌う。ちなみにこの2曲だけでも1本原稿が書けるくらい素晴らしい。特に感動したのは、“Ego” で Daichi が「投げる爆弾は檸檬/飛ばす果汁まるでVenom」と文学とポップ・カルチャーをごちゃ混ぜにした猥雑なラップをすれば、JJJ はスペイン語の「Dinero, dinero, dinero」(金、金、金)と「消えろ消えろ消えろ」で踏んで応える。フレッシュを連べ打ち。かっこいいを畳み掛ける。

 そしてここから構成はさらに複雑になる。grooveman spot と Kzyboost による陽気なウェッサイチューン “Wanna Ride (The Breeze)” では「憧れていたThug」と歌う。この曲と対になっているのは9曲目 “Pray feat. 吉田沙良(モノンクル)”。幼い頃にジャマイカで経験した Thug の行き着く先の究極が描かれる。間に挟まれる “People” “Kill Me” は制作で向き合う自身の矛盾が対になっている。

 本作の愛と矛盾の複雑な構図は、10曲目 “Chaos” のフック「今日君は間違いまた強くなる/それだけの事/もがいていこう/このChaosの中で/後は振り向かずに/Going far far away」に集約されていく。

 また私は “Chaos” の「エンゼルフレンチみたく白黒じゃない/問題がC.R.E.A.Mを挟んでるみたい」というラインにも膝を打った。「C.R.E.A.M」とは言わずもがな「Cash Rules Everything Around Me」。つまり現金。おそらく地球を破壊するレベルまで膨張を続ける資本主義社会への考察だ。偶然だろうが、「Love+」でサンプリングした古橋もダムタイプの公演「S/N」で、HIVに感染した自身が(製薬会社が喧伝する)高価な “エイズ特効薬” を飲み続けることを、「サイエンスの始めた新しいビッグビジネス」と皮肉るシーンがある。

 生死すらビジネスにする現実。そんな Chaos を、あえて複雑な構造のアルバムにすることで、表現したように思えた。そんな世界を生きる私たちに「Paradise Remix Feat. mabanua, ISSUGI」で ISSUGI は言う。「外面より内面の居心地優先して作り出すParadise/お前だけが知るエントラスはお前の為だけにある、他じゃない」と。

 もしかしたら楽園の入り口は人と違うかもしれないし、昨日まで自分が思っていた答えとも違うかもしれない。だが、他ならぬあなただけのもの。こじつけかもしれないが、同じく “Paradise” の「見えないpressureにがんじがらめじゃもったいない/楽しめ誰のLife?」というラインもそんな思いで聴いた。

 “Paradise” を踏まえると “maybe” のフック「足りないもの探し疲れたら/足りてるもの数えてみたら/答えは手のひらの中/でもわからず頭Boom Shakalaka」も肯定的に響く。またさまざまインタヴューを読むと、本作の制作は「頭抱えて立ち止まるlegs」(“maybe”)で、なかなか進まなかったという。散々立ち止まってようやくたどり着いたのが、“Paradise” であり、“maybe” であり、“Love+” の「(芸術は)自分をもっと心の底から動かす原動力として捉えたい」という古橋の言葉だった。

 創作の苦しみ、自身と向き合う困難を、この混沌を極める現代社会になぞらえて表現した。それが『WHITECUBE』。ラストの “Testin’” はストレートなラヴ・ソングだ。Daichi Yamamoto にとって創作とは広義の愛と同義。親子、恋人、友人、動物、音楽、映画、読書……。自分を突き動かすピュアなパワー。当然そこに大小はない。主義主張とも違うもので、消費の対象にもなりなえない、神聖なもの。それはつねに自分のなかにあるものなのだ。

LNS & DJ Sotofett - ele-king

 毎回そのリリースが多くのディガーたちを震撼させている、ダンス・ミュージックのレフトフィールドをひた走るDJソトフェット、そんな彼とここ数年コラボを重ねるカナダはヴァンクーヴァ出身の LSN こと、Laura Sparrow のコラボ・プロジェクトのファースト・アルバム。リリースは30周年を迎えるベルリン・テクノの牙城、驚きの〈TRESOR〉より。これが同レーベルのリリースというのも納得の、デトロイト・テクノやエレクトロへの偏愛をひしひしと感じる、なんというか体幹と骨格のしっかりしたテクノ・アルバムの傑作に仕上がっています。

 ソトフェットと言えば実兄のDJフェット・バーガーとともに、リンドストロームプリンス・トーマスらとともに2000年代中頃のノルウェイのディスコ~ハウス・シーンから現れた逸材で(よりアンダーグラウンドな存在ではありますが)。ハウス~ディスコ・レーベル〈Sex Tags Mania〉を中心にその傘下や派生レーベル、さらには周辺のレーベルを束ねたディストリビューター、〈Fett Distro〉などを運営。とにかく活動は多岐にわたり、兄弟ともにそのDJプレイを筆頭に、そのリリース、〈Fett Distro〉取り扱い商品にしても、もはや “オブスキュア” という言葉ですらも薄くにじんでしまうほどの、膨大なレコード・アーカイヴの音楽的背景に裏打ちされた、もう本当に絶妙なラインを攻めてくるそんな音楽性に溢れております。

 ソトフェットの音楽性をひとことでくくるのは本当に難しいのですが、一応、これまでのリリース・キャリア的にはハウスが中心にありながらも、強烈なアシッド・ハウスやエレクトロ、さらにはダブやダンスホール、トロピカルなジャズ、ときにライヴ・エレクトロニクスやドローンなどなど、とにかくさまざまなスタイルを節操なくリリース。そのあたり、どこか膨大な自身のライブラリーに「ないもの」を作っているような感覚ではないでしょうか。まさにディープなディガーだからこそ歩めるレフトフィールドが主戦場といった感じでしょうか。でも変過ぎて無視されるような部類ではなく、みんなが注目し続けて、そのリリースが突如としてシーンを動揺させ、ザワつかせる、そんな存在感を放っています。
 音楽性というところで言えば、どこにも属さない “外し” のジャンク~ローファイ感が生み出す強めのサイケデリアと、その名義なども含めたユーモラスな “抜け” の良さでしょうか。〈Honest Jon's〉からのリリースとなった実質の 1st アルバム『Drippin' For A Tripp (Tripp-A-Dubb-Mix)』(2015年)ではスペース・ロック的な電子音から、クンビアなどの要素も感じさせるトロピカルなハウスやディスコを展開していて、わりと彼の音楽性を知るには良い標本ではないでしょうか。といってもこれまたLPオンリーなので入手が……一応、彼の Bandcamp 〈SO-PHAT〉で作品を聴けないこともないですが、むしろ混乱をきたすような断片性が支配していて、そんなところも彼らしいのですが。

 対して LNS はエレクトロやアシッド・ハウスなど、初期のエレクトロニック・ダンス・ミュージックが持つ、チープなマシーン・グルーヴ/サウンドの虜といった感じでしょうか。わりとテクノやインダストリアル~実験的な電子音楽寄りのリリースを繰り広げるソトフェットのレーベル〈Wania〉にて、これまでソロ、コラボともにリリースしています。

 で、そんなふたりによるコラボ、これまでのリリースは4枚ほどあり(1枚はスプリット)、レトロなテクノへの思いを感じさせる、そんなリリースではありましたが、本作『Sputters』ではさらに一歩進み、前述のように本腰を入れてテクノへの偏愛を感じさせる作品となっています。簡素に打ち鳴らされるドラムマシンと最小限のシンセ・リフによる「これぞテクノ」な世界観を展開しています。ディープ・エレクトロニクス “Enter 323” の不穏な響きにはじまり、ドラムマシンの絶妙な音色変化と抜き指しでマシーン・グルーヴを醸し出し、シンセ・パットで深海を漂う “K.O. by E-GZR”、さらにこれまたドレクシア系のエレクトロがダブへと連結したような “El Dubbing”、そしてそのダブ感を引き継いだ骨太なミニマル・テクノ “Dúnn Dubbing”。このあたりのダブ感は、もはや使い古されてベタになってしまったベーシック・チャンネル由来のソレではなく、1990年代後半のハード・ミニマル勢、例えばUKのバンドゥールやスウェーデンのカリ・レケブッシュあたりを彷彿とさせる感じもあり、新鮮な響きがあります。
 インダストリアルでサイケデリックなエレクトロ “Vitri-Oil” や “Sputtering”、“Cellular Coolant” といった楽曲は、これまた “El Dubbing” と同様ドレクシアの影響を感じさせるサウンドで、その他ではカール・クレイグやそのUKのフォロワーたちのサウンドあたりを思い起こせる美しいテクノ “Shim” などなど、やはり本作には彼らのデトロイト・テクノへの偏愛を感じさせる音源が多い印象があります。彼ら “らしさ” が爆発している音源と言えば “The 606” で、ローランド TR-606 を売り払おうとした LNS をたしなめるために、その性能を引き出し作り上げた作品らしいのですが、エレクトロ・スタイルではじまり、後半のふんわりとサイケでアフロなディープ・ハウス感が重なっていくあたりは、ソトフェットのこれまでのハウス・サイドな作品のファンとしてはグッとくる感じではないでしょうか。

