「iLL」と一致するもの

R.I.P. MF DOOM - ele-king

 30年以上にわたってヒップホップ・アーティストとして活動し、アンダーグラウンド・シーンのスーパースターとしてカリスマ的な人気を誇ってきたラッパー、MF DOOM (本名:Daniel Dumile)が2020年10月31日に亡くなった。彼の死が明らかになったのは死後から2ヶ月経った12月31日のことで、MF DOOM の公式インスタグラム・アカウントにて妻の Jasmine 名義での声明が発表され、偉大なラッパーの訃報は瞬く間にインターネット上で拡散された。享年49歳で、死因は明らかになっていない。

 MF DOOM が初めてヒップホップ・シーンでその存在を知られるようになったのは、彼がまだ Zev Love X と名乗っていた1989年のことで、当時、シーンのトップ・レーベルであった〈Def Jam〉からリリースされた 3rd Bass 「The Gas Face」への客演によって、彼自身のグループである KMD にも注目が集まることなった。客演をきっかけに〈Elektra〉との契約を果たした KMD は1991年にデビュー・アルバム『Mr. Hood』をリリースし、この作品はヒップホップ・ファンの間で大きな話題を呼ぶ。しかし、KMD のメンバーであり実弟でもある DJ Subroc の交通事故死や、レーベル側からの一方的な契約破棄によって 2nd アルバム『Black Bastards』がリリース中止になるなど不運な出来事が続いたことで、彼は一時的にヒップホップ・シーンから離れ、ホームレスに近い生活を送っていたという。しかし、マーベル・コミックの悪役キャラクターであるドクター・ドゥームからインスピレーションを受けた「MF DOOM」というアーティスト名を提げてシーンに復活し、ドクター・ドゥームと同様の金属製のマスクが彼自身のトレードマークに、1997年からソロでの作品のリリースを開始。そして、1999年にリリースされた 1st ソロ・アルバム『Operation: Doomsday』は高い評価を受け、1990年代半ばからはじまったアンダーグラウンド・ヒップホップのブームを象徴する作品にもなった。

 その後、Viktor Vaughn、King Geedorah、Metal Fingers など様々な名義でも次々と作品をリリースし、さらに様々なアーティストとのコラボレーションも行なってきた MF DOOM であるが、彼の黄金期とも言える2000年代にリリースした作品の中で最も大きな注目を浴びたのが、LAのレーベル、〈Stones Throw〉の看板アーティストであった Madlib とのコラボレーション・プロジェクト= Madvillain 名義で2004年にリリースしたアルバム『Madvillainy』だ。プロデューサーとして絶頂期であった Madlib のビートに独特な世界観と空気感を伴った MF DOOM のラップが乗ったこの作品は、コアなヒップホップ・ファンだけでなく幅広い層の音楽ファンの心を掴み、当時の〈Stones Throw〉のレーベル史上最高のセールス数を記録し、MF DOOM 自身にとっても初の商業的な成功を収めた作品にもなった。

 筆者は『Madvillainy』リリース後にLAにて行なわれたアルバムのリリース・イベントに取材を兼ねて行ったのだが、LAでは滅多に観ることのできない MF DOOM のライヴに対する観客の興奮度の高さは本当に凄まじく、彼のカリスマ的な人気を改めて実感した。そして、ライヴ後にステージ袖でマスクを取って、汗だくになっていた彼の素顔がいまでも忘れられない。

 2010年代に入ってからは、生まれ故郷であるロンドンを拠点に活動していたという MF DOOM だが、ヨーロッパを中心としたライヴ活動に加えて、コラボレーションや客演といった形で実に数多くの作品を発表し続けてきた。最も新しい作品としては、人気ゲーム『Grand Theft Auto V』のために作られた Flying Lotus のプロデュースによる “Lunch Break” が昨年12月に発表され、さらに Flying Lotus は MF DOOM とのコラボレーションEPを制作中であったことも明らかにしている。また、『Madvillainy』の続編に関しても、2011年の時点で MF DOOM 自身の口から制作中であることが発表され、一時は完成間近とも言われていたが、残念ながらいまだにリリースはされていない。しかし、実は水面下でアルバムの制作は継続していたとのことで、いずれ何らかの形で日の目を見ることを願いたい。

Thundercat & Squarepusher - ele-king

 重要なお知らせです。今月下旬に予定されていたサンダーキャットの来日公演、および、2月に予定されていたスクエアプッシャーの来日公演が、ともに再延期となりました。
 海外で猛威をふるう変異種ウイルス、日本国内での入国制限強化、緊急事態宣言再発令の予定など、現在の厳しい状況を受けての判断です。楽しみにしていた方も多いと思いますが、状況が状況ですのでここはぐっとこらえましょう。
 振替や払戻しについては近日あらためて発表されます。チケットをお持ちの方は大切に保管を。

THUNDERCAT、SQUAREPUSHER
来日公演に関するお知らせ

海外での変種ウイルスの感染拡大を受け、12月24日以降の当分の間において、英国からの新規入国拒否および米国からの入国制限を始め、海外から水際対策強化に係る措置が実施されることとなりました。さらに現在では、外国人の新規入国の全面停止も検討されています。またPCR検査の陽性者の拡大を受け、緊急事態宣言の発令も予定されており、そして未だイベントに対する規制緩和も延期されている状況です。

弊社並びにアーティストサイドは互いに協力し、ビザ取得に加えレジデンストラックでの入国、また公演前に15日間の隔離期間を設ける等々、様々な対策を講じることで、予定通り公演を開催すべく準備を進めてまいりましたが、今回の政府による規制強化及び、開催会場のキャパシティ制限などの規制を受けて、公演を再延期せざるを得ない状況となりました。

THUNDERCAT、SQUAREPUSHERともに来日に対する意欲は強く、新たな日程で開催を実現できるよう再調整中です。ご来場を心待ちにしていらしたお客様には、大変ご心配とご迷惑をお掛けいたしますが、振替公演、払戻し等の詳細についても、現在関係各所と調整中ですので、近日改めて発表いたします。

