「You me」と一致するもの

Photay with Carlos Niño - ele-king

 これまで〈Mexican Summer〉などからリリースを重ねてきたニューヨークのプロデューサー、フォテー。9歳の若さでエイフェックス・ツインの音楽と出会いながら、その後ギニアへの旅を経てアフリカン・パーカッションとフィールド・レコーディングに目覚めたという、興味深い経歴を持つプロデューサーだが、その彼がLAのキーパーソン、カルロス・ニーニョをフィーチャーした2作、『An Offering』と『More Offering』が特別仕様のCDとしてリリースされることになった。環境音に電子音、サックスやハープなどが交錯する美しいサウンドスケープに注目したい。

Photay with Carlos Niño
『An Offering & More Offering Special Edition』

2022.12.14(水) 2CD Release

天才ビートメイカーとも評されるフォテーと、現代スピリチュアル伝道師カルロス・ニーニョによる共演作『An Offering』と『More Offering』が、2枚組のスペシャル・エディションとしてCDリリース!! 水に反射する様々な色彩や風景から、レイヤーや奥行きを感じさせる視覚的な体験をサウンドスケープとして聴かせる。豪華ミュージシャンも多数参加した、強力なコラボレーション作品の完成!!

西アフリカのギニアへの旅を経て、サンプリングとフィールド・レコーディングの可能性を拡げる実験へと乗り出した早熟のプロデューサー、フォテーが、カルロス・ニーニョやミカエラ・デイヴィスらを招いて作ったサウンドスケープを、どう表現してよいかまだ言葉が見つからないでいる。だが、そのことがとても心地よく思えるほど、何度でも繰り返して流しておきたい音楽がここにある。(原 雅明 ringsプロデューサー)

参加ミュージシャン:Photay - Synth、Mikaela Davis - Harp、Randal Fisher - Tenor Saxophone、Mia Doi Todd - Voice、Carlos Niño - Percussion、Natt Ranson - Trombone、Aaron Shaw - Tenor Saxophone、Diego Gaeta - Keyboards、Nate Mercereau - Guitar Synth、Iasos - Voice

【リリース情報】
アーティスト名:Photay with Carlos Nino(フォテー・ウィズ・カルロス・ニーニョ)
アルバム名:An Offering & More Offering Special Edition(アン・オフアーリング・アンド・モア・オフアーリング・スペシャル・エディション)
リリース日:2022年12月14日(水)
フォーマット:2CD(一部店舗にて、Tシャツ付き限定バンドルあり)
レーベル:rings / International Anthem
解説:原 雅明
品番:RINC97
価格:3,000円+税

【トラックリスト】
《 An Offering 》

1. PRELUDE
2. CURRENT
3. CHANGE
4. EXIST
5. PUPIL
6. MOSAIC
7. HONOR
8. ORBIT
9. EXISTENCE (feat.Iasos)

《 More Offering 》

1. ECHOLOCATION (featuring Randal Fisher)
2. PUPIL (Photay's Tributary Mix)
3. EXISTENCE (Photay's Infinite Mix)
4. EXISTENCE (Photay's Infinite Mix)(Club Diego Version)
5. FLOATING TRIO PART 3 (Photay Carlos Niño and Randal Fisher)
6. QUARTET IMPROVISATION 053021 (Carlos Niño & Friends)
7. FEELING NOW
8. NOW FEELING
9. PHASES (Solstice Mix)

販売リンク:https://photay.lnk.to/Ob68Z6Kx
オフィシャルURL:https://bit.ly/3WD9KSx

The Residents - ele-king

 「1億年前、ルイジアナ州の中心部からやや南に空から大きな岩が落ちてきた。そう、その時はまだルイジアナとは呼ばれてないけどね。岩が落ちた衝撃で大きなくぼみができ、少しずつそのくぼみは埋まっていったものの、くぼみは依然としてくぼみのままだった。そこに水が溜まり、クーチー・ブレイクと呼ばれる沼になったんだ。この沼は海とは繋がっていなかった。このことに意味があった。その沼はペルシャ湾から200マイル離れていて、そこにいれば世界情勢には無縁でいられた。ローカルというのは常にそういうものだけど。沼では起きるはずのない不思議なことがよく起きていた。何人かの若者がクーチー・ブレイクでキャンプをしていて、彼らはそこにはあるはずがない花崗岩の大きな塊を見つけて登ってみた。彼らは洞窟を発見し、キクの花の陰に運命が潜んでいると考えた。大事なことは彼らがそこにじっと座り続け、クーチー・ブレイクの声に耳を傾けたことだった。彼らは成長してザ・レジデンツになった。彼らの音楽は記憶だけでできている。クーチー・ブレイクを覆う怪しい霧と不気味な形、そして意表をつく音の記憶で」
(Sonidos De La Noche『Coochie Brake』より)

 ザ・レジデンツがソニドス・デ・ラ・ノーチェ(=夜のサウンド)名義で11年にリリースした『Coochie Brake』はバンドの成り立ちを題材にしたもので、これが契機となってザ・レジデンツの構成メンバーや彼らがルイジアナ出身であることが明らかになっていく。ヴォーカルのランディ・ローズが親の介護でバンドを離れていたため、曲はチャールズ・ボバックとボブが3ピース・バンドの振りをして録音。ギターとキーボード、そしてドラムだけの演奏にもかかわらず(1人2役のふざけたクレジットが笑える)、プレス・プラドーを思わせるマンボやエキゾチック・サウンドのダークサイドを掘り当てたサウンドがこれでもかと繰り広げられた。電子音がほとんど鳴らないのに、しっかりとザ・レジデンツ・サウンドに聞こえるのは不思議だったけれど、翌年からボバックはドローンをメインにソロ活動を活発化させ、ボブことノーラン・クックもデス・メタルのバンドに時間を割くようになる。チャールズ・ボバックことハーディ・ウィンフレッド・フォックス・ジュニアはそして、「医者がさっき薬物を投与した(笑)」とSNSに投稿して脳腫瘍であることを明かし、翌18年に他界。現在はボブとランディ・ローズの2人でザ・レジデンツを名乗り、『Leftovers Again?!』や『A Nickle If Your Dick’s This Big 1971ー1972』など主に未発表音源のアーカイヴをカタログに付け加えている。

