「iLL」と一致するもの

Boris - ele-king

 去る4月末から1か月半にわたって欧州をツアー中のBoris。今週末マドリードのプリマヴェーラ・サウンドにて掉尾を飾る彼らだが、新たなニュースが届いている。
 Borisのキャリアにおいて重要な1枚に位置づけられる2002年の『Heavy Rocks』が、なんとジャック・ホワイト主宰のレーベル〈Third Man Records〉(最近はジーナ・バーチもリリース)よりリイシューされることになった。
 またこの再発を記念し、8月から10月にかけ、USオルタナの雄メルヴィンズとのダブル・ヘッドライナーとなるUSツアーも決定している。結成30年を超えて突き進むBoris、依然とどまるところを知らないようだ。

Boris 2002年の名作『Heavy Rocks』がThird Man Recordsからアナログ再発決定!MELVINSとの合同ツアーも開催!

Borisが2002年に発表した『Heavy Rocks』のオリジナル・リリースはBorisの本拠地である日本国内のみで流通し、世界中のリスナーが長らくこのアルバムのフィジカル・コピーを熱望していた。リリース当時、レコードのプレス作業中に工場で火災が発生しスタンパーが消失。そのためアルバムは何年もの間入手不可能となり、世界的なカルト・クラシックとなっていた。

Third Man Recordsから再発は8月18日にデジタル・リリース、9月8日にCDと2枚組LPで発売となる。

またこのリリースを記念し世界のヘヴィー・ロックを共に牽引してきた盟友であるMELVINSとの合同ツアーが開催される。
Borisは『Heavy Rocks』をMELVINSは『BULLHEAD』と共にそのキャリアの重要作を再現する。

Boris + Melvins, on tour:

August 24 Los Angeles, CA @ Belasco Theater
August 25 Pomona, CA @ Glass House
August 26 Fresno, CA @ Strummer’s
August 27 San Francisco, CA @ Great American Music Hall
August 28 San Francisco, CA @ Great American Music Hall
August 29 Petaluma, CA @ Mystic Theatre
August 31 Portland, OR @ Roseland Theater
September 1 Seattle, WA @ The Showbox
September 2 Spokane, WA @ Knitting Factory
September 3 Bozeman, MT @ The ELM
September 5 Fargo, ND @ The Hall at Fargo Brewing Company
September 6 Minneapolis, MN @ Varsity Theater
September 7 Milwaukee, WI @ The Rave II
September 8 Chicago, IL @ The Metro
September 9 St. Louis, MO @ Red Flag
September 11 Indianapolis, IN @ The Vogue
September 12 Grand Rapids, MI @ Pyramid Scheme
September 13 Detroit, MI @ St. Andrews Hall
September 14 Cleveland, OH @ Beachland Ballroom & Tavern
September 15 Pittsburgh, PA @ Roxian
September 16 Maspeth, NY @ DesertFest NYC
September 18 Albany, NY @ Empire Live
September 19 Boston, MA @ Paradise Rock Club
September 20 Bethlehem, PA @ MusicFest Cafe
September 21 Philadelphia, PA @ Brooklyn Bowl Philadelphia
September 22 Washington, DC @ The Howard Theatre
September 23 Virginia Beach, VA @ Elevation 27
September 24 Carrboro, NC @ Cat’s Cradle
September 26 Nashville, TN @ Brooklyn Bowl Nashville
September 27 Atlanta, GA @ Variety Playhouse
September 28 Savannah, GA @ District Live
September 29 Birmingham, AL @ Saturn
September 30 New Orleans, LA @ Tipitina’s
October 2 Houston, TX @ Warehouse Live - Studio
October 3 Austin, TX @ Mohawk
October 4 Dallas, TX @ Granada Theater
October 5 Oklahoma City, OK @ Beer City Music Hall
October 6 Tulsa, OK @ Cain’s Ballroom
October 7 Lawrence, KS @ The Bottleneck
October 9 Denver, CO @ Summit
October 11 Albuquerque, NM @ Sunshine Theater
October 13 Tempe, AZ @ Marquee Theatre
October 14 San Diego, CA @ House of Blues

Jam City - ele-king

 日曜日の朝6時過ぎの井の頭線や小田急線に乗って帰る途中の、電車の窓から差し込む日の光の眩しさは、年老いたいまでも忘れられないものだ。毎週末クラブに行くのが楽しくて楽しくて仕方がなかった日々を経験している人にはお馴染みの話だろう。あの奇妙な感覚は、安易に恍惚とは言いたくないほど恍惚と空虚さとのせめぎ合いのひとときだった……よなぁ〜、はぁ〜。ジャム・シティの新譜を聴いてぼくはあの感じを思い出した。深夜から朝方にかけての、都会の謎めいた集会で磨かれた香気。昨今の話題のダンス・アルバムがいろいろあるなかで、さり気なくエロティックでもある。アンダーグラウンドな感性からするとポップすぎるのだが、ジャム・シティの新作にはクラブ・カルチャーの夜の匂い、そしてエロティシズムが流し込まれている。

 昨年は、『クラシカル・カーヴス』がリリースから10年ということで曲が追加され再発された。これはもう、ジャム・シティのデビュー・アルバムにして2010年代の傑作のなかの1枚、グライム/ダブステップの異境を開拓し、デコンストラクテッド・クラブ(「脱構築クラブ」というマイクロ・ジャンル)に先鞭を付けた作品としてクラブ文化史には記録されている。じゃあだからといって本作『EFM』が、そのクローム状のマシン・ビートを引き継いでいるわけではない。ジャム・シティことジャック・レイサムは、自由人というか気紛れというか酔いどれ船というか、ダンスフロアを政治的抵抗の場と定義し、音楽それ自体は内省的で、インディ・ロック寄りのシンセ・ポップを試みた『Dream A Garden』を出しながら、その次作には、アンフェタミンと彼の混乱した生活が反映したグラム・ロック風のサイケデリア『Pillowland』を作ってみたり、確固たる自分のスタイルがあって、ある程度決まった方向に真っ直ぐ進むタイプではなく、その都度その都度進路を変えてみたりとか、清水エスパルスのことを知らないクセに髪をオレンジに染めてみたりとか、おそらくは自分に正直な根無し草タイプなのだろう。

 ここで少々脱線。デコンストラクテッド・クラブとはまさにそういうことを指す。シカゴ、デトロイト、バルチモア、ニュージャージー、ロンドン等々、その地域の特性が音楽を特徴づけてきたクラブ・ミュージックにおいて、具体的な場も党派性もない、ネット上から情報収集した雑食性に特徴を持つクラブ・ミュージック。『クラシカル・カーヴス』にはグライムもあればジャージー・クラブもハウスもあるし、ほかにもなんかある。
 また、人間不在のそのアートワークは、2010年代前半に脚光を浴びたOPNの『R Plus Seven』や一連のヴェイパーウェイヴとも共通する「non-place(非場所)」ないしは「場所の喪失」と呼ばれる感覚をも暗示していた。地域の匂いも人の匂いさえ感じないショッピングモールが「non-place」を象徴する場であり、今日のインターネット空間のアナロジーでもある。もうひとつ蛇足すると、デコンストラクテッド・クラブ(もしくはかつてのヴェイパーウェイヴ)が往々にしてディストピア・イメージを弄んだのは、地球温暖化から(日本だけではなく、西欧諸国においても中流家庭が減少した)政治経済にいたるまで、未来への失敗が明らかになったことにリンクしているだろう、というのが大方の解釈である。アーケイド・ファイアーの2007年の曲を思いだそう。「恐怖がぼくを動かし続ける/ それでも心臓の鼓動は遅く、ぼくの体はぼくをダンスから遠ざける檻のよう」。当時の若い世代が、ショッピングモールの見せかけだけの微笑みと健全さを破壊し歪ませたいと思ったとしても不思議ではない。「幽霊たちの時代」となった10年代の、これが初期衝動である。

 『クラシカル・カーヴス』のような革命的なアルバムは、若さゆえの恐いモノ知らずがあってこそ作れたと本人は回想しているが、それを思えば本作『EFM』は、曲それ自体の完成度を目指しつつ、クラバー以外にも聴いて欲しいという作者の意図が具現化された、外に向かっている作品だ。オープナーの “Touch Me” 、プリンス風のこの曲がアルバムの目指したところを象徴している。つまり、『EFM』はずいぶん耳障りがよく、バランスの取れたダンス・ポップ・アルバムである——ということで話を締めてもいいのだが、せっかくなのでもう少し突っ込んで書いてみると、“Touch Me” のベースにあるのはハウス・ミュージックで、 “Times Square” のラテン・パーカッションの入れ方もそうだが、80年代後半のシカゴ・ハウスやデトロイト・テクノをUKベースのフィルターに通しながらR&Bのセンスでポップにまとめ上げているという分析もできそうだ。ケレラのトラックを作っていた頃にくらべるとUKガラージ色は後退し、ハウス色が強調されているのは、ポップに突き抜けたR&B曲の “Wild n Sweet” やトランシーな“LLTB” にもはっきり表れている。ややレイヴィーな “Be Mine” のベースにはダブステップの記憶もあるが、『クラシカル・カーヴス』の壊れた感覚とは交わることのないメロディアスな展開で、4/4ビートながら適度にIDM的ギミックが入っている “Reface” から多幸感に満ちた滑らかな“LLTB” への流れは、なんというか、ちょっと愛の夏を思い出してしまうね、老兵は。いかんいかん。

