「iLL」と一致するもの

vol.39:ジュリア・ホルター in N.Y. - ele-king

 LAのジュリア・ホルターがNYでショーをおこなった。
 最初にショーの知らせを聞いたときは、シガーロスのオープニングとのことだったので、シガー・ロスとジュリア・ホルターなんて素敵な組み合わせとぬか喜びしたのだが、この日程はウエスト・コーストのみで、NYはハンドレッド・ウォーターズ、サイレント・ドレープ・ランナーズというバンドが対バンだった。その週には『ニューヨーカー・マガジン』が、今週のナイトライフ欄に「彼女の浮遊感漂う歌を」と素敵なドローイングを掲載した

 ショーの2、3日前には、新しいヴィデオ"Goddess Eyes"が公開されてる

 期待が高まる、レイバー・ディのロング・ウィークエンドの金曜日の夜、バワリー・ボールルームは、たくさんの人で溢れていた。ふだんよく行く、ショーのオーディエンスとは違い、パーク・スロープやクイーンズ、アッパー・イーストサイドなどに住んでいそうな、インテリで、読書が趣味のタイプが多いように感じる。男の子やゲイも多そうだ。

 ステージ部屋に行くと、オープニングのハンドレッド・ウォーターズがプレイ中。クラリネットやホーンを使って、低音ビート震えるようなヴォーカルが特徴のアート色の強いバンドで、最近スクリレックスのレーベル〈OWSLA〉と契約したばかり。ジュリア・ホルターとはツアーメイトだ。
 地下のバーで、〈RVNG INTL〉のマットに会う。ジュリアナ・バーウィックと一緒に来ていたので、彼女も掲載されている『エレキング・ブック』を渡す。
 ジュリアナ・バーウィックはブルックリン在住。音楽の印象と違い、とても気さくで親近感が沸いた。〈RVNG INTL〉のマットは、著者が以前コンタクトから出していたコンピレーションCDに参加してくれていて(vol.16 ノースイースト)、何度か会っていることも発覚。インディ・ミュージックの世界は狭いのだ。

 ジュリア・ホルターは、スパンコールのミニスカート(木星柄)、黒の外腕部分が広く開いたディテールの凝ったカットソーで登場、にっこりと笑って挨拶する。オープニングは"Our Sorrows"。
 彼女はとても美しい女性で、ステージに立つだけでも華がある。編成は、彼女がキーボードと歌。クラシカルなチェロ・プレイヤーとコーラスも務めるジャジーなドラマーのトリオ。バスドラの上にトライアングルがちょこんと乗っていた。

 彼女は、優しく語りかけるように、ときには恐ろしげに、そして一貫して夢のなかにいるような浮遊感を漂わせる。歌声には深みがあり、クリアで水滴が落ちるように張りがある。多重にリヴァーブをかけた歌は、決してランダムではなく、注意深く構造されている。エスケーピズムというよりは、もはや音楽治療と言えそうだ。
 それは彼女の表情を見ながらが聴いていると、さらに効果的だった。少しはにかんだ笑顔は、フェアリー・ファーナシスのエレノア嬢に似ていた。キーボードとチェロ、ドラムという構成は、厳かな神聖さを醸し出す。

 最新アルバム『Ekstasis』からの曲がほとんどで、アンコールは、カセットでリリースされた「ライヴ・レコーディングス」から"Sea called me Home"。「みんな口笛ふける?」と観客に聞いたこの曲は、その晩のハイライトだった。けだるい朝のポップ・ミュージックのようだったが、彼女の表情も生き生きしている。お客さんの反応も特別だった。

 今回のショーで新鮮だったのは、アヴァンギャルドとベッドルームポップ、クラシック音楽などがしっかり融合していることだ。しかも、カテゴライズしづらい彼女の音楽を見にきていたのが、勉学に励んでいる学生風だったり、身なりの良い老紳士だったり、音楽好きのゲイ男子だったり、いずれも、このショーでないとクロスしない層だったことだ。彼女の音楽のボーダレス性を感じた。
 LAという暖かいレイドバックな地域性がそれに影響しているのだとも思う。観客の表情は終始緩んでいた。日本人としては、もう少し歌詞がすんなり入ってくれば、別の楽しみ方もできたのだろうが、充分に満足のショーだった。



セットリストは以下:
Our Sorrows
Fur Felix
Marienbad
Gaston
This Is Ekstasis
Try to Make Yourself a Work of Art
Moni Mon Amie
Four Gardens
The Falling Age
In The Same Room
Goddess Eyes
アンコール:
Sea Called Me Home

12K Japan Tour 2012 - ele-king

 今年の春、グルーパーを迎えて文京区千駄木の「養源寺」でアンビエント/ドローンのイヴェントを開いたILLUHA(伊達伯欣+Corey Fuller)が、この秋、ふたたび最高のアンビエント・ミュージックを日本に紹介する......。
 クリスチャン・フェネスやアルヴァ・ノト以降のエクスペリメンタル/アンビエント・ミュージックのシーンにおける重要拠点のひとつ、ニューヨークの〈12K〉レーベルからそうそうたるメンツが来日する。レーベル主宰者のテイラー・デュプリー、フィールド・レコーディングや自作の楽器を操るマーカス・フィッシャー、坂本龍一とのコラボレーションでも知られるクリストファー・ウィリッツ、そしてロック・リスナーにはスローダイヴのメンバーとして知られる、サイモン・スコットなどなど。
 10月6日、長野県松本市からはじまる今回のツアーでは、京都「きんせ旅館」~六本木「Super Deluxe」と回って、最終日はまた「養源寺」。モスキート、サワコといった国際的に活躍するアーティストらがサポートして、青葉市子もテイラー・デュプリーと共演する。

