「iLL」と一致するもの

Thomas Brinkmann - ele-king

 先日リリースされたアルバム『A 1000 Keys』はもうお聴きになりましたか? どうでしたか? 凄かったでしょう? ピアノという楽器をあんな風にミニマル~テクノの文脈に落とし込むことのできるアーティストを、僕は他に知りません。
 もはやベテランと言ってもいいトーマス・ブリンクマンですが、この冬、代官山のUNITにてライヴをおこないます。なんと5年ぶりの来日です。しかも、エクスペリメンタルなセットとフロア・オリエンテッドなセットの両方を披露してくれるそうです。となれば見逃すわけにはいかないでしょう。詳細は以下を。

interview with TOYOMU - ele-king


TOYOMU
ZEKKEI

トラフィック

DowntempoElectronic

Amazon

 ヴェイパーウェイヴは、レトロなコンピュータや日本語をデザイン要素としながら80年代のCM音楽やエレヴェーター音楽の遅いループそしてカセット・リリースによって資本主義ディストピアのムードを描いている。しかしその前にスクリューがあった。これは既存の曲をただ遅めに再生すると気持ち良く聴こえるという、じつに単純な、そして再生装置もひとつの楽器と認識するようになってからの、究極的なサンプリング・ミュージックと言える。だが、しかし、音楽は常にリサイクルされてきた。100年前のストラヴィンスキーがそうであったように、メロディやリズム、音の断片は、過去から借用され、使い回しされ続けているものだが、現代ではそれがより簡単に、初期のヒップホップの時代よりも、ずっとずっと簡単にできるようになった。
 サンプリングは、それが商用で使われた場合、著作権侵害となり、クリアランスが必要になるが、しかし商業リリースではない場合は、いや、インターネット空間そのものがどこからどこまでが商用で、どこまでが個人の趣味かという境界線を曖昧なものにしてしまったため、そのグレーゾーンではフィジカルでは聴けない(買えない)ユニークなサンプリング・ミュージックが突如アップされる。
 京都で暮らすTOYOMUも、基本的には“リスペクトありき”のサンプリングで作品をアップロードしてきた。ネット空間においてサンプリングがどこまで自由なのかを試すかのように。それで今年、カニエ・ウエストの『ザ・ライフ・オブ・パブロ』をまだ聴く前に告知されていた曲名と情報公開されていたその作品のサンプリング・ネタをたよりに、TOYOMUはそれを想像して作り上げ、そしてヴェイパーウェイヴよろしくすべての曲名を日本語で表記し、『印象 III : なんとなく、パブロ(imaging”The Life of Pablo”)』として自身のサイトにアップしたのだった。
 すると、一夜にして海外リスナーからのリアクションが彼の元に届き、その痛快さ──そのアイデアおよび曲のクオリティ、そしておそらくは日本人自らやったヴェイパーウェイヴ的ミステリー効果──を『Billboard』、『BBC Radio』、『Pitchfork』、『The Fader』、『FACT』といったメディがセンセーショナルに報じた。言うなれば彼は、カニエ・ウエストの知名度に便乗しながら、自分の作品を売り込むことに成功したわけだが、計らずともこのパブロ騒ぎは、今日の音楽を取り巻く環境を反映している。つまり、引用(カットアップ)とスピードである。
 
 そこへいくと今回リリースされる彼の初の公式フィジカル・リリースのEP「ZEKKEI」は、サンプリングやコンセプトで楽しませるものではない。むしろ、俺は戦略家ではないとでも言わんばかりの、聴き応え充分のエレクトロニック・ミュージックなのだ。素っ頓狂さを装いながら、リズミックな妙味を展開したかと思えば、かつて京都を拠点に活動したレイ・ハラカミを彷彿させるかのような、ロマンティックな叙情性もある。言うなれば真っ向からの作品で、『なんとなくパブロ』で使ったアイデアはいっさいない。きわどいサンプリングはナシ、曲名はすべて英語、捻りの効いたファンク、OPNとミュータント・ジャズとの出会い、美しいアンビエント、このように言葉で説明する以上に凝った展開。
 彼の“絶景”はシュールであり、いったいどこに着くのか、ときとして音の迷路のようでもある。いや、実際、彼がこれからどこに行き着くのかまったく読めない。ただ、何にせよ、ここにトーフビーツらと同じ世代(20代半ば)のユニークな才能が躍り出たのである。彼は間違いなく僕たちの耳を楽しませてくれるだろう。もしこの『ZEKKEI』に先祖がいるとしたら、クラフトワークの『ラルフ&フローリアン』とクラスターの『ツッカーツァイト』である。わかったよね、そう、ぜひ、楽しんで欲しい。

ツイッターとかフェイスブックとかどこを見てもカニエの話題ばっかりで、いまこれをやったら絶対みんな聴いてくれるやろうなと思ったのでカニエを選びました。

なぜカニエ・ウエストだったんでしょうか?

TOYOMU:あれは『印象』という名前のシリーズでやっているんですけど、去年の10月くらいに自分でビート・テープを出して、ポンポンと出していきたいと思っていて、なおかつ過激で、エキセントリックで、実験的な内容をどんどん出していきたかったんですよ。ただそれをやるだけだったら誰も聴いてくれないので、(ビート・テープを)周知させるためになにか大きくてわかりやすいテーマがいるなと思って、まず1月に星野源を選んだんです。その次の2月はわりと地味なやつで、ソウル・ミュージックをソフト・プラグインのシンセでサンプリングしました。そして3回目をやろうとした1ヶ月前にカニエのアルバムが出て、ツイッターとかフェイスブックとかどこを見てもカニエの話題ばっかりで、いまこれをやったら絶対みんな聴いてくれるやろうなと思ったので(カニエを選びました)。あとはあのアルバムの弄りがいがあったというのが大きいですね。僕は不完全さがあるほうがアレンジしやすいんですよね。

確信犯としてやったんですね。

TOYOMU:いや、でもここまで大きな反響になるとは全然わからなかったんで。ぼんやりと海外向きやなとは思っていましたけど、こんなに海外向けになっているとは思ってなかったですね。

カニエが好きなんですか?

TOYOMU:好きですけど、それはみんなが普通に好きというくらいのレベルですね。

カニエのどこが好きなのか、すごく興味があるんですけど、ぜひ教えてください。

TOYOMU:サンプリングの良さじゃないですか? 言っていることとかそういうことじゃなくて、音楽的な面としてこういう変遷を辿ってきた人がいないから面白いという。最初はファレルやティンバランドがやっていたときにサンプリングの早回しで出てきて、それで一時代を作ったあとにだんだん変になっていって、『イーザス』という突然あんなのを作ったと思ったら、今度は『ライフ・オブ・パブロ』で「またなんのアルバムなん?」という感じで、ラップというよりかは音楽面ですね。
 変遷が大きいじゃないですか。ガラッと変わっていきますよね。あんなに変えてやっている人は、メインストリームではなかなかいないですよね。ファレルは最初から器用だから、なにをやったって驚かないじゃないですか。でもカニエは毎回驚くことをやってくるんですよね。そもそもヒップホップ自体がそういうありえへんことをできる音楽だと思うし、渋くやるというのが凝り固まった時点でもう違うと思うんですよね。最初はレコードが回っているのを(手で)止めてはじまったわけですから、それを考えたら最初からありえへんことをやるというのが基本としてあるかなと思っていますね。

カニエの前には、星野源(『イエロー・ダンサー』リリースから1ヶ月に『印象I:黄色の踊り』をアップ)もやったんですよね?

TOYOMU:あれはサンプリングをしたビート・テープを作るというのが半分と、あとはちょうどあのときに自分でドロドロのアンビエントを作ってみたかったんですよね。

星野源を選んだのは人気者だから?

TOYOMU:人気者だからというのがひとつと、あとはあのアルバム(『イエロー・ダンサー』)自体がディスコというかブラック・ミュージックだし、やっぱりバンド・サウンドというのがいちばんサンプリングしがいがあるなと思いますね。アレンジしがいがあるというのはやっぱり音楽的に補完できる余地が残っているからだと思いますね。最近でいったらフランク・オーシャンはもう弄りようがなくて、じつに完璧で、僕のつけ入る隙がいっさいないというか。でもカニエや星野源はそれぞれに不完全さがあると思うんですよね。

当然クレームは来たでしょう?

TOYOMU:僕に(クレームがきたん)じゃないんです。サウンド・クラウドやバンドキャンプ側にクレームが行ったらそちら側が判断して削除したりできるんですけど、それでバンドキャンプにクレームが行って。サウンド・クラウドにもティーザーとして1曲あげていたんですけど、それもビクターによって消されましたね。次はもうやらないでくださいねという警告もきたので、あと2回やったらアカウントを消しますということになりました(笑)。サウンド・クラウドにBANという機能があるんですよ。バンドキャンプももうこんなのやめてくださいね、と消されたときにメッセージが来ましたね。

リスナーからはどのようなリアクションがありましたか?

