「iLL」と一致するもの

Allen Ginsberg's The Fall of America - ele-king

 公民権運動にヴェトナム戦争にと、激動の時代に詩人アレン・ギンズバーグが全米を旅してものした詩集、『アメリカの没落』(1973年発表)の50周年記念プロジェクトが始動している。
 同詩集をミュージシャンたちが独自に解釈する──というのがこのプロジェクトの主旨で、名うての音楽家たちが集結したコンピがデジタルで2月5日に、フィジカルでは6月4日に発売されるのだけれど、なんとそこに坂本慎太郎が参加しているのだ。
 しかも驚くなかれ、同コンピにはヨ・ラ・テンゴサーストン・ムーア&リー・ラナルド、アンジェリーク・キジョーにハウィー・B、ディヴェンドラ・バンハートなどなど、そうそうたる顔ぶれが並んでいる。テーマ的にもまさにいまのアメリカにふさわしい(というと語弊があるけど)きわめて今日的なものだし、これは聴いておきたい1枚ですね。詳細は下記を。

山本精一 - ele-king

 昨年のアルバムだがみすごすのもどうかしている。あるレコードのすばらしさは新しさが左右するものではない。むしろときの経過とともにじわじわと真価がきわだつ作品も稀にだが存在する。
 山本精一の『セルフィー』はその典型である。世に出たのは昨年暮れ、そのことは6曲目の「ハッピー・バースデイ(to invisible something)」の丸括弧内の文言にあらわれている。「目にみえないなにか」の誕生を祝うこの歌はギターの弾き語りを土台にシンセサイザーが彩りを添えるフォーク調の楽曲で、歌唱法も衒いなさとあいまった朴訥な印象が支配的だが、不穏なムードが満ち潮のごとく高まるシンセの間奏直後の「お誕生日おめでとう 永遠の一里塚」につづき、堰を切ったように「ずっとおめでとう」のリフレインがはじまるころには山本の歌う「目にみえないなにか」とはまちがいなく新型コロナウイルスであろうと思いあたり、世界を前にした聴き手の視界はぐんにゃりゆがむ。
 なんとなれば、山本精一が社会的事象をこれほど直截に歌いこむのもめずらしい。むろん山本の、ことに歌の系列の音楽の背後には現代性が束になって脈打っている。ただし山本はそれらをあからさまな共感や抵抗のかたちにあらわすのをよしとしなかった。社会性は主体のフィルターが篩にかけられたあと抽象的、象徴的な平面に定着し、それらのことばとポップでときにサイケデリックなサウンドからなる楽曲は絶妙な均衡をみせる――山本精一の「うた」のあり方の一端をしめすこの方法論は90年代に羅針盤の諸作や Phew との協働作『幸福のすみか』(1998年)などの傑作に実を結び、世紀もあらたまり10年たった2010年代以降、より稠密な顔つきをしめすようになった。2010年の『プレイグラウンド』、翌年の『ラプソディア』から2014年の『ファルセット』さらに『童謡(わざうた)』とつづく楽曲志向の作品では書法はさらに巧みに、編曲は大胆さをましている。この時期山本は『ライツ』や『パーム』などでアコースティック・ギターの作曲と演奏と録音の実験を並行してすすめており、結果山本の2010年代以降のアルバムはこれらの要素が斑状にあらわれる、その調停の手さばきをさして職人的とも形容できる境涯は山本精一の孤高を意味する一方で、作品のもつ力線は外よりも内に向かうかにみえた。すなわち内省による探求であり、それにより作家性はきわまったが、しかしいたずらな難解さにおちいることもなかった。その事態をさして私は職人的といい、日々の営みのごとくときを置いてとどく山本精一の音楽を心待ちにいていた。
 それがかわったのはおそらく2020年のコロナ禍によるものであり、幾多の音楽関係者をさいなみ、いまなおその「禍中」にとらえて離さない事態の深刻さと無関係とはいえない。ことにその影響はソーシャル・ディスタンスにも配信にもなじみがたい小規模のライヴハウスに顕著で、山本が店長兼オーナーの大阪の難波ベアーズでも、さまざまな工夫と苦闘をくりひろげているのは昨年来ちらほら耳にする、そのことと『セルフィー』の関係性は推測の域だが、2010年代なかばまでの作品の空気と異なるのはあきらかである。
 原因のひとつに編成の変化をあげることできる。この10年の山本のソロはおもに千住宗臣が担ったドラムスをのぞき、歌とギターとベースは山本自身の手になることが多かった。ドラムスさえも、たとえば『童謡(わざうた)』などでは手ずから味のあるリズムを刻んでいる。すみずみまで意識のおよんだその音楽空間こそ山本精一のひととなりであると同時に、先にあげた内側への志向を裏書きするものだが、スタジオにおける録音という行為を密室化する思考でもある。それによりスタジオは居室と化し録音は宅録ににじりよるから機材の水準と場所の記名性を問わない。どこにいてもそうなのだ。ところが『セルフィー』ではドラムスの senoo ricky、鍵盤関係では西滝太、IEGUTI、坂口光央など、過去数作とはくらべものにならないほど(というほどではないけれども)参加人員はふえている。ひとの出入りが風通しのよさにつながっているとは、いささか牽強付会だが、いくつかの手が楽曲に加わることで密室的な空気感が減じているのもたしかである。ただし歌の底流にながれるものはかわらない。ギターのフィードバックとトリルではじまる1曲目の “フレア” はカーテンを開き窓の外をながめるような幕開けらしい楽曲だが、視線の先にひろがるのは渺々たる充足とは無縁の世界である。世界認識におけるこのような見立ては『ラプソディア』の “Be”、『童謡(わざうた)』の “ゆうれい” でも聞こえる山本精一の歌詞の根底をなすもので、そこには存在論的な不安のようなものに穿たれ、空洞化した主体が夢のなかでみずからをみつめつづけるような自己言及的で背理的な空間がひろがっている。『セルフィー』にもそれは再帰し、“フレア” にも分身譚を想起する一節があるが、主題よりむしろ主題の影にちかく、歌詞にうかがえる志向はむしろ外に向かっているのは「急に発火すること」が転じて「急変すること」を意味するフレアの語義から推測できる。付言すると、フレアとは写真が趣味の方には太陽などのつよい光源にレンズを向けるとおこる光学現象とも、天文ファンには太陽の表面の爆発をさす天文用語としてもおなじみだが、フレアがおこるのが太陽の大気にあたるコロナなのも、なにやら関係がありそうである。というのはさておき、内と外どちら向きでも山本精一の自己問答の旅は終わらないのは2曲目の表題曲 “セルフィー” の「自分を追いかけてどこまでも歩いて」の一節にもあらわれている。それではあまり変わらないではないかともうされる御仁にはそのとおりだとも、そうではないともお応えしたい。
 というのも、本作における変化の主眼は主体ではなく環境の側にあるからである。ポストメディア時代の社会/環境における権力が規律型からコントロール側に変容するのはドゥルーズの指摘をまつまでもなく自明だが、そのような空間はたとえばこれまでの学校や会社のような閉じた規律型の空間ではなく、ネットワークをとおした「開かれた環境」になる。だれもがそのなかを自由に、いわば外向きに横切ることができるが、パスワードとかICカードとか所定の認証のなければどのような門もくぐれない。主体どうしはネットワークでつながるもバラバラで、出来事ごとに流動的にむすびつく。きっかけになるのは情動であろう――などと述べると堅苦しいが、情動をエモさや共感と言い換えると、身のまわりの現実がたちどころにあらわれはしまいか。1990年代とも2000年代とも、10年前ともちがうこのような環境下では音楽よりもそれをいかに伝えるかが大きなウェイトを占めることになる。
 伝達の変化は音楽と聴き手の距離をつづめ、それにより親密さの質もかわっていった。親密さは対象との心理的な距離というより図式化した情動への即時的な反応となり、ときとともに亢進したこの構図は音楽そのものに還流する。音楽家とリスナーによる際限のない先読みのゲームはベンヤミンのいう創作の産屋である孤独さえゆるさず、その回路となるネットワークはかつてベッドルームを外部につなげるバイパスだったが、いまやそこをたどって外部が逆流する裂け目になった。
 あらゆる場所が開かれていく多動的な環境下で山本精一は表現をたもちつづけた。『プレイグラウンド』以降、2010年代の諸作を一貫する対抗的なあり方をオルタナティヴといわずして、なにをそう呼べばいいのか私はわからないが、これらの作品は超然とした面持ちとあいまって名人芸的な受け止められ方だったのではなかったか。
 『セルフィー』も方法的にはその延長線上だが、2010年代にあがった成果をとりまとめ、新たに踏み出した一歩といえる。アコースティック基調の “セルフィー” や “カヌー” はフォークよりもトラッドよりも武満徹のギター曲を私に想起させるし、「どんな顔にでも足跡がついている どんな顔にも指紋が浮かんでいる」と歌い出す4曲目のタイトルはポール・サイモンのサイモンと同じく「Simon」と書いて仏語読みで「しもん」というが、聴くたびに思い出すのはトー・ファット(Toe Fat)のファーストのレコード・カヴァーである。このジャケットを手がけたのはヒプノシスで、バンドの中心人物ケン・ヘンズレーはのちにユーライア・ヒープの『対自核』で大仕事をやってのけたが『セルフィー』の発売の2週間前に世を去っている。むろんこれは余談だが、そのようなものまで、ザッパ的な共時性にまねきよせるのが山本精一の総合力であり、その底なしの懐にはノイ!的なメトロノミック・ビートもクラスター風のアンビエントも入れば、Satoshi Yoshioka の手になる “windmill” のIDMを思わせる微細なビートもふくまれる。曲を重なるごとにサイケデリックな潮位は増し、やがて “Future Soul” と題した終曲でゆっくりと閾値を超えていく。『セルフィー』とはそのさいに放射する白熱した逆光のなかに浮かび上がる山本精一の真新しい自画像をさすのであろう。