 身体をリラックスして、高性能なサウンドシステムで体験するエクスペリメンタル/アンビエント/ミニマルは、本当に素晴らしいものです。こうした「平穏さ」や「静寂」を主題とする音楽は、その控えめさから、えてして軽く見られがちですが、爆音クラブとは正反対の迫力でもってしたたかに響きます。一流のアーティストたちが創造する「静寂」をこの機会にぜひ経験してください。音楽へのアプローチの多様性に驚、そして心地よい夢を見れることでしょう。詳しくはこちらを→https://www.kualauktable.com/event/12kJapan/12k2012.html

予約・詳細は
https://www.kualauktable.com/
にて。


10/6 長野 松本 hair salon 「群青」
Taylor Deupree+Marcus Fischer
Simon Scott、ILLUHA+Asuna
adv. 2500yen door 3000yen 学生2000円
(いずれも1ドリンク込み、限定50名)

10/7 京都 「きんせ旅館」
Taylor Deupree、Simon Scott、Marcus Fischer、ILLUHA
adv. 3000yen door 3500yen (限定60名)

10/10 六本木 Super Deluxe
Simon Scott、Christopher Willits、moskitoo、ILLUHA
adv. 3000yen door 3500yen

10/11 六本木 Super Deluxe
Taylor Deupree、Marcus Fischer、minamo、sawako
adv. 3000yen door 3500yen

10/13 文京区千駄木 「養源寺」
Taylor Deupree+青葉市子
Simon Scott+Marcus Fischer+伊達伯欣
Christopher Willits+Corey Fuller
sawako+青木隼人
adv. 3500yen door 4000yen(限定150名)



 さらにまた、ILLUHAは、「ヨガと音楽とマクロビ」なるドローン音楽のイヴェントをマンスリーで企画する。第一回目は、9月28日。「都会における都会に住むの人々のための企画として文京区にある静かなお寺、養源寺にて、瞑想をテーマとしたミニマル・ミュージックの生演奏のなか、ヨガをしてマクロビオティックに基づく食事をする」そうです。
 養源寺は、とても居心地の良いお寺です。興味がある人は試して間違いありませんよ!

9月29日(土) 文京区養源寺 「ヨガと音楽とマクロビと」
https://www.kualauktable.com/event/yoga01/yoga01.html

ヨガ(音楽の生演奏):90分2000円/回(食事別)各回限定25名(初心者歓迎!)
マクロビオティック:11:30~20:00
託児所:13時~20時 1500円/3時間 以降500円/時
ヨガマットレンタル:100円/枚 更衣室はあります。

第1回:14:00~15:30 Yoga:yoriko Music:Celer
第2回:16:00~17:30 Yoga:Yoriko Music:ChiheiHatakeyama

Chart JET SET 2012.09.10 - ele-king

Shop Chart


1

Kindness - Gee Up Remix (Female Energy)
「Erol Alkan Extended Rework」ヴァイナル化。Kindness代表曲の一つ「Gee Up」を、Erol Alkanがリエディットしたキラー・トラック!

2

Efeel - Dawn Over A Quiet Harbour (International Feel)
ウルグアイ発のバレアリック・トップ・レーベル"International Feel"が手掛けるリエディット・ライン「Efeel」の最新作が待望の入荷。グリーン・クリアヴァイナル/ワンサイデッド・プレス。

3

Neneh Cherry & The Thing - Dream Baby Dream / Cashback (Smalltown Supersound)
ジャズ・トランぺッター、Don Cherryの実娘としてもお馴染みNeneh Cherryによるアルバム"The Cherry Thing"からのリミックスカット!

4

Lorn - Weigh Me Down (Ninja Tune)
Ninja Tuneへの電撃移籍後初となるアルバム『Ask The Dust』が賞賛を浴びる中、Lorn自らがボーカルを担当した"Weigh Me Down"の豪華リミックス・シングルをリリース!

5

Clark - Fantasm Planes (Warp)
電子音と生楽器を完璧に融合させた名作『Iradelphic』でシーンに衝撃を与えたWarpの美メロ・エレクトロニカ人気者Clark。エレガントなポップ加減を更に増しつつボトムも強靭な6トラックスを完成しました。

6

V.a. - Epic Disco Vol.2 (Rollerboys)
Prins Thomas Remixを収録したアーバン・シンセ・ディスコ傑作「The Thracian Plain Ep」のヒットも記憶に新しいUltracity主宰"Rollerboys Recordings"の最新話題作をストックしました!!

7

Big Brooklyn Red - Taking It Too Far (Soul Brother)
CommonやMassive Attackを筆頭に数多くサンプリングされているあのクラシックを引用した演奏をバックに歌い上げる絶品アーバン・メロウ・グルーヴ登場!!

8

Chilly Gonzales - Solo Piano ll (Gentle Threat)
ごぞんじミュージック・ジーニアス、Gonzalesの最大のヒット作『Solo Piano』。8年の時を経て第2作目が完成しました。よりメロディアスで普遍的な表情を湛えた珠玉のインスト集!!

9

Mala - Mala In Cuba (Brownswood)
先行カット『Cuba Electronic』もメガヒット中、Deep Medi Musik主宰としてもお馴染みDigital Mystikzの1/2ことMalaによるキューバン・ダブ(ステップ)・アルバムが遂に登場です!!

10

Midland & Pariah - Untitled (Works The Long Nights)
テックベース最前線を行く名門Aus Musicの代表格Midlandと、絶好調のベルジャン老舗R&sに見出されたPariahによる超強力コラボ限定盤が登場。鳴りからして完璧な2トラックスを搭載です!

