「iLL」と一致するもの

interview with Gonjasufi - ele-king

 ラスヴェガスで暮らすヨガの先生がフライング・ロータスやその仲間たちと一緒にアルバムを作った――君はいったいどんな音楽を想像する?

 彼の名前はゴンジャスフィ(この名前の意味を、君はこの先のインタヴューで知ることになる。そう、素晴らしいその意味をね)、そして僕たちの多くは彼の歌をフライング・ロータスのセカンド・アルバム『ロスアンジェルス』に収録された"Testament"によって知しっている。フライング・ロータスはその歌を「時間を超越した、驚くべき汚物である」と表現しているが、聴けばわかるように、それはたしかにソウルフルだがまるで亡霊の声のようでもある。


Gonjasufi
A Sufi & A Killer

Warp / Beat

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 この度〈ワープ〉からリリースされるゴンジャスフィのデビュー・アルバム『ア・スーフィ&ア・キラー(A Sufi & A Killer)』が話題だ。『ガーディアン』は発売前から「今年何回も繰り返し聴くであろうアルバム」と賞賛し、あるいはまたゴンジャスフィを「電子のヘンドリックス」として再三にわたって紹介している。〈ストーンズ・スロウ〉以降におけるポスト・ヒップホップの音の冒険、〈ワープ〉におけるIDMの実験、この両者のおそるべきドラッギーな結合によって生まれらこの音楽は、さまざまな文化の衝突(イスラム教、トルコ、インド、ブルース、レゲエ等々)という文脈からTV・オン・ザ・レイディオやM.I.A.などとも比肩されている。が、そのどれとも違っている。西海岸のBボーイたちの実験とアシッド・ロックとの接続は、ヨガとイスラム教のスーフィという管を通して......とにかく世にも奇妙なサイケデリック・サウンドを創出したのである。

最初にのめり込んだのは、アイス・キューブやトゥー・ショートなんかの90年代の西海岸ヒップホップだったよ。ラップに誠実さや愛を感じて、すごく魅了されたんだ。

普段はヨガの先生をしているってホントですか?

ゴンジャスフィ:そうだよ、期間でいうと1年で半年間くらいは教えているんだけど、いまはちょうどこれから自分の修行にまた戻ろうかなと思ってる。すごく好きなんだ。

アルバムの話の前に、あなたのプロフィールについて教えてください。生まれはサンディエゴですよね。メキシコ人の母とエチオピア人の父のあいだに生まれている。あってますか? 

ゴンジャスフィ:あってるよ。

ご両親からの影響について教えてください。

ゴンジャスフィ:父はマイルズとかジャズをよく聴いていて、母はスペインやメキシコのラヴ・ソングをよく聴いていて、ふたりからの音楽的影響はとても大きいよ。

どんな10代を過ごされたのですか?

ゴンジャスフィ:学校に行って、普通にスポーツとかもしていたんだけど、マリファナを吸い出してから音楽の世界へ完全にのめり込んだね。そこから完全に音楽が人生の中心になっていったよ。

あなたの音楽との出会いについて教えてください。どんな音楽が好きになって、そしてどういう経緯で歌い、演奏し、音楽制作をするようになったのか?

ゴンジャスフィ:いろいろ音楽は聴いていたけど、最初にのめり込んだのは、アイス・キューブやトゥー・ショートなんかの90年代の西海岸ヒップホップだったよ。ラップに誠実さや愛を感じて、すごく魅了されたんだ。そして彼らを聴くにつれて、自分のなかから表現したい音や歌が生まれてきて、それを制作するようになったんだ。いまはレコーディングの知識もつけたし、いろいろできる幅が増えてきたと思うよ。

とても素敵な声をしていますが、影響を受けたヴォーカリストはいますか?

ゴンジャスフィ:そうだね、高校にいたときにレゲエ・ムーヴメントがあって、ボブ・マーリーはよく聴いたよ。あとはもちろんジミ・ヘンドリックス。彼はつねにヒーローだ。いまも生きているアーティストでいえば、ベス・ギボンス、ジャック・ホワイト、トム・ヨークの3人かな。

『A Sufi & A Killer』ではいろんな音楽をやっていますね。ヒップホップ的なものだけではなく、"Sheep"のようなアシッド・フォーク調の曲もあるし、"She's Gone"みたいなビートルズ調の曲もある。"Suzie Q"みたいなハード・ロックもあるし、"Stardustin'"みたいなジミヘンみたいな曲もある。あなたにとっての音楽的アイデンティティとは何になるのでしょうか?

ゴンジャスフィ:うーん、もちろんさまざまな音楽に影響を受けてきたんだけど、ヒップホップ以外でいえばレゲエとロックが大きいと思う。1995年から2003年くらいまではすごいレゲエに魅了されていたし、それ以降、とくに最近はロックにはまっているよ。さっき挙げたトム・ヨークやジャック・ホワイトなんかのね。

あなたにとっての最大の音楽的ヒーローは? ジミ・ヘンドリックス?

ゴンジャスフィ:もちろん。ジミは世界いち最高にクレイジーなマザー・ファッカー野郎さ。

ちなみに20代はどのように過ごされていたのですか? マスターズ・オブ・ザ・ユニヴァース(Masters Of The Universe)というヒップホップ・クルーとして活動していたと聞きますが、音楽活動はずっと続けていたのですか?

ゴンジャスフィ:とにかくマリファナを吸いまくった。もうそればかりやっていたし、ドラッグからなにからすべてやり尽くしたね。活動としてはマスターズ・オブ・ザ・ユニヴァースのクルーとしてラップしたり、ビートを作って、CDを自主制作して、それを路上で売ってマリファナを買う足しにしていたよ。Orko(マスターズ・オブ・ザ・ユニヴァース)とThavius Beck(グローバル・フロウテイションズ)と一緒にベイ2に住んでいて、あいつらにMPCの使い方とかを教えてもらったんだ。その頃は、いろんな家のソファを転々としていて、そのときもずっとそのふたりとつるんでいたから本当にかけがえのない仲間だと思ってる。

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大学でイスラム教を学びはじめたのと、ムスリムの友人との出会いがきっかけでイスラミズムに興味を抱くようになった。定められたやり方で生きることに疑問を持ちはじめて、人生のより神秘的な側面に注目するようになっていった。

あなたの音楽に強いてジャンル名を付けるとしたら何になるのでしょうか?

ゴンジャスフィ:難しいな(......とても悩んで)、ロック、サーフ、ハードコア、それらのあいだとか。考えた事もないから全然思いつかない。

どういう経緯でメインフレイム(Mainframe)やザ・ガスランプ・キラー(The Gaslamp Killer)たちと出会ったのでしょうか? また、彼らと出会う以前からあなたはヒップホップ的な方法論に関心があって、それを用いて音楽を作っていたのですか? スマック(Sumach)名義でCDRで発表した作品というのはどんなものだったのでしょう?

ゴンジャスフィ:ザ・ガスランプ・キラーはサンディエゴでよくライヴをしていた箱でDJをしていたのと、よく行くレコード・ショップの店員だったから知るようになって、メインフレイムはMHEを通じて知ったんだ。実際フライング・ロータスとはそのふたりを通して出会ったんだよ。19歳の頃からヒップホップは作っていたし、マスターズ・オブ・ザ・ユニヴァースとしても活動していたから、もちろんふたりに会う前からヒップホップは作っていたよ。スマック名義で発表したのはすべてラップとヒップホップだしね。

ヒップホップにおいてあなたがもっとも影響を受けたのは誰ですか?

ゴンジャスフィ:うーん、そうだな(またとても悩んで)。やっぱり俺のクルー(Masters Of The Universe)かな。MPCなんかを教えてくれたのも彼らだし、一緒に生活したり、いろんなところで影響を受けたからね。

フライング・ロータスとはどんなところで意気投合したのですか? 音楽性? 

ゴンジャスフィ:まずザ・ガスランプ・キラーと俺が一緒にプレイしているのをフライング・ロータスが気に入ったんだ。そして彼がメインフレイムにビートを送って、メインフレイムが俺にそのビートを送ってきたんだよ。それに歌を乗っけてできたのが"Ancestor"なんだ。だから"Ancestor"を作った時点では彼とは会ってすらいなかったんだよ。ただ互いの音楽に対する愛や情熱が共鳴して繋がる事ができたと思っているよ。

〈ワープ〉のことは知っていましたか? そして、知っていたとするなら、どのような印象を持っていましたか?

ゴンジャスフィ:知っていたよ。サンディエゴの友人たちが〈ワープ〉のブロードキャストにはまっていたからね。印象としては、個人的にロゴがとにかくかっこいいと思ってたよ。ただまわりに比べたらそこまで〈ワープ〉にのめり込んではいなかったし、当時は〈ワープ〉の存在の巨大さにまったく気づいていなかった。あまりに巨大でナイーヴになることもあったよ。エイフェックス・ツインを聴きはじめたのも、ここ数年の話だしね。

おそらくあなたのコスモポリタン的な感覚から、たまにTV・オン・ザ・レイディオと比較されていますが、彼らの音楽は聴いていますか?

ゴンジャスフィ:全然聴かないな。あまり興味が沸かないからね。いまは最初に挙げたトム・ヨークなんかのほうに傾倒しているのもあるし、彼らを聴くと何か救われる気持ちになるんだ。TV・オン・ザ・レイディオからはそういった気持ちが生まれないし、クソにしか聴こえないよ。

M.I.A.は?

ゴンジャスフィ:聴かない。"Paper Plane"は聴いたけど、アルバムとして聴いたことはないよ。

イスラム教、とくにスーフィとの出会いについて教えてください。

ゴンジャスフィ:サンディエゴの大学でイスラム教を学びはじめたのと、ムスリムの友人との出会いがきっかけでイスラミズムに興味を抱くようになった。それと同時に、なにか箱のようなもののなかに収まって、定められたやり方で生きることに疑問を持ちはじめて、人生のより神秘的な側面に注目するようになっていったんだ。

名義をスマックからゴンジャスフィに変えたのも関係がありますか?

ゴンジャスフィ:その友人がスーフィズムに入ってったこともあって、スーフィズムに本当に心を魅了されたんだ。まさにハマったとも言えるよ。そのときも葉っぱをよく吸っていたし。それで名前をゴンジャスフィ(注:ガンジャ+スーフィ)に変えたんだ。

スーフィは今回のアルバム『A Sufi & A Killer』においてもタイトルになるほど重要な要素だと思いますが、スーフィというのはあなたのこれまでの人生のなかでどのようなものなのでしょうか? 

ゴンジャスフィ:自分を変革し、啓蒙してくれるものだよ。スーフィと出会って、さまざまなものが内面から溢れでたとも言える。

スーフィの神秘主義はあなたの音楽にどのような影響を与えましたか?

ゴンジャスフィ:直接的に音楽的に影響を与えたというよりも、自分を何か枠の外へと導いてくれたと思っているんだ。例えばメディア、学校、神もそうだけど人びとが閉じ込められるようなその枠の外へと連れ出す感じさ。

具体的に修行をされたのですか?

ゴンジャスフィ:そうだね、いちばんの修行はヨガをすることだよ。2004年くらいから友人を通じてはじめたんだけど、俺に取ってはヨガもスーフィも同じなんだ。ヨガがいつも、「自分が誰か」、「自分とは何か」を教えてくれるんだ。感情をコントロールすること、怒りやネガティヴな感情を昇華することをヨガを通して学んでいるよ。

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まずこの曲は警察について歌った曲なんだ。たったいま俺はカリフォルニアへ行く途中で車を止めて、このインタヴューをしているんだけど、このあいだ(約50分)に俺は5回も警察に職務質問されているんだ。

あなたの音楽における政治性について話してもらえますか?

