「iLL」と一致するもの

Mala In Cuba - ele-king

 ジェイムス・ブレイクがダブステップをメランコリック・ポップへと展開させたとき、マーラはそれをハイブリッド・ミュージックへと押し進めた。ともにダブステップのクライマックスだ。
 いよいよ来週末、金字塔『MALA IN CUBA』をひっさげてのマーラの来日が間近に迫まっている。7時からのライヴ公演がひとつあって、深夜からはDJとしてのプレイもある。スウィンドルとゴス・トラッドも出演する。個人的には当然『MALA IN CUBA』のライヴ演奏を聴きたいと思っているのだが、スウィンドルのDJにも興味津々である。なにせこの若者は、グライムというちんぴらのシーンからジャズをキーワードにダンスしているのである。単なるフディーズでもないし、お行儀の良いジャズでもない。『MALA IN CUBA』がすでに評価の決まっているアートの再現だとしたら、スウィンドルは未知の領域にいる。『Long Live The Jazz』も格好良かったからな~。

DBS + UNIT presents
DBS 17th Anniversary
MALA IN CUBA LIVE!
2013.10.11 (FRI) at UNIT

★キューバ音楽とロンドン・ベースミュージックの甘く危険な邂逅......昨年アルバム『MALA IN CUBA』で真のカルチャー・クラッシュを体現したUKダブステップのパイオニア、マーラ(デジタル・ミスティックズ)がキューバのスピリットとミュージシャンシップを凝縮するライヴ・バンドで代官山UNITに凱旋! 未体験ディープ・ゾーンへ誘う!

今回は【EVENING SESSION 】と【MIDNIGHT SESSION 】の2公演! 幅広い世代に"MALA IN CUBA LIVE!"を体感してもらえるよう【EVENING SESSION 】も開催! 【MIDNIGHT SESSION 】では今、大注目のSWINDLEがDJとしてもプレイ! そして勿論deep medi ファミリーのGOTH-TRADも参戦!

【EVENING SESSION 】
MALA IN CUBA LIVE!

open 19:00 /start 20:00
adv. 3800yen door.4300yen (without drink)
未成年割:未成年(20歳未満)の方には当日入り口にて500円キャッシュバック(要身分証)

【MIDNIGHT SESSION 】
MALA IN CUBA LIVE!
dj's: SWINDLE , GOTH-TRAD
Yama a.k.a. Sahib , Osam "Green Giant"
Vj: SO IN THE HOUSE

SALOON:TETSUJI TANAKA,DJ MIYU,PRETTYBWOY,JUNGLE ROCK,DUBTRO,Helktram

open/start 23:30
adv. 3800yen door.4500yen

info. 03.5459.8630 UNIT
https://www.unit-tokyo.com https://www.dbs-tokyo.com

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Ticket outlets:9/7 ON SALE!
【EVENING SESSION 】PIA (0570-02-9999/P-code:211-250)、 LAWSON (L-code:74303)
【MIDNIGHT SESSION 】PIA (0570-02-9999/P-code:211-251)、 LAWSON (L-code:74307)、e+ (UNIT携帯サイトから購入できます)
clubberia/https://www.clubberia.com/store/

渋谷/disk union CLUB MUSIC SHOP (3476-2627)、TECHNIQUE(5458-4143)、GANBAN(3477-5701)
代官山/UNIT (5459-8630)、Bonjour Records (5458-6020)
原宿/GLOCAL RECORDS (090-3807-2073)
下北沢/DISC SHOP ZERO (5432-6129)、JET SET TOKYO (5452-2262)、
disk union CLUB MUSIC SHOP (5738-2971)
新宿/disk union CLUB MUSIC SHOP (5919-2422)、Dub Store Record Mart (3364-5251)
吉祥寺/Jar-Beat Record (0422-42-4877)、disk union (0422-20-8062)
町田/disk union (042-720-7240)
千葉/disk union (043-224-6372)
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★MALA IN CUBA

UKダブステップ界の最重要人物、マーラ。その存在はシーンのみならずジェイムス・ブレイク、エイドリアン・シャーウッド、ジャイルス・ピーターソン、フランソワKら世界中からリスペクトされている。キューバ音楽の精髄を独自の音楽観で昇華した金字塔アルバム『MALA IN CUBA』でネクストレヴェルへ突入、UKベースカルチャーとキューバのルーツミュージックを見事に融合させた音楽革命家である!
サウス・ロンドン出身のマーラはジャングル/ドラム&ベース、ダブ/ルーツ・レゲエ、UKガラージ等の影響下に育ち、独自の重低音ビーツを生み出すべく盟友のコーキとデジタル・ミスティックズ名義で制作を始め、アンダーグラウンドから胎動したダブステップ・シーンの中核となり、自分達のレーベル、DMZからのリリースとDMZのクラブナイトで着実に支持者を増やす。'06年に自己のレーベル、Deep Medi Musikを設立、自作曲の他、精鋭アーティスト達の優れた作品リリースでシーンの最前線に立つ。
2011年5月、マーラはキューバの首都ハバナをジャイルス・ピーターソンと共に訪れ、ジャイルスの作品『HAVANA CULTURA: The Search Continues』用のレコーディング・セッションを行なう。その際、マーラはロベルト・フォンセカ(ピアノ)ら才能溢れる現地ミュージシャンやヴォーカリストと別セッションを敢行し、帰国後その音源を自身のエクスペリメンタルなサウンドと融合/再構築、12年9月にアルバム『MALA IN CUBA』(Brownswood Recordings / BEAT RECORDS)としてリリースされる。ワールド・ミュージック/エレクトロニック・ミュージックを革新する『MALA IN CUBA』により新次元に突入したマーラはロンドンでバンドを組織し、WOMAD、OUTLOOK等、数々のフェスティヴァルにライヴ出演し、反響を呼んでいる。
https://malaincuba.com/

MALA IN CUBA LIVE! メンバー:
MALA(mixing desk)
SWINDLE(keys)
OLIVER SOARES(congas & bongos)
TAKASHI NAKAZATO(timbales)

★SWINDLE(Butterz / Deep Medi Musik / Anti Social Entertainment, UK)

今回、MALA IN CUBA LIVEのキーボード奏者として来日、単独DJセットも披露するスウィンドルはグライム/ダブステップ・シーンのマエストロ。幼少からピアノ等の楽器を習得、レゲエ、ジャズ、ソウルから影響を受ける。16才の頃からスタジオワークに着手し、インストゥルメンタルのMIX CDを制作。07年にグライムMCをフィーチャーした『THE 140 MIXTAPE』はトップ・ラジオDJから支持され、注目を集める。そしてSO SOLID CREWのASHER Dの傘下で数々のプロダクションを手掛けた後、09年に自己のSwindle Productionsからインストアルバム『CURRICULUM VITAE』を発表。その後もPlanet Mu、Rwina、Butterz等からUKG、グライム、ダブステップ、エレクトロニカ等を自在に行き交う個性的なトラックを連発、12年にはMALAのDeep Mediから"Do The Jazz"、"Forest Funk"を発表、ジャジーかつディープ&ファンキーなサウンドで評価を決定づける。そして13年7月、待望のニューアルバム『LONG LIVE THE JAZZ』(Deep Medi)がリリースされ話題が沸騰している。8月にはboilerroom.tvでフュージョン界の巨匠、LONNIE LISTON SMITHとライヴ共演し、大反響を呼んだばかり。
https://www.facebook.com/swindleproductions
https://twitter.com/swindle

★GOTH-TRAD(Deep Medi Musik, BTC,JPN)
ミキシングを自在に操り、様々なアプローチでダンス・ミュージックを生み出すサウンド・オリジネイター。03年に1st.アルバム『GOTH-TRAD』を発表。国内、ヨーロッパを中心に海外ツアーを始める。05年には 2nd.アルバム『THE INVERTED PERSPECTIVE』をリリース。また同年"Mad Rave"と称した新たなダンスミュージックへのアプローチを打ち出し、3rd.アルバム『MAD RAVER'S DANCE FLOOR』を発表。06年には自身のパーティー「Back To Chill」を開始する。『MAD RAVER'S~』収録曲"Back To Chill"が本場ロンドンの DUBSTEP シーンで話題となり、07年にUKのレーベル、SKUD BEATから『Back To Chill EP』、MALAが主宰するDEEP MEDi MUSIKから"Cut End/Flags"をリリース。12年2月、DEEP MEDiから待望のニュー・アルバム『NEW EPOCH』を発表、斬新かつルーツに根差した音楽性に世界が驚愕し、精力的なツアーで各地を席巻している。
https://www.gothtrad.com/
https://www.facebook.com/gothtrad


vol.55:素晴らしき新生ディアハンター - ele-king

 ディアハンターは、ジョージア州、アトランタのバンドなのだが、何かとニューヨークのイメージがある。ニューヨークでレコーディングしたり、レコード・レーベルがニューヨークだからだろうが、その第二の故郷で9月の半ば、3日連続ショー(全てソールドアウト)をおこなった。
 ジョージア州に縁のある著者なので、軽い気持ちで、1日目(ミュージック・ホール・オブ・ウィリアムスバーグ)を見にいったが、余りにも印象に残ったので、最終日(ウエブスター・ホールも見にいった。
 1日目はノイズ/エクスペリメンタル、最終日は歌もの中心で、最新アルバム「モノマニア」だけでなく昔のアルバム、EPからのヒット曲をミックスした。バンドの多様性がうかがえる。ブラッドフォード・コックスは、1日目はパンク少年、3日目はヒョウ柄のワンピース(黒髪ウイッグ付き)。以前は、ジョーイ・ラモーンの格好で登場したり、指に包帯を巻いたり、彼のコスプレも期待を裏切らない。
 ディアハンターから想像できるプレゼンテーション(ライトショー、ノイズフリーク)他に、驚いたのは超自然なバンド演奏。メンバー・チェンジを経て5人組になったのだが、レコードをそのまま演奏するのではなく、曲と曲との転換、繋がり、間、フェイドアウト/インなどで全ての曲に新しい命が吹き込まれていた。
 ほとんどMCはない。毎日セットは違うが、バンド演奏力のタイトさは極まっている。ブラッドフォードの、フリーキーなヴォーカルと対象に、ギタリストのロッケットがヴォーカルを取る"デザイヤー・ラインズ"では、バンドの温度を良い具合に下げ、"モノマニア"のノイズ・フリークが続いた後に来る"トワイライト・アット・カーボンレイク"のドラマチックな導入など、全体バランスも美しい。後半は、ブラッドフォードが観客にギターを渡し、ステージで居眠りしたり、被っていたウィッグをとってみたり(!)、ショーの間は、目と耳をフル回転させられっぱなしだった。
 ショーの終盤、ブラッドフォードは、ソールドアウトの会場を見回すと、故郷アトランタでは受け入れられなかったが、ニューヨークのみんながサポートしてくれたからいまがあると、観客ひとりひとりへ感謝を表し、拍手喝采を誘った。

photo via Brooklyn Vegan

 ブラッドフォードは、パンクだ、予測不可能だと言われる。自分たちを、インディ・バンドではないと言ったり、モリッシーへの感情をぶつけたり現在の社会経済状況への不満などを言及している。それでも、故郷のアトランタで、黙々と音楽を作る、彼のモンクな生活のほうが容易に想像出来てしまう。彼は究極にデリケートで、手助けが音楽だ。ショーのバックステージには、子供のような、はつらつとした彼の顔があった。「このアルバムで若返った」と言う、彼の言葉通りだった。