TOYOMU:「Sampling-Love」というブログがあるじゃないですか。元々はネタ集なんですけど、いまはかなり人気で、記事を書いたらリツイートが50~100くらいされるようなサイトなんです。国内やったらサンプリングの音源を取り上げてくれるかなと思って、そのブログの人に毎回メールをしていたんですね。『黄色の踊り』もメールしたらブログに載っけてくださって、それがきっかけで国内のみんなが聴いてくれたんですよね。ツイッターでは、「こんなアレンジもあるんだ。おもしろーい」みたいなことを言っている星野源のピュアなファンはわりといました。

サンプリングは、商業リリースでは著作権侵害で、クリアランスが必要なわけですが、欧米では、アンダーグラウンドに関しては文化として大目に見ているところもあるんですよね。例えばシカゴのフットワークはかなり大ネタ使ってます。あるいは、ジェイムス・ブレイクの最初のヒット作の「CMYK」は、ケリスとアリーヤという大物の曲をサンプリングして、誰かわからなように変調させて使っていました。その盗用の仕方も含めて、メディアは賞賛したわけです。そういうアート性の高いもの以外でも、インターネットが普及した現代のネット世界では、音源はいくらでもあるし、これを使わない手はないくらいの勢いで、サンプリング・ミュージックは拡大していますよね。

TOYOMU:使わない手はないですね。正直言って個人レベルでやっている以上は文句を言われたって(音源を)消されて終いだし、むしろ発見されること自体が珍しいんですよね。だから個人レベルだったら好き勝手やったっていいんじゃないかと思いますよ。それを大目に見てくれればいいのに、なんでわざわざ消したのかは謎ですね。

いや、それはしょうがないでしょう(笑)?

TOYOMU:僕はむしろそれをプロモーションに使ってほしいくらいなんですけどね。そういう度量はなかったみたいですね。

とにかく、サンプリング・ミュージックという手法に関心があるんですね。

TOYOMU:まさしくそうですね。

もっとiPhoneでワーッと録って、なんならインストもiPhoneで録って「どや!」といって出すくらい……、それはさすがにクオリティが低すぎるんですけど、ラップだけiPhoneで録ってPCに入れて、インストは「これ使ったらええやん」といってやるというノリがなくて、「なんでみんなこんなに便利な世のなかなのにそうせえへんのかな」とすごく不思議ですね。

サンプリング・ミュージックはたしかにいますごく議論のしがいのあるテーマなんですよね。じつはいまサンプリングの時代だから。TOYOMU君はサンプリング・ミュージックのどこを面白く思っているんですか?

TOYOMU:突き詰めていったら編集している良さかなあ。最初は音の質感でしたね。古い質感が好きになったきっかけじゃないかな。

知っている曲が違う文脈で使われることの驚きみたいなものはあります?

TOYOMU:それはだんだん詳しくなっていく過程でそう思った。でも、初期衝動としては、それ(音の質感)でしたね。中学生、高校生だった自分にとっては、テープ録音されたものを切って並べていくというのは、ポルノグラフティやバンプ・オブ・チキンが演奏しているのとは明らかに違っていた。

ずっと家で作っていたんですよね?

TOYOMU:そうですね。レコードを買ってきて(それをサンプリングして作る)、というのをやっていました。レコードじゃないとダメという風潮がありますけど、ストーンズ・スロウのナレッジというビート・メイカーはサンプリングの音がめちゃくちゃ悪くて、どう考えてもYouTubeから音を録っているようなのを毎月何本もバンドキャンプにビート・テープとして出したりしていたので、「もう作るんだったら手段関係ないやん」と思いました。レコードを買いにいく時間で(音を)作れますよね。だからある意味で合理化ではありますよね。

いつから作っているのですか?

TOYOMU:MPCを買ったのは2009年なので6年くらい前ですね。

憧れのような人はいました?

TOYOMU:KREVAですね。あとはマミーDですね。最初に日本語ラップから入ったので。あの人らって「MPCをまず買え」という人じゃないですか。それで「MPCを買ってやったらああいう感じができるんや」と思ってMPCを買って、KREVAのソロとかを聴きながら「なるほどな、こういう構造か」って分析したり、あの人がスタジオでMPCを使って解説している動画を見たりしていました。

だとしたら、普通に、真っ当なJラップの道にいってもよさそうなのに。

TOYOMU:そうなんですよ。僕は最初はラップもやっていて、KREVAやマミーDはトラックメイカー兼ラッパーで、自分で曲を作って自分でラップもできるみたいなことに憧れていたので、最初はそれでいこうと思っていたんですよ。でもリスナー目線で考えてみると周りにラップでむちゃくちゃカッコいい人が多すぎて、「これは自分で全然無理やわ」と思って、そこでラップは断念したんですよ。「こんなにカッコいいのできへんし、全然歌詞も思いつかへんし、音楽作るのは好きなんやけどなあ」という思いがずっとあって、「じゃあもうラッパーのためにビートを作る」ということでビート・メイカーという役職があることがわかったからはじめたんですよね。

誰か他のラッパーとユニットを組んでみたりしたことはありますか?

TOYOMU:それはありましたよ。地元の同い年くらいの何人かで集まってクルーを作ったりしたことはありました。1回ミックスCDを出しましたけど、どうしてもラップがパッと返ってこなくて「インストはどれがいい?」とか言っていたら時間が経ってしまって、それがだんだん「はよ返せよ!」とイライラしはじめて。
 京都に限った話じゃないんですけど、もっとみんなラフにラップをやればいいのにな、と実感するんですね。さっき来てはった人(この前の取材者=JAPAN TIMESの記者)も「日本のアンダーグラウンドのラップを探しているけど、なにを見ていいかわからん」みたいなことを言ってはって、それは日本でミックス・テープ文化が全然根づかなかったということじゃないですか。まとまっているところが全然なくて、結局僕は「タワレコの『bounce』とか『ele-king』のチャートを見るしかないんじゃないですか?」と言うしかなかったんですね。日本のヒップホップのなかでみんなが「作品を作る=CDを出す」ということになってしまっていて、CDを出すということはスタジオでちゃんとレコーディングをしてというように真面目なんですよね。「なんでヒップホップをやっているのにそんなに真面目なんだ」と思ってしまって。
 もっとiPhoneでワーッと録って、なんならインストもiPhoneで録って「どや!」といって出すくらい……、それはさすがにクオリティが低すぎるんですけど、ラップだけiPhoneで録ってPCに入れて、インストは「これ使ったらええやん」といってやるというノリがなくて、「なんでみんなこんなに便利な世のなかなのにそうせえへんのかな」とすごく不思議ですね。僕がラッパーやったらガンガン人の曲を使いまくって、アップロードしまくってハイプをやるほうが早いと思うんですけどね。ライヴでかますというよりかは、それをやったほうが絶対にヒップホップ的に成りあがれるというか。KOHHとかリル・ウェインとかああいう人がいるのに、なんでそういうやりかたをやらんのかなあと思いますね。というのもあって僕の『印象』シリーズは毎月出そうとしていて、そういうミックス・テープのノリでみんなもどんどん作ればいいやんと思うんですけど、腰が重いというのが謎ですね。

現代の、次から次へと作品がアップロードされるその速度感はすごいものですが、それでは音楽がビジネスとして成り立たなくなるということ、そして作るという行為そのものがまったく意味が違ってきてしまうということに対する恐怖心も日本にはあるのかなと思うんですけど。

TOYOMU:なるほど。でも僕はそれがなぜ作る側にあるのかがわからなくて、作る側は自由にやって、それをどう思うかは企業や会社の問題じゃないですか。

カニエ・ウエストのリアクションというのは予想以上だったと思うのですが、海外でおもしろかったリアクションはありますか?