ゴンジャスフィ:うーん、政治は大嫌いだし、政治にはいっさい関わりたくないと思っている。アメリカではつねに政治は偽善で、ハリウッドのような腐ったシーンも生み出している。それには常に反抗していたいと思っているよ。 

『A Sufi & A Killer』の"A Killer"というのは誰のことを指しているのですか?

ゴンジャスフィ:それはバランスを表しているんだ。誰もが内に持つ二面性。それをこのタイトルで表しているんだよ。だからSufiがKillerでもあるし、KillerがSufiでもあるんだよ。裏返しているだけで本質は同じものさ。

アルバムの1曲目の"(Bharatanatyam)"はスーフィの音楽なんですよね?

ゴンジャスフィ:そうだよ。魂や祖先に対する敬意を払う意味を込めたスーフィのダンス・ミュージックなんだ。

シングルカットされた"Kowboyz & Indians"は何にインスパイアされた曲なんでしょうか?

ゴンジャスフィ:そうだね、何にインスパイアされたかなー。もちろんインドには影響を受けてるよ。ここで歌っていることは、ジョン・ウェインなんかに代表されるハリウッドで作られたカウボーイ・イメージを捨てろってこと、そして本物のカウボーイはヒマラヤ山脈を、牛を引いて歩く小さな少年なんだってことなんだ。これもさっき話したメディアの枠の外へ飛び出すことだから、ヨガやスーフィにインスパイアされたともいえるね。

"Klowds"は何の音楽からの影響なんでしょうか? インド音楽ですか?

ゴンジャスフィ:もちろんインド音楽から影響を受けているし、このサンプルはトルコのサイケバンドをザ・ガスランプ・キラーがリ・エディットしたものなんだ。インド音楽はラビ・シャンカールのような古典も聴くし、ボリウッドのような大衆音楽も聴くよ。

収録曲がだいたい2~3分ですが、これには理由がありますか? 

ゴンジャスフィ:とくに理由はないよ。編集したのはザ・ガスランプ・キラー、フライング・ロータス、メインフレイムだしね。

最後の曲"Made"が終わったあとに隠しトラックがありますが、どのような理由からなんですか?

ゴンジャスフィ:まずこの曲は警察について歌った曲なんだ。たったいま俺はカリフォルニアへ行く途中で車を止めて、このインタヴューをしているんだけど、このあいだ(約50分)に俺は5回も警察に職務質問されているんだ。これはそういった腐った奴らに対して歌った歌なんだよ。ボーナス・トラックのつもりで置いたから曲間に空白が入っているんだ。

最後に日本のリスナーにメッセージをお願いします。

ゴンジャスフィ:これはすごい難しいなー。本当に日本の文化に心から感動しているし、尊敬しているんだ。初めてのインター・ナショナル・ショーとして日本に行ったときも、いろんなところで愛を感じながら日本の文化の美しさに魅了されたんだよ。ひとりひとりが互いを尊敬して敬意を払うところや謙虚なところとかね。日本から2年前にアメリカに帰って来たときには、アメリカの仲間にとにかく日本の素晴らしさを伝えたよ。だから日本のファンに伝えるとすれば、これからも俺の手本でいてくれってことかな。かなうものなら心から再来日を果たしたいと思ってる。前にライヴしたときは俺が何をするか全然わからなかっただろうけど、いまはこうしてレコードも多く出てるから、より理解してもらえると思うからさ。もし叶うなら本当に名誉なことだと思うよ。ついでにいまアナログなテープ・マシーンも探してるから、もし誰か持ってる人がいたら連絡して欲しいな!

 

Gorillaz - ele-king

 デイモン・アルバーンはとんでもない情熱家だ。向学心があって、ポップ・ミュージックの時計を20年前に戻すことを許さない。ブラーとしてセカンド・アルバムを出したばかりの頃に取材で話したときの彼は、60年代の音楽とカーナービー・ストリートの服屋の話を喜んでするようなご機嫌な青年だったけれど、ブリット・ポップ騒動のなかで相当に揉まれたのだろう。トニー・ブレアにオアシスとともに持ち上げられ、そしてまあ、アイドル系のルックスだったがゆえに、労働者階級の英雄であるオアシスの、結局はなかば引き立て役のような、どこか損な役回りを強いられ、が、しかし労働党に裏切られたという政治的な経験をバネにするかのように、アルバーンはつねに向上心を捨てることなく、その後驚くほど貪欲な活動を見せている。アフロ・ミュージック(トニー・アレン)にアプローチしたかと思えば、イスラム文化にも接近してみたり(『シンク・タンク』)、あるいは漫画家のジェイミー・ヒューレットと一緒にゴリラズとして『西遊記』をモチーフとしながら音楽と文化をシャッフルさせる。イギリスの音楽らしく、そこに社会風刺と政治的主張も含まれる。

 ゼロ年代にはじまったゴリラズは、デビュー・シングル「クリント・イーストウッド」において西海岸のヒップホップの魔術師オートメイターの力を借りながら、90年代初頭にコンシャス・ラップのひとつとして注目されたオークランドのデル・ザ・ファンキー・ホモサピエンスにラップさせている。2005年のセカンド・アルバム『ディーモン・デイズ』では、その時期玄人筋からもっとも受けていたUSとUKのふたりのラッパー、MFドゥームとルーツ・マヌーヴァを誘い、チャレンジ好きのヒップホップ・プロデューサーとして知られるデンジャー・マウス、それからデ・ラ・ソウルとショーン・ライダーを招き入れている。こうした前2作のスジで考えても今回のアルバムのゲスト陣は尋常ではない。

 物欲の塊のような西海岸の大物ラッパー=スヌープ・ドッグ、ガラの悪いUKグライムのスター=ケイノ、正義感の強いラッパー=モス・デフ、ウェールズのヒッピー左翼のロッカー=グリフ・リース、毒舌と批評精神のシンガー=マーク・E・スミス、それからルー・リード......ボビー・ウーマック、それから元ザ・クラッシュのミック・ジョーンズとポール・シムノン、前作に続いてデ・ラ・ソウルも......、洒落たクラブ・ジャズからはユキミ・ナガノまで......、あるいはシカゴからは元サン・ラ・アーケストラのヒプノティック・ブラス・アンサンブル......。まとめると、ルー・リードとケイノとマーク・E・スミスが1枚のアルバムに収まっていること自体が奇跡的で、まずはこのオーガナイズ力だけでも賞賛に値する。
 もちろん背番号10を11人揃えれば強いチームが作れるわけではない。問題は明確な方向性だ。ゴリラズは、エレガントなエレクトロ・ヒップホップやディスコやポップスを回転させながら、世界が滅亡した後に太平洋に残された島を舞台として、新自由主義の犠牲としての環境破壊を物語る。

 「世界は絶望的だ」――西海岸のG・ラップのスーパースター(スヌープ)はラップする。「革命はTV放映される」――先頃カムバックしたギル・スコット・ヘロンの言葉を引用する。レバノンのナショナル・オーケストラの演奏に混じってグライムのビートが飛び出し、バッシーとケイノのラップがたたみかける"ホワイト・フラッグ"はアルバムの白眉のひとつだ。この曲から素晴らしい生気が放たれたかと思えば、モス・デフとボビー・ウーマックが共演するダーク・エレクトロの"スタイロ"のメランコリーからはディストピアが浮かび上がる。マーク・E・スミスのぼやき節のみならず、曲調までザ・フォールじゃないかと思わせる"グリッターズ・フリーズ"は文句なく格好いいし、モス・デフとヒプノティック・ブラス・アンサンブルによる"スウィープステイクス"の楽天性は多くの人に愛されるだろう。ルー・リードがエコロジーについてソウルフルに歌う"サム・カインド・オブ・ネイチャー"やグリフ・リースが未来の食生活を憂う"スーパーファスト・ジェリーフィッシュ"も面白いし、ユキミ・ナガノがコズミック・ディスコをバックに歌う"エンパイア・アンツ"も捨てがたい。

 多くの個性派を集めたが故に、アルバムの中心がどこにあるのかわかりづらいという評もあったが、たしかに1曲だけを選ぶことは困難かもしれない。まあ、しかし逆に言えば全曲気を抜けずに聴けるということでもある。そして何よりも重要なのは、元ブリットポップのスターが情熱を傾けてこのコンセプト・アルバムを完成させたということだ。「オレは自分が環境問題について考えていたとは言わないよ。あの曲もそんなものではないんだ」、ケイノは『ガーディアン』の取材でアルバーンが最初にアルバムのコンセプトについて説明してくれたことを明かし、そしてこう語っている。「"ホワイト・フラッグ"は警告なんだ。世界は滅び、そしてふたたびはじめるための警告だ。それは平和を暗示するのさ」

CHART by BEAMS RECORDS 2010.03 - ele-king

Shop Chart


1

Ellen Allien

Ellen Allien aLive 02 BEAMS BRAIN »COMMENT GET MUSIC
「仮想のライブセット」をテーマにしたコンセプチュアル・ライブミックス・シリーズ"aLive"第2弾。エレンお得意の壮大なストーリー性を感じさせる流れと、ミステリアスかつドラマティックにスパークしていく展開、そして美しくも鮮烈なその音楽性は絶品!

2

Wareika

Wareika Formation + 3 Tartelet / Octave »COMMENT GET MUSIC
エッジが利いたダンスミュージックをお探しの方に大推薦!!ミニマル・シーンの異端児、リカルド・ヴィラロボスのリミックス12"で一気にその名を轟かせた、ハンブルグ発バンドスタイルの3ピースユニット、ワレイカのデビュー・アルバム!ミニマルテクノをベースとしながらも、ジャズやトライバルな生楽器の要素をセンス良く散りばめたトラックは、ルチアーノ、コブルストーン・ジャズのファンはイチコロなジャジー・ミニマル・サウンド!

3

Thomas Fehlmann

Thomas Fehlmann Gute Luft Kompakt / Octave »COMMENT GET MUSIC
ジ・オーブのメンバーとしても活躍するドイツ・テクノシーンのゴッドファーザー、トーマス・フェルマンの3年ぶりとなるニューアルバム。ベルリン市民の1日を24時間ドキュメントしたTVプログラム「24h Berlin」のサウンドトラック用として制作された本作は、アンビエントを軸に、ダブや音響的な脚色を加えて奥行きを感じさせるサウンドスケープを展開。この幻想的な世界観を是非ご堪能下さい!

4

Lou Rhodes

Lou Rhodes One Good Thing Motion Audio »COMMENT GET MUSIC
ザ・シネマティック・オーケストラが新を設立!その名も「Motion Audio」の第一弾としてリリースされたのは、Lambのメンバーであり、シネマティック作品にもヴォーカル参加しているルー・ローズ!やさしくゆっくりとしたフォーク・ミュージックを基調に、彼女のどこまでも澄んだ歌声と、ひっそりと、しかししっかりと支えているシネマティックお得意のストリングスが上品に絡み合う、シンプルでありながらどこまでも奥行き深い至極の1枚!

5

DJ Hikaru

DJ Hikaru Sunset Milestone Sleeping Bugz »COMMENT
「Sleeping Bugz」始動第1弾!Hikaruが沖縄で作り上げた極上のユルめミックス。ジャンルレスながらも彼の自由さと音楽への愛情が滲み出た、微笑ましい出来!