 ランディ・ローズが復帰し、ボバックが亡くなるまでの間に3人は自分たちの辿った軌跡を題材にした3本の大掛かりなツアーを行った。『ザ・ランディ、チャック&ボブ3部作(the Randy, Chuck & Bob Trilogy)』と名付けられたこれらのツアーは幽霊と死をテーマにした「Talking Light」(2010ー2011)、愛と性をテーマにした「The Wonder of Weird」(2013)、生と再生と輪廻と臨死体験をテーマにした「Shadowland」(2014ー2016)で、ボバックは体力が続かずに「Shadowland」ツアー中にグループを脱退。『So Long Sam 1945-2006(さよならアメリカ 1945-2006)』は「Talking Light)」ツアー中にキャバレー・ショーという体裁でバークレー美術館で行った「Sam’s Enchanted Evening(アメリカの魅惑的夕べ)」のライヴを記録したもので、2010年に4曲入りシングルとして限定配信されていたものの完全版。コンセプトはアメリカでヒットしたメジャー曲のカヴァー集となり、CD1はヴァイオリン2台とキーボードにアコーディオン、そして、ヴォーカルとパーカションという室内楽編成、CD2はそのリハーサル・デモ(=つまりスタジオ・テイク)を収録。『Meet The Residents』や前述の『Coochie Brake』と同じく基本的にはエレクトロニクスを重用しないザ・レジデンツのアコースティック・サイドである。

 ステージの雰囲気はランディ・ローズに負うところが大きく、とにかく情熱的。畳み掛けられるダミ声のシャウトは80年代にパルコで観たライヴのそのままが蘇る。フィールド録音のフィリップ・パーキンスを正式メンバーに加えて録音された『The American Composer's Series』やエルヴィス・プレスリーを題材にした『The King & Eye』といったコンセプト・アルバムの類いとは異なり、好きな曲を気ままに取り上げたカヴァー大会の様相を呈し、MCも全部拾っているためにアット・ホーム感に満ちている。オーディエンスの反応もとても暖かい。“September Song”や“Mack the Knife”など演劇的な要素のあるミュージシャンならば気合が入るのも当然なクルト・ヴァイルの曲はやはり真骨頂。対照的に『ティファニーで朝食を』の主題歌“Moon River”やボビー・ジェントリー“Ode To Billie Joe”といった映画にちなんだ曲も説得力がある。ルイジアナ州の雰囲気が濃厚に漂うとされる“Ode To Billie Joe”はBサイドに回された曲ながらビルボード1位になった自殺の歌で、10年後に映画化されるまでビリー・ジョー・マッカリスターが自殺する前日に河に何を投げたのかという議論が絶えなかった曲でもある。ザ・レジデンツの音楽的ルーツのひとつなのだろう。

 全体に60年代に対するノスタルジーが強く、ブライアン・イーノやブロンディーもカヴァーしたジョニー・キャッシュ“Ring of Fire”やドアーズからジーザス&メリー・チェインなどのカヴァーで知られるロック・クラシックのボー・ディドリー“Who Do You Love?”といった王道が手堅く取り上げられる。バート・バカラック作は2曲あり、ジーン・ピットニー“True Love Never Runs Smooth”とディオンヌ・ワーウィック“Walk On By”はどれも原曲に恐怖を吹き込み、不安を煽るアレンジが実にザ・レジデンツらしい。これらを聴いているとシクスティーズの能天気さにヨーロッパ流の悲壮感を植えつけていくというのがザ・レジデンツの基本的なアイディアをなしているということがよくわかる。意表を突かれたのはミシェル・ルグラン“The Windmills of Your Mind(風のささやき)”で、これも原曲のセンチメンタルなテイストは取り払われ、不安しかないザ・レジデンツ仕上げ。『池袋ウエストゲートパーク』の着メロでおなじみステッペン・ウルフ“Born to Be Wild”を室内楽にアレンジしたものはペンギン・カフェを思わせるところがあり、ロックからアンビエントへ移行したイーノのミッシング・リンクを聴いているかのよう(イーノが『Commercial Album』に参加していたことも最近になって明かされた)。77年にはライヴで演奏され、『Dot.Com』などにも収録されているローリング・ストーンズ“Paint It Black”も圧巻。これはもうかなり年季が入っていることが窺えて言うことなし。

 ライヴ本編の締めくくりはやはり69年のクィックシルヴァー・メッセンジャーズ“Happy Trails”で、60年代にとらわれているわけではないと言いたいのか(タイトルも『1945-2006』だし)、中盤では郷ひろみ“Goldfinger'99”の元曲であるリッキー・マーティン”Livin’ La Vida Loca”もピック・アップ。それなりによくできているけれど、むしろ70年代以降は見事に空白だということが目立つばかり。これでエミネム“Lose Yourself”でも取り上げていれば現代にも目を配っているバンドに見えたかもしれないけれど、さすがにそこまでのキャパシティはなかった。彼らのモダンさはここが限界だったのかなと思うのはCD2のみに収録されているドナ・サマー“Mac Arthur Park”(78)のカヴァーで、17分を超える組曲を7分弱にまとめてディスコビートを抜いた弦楽中心のホラー・ドローンに仕上げている。これはアンチ・ディスコという意味ではなく、“Mac Arthur Park”からどれだけヨーロッパ的な感性を引き出せるかという試みなのだろう。ザ・レジデンツには“Diskomo”やイビサ・クラシックとなった“Kaw-Liga”といったディスコ・ナンバーがあり、ボバックは脳腫瘍を公表する時に『Freak Show』で声優を務めたスティーヴン・クローマンと結婚していることも公にし、ザ・レジデンツがゲイ・カルチャーと共にあったことも伝えている。“Mac Arthur Park”のドローン風カヴァーは、僕にはドイツのファウストとダブって見える。前々から僕は『Meet The Residents』とファウストの初期衝動は似ていると思っていて、クルト・ヴァイルの演劇的な感性を軸に諧謔性と悲壮感を同居させるためにアメリカからアプローチしたのがザ・レジデンツなら、ヨーロッパのインプロヴィゼーションに諧謔性を塗り込めたファウストが結果的に似たものになったのではないかと。60年代の熱気をエレクトロニクスに変換させることで80年代のオルタナティヴとなったザ・レジデンツに対して、ディスコ~レイヴ・カルチャーがひと段落してようやく90年代末に復活するファウストが共に00年代にそれなりの存在感を示したこともなんとなく符号に感じるところである。

Crack Cloud - ele-king

文:小林拓音

 まもなく来日を控えるクラック・クラウド。いまのインディ・シーンにおいてとても重要なバンドだと思うのでこれを機に紹介しておきたい。
 ぼくが彼らの存在を知ったのは最近のことだけれど、カナダのカルガリーで始動した彼らについて、イギリスのメディアは4年前の2018年から賛辞をもって注目している。2枚のEPを合体した編集盤『Crack Cloud』が世に出たタイミングでもあった。まずは大手『ガーディアン』が「いかにして彼らはパンクを活用し薬物中毒を治療したか」との見出しで、まだ駆け出しのこのカナダのバンドのインタヴューを掲載。翌年には『クワイエタス』がバンドのさらなる背景に迫るインタヴューを敢行し、大きくフィーチャーしている。以下、それらの情報をもとに彼らの来歴をたどっておこう。

