Shop Chart
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DAVID GRAY/TRACY CHAPMAN
THE OTHER SIDE/CROSSROADS-NK RMX
WHITE(JPN)
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PATRICE RUSHEN
MUSIC OF THE EARTH-DANNY KRIVIT EDIT
ELEKTRA (US)
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DAVID GRAY/TRACY CHAPMAN
THE OTHER SIDE/CROSSROADS-NK RMX
WHITE(JPN)
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PATRICE RUSHEN
MUSIC OF THE EARTH-DANNY KRIVIT EDIT
ELEKTRA (US)
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レイラがイギリス人のテクノ・リスナーにいかに愛されているかは、ここを読めばわかる。彼女の新作『ユー&アイ』を「とにかくやたら気むずかしい作品」だと酷評した『ガーディアン』の記者は気の毒なほど、けちょんけちょんな目に遭っている。「無意味な評をありがとう」「これぞ難聴のレヴュー」「2011年のベスト・アルバムの3位にジャスティスを挙げるようなヤツにレイラの魅力がわかるはずないだろ」(ま、そりゃそうだ)......同メディアが作品に対して厳しく言うことは今回に限ったことではないし、酷評は英国のお家芸とも言えるはずだが、これほどリスナーからの攻撃を食らうことは珍しい。レイラにはいまでも熱狂があることを察する(というか、レイラでここまで盛り上がれるというのがすごい)。
ロンドン在住のアラブ系の女性、レイラはUKのテクノがもっとも華やかなだった時代にデビューしている。彼女のすぐ近くにはまずプラッドがいたし、そしてビョークとエイフェックス・ツインがいた。1997年のシングル「ドント・フォール・アスリープ」、翌年の「フィーリング」は渋谷のレコード店でもけっこうな話題となって、あっという間に売り切れた。時代はエレクトロニカ/IDM全盛へとまっしぐらだったし、トリップホップがいまよりも幅をきかせていた......というか、とにかくエイフェックス・ツインとビョークがもっとも勢いづいていた。その時代においてレイラはIDMとトリップホップを巧妙に掛け合わせた。『ライク・ウェザー』(1998年のクラシック)は、いまで言えばマウント・キンビーというか、R&BベースのIDMとしては最高の出来だ。
『ユー&アイ』は彼女にとっての4枚目のアルバムで、8年ぶりのサード・アルバムとなった『Blood, Looms & Blooms』に引き続いて〈ワープ〉からの2枚目のリリース。過去のどのアルバムにおいても共演者(主にヴォーカリスト)を招いている彼女だが、今回は、〈インターナショナル・ディージェイ・ジゴロ〉からの作品で知られるベルリンのマウント・シムズ(Mt. Sims)ひとりのみが参加している。テリー・ホールやマルティナほか、派手なゲスト陣の前作とくらべると地味な印象を持つが、彼のダークウェイヴな雰囲気は、『ユー&アイ』という作品を特徴づけるのにひと役買っている。
アルバムには"Colony Collapse Disorder(蜂群崩壊症候群)"という農薬や遺伝子組み換え農作物による深刻な環境破壊をテーマにした曲があるように、不吉で、暗闇がひしめいている。もとよりレイラの作品に暗闇はつねに偏在しているので、それ自体は目新しくもないかもしれない。が、『ユー&アイ』には、ドラムンベースを取り入れた"Welcome To Your Life"が象徴するようなアグレッシヴさも際だっている。昔のながらのレイラのリスナーは、彼女の気だるさとダウンテンポ、トリップホップの幻覚、それに適したアンニュイな感覚を好んでいたが、今作においては幻覚とアンニュイはウィッチネスに傾き、そして彼女の気だるさはささくれだった感覚へと変換されている。そういう意味では、見事に今日的な音にアップデートされていると言える。"(Disappointed Cloud) Anyway(失意の雲――どのみち)"~"Interlace(交錯)"~そして"Colony Collapse Disorder(蜂群崩壊症候群)"への展開はとくに圧倒的で、彼女がどうしてこのような方向性を選んだのかは知りたいところである。
最後に、くだんの『ガーディアン』の読者からの反論をひとつ紹介しておこう。「アートとは喜びを与えるための日用品にはなりえません。"ポピュラー"なアーティストの勇敢と言われるいかなる作品よりもよほど彼女の作品のほうが勇気を与えてくれます。そもそも人間は複雑で、難しい生き物です。その複雑さを音楽で伝えようとする行為は間違っているのでしょうか? もっともあなたの文章で何よりも私ががっかりことは、あなたがユーモアを理解してないということです」
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V.A.