 知り合いが、ファーザー(元グレイトフル・デッドのメンバー)のショーを9日連続で、キャピタル・シアターに見にいくと興奮していたのを思い出した。彼らは9日間、1度も同じ曲を演奏しない。「9日も同じバンドを見に行くの?」と訝しがったが、今回のショーを見て、彼の言ってる意味がわかった気がする。裏切られたり、予想に反したりもするが、毎日でも見たいと思わせる中毒性を持っている。日本には12月に行くそうだ。新生ディアハンターに期待して良いと思う。





以下、3日間のセットリスト

Deerhunter at Music Hall of Williamsburg - 9/17/13 Setlist: (via)
Earthquake
Neon Junkyard
Don't Cry
Revival
Desire Lines
Blue Agent
The Missing
Hazel St.
Helicopter
T.H.M.
Nothing Ever Happened
Sleepwalking
Back to the Middle
Monomania
Encore:
Cover Me (Slowly)
Agoraphobia
Fluorescent Grey
--
Deerhuneter at Webster Hall - 9/18/13 Setlist: (via)
Sailing
Cryptograms
Lake Somerset
Desire Lines
Dream Captain
Never Stops
Little Kids
T.H.M.
The Missing
Spring Hall Convert
Saved By Old Times
Revival
Helicopter
Nothing Ever Happened
Encore:
Sleepwalking
Back to the Middle
Monomania
--
Deerhunter at Webster Hall - 9/19/13 Setlist:
Octet
Neon Junkyard
Don't Cry
Revival
Like New
Desire Lines
Hazel St.
T.H.M.
Rainwater Cassette Exchange
The Missing
Helicopter
Sleepwalking
Back to the Middle
Monomania
Twilight at Carbon Lake
Encore:
Cover Me (Slowly)
Agoraphobia
He Would Have Laughed


https://www.brooklynvegan.com/archives/2013/09/deerhunter_play_11.html

interview with Primal - ele-king

草食系代表でも遊ぼう本当は誰かと居たい男
欲をいえばGender Free だがなりたくないSex Machine
かなりイカれた本心矛盾を暴露してDis覚悟
女装して闊歩するなら悪と戦えクソハーコー
巷で言う正義は薄れ今まで信じたものは捨て
暴かれる勝手気ままのGame 俺はゲイなのに男ぶってる"性の容疑者"

コツコツ働いて有意義なものに投資をするぜ
負けたくねぇぜProletariat
中流階級とはバチバチのブス
後づけ管理職は似合わないPass
哀愁漂わせるが職人通 "Proletariat"

 9月8日、渋谷でプライマルのライヴを観た。MCバトル〈罵倒〉のショーケースだった。小一時間前にステージにいたのは、若きラップ・スター、KOHHとLIL KOHHとやんちゃな仲間たちだった。LIL KOHHはバットを持って登場した。KOHHは、豪奢なブランドに身を包み、腕のタトゥーをのぞかせ、人を食ったような身振りで、軽やかに何度もこうくり返した。「他人は気にしない生き方/適当な男♪」。僕はその刹那的な人生観、怖いもの知らずの態度に恐怖と不安と羨望を感じた。文句なしにスワッグだった。時代は変わった。歳もとった。プライマルは彼らと180度違うライヴをやった。迷いを振りはらうように、カラカラになった喉を酷使しながら、曲間も絶え間なく必死の形相でフリースタイルを続けた。その姿は、素晴らしくイルだった。


PRIMAL
プロレタリアート

Pヴァイン

Amazon (通常盤) Amazon (初回特典ミックスCD付き限定盤) iTunes Review

 プライマルの6年ぶりとなる最新作のタイトルは『Proletariat』だ。80年代の日本のパンクかオルタナ・ロックのプロテストを思わせる。ECDを連想する人もいるだろう。それはある意味で間違いではない。プライマルは性と家族と労働、憂国について赤裸々にラップしている。労働者の心情を歌っている。大胆で、勇敢な性の告白をしている。そして、頑強なニッポンの男性社会の矛盾を捨て身で暴露している。20代にワイルドサイドのど真ん中を闊歩し奔放に生きたラッパーは、いま30代中盤となり、どう生きるかを模索している。新たなワイルドサイドを歩くのか? ワイルドサイドとは別の道を探すのか? いくつもの問いがあふれ出しては、彷徨っている。そのことばの放浪が、プライマルのフロウの核心ではないかと思う。プライマルはアクセルとブレーキをせわしなく交互にかけ、ぐるりと迂回しながら、見えない目的地を目指して道なき道をガタガタと進んでいるようだ。停止と急発進をくり返し、たったいま自分が吐き出したことばを次のラインで否定し、さらにその次のラインで肯定してみせたりする。脳内で延々とループする矛盾と逡巡が、オン・ビートとオフ・ビートの狭間でグルーヴを生み出し、独特のリズムを前進させる。目的地を定めないがゆえのリズムのダイナミズムがある。MSCとして精力的に活動していた00年代前半から中盤、そして前作『眠る男』のころに比べれば、殺気立ったラップは鳴りを潜めているように思う。MSCのファースト・アルバムにして、歴史的傑作である『Matador』に、プライマルは"支離滅裂"という名曲を残しているが、いまだ彼は正気と狂気のど真ん中を歩いている。

 『Proletariat』には、多くのトラックメイカーやラッパーらが参加している。盟友のDJ BAKUをはじめ、T.TANAKA、O9、HIROnyc、OMSB、Rhythm Jones、MALIK、DJ TAIKI、DJ MARTIN、琥珀、SKE、The Anticipation Illicit Tsuboi、そして先日他界したMAKI THE MAGIC。スクラッチでOMORO、ビートボクサーの太華、MASTER、Sharleeもいる。ジャズ・ヒップホップ・バンド、WATASHIとの曲もある。PONY、MESS(メシア・ザ・フライ)、SATELLITE、そしてTABOO1と漢とRUMIとの"岐路"がラストを飾る。

 目の前に、純朴な佇まいをしたイルなラッパーがいる。プライマルは、いま何と闘っているのだろうか。一時間半じっくり語ってもらった。

いちばんの闘い、苦しみっていうのは、孤独感が芽生えたことですね。

アルバムを聴いて、プライマルさんがいま何と闘っているのかということに興味がわいたんです。今日は、そのあたりのことを訊きたいと思ってやってきました。

プライマル:そうですね。具体的な、目に見える敵っていうのはもう無数にあり過ぎて、否定できないですよね。で、自分のなかの悪っていうか、ダメなところをどう抹殺するかっていうよりも、ホスピスじゃないですけど、どう癌を良くするかっていう、ある意味そういう諦め的な部分もあるとは思うんですよね。

ファースト『眠る男』から6年経ったじゃないですか。病んだり、いろいろ道草もしたり、大変だったっていう話も聞いてて(笑)。

プライマル:ははははは。

どういう6年でした?

プライマル:うーん、まあ、1枚目のアルバムのときからずっと抱えてた自分の闇っていうんですかね、性癖とか。そういうものを清算できない自分が口惜しくて、そういうのを曝け出すことによって、外からの救いを求めてるのかもしれないですね。何か言ってもらいたいっていうのもある。いちばんの闘い、苦しみっていうのは、孤独感が芽生えたことですね。

でも、結婚もされて、お子さんも生まれたんですよね。

プライマル:そうですね。そういう部分ではやる気になるんですけど、でも、根本的なところで孤独っていうのを思い知らされましたね。

最近はMSCも再始動しそうな気配がありますけど、MSCとしてのグループの活動はここ5、6年は順風満帆とは言えなかったじゃないですか。そういうことも影響してますか?

プライマル:そういうのもありますよね。逆にそれを知ることによって、人との繋がりは大事なんだなと思い知らされました。だから、いまどん底ってわけではないですけど、どん底にいたほうが上がりやすいんじゃないかなって。

どん底を実感したのはどんなときですか?

プライマル:単純にお金とかでもありますし、ラッパーとしてスターダムというか、そういうのを目指してやってたのに、辞めるか辞めないかのところまで落ち込んだ辛さですよね。

MSCは00年代中盤までに一時代を築いたと思うんですよ。その後のラップ・シーンにも大きな影響を与えたし、実際MSCを聴いてラップを聴きはじめたとか、ラップをはじめたっていう人は本当に多いじゃないですか。アンダーグラウンドのヒップホップが、これからスターダムに上がって行く準備期間というか、そういう希望がまだ持てた時代だと思うんですよね。でも、いま、あの世代のラッパーで厳しい現実にぶち当たってる人が多いのも事実じゃないですか。

プライマル:うんうんうん、そうですね。

わかりやすい形での成り上がりはなかったというか、そういう現実があるじゃないですか。プライマルさんは、そのあたりについてどういう感想を持ってますか?

プライマル:新宿STREET LIFE』を作ってる時点でその未来はかなり見えてましたね。けっきょく自分たちで何かを作って行かなきゃいけないんですけど、あまりにもいろんな人が関わってきて、イニシアチブもすごいグジャグジャになったりして、ただの商品として扱われてるのがすごいイヤだった。だから、いずれネタが切れた瞬間に、使えない商品にされるんだろうなあっていうか、必然的にそうなったと思うんですよね。漢がソロ(『導―みちしるべ―』)を出した時点で、商品化されてなくなるな、みたいな感じはしたんですよね。でも、俺もあいつに影響受けてるんで、真似する感じで自分のソロを出して。でも、そこであまり金銭的に芳しくなかったりしました。

......ギャラがなかった?