 いわゆるフロントマン的なポジションを担うドラマー兼ヴォーカルのザック・チョイは、中国人の父とウェールズ人の母のもとカナダで生を受ける。11歳のとき、父を亡くした悲しみから酒に溺れ、ほかのドラッグにも手を出すようになった。依存症から脱するきっかけになったのは、おなじく父の遺したレコード・コレクションだったという。
 なかでも大きかったのはブライアン・イーノだったようだ。その穏やかさに触れた彼は、イーノの「非音楽家」なるアイディアに惹きつけられる。おそらく、専門的な訓練を受けていなくても音楽はできるという考え方に勇気づけられたのだろう。かくして誕生したのがクラック・クラウドというわけだ。

 メンバーは一応7人ということになっている。けれども表に立つ彼ら以外にも映像作家やデザイナーなど、クラック・クラウドには多数の人間が関わっている。アート表現と日常生活が一体になったその活動は、家であると同時にスタジオでもありヴェニューでもある、アルバータ州カルガリーのスペースではじまり、その後ヴァンクーヴァーのイーストサイド──アナキズムの歴史がある一方、ドラッグや貧困などの問題も根強かった地域──で継続されることになった(Casanova S.氏の情報によれば、そのイーストサイドもジェントリフィケイションによって破壊され、現在メンバーたちはばらばらに暮らしているらしい)。
 このように彼らは──音楽性は異なるが、ゴッドスピード・ユー!ブラック・エンペラーのように──たんなるバンドというよりも、生活をともにする共同体という意味でのコミュニティなのだ。そのあり方は、カネとSNSのつながりだけが人間関係であるかのように見える現代において、じっさいにひととひとが助け合いながら生きていくこと、その可能性を模索するある種の運動だともいえるかもしれない。アナキストたちが自治を獲得しているコペンハーゲンのコミューン、「クリスチャニア」を彼らが訪れていることも、見逃すべきではないポイントだろう。

 なんて部分ばかりを強調すると、なにやら過激な政治集団のように思われるかもしれないが、クラック・クラウドの核にあるのは「薬物依存症からの回復」と「メンタルヘルスのケア」だ。じっさい、クラック・クラウドのまわりには元ドラッグ中毒者だった者たち、あるいは現在その状態にある人びとを助ける仕事に携わっている者たちが集まっている。
 たとえばキーボードのアリ・シャラール。パンジャブ系移民の親を持つ彼は、DVと人種差別を経験し、自殺願望にさいなまれ、チョイ同様ドラッグの深みにはまった過去を持つ。シャラールが「ぼくらはアート学生じゃない」と発言しているように、バンドをやることが生きていくことと同義であるような、ぎりぎりの場所から彼らは音楽を鳴らしているのだ。
 そのことは、ファースト・アルバム『痛みのオリンピック(Pain Olympics)』(2020)のタイトルにもあらわれている。初期の特徴だったギャング・オブ・フォー的ポスト・パンク・サウンドをある程度は引き継ぎつつ、コーラスや電子ノイズの導入などにより音楽性の幅を広げた同作は、大いに称賛を受けることとなった。

 それから2年。チョイの亡き父、すなわちバンド立ち上げのきっかけになった人物のことばからはじまるセカンド・アルバムは、音楽的にさらなる飛躍を遂げている。コーラス、管楽器、鍵盤の三つが重要な役割を担い、ほとんどの曲が起伏に富んだ展開を見せている。アーケイド・ファイアを引き合いに出しているメディアもあるが、初期のシンプルなスタイルからここまでアレンジの幅を広げたことは驚嘆に値するだろう。
 ブラスが特徴的なサード・シングル “Costly Engineered Illusion” にせよ、女性の合唱ときらきらのギター、ラップ寄りの歌がうまい具合に調和する “Please Yourself” にせよ、ドラム・スティックが印象的な表題曲にせよ、とにかく祝祭性にあふれている。ぼくの英語力ではちゃんと歌詞を聴きとれないのが残念だけれど(対訳付きの日本盤を希望)、少なくともサウンドのみにフォーカスするかぎり、このアルバムはポジティヴな感覚にあふれている。きっと、共同生活とともに追求してきた「回復」の結果が本作なのだろう。
 精神的に追いこまれ薬漬けになることは、けっして自己責任に帰せられるような個人の問題ではない。原因は、資本主義をはじめとする社会のほうにある。そこからの脱却の可能性を、コミュニティの実践をとおして垣間見せるクラック・クラウドの音楽は、すさんだ現代を生きるぼくたちにとって大いなるヒントとなるにちがいない。

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文:Casanova S.

 クラック・クラウドは集団である。カナダ、ヴァンクーヴァーの同じ家に暮らし、共同生活を送る中で彼らは音楽を制作し、映像を生みだし、衣装を作り、アートを通し世界と向き合った(ヴィジュアル・アーティストにダンサー、フィルムメーカー、ありとあらゆるクリエイターがクッラク・クラウドの中には存在する)。別働隊、N0V3L、ミリタリー・ジーニアス、ピース・コードをその身に宿し、クラック・クラウドは牙を向く。ギャング・オブ・フォー、あるいはワイヤーのようなヒリヒリとした感触を持った2018年のセルフ・タイトルの編集盤『Crack Cloud』で話題になり、セリーヌのエディ・スリマンのショーの音楽に起用されるなどするなか、彼らの牙はずっとアンダーグラウンドで研がれ続けていた。

 2020年のデビュー・アルバム、『Pain Olympics』はシニカルでダークなアルバムだった。相対する世界への抗い、蔓延するオピオイド依存の危機、エコーチェンバー、社会の腐敗、そのなかでもがく自己。直線的だった『Crack Cloud』からより複雑に音が組み合わされまるでSFのドラマ・シリーズのように世界が語られる。効果音のように響くシンセサイザー、腐敗した世界のなかで生まれた希望を祝福するかのように鳴り響くホーン、SF世界のアート・パンク、それを描いた『Pain Olympics』は紛うことなく傑作だった。

 それから2年がたち状況がだいぶ変わった。『Pain Olympics』が書かれた家はヴァンクーヴァーの再開発による住宅事情によって取り壊され、同じ場所に住んでいたメンバーはそれぞれヴァンクーヴァー、モントリオール、ロサンゼルスに離れて暮らすようになり、プロジェクトの節目ごとに集まるようになった。
 そのなかでパンデミックが起こった。クラック・クラウドのドラム/ヴォーカルであり中心メンバーのザック・チョイはロックダウンの時期を他のメンバーと切り離されて過ごすことになったという。この孤立した時期について彼は同時に解放されたような気分を味わえた時期だったとも語っている。子どもの頃に戻ったような気分だったと。アートとの関係、家族との関係、自分自身との関係、強制的に活動のほとんどを止められたために外的なプレッシャーを感じることもなく、自分自身と深く向き合うことができたというのだ。

