「You me」と一致するもの

Various Artists - ele-king

 だいぶ前の話になるが、映画『アトミック・ブロンド』を観た。来年公開予定の『デッドプール2』の監督も務めるデヴィッド・リーチが作りあげたこのスパイ映画は、壁が崩壊する前夜のベルリン、年代で言えば1980年代末を舞台にしている。物語は、世界情勢に深く関わる極秘リストを奪還するため、MI6によってベルリンに送り込まれたロレーン(シャーリーズ・セロン)を中心に進んでいく。厳しいトレーニングを積んだうえで臨んだというシャーリーズ・セロンのアクションなど、見どころが多い内容だ。なかでも圧巻だったのは、スパイグラス(エディ・マーサン)を逃がすときにロレーンが披露する体技。ビルの階段を移動しながらおこなわれるそれは7分以上の長回しで撮られており、華麗に立ちまわるロレーンの姿がとても美しかった。
 アクションでよくある、ご都合主義的な綺麗さが見られないことも特筆したい。華麗に敵をなぎ倒していく様は映画的でも、戦うごとに体のアザは増え、それを手当てするシーンも随所で挟まれたりと、生々しい描写が際立つ。そうして傷だらけになるロレーンだが、被虐的な様子はまったく見られない。むしろ、スパイとしての凛々しい姿とプロ意識を観客に見せつける。その姿を観て筆者は、“カッコいい……”という平凡極まりない感想を呟いてしまった。

 『アトミック・ブロンド』は、劇中で流れる音楽も魅力的だ。ニュー・オーダー“Blue Monday 1988”、デペッシュ・モード“Behind The Wheel”、パブリック・エネミー“Fight The Power”といった、80年代を彩ったポップ・ソングが取りあげられている。しかも、ただ流すだけじゃない。MI6のガスコイン(サム・ハーグレイブ)が殺されるシーンでは、イアン・カーティスの死について歌われた“Blue Monday 1988”を流すなど、曲の背景と劇中のシーンを重ねるような使い方なのだ。ここに筆者は、デヴィッド・リーチのこだわりを見た。

 そのこだわりをより深く理解するため、映画のサントラである『Atomic Blonde (Original Motion Picture Soundtrack)』を手にいれた。本作は先に挙げた曲群を収録しておらず、そこは非常に残念だが、それでもデヴィッド・ボウイ“Cat People (Putting out Fire)”、スージー・アンド・ザ・バンシーズ“Cities In Dust”、ネーナ“99 Luftballons”など、劇中で使われた曲はだいたい収められている。
 とりわり目を引くのは、ボウイとの繋がりが強い曲を数多く起用していることだ。ボウイは1976年から1978年まで西ベルリンに住み、そこで得たインスピレーションを元に『Low』『Heroes』『Lodger』というベルリン三部作が作られたのは有名な話だが、このことをふまえて映画ではボウイが象徴的な存在になっている。
 面白いのは、それを少々ひねりが効いた方法で示すところだ。その代表例が、ニュー・ロマンティック期のエレ・ポップど真ん中なサウンドを特徴とする、アフター・ザ・ファイアー“Der Kommissar”。もともとこの曲は、オーストリアのファルコというシンガーソングライターが1981年に発表したシングル。重要なのは、このシングルのB面に収められた曲だ。“Helden Von Heute”というそれは、ボウイの代表曲“Heroes”へ賛辞を送るために作られた曲で、メロディーは“Heroes”をまんま引用している。こういう婉曲的な仕掛けを通して、ボウイの偉大なる影を匂わせるのだ。

 その影は、ピーター・シリング“Major Tom (völlig losgelöst)”でもちらつく。タイトルからもわかるようにこの曲は、ボウイが1969年に発表したアルバム『Space Oddity』へのアンサー・ソングだ。もともとの歌詞はロケット発射の様子を描いたもので、深い意味はない。だが、『アトミック・ブロンド』の中では冷戦時代の一側面を表す曲になっている。1980年代末のベルリンは冷戦まっただ中であり、そんな時代に米ソ間でおこなわれた熾烈な宇宙開発競争を連想させるからだ。こうした既存の曲に新たな意味をあたえるセンスは、退屈な懐古主義に陥らない同時代性を漂わせる。
 この同時代性は、映画のために作られたいくつかのカヴァー曲にも繋がっている。特に秀逸なのは、映画のスコアを担ったタイラー・ベイツがマリリン・マンソンと共作したミニストリー“Stigmata”のカヴァー。殺伐としたドライな音質が耳に残る激しいインダストリアル・ロックで、マリリン・マンソンの金切り声を味わえる。もちろん、このカヴァーも映画と深い繋がりがある。オリジナル版“Stigmata”のMVにはスキンヘッドのネオナチが登場するが、そこに映画の核であるベルリンという要素との共振を見いだすのは容易い。

 そうした綿密な選曲において、ひとつだけ気になる点がある。ザ・クラッシュ“London Calling”を選んでいることだ。この曲は1979年にリリースされたもので、80年代でもなければ現在の曲でもない。しかしそこには、他の曲以上に重要な意味を見いだせる。
 “London Calling”は、ザ・クラッシュから見た当時の社会について歌った曲だ。1981年のブリクストン暴動、セラフィールド、フォークランド紛争といった、80年代のイギリスで起こることを予見するような言葉が歌詞に並んでいる。
 そんな予見的な曲が、映画ではベルリンの壁崩壊後の終盤で流れる。決着を迎えてめでたしのはずが、〈すぐさま戦争が布告され 戦いがやってくる(Now war is declared and battle come down)〉と歌われるのだから、なんとも興味深い。ここまで書いてきた映画と曲の深い繋がりから考えても、かなり意味深だ。ロレーンの次なる戦いが始まるから……とも解釈できるが、過去の要素に同時代性を見いだし表現する『アトミック・ブロンド』の特性をふまえると、この映画はあなたたちの現状であるという暗喩を込めた選曲ではないか。そう考えると、冷戦時代のベルリンが舞台であるにもかかわらず、それにまつわる物語じゃないと否定するグラフィティーが映画の冒頭で挟まれるのも納得だ。“London Calling”が流れた途端、西ドイツと東ドイツの間にあった経済格差や、壁によってもたらされた抑圧といった映画の時代背景には、新冷戦(New Cold War)なる言葉も飛び交うようになった現在を表象する機能が付与される。

 ここまで大胆な音楽の使い方を前にすれば、客寄せパンダ的にヒット・ソングを使ったという揶揄も跪くしかない。

Nídia - ele-king

 コンピが出たらそこでもうおしまい、というジンクスをなんだかんだで信じてしまっている身としては、昨年リリースされたレーベル・コンピ『Mambos Levis D'Outro Mundo』の素晴らしさに触れて以来、〈プリンシペ〉の行く末がどうなるのか心配で心配でしかたがなかった。このまま同じことの繰り返しや水増しが続いてシーン自体が衰退していくのだろうか、それともジューク/フットワークのように他の要素を取り入れながら世界各地で独自の進化を遂げていくのだろうか、と。
 ともあれ永遠にシングルとEPだけで運営を続けていくのではないかと思われた〈プリンシペ〉が、重い腰を上げてコンピを制作したのである。となれば、次に期待されるのは単独アーティストによるフル・アルバムだろう。となれば、やはりまず同レーベルの首領たるDJマルフォックスに、がつんと気合いの入った1枚を投下してもらわねばなるまい……いや、その実験精神と独創性においてかのシーンで頭ひとつ抜きん出た存在であるDJニガ・フォックスが、まだ誰も聴いたことのない変てこなアルバムを送り出す可能性もある。じっさい、今年の頭にリリースされたニガ・フォックスの1トラック・シングル「15 Barras」は、喚声とアシッドがひたすらうねうねと続いていく珍妙な曲で、良いか悪いかの二者択一を迫られると返答に困るものの、インスタレイションのための付随音楽という側面もあってか、少なくとも方向性の上では〈プリンシペ〉の「次」が模索されていたように思う。

 しかしじっさいに先陣を切ったのはマルフォックスでもニガ・フォックスでもなく、かのシーンのもうひとりの立役者、ニディア・ミナージュだった。彼女の待望のファースト・フル・アルバム『Nídia É Má, Nídia É Fudida』は、残念ながらニガ・フォックスのように「次」を探究しているわけではなく、われわれが「リスボンのゲットー・サウンド」と聞いて思い浮かべる音の範疇に収まった内容ではあるものの、けっして出来が粗末というわけではない。ハウスを基調とした2015年のEP「Danger」よりリズム・パターンの幅は広がっているし、着々とシングルやEPのリリースを重ねてきたアーティストが必ずぶつかる、「アルバム1枚持たせられるか」という壁をさらりと乗り越えている点も評価に値する(1曲1曲の短さに助けられている面もあるが)。
 そんなニディアの矜持が示されているのが冒頭の“Mulher Profissional”と続く“Biotheke”で、そこから3曲め“Underground”まで針を進めたリスナーは自らの買い物に間違いがなかったことを確信するだろう。全体のバランスも考えられており、“Puro Tarraxo”のような実験的な曲だけでなく、“House Musik Dedo”のようなメロディアスで機能的な曲も収録されている。なかでも惹きつけられるのは、複雑なドラム~パーカッションと切り刻まれたピアノ音とが絶妙な揺らぎを形成する“I Miss My Ghetto”だ。