Altering Illusions (5 Years of Echospace)
ECHOSPACE / US
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JOE CLAUSSELL
Trembling Sending Space By Lidy Six (+Book)
SACRED RHYTHM MUSIC / US
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REGIS
1994-1996
DOWNWARDS / UK
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SHAMBHU & THE TRUE LOVE HEARTS/RUMMELSNUFF
Sadness/Machen Wir Den Tanz!
OSTGUT TON / GER
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LADY BLACKTRONIKA
Ghost Spell According To...Fred P Rmx
SOUND BLACK / US
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LOOPS OF YOUR HEART
And Never Ending Nights
MAGAZINE / GER
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〈ホステス〉といえば、〈ドミノ〉〈XL〉〈4AD〉、あるいは〈マタドール〉や〈カーパーク〉、あるいは〈アクシデンタル〉......といった欧米の人気インディ・レーベルの作品を日本に紹介している会社で、インディ・ミュージックのリスナーなら1年のうちに何枚かは〈ホステス〉のCDを手にしているはず(昨年でいえば、ボン・イヴェール、レディオヘッド、アークティック・モンキーズ、あるいはSbtrkt、ゾンビー、ハーバート、タイラー・ザ・クリエイター......キリがない......)。その〈ホステス〉が自ら主催するイヴェントが「Hostess Club Weekender」です。ele-kingとは1990年代から長い付き合いの、実はクラブ系出身の会社なのでこんな名前にしているかな。
その第一回目がもうすぐ開催される。ロンドンのザ・ホラーズ、マンチェスターのウー・ライフ、カナダのオーウェン・パレット、ベテランのスピリチュアライズド、そして今日のUSインディを代表するアトラス・サウンド、チルウェイヴ代表のトロ・イ・モア、そし目下ele-kingが注目している新人、ユース・ラグーンやパフューム・ジニアスなど豪華なメンツ。私たちも行くつもりです。チケット残りわずからしいっすよ。
■Hostess Club Weekender
日時: 2012/2/18(土) & 19(日)
OPEN 13:00/START 14:00
会場: 恵比寿ガーデンホール
出演:
2/18 - THE HORRORS / OWEN PALLETT / WU LYF / ZULU WINTER / YOUTH LAGOON
2/19 - SPIRITUALIZED / ATLAS SOUND / TORO Y MOI / ANNA CALVI / PERFUME GENIUS
前売り券
1日券: 各日 7,900yen(税込/1ドリンク別)
→ チケットボード、各プレイガイドにて絶賛販売中!
2日通し券 ※完売: 13,900yen(税込/各日1ドリンク別)
→ 1月21日(土)の朝10時から、チケットボードにて100枚限定追加発売決定!
公式サイト: www.ynos.tv/hostessclub
DUTTY DUB ROCKZがお送りする年間ベスト!DUTTY DUB ROCKZ presents REWIND 2011!!
