「iLL」と一致するもの

interview with the telephones - ele-king


the telephones
We Love Telephones!!!

EMIミュージックジャパン

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 海外の新しいムーヴメントから意匠をかっぱらって、それを邦楽のリスナーにアジャストするように意訳、あるいは超訳して音を届けるバンド。いつの時代にもそんなバンドはいて、多くの場合は、洋楽系のリスナーから遠巻きに白い目で見られたりもしてきた。しかし、the telephonesはそんなステレオタイプな洋楽系邦楽バンドの枠組から外れて、新たなムーヴメントをこの国のシーンで巻き起こそうとする強い意志を前面に押し出してきた上昇志向の強いバンドだ。メジャーから2枚目のフルアルバムとなる『We Love Telephones!!!』は、そんなthe telephonesにとって正念場とも言える作品である。
 彼らが過去に参照してきたニュー・レイヴやディスコ・パンクといったムーヴメントは、ここ数年で跡形もなく消え去ってしまった。同時に、the telephonesをめぐる状況は次第に熱を帯びていき、同世代のバンドとのイヴェントである〈KINGS〉や、精力的なツアー、フェス出演などを通して、彼らは新しいタイプのロックリスナーを開拓することに成功してきた。その背景には、かつてはこの国の若いリスナーの間でも機能していた、「洋楽に影響を受けた邦楽と出会う→その元にある洋楽を辿っていく」というリスナーの行動原理が働かなくなってしまったことの、幸福な副産物とでも呼ぶべき追い風があったかもしれない。いずれにせよ、the telephonesが現在の邦楽ロックのフロントラインに立っているのは事実だ。"あざとさ"を捨てた丸腰状態のままバンドの本質と向き合ったニュー・アルバム『We Love Telephones』をたずさえて、彼らはここからどこへ向かっていこうとしているのか? フロントマンの石毛 輝を中心に、本音を交わしてきた。

要はいわゆるニュー・レイヴとかディスコ・パンクっていう流れのなかでやってた僕らが、それが終わったなかで何をやるのかっていうのがすごく大事なことだと思ってたんだけど、そこで開き直ってみたら意外にいい作品ができなって思って。

まず今年の3月にナカコーのプロデュースによる「A.B.C.D.e.p.」をリリースして、4月に初のセルフプロデュースによる「Oh My Telephones!!!e.p.」をリリースして、今回のアルバム『We Love Telephones!!!』に至るわけですけど、この流れのなかで、the telephonesの音楽はどんどん解放されていったように思います。

石毛(VOX/GUITAR/SYNTHESIZER):曲としては全部同時に作ってたんですよね。「A.B.C.D.e.p.」と「Oh My Telephones!!!」用の曲が10何曲かあって、そこからナカコーさんといっしょに選曲していって、これはナカコーさんにやってもらう、これは自分たちでやるっていう感じで分けていって。

じゃあ、ナカコーにある程度たくさんの曲を聴いてもらった上で、どの曲だったらいっしょにやると面白いかっていう判断からピックアップしていったのを最初にかたちにしたのが、「A.B.C.D.e.p.」ってことですか?

石毛:そうです。ずっとナカコーさんのファンだったから、純粋に「どれが好きなのかなぁ?」って訊きたい気持ちもあって。まだその時点ではこのアルバムの曲全部はまだ出揃ってなかったんですけど、たとえば"I'll Be There"(『We Love Telephones!!!』収録)なんかはその時点でもうあった曲で、「この曲やりたいな」ってナカコーさんが言ってて。

「A.B.C.D.e.p.」の時点で、アルバム『We Love Telephones!!!』までの構想はかなり明確にあったんですね。

石毛:そうですね。その時点でアルバムの設計図はあったら、全部が同時進行です。the telephonesのやることは、つねに「確信犯だ」って言われたいんですよね。

そういう意味では、ナカコーから「盗めるものは盗んでやろう」っていう意図もそこにはあったりした?

石毛:あぁ、それはもう、もちろんありましたよ。去年アルバム『DANCE FLOOR MONSTERS』でメジャー・デビューして、あれはある意味、僕らの勢いだけをパッケージした、いちばん濃い部分だけを絞って出したようなアルバムだったんで、その次に出す作品は、本来の自分たち――もともといろんなタイプの音楽をやりたかったバンドだったから――勢いだけじゃないものがやりたいなと思って。やっぱりiLLの作品を聴いたらわかるけど、ナカコーさんの作品って音がすごくいいじゃないですか。シンセもたくさん使ってるし。だから、これまでの自分たちの作品では作れなかった音像が、ナカコーさんだったたちゃんと作れるんじゃないかなと思って。で、もちろんその過程で、いただける技術は盗んじゃおうと思って(笑)。

その意図を隠すこともなく?

石毛:そうそう。もちろん、僕も隠さずに「教えてください!」って言うし、ナカコーさんも隠さない、ものすごくオープンな人だから。音楽に限らず、あまり詳しいことは言えないけど(笑)、いろんな動画とかもすぐに焼いてくれたりとか。the telephonesのレコーディング以外でもiLLの現場に行かせてもらって、機材をどうやって使うのか、音をどう作るのかとかも教えてもらって。しっかり盗みましたね。まぁ、盗みきれてないとは思うんですけど、いままでわかんなかったことがわかったのは大きかった。ものすごい勉強になりましたね。

それは、その次の段階として、「Oh My Telephones!!!」と、『We Love Telephones!!!』収録曲における初のセルフ・プロデュースというチャレンジを見据えてのこと?

石毛:もちろんそれもありますけど、それをそのままナカコーさんからの影響でやったらあまり意味もないと思ってて。あくまでセルフ・プロデュースでやる上での助言というか、アドヴァイザー的な存在として考えてました。あんまりそこに頼っちゃうと、自分たちでやる意味がなくなってしまうから。でもまぁ、ぶっちゃけ、録り終わった後にいっかい聴いてもらって、「大丈夫ですかね?」って相談はさせてもらいましたけど(笑)。

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まぁ、タナソーっていうか、そのへんのメディアの人たちやリスナーも含むすべてに対して。でも、そういうネガティヴな感情もつねに持っていたいというか、それがなきゃダメなんですよね。

あらためて、この『We Love Telephones!!!』をどういう作品にしたいと思ってたのかについて、メンバー全員に訊いていきたいんですけど。

岡本(SYNTHESIZER/COWBELL/CHORUS):まず最初に石毛が曲を持ってきて、それをスタジオで流してっていう作業をこの5年間ずっとやってきた中で、今回はこれまで以上にとにかく曲がいいなっていう印象があって。だから、今まで結構作品ごとにコンセプトがガチガチにあったんですけど、今回は自由に、いい曲はいい曲でどんどん入れていくみたいな感覚でみんなで作っていった感覚ですね。

松本(DRUMS):もちろんそれぞれの曲にはテーマとかもあるんですけど、それを前面に出していくんじゃなくて、まず音楽として楽しくやれたらなって思ったんで。自分たちのスタイルで演奏していったら、それは自然に自分たちだけの音楽になっていくんだなって。それは、作っててそう思ったというより、作品が完成してみて気づかされたことですけど。

前作の『DANCE FLOOR MONSTERS』はリスナーが求めているところに思いっきり直球を投げた作品だと思うんですけど、そういう意味では、今回は思いっきり自分たちのやりたいものをやりきったってこと?