 このように充実したアルバムを聴くとやはり、では次に彼女や〈プリンシペ〉が向かう先はどこなのか、というのが気になってくる。それを探る手がかりになりそうなのが、ブラジルの大御所サンバ歌手、エルザ・ソアーレスが一昨年リリースしたアルバム『A Mulher do Fim do Mundo (The Woman At The End Of The World)』のリミックス盤、『End Of The World Remixes』である。
 オリジナルの『A Mulher do Fim do Mundo』は、エルザがサンパウロのアヴァンギャルドなミュージシャンたちとともに録音した実験色の濃い作品で(プロデューサーはギリェルミ・カストルッピ)、ポストパンクやマスロックなどの手法をアフロ・ブラジリアンに溶け込ませた素晴らしいアルバムだった。テーマの上でも人種差別やDVなど現代ブラジルの抱えるハードな問題を扱っており、『ガーディアン』『ピッチフォーク』といったメディアから非常に高い評価を受けている。そのオリジナル・アルバムに新たにリミックス音源を追加したのが、この『The Woman At The End Of The World + End Of The World Remixes』である(アナログ盤および配信版はリミックス音源のみの構成)。
 そのリミキサー陣には、リオのオムルやリカルド・ディアス・ゴメス、オリジナル盤の制作にも大きく関わったサンパウロのキコ・ディヌッチといった当地のプロデューサーたちに加え、ララージとジャイルス・ピーターソンというふたりの大物も名を連ねているのだけれど、その並びにひっそりマルフォックスとニディアも参列している。
 マルフォックスが、すでに確立された己のスタイルに強制的に原曲のパーツを組み入れる形でリミックスを施しているのに対し、ニディアの方は、リズミカルでありながらもエルザの声のエコーを最大限に活かした、ある意味で静謐を湛えるリミックスをおこなっている。ニディアは最近フィーヴァー・レイのアルバムにも参加していて、そちらではマルフォックス寄りのアゲアゲな側面を披露しており、たしかにそれも〈プリンシペ〉の世界各地への伝播の一例ではあるのだけれど、彼女自身のスタイルの幅を広げるという点においては、このエルザのリミックスの方が有意義な経験だったのではないだろうか。

 かくして〈プリンシペ〉の次なる可能性のひとつに、ラテンという選択肢が浮かび上がってきたわけだが、旧宗主国のゲットーと旧植民地のストリートとのこの出会い、すなわち第四世界と第三世界とのこの邂逅が、今後どのような成果を生み落とすことになるのか、今度はそのことが気になって気になってしかたがなくなってきた。

interview with Bullsxxt - ele-king


Bullsxxt
BULLSXXT

Pヴァイン

ProtestHip HopJazz

Amazon Tower HMV iTunes

 まずサウンドの変化が耳に飛び込んでくる。とりわけベースが豊かになった。UCDをフロントに据えた若きヒップホップ・バンド、Bullsxxtのファースト・フル・アルバム『BULLSXXT』は、IDM的な要素も聴きどころだった自主制作盤『FIRST SHIT』から一変し、ぐっとジャズやファンクに寄ったグルーヴィなアンサンブルを展開している。とはいえ生演奏の心地良さに安住してしまっているわけではなく、パキッとしたスネアの質感(ドラマーの菅澤によると、打ち込みっぽく響かせたかったのだそうだ)や、“Poetical Rights”のエレクトロニクスなど、いわゆるバンド・サウンドからの逸脱も厭わない。かつてのブラック・ミュージックの大いなる遺産を受け継ぎながら、近年のジャズの潮流も視野に収めた同時代的なアルバムと言えるだろう。まずはサウンド面で勝負をかける――それがかれらの意気込みなのだ。
 しかし、である。MCを擁したヒップホップ・バンドである以上、多くのリスナーが最初に注目するのはやはりUCDのラップだろう。「ブラック・ミュージックをやるなかで、体制にプロテストしていくという要素を無視して、音楽的な部分だけすくい取るということをしたくなかった」と菅澤が語るように、『BULLSXXT』を際立たせている特徴のひとつに、彼らの「コンシャス」なアティテュードがある。
 今回の取材で意外だったのは、UCDが「国家じゃない共同性のあり方だってある」という話をしてくれたことだ。僕は勝手にSEALDsにリベラルなイメージを抱いていたので、そして“Sick Nation”のリリックは「ニセモノの愛国に対してホンモノの愛国を提示する」というある意味では危険な構図をとっていたので、彼らは国家の存在自体は保留しながらそのなかで少しずつ情況を改良していく、というような方向を目指しているのかなと想像していたのだけれど、そしてじっさいUCDはそういう側面も否定はしないのだけれど、「国家じゃない共同性のあり方」という考えに影響を与えているのは、リベラルというよりもむしろラディカルな現代思想であり、そしてそれはアナキズム的な発想とも通ずるものだ。じっさい以下のインタヴューでもベンヤミンやルジャンドルといった思想家の名が挙がっているが、UCDがだてに研究をやっているわけじゃないことがひしひしと伝わってくる。それこそがラッパーとしてのUCDの魅力であり強みでもある、とドラマーの菅澤は言う。たしかに、そのような彼の思想とヒップホップ的なマナーとのせめぎ合いもまた『BULLSXXT』の魅力のひとつだろう。
 このアルバムで興味深いのは、直接的なメッセージ性を持った曲が意外に少ないという点だ。声高にプロテストを表明しているのは“Sick Nation”と“Fxxin'”くらいで、他は日常を描いたものや抽象的な思考を吐き出したもの、音楽への愛や大切な人への想いを綴ったものなど、リリックのテーマは多岐にわたっている。本作において直接的な政治性は、あくまで要素のひとつにすぎないのである。それ以上にこのアルバムには、「ひとり」の人間が抱くさまざまな想いや思考が凝縮されている。まさにそのようなあり方にこそUCDの考えるポリティクスや、Bullsxxtというバンドのコンシャスネスが体現されているように思われてならない。
 だからこそ、“Sick Nation”に登場する「ひとりひとり孤独に思考し判断しろ」という一節が鋭く胸に突き刺さる。たしかに、孤独なくして友情や恋愛はありえないし、共同性もまた孤独なくしては生起しえない。そういう意味で『BULLSXXT』は、濃密なバンドの「団結(band)」を示しているとはいえ、多分にUCDの「孤独」から生み落とされたアルバムなのではないかと思う。以下のインタヴューで語られる「自分の意見なんかゼロ」「器になる」という話も、まさにそのことを象徴しているのではないか。ここで僕は、かつてとあるMCが繰り出したパンチラインを思い出さずにいられない。
 「サイの角のようにただ独り歩め」。
 この『BULLSXXT』というアルバムは、これからやって来る世代、場合によってはまだ生まれてすらいない人びとに向けて作られていると、そうUCDは言う。僕は本作が10代の、とりわけ「孤独」であることに悩んだり引け目を感じたりしている人たちの耳に届くことを願っている。かつてUCDがBOSSのラップに突き動かされたように、いまUCDが紡ぎ出している言葉たちもまた、そんな誰かの人生を変えてしまうかもしれない可能性を秘めているのだから。(小林拓音)

直接ポリティカルなことを言っていなくても結果としてポリティカルなことになるというのはあると思うんですよ。例えばPUNPEEの今回のアルバムもけっこうポリティカルだと思うんですけど、そういうふうにもやってみたいと思ったんですよね。 (UCD)

=野田 ●=小林

もしこのCDが全然売れなかったとしたらBullsxxtはどうなるんでしょうか?

菅澤捷太郎(以下、菅澤):ああ、意地悪ですね(笑)。

UCD:はははは。僕は続けたいと思っていますけど、どうなんでしょう。

菅澤:次のアルバムがPヴァインさんから出ることにはならないかもしれないですけど(笑)。

(一同笑)

菅澤:出ることにはならないかもしれないですけど、Bullsxxtは別に売上のためだけにやっているバンドじゃないので、続けることになると思います。あとはメンバー同士のやりたい音楽が一致している限りはこのバンドは続くと思いますけどね。

UCD:そうですね。それで例えば無理やりポップ路線にいこうとか、そういうことは考えないと思いますね。

僕はこのCDが売れることを望んでいますけどね。万が一売れなかったときの話(笑)。

(一同笑)

菅澤:たぶん落ち込みますね(笑)。

UCD:でも売れなかったら逆に俺は調子に乗ると思う。

でもさ、結局10代の多くは自民党に票を入れるじゃない? 全然Bullsxxtの言葉が届いてないよねー。それが不満なんだよ。

UCD:本当にそうなんですよね。でもタイミング的に選挙ギリギリだったというのもあるんですけどね(笑)。出たばっかりなのでこれから浸透していくとは思うんですけど。あとはBullsxxtもそうですけど、SEALDsの声が届いていないとは思いますね。そもそも若者は政治に関心があるというイメージに反して、じつはSEALDsが超マイノリティだったという結論なのかなと思いますね。

枝野(幸男)さんはマイノリティじゃないと言っていたけどね。

UCD:そうですね(笑)。僕らもマイノリティじゃないぞとは言っていたんですけど、でも結局マイノリティだったということだと思うんですよね。

今回はBullsxxtが力及ばずってことか。

(一同笑)

UCD:全部僕らにかかっているんですね(笑)。

菅澤:背負わされてるね(笑)。でも本当に背負っていくしかないね(笑)。

だいたいさー、リリックで、こんな上から目線な表現で、「くだらねえ」とか「~じゃねえ」とか「抗え、もしくは闘え」とかさ、こういうのはいまも通用するの(笑)?