2021.01.27-29 THUNDERCAT JAPAN TOUR 2021 << 公演延期
2021.02.16-18 SQUAREPUSHER JAPAN TOUR 2021 << 公演延期

・現在、振替公演を開催すべく調整中です。既にチケットをお持ちのお客様は、お手持ちのチケットで振替公演にご来場いただけますので、大切に保管していただくようお願いいたします。

・振替公演に都合がつかないお客様には、払戻しの対応をさせていただきます。払戻しの詳細につきましても、現在調整中ですので、お手持ちのチケットを大切に保管していただくようお願いいたします。

外務省:新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について

お客様には、ご迷惑をおかけすることになりますが、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。

お問い合わせ:ビートインク info@beatink.com

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ENGLISH

INFORMATION REGARDING
THUNDERCAT AND SQUAREPUSHER TOURS IN JAPAN

Due to the spread of a new variant of the novel coronavirus overseas, on December 24 the Japanese government decided to enforce new restrictions on travel from all foreign countries, including refusal of new entry from the United Kingdom and the United States. In addition, due to an increase in the number of local positive PCR tests, the deregulation of events has once again been postponed.

BEATINK along with both artists were fully prepared to comply with all government regulations including undergoing quarantine in order to make these performances happen. However due to the further tightening of regulations by the government and restrictions imposed on venue capacity, we are now left with no choice other than to again postpone both tours.

Both THUNDERCAT and SQUAREPUSHER are highly motivated to perform for fans in Japan and fully intend to announce new tour dates at the earliest possible moment. We sincerely apologise for any inconvenience caused to customers who have purchased tickets, and we are currently coordinating with all parties regarding new performance dates and refunds, which will be announced very soon.

2021.01.27-29 THUNDERCAT JAPAN TOUR
2021.02.16-18 SQUAREPUSHER JAPAN TOUR 2021

- As the above performances cannot take place as scheduled, we are now in the process or arranging new dates for each performance. If you already have a ticket, please hold on to it and use the ticket to attend the rescheduled performance;

- We will gladly provide a refund to customers who are unable to attend the rescheduled performance date. Details of the refund are currently being arranged, so keep your ticket in a safe place until further notice.

Ministry of Foreign Affairs announcements may be read here.

We sincerely apologise for any inconvenience these new arrangements cause and trust that all understand that these are circumstances completely beyond the artists' or Beatink’s control.

Once again we thank you for your support and understanding.

BEATINK: info@beatink.com

The KLF──ストリーミング開始 - ele-king

 1992年の活動休止宣言以来、すべての音源を廃盤としていたザ・KLF(ザ・JAMs、ザ・タイムローズ、ジャスティファイド・エンシェンツ・オブ・ムー・ムー)が、ついにストリーミング・サーヴィスを開始すると、これが2021年元旦のニュースとして世界に流れたことは、すでにご存じの方も多いことと思います。遅ればせながら、ele-kingでも取り上げておきます。

 ちなみにこのニュースは、最初はロンドンの鉄道橋下に貼られたポスターや落書きによってアナウンスされたようです。まあ、俺たちは俺たちのやり方をいまでもやっているんだぜってことでしょう。大晦日にはジミー・コーティのガールフレンドがその落書き現場の写真をインスタにアップしたことも話題になっているし。……しかし、いい歳なのにすごいなぁ。。。

 ストリーミングのシリーズ名は、「 Solid State Logik」。まずは「1」なので、この後、いろいろ続くのでしょうな。
 なお、懐かしのヴィデオはこちらまで(https://www.youtube.com/channel/UCbsEHtpoQxyWVibIPerXhug)。


Rainbow Disco Club - ele-king

 2020年、中止になったフェスのひとつ〈Rainbow Disco Club〉。当日(https://www.ele-king.net/review/live/007571/)は、配信という手段でダンス・ミュージック好きを喜ばせてくれたことがもう遠い昔のように感じられる。あまりにも、もう、あまりにもいろんなことがあったからね、今年は。
 で、そのときの放送をこのお正月に無料配信すると、RDC主催者が発表した。以下、主催者からのメッセージ。

https://rainbowdiscoclub.zaiko.io/e/RerunofSomewhereUnderTheRainbow

 激動とも言える2020年も残す所あと僅かとなりました。
 今年は新型コロナウイルスの世界的パンデミックにより、多くの方が様々な面で疲弊する年になったかと思います。
 ご存知の通り、我々Rainbow Disc Clubも伊豆や世界各地での公演の中止を余儀なくされ、精神的にも経済的にも非常に苦しい年となりました。
 しかし、そのような中にも今までは無意識のうちに遠ざけていた感覚に、気付けたことも多かったように思えます。
 今までは想像できなかった人の辛さ、苦悩について考える時間を持てたこと。
 日常の小さな変化、家族や友人の些細な気遣いに、大きな幸せを感じたり。
 オンラインでの開催となったRDC 2020 。
 あの日、私たちは離れた場所で、それぞれのやり方でパーティーに参加しましたが、大切な部分は確実に繋がっていると感じました。
 アーティストたちの素晴らしいパフォーマンスとともに、SNSでのやり取りや投稿も強く思い出されます。
 ダンサーたちはテキストや写真となって確かにダンスフロアを形成していました。!
 何度でもお礼を言わせてください、本当にありがとうございました。

 あと数日で2020年は終わり、新しい年がやってきます。我々は来るべき、2021年のために、RDC 2020をZAIKOさんの協力のもとに、1月2日 12:00より無料で再放送いたします。
 なぜお正月なのか?  2020年ではなく、2021年のために年が明けてから、新しい気持ちの中で皆さんにまた会いたいと考えたからです。
 途中で初詣に行ったり、おせちを食べたり、友達とZOOMを繋いで新年の挨拶をしたり、それぞれが迎えるお正月の中で、 #rainbowdicoclub 一緒の時間を過ごせたらこれほど嬉しいことはありません。
 寒く不安な日が続きますが、どうか健康にお気をつけてお過ごしください。
2021年、ダンスフロアでの再会を楽しみにしております。

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There are only a few days left in the turbulent year of 2020.