 もうおわかりのように、ここには錯乱も政治もディストピアもない。“Tears at Midnight”のようなビートダウンした曲にもなかば感傷的な夜の生活の甘い陶酔と苦みがあって、“Redd St. Turbulence” のように具体的な「場所」にこだわった曲もある。ジャック・レイサムも今回は、特定の場面やそこにいた人間たちを思いながら曲を作ったというようなことをリリース・ノートのなかで言っているが、しかしまあ、この作品をひと言でまとめれば夜のファンタジーとなる。いま風のギミック(細かいエディットやピッチシフトされたヴォーカルなど)も交えながらのクオリティの高いアルバムになっているし、ダンスフロアの匂いやその艶めかしさを運んでくれるので、気分はダンスだ。10年代のエレクトロニック・ミュージックが見せた深淵から広がる暗闇のことは忘れて。

interview with Kassa Overall - ele-king

 一口に新世代のジャズ・ミュージシャンに括られる中でも、一際ユニークでほかにない個性を持つひとりがジャズ・ドラマーのカッサ・オーヴァーオールである。ジャズとヒップホップやエレクトロニック・ミュージックをミックスするミュージシャンはいまでは少なくないが、そうした中でもカッサのようにフリー・ジャズなど前衛的な手法を用いる者は異端で、言ってみればポップ・ミュージックと実験音楽を並列させてしまう稀有な存在でもある。そして、自身でラップもおこなうなど言葉に対しても鋭い感性を持つアーティストでもあり、自身の内面を赤裸々に綴る歌詞も彼の音楽を形作る重要な要素である。

 2019年にリリースされた『ゴー・ゲット・アイス・クリーム・アンド・リッスン・トゥ・ジャズ』でカッサ・オーヴァーオールの名前は知られるようになり、ジャズの未来を切り開く新しいアーティストとして一躍注目を集める。ただ新しいだけではなく、女流ピアニストでコンテンポラリー・ジャズの世界に大きな足跡を残した故ジェリ・アレンのバンドで活動するなど、ジャズの伝統的な技法や表現も理解した上で、それらと新しい技法を融合するなど、常々実験と冒険を繰り返しているアーティストだ。『ゴー・ゲット・アイス・クリーム・アンド・リッスン・トゥ・ジャズ』には故ロイ・ハーグローヴはじめ、アート・リンゼイ、カーメン・ランディなどベテランや実力者が多数参加しており、それら面々とのセッションからもカッサが伝統と新しさを融合することができるミュージシャンであることが伺える。

 2020年には『アイ・シンク・アイム・グッド』をリリースし、そこでは1960年代の黒人解放運動で勃興したブラックパンサー党に属し、社会活動家にして作家として活動してきたアンジェラ・デイヴィスがヴォイス・メッセージを贈っている。社会の抱える問題や不条理などにも向き合うカッサの内面を深掘りしたアルバムでもあり、同時に自身の病気や過去のトラウマなどにも対峙した、よりディープな内容の作品だった。その後、パンデミックなどで世界が激変し、当然彼の周りでも変化があったと想像される。そして、ようやく世界が以前の姿を取り戻しつつある2023年、カッサのニュー・アルバムの『アニマルズ』が完成した。カッサにとってコロナ禍を経てのアルバムであり、その間に長年活動してきたニューヨークから、故郷であるシアトルへと住まいも変わった。そうした中で作られた『アニマルズ』には、一体どのような思いやメッセージが込められているのだろうか。

僕の目標がアルバムごとに少しずつ、じわじわと自由に、そしてポップになっていくことなんだ。そのふたつって矛盾してるだろ? ポップ・ソング、つまりはよりキャッチーな曲を書けるようになりながら、よりアヴァンギャルドで、自由になりたいんだ。

2020年に『アイ・シンク・アイム・グッド』のリリースで来日したとき以来、2度目のインタヴューとなります。そのときはコロナのパンデミックが始まる直前で、その後世界各国でロックダウンがはじまり、ミュージシャンもツアーやライヴができなくなりました。あなたにとっても、パンデミックは大きな影響を及ぼしましたか?

カッサ・オーヴァーオール(以下KO):アルバムはうまくいったんだけど、リリースしたすぐあとに全てが閉鎖されてしまったんだ。だから、あのアルバムから本来得られるはずだったものが実現しなかった気がした。せっかくリリースまでたどり着いたのに、全てが降り出しに戻った気がしてさ。だからとにかく、やり直さなきゃと思った。で、パンデミックのときにミックステープの『シェイズ・オブ・フル』を作りはじめたんだ。あとはいろいろ練習をしたり、とにかく全てを自分ひとりでやっていた。それまでは、曲作りのときは他のミュージシャンと同じ部屋に入って作業していたけど、パンデミックのときは初めてネットでトラックを送り合ったんだ。パンデミックは落ち着いたけど、いまでもまだ少しその手法を活用してる。だから、それは影響のひとつだと思うね。

長年活動してきたニューヨークを離れ、故郷であるシアトルに戻ったのもパンデミックと関係があるのですか? これまでもシアトルとニューヨークをたびたび行き来してきたとは思いますが。

KO:ブルックリンのアパートに住んでたんだけど、休暇でシアトルにいたときにパンデミックでニューヨーク州が閉鎖されてしまってさ。あの期間はニューヨークにいる意味を感じなかったんだよね。ライヴも全然ないし、部屋で仕事をしているだけだったから。シアトルには芝生もあるし、水もあったし、木もあったし、山もあった。そう、つまりもっと自然があるから、あの時期の時間を過ごすのはシアトルのほうがよかったんだ。

いまでもニューヨークにはよく行くんですか?

KO:行くよ。ときどき行って、一ヶ月くらいステイするっていうのを続けてる。だから、シアトルとニューヨークどっちにもいる感じ。ツアーがたくさん決まってるし、いまは住む場所はあまり関係ないんだよね。家族もスペースもあるから、いまはとりあえずシアトルをベースにしてるだけ。

ニュー・アルバムの『アニマルズ』は〈Warp〉からのリリースとなります。〈Warp〉からリリースするようになった経緯について教えてください。

KO:前回のアルバムを出したあと、〈Warp〉の制作部から「ダニー・ブラウンのアルバムのためにビートを作れないか」ってオファーをもらったんだよ。で、ダニーのためにいくつかビートを作ったんだけど、その制作のスタッフが僕の音楽をかなり気に入ってくれて、そこから連絡を取り合うようになり、パンデミックの間もずっと話してたんだ。そして良かったのは、その会話の内容がビジネスよりも音楽の話だったこと。それが、契約するのに良いレーベルだっていうお告げだと思ったんだ。

『アニマルズ』はシアトルの自宅の地下室に作ったスタジオで制作されました。家という概念が『アニマルズ』には投影されていて、その表れが “メイク・マイ・ウェイ・バック・ホーム” という曲かと思います。この曲はどのようなアイデアから生まれたのですか?

KO:トラックを作りはじめたときは、アイデアなんて全然なかったよ(笑)。でも振り返ってみると、僕の場合は新しいサウンドのテクニックをいろいろと実験している中で最高の曲ができ上がることが多い。この曲はアルペジエーターを使って実験している中で生まれたんだ。コンピューターにコードをアルペジオにするアルペジエーターっていうプログラムやプラグインがあるんだけど、それを使って実験してるときにあのコード進行を思いついた。で、それを気に入って、その周りにドラムを乗せ、コーラスを書いた。そこまではすぐだったんだ。でも、そのあとあのラップを書くのに3年かかってさ(笑)。

なかなか納得いくものができなかったんですか?

KO:そう、十分に満足できるものが書けなかったんだよね。あの曲のためにはたぶん4つか5つラップを書いたと思う。

僕の全てのアルバムは全部集めてひとつの作品なんだ。それぞれのアルバムが、ひとつの大きな物語を語るための要素。だから、同じものは二度と作りたくないんだよね。

“メイク・マイ・ウェイ・バック・ホーム” ではシンガー・ソングライターのニック・ハキムと共演しています。彼は私個人もとても好きなミュージシャンなのですが、ニューヨークのジャズ/アーティスト集団のオニキス・コレクティヴで活動していたときに知り合ったそうですね。彼との出会いはいかがでしたか?

KO:彼に初めて会ったのは、オニキス・コレクティヴがロウアー・イーストサイドでプレイしているときだった。僕はオニキスでドラムを叩き、ニックは歌っていたんだ。それが初めて出会ったときの記憶。もう何年も前のことだから、僕が勘違いしていなければだけど。あれはたしかラッパーのウィキのミュージック・ビデオのリリース・パーティーじゃなかったかな。ウィキは僕のアルバムにも参加してくれてる。たぶんオニキスはあのときウィキのパーティーのために演奏してたんだと思う。

ニックの第一印象はどうでしたか?

KO:第一印象は、音楽に対してすごく熱心な人だなと思った。そして彼は、そのとき同じ日に別のショーがあって、サウンド・チェックに参加したあとほかのショーで歌って、そのあとこっちに戻ってきてまた歌ってた(笑)。僕もいつも音楽でバタバタしてるから、この人とは仲良くなれそうだと思ったね(笑)。

ニック・ハキムもそうですが、『アニマルズ』はこれまで以上に多彩なゲスト・ミュージシャンとのコラボがおこなわれています。ジャズ方面を見ると、前作にも参加したシオ・クローカー、ヴィジェイ・アイヤー、ビッグ・ユキ、サリヴァン・フォートナーなどのほか、サックス奏者のトモキ・サンダースやアンソニー・ウェア、ピアニストのマイク・キングといった面々がバンド・メンバーとなっています。中でもトモキ・サンダースはファラオ・サンダースの息子としても知られるのですが、どのように出会ったのですか?

KO:トモキ・サンダースと初めて会ったのは、「スモールズ」っていうニューヨークにあるジャズ・クラブ。ミュージシャンたちがジャム・セッションをやるために集まるバーなんだ。そこで彼を見かけるようになってさ。当時、彼がすごくブリムの大きな帽子をかぶってたのを覚えてる。で、たしか最初はシオ・クローカーが彼のことを紹介してくれたんじゃないかな。それでトモキと連絡をとるようになって、日本に行ったときに僕のショーに彼を呼んだんだ。

彼の第一印象は?

KO:彼って、ほかのミュージシャンに対してすごく謙虚なんだ。「会えて光栄です」みたいなさ(笑)。ほかのミュージシャンをすごくリスペクトしてるのが伝わってくるんだよね。

彼が参加した “スティル・エイント・ファインド・ミー” など、フリー・ジャズ的なアプローチも感じられるわけですが、実際に何らかの影響があったのでしょうか?