6

Bill Withers

Bill Withers +'justments Reel Music »COMMENT GET MUSIC
いつ聴いても温かみ溢れるグッドソウル・アルバム!「ラブリー・デイ」で知られるバージニア州出身のシンガー・ソングライター、ビル・ウィザースがデニス・コフィー率いるデトロイトのソウルSussexに残した知る人ぞ知る74年の名盤!ドロシー・アシュビーの美しいハープや名手ホセ・フェリシアーノのギターもフィーチャー、そしてなによりも温かいビル・ウィザースの歌声とメロディが素晴らしい!なんと初CD化です!

7

J.Rocc,Ras G Daedelus,Nobody

J.Rocc,Ras G Daedelus,Nobody Secondhand Sureshots Disques Corde »COMMENT GET MUSIC
「5ドルでゲットできる5枚の中古レコードから曲を作る」そんな、サウンド・リサイクルをテーマにしたグッド音楽ドキュメンタリーのDVD!デイデラス、ノーバディ、J・ロック、ラスGといったL.A.を代表する4人のビートメイカーが、レコードを掘り、サンプリングし、トラックを組み立てていく過程を克明に追ったドキュメンタリー!L.A.シーンの核となっているネットラジオ、Dublabが指揮を取って素晴らしい作品が完成しました!実際に作られた曲を収めたCD付!

8

Jackie Mittoo

Jackie Mittoo The Money Makers Creole Stream Music »COMMENT GET MUSIC
レゲエ史上最高のキーボーディスト、ジャッキー・ミットゥーのレア音源が、世界初CD化!スカタライツのメンバーであり、ジャマイカ産音楽のいくつもの重要作でその軽快なキーボードを披露してきたジャッキー・ミットゥーが、79年(推定)に、自身のからリリースした作品。メロウなルーツ・レゲエに女性コーラスが絡む、彼らしい爽快で心地いい1枚です!

9

Rah Band

Rah Band Perfumed Garden The Best Of Rah Band Awdr / Lr2 »COMMENT GET MUSIC
ラー・バンドのベスト盤がジャケットを新たに高音質CDでリイシュー!ビートルズやポール・マッカートニー&ウィングスのストリングス・ワークスで知られるリチャード・アンソニー・ヒューソンが率いたディスコ&ポップ・ユニット、ラー・バンド。80'Sムード全開のキッチュな名曲達は、老若男女誰もを幸せにしてくれる様なハッピーなムードに満ちています!タイムレスな名盤!

10

Chieftains Feat. Ry Cooder

Chieftains Feat. Ry Cooder San Patricio(CD+DVD Deluxe Edition ) Hear Music »COMMENT GET MUSIC
アイルランドの国宝級バンド、チーフタンズとライ・クーダーの共演が再び!!1995年、97年と2度もグラミー賞を獲得した夢のタッグが今回取り上げたのは、参加アーティスト達それぞれの国と国との間に実際にあった民族、宗教間の争いといった歴史的重みのあるテーマ。しかしながらそんな暗く重い歴史を払拭する様に、メキシコ、アメリカ、アイルランドなど多国籍の民族音楽が見事に絡み合い、力強くしなやかな調べを聴かせてくれます!!メイキング・ドキュメンタリーとレコーディングセッションを収録したDVD付きの限定デラックスエディション!

[Techno] #4 by Metal - ele-king

1. Oni Ayhun / 004 | Oni Ayhun (GER)

E王 あーっ......すっかり騙された......とんだ深読みだった。ベルリンのアンダーグラウンドから突如出現し、ミステリアスなアートワークとコンセプチュアルなサウンドが話題のオニ・アイフン。このレーベルから出された001はアシッド・ベースが独特のねじれを持ってうごめくミニマル・テクノと、ブライアン・イーノとのコラボレーションなどでも知られる現代音楽家ジョン・ハッセッルの電子トランペットをサンプリングした、深い音響のダーク・アンビエントだった。特殊なエッヂングが施されたヴァイナルとともに、それはコアなリスナーのあいだで即座に話題となった。002ではドレクシアを髣髴とさせるような、ブレイクビーツ主体の不穏な気配のデトロイティッシュ・テクノを聴かせ、プレス・シートにはチリ出身のロシア系ユダヤ人映画監督アレハンドロ・ホドロフスキーの処女作『ファンド・アンド・リス』からの引用がプリントされていた。

 それから、ジョン・ゾーンにリスペクトを捧げるユダヤ系ドイツ人のテクノ・プロデューサーで、ステファン・ゴールドマンの〈マクロ〉からリリースされたパトリック・カウリーの未発表音源のリミックスを手がけたことから、ユダヤ系のトルコ人(ayhunはトルコ人の姓名に良く使われている)かと思っていたのだが......。  003では北欧の自然をアートワークに、ギャラクティックなシンセが印象的な力強いダンストラックと、メランコリックなビートダウン・トラックだった。〈ワークショップ〉のシリーズにも近い質感で、〈ハードワックス〉系の影をちらつかせた。そして昨年ベルリンでのライヴでその正体がようやく明らかになった。オニ・アイフンはなんと、スウェーデンの姉弟によるエレクトロ・ユニットのザ・ナイフの弟、オーロフ・ドレーイェーの変名プロジェクトだった。ミステリアスなプロモーションは周到に仕組まれた偽装だった。

 ザ・ナイフは、姉であるカーリン・ドレーイェーのヴォーカルをフィーチャーしたニューウェイヴ・リヴァイヴァル系のダンス・ユニットで、"Silent Shout"の大ヒットによってスウェーデンのグラミーを受賞している。ポップ・フィールドで活動する彼らだが、シングル盤のリミックスではレディオ・スレーヴやトレント・モーラー、トロイ・ピアースなどをフィーチャーし、テクノのリスナーを意識したプロモーションを展開していた。

 また、オーロフ・ドレーイェーは本人名義でナイン・インチ・ネイルズの"Me,I'm Not"のリミックスを手がけているが、ここではミニマルを基調とするアンビエント・ハウスを披露している。そんな彼がソロとして自分の音楽の探求に向けたプロジェクトがこのオニ・アイフンなのだ。

 004では、まずランダムに動くアシッド・ベースと突発的なノイズをアクセントとするミニマル・テクノがある。その裏では、ファットでローファイなブレイクにエコーがかかり、じょじょにミニマルへ・テクノへ変化する。BPMの同期用いたトラックだ。音響的にも深みがある。プレスシートにはこの2トラックが引き起こす化学反応が論文調にまとめられ、「NaHCO3 + H+ → Na+ + CO2 + H2O」なる化学式で表されている。まだ公にはその正体を公表してはいないため、これも彼らしいフェイクのひとつだろう。そうしたギミックは抜きにしても、このプロダクションは素晴らしい。同じく今月リリースされた〈コントラ・ミュージック〉からのジェイソン・ファインのリミックスも秀逸だ。

2. Billy Shane / Runner EP | Stead Fast (GER)

 デッド・ビートやイントリュージョンとともにミニマル・ダブを発展させるビート・ファーマシーことブレンダン・モーラーがスタートした注目の〈ステッドファスト〉から5番目となるリリースは、フランソワの〈ディープ・スペース〉一派から頭角を現し、独自のダブ音響を拡大するブルックリン出身の新鋭、ビリー・シェーンによるストイックなミニマル・ダブである。ニューヨークで生まれ育ち、ボビー・コンダースやフランキー・ナックルズ、初期のシカゴ・アシッドに影響を受け、長年DJとして活動していた彼ではあるが、その作品には回顧的な色合いはいっさいない。〈ベーシック・チャンネル〉を経由して新たな発展を見せるニューヨークのIMAを伝えるサウンドとなっている。

 表題作の"Runner"は硬質だが柔軟なグルーヴを刻む。現在のミニマル・ダブの雛形とも言えるクアドラントの傑作"infinition"が甦ったようだ。下する中域のシンセが広がりを見せ、DJユースで使いやトラックに仕上がっている。低域が強調されダビーで音響的な深みがある"Hole"、ベン・クロックのようにタイトなグルーヴのアシッド・ハウスを聴かせる"Fach"、収録されているすべてがフロアに直結したミニマル・テクノだ。ブレンダン・モーラーによるエコロジスト名義でのリミックスは、ストレートなミニマルを聴かせるオリジナルをねじ曲げて、土着的なグルーヴがうなりをもったシンセとともに広がる、プリミティヴでトランス感のある曲に変換している。

3. Mike Shanon / Under The Rader | Cynosure (GER)

 モントリオール出身でベルリン在住のミニマル・プロデューサーであるマイク・シャノンの運営する〈サイノシュアー〉が昨年発足から10周年を向かえた。月日が経つのは本当に早い。ゼロ年代のテクノの最前線にはアクフェンに端を発するモントリオール勢がいつもその名前を連ね、10年のあいだにテクノの世界地図は大きく変わった。マイク・シャノンは大きなヒット作こそ出していないものの、マシュー・ジョンソン、デット・ビートとともにアクフェンが切り開いた土壌を拡大してきたアーティストのひとりである。

 今回のリリースはレーベルの10周年を記念したダブル・パックの10インチで、そうそうたる面子のリミキサーを起用されている。オリジナルはいままでにはないアプローチを見せたもので、ロソウルのシングルにも起用されていたベルリン在住の女性ヴォーカリスト、ファディラがジャジーに歌っている。マイク・シャノンらしいアシッド・ベースにファディラのヴォーカルが絡む。トランシーに疾走する切れのあるミニマル・テクノだ。

 リカルド・ヴィラロボスによるリミックは、もはや一聴しただけでわかる彼らしいリズムのミ二マル・ハウスだ。ヴォーカルの抜き差しとともにじょじょに変化していく、本当に細かいエディットが施されたもので、〈パーロン〉からの作風にも近く、そしてまたキャシーのトラックにも近い質感だ。デット・ビートのリミックスは原曲のトランス感を生かしながら、独自のベース・ミュージックへと拡大している。〈ブッシュ〉や〈プラスティック・シティ〉などに作品を残しているロッゾことマウンテン・ピーポーのリッミクスはまさに現在のフロアの気分を捉えたもので、オリジナルのヴォーカルを生かしたグルーヴィーなテック・ハウスはぞくっとするほど美しい。

4. To Rococo Rot / Forwardness Fridays | Domino (UK)

 トゥー・ロココ・ロット(上から読んでも下から読んでも)はベルリン出身のロナルドとロベルトのリポック兄弟とデュセッルドルフ出身のステファン・シュナイダーによる3人組みによるエレクトロ・アコースティック・バンドだ。1995年に〈キティ・ヨー〉からのデビュー、〈サブ・ポップ〉や〈ファット・キャット〉など、ポスト・ロックやエレクトロニカのフィールドからのリリースを重ね、現在は主に〈ドミノ〉を中心に活動している。ドラムとパーカッションを担当するロナルド・リポックはタルヴェルターのメンバーとして〈モール・ミュージック〉からダビーなダウンテンポをリリース。ギターを担当するロバート・リポックは〈ラスターノートン〉から美しいアンビエントをリース、現代音楽の方面からの注目を集めている。ベースのステファン・シュナイダーはマップステーションとして〈シュタオプゴルド〉から秀逸なエレクトロニカをリリースしている。

 今回のシングルは〈ドミノ〉からリリースされたニューアルバム「Supeculation」からのファースト・カットで、リミキサーにはダブステップとテクノを行き来する、シャックルトンとトラヴァーサブル・ワームホールが起用されている。両リミキサーの起用もさることながら、オリジナルの"Forwardness"は優雅なアンビエンスに溢れた傑作で、彼ららしい温かみのある素晴らしい演奏が収録されている。レコーディングはデュッセルドルフにあるクラウトロック・バンド、ファウストのスタジオでおこなわれ、ファウストのメンバーであるヨーヘン・イルムラーがピアノやオルガンで参加したという。どこまでも多幸感に満ちたアンビエント・ハウスは、同じくデュッセルドルフで活動していたクラウト・ロック・バンド、ノイ!のメンバーであったミハエル・ローターのソロ作を髣髴とさせる。