We assume that many of you are exhausted in various ways due to the global pandemic.

As you know, Rainbow Disco Club were forced to cancel the festival in Izu and parties around the world, which put us in very difficult condition both mentally and financially.

However, even in such a situation, we could become aware of important things that we unconsciously ignored before. Having time to think about the pain and suffering of people that we rarely think about before.

We could feel great happiness in small changes in daily life and little care of families and friends.

RDC 2020 was held online. That day, we attended the party in different ways, far away, but we felt connected with the wonderful performances of the artists. We vividly remember the exchanges and posts on social media.

All of you made the dance floor virtually through posting comments and pictures. How can we ever say thank you enough for the loves you shared.

We decided to rebroadcast RDC 2020 "somewhere under the rainbow" with free of charge from 12:00 (JST, GMT-9) on January 2nd in 2021, with the cooperation of ZAIKO, for the new year to come.

Why did we choose the New Year? Because we wanted to see you all again with a new feeling of 2021. It would be great if we could spend time together with #rainbowdicoclub during the New Year.

There are still cold and uneasy days to come, but please be extra careful and stay healthy.

We very much look forward to seeing you all again on the dance floor in 2021.

10 Selected Ambient / Downbeat Releases in 2020 - ele-king

 2020年のほとんどを、僕はロンドンの自分のフラットで過ごした。コロナ禍による二回に及ぶロックダウン(都市封鎖)や、それに準ずる段階的外出規制によって、イギリスに住む者の行動はかなり制限されていた。2月までクラブやライヴ・ヴェニューへ行っていたのが別の世界の出来事のように感じられるほど、自分の生活スタイルも変わった。運動のため頻繁に外出するようになったり、自転車で遠出するようになったり、人混みへ注意を払うようになったり。自分が4年ほど住んでいる街を違った視点から見る機会が増えた。
 今年自分が聴いてきた音楽を振り返ってみると、ダンス・ビートよりも、アンビエントやダウンビートと呼ばれる作品が多い。変わりゆく周囲の環境と自分との関連が放つ何かを理解するうえにおいて、頭やケツをバウンスさせる運動神経よりも、隙間がある音に消えていく感覚の方が研ぎ澄まされていくのかもしれない(と言いつつも、年末の紙エレで選んだエレクトロニック・ダンスたちには心底感動させてもらった。アンズのNTSレディオでのヘッスルオーディオ・スペシャルセットを聴くといまも涙が出そうになる)。
 というわけで、今回のサウンド・パトロールは、いわゆるダンス系ではないものを10作品選んだ。もちろんここに載っていない素晴らしい作品もたくさんある。これは自分の独断で選んだ作品リストに過ぎないが、2020年という音楽シーンである種の停止ボタンが押された一年とはなんだったのかを振り返るきっかけになれば幸いである。2年前と同様にフィジカルで持っているものを中心に選び、以下、テキストと写真とともに掲載する。

Kali Malone - Studies For Organ | Self-Released

 アメリカはコロラド出身で現在はストックホルムに拠点を置くパイプオルガン奏者、電子ミニマリスト、カリ・マローンの去年出たサード・アルバム『The Sacrificial Code』は、非常に多くの関心をひいた。この自主リリースされたカセット作品『Studies For Organ』は、去年作品のリハーサルとしてレコーディングされたもので、2017-18年の間にストックホルムとヨーテボリで録音されたと帯にはある。再生してみて驚いたのが低音の力強さである。その屋台骨の上でミニマルに展開されるメロディーは、スザンヌ・チャーニらシンセシストたちが描いてきたサウンドスケープと重なる部分があるかもしれない。不断なく動いていた旋律が変化をやめて持続のみに切り替わるエンディングに息を呑んだ。サラ・ダヴァチやカラーリス・カヴァデイルの活躍を鑑みるに、現代の電子音楽シーンにおけるパイプ・オルガンの存在感は増している。この「呼吸をしない怪物」が現在においてサウンドに内胞しているものを感じる機会が今後も増えていくのかも。

Alex Zhang Hungtai & Pavel Milyakov - STYX | PSY Records

 まさかのコラボレーションである。LAのサックス奏者、アレックス・チャン・ハンタイ(aka ダーティ・ビーチズ)とモスクワの電子作家、パヴェル・ミリヤコフ(aka バッテクノ)がタッグを組み、後者が今年新設したレーベル〈PSY X Records〉からリリースされたのが、このアンビエント作品『STYX』だ。フォーマットはカセット(とデータ)で、テープはモスクワのミリヤコフから直接届いた(彼は今作のミックスとマスタリングも手掛けている。ミリヤコフは自身のプロダクション技術をサブスクライバーに提供する試みも最近スタートした)。オクターバーなどのエフェクターを駆使したミリヤコフのギターとAZHのサックスが、朝焼けのような美しいテクスチャーを生んでいる。モジュラー・シンセが作り出すアグレッシヴなグリッチとサックスの掛け合いなどもあり、単なるアンビエント作品の範疇にもとどまっていない。半透明の青いケースに包まれたカセット・ケースのデザインも秀逸。化学記号のようなシンプルなタイトルは、音の物質性へとリスナーを誘い込む。

Lisa Lerkenfeldt - A Liquor of Daisies | Shelter Press

 オーストラリアはメルボルンを拠点に活動するリサ・ラーケンフェルドは、自身のデビュー・アルバム『Collagen』を、バルトローム・サンソンとフェリシア・アトキンソンが率いる〈Shelter Press〉から今年の8月に出していて、6月に先行する形で同レーベルからカセットでリリースされたのが今作『A Liquor of Daisies』である。アルバムは持続するシンセ、金属的テクスチャー、ディストーション・ドローンなど、手法面で多彩。それに対して、このテープ作は同じピアノのモチーフをループ+電子音というシンプルな構成ではあるものの、モチーフを変調させて驚きを生み、分厚い壁から高原を吹き渡る風のような音へと徐々に変化するエレクトロニクスが、39分48秒を永遠へと変化させる。この呼吸の長さが、LPよりもこのアルバムを特別なものにしている。ジャケットには「ゼロクライサム・ヴィスコサムへの詩、永遠のデージー(註:両方ともオーストラリアの花)、多様な祈る者たちと機械のためのプロポーザル」とある。なお、このカセットのバンドキャンプでの売り上げのすべては、ブラック・ライヴス・マター運動の一環として、オーストラリアのアボリジニ支援団体へと寄付された。