岡本:そうですね。自分たちがもともともっていたいろんな音楽的な要素を、ただ好きなように表現するっていう、なんだか簡易な話になっちゃいますけど、そういうことだと思うんです。やってみたい音楽っていうのは本当にたくさんあって、たしかに『DANCE FLOOR MONSTERS』みたいなアッパーで単純に踊れるロックっていう部分も僕らのなかにあったものだけど、今作みたいにいろんなサウンドやメロディが混在している方が、より自分たちらしい作品って言えるんじゃないかと思います。

長島(BASS/CHORUS):たぶん、『DANCE FLOOR MONSTERS』のツアーをやってたときに、「ここでもっとこういう曲があったら良かったのにね」っていうことを石毛が言っていて、もしかしたら今作はその欠けたピースを埋めていくものっていうか、いままでライヴやってきてもっとこういうのもやりたいっていう思いが、今回の楽曲たちが繋がったんじゃないかなって思います。だから、今回はプレイしてて楽しい曲が多いし、いい意味で力を抜いてできたんですね。作っていく作業の段階から。みんな楽曲がすごく気に入ってたら、逆にすげぇ気合い入れて作らなきゃっていうよりかは、「おぉー! この曲いいね!」っていう感じで、みんなでワイワイやってるうちにできていったような感じです。

これまでとは違ったタイプの曲が生まれてきた、その背景にあったのはどういう思いだったんですか?

石毛:さっき宇野さんが言った通り、『DANCE FLOOR MONSTERS』は求められている場所に思いっきりボールを投げた作品だったので、次も勢いだけで作ったら完全にこのバンドは終わるなぁって思ってたんですよ。じゃあ、もともとこのバンドでやりたかったことって何だったんだ?ってことに立ち返った作品をこのセカンドでやろうと思って。具体的には、the telephonesってインチキディスコって自分たちで言ってきたバンドだけど、ちょっとずつ、もうちょっと濃いダンス・ミュージックの要素も入れていこうかなって。でも、同時にポップであること、勢いのあることっていのもthe telephonesの音楽の重要な部分だから、そこに関してはギリギリのところまで詰めていきましたけど。作品を作っていくなかで、迷いがどんどん消えていった感覚がありましたね。

インディーズ時代のアルバム『JAPAN』は、当時のニュー・レイヴをはじめとする同時代の洋楽とリンクするようなサウンドを無邪気に出していた作品で、『DANCE FLOOR MONSTERS』はメジャーというステージで自分たちがそのタイミングで切れる最も有効なカードを切った作品だったと思うんですけど。

石毛:そうですね。だから、今回は『JAPAN』を作ってた頃の衝動に近いものがあったんですけど、当然、あの頃よりも洗練されてるし、当時は知らないことが多すぎたから。単純に、いま考えるともっと合理的にできるだろってことを悪戦苦闘しながらやったっていう、そういう楽しさが当時はあったんですけど。今回はその頃の無邪気な気持ちのまま、格段にクオリティが上がったものを作れたかなって。それと、あの頃と違って、いまはもう洋楽との同時代性っていうのは、僕はもうぶっちゃけ全然気にしてなくて。というのも、いまは日本でも、自分のまわりにものすごくカッコいいバンドが増えてきて、洋楽に対して変な劣等感を感じなくなってるっていうか。いまの日本の20代でバンドをやってる連中のなかにも、こんなカルチャーがあるんだよっていうのをちゃんと示したほうがカッコイイんじゃないかって思って。迷いが消えたっていうのはそこかもしれないですね。ほんとに胸を張って「日本のバンドです!」って言えるようになった気がする。

なるほど。それといま、同時代性って言えるほどの音楽性だけでくくれるシーンみたいなものって、海外のロックバンドのなかにもないですよね。いいバンドって、もう、個々がそれぞれ勝手にオリジナルなことをやってるっていう状況で。それはイギリスに限らず、ブルックリン周辺のバンドもそうだし。精神性で繋がってる部分はあるのかもしれないけど。

石毛:うんうん。それはほんとにそうだなぁと思って。だから、要はいわゆるニュー・レイヴとかディスコ・パンクっていう流れのなかでやってた僕らが、それが終わったなかで何をやるのかっていうのがすごく大事なことだと思ってたんだけど、そこで開き直ってみたら意外にいい作品ができなって思って。開き直ったっていうのが、いちばん気持ち的にでかいですね。もうパクらなくていいやっていう(笑)。

でも、かつてthe telephonesにニュー・レイヴやディスコ・パンクってレッテルが貼られたことは、the telephonesの音楽に対していちぶのリスナーにいろんな先入観を与えることにもなったけど、逆にそこをうまく利用してきたって部分もありますよね。

石毛:うん。それはもちろん自覚してますし、否定するつもりはないです。みんなで蛍光カラーのパーカーを着たりしてね(笑)。

自分が初めてthe telephonesのライヴを見たのは2年前の2008年でしたけど、そのときに印象的だったのは、他の日本のギター・ロックのバンドのライヴに集まってるオーディエンスとは、全然違うオーディエンスの層をつかんでるんだなってことで。ちゃんと新しい現場を作ってることを実感したんですね。

石毛:いわゆるTシャツとデニムでタオルを首に巻いてるようなロック・キッズ以外の人が、ライヴハウスにたくさんいたっていうことですよね?