プライマル:いや、なかったわけじゃないんですよ。それだけ最初にお金かけてくれて、面倒も見てくれたんで、一概にはそうは言いたくないんです。ただ、レーベルが自分の未来まで、俺を養ってくれるっていうのは幻想でしたよね。自分でやんなきゃいけない部分を疎かにしてたっていうことですよね。だから、いまゼロからはじめるために、漢だったら、鎖(鎖グループ。漢が主宰のインディ・レーベル)をやってるんじゃないですか。TABOO1は昔からブレないっていうか、自分のスタンスを維持しつつ、作品を作っていくっていう部分ではいちばんクレバーだと思うんですけどね。自分にとってゼロからやるっていうのが、今回のアルバムなんですよ。

MSCはとくに代表作の『Matador』と『新宿STREET LIFE』で、世の中や社会や内面のダークサイドをラップして、あれだけ売れて、評価されて、支持を得たことに、多くの音楽ファンが興奮したと思うんですよね。

プライマル:なるほどね。いまもそういうラップする人はたくさんいるし、どんどんがんばってくださいって思うんですよ。生き方は人それぞれだと思いますし。でも、自分はまあ、そういうラップに共感はありますけど、ちょっと生き方を変えなきゃいけないと思ってますね。真面目に......っていうか、前向きに働かなきゃいけない。

MSCのメンバーが『Matador』や『新宿STREET LIFE』を出したころのハードなライフスタイルやあの時期にやっていた表現を、30代、40代とリアルに続けていくのはなかなかシビアじゃないですか。

プライマル:そうですね。でも、できる人もいるんじゃないですか。俺はできなかったっていうだけの話ですね。そういう気合いはなかった。

今回のアルバムにはそのあたりの葛藤もかなり表現されてると感じたんですよね。

プライマル:うーん、葛藤はかなりあったと思いますね。自分が昔作った歌詞に対しての責任ってわけじゃないですけど、そういうのを全部捨てていく感じで作ってると思うんで。

昔書いた歌詞のリアリズムから自分が遠ざかっているというか、変わったという部分で、ということですか?

プライマル:そこはありますね。今回いっしょにやってるフィーチャリングのラッパーにもテーマがわかりづらいとかってけっこう反発されて。俺のイメージっていうのがあると思うんですけど、それと違くねーか、みたいに言われて。でも、ごまかすって言うか相手をだまして(笑)、いや、まぁ、こんな感じで、ってやってもらいましたね。

ははは。

プライマル:PONYとの曲があるじゃないですか。

"Proletariat"ですよね。プライマルさんとPONYはテーマをちゃんと共有して曲を作ってる感じがしましたよ。

プライマル:PONYに関しては受け入れてくれる感じだったんですよ。

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日本ではブルジョア的なイメージが好きな人は、頑張れば自然にブルジョアになっていくと思うんです。ただ、自分は人を使うこととかがやり辛かったりするという意味で、プロレタリアート気質だなって思うんです。それだったら、そのなかでの勝ち方を探さないと負けちゃうと思うんですよ。人間の尊厳も考えた上で勝ち方を探したい。

プロレタリアートは労働者って意味ですよね。このタイトルにしようと思ったのはなぜですか? むちゃくちゃ直球じゃないですか。

プライマル:はははは。言い方が難しいんですけど、日本にはもちろん貧富の差はあると思うんですけど、どちらかと言うと、"意識階級"なのかなって思うんですよ。

意識階級?

プライマル:日本ではブルジョア的なイメージが好きな人は、頑張れば自然にブルジョアになっていくと思うんです。ただ、自分は人を使うこととかがやり辛かったりするという意味で、プロレタリアート気質だなって思うんです。それだったら、そのなかでの勝ち方を探さないと負けちゃうと思うんですよ。人間の尊厳も考えた上で勝ち方を探したい。だから、その部分で自分はかなり共産的だと思いますね。

1曲目の"MY HOME"のフックで、いきなり「コミュニスト」というリリックが出てきますよね。

プライマル:そうですね。サビは、コミュニストになるのか、自分の家族を選ぶのかっていうことをラップしてるんですよ。その曲のなかでマイホーム主義って言葉も使ってるんですけど、家族との生活を優先させて、革命をできないやつという意味で自分はマイホーム主義者だと思うんですよ。

でもプライマルさんは、自分がラッパーとして成功したり、家族が幸せに暮らせるだけでは満足できないというか、社会の幸せやより良い理想の国や社会のあり方についてどうしても考えちゃう人だと思うんですよ。

プライマル:別に政治家になるとかではないんですけど、そういうのはありますね。逆にそういうトピックしかないから、つまんない人はつまんないと思う。まあ、バランスを取って、人が気になるようなところ探してやってる感じではあるんですけどね。ただ、どうなんすかね、ラップとしてはそういうのはやっぱり無いほうがいいと思うんですけどね。

でも、そこがプライマルさんの個性のひとつだと思うんですけど。

プライマル:ただ、(キエる)マキュウとかとやると、「そういうのはあんまり面白くない」ってクリ(CQ)さんがはっきり言ってきてくれたりもしたんで。

それこそMAKI THE MAGICさんは自分の政治思想を強く持っていた人だと思いますけど、音楽には反映させないというのを、信念にしていたところがありましたよね。

プライマル:そうですね。ラッパーとしてそういうところはすごい影響されてますね。でも、俺の場合、出ちゃってますけど。

MAKIさんとはどういう関係だったんですか? 前作の"SHADOW"と"My Way"はマキさんのトラックですし、今作でも"武闘宣言2.0"を作ってますよね。

プライマル:『新宿STREET LIFE』ではじめて仕事させてもらって、MAKIさんの作った"矛盾"っていう曲のヴァースを褒めてくれていたという話を人伝てに聞いて、嬉しかったですね。『新宿STREET LIFE』に関していえば、俺はプロデュースはまったくしていないアルバムなんですよ。漢と〈ライブラ〉の社長と目崎くん(『Proletariat』のデザイナーのDirty MezA)がコンセプト考えて、トラックを決めて、という感じで。だから、俺の政治的な部分は反映されていないですね。だから、二木くんは逆に良いんじゃないですか、ははははは。

いやいやいや、そんなことないですよ(笑)。プライマルさんのソロも僕は大好きですよ。MAKIさんとはけっこう密な関係だったんですか?

プライマル:そうですね。マキュウの飲み会とかイヴェントにちょくちょく顔出すようになって、「このトラック、どう?」みたいなことを言われるようになって。

けっこう飲んだりはしてたんですか?

プライマル:かなり飲んでましたね。ある時期は月イチぐらいのペースで飲んでましたね。ソロをちょこちょこ作りはじめるのと、同時進行で「SS」っていうグループもやろうぜ、みたいな話にもなってて。

「SS」って何ですか?

プライマル:「シークレット・サービス」ってことなんですけど(笑)。まあ、ナチスの親衛隊とか、は冗談ですがいろんな意味があったんです。

はははは。プライマルさんがMAKIさんと波長というか、ヴァイブスが合ったポイントはどこだったんですか?

プライマル:なんですかね、やっぱ優しかったですね。気さくっていうか、受け入れてくれるっていうか、フツーに楽しかったですね、MAKIさんといっしょにいるのが......。

MAKIさんは、上の世代で早い段階でMSCを評価して、トラックも提供した人でしたよね。

プライマル:そうですよね。もちろん、〈ライブラ〉の人たちと仲良いというのもあって、そういう流れもあったと思うんですけど、運命的に出会った感じですかね。

"子供とママと家庭"っていう曲がありますけど、家族ができたのはやっぱり大きいんじゃないですか?

プライマル:回帰した感じですよね。自分の家族は家によくいたんで、昔は家がイヤでしたね。でも、親父が10代の終わりごろに亡くなって、引きずってた部分はあったんですけど、20代は好き勝手に生きて。でも、自分が家庭を持ったことで、また家族を意識するようになったんじゃないですかね。

それにしても、"子供とママと家庭"というタイトルもまた直球ですね(笑)。

プライマル:へへへへへ。俺、歌謡曲とかフォークが好きなんで、そういう感じで行きたいっていうのはあったんですよね。歌謡曲やフォーク系の人のリリックってかっこいいじゃないですか。今回は誰にも文句言われないし(笑)。

フォーク系というと、たとえば岡林信康とか?

プライマル:あー、そこまで濃くないと思いますね。吉田拓郎とか。

泉谷しげるとかは?

プライマル:泉谷しげるとかも好きですね。でも、やっぱり、女々しいっていうか、昔のアイドルの曲も好きですね。松田聖子とか好きですね。

松田聖子!? へー、それはやっぱり歌詞の部分?

プライマル:歌詞も好きなんですけど、なんか共感がありますね。俺は昔からあまり男臭い歌詞が書けないんですよね。

"性の容疑者"のリリックの内容は衝撃的ですよね。

プライマル:そうですね。

これは実体験というか、ゲイになりきってラップしているということですか?

プライマル:いや、もう......俺はゲイだから、といったら勘違いされるので、バイみたいになっちゃって。

それはプライマルさん自身が?

プライマル:そうですね。

え!?

プライマル:はい。だけど、二丁目にいるようなゲイにもなりたくねぇなっていうのもあって。

自分がゲイっぽいって感じるときがあるんですか。

プライマル:「ゲイっぽいって感じる」っていうか、まあ、男遊びとかしちゃいましたよ(笑)。

マジっすか(笑)。それは書いてもいいですか?

プライマル:いいっすよ。だって、この曲はそういう歌詞ですから。

僕はこの曲はフィクションかメタファーだと思ってたんですよ。

プライマル:いや、フィクションは書かないすね。だから、この曲はディスられる覚悟で作ったんですけど。

最近はフランク・オーシャンがカミング・アウトしたり、アメリカでは変化もありますけど、とくにヒップホップはゲイに厳しい文化ですよね。この曲を発表するのには、迷いもかなりあったんじゃないですか?

プライマル:そうですね。だから、ちょっとどうなるかはわかりません。

漢さんはなんか言ってました?

プライマル:この曲に関してはわからないですけど、そういう話はしたりするんで、「しょうがねーヤツだなー」みたいな感じなんじゃないすか。

そのおおらかな感じがMC漢らしくてすごくいいですね(笑)

プライマル:いや、でも、そこまでは優しく言われてないですけど(笑)。

挑戦的というか、攻めの曲ですね。

プライマル:リスクはあるんですけど、やっぱり攻めないとダメだなというのはありますよね。

リスクも大きいですけど、得るものも大きいと思います。反響はありました?