大好評公開中です!今回もDJ、アーティスト、レコードショップスタッフ等など様々な都市の沢山の方々に参加して頂いてます。これを見て2011年のBass Musicの動向、そして2012年の傾向を是非チェックしてください!https://duttydubrockz.blogspot.com/
Next B-Lines Delight 2012/03/19(mon) @Sound A Base Nest
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Sivarider - Liberation - Dubplate https://snd.sc/yBPHrj |
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DD Black - Conflict - Dubplate https://snd.sc/wzjlW3 |
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Ten Billion Dubz - 408 - Dubplate https://snd.sc/yIgJFE |
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Yasmin Ft. Shy Fx&Ms. Dynamite - Light Up(The World) - Ministry of Sound Recordings |
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Killawatt - Sidewinder(Ipman Remix) - Black Box |
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Pinch - Retribution - Swamp81 |
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Peverelist - Meet Tshetsha Boys - Honest Jon's |
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Distal - Eel - Seclusiasis |
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Hatti Vatti - You EP - New Moon Recordings |
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Mungo's Hi Fi - Forward Ever - Scotch Bonnet |
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やけのはら
Step On The Heartbeat
NOPPARA REC / JPN
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DELTA FUNKTIONEN
Inertia // Resisting Routine
ANN AIMEE / NED
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GAISER PRESENTS VOID
No Sudden Movements
MINUS / CAN
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OMAR S & OB IGNITT
Wayne County Hills Cop's (Part.2)
FXHE RECORDS / US
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MUNGOLIAN JET SET
Schlungs
SMALLTOWN SUPERSOUND / NOR
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DAVID GRAY/TRACY CHAPMAN
THE OTHER SIDE/CROSSROADS-NK RMX
WHITE(JPN)
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GOMMA ALL STARS
CASABLANCA REWORKS(feat.PEACHES)
GOMMA(GER)
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こんなにも遠くまで......希望を探す迷子犬としてのAKG文:竹内正太郎
嗚呼......なくす何かを
ほら 喪失は今にも口を開けて僕を飲み込んで
"ムスタング"
ASIAN KUNG-FU GENERATION 『BEST HIT AKG』 Ki/oon |