Mouse On Mars - ele-king

 マウス・オン・マーズが2月26日に新作『AAI』をリリースする。ビッグなゲストを多数招いた『Dimensional People』以来3年ぶりのアルバムだ。
 タイトルは「アナキック・アーティフィシャル・インテリジェンス」の略だそうで、すなわちA.I.シリーズのさらなる解放と拡張……というわけではなく、作曲ツールとしてガチのAIを使用していることに由来するみたい。なんでもこの新作のために、AI技術者やプログラマーたちと新たなソフトウェアまで制作したそうで。すごいです。
 現在シングルとして “The Latent Space” と “Artificial Authentic” の2曲が公開中。どちらもドラム部分と上モノの応酬がとんでもないことに。これはアルバム、かなり期待できそうじゃない?

Mouse On Mars『AAI』
マウス・オン・マーズ『AAI(Anarchic Artificial Intelligence)』

企画番号:THRILL-JP 53 / HEADZ 250(原盤番号:THRILL 537)
価格:2,100円+税
発売日:2021年2月26日(金)※(海外発売:2021年2月26日)
フォーマット:CD / Digital(デジタル配信も同時リリース)
バーコード:4582561393624

01. Engineering Systems 00:22
 エンジニアリング・システムズ
02. The Latent Space 06:26
 ※2020年10月29日リリースの海外での1stシングル(配信のみ)
 ザ・レイタント・スペース
03. Speech And Ambulation 07:06
 スピーチ・アンド・アムビュレイション
04. Thousand To One 05:31
 サウザンド・トゥ・ワン
05. Walking And Talking 06:19
 ウォーキング・アンド・トーキング
06. Youmachine 04:08
 ユーマシーン
07. Doublekeyrock 02:25
 ダブルキーロック
08. Machine Rights 01:42
 マシーン・ライツ
09. Go Tick 04:20
 ゴー・ティク
10. The Fear Of Machines 01:43
 ザ・フィア・オブ・マシーンズ
11. Artificial Authentic 03:35
 ※2021年1月13日リリースの海外での2ndシングル(配信のみ)
 アーティフィシャル・オーセンティク
12. Machine Perspective 00:43
 マシーン・パースペクティヴ
13. Cut That Fishernet 05:31
 カッツ・ザット・フィッシャーネット
14. Tools Use Tools 00:31
 トゥールズ・ユーズ・トゥールズ
15. Loose Tools 01:02
 ルース・トゥールズ
16. Seven Months 02:31
 セヴン・マンスス
17. Paymig 00:47
 ペイミグ
18. Borrow Signs 01:50
 バロウ・サインズ
19. New Definitions 04:15
 ニュー・ディフィニションズ
20. New Life Always Announces Itself Through Sound 01:16
 ニュー・ライフ・オールウェイズ・アナウンシズ・イットセルフ・スルー・サウンド
21. How Will They Talk 05:54
 ハウ・ウィル・ゼイ・トーク

※ Track 21 …日本盤のみのボーナス・トラック

Andi Toma - Instruments, Electronics, Production
Jan St. Werner - Instruments, Electronics, Production
Dodo NKishi - Drums & Percussion
Louis Chude-Sokei - Text & Voice
Yağmur Uçkunkaya - Voice
Tunde Alibaba - Percussion
Drumno - Drums
Eric D. Clarke - Loose Tool
Nicolas Gorges, Yağmur Uçkunkaya, Florian Dohmann, Rany Keddo, Derek Tingle - AI
Zino Mikorey - Mastering(Zino Mikorey Mastering)
Kitaro Beeh - Vinyl Cut
Casey Reas - Computer Graphics
Rupert Smyth Studio - Art Direction
Paraverse Studios Berlin 2020

https://www.mouseonmars.com/

あのポップでキャッチーなエレクトロニック・サウンドが戻って来た。
常に革新的なサウンドを追求しながらも、人懐っこさを失わず、ダンス・ミュージックとしても秀逸で、圧等的なオリジナリティを更新し続けるマウス・オン・マーズの最新作。

