「iLL」と一致するもの

MARY LOU WILLIAMS - ele-king

Billy Wooten - Wooden Glass - ele-king

Jeff Mills × Jun Togawa - ele-king

 先日お伝えしたように、戸川純が出演するジェフ・ミルズによる舞台作品『THE TRIP -Enter The Black Hole-』が4月1日に上演されるわけですけれども、そのサウンドトラックから先行シングルが発売されます。ジェフ・ミルズと戸川純のダブルネームによる “矛盾 - アートマン・イン・ブラフマン (Radio Edit)” は3月13日、Apple MusicおよびiTunesにて先行リリース。ちなみに明日2月29日、J-WAVE「Grand Marquee」にて初オンエア予定とのことです。いったいどんな音楽に仕上がっているのか、楽しみにしていましょう。以下、詳細です。

ブラックホールの先に響く、未知の音の世界 -
ジェフ・ミルズと戸川純の究極のサウンドトリップ
「矛盾 - アートマン・イン・ブラフマン (Radio Edit)」が3月13日
Apple Musicにて先行配信!
J-WAVE「Grand Marquee」にて2/29(木)初オンエア!

ジェフ・ミルズと戸川純が描く一大ブラックホール・スペクタクル
4月1日(月)に東京・新宿にて行われるジェフ・ミルズ総指揮、宇宙の神秘に迫る舞台芸術作品『THE TRIP -Enter The Black Hole-』のサウンドトラックから、日本の音楽シーンにおいて圧倒的な存在感を放つレジェンド、戸川純がシンガーとしてフィーチャーされる「矛盾 - アートマン・イン・ブラフマン (Radio Edit)」が3月13日(水)にApple Music及びiTunesにて先行発売される。
ジェフ・ミルズと戸川純の世界観が有機的に溶け合い結晶化、今までのジェフ・ミルズのイメージからも解き放たれたバンドサウンドかつミニマルな浮遊感溢れる楽曲となっている。戸川がボーカルを務めるバンド、ヤプーズの山口慎一、ヤマジカズヒデも録音に参加。メロディの作曲には同バンドのライオン・メリィもクレジットされている。

J-WAVE「Grand Marquee」にて2/29(木)初オンエア!
「矛盾 - アートマン・イン・ブラフマン (Radio Edit)」が2/29(木) J-WAVE「Grand Marquee」(16:00 - 18:50) にて初オンエアする事が決定!
https://www.j-wave.co.jp/original/grandmarquee/

『THE TRIP -Enter The Black Hole-』お得な前売りチケットのエントリー締切迫る!
4月1日(月)ZEROTOKYO(新宿)にて行われるCOSMIC LAB presents JEFF MILLS『THE TRIP -Enter The Black Hole-』のお得なオフィシャル前売りチケットのエントリーは3月1日(金)10時まで
https://l-tike.com/thetrip/

タイトル:「矛盾 - アートマン・イン・ブラフマン (Radio Edit)」
アーティスト:ジェフ・ミルズ, 戸川純
リリース日:
 2024/3/13 0時(JST)Apple Music及びiTunesにて先行配信
 2024/3/20 0時(JST)その他の配信・サブスクリプションサービスにて配信
ダウンロード価格:¥255(税込)
販売元:AXIS / U/M/A/A
配信、ダウンロード予約はこちらから
https://lnk.to/jmjt_contradiction

<楽曲クレジット>

ボーカル:戸川純
ギター: ヤマジカズヒデ
キーボード:山口慎一 
プログラム、シンセサイザー:ジェフ・ミルズ

作詞:戸川純
作曲:ジェフ・ミルズ
歌メロディー作曲:ライオン・メリィ

<歌詞>

13度目の宇宙の旅で
闇が突如として現れた
吸い込まれては途中で浮かぶ
永遠の孤独がわたしを襲う

でも何故だろう わからないけれど
向こうに突き抜けるという説も
信じたくない自分もいる
何故ならわたしは人間だから
人間は矛盾しているから
わたしは1人の人間だから
矛盾している生き物だから