プライマル:みんな、この曲に関しては訊きたがってますね。だけど、まあ遠慮して訊いてこない人もいるし。

じゃあ、もう少し詳しく訊いてもいいですか(笑)?

プライマル:ははは。まあ、たいしたことではないんですけど......小っちゃいころから自分が男臭い部分に向き合うのを避けてたんですよ。ぜんぜん大事にしてこなかったんですけど、突如、逃げてきたその部分に感情的に囚われて、自分が見知らぬ人っていうんですか、そういうところに行ってしまう感じがあって。

自分のなかの見知らぬ人という意味ですか?

プライマル:そうですね。それって要はビッチじゃないですか。

それは、男に対してビッチだってことですか?

プライマル:そうですね。そういうのを訂正しないと自分がダメになるなぁって思って。

「容疑者」と付けたのはなぜですか?

プライマル:人と俺が繋がってる世界のなかで違反者であるっていう意味ですね。同性愛は否定しないですけど、ただ、性に奔放だから、"性の容疑者"なんです。自分のその部分は完全には否定できないんですけど、避けられない弱さでもあると思うんですよ。その部分をあえて出したかった。この曲に対してのアンサー・ソングもじつは作ったんですよ。"M男の運命"っていう曲があったんです。

"M男の運命"がもし収録されたとしたら、プライマルさんの自分の性に対しての考えが、リスナーに対してもう少し明確にわかりやすく伝わりましたか?

プライマル:わかりやすいってわけじゃないですけど、「こいつは、そういうヤツなんだ」みたいのはもう少し伝わったと思います。まあ、でも、そこまでは言う必要はねぇかなと思いましたし、その曲を入れて自己肯定になってしまうのも逆に良くないと思ったんで、入れませんでしたね。まあ家庭もありますし、自分の子供が曲を聴いて食らって、「はぁ!?」とかなっちゃうのもあれなんで。"M男の運命"を入れなかったから、謎になっちゃったのかもしれないですね。

なるほどー。

プライマル:でも、"性の容疑者"はどうしても入れたかったですね。アルバムは、"血"と"性の容疑者"、"御江戸のエリア"とかが最初に完成して、そこから改善策を探っていくっていう感じで曲を作ってたんですよね。最低のライン、最低のヴァイブスです、っていうところから、ちょっと頑張ってみます、みたいな感じでアルバムを作っていったんですよ。

"性の容疑者"を作ったのは結婚する前ですか?

プライマル:結婚してましたね。

そう考えると、"性の容疑者"から"子供とママと家庭"、 "Proletariat"、それから最後の "岐路"まで一貫した流れがありますね。

プライマル:どうしようもないですけどね、ほんと。奥さん、子供には申し訳ない。

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漢が一時期いっつもライヴで言うセリフがあったんですよ。「勉強ができなくてもいいから普通でいてくれって親によく言われた」って。「俺に言ってんなぁ」ってその言葉がやけに響いちゃって。

闘いっていう意味ではほんとにいろんな側面の闘いがありますね。性、家族、労働、あと憂国もありますよね。

プライマル:"性の容疑者"の闘いがいちばん最大かもしれないですね。そこが起点で、どうバランス良く生きて行けるかっていう闘いがあるんで。働くことはできるようになった、だけど、なにかフツーじゃないぞ、みたいな。二丁目にいるような人たちを全否定するつもりはないんですよ。ただ、自分はそうはなりたいと思わなかったですね。

それはどうしてですか?

プライマル:もちろん二丁目だけじゃないと思うんですけど、人間愛で行けばそういう方向性も間違ってはいないと思うんですよ。ただ、政治や闘争っていう部分で、まったく意見ができなくなると思ったんですよ。そういう選択を迫られたときに、自分はそうじゃないようにやるしかないと考えましたね。もちろん、簡単に人を判断するのは良くないと思いますけど、自分はだから、そういう意味でもプロレタリアートなんだと思いましたね。

ああ、なるほど。それは男性社会のなかで闘いたいということですかね。

プライマル:いや、いまのはちょっとテキトーに言い過ぎたところもありますね。まあ、一般的な考えのところで頑張りたいって思ったんですよ。でも、それだけじゃ、やっぱり変わっていかない世界がすごく見えた6年でもありましたね。

「変えたい」というのは、個人的なものですか? それとも社会的なものですか? 両方ですか?

プライマル:すごい個人的なものですね、変わって行きたいっていうのは。社会はどこにでも存在しているし、けっきょくどこのコミュニティに入り込むかだと思うんですよ。それを自分で作るほど、自分はデカくないですし。最低限、家庭をなんとか成立させて、子供がでかくなれば、その後自由にやるんでもいいのかもしれないんですけどね。なにを言いたいのか、まったくわかんなくなってきましたね。ぐちゃぐちゃになってきました(笑)。

いや、大丈夫です。一貫してますよ。

プライマル:漢が一時期いっつもライヴで言うセリフがあったんですよ。「勉強ができなくてもいいから普通でいてくれって親によく言われた」って。「俺に言ってんなぁ」ってその言葉がやけに響いちゃって。そういう部分じゃないですかね。

MSCのなかでTABOO1さんは正統派のBボーイという感じがするんですけど、プライマルさん、漢さん、O2さんってかなりイルというか、変態的な側面が強いじゃないですか。変わり者って言ったらあれですけど、なんでそんなメンツが集まったんですかね。

プライマル:間違いないですね。でも、なんで集まっちゃったのかはまったくわからないですね(笑)。

はははは。

プライマル:でもイルは役立たないですよ、社会で。ほんとに(笑)。ただの自分勝手な人だと思うんすよね。

いやいや、でも、イルなラッパーが新しい価値とスタイルを生み出して、イルであってもいいんだって思えるラッパーとか人とか社会を作るんじゃないですか。

プライマル:ああ、なるほど。そういうのは、まあわかりますけど、あんまり自己肯定したくないすよね。でも、そう考える時点でけっこうイルですよね。

そうですね(笑)。

プライマル:ふふふふふ。あと、本読んだりするのも好きですけど、それだけだと不安になりますね。働けば、安いけど、お金をもらえる充実感があるじゃないですか。でも、そこで満足しちゃって安住しちゃうのがプロレタリアート的な考えですよね。自分はそういう気質だなって思って、タイトルにしたんですよ。でも、やっぱりそれだけじゃダメなんですよね。

ということは、労働者であるというところに100%プライドを持ちたいわけではないんですね?

プライマル:そうではないですね。働いて頑張ってる人には申し訳ないんですけど、その意味で軽く使ってしまっているかもしれないですね。

となると、プライマルさんはどうありたいと思いますか?

プライマル:世間が許さないかもしれないですけど、ラッパーとしていまのやり方で裾野を広げていって、お金も貯めて、表現者でありつつ、投資もできるようになりたいですね。やっぱり「脱プロ」は目指したいですね。

脱プロ?

プライマル:"Proletariat"のポニーのリリックで「脱プロレタリアート」ってあるじゃないですか。脱プロはやっぱ目指すべき道だとは思うんですよね。でも、ブルジョアになりたいのかと言ったら、それも違う気もする。そもそも日本でのブルジョアの概念は難しいと思うんですよね。別に社長だったら全員がブルジョアでもないわけですし。だから、自分自身まだまだ矛盾していて、思想が完成してないと思うんですよ。

ラップで経済的自立することは脱プロですか?

プライマル:それができたら、ひとつの脱プロだと思いますよ。そうはなりたいですよね。

じゃあ、僕はそこを少し勘違いしてました。労働者である自分に誇りを持つ、という側面もかなりあると思ってたので。

プライマル:ぶっちゃけそういうふうに言われると思いましたね。「また、プロレタリアートとかそういう言葉を軽く使ってんだ」って。

いやいやいや、そうは思ってないです。

プライマル:でも、学生運動やってた人は悲壮感が強いですよね。絶対に闘うっていう決意があるじゃないですか。プロレタリアートから抜け出すこともなく闘い続けるんだっていう。俺はそこまでは行ってませんっていうアンサー・ソングが1曲目の"MY HOME"なんです。

なるほど。ところで、MSCは、O2さんは沖縄にいていなかったですけど、先日恵比寿の〈KATA〉で久々にライヴをして、9月20日の〈KAIKOO〉でもライヴしますよね。再始動と考えていいんですか?

プライマル:まだ再始動っていうほどではないですね。完璧に決まってはいないですけど、けっきょくMSCの繋がりが深いんで。それだけ繋がりが強いから、ひとりでも欠けると崩れていったんでしょうし。でも、新宿でやってる以上、MSCをやらなきゃ意味ないっていうのはすごいありますよね。そのために新宿に住んでる。そこで家庭もできて、子供も生まれた。それで『眠る男』と今回のアルバムの違いっていうのも出てきたと思うんですよ。最近ネットで見たら、「プライマルのリリックから画が見えない」みたいなことは書かれちゃってましたけど(笑)。いちおう褒めてはくれてるんですけど、前よりは下がってるな、みたいなことを書かれて。

どの曲ですか?

プライマル:"大久保ストリート"って曲ですね。歌舞伎町にいるキャッチの方とか新宿の街にいるヘンなヤツのこととか、まぁそれは自分かもしれませんが、そういうのを描写して画が見えるっていうのはわかるんですけど、俺は別にいまそこには絡んでいないし希望していないんですよね。無機質な大久保通りが、いまの俺の現実なんで。通勤のためにチャリンコで、ただ通う道なんです。そういう現実をラップしてるから、「画が見えない」って書かれたのかなって、強引に考えてみましたね。

でも、その解釈は当たってると思います。MSCにセンセーショナルなラップを求めるリスナーは多いでしょうし、新宿の夜の街、危険な新宿を描くのがMSCというのは、みんなどうしても頭にありますから。

プライマル:そうですよね。でもいまはそっちよりも、どっちかって言うと、新宿区民としてやってますよって感じですね。

そういう形で新宿の地域に根づきはじめてるということですよね。

プライマル:結果的にそうなっていったらいいですけどね。でも、そのなかにもまた矛盾がありますよね。

Wake Up 仕事精出す Entertainerの夢を追うけど
その前に世間に演じてる俺をみな
"おむつがとれるまで"

PRIMAL - ele-king

 前作『眠る男』の"1week feat. Watashi"が大好きでいまでも年がら年中聴いているせいか、あまり時が経ったように感じない。自分が中年になったせいか。いや、しかし。6年といえば小1が小6に、中1が高3になるわけで。やはり長い。PRIMALはいったい6年も何をやっていたのだろうか?