マウス・オン・マーズは(2011年より)ドイツのベルリンを拠点とした、ヤン・エスティー(St.)・ヴァーナーとアンディ・トーマの電子音楽デュオ(以前はヤンはケルン、アンディはデュッセルドルフを拠点としていた)で、1993年の結成以来、実験性とポップさを持ち合わせた、常に刺激的なエレクトリック・サウンドを追求してきた(近年、海外ではIDMにカテゴライズされることが多いが、それに留まらない多彩な音楽性を持ち合わせている)。

ジャスティン・ヴァーノン(ボン・イヴェール)、アーロン&ブライス・デスナー(ザ・ナショナル)、ザック・コンドン(ベイルート)、サム・アミドン他が参加した(生楽器や生演奏をフィーチャーし)壮大で重層的な2018年のThrill Jockey帰還作『ディメンショナル・ピープル』以来、約3年振りとなる新作アルバムは、AI(人工知能)技術を大胆に導入し(作曲ツールとしても活用)、アルバム・タイトルそのものが『AAI(Anarchic Artificial Intelligence)』となった。

ライブではドラム&ヴォーカルとして欠かせない存在であったドド・ンキシがドラム・パーカッションで復帰して(前作には未参加)、作家・学者・(英語)教授であるボストン大学アフリカン・アメリカン学部長Louis Chude-Sokei(ルイス・チュデ=ソキ)の言葉(彼のテキストをベースにした)や声を大々的にフィーチャーし、新進気鋭のコンピュータ・プログラマー集団(AI技術集団のBirds on MarsのNicolas Gorges、Yağmur Uçkunkaya, Florian Dohmannの3人と、元SoundcloudプログラマーのRany KeddoとDerek Tingle)と共に、またしても独創的で革新的な、最先端なサウンドを創り上げた。

ヤンとアンディは、Birds on Mars、Rany Keddo(ラニー・ケド)、Derek Tingle(デレク・ティングル)と共同で、スピーチをモデリングすることができる特注のソフトウェアを制作し、Louis Chude-SokeiやYağmur Uçkunkaya(ヤムア・ウツコンカヤ)のテキストや声を入力し、シンセサイザーのようにコントロールして、演奏できるようにした。ナレーションとして聞えるものも実際はAIが話しているものだったりする。

タイトルや、コンセプト、制作方法から難解な作品を想像されがちであるが、意外にも近年では最もポップで、フュー_チャリティックなダンスフロアーの高揚感を期待せずにはいられない、ユーザー・フレンドリーな内容となっており、サウンドだけでも十二分に楽しめる作品に仕上がっている。
まず、海外で先行シングルとなった「The Latent Space」と「Artificial Authentic」を聴いて欲しい。

本作のアートワークは、電子アートとヴィジュアル・デザインのためのプログラミング言語Processing(プロセシング)の開発者であるCasey Reas(ケイシー・リース)が担当している。
(ICCでも展示を行っているCaseyはマウス・オン・マーズの二人が参加したザ・ナショナルの2017年作『Sleep Well Beast』収録曲の4曲のMVの監督をしている。Caseyはザ・ナショナル結成前の Scott Devendorf、Matt Berningerとバンドも組んでいた)

マスタリングは、Nils Frahmの2020年の『All Encores』や2018年の『All Melody』、Penguin Cafeの2019年の『Handfuls Of Night』等のErased Tapes作品のマスタリングも手掛けているZino Mikorey(Zino Mikorey Mastering)が担当している。

◎ 全世界同時発売
◎ 日本盤のみ完全未発表のボーナス・トラック1曲収録


Mouse on Mars, the Berlin-based duo of Jan St. Werner and Andi Toma, approach electronic music with an inexhaustible curiosity and unparalleled ingenuity. Operating in their unique orbit within dance music’s nebulous echosystem, the duo’s hyper-detailed productions are inventive, groundbreaking but always possessing a signature joyful experimentation. A genre-less embrace of cutting-edge technologies have ensured that each Mouse on Mars release sounds strikingly modern, a fact made more remarkable when one reflects on the duo’s 25 years of making music. New album AAI (Anarchic Artificial Intelligence) takes Toma and Werner’s fascination with technology and undogmatic exploration a quantum leap further. Collaborating with writer and scholar Louis Chude-Sokei, a collective of computer programmers and longtime Mouse On Mars collaborator/percussionist Dodo NKishi, the duo explores artificial intelligence as both a narrative framework and compositional tool, summoning their most explicitly science-fiction work to date.

AAI compiles some the most immediate and gripping music in Mouse on Mars’ extensive catalogue. Emerging from a primordial ooze of rolling bass and skittering electronics, hypnotic polyrhythms and pulsing synthesizers propel the listener across the record’s expanse. Hidden in the duo’s hyper-detailed productions is a kind of meta-narrative. Working with AI tech collective Birds on Mars and former Soundcloud programmers Rany Keddo and Derek Tingle, the duo collaborated on the creation of bespoke software capable of modelling speech. What appears to be Louis Chude-Sokei narrating through the story is in fact the AI speaking. Text and voice from Chude-Sokei and DJ/producer Yağmur Uçkunkaya were fed into the software as a model, allowing Toma and Werner to control parameters like speed or mood, thereby creating a kind of speech instrument they could control and play as they would a synthesizer. The album’s narrative is quite literally mirrored in the music - the sound of an artificial intelligence growing, learning and speaking. Artwork was provided by the inventor of the computer graphics language Processing, Casey Reas, a further exploration of technology’s application in the context of art.

In Chude-Sokei’s text, as machine learning advances, robots begin to develop language, conscience, empathy - “anarchic” and unpredictable qualities. Drawing parallels between the evolution of human and machine, AAI uses technology as a lens to examine deep philosophical questions. The question of how we use technology and world resources feels particularly poignant and timely as we head into 2021. AAI posits that we must embrace AI and technology as a collaborator to break out of our current cultural and moral stagnation, and to ensure our survival as a species. As Werner explains: “AI is capable of developing qualities that we attach to humans, like empathy, imperfection and distraction, which are a big part of creativity. We need to get past the old paranoia that fears machines as the other, as competitors who will do things faster or better, because that just keeps us stuck in our selfishness, fear and xenophobia. Machines can open up new concepts of life, and expand our definitions of being human.”