 そのいっぽうでは、ホワイト盤にスタンプだけの12インチが話題を呼び、テクノやダブステップのリスナーに注目されているトラヴァーサブル・ワームホールのリミックスも面白い。原曲のピアノのリフを上手く生かしながら、ダークで落ち着いたフロア・フレンドリーなダブステップに変換している。このトラヴァーサブル・ワームホールは90年代にハード・テクノ界を席巻したフランキー・ボーンズの実弟で、〈ソニック・グルーヴ〉などからハード・ミニマルをリリースしていたアダムXの覆面プロジェクトである。

 シャックルトンによる"Fridays"のリミックスは、エクスペリメンタルなオリジナル(シーケンスされたAMMとでも言おうか)をストレートに加工し、ディストーションのかったギターのリフに演説調のヴォーカルを絡ませながら、じょじょにトランスしていく。ダークで力強いダブステップだ。さまざなアイデアの詰まった素晴らしい12インチだ。

5. Floating Points / Peoples Potential | Eglo Recording(UK)

 クラブ・ジャズとダブ・ステップとテクノを結びつけ、さまざまな方面から注目を集めるフローティング・ポインツことサム・シェパード。 〈R2〉からリリースされたデビュー・シングル"Love Me Like This"では、セオ・パリッシュのようなスローなファンクを聴かせ、ジャイルズ・ピーターソンをはじめとするクラブ・ジャズ系のDJからの支持を集めている。〈プラネット・ミュー〉からリリースされた"J&W Beat"は初期のブラック・ドックにも似た雰囲気のトラックで、新世代のインテリジェント・テクノとして、ダブステップやテクノDJからの支持を集めている。

 あるいは、自身が立ち上げた〈エグロ・レコーディング〉からの"vacume boogie"は70年代のジャズ・ファンクが変調したような、そしてアナログ・シンセの響きが独特なビートダウン・トラックで、オランダの〈ラッシュ・アワー〉系とも近い作風だった。

 そして、今月〈ドミノ〉から出たフォーテットの"sing"のリミックスでは、メランコリックな原曲の雰囲気を上手く生かし、バウンシーなテクノへと変換した。また、〈ニンジャ・チューン〉から出たボノボの"Eyes Down"のリッミックスでも、UKガラージやダブ・ステップからの影響をほどよいアクセントとする、バレアリックで美しいエレクトロ・ブレイクを披露した。

 すべてのリリースはここ1年以内のものだ。いかに彼の急速に頭角を現しているかがわかるだろう。

 ここに挙げた〈エグロ〉からのニュー・シングルではジャジーなピアノとシンセが煌めく、デトロイト調のブレイク"peoples potencial"と、シカゴ・ハウスに接近し、ファットなベース・ラインにフェンダーのローズ・ピアノが絡むジャジーで力強いアシッド・ハウス"Shark Chase"が収録されている。彼はUKアンダーグランドの音楽シーンを自由に歩きながら、ジャズやレアグルーヴをもとにデトロイトを解釈しているのだろう。イーブンキックにとらわれない曲を創出するフローティング・ポインツは、アズ・ワンやスタシスの正当な後継ともいえるのではなかろうか。

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1

SCUBA

SCUBA Triangulation HOTFLUSH / JPN / 2010/3/27 »COMMENT GET MUSIC
新たなるDUBSTEP新世紀の幕開け!! 自身のレーベルよりリリースされた2NDアルバム。 OSTGUT TONからのMIX CDでもダークなテクノとも重なり合う独特の価値観を提示したシーンのキーマン。モチロン近作でもメタリックなリズム、退廃的な未来感を感じさせるシンセのメロ、DRUM&BASS、UK BREAKS辺りにも近しいタフなベースライン。まだDUBSTEPを体感していない人にも是非。(I)

2

FRANCOIS K

FRANCOIS K Heartbeat Presents Mixed By Francois K LASTRUM / JPN / 2010/3/24 »COMMENT GET MUSIC
DERRICK MAYによる第1弾の勢い冷めやらぬ中、フランソワによる第2弾がリリース!! 70年代のNYから現在まで、常にダンスミュージックの中心で輝いてきた巨星。今回は自身が運営する「WAVE MUSIC」絡みの音源をメインに、TECH HOUSE、DUB TECHNOをスムースにMIXしたフロア直結の陶酔型作品。(I)

3

COBBLESTONE JAZZ

COBBLESTONE JAZZ Modern Deep Left Quartet !K7/ULTRA-VYBE / JPN / 2010/3/24 »COMMENT GET MUSIC
間違いなく今年を代表する作品です。類似品のない独自の「JAZZ」感を表現しきった1STアルバム「23 SECONDS」から3年を経てリリースされた2ND アルバム。先行12inchでも見られた、これまでのスタイルをさらに推し進めた図太いGROOVEは本作でも健在。ディスクユニオン限定の特典として来日時のLIVEを収めたDVD-Rが付きます。(I)

4

DJ YOGURT & KOYAS

DJ YOGURT & KOYAS Chill Out THIRD-EAR / JPN / 2010/3/10 »COMMENT GET MUSIC
未だに売れ続けるロングセラーMIX CD「AMBINET FOR HARD WORKIN' PEOPLE」でもおなじみのヨーグルトがコヤス氏と組んで、あの名作「CHILL OUT」のカバーアルバムを発表!! コラージュ、SE、様々なAMBIENT的要素を組み合わせて新しく蘇った「CHILL OUT」。この作品も長い間愛される作品となることでしょう。(I)

5

GREG GOW

GREG GOW Pilgrimage EP TRANSMAT / US / 2010/3/19 »COMMENT GET MUSIC
歓喜!!! デリック・メイ主宰「TRANSMAT」レーベル復活!!! 先日リリースされたデリックのMIX CDでも終盤で強い印象を与えたあの曲です!! STRINGS OF LIFE時代から変わらない「TRANSMAT」らしいストリングスのフレーズとシンセ使いの組み合わせを、完全フロア対応型で成立させたエクストリーム・トラック!!!(I)

6

VARIOUS ARETIST

VARIOUS ARETIST Cecille Italy CECILLE / GER / 2010/3/24 »COMMENT GET MUSIC
EUのMINIMAL│HOUSEシーンの重要レーベル「CECILLE」からイタリア人プロデューサーをセレクトしたオムニバスが登場。アンダーグラウンドな顔ぶれですが、「CECILLE」のフィルターを通過しているだけに、全曲即戦力。個人的なオススメは、重心の低いGROOVEと酩酊感がたまらんLEON、オルガン使いとハウシーなハイハットがNICEなPIRUPAあたりをチョイス。(I)

7

DANI CASARANO & FELIPE VALENZUELA

DANI CASARANO & FELIPE VALENZUELA La Tulipe EP CADENZA / GER / 2010/3/24 »COMMENT GET MUSIC
絶好調レーベル、ルチアーノ主宰「CADENZA」より異色JAZZ MINIMALが登場!!! 南米チリのDANI CASARANOとFELIPE VALENZUELAによるトラックで、エレガントでモダンなJAZZピアノと、CADENZAらしいパーカッションでミックスしたA面。B面はVOICEサンプリングと美麗なピアノをMIX。こちらも盛り上がり間違いないです。(I)

8

V.A.

V.A. Don't Believe The Hype OSLO / GER / 2010/3/24 »COMMENT GET MUSIC
レーベル発足から3年、間違いなくミニマル・ハウスのトップレーベルの一つへと躍進を遂げたOSLOが届けてくれた渾身の12インチ4枚組! CHRISTIAN BURKHARDT、JOHNNY D、FEDERICO MOLINARIといった主力アーティストが、セクシーでグルーヴィーな"本物の"フロア向けミニマルをドロップ! DON'T BELIEVE THE HYPE!(S)

9

GLENN UNDERGROUND

GLENN UNDERGROUND AFRO GENTE SUPERB ENTERTAINMENT / FRA / 2009/4/2 »COMMENT GET MUSIC
確か07年のマイアミWMC、毎日Glennを追っかけてその都度彼がプレイしていた曲。めでたく12インチリリースで間違いなく大ヒット(!)かと思いきや、当時はそれ程騒がれませんでしたね。Theo Parrishがセットに組み込むようになり、先日のDerrick MayのCDにも収録。3年越しでようやくヒットに至った遅咲き演歌ヒット曲のような1枚。(Y)

10

PINK SKULL

PINK SKULL ENDRESS BUMMER MUSIC 4 YOUR LEGS / JPN / 2010/3/5 »COMMENT GET MUSIC
1stアルバムがそこそこ話題になったNYのサイケロック(?)バンドの2nd。ドロドロになり過ぎないための聴きやすいダンスロック~ESGのような臭いもしなくも無い曲もありつつ、中盤から後半はいろんな意味で"bummer"な少々OD気味にトバす「あっち側で鳴ってる音」ばかり。どなたか野外フェスに呼んでくれないですかね?(Y)

CHART by JET SET 2010.03.26 - ele-king

Shop Chart


1

SLY MONGOOSE

SLY MONGOOSE NOITE »COMMENT GET MUSIC
遂に到着!!大注目"ene"からSly Mongoose!!メジャー・デビュー作"Mystic Daddy"収録のフロア・キラー・トラック"Noite"が、アルバム・リリース迫る"Prins Thomas"によるチャート・エントリー必至のリミックス・トラックと共に待望の12"カットにてドロップ。

2

SEBASTIEN LINTZ

SEBASTIEN LINTZ HOUSE MAESTRO »COMMENT GET MUSIC
哀愁のジプシー・クラリネットが炸裂するツイステッド・エレクトロ・ハウス特大ボム!!大人気Sneakerz Muzikからリリースされた'09年アンセム"Amazzonia"でもタッグ名義でリミックスを提供し注目を集めた新星が、遂に待望の単独リリースですっ!!

3

THESE ARE POWERS

THESE ARE POWERS CANDYMAN EP »COMMENT GET MUSIC
これは危険です。トライバル&フリーキーなノー・ウェイヴ・アヴァン・シンセ・コア爆裂EP!!元LiarsのPat Noecker率いるThese Are Powers。アルバム未収の新録曲が、Tim SweeneyのRVNGから超限定12インチ・リリース!!Teengirl Fantasy、CosmeticsによるRemixも鬼ヤバです。

4

DANI CASARANO & FELIPE VALENZUELA

DANI CASARANO & FELIPE VALENZUELA LA TULIPE EP »COMMENT GET MUSIC
これは心地よい空間を演出してくれそうな美麗モダン・ミニマルハウス。Fumakilla 等でも活躍するスイスとチリをそれぞれ拠点とする遠距離コンビ、Dani Casarano & Felipe ValenzuelaがCadenzaに初登場!!Mike Shannon、Sascha Dive、Tobi Neumannらがプレイ、サポート中。

5

MIGHTY MOUSE

MIGHTY MOUSE SONG WITH NO WARD VOL.1 »COMMENT GET MUSIC
ナンとMighty Mouseの初オリジナル・シングルはCheap Thrillsから!!数々のリミックス、そしてMindless Boogie発"Song for Ellen"で否が応にも期待が高まっていたMighty Mouseオリジナル1st.リリースは500枚限定シリアル・ナンバー入り!!

6

F

F ENERGY DISTORTION PART 3 »COMMENT GET MUSIC
圧倒的なまでに濃密な美。フレンチ・ダブステップ金字塔アルバムからのカット3弾!!☆大推薦☆Helixirによる"Convultions"も当店スマッシュ・ヒットを記録したフレンチ・ダブステップ・レーベルより、大本命Fがぶっ放す歴史的傑作です!!