TOYOMU:おもしろかったのは向こうの「レディット」というちょっと明るい2ちゃんねるのようなサイトでカニエ・フォーラムみたいなのがあって、そこの「カニエのアルバムを妄想で作ってみたらしい」というスレッドに「小説としてはおもしろいと思うけど、妄想で作ってない。全部聴いてから作っている」と書いてあったのがおもしろかったですね(笑)。「こんなに似ているわけないし、絶対コイツ聴いている」からみたいな(笑)。

しかし「レディット」って、すごいところまで見ていますね。

TOYOMU:それはなんでかと言えば、どこでバズが起きているかがバンドキャンプのアクセス解析でわかるんですよね。「バズ」という項目があって、もちろんエレキングだって出ますよ。それで変遷を見ていたら「レディット」というのがやたらと書いてあって、見にいったら「2ちゃんか……」と思いましたけど(笑)。

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もっと欲をかいたというか、自分ですべて作ったものを出したいと思ってきたんです。だからサンプリングで一音だけ録ってきて音階にわけて弾いていても、やっぱりどこかで借り物感に満足しきれなくて、今回はそういうことに頼らずにできたと思っているんです。

なるほど(笑)。TOYOMU君って、物静かな外見とは裏腹に、けっこう大胆な行為をやっているんですけど(笑)。ニコニコしながら言っていますが、普通こんなことはビビってできないと思います(笑)。

TOYOMU:それは「日本に住んでいるとただでさえアンテナが低いのに、出さなかったら知られていない、やっていないのと一緒だ」と思ったからなんですよね。せっかく作っているのに聴いてもらえないのがほんまに悲しいと思ってきて、だからそれだったら方法なんて選んでられへんよねという話で。しかもヒップホップ自体が手段を選ばずに新しいことをやるという音楽であるはずだと思うので、その考えからいったら怖いものはなにもないですよね。あとは個人レベルでやって怒られることなんてまずないから、なんでもやったらええやんと思うんです。

でも、今回の『ZEKKEI』がそうですが、商業流通を前提で作っているから、人騒がせなサンプリングもないわけで、自分の音をサンプリングしたんですよね。そういうときにどうやって自分のやり方を調整していくのですか?

TOYOMU:それはYMOとかを聴いてきた僕自身にミュージシャン気質みたいなものが入ったから、自分で作曲してメロディを作り出すということ自体がもしかしたら自分がもっとも目指していたところなんじゃないかと思います。最初はサンプリングとシンセの融合でうまいことやって、サンプリングに聴こえないものを作り出すというのが当初の目標でしたけど、もっと欲をかいたというか、自分ですべて作ったものを出したいと思ってきたんです。だからサンプリングで一音だけ録ってきて音階にわけて弾いていても、やっぱりどこかで借り物感に満足しきれなくて、今回はそういうことに頼らずにできたと思っているんです。今回はそういう欲求でしたね。そもそも欲求としてあったというのはあります。

サンプリング・ミュージックというのはある意味でコンセプチュアル・アートのようなもので、発想を楽しむというのがあるじゃないですか。それに対していま言ったような作り方というのは、自分で実際に絵を描くというような行為ですよね。

TOYOMU:だからコンセプチュアル・アートだけやっていた人が、自分で絵を描くのをやりはじめたという段階がいまですね。

それはやっていて面白かったですか?

TOYOMU:そうですね。いままで自分が挑戦していなかったことをやるんで、やっぱり無類に楽しいですね。僕はメロディやコードの勉強はいっさいしていないですけど、理論って……理論化して可視化しているだけなんで別に(感覚で)理解できればいらないと思うんですよね。サンプリングでコードを合わせたりするのをやっていて感覚として身についてきたので、サンプリングを外してメロディだけを作ってみたりするのがだんだんできるようになってきたということが大きいですね。
 今回はとりあえずの足がかりを作って、それをアルバムの基軸に繋げていきたいと思っていましたし、アルバムを作ることになってからあまりにも時間がないということもあったので、先にジャブ的な感じでひとつ出そうかという感じでしたね。カニエに一区切りするために、というのも一つありました。あれをいつまでも引きずるのは嫌だし、KOHHも「昔のことを忘れたらいい」「過去にしがみつくなんてダサい」と言っているじゃないですか。その感覚ですね。

なるほど。もう次に行こうということですね。

TOYOMU:新しいことのほうがしたいんで、いつまでも一緒のことをやっているのも単純に面白くないし、飽きてきますよね。

『なんとなく、パブロ』のようなギャグをもないですよね。

TOYOMU:そうですね。ギャグはタダでいっぱいやればいいし、それをやる一方でアルバムは超真剣に作ればいいんじゃないかなと思っていますね。別に(ギャグの)入れがいがあるんだったらアルバムに入れてもいいと思うんですけど、100まで振りきってやるというのはやらなくてもいいかなと。

ダンス・ミュージックなどといった縛りはなかったのですか?

TOYOMU:ジャンルということだけは定義づけてやりたくない、という考えは通してありました。「これはトラップですよ、これはハウスですよ、ヒップホップですよ」と最初から冠づけずに、「音楽ですよ」と言って出したかったので定義づけしないでやりましたね。ジャンルがあるからジャンルに従って作ったというのがそもそも嫌だし、「これがビートの作り方ですよ。これがカッコいいですよ」となっている状況が嫌だったから、その(ジャンルの)メソッドが確立したら絶対それをやらずに新しいものを作るということを前からずっとやっていますね。

それでなぜ『ZEKKEI』なのでしょうか?


TOYOMU
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TOYOMU:フィールド・レコーディングの曲も京都の音ですし、『印象』の5番目で『そうだ、京都。(Kyoto Music)』というのを作って人から感想を言われたりして、自分が好きな京都が祇園祭とかクール・ジャパン的な京都じゃなくて、落ち着いたアンビエントの方向の京都なのかなと思ったんですね。京都自体がそういうイメージであることを再認識して、曲を作るときにもそういうのを意識して作ったりしていたので、その延長で今回のEPの制作に取りかかったんですよね。だから『ZEKKEI』というタイトルにしたのは普通絶景と言ったら歌舞伎の石川五右衛門ですよね。あれは南禅寺じゃないですか。

なるほど。そっちから来たのですね。

TOYOMU:日本語のタイトルをつけたいというのがまずあったんですよ。カニエのときは全部邦題的なノリの日本語で書いて今回もやろうと思ったんですけど、それをちゃんとしたCD作品としてやっちゃうと勘違いされるんですよね。

ヴェイパーウェイヴなんかは、相変わらずグーグル翻訳したような日本語をそのままタイトルにしていたり。

TOYOMU:でもそれを僕がやったらヴェイパーウェイヴの人になっちゃう。それが嫌だったんですよ。そこは僕もものすごく悩みましたよ。全曲のタイトルが日本語でもよかったんですけど、やっぱりそれをオフィシャルでやって理解してもらえるまでの周知度はないと思って、嫌だったんですけど日本語の言葉で英語タイトルをつける、ということをなるべく心がけてやったんですよ。だから2曲目に“Incline”という曲があるんですけど、これも英語ではあるんですが、琵琶湖から京都まで引っ張ってきている水路があって、その水路に滑車をつけて荷物を運んでいた「インクライン」という輸送用の台があったんですよ。その線路とかを含めて「インクライン」と呼んでいたんですけど、京都の人はそういうのを小学生の頃から習ったりして知っているから、僕にとって「インクライン」という言葉は英語というより蹴上にあるものが先に思い浮かぶんですよね。もし日本語タイトルでやっていたなら、カタカナで“インクライン”にしていましたし。あと1曲目の“Atrium Jobo”というのも、「条坊制」から取っていて日本語的な意味がありますね。

それは曲のイメージと関係があるのでしょうか?

TOYOMU:曲のイメージからです。EPを作ってからも自分のなかで京都の印象が強かったので、全部曲ができてからタイトルを考えるときも、京都のどこかしらの場所がそれぞれ点在していると考えるとうまく解釈できたんですよ。例えば1曲目は京都駅で、2曲目はさっき言ったインクラインで、5曲目のフィールド・レコーディングは嵐山のほうで、そう考えていくと(京都の)俯瞰になっているんです。そういうふうに俯瞰で眺め見ている+日本語タイトルをなんとかしてつけたいということを考えて、それを理解するのに正しい言葉は『ZEKKEI』だと思ったんです。

当たり前といえば当たり前なのかもしれませんが、TOYOMU君のなかで京都というのは大きいのですね。

TOYOMU:そうですね。ただ音楽に国境は関係ないという話がよくあると思うんですけど、どこに住んでいたとしても住んでいる場所から生まれ出たものが絶対大きく影響しているはずなんですよ。それは京都に住んでいるから京都をレペゼンしたいということじゃなくて、もう少し俯瞰してみると自分が京都に生まれてからずっと住んでいて(その状況で)音楽を作ったらどうなるのか、ということを考えたうえでの京都なんですよ。もちろん京都愛はありますけど、そうじゃなくてもう少し冷静な見かたの京都であるということを言いたいですね。

アルバムは来年になるのでしょうか?

TOYOMU:来年の2月くらいかな。タイト・スケジュールですね。

ハイペースだね。『印象』シリーズもそうですが、作るのが好きですよね。

TOYOMU:パッと出したいので、時間かけて煮詰まってああだこうだ言うんじゃなくて、『印象』シリーズに関しては最初のインパクトだけで短期間で終わるものをどんどん出していったほうがいいかなと思って。それがあるのであんまりもったいぶっても忘れ去られるだけだなと思いますね。

やはり消費の速度は早いと思いますか?