そうそう。かわいくてオシャレな子がライヴハウスにいる! っていう(笑)。

石毛:2008年はそういうムーヴメントを小さいながらも作れて、すごく駆け上がっていった実感を持てた年でしたね。普段は全然音楽を聴かないような若い子達に、そういう文化を少しでも伝えられたっていう実感があった。でも、そんなのはすぐ終わるとも思ったんで。次はどうしようってことばかり考えてましたね。

そして、メジャーに行くという選択をしたわけですよね。

石毛:うん。そこでとりあえずファッションとしてのニュー・レイヴは捨てようと思って、みんな思い思いの格好をしはじめたんですよね。僕はヒッピー崩れみたいな格好をして髪が伸ばしっぱなしになって、ノブちゃん(岡本)はゲイみたくなって、(長島)涼平は可愛くなって、(松本)誠治くんはラーメン屋みたいになった(笑)。

一同:あははははは!

石毛:ファッションに縛られるバンドじゃマズイだろっていうのと同時に、メジャーシーンでこのまま何年やれるのかっていう不安と期待があって。せっかくだからそこでシーンをひっかきまわすと同時に、ムーヴメントを作れたらいいなって思って。日本独自のシーンっていうのをすごく意識するようになりましたね。その前後に、KINGSというイベントも軌道に乗るようになって。

興味深いのは、the telephonesを遠目で見ていたような人たちにとっては、「ロックで踊る」っていう〈KINGS〉ってイヴェントのコンセプトって、ニュー・レイヴやディスコ・パンクの延長として見られてた感が強いけど、いっしょに〈KINGS〉をやっているTHE BAWDIESも言ってましたけど、実はそこには90年代末の〈AIR JAM〉がひとつの理想形にあるんですよね。

石毛:うん。時代が時代なら、それこそ〈AIR JAM〉にいたようなキッズたちを、いまの僕たちは巻き込んでるのかもしれないですしね。僕らのライヴでダイヴとかモッシュが多いのも、きっとその時代の名残だと思うし。でも、自分としてはやっぱり、もっとライヴハウスとクラブの現場が――ここでいう現場っていうのはロック系パーティのことだったりするんですけど――混ざって欲しいって思うんですよね。だから、自分も大きなロックフェスとかに出たときに、ステージから「現場に行け!」って言うんですよ。まるで、ワールドカップのデンマーク戦に勝った後の長谷部みたいに(笑)。

「Jリーグにも足を運んでください!」みたいな?(笑)

石毛:まぁ、そこまではカッコよくないかもしれないけど(笑)、言わなくてもいいのにどうしても言ってしまう。それは、もっと音楽を自由に楽しめる現場を作りたいからなんですよね。〈AIR JAM〉の世代の人たちがモッシュとダイブというのを文化として定着させたわけですけど、僕らの世代はそういう立ノリじゃなくてもっと横ノリの、踊るっていう文化をロックのオーディエンスに広げられないかなって。そうしたら、時代と時代が分断して横軸しかないような日本のロックシーンにも、ちゃんと縦軸のようなものができるのかなって思ってて。

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たとえば僕は高校を途中で辞めて死ぬほど退屈だったんですけど、唯一音楽だけはほんとに好きだったからライヴハウスで働き続けて、なんとかここまで生きてきたっていう、本当に音楽に救われたっていう実感を持ってるんですけど。

たとえば、これはele-kingだから敢えて訊きますけど、the telephonesが歌ってるダンスフロアと、ele-kingの読者がイメージするダンスフロアっていうのは、違うものじゃないですか。

石毛:たぶん、真逆ですね。

それによって偏見を持たれるのは不本意なことだったりします?

石毛:うーん......。でも、どっちの現場も健全だし、そんなに違うとは思わないんですよね。ドラッグもないし。だから、どっちもあってよくて、それが混ざるのが一番いいと思うんですけど......なかなか水と油だから、どうなんでしょうね。その架け橋的なバンドになればいいなぁとは常々思ってるんですけど。

今作『We Love Telephones!!!』はいきなり「I Hate DISCOOOOOOO!!!」という怒りを表明した曲で始まるわけですが。この怒りの矛先はいまの音楽シーンに対して? それとも、社会全体に対して?

石毛:全部ですね。たまにすべてのものが嫌いになることあるんですけど、「I Hate DISCOOOOOOO!!!」の"僕を打ちのめしたとこで何の意味がある?""自分じゃできないくせに"というラインは、完全に田中宗一郎に言ってます(笑)。

(笑)。

石毛:まぁ、タナソーっていうか、そのへんのメディアの人たちやリスナーも含むすべてに対して。でも、そういうネガティヴな感情もつねに持っていたいというか、それがなきゃダメなんですよね。すごく充実して幸せを手に入れると不安になっちゃって、これは全部嘘なんじゃないかと思うような人間なんで。

いろんな批判もあるんだろうけど、言ってみればthe telephonesって、最初から隙だらけのバンドだと思うんですよ。

石毛:そうそう。ツッコミどころがいっぱいある。こんなに隙だらけなんだから、打ちのめしたところで何の得もないよって言いたい(笑)。

打ちのめされても、ヘラヘラ笑いながらまた立ち上がってくるような、そういうタフさを持っているバンドだと思うんですけどね。だから標的になりやすいのかな?

石毛:そうですね。そういう部分はタフになったような気がしますね。

もともとthe telephonesはメディア主導ではなく、現場から火のついたバンドだっていう、そこの自負もあるんじゃないですか?

石毛:それもありますけど、現場から生まれた僕らも、結局はメディア主導のフェスにのっかってるっていう現状もありますからね。それは僕らだけじゃなくて、他のバンドもそうですけど。別にそれが悪いって言いたいわけじゃないけど、もっと〈AIR JAM〉がやったみたいに、自分たちだけで磁場を作れるんじゃないかって思いはあるんですよね。せっかくここまで状況を作ってきたんだから、ついてきてくれるオーディエンスもいるんじゃないかって。そろそろ何かを仕掛けていかなくちゃなって。20代のうちになにかデカいことをやりたいなって思ってます。

そういうthe telephonesの持ってるカウンター意識って、あまりファンのあいだにも伝わってないような気もするんですけど。

石毛:表現の根本には、いつもラヴがありますからね。すごく理想主義的な部分が大きいから。僕たちって尖ろうとしても、結局は4人の人間性に部分で、どうしてもラヴとかピースな感じになるんですよ。

今作『We Love Telephones!!!』も、曲によっては"HATE"とか"DIE"とかっていうネガティブなフレーズも耳に残りますけど、基本的にはすごくラヴとピースな作品ですよね。

石毛:そうです。基本的にthe telephonesのテーマは愛と自由だと自分は思ってます。

愛と自由をこの2010年の日本で歌う意味は、どこにあると思います?