13度目の宇宙の旅で
闇が突如として現れた
吸い込まれては途中で浮かぶ
永遠の孤独がわたしを襲う

でも何故だろう わからないけれど
向こうに突き抜けるという説も
信じたくない自分もいる
何故ならわたしは人間だから
人間は矛盾しているから
わたしは1人の人間だから
矛盾している生き物だから

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プロフィール
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JEFF MILLS(ジェフ・ミルズ)
1963年アメリカ、デトロイト市生まれ。
現在のエレクトロニック・ミュージックの原点ともいえるジャンル“デトロイト・テクノ”のパイオニア的存在として知られている。代表曲のひとつである「The Bells」は、アナログ・レコードで発表された作品にも関わらず、これまで世界で50万枚以上のセールスを記録するテクノ・ミュージックの記念碑的作品となっている。
また、音楽のみならず近代アートのコラボレーションも積極的に行っており、フリッツ・ラング監督「メトロポリス(Metropolis)」、「月世界の女(Woman in the Moon)」、バスター・キートン監督「キートンの恋愛三代記(The Three Ages)」などのサイレントムービー作品のために、新たにサウンドトラックを書き下ろし、リアルタイムで音楽と映像をミックスしながら上映するイベント、“シネミックス(Cinemix)”を精力的に行なっている。
そしてポンピドーセンター「イタリアフューチャリズム100周年展」(2008年)、「Dacer Sa vie」展(2012年)、ケブランリー博物館「Disapola」(2007)年など、アートインタレーション作品の展示活動といった、数々のアート活動が高く評価され、2007年にはフランス政府より日本の文化勲章にあたる芸術文化勲章シュヴァリエ(Chevalier des Arts et des Lettres)を授与され、その10年後となる2017年にはフランス政府よりシュヴァリエよりさらに高位なオフィシエの称号を元フランス文化大臣のジャック・ ラングより授与された。
日本での活動も多岐に渡り、2013年、日本科学未来館館のシンボル、地球ディスプレイ「Geo-Cosmos(ジオ・コスモス)」を取り囲む空間オーバルブリッジで流れる音楽「インナーコスモス・サウンドトラック」はジェフ・ミルズが作曲。現在もその音楽が使用されている。
近年、コロナ禍中に、世界の若手テクノ・アーチスト発掘支援のためThe Escape Velocity (エスケープ・ベロシティ)というデジタル配信レーベルを設立。既に60作品をリリースしている。
https://www.axisrecords.com/

JUN TOGAWA(戸川純)
1961年、新宿生まれ。歌手・女優。ゲルニカを経てソロ名義で『玉姫様』、『好き好き大好き』、ヤプーズとして『ヤプーズ計画』、『ダイヤルYを廻せ!』などをリリース。近作は、『ヤプーズの不審な行動 令和元年』。映画『釣りバカ日誌(1~7)』などに出演。『いかしたベイビー』では監督、脚本、主演。舞台に『三人姉妹』、『グッド・デス・バイブレーション考』など。TOTOウォシュレットのCM出演も評判を呼んだ。著作に『戸川純の気持ち』、『樹液すする、私は虫の女』、『戸川純全歌詞解説集 疾風怒濤ときどき晴れ』、『ピーポー&メー』『戸川純の人生相談〜どうしたらいいかな、純ちゃん〜』(山口慎一と共著)などがある。
https://twitter.com/juntogawaoffice

【イベント情報】

COSMIC LAB presents JEFF MILLS『THE TRIP -Enter The Black Hole-』
参加アーティスト:JEFF MILLS(音楽)、COSMIC LAB(映像)、戸川純(歌唱)、梅田宏明(振付)、FACETASM 落合宏理(衣装デザイン)

世界最高峰のDJにして、デトロイトテクノのパイオニアであるジェフ・ミルズ。1980年代よりテクノやミニマルミュージック、近年ではオーケストラなどとの音楽を通じて独自の宇宙観を表現してきた現代アーティスト。

そのジェフ・ミルズが2024年に挑む新たな舞台芸術作品とは?
宇宙への旅、未知なるブラックホール、その先にあるものとは?
音楽、映像、歌、ダンスで宇宙の神秘に迫るコズミックオペラの誕生!