KO:トモキはすごく自由なエナジーと溢れるような情熱をあの曲にもたらしてくれたと思う。たしかに、フリー・ジャズ的なアプローチは感じられるかもしれないね。というか、僕の目標がアルバムごとに少しずつ、じわじわと自由に、そしてポップになっていくことなんだ。そのふたつって矛盾してるだろ? ポップ・ソング、つまりはよりキャッチーな曲を書けるようになりながら、よりアヴァンギャルドで、自由になりたいんだ。僕はキャッチーさとクレイジーさを同時に手に入れる方法を探求しているんだよ。

かなり難しそうに聞こえますが(笑)。

KO:その通り(笑)。だからこそ、たくさん実験する必要があるんだ。いつもうまくいくとは限らないけど、ときにはうまくいくこともある。これだ!と心をつかむものが、その過程で生まれるんだよ。それを見つけ出すことが僕の目標のひとつなんだ。

初めからそこまで大きなヴィジョンを持って活動しているんですね。

KO:それはたぶん、僕がほかのアーティストのアルバムの歴史とディスコグラフィの大ファンだからだと思う。僕にとっては、僕の全てのアルバムは全部集めてひとつの作品なんだ。それぞれのアルバムが、ひとつの大きな物語を語るための要素。だから、同じものは二度と作りたくないんだよね。過去に戻るような作品は作りたくないし、前に進み続けたいんだ。ファンやリスナーの人たちが全てのアルバムを聴いたときに、「なるほど、こういうことだったのか」と気付けるような作品を作りたい。

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以前の僕は「ああ、僕はひとりなんだ」という感じだった。でもいまは、生きている人なら誰でも孤独や恐怖、人目を気にするということを何らかの形で経験し、その問題に対処しなければならないと思ってる。

メンバーは基本的にニューヨークを拠点とするジャズ・ミュージシャンが多いようですが、あなたがニューヨークに行って演奏した素材を、シアトルのスタジオに戻ってミックスする、というような作業だったのですか?

KO:演奏はニューヨーク。僕はいまでもよくニューヨークに行くからそれが理由でもあるし、もうひとつの理由は、アルバムの曲の中には長年温めてきた曲もあるから。つまり、ニューヨークに住んでいたときに作っていた曲もあるからなんだ。僕の音楽の作り方は、いろいろな時代のレコーディング・セッションの断片を引っ張りだしてきて、それを基に作っていったりもする。作っているものがそのとき作っているプロジェクトに合わなければ使わずそのまま置いておいて、後からまた準備が整ったときに使うんだ。

ミックスはどこで? シアトルのスタジオですか?

KO:いや、ミックスはニューヨークでやった。エンジニアのダニエル・シュレットと一緒にね。彼はストレンジ・ウェザーっていうスタジオをもっていて、そこで作業したんだ。そこは僕のファースト・アルバムをレコーディングした場所でもある。素晴らしいスタジオなんだけど、いま彼はミックスしかしてなくて、レコーディング用のスタジオは必要ないからもう閉鎖してしまうらしい。ダニエルとはもう何年も一緒に仕事をしてきた。彼は僕がやろうとしていることを理解してくれているんだ。

シアトルではどんな作業を?

KO:シアトルでは自分ひとりでの作業が多かった。シアトルのホーム・スタジオでは、材料が全て揃っている状態だったんだ。そこからそれを編集したり、歌詞を書き足したり、ファイルを送り合ったりしてた。バンドのレコーディング・セッションをシアトルでやることはほとんどなかったね。あと “スティル・エイント・ファインド・ミー” をレコーディングしたのはオークランドだった。

それはどういう経緯で?

KO:ツアーの終わりが西海岸だったから、まずオークランドでスタジオを借りて、それからロサンゼルスに行って、そこで “ザ・ラヴァ・イズ・カーム” とほか何曲かをレコーディングしたんだ。僕は結構どこでも曲を作ることができるから。

前作やその前の『ゴー・ゲット・アイス・クリーム・アンド・リッスン・トゥ・ジャズ』でも、ジャズとヒップホップを融合した作品はいろいろ見られ、それらでは主にあなたがラップをすることが多かったと思います。今回もあなたがラップをする曲もありますが、同時にダニー・ブラウンとウィキをフィーチャーした “クロック・シッキング”、 リル・Bシャバズ・パレセズをフィーチャーした “ゴーイング・アップ” など、本職のヒップホップのラッパーたちとコラボするケースが目立ちます。これまでとは違う何か変化などがあったのでしょうか?

KO:僕自身がラップやヒップホップのファンだからだと思う。後はラッパーがどんなサウンドを奏でるのか、別のタイプのプロダクションや、前衛的で実験的なプロダクションで自分の音楽を聴いてみたいと思うから。たとえば今回のアルバムでは、リル・Bのラップの裏で僕がエルヴィン・ジョーンズみたいなドラムを叩いているわけだけど、良い意味でその組み合わせが僕を笑わせるんだ。ダニー・ブラウンと前衛的なピアニスト、クリス・デイヴィスの組み合わせもそうだしね。僕は異なる世界を結びつけるっていうアイデアが好きでさ。ヒップホップと繋がりがないような音楽をヒップホップと結びつけるっていうのは面白いと思う。そのアイデアがとにかく好きなんだよね。次のアルバムがどうなるかはわからないけど、とりあえずいまはそれが自分にとってクールな実験だったんだ。

人生を生きる人間として、僕はときに動物園やサーカスにいる動物のように感じることがある。人前に立ってパフォーマンスをして、オーディエンスを楽しませ、大きいけれど大き過ぎない動きをしなければならない。

スカタライツに参加してきたトロンボーン奏者のアンドレイ・マーチソン、タブー・コンボの創設者であるハーマン・ナウの息子のベンジ・アロンセなど、ラテン系のミュージシャンの参加も目を引きます。それが関係するのか、“スティル・エイント・ファインド・ミー”、“ザ・ラヴァ・イズ・カーム”、“ノー・イット・エイント” といった、ラテンのリズムや旋律を取り入れた楽曲があります。こうしたラテン音楽への傾倒は何か意識したところがあるのでしょうか?

KO:アンドレイとは大学が一緒だった。彼はラテン的なミュージシャンってわけではないけど、スピリチュアルな教会のようなエナジーをもたらしてくれたと思う。そしてベンジは、僕のライヴ・バンドのパーカッショニストなんだ。彼のパーカッションは父親の血を引いているからか、普通のアフロ・キューバンのリズムとは違って、ハイチの影響が混ざってる。それがすごくユニークなんだよね。

ニック・ハキム以外に、ローラ・ムヴーラ、フランシス・アンド・ザ・ライツ、J・ホアードと、それぞれ異なるタイプのシンガーたちが参加しています。これまで以上に歌に対する比重が強くなったアルバムであると思いますし、歌詞の重要性も増しているのではないでしょうか。そのあたりについて、あなた自身はどのように考えていますか?

KO:僕もそう思う。いまはヴォーカル・レッスンも受けてるんだ。曲をパフォーミングするという経験をすると、ヴォーカルがいかにリスナーにとって重要なものかがわかるようになる。コーラスは曲に大きな影響を与えるし、良いコーラスがあればリスナーとまた違う繋がり方で結ばれることができるんだ。

“レディ・トゥ・ボール” は成功や努力の対価としての精神の消耗について歌い、“イッツ・アニマルズ” は人前でありのままの自分を体現することのプレッシャーを描いており、音楽やエンターテイメントの世界で生きるあなた自身が投影された作品かと思います。あなたは『アイ・シンク・アイム・グッド』以降は特に顕著ですが、自身の体験に基づいて、内面をさらけ出すような作品を作ってきて、その傾向は『アニマルズ』でより強くなっているように感じますが、いかがですか?

KO:個人的なことをさらけ出しているのは昔から変わらない。どのアルバムでも、正直なところ僕はかなり多くのことをさらけ出していると思う。『ゴー・ゲット・アイス・クリーム・アンド・リッスン・トゥ・ジャズ』の “ワッツ・ニュー・ウィズ・ユー” って曲も、すでに強烈な別れの曲だったしね。でも前回のアルバムでは、内容が違っているんだと思う。あのときは精神的な病とそれとの戦いと向き合っていたから。そして今回のアルバムでは、自分自身の実存的なフィーリングを扱っている。まあもしかしたら、前よりも自分をさらけ出すことに心地よさを感じることができているのかもしれないね。最初のころはもっと大変だったと思う。でもいまは、自然とそれができるんだ。そして後から振り返って、自分がどんな心のつっかえを取ろうとしていたのかがわかる。前よりも意識して自分をさらけ出そうとしているというよりは、もっと楽にそれができるようになったんじゃないかな。

“ソー・ハッピー” と “メイビー・ウィ・キャン・ステイ” は、躁鬱病を患って入院や自殺未遂を経験したあなたが投影されたような作品です。『アイ・シンク・アイム・グッド』でも、そうした病気やメンタルヘルスについて扱った作品がありましたが、こうした作品はあなたがこれからも生きていくうえでテーマとなっていくものなのでしょうか?