TOYOMU:思います。それは星野源のリミックスがそうだったし、カニエのやつも3月に出して「Sampling-Love」に載ったあとワーッと盛り上がってスッと消えたので。突然もう聴かれなくなって「はあ、じゃあ次作るか」と思っていたところやったんですね。タダのものしか聴かないという状況は大きいと思いますね。みんな本当にそれしか聴かないですしね。

そういう状況のなかで音楽家はどうやっていくか、というのもテーマとしては大きいですよね。

TOYOMU:タダのものはお金を出して買って頂けるもののオマケというか、プロモーションとしてやるつもりではいるので、今回のカニエくらい実験的だったりギャグ的なことだったりしてやれることはこれからもやっていくとは思うんですよね。

それはそれで楽しみにしつつという考えなのですね。

TOYOMU:そうですね。けっこう早いペースですけど、おそらくEPが出るまでにやると思います(笑)。(※『印象』シリーズの最新作は宇多田ヒカルだった)そうやって動いていきたい感じはありますね。とにかく「あの人は音楽を作り続けているな」というふうに(言われるように)はなりたいですね。実際にやっていて「もうアイデアがない」みたいな状態もないので。

 毎年恒例でアイスランド・エア・ウエイブスのレポート。18回目のエアウエイズで、私にとっては4回目の参加。滞在期間は2日と短かったが、中身は濃かった。
 いったい、この国の良いバイブがどこから来るのだろう。アイスランドは、2008年に経済破綻したというが、初めてアイスランドに行った2013年にも、そんな様子はまったく見えなかった。レコード屋に行ったらエスプレッソが出て来るし、バーは夜中の3時でも列が出来ているし、高級レストランにも多くの人がいる。若くして子供を持っている人が多く、町は綺麗で、ホームレスもいない。どう言うこと?
 たしかに、オーロラは日常的に見れるし、ブルーラグーンや、この世の物とは思えない美しい自然が目の当たりに見れるから、観光客もエア・ウエイブスに関わらず多い。レイキャビックの町は小さく、NYで言うとベッドフォードくらいで、端から端まで歩いても1時間ぐらいなので、自転車に乗っている人が多い。町の中心にある、ミュージック・ホールのハーパ周辺の港と景色は、何処を写真撮っても絵になり(ピンク色の空)、歩くのがとても楽しい町である。
 どのようにアイスランドが、経済復興したのかと、地元の人に聞いたところ、やっぱり観光業のお陰だと言う。ただ、この小さな国にとって、クローナの価値が上がり過ぎて、またバブルが弾けるだろうと言う。エアbnbなどで、観光業が調整されず、アイスランド人にとっては家賃はどんどん高騰しているし、クローナがこのまま上がり、上がらないところまで達したら、後は下がるしかないので、政府が次にどんな対策に出るかがキーだと言う。それが資本主義だけど、もし政府が、観光業を調節しはじめ、家賃レートを守れるなら、滅茶苦茶な状態は避けることができるはず、と。とにかく2016年、アイスランドはバブリーな状態にある。因みに、NYから来た身としては、アイスランドは何でも高い。ビールが大体$9、サンドイッチを買ったら$15など。

   

 さて、私のメインの目的は、オフ・べニューと呼ばれる、昼間行われるイベント。日本やアメリカでは見れない、地元のアーティストからツアーバンドまでが、レイキャヴィックのバー、レストラン、洋服屋、洗濯屋、レコード屋、ホテル、銀行など、音楽をプレイできるところなら何処でもライヴをしている。バンドによっては1日3ステージこなし、エアウエイブス期間に10以上のライヴをこなすこともあるし、新しいバンドに出会うのに、こんなに良い機会はない。何となく予定は立てるが、もちろん予定通りにいかない。偶然良いバンドに出会ったり、知り合いに出くわしたり、人が親切なので、心地の良い所にずーっと居てしまったりする。エア・ウエイブスのいい点は、時間にきっちりしているので、何かをミスっても、すぐ予定を立てやすい。

 今回の新しい会場ベスト2は、港近くのbryggjan brugghúsとBar Ananas。どちらも、レストラン・バーで、普通のお客さんもいながら、オープン・スペースでバンドがプレイしてる。bryggjan brugghúsはビストロ風、Bar Ananasは常夏風でトロピカルなサーフ気分が味わえる。ハングアウトも出来、バンドも見れ、ご飯も食べれ、来た誰もが楽しめるようになっているのが、アイスランド風。

 新しいバンドで印象に残ったのは、Skrattar , GANGLY, GKRで、リピートとしてはSamaris, Mammút, Hermigervill, Fufanu, Mr.Sillaが良かった。キー人物がいろんなバンドでプレイしているので、それを追いかけると、だいたい良いバンドに出会える。例えば、SamarisのJofridurは、Samaris以外に、 Pascal Pinon, GANGLY,そしてソロのJFDRをやっていて、どれも彼女の個性で成り立っている。GANGLYはまったく知識がなく、感で見に行ったのですが、見てすぐに彼女がシンガーだと気づいた。何か、引き寄せられる物がある。
 見れなくて残念だったのは、やっぱりビョーク。私はDARLINGリストバンドをもっていたが(列に並ばず入れるVIPリストバンド)、それでも入れず、会場のハーパで雰囲気だけを味わっていた。見れた人は本当にラッキー。アメリカのバンドはNYでも見れるので、ことごとくスキップしたが、Santogold, Warpaint, Frankie cosmosは見たかった。
 2日の滞在だったが、新しいバンド、新しいものごと、上から下まで十分にインスパイアされた。気候がどんどん温暖化して、今年は軽装で行ったのだが、難なく快適に過ごせた。
 アイスランドは本当に、何を食べても美味しいし、人びとは、朝まで普通にパーティしているが、モラルがあり、嫌な目にあったことがない。何処でもクレジットカードが使え、Wi-Fiがあり、英語が通じる。そして、アイスランドは安全、親切。朝6時にバスを待っていると、シリアから来たという男の子と簡単に友だちになったり、バスの乗り場を間違えて待っていたら、ホテルの男の子スタッフが、わざわざ正解のバス停まで連れて行ってくれ、バス会社に電話して、私がミスっていないかを確認してくれ、バスが来たら、わざわざ止めて、そのバスがあってるかどうか確認してくれたうえで「良い旅を!」と、送り出してくれる。これが平均的なアイスランド人。涙が出そうになった(とくにNYにいると)、マジカルなアイスランド体験だった。

 

最後に今回見たバンドのリスト。

Fri 11/4
Just another snake cult @bio Paradis
Samaris @bryggjan brugghús
Mammút @bryggjan brugghús
Kótt grà pje @bryggjan brugghús
SiGRUN @12 tonar
THROWS (UK) @12 tonar
Gruska Babuska @ Bar 12
GKR @ American bar
Dolores Haze (Sweden) @gaukurinn
IDLES (UK) @gaukurinn
Hermigervill @ gamla bíó

Sat 11/5
asdfhg. @ Hlemmur Square
Kaelan Mikla @ Hlemmur Square
Fufanu @ Bar Ananas
Mr.Silla @ NASA
Skrattar @ Gaukurinn
GANGLY @ Gamla Bio
Chinah (DK) @ Gamla Bio

公式サイト
https://icelandairwaves.is/

エアウエイブス・サバイバルガイド
https://grapevine.is/culture/music/airwaves/2016/10/31/iceland-airwaves-survival-guide/?=rcar

Yoko Sawai
11/12/2016

The Gaslamp Killer - ele-king

 現在のLAのビート・シーンがクローズ・アップされるきっかけを作ったひとつに、ダディ・ケヴが主催するパーティーのロウ・エンド・セオリーがある。DJとミュージシャンによるライヴ、さらにライヴ・ペインティングなどを組み合わせた複合イベントで、2000年代後半には世界的に注目を集めるようになっていった。そこでレジデントDJを務めたのがガスランプ・キラーことウィリアム・ベンスーセンである。もともとサンディエゴのガスランプ地区でヒップホップDJとしてスタートした彼は、ロサンゼルスに移住してからはヒッホップに加えてジャズ、ファンク、ロック、サイケなどのロウなサウンドと、エレクトリックなベース・サウンドやIDMをミックスし、ヘヴィでダークで幻覚的な世界を作り出していく。既にDJとして絶対的な評価を得るようになっていた彼は、2012年にフライング・ロータスの〈ブレインフィーダー〉からデビュー・アルバム『ブレイクスルー』を発表する。デイダラス、ミゲル・アトウッド=ファーガソン、ゴンジャスフィ、コンピューター・ジェイ、エイドリアン・ヤング、ザムアイアム、シゲト、ディムライトらが参加し、ヒッピホップ、グリッチ・ホップ、IDMを土台としたビートメイキングに、コズミックなエレクトロニック・サウンドやディープ・ファンク、サイケデリックなモチーフをコラージュしたこのアルバムは、サン・ラー・アーケストラの世界観を現代に引き継ぐものだった。アトウッド=ファーガソンのヴァイオリンをフィーチャーした“フランジ・フェイス”が絶品だったほか、“アパレーションズ”や“ニッシム”のようなエチオピア・スイタイルのジャズ、中近東風作品が印象的だった。