7

PILL WONDER

PILL WONDER JUNGLE/SURF »COMMENT GET MUSIC
完璧です。一人ぼっちでReal Estate + Animal Collectiveなロウファイポップ・ジーニアス!!ごぞんじUnderwater Peoplesから、またまた素晴らしい1枚が到着!!ワシントンのベッドルーム・ポップ・シンガー、Pill WonderことWilliam Murdoch君のデビュー・アルバム。超最高!!

8

YOUNG JAZZ REBELS

YOUNG JAZZ REBELS SLAVE RIOT »COMMENT GET MUSIC
Madlibの新たなジャズ・ユニット、その名もYoung Jazz Rebels!!Yesterdays New Quintetから派生した新ユニットがアルバムをリリース。さらにドープなMadlibワールドを展開した大注目盤!!

9

WOODS

WOODS I WAS GONE »COMMENT GET MUSIC
当然マスト。woodsist最重要バンドWoodsの激待望ニュー・レコーディング!!名作"Songs of Shame"以来となる最新シングルがWoodsistから到着!!サイケ・テープ・コラージュのA面、泣かせる寂寥キラー・フォーク・ロックB-1などグレイテストな全3曲!!

10

ONI AYHUN

ONI AYHUN OAR 004 »COMMENT GET MUSIC
期待のOni Ayhunによる待望の第4弾!!先週再入荷した3番も一日で売切れてしまった謎のレフトフィールド・テクノ・アクトOni Ayhunによる4枚目。これがホント素晴らしすぎます!!

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1

THEO PARRISH FEAT. BILL BEAVER

THEO PARRISH FEAT. BILL BEAVER Melloghettomental SOUND SIGNATURE / US / 2010/3/1 »COMMENT GET MUSIC
3/13にelevenへ訪れるTheo Parrishの新作は古くからデトロイトにてヴォーカリストとして活動するBill Beaverが参加。DJだけでなくクリエイターとしても孤高の存在であることを証明するアブストラクトなジャズ~ディープ・ソウルを展開。オリジナリティ溢れる楽曲性の高さには、もはや誰も追いつけない。

2

VARIOUS ARTISTS

VARIOUS ARTISTS Mahogani Music MAHOGANI / US / 2010/3/1 »COMMENT GET MUSIC
ショーケースコンピとしてリリースされたのが今から4年前。ノンプロにもかかわらず瞬く間にSOLD OUTとなった1枚が再プレス。ボーナスディスクがアーチストアルバムそのものというのもデトロイトならではだが、実はそのアルバム(Nikki-Oというシンガー)はMoodymannを中心にMike GrantやAlton Millerがプロデュース、ここでしか聴けない音源も多数収められています。

3

TYCHO

TYCHO Coastal Brake GHOSTLY INTERNATIONAL / US / 2010/3/1 »COMMENT GET MUSIC
最近のリリースがどんどんシューゲイザー系になってきているGHOSTLYから、ex MERCKのTYCHOが限定12"をリリース! キラキラ眩しすぎるシンセのシャワーが多幸感いっぱいのオリジナル、さらに涙腺うるうるのドラマチックな展開が待ち受けるMANUALリミックス、WINDSURFの1/2・HATCKBACKによる生音を活かしたバレアリックなリミックスなど、全曲悶絶必至のメロウ・エレクトロニカ傑作盤!

4

AUTECHRE

AUTECHRE Oversteps (Tシャツ付き限定セット: S) WARP/BEAT / JPN / 2010/3/2 »COMMENT GET MUSIC
孤高の革命家・AUTECHREによる記念すべき10thアルバムは、トレードマークである無機質なトラックの殻を破り、メロディーに焦点を当てたかのような問題作!DISK UNIONでは、DESIGNERS REPUBLICが手掛けたこの作品のモノトーンなアートワークをモチーフにしたスペシャルTシャツとCDアルバムをセットにしたファン垂涎の超レア・アイテムを販売!各サイズあります!

5

LINKWOOD FAMILY

LINKWOOD FAMILY Miles Away (Intrusion Dubs) FIRECRACKER / UK / 2010/3/8 »COMMENT GET MUSIC
極小プレスで即SOLD OUTとなってしまった12inchが再プレス!!! 毎リリース、ジャンルを問わず、DJ諸氏から熱い賛辞が贈られるFIRECRACKERレーベル。ECHOSPACEのINTRUSIONによるREMIXを2VERSIONを収録し、完全にECHOSPACE色に染め上げたMODERN TECH DUBなHOUSEチューンに仕上がってます。

6

JUZU A.K.A. MOOCHY

JUZU A.K.A. MOOCHY Live Mixed @Sound-Channel Osaka On 20090926 PROCEPTION / JPN / 2010/2/22 »COMMENT GET MUSIC
ラッパーRINO LATINA IIをフューチャーした「MOVEMENT EP1」もヒット、間もなくアルバムもリリースされるJUZU A.K.A. MOOCHYによる新作LIVE MIX CD!!!今作は昨年9月、大阪SOUND CHANNELの音源。SOUL、AFRO、BRAZIL、REGGAE、DISCO、FUNK、JAZZなどの生音楽曲で、ラウンジ的リラクゼーションを作り出すMIXに成功!

7

AUDIO WERNER

AUDIO WERNER Meanwhile HARTCHEF DISCOS / GER / 2010/3/9 »COMMENT GET MUSIC
まったくハズレなし、毎回スマッシュヒットを飛ばす「イチロー」タイプなAUDIO WERNER。自身のレーベルからの4曲収録のWパックでのリリースですが、視聴せず買ってもOK!?ぐらいの内容で、当然オススメですっ!! さらりと溶け込むシンセと、エレガントなウワもの。うねってる低音が腰にくるハウシーなリズム!!! 参ってしまうほどに使えすぎる!!!

8

MARCEL DETTMANN

MARCEL DETTMANN Dettmann Remixed OSTGUT TONTRAGER / GER / 2010/3/9 »COMMENT GET MUSIC
硬質モノ、文字通り鉄板タイトル!!! ベルリン・アンダーグラウンドの「てっぺん」的レーベル「OSTGUT TON」から、MARCEL DETTMANN音源のREMIX集が登場!! MDRからリリースするNORMAN NODGEによる90'S HARD TECHNOっぽいインダストリアル感が表現された2TRACKと、新鋭WINCENT KUNTHのおこもり感満点、地下DUB TRACKを収録。

9

VALMAY

VALMAY Radiated Future BLUEPRINT / UK / 2010/3/8 »COMMENT GET MUSIC
2009年の復活劇は、アンダーグラウンドにおける大きなトピックと思います。JAMES RUSKINによるBLUEPRINTからの新プロジェクトVALMAY。実はベテランPAUL MACの変名!! 打ち込まれる尖ったハットと抑えの利いたシンセのバランスは、相当計算されてフロア用に調整されいたり、HARD MINIMAL的ベースラインが光っていたりと、ベテラン・プロデューサーらしいキラーチューン。

10

PETER VAN HOESEN & DONATO DOZZY/MATT O'BRIEN

PETER VAN HOESEN & DONATO DOZZY/MATT O'BRIEN Talis/Into The Red CURLE / BEL / 2010/3/2 »COMMENT GET MUSIC
素晴らしいTECHNO作品!!! 来日の度に素晴らしいDJプレイで、ファンを増やしている、イタリアン・アンダーグラウンドのトップDONATO DOZZYと、間もなくアルバムをリリースするベルギーのPETER VAN HOSENによるコラボ!! 90年代のUK TECHNOのような透き通ったシンセのリフと、緻密なプログラミングによる音の粒子。フロアで鳴らせば百万馬力な低音は完璧!!!

CHART by JET SET 2010.03.18 - ele-king

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1

UNKNOWN ARTIST

UNKNOWN ARTIST WOMAN OF CANDY »COMMENT GET MUSIC
出た!!話題のInternational Feelからド最高な謎リエディット物登場!!先日のHarvey pres. Rocussolusの瞬殺振りも凄まじいものがあったInternational Feelから"I'm Not In Love"ネタに続くリエディット物第2弾!!

2

GONJASUFI

GONJASUFI A SUFI & A KILLER »COMMENT GET MUSIC
新世代ビート通過後のフリークアウト・メロウ・ソウル衝撃の傑作!!西海岸ビート・シーンから登場した謎のシンガー/トラックメイカー、Gonjasufiの1st.アルバム!!Flying LotusとGonzalesが正面衝突したような驚異のニュー・サウンド。とにかく聴いて下さい!!

3

DJ ASPARAGUS

DJ ASPARAGUS EP#1 -WAN'CHA »COMMENT GET MUSIC
Ur Daddy Loves Uが(B面込みで!)喝采(?)を浴びた新鋭、DJ Asparagusの第2弾リリース!今回も、Wipe The Needleとの"Ur Daddy Loves U"(Gil Scott-Heronの同名曲のRe-Edit)の流れを汲んだ"I Wan'Cha"、Erro"Don't Change"を文字通りファンキーに料理したB/W"Funk For Me"と、今回も両面イケます!

4

DONAEORIOT MUSIC

DONAEORIOT MUSIC »COMMENT GET MUSIC
大推薦☆D'N'Bを呑み込んだ進化形UKファンキー・ボムをSkreamがリミックス!!"Party Hard"の特大ヒットも記憶に新しいUKガラージュ・プロデューサー/シンガーDonaeoを、SkreamがD'N'Bリミックスした特大アンセムがこちらっ!!

5

V.A.

V.A. IN A CLOUD - NEW SOUNDS FROM SAN FRANCISCO »COMMENT GET MUSIC
これは素晴らしい。サン・フランシスコのインディ・シーンをパックした超グレイト・コンピ!!サン・フランシスコで活動する14アーティストの未発表曲を収録。アナログ・リリースのみの限定500枚。ロウファイ~ガレージ~フォークを中心に素敵な曲がめいっぱい入ってます。ジャケもグレイトです!!

6

RUSKO

RUSKO WOO BOOST »COMMENT GET MUSIC
ダブステップ史を塗り替えた天才がDiploのMad Decentから初登場!!■'10年度ベスト候補■流石のDiplo。先物データDJたちの間ではお馴染みの強力新鋭ばかりを起用した超強力リミックス12"へと仕上がりましたっ!!

7

V.A

V.A CECILLE ITALY »COMMENT GET MUSIC
人気のCecilleからの興味深い企画コンピが登場!!ミニマルハウス・シーンの最前線を走るCecilleが注目するイタリアン・プロデューサー達を一挙に紹介するコンセプト・コンピレーション!!!

8

QATJA S

QATJA S KROM EP »COMMENT GET MUSIC
☆大推薦☆これが当ジャンル'10年の一推しサウンド=フレンチ・テックだ!!当店お馴染みのベルジャン・ジャンパーDr. Rudeとのコラボ12"もリリースしているフレンチ・テック・マスターQatja Sによる特大傑作がこちら!!

9

D.I.T.

D.I.T. LONG GONE (PRINS THOMAS EDIT) »COMMENT GET MUSIC
コロラド発の幻のマイナー・ソウル/ファンク・バンド音源の正規再発!!Still Musicの再発専科Past Dueから、Alex From Tokyo、Rondenionによるリエディットも含めて'07年に再発された"Let's Start Dancin"に続く第2弾。

10

REZKAR

REZKAR ABOVE THE CLOUDS »COMMENT GET MUSIC
南アフリカからのグッド・ディープ・ハウスをJohn Dalyがリミックス。The Revenge、Dixon、Ame、Tim Sweeney、Jacques Renault、D'Julz、Michael Reinboth、Sasse、Lexxと多くのサポートが集まる話題作!!