石毛:いま、バンドであんまり愛を歌うバンドっていないと思うんですよね。個人的な内面の葛藤とか、そんなのばかりが幅を利かせていて。自分もそんなにすげぇ考え込んだ上で、「愛と自由」だって思ってるわけじゃないから、ちょっと答えづらいんですけど......やっぱり、まだバンド・シーンは終わってないっていう希望の火をつけたかったっていうのがあって。これから音楽をプレイする若い子にも、音楽でもメシは食えるよっていうのを伝えたいのがある。いまってなんとなく、日本の音楽シーン全体が、メインストリームもアンダーグランドも、どんどんコアなものになっている気がするんですよね。

CDを買うという行為そのものが、マニアックな行為になってきてますからね。

石毛:でも、そんな時代でも普通の人がバンドをやってもいいんだよ、選ばれた人しか音楽をやっちゃいけないわけじゃなくて、普通の人間でもバンドはできるんだよっていうのを証明するバンドになりたいんですよ。それが結局は、愛と自由に繋がってるんじゃないかな。だから、いまの世界が退屈で死んじゃうよっていうような人たちに自分たちの音楽を届けたい。この気持ちが正確に届くかどうかわかんないですけど、たとえば僕は高校を途中で辞めて死ぬほど退屈だったんですけど、唯一音楽だけはほんとに好きだったからライヴハウスで働き続けて、なんとかここまで生きてきたっていう、本当に音楽に救われたっていう実感を持ってるんですけど。だからいま、学校も仕事も行かずに時間を持て余してるスーパーニートみたいな人がいたら、別に僕らの音楽じゃなくてもいいんだけど、誰かの音楽を聴いてそれに救われるような体験をしてくれればいいなって。まぁ、それが自分たちの音楽だったらいちばん嬉しいんだけど。

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だからね、ele-kingを読んでるような音楽をすごくよく知ってるような人たちに、「やっぱthe telephonesってクソだね」って言わせちゃうくらいの、そういうバンドになっていきたいですね。それでも、「あの曲はいいよね」みたいな。

いまのtelephonesの現場には、ニートっぽい子はたくさんいる?

石毛:いや、全然いない。リア充ばっかだと思う。2ちゃんねるのスレッドとかも大して書き込みもないし(笑)。だからもうちょっと腐ってる奴らがいてもいいなって思うんですけど、逆に言うと、もう腐ってる奴らが聴きたいとは思わない音楽になっちゃったのかもしれないですね。それはたぶん、これまでの僕らのやり方があざとすぎたのかもしれない。でも、そのへんの連中に嫌われてもいっかいちゃんと上に行く必要があったと思うし、まだまだ上に行きたいところはあるんで。それが一段落したら、もういちどそこらへんにいる人たちに問いかけたいって気持ちは強いですね。

自分で自分のことを「あざとかった」って言うのはそれだけ客観視できてるってことだと思いますけど、あざとさっていうのは、どこかでツケを払う必要があると思うんですよ。そういう意味で、今回の作品はそのツケを払ったような、丸裸の作品になってるのかもしれないですね。

石毛:なってるのかな? 基本的にはツケを払ったつもりではいるんだけど、もっといいツケの払い方もあると思うんですよね。これまで誤解させたきたところをどうやって解いていくか、それは難しいことなんですよね。でも、バンドが上に行くにはそういうこともしなきゃいけない。音楽がカッコよければ売れるっていう時代はやっぱり終わったと思うんで、自分たちがいいと思う音楽をどうやって広げていくか、あらゆる手段を講じるしかないと思うんですよ。で、そういうことに対して自分は積極的な人間だから、何でもやっていこうと思ってます、いまは。それが度を超えると、精神的にはつらくなったりもするんですけど。

それは、別にこれまでのリスナーを裏切ってきたとか、裏で舌を出していたとか、そういうことじゃなくて、自分たちの音楽を限定した形でしか伝えてこなかったことに対するしんどさですよね?

石毛:そうですね......あぁ、そうかもしれない。うん、そうですよ! そうだわ!

一同:あはははははは!!

石毛:そういう意味で、今回の作品でようやく解放されたのかもしれない。いや、完全に腑に落ちたました(笑)。だからね、ele-kingを読んでるような音楽をすごくよく知ってるような人たちに、「やっぱthe telephonesってクソだね」って言わせちゃうくらいの、そういうバンドになっていきたいですね。それでも、「あの曲はいいよね」みたいな。たぶん、全曲好きになるのは難しいだろうけど、「the telephonesクソだけど、この曲だけはいいよね」っていう、それぐらいの耳のあるリスナーといっしょに走っていきたいですね。つねに時代と同期しながら新しいことをやっていきたいし、なるべくならその最先端を走りたい。基本的に人を引っ張ることは嫌いだけど、いまは引っ張ってもいいよって気分、なんでも背負ってもいいよって気分なんで。いろいろ背負うかわりに、先を走らせてくれっていう感じですね(笑)。

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Christopher Willits - ele-king

 サン・フランシスコのエレクトロニカ系によるソロ4作目。この10年でグリッチ・エレクトロニカが積み上げてきた蓄積をすべて食い尽くすかのようにポップのクリシェと絡み合い、なかばシューゲイザーと化した曲まで展開した前作『サーフ・バウンダリーズ』(06)と同路線、同じレーベル、さらには同じようにヒドいアートワークでやってくれました。「トラが花のような円をつくっている太陽」というタイトルからして大バカです。たしかに最近の太陽はそんな感じだし、カリフォルニアの科学者たちはいま、地球規模の空気清浄機をつくって(キューティー・ハニーが空中窒素固定装置で大活躍したように)大気中のCO2をエネルギー源に変えて大儲けを企んでいるという流れには合っているかもしれないけれど......。とはいえ、エレクトロニカの10年に対してそれなりに答えを出したといえるフェン・オバーグとはあまりにも対照的で、練り上げられたものはまったくなく、テクノに対するエレクトロクラッシュのようなものになっていることはたしか。にもかかわらず、このようななし崩しともいえるどうしようもなさに惹かれてしまう自分もいて......やはりポップへの意志がアカデミックに勝るということなのか、エレクトロニカから憂鬱の側面だけを抽出したゴルドムントやシルヴァン・ショボーよりはぜんぜん消費意欲を掻き立てられる。