 どの曲に関しても、ドラムの打ち込みの妙技のグルーヴとミニマルな “量” をキープするシンセ、そしてエフェクトを含めたミキシングで聴かせてしまう、まさにテクノの “うまみ” が凝縮した作り。なんというかとにかくストレートにかっこいいテクノ・アルバムなんですね。どちらかと言えば、これまでの作品性を考えると LNS の音楽性にソトフェットが寄り沿った作品とも言えそうですが、よりチープなアシッド&エレクトロ色の強い、彼女のソロ作品を考えれば、やはりこのテクノ・サウンドはユニットの妙が出ていると考えるのが妥当でしょう。また、膨大な音楽的背景のなかから彼らがいま選んだ、絶妙な取捨選択の末に作られた作品であるというのは、これまでの作品を考えると明白で、彼らのこれまでのレフトフィールドなリリースを知れば知るほど、その活動総体にも唸らせられる、そんな作品でもあります。

Shintaro Sakamoto - ele-king

 昨年7インチとしてリリースされた坂本慎太郎 “ツバメの季節に” のMVが公開されている。スーパー8mmフィルムで撮影された映像が独特の雰囲気を醸し出しているが、監督はなんと、昨年『エクスネ・ケディと騒がしい幽霊からのコンタクト』という野心的なアルバムを送り出した井手健介。マスク=仮面をかぶった坂本が都内をうろつく様は、コロナ時代へのリアクションのようだ。味わい深いヴィデオです。

 なお、同じく7インチとして昨年リリースされていた「好きっていう気持ち」のB面、“おぼろげナイトクラブ” のMVも2週間前に公開されたばかり。こちらも必見です。

坂本慎太郎、2曲連続MV公開! 第2弾は「ツバメの季節に」MV公開!

昨年7inch×2枚とデジタルでリリースし、先日海外のRSDで12inchとして再リリースしたEPより、第一弾の「おぼろげナイトクラブ」に続いて、「ツバメの季節に」のミュージック・ビデオが完成致しました。

監督・撮影・編集は自身もミュージシャンとして活動する井手健介。今回のMVもスーパー8mmフィルムで撮影されました。

第一弾MVは、マスクをした坂本が失われたナイトライフの幻影を眺めているような「おぼろげナイトクラブ」、
そして、今回の第二弾MVは、マスクをした坂本が昼間の東京をひたすら徘徊する「ツバメの季節に」。

どちらもコロナ禍で製作された楽曲のイメージを、井手監督が昼と夜の対比と8ミリフィルムの質感で見事に表現しました。

第2弾MV
- ツバメの季節に / 坂本慎太郎 (Official Music Video)-
https://youtu.be/zaSwGfCouMM

第1弾MV
- おぼろげナイトクラブ / 坂本慎太郎 (Official Music Video)-
https://youtu.be/83jO9Ocho2c


[リリース情報]

The Feeling Of Love / Shintaro Sakamoto

M-1: The Feeling Of Love (好きっていう気持ち)
M-2: Obscure Nightclub (おぼろげナイトクラブ)
M-3: By Swallow Season (ツバメの季節に)
M-4: Don't Tinker With History (歴史をいじらないで)

Written & Produced by Shintaro Sakamoto
Recorded, Mixed & Mastered by Soichiro Nakamura @ Peace Music, Tokyo Japan 2020

Vocals, Electric, Lap Steel. Keyboard & vocoder: Shintaro Sakamoto
Bass & Chorus: AYA
Drums, Percussion & Chorus: Yuta Suganuma
Flute & Soprano Saxophone: Tetsu Nishiuchi

Digital Links (now available):
https://virginmusic.lnk.to/TheFeelingOfLove

* 国内では2020年に7inch×2枚、海外では12inch vinylで2021年7月17日にフィジカルリリース。デジタルでは4曲とも配信中。

●坂本慎太郎プロフィール 

1989年、ロックバンド、ゆらゆら帝国のボーカル&ギターとして活動を始める。
2010年ゆらゆら帝国解散後、2011年に自身のレーベル、”zelone records”にてソロ活動をスタート。
今までに3枚のソロ・アルバム、1枚のシングル、9枚の7inch vinylを発表。
2017年、ドイツのケルンでライブ活動を再開し、国内だけに留まらず、2018年には4カ国でライヴ、そして2019年にはUSツアーを成功させる。 
今までにMayer Hawthorne、Devendra Banhartとのスプリットシングル、2019年には、ブラジルのバンド、O Ternoの新作に1曲参加。
2020年、最新シングル『好きっていう気持ち』『ツバメの季節に』を7inch / デジタルで2か月連続リリース。
2021年、Allen Ginsberg Estate (NY)より公式リリースされる、「Allen Ginsberg’s The Fall of America: A 50th Anniversary Musical Tribute」に参加。
様々なアーティストへの楽曲提供、アートワーク提供他、活動は多岐に渡る。 

official HP: www.zelonerecords.com

●井手健介プロフィール

音楽家。東京・吉祥寺バウスシアターの館員として爆音映画祭等の運営に関わる傍ら、2012年より「井手健介と母船」のライヴ活動を開始。様々なミュージシャンと演奏を共にする。
バウスシアター解体後、アルバムレコーディングを開始。2015年夏、1stアルバム『井手健介と母船』を発表する。2017年には12inch『おてもやん・イサーン』をリリース。
その他、映像作品の監督、楽曲提供、執筆など多岐に渡り活動を続ける中、2020年4月、石原洋サウンドプロデュース、中村宗一郎レコーディングエンジニアのタッグにより制作された、「Exne Kedy And The Poltergeists」という架空の人物をコンセプトとした2ndアルバム『Contact From Exne Kedy And The Poltergeists(エクスネ・ケディと騒がしい幽霊からのコンタクト)』をリリース。連作として12inch『エクスネ・ケディの並行世界』、ライヴアルバム『Strolling Planet ’74』を発表する。

official HP: https://www.idekensuke.com

interview with 食品まつり a.k.a foodman - ele-king

 早口である。食品まつりはとにかく早口である。同じ副詞を繰り返しながら異なる内容に切り替わっていくしゃべりはさながらジュークにも等しい。ジュークみたいにしゃべるからジュークをつくるようになったのか。それともジュークをやっているうちに話し方もジュークみたいになったのか。副詞を多用せず、主語と述語の結びつきをもう少し明確にすれば黒柳徹子のようなしゃべり方になるのかもしれないけれど、そのようにする必要は感じられない。黒柳徹子のようにしゃべると音楽性が変わってしまう気がするということもあるけれど、慌てたようにしゃべり、人と話をするときに焦りがちな食品まつりが、今回のように「やすらぎ」というコンセプトを掲げることには自然と説得力を感じるからである。ジュークなのに「やすらぎ」。このような矛盾した命題をクリアーしていく、その特異な音楽性。あるいは変革の予感。そして、何よりも食品まつりはいま、日本のアンダーグラウンドから世界に向けて独自の音楽的ヴィジョンを発信し、日本からオリジナルな音楽が生まれるという実績を積み重ねている最中なので、黒柳徹子にかまけているヒマはないのである。サン・アロウのレーベルからリリースされた『ARU OTOKO NO DENSETSU』から2年10ヶ月、〈ハイパーダブ〉から新作をリリースした食品まつりに換気のいい部屋で話を訊いた。

コロナになって、ライヴもあまりできなくなって〔……〕深い意味もなくて、アジフライをSNSにアップしたりして、そういう日常の楽しみの比重が大きくなってきたというかな。身の回りの楽しみというか。

チャレンジャーですよねー。

食品まつり(以下、食まつ):そう言っていただけると。

真価がわかるのは2~3年後かなという気がするぐらい、戸惑いもあります。

食まつ:ああ、そんな。

こんなに変えちゃうものかなという……思い切りが良すぎて。

食まつ:はい。

これは制作期間は? 『ARU OTOKO NO DENSETSU』が終わってから?