2024年4月1日(月)に東京・新宿の「ZEROTOKYO」にて、ジェフ・ミルズは日本で最も革新的なビジュアル・チームと評されるCOSMIC LABと共同制作によるライブ・オーディオビジュアル作品『THE TRIP -Enter The Black Hole-』のワールドプレミアを開催します。

本公演は音楽、映像、ライティング、そして歌とコンテンポラリーダンス、衣装デザイン、すべてにおいてジェフ・ミルズ総指揮のもと各分野のコラボレーターを迎え入れ、5つの理論的なシナリオで宇宙の神秘に迫ります。

総合演出、脚本、音楽はジェフ・ミルズ。その宇宙観/思考をCOSMIC LABが映像演出で拡張します。また、音楽シーンにおいて圧倒的な存在感を放つ戸川純がシンガーとして参加するほか、コレオグラファー(振付)にはコンテンポラリーダンス〜デジタルアートと領域横断的な表現で世界的評価の高い梅田宏明、各出演アーティストの舞台衣装は日本を代表するブランド〈FACETASM〉のデザイナー落合宏理が手がけます。

ブラックホールに向けての宇宙の旅で何が起こるのか、そのテーマを探求できることをとても楽しみにしている。テクノが創造された本当の理由がここにある。 - ジェフ・ミルズ

もし私たちがブラックホールの中に入ることができたらどうなるのか? ブラックホールの反対側には何があるのだろうか? ジェフ・ミルズは今回の舞台芸術作品を通して、さまざまな理論的可能性の中で、宇宙とブラックホールの疑問について探究します。

これまで誰も体験したことのない聴覚と視覚に訴えかけるパフォーマンスは、ステージ上だけでなく会場全体を宇宙として捉え、観客を音と光の演出で包み込み、ブラックホールへと導きます。DJでもライブでもなく、ジェフ・ミルズとCOSMIC LABによる宇宙を題材とした総合舞台芸術、世界初のコズミックオペラです。

『THE TRIP』は、2008年にフランス・パリで初めてのパフォーマンスが行われ、日本では2016年に東京・浜離宮朝日ホールにてCOSMIC LABの映像演出によって作品が拡張されました。今回はブラックホールをテーマにした全く新しい作品となり、今後数年にわたって進化を遂げる壮大なプロジェクトの始まりとなります。

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開 催 概 要
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名 称:
COSMIC LAB presents
JEFF MILLS『THE TRIP -Enter The Black Hole-』
チケットはこちらより
https://l-tike.com/thetrip/

会 場:
ZEROTOKYO(新宿)

日 程:
2024年4月1日(月)
第1部公演: 開場 17:30 / 開演 18:30 / 終演 20:00
第2部公演: 開場 21:00 / 開演 21:45 / 終演 23:15 ※第2部受付は20:30

出 演:
Sounds: JEFF MILLS
Visuals: C.O.L.O(COSMIC LAB)
Singer: 戸川純
Choreographer: 梅田宏明
Costume Designer: 落合宏理(FACETASM)
Dancer: 中村優希 / 鈴木夢生 / SHIon / 大西優里亜

料 金:

【2月28日(水)22時まで ※枚数限定】
ローチケ先行前売り入場券 9,000円

【2月29日(木)0時〜3月1日(金)10時 ※枚数限定】
オフィシャル先行前売り入場券 9,000円

【3月1日(金)発売開始】
一般前売り入場券 11,000円

主 催:
COSMIC LAB

企画制作:
Axis Records、COSMIC LAB、Underground Gallery、DEGICO/CENTER

プロジェクトパートナー:
FACETASM、株式会社フェイス・プロパティー、日本アイ・ビー・エム株式会社、一般社団法人ナイトタイムエコノミー推進協議会、株式会社TSTエンタテイメント、AlphaTheta株式会社

オフィシャルサイト:
https://www.thetrip.jp

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THE TRIP -Enter The Black Hole- 告知映像
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国内向けティザームービー(Cosmic Lab YouTubeチャンネル)
https://youtu.be/cfLH5CGwvuw