 2015年には自身のレーベルから『ライヴ・イン・ロサンゼルス』を発表するが、これはガスランプ・キラー・エクスペリエンスというバンドを率いてのライヴ録音で、LAジャズ・シーンの若手ミュージシャンが大挙参加している。顔ぶれはカマシ・ワシントン、デクスター・ストーリー、トッド・サイモン、アミール・ヤマグチなどで、ちょうどカマシが『ジ・エピック』でブレイクしたこともあり、そうした流れとも合流する作品だった。『ブレイクスルー』の収録曲も演奏しているが、ライヴ・アルバムということもあり、ジャズの生演奏の度合が強まった印象だ。ガスランプ・キラーの次のステップがどうなるかを予感させていたのだが、そうした中で新しいアルバム『インストゥルメンタルパシー』がリリースされた。今回の参加者はミゲル・アトウッド=ファーガソン、ゴンジャスフィ、アミール・ヤマグチ、MRR(マイケル・レイモンド・ラッセル)など『ブレイクスルー』にも参加した馴染みの面々に、ヒーリオセントリックスなどで知られるドラマーのマルコム・カトゥー(彼は昔からMRRともセッションしており、今回はMRRと一緒に参加している)。人数的にはより少数精鋭となり、『ブレイクスルー』の世界観をより凝縮させた方向へ導いたアルバムである。『ブレイクスルー』は全体的に荒々しくてローファイな印象が強く、本作では“グッド・モーニング”や“シュレッド・ユー・トゥ・ビッツ”などがその系統となるが、一方“パセティックス・ドリームズ”のようなアンビエントで繊細な作品もあり、表現の幅が広がっていることも示す。『ライヴ・イン・ロサンゼルス』でのライヴ・パフォーマンスの延長線上にあるのが“ウォーム・ウィンド”で、エチオピアン・ジャズとジャズ・ファンク、ジャズ・サンバにサイケデリック・ファンクと様々な要素が結びついた作品だ。“ガーマラサー・キル”もエキゾティックなモチーフに溢れたファンク・サウンドで、“ハレヴァ”のギターの音色は中近東のウードのようだ。このあたりはLAシーンとも結びつきの深いエチオ・ジャズの祖、ムラトゥ・アスタトゥケからの影響を感じさせる。“ライフ・ガード・タワー #22”や“リッスン・フォー・マイ・ホイッスル”のストリングスほか、全体にワールド・ミュージック的なエッセンスが感じられるのも本作の傾向と言えるだろう。北アフリカや中近東のモチーフを取り入れたジャズやディープ・ファンク、サイケ・サウンドは、2000年代半ばよりヒーリオセントリックスなどもやってきており、US西海岸でもマッドリブやイーゴン、ラスGなどにもその影響が表われていた。そうした点で本作のアプローチ自体は特別に目新しいものではないが、デクスター・ストーリーの新しいアルバム『ウィンデム』もエチオ・ジャズの影響が色濃く、『インストゥルメンタルパシー』は現在のLAシーンの傾向のひとつを示す作品だと言えよう。

interview with Nicolas Jaar - ele-king

E王
Nicolas Jaar
Sirens

Other People/ビート

Post-PunkAmbientExperimental

Amazon Tower

 ドナルド・トランプの衝撃が全世界を覆っている。もう何がなんだかわからない。ただただ憂鬱である。そんな暗澹たる気分のなか、ニコラス・ジャーから返ってきたインタヴューの原稿を読んだ。メールで質問に答えてくれた彼が、とてもキュートな絵文字を使っていることに、少し救われたような気分になった。以下のインタヴューのなかで彼も触れているが、ポリティカルなこととパーソナルなことは、相互に影響を及ぼし合っている。これほどの出来事があって、「さあ、また明日から頑張りましょう!」と簡単に割り切れるほど、僕は強くない。他の人がどうなのかは知らないけれど。

 オリジナル・アルバムとしては5年ぶりとなるニコラス・ジャーの新作は、前作『Space Is Only Noise』とはだいぶ異なる雰囲気に仕上がった。とはいえ、様々な要素を折衷するスタイルそれ自体は前作から引き継がれている。“Killing Time”や“Leaves”はエクスペリメンタルであり、アンビエントである。“The Governor”や“Three Sides Of Nazareth”にはポスト・パンク的な態度があり、さらに前者にはドラムンベース的なギミックも忍び込まされている。“No”はレゲエを、“History Lesson”はドゥーワップを取り入れているが、ともにラテン・ミュージックの空気が貼り付けられている。このようなコラージュ精神こそがニコラス・ジャーの音楽を特徴づけていると言っていいだろう。多様であること、あるいは多文化的であることの希求。ニコラス・ジャーが移民の子であることを思い出す。

 そういった果敢な音楽的実験とともに、このアルバムからは非常にポリティカルなメッセージを聴き取ることができる。たとえば“Killing Time”では人種や階級の問題が言及され、“Three Sides Of Nazareth”ではチリで起こった虐殺の風景が歌われている。そんな本作を初めて聴いたときに僕は、ニコラス・ジャー自身の過去の作品よりも先に、ある別のアーティストの作品を思い浮かべてしまった。
 今年の春にブライアン・イーノがリリースしたアルバム『The Ship』は、タイタニック号の沈没と第一次世界大戦を参照することで、現在の世界情勢と向き合おうとする作品であった。今回のニコラス・ジャーのアルバムは、音楽性こそ異なれど、テーマの部分で、そしてその物語性において、『The Ship』と通じ合っている作品だと思う。何より、『Sirens』というタイトル。サイレンとはもちろん、「警告」を意味する信号として機能する音のことだが、その語源はギリシア神話に登場する海の怪物である。セイレーンはその歌声で船員を惑わし、船を難破させる。つまりセイレーンとは、歌で人類を混乱させ、困難へと陥れる存在なのである。『The Ship』と『Sirens』という、40歳以上も歳の離れたふたりがそれぞれUKとUSで独自に作り上げた音の結晶が、船や海といったモティーフを介して、まさにいま響き合っている。このふたつのアルバムはそれぞれ、ブレグジットと大統領選挙というふたつの出来事にきれいに対応しているのではないか――少なくとも僕は、そういう風にこのふたつの作品を聴き直した。2016年とはいったいどういう年だったのか――この2作の奇妙な繋がりこそがそれを物語っているような気がしてならない。

 そして、このニコラス・ジャーのアルバムには、「父」というパーソナルなテーマも織り込まれている。今年はビヨンセやフランク・オーシャンなど、ポリティカルであることとパーソナルであることを同時に成立させてみせる名作が相次いでリリースされた。ニコラス・ジャーのこのアルバムもまた、それらの横に並べられるべき作品のひとつである。
 ひとりのリスナーとして、ポリティカルなこととパーソナルなことの響き合いを、どのように聴き取っていけばいいのか。ひとりの生活者として、ポリティカルなこととパーソナルなことの重層的な絡み合いに、どのように折り合いをつけていけばいいのか。それはとても難しい問題で、僕自身もまだ答えを見つけられていない。でも、まさにこのタイミングでこのアルバムを聴き返すことができて、本当によかったと思う。
 返信をありがとう。

 愛をこめて。

 コバ

俺も自分の音楽がポリティカルになるとは想像していなかった。ただ、自分に素直でありたいと思い、自分の中に新たに生じた難しい感情に対応したいと思ったんだ。

ビヨンセの新作や、昨年のケンドリック・ラマーのアルバムは聴いていますか?

ニコラス・ジャー(Nicolas Jaar、以下NJ):聴いてるよ。

かれらのように、一方で音楽として優れた作品を作ることを目指しながら、他方でポリティカルなメッセージを届けようとするスタンスに、共感するところはありますか?

NJ:ふたりとも、ポリティカルなことをパーソナルなことに(そしてその逆もまた同様に)うまく転換させることができる素晴らしいアーティストだと思う。それは素晴らしい技術で、俺もいつか自分の作品でそういうことを成し遂げたいと思う。
 チリでのクーデターの時、軍に虐殺されたチリ人のシンガーソングライター、ビクトル・ハラはこう言っている。「全ての音楽はポリティカルだ。たとえノンポリティカルな音楽であっても」。
 この言葉は本当だと思う。たとえラヴ・ソングでも、文脈や曲が作られた時代によって、猛烈にポリティカルなものになりうる。結局のところ、目を見開いていれば、自分の部屋の中にも、窓の外にも、愛と憎悪があるということがわかるんだ。

このたびリリースされた『Sirens』は非常にポリティカルです。たとえば“Killing Time”では、アフメド・モハメド少年やドイツのメルケル首相の名が登場し、人種や階級、資本主義といった問題について触れられています。あるいは“Three Sides Of Nazareth”では、ピノチェト政権下のチリで起こった虐殺の風景が歌われています。正直、あなたがここまでポリティカルな作品を世に送り出すことになるとは想像していませんでした。あなたが作品にポリティカルなメッセージを込めるのは、おそらく今回が初めてだと思いますが、何かきっかけとなるようなことがあったのでしょうか?