ベルリンを拠点に活動しているヤン・エスティー・ヴァーナーとアンディ・トーマのデュオ、マウス・オン・マーズは、尽きることのない好奇心と比類のない創造力で、エレクトロニック・ミュージックにアプローチしている。
ダンス・ミュージックの漠然とした残響(エコー・)システムの範囲内で、唯一無二な軌道で活動している彼らデュオの、非常にきめ細かいプロダクションは、独創的で、革新的でありながらも、常に楽しそうな実験性を有しているのが特徴となっている。ジャンルレスな最先端のテクノロジーを積極的に取り込むことで、マウス・オン・マーズの各リリース作品のサウンドは際立って現代的なものとなっており、デュオの音楽制作の25年間を振りかえってみると、この事実は更に注目に値するものとなっている。ニュー・アルバム『AAI』(Anarchic Artificial Intelligence:アナーキク・アーティフィシャル・インテリジェンス:無秩序な人工知能)は、トーマとヴァーナーのテクノロジーへの強い興味と教養にとらわれない調査を、なお一層、飛躍的に前進させる。作家であり、学者であるLouis Chude-Sokei(ルイス・チュデ=ソキ)、コンピュータ・プログラマー集団、長年のマウス・オン・マーズのコラボレーターでパーカッショニストのドド・ンキシとのコラボーレーションにより、デュオはAI(人工知能)を物語の構想(フレームワーク)として、また作曲ツールとして、これまでで最も明確なSF作品を呼び集めながら、探求している。

『AAI』はマウス・オン・マーズの豊富なカタログの中で、最も即時的で、とても面白い(人を魅了する)音楽をコンパイルしている。
とどろくような低音と素早く軽快に動いているエレクトロニクスの根源的な分泌物から生まれた、催眠術のようなポリリズム、パルシング・シンセサイザーが、リスナーをレコードの範囲を超えたところに駆り立てる。デュオの非常にきめ細かいプロダクションの中には、ある種のメタ・ナラティヴ(歴史的な意味、経験、または知識の物語)が隠されている。AI技術集団のBirds on Mars(Nicolas Gorges、Yağmur Uçkunkaya、Florian Dohmann)、元SoundcloudプログラマーのRany KeddoとDerek Tingleと協力して、デュオは、スピーチをモデリングすることができる特注のソフトウェアを共同制作した。Louis Chude-Sokeiが物語を終始ナレーションしているように思えるのは、実際にはAIが話しているものである。Chude-SokeiとDJ/プロデューサーのYağmur Uçkunkaya(ヤムア・ウツコンカヤ)のテキストと声がモデルとしてソフトウウェアに入力され、トーマとヴァーナーが速度やムードのようなパラメーターをコントロールすることが可能になり、それによって彼らがシンセサイザーのように制御して、演奏することが出来る音声楽器のようなものが作成された。アルバムの物語は、まさに文字通り、人工知能が成長し、学習し、話すというサウンド(音)が、音楽に反映されている。アートワークは、コンピュータ・グラフィックス言語「Processing」の発明者であるCasey Reas(ケイシー・リース )によって提供されており、アートの文脈におけるテクノロジーの活用の更なる探求となっている。

Chude-Sokeiのテキストでは、機械学習が進歩するにつれて、ロボットが言語、自制心、共感、つまり「無秩序」で予測不可能な資質を発達させ始める。人間と機械の進化の間での類似点を引用しながら、『AAI』はテクノロジーをレンズとして、難解な哲学的な問題を検討する。私たちがテクノロジーと世界の資源をどのように使用するかの問題は、2021年に向けて、とりわけ切実で、時宜を得ているように感じる。『AAI』は、現在の文化的で道徳的な停滞を打破し、種(人類)としての生存を確保するために、AIとテクノロジーを協力者として受け入れなければならないと、結論を下している。ヴァーナーが説明しているように、「AIは、共感、不完全さ、気晴らしのような、人間に付随している資質を開発することが出来、創造性の大きな部分を占めている。私たちは、機械を別のものとして、物事をより速く、またはより良くする競争相手として恐れる、古い被害妄想を克服する必要がある。なぜなら私たちがずっと、身勝手さ(利己主義)、恐怖、外国人恐怖症(外国人排斥)で行き詰まったままでいることになるからだ。機械は人生の新たな概念を解放し、人間であることの私たちの定義を拡大することが出来る。」

Jamael Dean - ele-king

 カマシ・ワシントン『Heaven And Earth』にも参加経験のあるLAの新星ピアニスト、ジャメル・ディーン。〈Stones Throw〉から送り出された『Black Space Tapes』につづいて、今度はソロ・ピアノ・アルバムがリリースされることになった。
 趣向を凝らした前作とは対照的に今回はピアノ1本で勝負、サン・ラーのカヴァーで幕を開けるところもイキだ。カルロス・ニーニョなどからも信頼の厚いジャメル・ディーン、その美しきタッチに耳をすましたい。

JAMAEL DEAN
Ished Tree

Thundercat や Kamasi Washington が信頼を寄せる、ロサンゼルスの天才ピアニスト、プロデューサー Jamael Dean (ジャメル・ディーン)。Mary Lou Williams や Sun Ra のカヴァーも含めて、宇宙と対話するように奏でられた、待望のソロ・ピアノ・アルバムが完成!! ボーナス・トラックを加え、日本限定盤ハイレゾMQA対応仕様のCDでリリース!!

Official HP :
https://www.ringstokyo.com/jamaeldeanishedtree

星座と幾何学にインスパイアされた多面的な美しさを持つ楽曲が、リリカルなタッチで演奏されていく。LAジャズのレジェンドであるホレス・タプスコットに捧げてネイト・モーガンが書き、一度も録音されなかった名曲 “Tapscottian Waltz” も大切に取り上げている。そして、目を惹き付けるドローイングとテキストに包まれたパッケージも、深みのある佇まいを見せる。ジャメル・ディーンは、ピュアで特別なピアノ・ソロを作り上げた。(原 雅明 rings プロデューサー)

アーティスト : JAMAEL DEAN (ジャメル・ディーン)
タイトル : Ished Tree (イシェド・ツリー)
発売日 : 2021/3/24
価格 : 2,800円+税
レーベル/品番 : rings / The Village (RINC75)
フォーマット : MQACD (日本企画限定盤)

* MQA-CDとは?
通常のプレーヤーで再生できるCDでありながら、MQAフォーマット対応機器で再生することにより、元となっているマスター・クオリティのハイレゾ音源をお楽しみいただけるCDです。

Jamael Dean - Piano
AK Toney - Vocals on "Soul Of The Griot"
Sharada Shashidhar - Album Art
Mixed and Mastered by Wayne Peet

Tracklist :
01. When There Is No Sun
02. Introspection
03. Journey In The Night Boat
04. Anpu
05. Duat
06. Cancer
07. Black Sheep
08. Tapscottian Waltz
09. Soul Of The Griot ft. AK Toney
10. Ballad For Samuel
&
japan Bonus Track

DJ Hell - ele-king

 ドイツのヴェテラン、DJヘルが3年ぶりにニュー・アルバムをリリース……するのだが、これがとても興味深いことになっている。
 ジミ・ヘンドリックスにはじまり、ロン・ハーディ、クラフトワーク、エレクトリファイン・モジョ、ギル・スコット=ヘロンと、ハウスやテクノへと至るブラック・ミュージックの歴史を追うような曲名が並んでいるのだ。「過去、現在」のあとに「未来なし」と続くタイトルもなにやら思惑がありそうで気になってくる。これは、2020年という激動の一年を受けて思いついたコンセプトだろうか?
 日本盤は1月20日に〈カレンティート〉から発売されています。

ドイツのテクノを代表する巨匠のオールドスクール回帰な円熟の新作

ヨーロッパを代表するエレクトロニック・プロデューサー、DJヘルによる古き良きハウスやテクノへのオマージュを捧げたニュー・アルバム。
シカゴ、ニューヨーク、デトロイトからクラフトワークまで、さまざまなトピックを編み込んだ、ダンス・ミュージックの教科書のような快心の一枚。
ヘルが新たに立ち上げた新レーベル〈The DJ Hell Experience〉からのリリース。