 あくまでも神経質を気取ってきたエレクトロニカに対して、その部分ではすっかり開放されて、感情的にはとても豊か。ネオン・インディアンやエメラルズなどジャンルとは無関係に進行するバリアリック傾向にも同調し、それは前作よりもさらに拍車がかかっている。試行錯誤の形跡も消えつつあり、「トラが花のような円をつくっている太陽」というイメージがはっきりしているからか(笑)、全体に迷いもなくなっている(トロピカル・パーカッションにロバート・フリップがヘタくそなギターを浴びせているような"プラント・ボディ"などはポップへの意志が勝利した瞬間のようにさえ思えてしまう)。"ザ・ハート・コネクツ・トゥ・ザ・ヘッド"や"フラワーズ・イントゥー・スターダスト"などアンビエントにもいい曲が多い。

 ちなみにキッド606やザック・ヒルと組んだフレッシン名義の『リード・シンガー』を録音したことが変化のきっかけだったはずで、それ以降、アンビエント・ドローンにのめり込んでいったキッド606とは転移の関係にあるとしか思えない。お互いがお互いの欲望を交換し合い、人生を通して相手の欲求を満たすようになる--こういうことが起きるから人間は面白い。

M.I.A. - ele-king

リリース前から『マヤ』というよりもM.I.A.がスキャンダルの渦に巻き込まれている。ことアメリカの音楽メディアでは、『ザ・ニューヨーク・タイムズ』の女性週刊誌風のエグイ記事――テロリストの父はいなかった説、高級ホテルでの豪華な食事もしくはディプロ発言の「彼女は政治的ではなくギャングスタ好きなだけだった」等々――を引き金に、マヤ・アルプラガサムの政治的矛盾や経歴の不透明さを突いたちょっとしたネガティヴ・キャンペーンがおきている。デビュー当時はいちぶの批評家からポリティカル・ポップの旗手として期待され、彼女のほうでもそうした評価をとくに否定してこなかったことを思えば、ある意味仕方がないのかもしれない、が......そしてまた、彼女の気まぐれに見える攻撃性(たとえばネットで流した"ボーン・フリー"の暴力的な映像)と喧嘩っ早さ(たとえば『ザ・ニューヨーク・タイムズ』の女性記者への攻撃)もまた、今回のスキャンダルに拍車をかけているのも事実だ。しかし、残念なのは、そうした喧噪のなかから『マヤ』の音が聴こえてこないことである。

そんな孤独のなかで彼女がやらなければならなかったのは、深く瞑想し、その助走でもって高く飛び上がることだった。文:磯部 涼



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 この8月でHMV渋谷店が閉店するというニュースを聞き、何とも言えない気持ちを抱えて訪れた同店で、ワゴン・セールの山の横に、同日にリリースされた七尾旅人の『Billon Voices』とM.I.A.の『マヤ』がディスプレイされていたのは、とても皮肉な光景のように思えた。消え行くリアル・ショップに、Youtubeを模したデザインのパッケージ達が並んでいる。両者のアートワークが似通っているのはまったくの偶然だが、同時に必然でもあるだろう。それはもちろん、いま、ポップ・ミュージックというものに真剣に向き合うのならば、インターネットというものに向き合わざるを得ないからだ。そして、それぞれがそこから導き出している答えのズレこそが、現在のリアリティなのだ。

"10億の声"と題された前者には、何処かオプティミスティックなムードが漂っている。アルバムは、真夜中にネット・サーフィンをしている少年を語り部に、ライヴ・ストリーミング・サイトでロック・スターを気取るサラリーマンが主人公の"I Wanna Be a Rock Star"ではじまる。そこから、前半は世界中に散らばる無数の"声"の主達を紹介していくのだが、七尾の自宅での弾き語り"なんだかいい予感がするよ"を境として、後半は踵を返すように内面へと向かう。ただし、妻にあてたラヴ・ソングで、昨年にスマッシュ・ヒットした"Rollin' Rollin'"が象徴するように、そこに閉塞感はない。そして、アルバムは希望を確信する"私の赤ちゃん"で幕を閉じる。同作のケースは額縁の形をしていて、ジャケットが入れ替えられる仕様になっているのだけれど、その中の一枚である、ネットから拾った様々な画像をコラージュしたデザインの裏は銀色で、覗き込んだリスナーの顔が写る仕掛けだ。

 七尾旅人は99年、日本の音楽産業のピークに18歳でメジャー・デビューし、圧倒的な才能を持っていたのにも関わらず、アンチ・コマーシャルだったがために、業界が衰退に向かうや否や、リストラに合った。その後、彼のキャリアが復調したのは、見よう見真似で自ら立ち上げたホームページで、散り散りになっていたファンたちと直接、交流を始めたことがきっかけだったという。そんな、音楽産業に対して誰よりも複雑な愛憎を持ち合わせている彼が、消え行くフィジカル・リリースに捧げた、初の自主制作3枚組アルバム『911FANTASIA』に続いて、配信システム、DIY STARSの立ち上げとともにリリースした本作に託した熱い思いは、説明するまでもないだろう。

 いっぽう、アスキー・アートでアーティスト・ネームを綴った後者は、非常にストレスフルな内容である。自身で手掛けるジャケット・デザインは何処か、KID606の初期作を思わせる。ミゲル・トロスト・デイペドロが先導したブレイクコアは、ネットから生まれた音楽的なムーヴメントの草分けで、ハッキングやP2P等とも同時代性を持っていた。テロリズムというモチーフに固執するM.I.A.がネットをテーマにすればそこに近づくのは当然である。ただし、00年代初頭にはまだまだ開拓地だったネットという空間は、今やすっかりインフラストラクチャーと化している。M.I.A.は本作の制作過程において、スタジオでYoutubeをひたすら観ることでインスパイアされ、ダウンロードしたサンプリング・ソースでビートを組み上げて行ったという。当然、それは目新しいことではなく、現代のクリエイターにとって、オン・ラインでのディグは中古レコード店やフリー・マーケットを回るよりも、よっぽど日常的な行為となっている。しかし、M.I.A.は『マヤ』において、ネットをブレイクコアのように武器と捉えたり、21センチュリー・B・ボーイのようにキックスと捉えたりするいっぽうで、何処か違和感も覚えているようだ。「デジタルまみれの世界のなかで大きくなった("Meds and Feds")」マータンギル・マヤ・アルルピラガーサムによるこのアルバムは、「iPhoneのTwitBirdから、いつも話しかけてくる("XXXO")」あなたに会いたくて仕方がないというラヴ・コールではじまり、しかし、「電波は圏外、つながらない("Space")」という嘆きで終わっていく。