KO:前回のアルバムと今回のアルバムの間には、興味深い鏡が存在していると思う。前作は自分と自分の個人的な闘いについてだったけど、今作では自分自身だけについてではなく、世界全体についても考えていて、誰もが抱えている精神的な問題という視点になっているんだ。以前の僕は「ああ、僕はひとりなんだ」という感じだった。でもいまは、生きている人なら誰でも孤独や恐怖、人目を気にするということを何らかの形で経験し、その問題に対処しなければならないと思ってる。だからこのふたつの作品は、異なる方法でお互いを映し出していると思うんだよね。壊れたレコードみたいに聴こえたくはないから、ずっと同じテーマを語るわけにはいかないし、自分でも今後どんなトピックに触れていくかはわからない。でも、このテーマを進化させていきたいことだけはたしか。人間として、毎回進化を続けていきたいからね。

『アニマルズ』は、あなたのエンターテイナーとしての人生のパラドックスを描くと同時に、黒人がどのように扱われているかについての声明も含んでいるそうですね。そうしたことを踏まえて、『アニマルズ』が持つテーマについて改めて教えてください。

KO:『アニマルズ』というタイトルに込められたテーマはいくつかある。そのひとつは、人間であるということはどういうことなのか?という問いかけ。動物ではなく人間であるということの意味だね。僕たちは自分たちを人間と呼び、信仰を持ち、より高い能力を持っているとい考える傾向がある。でも同時に、僕たちはよくお互いを動物のように扱ってしまっているんだ。合わなかったり、自分たちにとって都合の悪いことをすれば共存しない。でも人間であるなら、敵味方関係なく、お互いに共感できる部分を見つけることができるはずなんだ。そしてもうひとつのテーマは、エンターテイナーとしての自分の葛藤。人生を生きる人間として、僕はときに動物園やサーカスにいる動物のように感じることがある。人前に立ってパフォーマンスをして、オーディエンスを楽しませ、大きいけれど大き過ぎない動きをしなければならない。アクションが大き過ぎると人びとを怖がらせてしまうし、小さ過ぎれば相手にされないから。そして、みなやっぱり楽しませてもらうことを期待している。そういう状況下にいると、サーカスの猿じゃなくて僕も人間なんだって感じることがあるんだよね。それは、僕が対処しなければいけない感情なんだ。パフォーマンスをしていると、僕自身も人生というものを体験している人間のひとりであり、経験していることに対して自分がどう感じているかを表現したいだけなんだ、ということを忘れてしまう。僕は商品じゃないんだってことをね。この対立は必ずしも悪いことばかりではないんだ。ツアーも大好きなんだけど、そのエネルギーに流され過ぎてもいけない。来場者と握手もするし、挨拶もするし、写真も一緒にとるけど、自分は人間であって、一足の靴ではないこと、自分はあくまで “人間” というものを共有しているんだということを忘れてはいけないんだ。やるべきことが多過ぎたり、忙しくなると、ときにそれを忘れてしまい、その葛藤と戦うことになるんだよね。

ありがとうございました!

KO:こちらこそ、ありがとう。10月に来日するんだ。また日本に行けるのを楽しみにしているよ。

Kassa Overall Japan Tour 2023

JAZZ界の台風の目!!
革新的ドラマー/プロデューサー「カッサ・オーバーオール」が精鋭のバンドを率いて来日決定!!
最新アルバムでも解放したそのアヴァンギャルドな実験精神と独創的美学を体感せよ!!

Kassa Overall - カッサ・オーバーオール
Support act: TBC

TOKYO
2023.10.19 (THU)
WWWX

OSAKA
2023.10.20 (FRI)
Billboard Live Osaka

シアトル在住、卓越したスキルを持ったジャズ・ドラマーとして、また先鋭的なプロデューサーとして、リズムの無限の可能性を生み出し続けるカッサ・オーバーオールの来日公演が決定!! 進化するジャズ・シーンの行き先を見届けたいジャズ・ファンはもちろんの事、更にはヒップホップの拡張し続ける可能性を体感したい全ての音楽ファンが来るべきライブになること間違いなし!!
今年3月にはエイフェックス・ツインやフライング・ロータス、スクエアプッシャー等が所属する名門レーベル〈Warp Records〉との電撃契約を発表し、遂に5月26日にリリースされる最新アルバム『Animals』は、全ての楽曲でジャズとヒップホップとエレクトロニクスが絶妙に融合した新鮮な作品となっており、ジャズの新しい未来を切り開いてくれるような歴史に残るアルバムであることはもはや一聴瞭然だ。
そんなカッサ・オーバーオールの単独公演では、トモキ・サンダースやイアン・フィンク、ベンジー・アロンスなど豪華なミュージシャンがバンドメンバーとして集結!
ここ日本でも、世界を舞台に活躍するBIGYUKIや、ジャズ評論家の柳樂光隆らから大絶賛を浴びているカッサ・オーバーオール。アヴァンギャルドな実験精神と独創的美学が、ジャズの未来を切り拓く、まさにその瞬間を見逃すな!

東京公演
公演日:2023年10月19日(木)
会場:WWWX
OPEN 18:00 / START 19:00
前売 ¥7,000 (税込/別途1ドリンク代/オールスタンディング)
※未就学児童入場不可

チケット発売:
先行発売
★ BEATINK主催者先行
5月26日(金)10:00~
https://beatink.zaiko.io/e/kassaoverall
★ イープラス最速先行販売(抽選)
5月30日(火)12:00~6月4日(日)18:00
https://eplus.jp/kassaoverall/

一般発売:6月10日(土)~
● イープラス https://eplus.jp/kassaoverall/
● ローソンチケット https://l-tike.com/kassaoverall/
● BEATINK (ZAIKO) https://beatink.zaiko.io/e/kassaoverall
INFO: BEATINK [WWW.BEATINK.COM]

大阪公演
公演日:2023年10月20日(金)
会場:Billboard Live Osaka
開場/開演(2部制)
1部:OPEN 17:00 / START 18:00
2部:OPEN 20:00 / START 21:00
チケット:S指定席 ¥8,500 / R指定席 ¥7,400 / カジュアル席 ¥6,900

チケット発売:
主催者先行:5月31日(金)
一般発売:6月7日(水)
http://www.billboard-live.com/

INFO: Billboard Live Osaka http://www.billboard-live.com/

企画・制作:BEATINK / www.beatink.com

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【シン・ジャズ・キャンペーン】

~拡張するJAZZ~

ジャズの未来を切り拓く革新的ドラマー、カッサ・オーバーオールの最新作『Animals』発売を記念して、進化系ジャズの注目アイテムを対象にしたキャンペーンを開催!

ソウル、ヒップ・ホップ、ロック、ポップスといった他ジャンルと
クロスオーバーする新世代ジャズをピックアップ!

またキャンペーン期間中、対象商品をご購入頂くと先着特典として音楽評論家:柳樂光隆氏監修による「Kassa Overall Handbook」をプレゼント

*特典は無くなり次第終了致します

【キャンペーン期間】
2023年5月26日(金)~6月25日(日)迄

---------【対象商品】---------
※全フォーマット対象
(国内盤CD、国内盤CD+Tシャツ、輸入盤CD、輸入盤LP、輸入盤LP+Tシャツ)

・Kassa Overall『ANIMALS』(5/26発売)
・Louis Cole『Quality Over Opinion (新装盤)』
・Makaya McCraven『In These Times』
・Nala Sinephro『Space 1.8』
・Emma Jean Thackray『Yellow』

---------【特典詳細】----------
特典:冊子「Kassa Overall Handbook Produced by Mitsutaka Nagira」

「Jazz The New Chapter」シリーズ監修者、柳樂光隆氏監修によるジャズの枠組みを逸脱する「異端児」の思想を読み解く

掲載内容
・カッサ・オーバーオール インタビュー
・BIGYUKI インタビュー
・トモキ・サンダース インタビュー
・カッサとジャズ人脈の交友関係
・カッサの音楽を彩るラッパー/シンガー
・UK最先端レーベルとジャズの関係
・新鋭ライターが語る越境するジャズ・ミュージシャン
・アーティスト/著名人が語るカッサ:藤本夏樹(Tempalay)/和久井沙良/MON/KU/竹田ダニエル

取り扱い店舗
タワーレコード:札幌パルコ、下田、盛岡、仙台パルコ、渋谷、池袋、新宿、町田、川崎、横浜ビブレ、浦和、津田沼、新潟、金沢フォーラス、名古屋パルコ、名古屋近鉄パッセ、鈴鹿、静岡、梅田NU茶屋町、なんばパークス、あべのHOOP、京都、広島、神戸、倉敷、福岡、若松、久留米、那覇、タワーレコードオンライン

HMV:札幌ステラプレイス、エソラ池袋、立川、ラゾーナ川崎、ららぽーと横浜、イトーヨーカドー宇都宮、イオンモール羽生、ららぽーと富士見、イオンモール太田、阪急西宮ガーデンズ

その他:代官山蔦屋書店、JEUGIA [Basic.]、エブリデイ・レコード、Hachi Record Shop and Bar

label: Warp Records
artist: Kassa Overall
title: ANIMALS
release: 2023.05.26

BEATINK.COM: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13345

Tracklist
01. Anxious Anthony (feat. Anthony Ware)
02. Ready To Ball
03. Clock Ticking (feat. Danny Brown & Wiki)
04. Still Ain’t Find Me (feat. Tomoki Sanders, Bendji Allonce, Mike King & Ian Finklestein)
05. Make My Way Back Home (feat. Nick Hakim & Theo Croker)
06. The Lava Is Calm (feat. Theo Croker)
07. No It Ain’t (feat. Andrae Murchison)
08. So Happy (feat. Laura Mvula & Francis and the Lights)
09. It’s Animals
10. Maybe We Can Stay (feat. J. Hoard)
11. The Score Was Made (feat. Vijay Iyer)
12. Going Up (feat. Lil B, Shabazz Palaces & Francis and the Lights)

Ben Vida, Yarn/Wire & Nina Dante - ele-king

 ミニマルな音楽でありながらも、どこか祈りを捧げるような音楽である。慎ましやかで静謐。親密で崇高。実験的にして親密なムード。そんな相反するイメージが頭をよぎる。
 この「美しい」音楽を作曲したのは誰か。そう、ニューヨーク在住のエクスペリメンタル・アーティスト/作曲家/モジュラー・シンセサイザー奏者のベン・ヴィーダである。