DJ KEN (Mic Jack Production, Ill Dance Music.) - ele-king

毎月第2火曜日に北海道から全世界へ!"ALTERNA.tv"配信中!
www.ustream.tv/channel/alterna-tv2
www.micjack.com

最近ヘビープレイベスト10 2012.08.22


1
Mic Jack Production x Yukiguni - 防人ノ唄 - Ill Dance Music.

2
Cypress X Rusko - Cypress X Rusko EP 01 - Cooperative Music

3
Eligh & Amplive - Therapy At 3 - Legendary Music

4
Cut Chemist - Outro - A Stable Sound

5
Shadow Shogun - ゲリラ - Toride Records

6
Snoop Lion - La La La - Berhane Sound System

7
6 blocc & Bungalo Dub - Pressure Dub - Moonshine Recordings

8
Alias - Fever Dream - Anticon

9
V.A - Heavysick Zero 10th Anniversary - Heavysick Zero

10
Brain Pump - Black Diamond - White

LOW END THEORY JAPAN [Fall 2012 Edition] - ele-king

 ちょうどフライング・ロータスの新作『アンティル・ザ・クワイエット・カムス』(素晴らしいアルバム!)がリリースされる頃、今年3度目のローエンド・セオリーが代官山ユニットで開催される。イヴェントの看板DJのひとり、ザ・ガスランプ・キラーをはじめジョンウェイン(注目株のひとり、ストーンズ・スロー所属)、そして豪華絢爛なDJたち。DJ Ductと鎮座ドープネスとMABANUAが一緒に並んでいるっていうのもいいです。人気企画BeatInvitationalも同時開催する。

 とにかく、以下のメンツを見て欲しい。ビート好きは集合!

2012.9.28(金)
at UNIT
www.unit-tokyo.com
OPEN / START : 23:00
CHARGE : ADV.3,500yen / DOOR 4,000yen
※20歳未満の方のご入場はお断り致します。
(要写真付き身分証)

Live&DJ:
The Gaslamp Killer
Nocando
Jonwayne

Beat Invitational:
grooveman Spot
三浦康嗣(□□□)
鎮座ドープネス
daisuke tanabe
mabanua (laptop set)
DJ Duct
sauce 81
みみみ
Notuv
Submerse

The Gaslamp Killer
Jonwayne

DJ:
DJ Kensei
grooveman Spot
Hair Stylistics
DJ Sagaraxx
RLP
Submerse

VJ:
DBKN
浮舌大輔


The Gaslamp Killer ザ・ガスランプ・キラー
カリフォルニア州サンディエゴ出身。レイヴに通いつつ、インヴィジブル・スクラッチ・ピクルズやビート・ジャンキーズなどのスクラッチDJの影響も受け、17歳の時にサンディエゴの有名なダウンタウン、ガスランプ・クォーター(ガスランプの街灯が連なる通りがある)でDJをはじめる。2006年にロサンゼルスに移り住むと、すぐにはじまったばかりのパーティ「LOW END THEORY」に関わり、レジデントDJの座を掴む。LAの最新のビーツ系から、アンディ・ヴォーテルの〈FindersKeepers〉音源やジミ・ヘンドリックスまでプレイできるDJスタイルは、すでに世界的な人気を得ている。2012年9月、10年におよぶDJキャリアの集大成である待望のファースト・フル・アルバム『Breakthrough』をリリース。

Nocando ノーキャンドゥ 
LAアンダーグラウンド・ヒップホップ・シーンの中核Project Blowedから頭角を表し、「LOW END THEORY」のレジデントMCを務め、多方面から注目を集めているラッパー。自由自在にウィットに富んだ天才的なライムを吐き出し、07年には全米最大級 のヒップホップ・イヴェントであるスクリブル・ジャムのMCバトルでチャンプに輝いた。フライング・ロータスやバスドライヴァー、デイデラスらをはじめとしたそうそうたるメンツが参加したアルバム『Jimmy The Rock』もリリース。今年10月にはセカンド・アルバムのリリースを控えている。

Jonwayne ジョンウェイン
14歳からエイフェックス・ツインやスクェアプッシャー、ヒップホップ、ゲーム音楽に触発され音作りを始め、高校時代には演劇やスポークン・ ワードをやり、ヒップホップの虜になってからラップとビート作りに没頭。LOW END THEORYに足繁く通い、ダディ・ケヴにその才能を認められて、Alpha Pupからインスト・ アルバム『Bowser』『The Death Of Andrew』をリリース。またStonesThrowからも初期の作品をまとめた限定盤『Oodles of Doodles』をリリース。20歳そこそこで独自のビート・スタイルを確立した彼は、ラッパーとしても既に引っ張りだこで、ポーティスヘッドのジェフ・ バーロウによるQuakersのアルバムなどに参加している。

- Beat Invitational出演者

GROOVEMAN SPOT
世界が注目する新鋭ビートメイカー/プロデューサー。MC U-Zipplain とのユニット Enbull のDJ & トラックメイカーであり、JazzySportの最重要選手。これまでに4枚のソロアルバムをリリースし国内外のDJ達にも高く評価されており海外での DJingもここ数年増え続けている。待望の4thアルバム「PARADOX」を完成させ、10/17にリリースする。

三浦康嗣(□□□)
□□□(クチロロ)主宰。スカイツリー合唱団主宰。作詞、作曲、編曲、プロデュース、演奏、歌唱、プログラミング、エディット、音響エンジニ アリング、舞台演出......等々をひとりでこなし、多角的に創作に関わる総合作家。

鎮座ドープネス
1981年生まれ。東京・調布生まれ国立育ち。KOCHITOLA HAGURETICEMCEE`S&GROUND RIDDIM所属ヒップホップ、ブルース、レゲエなど様々な音楽がミックスされたカメレオンのような音楽性と、フロウや韻における際立った独創性、ブルー ジーかつフリーキーな唄心をあわせ持つ異才MC/ヴォーカリスト。圧倒的なスキルと表現力によるフリースタイル・パフォーマンスが、16万回を超えるYou tube clipなどを通じて話題を呼び、熱烈なコアファンを増殖させているみたいです。あれもshimasuこれもshimasu。