 あるいはそれがこの 2nd アルバム『Tough Baby』の出発点だったのかもしれない。このアルバムの温度や色や質感は 1st アルバムとはだいぶ変わった。1st アルバム同様にささくれだってはいるが、世界が色づいたようにカラフルになり、その手に構えられていた武器も下ろされているようなそんな気配が漂う(朝日が昇った後、ピアノ、トランペット、サックス、メロトロン、コーラス・ワーク、それは様々な楽器に彩られた世界だ)。1st アルバムが抗いの物語だとしたら、この 2nd アルバムで描かれる物語は、抗い生き残った後の世界でどう生きるのかということをテーマにしているのではないかというように感じられる。それはザック・チョイの内面に潜るような物語だ。

 最初の曲、壁に囲まれた部屋のなかで響くテープの音声、“Danny's Message” に収められたその声はザック・チョイの父親の声だ。29歳のときに白血病で亡くなったダニー・チョイ、彼の声は告げる。「これから私が伝えることから、みながたくさんのことを学んでくれると願っている」「音楽は怒りを吐き出す最良の方法だ、全てを紙に書いてしまうんだ」。家族に向けて残されたメッセージの間に別の声のカウントが挿入される。テープの前の人間の声、そんなふうにして息子の物語の幕が開く。なめらかになだれ込む “The Politician” のザック・チョイの声は物憂げに優しく響き、ジリジリと進むベースがストーリーのラインを作り上げていく(そこで唄われるのは29歳のザックが生きるパンデミック以降の世界だ)。
 あるいは “Criminal” の記憶の再生のようなサウンド処理のなかでその思い出はもっと直接的に唄われる。「彼はここにいない/俺が9つのとき死が彼を迎えに来たから/それ以来俺の心はひどくシニカルだ」。子どもの頃の思い出と成長するまでの出来事が入り交じり、過去と未来が行き来する。それはまるで物語の途中に挟まれる回想シーンのように曲のなか、アルバムのなかで展開していく。「結局のところ骨格はいつもクローゼットのなかにある」。インタヴューでザックが語ったこの言葉通り、そしてレコードに封入されているザック・チョイのメッセージの通りにこのアルバムは自己を形成してきた過去を受け入れ、向き合うということがテーマになっているのだろう。そうしてそれが癒やしとなり理解となり、やがて希望へと形を変えていくのだ。

 こうしたテーマを扱った作品をザック・チョイ個人の活動ではなくクラック・クラウドという集団でやるということに大きな意味があるのではないかと私は思う。クラック・クラウドの音楽、とりわけアルバムはとても映画的/映像的で、曲をシーンとして捉えているような節がある。サウンド・コラージュを駆使し断片をつなげ、そうやってイメージを物語にしていく。そこで鳴っている音はカメラワークであってセリフであって、音楽ジャンル、さらには媒体の枠を越え展開していく(たとえばその断片はビデオのなかでおこなわれるダンスに、あるいはその世界観に形を変え広がっていく)。個人の体験を元に集団のなかで物語が作られて、つなぎ合わされたイメージの断片に因果関係が生じる。そうやってイメージが共有され自己を離れた客観視された物語ができ上がる。それは他者の物語で、そうしてその物語を通し自らの内面を理解する。それがクラック・クラウドの言う「セラピーとしてアート活動」ということなのではないだろうか。

 あるいは “Please Yourself” のビデオとそのビデオに寄せられたメッセージこそがこのクラック・クラウドの考えを象徴するものなのかもしれない。2nd アルバムのジャケットにも使われているビデオのメッセージでクラック・クラウドは言う。

「子どもの頃、私のベッドルームは祭壇のようでした。壁に貼られたイメージは私がいかにそれらに憧れ、目標としていたかを示しています。このようなポップ・カルチャーの神格化は、たとえそれがでっち上げられたものであっても、自分自身の物語の感覚を強くしてくれました」

 ベッドルームの壁に神格化された過去と未来(それは訪れなかった未来も含まれる)が張り巡らされ、その部屋の周りで映像と現実の世界の間にいる半実体の集団クラック・クラウドが踊り、音楽が奏でられる。それがジャケットに写る彼女の、そしてクラック・クラウドの音楽を求める私たちの周りにあるものだ。不安を抱く心を理解してくれるようなサブ・カルチャーとの連帯、それは誰かの物語で本物ではないが、しかしリアルを感じられる。それこそが心の支えになるものなのだ(だからこそ “Please Yourself” の声が合わさるその瞬間に心が震える)。

 だが同時にクラック・クラウドはそれがメディア・インダストリーをパラドックスに陥らさせているとも言う。

「それは人びとのインスピレーションの源であると同時に、作られた幻想でもあります」

 人生を救うエンジニアード・イリュージョン、そのパラドックスのなかにクラック・クラウドは生き、答えを探す。自分たちは何者であるのか、そして何者でありたいと願っているのか。

「アートとは、癒やしと発見のためのメカニズムです。アートから学び、成長する、私たちの文化ではアートを数値化し、認可し、製造する傾向にあります。しかしその根底にあるものは、人生を探求する形なのです。自分自身をより理解するために、人生の深淵を解き明かす方法を学ぶのです。そしてお互いに理解しあえることを」

 「Tough Baby」と名付けられたこのアルバムはアートを通しクラック・クラウドがいかに生き、そしていかに理解への冒険を進めているのかを示している。不安が意味するもの、恐怖がもたらすもの、物語、音楽、映像を通しそれらを文脈化し、理解していく。理解への欲望、人生への探求、生きるということ、クラック・クラウドの音楽は断片化された世界を繫ぎ、連帯する人間の物語を感じさせてくれるのだ。

 サウス・ロンドンを拠点とするギタリストであり、現在はビート・メイカー/プロデューサーとしても世界中で高い人気を誇る edbl。デビュー・シングルを発表した2019~2021年の作品をまとめた日本独自の編集盤『サウス・ロンドン・サウンズ』と、続く『ブロックウェル・ミックステープ』でここ日本でもブレイク。今年9月には、SANABAGUN. への加入も大きな話題を呼んだ注目のギタリスト、Kazuki Isogai との共作『The edbl × Kazuki Sessions』を。そして10月には、イギリスの新進シティ・ソウル・バンド、Yakul のヴォーカリストであるジェームズ・バークリーをフィーチャーした『edbl & Friend James Berkeley』をリリースと絶好調、勢いが止まらない。そこで今回、アルバム1枚を通しての初の共作者となった Kazuki Isogai と、彼とは同い歳で、お互いに注目する間柄だという Suchmos のギタリスト、TAIKING のふたりに、edbl の魅力について、そして現在の音楽シーンについて、ギタリストの視点から語ってもらった。

1曲目の “Worldwide” と、最後の “Left To Say”。ギターうめぇと思いながら聴いてました。
(TAIKING)

edbl がつくるビートの良さ、おもしろさはどういったところですか?