 ベン・ヴィーダはこれまでも多くのユニットに関わってきた。ジョーン・オブ・アークへの参加はよく知られている。ミニマル音楽を室内楽的アンサンブルを聴かせるタウン・アンド・カントリーのメンバーでもある。またバード・ショウ名義でも活動していた。
 ヴェン・ヴィーダのソロ・アルバムは2000年ごろから発表されている。ミニマルなムードはタウン・アンド・カントリーの音楽性と共通しているが、サウンドのフォームはアルバムごとに多様である。またリリース・レーベルもベルリンの〈PAN〉やフランスの〈Shelter Press〉、ポルトガルの〈iDEAL Recordings〉、イタリアの〈901 Editions〉など多岐にわたる(ひとつのレーベルに固定していないという意味で)。
 例えば2012年に〈PAN〉からリリースされた『Esstends-Esstends-Esstends』では鉱物的でひんやりとした音が不規則に鳴り響くサウンドを生成していた。このアルバムは彼の傑作のひとつだ。
 2013年に〈Shelter Press〉からリリースされた『Slipping Control』も独創的だった。〈Shelter Press〉から出版されたヴェン・ヴィーダの著書『Tztztztzt Î Í Í .....』をタイヨンダイ・ブラクストン、サラ・マーゲンハイマー、そしてベン・ヴィーダが朗読をし、それを電子変調させることで電子音と融合するサウンドをつくりあげていた。
 2019年に〈Shelter Press〉からリリースされた『Reducing The Tempo To Zero』はUSBカードでリリースされたアルバムだ。メディア特性を活かした4時間に及ぶ超・長尺のドローン音楽を収録している。硬質な響きから柔らかい音まで変化する持続音(ドローン)は、聴き手の時間を無化するような効果があった。深い沈静効果があるとでもいうべきか。
 2021年にはニューヨークのサウンド・アーティストで、〈room40〉からのリリースでも知られるマリナ・ローゼンフェルドとの共作『Leaving』をイタリアの優良実験音楽レーベル〈901 Editions〉からリリースする。硬質な音響やリズミックなパルス音が交錯する秀作だ。

 2023年、〈Shelter Press〉からリリースされたアルバムが本作『The Beat My Head Hit』である。ニューヨークを拠点とするピアノとパーカッションのカルテット、ヤーン/ワイヤー(Yarn/Wire)とヴォーカリストのニナ・ダンテらとのプロジェクトとなっている。ヤーン/ワイヤーとニナ・ダンテに加え、ヴェン・ヴィーダもパフォーマンスに加わっている。
 先に書いたように作曲はベン・ヴィーダだ。ここで彼はミニマルな演奏(ピアノとパーカッション)とミニマルなヴォーカルというこれまでにない音楽性を展開しているのだ。
 声の導入という意味では、2013年の『Slipping Control』に近いともいえるが、今回の「声の活用」は生のままで電子的な変調はなされていない点がポイントだ(また読まれる言葉はベン・ヴィーダによる)。極めてミニマルな旋律だが、一種のヴォーカル・アルバムとして自然に聴けてしまうのである。ドローンのような持続音ではなく、ミニマル音楽という意味ではタウン・アンド・カントリーにもっとも近い彼のソロ作品といえるかもしれない。

 『The Beat My Head Hit』には全5曲が収録されている。録音は2021年にニューヨークとシドニーでおこなわれた。本作の原形となる曲は2018年にニューヨーク・ブルックリンで開催された「BAM2018」で披露された4声とエレクトロニクスのためのパフォーマンス「And So Now」だという。この曲から4年の月をかけてヤーン/ワイヤーらと共に制作を重ねていったようだ。
 1曲目 “Who's Haunting Who Here” から声とピアノのミニマルで親密なアンサンブルで幕を開ける。いくつかの声とピアノのレイヤーには、とても静謐な響きを感じる。
 続く2曲目 “Rhythmed Events” は12分26秒に及ぶ曲である。乾いたパーカッションと、少しずれていくような声のレイヤーがとても心地よい。途中から深く響くピアノも重なり、少しずつ意識を飛ばしていくようなアンサンブルを展開する。
 3曲目 “Drawn Evening” は微かなノイズ音からはじまり、声と演奏のアンサンブルに自然に移り変わっていく。ゆっくりと歩くようなピアノと、深く打たれるシンバルの音に耳をもっていかれる。
 4曲目 “The Beat My Head Hit” は声と打撃音からはじまる。やがて声も消えて、ドローン音のみになる。
 最終曲5曲目 “Still Point” は声とピアノの深い残響が溶け合うように重なる曲だ。途中から残響を包むようなアンビエンスな響きも鳴りはじめる。この心を沈静させていくような曲で、アルバムを幕を閉じる。

 ミニマル音楽と歌。このふたつを見事に融合し、同時に歌の向こうにある言葉と声へと意識が向かうように慎重に作曲・演奏がされていた。しかもとても親しみやすく聴きやすい音楽なのである。そう、ミニマルなフォーク、ミニマルなシンガーソングライター・アルバム、ミニマルな聖歌とでもいうべきか。
 ここにあるのは反復と響き、声と親密、深い時間と音、その交錯である。真夜中の静かな時間、ゆったりとした気分で耳を傾けたいアルバムだ。

Bob Marley & The Wailers - ele-king

 レコードにまつわる様々な試みをつづけるVGAの新作は、なんとボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズのTシャツ。秘蔵音源『Studio Recordings Intro to the Matrix』のアナログ化を記念するアイテムとのこと。これはすぐなくなりそうなので、お早めにチェックを。

VGAにて遂にBOB MARLEY & THE WAILERS Tシャツの販売予約を開始します!

<本文>
60年代から80年代初頭までレゲエ・ミュージックを世界に広め、音楽のみならずその思想や支配的な体制に反対する姿勢など数多くの伝説を残したBOB MARLEY。今回は秘蔵音源、Studio Recordings Intro to the Matrixの初アナログ化を記念して作られたTシャツでフロント面はシルクスクリーンを駆使してプリントしています。

今回も期間限定受注販売ですのでお早めにどうぞ。



BOB MARLEY & THE WAILERS
Studio Recordings Intro to the Matrix
Official T-Shirts
Pre-Order Start!


BOB MARLEY & THE WAILERS
Studio Recordings Intro to the Matrix
Official T-Shirts
BLACK

4,800円 (With Tax ¥5,280)
S/M/L/XL/XXL


BOB MARLEY & THE WAILERS
Studio Recordings Intro to the Matrix
Official T-Shirts
ROYAL

4,800円 (With Tax ¥5,280)
S/M/L/XL/XXL

*Purchases from outside Japan are tax exempt.
※日本国外からのご購入は非課税となります。
*Free shipping within Japan for purchases over 10,000 yen.
※1万円以上のお買い上げで日本国内は送料が無料になります。
*Exclusively until 25 Jun. 2023.
※期間限定受注生産(~2023年6月25日まで)
*The products will be shipped in mid July 2023.
※商品の発送は 2023年7月中旬ごろを予定しています。
*Please note that these products are a limited editions and will end of sales as it runs out.
※限定品につき無くなり次第終了となりますのでご了承ください。

<URL>
https://vga.p-vine.jp/exclusive/vga-1038/


ゴスペルが歌われる、 黒人教会の様子(by Noda)

 これはスラヴォイ・ジジェクも取り上げていた、スパイク・リーの映画『マルコムX』においてもっとも印象的なシーンのひとつである。大学での公演に向かうマルコムXの前を、本を抱えた若い学生風の白人女性が駆け寄って、「あなたのスピーチを読んで、あなたの主張に賛同します。私のような偏見のない白人に何かできることはありますか?」と目をキラキラさせながら言う。するとマルコムXは表情を変えずに、「何もない(nothing)」、とだけ言って彼女を置き去りにする。この場面に込められた意味は、おそらくはこんなことなのだろう。「ありがとう。だが、思い上がるなよ」。ジジェクが言うように、私たちにできることは「(彼らの)解放」ではなく「支援」なのだ。そしてぼくが思うに、ではなぜ「何もない」のかを知ることではないだろうか。
 ブラック・カルチャーは、それ自体が途方もない宇宙である。それは昭和生まれの日本人である自分を表面的に形づくるうえで大きな要素となったもの——日本の土着性と西欧の近代性、これら両方と衝突し、凌駕し、ときに融合し、ときに想像力の動力源の燃料となり、ときに実存的な喜びを与えられ、そしてほとんどは太陽よりも眩しく、黒い宇宙として膨張する。その彼方に見える星座には、ジェイムズ・ブラウン、マイルス・デイヴィス、サン・ラー、ジョン・コルトレーン、ジミ・ヘンドリックス、ニーナ・シモン、アレサ・フランクリン、マイケル・ジャクソン、ギル・スコット=ヘロン、あるいはアミリ・バラカ等々、といった伝説たちが瞬いているわけだ。
 アミリ・バラカの追悼文からはじまるグレッグ・テイトの『フライボーイ2』は、冒頭で次ぎのような一文が強調される。「作家が残すべきものは文体(スタイル)だけである」、要するに、重要なのは文体であると。では、なぜ意味よりも文体なのか、これこそがグレッグ・テイトがブラック・カルチャー(音楽、文学、アート、映画、政治)を語るうえで、いいや、ブラック・カルチャーそのものにおいて、その意味を解読するうえでひとつの鍵になるコンセプトだ。繰り返す。重要なのは文体である。何を言うのかよりもどう言うのか。スタイルにこそ本質がある。というのも、西欧植民地主義という最大の暴力に晒されたすべてのブラック・カルチャーにとっての意味は、おおよそすべてコード化(暗号化)されているのだから。ゆえにブラック・カルチャーにおいてはメタファーとダブル・ミーニング、ウィットが重視され、文体そのものがメッセージになりうる。