 いま、M.I.A.は、シングル"Galang"でのデビューから7年、3枚目となるフル・アルバム『マヤ』で、初めての苦戦を強いられている。チャート・アクションの出だしはまずまずだが、とにかく批評家や熱心なファンからの受けが悪い。4月末に先行してネット上で公開された、"Born Free"のMVがあまりに直接的な残虐描写でYoutubeから即削除、賛否両論を呼んだのは、監督にわざわざジェスティスの"Stress"で悪名高いロメイン・ガヴラスを起用したのだから、それこそオン・ライン・テロリスト気取りの戦略だったのだろう。それに対して、「ニューヨーク・タイムズ」誌は、5月25日付け、リン・ハーシュバーグによるルポルタージュで、旧来のメディアから、生意気な新参者に対する報復をおこなった。とくに、ディプロの発言を引用する形でもって、"M.I.A.=Missing In Action"というアーティスト名の由来であり、捜索届けのようにファースト・アルバムのタイトルにもその名を掲げられた、彼女曰くスリランカのテロ組織"タミル・イーラム解放のトラ(LTTE)"のメンバーで、現地で行方知れずになっている父親ーー彼が、実はスリランカ政府の役人で、現在はロンドン在住、彼女とも普通に連絡を取っているということが暴露されたのは痛かった。もちろん、M.I.A.はすぐさまTwitterや自身のHPを使って反論、『NYT』誌を糾弾したわけだが、彼女自身も父親の素性は明かそうとしていないし、真偽はともかくとして、M.I.A.というキャラクターが色眼鏡を通して見られるようになってしまったのは間違いない。同記事は、言わば、ここまで登り調子でやってきたM.I.A.に対するバックラッシュのトリガーとなったのだ。

 いや、ギャングスタを気取っていたのに、実は看守であったことをバラされて味噌をつけた、強面のラッパー、リック・ロスが語るボースティングとは違って、例えマヤが、ディプロの言うように、テロのモチーフをコラージュして危険性を演出してみせるアートスクール出身の女の子だったとしても、彼女がこれまで"M.I.A."というコンセプトを通して訴えてきたメッセージの価値が失われるわけではない。たしかに、ハーシュバーグの主張する通り、彼女の政治認識は甘いかもしれない。実際、LTTEによる内戦は今年、ようやく終焉に向かったわけだが、彼らはこの4半世紀のあいだに、大量の一般市民を虐殺してきたにも関わらず、それをさも英雄のように扱った罪は重いだろう。しかし、M.I.A.は政治家でも運動家でも、ましてや新聞記者でもなく、ミュージシャンなのだ。問われるのは知識の精度ではなく、サウンドの強度である。その点で、セカンド・アルバム『カラ』は00年代におけるグローバリゼーションとローカリゼーションの鬩ぎ合いを誰よりも見事に描いた傑作であった。ただ、それに続く、今回のアルバムが弱かったのは、「そんな作品を売って、自分だけ成り上がるなんて搾取ではないか」という、事前に簡単に予想出来たはずの、ありがちと言えばありがちな指摘である、「NYT」誌の記事に対する反論の準備が出来ていなかったところだ。

 『カラ』の開放性は、レコーディングを予定していたアメリカのビザが下りなかったため、世界中を周って制作したが故に生まれたものだったが、反対に『マヤ』の密室性は、オーヴァー・ステイのせいでアメリカからの出国が許されなかったため、LAのスタジオに籠って制作したが故に生まれたものである。M.I.A.は、密室の中で、大きな成功を収めた前作を越えなければというかつてないプレッシャーに苛まれていたはずだ。目の前にあるノート・ブックの向こうに広がる無限のネット空間は、ヒントを与えてくれる賢者と、足を引っ張って来るヘイターが姿を隠した真夜中のジャングルに見えたことだろう。それは、母親の名前を掲げた前作が描き出した、世界のポジティヴな側面とは対照的な象徴性だった。そして、そんな暗闇のなかでは、自己に向き合わざるを得ない。だからこそ、彼女は、本作に自身の名前を刻み込んだのだ。本来なら、そんな孤独の中で彼女がやらなければならなかったのは、深く瞑想し、その助走でもって高く飛び上がることだった。それでこそ、この世界の至るところで同じようにノート・ブックを覗き込んでいる人びとの心を掴むことができるし、アートとしても、エンターテイメントとしても前作が越えられたはずである。しかし、その暗闇の前で、M.I.A.の足はすくんでしまったのかもしれない。アルバムでは、"Lovalot"と"Born Free"の、アグレッシヴなトラックに乗った、ハードなアジテーションとナイーヴな心情吐露が入り混じったリリックの組み合わせが、その試みを比較的上手く実現出来ていると言っていい。ただ、それでも『カラ』の"20 Dollar"や"The Turn"が持っていた複雑さには適わない。また、他愛ないセクシャルなパーティ・チューン"TEQKILLA"や、『NME』誌7月号でレディ・ガガに吐いた唾を呑み込むようなエレクトロ・ポップ"XXXO"も、やはり、前作にも収められていたロリポップ・ソング"Boys"や"Jimmy"のような絶妙な効果は発揮していない。

 そして、何よりも足を引っ張っているのが元ボーイ・フレンドにして、つねに盟友であり続けたディプロで、彼が手掛けた2曲ーー炭酸の抜けきったビールみたいなラヴァーズ・レゲエ"It Takes a Muscle"と、前作が生んだ最大のヒット"Paper Planes"の明らかな二番煎じである"Tell Me Why"は、これがあの才人の仕事かと耳を疑うようなどうしようもなさだ。ディプロはTwitterで本作のネガティヴ・キャンペーンを繰り広げており、曰く「オレの曲はスラミン。残りはまるでスキニー・パッピーで、悪夢みたいだ」そうだが、まさか本気で言っているわけではないだろう。あるいは、M.I.A.の夫でワーナーの御曹司、ベン・ボロフマンの反対に合い、プロデューサー陣のなかでたったひとりだけ別スタジオでの作業になったことへの当てつけで、わざと手を抜いたのだろうか。そんなゴシップめいた推測をしたくなるほど、本作は音楽的魅力に乏しい。要となるはずだったダブ・ステップのトラックメーカー、ラスコは健闘しているものの、前作におけるスゥイッチの革新的なプロデュース・ワークをなぞるのがやっとである。