ロスト・ジェネレーション――辞書的には、「第一次世界大戦中に育ち、戦争体験や混乱期を経て人生の方向を見失った人たち」(『GENIUS』)とある。しかし、もはやそれは、"第一次世界大戦中"と限定されてはいない。いわゆる「大きな物語」が放つ磁場に羅針盤をやられ、手元の小さな矢印がグルグルになったまま、自己責任社会をあてもなくさまよう人たち。この国においては、1975-80年前後に生まれ、いわゆる就職氷河期に学生生活を終えた世代、とされている。アジアン・カンフー・ジェネレーション(以下、AKG)が「さよならロストジェネレイション」(2010)を発表したとき、その言葉を直接使用したことに、なにか決意めいたものを感じるとともに、もう後には引けない舞台に立ってしまったのだと思った。彼らはある時期において、虚構の世界を脱し、ダラダラと夢を語り(騙り)続けるよりはそこから徹底的に醒めていることを選んだのであり、とくに『ロッキン・オン・ジャパン』界隈では、タブーであるかのように不自然に切り離された、現実と虚構の関係性をめぐる文学(AKGの場合は、もちろん"ロック")の再考を自覚的に試みてきたバンドでもあった。
それを拒むように世界は揺れて 全てを奪い去る
夢なら覚めた
だけど僕らはまだ何もしていない
"アフターダーク"
とはいえ、AKGが最初からそのような思想を持っていたとは思えない。自らがロスト・ジェネレーションでもある後藤らがまず志したのは、ロックによる含意なき衝動であり、バンド演奏によるフィジカルな発散であった。代表曲が時系列で並べられた『BEST HIT AKG』を順に聴いていけば、それが、頭から突っ込んでいくようなギター・ロックの無謀さから、より慎重な、内省を直視する言葉と、複雑なリズム・パターンを持つ(いわば)モラリスティック・ロックへと少しずつシフトしていく歴史が体感できるはずだ。
もっとも、その後の変化への伏線となるモチーフが、初期の楽曲にも散見されるのもたしかだろう。本作に収録こそされていないが、羅針盤、 デリート&リライト、鳴らせサイレン......。『君繋ファイブエム』(2003)は、いま思えば、AKGにとって最後の思春期だった。そして、本格的な転機は、500,000枚以上を売った『ソルファ』(2004)を殺すかのように、訪れる。
おそらくは彼らの、メインのリスナー層にあたる年代が抱えるなにがしかの精神的トラブルを念頭に置いたのであろう、第三者の自閉的な態度に対する真正面からの介入を試みた『ファンクラブ』(2006)は、その親密なタイトルとは裏腹に、多くのファンを突き放すことになる。例えば9.11に象徴される、同じ空の下に確実に実在する暴力、破壊と、シェルターにくるまれた過敏な自意識を、彼らは強制的に接続しようと試みたわけだが、アルバム全体に散りばめられた具体性が、リスナーの実生活とショートしてしまったのかもしれない。「逃げ切ることはできない」と、彼らはある意味で警告していたのだろう。
そして、『ファンクラブ』による商業的な文脈でのバックラッシュなのか、AKGはその後、『ワールド ワールド ワールド』(2008)、『未だ見ぬ明日に』(2008)と、関係性の具体的な思索をなかば放棄し、スピーディなビートによる撤退戦のなかで、摩耗しながらもキャッチーな希望を虚構のなかで優しく語って(騙って)いく道を選ぶことになる。また、ロックンロールに対するメタ言及もじょじょになされるようになり、自らの批評精神に対してどこまでも誠実であろうとする姿は、その過敏さにおいて悲痛でもあった(筆者は、リスナーとしてはここでいちど離れている)。
もちろん、彼らは『サーフ ブンガク カマクラ』(2008)という小休止を挟み、そのいっさいを放棄することもできた。しかし、AKGはうんざりするような困難の方角を選び、『マジックディスク』(2010)では、楽曲のアレンジにはブラスなどによる祝祭的なムードさえ散見されるようになるいっぽうで、後藤のリリックが抱える世界観においては、「(何かが)失われた」という感覚がいつからか支配的になっていく。それは、後藤が読者であることを明かしている村上春樹の作品に度々登場する、「(何かが)損なわれた」という感覚に近いのかもしれない。少しずつ失われていく、損なわれていく何か。心が内側から少しずつ破れていくような。
朝方のニュースでビルに飛行機が突っ込んで
目を伏せるキャスター そんな日もあった
愛と正義を武器に僕らは奪い合って
世界は続く 何もなかったように
"新世紀のラブソング"
もっとも、最初から持っていなかったものを、どうやったら失えるのか? 同様に、どうしてそれを奪い合うことができるのか? さらには、失ってもいないものに対して、しかも失っていないことを自覚した上で、どうして悲しくなれるのか? という疑問を、私は隠すべきではないだろう。そう、いつの間にか与えられた喪失感に対して、出口のみが提示される、AKGの前向きさを私はときに危うくも思う。そして、彼らのデリート&リライトは続く。新曲"マーチングバンド"(2011)もそうだが、彼らの音楽は、結局のところ顔の見えない不特定多数に向けられ、輪郭のない希望を歌うことの不可能性を前に、確信を持てずにいるように思える。