『フライボーイ2』日本版

 じつを言えば、『フライボーイ2』の翻訳に手を焼いていると、アフロ・アメリカンの友人(デトロイト・エスカレーター・カンパニーである)に相談したところ、彼の交友関係のなかで、グレッグ・テイトと深い交流を持っていたふたりのアフロ・アメリカンを紹介された。ひとりは、現在LAで映像作家をしている(たとえばジェイ・Zやビヨンセの映像を撮っている)デトロイト出身のドリーム・ハンプトン、もうひとりは、現在東京に住んでいる電子音楽家のデジ・ラ。ふたりにメールを送るとともにたいへん友好的で、ハンプトンにいたっては手術前だったのに関わらず助言してくれたのだが、このふたりから最初に言われたことは、「グレッグの翻訳という試みは、日本とブラック・カルチャーの関係において歴史的なことで、文化的に素晴らしいことだけれど、グレッグの英語を訳すのはおそらく不可能だ」「訳者が気の毒だ」という、こちらがくじけそうになるような言葉だった。

 文体の解釈は難しい。アミリ・バラカやフランツ・ファノンの日本版を読んでも、『フライボーイ2』のなかでグレッグが解説しているような、敢えて白人を挑発するようなその文体というところまでは、たしかにぼくにはわからなかった(たんに理解力の問題かもしれないが)。同じように、敢えて黒人の土着性(ヴァナキュラー)を強調しながら、黒人英語とアカデミックな用語を駆使し、意味がグルーヴを生み、読者にある一定の教養を要しながら、造語を交え、ときに唐突な飛躍をみせる彼の黒い文体を日本語化するのは困難極まりない。たとえばだが……ヒップホップが好きそうな街をぶらついている黒人が、ブラック・イングリッシュを使いながらフーコーやニーチェ、シェイクスピアなども援用し、ジャズやヒップホップや政治について知的刺激と批評眼をもった、即興的な喋りをおっぱじめている場面を想像してみてほしい。これが『フライボーイ2』の、ひとつの醍醐味だ。シリアスな文化批評の書物のなかで、これほど「マザーファッカー」「マザファカ」(そして彼の造語「ファザーマッカー」)が頻出するものはないだろうし、これほどNワード連発の本もないだろう。「マザーファッカー」はもちろんだが、Nワードだって当のアフロ・アメリカンにとってもかなりきわどい(聞きたくない人にとっては聞きたくない)言葉なのだ(ちなみに本書には、タランティーノ映画やラップの歌詞で世界中に拡散されたこの「Nワード」に関する考察もある)。

 グレッグの本来の姿を正確に知るには原書(アメリカ人でさえ難解だという文章)を当たるしかないのだけれど、日本語訳でも、彼が何を伝えたかったのかは理解できるはずだ、という思いから今回は刊行します。本書に収められたエッセイのひとつに「N*g*aはいかにしてジョークを手に入れたか」というのがあって、これを読むとなるほど、彼らブラックが宿命的にウィットの精神を持たざるを得なかったことがわかるし、アミリ・バラカがけっこう(悪い意味で)とんでもない人だったこともわかる。ウォール街占拠のデモになぜ黒人がいなかったのかもウィットに富んだ表現で説明されているし、ギル・スコット=ヘロンについて自分は知っているつもりでいたがじつは何も知らなかったことに気づかされた。ちなみにスコット=ヘロンの追悼文は、ぼくは原文を読みながら泣いた文章である。「30歳になったヒップホップ」や「ヒップホップとは何か?」(そして、70年代のブロンクスのグラフィティについて詳説されるラメルジーへのインタヴュー)はラップ・ファン必読の文章だが、ぼくはグレッグが、ウータン・クランを最大限に評価しながらそのミソジニーの体質を1997年の時点でしっかり批判している点にも驚かされた。グレッグが早いうちからフェミニズムに共感を寄せ、我が尊敬するベル・フックスと90年代の時点で友人関係にあったことも嬉しい驚きだが、決してフェミニストだったとは言い難いジェイムズ・ブラウンをどう評価するのかという難題を掲げながら、ファンク化された女性シンガーたちを紹介する「もしもジェイムズ・ブラウンがフェミニストだったら」という、これまた先見性に富んだ黒人音楽批評もある。チャック・ベリーに関する長い論考では、黒人がロックンロールを発明しながらそれがなぜ黒人のあいだで広まらなかったのかが明かされ、マイケル・ジャクソンの追悼文では、ブラック・コミュニティ内部においてのマイケルへのなんとも複雑で深い感情が切々と綴られている。アイス・キューブやマイルス・デイヴィス、もちろんラメルジーやウェイン・ショーター、そしてグレッグが最大に評価しているコメディアンのリチャード・プライヤーのインタヴューでは、彼らの生々しい姿が誌面から伝わるだろうし、そして本書の最後には、その場所に相応しく、アフロ・フューチャリズムに関する長い、断片化された散文詩が収められている。そしてその締めには、つまりこの本の最後の言葉として、ギル・スコット=ヘロンの歌詞が用意されているという案配だ。


額装され家庭内に飾られるキングとX(by Noda)。彼らレジェンドに関する解説もじつに興味深い。「マルコムがいなければ大富豪のラッパーも、ラップという巨大産業もなかったのだ」

 『フライボーイ2』は既発の原稿のベスト版的な寄せ集めの本なので、その人のための文章があるわけではないが、本書を通じて随所に出てくるのが、アフロ・フューチャリストのジョージ・クリントンでありサン・ラー、イシュメール・リードでありサミュエル・R・ディレイニー(そしてラルフ・エリスンでありW.E.B.デュボイス)である。とくにジョージ・クリントン(ないしはPファンク)の頻度は高く、グレッグへの影響の大きさがうかがえる。だからぼくのように、Pファンクの知性に関心がある人にはぜひ読んでもらいたいのだが……
 さてと、ぼくの戯言および宣伝はここらへんでいったん終了し、ここからは、日本版の訳に協力してくれたひとりで、グレッグ・テイトを師とする Kinnara : Desi La氏に話を聞いてみよう。ニューヨークで育った彼だが、ニューヨークの大学卒業後は日本に移住している。まさかグレッグの弟子のひとりが東京に住んでいたとは思いもしなかったことだが、先述したように、彼の助けなしでは訳せなかった箇所は少なくない。とくに、もっともキラーな「ヒップホップとは何か?」(https://www.youtube.com/watch?v=BRYm41A6uT8)のニュアンスには、なんどもなんども彼に教えを請うたのだった。


RIP Greg Tate
──黒人音楽 /ヒップホップ批評の第一人者、グレッグ・テイト急逝する Greg Tate 1957−2021


グレッグは、自分が黒人であることをすべての文章で読者に知ってもらいたかったから、ほかのライターとは違った書き方をしました。アメリカでは長年、黒人英語は白人社会から劣ったものとして見られてきました。文章に黒人言葉を使うなという、歴史的なものすごいプレッシャーがあったんです。だからグレッグは、ブラック・カルチャーとブラック・イングリッシュを高めるために、意図的に、敢えてそれらを使って書きました。

まずは出会いについて。

デジ・ラ:大学時代、私は前衛音楽について研究し、できるだけ多くの前衛黒人音楽家を調べていました。その過程で、 “conduction” なるコンセプトの生みの親であるブッチ・モリス(『フライボーイ2』でも紹介されているフリー・ジャズのアーティスト)のことを知りました。ブッチが大友良英をはじめとする日本の前衛音楽家たちと素晴らしいコンダクションを作り上げたことから、私はファンになりました。

 大学卒業後、私は日本に移住しましたが、故郷であるニューヨークには定期的に戻って、地元のシーンと連絡を取り合っていました。グレッグは『Wire』誌にラメルジーの記事を書いています。それは、とらえどころのないラメルジーへの非常に広範囲なインタヴューで(『フライボーイ2』収録)、そもそも黒人ジャーナリストが黒人の前衛的な先見性に対して深いインタヴューをすることは、私にとってじつに感慨深いものでした。その記事は素晴らしいものでしたが、ラメルジーの『Bi-Conicals Of The Rammellzee』を宣伝するために書かれたものでした。このリリース自体は少し物足りないもので、グレッグもややそんな感じでしたが、その記事のなかに私は間違いを見つけました。それは、その頃ラメルジーが『This is What You Made』を日本だけでリリースしていたことです。この2枚のアルバムの違いは大きく、私はたしかFacebookを通じてグレッグにこのアルバムについて書いたのです。私見ですが、この『This is What You Made』(※〈 Tri-Eight 〉からのリリースで、DJケンセイとD.O.Iがプロデュースしている)をグレッグが聴いていたら、グレッグのRammの新作に対する評価も変わっていたかもしれないと思います。何はともあれ、このことをきっかけに私たちは連絡を取り、交流がはじまりました。それであるとき、私はニューヨークで彼のバンドBurnt Sugarを知って、観に行ったんです。ブッチはグレッグの師匠でもあって、だからグレッグはその系譜を引き継いでいました。バンド自体は、コアメンバーもいれば常に追加メンバーもいる、6人だったり20人だったりする、とても自由なメンバー構成でした。このロジックは、ブッチの音楽の手法、そしてバンドが時間とともに進化していくというブラック・ミュージックの歴史に沿ったものでした。グレッグは何気なく私をバンドに誘いました。私にとってそのチャンスは計り知れないもので、ひとつは、バレエ・グループとのコラボレーション、コンサートはビルの最上階のバレエ・スタジオで行われました。また、サン・ラーへのトリビュート・コンサートを3時間以上やったこともあります。グレッグは、私に教養を与えてくれましたね。

音楽ライターとして、グレッグ・テイトが他のライターと違うのはどんなところだったと思いますか?