食まつ:そうですね。『ARU OTOKO』が終わって、制作をはじめたのが去年の7月ぐらいからなんですけど、だいたい1ヶ月ちょいぐらい。

早いんですね。『EZ MINZOKU』はコンセプトを決めてつくり込んだもので、『ARU OTOKO』は何も決めないで思いつくままにつくったということでしたけど、今回は?

食まつ:今回はコンセプトがあって、まず音的な面は、自分が20代前半にギターとパーカッションで友だちと名古屋の路上で演奏していた時期がけっこうあったんですけど、友だちがギターをじゃかじゃか鳴らして、僕がそれに合わせてパーカッションというか、小さなタイコを合わすみたいな。そんな感じでやっていて、たまに自作の曲もやったりして、あんま考えもナシに路上で遊んでただけなんですけど、お酒を飲みながらやっているとセッションみたいになって、パカパカやってると通りすがりの酔っ払いも入ってきたりして。

(笑)。

食まつ:それが楽しかったという記憶があって。そんな大して上手くもないんですけど、やっているうちにトランス感が産まれる気がして。

トランスということは、人が聞いてるとかじゃなくて……

食まつ:自分たちがただ楽しくなって。上昇していく感じになって。それが面白いなって。で、これを打ち込みでやったら面白いんじゃないかなというアイディアはけっこう前からあったんです。そういうのがボンヤリとあって。それがひとつ。で、コロナになって、ライヴもあまりできなくなって、最初はちょくちょく名古屋のクラブには遊びに行っていたんですけど、そういう機会もなくなって。

うん。

食まつ:で、家の周りとかしか行くところがなくなって、自分は名古屋の外れに住んでるんですけど、その辺をうろうろしてたら、高速道路の入口があって、パーキング・エリアに裏から入れるというのを発見したんですね。「裏から入れるじゃん」と思ってパって入って、で、食堂があったんで、ちょっと入ってみようと思って、なんとなく頼んだのがアジフライで……

あー、ツイッターであげまくってましたね。

食まつ:「アジフライ、美味しい」ってなって、そこからハマっちゃって。週5ぐらいの勢いでパーキング・エリアに行っちゃって。

週5(笑)。

食まつ:そう。で、まあ、深い意味もなくて、アジフライをSNSにアップしたりして、そういう日常の楽しみの比重が大きくなってきたというかな。身の回りの楽しみというか。

今回のアルバムで意識したのは全曲同じように聞こえるということなんですよ。〔……〕自分の好きなアルバムというのは、似た感じの曲が並んでるのが多いなというのがあって。ベーシック・チャンネルとか。

なるほどコロナの影響なんですね。

食まつ:そうですね。そっから入っていって、そんなことやってるうちに、やっぱアルバムをつくんなきゃいけないなってなって。なんとなくボンヤリと自分の中で2~3年に1枚つくんなきゃいけないかなというのがあって。

けっこう空きましたもんね。

食まつ:そうなんですよ。それでパーカッションとギターのアイディアと、今回、いろいろと日常で経験した楽しいことを合わせた感じは面白いかなって。

20代前半に感じたことを振り返るというノスタルジーではなく?

食まつ:そうですね。ギターとパーカッションを使うということだけ決めて。

確かに “Yasuragi” “Shiboritate” “Parking Area” “Minsyuku” といったあたりはギターありきの曲だと思いました。

食まつ:そうですね、ギターのじゃかじゃかした感じやパキパキした感じで。

自分で弾いて?

食まつ:いや、プラグ・インとサンプリングを分解して組み替える、みたいな。自分ではぜんぜん弾けないので(笑)。押尾コータロー、ヤバいなとかも思ってたりしたので。バカテクの。

全部、リズム・ギターですよね。リズム・ギターに対する強い関心が?

食まつ:そうですね。まさにリズム・ギターですね。

『ARU OTOKO』がすごくいいと思っていたので、最初は「え?」と思ったんですけど……

食まつ:(笑)。

一番違うのはなんだろうと思ったら、メロディがなくなってるんですね。シンセが入ってなくて、そのせいなのか、シュールな感じがしないと思ったんですよ。『ARU OTOKO』にあった凄みがなくなって、即物的になってるんだと。音だけが置かれていて、精神的な部分を膨らませる気がないなって(笑)。

食まつ:かもしれないですね。音自体はフィーリングでつくってるだけだったんですけど、今回のアルバムで意識したのは全曲同じように聞こえるということなんですよ。

全部同じ? そうだったかなあ(笑)。

食まつ:そういうイメージだったんですよ(笑)。

自分ではそうなんだ? “Sanbashi” はまったく違うと思うけど。

食まつ:ああ、あれはそうですね(笑)。自分の好きなアルバムというのは、似た感じの曲が並んでるのが多いなというのがあって。ベーシック・チャンネルとか。大体、似た感じじゃないですか。

一堂:(笑)

パラノイアックにやりたいんだ?

食まつ:今回は統一感を持たせたくて。『ARU OTOKO』がいろんな世界に行ってたんで、つくってる期間も今回は短めだったし、夏だったので、汗かきながらいろんな場所に行って集中してつくっていたということもあるのかなって。記憶としては曲をつくってるというより汗だくになって自転車で走ってるという記憶の方が残ってるんですよ。めちゃくちゃ日焼けして。曲つくってるのに、肌が黒いっていう。

一堂:(爆笑)

食まつ:「どういうこと?」っていう。

いいじゃないですか(笑)。

食まつ:体も引き締まってきて(笑)。つくりながら面白いなって思ってて。

コロナっぽくないですねー。

食まつ:そうですね。健康的になって。

僕は、今回はコンセプトがあるとしたら日本の伝統的なリズムをテーマにしたのかなと思ったんですよ。

食まつ:それに関してはなんも考えてなくて。

そうなんだー。“Michi No Eki” がお経を読むときのリズムに聞こえたり、“Numachi” はまた三三七拍子やってるなーとか、“Food Court” は聴くたびに印象が変わるんだけど、チンドン屋っぽく聞こえたりね、〈ハイパーダブ〉からリリースするにあたって日本のリズムを海外のリスナーに意識させてやろうと考えたのかなって。

食まつ:無意識に出たのかもしれないですけど、手癖というか、自分がよく使うパターンというか、あと、けっこう、間(ま)を意識したところはあったかもしれないです。

日本のリスナーよりもイギリスの人にはどう聞こえるのか興味あるというか。

食まつ:ああ、確かに。

コロナで困ってるミュージシャンは多いと思うんですけど、ユーチューブで楽器の弾き方や解説をはじめた人がたくさんいて、そのなかでロサンジェルスに住んでる日本人のジャズ・ドラマーの人が日本のリズムについて解説していた動画あったんですよ。

食まつ:はい。

いろんな国から来てる人たちと演奏する機会が多いから、みんな自分の国のリズムについて話すのに自分だけ日本のリズムがわかっていなかったと。悩んじゃったらしいんですよ、「お前の国のリズムは?」と訊かれて。

食まつ:なるほど。

それで、その人が見つけたのが千葉県のお寺でお経を読んでいる動画で、言われてみるとヘンなリズムなんですね。カカッカッカッ……みたいな。

一堂:(笑)

確かに面白いリズムなんですよ。西洋のリズムではないしね。食品さんもジュークから入って、洋楽のリズムでスタートを切ってるわけだから、日本のリズムを意識すると、今回の作品みたいになるのかなあと思って。

食まつ:ああ。そう言われるとそんな気もして来ますねえ。

でも、意識的ではなかったんですね。

食まつ:そうですね。日本のビートを意識したのは三三七拍子だけでした。つーか、あんまり意識してしまうと、そのままになってしまうというか。

パラパラとか阿波踊り的な。そこが日本的だなって。上半身だけで踊る感じ。

食まつ:そうかもしれないですね。

ベースを入れないせいもあると思うんだけど、そのことにはアンビヴァレンツな感情もあるんですけど(笑)。

食まつ:このアルバムをつくる前にUKの CAFE OTO っていうヴェニューがあって、ロックダウンで困っているミュージシャンを救済する意味もあるんですけど、そこがやってる〈タクロク〉というレーベルから去年、僕も「SHIKAKU」というEPを出していて。それがちょっと今回のアルバムの青写真的な意味もあって、カクカクとしたビートをつくりたいというコンセプトで。全体にカクカクしてて(笑)。それをつくったことがアルバムに影響してるなあと自分でも思うんですけど。