Kazuki Isogai:サウンドがすごくカラッとしているというか。昔のヒップホップはもう少し重みがあった。edbl のサウンドは、まさにサウス・ロンドンっぽい、カラッとしていて、いい意味でボトム(低音域)が少ない感じ。でも、もの足りなさはなくて、その乾いた軽さがが心地いい。

TAIKING:同じ感想ですね。Kazuki くんとやってる『The edbl × Kazuki Sessions』、すごくいいね。特に1曲目の “Worldwide” と、最後の “Left To Say”。ギターうめぇと思いながら聴いてました。このカラッとした感じは、どうやって出してるんだろう? 自分の作品でも狙ってやってみるんだけど、全然カラッとならないんだよね。

Kazuki Isogai:edbl と話してると、ヒップホップとかR&Bがすごく好きで、やっぱりヒップホップがベースになっているビートではあるんだけど。サンプルパック(注:ドラムスやベースなどの音素材集)を使っても、イコライザーのかけ方がウマいんだと思う。僕がつくったトラックを渡して、戻ってくるときには、全部 edbl のサウンドになってるから。

TAIKING:特にカラッとした音、「デッドなサウンド」はアメリカ発の作品にも感じるけど、同じようにつくれない。難しい。

Kazuki Isogai:でもリヴァーブ(残響音を加え空間的な広がり感を出すエフェクト)はかかってるんだよ。けっこうウェットなんだよね。だからやっぱりサンプルの使い方がウマいんだと思う。まあ生音のレコーディングの話をすると、海外は全然違う。スタジオの天井の高さとか。

edbl がもともとはギタリストであることは、ビート・メイクにどういう影響を与えていると思いますか?

Kazuki Isogai:僕も最近ビートつくるんですけど、「ギタリストが感じるビートの気持ちよさ」っていうものが、共通してあると思っていて。edbl も、頭の中で描いてるビートのイメージがあって、それをそのまま表現してるだけだと思うんです。やっぱり、彼がいるサウス・ロンドンのシーンからの影響が大きいんじゃないかな。

TAIKING:シーンからの影響、それがやっぱり大きいだろうね。

Kazuki Isogai:僕と TAIKING くんも、違うタイプのギタリストだけど、同じようなシーンにいるから、似たような感性になるし。edbl はサウス・ロンドンに住んでて、周りにはトム・ミッシュとかいるわけだから、自然とそのシーンのスタイルが身についてくる。だから僕らがマネしようと思っても、そこにいないから、その場の空気感を知らないから、なかなか難しい。ギタリストって、ロサンゼルスに行ったら、やっぱり少しLAっぽいスタイルになるもんね。

共演するきっかけになった “Nostalgia” って曲があるんですけど。edbl が弾くギターが、ちょっと思いつかないフレーズというか。どうやって弾いてるんだろうって。(Kazuki Isogai)

いま、名前が出たトム・ミッシュが、いまの時代のギター・ヒーローと思えるのですが。

TAIKING:彼はなんか絶妙ですよね。ビート・メイカーでもあるけど、曲がちゃんと「立って」いる。そこが日本人にも聞きやすいのかなと。普通にメロディが素晴らしくて、やっぱり edbl と少し似てる。メロウなんだけどカラッとしてる。ふたりに共通して思うのは、ドラムの、ビートのサウンドの良さなんだよね。

Kazuki Isogai:そうだよね。ビートが良かったり、ドラムの音がいいと、それだけで曲が成り立つ気がしてて。ドラムの音が良くないと、あちこち音を重ねたくなったりとか、ドラムではじまる曲にできないとかあるから。

先ほど出た、ギタリストならではのビート感の話ですけど、他の楽器奏者と話が合わないという場面もありますか?

TAIKING:好き嫌いの話だから、しょうがないという感じではあるけど。僕が気持ちいいのは、カッティングだったり、ペンタトニック(・スケール。ギターの基本となる音階)を弾いているときが多いんですけど、カッティングのときに、スネア・ドラムで締めて欲しいというのはある。

Kazuki Isogai:ポケット(気持ちいいリズムのタイミング)にハマるドラムはいいよね。僕は、めちゃくちゃリズムにストイックだった時期があって、PCで音の波形を見ながら、合わせてギターを弾くというのををやってた。1弦なのか、6弦まで当たった瞬間をジャストとするのか、そんなところまで考えながら。ソウライヴのギタリスト、エリック・クラズノーがライヴでユル~く弾いている曲がかっこよくて、それを波形で分析したりもしてね。そうやって研究してきていまは、リズムが「円」であるとしたら、自分も一緒になって回るんじゃなくて、引いたところからその円を見る感じでリズムを捉えてる。そうすると前ノリでも、後ノリでもいけるっていう。

TAIKING:その感じわかる。リズムに入り込んじゃったらダメで。客感的に捉えてないと、ウマく弾けないところがあるよね。

edbl のビート、リズムの捉え方もおふたりに近いから、彼の音楽を気持ちよく感じるんでしょうね。

Kazuki Isogai:それこそ SANABAGUN. のドラマー、一平に近いかな。彼もヒップホップ・ベースのドラマーなんで、edbl に似ている。やっぱりヒップホップをルーツに持っている人のビートが好きなのかなって。

TAIKING:最近はでも、(ロックの基本となる)8ビートを求められることも増えてきてね。

近年は16ビートの流行りが続いていますが、8ビートを弾く方がいま、難しくなっているということはありますか?

TAIKING:それは、いちギタリストとしての視点なのか、音楽シーンの一員としての視点なのかによって、話し方が変わるなと思ってるんです。ちなみに僕は最近、8ビート派になってきてて。16ビートからはちょっと離れようかなと。

Kazuki Isogai:8ビートってめちゃくちゃ難しいよね。ロックの人がやる8ビートと、僕のような違う畑の人がやる8ビートは全然違う。

TAIKING:それが最近、畑の違うギタリストが交わるようになってきてて、そこがまたおもしろいなって思ってる。

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メロウなんだけどカラッとしてる。(edblとトム・ミッシュの)ふたりに共通して思うのは、ドラムの、ビートのサウンドの良さなんだよね。(TAIKING)

edbl は、ギタリストとしてはどういったタイプですか? リヴァプールの音楽学校でギターを習ったそうですが。

Kazuki Isogai:edbl と共演するきっかけになった “Nostalgia” って曲があるんですけど。edbl が弾くギターが、ちょっと思いつかないフレーズというか。どうやって弾いてるんだろうって。

TAIKING:うんうん、このギター、どうなってんのって感じ。

Kazuki Isogai:日本の音楽学校で「これ、いいよ」と教えられるものと、海外で教えられるものは全然違う。ビートルズなんかをずっと、子どもの頃から聴くわけだから、それは違うよなって。edbl のビートには、UKロックのカラッとした感じもあって。サウンドの方向性といったところで、何かUKロックとも通ずるものはあるかな。

TAIKING:共通点を感じるところ、あるね。

ロックに代わってヒップホップが世界的には音楽シーンの中心となって久しいですが、ヒップホップ以前と以降でギターという楽器はどう変わったと思いますか?