アーティスト:DJ HELL
アルバム・タイトル:House Music Box (Past, Present, No Future)
商品番号:RTMCD-1468
税抜定価:2,200円
レーベル:The DJ Hell Experience
発売日:2021年1月20日
直輸入盤・帯/日本語解説付国内仕様

収録曲(デジタル版とは曲順が異なります)
1 Jimi Hendrix
2 Hausmusik
3 G.P.S
4 Freakshow
5 Electrifying Mojo
6 Out Of Control
7 The Revolution Will Be Televised
8 Tonstrom

◆ドイツのベテランDJ/プロデューサー、DJヘルの、『Zukunftsmusik』(2017年)以来となる新作アルバム(通算第六作)が完成。

◆前作のエレクトロ路線から一転、今回は、シカゴやニューヨークのハウス・ミュージック、デトロイト・テクノ、それらのルーツであるクラフトワークの電子音楽など、古き良き時代のさまざまなトピックをそこかしこに編み込んだ、ダンス・ミュージックの教科書のような仕上がりに。

◆硬くて冷たい無機質なビートとベース・ラインと鮮やかなコントラストを描く煽りのきいたキラーなシンセ・リフ。フロアの炎上を加速させるEBMマナーの先行シングルの “Out Of Control” は、スパイク・ジョーンズ監督の映画『マルコヴィッチの穴』からインスピレーションを得たというサイボーグなビデオも最高!

◆ジミ・ヘンドリックス生前最後のインタビューを引用した “Jimi Hendrix”、ロン・ハーディーへのオマージュを込めた “Freakshow”、オールドスクールなシカゴ・ハウス&アシッドをヘルの流儀で再構築したタイトルもそのものズバリな “House Music”、クラフトワークの自動車モチーフを取り入れた “G.P.S”、デトロイト・テクノの誕生に大きな影響を及ぼした伝説のラジオDJの名を忍ばせた “Electrifying Mojo”、ギル・スコット・ヘロンを見事にハウス化した “The Revolution Will Be Televised” などなど、いずれのトラックも、懐かしさを含みつつも、現在進行形のダンス&エレクトロニック音楽としてのパワーや機能性も、抜群。

◆ヘルが新たに立ち上げた新レーベル〈The DJ Hell Experience〉からのリリース。

https://www.djhell.de/

R.I.P. Phil Spector - ele-king

 新型コロナウイルス感染による合併症でフィル・スペクターが亡くなった。命日は2021年1月16日、享年81、女優ラナ・クラークスン殺人容疑で有罪となり、キャーフォーニャ州立刑務所の薬物中毒治療施設に収監されていた(*1)
 合掌。……お直り下さい。

 前世紀末1980年代半ばのある晩、行きつけの呑み屋でザ・ルーベッツの “シュガー・ベイビー・ラヴ” が有線放送から流れた。それを聞きながら「フィル・スペクターの流儀は時代を超えて続いているのだな」と、わたしはひとり納得していた。ところが同曲は1973年のイギリス人たちによる録音作品であり、彼の遺産は20年以上の歳月だけでなく、大西洋も超えていたのだ。
 永遠の循環進行で「シュバッシュバリバリ」とスキャットを繰り返す男声ハーモニー多重層、前面には「アハー」と高音域のファルセトーが出て来る。他愛のない、しかし永遠に揺るがない愛の真実が唄われ、後半には低音の語りで「そこのアンタ、よく聞けよ。人を愛す事を躊躇するな」と不滅の教訓を諭す。これらが全て分厚い音の壁の上で展開するのだ。フィル・スペクター的でなくてなんであろうか。
 ルーベッツというのはスタジオ演奏家の集まりだったらしい。“シュガー・ベイビー・ラヴ” がヒットして、間に合わせで揃えたような惡趣味の白スーツ姿で人前に出ていた。いつの間にかそれが制服になり、今も懐メロ歌合戦にはこの格好で出ている。あのスペクター的な壁音カラオケがいつも一緒だ。
 わたしがフィル・スペクターのヲール・サウンドを初めて聞いたのは、ロネッツの “ビー・マイ・ベイビー” だったと思う。小島正雄が担当していたラジオ番組「9500万人のポピュラー・リクエスト」だ。ただそれはオリヂナルがアメリカ本国でヒットした1963年ではなく、65年だったような気がする。それ以前に出ていたとされる弘田三枝子、伊東ゆかりのカヴァは今日まで聞いた事がない。
 そのころ持っていた小型のトランジスタ・ラジオでも音の厚さは印象的だった。ひとりひとりがどんな楽器をどのように鳴らしているのかよりも、大編成による伴奏が通奏低音のように「ゴー」と響いていた。特別なパタンを刻むドラムズは、ビートルズの “涙の乗車券” と似ていた。それからだいぶ後にジューク・ボクス下がりの中古で手に入れて聞いたキング盤B面の “ヲーキング・イン・ザ・レイン” は、「壁」の印象がそれより強かった。

 「会った途端にひとめぼれ」という素敵な邦題を持つフィル・スペクターの第一作 “トゥ・ノウ・ヒム・イズ・トゥ・ラーヴ・ヒム” は、彼が十代の時に結成したヴォーカル・トリオ、テディ・ベアーズの作品で、1959年に全米1位を獲得した。彼自身は人前で唄ったり踊ったりするよりも制作に徹する裏方を志し、2年後に業界の先輩レスター・シルと組んで、自身のレイベルを立ち上げる。フィルとシルで「フィレス」だ。当初ここから発売されたシングル盤のB面は常に器楽曲だったという。それは唄入りのイチ推しA面曲がラジオで必ず流されるための配慮だったというから、恐れ入る。
 “会った途端にひとめぼれ” では、フィル・スペクターの録音手法はまだ発揮されていない。それまでの歌物と同じような響きだ。全米1位を獲得出来たのは、詞と曲、そして表現の素直さがウケたからだろう。フィレス設立以降はフィルがステューディオ作業を仕切る立場になれたから、思う存分に録音を追及できた。
 ただスペクター即ち、アクースティク・ギター20人、パーカッション10人とまで大げさに揶揄された「ヲール・サウンド」では、決してない。空間で鳴るカスタネットを聞けば分かるだろう。何よりも、まず惹句を持った可愛らしい詞曲があり、要所要所に仕掛けを潜ばせたアレンヂ、ヴォーカル・ハーモニー、そして圧倒的なリズムで個性的な声の節を聞かせるのである。これらは大衆音楽に必要な不変の要素で、フィル・スペクターはこの真髄を体で分かっていた。作品を重ねるに連れて雰囲気が類似してしまうのは仕方ない。それは「作風」であり、「特徴」や「個性」でもある。
 フィルの録音制作過程は世界中で特異とされて来た。だが彼以前に、録音過程で音楽を作って行く手法を試みた人間がいただろうか(*2)。それまでのレコード音楽は、「原音再生」論を金貨玉条的に振りかざし、録音電気技術を邪道と考える保守的な制作者や技術者たちの作った退屈な響きばかりだった。
 フィルはそこに大衆音楽に必要不可欠な楽曲固有の響きを求めたのだ。まだ多重録音機が生まれる前だから、演奏は全員揃って同時に行わなければならない。それほど広くないロス・エインジェルズのゴールド・スター・ステューディオに押し込められた大勢が、今と違い実際に楽器を鳴らすのだから、必然的に音圧は高くなり余韻が回ってずっと音が鳴っているような響きが生まれる。そうすれば様々な音の魔術も仕掛け易くなる。更に何回も同じ演奏を重ねて「壁」となる。ヲール・サウンドは最初からフィル・スペクターの概念にあったのではなく、彼が要求した追加録音を重ねて出来た結果だ、とわたしは見ている。フィルのセッションは録音拘束時間が長過ぎると演奏家組合から目を付けられたのも、オーヴァ・ダブが多かったからだ。そして録音を重ねていくうちにテイプ上で変化して行く音色も彼を惹きつけた。モノーラルにこだわっていたのも納得が行く。彼にとって音はドッカーンと真ん中から飛び出す物で、ステレオ左右スピーカーの分離などあってはならないのだ。
 たぶんフィルはこういう響きに酔って行き、狂ってしまったのだろう。しかしこのやり方は、確実に全世界の大衆音楽を変えた。ビーチ・ボーイズはもちろん、カーペンターズやブルース・スプリングスティーンだって、スペクターなしには存在しない。ビートルズですらそうだ。
 現在のデジタル技術ならボタン操作一回で出来る事を、フィル・スペクターは時間をかけ人間たちを使ってエンヤコラと録音した。ヲール・サウンドをアナログで聞くと、バズビー・バークリーの群舞実写映画が蘇る。