うん。「ODOODO」みたいなEPとはぜんぜん違いますよね。よくこんなにつくり分けられるなって。

食まつ:あれは〈マッド・ディセント〉から出てるし、もうちょい広い層に聞いてもらいたいなというものなので。あんまりやってなかったような曲もやってみたりして。ハウスとか。実験で。

そうでしたね。

食まつ:いままで聞いてなかった人からも「よかったよ」って声かけられたんですよ。

広がりがあったんだ。最後に入ってた “Colosseum” というのは何かのサンプリングなんですか。あのメロディは個人的にツボだったので。

食まつ:あれはサンプルを細かく切って並べる感じです。

ああ。じゃあ、ああいうメロディの曲があるわけじゃないんだ。

食まつ:そうですね。

でも、今回は『YASURAGI LAND』から完全にメロディをなくすと。それは初めから決めてたんですね。

食まつ:あんまり意識してなかったですけど、言われてみると確かにメロディはあんまりないか……

まったくないですよ。意識していないなんてスゴいなー。

食まつ:言われてみるとそうですね。

一堂:(笑)

食まつ:自転車で走ってたのが必死だったという記憶の方が濃くて。

一堂:(笑)

そうかもしれないけど、最後に家でトラック・ダウンとかするわけですよね。そのときに物足りないとは思わなかったと。

食まつ:そうですよね(笑)。

満足してるんですよね(笑)。

食まつ:そうすね(笑)。

一堂:(笑)

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「休んで下さい」という感じですね。座敷とかで寝転んでお茶でも飲んで……みたいな。

タイトルが「やすらぎ」じゃないですか。いま、脳内物質はドーパミンじゃなくてオキシトシン志向だというトレンドというか、傾向がありますけど……

食まつ:いや、なんか、「やすらぎランド」とかありそうじゃないですか。地方には。

東京以外の雰囲気は僕はぜんぜんわからないんだけど、そうなんだ?

食まつ:ありそうなんですよ。「やすらぎランド」って響きもいいし、あとまあ、ゆったりした曲もあるし。だったら『YASURAGI LAND』かなあって。

実際に「やすらぎランド」を建てちゃったらいいんじゃない?

食まつ:そうすね(笑)。

僕の印象だと東京の中心よりも、その周辺の方がシャレた名前を店につける気もするんだけど。「シャトレーゼ」とか。

食まつ:ああ、地方とか田舎の方ががんばっちゃうのかもしれないですね。

東京の方がダサい名前が多いような……名古屋だとなんのイメージもないんだけど。

食まつ:ああ。わけのわかんない名前の店もいっぱいありますよ(笑)。

まあ、でも、そのタイトルにするということは、「ここに来て安らいで下さい」ということなんですよね。

食まつ:「休んで下さい」という感じですね。座敷とかで寝転んでお茶でも飲んで……みたいな。

最初、タイトルだけ見たときに、『ARU OTOKO』からシンセが醸し出す雰囲気が受け継がれてるのかなと予想したんですよ。アンビエントっぽいような。でも、実際にはリズムがチャカポコ来たなっていう(笑)。

食まつ:確かにそうすね(笑)。

まあ、でも、それが和風のリズムに聞こえたところで、まったく違うアルバムだなと思って。それこそYMOが出てきたときに「テクノお神楽」と評されたことがあったんですよ。それに倣うと「ジュークお神楽」みたいだなあというか。実際にはどこもお神楽じゃないんだけど。

食まつ:ああ、なるほどー。

まあ、日本っぽいニュアンスがあるということですよ。でも、それで「ジューク感」があるのがスゴいというか。

食まつ:今回は割にあるかもしれないですね。

意識しなくても「和風が滲み出るのはいい」と、コムアイさんも理想のように言ってたけど。

食まつ:そうですね、意識的に出すんじゃなくて、やっているうちに自然に出るみたいなものはあるのかもしれないですね。そこの部分のコントロールは自分でも意識してるところで、無理に出そうとするとよくないから。

無理に出さないということは、日本の伝統的なリズムの音楽も聞いたりはしてるということ?

食まつ:詳しくはないですけど、割と好きで聴いたりはしてます。津軽三味線とか。

ああ、聞くんですね。“Michi No Eki” でフィーチャーされている Taigen Kawabe(ボー・ニンゲン)のヴォーカルも祝詞っぽく聞こえたりね。あれも偶然?

食まつ:歌い方はこちらから少し指示させてもらったりしたんですけど、メロディとかは自由にやってもらいました。あれは、歌が入ってからトラックはつくりかえたんですよ。

あ、そうなんだ。

食まつ:毎回、そうなんですよ。歌もの系は、歌に合わせてトラックは変えちゃうんです。

へー、そういうもんなんだ。

食まつ:毎回、そうすね。

細かいんですね。ちなみに物足りない面があるとすれば、全体にダイナミズムがもうちょっとあってもよかったかなというのはありますね。

食まつ:あー、海外のレヴューでは「ライト」とか「フュージョン」という風に書かれていたので、そういう風に聞こえるのかなとは思いました。「ジャズ・フュージョン」に聞こえるとか。

YMOに近づきましたね。

食まつ:(笑)確かに。最初にコード9にデモを送った段階で坂本龍一の『エスペラント』の雰囲気があると言われて。

ああ、それは素晴らしい。坂本龍一がやりきったと言ってたアルバムですね。あれはいい。

食まつ:それと、映画のサントラで、なんちゃらスカイ……

『リキッド・スカイ』?

食まつ:あ、そう、そう。そのふたつのフィーリングがあると彼は言っていて。

『リキッド・スカイ』ねー。なるほどね。

食まつ:『エスペラント』も聴いてみたらなるほどと思ったし、『リキッド・スカイ』もめちゃくちゃシンパシーを感じる音でしたね。ヘンな音がずっと鳴っていて。

わかる、わかる。映画は観ました?

食まつ:いや、観てないです。

映画も面白いよー。ロードショーで観たんだけど、監督が音楽もやっていて、これはヘンと思ってサントラを探したんですよ。コード9も面白い聞き方しているなあ。そもそも〈ハイパーダブ〉から出ることになった経緯は?

食まつ:デモを送ったっていう。ジュークをつくりはじめたきっかけが〈ハイパーダブ〉のDJラシャドだったし、ジェシー・ランザのリミックスをやったりして多少の交流もあったので。で、メールで送ったら、これいいじゃんていうことになったという。返事が早かったんですよ。

なるほど。どこにもない音をつくったという感じもあるし。

食まつ:いや、いや。

そういう野心はあるわけでしょ。

食まつ:毎回、それはそのつもりです。「これが自分です」という感じでつくろうと思ってて。

仲間がいない感じって、どんな気分?

食まつ:ほかにないものをつくりたいという気持ちは最初からずっとあるので……ずっと同じことをやっているというか。

アルバムはそうしようということですよね?

食まつ:そうです、そうです。

「ODOODO」や「DOKUTSU」といったEPはそこまでじゃないというか。

食まつ:そうですね。あの辺はライヴでやって反応が良かった曲を録音してる感じですね。ライヴでやる曲はあんまりアルバムに入れなかったりして。リズムがバシバシというか、ライヴとアルバムの印象は変えてるかもしれないです。

それだけアルバムは特別視してるということですよね。

食まつ:めちゃくちゃしてますね。洋服のブランドみたいに、コレクションというか、何年から何年までの方向性をアルバムが決めるという意味で自分のなかではいちばん重要ですね。

やっぱり陽気な要素もありつつ気持ち悪いというのがけっこう好きというか。ユーモアがあって、シリアスになりすぎないのが好きですね。

もう次に考えてることはあるんですか?

食まつ:やっぱりアフリカですかね。〈ニゲ・ニゲ〉の人たちも聴いてくれてるみたいなので。シンゲリのセットをやったこともあるんですよ。やっぱり陽気な要素もありつつ気持ち悪いというのがけっこう好きというか。ユーモアがあって、シリアスになりすぎないのが好きですね。

『YASURAGI LAND』を誰かにリミックスしてもらうとしたらどの辺が?

食まつ:ああー。考えてなかったなあ。誰だろう? 今まで自分の曲をリミックスしてもらうという経験が……

ない?