デジ・ラ:グレッグは、自分が黒人であることをすべての文章で読者に知ってもらいたかったから、ほかのライターとは違った書き方をしました。アメリカでは長年、黒人英語は白人社会から劣ったものとして見られてきました。だから、文章に黒人言葉を使うなという、歴史的なものすごいプレッシャーがあったんです。とくにジャーナリズムの世界ではそうでした。だからグレッグは、ブラック・カルチャーとブラック・イングリッシュを高めるために、意図的に、敢えてそれら(白人社会から見下された文体や用語)を使って書きました。多くの作家は、より認められたいがために意図的に自分で検閲を行う。グレッグはまったくその逆でしたね。アミリ・バラカのような作家の足跡をたどりながら、グレッグは黒人の思想のコード・ランゲージや私たちの民族の重みのある歴史を含む散文を書くことを選びました。

黒人のストリートの知性とアカデミックな知性を繋げたというのはよく彼の紹介で使われる説明文ですよね。ところで彼は文中で、「afrocentric」「ghettocentric」という言葉をよく使っています。「アフロセントリック」という言葉は、日本語で「アフリカ中心主義」と訳すとなるのですが、彼は自分のことを「アフリカ中心主義者」と定義しています。

デジ・ラ:そうです、彼はそうでした。

何故でしょう?

デジ・ラ:何故なら、アメリカという国は、マイノリティの人たちに自分たちや自分たち本来の文化を嫌わせるという根深い文化を持っているからです。たとえば「ゲットーセントリック(ゲットー中心的)」という言葉を使うことで、黒人そのものだけでなく、インナーシティのマイノリティの住民たちに誇りを持たせているのです。グレッグはニューヨークのハーレムで生まれたわけではないが、アメリカの他の地域にはない独特の黒人の歴史とプライドがあるからこそ、ハーレムを自分の故郷としました。
 グレッグは、70年代から2000年代まで、ニューヨークの生活を知るうえでもっとも重要な新聞だった『ヴィレッジ・ヴォイス』でおもに執筆していました(※グレッグは、ロック批評の世界で有名な同紙の編集長、ロバート・クリストガウに引き抜かれて編集部に長年在籍していた)。そこは自由でした。尖っていて、白人社会では無視されるようなアーティストやライターが、社会を動かすような、パンチの効いた記事を書くことができたんです。

グレッグの文章でいちばん好きなものはどれですか?

デジ・ラ:ラメルジーに関するグレッグの記事は、私が初めて彼の文章に触れたもので、Rammの芸術や複雑さを馬鹿にすることなく、Rammを説明する数少ない記事のひとつであったため、いまでももっとも重要なものだと思います。

『フライボーイ2』日本語版から、日本の読者に何を感じ取ってほしいですか?

デジ・ラ:グレッグの文章は、信じられないほど複雑です。ネイティヴ・スピーカーでさえも手を焼くような文章です。それでも、日本の読者には彼の言葉や解説によって、黒人社会をより深く理解してほしいと思います。そして、たとえ違う言語で書かれ、理解されるとしても、私たちの自然な表現の美しさを理解してほしいと思います。

ありがとうございます。ここからは、あなたについての質問です。なぜ日本に来たのですか?

デジ・ラ:私が日本に来た理由はたくさんあります。意識して知っていたこともあれば、無意識に知っていたこともある。私は16歳のときから旅をしていました。幼い頃から、旅は自分に合っていると感じていました。私はもともと多文化な人間で、多文化な環境を求めています。大学時代には留学ができなかったので、大学卒業後は海外で生活してみようと思っていました。その頃、私は日本のアンダーグラウンドに200%惚れ込んでいました。大友良英と彼のグラウンド・ゼロ、灰野敬二、ボアダムス、メルト・バナナ。日本に住めば、もっと頻繁に彼らを見ることができると思ったんです。ジョン・ゾーンのニューヨークと東京に毎年滞在するライフ・スタイルにとても影響を受けたんです。また、新しい国に住み、世界中を旅し続ける自由も欲しかったというのもあります。誤解してほしくないのは、食べ物や、近未来的な日本やアニメの日本、古風な日本への憧れはまったくありませんでした。私をここに移住させたのは、日本のアンダーグラウンドです。

エレクトロニック・ミュージックはいつから制作しているのですか?

デジ・ラ:私は、子供の頃から音楽家でした。ギターやチャンゴ(韓国の打楽器)など、さまざまな楽器を使って音楽を制作してきたんです。現在のプロジェクトでは、およそ13年前から制作を続けています。もっと言えば、20年以上にわたって、さまざまな形態の実験音楽で活動してきています。

あなたの、3Dや蛍光色のヴィジュアルへのこだわりはどこからくるのでしょうか?

デジ・ラ:美術に興味がなかったのですが、ヴィジュアル・アーティストとはいろいろなコラボレーションをしていました。そうこうしているなかで、自分でもヴィジュアルを作ることにしました。きっかけは、PROCESSINGでクリエイティヴ・コーディングを学んだことでした。私はこの新しい言語を学び、その限界に達することに夢中になりました。レヴェル・アップして、私の代表作のひとつである「PAIN IS AN ILLUSION」を制作するうちに、コーディングによるリアルな3Dヴィジュアル制作に新たな境地が見えてきたんです。コーディングに行き詰まった私は、3Dヴィジュアルを勉強することにしました。
 iPhoneやiPadなど、より多くのテクノロジーを使うようになったことで、私の生活は変わりました。それまでは、数年間、サンプルだけで楽曲を制作していました。iPadでは、PROCESSINGでヴィジュアルを作るだけでなく、直接音楽を作ることもできました。新しい技術を学ぶにつれ、私の技術や世界に対する見方は変わっていきました。私は、近代的な建物の建築をインスピレーションとして見ていました。パラメトリックデザインを発見し、建築家のザ Zaha Hadidは私のヒーローになりました。すべてがエキサイティングで、すべてが互いにつながっているのがよくわかりました。いままで無視していた東京を、劇的に新しい方法で見ているような気がしたのです。初めて『ブレードランナー』を観たときや、『マトリックス』に入ったときのように、それまで見えなかったつながりが見えるようになり、クリエイティヴなコーディングから3Dモーション・グラフィックスへと一気に進んだわけです。「DEAD MACHINE」と「ARCHITECTURE」は、これまでの自分とは明らかに一線を画す作品でした。また、ほぼiPadだけで制作した作品でもあります。これが、オーディオヴィジュアル・パフォーマンスを制作する私のキャリアのはじまりとなりました。これらの最初のプロジェクトから、私のアートは信じられないほど進化し、新しい社会を視覚的、聴覚的に表現する現在の主要なオーディオヴィジュアル・パフォーマンス作品「CHROMA」に至っています。

最近はドラムンベースにアプローチしているようですが、このスタイルの可能性をどのように考えていますか?

デジ・ラ:ドラムンベースは、私にとって「ソウル」ミュージックのようなものです。ブラック・ソウルやRnBではなく、私にとても近い音楽なのです。ドラムンベースは未来の音楽です。身体と魂を解放してくれる音楽です。10代の頃にパーティに行くようになってから、ドラムンベースを作りたいと思うようになりました。家ではほとんど聴かなかったがのですが、クラブに行くと真っ先にダンスフロアにいたものです。音楽はもともと非定形的なものです。だから、これだけ多くのスタイルが存在するのです。それに比べてテクノ・ミュージックは、驚くほど直線的です。20年以上前に作られたジャングルの曲のほとんどは、いまでも新鮮に聴こえます。だから、このサウンドが人びとを感動させる驚くべき回復力を持つのです。また、他のジャンルとマッシュアップすることで絶えず変化していくので、このジャンルの可能性は非常に無限大です。テクノと違って、ドラムンベースは数年間、音楽業界から見放されていました。しかし、いままた復活しつつあるのは、その生命力の強さを物語っていると思います。

ミルフォード・グレイヴスはあなたのメンターのひとりですが、彼からどのようなインスピレーションを受けましたか?

デジ・ラ:ニューヨークのフェスティヴァルに参加したとき、私が日頃から追いかけているミュージシャンのひとり、ジョン・ゾーンが、それまで聴いたことのないミュージシャンとデュオ・セットをやっていました。それがミルフォード・グレイヴスでした。このコンサートは、演奏しなくなったミルフォード・グレイヴスがふたたび演奏に戻るという意味で重要なものでした。デュオ・コンサートは、ミルフォードを自主的な亡命から連れ戻したという意味で、魔法のようでした。父と話をしていて、父がミルフォードと学校の同級生だったことがわかったので、私はミルフォードにコンタクトを取りました。彼との会話はとうぜん歴史の勉強になるし、強烈な知識にもなる。この時期、ミルフォードはジョン・ゾーンのレーベル〈Tzadik〉から2枚のレコードをリリースしています。ドラム、ヴォーカル、パーカッションだけの強烈な傑作です。ブラック・アヴァンギャルドを探し求める私にとって、ミルフォードは真の自然の力を証明してくれます。同じ楽器を演奏しているわけでもないのに、彼の考え方と私の考え方は一致していました。

最後に、好きな日本のミュージシャンを教えて下さい。

デジ・ラ:たったいまこの時点では、好きなミュージシャンはいません。何年も前のグラウンド・ゼロ時代の大友良英が好きでした。でも、EYE(ボアダムス+パズルパンクス)と灰野敬二はいまでもよく聴いています。


※デジ・ラさんの音楽作品はbandcampで聴ける。どうぞこちらから侵入してください。
https://kinnara-desila--afrovisionary-creations.bandcamp.com/


Desi La(Bandcampの写真より)

JPEGMAFIA x Danny Brown - ele-king

 アーティスト間のコラボレーションが盛んなヒップホップにおいて、コラボレーション・アルバムは数え切れないほど存在する。特にアンダーグラウンド・ヒップホップでの前例としては、MFドゥームマッドリブが「Madvillain」という名前で発表した傑作『Madvillainy』(2004)が思い浮かぶ。
 現代におけるアンダーグラウンドの奇人たち、Jペグマフィア(a.k.a. ペギー)とダニー・ブラウンがアルバム単位でコラボするというニュースは好奇心を招いた。彼らはあらゆるジャンルを刺激的かつ分裂的に混ぜ合わせ、オルタナティヴなヒップホップ・プロダクションを好んで使用し、しかもなんと4~5枚以上のアルバムを着実に発表してきたことなどを共通点として挙げられるので、ふたりが引き起こす化学反応が楽しみだった。