Kazuki Isogai:僕は、15歳まで音楽は聴くけど、楽器はやっていなくて。RIP SLYME とか SOUL'd OUT といったラップが流行っていて聴いていた。でもギターが好きだな、レッド・ツェッペリン好きだなっていう思いもあって。自分のなかでヒップポップと、好きな音楽が結びつかなかったんですよね。

TAIKING:それ、すごくわかる!

Kazuki Isogai:でもその後、音楽の専門学校に行って、ジャズ・ブルースを学んだんですけど、ビッグ・バンドについて学ぶ際の教材として講師の人が聴かせてくれたのがソウライヴだった。ギターのエリック・クラズノーってロックっぽくて、入っていきやすくて。それで彼の、ずっとループに乗っているような感じのギターの存在、かっこよさを味わった。自分がやってたギターと、ヒップホップがちょっとそこで結びついた。

TAIKING:自分も、ギターという楽器と、どんどん新しく出てくるダンス・ミュージック、ヒップホップが結びつかなかったって話、めちゃくちゃわかる。僕はもうバンドやってたけど、高校の友だちとかはみんなDJをやりはじめて。ライヴ・ハウスじゃなくて、「クラブ行こうぜ」だった。同じ音楽なんだけど、ヒップホップには入り込めないなって、境目みたいなものがありましたね。それで僕の場合は、Kazuki くんみたいにリンクするところがないまま来ちゃってるんで。もちろんヒップホップも好きだから聴いてはいたけど。まあ自分のバンドが大きかったかな。

Kazuki Isogai:本当、Suchmos が出てきた瞬間に、日本の音楽シーンはすごく変わったからね。それまでもシーンはあって、僕もアンダーグラウンドでそういうシーンにいたからわかるけど、ただメジャーでやる人たちがいなかった。

Suchmos の曲を聴いていて、TAIKING さんはワンループの上で弾くのが得意だと思っていたので、お話聞いて意外でした。

TAIKING:得意ということはないですね。どっちかというと、コード進行変われ、早く変われ(笑)と思って弾いてますから。いまソロでやってるのはバッキバキにコード変えるし、めちゃくちゃ転調するし。

Kazuki Isogai:TAIKING くんは、つねに TAIKING くんだからいいんだと思う。Suchmos で弾くときも変わらないから、そこがいいんだと思うし、ギタリストはそうあるべきとも思いますね。

ヒップホップ以降は、音色とテンポ、BPMがより重要になっていると思うんです。edbl の音楽はテンポ感も絶妙なのかなと思うのですが。

Kazuki Isogai:速い曲でもBPM100とかですね。僕もロー・ファイ系のビートをつくったりするんですけど、最近はちょっと流行りのテンポが速くなった。ラッパーとやるときは、彼らが得意なBPMを求められることが多くて、93とか。ただビートの気持ちよさって、遅くてもドラムがタイトだったらノレるし、速くてもドラムがルーズだと速く感じなかったり。曲全体のテンションといったものも大きく関わってるんじゃないかな。だからそのときの体調とか雰囲気とかで、つくるものが変わるというか。つくる側からすると、そう思うんですけど。

TAIKING:個人的には、ユルいテンポはちょっと飽きたところがある。それで速くしようと、自分の曲ではまずはBPMからいじってみるんだけど、いい感じのノリを出すのは難しい。8ビートで 、BPM130とか125でいい感じの曲をつくりたいと思ったりするんだけどね。ウーター・ヘメルやベニー・シングスとか、フワフワ系の8ビートを得意にしてるオランダの人たちがいるんだけど、彼らの音楽とかいいなと思ったり。あと、ああいう曲つくりたいなと思うんだけど全然できないのが、ドゥービー・ブラザーズの “What A Fool Believes”。歌メロがすごいなって。それで言うと、日本ではやっぱり藤井風くんがすごい。いまライヴで一緒にやってるんだけど。

Kazuki Isogai:彼はバーでピアノ弾いたりもしていたんでしょ?

TAIKING:家族がね、ジャズ喫茶を経営していて。ピアノと、サックスもバキバキで。それでステージでは、お客さんからのリクエストを、「いま、YouTube で調べてやります」とか言って、すぐに弾いて歌ったりとかね。風くんを見ていると、ギターと鍵盤の違いを感じますね。僕はギターを弾くとき、フレットや弦を目で見て、形で見るタイプで。でも鍵盤は「見て弾く」というのがないから、自由度も高いし、ギターのように「小指が届かないからあの音は出せない」みたいなことがない。だからハーモニーのセンスみたいなものは違うはずだなって。

“What A Fool Believes” も、マイケル・マクドナルドが鍵盤でつくるから生まれるメロディだと、よく言われますね。

TAIKING:そうだと思います。転調の仕方も含めて。そういった、転調のセンスとか、風くんもすごく似てる。

Kazuki Isogai:ギタリストって、音楽が好きでギターはじめたんじゃなくて、ギターがかっこいいから手にしたっていう人も多くて。音感もなければコードもわからない状態ではじめて。鍵盤の人は子どものころからやっている方もいて、音楽の捉え方がそもそも違うんだよね。

僕が意識しているのは、楽曲の顔にギターを持ってきたいっていうこと。僕の弾くリフが楽曲の顔になって欲しいなって、そこは意識してプレイしてる。(Kazuki Isogai)

先日、サブスクなどで「ギター・ソロがはじまると曲を代えられる」という話題が盛り上がっていました。ただ僕は、エリック・クラプトンやエディ・ヴァン・ヘイレンといった往年のギター・ヒーローの時代とは違う形で、近年はむしろギターのサウンドが求められていると感じていて。edbl の音楽が人気なのも、ギターの用い方がウマいことが要因のひとつだと思うのですが、そのあたり、どのように捉えていますか。

TAIKING:ギター・ソロ云々の話はあまり気にしてないですね。ギター・ソロだけじゃなくて、間奏が敬遠されているのかなって。

Kazuki Isogai:そうそう。単純に曲の聴き方が変わってきてるだけで。そのアーティストが好きというリスナーじゃないと、間奏に来たら次の曲にとばされるよねって。

TAIKING:ギターという言葉がトレンドに乗ったのはいいことだと思います。ありがたいですけどね。

Kazuki Isogai:まあ本当に、昔と比べて、ギターは楽曲の顔になるものではなくなっているよね。だから僕が意識しているのは、楽曲の顔にギターを持ってきたいっていうこと。僕の弾くリフが楽曲の顔になって欲しいなって、そこは意識してプレイしてる。

わかりやすいギター・ソロが主流じゃないだけで、ギターのトーン(音色など)の違いを楽しめるような人は昔より増えていそうですよね。ジョン・メイヤーがあれだけ人気があるっていうのは、リスナーのギターの聴き方も進化しているんじゃないかと思うんですけど。