食まつ:1回だけありますかね。2012年に広島の CRZKNY(クレイジーケニー)さんていうジュークをやっている方が1曲だけやってくれたことがあって。

それだけですか? じゃあ、コード9にやってもらおう!

食まつ:そうですね。踊れる感じにしてもらうとか。

ぜんぜん違う感じの人がいいですよね。昨日の夜、それを考えていてオールタイチとか名前が浮かんじゃって、それじゃ同じになっちゃうなって。

食まつ:(笑)ちょっといま、思ったんですけど、ベースとかキックが入っているのを想像して聴いてもらうのもいいかなって。

頭で音を足す?

食まつ:そういう聞き方もできるかなって。そうすればいくらでも頭のなかでヴァリエーションがつくれるというか。やっぱり想像の余地を残したいなっていうのがあるんですよ。

70年代に、数寄屋橋に日立ローディープラザというライヴハウスというか、音楽教室みたいなハコがあって。

食まつ:ええ。

バンドが目の前で演奏するんですけど、聴いている人には全員、卓があって、自分の好きなミックスでそのライヴを録音してカセットで持って帰れたんですよ。ベースをカットしたい人はベースのメモリはゼロにしてしまうみたいな。

食まつ:へえー。

パンタ&HALの演奏を録音した覚えがあるんだけど、最初にひとりずつ楽器の音を鳴らしてくれるので、ギターとかドラムを自分の好きな音量に調節してね。誰も真剣にバンドを見ないから、演奏している人たちはやりにくかったらしいんだけど。オーディエンスはずっと卓と格闘してて。

食まつ:(笑)。

そういう感じで好きな感じで聴いて欲しいと。ちょっと違うか。

食まつ:すごいですね、それ。自分で揚げれる揚げ物屋さんみたい。

“Aji Fly” に繋げたな。

食まつ:それぐらい自由に聴いて欲しいのはありますね。こんだけスカスカなんで、ベースとキックを入れるだけですべての曲の印象が変わると思うんですよ。

そうですよね。最後に、課外活動が多くてぜんぜん追いきれてないんですけど、課外活動でやった自信作はなんですか?

食まつ:いろいろあるんですけど、アイドルで金子理江さんの、2017年に出た trolleattroll 名義のやつなんですけど、相対性理論の真部(脩一、現・集団行動)さんと一緒にやった “lost”(https://www.youtube.com/watch?v=qcTBIw8ux00 )ですかね。パーカッシヴな曲で、いま聴くと『YASURAGI LAND』に繋がるなって。メロディは真部さんなんですけど。あと、去年、釜山ビエンナーレっていう芸術祭があって、コロナの時期でもなんとか開催されて、10人のミュージシャンが曲を提供したんですけど、僕も参加して、それはけっこう好きですね。

そこでしか聴けない曲?

食まつ:レコードにもなってるんですけど、韓国語なんですよ。

調べてみます(……と言ったものの、さっぱりわからず)。

〈Hyperdub〉からの最新作『Yasuragi Land』発売を記念したリリース・パーティー
“Local World x Foodman - Yasuragi Land - Tokyo 2021”の開催が決定!

昼のコンサート(8月8日開催)とサウナと水風呂の2フロアに別れた夜のクラブ・ナイト(9月11日開催)の2部構成

名古屋在住のエレクトロニック・ミュージック・プロデューサー、食品まつり a.k.a foodman。〈Hyperdub〉より最新作『Yasuragi Land』を発売したことを記念し、リリース・パーティーの開催が決定! 今回のイベントはクラブ&モードなアドベンチャー・パーティ Local World と SPREAD での共同開催となる。土着、素朴、憂いをテーマに南は長崎、北は北海道、Foodman に纏わるアーティスト含む全国各地からフレッシュな全20組が集まる昼のコンサート(8月8日開催)とサウナと水風呂の2フロアに別れた夜のクラブ・ナイト(9月11日開催)の2部構成、2021年の湿度と共に夏のボルテージを上げるサマー・イベント。

Local World x Foodman - Yasuragi Land - Tokyo 2021

SUN 8 AUG Day Concert 16:00 at SPREAD
ADV ¥3,300+1D@RA *LTD70 / Club Night DOOR ¥1,000 OFF

LIVE:

7FO
cotto center
Foodman
machìna
NTsKi
Taigen Kawabe - Acoustic set -

DJ: noripi - Yasuragi set -

SAT 11 SEP Club Night 22:00 at SPREAD + Hanare
ADV ¥2,500+1D@RA *LTD150 / DOOR ¥3,000+1D / U23 ¥2,000+1D

- 70人限定 / Limited to 70 people
- 再入場可 ※再入場毎にドリンク・チケット代として¥600頂きます / 1 drink ticket ¥600 charged at every re-enter

・サウナフロア@SPREAD

LIVE:
Foodman
JUMADIBA & ykah
NEXTMAN
Power DNA
ued

DJ:
Baby Loci [ether]
D.J.Fulltono
HARETSU
Midori (the hatch)

・水風呂フロア@Hanare*

LIVE:
hakobune [Tobira Records]
Yamaan
徳利

DJ:
Akie
Takao
荒井優作

artwork: ssaliva

- Hanare *東京都世田谷区北沢2-18-5 NeビルB1F / B1F Ne BLDG 2-18-5 Kitazawa Setagaya-ku Tokyo
- 150人限定 / Limited to 150 people
- 再入場可 ※再入場毎にドリンク・チケット代として¥600頂きます / 1 drink ticket ¥600 charged at every re-enter

食品まつり a.k.a foodman

名古屋出身の電子音楽家。2012年にNYの〈Orange Milk〉よりリリースしたデビュー作『Shokuhin』を皮切りに、〈Mad decent〉や〈Palto Flats〉など国内外の様々なレーベルからリリースを重ね、2016年の『Ez Minzoku』は、海外は Pitchfork のエクスペリメンタル部門、FACT Magazine、Tiny Mix Tapes などの年間ベスト、国内では Music Magazine のダンス部門の年間ベストにも選出された。その後 Unsound、Boiler Room、Low End Theory に出演。2021年7月にUKのレーベル〈Hyperdub〉から最新アルバム『Yasuragi land』をリリース。Bo Ningen の Taigen Kawabe とのユニット「KISEKI」、中原昌也とのユニット「食中毒センター」としても活動。独自の土着性を下地にジューク/フットワーク、エレクトロニクス、アンビエント、ノイズ、ハウスにまで及ぶ多様の作品を発表している。

Local World

2016年より渋谷WWWをホームに世界各地のコンテンポラリーなエレクトロニック/ダンス・ミュージックのローカルとグローバルな潮流が交わる地点を世界観としながら、多様なリズムとテキスチャやクラブにおける最新のモードにフォーカスし、これまでに25回を開催。

Local 1 World EQUIKNOXX
Local 2 World Chino Amobi
Local 3 World RP Boo
Local 4 World Elysia Crampton
Local 5 World 南蛮渡来 w/ DJ Nigga Fox
Local 6 World Klein
Local 7 World Radd Lounge w/ M.E.S.H.
Local 8 World Pan Daijing
Local 9 World TRAXMAN
Local X World ERRORSMITH & Total Freedom
Local DX World Nídia & Howie Lee
Local X1 World DJ Marfox
Local X2 World 南蛮渡来 w/ coucou chloe & shygirl
Local X3 World Lee Gamble
Local X4 World 南蛮渡来 -外伝- w/ Machine Girl
Local X5 World Tzusing & Nkisi
Local X6 World Lotic - halloween nuts -
Local X7 World Discwoman
Local X8 World Rian Treanor VS TYO GQOM
Local X9 World Hyperdub 15th
Local XX World Neoplasia3 w/ Yves Tumor
Local XX0 World - Reload -
Local XXMAS World - UK Club Cheers -
Local World x ether

https://localworld.tokyo

イベント詳細はこちら
Day Concert: https://jp.ra.co/events/1452674
Club Night: https://jp.ra.co/events/1452675