Jon Collin & Demdike Stare - Sketches of Everything | DDS

 2月、僕はロンドンのカフェ・オトで二日に渡って行なわれたデムダイク・ステアのライヴへ行った。そのときのライヴ・リハーサルがカセットになった『Embedded Content』が素晴らしいというのは、別冊紙エレの家聴き特集でも書いた。その次の彼らのリリースになったのが、このランカシャー出身で現在はスウェーデンに拠点を置くギタリスト、ジョン・コリンとのコラボレーション作品『Sketches of Everything』で、さらに連作となる形でカセット『Fragments of Nothing』も出た。フォークやブルースを電子的に自由解釈したコリンのギターを、DSがリヴァーヴやエコーで空間にちりばめ、それがフィルターでねじ曲げられ、カモメの音が遠くへと運んでいく。ジャケットにはコリンの家族写真アーカイヴが借用されていて、ある種、記憶がテーマになっていることは間違いない。ここには憑在論的ホラーではなく、「ああ、昔こういうことがあったよね」という単純な回想が音になっている優しさがある。冒頭10分のなんと綺麗なことだろうか。

Pontiac Streator - Triz | Motion World

 ポンティアック・ストリーターはフィラデルフィアを拠点に抽象的なビートとアンビエントを世界にドロップしている。その生態はアンダーグラウンドに潜っているため、サブスクにはコンピ参加以外作品がなく、流通が少ないレコードかバンドキャンプでその作品にアプローチするしかない。他にもいくつかグループでの名義があり、『Tumbling Towards A Wall』という傑作を今年発表した同じくフィラデルフィアのアンビエント作家ウラ・ストラウスとはアルバム『11 Items』を去年リリースしている。今作『Triz』はソロとしては2作目のアルバムにあたる。彼の作るビートは、LAのようにコズミックではなく、ロンドンのようなハードなホットさがあるわけでもなく、そのアンビエンスはベルリンのようにダークでグリッチィでもない。彼は自分の音を持っている。リズムはアメーバのように俊敏さ柔軟さを兼ね備え、ベースは鼓膜に息を吹きかけるように流れ、ベリアルのようにどこかから採取された音声が滑らかにこだまする。最後の曲名は “Stuck in A Cave” であり、抜けられない洞窟にいるものの、鳥の声が聞こえてくる。困難にいるときでも、想像力は外に向くことができる。ここには希望がある。

Experiences Ltd.

 ベルリン拠点のプロデューサー、シャイ(Shy)はスペシャル・ゲストDJやフエコSとのゴースト・ライド・ザ・ドリフトなどの名義で活動している。彼は〈bblis〉や〈xpq?〉のレーベルを通して、いわゆるアンビエントやダウンテンポという既存ジャンルの両地点の間を漂う楽曲を紹介してきた。それに加えて彼が2019年に開始した〈Experiences Ltd.〉は、今年に入り、頭一つ抜けた力作を続々とリリースした。フィラデルフィアのウラ・ストラウスのウラ名義『Tumbling Towards A Wall』は、テープ・ループで劣化してくような淡いベールに包まれたテクスチャーを、ピアノなどのサウンド・マテリアルのループや重低音で色づかせ、3~5分ほどの長さの楽曲で8つの異なる光景を描いた傑作である。彼女がベルリン拠点のペリラ(Perila)と組んだログ(LOG)はよりクリアなテクスチャーのもと、肉声などを取り込み、異なる角度から静寂へとアプローチ。他にレーベルからは、ニューヨークのベン・ボンディや、日本のウルトラフォッグも参加しているプロジェクト、フォルダー(Folder)といったトランスナショナルな人選が続いている。2020年最後のリリースになったカナダのナップ(Nap)による7インチ「Íntima」は、90年代のアブストラク・ビートがよぎるなど、レーベルが今後もそのカタログを変形させていく可能性を示唆している。なお、レーベル・リリースのマスタリングの多くを手掛けているのは、デムダイク・ステアのマイルズ・ウィテカー。

Vladislav Delay | Bandcamp Subscription

 今年僕が最も聴いたプロデューサーはヴラディスラフ・ディレイことサス・リパッティである。〈Chain Reaction〉諸作をコンパイルした『Multila』のリマスター、ソロ作『Rakka』とスライ&ロビーとの『500-Push-Up』、マックス・ローダーバウアーとの『Roadblocks』、ルオモ名義の『Vocalcity』リマスターなど、力強いリリースが今年は続いた。いま、彼はバンドキャンプで自身の作品のサブスクリプション・サービスを行なっている。この機会に彼のキャリアを聴き込んでみようと思い、僕は現在それをサブスクしている。月10ユーロでVD名義の作品ほとんど全てが非圧縮音源でダウンロードできるうえ、サブスク限定の音源発表も毎月ある。フィンランドの孤島に建つスタジオで、グリッチ・ノイズからフットワークにいたるあらゆる音像を、毎朝早起きしてリパティはせっせと作り、自然とジャズ、読書からインスピレーションを受けている(まるで村上春樹である)。あるインタヴューによれば、リパッティはオシレーターとフィルターでできることの限界に早い段階で気づいたらしい(といっても充実したユーロラックのセットを使用している)。そして向かったのはダブである。その可能性をミュージック・コンクレートやテクノ以外のリズムへ切り開いた点において、彼は当初つけられたベーシック・チャンネル・フォロワーという枠を超えて自身のスタイルを確立した。改めて、すごい作家である。グリッチの空間化を極めた『Anima』(2001)と高揚感溢れるリズム&サウンドの “Truly” のリミックス(2006)は同じ宇宙に存在しえるのだ。