CHART by JAPONICA 2010.03 - ele-king

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1

BASED ON KYOTO

BASED ON KYOTO SUNRISE EP JAPONICA/JPN / 3月8日 »COMMENT GET MUSIC
我らがBASED ON KYOTOの傑作アルバムからシングル・カット第3弾!アルバム収録曲の中でも"FLOWER"と並び人気の高い、た胸キュン・ディープ・ナンバー"SUNRISE"に、アルバムの中でも最もダンサンブルなナンバー"JUST AFTER THERAIN"をニュージーランドの天才RECLOOSEが、MARK E等の活躍で注目を集めるポスト・ビートダウンの注目株FRANK BOOKERと共同リミックス!

2

UNKNOWN

UNKNOWN STORY #3 STORY/GER / 3月7日 »COMMENT GET MUSIC
まったくの詳細不明ながら第1弾、第2弾ともに大反響を呼んだ"STORY"シリーズの最新第3弾が到着!今回も誰が手掛けたか不明ながら、ダビーでスモーキーな極上の黒さをまとったダウンビート系ディープ・ハウスを4作品!とにかく素晴らしい出来なので是非ともチェックしてみて下さい!

3

MENDO

MENDO ENCANTOS CADENZA / GER / 12月20日 »COMMENT GET MUSIC
大ヒットを記録した"REMEMBER"に続いて、LUCIANO主宰CADENZAから2枚目となるスイスのベテランによる本作は、子供声が癖になるフロア・キラーなミニマル・トライバル!FRANCK ROGER、RADIO SLAVE、SASCHA DIVE、MATHIAS KADEN、PETETONGら、錚々たる面々がプレイ!

4

BILLY LOVE (THEO PARRISH feat. BILL BEAVER)

BILLY LOVE (THEO PARRISH feat. BILL BEAVER) MELLOGHETTOMENTAL SOUND SIGNATURE / US / 3月2日 »COMMENT GET MUSIC
JEFF MILLSやMIKE BANKS、NIKO MARKSも在籍した伝説的なユニットMEMBERS OF THE HOUSEのメンバーであったBILL BEAVERが、THEO PARRISHとの共同プロデュースでお届けする話題作!"SUMMERTIME IS HERE"でも参加していたヴォーカリストGREEN PICKLESや、MEMBERS OF THE HOUSE(UR)、ROTATING ASSEMBLY等の作品でヴォーカリストを努めてきたベテランBILLY LOをフィーチャー!

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KAFKA

KAFKA KAFKA REMIXED MIGHTY HIGHNESS/AUS / 12月25日 »COMMENT GET MUSIC
オーストラリア発、新興クロスオーヴァー・レーベル<MIGHTY HIGHNESS>第二弾!ブラック・ルーツ・ミュージックをふんだんに取り込んだオーストラリアのアフロ・ファンク・バンド「KAFKA」のリミックス EPとなる今作。アフロ・ディスコ、ロービート・ダビー・ブレイクス、ビートダウン?ニュー・ディスコなアフロ・ファンク・ブレイクビーツまでジャンルレスに全方位対応型の粒揃いなナイス・リミックスEP!

6

SOFRITO SPECIALS

SOFRITO SPECIALS TROPICAL SOUNDCLASH! SOFRITO SPECIALS/UK / 3月10日 »COMMENT GET MUSIC
素材のレアグルーヴ独特の土着的質感を活かしながらもディスコ?ハウス・フィールドにまでばっちり対応できてしまうナイスなエディット4トラック収録!中でも<G.A.M.M>からリリースされた"AFRICAN RHYTHM"のリエディットで注目を集めたスウェーデンのTROPICAL TREATSによるA面2トラックはリズム・アンサンブル主体のハウス?ブレイクビーツ・フィールなかなり秀逸な出来!

7

HOLGER CZUKAY

HOLGER CZUKAY A GOOD MORNING STORY CLAREMONT 56/UK / 2月16日 »COMMENT GET MUSIC
先日リリースされた限定10インチが瞬く間にソールドアウトとなったクラウト・ロックの伝説的グループCANのオリジナル・メンバー、ホルガー・シューカイが99年にリリースした大傑作アルバムが10年の時を経て2LPで登場!当時もCDオンリーでのリリースだったため今回が初のアナログ化!未発表音源を 3曲収録、見開きジャケット仕様、ナンバリング入りの世界限定500枚プレス!

8

LOWER EAST SIDE PIPES

LOWER EAST SIDE PIPES MINI DEMO SAMPLER SACRED RHYTHM/US / 3月9日 »COMMENT GET MUSIC
DANNY KRIVITの最新MIXCDに収録された"DISORGANIZED CORRUPTION"に続く本作、リードトラックとなるA1"DRAGON"は熱いギターリフとホーンへ程よい深みを備えたダビーかつドープなエフェクトを多用させたダンストラック!タイトルにはかつてJOE CLAUSSELLが勤めていた"DANCE TRACKS RECORDS NEW YORK"の所在地"91EAST THIRD STREET"を掲げた入魂のDUB VERSION!

9

TRISHES

TRISHES DIDN'T I ? / MAKE A SMILE FOR ME THE LOUD MINORITY/AUS / 3月9日 »COMMENT GET MUSIC
ドイツの<MELTING POT>からのリリースもあるオーストラリアのDJ/プロデューサーTRISHESによる今作。イチオシはA面"DIDN'T I?"!"DARONNDO/DIDN'T I"のヴォーカル・パート、メロディー・ラインに"JAY DEE/F*CK THE POLICE"ネタでおなじみ"RENE COSY/SCRABBLE"のドラムブレイクを被せた超絶マッシュ・アップでDARONNDOの名曲を絶妙なハマリ具合でフロア仕様へとアップデートしたかのような逸品!

10

ERDBEERSCHNITZEL

ERDBEERSCHNITZEL 4 MONTHS FAUX PARR/UK / 3月3日 »COMMENT GET MUSIC
ドイツの新鋭ERDBEERSCHNITZEL自身による"4 MONTHS"オリジナルVer.はジャズ・ソウル感覚をふんだんに盛り込み、ビルドアップしていくデトロイト・サウンドにも通じる黒光りした秀逸ディープ・ハウス・トラック!さらにボトムへヴィに展開されるMARK E節炸裂のリミックスももちろん◎!そして"TONIGHT IS TODAYIS TOMORROW"もスペイシー・ジャジーなビートダウン?ディープ・ハウス・トラックでこちらも文句なし!

銀杏BOYZ - ele-king

"ボーイズ・オン・ザ・ラン"のPVが話題になっている......いや、すでに数週間前の話だが。とにかく、それなりに話題になっていた。ご覧くださればその理由もおわかりになるはず。あの『SNOOZER』もまったくスルーした"ボーイズ・オン・ザ・ラン"のPV、その合評をどうぞー。

観て一驚を喫したのは、そこに映し出されていたのが、
このとき振り落とされた男性たちであったことです。文:橋元優歩

 GOING STEADY時代のファンが多いというだけのことかもしれませんが、驚いたのは、あの女性ジャケのシングルを実際に被写体のような女性が買いにくることです。いまはなき御茶ノ水の某店舗、パンクとインディ・ロックだけを置いた薄暗いフロアにて、ファースト・アルバム2枚同時リリースから2年半を経て、銀杏BOYZのシングル「あいどんわなだい」が店頭に並んだとき、鋲打ちジャケットの男性や若いサラリーマン等々の後ろから、正月でもないのに着物を着た可愛らしい女性がちょこちょこと入ってきて「みねたくんのシーディーください」(!)と言ったことは、非常に印象深かったです。その週は女性客がいつになく多く、もちろんたいていは「みねたくんのシーディー」のお客さん。そしてたいていが可愛らしい。ちょっと待ってください、あなたがたは、スカートをめくられ("日本人")、体操服を盗まれ("Skool Kill")、1000回妄想("トラッシュ")されているのですよ!? しかし「みねたくん」ならよいのです。

 曲中では、女性=「あの子」はいつも手が届かないひとつの究極の存在として表象されるし、そのために結局は転校してしまう("あの娘に1ミリでもちょっかいかけたら殺す")けれど、実際にはモテてしまう「みねたくん」。彼が同世代の男性に課したハードルはとても高い。

 PEACEとPISSを心に放て スカートをめくれ/凶暴的な僕の純情 キュートな焦操/
(中略)/球場を埋め尽くす十万人の怒号と野次/グラウンドに投げ込まれるゴミの嵐にも負けず/九回の裏50点差の逆転を狙う/素っ裸の九番打者に僕はなりたい――"日本人"

 デビュー・アルバム『君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命』収録曲ですが、2005年に、この主題はあまりにハードです。地下鉄サリン事件から数えても10年も経っている。九回裏での50点差......九回裏ってものが、10年前に終わってしまっている。これを言えるならヒーローだ。それなら女性もついてくる。また、ついてくるからこそそう言える。しかし、この主題を真に受けるなら、ほとんどの者がそこからこぼれ落ちるだろう......。

ボーイズ・オン・ザ・ラン 銀杏BOYZ
ボーイズ・オン・ザ・ラン


初恋妄℃学園/
UK.PROJECT

 久しぶりのリリースとなる本シングルのPV「ボーイズ・オン・ザ・ラン」を観て一驚を喫したのは、そこに映し出されていたのが、このとき振り落とされた男性たちであったことです。一種のドキュメンタリー・ムーヴィーの形をとっていて、「将来の夢」とおぼしき事柄を書いたフリップを持った男性が次々と現れ、簡単なインタヴューを受ける。それが延々と続く。セーラー服や、彼らの3枚のシングルのジャケットを飾る、あのあどけない表情をした女性の登場を予期していると、完全に肩すかしを食らいます。それどころか女性はひとりも出てこない。戦争オタクを皮切りに、アイドル、ガンダムなど各種オタク、「脱ニート」や「リア充」を掲げるライトな生活者、正社員志望のロスジェネ既婚者から5000万円を女性に貢いでしまった中年男性、親の介護で消耗しきっている青年等々矢継ぎ早に映し出され、そのいっぽうで「世界一周」や「ストパーかけたい」というささやかな願望も語られる。ごく普通の若い人もいるけれど、頭の薄い人や話し方が宿命的にイタい人など、ある一定の線は充分に意識されている印象を受ける。ひどく滑舌の悪い中年男性の夢は「21世紀のリーダー」だ。

 素っ裸の九番打者どころの話ではないです。過剰な流動性を生み出す成熟社会にあって、また、生きていくのに必要なだけのストーリーを調達するのに以前ほどには素朴でいられないポスト・モダン状況にあって、多くの人が舵を切り損ねている。あるいはオタク化するなど急ハンドルを切っている。

 「みねたくん」の言葉は今度は彼らに届くのでしょうか。もういちど彼らを挑発することができるのでしょうか。率い、目指され、より説得力のある男性モデルを立ち上げることができるのでしょうか。映像は画面転換の速度を増し、曲はバーストし、とくに結論は導き出されない。ただ、最後に写った男性の言葉は、とても印象的に使われていました。「まあ、なるまで......闘います。闘ってもダメだったら、まあ勝つまで、諦めない、まあ死ぬまで、まあ天国に行っても、諦めません。」

 彼は何になるのか? なりたいのか? 正社員に、です。「ほぼ見込みがないかも」という自信のなさをありありと表情に伺わせながら、「まあ」を多用して諦めないことの照れを隠しながら、ただ「諦めない」というキャラだけは自分に設定しておこう、と。もう切なくて観れたものではないです。天国に行ってから正社員になってもまったく意味がないのですから。