 本作は近年発表された様々なヒップホップ作品のなかでも、積極的なサンプリングと数々の引用など、メジャーな公式に当てはまらない過激さを打ち出した素晴らしいプロダクションを盛り込んだ作品と言えるだろう。特にペギーが Roland のサンプラー1台で全曲を作曲したと明かすように、サンプルを分割してソースを配置する技量はまさに頂点に達しているように見え、そこに鼻音混じりの声でリズムを自分のものにしてしまうフロウを持つ独創的なラップ・キャラクター=ダニーの参加はちょうど似合う。彼らが引き起こす刺激は終始騒がしいが、意外と「多彩なテクニック」を誇る。
 “Lean Beef Patty” はサンプリングやソース配置の技術、パフォーマンスまで奇抜かつ完璧に仕上がっていて、本作の登場を楽しみにさせるリード・シングルだった。次のシングルの “SCARING THE HOES” は作中で最も奇妙な曲で、ダーティ・ビーチズのフリー・ジャズ系の演奏をサンプルに、ホラー映画のような映像演出で不気味さを増す。上記のシングルは、ふたりに期待される実験的で過激なエネルギーをよく表している。
 サンプルの用例は様々だが、日本の音楽を用いた2曲はそれぞれ異なる魅力を発する。CMのチャントとファミコン・ゲームの効果音を借りた “Garbage Pale Kids” は、荒々しいベース・ドラムを落としたり、途中でファジーなギターを打ち込み、作中で最も刺激的なサウンドを完成させている。一方、某声優のシングルをサンプリングした “Kingdom Hearts Key” は、メロウ・ポップの質感を生かしつつ幻想的でダイナミックな展開を作り出している。
 他にもポップ・ソウル曲をいじったり、オーケストラやゴスペルなどの荘厳な原曲に卑猥な歌詞をばら撒いたりするなど、サンプリングを使った様々な遊戯の試みは聴き手の集中力を持続的に牽引する。
 ペギーのトラックメイキングの技量はまさに頂点に達しているように思われ、敏腕なラッパーのダニー・ブラウンの参加はその価値をさらに高める。プロデュースを手がけ、自分の領域を確実に構築しているJペグマフィア、コラボレーション相手をはるかに凌駕するダニー・ブラウンのパフォーマンス力。その相反するアンバランスがむしろ新しい重心を見いだしたように見える。

 2020年代のヒップホップの風景を眺めると、レイジ(rage)やドリル(drill)、ハイパーポップのようなハードコア化や、ロックやエレクトロニックとの融合が積極的におこなわれてヒップホップのステレオタイプを問い直すオルタナティヴ化などが進み、その形を激しく変貌している。一方、ペギーとダニーが Roland のサンプラーの上で戯れる姿は「新しい」を志すよりむしろ文化レガシーへのノスタルジーに近い。が、彼らの遊戯が、だんだん過激化していくジャンルのなかでも、最も奇妙で刺激的なサウンドで集まった矛盾を見ると、この奇人たちの皮肉は痛烈に通じたようだ。

HOUSE definitive 増補改訂版 - ele-king

始めにハウスありき……
全音楽ファンが知っておくべき、
ハウス・ミュージックの名盤900枚以上を紹介!

監修・執筆:西村公輝
編集協力・執筆:猪股恭哉/三田格
執筆:野田努/Nagi/島田嘉孝/DNG/Alex Prat/板谷曜子(mitokon)/Midori Aoyama/Shhhhh/Alixkun/水越真紀/SISI/小林拓音/木津毅

cover photograph by Bill Bernstein
装丁:真壁昂士
A5判/並製/オールカラー/304ページ

contents

改訂版序文 (西村公輝)

CHAPTER 1 Disco 1974–1983
CHAPTER 2 Chicago House 1984–1987
CHAPTER 3 Second Summer Of Love 1988
CHAPTER 4 Deep House 1989–1995
CHAPTER 5 French Touch / Detroit House 1996–2000
CHAPTER 6 Disco Dub / Nu Disco 2001
CHAPTER 7 Translocal 2002–2013
CHAPTER 8 Nu School / Multipolar Of House 2014–2022

INDEX

監修
西村公輝

90年代後半から輸入レコード業界にて働き始める。現在はLighthouse Recordsに所属。DJとしてはDr. NISHIMURAの名前で活動中。悪魔の沼の三分の一。

協力
猪股恭哉

1977年仙台市生まれ青森育ち。90年代中頃よりテクノを聴き始め、99年にディスクユニオンに入社、07年より渋谷クラブミュージックショップで中古買取とバイヤー業務を開始。14年よりハウスのメインバイヤーとして異動。23年現職。

三田格
ライター、編集。監修・編著に『AMBIENT definitive 増補改訂版』『TECHNO definitive 増補改造版』『永遠のフィッシュマンズ』ほか多数。

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Jessy Lanza - ele-king

 フットワークからYMOまで、前作で独自の折衷センスを聴かせたシンセ・ポップ・アーティスト、ジェシー・ランザ。Yaejiとの全米ツアーを終えた彼女の新作情報が解禁されている。『Pull My Hair Back』(13)『Oh No』(16)『All The Time』(20)につづく4枚目のアルバムが〈ハイパーダブ〉より7月28日 (金) にリリース。CD、LP、ストリーミング/デジタル配信で世界同時発売とのこと。現在UKGを取り入れた新曲 “Midnight Ontario” が公開中だ。アルバムへの期待が高まります。

JESSY LANZA

ハイブリッドなR&Bスタイルでシーンを牽引!
ジェシー・ランザによる最高傑作が誕生!
最新アルバム『Love Hallucination』
7月28日リリース
新曲「Midnight Ontario」をMVと共に解禁!

卓越したセンスとスキルによって構築されたハイブリッドなスタイルで、FKAツイッグスやグライムス、ケレラらと並び、インディーR&B~エレクトロポップ・ファンからの支持を集めるジェシー・ランザが、最新アルバム『Love Hallucination』のリリースを発表! あわせて新曲「Midnight Ontario」をMVと共に解禁! アルバムは7月28日に発売される。

Jessy Lanza, Midnight Ontario
https://youtu.be/BHt2RXRKCSE

『Love Hallucination』で、ジェシー・ランザはソングライター兼プロデューサーとして完璧な采配を振っている。当初は他のアーティストたちのために曲作りをしていたが、自分のスタイルを屈折させたり実験したりすることに解放感を感じ、実験する過程に自由を感じ、書きためてあったトラックを書き直し、最終的に自分の作品のためにレコーディングすることを決断した。本作のためにジェシーはスタジオでのスキルをレベルアップさせ、自身のサウンドを再構築している。高い評価を受けた2021年の『DJ Kicks’ Mix Series』の足跡をたどるクラブサウンドの曲から、ダウンビートでなまめかしい曲まで、プロダクションスキルと四方八方に広がるエネルギーを駆使して冒険している。

今まで、あけすけにオーガズムを扱ったりサックスを演奏したりしたことはなかったけれど、『Love Hallucination』ではそれがしっくりきた - Jessy Lanza

本作では、その瞬間の自分自身を信じるというテーマが、作品を前進させる大きな力になっている。直感に重点を置いた『Love Hallucination』は、恋に惑わされながら、たとえ納得できるまで時間がかかろうと、自分の感性を最後まで信じる強い意志で完成させた作品である。

『Love Hallucination』では、2013年リリースのデビュー作『Pull My Hair Back』のまだ荒削りなアプローチから、『DJ-Kicks』で見られたエネルギッシュなサウンドまで、まるで彼女の成長を一つにまとめたかのような集大成的作品であり、新たな才能の開花を示す作品とも言える。

オープニング曲「Don't Leave Me Now」、ジャック・グリーンと共同制作した「Midnight Ontario」、テンスネイクことマルコ・ニメルスキーと共同制作した「Limbo」など、生の感情をダイレクトかつパーソナルに歌い上げるアルバムであることがわかる。またジェシーは、ロンドンでピアソンサウンドとして知られるデヴィッド・ケネディーとも仕事をし、プロダクション面やクラブ向けの洗練されたアレンジで楽曲を強化するのに貢献している。他には、ジェレミー・グリーンスパンと共同制作した「Big Pink Rose」「Don't Cry On My Pillow」「Drive」「I Hate Myself」、そしてポール・ホワイトと共同制作した「Casino Niagara」や「Marathon」が収録されている。『Love Hallucination』は、ジェシー・ランザにとってこれまでで最も野心的なアルバムであり、メッセージ性と完成度においても間違いなくキャリア最高傑作と言える。

ジェシー・ランザの最新アルバム『Love Hallucination』は、CD、LP、デジタルで7月28日 (金) に世界同時リリース。CD、LP、ストリーミング/デジタル配信で世界同時リリース。国内流通仕様盤CDには、解説書と歌詞対訳が封入される。

label: Hyperdub
artist: Jessy Lanza
title: Love Hallucination
release: 2023.07.28

BEATINK.COM:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13397
Tracklist
01. Don’t Leave Me Now
02. Midnight Ontario
03. Limbo
04. Casino Niagara
05. Don’t Cry On My Pillow
06. Big Pink Rose
07. Drive
08. I Hate Myself
09. Gossamer
10. Marathon
11. Double Time

NHK yx Koyxen - ele-king

 これまで〈Diagonal〉〈DFA〉〈Pan〉〈L.I.E.S〉〈Mille Plateaux〉〈WordSound〉〈Scam〉といった一癖も二癖もあるレーベルから作品を出しているNHK yx Koyxenこと松永コーヘイが、久しぶりにアルバムを出す。やった。ベルリンの〈Bruk〉から5月26日リリース予定の『Climb Downhill 2』は未発表音源集で、コーヘイのムズムズしたシュールなエレクトロニカ・ダンスの魅力がコンパクトに詰まったショーケースだ。聴こう。
 このアルバムを機に、完全なる新作もリリースされるかもしれない。わからないけど。

NHK yx Koyxen
Climb Downhill 2

Bruk
BRUKLP1
Release Date: May 26th
 

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