DAISUKE TANABE
様々な音を独自の視点で解釈/分解/再構築し作り上げられるその世界観は国内外の音楽ファンやクリエーター達に熱く支持されている。リミック ス/コラボレーション、 自身の音源リリースやSonar Sound Tokyo, Sonar Barcelona,Tauron Nowa Muzyka (Poland)等国内外でのライブ活動の他、ファッションショウやパフォーマンスアートへの楽曲提供等、積極的に活動の場を広げ、今後も更なる活躍が期待される。

MABANUA (laptop set)
ドラマー/ビートメーカー/シンガーという他に類を見ないスタイルが話題の日本人クリエイター。すべての楽器を自ら演奏し、それらの音をドラ マーならではのフィジカルなビートセンスでサンプリングし再構築、Hip-Hopのフィルターを通しながらもジャンルに捉われない音創りが世 界中から絶賛される。バンドOvallとしても活動、Budamunkと共にGREEN BUTTER、U-zhaanと共にU-zhaan×mabanua、さらにGAGLE×Ovall名義でアルバムを制作するなど積極的なコラボワークも 展開。

DJ DUCT
一台のターンテーブルとフットペダル、サンプラー、エフェクターに攻撃的なスクラッチを駆使し展開する、そのまったくユニークなライヴ・スタイルでトーキョー・アンダーグラウンドを席巻する孤高の無頼派。閃きと経験によって矢継ぎ早に再構築される音像群、そして、それらを自在に操る圧倒的な構成力で魅せる 「ワン・ターンテーブリスト」こと、DJ DUCTの世界をご堪能あれ。

SAUCE 81
Red Bull Music Academy 2008に招待され、Metamorphose や Sonar Sound Tokyoなどの国内フェスにも出演。世界中にリスナーを持つポッドキャスト、cosmopolyphonic radio を主催し、同番組から派生したコンピ"COSMOPOLYPHONIC" を監修。日・米・英・独のコンピに楽曲提供し、TOKiMONSTA、Julien Dyne、LOGIC SYSTEM などのリミックスも行ってきた。ファンクネスに基づく、グルーヴのモダニズムに挑戦し続けている。

みみみ
とっても横好き下手えもんは、うんこ3個分の推進力では、あんな夢もこんな夢も、とってもかなえられないものだ。

NOTUV
1989生まれ。2004年からサンプリングを主体とした製作を開始し、Low EndTheoryなどLAを中心としたミュージック・シーンに影響を受けて経年変化。現在はジャンルに拘らず時代や文化毎の空気感を咀嚼し、自分に合った表現方法 で昇華している。昨年3月には日本のオンライン・レーベル「分解系records」よりアルバム「oO0o8o」をフリーで配布。

SUBMERSE
イギリス、チェシャー出身のSubmerseは超個人的な影響を独自のセンスで消化し2step、ビートミュージック、アンビエント、ヒップホップそしてドラムンベースを縦横無尽に横断するユニークなスタイルを持つDJ/プロデューサーとして知られている。過去にはR&Sの姉妹レーベル、 Apollo RecordsやMed Schoolから作品がリリースされており7月にはProject Mooncircleから"Tears EP"をリリースしたばかりである。

+THE GASLAMP KILLERとJONWAYNEも参加!

新ジャンル用語解説 - ele-king

問題:以下のアーティストをジャンル別に分けよ。ジュリア・ホルター、アイコニカ、アクトレス、ハイプ・ウィリアムス、ダニエル・ロパティン、ジェームス、フェラーロ、ジャム・シティ、ワイルド・ナッシング。
答え:無理。理由としては、ジュリア・ホルターをひとり見ても、シンセ・ポップ、アンビエント、ノイズ、いろいろある。ダブステップ系に括られるアイコニカにしても、フットワーク、エレクトロ......。ハイプ・ウィリアムスやダニエル・ロパティンにいたっては、スクリュー、ニューエイジ、ダブ、シンセ・ポップ、ジャム・シティはUKガラージ、サイケデリック、ドローン、ワイルド・ナッシングはシューゲイズ、ドリーム・ポップ......(以下、略)。

 1980年代後半から1990年代にかけてのジャンル用語を振り返ってみる。シカゴ・ハウス、デトロイト・テクノ、ガラージ、アシッド・ハウス......このあたりからジャンル用語は噴出する。アンビエント・ハウス、ガバ・ハウス、ハード・ハウス(NYのコマーシャル・ハウス)、ヒップ・ハウス(ラップ入りのハウス)、そして舞台をUKに移すと、バレアリック・ハウス、アシッド・ジャズ、プログレッシヴ・ハウス(トランスとほぼ同義)、テクノ、ハード・テクノ、ジャーマン・トランス、ゴア・トランス、インテリジェント・テクノ(大いなる失敗作)、ハード・ミニマル、ミニマル・ダブ、トライバル・ハウス、ディープ・ハウス、そして1994年当時もっとも問題視されたトリップ・ホップ(多くのアーティストがこう呼ばれることを嫌悪した)、そして、さらに多くの批判を促した用語としてIDM(レイヴで踊っている奴はバカという視点に基づく)がある。
 さらにまた、ハンドバッグ・ハウス(その名の通り、ちゃらいハウス)、ジャングル、ドラムンベース、ダークステップ、2ステップ、ビッグビート、ドリルンベース(駄洒落のきいたネーミングだった)、ブレイクコア、ポスト・ロック、グリッチ、アブストラクト・ヒップホップ、ブロークンビーツ......、当時はこうした用語解説を依頼されたものだった。
 ゼロ年代のダブステップ以降もまた、こうしたジャンル用語シーンが活性化している。ことインターネット・ユーザーにとっては、これらは知識というよりもある種のシニカルな情報との戯れでもある。