海外向けティザームービー(Axis Records YouTubeチャンネル)
https://youtu.be/22HQelKAF0w

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総合演出 / 音楽担当のジェフ・ミルズよりメッセージ
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2009年の「THE TRIP」開始以来、テクノロジーは大きくエキサイティングに進化し、その結果、没入型パフォーマンスの質は大きく向上した。それにより、より広大なテーマを探求することができるようになった。

次回のTHE TRIP公演では、「ブラックホール」を取り上げる。ブラックホールという現象は、光さえも外に出ることができないほど重力に引っ張られる宇宙空間の場所である。重力が強いのは、物質が小さな空間に押し込められたからだ。これは星が死にかけたときに起こる。

なぜこのテーマなのか:

それは、私たちの宇宙は、別の宇宙にあるブラックホールの特異点(シンギュラリティ)から分岐した可能性があるという、心躍る仮説があるからだ。私たちはブラックホールの中に住んでいるわけではないが、私たちの宇宙がブラックホールから生まれた可能性を否定するものでもない。

なぜそれが重要なのか:

もしそうなら、時間と空間はブラックホールの物理性に従うことになるからだ。つまり、私たちは常にブラックホールに向かってスパイラルしていることになる。

しかし、もし私たちがブラックホールの引力に耐えて、その中に入ることができたらどうなるだろうか?

ブラックホールの反対側には何があるのだろうか?

「THE TRIP -Enter The Black Hole-」と題されたマルチ感覚パフォーマンスを通して、ブラックホールに向けての宇宙の旅で何が起こるのか、そのテーマを探求できることをとても楽しみにしている。

- ジェフ・ミルズ

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主催 / 映像演出担当のC.O.L.O(COSMIC LAB)よりメッセージ
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我々は何処から来て、何処に向かって進んでいるのか?

2016年にジェフ・ミルズと浜離宮朝日ホールに集まった人々との「THE TRIP」を経て、COSMIC LABのミッションは意識を拡張させること、つまりその為のヴィジュアル空間装置の開発と表現の追及だと確信が深まった。

人の意識を生み出す脳と宇宙の構造は似ているという説がある。もし宇宙が誰かの脳なのであれば、宇宙を探究することは、精神を探究することなのかもしれない。

ニューロンと銀河のアナロジー。意識と宇宙のフラクタル。

今作品は、宇宙の最果てブラックホールへの旅であり、精神の最深部を探究するライブ・エクスパンデッド・シネマである。

8年の時を経て進化したヴィジュアル装置と最上級の音響設備がインストールされたZEROTOKYOに、ワールドプレミアとして、一夜限りの総合芸術が出現する。

- C.O.L.O(COSMIC LAB)

レコード蒐集家訪問記 第⼀回 - ele-king

 近年、世界中で拡がり続けるアナログ・レコード。⾳楽メディアとして⼈々の記憶から⼀度忘れられかけたものの、今では⾒事に表舞台に復活しました。しかし東京のレコード店の多さが最多であった90年代頃と⽐べてみると、当時の規模にまではまだまだ拡大していない状況。若い世代も今はレコードを聴く⼈が増えてきているようですが、実際にどのようなレコード・コレクションをしているのでしょうか?
 そんな疑問を抱えて、とあるミュージシャンの30代男性(若くもないですが・・)宅にVGAチームで⾶び込み取材を遂⾏致しました。

[今回のレコード・コレクター]