Island People - ele-king

 〈raster-noton〉が、バイトーン(オラフ・ベンダー)の〈raster〉と、アルヴァ・ノト(カールステン・ニコライ)の〈noton〉に分裂し、それぞれの道を歩みはじめたことは、10年代の先端的な電子音響音楽において重要なトピックだった。電子音響、エレクトロニカを牽引していたレーベルが終わりを迎えたからだ。
 その〈raster〉が始動後(再起動後とでもいうべきか)に最初にリリースしたアルバムがアイランド・ピープル『Island people』(2017)である。彼らのアルバムをレーベルのファースト・リリースとしたところに〈raster〉=オラフ・ベンダーの意志を感じたものだ。つまり高品質なエクスペリメンタル・エレクトロニック・ミュージックを送り出していくという意志だ。じじつ〈raster〉は、この4年のあいだ流行に左右されずに、質の高いエレクトロニカをコンスタントに送りだしてした。その原点にアイランド・ピープルがあったのだとは言い過ぎだろうか。しかしわたしが彼らのサウンドが忘れられなかったことは事実だ。折に触れ何度も繰り返し聴き続けた。

 アイランド・ピープルはスコットランド・アイルランド出身の4人の音楽家/サウンド・デザイナーによるグループである。ダフト・パンクやジェフ・ミルズ、リカルド・ヴィラロボスやカール・クレイクなどを手掛けた人気のマスタリング・エンジニアのコナー・ダルトン、グラミー賞受賞プロデューサーのデイヴ・ドナルドソン、シリコン・ソウルのグレアム・リーディー、ギタリストのイアン・マクレナンがメンバーである。先にグループと書いたが、「バンド」といってもいいかもしれない。それほどまでに4人の個性が交錯しているサウンドに聴こえるのだ。
 プロデューサーとエンジニアが在籍するアイランド・ピープルのサウンドは高品質なアンビエンス/アンビエントを実現していた。まるで映画のサウンドトラックを思わせるようなムードである。その音は緻密かつ繊細に設計され、美しくも深淵な音響空間を実現していた。どこかアンドレイ・タルコフスキーのSF映画『惑星ソラリス』を思わせもする。その意味で同じく2017年リリースの坂本龍一『async』との親和性も感じられた。

 前作『Island people』から4年の月日を経て送り出された新作が本作『II』である。待ちに待ったというより、不意に届けられたという印象で、一聴すると基本的に『Island people』のサウンドを継承しているように感じられた。しかしその音は以前よりダークであった。何か世界の変容を捉えようとするように、サウンドの移り変わりは、ゆったりとした映画の長いワンシーン・ワンショットのカメラワークを思わせた。レーベルは「初期のアントニオーニ映画のロング・トラッキング・ショットのように展開され、時間が止まっているようで、その瞬間を巡っている」と書いているが(https://raster-raster.bandcamp.com/album/ii)、まさに言い得て妙である。

 つまり前作に比べて、どこか暗く沈んだムードのアルバムなのだ。しかしそれが不快ではない。流行や時間の流れを超越したかのようなサウンドであり、その静かで、不穏で、「人がいない世界」のような音響空間には心を鎮静するような力すらある。特にドラマチックな流れのサウンドを展開する1曲目 “His Illusion” からインナースペースへと沈み込んでいくような3曲目 “Loneliness Has A Purpose” までの展開には孤独のアトモスフィアがうっすらと漂っていた。アルバムはそんなムードを反復するように展開していく。
 環境音と電子音が深海と廃墟の中で交錯するような4曲目 “Far From Shore” と5曲目 “Ten Green Bottles”、ギターのアルペジオが映画音楽的なムードを彩る6曲目 “Idyll”、緊張感に満ちたアンビエントを展開する8曲目 “Stillness”、環境音楽的なシンセサイザーに濃厚な音色のギターを聴かせる9曲目 “Luna” まで、まるでひとけのない都市を彷徨するような音世界だ。その映画音楽的なサウンドに聴きいっているとコロナ禍でロックダウンされた都市の音響のように聴こえたほどだ。加えて、ヴォーカリストのアリス・ヒル・ウッズを招いたヴォーカル曲 “Stalling”(10曲目)が収録されたことも重要なトピックだろう。アルバム・ラストの12曲目 “Traffic” では、スペイシーな電子音響アンビエントを展開し、地球を俯瞰するようなムードになり、アルバムは幕を閉じる……。

 全12曲、アイランド・ピープルは流行り廃りを超えた普遍的な電子音楽を構築しようとしているのではないか? と感じられた。尖端から深淵へ。流行から普遍へ。モードからスタイルへ。10年代まで切り拓かれてきた電子音響音楽の世界は、いま、聴き手の心に作用するアトモスフィアを得ようとしている。それこそがこのアルバムが獲得した不思議なリアリティの正体なのかもしれない、と思うのだ。

Sam Prekop - ele-king

 ザ・シー・アンド・ケイクサム・プレコップの最新EP、デジタルのみで配信されていた「In Away」が、日本限定でCD化されることになった。宇波拓によりCD盤専用のマスタリングが施されており、また完全未発表のボーナス・トラックも追加収録されているとのこと。これはフィジカルで持っておきたいアイテムです。

Sam Prekop(サム・プレコップ)
『In Away』(イン・アウェイ)

企画番号:Prekop-JP 1 / HEADZ 252(原盤番号:なし)
価格:1,800円 + 税(税込定価:1,980円)
発売日:2021年7月30日(金)※(配信の海外発売:2021年5月7日)
フォーマット:CD
バーコード:4582561395406
原盤レーベル:The Afternoon Speaker

1. In Away イン・アウェイ 5:23
2. Triangle トライアングル 3:54
3. Quartet カルテット 3:30
4. Community Place コミュニティ・プレイス 3:17
5. So Many ソー・メニー 4:52
6. Sunset サンセット 3:06

Total Time: 24:19

※ Track 6…日本盤のみのボーナス・トラック

Recorded and mixed in Chicago, February - April 2021 by Sam Prekop
All songs written by Sam Prekop
Mastered by Taku Unami
Photographs by Sam Prekop

A collection of recent tracks from my home studio, of which I've spent plenty of time in this past year or so! These pieces arrived in a similar fashion as the works on my last record "Comma". Basically culled from long rambling recording sessions where the more interesting elements hopefully emerge and present as starting points for further development. These five pieces are the most recent results of this process, I hope you enjoy and thanks for listening!
Sam

セルフ・タイトルの1stソロ・アルバムが永遠の名盤として再評価される中、The Sea and Cakeのフロントマン、サム・プレコップが、彼のインスト・ソロ作史上、最もポップでメロディアスな作品を日本のみでCD化。
Bandcamp以外、配信サービスの取り扱い無し、全曲CD用のマスタリングされ、完全未発表のボーナス・トラックも追加収録。
常に刺激的な電子音楽と美しい写真を追求し続けるサムの現在地がここにある。

昨年(2020年)夏に日本先行でリリースされた、最新ソロ・アルバム『Comma(コンマ)』(THRILL-JP 52 / HEADZ 247)が、彼のトレードマークでもある魅惑的なウィスパー・ヴォーカルを封印した、アナログ・シンセをメインに制作されたインスト・アルバムであったにも拘らず、高評価を獲得し(ピッチフォークも8点越え)、これまでのファン以外にも広くアピールしたザ・シー・アンド・ケイクのフロント・マン、サム・プレコップ。
1999年に発表された1stアルバム『Sam Prekop(サム・プレコップ)』(THRILL-JP 21 / HEADZ 42P)の日本での紙ジャケCD化に続き、Thrill Jockey盤でのLPのリプレスされることになり(Pale Pink盤の限定カラーLPもあり、間もなく日本のレコード・ショップにも並びます)、サムの新旧作品に注目が集まる中、(この1年ほど掛けて作られた)サムの自宅スタジオで今年の2月から4月の間に制作され、Bandcampのみで配信リリースされた最新音源(5曲入りEP)が日本盤のみでCD化されます。

近年海外でも再評価が進む清水靖晃、尾島由郎、吉村弘、イノヤマランド他の80年代の日本のニューエイジやアンビエントの名作群にもインスパイアされた『Comma』の延長線上にありながらも、ビートは控えめに、よりポップでメロディアスなサウンドに仕上がっており、サム本人の撮影による美麗なジャケット写真のイメージ通り、爽やかで透明感のある電子音楽集となっています。

自ら録音・ミックスを手掛けた、サムにとって初のセルフ・リリース作品で、日本盤のみ完全未発表の新曲「Sunset」をボーナス・トラックとして追加収録。
(CD化に際し、David Grubbsのコラボレーターでも知られる、HOSEの宇波拓によって、全曲リマスタリングされており、厳密にはBandcamp音源とも違っております)
ライナーノーツは、編著『シティポップとは何か』(河出書房新社)の刊行を控える、柴崎祐二が担当。
現在、Bandcamp以外、海外も含め配信サービスでの取り扱いの予定はございません。

Sam Prekop is an artist whose music is painted in hues all his own. Both solo and as part of The Sea and Cake, Prekop’s distinct and lithe compositions distill his ceaseless curiosity into bracingly sublime music. In Away follows Prekop’s 2020 LP Comma and takes the next steps into his new compositional approach to crafting more overtly rhythm-based modular synthesized pieces, deftly whittled into vivid pop prisms. Working this time with both modular synthesis and keyboard-based synths, Prekop obscures the line between architectural sequencing and subtle performances. The resulting pieces levitate effortlessly from delicate atmospheres to rippling dances with Prekop’s guiding hand gently leading each movement towards the stirringly unfamiliar.