 たとえば、「hypnagogic(ヒプナゴジック)」、これは2009年の『Wire』誌が言い出しっぺのタームで、ポカホーンティッド、エメラルズ、マーク・マッガイア、ダックテイル、ジェームス・フェラーロなどがその例として挙げられている。おわかりのように、ほぼ同じときを同じくして出てきたある世代の共通的な感覚を『Wire』なりに言い表したタームだ(要するに、正確に言えば、感覚を指す用語で、ジャンル名ではない)。

 ちなみに『Wire』は、「ポスト・ロック」というタームを1990年代後半に生んでいる。これが日本では長いあいだ誤用されている。
 そもそも「ポスト・ロック」とは、トータス周辺に象徴される音で、つまり主義主張を訴えていたロック文化とはまったく別の(まさにポストな)方向性を持つ音楽を意味する。さらに言えばジャズやクラウトロック、さもなければ現代音楽にその源泉を求めている。ゆえにモグワイやシガー・ロス、65デイズ・オブ・スタティックスのような、歌手がいないインストというだけで、基本やってる音はロックな連中にまで「ポスト」を冠するのは間違っている。
 フリー・フォークも同じように、かなり曖昧に日本の音楽ライター界では使われている。これも『Wire』が出自で、この場合の「フリー」とは、フリー・ジャズの「フリー(即興)」に近いニュアンスだった。ゆえにサン・バーンド・ハンド・オブ・ザ・マンのような即興性の高い音楽はフリー・フォークと呼べるが、デヴェンドラ・ヴァンハートは昔ながらのフォークであり、フリー・フォークではない。
 こうした誤用はときには「ま、どうでもいいか」で済ませるが、ときには済ませられないこともある。音楽としての「フリー」を目指しているバンドにとってフォーク(アコースティックな響き程度の理由から)と呼ばれることは、ひとつの解釈という話しではなく、誤謬そのものだ。旧来のフォーク・スタイルに「フリー」が冠せられるのもあんまりである。

 music is music........あったり前だが、音楽を楽しんでいるときにジャンル用語を気にしているリスナーがいると思ってはいない。それでも僕がこうしたジャンル用語をわりと面白がるのは、それら情報のカオスから生まれたタームが、音楽を語る言語の停滞を阻止する役目を果たし、新しい問題提起へと連続させるからだろう。単純な話、これは人の好奇心を煽る。昔はよく、商売熱心なレコード会社やレコー店もジャンル用語をでっちあげたものだったが......(デス・テクノとか、サイバー・トランスとか、あるいはレイヴという言葉さえもジュリアナ東京に差し替えたりもしたが、ことの善し悪しはともかく、それによって売り上げが伸びたのは事実)。

 たしかに新ジャンル用語はときにリスナーを困惑させる。IDM(インテリジェント・ダンス・ミュージック)というジャンル名が出てきたとき、「何がインテリジェントだ」と、最初は抵抗があった。が、もうどうでもいいやと思って使っている。IDMという用語の普及とともに、その音楽性も急速に拡大したという事実を前に、「それで通じるなら、ま、いいか」と、「便宜上」使うことにした。IDMをやっていれば知的だとは決して思っていない。 
 最近では、「chillwave」もやっかいなタームだった。「chillwave」はブロガー発の新ジャンル用語として定着した最初の例となったわけだが、その契機となったウォッシュト・アウトやトロ・イ・モアの初期音源(つまり、ネタありきの音楽)からはずいぶん離れたところでも使われている。
 「chillwave」とは、いわば素人の作ったタームだ。それはデジタル文化における情報発信の自由がもたらした最初の結実だ。音楽を楽しんでいる素人の作ったブログから生まれた造語と、レーベルから送られてくる情報のコピー&ペーストで構成される音楽情報サイトと、どちらが文化的に有益だろうか。いずれにせよ、それがどんなに陳腐に見えようが、今日の新ジャンル用語の氾濫は、アンダーグラウンド・シーンの活況を反映しているのである。

 以下、興味がある人のみ参考にしてください。そして、間違い/追加項目があったら教えてください。

screw:わかりやすく言えば、ウルトラマンに出てくるゼットン星人の声だが......音楽の世界では、いまは亡きヒューストンのDJスクリューの編み出した技から来ている。ゆえにジャンル用語ではなく、グリッチと同じように、テクニック用語である。ピッチを落としてミキシングするだけだが、独特の幻覚性が得られることから、ゼロ年代半ば以降から現在にかけて、いろんなシーンで流行っている。オリジナル・チルウェイヴとクラウド・ラップがスクリュー・リヴァイヴァルをうながしている。



footwork(juke):シカゴの速くてくどい、ハードなダンス。チョップとドラムマシン。強いコミュニティ意識から生まれたジャンル用語。DJネイト、DJロック、DJダイヤモンド、DJラシャド等々。彼らの汗は、欧州や日本へも飛び火している。また、こうした固有の地域から生まれたジャンルには、他にもメンフィスの「crunk」、南アフリカの「shangaan electro」、ディプロが見つけた「new orleans bounce」などがある。