UCD:通用しないと思います(笑)。

ハハハハ。

UCD:いまだったらもうちょっと言いかたを変えると思いますね。

こういうのは初期の曲なの?

UCD:そうですね。メッセージが強い曲ほど最初のほうに書いた曲ですね。大学2、3年生のときの僕がただ怒って書いていたものなので、いまだったらもうちょっとやりかたを変えるかなとは思いますけど。

菅澤:この歌詞を書いてからもう4年くらい経っているよね。でもその4年前に言っていたことがいまでも通用するというのが恐ろしいですけどね。

Bullsxxtのアルバムをすごく楽しみにしていた人間のひとりとして言うと、“Sick Nation”みたいな曲をもっとたくさん聞きたかったなと思いますね。

UCD:なるほど(笑)。

Bullsxxtって「コンシャス」なイメージがあるのに、今回のアルバムは直接的なメッセージの曲が意外と少ないなと思いましたね。

そうなんだよ。それはちょっと不満だよな。

UCD:最初はもっとポリティカルな内容にすることを構想していて、(1st EP)『FIRST SHIT』の曲を過去の話としてアルバムの真ん中に置いて、例えば戦争後から見た『FIRST SHIT』の僕というのを未来から事後的に語っている曲を前後に置くとか、いろいろと考えていたんですけど、ちょっとそれも違うと思ってしまって。まずは普通の曲としてちゃんとしたものを作れるようになりたいなと思ったんですね。

菅澤:今回のアルバムのために作った新曲はあまり政治的な内容じゃないんですよね。

UCD:1曲共謀罪についての政治的な曲を入れようとしたんですけど、詞とトラックが合わないということになって入れなかったんですよね。

ブラック・ミュージックをやるなかで、体制にプロテストしていくという要素を無視して、音楽的な部分だけすくい取るということをしたくなかったというか。 (菅澤)

やっぱ牛田君には去年までのSEALDsでの経験があって、あの熱気はBullsxxtにも引き継がれているわけでしょう?

UCD:もうちょっと普遍的なことも言いたいと思って、別に直接ポリティカルなことを言っていなくても結果としてポリティカルなことになるというのはあると思うんですよ。例えばPUNPEEの今回のアルバムもけっこうポリティカルだと思うんですけど、そういうふうにもやってみたいと思ったんですよね。

PUNPEEのアルバムはどこがポリティカルだったんですか?

UCD:やっぱり日本に対する諦念みたいなものは確実にあって、「ニュースではひどいことばっかりだ」みたいなことをところどころで言ったりしているんですね。基本的には未来のPUNPEEが過去のアルバムについて言及しているという構成になっているんですけど、最後の曲ではおじいちゃん(未来のPUNPEE)が消えて、本当のPUNPEEが出てくるんです。PUNPEEが「友だち、兄弟ありがとう。でも大事なのはこれからだぜ」と言って最後の“Hero”という曲がはじまるんですけど、「過去には戦争があったけど、その犠牲者のなかにも偉大なアーティストがいたはずだ。そういう人の意思を引き継いで僕らはものづくりをしなくちゃいけないんだ。つくりだそうぜ、Hero」って内容なんですよ。ヴァルター・ベンヤミン(註:ドイツの思想家)の「歴史哲学テーゼ」かよ! って思いました。

デモでマイクを握っているときのほうがライヴ・ハウスでマイクを握っているときよりも迫力があるように感じてしまったんだけど、まだデモのときのエネルギーをライヴ・ハウスで出し切れていないんじゃない?

UCD:たしかにそうですね。

機動隊に囲まれているほうが燃えるんですか?

UCD:いや、むしろ逆でライヴ・ハウスのほうが気負っているんですよね。僕はコールを国会前でやっているときは基本的に自分をゼロにしようと努めていて、「自分の意見なんかゼロなんだ」というのが僕が一番やろうとしていることなんですよ。器になるというか、僕の後ろにいる何千、何万人という人たちの声の集約地点というか、その声が全部僕のなかに入ってきて語っているというイメージでずっとコールをしていたんですよね。だからもちろん僕の言葉でもあるんですけど、僕だけの言葉ではないというか。無意識のエネルギーを自分のなかに吸収して吐き出していたという感じですね。だから詞も本来はそうあるべきなので、ライヴ・ハウスでももっと周りの目線を吸収して吐き出さないといけないんですけど、正直言ってたぶんまだ僕にそこまでの力がないんだと思います。だから僕はこの1枚(『BULLSXXT』)は次に繋げるための1枚だと思ってます。やっぱり前のアルバムの出し直しということも含めてなんですけど。

そういう言葉でのスタンスと今回煮詰めようと思ったジャジーでメロウな音楽性はどういうリンクのしかたをしているの?

菅澤:今回のアルバムはメンバー同士で言葉にすることはなかったですけど、「ブラック・ミュージック」というものを意識しようという、テーマみたいなものがあって、それは集まったメンバーがもともとブラック・ミュージック系の音楽サークルに入っていたというのもあると思うんですけど。そうやってブラック・ミュージックをやるなかで、体制にプロテストしていくという要素を無視して、音楽的な部分だけすくい取るということをしたくなかったというか。

UCD:バンドだけでしかできないことを考えたときに、僕の主張だけならソロでもできるはずで、バンドだとみんなで作った演奏のトラックに沿うように歌詞を書くということがバンドでやるおもしろさだと思っているんですね。だから歌詞は曲からイメージされるものとして書いている感じではあったんですよね。“Sick Nation”みたいな曲は僕のなかではラップと曲が乖離していると思うんですけど、それが逆にいいというか。ATCQの最新アルバムもそんな感じになっていて、「右翼じゃなくて左翼になるときだ」ってフレーズからはじまるけど曲はオシャレみたいなことになっているからいいんですよ。だからもうちょっと僕がバンド全体を政治的に調教しなきゃいけないとは思いますね。

(一同笑)

問題発言が出た(笑)。ケンドリック・ラマーからの影響は?

菅澤:ケンドリック・ラマーの2枚目ですよね。3枚目もみんな聴いていましたけど、どちらかと言えば2枚目の影響のほうが強いと思いますね。

UCD:ケンドリックってデモとか批判していますよね。あとは投票も行かないとか、そんな感じじゃないですか。だから内側からのコンシャスのほうが大事だってことを言っていて、それは僕も共感するところではあるというか、段階的にはSEALDsや立憲民主党みたいな動きは必要だと思うんですけど、僕の根本的な思想で考えたときに別に国家がある必然性はないとは思うんですよね。ほかの共同性もありえるはずというか。

それほど国家にこだわりがないという話はおもしろいですね。というのも、“Sick Nation”は「俺のほうが本当の愛国だ」というニュアンスの曲ですよね。戦略的にこういうリリックを書いたのか、それとも4年前の時点では本気でそう思っていたのか、どちらなのでしょう?

UCD:いや、書いた当時も戦略的でしたね。戦略というか、いま言われているような右翼よりかは俺のほうが日本好きだよっていう思いは確実にあって、日本語というもの自体に対する愛とか、そこに生まれてしまっているから、自分の足場はそりゃ捨てられないというのはありますね。できるだけよくするしかないという気持ちはあります。そういうものとして捉えたときには愛国的な歌詞かもしれないですけど、半分は皮肉ですね。

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イメージ的には未来を見ている感じですね。これから来る世代、むしろまだ生まれてもいない世代にとって悪い世のなかにならないようにするということ。 (UCD)


Bullsxxt
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だんだん怒りが薄まっているということはない?

UCD:(笑)。怒りの方向性が変わっているというのはたしかにありますね。もともと僕はヘサいんですよね。だからちょっと前に「お前ら俺が本気で怒っていると思うなよ」って書こうと思っていたんですけど(笑)。「俺をヒーローにするな、ふざけるな」みたいな歌詞を書こうと思ったんですよ(笑)。

恐ろしい自意識!

(一同笑)

UCD:いやいや(笑)。でもSEALDsをやっているとヒーローとして扱われちゃうんですよ。とくに地方に行くと「うわ~、UCDだ!」みたいな人たちがいたんですけど、「いやいや、俺は何者でもねえよ」っていう(笑)。

菅澤:ネットでもいるもんね。

UCD:ネットでも僕がツイートするたびに「ですよね!」って言ってくる人たちがいて。そういう人に対する怒りとか(笑)。あとは知識人に対する怒りですね。当事者性がない連中に対しての怒りはあります。怒りが薄まっているのかなあ。

サウンドが大人びた方向に行ったじゃないですか。それは演奏している側が牛田君の言葉を聴いて、こっちの方向が正しいと思ったわけでしょ?