そして、原罪のように背負った、先天的な喪失からくる断念は、3.11による暴力的な喪失と交わりつつ、"LOST"(後藤正文、2012)にも大きく影を落としている。アレンジはやや平坦だが、そこで後藤は、ほとんどすべてのものを失うことを自覚したうえで、それでも得ることを明確に肯定する。ある種の逆説をテコに、「喪失できるものがある」ことをそのまま反転させてしまうこと。それをロックンロールのカタルシスと呼べるほど、私はもう若くはないけれど、彼がたどり着いた暫定的な答えは、その一点のみにあると、ほぼ言い切れる。希望を探す迷子犬としてのAKGにも、この曲は大きな指針を与えるかもしれない。
最後に......もう少し実際的なことを述べておこうと思う。あらゆるベスト・アルバムがそうであるように、『BEST HIT AKG』も、決して完璧なコレクションではないし、筆者の満足する選曲にはなっていない(おそらくは、あなたもそうだろう)。全体的に、ロック・バンド然とした、大味の、ややざっくりとした曲が多いし、そんな風にケチをつければキリがないが、少なくとも"ソラニン"の代わりに収録されるべきは"ワールドアパート"だったし、ベスト盤と言えども、作品としては"迷子犬と雨のビート"で終わるべきだった。様々な事情があるにせよ、仮に自身が、『マジックディスク』に自信を持ち切れていないのだとしたら、それはとても残念なことだと思う。
そして、これだけは付記しておかなくてはならない。ある意味でいま、ここに集められた17のどの曲よりも耳を傾けるべきなのは、"砂の上"(後藤正文、2011)である。他人の現実的な喪失に寄せて録音されたこの曲は、洗練とはかけ離れた場所で、むきだしの理想を掲げている。悪意やディスリスペクトはあるだろう。しかし、それを冷笑せずに受け取るリスナーを獲得できたことが、AKGが賭した10年そのものなのだと思う。思えば、本当に遠くまで来たものだ。拍手よりも敬礼を贈りたい。
文:竹内正太郎
[[SplitPage]]「セカイ」から「世界」へと 文:加藤綾一
ASIAN KUNG-FU GENERATION 『BEST HIT AKG』 Ki/oon |
アジアン・カンフー・ジェネレーションはいまからちょうど10年前、インターネット文化がいよいよ僕たちの生活に大きく介入しはじめた頃、それらに染まることを拒否するかのように登場している。「偽る事に慣れた君の世界を/塗り潰すのさ、白く、白く」("遥か彼方"、2002年)
彼らにとって初めてのフルレンスのタイトルが『君繋ファイブエム』であるように、そこには「君」と「僕」との半径5mの「セカイ」が中心に描かれていた。理想と現実の狭間で揺れ、独り善がりな存在証明、承認欲求、絶望、後悔、そして自己懐疑と自己啓発を繰り返しながらがむしゃらになって「世界」に立ち向かう――しかしそれは結局のところ「セカイ」であって、「僕」は再び落胆することになる――姿は、図らずもこのポストモダンを生きるユースが抱える閉塞感とリンクした。
湿っぽい日本情緒とそれを振り払うように叫ぶ荒々しいエモーションはイースタン・ユースから、諸行無常の観念を想起させる抽象性を帯びた言語感覚はナンバーガールから、パワー・コードで突っ切る瑞々しい蒼さはアッシュやジミー・イート・ワールドから、過剰な自意識と内省を多分に孕んだパワー・ポップはウィーザーから......90年代のオルタナティヴな季節を経てきたそれらのギター・ロックを参照した彼らの音楽性は、そのときどきでポスト・ロックや管弦楽に片足を突っ込むことはあれど、いまでもそこから大きくはみ出ることはない。その曲がダンスのビートであっても、「見え透いたフォームの絶望で空回る心がループした/何気なく何となく進む淀みあるストーリー」("君という花"、2003年)といった冷めた現状認識があり、そして「由縁/失って彷徨って垂れ流す僕の今日を/走り出すエンドロール/つまらないイメージを壊せ/そうさ」("ループ&ループ"、2004年)といった前向きさもある。彼らがもっとも敬愛するバンドのひとつ、オアシスのように。
しかしAKGは、さらにまた、時代の重たさを背負う方向へと舵を取る。より社会的な「世界」と向き合うことになった2008年の『ワールド ワールド ワールド』において、「夢なら覚めた/だけど僕らはまだ何もしていない/進め」("アフターダーク"、2007年)と歌えば、"No.9"では日本国憲法第9条の改正反対の意を表している。そして続けるように、「出来れば世界を僕は塗り替えたい/戦争をなくすような大逸れたことじゃない/だけどちょっと/それもあるよな」("転がる岩、君に朝が降る"、2008年)と、より直接的な表現によって、その政治的主張を述べる。その後の"新世紀のラブソング"(2009年)にて、9.11の悲劇に触れながら絶望と希望を力強く歌う彼らは、かつてないほどシリアスな表情を見せるようであった。