Suzanne Ciani - A Sonic Womb: Live Buchla Performance at Lapsus | Lapsus Records

 ブクラ・シンセサイザーを駆使し、電子音楽からピンボールの効果音に至るまで、70年代から歴史的な仕事をしてきたシンセシスト/作曲家、スザンヌ・チャーニ。彼女の昨今の電子音楽シーンにおける再評価は、デザイナー/DJ、アンディ・ヴォーテルが共同設立者に名前を連ねる〈Finders Keepers〉からの2016年作『Buchla Concerts 1975』にはじまる。それ以降、彼女はブクラ200eを抱え世界をツアーし、コンサートとトークによる教育を通し、いまもなお音を合成する意義を説いている。今作は2019年のバルセロナでのコンサートの録音であり、70年代にチャーニが使用していたシーケンサーを発展させた即興演奏を聴くことができる。往年のチャーニ作品で使われているアルペジエーターの旋律が、ステレオの左右を拡張せんとばかりに旋回し(オリジナルは左右ではなく四方の異なるスピーカーを使用したクアドロフォニック)、スネア化した短波ノイズが連打されるとき、客席から歓声が上がる。今作の開始と終わりには波の音がある。ただ理想化しているだけかもしれないけれど、あなたがブクラで作る波の音はなぜかとてもオーガニックに聞こえるんです、という2016 年のレッドブルミュージック・アカデミーの受講生の質問に、チャーニはシンプルに「それは複雑だからです」と答えている。楽曲が生む興奮に加え、独自の発振回路を持つブクラでオシレータとフィルターを入念に組み合わせて生まれる彼女の波の音は、自然を人間の側から思考する重要な事例でもあるのだ。

Drew McDowall - Agalma | Dais Records

 70年代から90年代にかけて、コイルやサイキックTVの長年の共作者、あるいはそのメンバーとしても知られる、スコットランド出身で現在はブルックリンを拠点に置くドリュー・マクドウォル。近年はモジュラー・シンセを表現メディアの主軸においている。2年前に出た、同じくニューヨーク拠点のモジュラー・シンセシスト、ヒロ・コーネとのEP「The Ghost of George Bataille」が示唆していたかのように、ソロとしては5作目の『Agalma』は、数々の客演が目白押しになっている。ともに実験的シンセシストであるカテリーナ・バルビエリロバート・アイキ・オーブリー・ロウとの共同作業において、逆行するサウンドや加工された肉声が、ハープなどの異なるマテリアルとともに、あらゆる方向から飛び交ってくる。先に書いたカリ・マローネの参加曲は、とぐろを巻くようなベースと左右の空間を埋め尽くすリードが、オルガンと奇怪に絡み合う。ヴァイオリンやダブルベースといった楽器も今作には多数散りばめられている。ノイズ/エクスペリメンタルの若手として知られるバシャー・スレイマン、エルヴィン・ブランディや、カイロのズリとの共作や去年のデビュー作『Dhil-un Taht Shajarat Al-Zaqum』で頭角を現したサウジアラビアのシンガー、ムシルマ(MSYLMA)らが参加したLP盤の終曲は、楽器とエレクトロニスのオーケストレーションとヴォーカルが圧巻のシンフォニーを見せる。ギリシャ語で彫像を意味する「agalma」が各楽曲の番号とともに割り振られた今作は、曲ごとに異なるサウンド・フォームを模索している。一貫して広がる暗さに引きずり込まれ、聴くことを止めることができない傑作だ(レコードは手に入れるタイミングを逃してしまった……)。

Burial + Four Tet + Thom Yorke - Her Revolution / His Rope | XL Recordings

 最後はウワサのアレ。ロンドンの三つのレコ屋がこの12インチの入荷を告知した翌日に在庫をチェックしたところ、すべての店舗ではソールドアウトになっていた。限定300枚だしな、と諦めていたところ、その一週間後にとあるレコ屋のサイトを眺めていたら、どういうわけか入荷していて入手することができた。フォー・テットが自身のレーベル〈Text〉から、それまでのデザインとは異なる黒ラベルで発表したベリアルとの最初のコラボ12インチ「Moth / Wolf Club」が出たのが2009年。そこにトム・ヨークが加わった「Ego / Mirror」が2011年、そして翌年には再び2人に戻って「Nova」をリリースしている。今回の曲調は前回のようにハウスではなく、減速したツーステップでもなく、いわゆるダウンテンポと括られるスローなビートになっている。これまでもそうであったように、今作にもベリアル的なクラックル・ノイズが散りばめられ、フォー・テット的な色彩を加える流浪のシンセ・リードがあり、どこからか現在に回帰してくるサンプリングが澄んだ情景を生む。ヨークの声はトラックの前面に出ているというよりは、キックによって区切られる間隔でこだましているかのよう。レコードのランナウト(曲とラベルの間)に「SPRING 2020」とあるので今年になって録音されたものなのだろうか。であるならば、ヨークの歌詞が放つ、犠牲がともなう革命、完璧な自己破壊といったモチーフは、パンデミックやブレグジットとも時代的に呼応しているのかもしれない。それが透き通るようなトラックのなかで鳴っている。2021年、この12インチ はどのように聴こえるのだろうか。

New Project of Jeff Mills - ele-king

 先日リリースしたバイロン・ジ・アクエリアスも好評なアクシス。2020年は、ベネフィシアリーズをはじめ、ジェフ・ミルズのミルザート名義の「Every Dog Has Its Day」シリーズがいつの間にか「vol.13」までリリースされているほか、おそろしく積極的に他のアーティストの作品も毎月のようにリリースしている。コロナ禍において、かえってやる気がみなぎってしまっているようだ。ちなみに「Every Dog Has Its Day vol. 4」は今週までフリーダウンロードできる。
 さて、その休みなきジェフだが、年明け1月には彼の新プロジェクト、ザ・パラドックスのアルバム『Counter Active』がリリースされる。これは故トニー・アレンのバックも務めていたガイアナ移民としてフランスで暮らすピアニスト、ジャン・フィ・デイリー(Jean-Phi Dary)とのコラボレーションになる。アフロ・キューバンとコンパ(ハイチの音楽)からの影響のなかに、ジャズ、レゲエとファンクが融和されたデイリーの演奏の評価は高く、ピーター・ゲイブリルやパパ・ウェンバ(コンゴの歌手)、有名なドラマーのパコ・セリー(ザヴィヌル・シンジケート)らのバックも務めている。