菅澤:前はなんだかんだ言ってラップが引き立たないようなトラックもあったと思うんですよ。でも今回はトラック・メイカーのベーシストが入ったというのもあって、どうやってラップを引き立てていくかというのを考えたときにああいうかたちになったんですよね。

UCD:ラップ入れようとするとこいつ(菅澤)のドラムが邪魔で、邪魔で。

で、パチパチやり合っていた?

菅澤:けっこう火花は散ってましたよ。

UCD:練習の段階ではけっこうバチバチでしたね。

DJとか、サンプリングとか、そういうことは考えなかったの?

UCD:いや、考えたんですけど単純に周りにいなかったんですよね。本当にそれだけの理由ですね。本当はサンプラー使って女の人の声だけで作られているような曲のほうが好きなんですよ(笑)。女の人の歌声が不自然に出てくる曲のほうが好きですね(笑)。

じゃあMC+DJというかたちでやる可能性もある?

UCD:ありましたね。というかそれはやるつもりなので、今後もありますね。

菅澤:Bullsxxtができたのも、バンドをやっているやつしか周りにいなかったって理由なんだよね。

アルバムを聴いてすごく思ったのが、THA BLUE HERBからの影響がすごく大きいってことなんだよね。S.L.A.C.K.はあまり感じなかったね。

UCD:THA BLUE HERBは大きいかもしれないです。僕がS.L.A.C.K.(5lack)のことを好きなのは自分ができないからかもしれないですね。ああはなれないというか、タイプが違うというか。S.L.A.C.K.の影響があるとしたら、ただ日常を歌うというところですね。怒りも含めて日常であるということを歌うということですかね。
 とはいえ、ラップを書くときには意識していないんですけど。僕は最近だとC.O.S.A.が好きですね。C.O.S.A.は、ちょっと違うところもあるんですけど現代版THA BLUE HERBというか、ゴツッとした感じのラップで好きですね。

ちょっと任侠の世界が入っているような?

UCD:なんだコイツは! という感じにちょっと憧れますね。(自分の)キャラクターとは違いすぎるんですけど(笑)。

菅澤:牛君は任侠っぽくはないもんね。

UCD:心のなかではいつも任侠的な気持ちがあるけどね(笑)。「なめてんじゃねえぞ」っていう。

小岩が任侠的な街なんじゃないの(笑)?

UCD:たしかに僕は不良を目指してました(笑)。優等生なのに(笑)。

菅澤:不良に囲まれざるをえないからね(笑)。

UCD:たしかに粋がってるやつのほうがカッコいいでしょ、みたいな不良文化はありましたね。

アルバムを聴いて、1音1音に間が入るようなラップだと感じて、そこはそれほどBOSS的ではないなと思ったんですよね。もちろん曲のなかでラップが流れるようになるところもあるんだけども、全体的に言おうとしている言葉を優先しているという気がしたんですが、そんなこともない?

菅澤:詞先みたいなことですか?

モーラごとにほんの少し間があるというか、喋るようにスラスラ流れるというよりは、1音1音区切っているようなラップのしかただと思ったんですね。

UCD:たしかにそうですね。なにを意識しているのかはもうわかんないな。

「Bullsxxtのアルバム聴いた?」「聴いたよ!」というやり取りでの繋がりかたを作るという意味では音楽にしかできないことだと思いますね。〔……〕国家じゃないところでの人々の繋がりを作れるというところは大きいと思いますね。 (UCD)

10曲目(“Reality”)は2ヴァース目からそのラップが変わって、それがすごくおもしろかった。

菅澤:“Reality”こそ、このアルバムの曲のなかではS.L.A.C.K.に近いラップだと思うんですけどね。

UCD:正直自分ではなにっぽいのかよくわかんないですね(笑)。

とくに影響を受けた人がいるわけではない?

UCD:そうですね。いろんな人のラップを聴いて、こういうのもありなのかとは思うんですけど、とくに脚韻を重視する必要がないというのはいとうせいこうが“東京ブロンクス”とかでやっているんですよね。全然踏んでいなくてもいいじゃん、っていう割切りはしていますね。BOSS、S.L.A.C.K.、ISSUGI、仙人掌からの影響は大きいかなあ。

菅澤:ISSUGIさんからの影響は大きいんじゃない?

UCD:ISSUGIさんはデカいっすね。“Classix”はISSUGIさんのラップのイメージですね。

ISSUGIさんのどういうところが好きなんですか?

UCD:ノリですかね。言葉がたくさん埋まっているほうがノリを出しやすいんですけど、言葉が少ないのにノリを出すのは難しいんですよね。ISSUGIさんは言葉がそんなに多くなくて詰まっているのにノリが出ているんですよね。それがスゴいと思って、真似しました。

菅澤:レコーディングのときもビートに対して後ろでノるか、真ん中でノるかをいろいろ試したりしてたよね。

UCD:後ろでノるか、真ん中でノるか、前でノるかというのはけっこう悩みどころで、その日の体調によってどこになるかが決まっていないんですよ(笑)。なにが正しいのかは僕もよくわかっていないですね。ただ僕がノレてるなと思うときはノレていると思うんですけど。

アルバムのなかで1曲ラジオで流すとしたら、いまだったらなにをかけたい?

UCD:ラジオとなるとやっぱりキャッチーな曲に忖度したくなりますね(笑)。“Stakes”かな(笑)。

(一同笑)

菅澤:俺は“Poetical Rights”かなあ。けっこうラジオ乗りもよさそうだし。

Bullsxxtを紹介するための重要な1曲を選ぶとしたら?

菅澤:俺は“Poetical Rights”がすごくBullsxxtらしい曲だと思っているんですよね。そんなことない?

UCD:どうかなあ。

菅澤:“Poetical Rights”には、フックの「詩的権利の行使/理解してるぜ/これはギャンブル」とか、牛君らしいパンチラインが多い。この曲はパンチライン続出の曲だと思っているんだけど(笑)。「詩的権利の行使」ってフレーズはあれだよね?

UCD:(ピエール・)ルジャンドルだね(註:フランスの法制史家、精神分析家)。ルジャンドルの本を読んでいて、そのなかで「詩的権利」って言葉が出てくるんですよ。

ラッパーでルジャンドルなんて言う人、他にいないよ(笑)。牛田君にとって「詩」とはなんですか?

UCD:難しいですね。直接関係してないように見える比喩と物事を並べているのに、なぜかリアリティが出るものだと思いますね。それ(リアリティ)は仙人掌さんのリリックがスゴいなと思いますね。具象と抽象が交互に出てくるような感じで、具体的なものに焦点が当てられているのに、抽象的に聞こえたり、抽象的なことがリアルに描写するよりも現実味をもつということが詩的であることの条件だと思うんですけど、僕はまだまだですね。これからって感じです。でもそういうものが書けるようになったらいいなと。

音楽面では、無名時代から蓄積されてきたものを全部吐き出した感じ?

UCD:音楽の面ではそうですね。僕もどちらかと言うとグルーヴのほうを重視していたんですよね。グルーヴを出そうという方向性を重視していて、今回はバンドのノリとの関係でグルーヴを出せるようになったとは思いますね。ただ詩として見たときはまだまだかな。例えば“Poetical Rights”に関してもガースーは俺っぽいと言っていたし、もちろん頑張って書いたんですけど、俺のなかでは哲学者がラップしている感じがするんですよ。詩人じゃないなというか、哲学なんですよね。もうちょっと詩的に言いたいし、具体的なものをラップできるようにならないとダメだなと思いますね。それはすごく難しいですね。単純に苦手なんですよね(笑)。

聴き手の顔っていうのでまず見えるのは、やっぱり同世代の人たちになるのかな?

UCD:SEALDsのときもそうでしたが、イメージ的には未来を見ている感じですね。これから来る世代、むしろまだ生まれてもいない世代にとって悪い世のなかにならないようにするということ。だから集まりましょうということは全世代に呼びかけていたというか。だからこれは矛盾しているとは思うんですけど、Twitterではやっぱり同世代に向けているように見えるし、メディアでもそういうふうにしていましたけど。実際に周りの人とかに呼びかけたときに、陰で「牛くんってSEALDsのこと言ってきてめんどくさいよね」って言われたとしても、僕はしつこいしめげないんでやめないんですよ(笑)。最終的にはみんながデモに来るようになったということもあったし。それはみんなそれぞれ考えていたということもあるんですけどね。ただ基本的にはそういうことを言うと煙たがられるというか、地元の友だちにも「あいつは頭が狂った」とか「革命を起こそうとしている」とか、ヤバいやつだと思われたりしたんで(笑)。

(一同笑)

UCD:いちばん仲がよかったやつからも遊びに誘われなくなったりしたし、やっぱり誘えないですよね。そうとう難しい。

菅澤:俺でさえもそういうことはありましたね。SEALDsには参加してないし、Twitterで「デモに行きました」とかつぶやいているだけで、「お前最近左に行ってんじゃん」とか言われたりしましたね(笑)。

よく(日本は)同調圧力が強いと言われるじゃない?

UCD:そうだと思います。いま俺らの世代で政治的なことに関心をもっているやつがそれを一言でも発したら、その瞬間、いまいる偏りのないコミュニティのなかから排除されますよね。それはもう間違いないと思いますね。それが怖くてそのコミュニティの外に出られないというのはたくさんあると思います。それが普通になっているんじゃないかな。

だからこそ率先して馬鹿をやる人間が重要になってくる。

UCD:そうだと思います(笑)。反時代的というか。だから僕はラッキーだと思っていますけどね。みんな内輪でやっていることなので(笑)。僕も詩的レヴェルとしてはそんなに高くないと思うんですけど、だとしてもある程度は尖っているように見えるというか。

音楽だからこそできることってなんだと思いますか?