「バンドでアルバムやろうとしてたけど、ベースができないって言いはじめてポシャって、クルーでアルバムって話もあったけどそれもダメで。2009年の夏から1年ぐらいはラップはもうフィーチャリングとライヴ言ってくれたのをやるだけでした。ラップやめる気はありませんでしたけど、病んだり、働いたりの繰り返しでしたね。その生活の打破を目指したのがこのアルバム製作です」(『Proletariat』資料より)

 なるほど。この話を聞くとリード曲"Proletariat feat. PONY"の「働き蜂 磨く己の暮らし 勝ち取る価値 親から巣立ち 猫からタチ」というパンチラインが素直に頭に入ってくる。――まったくうまくいかない。生活の歯車が噛み合ない。空回る。だけど気合い入れなきゃいけない。

 そんなおのれを鼓舞する表現に「猫からタチ」って言葉を選ぶあたりはさすがの一言。「てめえがマグロじゃオンナはイカせらんねえぞ」と。PRIMALも悶々としてたんだなあ。でもそんななかからひねり出したきた言葉だから強い。ラッパーのリリックにおいて最も重要なのはリアルだ。

 たとえばKOHEI JAPANのアルバム『Family』。このアルバムでKOHEI JAPANは、リアルの定義を文字通りの意味に置き換えた。つまり、当時の彼のとってのリアルは、ドラッグディールでも、デカい車でも、セクシーな女でもなく、小さな子どもとの生活、そして家族との日常だった。たとえ刺激的ではないトピックであっても、それを自分にとってウソのない言葉でおもしろく表現することこそがリアルなのだと宣言した。

 この『Family』がリリースされたのは奇しくもPRIMALのファースト・アルバム『眠る男』が発売される3カ月前、2007年6月。『Proletariat』には表現の方向性こそ違うが、『Family』と同じベクトルのリアルが込められている。子どもができて以前よりも自由になる金も少なくなり、おまけに景気はどんどん悪くなっていく。「IQ高くてもThank You 言えぬ奴」(「Proletariat feat. PONY」)が跋扈し、生きるだけでストレスが溜まる。だが「ぶっちゃけ病んでるRapperのパパ」は「必死にやってる一児のママ」と息子のために、「働き蜂 磨く己の暮らし 勝ち取る価値 親から巣立ち 猫からタチ」と『眠る男』とは違う意味での武闘宣言、"武闘宣言 2.0"を叫ぶのだ。

 最後に。最終曲"岐路 feat. TABOO1, 漢, RUMI"について。この曲はThe Anticipation Illicit Tsuboiがプロデュースしたもので、Theo Parrishの"Friendly Children"を思わせる子どもの歌声がサンプリングされた、メランコリックなナンバーだ。この曲の冒頭でPRIMALは先日急逝したMAKI THE MAGICへの弔辞ともいえるフリースタイルを披露する。本編のリリックでは、TABOO1、漢、RUMIとともに友情をテーマにしたラップを聴かせてくれる。そして最後の最後に収められているIllicit Tsuboiの約1分以上におよぶスクラッチはクレイジーで美しく、悲しい。

 今後どんな作品がリリースされるかわからないが、俺はこのアルバムが2013年最高のアルバムだと断言する。

ele-king presents PARAKEET Japan Tour 2013 - ele-king

 いよいよ9月5日(木)から初ジャパン・ツアーがスタートするパラキート(PARAKEET)! UK産ロック・バンド、ヤック(YUCK)のメンバーである日本人ベーシスト、マリコ・ドイと、同じくUKで活動し、今年リリースのデビュー・アルバムが絶賛を浴びている若手注目バンド、ザ・ヒストリー・オブ・アップル・パイ(THE HISTORY OF APPLE PIE)のジェームス・トーマスによって結成されたこのバンドは、ピクシーズ(PIXIES)からディアフーフ(DEERHOOF)、ポルヴォ(POLVO)などにも通じるミラクルでユニークなギター・サウンドがとってもス・テ・キ。ぜひこの目でこの肌でヒリヒリと感じ取って欲しいものです。
 そしてこのツアーにスペシャル・ゲストとしてお付き合いしていただくのがTHE GIRL!! シンプルでキッチュなガレージ・ロックンロール・テイストにニューウェイヴィーなポップ・アプローチが絡まって、これまた超ス・テ・キ。夢のドリーム・マッチですな! そんな二組から来日直前インタヴュー......っちゅーかアンケートに答えていただきました。さぁ、タッチ&ゴーしてそのまま会場にお越し下さい!



PARAKEET

■最初に買った(買ってもらった)レコード(CD)は?

PARAKEETジェームス:ニルヴァーナ(NIRVANA)の『ネヴァーマインド』。

THE GIRL:ザ・モンキーズ(THE MONKEES)のベスト。

■バンドをやろう! というきっかけになったアーティストは?

PARAKEETマリコ:単に音楽が好きだったから。13歳のときにギターを弾きはじめて洋楽への道がどかっと開かれました。それからバンドを組むようになって、そのままズルズルとイギリスまで来てしまいました。

PARAKEETジェームス:10歳のとき、ニルヴァーナの『MTVライヴ&ラウド』を見てから。

THE GIRL:特にこれといったアーティストは最初いなかったけど、ソニック・ユース(SONIC YOUTH)かな。

■最初に結成したバンドの名前は?

PARAKEETジェームス:ミラージュ(MIRAGE)というバンドを弟と、10歳、8歳のときに。父の親友がベースを弾きました。

THE GIRL(日暮愛葉):Seagull Screaming Kiss Her Kiss Her。

THE GIRL(おかもとなおこ):free alud

■それはどんなサウンドでした?

PARAKEETジェームス:最悪。TOTOのコピーを。

THE GIRL(日暮愛葉):いまで言うオルタナティヴ。

THE GIRL(おかもとなおこ):ファンク・ロック。

■初めて人前でライヴをやったときの思い出を。

PARAKEETジェームス:両親がハウス・パーティーをしたときに居間で演奏しました。両親の友だちが見ていて当然奇妙でした。そのときはレディオヘッド(RADIOHEAD)のコピーをしました。

THE GIRL(日暮愛葉):ギターウルフとジャッキー&ザ・セドリックスが対バンだったことです。

THE GIRL(おかもとなおこ):機材トラブルばかりだった。

■PARAKEET/THE GIRL結成のいきさつを。

PARAKEETマリコ:レヴェルロード(LEVELLOAD)というバンドをやっていて、アルバムを出してからその後解散しました。それでそのときドラムを叩いていたジェームスとツー・ピースでパラキートの原型ができあがって、曲を作りはじめたときにヤックへの参加のオファーがありました。ツー・ピースも面白かったんですが、ギター・バンドもやっぱり好きなので、浮気をした訳です。パラキートがはじまった頃はトランザム(TRANS AM)の赤ちゃんみたいな感じで、ベース・リフとドラムの絡みがタイトな楽曲ばっかりで、それが今回のEPの軸みたいになってます。
 いまの形になったのはBO NINGENのコウヘイ君と1枚目のシングルにギターを付けてもらうようになってから。他の曲はわたしがギターを弾いたりして、楽曲上スリー・ピースになりました。

THE GIRL:日暮はLOVES.を経て、おかもとも男性とばかり組んでいたのでガールズ・バンドをやってみたくなったのです。

■PARAKEET/THE GIRLをはじめるにあたりコンセプトなどありましたか?

PARAKEETジェームス:ふたりだけでとてもうるさい感じで......だったんですが、何か足りない、何か完成されてないと思い、BO NINGENのコウヘイとしばらくいっしょにやって、去年はジョンといっしょに、そしていまはトムがギターを弾くようになりました。

THE GIRL:特に無いけど、華奢な女の子が芯のあるソリッドな音を出すということをやりたかったかも?

■PARAKEET/THE GIRLの長所や武器みたいなものを教えてください。

PARAKEETジェームス:音を作ることにしても、その他すべてのことに関しても、自分たちでコントロールできるので、すごく満足している。そういうところです。

THE GIRL:かっこいいこと、信じてることをちゃんと表現できているところ。あと曲の短さです。

■逆に短所・マイナス点は?

PARAKEETジェームス:いまの段階でパラキートはサイド・プロジェクトと見られていて、そのためにあまりちゃんとしたバンドとは認識されていないところです。そして他の自分たちのバンドを優先しなくちゃいけなくって、自分たちが好きなだけ時間を費やせていないところです。次にアルバムをリリースするときにはその状況が変わっていればいいと思います。

THE GIRL:とくにありません。

■現在いいなぁ〜と思えるアーティスト/バンドはいますか?

PARAKEETマリコ:コロコロ変わります。最近はマック・デマルコ(Mac DeMarco)です。いまいちばん会いたくて、彼のセカンドをずっと聴いています。きっとそのうち会うと思いますが、そのとき何を話そうかぼんやり考えています。とりあえず彼の化粧をわたしがするという感じでいこうかな。しかしながら、自分のなかでずっとヒーローでいる人は作家の方が強いかもしれません。それを考えたら松本隆さんがヒーロー的な存在かもしれないです。バンド・マンとしても、あと詩人としても尊敬しています。いま、彼の本『風街詩人』を読んでいて、面白くて、たまりません。

PARAKEETジェームス:ロンドンに拠点を置いているバンドのなかでもザ・ホラーズ(THE HORRORS)は、素晴らしいレーベル(〈XL〉)に所属して、自分たちのスタジオも持っている。彼らはそこで自分たちの好きなように曲を書いてレコーディングしていて、そういう環境があるというのはいいなあと思います。

THE GIRL:バンドであることも大切だけれど、そのなかでどれだけ自由にオリジナルを表現できるかが重要だから、ソニック・ユースやザ・キルズ(THE KILLS)、ザ・ホワイト・ストライプス(THE WHITE STRIPES)、ドーター(DAUGHTER)などの秀逸なバンドが支えになってます。

■そうはなりたくないけど、アイドル的アーティストはいますか?

PARAKEETジェームス:たぶんほとんどのバンド......。

THE GIRL:マドンナ(なれるならなってみたいけど)。

■お互いの音楽性についてどのような点が魅力だと思いますか?

PARAKEETマリコ:シンプルで即効性のある楽曲と、脱力ボーカルがいいなと思いました。

PARAKEETジェームス:オンラインで聴いてみていいなと思いました。いっしょにツアーできることを楽しみにしています。

THE GIRL:COOL でありつづけているところです。

■それぞれの国で活動したいとは思いませんか? だとしたらその理由は?