本作は、AKGにとって初めてのベスト盤であり、ゼロ年代を通して「セカイ」から「世界」へと向き変えることで、社会派へとゆっくりとシフトしていった彼らのこの10年の変遷をたどる記録である。そしてここには、10年のなかのわずか1年であるのにもかかわらず、3.11が大きな意味を持たされている。彼らにとって今回の震災と原発事故がいかにショッキングなものであったかは、ヴォーカリストの後藤正文が新たに立ち上げたWEBメディア/フリーペーパー『TheFutureTimes』)、そして昨年末に発表された"マーチングバンド"のカップリング曲"N2"における脱原発の主張を聴けば明白だ。この国のメインストリームの音楽にもU2やレディオヘッドのアティチュードと共振するバンドがいることを感慨深く思うのと同時に、複雑な気持ちにもなる。悲劇が彼らを強くさせたのも事実だからだ。
『TheFutureTimes』にてダウンロード販売されている後藤正文によるソロ曲"LOST"には、震災の前に書き上げたとはにわかに信じがたい、3.11のアフターマスを連想せずにはいられない示唆的なラインが含まれている。「まるで僕らは初めから/全てを失うために生まれたみたいだな/いまならまだまだ/そうさ僕らこの場所から/全てを失うために全てを手に入れようぜ」
選挙権を得てから6年が経っている僕にとっては、漏れ続ける放射性物質や不手際だらけの政治などこの国の散々たる現状について考えたとき、D.Oの"イキノビタカラヤルコトガアル"(2011年)での「いまから生まれてくる君へ/こんな世の中でごめんよ」という自虐的な嘆きのほうがまだ気が楽になる。いまのAKGには良くも悪くも、こうしたユーモアの入る隙がない。たとえば神聖かまってちゃんがいみじくも「いまは起こさないでね」("コタツから眺める世界地図"、2011年)と歌うように、前向きな現実逃避としてのチルウェイヴは世界規模で拡大している。AKGの生真面目さは、こうしたトレンドのなかでは浮いているかもしれない。だとしても彼らは、いまや無視することなど到底できないバンドとして存在している。『BEST HIT AKG』は、よりいっそう重苦しい時代へと進んでしまった僕らにのしかかる虚無を振り払おうとする、AKGの実直なまでの気概を伝えている。
それゆえか、初回盤に付属されるDVDに収められた『君繋ファイブエム』全曲のスタジオ・ライヴを観ていると、当時には感じなかったある種の親密さをもって聴こえるのは興味深い。なかでも、歪んだ鬱屈さえも肯定する"アンダースタンド"、オアシスの"リヴ・フォーエヴァー"のギター・ソロを引用した"E"は感動的ですらある。それは、かつて「セカイ」のなかで佇んでいた「君」と「僕」のナイーヴな感情をいまこそ揺り動かそうとしているかのようだ。
できる限り可能な限り遠くまで/溶け出して沈みそうな泥の船
ここから僕のスタート/そうさすべてが窄みゆくとも
ここから君のスタート/その手伸ばせば目の前さ、ほら
広がりゆく未来へ/君の未来へ
"E"
文:加藤綾一
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TODD TERJE
It's The Arps
(Smalltown Supersound /12inch)
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V.A
Dekmantel Anniversary Series: Part 1
(Dekmantel / 12inch)
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HELIUM ROBOTS
Jarza Ep
(Running Back / 12inch)
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COSMIC METAL MOTHER
Italian Cowboys
(Internasjonal Spesial / 12inch)
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TODD TERJE
SON OF SAM / Digital Dubplates
(Running Back / 10inch)
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MINILOGUE
Let Life Dance Thru You
(Traum / 12inch)
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FRANK BOOKER
Hope
(Fine Art / 10inch)
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EDGAR WINTER
Above And Beyond
(Blue Sky Records / 12inch)
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JACQUES RENAULT
Let's Get Lost 11
(Let'S Get Lost / 12inch)
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