NJ:俺も自分の音楽がポリティカルになるとは想像していなかった。ただ、自分に素直でありたいと思い、自分の中に新たに生じた難しい感情に対応したいと思ったんだ。たとえば『Sirens』以前は、自分の音楽に「怒り」や「苛立ち」を込めるということはしなかった。でも自分が成長するためには、そういった感情を含めていかなければならないということに気づいた。たとえそれがどんな結果になってもね。『Sirens』は俺が成長するために、自分に必要だと感じた「自由」から生まれたアルバムなんだ。

ニューヨークで生まれたあなたにとって、チリとはどのような国なのでしょうか? また、かつての独裁政権下のチリの状況と現在のアメリカの状況に共通点があるとしたら、それは何でしょう?

NJ:現在のサンティアゴには、マイアミやロサンゼルスにすごく似ている場所もある。軍隊はアメリカの資本主義導入に成功したってわけさ。共通点を挙げるのであれば、保守主義が幽霊のようにジワジワと忍び寄ってきて、文化左派が戦いに負けてしまった状態にときおりなっているという点かな。

本作の全体的なムードは前作『Space Is Only Noise』とはだいぶ異なっていますが、様々な音楽的要素を折衷すること、多様であろうとする部分に関しては前作から引き継がれているように感じます。様々なジャンルやスタイルをコラージュしたり混ぜ合わせたりすることは、あなたが音楽を制作する上でどのような意味を持っていますか?

NJ:曲のひとつひとつが小さなストーリーになっていてほしい。俺は、インクの色よりもストーリー・アークの方に注目する方が好きだ。

“The Governor”や“Three Sides Of Nazareth”からはポスト・パンク的な要素が感じられます。スーサイドのようにも聞こえました。先日アラン・ヴェガが亡くなりましたが、彼の音楽からは影響を受けましたか?

NJ:もちろん影響を受けたよ。アラン・ヴェガのエネルギーは今の時代にとてもフィットしていると思う。だから彼が亡くなったことを知ってとても悲しかった。彼は、抵抗音楽における重要な言語と青写真を作り出した人だと思う。

昨年〈Other People〉からリディア・ランチの作品集がリイシューされました。楽曲的な面やアティテュードの面で、彼女から受けた影響があったら教えてください。また、彼女以外にも、『No New York』や〈ZE Records〉など、ノーウェイヴのムーヴメントから受けた影響があったら教えてください。

NJ:リディア・ランチが、ベルリンの壁崩壊後にベルリンでおこなった『Conspiracy Of Women(女性の陰謀)』というスポークン・ワードのパフォーマンス映像を、いつだったか偶然発見したんだ。それに夢中になり、その後何年かはそのパフォーマンス音声を自分のDJセットに入れてプレイしていたよ。
 (昨年)このパフォーマンスの25周年になるということに気づいた俺は、彼女に連絡を取り彼女と会った。彼女はリリースを承諾してくれ、それ以来、俺たちは近しい友人になったんだ。彼女にはすごく影響を受けているよ。俺が、俺自身であることを受け入れられるようになったのも、言わなきゃいけないと思うことを言えるようになったのも、彼女のおかげだ。

“The Governor”からはドラムンベース的な要素も感じられます。あなたの音楽が最初に広く受容されたのは、主にダブステップが普及して以降のダンス・ミュージック・シーンだったと思いますが、90年代のダンス・ミュージックから受けた影響についてお聞かせください。

NJ:俺の中で“The Governor”は、絶対ヘビメタなんだけど! 😂

いくつかの曲ではあなたの「歌」が大きくフィーチャーされています。それは本作がポリティカルであることと関係しているのでしょうか? そもそも、あなたにとって歌またはヴォーカルとは何ですか? 他の楽器やエレクトロニクスと同じものでしょうか?

NJ:最近は、ソングライティングという概念により興味を持つようになった。プロダクションは「ファッション」的な感じがベースになっているけど、ソングライティングはそういう感じから逃れることができると思う。「存在」というものに興味があるんだ。レコーディングに声を入れるのは、そこに命を加えるようなものだと思う。

本作は『Nymphs』と『Pomegranates』の間を埋める作品だそうですが、ということは、本作にも何かのサウンドトラックのような要素、あるいは役割や機能があるのでしょうか? たとえば、本作はいまのアメリカのサウンドトラックなのでしょうか?

NJ:そうかもね!(笑) 今まで、「テクスト」とコンテクスト(=文脈)が欠けていたと思う。『Nymphs』や『Pomegranates』は、その時の俺にとっては閉鎖的すぎると感じたのかもしれない。

前作『Space Is Only Noise』は2011年の2月にリリースされましたが、その直後、日本では大きな地震と原子力発電所の事故がありました。日本の一部のリスナーは、あなたの前作をそのような状況のなかで聴いていました。あなたの作品が、意図せずそのような状況のサウンドトラックとして機能することについてはどう思いますか?

NJ:そのような状況だったとは知らなかった。作品がアーティストの手を離れ、リスナーに届いた時点で、それはリスナーのものになると思う。俺が音楽を作るのは、俺が自分の感情に対応するために必要だからだ。音楽を作っているときだけ、俺は自由で幸せになれる。俺の音楽が、人びとの人生のサウンドトラックになっているのであれば、それがどんな結果であれ、光栄に思う。俺の音楽が人々の感情にとって、何らかの役に立っていれば嬉しい。

“Killing Time”や“Leaves”など、本作にはアンビエントの要素もありますね。あなたは3年前に、ブライアン・イーノの“LUX”をリミックスしています。彼が発明した「アンビエント」というアイデアについてどうお考えですか?

NJ:☁️☁️☁️✨

彼は音楽制作を続けるかたわら、イギリスの労働党党首を支援したり、シリアへの空爆反対のデモに参加したりしています。そうした彼の政治的な態度や行動についてはどうお考えでしょうか? あなた自身もそういった活動をする可能性はありますか?

NJ:政治的な活動はあくまで個人的に、プライベートな時間におこなうようにしている。自分の行動全てをソーシャルメディアで公開することはしたくない。デモに参加するとしたら、市民として参加するのであり、ミュージシャンとしてではない。

イーノの最新作『The Ship』は聴いていますか?

NJ:聴いている。

日本では多くの場合、音楽が政治的であることは歓迎されません。あなたは2年前にDARKSIDEとして来日し、フジロック・フェスティヴァルに出演していますが、今年、そのフェスティヴァルにSEALDsという学生の社会運動団体が出演することが決まったときに、「音楽に政治を持ち込むな!」という議論が巻き起こりました。あなたは、音楽と政治はどのような関係にあると考えていますか? あるいは、音楽が政治的であることとは、どのようなことだとお考えですか?

NJ:音楽は、時代について語ったり、信条に疑問を感じたり、考え方を覆したりするようなものであるべきだと感じる時がある。
 だが、別の時には、音楽は俺たちを癒してくれるもので、ニュースの見出しや過剰なもの、ダークなものから俺たちを逃してくれるべきだと考える。
 それは難しい質問だから、俺自身もまだ答えを見つけていない。
 質問をありがとう。

 愛をこめて。

 ニコ

KO UMEHARA (Komabano Oscillation Lab) - ele-king

現場でお世話になったトラック10選

KO UMEHARA (Komabano Oscillation Lab)

静岡県出身東京在住のDJ兼トラックメイカー。
ShuOkuyamaとのレーベルKomabano Oscillation LabやDJ WADAとのレギュラーパーティー『Contatto』、屋内型フェスティバル『Synchronicity』のレジデントなどの活動を中心に全国各地様々なパーティーをDJ行脚中。
2016/11/19にDJ WADAとのパーティー『Contatto』@ Forestlimit第6回目の開催!

https://contatto.jp

年末から年明けにかけてリリースが続きます、ぜひチェックしてみてください!
.Now On Sale
Ko Umehara - Reality Recomeposed by TCM-400 / Mastered Hissnoise

https://libraryrecords.jp/item/203147

・2016/11/11 Release
Ko Umehara - Happy 420 Tour 2015 To 2016 / Mastered Hissnoise

https://www.msnoise.info/

・2016/11/16 Release
CD HATA & MASARU - Octopus Roope / Hinowa Recodings

01. CD HATA & MASARU / Octopus Roope (Original Mix)
02. CD HATA & MASARU / Octopus Roope (Ko Umehara Remix)
03. CD HATA & MASARU / Octopus Roope (Hentai Camera Man Remix) 04. CD HATA & MASARU / Octopus Roope (DJ Doppelgenger Remix) 05. CD HATA & MASARU / Octopus Roope (Frangipani Remix)
06. CD HATA & MASARU / Octopus Roope (Hydro Generator Remix) 07. CD HATA & MASARU / Octopus Roope (Matsusaka Daisuke Remix)
https://hinowa.jp/

Jeff Mills - ele-king

 はい、こんにちは。現在ele-kingはジェフ・ミルズにジャックされております。またまたニュースでございます。
 先日、アフターパーティの開催をお伝えしましたが、その本公演のお知らせです。来る11月18日(金)、国内屈指の室内楽ホールの1つである浜離宮朝日ホールにて、ジェフ・ミルズのシネミックス(映像体験作品)最新作の日本プレミア上映会が開催されます。同公演は、AACTOKYOが手がけるプロジェクトの第1弾でもあります。構成と演出はジェフ・ミルズ本人が、映像共同演出は新進気鋭の映像集団Cosimic Labが担当します。
連日お伝えしているように、この秋はジェフ・ミルズのイベントが目白押しです。もうこの際みなさんも心を決めて、ジェフ・ミルズにジャックされちゃいましょう!