 前シングルからさらに2年のインターバルを置き、自らのテーマの洗い直しをおこなったかに見える本作は、だから以前までは曲の対象からはずされていた種類の女性に対しても届き得るものになっているのではないでしょうか。おひとりさま、腐女子、カツマー、さらには森ガール等々の類型は、上に出てくる男性たちと対称形を成している。それは流動的な社会を生きる上で、ひとつの拠り所として切実に選択された態度です。

 サア タマシイヲ ツカマエルンダ――"若者たち"

 つかまえあぐねている人びとに、もう以前のようには煽らない。そこにはそれ相応の背景や事情があるから。でもやっぱり、さあ、魂を、つかまえるんだ。複雑な社会であることはわかっているけど、やっぱりやらなければいけない、「もう一丁」!――"ボーイズ・オン・ザ・ラン"

 "ボーイズ・オン・ザ・ラン"は、それを以前のように直接言わないことで、より普遍的な表現を勝ち得た力作であり、PVとしては破格の喚起力を持った問題作である。もちろん、社会問題が絡む以上は若干の既視感は否定できない、が、実際にいまを生きている男性の顔を正面から撮りまくるというのは、方法的にも非常に有効であると思う。人が素でカメラに向かうと、いろいろなものが写り込むから。

文:橋元優歩

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何がそんなに腹立たしかったのか。それは、制作側の銀杏BOYZの、「イケてる/イケてない」という判断基準のベタさ加減だ。「勝ち/負け」にたいする想像力の貧困さと言い換えてもいい。文:二木 信

銀杏BOYZ
ボーイズ・オン・ザ・ラン


初恋妄℃学園/
UK.PROJECT

 "ボーイズ・オン・ザ・ラン"のPVが巷で話題になっていると聞いて、youtubeで見てみた。いまさらこの映像に鼓舞され、熱狂する若者がいると思うと悲しくなった。愕然とし、無力感に襲われ、そして、「もういい加減にしてくれよ」とひとりごちた。銀杏BOYZが関わっているとだけ教えられた僕はその時点で映画も観ていないし、原作の漫画も読んでいなかった。銀杏BOYZを聴いたこともなかった。それでも、けっこう期待していたのだ。好き嫌いはあるとしても、若者から熱烈な支持を得ているロック・バンドが関わっているのだ。何かこうヴィヴィッドなものを見せてくるのだろうと。それなのに......僕は映像を見た後、しばらくして腹が立ってきて、悪態をつく衝動を抑えることができなかった。

 "ボーイズ~"は、たしかに現代の日本社会のある側面を捉えている。映像は、街頭に立つ男たちと彼らが画用紙に書いた「夢」を次々に映し出す。場所はおそらく、渋谷、原宿、秋葉原だろう。「世界征服」「平和」「21世紀のリーダー」「脱ニート」「童貞を捨てる」「北川景子とベロチュー」「アイドル万才」「公務員」。男たちはカメラに向かって、意気揚々と夢を語り、現実の厳しさを訴え、ふざけた調子で踊り、怒りを吐き出す。衰弱した様子の中年の男は、精神科に入院する母親の介護から解放されたいといまにも泣き出しそうな表情で訴える。また、排外主義者の若い男は、外国人地方参政権に反対だという主張を捲くし立てる。登場するのは、だいたいが冴えない日本人の男たちだ。彼らの多くは、切実であり、切迫している。感情を揺さぶられる場面がないわけではない。

 では、何がそんなに腹立たしかったのか。それは、制作側の銀杏BOYZの、「イケてる/イケてない」という判断基準のベタさ加減だ。「勝ち/負け」にたいする想像力の貧困さと言い換えてもいい。制作側は、意図的に「イケてない」男たちを選んでいる。そして、顔や風貌が冴えない男たちの振る舞いをどこか滑稽に撮影している。その偽悪的な撮影手法の裏には彼らなりの倒錯した愛があるのだろう。ただ、"ボーイズ~"が人を腹立たせ、不快にさせるのは、この場合転倒を図るべき新自由主義政策以降の社会における既存の「勝ち/負け」の基準を結果的に補強してしまっているからだ。世のなかには、経済的に恵まれていて、それなりに社会的地位があって、容姿が良くても不幸な男はいるし、その逆もまた然りである。顔や風貌が冴えなくて、貧乏で、ちょっと狂気じみている男たちだけが「負け組」で、「モテない」とは限らない。「勝ち/負け」というのはそんな単純なものではない。結局、多様性を打ち出しているようで、映像で提示されている「負け」はステレオタイプなものばかりなのだ。それは、単純に表現として退屈だ。

 自分だけが被害者だと思う人間は最大の加害者になる、というようなことを書いた橋本治の言葉を思い出す。不幸なのは自分たちだけではない。中二病的な自己憐憫で心を慰撫し、小さい自意識に固執して、「モテる/モテない」などという他人の尺度ばかりが気になるというのは本当に恥ずかしいし、イタい。時に醜悪でさえある。翻弄されるぐらいならば、そういうゲームからさっさと退場するべきだし、その方法を考えるべきだ。

 そもそも映像は、ゼロ年代を通じて可視化した社会的弱者のあり方をなぞっているに過ぎない。別の言い方をすれば、雨宮処凛や湯浅誠らが組織した、プレカリアート運動や反貧困系の運動以降の青春パンクと言うことができる。「フリーター」「ニート」「派遣」「格差社会」「ワーキング・プア」「ファシズム」「モテ/非モテ」「オタク」。新聞、週刊誌、テレビからネットまで、ありとあらゆるメディアが散々取り上げてきたキーワードだ。さすがにそれらを前提にして、男たちの自分語りの映像を見せられても白けてしまう。早い話が、"ボーイズ~"は、手垢のついた記号を引っ張り出して、捻りもなしに「イケてない」男たちに当て嵌めているのだ。12分近くにもおよぶPVの中盤以降、連帯を促すようにかき鳴らされるメロディアスなギター・サウンドの演出の陳腐なこと! 男たちのカタルシスだけで社会が変革できるのであれば苦労はない。銀杏BOYZというのは、いまだ社会化/可視化されることのない、こんがらがった言葉や感情を表現して時代の先を行くバンドだと思っていたが、"ボーイズ~"のPVは、完璧に時代から一歩も二歩も立ち遅れてしまっている。

 そう、花沢健吾の原作漫画『ボーイズ・オン・ザ・ラン』のクライマックスがあんなにも素晴らしいのに。いわゆる非モテの主人公、田西敏行が鼻水を垂らし性に翻弄されながら駆けずり回る前半から、複数の物語が絡み合いながら、「家族=共同体」再編というメッセージが練り上げられていく後半へのドラスティックな展開は感動的だ。荒れた父子家庭で父親に無視され、学校では凄惨ないじめにあい、ボクシング・ジムに入り浸る小学生の男の子「シューマイ先輩」、荒くれ者の元ボクサーの夫を持つ、耳の聞こえないボクシング・トレーナーの女「ハナ」、そして田西が、時に傷つけ合い、時に助け合いながら絆を深めていく。ある時、ハナの夫にボコボコにされた田西は、「結局......非力な人間は負け続けなければならないのか?」というシューマイ先輩の問いに、「自分ざえ認めぎゃ、まだ負けじゃないっずっ!!」とぐしゃぐしゃな顔で答える。最終的に3人は、それぞれの「負け」を噛み締め、お互いを認め、前を向き、家族=共同体として生きようとする。社会の片隅で生きる女と子供と男が寄り添いながら、ともに堂々と胸を張って歩きはじめるのだ。とても美しいし、夢があるし、素敵な物語だ。そして、いまの時代に、説得力を持ち得る物語だ。

 PVには、その、原作の重要なメッセージがまったく反映されていない。PVの最後は、「一日も早く正社員になりたい」という夢を持つ男が、「まあ、(正社員に)なるまで闘います。闘ってもダメだったら、勝つまで諦めない。死ぬまで、天国に行っても諦めません」と、自身の労働問題をなかばテンパり気味に語るシーンで締めくくられる。それは、前述した田西の発言に対応している。労働問題、重要である。競争も熾烈だ。現実は厳しい。ただし、少なくとも僕は、被害者意識に呪縛された男たちだけの共同性より、女と子供と男が入り乱れた予測不能な共同性の方に圧倒的に可能性を感じる。

文:二木 信

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酷く複雑な気持ちになるのは、その映像の露悪性と、音楽の露善性の強烈なギャップだ。銀杏は彼らを思いっきり突き放すと同時に、同じ強さで抱きしめる。文:磯部 凉

「セックスのことを24時間考えている」。所謂"童貞"ブームの代表格だったマンガ家・古泉智浩が、童貞を失った後の世界を描いた単行本『ピンクニップル』(08年)の、自身による後書きには、そんなタイトルが付けられている。何故、考え続けなければならないのだろうか? それは、決して満たされることがないからだ。ひたすら虚しいセックスを繰り返す同作の主人公同様、私達は言わば餓鬼道に堕ちた罪人である。

 00年代前半は、サブ・カルチャーにおいて、性愛の問題が重要な位置を占めた時代だった。もちろん、性愛の問題は常にあるものなのだけれど、キーワードを並べていくと、90年代後半に特徴的だったのが、援助交際が物議を醸した"コギャル"や、青山正明が先導した"鬼畜系"等、アンチ・モラリズム的な傾向だとしたら、00年代前半に特徴的だったのは"ケータイ小説"や"セカイ系"、"童貞"など、反動としてのよりモラリズム的な傾向である。また、ふたつのタームのあいだにあるのは断絶ではなく、あくまで変化であって、最初に挙げた"コギャル"が、その後の"ケータイ小説"へと形を変えたのだと考えられる。例えば、社会学者の宮台真司は、当初、援助交際を性愛のセルフ・コントロールとして高く評価していたのを、その後、当事者である女子高生の多くが精神のバランスを崩して行ったのを受け、彼女たちを守るシステムを構築するために保守主義へと転向していったが、速水健朗『ケータイ小説的ーー"再ヤンキー化"時代の少女たち』(08年)で指摘されていたように、純愛モノの仮面を被った"ケータイ小説"の裏に隠れているのはデートDVという醜い現実であり、その物語世界は、現実世界の性愛関係で受けた傷を治すための、ある種のヒーリングとして機能しているのだ。ありもしないふたりだけのセカイを夢想するのも、過ぎ去った童貞時代を美化するのも、また然り。00年代も中頃になると、なかには、最初から傷付かないために現実の性愛関係自体を回避するという極端な思考まで登場した。ライト・ノベル作家の本田透が発表したエッセイ『電波男』(05年)がそうで、リアルな女性に見切りを付け、ヴァーチャルな女性との恋愛を楽しもうという提案がなかば本気で試され、支持を得ていたのは記憶に新しい。

 さらに言えば、性愛の問題とは、イコール、コミュニケーションの問題である。どんな人間もひとりで生きていくことはできない。いや、肉体的には生きていくことはできるだろう。ただ、人間は家族や友人、恋人といった他人とコミュニケーションを取り、彼らから承認を得ることによって、初めて生きていく意味を得るのだ。本来、セックスは、その承認を得る行為のひとつであるはずだ。セックスの機会自体は、ポスト・モダン化が進むなかで、多種多様な性的コンプレックスが解放され、増えたかもしれない。しかし、日本では、コミュニケーションの総体としての社会が80年代のバブル景気以降、一気に形骸化してしまった。つまり、セックスとコミュニケーションが切り離され、セックスだけがデフレ化してしまったのだ。90年代後半のアンチ・モラリズムとは、若者たちがそんな社会に対して発した、ある種の警戒だった。それでも、当時はまだそのストレスを消費によって発散させてくれる経済的な余裕があったため、露悪的な表現で済んだのが、00年を越えて不況が現実化し、しかも、政府が対策として新自由主義を打ち出し、格差が拡大するーーさらにコミュニケーションが枯渇するという焦りが拡大すると、若者のあいだで防御としての露善的な表現が浮上しはじめる。警戒から防御へ、反応のレヴェルが上がったのだ。