「トニー・アレンとの『Tomorrow Comes The Harvest』でのコラボレーションの延長としてこの企画は生まれた」とジェフの弁。「演奏のセットアップ後にジャン・フィと僕で簡単なジャム・セッションをするのが通常で、実際の演奏ではトニー・アレンが加わって、そしてサウンドチェック時のグルーヴを発展させていく」、このセッションのなか楽曲は「数分のうちに完成した」という。
「そのアイディアをスタジオに持ち込みレコーディングしたのが今回のアルバム。1年をかけてパリ周辺の様々なスタジオで膨大な量の曲をレコーディングした」
「『カウンター・アクティヴ』はふたつのクリエイティヴな精神が妥協や制限なくぶつかり合った結果。音楽が我々の人となり、言いたいことを如実に表している。タイトルは目的を持って成し遂げることを意味している。ちなみに『カウンター・アクティヴ』は二部構成の第一部なんだ」
 まずはその一部を楽しみに待とう。

The Paradox
Counter Active

Axis / AX096

Track Titles:
A1. Super Solid
B1. The X Factor
B2. Residence
C1. Twilight
C2. Ultraviolet
D. Residence (Alternate version)

Busta Rhymes - ele-king

 90年代前半のUSヒップホップ・シーンを代表するグループ、Leaders Of The New School のメンバーとしての活動を経て、その後、ソロ・アーティストとして20年以上に亘って活動を続けてきた Busta Rhymes が通算10作目として8年ぶりにリリースしたアルバム『Extinction Level Event 2: The Wrath of God』。タイトルにある「2」という数字が示す通り、このアルバムは「世界の終焉」をコンセプトに掲げて1998年にリリースされた3rdアルバム『E.L.E. (Extinction Level Event): The Final World Front』の続編的な作品でもある。本来であれば、このタイトルで2013年頃にはアルバムをリリースする予定であったそうであるが、改めてレコーディングを重ねた上でこのタイミングに本作をリリースしたのは新型コロナウイルスによって世の中が大きく変化したことが影響しているのは言うまでもなく、骸骨にマスクというアルバム・カヴァーも見事に2020年という年をヴィジュアルで表現している。

 オールタイムで言えばヒップホップ・シーンの中で最もテクニカルなラッパーのひとりにも挙げられる Busta Rhymes であるが、少なくともアルバム前作、前々作あたりの頃はアーティストとしてのピークはとっくに過ぎていて、悪い意味でのベテラン感さえ漂っているようにも感じられた。しかし、2014年にリリースされた Q-Tip とのコラボレーションによるミックステープ『The Abstract Dragon』はそんな空気を一変させ、Busta Rhymes のラップの本質的な部分であるテクニカルかつエンターテイメント性の高さを強くアピールすることに成功し、その流れは本作にもダイレクトに反映されている。

 その象徴とも言える一曲が、Kendrick Lamar をゲストに迎えた “Look Over Your Shoulder” だ。Nottz がプロデュースを手がけた、Jacksons 5 の代表曲 “I'll Be There” を大胆にサンプリングしたトラックも素晴らしすぎるこの曲だが、Michael Jackson のヴォーカル・パートを絡めながら展開する Kendrick Lamar と Busta Rhymes とのマイクリレーが実にスリリング。この曲でふたりはヒップホップ/ラップをテーマにリリックを展開していくのだが、実に巧みな比喩を織り込みながら、ラッパーとしての自らの優位性とヒップホップに対する絶対的な愛情を説き、凄まじいフロウとライミングによって聞く者を圧倒する。ラッパーとして間違いなく現時点最高ランクに位置する Kendrick Lamar に対して、Busta Rhymes は互角に勝負を繰り広げており、キャリアを重ねたことによる説得力の高さでは上回っているようにも感じる。

 ゲスト参加曲で言うと、ネイション・オブ・イスラムの創始者の名前をタイトルに掲げた “Master Fard Muhammad” での Rick Ross との貫禄あり過ぎるマイクリレーも圧巻で、他にも Anderson .Paak(“YUUUU”)、Q-Tip(“Don't Go”)、Mary J. Blige(“You Will Never Find Another Me”)、Mariah Carey(“Where I Belong”)、Rapsody (“Best I Can”)と実にバラエティに富んだ豪華なゲスト・アーティストたちとの共演も大きな聞きどころ。「世界の終焉」というアルバム・コンセプトやカヴァー・ヴィジュアルのダークさとは裏腹に、エンターテイメントとしての部分の完成度も非常に高く、Bell Biv DeVoe “Poison” をモロ使いした “Outta My Mind” での最高な弾けっぷりには、Busta Rhymes のキャラクターの良さが充分過ぎるほど反映されている。

 往年の Busta Rhymes ファンはもちろんのこと、彼の全盛期を知らない人にもぜひ聞いてほしいアルバムだ。

Synchronize - ele-king

 40年ぶりに再発され話題となった、日本のポストパンク・バンドを収録した1980年のコンピレーション『都市通信』、そのなかのひとつシンクロナイズ(後にザ・スカーレッツに改名)が、年明けにスタジオ+ライヴ音源をコンパイルした3枚組を限定リリースする。シングル2枚、カセット2本、未発表ライヴ音源、今回初出となる、ミニコミ「ニュー・ディスク・リポート」の付録ソノシート用に録音された3曲、アルバム「ポーラー・ソング」用に録音された5曲など未発表スタジオ音源を収録。いままでアーカイヴ化されてこなかった時代の貴重な音源であることに間違いない。

Synchronize, The Skarlets
An afterimage- Synchronize to The Skarlets –

仕様:3枚組CD
発売日:2021/1/27
初回限定盤
品番:WC-095~097
定価:¥4545+税
JAN:4571285920957
発売元:いぬん堂

Synchronize ~ The Skarlets
1978年 Synchronize結成。1980年 アルバム「都市通信」に参加。新宿ACBでのイベント「Street Survival宣言」への出演や都内ライヴハウスを中心に活動。1981年にシングル「訪問者」、1983年にシングル「PRIEST」を発表後、The Skarletsに改名。1987年にカセット「Skarlets」、1989年にカセット「Liverpool」を発表した。