UK funky:グライムのハウス化。ソカのセンスが混じっている。ロンドン在住の友人によれば、ほぼ20歳以下限定のノリだとか。

brostep(filthstep):レイヴ仕様のダブステップ。もともとはダブステップもブローステップも同じ場所にいたはずで、こうした識別こそジャンル用語のネガティヴな作用だと言える。ハンドバッグ・ハウスよりはマシだが......。

dream pop:ドリーミーな宅録音楽。チルウェイヴ、クラウドラップ、ヴェイパーウェイヴと違って、盗用すなわちサンプリング主体ではない。ビーチハウス、ピュリティ・リングス、ナイト・ジュウェル、ツイン・シスターほか多数。

cloud rap:ドリーミーかつヒプナゴジックなラップとトラックで、クラウド・ストレージのような共有ファイルからがんがんに音源をダウンロードして作っている、サウンド的にもクラウド(雲のよう)なラップ。リル・B(本人は自分の音楽を「based」と呼んでいる)、メイン・アトラキオンズ、クラムス・カジノ、エイサップ・ロッキー、オッド・フューチャーなどなど。また、「trill wave」という言い方もあって、クラウド・ラップのラップがあるかないかという説明がされている。ストーナー・ラップとも親和性が高いが、別に大麻を主題としているわけではない。



dark wave:コールド・ケイヴのような、ゴシック調のシンセ・ポップ・リヴァイヴァル。ちなみにコクトー・ツインズ系のような気体のような音、マジー・スターのようなウィスパー系を、欧米では、エーテル系(ether、英語読みではイーサ)と呼んでいる。

witch house:冗談めいた、ちょっと痛いジャンル名のひとつ。簡単に言えばゴシックなハウス。ブリアルの影響下で生まれ、スクリューを取り入れている。oOoOOが有名で、ほかにもセーラムとか、†‡†とか、恐怖モノですな。



vaporwave:クラウド・ラップのように、ネットからダウンロードした音源の再利用によって作られているモダン・サンプリング・ミュージックの第三の波。グローバル資本主義への批評性、もしくは抵抗とも解釈されている。ひとつの文化現象としても興味深い。情報デスクVIRTUAL 、インターネット・クラブ、マッキントッシュ・プラス等々。



Burial follower:これは筆者が勝手に言っている。ジャンル名ではなく、ひとつの傾向。悲しく、ダークで、ヴォーカルを加工するところに特徴を持っている。ホーリー・アザー、バラム・アカブ、マウント・キンビー、ダークスターなどなど。クラムス・カジノも、共通の感覚を有している。

drone folk:ギターでドローンしながら歌うことだが、なんとなく雰囲気を指し示す、曖昧なターム。そもそもフォークとは、ポップスと比較して言葉表現が自由なことから、詩的な言語を使えるジャンルとして発展している。ドローン・フォークは、必ずしも一音で構成されているわけではないし、言葉の詩学ももたない。ときにポポル・ヴーといったドイツのコズミックの系譜とも関連づけられる。グルーパー、モーション・シックネス・オブ・タイム・トラヴェルなどなど。



haunted R&B:ハウ・トゥ・ドレス・ウェルをはじめ......ジャンル名というよりは今日顕在化している感覚。ウィッチ・ハウスと同じようなものか。サッド・コアとかね。



dark minimalism:シャックルトンの絶大な影響力によって拡大している。雨後の竹の子のようにこれからも出てきそうな気配。

dark industrial:デムダイク・ステアやレイミ、ブラッケスト・エヴァー・ブラックのようなインダストリアル・リヴァイヴァル。





 一時期は「post dubstep」とはなんだったのかとよく訊かれたが、僕なりに説明すれば、ブリアル以降のハウスのBPMに合わせたベース・ミュージックで、ピアソン・サウンドやジョイ・オービソンなどその一部はテクノやハウスに回帰しているから、その過程だったともいまなら言えるか。
 また、〈ワープ〉の若手としてはダントツに才能がありそうなハドソン・モホークは、少し前は「wonky」などと呼ばれていたが、いまでは死語となりつつある。

2年半ぶりのオリジナル・アルバム『イン・フォーカス?』のリリースに先立ち、先行シングル『デコレイト』が発表された。躍動的なリズムに高い音楽性を優しくほぐしこんだ“デコレイト”は、“ラム・ヒー”にも比較されるキャリア屈指のポップ・ソングだが、ほかの2曲も見逃せない内容になっている。

 2曲めに収録されているバグルスの名曲“ヴィデオ・キルド・ザ・レディオ・スター(ラジオ・スターの悲劇)”カヴァーは、トレヴァー・ホーンのファンであるという彼がすでに幾度もライヴで披露し、UKのラジオでも演奏されたお馴染みのトラックである。CD収録についてファンからの要望がとくに高かったということだが、アルバムには未収録となる。

 “ホエン・アイ・フォール・イン・ラヴ(恋に落ちた時)”は、映画『零号作戦』などに使用され、ナット・キング・コールによる録音で知られるヴィクター・ヤングのスタンダード・ナンバー。この曲のカヴァーである3曲めも、トクマルシューゴ自身の音楽的嗜好が随所にひらめく愛聴ナンバーである。

 ソノシートも同時にリリースされ、こちらは2曲のみ(“デコレイト”“ヴィデオ・キルド・ザ・レディオ・スター”)の収録となるが、いまではプレスできる工場が希少となったポストカード一体型のめずらしい形式。ダウンロード・クーポンがついているため、音とはべつに「かたち」として愛でたい。撮影当日は高熱をおして水に入ったというドラマもこめられたジャケット写真を、より大きく手にすることができる。

 さらに特設サイトでは“デコレイト”のミュージック・ヴィデオが公開されている。これもターンテーブルのイメージにゾートロープ(回転のぞき絵)の手法が重ねられ、どこか懐かしい感触に仕上げられている。手がけたのはアジア・デジタル・アート大賞2011への入賞も果たしたという注目の制作チーム、ONIONSKIN。楽曲、リリース・フォーマット、ヴィジュアルがリニアに「アナログ」の存在論を浮かび上がらせていて、これもトクマルシューゴのメッセージであるかのように思われ、興味深い。

[CD]
トクマルシューゴ 「デコレイト」
SHUGO TOKUMARU 「Decorate」
発売日:2012.9.5 Amazon <TRACK LIST>
1. Decorate
2. Video Killed The Radio Star
3. When I Fall In Love