UCD:端的に層が違うというのはありますよね。僕らはデモも音楽としてやろうとしていたところがあって、やっぱり「特定秘密保護法、はんたーい!」よりも「特定/秘密保護法/反対」ってラップっぽくリズミカルにコールしたほうが引っかかりやすいですよね。それは音楽もデモも同じなんですよ。つまり演出されているということなんですけど、それに加えて音楽にしかできないこととなると……。うーん、デモを強制的にいろんなところに配信できるということじゃないですかね(笑)。

(一同笑)

触発させるということね。

UCD:デモという空間自体をいろんなところに拡散させることによって、いろんなところで勝手に蜂起しているという感じですかね(笑)。あとは国家という枠組みに囚われなくてもいいというか、それ自体が共同体を作りうるというか。国家という意味の共同性だけじゃなくて、「Bullsxxtのアルバム聴いた?」「聴いたよ!」というやり取りでの繋がりかたを作るという意味では音楽にしかできないことだと思いますね。とくにヒップホップはそういう要素が大きいと思うんですけど、国家じゃないところでの人々の繋がりを作れるというところは大きいと思いますね。

Bullsxxt、リリース・パーティの追加ゲストに入江陽、DJに高橋アフィ(TAMTAM)が出演決定!

10/18に1st Album『BULLSXXT』を発売したBullsxxtが、12/10に恵比寿BATICAでリリース・パーティを行う。本日、このイベントの追加ゲストを2組発表した。ライヴ・アクトに入江陽、また、DJには、TAMTAMの高橋アフィの出演が決定! これは見逃せないパーティになりそうだ。

すでにアナウンスがあった“In Blue feat. 仙人掌”でも共演した仙人掌、BullsxxtのNaruki Numazawa(Key, Syn, Vo)とPam a.k.a. Ecus Nuis(Ba, Syn)によるユニット「odola」がオープニング・アクトとして出演する。チケットの取り置きは、会場へのメール予約で受付中。お早めにどうぞ。

[イベント情報]
BULLSXXT RELEASE PARTY
日時:2017年12月10日(日)
場所:恵比寿BATICA
開場/開演:17:00
チケット前売価格:¥2,000(+2D)
予約先:batica@club251.co.jp

DJ:
高橋アフィ(TAMTAM)
tommy(Bullsxxt)
オークダーキ
Death mix

ライヴ:
odola(O.A)
入江陽
仙人掌
Bullsxxt

Matthew Herbert Brexit Big Band - ele-king

 先日、ブルーノートで行われたマシュー・ハーバートのライヴに行ってきた。銃弾の音や豚の生活音、コンドームの擦れる音まで、様々な音をサンプリングして楽曲制作することで知られるハーバートだが、今回のテーマは、Mathew Herbert Brexit Bigbandという名前の通り、「ブレグジット」だ。
 “イギリス(Britain)”がEUを“抜ける(Exit)”から“ブレグジット(Brexit)”──EU残留か離脱かを問う国民投票を行うとキャメロン前首相が発表したその数日後、新聞の見出しにあったこの語を見た時は、ずいぶん適当な造語だなと思ったものだが、結局、この語の名指す出来事はイギリスを大きく揺るがすこととなる。国民投票の結果、離脱派が勝利し、ブレグジットは現実のものとなったからである。
 世界中がこの前代未聞の政治的出来事に注目した。ブレグジットに向け、イギリス政府は今も活動中である。そんな政治的出来事をいったいどうやって音楽に落とし込むというのか? 全く予想がつかない。
 初めてブルーノートにコンサートを聴きにいくということで、「ドレスコードはあるのだろうか」とか細かいことばかり気にしながら、一応襟のついたシャツを着て会場に向かう。

 ビッグバンド編成だったが、演劇の舞台を見ているようでもあった。プロットがしっかりあって、曲ごとに登場人物の顔が見える。
 たとえば3曲目。冒頭でメロディを担うサックスやトランペットの奏者が、イギリスのタブロイド紙『デイリー・メール』を破いた。それを破いた音とともにゆったりとスウィングが始まる。
 『デイリー・メール』とはイギリスで発行されている大衆向けの新聞で、エロ情報が必ず載っている(紙面をめくると割と早い段階で薄着のセクシー姉ちゃんが出てくる)。
 EU残留派支持にはミドルクラスの知識層や左派の学者が多く見られたが、彼らはその大半が『デイリー・メール』に書かれていることなど読むに値しないと考えていた(以前、政治討論のテレビ番組で、レフトアクティビストが、的外れな発言をするインタヴュアーに向かって「This is Daily Mail!」と言い放ったのをみたことがある)。
 今回離脱派に入れた人びと、つまり『デイリー・メール』を読んでいるような人びとのことなど気にとめる必要などない……そんなミドルクラスの雰囲気を表現しているかのような曲だった。実際、残留派の人びとは「ブレグジットなど起こるわけがない」と静観していた。彼らはEUに不満を抱く人びとの声に耳を傾けることはなかった。

 4曲目、勢いよくブラス隊がかき鳴らすマーチのリズムに乗って、ボーカルのRahelが「take a step(一歩前へ)」「yes!yes!」と歌う。まるで聞こえのいい言葉でアジテーションしていくポピュリストたちの喚声のようだ。『デイリー・メール』を破いた前の曲が、大衆の声に耳を傾けることなく高みの見物をしていた残留派知識層を象徴していたとすれば、この曲は、日々の生活に不満を抱く人びとに向けられたポピュリスト政党のメッセージをモチーフにしたかのような音楽だ。
 曲を聴きながらある人物を思い出した。離脱派のEU議会議員、UKIP(イギリス独立党)党首のナイジェル・ファラージだ。彼は、EUを出てシングルマーケットになるメリットと、EU向けに使っている予算を国内の福祉に回すことができるということをいい 、離脱支持層を集めた。しかし、国民投票で離脱派勝利の数日後、ファラージはEUに払っていた予算を国内に回す事はできないと述べた。EU議会でファラージは他の議員たちに「You lied(あなたは嘘をついた)」と非難され、EU議員を辞職している。歌詞に出てきた「naughty sounds, naughty sounds」とは彼が言った、人びとに都合のいいような、甘い嘘のことなのかもしれない。

 5曲目で、ハーバートは自分の首にサンプリング機械をあてる。音楽ではリズムの速度を示すBPM(Beat Per Minute)という言葉は、医学では心拍数という意味で使われる。マシューの脈がうつビートと同時に、曲が始まる。彼の心拍数と曲のリズムが交差し、時々ずれながら、ヴォーカルのRahelが歌い上げる

You need to be here
あなたはここにいる必要がある

 ここでいうhereはEUではないだろうか。儚げに歌い上げる声に、まだ投票権を持たず、EUからの離脱に反対するティーンエイジャーの姿を重ねてしまった。EUの特徴に「EU加盟国間では、人、物、サービス、および資本がそれぞれの国内と同様に、国境や障壁にさらされることなく、自由に移動することができます」というものがある。例えば、スーパーでスペイン産の生ハムや、フランス産のパンなど、国内で作ったものと同程度の価格で購入できる。あるいは、イギリス人が就労ビザなしでイタリアやベルギーで働くことができる。
 EU内ではどこにでも行くことができるのだ。将来、子どもたちが享受できたはずの、暮らしたい街や働きたい場所を自由に選ぶ権利は、EU離脱によって狭まれてしまう。ハーバートの心拍の音は、音楽のリズムと時々重なるものの、ずっとズレを伴っている。このズレは、EUに留まりたいと思う子どもたちが、その気持ちを政治的に表現する権利を持たないことのもどかしさを表現しているかのようだった。

 6曲目ではタイプライターを打つ音をサンプリングし、それがすぐにビートに変えられる。ハーバートはドナルド・トランプのお面をかぶる。なぜブレグジットでトランプのお面だったのか。UKIPのナイジェル・ファラージはトランピスト(トランプ支持者)だそうだが、ここでの直接的な関わり方はわからなかった。
 エントランスで「ドナルド・トランプへのメッセージを紙に書いて、それを紙ひこうきにして、ステージに向かって飛ばす準備をしてください」というメッセージと色折り紙をもらった。それをトランプ扮するハーバートに向けて投げる。その紙飛行機は、ほとんどがステージに届かず客席に舞うだけだが、演奏をしながらハーバートは時々それを拾っては投げ返す。ツイッターが現実世界に可視化されるとすればこんな風だろうかと、演奏を聴きながら会場で起こったパフォーマンスに驚いてしまう(ちょうどブルーノートでライヴが行われた日、本物のドナルド・トランプが来日していた日だった)。
 2人目のお面は誰だかわからなかったのだが、3人目のお面はロンドン元市長のボリス・ジョンソンだった。ブレグジットキャンペーンで、ボリス・ジョンソンは離脱派として活動した。離脱派が勝利し、キャメロンは首相を辞任。その後、ボリス・ジョンソンは外務大臣として内閣入りしている。