 フィル・スペクターの遺作は、1980年発表のラモーンズと作った『エンド・オヴ・ザ・センチュリー』になる(*3)。作業はあまり順調に進まなかったとされるが、出来はそんなに悪くない。ロンドンのパンク・ロックの動きを肌で感じたフィルは、自分なりの流儀でこのアメリカのロック・グループのレコードを制作したのだ。仕上がった音は厚く、音圧感が高い。安定したビートが効いている。充分にポップで、茶目っ気もある。紛れもないスペクターの音であるし、彼にとっての音楽はそもそもロックンロールなのだ。ただ形骸したパンクに付き物の、いい加減な薄っぺらさと、破綻に至る暴力感がないところがダメだったのかもしれない。更に1980年には、レコードの音がこの程度で普通になってしまっていたから、謹製スペクター・サウンドの商標も付けられなかった。

 彼は狂人である。鬼才と言えば聞こえはいいけれど、一般的な常識には欠けていたようだ。薬物への依存も相当だったらしく、チャック・ベリーが初めてジョン・レノンと会ったのはフィルの家で、ふたりともメロメロにラリっていたという。場面は想像に難くない。また何かにつけてピストルをブッ放したらしい。ジョンも、ラモーンズのディー・ディーも被害に遭っている。
 ジョンはグループ最後のアルバム『レト・イト・ビ』の最終仕上げをスペクターに一任した。四人の演奏はリヴァーブ漬けとなり、勝手なピッチの変更やストリングス追加などでポール・マカートニを怒らせた。レナード・コーエンは本人承諾のないところでデモ録音を勝手にいじられ、市販レコードにされてしまった。
 そもそもフィレス・レコーズ最初の全米1位曲 “ヒーザ・レボー” は「ザ・クリスタルズ」名義になっているが、実際にはダーレン・ラーヴのザ・ブロッサムズが唄っていたのだ。このような当事者を無視した強引な制作進行は、若くして掴んだ成功の後遺症だろう。また初期に彼の使った唄い手たちの殆どが若い黒人女性だったという状況も影響している。60年代初頭、彼女たちは白人の元締めに文句が言えなかったのだ。一方で黒人の音楽感覚、特にヴォーカル表現には一目置いていたようで、その昔に出ていたレイザー・ディスクの「ガール・グループズ」編では、ステューディオ内で煮詰まったクリスタルズに「もっと普段のゴスペル調に唄ってよ」と促す場面が収録されていた。それを観てわたしは「そうか」と、とても新鮮な気持ちになえたのを覚えている。
 こんな問題の多いフィルに、ジョージ・ハリスンは三枚組ソロ作品『オール・シングズ・マスト・パース』のプロデュースをフィルに依頼した。ジョン・レノンは『ロックンロール』の制作も委ねた。この作業の途中では、録音済みのマルチ・トラック・テイプ紛失というあり得ない事故すら起きた。
 彼はロシア系のアメリカ人でいつも母親と一緒に行動し、制作現場にも立ち会わせていたという。これもちょっと信じられない。録音セッションは父兄参観会ではない。母親同伴だなんて全くおかしな話だ。スナップ写真でそのオフクロの姿を見た事があったような……。本人がいつも濃い色のサングラスをかけていたのも不気味だった。死亡記事の写真でようやく素顔を確かめられた。

 フィル・スペクターについてわたしには、どうしても忘れられない余話がある。蛇足ながら以下に記す。
 1965年のスポーツカー世界一を決める国際マニファクチャラーズ選手権を制した優勝車はコブラ・フォードだ。これは元ドライヴァのキャロル・シェルビーが、英国ブリストル製軽量車体に米フォードの丈夫で長持ち大排気量原動機を載せた混血車で、イタリアの名門フェラーリと一騎打ちの末に覇権を勝ち取った。シェルビーはその時に高速仕様として屋根付きを6台だけ製造した。これが有名なコブラ・フォード・デイトナ・クーペだ。その最初に作られた車台番号CX2287をフィル・スペクターが1967年から町で5年間も使っていたという。彼自身の存在が世界的に知られて行く頃と重なる時期だ。車は純粋な競争用だから日常には全く向かない。フィルもその扱いには手を焼きながら、まだ空いていたロス・エインジェルズで爆音を振り撒いて、ステューディオに乗り付けていたのだろうか。狂人に相応しい振る舞いだ。現車CX2287は彼の手許を離れてから数奇な運命を経た後に発見、復元され、2018年にアメリカの歴史遺産に指定された。フィル・スペクターの所有した履歴が大きく影響しているのは、間違いない。わたしはこの知らせに喝采を送った。

 今世紀初頭、わたしが初めて自分のラジオ番組を持った時、最初に回した第一曲は、“アイ・キャン・ヒア・ミュージック” だった。これはその何年か前に裏方を担当していた萩原健太の番組からインスピレイションを貰ったのだが、健太がビーチ・ボーイズを使ったのに対して、わたしはフィル・スペクター絡みのロネッツを選んだ。これも「9500万人のポピュラー・リクエスト」で聞いたのが最初だ。
 「最初にお断りしておくと、わたしは大滝詠一およびその周辺の人たちのようなスペクター信奉者ではなく、そもそも彼をよく知らないのだ」、この追悼文はこんな風に始めようとした。確かにそれは事実だが、リーバー・アンド・ストーラーに弟子入りした時の話や、1964年ザ・ローリング・ストーンズの録音に立ち会った事、ライチャス・ブラザーズに関してなど、まだまだ知りたい事は沢山あった。今はもう本人に聞く事は出来ない。しかしそれ以前に、彼にまつわるこれほどにも沢山の出来事がわたしの身辺にもあり、今回、その偉大さを改めて思い知ったのである。
 フィル・スペクターの音楽は永遠だ。