 ポップ・ミュージックで言えば、強くモラルを訴えていた、当時の青春パンクや日本語ラップがそうで、その際、シーンや国家といった架空の共同体を通して、社会性の復権を計るという点ではネット右翼も同じである。そして、露悪的な表現よりも、露善的な表現のほうが、善というあってないような価値観に無条件で寄り掛かっているために、質が悪いし、深刻なのだ。00年代後半、露善的な表現はさらにその純粋さを過剰化していった。まぁ、桜ソングや応援歌ラップみたいなものがTVや街頭のスピーカーから垂れ流されている分には、チャンネルを変えたり、ヘッドフォンをして他の曲を聴けば済むだけの話なのだけれど、それまで、あくまでヴァーチャルな世界のなかに留まっていたネット右翼が"在特会"のように、リアルな世界に溢れ出て来た時は、ナチスが台頭して来た頃のドイツを連想し、ゾッとしたものだ。ナチスこそはまさに、愛国と経済再建をモットーに掲げ、その意に沿わないノイズを徹底的に排除していった、露善的な団体ではなかったか。

 ところで、銀杏BOYZ(=峯田和伸と、イコールで結んでしまってもいいだろう)の『君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命』と『DOOR』という2枚のアルバム(共に05年)を特徴付けているのは、言わば露悪的な表現と露善的な表現のミックスである。例えば、『君と僕~』のちょうど折り返し地点である6曲目"なんて悪意に満ちた平和なんだろう"は、当時の日本のサブ・カルチャーにはっきりとあった、戦争反対というメッセージを通して皆がひとつになろうとするようなムードに冷や水を浴びせる、つまり、戦争反対もまた、戦争と同じ全体主義ではないのかという"戦争反対・反対"ソングだが、続く7曲目"もしも君が泣くならば"は一転、「もしも君が死ぬならば僕も死ぬ」と熱唱する、何処となく軍歌的な響きのあるシング・アロング・ナンバーで、そこでアルバムは露悪的な前半から、露善的な後半へと突入していく。そして、その二律背反的な二部構成は、どっち付かずや分裂症的というよりは、『DOOR』もほぼ同様の構造を持っていることからも、かなり意図的に制作されていることを思わせる。一方、前身のGOING STEADYが残した2枚のアルバムはストレートに露善的であり、要するに、バンドが銀杏に発展し、新たな要素として付け加えられたものこそ、露悪的な表現だったのである("なんて~"は新曲だが、"もしも~"はゴイステ時代から歌われている曲だ)。考えるに、銀杏がここでやりたかったのは、当初の青春パンクが持っていたヒーリング的な側面を機能させつつも、その表現が陥りがちな純粋性の強調の果ての、ノイズの排除に向かわないために、露悪性を導入することだったのではないだろうか。その試みは、最近で言うと神聖かまってちゃんのようなバンドにも引き継がれているし、興味深い事に、SEEDAの『花と雨』(06年)のリリースがきっかけで日本語ラップ内に起こったハスラー・ラップ・ブームともリンクしている。ドラッグやセックス、ヴァイオレンスについて歌った露悪的な楽曲と、家族や友人、恋人への愛を歌った露善的な楽曲という、一見、チグハグな組み合わせこそがハスラー・ラップ・アルバムの肝だからだ。

 ただし、もっと細かく言えば、峯田の変化は、『君と僕~』と『DOOR』ではなく、GOING STEADYが2枚のアルバムを経てリリースしたシングル『童貞ソー・ヤング』(02年)からはじまっている。古泉智浩がジャケットのイラストを手掛けた、その名もズバリ、"童貞"ブームを象徴するような、前述したロジックで言うならモラリズム/露善的なタイトルのこの楽曲で、峯田は「一発やるまで死ねるか!!!」と叫んだ後、「一発やったら死ねるか!!? 一発やったら終わりか!!?」と続けている。つまり、ここで歌われているのは、童貞的な純粋さに逃げ込むのではなく、むしろ、童貞を捨てた後にはじまる現実こそを生きていけ、というメッセージなのだ。中学生時代に担任教師から性的虐待を受けたことが原因で、異性と話しただけで嘔吐してしまう程の性的コンプレックスを抱いていた峯田にとって、性愛はもっとも重要なオブセッションであり続けているが、同曲は極めて重要なターニング・ポイントとなった。自身の性的コンプレックスに初めて向き合うことで、他人とのコミュニケーション、延いては社会を相対化することに成功したのだ。セカイ系から世界系へ。この成長は、この時期においては、かなり真っ当だったと言えるのではないか。

 やがて、00年代も後半に差し掛かると、所謂"童貞"モノのなかにも、『童貞ソー・ヤング』の後に続くように、ポスト"童貞"をテーマにした作品が現れはじめる。松江哲明の映画『童貞をプロデュース。』(07年)は童貞を拗らせた教え子(=かつての自分)に業を煮やした監督が彼らを現実に立ち向かわせるドキュメンタリーだったし、花沢健吾のマンガ『ボーイズ・オン・ザ・ラン』(05年~08年)は、前作『ルサンチマン』(04年~05年)におけるヴァーチャル世界=童貞のディストピア(『電波男』の表紙にも引用されている)が崩壊するラストから地続きに、リアルな恋愛の地獄をしっかりと描いた作品だった。それでも、マンガ版『ボーイズ~』の読後感は悪くない。銀杏の『僕と君~』『DOOR』が、"アンチ・モラリズム/露悪→モラリズム/露善"という流れを持っているため、あくまでポジティヴな印象が残るのと同じ物語構造を採用しているからだ。そこを甘いと感じる人もいるだろうが、これはこれで悪くない。何故なら、もともと現実の性愛関係に疲れて、妄想の性愛関係に逃げ込むような人間に、いきなり、徹頭徹尾厳しい現実を突きつけたからといって、拒否反応を起こしてしまうだけだからだ。リハビリとしてはこれぐらいで調度良い塩梅なのだ。

 しかし、さらに社会の状況が悪化していくにあたって、いつまでもそのようなロマンチシズムに留まっていられないのもたしかで、例えば、この1月に公開された映画版『ボーイズ~』は見事、そんな時代に対応した傑作である。00年代演劇において、チェルフィッチュの岡田利規と並んで露悪的なアプローチでもって性愛の問題に取り組み、だからこそ露善的なアプローチが幅を利かせるエンターテイメントの世界ではいまいちポピュラリティを得ることができなかったポツドールの三浦大輔は、この初の大舞台となる映画第3作で、ここぞとばかりに、原作では掴みに過ぎない露悪的な面を強調し、後味の悪さを残すことにひたすら賭けている。全10巻に及ぶマンガの第一部まででストーリーを終えるのは、映画の尺の関係で仕方がないとして、原作では主人公を承認してくれる役割のヒロインをバッサリとカットしてしまったのは見事だった。その選択によって、映画版は、原作版のロマンチシズムと引き換えに、新たなリアリズムを得ることに成功しているのではないだろうか。

ボーイズ・オン・ザ・ラン 銀杏BOYZ
ボーイズ・オン・ザ・ラン


初恋妄℃学園/
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 そして、映画版『ボーイズ~』で主演を務め、銀杏として同名の主題歌を手掛けた峯田は、自身が監督した12分にも及ぶPVにおいて、映画版にタメを張る才能を発揮している。それは、まるで『君と僕~』と『DOOR』の全29曲を混ぜ合わせてひとつにしたような作品であり、この世界そのものように混沌としている。映像は、松本人志の『働くおっさん人形』(03年)を思わせる露悪的なインタヴュー形式で、ネット右翼からヤンキー、童貞からホストまで、極端なタイプの若者達に夢ーーそれはさまざまな形の承認欲求であるーーを語らせ、現代日本若者像のステレオタイプを浮かび上がらせていく。そして、そのバックには銀杏のシングルとしては初めてと言っていいくらい、ストレートに露善的な、如何にも青春パンクといった歌詞と曲調の楽曲版『ボーイズ~』が鳴り響く。画面に映る"ボーイズ"たちこそは、まさに、銀杏のファン像であり、そして、銀杏が承認してあげたいと考えている若者たちなのだろう。しかし、本PVを観ていて酷く複雑な気持ちになるのは、その映像の露悪性と、音楽の露善性の強烈なギャップだ。銀杏は彼らを思いっきり突き放すと同時に、同じ強さで抱きしめる。これは、J-POPでも日本語ラップでも、ファンを囲い込み、ノイズを排除し、現実を切り離してしまうような、日本のポップ・ミュージックにありがちな態度とは真逆のやり方である。私はつい先日、twitterでこのPVを紹介し、さまざまな人のあいだで賛否両論の議論が巻き起こり、広がっていくのを目の当たりにした。また、同じ問題を巡って、アンチ銀杏を表明している田中宗一郎の「何故、自分がこのバンドを嫌いなのか明確になった」というコメントをネットを通して読み、同じくアンチ銀杏だったはずの野田努の「峯田和伸には江戸アケミ的なところがあると思った」という発言を直に聞いた。その過程で私は、彼らが00年代の日本においてもっとも重要なロック・バンドであることを再認識したのだった。いま、こんなにも議論を呼ぶバンドが、日本に他にいるだろうか。

 そして、この猥雑とした映像に辛うじて整合性を与えているのが、ラストにほんの一瞬だけ映るライヴ・シーンである。血と汗と涎まみれになって演奏を終えたメンバーたちは、それでも満足できないのか、まず、ギターのチン中村が天井に上がっていく垂れ幕に飛びついてぶら下がり、あわやというところで手を離し、落ちて来る。それをきっかけにベースの我孫子真哉が、続いて峯田が、次々とフロアに飛び込んでいく。と、突然、映像は真っ暗になる。そこに、Youtubeをぼんやり覗き込んでいた自分の顔が写り、人は我に変えるだろう。いま、画面のなかで喋っていた醜い奴らと自分は同じなのだと。それは、現代日本の優れた演劇やコンテンポラリー・ダンスが、かつてのように肉体の可能性を模索するのではなく、むしろ、肉体の限界性を表現することで、現代を描写するのと同じヴェクトルを持っている。当たり前の話、人間は飛ぶことはできないし、ロックは世界を変えることはできないのだ。銀杏には『僕たちは世界を変えることができない』というDVDがある。そのタイトルは決してシニシズムではなく、むしろリアリズムである。願わくば、この批評性を楽曲だけでも表現して欲しいと思うが、モダンなロックンロール・バンドとしては、自身の肉体や人生までも含めたありとあらゆるメディアを通じて、メッセージを発信していくのは、私はありだと思う。最近のPVでは、南アフリカはケープタウンのホワイト・トラッシュたちによるクワイト・ユニット、ダイ・アントワードの「ゼフ・サイド」と並ぶ衝撃だった。これら、地理的に遠く離れているだけでなく、音楽性もかけ離れた2本の作品に、唯一の共通性が見出せるとしたら、それは、自分たちを取り囲む状況に対する批評性ではないだろうか。そう、批評こそは、地獄に丸腰のまま落とされた私たちにとっての、唯一の武器なのである。

文:磯部 凉

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