齋藤辰也 / chill blankhead(1989年生まれ)
DJパーティー<Cosy Inside>主宰。パブリック娘。メンバー。CDとレコードが大好き。

***

 埼京線で渋⾕駅から15分。我々は⼗条駅に降り⽴ちました。東京都の北に位置する、その名の通りの北区にある小さな街、⼗条。駅前ロータリーに不穏な影を落とす建設途中のタワマンに背を向けて、小さな商店街を⼀歩⼊るとそこは古き良き⾵情あふれる街並み。昔ながらの喫茶店や⾷堂、⾦物店などの個⼈店がずらっと並び、活気のある空気がなんだか昭和にタイムスリップしたかのよう。
 そしてしばらく進むと左⼿には大きな演芸場が突如出現。お年を召した⽅々が次々に場内に吸い込まれています。ここは1951年に開業された歴史ある大衆⽂化施設。こんな小さな街の路地裏に演芸場がある珍しい光景は、まるでアメリカ郊外の小さな街の映画館を想起させます。そんなレトロ感が漂う商店街を抜けてしばらくすると男の⾃宅に到着。
 事前に得た情報では、けっこうディグっているということでしたが、30うん年レコードを掘り続けている我々VGAチーム。期待値半分で扉を開けましたが・・・・

---レコードに浸⾷されてますね。(床にじかに⽴てかけられたレコードが倒れてくる様を⾒ながら)このレコードが崩れてくる感じも懐かしい。まるで浪⼈⽣の部屋ですね。⾃分の居場所はあるんですか?

齋藤:⼀応あります。いまはマットレスを外で天⽇⼲ししていて、ついでにレコードの並びも整理しようとしたら途中で時間切れになってしまい、かえって散らかってしまいました。すみません。
それでこの辺が前にお話しした同じアルバムをひたすら集めたレコード・コレクションです。(レコード棚の背表紙を⾒ながら)こっからここは全部ピンク・フロイドの1st アルバム、『夜明けの⼝笛吹き(The Piper at the Gates of Dawn)』ですね。

---え!これ全部??

齋藤:そうです。そしてここからここまではヴェルヴェット・アンダーグラウンドの3rd。
こっちはドアーズの3rd。こっちはナンシー・シナトラの・・・

---⼊室早々いきなりフル・スロットルできましたね。これだと話が続かないんで、とりあえずまずはレコードにハマったきっかけを教えてもらえますか?

齋藤:はい。中学⽣の時にビートルズを好きになったんですけど。⽗親はレッド・ツェッペリンの来⽇公演とかを⾒に⾏くような⼈だったのですが、海賊盤(ブートレッグ)のCDをたくさん持っていて。
僕もその影響でビートルズの海賊盤を聴くようになったんです。そして当時、⽗親がたくさん海賊盤の専⾨雑誌を持っていたのですが、それをたまたま⾒てしまったんですね。

---雑誌名が『Beatleg』っていうんですね。ずいぶんシャレがきいた名前ですね。

齋藤:⻄新宿で売っていた本で、レコードに⼊ってるミックス違いの⾳源についても書いてあったりして。レコードでしか聴けない⾳源もあるんだと。それでレコードの存在に気づいたんです。

---その頃は普段はCDを聴いていたのですか?

齋藤:そうですね。家にはCD しかありませんでした。⽗親からはレコードの⽅がCD よりも⾳に迫⼒があるんだというような話を聞かされていました。その後、⾼校⽣の時に付き合った相⼿が部屋でレコードを聴いているのを⽬の当たりにしてすごく羨ましくなって、レコードだけの⾳源が⼊ってるアルバムはレコードを買うようになりました。ただ、機材にほとんど関⼼がなくて、実際に⾃分のターンテーブルを買ったのは大学を卒業する直前なのですが。

---そこからレコードを買い始めてこんな偏愛的な蒐集をするようになるんですね。ちなみにサブスクは使⽤しますか?

齋藤:課⾦の契約はしていないですね。モノじゃないものにお⾦を払うのが嫌なので。

---「モノじゃないものにお⾦を払いたくない」名⾔ですね。ソウルやジャズよりもロックが好きなんですか?

齋藤:ロックが⼀番好きですがジャズもヒップホップも聴きます。ソウルは奥が深そうでそんなに聴いていないですが、ジャズで好きなのはセロニアス・モンク、ニーナ・シモン、コルトレーンのフリーの頃とか。あとはガボール・ザボ。彼のギターはシド・バレット(ピンク・フロイドの初期中⼼メンバー)に似ている気がして好きです。けど今でもレコード店に⼊って最初に⾒る棚はビートルズの新⼊荷コーナーですね。

---ピンク・フロイドの1stの物量、すごいですね。いったい、何枚持っているんですか?