 もちろん、『Billon Voices』と『マヤ』を対等に比較するのは可笑しいし、後者は、前者の何百倍もの売り上げをすでに達成している。しかし、それぞれのディスコグラフィーで見た場合、前者がターニング・ポイントとなったのに対して、後者が傑作『カラ』を越えることも、また、それとは別の道を切り開くことも出来なかったのは明らかだし、インターネットというテーマで聴くと、その混沌に呑み込まれたような後者の失敗の仕方は、2010年のメジャーな音楽産業を象徴しているように思えてならないのだ。ちなみに、『マヤ』の日本盤ボーナス・トラックの1曲である、その名も"Internet Connection"と題された、まったくもってつまらない楽曲は、ディスコミュケーションにこんがらがった以下のようなヴァースで終わっていく。ーー「問題はあたしの情報/だからやすやすと、知らない人には渡さない/あなたには、あたしのことは解らない/あなたは知らない、あたしのやり方を/"何か不具合を起こしたの"と、あたしが訊けば/"ネット接続がおかしいんだ"と、あなたは答える/昨晩もあたしはクラッシュ/アタマの外をぐるぐる廻っていた」

文:磯部 涼

»Next 三田 格

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彼女は初めて90年代後半にイギリスで起きたアジア系の暴動のサウンドトラック・アルバムをつくったのだろう 文:三田 格



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 90年代の後半、『NME』を広げると毎週のようにイギリスのどこかでアジア系の暴動が起きていた。その数はいつもとんでもなく、場所も各地に広がっていた。それらは本当に大規模で、どうして05年にフランスで起きた暴動のように日本では報道されないのかぜんぜんわからなかった。記事に関連してシーラ・シャンドラやモノクローム・セットのビッドなど、いわゆるインド・パキスタン系のコメントを探してみたものの、英語力の問題なのか、見つかったためしはなく、タイミングよく訳されていたハニフ・クレイシの小説を読むことで、なんとなく彼らの不満を理解した気にはなっていた。でも、できればアンジャリやコーナーショップ、あるいはベティ・ブーやティム・シムノンの言葉で何が起きているかを知りたかったというのが本当のところではある。70年代にナショナル・フロントが台頭していたときにはスペシャルズやファン・ボーイ・スリーを結成したテリー・ホールが暴動が起きてからすぐにファン-ダ-メンタルのムシュタクと『ジ・アワー・オブ・トゥー・ライツ』をリリースしたときは(内容はともかく)なんて一貫してるんだと感心したもよく覚えている。

 M.I.A.は暴動のサウンドトラックではなかった。それらはイラスティカやエイジアン・ダブ・ファウンデイションが担っていたことで、その当時、前者のヴィデオ・クルーだったM.I.A.は「平和のために戦う」とか「国家を罵ってやる」といった歌詞をどちらかといえば楽しいダンス・ミュージックにのせて歌い出した。デビュー・アルバム『アルラー』の冒頭を飾る"バナナ・シット"などは何度聴いても笑い転げてしまう。彼女のあっけらかんとした感性は、いってみれば暴動が収束に向かったことを象徴していたとさえいえる。ちなみに彼女に活動資金を与えたのはジョン・ローンだった。両親が誰だかわからず、自分が何系のアメリカ人だかもわからないハリウッド・スターの。
 
 「わたしはアメリカを否定しない。先進国と途上国の情報量が同じぐらいになればいいとは思うけど」
 世界中を旅して回って......つまり、サウス・ロンドンを抜け出して制作されたセカンド・アルバム『カラ』について取材した際、彼女はそういって、なるほどそれからすぐにブルックリンに移住したこともニュースになった。彼女が音楽をはじめた動機はよく知られているようにインド首相を暗殺したタミール・タイガーの幹部である父(アルラー)を探すためで、イギリスで起きていたアジア系の暴動が直接の背景にあったわけではない。『アルラー』はなぜかカナダではナショナル・チャートの1位となるほど売れて、父からも連絡があり、彼女の目的は果たされたといえる。普通に考えれば彼女は目的を見失ったはずである。世界を旅して回る......という方法論はおそらくはディプロのマネで、途上国のニュース・センターになろうとした『カラ』のコンセプトはどれほど彼女の奥深くから発していることなのか、多少は疑問もある。いちばんいいと思った"バード・フルー"のプロダクションが彼女自身によるものだったので、音楽家としてのM.I.A.にはむしろ期待値が高まった面もあるものの。
 
 ブルックリンではなく、なぜか(母の住む?)L.A.で集中的に録音された『マヤ』は全体的に荒廃したムードに覆われ、サウス・ロンドンに対する郷愁が強く窺われる。自分の名前をタイトルにしているぐらいで、アイデンティティと向き合わざるを得なかったことはたしかで、クラフトワークのアルバムのなかでもっともヨーロッパ的な感性が強く滲み出た『トランス・ヨーロッパ・イクスプレス』だけがアメリカで録音されたものであったように、彼女は初めて90年代後半にイギリスで起きたアジア系の暴動のサウンドトラック・アルバムをつくったのだろうと僕は思う。"テックキラ"という曲がレコード・ショップで流れはじめたとき、僕は「これなんですか? これ下さい」といって手渡されたものがこのアルバムだった。もう少し待っていれば彼女の声が聴こえただろうに、そのときは一刻も早くその曲の正体が知りたかった。家に帰って通して聴いてみると、今度は内省的な曲調が耳には残った。正直、"バッキー・ダン・ガン"に横溢していた彼女のあっけらかんとした感性はとても懐かしい。しかし、彼女はいま、大人になろうとしているのである。たとえばマドンナだったら『ライク・ア・プレイヤー』がなければ『エロティカ』はなかったように、どんなミュージシャンであれ、豊かな感情を基本としている人ならば怒りや悲しみといった感情の育て方に僕はとても興味がある。その場所にアメリカを選んだことも含めて『マヤ』はとても興味深い"デビュー作"ではないだろうか。

文:三田 格

Lite - ele-king

 ポスト・ロック系のインストと聞くだけで、「あぁ、ああいう感じね......」と食傷気味に思う人も多いだろう。だが日本のLITEは、軽やかに......いや、どちらかというと泥まみれにジタバタながらネクストを提示しようとしている。