 終盤、ハーバートは会場にいるオーディエンス全員の声をサンプリングして演奏に使う。曲のなかでは「we want to be human」と歌われる。残留か、離脱か。この選択を迫られたイギリスの人びとは、それぞれが抱える個人の生活、そして自分たちの社会のために、自分がいいと思った選択をしただけだ。離脱派も残留派も“人間らしくありたい”という点では同じである。

 最後の曲になった。曲は“The Audience”。歌詞の一部を引いてみよう。

Though the ending is not here
We are separate we are one
The division has begun
You are my future I am your past
Even music will not last

So move with me
With me removed

You and us together 
Together in this room
You will not remember
This passing moment soon

終わりだがここにはない
僕らは別れていて、僕らはひとつだ
分断が始まっている
君は僕の将来で、僕は君の過去だ
音楽でさえ続かないだろう

だから僕と一緒に行こう
僕抜きで

君と僕らは共に
この部屋に一緒にいる
君はいずれ忘れてしまうだろう
すぐ過ぎ去ってしまうこの出来事を

 このコンサートの2日前、DOMMUNEのインタヴューでハーバートは、シニア世代と若者世代のブレグジットに対するイメージのギャップについて話をしていた。もしかしたらここで出てくる「you(君)」は、EUを出た後のイギリスで、若者たちよりも先にいなくなってしまうシニア世代ことかもしれない。この曲を作った当時、ハーバートはブレグジットのことなどまったく考えていなかったに違いないが。
 離脱派も残留派も、結局はイギリスという同じ部屋にいる。“The Audience”はブレグジットの文脈で聞くととても悲しい曲に聞こえる。
 ブレグジットはおそらく、イギリス史に残る出来事だろう。しかし、歴史という大きな文脈のなかで、その時代を生きる大衆の意見は大きな出来事の影に隠れてしまう。ニュースで流れてくる政治の出来事や事件は、日々の生活に忙殺され、少しずつ忘れられていく。
 DOMMUNEの対談で、BBCの音響技師だった父親について質問を受け、ハーバートは、「ニュースを1枚のレコードにする作業が印象的だった」と答えていた。ハーバートは、ブレグジットを1枚の楽譜(スコア)にした。彼の父親がニュースをレコードにプレスしていたように、彼の楽曲はブレグジットについて皆がそれぞれの立場で語っていたことを記録している。ブレグジットが後に史実として歴史の教科書に登場するときには忘れ去られてしまうであろう人びとの声を忘れないために。

Sugai Ken - ele-king

 電子音楽家スガイ・ケンの新作はシネマティックなムードを漂わすアンビエント/コンクレートの傑作であった。「シネマティック=映画的なアンビエント」とは何か。それは音楽/音響が、映画のサウンドをイメージさせるかのように「非同期的」(坂本龍一『アシンク(async)』)に構成された音響作品を意味する。「世界」の「豊穣さ」の音響・音楽表現でもある。
 『不浮不埋』おいても音楽、環境音、微細なノイズなどが非連続的に構成され、肉体的に慣習づけられた反復的なグル―ヴを解体するようにサウンドのエレメント(それは日本的であり、ミニチュアール/神的なものだ)が非反復的に編集・接続される。音による「光景」が生まれているのだ。

 1曲め“湧き祕”で滴り打ち落とされる水滴の音に導かれるようにはじまる2曲め“をちかえりと渦女”を聴けばわかるが、スティーヴ・ライヒ的なミニマリズム(反復性)は解体され、「和的」な具体音が非反復的/ステレオフォニックにコンポジションされている。やがてそれは時計の音へと変貌する。光景は消えて、時間だけが残る。そして、森の中の鳥の声と、その場所の音と、時計の針の音のような音が重なる3曲め“時鳥”への転換も、時間の経過を描写することで、映像作品のシークエンス転換のように耳の遠近法を変えてしまう。続く「「滝宮の念仏踊り」という郷土芸能から着想を得ている」と語る4曲め“桶楽”では、走るような足音と心の芯に響くようなドローン、微かな環境音などが非反復的/非同期的に連鎖し接続され、このアルバムのムードを聴き手の耳に浸透させる。

 2016年にオランダの〈ララバイ・フォー・インソムニアック(Lullabies For Insomniacs)〉からリリースされた『鯰上』でも追及されてきた緻密なコンポジションが、〈Rvng Intl.〉から送り出された『不浮不埋』ではより「深い」領域で表現されているように感じた。「深い」とは、スガイ・ケンは日本の伝統的な音楽や風習などをフィールドワークしつつ自身の曲を創作しているのだが、まずもって「音」と「世界」の方が先にあるのではないかと感じられたからだ。
 「音」が先にあること。「音と世界」を聴くこと。そのような世界=音への意識・態度が『不浮不埋』のシネマティックな音響空間の生成・構成に大きな影響を与えているように思えてならない。それゆえにスガイ・ケンの音楽は豊穣なのではないか、とも。

 ちなみに同じく〈Rvng Intl.〉からリリースされたヴィジブル・クロークス『ルアッサンブラージュ(Reassemblage)』も同様の響きと非連続性を感じた。『ルアッサンブラージュ』は80年代の日本産アンビエント/ニューエイジ・ミュージックという宝石を再発見し、それを現代的にコンクレートするアルバムであり、「ニューエイジ再評価の現代的アンビエント・サウンド」を象徴する傑作であった。むろん『ルアッサンブラージュ』とスガイ・ケンの『不浮不埋』では参照点や音楽のタイプは違うが、2作とも過去=未知の音への調査と探求を経たうえで、非連続的(非反復的)なアンビエントに解体/再構成する音楽作品という点では共通点がある。その意味で2017年の〈Rvng Intl.〉のキュレーションは同時代の潮流をとらえていた。

 私はスガイ・ケンの音楽を聴くと、ふと映画作家のジャン=リュック・ゴダールのソニマージュ実践や実験音楽家/美術家のクリスチャン・マークレーのターンテーブル・コラージュ作品を思う。コンポジションとエディットが同列に存在しているからだ。スガイ・ケンの楽曲には、どこか「作曲」という意識だけではなく、一種の音と記憶の「トラックメイク」を行っているという意志を強く感じるのである。音の接続による記憶の再構成とでもいうべきもの……。
 日本盤をリリースしているレーベル〈メルティング・ボット(melting bot)〉のサイトに、スガイ・ケン自身によるセルフ・ライナーノーツ的なテキストが掲載されているが、これを読むと彼が日本の伝統音楽を調査し体感していく過程で観た/聴いた/体験した「光景」を自身の音楽にフィードバックしていくさまが語られている。なかでも「京都の山中にある月輪寺を訪れた際、道中の林道がとても印象的な光景であった」ため、それをもとに制作された7曲め“堂尻”は、光景的かつ記憶的で、彼の音楽の本質を照らしているように思えた。

 調査と体験。体感と記憶。記憶と解体。解体から生成。彼は記憶と体験から「音の光景」を編集するように音楽を生成・構成する。そして、その「音=光景」の果てには「冥界」のイメージを強く感じる。「柳女のイメージ」で制作されたという10曲め“障り柳”に耳を澄ますと、現実の時間空間意識が消失し、冥界の淵に立っているような気分になるのだ。日本のさまざまな伝統音楽(のエレメント)が、21世紀の「耳」を通じて、新しいアンビエントとして生まれ変わったのである。

Mura Masa - ele-king

 UK出身のムラ・マサが通算2枚目、メジャー・デビューとなるアルバム『ムラ・マサ』をリリースした。

 3年程前にサウンドクラウドでよくチェックしていたムラ・マサのことを思い出したのは、今年の3月にロンドンのオールドストリートの人気クラブ、XOYOのグライム・パーティでKahn & Neekがプレイしたのを聴いた時だった。その時かかっていたのは、ムラ・マサのヒット曲“ロータス・イーター(Lotus Eater)”のジャロウ・バンダル(Jarreau Vandal)のエディットで、アジアンなフルートに客は合唱する大盛り上がりだった。盛り上がりに応えてKahn & Neekは4回リワインドした。

 Kahn & Neekだけでなく、ムラ・マサのリリース・パーティを〈ナイト・スラッグス〉マムダンスがサポート、自身はグライムMC、ストームジーのプロデュースをするなど、ロンドンのクラブ・カルチャーとの関わりも強いアーティストだ。

 ムラ・マサことアレックス・クロッサンは、イギリス海峡の島ガーンジー島に生まれた。音楽教育を受け、10代のはじめにはゴスペルやパンク・バンドでプレイしていたという。16歳でAbleton Liveを使って打ち込みを始め、サウンドクラウドから人気を広げた彼は、他のサウンドクラウドのプロデューサーが流行らせた「フューチャーベース」とは趣を異にし、こじんまりしていて音の粒を大切にするような空間づくりがユニークなプロデューサーであった。先述した“ロータス・イーター”が収録されているファースト・アルバム『サウンドトラック・トゥ・ア・デス(Soundtrack to a Death)』では、ストイックにメロディを聞かせるインスト曲がメインである。