齋藤:40枚以上ですね。CDも合わせると60枚以上あると思います。あとはカセット・テープもありますね。

---そんなに同じものばっかり買うのはなぜですか?ピンク・フロイドの他のアルバムは聴かないんですか?

齋藤:他のアルバムには全く興味ないんですよ。

---えー?!それはすごいですね。

齋藤:僕はシド・バレットが好きで、彼は1stアルバムにしか参加してないんです。なのでピンク・フロイドのファンではないです。

---じゃあソロも追いかけてるんですか?

齋藤:もちろん、シド・バレットのソロも聴きます。でも2枚しか出ていないのですぐに終わっちゃう。なので、もっとシド・バレットを聴きたいと思ったら1stを深く掘るしかないんですよ。

---深く掘るということはどういうことですか?

齋藤:これらは全部プレスされた時期や国が違うんです。なのである意味、全部違うレコードなんです。

---なるほど。シド・バレットを追いかけてたくさん聴くためには1stアルバムのプレス違いをたくさん聴くしかない。物理的な理由なんですね。

齋藤:シド・バレットはまだピンク・フロイドがブレイクする以前のこのアルバムで脱退しているんです。引退後も引きこもりを続けていたらしいので、彼はこのアルバムが世界中で評価されたということを知らなかったんじゃないのかなと思いまして。彼の代わりに僕が聴いてあげています。

---完全に憑依してますね。じゃあプログレが好きなわけではないんですね?

齋藤:その通りです。僕は同じ⽳をずっと掘り続けていたいんですよ。プレスが違う盤がどんな⾳がするのか聴いてみたいんですね。

---このピンク・フロイドの1stの中でも⼀番思い⼊れのある盤はどれですか?

齋藤:この初回の⽇本盤なのですが、この帯は偽物でカラー・コピーなんです。

---ずいぶん綺麗にできていますね。

齋藤:これはネット・オークションで落札したのですが、売り⼿の⽅は正規の「帯付き初回⽇本盤」を⼿に⼊れた事で「帯なし」を出品したらしく、その⽅が帯をコピーして「おまけ」でつけてくれました。

---とても親切な⽅ですね。偽物の帯かもしれないけれど、完品の気分を少しだけ味わうことができる。いい話です。

齋藤:この「帯なし」の⽇本盤はたしか4万円くらいしたんですけれど、「帯付き」は本当に珍しくて市場に出てもおそらく100万円くらいするんで僕には無理ですね。

---100万円!ただの印刷物の有無で価値が20倍以上になるってすごいですね。ところで今までで⼀番⾼い買い物をしたレコードはなんですか?

齋藤:L'Arc‐en‐Ciel のアナログBOX ですね。これは関係者のみに配られた⾮売品なんですよ。

---(失笑)

齋藤:ギリ1桁万円でした…。今はもっとするみたいです。

---ピンク・フロイドから急にL'Arc-en-Cielが出てくるとは思いませんでした。

齋藤:小学⽣の頃に好きだったんです。それに、シド・バレットのスペルがSYDである経緯とハイドのスペルがHYDEである経緯はヒジョーに似ておりまして…

---これは我々おじさんには理解ができない部分かもしれません。普通、小学⽣のときに好きだったものって⾃分の⿊歴史として⼼の奥底にしまっておきたい。たまに懐かしくなって聴きたくなる気持ちもわかりますが、大⼈になってからそれに10万円出したいとは絶対に思わないですね。⾃分の⾳楽遍歴の進化の過程で捨てていったものでもあるので。

齋藤:L'Arc-en-Ciel は僕の⾳楽の原体験として強く根付いていて、大⼈になってからレコードがあるって知った時に絶対に買おうって決めていました。

---他は何かありますか?