[ソノシート]
トクマルシューゴ 「デコレイト」 / SHUGO TOKUMARU 「Decorate」
発売日:2012.9.5 Amazon <TRACK LIST>
1. Decorate
2. Video Killed The Radio Star
※収録分数の関係で、CD盤より1曲少ない計2曲の収録となります。
ソノシート特性上、CDや通常のレコードに比較してノイズ・音飛び等が多く聞かれる場合がありますので、予めご了承下さい。
※収録曲のフリー・ダウンロード・コード付き
※再生にはレコード・プレイヤーが必要となります。


【関連商品情報】
new album “In Focus?”
2012.11.7 ON SALE Amazon 商品詳細:https://p-vine.jp/news/3607

<限定盤>
PCD-18688/9 ¥2,900 (tax incl.)
★スペシャル・スリーブケース仕様
★トクマルシューゴ自身の演奏による、著作権フリーの99種/99トラックの楽器フレーズを収録したボーナスCD付き2CD仕様

<通常盤>
PCD-18690 ¥2,500(tax incl.)
★ジュエル・ケース1CD仕様

01. Circle
02. Katachi
03. Gamma
04. Decorate
05. Call
06. Mubyo
07. Poker
08. Ord Gate
09. Pah-Paka
10. Shirase
11. Tightrope
12. Helictite (LeSeMoDe)
13. Micro Guitar Music
14. Down Down
15. Balloon

Chart - DISC SHOP ZERO 2012.09 - ele-king


JUKE-ish / Juke not Juke Selection #01
本流フットワーク以外の場所から生まれてきた、ジューク好きにオススメ、またはジューク以降の耳で聴くと「!」となりそうな10枚。

Shop Chart


1

FRACTURE feat. DAWN DAY NIGHT - Get Busy (Exit)
ドラムンベースにジュークとエレクトロの要素を盛り込んだタイトル曲は、Apacheな音をうっすら覗かせるあたりもニクい♪ 2はジュークのミニマル感を増量し、カウベルを足したことで高速キューバンな空気も。

2

INDIGO - Ayahuasca / The Root (Exit)
ダブステップで知られるマンチェスターのプロデューサーがドラムンベースのレーベルから。M2のキックの打ち方がジューク的でもあるトライバル感を。

3

VERSA - Shadow Movement (On The Edge)
エフェクトがRhythm & Soundにも通じる深海テック・ダブが、45rpm-2でアンビエント感あるジューク風に。

4

REGIS - In A Syrian Tongue (Blackest Ever Black)
UKミニマル・テクノの鬼才。M2と3は、ピッチアップ(45rpm -8) してドラムンベース~ジュークに接続可。

5

Danny Scrilla - Hunch feat. Om Unit (Cosmic Bridge)
ジュークを半分で捉えたテンポと、Joker周辺なシンセ、そしてダブ~レゲエなリズムが交差してどれも越えてるナゾ度(現状)高い1枚。

6

ILL BLU - Clapper (Hyperdub)
クドゥロにも通じる、クラップを活かしたハイパー・ファンキーなオリジナルに、Traxmanによるフットワーク~ジューク・リミックスも収録。

7

ROMARE - The Blues (It Began in Africa) (Black Acre)
様々なサンプルのコラージュでアフリカとアフロ・アメリカンの間の見えない線を浮かび上がらせる音響実験。ザックリした生の感触と、ジューク以降のベースとリズムのセンスが絡み合って、ありそうでなかった不思議な空間。

8

INTERFACE & MINUS / DIE & MENSAH - Hardwork / Firing Line (Gutterfunk)
ブリストル・ドラムンベースからジュークに接近した1。ふたりの筋金入りファンカーによるエレクトロ2。

9

AMIT - Stay With Me / Kritical (Exit)
M1ではインドな香りのストリングスと大陸的に漂う女性ヴォーカルが、ドラムンベースを通過したトライバル・ビートと融合。M2は、これまたドラムンベースの血を感じさせつつのエレクトロ・アシッド・ファンク。

10

EAN - Darknet E.P (Cosmic Bridge)
ダブステップの音の鳴り&展開をジュークなビートと骨格にはめ込んでみたような、ダブステップ×ジュークの中間でありつつどちらでもない不思議な響き。M4のメランコリックさは新鮮!

Django Django - ele-king

 ホット・チップがフェンダーを掻き鳴らすギター主体の......というかベンチャーズをカヴァーしたらこうなっていたのかもしれない。実際ホット・チップは10月のギグでジャンゴ・ジャンゴを前座に迎えることになっている。ジャンゴ・ジャンゴという反復の名前を見て反射的にギャング・ギャング・ダンス(Gang Gang Dance)を思い出したのだが、ギャング・ギャングとも相容れるかもしれない程度にサイケデリックでもあるし、最近の彼らと同じく反復のリズムが据えられている。しかしそのリズムも殊更には強調されておらず、大げさに踊ることは想定されていないだろう。

 シンセサイザーやリズムマシンを用いたポップスとなるとシンセサイザーが演奏の主体になっていくのがシンセポップのバンドの常だと筆者は勝手に思っていたのだが、ジャンゴ・ジャンゴはシンセをあくまで曲の味付けとして用いており演奏の主体はギターとドラムとベースといったフィジカルな音である。そしてなによりザ・ビーチ・ボーイズ(!)を思い起こさせるヴォーカル・ハーモニーを特筆すべきか。というか、このバンドが語られる際にホット・チップの名が挙げられる傾向があるのは、エレクトロニクスを用いた音楽にザ・ビーチ・ボーイズめいたヴォーカル・ハーモニーを搭載させているからだろう。リード曲"ディフォルト(Default)"でのタイトルを連呼するエディットされたヴォーカルも"Surfin' Safari"におけるマイク・ラヴのちょっと間抜けなコーラス・ワークとよく似ている(ああ、またホット・チップとザ・ビーチ・ボーイズに触れてしまった)。もしかしたらアニマル・コレクティヴ(Animal Collective)のヴォーカル・ハーモニーを思い出す人もいるかもしれない。しかし、リード・ヴォーカルが導くメロディはジョン・レノンに歌わせてもしっくりくるものがあるかもしれない。