PARAKEETマリコ:日本はやっぱり生まれ育った場所だし、なんでもかんでも直接自分に入ってくる。そのへんは創造性やらも掻き立てられるし、反面プレッシャーも倍に感じる。日本は何においてもやりやすいようにすべてが上手に整った国だと思うので、バンド活動もやりやすいかなと思います。

PARAKEETジェームス:日本大好きです。日本はイギリスよりもとってもリラックスしていて、友好的だと思います。

THE GIRL:いつでもどこの国でもやってみたいとは思ってます。

■それぞれの国で活動する際、注意すべき点、素敵だと思える点をお互いに教えてあげてください。

PARAKEETマリコ:イギリスは不便な面が多いぶん、人間がゆるいのです。だから平均や常識から外れないことをしろというプレッシャーがなく、個性が生かせる国ではないかと思います。日本に比べて、変わった人が多いというか、個人差があるのが歓迎されていると思います。ハコの環境やら質やら、そんなのは日本のハコの細やかさとかと比べると雲泥の差ですが、とりあえずみな遊び上手なので、お客さんも楽しんでいるということが日本に比べてわかりやすいかなと思います。

PARAKEETジェームス:あんまりいいところはないです。イギリス、特にロンドンはライヴをするには最悪なところです。一般的に待遇も悪いし、ギャラも低い。まあ例外もあって、UKには数カ所素晴らしいハコもありますが。しかし他のヨーロッパの国の方が断然いいです。

THE GIRL:素敵なことしか思いつかない。素敵なバンドとライヴすることです。

■このツアーでいちばん楽しみにしていることは何ですか?

PARAKEETマリコ:THE GIRLをはじめ、たくさんのバンドと共演することで、また新しい音楽や人間に会えることです。

PARAKEETジェームス:マリコと4年前に別のバンドでツアーをしたことがあって、そのときが自分にとって人生で最高の時間でした。だから今回も楽しみで待てないです。日本の文化も、人も食べ物も大好きです。そして日本のハコも最高です。機材もいいし、待遇もすごくいい。まったくイギリスとは逆です。

THE GIRL:パラキートをいろんな角度から見られることと、ツアーそのものが楽しみ。

■では心配していることは?

PARAKEETマリコ:楽しすぎて二日酔いですかね。

PARAKEETジェームス:Gejigeji(ゲジゲジ)。

THE GIRL:ホテルでよく眠れるか、パラキートのメンバーに日本食のおいしいところを紹介できるか。

■お互いに一言お願いします。

PARAKEETマリコ:飲みましょう!

PARAKEETジェームス:ハローーーー!!

THE GIRL:パラキートみたいなかっこいいバンドとツアーできることがほんとうに光栄です。パラキートにもTHE GIRLの良さを見てもらいたい、そしていっしょにおいしいものを食べて飲みたいです。

■最後にファンにひと言お願いします。

PARAKEETジェームス:ハローーーー!!

PARAKEETマリコ:飲みましょう!

THE GIRL:おかもとなおこと二人組になった新生THE GIRLとイギリスのパラキートとの初日本ツアーなのでスペシャルなライヴをお見せできると思います。ぜひ皆さん足を運んでいただいて楽しんでほしいです! 新生THE GIRLは新曲満載です! お楽しみに!


THE GIRL

ele-king presents
PARAKEET Japan Tour 2013
special guest : THE GIRL

詳細はこちらです!
https://www.ele-king.net/event/003112/

■9/5 (木) 渋谷O-nest (03-3462-4420)
PARAKEET / THE GIRL
special guest : uri gagarn
adv ¥3,800 door ¥4,300 (+1drink)
open 18:30 start 19:00
チケットぴあ(Pコード:205-168)
ローソンチケット(Lコード:74729)
e+

■9/6 (金) 名古屋APOLLO THEATER (052-261-5308)
PARAKEET / THE GIRL
adv ¥3,800 door ¥4,300 (+1drink)
open 19:00 start 19:30
チケットぴあ(Pコード:205-387)
ローソンチケット(Lコード:42027)
e+

■9/7 (土) 心斎橋CONPASS (06-6243-1666)
PARAKEET / THE GIRL
adv ¥3,800 door ¥4,300 (+1drink)
open 18:30 start 19:00
チケットぴあ(Pコード:205-168)
ローソンチケット(Lコード:56704)
e+

■9/8 (日)「BON VOYAGE ! 〜渡る渡船は音楽ばかり〜」
尾道JOHN burger & cafe(0848-25-2688)、 福本渡船渡場沖船上
PARAKEET / THE GIRL / NAGAN SERVER with 韻シスト BAND / ウサギバニーボーイ他
adv ¥3,500 door ¥4,000 (渡船1day pass付 / +1drink)
open / start 12:00
ローソンチケット(Lコード:66873)*7/6よりチケット発売
主催:二◯一四(にせんじゅうよん)
共催:Buono!Musica!実行委員会
後援:尾道市、世羅町、尾道観光協会、世羅町観光協会、ひろしまジン大学、三原テレビ放送、中国放送
協力:福本渡船、ユニオン音楽事務所
INFO : 二◯一四(にせんじゅうよん)080-4559-6880
www.bon-voyage.jp

【追加公演】
9/10 (火) 渋谷O-nest (03-3462-4420)
PARAKEET / toddle / TADZIO (この日のTHE GIRLの出演はございません)
adv ¥3,800 door ¥4,300 (+1drink)
open 18:30 start 19:00
チケットぴあ(Pコード:209-089)
ローソンチケット(Lコード:71161)
e+

*尾道公演を除く各公演のチケット予約は希望公演前日までevent@ele-king.netでも受け付けております。お名前・電話番号・希望枚数をメールにてお知らせください。当日、会場受付にて予約(前売り)料金でのご精算/ご入場とさせていただきます。

主催・制作:ele-king / P-VINE RECORDS
協力:シブヤテレビジョン ジェイルハウス 二◯一四(にせんじゅうよん)
TOTAL INFO:ele-king 03-5766-1335
event@ele-king.net
www.ele-king.net


Synth-pop, Rock & Roll, Electronica, Juke, etc. - ele-king

Inga Copeland - Don't Look Back, That's Not Where You're Going
World Music


Amazon iTunes

「Don't Look Back, You're Not Going That Way.(振り返らないで、あなたはそっちではない)」、いかにもアメリカが好みそうな自己啓発的な言葉で、沢井陽子さんによれば、この言葉がポスターになったり、ブログのキャッチになったり、本になったりと、いろんなところに出てくるそうだ。インガ・コープランドは、そのパロディを彼女のセカンド・シングルの題名にしている......といっても、この12インチには例によってアーティスト名も曲目もレーベル名も記されていない。表面のレーベル面には、ナイキを着てニコっと笑った彼女の写真が印刷されていて、裏側は真っ白。ちなみにナイキは、彼女のトレードマークでもある。
 Discogsを調べると今回の3曲のうち2曲はDVA、1曲はMartynがプロデュースしているらしい。ディーン・ブラントではない。ベース系からのふたりが参加している。レーベルの〈World Music〉は、ブラントとコープランドのふたりによる。1曲目の"So Far So Clean"はアウトキャストの"So Fresh, So Clean"のもじりで、「いまのところとってもクリーン」なる題名は悪ふざけだろう。シニシズムは相変わらずで、しかし音的にはスタイリッシュになっている。

Synth-pop

Jamie Isaac - I Will Be Cold Soon
House Anxiety Records


Amazon iTunes

 デビュー・アルバムのリリースが待たれるキング・クルーの初期作品を出していたレーベルから、冷たい心を持った新人が登場。簡単に言えば、ザ・XX、ジェイムズ・ブレイクの次はこれだろう、そう思わせるものがある。まだ聴いてない人は、"Softly Draining Seas"をチェックしてみて。

E王

Electronic Blues

Americo - Americo graffiti PEDAL


 アメリコは、50年代のロックンロール(ないしはフィル・スペクター)×70年代の少女漫画(ないしは乙女のロマンス)×70年代歌謡曲×ポストパンクという、なかば超越的なバンドだ。坂本慎太郎作品やオウガ・ユー・アスホール作品で知られる中村宗一郎をエンジニアに迎えての12インチで、全6曲。アートワークも楽曲も(そして録音も)アメリコの美学が貫かれている。ヴォーカルの大谷由美子さんは、80年代はクララ・サーカス(日本でザ・レインコーツにもっとも近かったバンド)なるガールズ・ポップ・バンドをやっていた人。

Rock & RollDream Pop

DJ まほうつかい - All those moments will be lost in time EP HEADZ


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 クラスターのレデリウスを彷彿させる素朴なピアノ演奏ではじまる、。DJまほうつかいこと西島大介の4曲入り......というか4ヴァージョン入り。本人の生演奏によるピアノをまずはdetuneがリミックス、自分でもリミックス、そして京都メトロでのライヴ演奏が入っている。エレクトロニカ調のもの、クラウトロック調のもの、少しお茶目で、それぞれに味がある。西島大介といえば可愛らしい画風で知られる漫画家だが、これは漫画家が余興でやったものではない。僕は最初の2と3のヴァージョンが良いと思ったが、もっともシリアスなライヴ演奏が最高かもしれない。

Modern ClassicalAmbient

DJ Rashad - I Don't Give A Fuck Hyperdub


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 これだけファック、ファック言ってる曲はラジオではかけられないが、海賊ラジオやネットでは大丈夫なのか。DJラシャドの「ローリン」は今年前半の最高のシングルだった。"アイ・ドント・ギヴ・ア・ファック"は前作のソウルフルなな路線とは打って変わって、残忍で、好戦的で、不吉で、緊張が走る。声ネタを使ったDJスピンとの"Brighter Dayz"ではジャングル、フレッシュムーンとの"Everybody"でも声ネタを使った、そして頭がいかれたジャングル、DJメニーとの"Way I Feel"はパラノイアックで不穏なR&Bを披露する。楽しんでいるのだろが、しかし......やはり恐るべき音楽だ。

Juke, Footwork

John Frusciante - ele-king

"はみ出る"ための試行錯誤 文:小野田雄

 ジョン・フルシアンテは、そのキャリアを通じて、「独自の音」を追求し続けてきたアーティストだ。レッド・ホット・チリ・ペッパーズ(以下RHCP)のギタリストとして、そして、ソロ・アーティストとして、はっきりとその「独自の音」を感知できるのは、ギター・サウンドだろう。使用するギターやアンプ、エフェクターの種類やそのプレイ・スタイル、ソングライティグなどの試行錯誤を通じて、一聴した万人に彼の音であることを認識させるサウンド・キャラクターを確立したという一点において、彼の目的はすでに達成されたといえる。