 その後、自身のレーベルを立ち上げて、リリースしたEP「サムデイ・サムウェア(Someday Somewhere)」は、ベッドルームからスタジオへ拠点を移し制作されたのだろう、シンガーとのコーラスワークを特徴とするプロダクションへと成長していく。特に今作に再録されている“ファイヤーフライ(Firefly)”で歌っている、ライヴでのサポートシンガーも務めるナオ(NAO)のコーラスワークは、今作へ繋がる重要な要素である。

 今作は、ロンドンのバスがニュー・パーク・ロードへ到着するアナウンスから始まり、少し狂気じみたラヴ・ソング“メシー・ラブ(Messy Love)”から、マリファナをチキンナゲットに例えた“ナゲッツ”、そしてエイサップ・ロッキーを迎えた“ラヴシック(Love$ick)”へと流れていく。“ラヴシック”のイントロのタイトなドラムは、クラシックなヒップホップ・ブレイクスの質感を匂わせる。曲中のスチールパンのメロディに対して、エイサップ・ロッキーは「イビザにいるみたいな気分だ」と言ってリリックを書いたらしいが、自分にはむしろトリニダード・トバゴの祝祭をルーツに持つ、ロンドンのノッティングヒル・カーニヴァルが思い浮かんだ。

 チャルリ・XCXを迎え、ワンナイト・ラヴを歌う“1 Night”では、iPhoneの着信音「マリンバ」を彷彿とさせるメロディが印象的だが、チャルリ・XCXがサビで少しだけ高めに外れる声に、彼女の歌唱力の高さを感じられた。続く“オール・アラウンド・ザ・ワールド(All Around the World)”では、USのラッパー、デザイナー(Desiigner)が共演している。しかしこの曲については、オリジナルのテーマを生かしたUKのギャングスタ・ラップ・グループ、67(シックスセヴン)によるシックなリミックスの方が素晴らしかった。

ショーで前の晩酔っ払っても、朝の飛行機に乗り遅れない
海外のショーの方が多いけど、それはイギリスが退屈だから

I'm drunk from the show last night but I gotta catch a flight in the morning
More time we overseas doing shows 'cause the UK got boring

... Liquez - Mura Masa - All Around the World (67 Version) より

(67のラップ・ショーは大人気なのにも関わらず、「治安上の問題から」イギリスの警察によって弾圧され、イギリス国内ではショー自体が中止になってしまうことが多い。)

 後半の客演陣の中で、ジェイミー・リデルがプリンス顔負けの80sバイブスを披露する「ナッシング・エルス!(NOTHING ELSE!)」のポップネスが素晴らしく、ブラー(Blur)のヴォーカリスト、デーモン・アルバーンを客演に迎えたラスト・ソング“ブルー(Blu)”のコーラスには、ムラ・マサのルーツのひとつであるゴスペルを感じさせた。

 全体を通して漂うドライな雰囲気と空間の隙間は、ラウドで感情的なメインストリームの音楽とは真逆である。ひとつひとつの音はバランスが取れていて、ヘッドルームに余裕があり、ひとつひとつの楽器の音の粒までがきちんと聴こえる。こうした音像は、ヘビーな808ベースに則ることが「ルール」となってしまったエレクトロニック・ポップスの流行のなかでとりわけユニークに響くし、2018年以降のエレクトロニック・ポップスのルールを書き換えてしまうだろう。そして、808ベースに代わりコーラスとメロディが再び主役となる。しかし、コーラスによって曲がエモーショナルになりすぎぬよう、ファットな生ドラムやスチールパンのメロディ、そしてロンドンの街のフィールド・レコーディングが添えられ、全体に乾いたクールネスを醸している。

Nicola Cruz - ele-king

 〈MULTI CLUTI〉や〈ZZK〉からのリリースで知られるニコラ・クルースが初来日、神戸Troop Cafeと東京・代官山Unitでライヴを行います。ニコラ・クルースは、ニコラス・ジャーのステージでフロント・アクトをつとめたり、彼の主宰レーベル〈クラウン&サンセット〉のコンピにその名を連ねたことをきっかけに注目を集めた南米エクアドルの首都キトを拠点とするエレクトロニック・プロデューサーです。〈MULTI CLUTI〉や〈ZZK〉に加え、ニコ・デマスのワンダーホイールやエジプトのマジック・ムーヴメントにも楽曲やリミックスを残し、直近では、現在日本をツアー中のトーマッシュ主宰、ヴードーゥー・ホップのコンピ『Entropia Coletiva』のCD版にも新曲「Elephant」を提供しています。
 東京公演は野外フェスティバルRe:Birth主催のパーティで、ミニローグ、クニユキ・タカハシ、ミックスマスター・モリスも出演します。

■Nicola Cruz Japan Tour in Kobe

2017.11.23 THU

16:00 START - 23:00 CLOSE
Mail Resevation \2000(w/1D)Door \3000(w/1D)Under23 \1500(w/1D)

LINE UP :
Nicola Cruz -Live-
Shhhhh
KND -Live-
halptribe
FUKAMIDORI
職人
TAIPEIROD
KEYWON

SHOP :
DUMBO

FOOD :
tamu tamu cafe
Beinelmilel

COFFEE :
nomadika

https://troopcafe.jp/music-program/1388

■Nicola Cruz Japan Tour in Tokyo
Re:birth feat. El Folclore Paradox supported by Global Chillage

2017.11.24 FRI

OPEN : 23:00
START : 23:00
CHARGE :
ADV 3,000yen
DOOR 3,500yen
You must be 20 and older with photo ID

【UNIT】

LIVE :
Nicola Cruz
Marcus Henriksson aka Minilogue x Kuniyuki

DJ:
Shhhhh (El Folclore Paradox)
Kojiro (Re:birth)

【UNICE】

[new album "KiraKira" release special]
Mixmaster Morris
Peter Power (voodoohop)
Koss aka Kuniyuki
Hiyoshi (Labyrinth/Global Chillage)
7e

DECO:
聖紅 (seiko-nose.com)

LIGHTING:
Yamachang

https://www.unit-tokyo.com/schedule/2017/11/24/171124_rebirth_featefp.php

【Nicola Cruz ~ニコラ・クルス~】
彼は自分のサウンドを”andez step”と定義するDJ / プロデューサー。南米はエクアドルの都市キト在住。パーカッショニストとしてキャリアをスタートし、次第にそのリズムの感性と興味はエレクトリック・ミュージックにも向かう。同時に自身のルーツである南米大陸の儀式や音楽現象への探求を開始。2015年にデジタル・クンビアのレーベルとして日本でも紹介されたZZK Recordsよりアルバム、"Prender el Alma"をリリース。Nicolas Jaarの前座に指名され、翌年のバルセロナのソナー・フェスティバルを始めとする、欧米から南米のビッグフェスやBoiler Room にも出演。2017年、モントリオールのレーベル、Multi CultiよりEPを数タイトルリリース、他にもsoundcloudやBandcampにて、クオリティの高いトラックをハイペースで発表し続けている。2018年には新アルバムをリリース予定。
2010年代中盤から南米を中心に勃発した、過去と未来、伝統とモダンを行き来する進行系の現象。ナチュラルでオーガニック、世界各地の土着性を吸収した、BPM控えめで、ミニマル、スローハウス、ラテン/クンビアらを通過した酩酊しトランスするダンス・ミュージック・ムーヴメント。その動きの中でも代表的なアーティストである。待望の初来日。

Nils Frahm - ele-king

 モダン・クラシカルを牽引する〈Erased Tapes〉の看板、ニルス・フラームがついに、約4年ぶりとなるスタジオ・レコーディング・アルバムを完成させた。今回のレコーディングはなんと、そもそもスタジオを作る(!)ところから始められたのだという。これまでele-kingでも『Screws』『Solo』といった作品を取り上げてきたけれど、どうやら来るべき新作は、従来のアルバム以上に重要な意味を帯びた作品になっている模様。発売は来年1月26日。詳細は下記をご覧あれ。

ニルス・フラームが約4年振りとなるスタジオ・レコーディング・アルバムをリリース。スタジオを作るところから始めた壮大な計画は、自分の理想の音を自由に追求し続けた初めての作品。シンセサイザー/ハーモニウム/パイプオルガン/ピアノ/ヴォーカルなど多くの楽器が織りなす夢のような新世界。

彼のいままでのアルバムでは物語性を伴うものがいくつかありました。『Felt』(2011年)では、自身の古い寝室内のスタジオで夜遅く録音するとき、隣人への配慮からピアノのハンマーに気を使った事で生まれたに独特のピアノの音、続くアルバム『Screws』(2012年)では、親指を怪我したために残りの9本の指での演奏を強いられた事で生まれた繊細なタッチのサウンド。彼の制作してきた作品は何かに制限を受けてきたものが多く、思いついた多くのアイデアを自由に形にすることは行ってきませんでした。ベルリンに建築された自分の理想的なスタジオが完成した事で本当の意味での自由な音作りをする環境が整い、そして制作されたアルバム『All Melody』。今までの作品がすべてここに繋がっておくための準備期間だったのではと思わせるサウンドは、いままで聴き慣れたピアノからシンセサイザー/ハーモニウム/パイプオルガン/竹製の楽器、そして新たに取り入れたヴォーカル。間違いなく彼の今後の音楽活動の分岐点となる最重要作品の完成と言えるでしょう。