CD発売記念ライヴ
2021年2月19日(金)新宿ロフト
AN AFTERIMAGE COLOR
料金:前売り3000円+drink
開場18:00 開演18:50
出演:シンクロナイズ、突然段ボール、モリモトアリオミ、NOISECONCRETE×3CHI5、DJ:肉夜メイジー

Total Info. https://www.synchronize80.xyz/


An afterimage
- Synchronize to The Skarlets -


Disc 1 Synchronize Studio
1. 都市通信
2. 転写
3. Easy Money
4. 訪問者
5. 幼年期
6. 連続線
7. PRIEST
8. MODE
9. Disillusion
10. 愛の見解
11. Please
12. holiday
13. NOBUYA
14. POLAR SONG

Disc 2 Synchronize Live & Demo
1. holiday
2. 都市通信
3. 停止セヨ
4. 時間膜
5. Cool Point
6. Girl’s Campaign
7. 幼年期
8. 連続線
9. Disillusion
10. MODE
11. 紅蓮
12. 愛の見解
13. 失楽園 - the location -
14. Please
15. PRIEST〜Easy Money

Disc 3 The Skarlets Studio & Live
1. Sun Room
2. 告白
3. Clear Screen
4. 反射率
5. Liverpool
6. 精霊代 - Lavender days -
7. 残像
8. 彼方 the far
9. 黄昏まで
10. 精霊代 - Lavender days -
11. 残像
12. 抱擁
13. 少年画報
14. 孔雀

Disc 1
Track 1 to 3 : Unreleased Tape
Recorded at Studio Magnet 12 June 1980.
Track 4,5 from Single「訪問者、幼年期」Plaza Records (7inch:PLAZA-1) 1981
Track 6 : Unreleased Tape 1981
Track 7,8 from Single「PRIEST, MODE」Polar Records (7inch:S-1) 1983
Track 9 : Unreleased Tape 1983
Track 10 to 14 : Unreleased Tape
Recorded at Sound Market 1984

Disc 2
Track 1 : Live Recorded at Shinjuku ACB 14 June 1980
Track 2,3 : Live Recorded at Shinjuku Loft 14 Aug. 1980
Track 4 : Live Recorded at Shinjuku Loft 3 Sep. 1980
Track 5 :Recorded at Rasenkan Feb. 1981
Track 6 :Live Recorded at Hosei University 18 Apr. 1981
Track 7,8 : Live Recorded at Shinjuku ACB 20 June 1981
Track 9 : Live Recorded at Harajuku Crocodile 25 Apr. 1982
Track 10,11 : Live Recorded at Kichijoji Manda-La 20 Feb. 1983
Track 12 : Live Recorded at Yotsuya Fourvalley 6 Apr. 1983
Track 13 : Live Recorded at Yotsuya Fourvalley 18 Nov. 1985
Track 14 : Live Recorded at Yotsuya Fourvalley 27 Jan. 1986
Track 15 : Live Recorded at Shibuya La.mama 7 Jul. 1986

Disc 3
Track 1 to 4 from「Skarlets」(Cassette) 1987
Recorded at ken's home 1987
Track 5 to 8 from「Liverpool」(Cassette) 1989
Recorded at ken's home 1989
Track 9 to 14 : Live Recorded at Fussa Chicken Shack 26 Jan. 1990

Produced by Mikio Shiraishi, Kenji Nomoto
Compiled by Mikio Shiraishi, Kenji Nomoto
Licensed from Sychronize, The Skarlets
Mastered by Kenji Nomoto (2-1 to 2-15, 3-1 to 3-14), Akihiro Shiba (1-1 to 1-14)
Remastered by Akihiro Shiba (2-1 to 2-15, 3-1 to 3-14)
Mastered at ken’s Home, Temas Studio
Remastered at Temas Studio
Photography by Ieki Maekawa
Designed by Shigeo Matsumoto

All Lyrics by Mikio Shiraishi
Music by Mikio Shiraishi (1-1 to 1-3, 1-6, 2-2 to 2-5, 2-8, 2-15 [Easy Money]), Mikio Shiraishi & Kenji Nomoto (1-4, 1-5, 1-7 to 1-14, 2-1, 2-6, 2-7, 2-9 to 2-15 [PRIEST], 3-1 to 3-14)
Vocals [All Songs], Guitar [2-14] : Mikio Shiraishi
Guitars [All Songs] ,Keyboards [3-5, 3-8]: Kenji Nomoto,
Bass : Hitomi Sanekata (1-1 to 1-3, 2-1 to 2-4), Toshiaki Kabe (1-4, 1-5, 2-6 to 2-8), Tetsushi Nishiyama (1-7 to 1-14, 2-9 to 2-15), Toshifumi Sato (3-1 to 3-4), Yukari Hashimoto (3-5 to 3-14)
Drums : Yoshio Kogure (1-1 to 1-6, 2-1 to 2-4, 2-6 to 2-12, 2-15, 3-9 to 3-14)
Programmed by Kentaro Yamaguchi (1-9 to 1-14, 3-1 to 3-8)
Keyboards : Yoko Kawano (1-6, 1-7, 2-12), Kentaro Yamaguchi (1-8 to 1-14, 2-13 to 2-15, 3-1 to 3-14), Hikaru Machida (2-5 to 2-8), Shuichi Ohmomo (2-9 to 2-11)