 また、一見すると混沌としているように感じられる作品も彼のなかではチャレンジングなテーマが設けられていて、一時離脱したRHCPに復帰を果たす1999年以降は、ロックの発想やアプローチから離れ、エレクトロニック・ミュージックの発想や制作スタイル、レコーディングにおけるエンジニアリングやプロダクションの知識・経験を自分のものにしようという試行錯誤が重ねられてゆく。たとえば、2004年から2005年にかけてリリースされた6枚の作品は、その直前に制作され、莫大な費用と時間が費やされた『シャドウズ・コライド・ウィズ・ピープル(Shadows Collide With People)』とは真逆のアプローチで、RHCPの活動がはじまるまでの6ヶ月間という短期間に、60年代、70年代のアナログ・レコーディングの技術を用いて6枚の作品を録音するというコンセプトで作られたものだ。それぞれの作品も、アコースティックな『カーテンズ(Curtains)』は60年代後期に作られた8トラック/1インチのテープ・レコーダー、『ザ・ウィル・トゥ・デス(The Will To Death)』と『インサイド・オブ・エンプティネス(Inside Of Emptiness)』は16トラック/2インチのテープ・レコーダーによる録音。また、フガジのイアン・マッケイによるプロデュース、〈ディスコード(Dischord)〉御用達であるインナー・イヤー・スタジオのエンジニア、ドン・ジエンタラの仕事を学ぶために『DC EP』を制作し、『ア・スフィア・イン・ザ・ハート・オブ・サイレンス(A Sphere In The Heart Of Silence)』は、後にジョンの後釜としてRHCPに加入するジョシュ・クリングホッファーとの共同作業で、シンセサイザーやアナログ機器を用いた実験を繰り広げたりと、作品ごとのテーマが設定されていたことは、アメリカの『TAPE OP』誌のインタヴュー記事において、本人と当該作のエンジニアであるライアン・ヒューイットの口から語られている。

 そうしたジョンのアナログ・レコーディング経験を総括した作品が、スタジオそのものをひとつの楽器として捉えて制作された2009年のアルバム『ジ・エンピリアン(The Empyrean)』だ。48トラックのアナログ・レコーダー2台を用いて録音したこの作品は、テープの切り貼りやシンセサイザーをはじめとするアナログ機材で音を加工しながら、現代的なエレクトロニック・ミュージックのサイケデリックな音響やサウンド・テクスチャーの発想を活かしたサイケデリック・ロックを高い完成度で結実させた傑作といえる一枚。そして、この作品でアナログ・レコーディングでの学習に区切りが付いたからこそ、その後の彼はセルフ・エンジニアリングによるデジタル・レコーディングへと劇的な転換を図ったのだろう。昨年リリースされたEP『レター・レファー(Letur-Lefr)』とアルバム『PBX・ファニキュラー・インタグリオ・ゾーン(PBX Funicular Intaglio Zone)』、そして、今回のEP『アウトサイズ(Outsides)』は彼がエレクトロニック・ミュージックやDTMの手法や発想を修得する過程で生み出された習作だ。

 エイフェックス・ツインやオウテカのプロセッシングからインスピレーションを得たり、アシッド・ハウスやドラムンベースの荒削りな部分を補うように耳を傾けてみたり、はたまた、ブレイクコアを代表するアーティストであるヴェネチアン・スネアズことアーロン・ファンクとのセッションを数百時間以上重ねたりすることで刺激された創作意欲は恐ろしい速さで彼にとっての未知なる領域を開拓している。サンプラーやドラムマシン、シーケンサーを複数台同時に走らせ、エレクトロニカ・アーティスト御用達のトラッカー・ソフト、Renoiseを駆使しながら、ロック・バンドの曲作りやレコーディングとは異なるエレクトロニック・ミュージックの発想や制作アプローチを無邪気に学ぶ彼は、しかも、既存の音楽フォーマットに当てはまる、あるいはリスナーを意識した整然とした作品を作るつもりは全くないようだ。というよりも、『レター・レファー』以降の作品から感じられる収まりの悪さは、むしろ、積極的にはみ出してゆくことで何かを得ようという彼の意志の現れと考えるべきだろう。

 本作『アウトサイズ』を幕開ける10分超の長尺曲"Same"にしても、形式的にはブレイクビーツとギターソロを組み合わせた楽曲であるが、彼が曲中で延々と弾きまくるギターはロックのクリシェや手癖から脱却した奏法を模索するべく運指の実験をしているように聞こえるし、リズム・トラックもギターに寄り添うように細かくパターンを変化させており、彼なりの意図があって、制作に相当な時間と労力をかけている。そして、2曲めの"ブレシアックBreathiac"と3曲めの"シェルフ(Shelf)"はともにオーケストラのサンプル・フレーズを用いた連作と思われる楽曲。ドラム・マシーンやイクレディブル・ボンゴ・バンド"アパッチ(Apache)"ほかのドラム・サンプル、アシッド・シークエンス、デルタ・ブルースを思わせるギターや歌の断片などをヒップホップでいうところのメガミックス形式で繋いでおり、彼の意識はサウンドスケープの移ろいに注がれているように思われる。そして、これら3曲ではプリセットを安易に用いるのではなく、モジュラー・シンセサイザーなどを通すことで丁寧に加工されていて、冒頭で述べた通り、この作品においても彼は一聴してジョン・フルシアンテのものであることがわかる独自のサウンド・キャラクターを追求していることは明かだ。

 ただ、問題なのは、筆者のように楽器演奏や機材に明るくないリスナーにとって、それぞれの楽曲で彼が設定したテーマや意図が把握しづらい点にある。さらにリスナーを意識して作品制作を行うこともなく、また、表立ってインタヴューに応えるつもりもない彼の現在のスタンスを考えると、「『レター・レファー』以降の作品は仰々しいオナニーである」という批判は致し方ないだろう。しかし、その一方で制作意図が掴めず、どうにもすっきりしない部分を想像し、補いながら楽しむことができれば、この作品には尽きない魅力があるだろうし、アナログ・レコーディングでの試行錯誤を経て、完成度の高い『ジ・エンピリアン』にたどり着いたように、この先、新たな高みが彼を待っているとしたら、『レター・レファー』以降の習作はその過程を読み解くヒントになるのではないだろうか。そんな推理を働かせつつ、ジョン・フルシアンテの音楽世界は依然としてミステリアスなままだ。


文:小野田雄

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静かな狂気、そしてブルース 文:天野龍太郎

 ジョン・フルシアンテが昨年リリースしたEP『レター・レファー』とそれに続くフル・アルバム『PBX・ファニキュラー・インタグリオ・ゾーン』は、アナログ・シンセの温かくも物悲しい響き、ドラム・マシンないしサンプリングによるせわしないブレイクビーツ、美しいコーラス・ワークで彩られたヴォーカル、そしてロック・ギターの過去と未来をいびつに接ぎ合わせたような変幻自在のギター・サウンドによって構成された異形の作品であった。
 ジョンの最新EP『アウトサイズ』のサウンドは、その延長線上にある。とはいえ、音楽のカタチはより抽象的になり、音と音との間には隙間が生まれてルーズな感覚が滑り込み、エクスペリメンタルな方法論はいちだんと深化している。なにより『アウトサイズ』にはジョンのヴォーカルがほとんどない。『PBX』において中心のひとつを占めていたヴォーカリゼーションはすっかり鳴りを潜め、最終曲"シェルフ"の最後の1分間になってやっと添え物のような歌声が聴けるほどだ。それゆえに、酩酊するわけでも逃避するわけでもなく、ただただ前を見据えるかのような静かな狂気がこのEPには凝集しているように思える。

 10分にも及ぶ"セイム"は、バタバタと落ち着かないドラム・パターン上で途切れることのないギター・ソロが演奏される楽曲で、まさにそういった平静さを保った狂気によって駆動しているかのような異様な緊張感を纏っている。『ジ・エンピリアン』(2009)の"イナフ・オブ・ミー"のソロを拡張したかのようなギター・プレイは、ただひたすらにずるずると引きずって蛇行するようなトーンの軌跡を聴き手に突きつけている。曲が進むにつれモジュレーションによる音の揺らぎが次第にキツくなっていき、ギター・サウンドの変調が頂点に達すると、永遠に続くかに思われた奇妙なギター・ソロはあっけなく幕を閉じる。
 オフィシャル・サイトに掲載されたジョン・フルシアンテ自身による説明によれば、"セイム"は「わたしのプレイを聴いてそれに反応しながらも、同時にわたしが応えられるような確実なアンカーを、通常なら存在する時間差なしに提供してくれる」理想のドラマーによる演奏とギターとの相互作用によるインプロヴィゼーションである。現実的には不可能なこの演奏を実現するため、リピートする2小節のビートに対してギターを演奏したのち、ギター・ソロに対応するようにビートをチョップした、と彼は書いている。それはつまり、『PBX』において掲げた「マシンの知能と人間の知能が刺激し合って、その相互作用によって生まれる音楽」へのさらなる漸近を目指す実験のひとつなのだろう。
 そうなるとこの『アウトサイズ』という作品がなぜ「歌っていない」のか、ひとつ仮説が立てられる。つまり、あまりにも人間的な歌というものを禁欲的なまでに排除することによって、マシンと人間とをより近くへと引き合わせ、その境界を曖昧化しようと試みているのではないのだろうか。

 2曲目の"ブレシアック"は3分にも満たない小曲で、サンプリングとプログラミングによるビートが継ぎ接ぎされた本作中最もアブストラクトな曲だ。次の"シェルフ"はよりファンキーではあるが同様にせわしなくビート・パターンが変化し、両曲ともにフリー・ジャズのドラムを素材としたビートが多く聴こえてくる。『PBX』における大きなトピックだったドラムン・ベースの導入は、この"ブレシアック"や"シェルフ"、あるいは『PBX』収録の"サム(Sam)"のフリー・ジャズ風のビートと突きあわせて聴くとそれほど唐突には聴こえない。おそらくジョンのなかではフリー・ジャズのビートとドラムン・ベースは一本の線で繋がっているのだろう。その間隙を埋めるのが、ファンクであり、アシッド・ハウスであり、ヒップホップのビートなのである。