AACTOKYO 第1弾プロジェクト
JEFF MILLS CINE-MIX “THE TRIP”

!! ジェフ・ミルズのシネミックス最新作 ジャパン・プレミア公演 !!

2014年のプレ開催を経て、昨年は東京、神戸、川崎の3都市で開催したアート・フェスティヴァル「TodaysArt.JP」が、2016年、世界に名だたるコスモポリス「東京」を舞台に、世界と日本を紡ぐアートのプラットフォームとなるべく、世界で開催されている様々なアート・フェスティヴァルとも連携しなが『AACTOKYO (アークトーキョー: Advanced Art Conference Tokyo)』として進化しました。
そんな『AACTOKYO』が手がけるプロジェクト第1弾として、浜離宮朝日ホールでのジェフ・ミルズのシネミックス(映像体験作品)最新作のジャパン・プレミア公演が決定です!

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ジェフ・ミルズがお届けする映像体験作品「THE TRIP」。
実験的でコンセプチュアルなテクノ・ミュージックの象徴的な存在として、またサイエンス・フィクション映画に魅了されたひとりとして、ジェフ・ミルズは「自身の作品をフィルムや映像のために制作しなければ」という衝動に駆られ、2000年より「シネミックス」というスタイルに着手しました。今回ご紹介するシネミックス作品は、日本人映像作家とのコラボレーションによる1時間半に及ぶサウンドとイメージのマスター・ミックス。
60以上のオールド・SF・ムーヴィー(1920~70年代)から抽出した映像+音像のライヴ・ミックスは、彼のエクスペリメンタルかつコンセプチュアルなDJ・ミックスと同じ原則に従い、私たちの美の鼓動、カオス、畏怖なる感情を呼び起こしてくれることでしょう。
「THE TRIP」は住みづらくなってしまった地球から、新しい世界を探すために地球より遠く離れた場所を開拓していくという、これから人間が経験するであろうテーマが描かれています。精神的かつ心理的な強烈な映像+音像体験が、あなたを未知の時空へお連れします。

Jeff Mills - ele-king

 ジェフ・ミルズはどこまで進み続けるつもりなのでしょう?

 すでに11月18日に表参道のVENTにて公演をおこなうことが決定しているジェフ・ミルズですが、ここにきて新たなイベントの情報がアナウンスされました。
 来年初頭にオーケストラのために書き下ろした新しいアルバム『Planets』をリリースするジェス・ミルズですが、なんと、その先行試聴会とトーク・イベントが11月15日(火)に開催されます。会場は日本科学未来館 ドームシアター ガイア。来るべき新作『Planets』とは一体どんなアルバムなのか? いちはやくその一端に触れるチャンスです!
 詳細は以下を。

Jeff Mills(ジェフ・ミルズ)、来年リリースの新作アルバム『Planets』の特別先行リスニング & トークイベントを日本科学未来館で開催!!

世界的なテクノ・プロデューサー、DJであるJeff Mills(ジェフ・ミルズ)が、来年2017年初頭に、初めてオーケストラのために書き下ろした新作『Planets』をリリースします。

PlanetsTrailer1

この作品の発表に先駆け、2016年11月15日(火)、日本科学未来館 ドームシアター ガイアにて、特別先行リスニング& トークイベントを開催することが決定しました。

Jeff Millsは2005 年、フランス南部のポン・デュ・ガールにて行われたモンペリエ交響楽団との共演以来、各国のオーケストラと世界各地でコンサートを行い、これまで全公演がソールドアウト。今年、3月21日に東京渋谷・Bunkamura オーチャードホールで行われた東京フィルハーモニー交響楽団との共演や、『題名のない音楽会』(TV朝日)への出演が話題となったことも記憶に新しいところです。

Jeff Millsの新作『Planets』は、長年にわたるオーケストラとの共演を通して積み上げられた蓄積が注ぎ込まれた大作であり、これまで様々な作品を通して、私達の住む“宇宙”というテーマに向き合ってきたジェフ・ミルズの作品史上、最大の野心作。太陽系の各惑星へ旅をするチュートリアルなのです。

2017年の作品発表に先駆け、日本科学未来館の協力のもと、ドームシアター ガイアを会場に、5.1chサラウンドのサウンドシステムでいち早く新作『Planets』を体感していただく機会を設けることができました。また当日はJeff Millsが来場し、新作についてのトークも披露します。

チケット《https://jeffmillsplanets.peatix.com》は10月31日より発売開始。イベントは全3回、各回定員100名限定なのでご購入はお早めに。


【イベント開催概要】

[タイトル]
Jeff Mills新作アルバム『Planets』特別先行リスニング & トークイベント
開催日: 2016年11月15日(火)
会場:日本科学未来館 6Fドームシアター(東京都江東区青海2-3-6)
入場料:¥1,000(税込)
チケット購入:https://jeffmillsplanets.peatix.com

[スケジュール]
*定員:各回100名様
第1回 16:30-18:00
第2回 18:30-20:00
第3回 20:30-22:00

[プログラム]
・サイエンストーク「宇宙観・惑星観の変遷」
解説:ディミトリス・コドプロス(日本科学未来館 科学コミュニケーター)
・楽曲「Planets」リスニング
・ジェフ・ミルズ トーク

[イベントに関するお問い合わせ]
U/M/A/A Inc.ユーマ株式会社
メール:info@umaa.net

■アーティスト・プロフィール

ジェフ・ミルズ(Jeff Mills)氏  テクノ・プロデューサー/DJ
1963年アメリカ、デトロイト生まれ。デトロイト・テクノと呼ばれる現代エレクトロニック・ミュージックの原点と言われるジャンルの先駆者。DJとして年間100回近いイベントを世界中で行なう傍ら、オーケストラとのコラボレーションを2005年より開始、それ以降世界中で行った全公演がソールドアウト。クラシック・ファンが新しい音楽を発見する絶好の機会となっている。オーケストラのために書き下ろした作品『Planets』を2017年初頭、発売予定。

■『Planets』について
ジェフ・ミルズ氏は2005 年、フランス南部のポン・デュ・ガールにて行われたモンペリエ交響楽団との共演以来、各国のオーケストラと世界各地でコンサートを行い、これまで全公演がソールドアウト。2016年3月21日に東京渋谷・Bunkamura オーチャードホールで行われた東京フィルハーモニー交響楽団との共演や、『題名のない音楽会』(TV朝日)への出演が話題となったことも記憶に新しいところです。

新作『Planets』は、長年にわたるオーケストラとの共演を通して積み上げられた蓄積が注ぎ込まれた大作であり、これまで様々な作品を通して私達の住む“宇宙”というテーマに向き合ってきたジェフ・ミルズ氏の作品史上、最大の野心作です。

■ドームシアター ガイア

日本初の全天周超高精細立体映像システム“Atmos”や、1000万個の恒星を投影するプラネタリウム投影機“MEGASTAR-II cosmos”、7.1chの立体音響を備えた、直径15メートルのドーム型シアターです。

Asuna & Opitope - ele-king

 レーベル〈White Paddy〉を主宰し、去る7月にはソロ作品『Grace』をリリースした畠山地平と最近は漢方医として多忙を極めている伊達トモヨシ先生によるオピトープが、Asunaと一緒に最新アルバム 『The Crepuscular Grove』を〈White Paddy〉から発表します。はっきり言って、今回もクオリティが高い作品になっておりますが、これから冬を迎えるこの季節に聴いていると、とても良い気持ちになれます。自然界のいろいろな音を辿りながら、目の前に草原が広がります。彼らはリリースに併せてツアーをします。伊達先生を見かけたら、やさしく肩を叩いてあげましょう。ツアーには、イルハのメンバー、コーリー・フラーも参加します。