The six buoyant pieces on In Away were developed through Prekop’s daily practice of manipulating new systems of modular synthesis, recording, and deep listening. Acting as a curator to his own museum of sounds, Prekop poured over hours of improvisations using different modular combinations to select compelling moments which could act as a framework for his arrangements. His unique approach to shifting texture and juxtaposing timbres then layered each frame with minute details and potent melody. The Buchla 208c scintillates and plucks with near-acoustic tones atop a bed of warm drones. Lightly sizzling percussion throbs beneath coursing cascades. Each moment strikes a meticulous balance between captivating surprise and gratifying outcome.

サム・プレコップは、自身の音楽を全て独自の色彩で描き出すアーティストです。ソロでも、The Sea and Cakeのメンバーの一員としても、プレコップの個性的でしなやかな作曲群は、彼の絶え間ない好奇心を刺激的で崇高な音楽に精製しています。『In Away』は、2020年に発売されたプレコップのLP『Comma』に続く作品で、彼の新しい作曲アプローチの次のステップとして、よりあからさまなリズム・ベースのモジュラー・シンセサイザーを使って、鮮やかでポップなプリズムを巧みに削り出した作品を制作しています。モジュラー・シンセシス(シンセサイザーによる音の合成)とキーボード・ベースのシンセサイザーの両方を使った今回の作品では、構築的なシーケンス(配列)と繊細なパフォーマンスの間の境界線が曖昧になっています。その結果、作品は繊細な雰囲気から波打つようなダンスまで楽々と浮遊し、Perkopの手助けによってそれぞれの動きを刺激的で聴き慣れないものへと優しく導きます。

『In Away』に収録されている6つの作品は、モジュラー・シンセシス、レコーディング、ディープ・リスニングなどの新しいシステムを操作するという、プレコップの日々の演習を通して開発されました。自らの音の博物館の学芸員のように、Perkopは様々なモジュラーの組み合わせを使った即興演奏を何時間も掛けて行い、アレンジのフレームワークとなるような魅力的な(感動的な)瞬間を選び出しました。テクスチャーを変化させたり、音色を並置したりする彼のユニークなアプローチは、その結果、それぞれのフレームに微細なディテールと強力なメロディを重ね合わせました。(米Buchla社製のアナログシンセサイザー)「Buchla 208C」が輝きを放ち、暖かいドローンのベッドの上で、音響に近いトーンを弾きます。素早く進むカスケード(直列)接続の下では、軽やかに揺れるパーカッションが鳴り響きます。一瞬一瞬が、魅惑的な驚きと満足のいく成果の間で、細心のバランスを取っています。

The World of My Bloody Valentine
マイ・ブラッディ・ヴァレンタインの世界

極限にまで到達したロック・サウンドの軌跡──
マイ・ブラッディ・ヴァレンタインがなしえたこととは

インタヴュー
ディスクガイド
『Loveless』から広がる宇宙
ティーンエイジャーの自我の溶解
“愛無き” を愛することを学ぶ
etc

第二特集
New Generation of Indie Rock and Post Punk in the UK
UKインディー・ロック/ポスト・パンク新世代

The World of My Bloody Valentine issue

photos by Kenji Kubo
ケヴィン・シールズ、その人生を大いに語る(杉田元一+坂本麻里子)

■ディスクガイド
(イアン・F・マーティン、大藤桂、黒田隆憲、後藤護、ジェイムズ・ハッドフィールド、清水祐也、杉田元一、野田努、山口美波、与田太郎)
This Is Your Bloody Valentine
Ecstasy
Geek! / The New Record By My Bloody Valentine / Strawberry Wine / Sunny Sundae Smile
You Made Me Realise
Feed Me With Your Kiss
Isn't Anything
オフィシャル・インタヴュー(粉川しの)
ティーンエイジャーの自我の溶解(イアン・F・マーティン)
Glider
Glider Remix
Tremolo E.P.
Loveless
オフィシャル・インタヴュー(小野島大)
“愛無き” を愛することを学ぶ(ジェイムズ・ハッドフィールド)
Ecstasy And Wine
m b v
オフィシャル・インタヴュー(黒田隆憲)
EP's 1988-1991
オフィシャル・インタヴュー(黒田隆憲)
Experimental Audio Research
Patti Smith, Kevin Shields
Brian Eno With Kevin Shields
Hope Sandoval & The Warm Inventions
轟音の向こう側の素顔(黒田隆憲)
あの時代の不安定な生活のなかで(久保憲司)

■『ラヴレス』から広がる宇宙
ロック編(松村正人)
テクノ編(野田努)
アンビエント編(三田格)
実験音楽編(松山晋也)

第二特集「UKポストパンク新時代」
〈ラフ・トレード〉が語る、UKインディー・ロックの現在(野田努+坂本麻里子)
断片化された生活のための音楽(イアン・F・マーティン)
ディスクガイド(天野龍太郎、野田努、小山田米呂)
活況を見せるアイルランド・シーン(天野龍太郎)
新世代によるクラウトロック再解釈とドライな「歌」(天野龍太郎)
世界の中心は現場にあって、広がりはインターネットによってもたらされる(Casanova)

オンラインにてお買い求めいただける店舗一覧

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全国実店舗の在庫状況

紀伊國屋書店
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丸善/ジュンク堂書店/文教堂/戸田書店/啓林堂書店/ブックスモア
旭屋書店
有隣堂

訂正
このたび は弊社商品をご購入いただきまして誠にありがとうございます。
『別冊ele-king マイ・ブラッディ・ヴァレンタインの世界』において、
p185上段のBlack Midiのジャケット写真が、
中央部を拡大したまま(トリミング・ミスのまま)印刷されていました。
謹んで訂正いたしますとともに、
お客様および関係者の皆様にご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。

Ryuichi Sakamoto & David Toop - ele-king

 大物同士の共演だ。坂本龍一とデイヴィッド・トゥープによる初のコラボ作が7月9日にリリースされる。『Garden Of Shadows And Light』と題されたそれは、2018年の6月、ロンドンはシルヴァー・ビルディングでのパフォーマンスを収録。レーベルは〈33-33〉で、これまで灰野敬二とチャールズ・ヘイワードの共作や、オーレン・アンバーチとマーク・フェル&ウィル・ガスリーらのコラボ作品を出してきたところ。当時の映像は、NTSによって公開されており、下記より視聴可能です。

The Master Musicians of Joujouka - ele-king

 過去5年の間、もしくは、これまでに観たなかで最高のライヴのひとつが、2017年の音楽フェスティヴァルFRUE(フルー)でクロージングを飾ったザ・マスター・ミュージシャンズ・オブ・ジャジューカだった。このモロッコ人たちは二度のアンプリファイド(音響ありの)・パフォーマンスで、メイン・ステージの観客の心を揺さぶる能力を披露し、すでにその週末のスターとなっていた。

 そんな彼らの最終ステージは、会場を音楽祭のマーキー(大テント)に移しての深夜のアコースティック・セットだったが、PAなしで耳が聴こえなくなるぐらいの大音量を出すことのできるバンドには、そのような違いは、ほとんど意味を持たない。舞台のセッティングは、リフ山脈の麓にある彼らの村で毎年開催されているフェスティヴァルを再現したもので、舞台を覆うように敷かれた、すり切れたラグまでもが忠実に再現されていた。

 そのイベントを二回ほど体験していた自分としては、何が起こるか、大方の予想はしていたものの、彼らの音楽がFRUEの数百人の観客にもたらした効果には、やはり驚かされた。その喜びに耽る夜は、本物の、ハンズ・イン・ジ・エア(両手を空にあげる)なレイヴのようで、4時間近くに及ぶパフォーマンスで、グループが新たな高みへと昇華する度に観客は喜びの雄叫びをあげた。