TAIKING:ジョン・メイヤーについて言うと、独自の、自分のトーンをしっかり持っているっていうのと、結局ほとんどがペンタトニックで。世界3大ギタリストとかいろいろいうけど、みんなペンタトニックだなって。だから、ペンタトニック・スケールでしっかり「自分の歌」が歌えるかっていうこと。それで、しっかり自分のトーンと、自分のキャラクターをわかりやすく出せていることが大事なのかなと思います。

カッティング派は不利ですね。

TAIKING:だからコリー・ウォン(ヴルフペックのメンバーでもある、新時代のカッティング・ギター・ヒーロー)が3大ギタリストに入ってきたら嬉しいよね。その枠、あるんだって。

Kazuki Isogai:コリー・ウォンはやっぱり衝撃だったと思うよ。ナイル・ロジャーズに代表される、シャキッとしたカッティングの究極版みたいで。

TAIKING:キャラクターもいいよね。ちゃんとセルフ・プロデュースできていて、見せ方もウマい。

Kazuki Isogai:ジョン・メイヤーの話に戻ると、彼は自分で歌うから、ギターの配置とかも絶妙なんですよ。TAIKING くんにも感じるところなんだけど。曲をトータルで、歌の隙間とか考えてギターを鳴らしているから。

TAIKING:クラプトンとか、Char さんもそうかな。

Kazuki Isogai:そうだと思う。だから僕、最近は歌詞をちゃんと理解して、ギター弾くようにしてる。それによって自分の弾くものが、けっこう変わってくるからね。

edbl も実は歌うんですよね。なるほど、自ら歌うギタリストの特徴についても、よくわかりました。今日はおふたり、ありがとうございました。

interview with Special Interest - ele-king

 パンクは何度も死んで何度も生き返っている、ということはパンクは死なないということか、スペシャル・インタレストはその最新版のひとつ。ニューオリンズのこのパンク集団は、なんらかの理由でギリギリのところを生きている疎外者たちのために、いま、パンクにレイヴを混ぜ合わせて未来に向かっている。

 文化的な文脈において彼らをマッピングするなら、以下のようになるだろう。1970年代後半の、アメリカ西海岸のパンク・ロックのそのもっとも初期形態のザ・スクリーマーズには2人のゲイが、彼らの影響下に生まれたデッド・ケネディーズには黒人が、そしてザ・ジャームスにはゲイと女がいたことが象徴的なように、そこは人種的にもジェンダー的にもマイノリティーの坩堝だった。ことにバンド内におけるこうしたミクスチャーは西海岸の初期パンクの特異な点で、未来的な特徴だった。クィア・パンクとブラック・パンクが共存するスペシャル・インタレストは、その良き継承者である。
 そう考えると、70年代の西海岸のパンクと併走するカタチで、NYにおいて人種的にもジェンダー的にもマイノリティーのユートピーとして成り立っていたアンダーグラウンド・クラブ・カルチャーがパンクと結託するのも時間の問題だったと言える。そもそもパンクのライヴの、そこにいる誰もが好き勝手に踊るというところもレイヴっぽかった。

 スペシャル・インタレストの3枚目のアルバム『Endure』は楽曲も多彩だが、曲のテーマもいろいろで、えん罪で刑務所に投獄された黒人革命家についての曲があるかと思えば「午前6時にクラブを出て行く女の子たちへのラヴ・ソング」もあって、また別の曲ではアメリカなんかくそ食らえと叫んでいる。猛烈な勢いをもって現代のパンク・バンドは逆境を生きている(Endureしている)人たちを励ましている。ジョン・サヴェージは、パンクとは、marginal(欄外/隅っこ/ギリギリ)を生きる勇敢な人たちのためにあると言った。素晴らしいことに、いまここに真性のパンクがある。注目して欲しい。


メンバー:アリ・ログアウト(Alli Logout)、マリア・エレーナ(Maria Elena)、ネイサン・カッシアーニ(Nathan Cassiani)、ルース・マシェッリ(Ruth Mascelli)

日本のみんなには、曲を聴いて、日本ではどんなことが起こっているのかを考えてみてほしい。自分たちの周りにいる人びとが何と戦っているのか、私たちはどのようにお互いを大切にすることができるかをね。

この度は、取材を受けてくれてありがとうございます。『The Passion Of』から聴いていますが、スペシャル・インタレストのバックボーン、コンセプトにとても興味があります

アリ:今日はアメリカでのショーの初日で、いまみんなでショーの前にカフェでコーヒーを飲んでるところなんだ。だから、みんなで一緒に質問に答えるね。

スペシャル・インタレストの原型は、マリアさんとアリさんがニューオリンズに移住し、最初は2人ではじめたそうですね。で、ルースさんとネイサンさんと出会った。何を目的として4人組のバンドとして始動したのかを教えてください。

アリ:そう。最初は私とマリアの2人で、ギターとドラムマシンとパワードリルからはじまった。テキサスではじまったんだけど、ニューオリンズのフェスに出るために2人で曲を作るようになったことがそもそもの出発点だね。で、テキサスからニューオリンズに引っ越したときに、マリアが2人のイタリア人の友だちを集めてくれたというわけ(笑)。ルースとネイサンは私たちよりもずっと前からニューオリンズに住んでいて、彼らとはニューオリンズに引っ越してきてから出会った。

ルース:ぼくは、以前マリアがいたバンドの大ファンで、彼女らのためにTシャツをデザインしたことがあって、マリアとはそれをきっかけに知り合った。

マリア:私はネイサンのバンドの大ファンだったから、彼らのショーをテキサスでブッキングしたりしていた。じつは私がルイスとネイサンに声をかけたのは、ザ・スクリーマーズ(**)みたいなバンドをやりたかったからなんだけど、でも結果的には、スクリーマーズみたいなバンドとはほど遠いバンドになってしまった(笑)。

なぜニューオーリンズに移住したのでしょう? 

アリ:さっき言ったマリアと一緒にフェスで演奏するためにニューオリンズに行ったんだけど、そこでたくさんのクールなクィアの人びとに出会ったんだよ。もうひとつの理由は、ニューオリンズのオーサ・アトーっていう人が作っていたジンの大ファンだったから。『Shotgun Seamstress』という黒人を取り上げたジンなんだけど、それを読んだとき、すごくエキサイティングな気持ちになって、この街だったら私らしくいられるなって思った。

バンド誕生の背後にはいろんな思いがあったと思いますが、そのなかのひとつに憤怒があったとしたら、それは何に対しての憤怒だったのでしょうか?