 LITEが結成されたのが2003年で最初のミニ・アルバムをリリースしたのが2005年。2005年当時といえば、彼らのようなインストゥルメンタル・バンドがやたらたくさんライヴハウスから出てきていた時期だ。ポスト・ロック(トータス系もモグワイ系もマス・ロック系も)も定着した頃にバンドをはじめた人たちの世代。その多くが、海外のあるバンドにそっくりだったり、雰囲気だけをなぞったようなものだったりするなかで、LITEをはじめいくつかのバンドには特別なものがあった。いまでも生き残ったバンドはそれぞれシーンを代表する存在となっている。

 当初は4つ打ちの人力トランス的な音楽をやっていたそうだが、ほどなく変拍子主体のプログレッシヴなハードコア・サウンドに移行。ポスト・ロックやマス・ロックといった動きとリンクしていく。ヨーロッパやアメリカにも積極的にツアーを行い、マイク・ワット(元ミニットメン/現イギー・ポップ&ザ・ストゥージズ)とゴー・チームのツチダ・カオリによるfunanoriとスプリット盤もリリースしている。2008年発表のセカンド・アルバム『Phantasia』は、そのマス・ロック的なサウンドの極限ともいえるアルバムで、恐ろしく緻密で複雑な楽曲を驚異的なテクニックとエモーショナルなテンションでプレイするさまは、笑ってしまうくらいに壮絶だった。

 2009年に自主レーベル〈I Want The Moon〉を設立し、元ジョウボックスのJ.ロビンスをエンジニアに迎えてレコーディングしたシングル「Turns Red EP」では、シンセサイザーを大胆に取り入れた、これまでの彼らとは違った、新しいサウンドを提示している。音も展開もギュウギュウに詰め込むようなやり方から一転、音数を減らし、変拍子とアンサンブルの妙味をユーモア混じりに聴かせるようになった。そのユニークな構造は、未来を感じさせるに充分だった。
 
 これは5曲入りの新作『Illuminate』だ。トータスのジョン・マッケンタイアを迎えて、シカゴのSOMA STUDIOでレコーディングとミックスを敢行している。シンセサイザーに加え、サンプラーやパーカッションも導入されていて、それらがアレンジのキモになっている。これが、「Turns Red EP」の方向性を発展させたものにはちがいないが、飛躍しすぎてよくわからないものになっていて、いちいち面白い。変拍子ならぬ"突拍子のない"複雑なリズムをひたすらユニゾンで演奏したかと思えば、やたらゴージャスで様式美なシンセのシンフォニックなフレーズをどアタマに配置したりする。

 メンバーの発言については7月31日発売の『indies issue』でのインタヴューを参照していただきたいが、『Illuminate』はLITEの過剰で変態的な部分が赤裸々に楽しめる作品である。キング・クリムゾンやイエスなどのプログレッシヴ・ロックからフュージョン、テクノやマス・ロックがLITEのもとに一本線で繋がったというか。いずれにせよ、今回のEPは、バンドが新しい方向性を追求するなかで生まれたスケッチだろう。これらが咀嚼されていくことでより具体的なイメージとなって、来るアルバムに組み込まれていくことを期待したい。

DJ CHIDA - ele-king

heavy play early summer 2010


1
The Backwoods - Midnight Run - Ene

2
Hungry Ghost - Illumination - International Feel

3
Idjut Boys - The Waterboard - Droid?

4
Mademoiselle Caro & Franck Garcia - Soldiers (The Revenge Dub) - Buzzin' Fly

5
Tiago - Rider(COS/MES remix) - ene

6
Coati Mundi - No More Blues(Lee Douglas Remix) - Rong Music

7
9dw - Calfornia EP - ene

8
Kaoru Inoue - The Invisible Eclipse - SEEDS AND GROUND

9
COS/MES - D.F.G. - ESP institute

10
Sam Sallon - Youu may not mean to hurt me (Begin Mix) - Fascinating Rhythms?

ackky (journal) - ele-king

Chart


1
Inner Science - Momentary Spread - Plain Music

2
9dw - Posse (the beat brokers california club mix) - Ene & Catune Records

3
Red Fulka - Kumpo (raihani & salgado mix) - Elevator People

4
Bubble Club - Violet morning moon (Remix by Dr dunks) - Bubble Clubmusic.Com

5
Dj Nature - A Win Lose and Dance - Golf Channel Records

6
Eddie C Presents - Sleazotica - Kolour LTD

7
Supernova - Sweet disco music - Soundscape

8
Body Shower - S-Glez - Body shower

9
Adam & Philipp Maier - OWN - Rockets & Poines

10
Hungry Ghost - Illuminations - Feel Records

Chart by Pigeon - ele-king

Shop Chart


1

B.F.

B.F. Escape / Indica Aldebaran [GER] / »COMMENT GET MUSIC

2

Dr.Dunks

Dr.Dunks Keep It Cheap / No P's Keep It Cheap [US] / »COMMENT GET MUSIC

3

Jill Scott

Jill Scott Ron Trent Remixes Spring [US] / »COMMENT GET MUSIC

4

Juana Molina

Juana Molina Un Dia (Reboot Remix) Domino [UK] / »COMMENT GET MUSIC

5

Magoo

Magoo Magoo E.P. Boogie Times [FRA] / »COMMENT GET MUSIC

6

Sam Sallon

Sam Sallon You May Not Mean To Hurt Me Fascinating Rhythms [UK] / »COMMENT GET MUSIC

7

Terence Fixmer

Terence Fixmer Comedy Of Menace Part.1 Electric Deluxe [GER] / »COMMENT GET MUSIC

8

J Dilla

J Dilla Donut Shop Stones Throw [US] / »COMMENT GET MUSIC

9

Unknown

Unknown Mountain 001 (Lexx Edit) / Mpuc001 Mountain People [GER] / »COMMENT GET MUSIC

10

V.A.

V.A. Little Leaf No.01 Little Leaf [UK] / »COMMENT GET MUSIC

YAMADAtheGIANT (LIVErary / Pureself / STTH) - ele-king

House Chart


1
Spectacle - Prism - Permanent Vacation

2
Olibusta - La Pazz - inFine

3
Tim Deluxe - Freedom - Skint

4
Tom Mangan - Mysterious Ex-Teacher - Souvenir

5
Kaoru Inoue - Ground Rhythm - Seeds and Ground

6
Martin Eyerer & Daniele Papini - Sublime - Blufin

7
Unknown - Hideaway - Barraput

8
Polar Geist - Home from the Can (Tensnake remix) - Bang Gang

9
Con Force - Black Stroke(Kink & Nevillle Watson Remix) - Modelisme

10
Pepita Project ft. Paris Brightledge - The Way We Were - Pepita Sound
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