Thanks to U Inoue, Tadashi Moriya, Syunji Tsutaki

Elzhi - ele-king

 一時は J Dilla 脱退後の Slum Village にも在籍しながら、Black Milk がメイン・プロデューサーを務めた『The Preface』(2008年)によってアルバム・デビューを果たしたデトロイト出身のラッパー、Elzhi(エルザイ)。2011年には WIll Sessions をバック・バンドに従えて制作した Nas『Illmatic』のカバー作『Elmatic』がヒップホップ・ファンの間で広く話題を呼び、さらに2016年のアルバム『Lead Poison』を経て、3作目のオリジナル・アルバムとしてリリースされたのが本作『Seven Times Down Eight Times Up』である。日本のことわざ「七転び八起き」を直訳したと思われるアルバム・タイトルが示す、現在42歳である Elzhi のこれまでの人生の流れが本作に反映されており、前作『Lead Poison』では内省的かつナイーブな面も見せていた Elzhi であるが、メンタル的にも完全復活し、次のレベルへと完全にバージョンアップした姿を本作で披露している。

 多少ぶっきらぼうに語るイントロによって幕を開け、続く “Smoke & Mirrors” からラストの “JASON” まで、決して大袈裟な表現ではなく、捨て曲は一つもない。本作のプロデュースを手がけているのは、ブルックリン出身で現在、ヴァージニアを拠点とするプロデューサーの JR Swiftz という人物で、これまで Conway The Machine や Westside Gunn の楽曲を手がけてきたそうであるが、おそらくヒップホップ・シーンではまだまだ無名に近い存在だ。SNSを通じて JR Swiftz が Elzhi へ直接コンタクトを取ったことによって今回のコラボレーションがスタートしたとのことだが、まるで人知れず眠っていたお宝のように光り輝く JR Swiftz のビートに Elzhi が強く刺激を受けたことで、このアルバムがこれほどまでに高い水準の作品になったのは疑いようがない。

 J Dilla や Black Milk に強い影響を受けたという JR Swiftz のビートが Elzhi のラップと相性が良いというのは至極当然のことではあるが、思わずヘッドバンギングしたくなるような太く響き渡るドラムにバラエティに富んだサンプリング・サウンドを乗せて作られたビートに対して、Elzhi は感情の強弱をつけながら、自らの経験を踏まえたドキュメンタリーから映画に着想を得たストーリーテリングまで、さまざまなテーマを横断しながら極上のラップを展開する。本作の何が特別なのかを言葉に表すのは非常に難しいのだが、この二人を掛け合わせることによって特別な化学反応が起きていることは、アルバムを一聴すればすぐに分かるだろう。特にアルバム前半部、“Smoke & Mirrors” から “Light One Write One” までの4曲は完璧すぎるほどの流れで、30代後半以上の日本語ラップ・ファンであれば “Light One Write One” のサンプリング・ネタにニヤリとする人もいるに違いない。

 本作によって JR Swiftz がプロデューサーとして今後大きく飛躍することは間違いなく、そして Elzhi 自身のアーティストとしての第二章のはじまりさえも感じさせる素晴らしいアルバムだ。

ele-king vol.26 - ele-king

増ページ特別号!

オウテカ4万5千字インタヴュー
──ヒップホップ、海賊放送、そしてシュトックハウゼンからレイヴまでを語る
使用機材についてのコラムやディスクガイド付き

特集:エレクトロニック・リスニング・ミュージックへの招待
──1992年に提唱された概念を軸に、部屋で聴く電子音楽を再考する
「90年代サウンド」「追悼アンドリュー・ウェザオール」「ダブ・テクノ」「ヒプナゴジック・サウンド&エスケイピズム」「ジョン・ハッセル再評価」「モダン・クラシカル」の6つの切り口から必聴盤134枚を紹介、マイク・パラディナスのインタヴューも

2020年ベスト・アルバム30発表
総勢32組によるジャンル別2020年ベスト10&個人チャート
──この激動の1年、もっとも心に響く音楽は何だったのか?

目次

オウテカ──その果てしない音の世界を調査する

4万5千字インタヴュー (野田努)
part1/part2

[コラム]
オウテカの使用してきた機材を考察する (Numb)
作り手側から見たオウテカ (COM.A)
生成と創造性──オウテカとMax/MSP (松本昭彦)
 
[ディスクガイド]
オウテカ厳選30作 (河村祐介、久保正樹、COM.A、小林拓音、野田努、松村正人)

特集:エレクトロニック・リスニング・ミュージックへの招待

[コラム&チャート]
エレクトロニック・リスニング・ミュージック=家で楽しむ電子音楽の大衆化 (野田努)
多くのプロデューサーが「マッド・マイク病」にかかっていた──90年代テクノについて (三田格)
90年代ELM──わたしの好きな5枚 (河村祐介、KEN=GO→、小林拓音、佐藤大、杉田元一、髙橋勇人、野田努、三田格)

[ディスクガイド]
(河村祐介、小林拓音、野田努、三田格)
90年代エレクトロニック・リスニング・ミュージック
追悼アンドリュー・ウェザオール
ダブ・テクノ
ヒプナゴジック・サウンド&エスケイピズム
ジョン・ハッセル再評価
モダン・クラシカル

[インタヴュー]
マイク・パラディナス (野田努+小林拓音)

2020年ベスト・アルバム30
──selected by ele-king編集部

ベスト・リイシュー15選

ジャンル別2020年ベスト10

エレクトロニック・ダンス (髙橋勇人)
テクノ (佐藤吉春)
アンビエント (三田格)
ハウス (Midori Aoyama)
ジャズ (小川充)
USヒップホップ (大前至)
日本語ラップ (磯部涼)
インディ・ロック (木津毅)
アフロ・テクノ (三田格)

2020年わたしのお気に入りベスト10
──アーティスト/DJ/ライターほか総勢31組による2020年個人チャート

Midori Aoyama、天野龍太郎、磯部涼、荏開津広、大前至、小川充、小熊俊哉、海法進平、河村祐介、木津毅、クロネコ(さよならポニーテール)、坂本麻里子、篠田ミル(yahyel)、柴崎祐二、高島鈴、髙橋勇人、デンシノオト、tofubeats、德茂悠(Wool & The Pants)、ジェイムズ・ハッドフィールド(James Hadfield)、原摩利彦、ジャイルス・ピーターソン(Gilles Peterson)、二木信、細田成嗣、Mars89、イアン・F・マーティン(Ian F. Martin)、増村和彦、松村正人、三田格、yukinoise、米澤慎太朗

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