 ロンドン出身のジャンゴ・ジャンゴだが、「ジャンゴ」が映画『続・荒野の用心棒』の主人公の名前であるように──それは初期のアップセッターズのアルバム名にもなっている──音楽(とくにリード・ギター)はなぜかとても西部劇的めいている。西部劇というよりはアメリカーナ志向は、古くからブートレグで伝わっていたがようやく昨年にオフィシャルで陽の目を見たザ・ビーチ・ボーイズ『スマイル(SMiLE)』のコンセプトと接近しようとしたものであるかもしれない。そう考えるとアルバム全体が"英雄と悪漢(Heroes And Villians)"を引き延ばそうとしたものにも思えるし、ヴィンセントのリード・ヴォーカルもその頃のブライアンのすこしだけ鼻にかかった歌声と似ている気さえする。こんなこというと本人がたいそう喜びそうだ。

 "ファイアウォーター(Firewater)"のカントリー・ブルース/ロカビリーっぽさ。ホット・チップの強烈なダンス・フロア・ソング"シェイク・ア・フィスト(Shake A Fist)"をリスナーの脳みそをふにゃふにゃにできるよう知能指数をすこし低めに設定して柔らかくカヴァーしたような"ウェイヴフォームス(Waveforms)"のビート。レッド・ツェッペリンの『III』っぽくもある"ハンド・オブ・マン"に吹くフォークの風。"ラヴズ・ダート(Love's Dart)"の背後にあるマントラのにおい、"ウォー(Wor)"の露骨にあらわされた「エレキ」の弦の感触。ひねりのないタイトル"ライフズ・ア・ビーチ(Life's A Beach)"に突如挿入されるパイプ・オルガン。タイトルから諸の"スカイズ・オーヴァー・カイロ(Skies Over Cairo)"のアラビアン・ナイト。"ドラムフォームス(Drumforms)"にある日本のバンド、Food BrainのサイケデリアとYMOのシンセサイザーの調合。これらすべてがいやらしさを感じさせないようにしかし記号的に配置されている。さまざまな過去の音楽から要素を抽出してくる感覚は例えばベスト・コーストのあからさまなリヴァイヴァルとも違うし、ホット・チップによる80年代の音楽の消化&昇華とも違うだろう。折衷というよりは、例えばジャンゴ・ジャンゴがベッドルームで見た音楽のジャーニー(旅)の(白昼)夢を具現化しようとしたもののように思える。これらの記号は、じっさい、意図的にプリコラージュされたにしてはサイケデリックだし、無意識的にしてはアーティスティックでよくできすぎている。ライナーノートにはジャンゴ・ジャンゴのリスペクトする無数のミュージシャンが羅列されているが、そこまで計算し尽くされ謀略的なサウンドのようには響かない。無邪気で愉しいアルバムだ。メンバーたちも他に仕事をもっているゆえにスローペースの活動とのことだが、どんなシーンにも左右されず、気楽にアーティスティックな作品を作ってくれることだろう。これならザ・ビートルズやザ・ヴェンチャーズしか聴かないようなおじいさんもすこしは耳を傾けてくれるかもしれない。次作はいつだ。

パブリック娘。 - ele-king

hi ele-king

「あっ、ども。はじめまして。」パブリック娘。です。
https://lyricalgarden.web.fc2.com/publickmusume/
橋元遊歩さん(原文ママ)から、THE OTOGIBANASHI'Sだけではライヴレヴューとしてなんだからと、ついでに大絶賛をいただいたラップ・グループです。
https://www.ele-king.net/review/live/002309/

1から3が清水大輔、4から6が斎藤辰也、7から10が文園太郎による選曲です。メンバー3人のうちまともにDJをしているのは文園のみですが、橋元さんへの感謝状の意も込めまして3人揃って選曲させていただきました。リストを眺めますと、目立つのはアーティスト本人によるアップロードですね。これもナウなヤングのひとつのリアルでございます。そうそう、Tokyo No Waveなるシーンが東京のライヴハウス(主に高円寺二万電圧でしょうか)で盛り上がりつつあるようですが、ぜひエレキングにも分析してもらえたら面白いに違いないと思っています。

私事になりますが、夏風邪をガツンとひいてしまい、目覚めたら39.8度なんてことが2週にわたり断続的に起きています。熱いです。ホット・チップです。みなさんのご健勝となによりご健康を心よりお祈り申し上げます。

best wishes.
tatsuya


1
moscow club - jellyfish - Bandcamp

2
ミツメ - fly me to the mars!!! - Mitsume

3
ユームラウト - マイライフ・イズ・エンド - Myspace

4
Dro Carey - Venus Knock - The Trilogy Tapes

5
Chrome Sparks - Still Sleeping (Feat. Steffaloo) - Zappruder/Bandcamp

6
kyu-shoku - New Song - Soundcloud

7
Rhymester s/w Wack Wack Rhythm Band & F.O.H - ウワサの真相 featuring F.O.H」- Ki/oon Music

8
Buddha Brand - 人間発電所(ORIGINAL '96 VERSION) - Cutting Edge

9
tengal6 - Put Ya Hands Up!? (You Know What Time Is It!? Mix) by BeatPoteto - Soundcloud

10
You The Rock - Back City Blues - Cutting Edge
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