(編註:2021年1月25~26日追記)

*1 2009年6月24日付のCNNの報道によれば、彼はカリフォルニア州立刑務所の薬物中毒治療施設には収監されず、有名人や元ギャングなど、注意を要する受刑者向けの特別な場所に収容されていた模様。カリフォルニアの監獄を運営するカリフォルニア矯正リハビリ局(California Department of Corrections and Rehabilitation)による公式発表はこちら(1月17日付)。また、同局が管理するカリフォルニア健康管理施設(California Health Care Facility)のウィキペディアにも彼の名が挙げられているが(1月26日閲覧)、ソースは辿れず。

*2 フィル・スペクターの少しまえに、ジョー・ミークが近いことをやっていたのではないかと、読者の方よりご指摘いただきました。

*3 アルバム単位での遺作。曲単位では2003年に手がけたスターセイラーの2曲が遺作となる。

環ROY - ele-king

 前作『なぎ』から約3年半ぶり、通算6枚目となる環ROYのアルバム『Anyways』。全曲セルフ・プロデュースにて制作されたという本作であるが、多彩なプロデューサーを迎えた前作と比べて、音楽的な表現の多様性の幅が狭まったのは否めないだろう。しかし、作品全体に漂う色合いやトーンというものはこれまでの作品と同じ流れの上にあり、自ら全曲のトラックを手がけることによって、伝えたいメッセージのフォーカスはよりくっきりとしたものになったようにも感じる。

 彼のトラックメイキングのスタイルはサンプリングを多用しながら、ブレイクビーツ感の強い曲も一部あるものの、どちらかと言えばシンセのコードやメロディが前面に出た透明感あるサウンドが軸になっている。本作のリファレンスとなった曲の彼自身の作成したプレイリスト「in any case」が Spotify および Apple Music にて公開されているのだが、国内外の様々なヒップホップ・アーティストに加えて、James BlakeRadiohead、Billie Eilish、Nosaj Thing といったメンツの楽曲も並んでおり、これらのラインナップを見れば彼のトラックのスタイルにも実に合点がいくだろう。幅広い意味でのビート・ミュージックが実に巧みに自らのサウンドへと吸収されており、それが彼のスタイルの基盤になっている。さらに “Rothko” という曲では落ち葉を踏む音や子供の声といった生活音さえもサンプリングに取り入れたり、“泉中央駅” では4拍子の中に5連符を入れ込むといった実験的なトライも行なっている。こういった試みはときにミニマルで無機質な方向へも走りかねないが、実際のところどの曲も一貫して温かい。その温かさは “泉中央駅” から感じられるノスタルジーな部分から来るだけでなく、直接的にも間接的にも彼自身の日常生活や家族をテーマとしたリリックからも強く伝わってくるし、「食べる」という人間の生(せい)の根源を扱った一見非常にワイルドな曲調の “life” も同様だ。そして、そんな本作の温度感は、コロナ禍であるいまの時代にも見事にフィットする。

 音源のリリースや通常のライヴに止まらず、劇場や美術館、ギャラリーでのパフォーマンスやインスタレーション、あるいは絵本制作など様々な活動を行なってきた環ROYであるが、トラックメイカーとしてのキャリアはまだスタートしたばかりだ。今後、さらなるトラックメイカーとしての成長が彼のアーティストとしての表現の幅をどのように広げ、どう変化させていくか、実に楽しみだ。

Outro Tempo II - ele-king

 テクノ、アンビエントなど80年代の埋もれたブラジル音楽に光を当てた〈Music From Memory〉の良コンピ『Outro Tempo: Electronic And Contemporary Music From Brazil 1978-1992』が出たのは2017年。2年後の2019年には続編『1984-1996』もリリースされているが、そのヴァイナルがヒットしたようで、このたびCD化されることになった。めでたい。
 今回もまた、電子音やパーカッションなどを駆使したじつに多種多様な音楽が収録されているのだが、前作が熱帯雨林の奥地だとしたら、第二弾のほうは都市(サンパウロ)だ。MPBが吸引力を失った時代に、インディペンデントで新たな時代を切り拓こうとした音楽家たちの試行錯誤の記録──たとえば、ジョン・ゴメスの解説によれば、ベベウ・ジルベルト『Tanto Tempo』のプロデュースで知られるスバが参加したエヂソン・ナターリの “Nina Maika” は、ボスニア民謡を取り入れることで新たな価値観を呈示した、象徴的な曲なのだという。そういった歴史や文化的背景を知ることができるライナーノーツの翻訳が読めることも、本盤の長所だろう。
 ヴァイナルには未収録の2曲も追加されているので、アナログ盤をお持ちの方も要チェックです。

ミュージック・フロム・メモリーのヒット企画『Outro Tempo』の続編

ベッドルーム、ダンスフロアやアンビエントなどをまたいだ10年代以降の新たな流れ、そのリイシュー側における先駆者であったミュージック・フロム・メモリーの大ヒット企画『Outro Tempo』の第2弾が待望のCD化。
電子音楽、ジャズ、ニューウェイヴにブラジルのローカル・モード。今回もまたいい具合に多くの要素が入り混じった稀有なミクスチャ・サウンドのオンパレード。脱帽です。

V.A.
Outro Tempo II
- Electronic And Contemporary Music From Brazil 1984-1996

Music From Memory
RTMCD-1454
2,500円
CD2枚組
12月10日発売
輸入盤国内仕様(帯・英文解説対訳付)

CD1
01 MAY EAST – MARAKA
02 DEQUINHA E ZABA – PREPOSIÇÕES
03 OHARASKA – A FÁBULA
04 FAUSTO FAWCETT – SHOPPING DE VOODOOS
05 R. H. JACKSON – O GATO DE SCHRÖDINGER
06 EDSON NATALE – NINA MAIKA
07 AKIRA S – TOKEI
08 LOW KEY HACKERS – EMOTIONLESS
09 BRUHAHÁ BABÉLICO – BRUHAHÁ II *** bonus track
10 CHANCE – SAMBA DO MORRO
11 JORGE DEGAS & MARCELO SALAZAR – ILHA GRANDE

CD2
01 PRISCILLA ERMEL – AMERICUA
02 VOLUNTÁRIOS DA PÁTRIA – MARCHA
03 ANGEL’S BREATH – VELVET
04 FAUSTO FAWCETT – IMPÉRIO DOS SENTIDOS
05 INDIVIDUAL INDUSTRY – EYES *** bonus track
06 CHANCE – INTRO-AMAZÔNIA
07 TETÊ ESPÍNDOLA – QUERO-QUERO
08 NELSON ANGELO – HARMONÍA DE ÁGUA
09 JORGE MELLO – A NATUREZA REZA
10 JÚLIO PIMENTEL – GERSAL
11 TIÃO NETO – CARROUSEL