●Asuna & Opitope 『The Crepuscular Grove』リリース記念ツアー
with Corey fuller

 2010年のStudents Of Decayからのリリースに続く、6年振りのAsuna & Opitope のセカンドアルバムを11月にリリースするAsuna & Opitope がツアー開催します! 今回はツアーゲストにillhaのコリー・フラーを迎え、各所で様々なユニットでライブを披露します。

●11.17 (Thr) 京都 @ 「外」
Open 19:00 / Start 19:30   
2,000yen

LIVE
Asuna & Opitope
Chihei Hatekeyama & Corey Fuller
ASUNA × Takahiro Yamamoto

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●11.18 (fri) 名古屋 @ spazio-rita
Open 19:00 / Start 19:30   
2,500yen

LIVE
Asuna & Opitope
ILLUHA(Tomoyoshi Date, Corey Fuller)
Chihei Hatekeyama & Asuna

DJ
i-nio

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●11.19 (sat) 伊勢 @ 風見荘
open19:00 / start 19:30
投げ銭
LIVE
Opitope
Asuna × Corey Fuller

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●11.20 (Sun) 東京 @ gift_lab

open18:00 / start 18:30
2,500yen

LIVE
Asuna & Opitope
Kuukoka (Tomoyoshi Date, Corey Fuller,Chihei Hatekeyama)
Carl Stone

 


Asuna & Opitope
The Crepuscular Grove

White Paddy
Amazon


ASUNA

「語源から省みる事物の概念とその再考察」をテーマに作品を制作。これまでにドイツの"transmediale"、ベルギーの"Happy New Ears"、スロベニアの"International Festival of Computer Arts"などメディア・アートの国際的フェスティヴァルにも多数参加するなど国内外問わず展示/パフォーマンスを行う。代表作として「Organ」の語源からその原義を省みた「機関・器官」としてのオルガンを扱ったインスタレーション作品『Each Organ』などがある。並行した音の現象を扱うパフォーマンスにおいても『100 KEYBOARDS』『100 TOYS』などのライブで、これまでにヨーロッパを中心に北米・アジアも含め海外17ヶ国以上での公演/ツアーを行い、ベルギー、イタリア、イギリス、アメリカ、日本など多数のレーベルよりレコードやCD作品も発表している。

伊達伯欣:医師・音楽家

1977年サンパウロ生まれ成田育ち。Opitope(spekk)、ILLUHA(12k)、Melodia(homenormal)として音楽活動を続ける。救急医療と免疫学、東洋医学を学び、2014年につゆくさ医院を開院。これまでに国内外から15枚のフルアルバム、映画音楽などを作成。『からだとこころの環境』を出版。科学と自然、デジタルとアナログ、西洋医学と東洋医学の現在について考察している。

Chihei Hatakeyama

Chihei Hatakeyamaとして2006年にKrankyより、ファーストアルバムをリリース。以後Room40, Home Normal, Own Records, Under The Spire, hibernate, Students Of Decayなど世界中のレーベルから現在にいたるまで多数の作品を発表。デジタルとアナログの機材を駆使したサウンドが構築する美しいアンビエント・ドローン作品が特徴。ヨーロッパ、オーストラリア、アメリカ、韓国など世界中でツアーを敢行し、To Rococo Rot, Tim Heckerなどと共演。NHKのEテレ「schola 坂本龍一音楽の学校シーズン3」にて、アルバム『River』収録の”Light Drizzle”が紹介され、坂本龍一、岩井俊二らからその場を空気を一変させる音楽と評される。映画音楽では、松村浩行監督作品『TOCHKA』の環境音を使用したCD作品「The Secret distance of TOCHKA」を発表。第86回アカデミー賞<長編ドキュメンタリー部門>にノミネートされた篠原有司男を描いたザカリー・ハインザーリング監督作品『キューティー&ボクサー』(2013年)でも楽曲が使用された。またNHKアニメワールド:プチプチ・アニメ『エんエんニコリ』の音楽を担当している。ソロ以外では伊達伯欣とエレクトロ・アコースティックデュオOpitopeとして、SPEKKから2枚のアルバムをリリース。佐立努とのユニットLuis Nanookでは電子音と伝統的なフォークサウンドが混ざり合う音楽世界で2枚のアルバムをリリース。ASUNA、Hakobune等ともコラヴォレーションアルバムを発表。マスタリング・録音エンジニアとしても、自身の作品のみならず、100作品以上を世に送り出している。2013年にはレーベルWhite Paddy Mountainを設立しShelling, Family Basik, neohachi, Federico Durand, suisen, Satomimagaeなどをリリースしている。
https://www.chihei.org/

corey fuller

1976年アメリカ生まれ。現在日本在住。 サウンドアーティスト、ミュージシャン、オーガナイザー、映画家として活動中。
ギター、ピアノ、ローズピアノ、グロッケンシュピール、アコーディオン、ピアニカ、パーカッション、ハンマーダルシマー、フィールドレコーディングを含めた様々な生楽器/生音を素材にmax/mspと言ったデジタル環境やアナログ機材で細かく加工した、繊細な音楽を提供している。
近年は伊達伯欣(ダテ トモヨシ)とのIllhaとして12kより2枚のアルバムをリリース。また、坂本龍一やTaylor Deupree とのコラボレーションアルバムも発売している。2016年には待望のセカンドソロアルバムをリリースする予定である。


Asuna

Opitope

illha

Chihei Hatakeyama

Swans - ele-king

 80年代初頭に結成され、ソニック・ユースとともにUSオルタナティヴ・シーンを牽引してきたエクスペリメンタル・ロックの雄、スワンズ。6月にリリースされた14枚目のアルバム『The Glowing Man』も好評なかれらが、12月に来日公演を果たすこととなった。東京公演は12月7日(水)@SHIBUYA TSUTAYA O-EAST、大阪公演は12月8日(木)@UMEDA CLUB QUATTRO。今回もヴォリューム・リミットなし、2時間超えのパフォーマンスを披露してくれるとのこと。また今回のツアーは、現メンバーでおこなわれる最後のツアーとなっている。これは見逃すわけにはいかないでしょう。詳細は以下を。

オルタナティヴ・ロック・シーンに燦然と輝く暗黒の巨星スワンズ、現メンバーでのラスト・アルバム『The Glowing Man』を引っ提げて、現メンバーでのラスト・ツアー決定!

1982年、Michael Gira(ギター/ヴォーカル)を中心に結成、80年代初頭の混沌としたニューヨークのアンダーグラウンド・シーンを象徴するバンドとして、SONIC YOUTHとともにオルタナティヴ・シーンに君臨した。ジャンク・ロックと称された初期作品『Filth』、『Cop』、Jarboe参加後の聖と俗・静謐と混沌の入り交じった中期作品『Greed』、『Holy Money』、『Children of God』、ビル・ラズウェル・プロデュースによるメジャー作品『The Burning World』で見せた限りなくダークな歌へのアプローチ、自身のレーベル〈Young God Records〉設立後の後期作品『White Light from the Mouth of Infinity』、『Love of Life』でのサイケデリックかつドローンなサウンドなど、幾多の変遷を経て唯一無二の世界観とサウンドを獲得していく。2010年、「SWANS ARE NOT DEAD」の宣言とともに復活。現メンバーはMichael Gira、Norman Westberg、Christoph Hahn、Phil Puleo、Thor Harris、Chris Pravdicaの6人。復活アルバム『My Father Will Guide Me Up a Rope to the Sky』を皮切りに『The Sheer』、『To Be Kind』、そして現メンバーでのラスト・アルバム『The Glowing Man』を本年6月に発表。アルバム発売ごとにおこなわれた精力的なツアーは、現在もっとも体験するべき価値のある最高のライヴ・パフォーマンスと数多くのメディアやアーティストから大絶賛されている。今回決定した現メンバーでのラスト・ツアーでもヴォリュームのリミット無し2時間超えの強靭なパフォーマンスを披露してくれることでしょう。現SWANSの有終の美を五感を総動員して自ら確認して下さい!

東京公演
12/7 (wed) SHIBUYA TSUTAYA O-EAST

Open 18:30 Start 19:30 ¥6,000(前売り/1ドリンク別)
Information: 03-3444-6751 (SMASH)

大阪公演
12/8(thu) UMEDA CLUB QUATTRO

Open 18:30 Start 19:30 ¥6,000(前売り/1ドリンク別)
Information: 06-6535-5569(SMASH WEST)

以下、プレイガイドにてチケット発売中!
東京: ぴあ(P: )・ローソン(L: )・e+(pre: )
大阪: ぴあ(P: )・ローソン(L: )・e+(QUATTRO web、pre: )・会場

共催:root & branch 協力:TRAFFIC
総合お問合わせ:SMASH 03-3444-6751 smash-jpn.com, smash-mobile.com

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