 このような体験をレコードに収めるのは常に難儀なことであり、非常に優れたいくつかのリリースを含むマスターズのディスコグラフィでも、彼らのライヴ・パフォーマンスほどの恍惚感をもたらしたものはない。彼らの名を世に知らしめた1971年のアルバム『ブライアン・ジョーンズ・プレゼンツ・ザ・パイプス・オブ・パン・アット・ジャジューカ』では、サイケデリックな特性を際立たせるために、音楽に電子的な処理が施され、そのフィジカリティ(肉体的な衝動)が犠牲になってしまった。

 それ以来、グループのリリース(バシール・アッタール率いるライヴァルの一団であるThe Master Musicians of Jajoukaも含む)は、フィールド録音から、2000年にアッタールがその一団とタルヴィン・シンとで制作した、グループの名を冠したアルバム(これはスルーしてよい作品。信じてほしい)のような作り込み過ぎたワールドビート・フュージョンのようなものなど、多岐にわたっている。しかし、2016年にパリのポンピドゥー・センターで行われた「ビート・ジェネレーション展」でのコンサートを収録した『ライヴ・イン・パリ』ほど、好き勝手に、力強くやっている録音はないと自信を持っていえる。

 2017年の日本ツアーの際に限定盤として販売されたCDの、正式なLPレコードとデジタル音源のリリースは、1年以上にわたるCOVID-19煉獄の後では、より歓迎されるに違いない。これは、マスター・ミュージシャンズのアンプリファイド・モードであり、2017年のErgot Recordsからリリースされた『Into The Ahl Srif』のフィールド録音とは全く異なっており、私が記憶しているジャジューカのフェスティヴァルでのサウンドに近いものになっている。

 とくにカーマンジャ(ヴァイオリン)奏者のアハメッド・タルハは、アンプの使用により、驚くべき微分音が際立つという恩恵を受け、より力強い演奏となっている。彼は1枚目のB-SIDEで中心的な役割を果たしており、故・アブデスラム・ブークザールがリード・ヴォーカルを務めた“ブライアン・ジョーンズ・ジャジューカ・ヴェリー・ストーンド”などの定番曲で、喜びにあふれんばかりの演奏を披露。裏面にも同じような曲がいくつか登場するが、ここでは音楽は曲がりくねったような、コール&レスポンスのリラ(笛)とパーカッションがヒプノティックにブレンドされており、複雑なポリリズムが各曲の終わりに突然跳ねて、アッチェレランドで加速していく。

 しかし、最大の魅力は、アルバムの2枚目に収録された、トランス状態を誘発するような“ブゥジュルード”のフル・ヴァージョンだ。伝統的には、これはジャジューカ村のフェスティヴァルの最終夜に、火の灯された儀式のサウンドトラックとして演奏される組曲で、普段は寡黙なモハメド・エル・ハットミが、伝説の半人半獣(人間とヤギ)のブゥジュルードとして知られる生き物を体現する。

 武骨な毛皮の衣装を身に纏い、悪霊を追い出すために人々を激しく叩くハットミの姿は、秋田県男鹿半島のナマハゲを思い出すが、音楽は全くの別物で、感覚を奪われるようなダブル・リード楽器のライタ(あるいはガイタ)が、雷鳴のようなパーカッションを背景に、群がり合い、渦を巻くように襲ってくる。

 ライナー・ノーツのなかで、グループのマネージャー兼プロデューサーであるフランク・リンは、コンサートのこの部分は、音楽の原始的なオーセンティシティ(真正性)を保つために、ペアのステレオ・マイクロフォンを2つ使用したと洒落た言葉で説明しているが、これは、非常に激しくロックしているという意味だ。44分近くに及ぶ曲の中央部では、ライタが集結し、奇妙なフェイジングの効果を発揮して、音楽そのものが錯乱しているかのようだ。
 
 グループのライヴを体験できる機会が不足しているなか、このもっとも純粋な形のトランス・ミュージックは、自分自身を解き放ち、身をゆだねるべき音である。唯一、このLPヴァージョンの批判をするとしたら、半分聴いたところで、こいつをひっくり返さなくてはならないことだ。リンによると、ポンピドゥー・センターでのコンサートでは、ステージへの客の侵入で最高潮に達したというが、これはスーサイドが演奏して以来の出来事だったそうだ。この証拠に基づけば、それこそが、道理にかなった反応だったと思う。

(アラビア語読み協力:赤塚りえ子)

The Master Musicians of Joujouka
Live in Paris

Unlistenable Records
bandcamp

James Hadfield

One of the best shows I’ve seen in the past five years―maybe ever―was the closing set that the Master Musicians of Joujouka played at Festival de Frue in 2017. The Moroccans were the stars of the weekend, having already done a pair of amplified performances that demonstrated their ability to rock a main-stage crowd.
For their final appearance, they shifted to a marquee in the festival campsite for a late-night acoustic set―though such distinctions mean little to a band that’s capable of achieving deafening volumes without the need for a PA. The setting was a convincing recreation of the festival that the group hold each year at their village in the foothills of the Rif Mountains, right down to the threadbare rugs covering the stage.
Having been to that event a couple of times myself, I had a fairly good idea of what to expect, but the effect the music had on the assembled crowd of a few hundred people at Frue still took me by surprise. It was a night of joyous abandon: proper hands-in-the-air rave stuff, people howling with joy as the group kept ascending to new heights of intensity over a performance lasting nearly four hours.
Capturing that kind of experience on record is always going to be a challenge, and the Masters’ discography―while featuring some very fine releases―has never delivered anything quite as ecstatic as their live performances. On the 1971 album that first introduced them to a wider audience, “Brian Jones Presents the Pipes of Pan at Joujouka,” the music was subjected to electronic treatments that accentuated its psychedelic properties at the expense of its physicality.
Since then, the group’s releases―and those by rival outfit The Master Musicians of Jajouka led by Bachir Attar―have ranged from field recordings to over-produced worldbeat fusion efforts like the self-titled 2000 album that Attar’s troupe recorded with Talvin Singh (trust me: you can skip it). But I’m confident in saying that nothing has kicked out the jams quite as emphatically as “Live in Paris,” which captures a 2016 concert at the Centre Georges Pompidou, held as part of an exhibition dedicated to the Beat Generation.
Sold in a limited CD edition during the group’s 2017 Japan tour, the album has finally had a proper vinyl and digital release, and after over a year of COVID-19 purgatory it feels all the more welcome. This is the Master Musicians in amplified mode, and it’s very different from the field recordings heard on the 2017 Ergot Records release “Into The Ahl Srif,” which came closer to how I remember them sounding at the festival in Joujouka.
Kamanja (violin) player Ahmed Talha in particular benefits from amplification, letting his astonishing microtonal playing assert itself more forcefully. He takes a central role on the B side of the first disc, which features ebullient renditions of staples like “Brian Jones Zahjouka Very Stoned,” with lead vocals by the late Abdeslam Boukhzar. Some of the same pieces pop up on the flip side, though here the music is a hypnotic blend of sinuous, call-and-response lira flutes and percussion, with complex polyrhythms that leap into sudden accelerandos at the end of each piece.
However, the biggest draw is the album’s second disc, which contains a full version of the trance-inducing “Boujeloud.” Traditionally performed on the final night of the festival in Joujouka, this suite provides the soundtrack for a fire-lit ritual, in which the normally retiring Mohamed El Hatmi embodies the mythical half-man, half-goat creature known as the Boujeloud.
The spectacle of Hatmi, dressed in a ragged fur costume and vigorously thwacking people to drive out evil spirits, brings to mind the Namahage of Akita’s Oga Peninsula, but the music is something else altogether: a sense-scrambling assault of double-reeded ghaita that seem to swarm and swirl around each other, backed by thunderous percussion.
In the liner notes, the group’s manager and producer, Frank Rynne, explains that this part of the concert was recorded with two stereo pair microphones to “maintain the primordial authenticity” of the music, which is a fancy way of saying that it rocks very hard indeed. During the central stretch of the nearly 44-minute piece, the massed ghaita start creating weird phasing effects, like the music itself is becoming delirious.
Short of catching the group live, this is trance music in its purest form―sounds to lose yourself in, surrender to―and my only criticism of the vinyl edition is that you have to turn the damn thing over halfway through. The Pompidou concert culminated with a stage invasion, which Rynne says had only previously happened when Suicide played there. On this evidence, it was the only sensible response.

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