[セルフライナーノーツから一部抜粋]
完成までの過程で、どのようなアルバムにおいても何を作り上げたという事だけでなく、もっと重要なことだと思えるのは何ができなかったかを明らかにすることだ。『All Melody』には時間の経過とともに非常に多くのイメージがあり、以前にもずっと沢山ありましたが、私がそれらを制作しようとした事はこれまでありません。いままで見た事も聴いた事もない、少女や少年たちによる人の声を伴った美しいドラムを聴きたかった。彼らはまさにこの世界で歌を唄い、別の場所から来たかのように聴こえるでしょう。私は『All Melody』を演奏するハーモニウムのような音を奏でるシンセサイザーを聴き、それらはシンセサイザーのようなハーモニウムの音色と共に混ざり合います。私のパイプオルガンはドラムマシーンとなり、私のドラムマシンは、息づかいを感じさせるフルートによるオーケストラのように聴こえるでしょう。ピアノはまさに声へと変わり、声は共鳴するストリングスとなります。私自身の中で聴いている音楽は決してレコードとして完成しないでしょう。それは自分のためにしか演奏することができないと思えるのです。このレコードには私が思いついたものを収録し、私が想像できる最良の方法で導き出した音楽について表現しています。
2017年10月 ニルス・フラーム

アーティスト: Nils Frahm (ニルス・フラーム)
タイトル: All Melody (オール・メロディー)
品番: AMIP-0126
価格: 2,400円+税
発売日: 2018年1月26日 (金)
バーコード: 4532813341262
レーベル: Erased Tapes
※ライナーノーツの日本語訳
※ボーナストラック1曲のDLコード収録

トラックリスト:
01. The Whole Universe Wants To Be Touched
02. Sunson
03. A Place
04. My Friend The Forest
05. Human Range
06. Forever Changeless
07. All Melody
08. #2
09. Momentum
10. Fundamental Values
11. Kaleidoscope
12. Harm Hymn

■プロフィール
ドイツのベルリンで活動する作曲家/ピアニスト。Peter Broderickがプロデュースした『The Bells』、友人へのクリスマス・プレゼントとして制作した『Wintermusik』をリリース。その後Efterklamgのレコーディングやツアーに参加。2011年のアルバム『Felt』で高い評価を受け大きな注目を受ける。『Screws』では負傷した親指を使わずゆっくり大事に演奏した作品はピアノ・ファンの枠を越え多くの人に愛される。彼が最も力を入れているグランドピアノ+ローズ+アナログシンセというセットでのライヴ音源を含む『Spaces』をリリース。2015年にはイギリスのBBC PromsによるRoyal Albert Hallでの圧巻のパフォーマンスを披露。2年の歳月をかけて制作したファンクハウス・スタジオでプロデューサーとしても活動する。

国内盤オフィシャルHP
https://www.inpartmaint.com/site/22483/

Flava D - ele-king

 昨年1月にスウィンドルとともに来日し、UKハウス、ガラージ、グライムなどを変幻自在に操るDJスタイルでフロアを熱狂させたフレイヴァ・Dが待望の再来日を果たす。前回の来日後も『FabricLive88』や、今年に入ってからはロイヤル・TおよびDJ Qとのユニット、t q dのアルバム『ukg』など快進撃を続けているだけに、いまの彼女がどこを向いているのか確認する良い機会となるだろう。ベース寄りになるのかハウス寄りになるのか、それとも……。詳細は下記より。

"FLavaD" Japan Tour 2017

UKガラージ、グライム、UKベース・ミュージック・シーン
最重要、女性プロデューサー/DJに君臨するFlavaD、待望の再来日決定!

[ツアー日程]
●11.21 (火) @Dommune (東京)

●11.22 (水/祝前日) @OUTER (高知)
https://outerkochi.strikingly.com/
open 21:00 adv: 2000 yen (+1d) / door: 3000 yen (+1d)

●11.24 (金) @CIRCUS TOKYO (東京)
https://circus-tokyo.jp/
open 23:00 adv: 2500 yen door: 3000 yen
ticket: https://ptix.co/2w9gyKQ

●11.25 (土) @CIRCUS OSAKA (大阪)
https://circus-osaka.com/
open 22:00 open 23:00 adv: 2000 yen (+1d) / door: 2500 yen (+1d)
ticket : https://ptix.co/2fcJnPN

[プロフィール]
■Flava D (Butterz, UK)
UKガラージ、グライム、UKベース・ミュージック・シーンにおいて最重要、女性プロデューサー/DJに君臨するFlavaD。幼少からカシオのキーボードに戯れ、14歳からレコード店で働き、16歳から独学でプロデュースを開始。当時住んでいたボーンマスでは地元の海賊放送Fire FMやUKガラージの大御所、DJ EZの『Pure Garage CD』を愛聴、NasやPete Rockにも傾倒したという。2009年以降、彼女のトラックはWileyを始め、多くのグライムMCに使用され、数々のコンピに名を残す。12年にはグライムDJ、Sir Spyroの〈Pitch Controller〉から自身の名義で初の「Strawberry EP」を発表、13年からは自身のBandcampから精力的なリリースを開始する。やがてDJ EZがプレイした彼女の“Hold On”を聴いたElijahからコンタクトを受け、彼が主宰する〈Butterz〉と契約。「Hold On / Home」のリリースを皮切りにRoyal Tとのコラボ「On My Mind」、またRoyal T、DJ Qとのユニット、tqdによる「Day & Night」などのリリースで評価を高め、UKハウス、ガラージ、グライム、ベースラインなどを自在に行き交うプロダクションと独創的なDJプレイで一気にブレイク。16年の『FabricLive88』を経て17年5月にtqdのデビュー・アルバム『ukg』をリリース、その勢いはますます加速している。

https://flavad.com/
https://soundcloud.com/flava_d
www.facebook.com/FlavaDMusic/
www.twitter.com/flavad

Keith & Tex - ele-king

 ビースティ・ボーイズ『Paul's Boutique』の最後を飾るメドレー、“B-Boy Bouillabaisse”でサンプリングされていたロックステディの名曲“Stop That Train”をご存じでしょうか。あの名曲を歌うロックステディのレジェント2人組、キース&テックスが3年ぶりに日本に帰ってきます!
 前回の来日公演では、〈Rocksteady Legend〉でカールトン&ザ・シューズ、リロイ・シブルス、ストレンジャー・コールらと共演してきた日本が誇るジャマイカン・ヴィンテージ・ミュージック・バンド、マット・サウンズがバックを務めていましたが、今回もふたたびその共演が実現するとのこと。
 60~70年代のジャマイカ音楽愛好家のかたは必見ですよ~。

 前回の来日公演の模様は、以下のヴィデオをチェック。

Keith & Tex JAPAN TOUR 2017

【東京公演概要】
出演:Keith & Tex、Matt Sounds、Tommy Far East
日時:2017年12月10日(日) 開場 19:00 / 開演 20:00
会場:渋谷クラブクアトロ
INFO:OVERHEAT MUSIC(03-3406-8970)
特設サイト:https://www.overheat.com/keithandtex2017

前売りチケット:4,500円(+Drink Charge)
前売り【Tシャツ付限定割引】チケット(ローソンチケット):7,000円(+Drink Charge)
当日チケット:5,500円(+Drink Charge)

■チケット取扱店
Far East Records(042-705-3374)
HESHDAWGZ(03-3475-3475)
Dub Store(03-3364-5251)
Coco-isle(03-3770-1909)
JET SET 下北沢店(03-5452-2262)
HMV record shop 渋谷(03-5784-1390)
REDPOT(048-854-0930)
OR GLORY 神宮前店(03-3423-9368)

【Keith & Tex 他会場ツアー日程】
大阪公演 12月8日(金)SOCORE FACTORY


Keith & Tex(キース・アンド・テックス)
誰でも一度は聴いたことがある“Stop That Train”と“Tonight”という大ヒット曲を持つKeith & Tex。特に“Stop That Train”はジャマイカ最初の映画『The Harder They Come』でScottyの「Draw Your Brakes」名義で使用され、その後89 年にはBeastie Boysの“B-Boy Bouillabaisse: Stop That Train”で使われ、そのトラックは何度もリメイクされている超メジャー・チューン。他に“Let Me Be The One”などたくさんのヒットを持ち世界中のライヴで大合唱となる。現在もニュー・アルバムが完成しツアーを続ける現役バリバリのアーティスト。


Matt Sounds(マット・サウンズ)
今年4 月に1st アルバム『Matt Sounds』を発売、5 月にはBB シートンと東名阪ツアー、7 月にはフジロックフェスへの出演と順調に実力を発揮しているMatt。すでにジャマイカン・ヴィンテージ・ミュージックを演奏させたら世界でも右に出るものはいない? と噂されている。記念すべきキース&テックスのバックから始まり、カールトン&ザ・シューズ、リロイ・シブルス、ストレンジャー・コール、クリストファー・エリスらのバックを完璧に努め、彼らから「こんないいバンドがあったのか?」と驚嘆されてきた。それもそのはず直接ジャマイカン・レジェンドたちからリハと本番で細かく手ほどきを受け60 年代ジャマイカ音楽の黄金期を再現できる世界にも稀なバンドが誕生。Matt が遂にKeith & Texと3 年ぶりの再会。
https://www.mattsounds.tokyo

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