齋藤:次に⾼いのはL⇔Rですかね。これも⾮売品の7インチですが、1インチ約1万円くらいしました。L⇔Rはコロナ以降に好きになったバンドですね。あとはかなり安値で買えましたが、レア度が⾼いのはエミネムの⾃主盤ですね。

---なるほど。それにしても⾊々なジャンルを聴いていますね。感性がナチュラルというか。我々が若い頃は趣味の範囲をある程度、制限しなければいけないような⾵潮がありました。
今のように簡単に⾳楽がなんでも聴ける時代ではなかったこともあって、⽅向性を絞って聴かないと知識を増やすことができなかった。今の若い世代の⽅が聴き⽅が⾃由で他ジャンルにも寛容かもしれません。

齋藤:今は聴き⽅を狭くしていることの⽅が不⾃然だと思いますよ。

---普段はどこでレコードを買いますか?

齋藤:実店舗でもインターネットでも買いますが、最近は店舗の⽅が多いです。できれば大型店ではなくて街の小さな中古レコード店にお⾦を落としたいと思って、昨年は特にそういうお店にたくさん⾏きました。

---レコードを売ることもありますか?

齋藤:売るときはオークションなどのネット販売は⾯倒くさいので、こちらもお店の買取サービスを利⽤します。

---⾃分以外のレコード・コレクターで尊敬してる⼈はいますか?

齋藤:先ほどの海賊盤の専⾨雑誌『Beatleg』でビートルズの記事を書いてる小沢大介さんという⼈がいまして、この⼈は本当に公式リリースのレコードは⼀切買わないらしいんです。海賊盤しか買わない。
知⼈が小沢さんの⾃宅を訪問したらしく「レコード棚の背表紙が全部真っ⽩だった」という話を聞いて感銘を受けました。海賊盤ってジャケットが無いので。

---それはすごく濃厚なコレクションですね。

齋藤:今、僕が持っているレコードの枚数って2000枚程度ですけれど、枚数をたくさん持っている事が良いとは思わないんですよ。それよりも内容の濃さに興味があるんです。
その⼈の大事にしているポリシーがコレクションの中⼼にある事が良いと思ってます。

2024年1⽉某⽇

***

 今回、我々にとってカルチャーショックだったのは、⾳楽の聴き⽅に全く垣根がないということでした。ヒップホップからLʼArc-en-Cielまで聴いている事を⾃信たっぷりに話す姿がとても新鮮でした。彼がそういうタイプなのか、それとも今の若い⼈たちの傾向としてそうなのかは今回の取材だけではわかりませんが、昔はターゲットを絞って集中的に深く掘り、そのジャンルを極めるということが良いとされていました。さらに我々よりも上の世代は「ジャズならこう、ソウル、ブルースはこう聴くべき」というような⽂脈に沿った聴き⽅が常識で、そのカウンターもあって⼀般評価されていないものを「格好良い」という尺度でディグするレア・グルーヴ世代が誕⽣しました。今はさらに広く深く、好きなものを好きなだけ聴けるようになった時代。いろんな体裁にこだわる必要がなくなったのかもしれません。
 ⾃由な聴き⽅がその⼈の個性になっていき「好きなものは好き」と皆が⾃信を持って⾔える時代になった。そう考えるととても素晴らしいことだと思いますが、⼀⽅でSNS やネット情報ばかりに⾝を委ねるばかりではなく、時には本を読むなど先⼈の蓄積したデータや歴史を学ぶことはいつの時代も大切なことです。体系的に捉えた上で⾃らの趣向にあった取捨選択が、よりリアルなレコードのディグに繋がるということを⽼婆⼼ながら記しておきたい。
 いずれにしてもネットやサブスクがあるにも関わらずフィジカルにこだわり、コスパも効率も悪いレコード盤に特別な愛着を感じてコレクションしていく彼の姿勢にはリスペクト。
レコードには世代を超えて⼈を惹きつける魔⼒があるんですね。

VINYL GOES AROUND
⽔⾕聡男
⼭崎真央

VMO a.k.a Violent Magic Orchestra - ele-king

 「アート・ブラックメタル・テクノ・プロジェクト」、VMOことViolent Magic Orchestraが8年ぶりのアルバムを発表する。題して『DEATH RAVE』、ブラック・メタル、ハードコア、ガバ、ノイズなどがミックスされたサウンドに仕上がっているようだ(3/13リリース)。Vampilliaのメンバーはじめ、メイヘムやSunn O)))での仕事で知られるアッティラ・チハーら多くの面々が集結しており、Kentaro Hayashi、CRZKNYなども参加。新代田FEVERおよび東心斎橋CONPASSでのリリース・ライヴも決定している。詳しくは下記より。