 しかしながら『アウトサイズ』を一聴して直感したのは、これはジョンにとってのブルースである、ということだった。それはやはり"セイム"の長大なギター・ソロに依るところが大きい。歌はなくとも......やはりギターが泣いているように聴こえるのだ。それは"シェルフ"の中間部のソロも同様である。キリキリとした鋭利なトーンではあるが、そこにはブルージーな哀感が潜んでいる(「驚いたことにブルース・ギターがうまくハマったんだ」と彼は認めている)。
 ジョン・フルシアンテ自身が「プログレッシヴ・シンセ・ポップ」と呼ぼうが、「現代音楽のわたしのヴァージョン」と説明しようが、この『アウトサイズ』というEPは、いびつな形ではあるがブルースというひとつの軸で貫かれている。そう思えてならない。


文:天野龍太郎

MAMAZU (HOLE AND HOLLAND) - ele-king

ANDROMEDA / DELTA THREE / SUPER X
BLACK SHEEPのCOGEEとCosmic Orgasm Zeal Unit『COZU』や NU PARTY『DELTA THREE』も始動しました。次のSUPER XではFUSHIMINGのHEAVY MOON EPと関西御山発CampingPartyTribe ChillMountainによるChillMountain Classics の W RELEASE PARTYでお届けします!MIXCD"BREATH"も是非チェックしてみてください。
https://soundcloud.com/mamazu
https://mamazu.tumblr.com/
https://twitter.com/_Mamazu_
https://www.hole-and-holland.com/

DJ SCHEDULE
7/29 ふぞろいのbeatたち @ 恵比寿BATICA
8/07 TRAVESSIA @ 神宮前BONOBO
8/10 FRUE -Space is the Place- @ 代官山UNIT
8/16 SUPER X @ 渋谷SECO
8/17 BEACH WHISTLE @ 三浦
8/24 THIRD CULTURE @ 静岡EIGHT&TEN
8/31 11th ANNIVERSARY @ 中野HEAVYSICK ZERO
9/7~8 PARAMOUNT @ 山梨さがさわキャンプ場
9/21~23 CHILL MOUNTAIN @ 大阪荒滝キャンプ場


1
UNKNOWN - BENGA BENGA - PORRIDGE BULLET

2
Sir Victor Uwaifo - Guitar-Boy Superstar - Soundway

3
COTTAM - Ire Works - SOUND OF SPEED

4
Ata Kak - Daa Nyinaa - AFRCAN SHAKEDOWN

5
FUSHIMING - HEAVY MOON EP - HOLE AND HOLLAND

6
DELTA THREE - δδδ - COREHEAD

7
HOUSEMEISTER - CHEERLEADERS - allyoucanbeat

8
The Glitz - Woven - Voltage Musique

9
Stephan Bodzin - Bremen-Ost - Herzblut

10
Collective Machine - El Amor - Moan

工藤キキのTHE EVE - ele-king

 285 KENTはサウスウィリアムズバーグにある中箱のウェアハウスで、がらんとしたダンスフロアとステージとチープなバーがあるだけのシンプルな箱だ。その285 KENTで月1ペースで開催している「Lit City Rave」は、Jamie Imanian-Friedmanこと J-Cushが主宰するJuke / Footworkのレーベル〈Lit City Trax〉がオーガナイズするパーティ。たぶん私が出入りをしているようなダウンタウンまたはブルックリンのパーティのなかでも極めてクレイジーで、この夜ばかりはステージの上も、DJの仲間たちの溜まり場になるステージ裏も、一応屋内喫煙が禁止されているNYで朝の5時までもうもうもと紫の煙が立ちこめている。
 基本的には、Chicago House直系のベース・ミュージック──Ghetto Houseから、Grime、Dub Step、UK Garageなどのビート中心で、特にJuke/FootworkをNYで逸早く取り上げたパーティだと思うし、例の'Teklife'という言葉もここではCrewの名前として日常的に、時に冗談めかしで使われている。

 DJ RashadやDJ Manny 、DJ SpinnそしてTraxmanはこのパーティのレジデントと言っていいほど「Lit City Rave」のためだけにChicagoからNYにやって来て、彼らのNYでの人気もここ数年の〈Lit City Trax〉の動きが決定づけたと言ってもいいんじゃないかな? さらに興味深いのがTRAXを経由したChicagoのミュージック・ヒストリーをマッピングするように、DJ DeeonなどのOGのDJ/プロデューサーから、Chicagoローカルの新人ラッパーのTinkやSASHA GO HARDが登場したり、ARPEBUことJukeのオリジネイターRP BOOのNY初DJ(!)などを仕掛けるなど、そのラインナップはかなりマニアックだ。
 本場ChicagoのようにMCがフロアーを煽るものの、Footworkersが激しくダンスバトルをしている......というような現場は実はNYでは遭遇したことがないかも。人気のパーティなので毎回混んでいるし、誰しも踊り狂っているけど、パーティにRAVEと名はついているものの俗にいう"RAVE"の快楽を共有するようなハッピーなものではない。はっきり言って毎回ハード。アンダーグラウンドで生み出された新しい狂気に満ちたビートを体感し、自らファックドアップしに行くといったとこだろう。振り落とされないようにスピーカーの横にかじりつきながら、踊るというよりもビートの粒を前のめりで浴びにいくような新感覚かつドープでリアルなセッティングで、本場Chicagoのパーティには行ったことがないけど毎回「果たしてここはNYなのか?」と思ってしまう。

Pphoto by / Wills Glasspiegel

 J-Cushは実はとてもとても若い。LONDONとNYで育った彼は、Juke/FootworkがGhetto Houseの進化系としてジャンル分けされる以前からDJ DeeonなどのChicago Houseには絶えず注意を払っていた。2009年頃からChicago Houseの変化の兆候をいち早く読み取り、一体Chicagoでは何が起きているのか? とリサーチをはじめた。それらの新しいChicagoのサウンドは彼にとってはアフリカン・ポリリズムスまたはアラビック・マカームのようにエキゾチックであり、UKのグライムのようにフューチャリスティックなサウンドに聴こえたそうだ。それからはJuke/Footworkを意識して聴くことになり、〈Ghettotechnicians〉周辺や〈Dance Mania〉のカタログを総ざらいした。
 その後NYでDJ Rashadと出会うことになり彼が生み出すビート、圧倒的かつ精密なまでにチョッピング、ミックスし続ける素晴らしくクレイジーなプレイに未だかつてない程の衝撃を受け、それに合わせて踊るQue [Red Legends, Wolf Pac] や Lite Bulb [Red Legends, Terra Squad]というFootworkersにもやられた彼は、Chicagoのシーンにのめり込むことになり〈Lit City Trax〉というレーベルを立ち上げるに至る。

 NYのパーティは割とノリと気分、ファッション・ワールドの社交の場になっているものも多く、「Lit City Rave」のようにビートにフォーカスし、かつ毎回趣向を凝らしたラインナップで続けているパーティは案外少ない。東京とブリティッシュの友人たちに多いギーク度、新旧マニアックに掘る気質がやはりJ-Cushにもあるし、そして彼は単なるプロモーターでは無い。ジャンルを越境できるしなやかなパーソナリティを持っているし、ストリートからの信頼もあつく、気鋭のビートメイカーたち、Kode9、Oneman、Visionist、Brenmar、Dubbel Dutch、Durban、Fade to Mindのkingdom、Mike Q、Nguzunguzu、もちろんTotal FreedomやKelelaなども早い段階から「Lit City Rave」に招聘している。

Photo by Erez Avis

 J-Cush自身もDJであり、常日頃から新しいビートを吸収しているだけあってスタイルはどんどん進化しエクスペリメンタルなGarageスタイルがまた素晴らしい。そのプレイは先日『THE FADER』や『Dis Magazine』のwebにMixが上がっているので是非チェックしてみて。
 さらにJ-CushとNguzunguzuとFatima Al Qadiriで構成された'Future Brown'というCrewでトラックを作りはじめていたり、今後の「Lit City Rave」ではUSのGrimeや、さらに地下で起きているアヴァンギャルドなダンスシーンを紹介していきたいと語っていた。
 そんなわけで、先週の「Lit City Rave」ではドキュメンターリー映画『Paris Is Burning』で知られたBallのダンス・パーティの若手DJとしても知られている〈Fade To Mind〉のMike Qがメインで登場。こっちのダンスシーンもプログレッシヴに進化を遂げているんだなと、ヴォーギング・ダンサーズのトリッピーな動きに釘付けになったのでした。

https://soundcloud.com/litcity

Lit City Traxからのリリース
https://www.beatport.com/release/teklife-vol-1-welcome-to-the-chi/919453
https://www.beatport.com/release/teklife-vol-2-what-you-need/982622

Download a Mix from Lit City Trax
https://www.thefader.com/2013/08/02/download-a-mix-from-lit-city-trax/

J-Cush XTC MIX
https://dismagazine.com/disco/48740/j-cush-xtc-mix/

YO.AN (HOLE AND HOLLAND) - ele-king

2013年7月24日にHOLE AND HOLLANDよりFUSHIMINGの初ソロEP"HEAVY MOON EP"がリリースされます!以前ALTZ氏のele-king DJチャートにピックアップされた"SELENADE"も収録されています。
https://soundcloud.com/hole-and-holland/sets/fushiming-heavy-moon-ep
リリースパーティーは8/16に渋谷SECOにて開催。
その他MIX、MASTERING作業やスケボーDVDの曲製作、EDIT、自身のソロもマイペースですがやってます。
2013年上半期にプレイし反応良かった曲や印象深い作品をリストしました。

DJ SCHEDULE
7/23 神宮前bonobo
7/27 東高円寺grassroots
8/15 恵比寿bBATICA
8/16 渋谷SECO
8/17~ 三浦BEACH WHISTLE
8/24 静岡EIGHT&TEN
8/31 中野Heavy sick zero
9/17 神宮前bonobo
9/21~23 CHILL MOUNTAIN@大阪

https://soundcloud.com/yoan
https://twitter.com/YOholeAN
https://instagram.com/holeandholland
https://www.hole-and-holland.com/

2013上半期(順不同)


1
FUSHIMING - SELENADE - HOLE AND HOLLAND

2
RAMSEY HERCULES - Disco Morricone - Stereopor Records

3
Grandmaster Flash & Melle Mel - White Lines (Don't Don't Do It) - Sugar Hill Records

4
stim - Blue (Taichi Remix) - Revirth

5
Altz.P - Dodop - Crue-L Records

6
BOTTIN&RODION - ONE FOR ALL - Tin

7
AKIOCHAM - JAMAICA mix - AKIOCHAM.com

8
ASHLEY BEEDLE VS DJ HARVEY - Voices Inside My Head - Bbv

9
Justin V - Version 2 - Keep It Cheap

10
YO.AN - HANG - HOLE AND HOLLAND(promo)
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196