New Age Steppers - ele-king

 細かく震えるあまりに特異なヴォーカル。久しぶりに彼女の声を聴いてこちらまで打ち震えてしまった。そしてもちろん、信じられないような独創的な発想のミックス。3月19日、ニュー・エイジ・ステッパーズの全キャリアを総括するボックスセットが発売される。
 エイドリアン・シャーウッドがおそらくはもっともキレていた時期、ダブの実験を極めたファースト『The New Age Steppers』(81)や、ダンスホールの時代にルーツ・レゲエを尖ったサウンドでカヴァーしたセカンド『Action Battlefield』(81)~サード『Foundation Steppers』(83)はもちろんのこと、2012年の最終作にして、その2年前に他界してしまったアリ・アップ最後の録音が収められた『Love Forever』、そして今回の目玉だろう、レア音源や未発表音源をコンパイルした『Avant Gardening』から構成される、CD5枚組の仕様だ。
 一家に一箱。問答無用です。

ポストパンク/UKダブの伝説、
ニュー・エイジ・ステッパーズの歩みをここに凝縮!
全アルバムに加え、アウトテイクや未発表レア音源を収めた
コレクション盤を含む5枚組CDボックスセット
『Stepping Into A New Age 1980 - 2012』を3月19日にリリース!
〈On-U Sound〉の数多くの写真を手がけたキシ・ヤマモト撮影の
オリジナル・フォトTシャツ・セットも数量限定で同時発売決定!

ザ・スリッツのアリ・アップとUKダブの最重要プロデューサー、エイドリアン・シャーウッドを中心として、マーク・スチュワート率いるザ・ポップ・グループやザ・レインコーツ、ネナ・チェリー、フライング・リザーズといったポストパンク・シーンを象徴する前衛的シンガーやプレイヤーが参加し、ビム・シャーマン、スタイル・スコット、ジョージ・オーバンといった世界的レゲエ・アーティストを掛け合わせた衝撃のサウンドでその後の音楽シーンに多大なる影響を及ぼした伝説的グループ、ニュー・エイジ・ステッパーズ。彼らの全歴史を凝縮したCDボックスセット『Stepping Into A New Age 1980 - 2012』が3月19日に発売決定!

New Age Steppers - Stepping Into A New Age 1980 - 2012
https://youtu.be/m4WDA7XYuZM

エイドリアン・シャーウッドが〈On-U Sound〉を立ち上げるきっかけともなったニュー・エイジ・ステッパーズのすべてがわかる本作。1981年の1stアルバム『New Age Steppers』は、レゲエ・クラシックに乗って、アリ・アップのヴォーカルが80年代初頭の新しい音楽を創造しようとする熱気に溢れたヴァイブスを見事に表現した真のポストパンク/UKダブの金字塔。アリ・アップがほとんどの曲でリードボーカルを担当し、若き日のネナ・チェリーも参加した2ndアルバム『Action Battlefield』は、混沌とした世界がより洗練され、ポップさを増したサウンドによって、ニューウェイヴ期のUKで生まれた最高傑作。1983年の『Foundation Steppers』は、ジャマイカに移住したアリ・アップが伝説的ドラマー、スタイル・スコットともにレコーディング、カラフルなサウンドとポストパンクなプロダクションのセンスで伝統を壊しながらも、アリ・アップのレゲエ愛に溢れたアルバムとして高く評価されている。そして2012年にリリースされた最終アルバム『Love Forever』には、2010年に亡くなったアリ・アップの最後のレコーディング音源が収められ、自由を貫いたアリの感性でジャマイカ音楽をアップデートしたサウンドがファンに愛されている。レアなダブ・ヴァージョンやアウトテイク、未発表音源などをコンパイルしたコレクション・アルバム『Avant Gardening』では、BBC Radio 1 ジョン・ピール・セッションで収録された “Send For Me” をはじめ、『Foundation Steppers』収録のチャカ・カーンのカバー “Some Love” のダブ・ヴァージョンなど未発表音源を収録。またエイドリアン・シャーウッドやその他のコントリビューターたちとの会話や当時の写真をもとにグループの歴史を辿る32ページにおよぶブックレットが加えられている。国内流通仕様盤には、ブックレットの対訳も封入される。また、〈On-U Sound〉の数多くの写真を手がけたキシ・ヤマモトによる写真を起用したオリジナル・フォトTシャツ・セットも同時発売される。


また今作のリリースに合わせて、初めてLPでリリースされる2012年作品『Love Forever』を含め、それぞれのアルバムがLPでも再発される。

label: BEAT RECORDS / ON-U SOUND
artist: New Age Steppers
title: Stepping Into A New Age 1980-2012
release date: 2021/03/19 FRI ON SALE

国内仕様盤5CD
32ページ・ブックレットの対訳(別冊)封入
BRONU149 ¥4,300+税

国内仕様盤5CD+Tシャツセット
BRONU149S~XL ¥8,000+税

BEATINK.COM
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11672

Tracklist:

DISC1: NEW AGE STEPPERS (1981)
01. Fade Away
02. Radial Drill
03. State Assembly
04. Crazy Dreams and High Ideals
05. Abderhamane’s Demise
06. Animal Space
07. Love Forever
08. Private Armies

DISC2: ACTION BATTLEFIELD (1981)
01. My Whole World
02. Observe Life
03. Got To Get Away
04. My Love
05. Problems
06. Nuclear Zulu
07. Guiding Star

DISC3: FOUNDATION STEPPERS (1983)
01. Some Love
02. Memories
03. 5 Dog Race
04. Misplaced Love
05. Dreamers
06. Stabilizer
07. Stormy Weather
08. Vice Of My Enemies
09. Mandarin

DISC4: LOVE FOREVER (2012)
01. Conquer
02. My Nerves
03. Love Me Nights
04. The Scheisse Song
05. Musical Terrorist
06. The Fury Of Ari
07. Wounded Animal
08. The Worst Of Me
09. Revelation
10. The Last Times
11. Death Of Trees

DISC5: AVANT GARDENING (2021)
01. Aggro Dub Version
02. Send For Me
03. Izalize
04. Unclear
05. Singing Love
06. I Scream (Rimshot)
07. Avante Gardening
08. Wide World Version
09. Some Dub
10. May I Version

Moor Mother & Billy Woods - ele-king

 いったい何枚あるんだ? 昨年怒濤の勢いで作品を発表しつづけたムーア・マザーが去る12月、さらなる新作『BRASS』を送り出している。
 今回はNYのヒップホップ・デュオ、アーマンド・ハマーの片割れたるビリー・ウッズとの共作で、ポエトリー・リーディングとラップの絡み合いが聴きどころだ(アーマンド・ハマーのもう片方、エリュシッドも参加)。さらに、アルバム冒頭の “Furies” では、なんとサンズ・オブ・ケメットの “My Queen Is Nanny Of The Maroons” をサンプリング! 世界がつながっていきますね(プロデューサーはウィリー・グリーン)。

 ちなみに、ピンク・シーフも参加したアーマンド・ハマーの昨年のアルバム『Shrines』でムーア・マザーは、“ラムセスII世” という曲でアール・スウェットシャツとも共演しています。

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