VMOが8年ぶりのセカンドアルバム「DEATH RAVE」をベルリンのNEVER SLEEPより3月13日に発売決定。併せてリリース記念ライブの詳細も発表。

VMO a.k.a Violent Magic Orchestraが約8年ぶり、ザスターがボーカルを務める新体制後、初となるアルバム「DEATH RAVE」をベルリンのGabber Eleganza率いるレイヴ、ハードコアシーンの総本山 NEVER SLEEPよりリリースする。今作は世界中のメタル、テクノ、アートなどあらゆるジャンルのフェスに出演したVMOの経験とスタジオでの実験が爆発的な化学反応をおこしDEATH RAVEと呼ぶに相応しい作品が完成した。anoのちゅ、多様性を作詞/作曲したエンペラーaka真部脩一らVampilliaメンバーはもちろん、紅一点のボーカルザスター、ブラックメタルの伝説メイヘムのAttila Csihar、現代エクストリームハードコアの雄FULL OF HELLよりDylan Walker、アイスランドの新しい神秘Kælan Mikla、レーベルのボスGabber Eleganza、ビョークの最新作に参加したインドネシアのガムランガバユニットGabber Modus OperandiのIcan Harem、テクノの聖地TRESORからリリースするminimal violenceのinfinity devisionら海外勢に加え、アルセストことKentaro Hayashi、リヴァイアサンことCRZKNY、そしてMASF/ENDONのTaro Aikoら国内勢も参加したブラックメタル、テクノ、ハードコア、GABBER、ノイズがDEATH RAVEの名の下にネクストレベルで完成した。

そして、このアルバムを引っ提げて行われる5月末から7月頭までスペインのSONAR、北欧最大の野外フェスROSKILDEなど巨大フェスを含むリリースワールドツアーの前に、作品の世界を再現するDEATH RAVEを東京と大阪で開催。このリリースライブにはインドネシアより今作にも参加するGMOのIcan Haremも来日。ブラックメタルの暴力性とRAVEの快楽主義が奇跡的に融合する VMOのアルバムとライブを是非お楽しみください。

VMO presents
『DEATH RAVE リリース♾️メモリアル DEATH RAVE』

東京編
@新代田FEVER

2024/03/19 (火)
18:30open 19:00start
3500yen
4000yen
チケットURL
https://eplus.jp/vmo/

【ACT】
VMO
【special guest 】
Ican Harem from Gabber Modus Operandi
Jun Inagawa

大阪編
@東心斎橋CONPASS

2024/03/22 (金)
18:30open 19:00start
3500yen
4000yen
チケットURL
https://eplus.jp/sf/detail/4045710001-P0030001

【ACT】
VMO
【special guest 】
Ican Harem from Gabber Modus Operandi
KNOSIS(DJ set)


VMO a.k.a Violent Magic Orchestra「DEATH RAVE」
2024.03.13 Release | NSR014/VBR-VMO202403 |
Released by NEVERSLEEP (Japanese distribution by Virgin Babylon Records)
各種サブスクリクション同時配信
https://sq.lnk.to/NSR014_
アナログLP版発売日未定

Track List
1. PLANET HELVETECH
2. WARP
3. The Destroyer electric utilities version
4. Choking Persuasion
5. Kokka
6. Welcome to DEATH RAVE feat. Ican Harem - Gabber Modus Operandi
7. Satanic Violence Device feat. Dylan Walker - Full of Hell
8. MARTELLO MOSH PIT feat. Gabber Eleganza
9. VENOM
10. Abyss feat. Kælan Mikla
11. Ecsedi Báthory Erzsébet
12. SUPERGAZE
13. FYRE feat. Infinity Division
14. Song for the moon feat. Attila Csihar - MAYHEM
15. Flapping Dragon Wings


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Camille Yarbrough - ele-king

Lloyd McNeill - ele-king

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