ルース:なにか特別な憤怒があったというより、もっといろいろな感情があった。

マリア:むしろ物事のあり方について意見を持たずに生活することのほうが、すごく難しいと思うんだよね。それはつまり、物事のあり方について語らないアートを作ることのほうが難しいということでもある。だから、アートを作っている限り、自分が思っていることが表現されるのは、ある意味避けられないことなんだよ。それが憤怒かもしれないし、ほかの何かかもしれない。

アリ:私自身は、計画的に音楽を作ることはあまりない。自分の周りではいろいろなことが起きていて、自分がそれに対していま何を思うかが自然に出てくる。サウンドや歌詞は、それが作られる時間や場所で変わってくるんだ。

マリア:面白いことに、私たちはインタヴューで、「なぜ歌詞が政治的なんですか?」って訊かれることはあっても、「どうして政治的じゃないんですか?」って訊かれることはないんだよね。歌は常に欲望によって書かれているものだっていう仮定は、どうして成立してるんだろう。そして、その欲望がセックスや愛についてのことだけに限られているっていうのも、考えてみたらおかしな話だよね。

そうですよね、音楽には、もっと多様なトピックはあるだろうと。ちなみにスペシャル・インタレスト結成前から、すでにみんな音楽活動をしていた?

ルース:ぼく以外は、みんなバンドをやっていたよね。

ネイサン:ぼくはニューオリンズで、Mystic InaneとPastyというふたうつのバンドで演奏していた。その活動を通じてアリとマリアとルースに出会った。

マリア:ネイサンのバンドって、めちゃくちゃかっこよかったんだよ。ネイサンが入ってたバンドは、お遊びじゃなくて本物のバンドだった(笑)。

アメリカにおいて、クィア・パンクやブラック・パンクのシーンというのは、いまどのようなカタチで発展しているのでしょうか? 

アリ:局所的に発展してると思う。

マリア:アメリカってすごく大きいから、他の国々に比べるとシーンが地区で分かれているんだよね。それって過去のアンダーグラウンドのアートの世界もそうだったと思う。

ルース:前よりも、そういったシーンにアクセスしやすくなってきているというのもあるんじゃないかな。インターネットもあるし。

アリ:マリアが言った通り、アメリカってすごく大きいから、シーンが州や街で分かれていると思う。でもここ10年で、アメリカのアンダーグラウンドのクィアの音楽シーンではすごく面白いことが起こっている。とくにニューヨークはそうだよ。ハウス・オブ・ラドーシャとか、ジュリアナ・ハクスタブルとか、いろんなクールなアーティストが出てきてるし。正直カリフォルニアはわからないけど。少なくとも、ここ10年では私が面白いと感じた音楽はカリフォルニアにはないように思う。でも、ニューオリンズにも本当に美しくて奇妙なアート・パンク・シーンが存在しているし、そのなかでスペシャル・インタレストが成長できたのもシーンの広がりがあったからこそなんだ。ここ数年のアメリカのアンダーグラウンド・シーンはかなりすごいよ。さまざまな地域でシフトして、どんどん広がっている。

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面白いことに、私たちはインタヴューで、「なぜ歌詞が政治的なんですか?」って訊かれることはあっても、「どうして政治的じゃないんですか?」って訊かれることはないんだよね。

音楽面でとくに参照にしたバンドや作品はありますか?

ルース:ぼくたちは、本当にたくさんの種類の音楽に影響を受けているんだ。それをぶつけたり、混ぜ合わせてサウンドを作っているから、たくさんいすぎて誰から答えたらいいのかわからない。何か面白いものを作っているよういう点で影響を受けているのは誰か挙げるとすれば、ポーラ・テンプルかな。彼女のプロダクションは参考にしてる。あとは、アジーリア・バンクスのファースト・アルバム。“Yung Rapunxel”のドラムサウンドなんかはすごくカッコイイと思うから。それ以外だと、外でたまたま聴いて、ずっと頭に残っているようなサウンドからインスピレーションをもらったりもするよ。

アリさんは、 アサタ・シャクール(**)の自伝を読んで曲を書くようになったとある取材で話しています。過激なテロリストであった彼女の何があなたの情熱に火を付けたのでしょうか?

アリ:歌詞を書いていた最初の頃に読んでいたのがその本だった。私が(精神を病んで)病院に入院していた時期だったんだけど、本のなかには彼女が病院(
女性矯正施設)で警察から苦しめられていたストーリーが書いてある。自分が同じ空間にいたから、その部分にとくに心を動かされたんだよね。彼女の人生のストーリーは、すごく大きなインスピレーションになった。

デビュー・アルバム『Spiraling』の冒頭の“Young, Gifted, Black, In Leather”は、Quietusのインタヴューにおいて、アリさんのなかの「ブラックネスとクィアネスが交差する唯一の瞬間」だと説明されています。パンクやグラムに多大な影響を受けたスペシャル・インタレストの音楽面にテクノやハウスのようなダンス・ミュージックを取り入れた理由も、そこに「ブラックネスとクィアネスが交差する瞬間」があるからということも大きいのでしょうか? 

アリ:あえて意識したわけではなかったけど、自分たちがいままで聴いてきた音楽、演奏してきた音楽がそういった音楽だった。だから、自分たちの音楽がよりダンサブルになるのは時間の問題だったんだと思う。私たちのサウンドは、ドラムマシンや使う楽器を変化させることで、どんどんスケールを広げているし。それに、あらゆるジャンルの音楽はブラック・ミュージックから派生し、発展している。そういうものに影響されているわけだから、クィア・ミュージックのなかにもその要素があると思う。
 でも、自分たちがブラックネスとクィアネスが交差する瞬間のようなサウンドを作るということを目標に真っ直ぐ進んでいるとは思えない。私にとっては、自分たちの音楽はまだまだ変化している途中の段階にいるように感じるし、まだぶらついているように感じるんだよね。これからもずっと今回のようなサウンドを作り続けていくのかはわからないな。

いまの質問と重なるかもしれませんが、『Endure』は、1曲目の“Cherry Blue Intention”、それに続く“(Herman's) House”から、じつにパワフルなダンス・サウンドが続きます。そして、3曲目にはパンキッシュな“Foul”。この流れはバンドの真骨頂に思いましたが、あなた方からみて、パンクとダンス・ミュージックの共通点は何なんでしょうか? 

ルース:音楽の歴史のなかで、レイヴやテクノやハウス・ミュージックもアンダーグラウンド・ミュージックだった。そして、人びとはそういった音楽を使って自分たちのシーンを作り上げてきた。パンクもダンス・ミュージックも、みんなで楽しみを共有する音楽であるというところが共通点だと思う。サウンドを聴くことももちろん楽しいけれど、ショーの現場で、複数の人たちが一緒にその音楽を経験するということが、どちらのジャンルの音楽にとってもいちばんの醍醐味なんじゃないかな。みんなで音楽を楽しみながら、その場でエナジーが生まれることは、共通点のひとつだと思うね。

先行で発表された“Midnight Legend”も、とても良い曲で、音楽的にはスペシャル・インタレストの新境地だと思いました。攻撃性だけに頼るのではなく、ハウシーで、ポップな回路を見せたと思いますが、ミッキー・ブランコをフィーチャーしてのこうした新しい試みは、スペシャル・インタレストにとってどのような意味があってのことなのでしょうか?

アリ:その曲は、すごく自然に生まれた。私は、あの作品はハウシーでポップというよりは、よりシネマティックなサウンドに仕上がったと思う。“Midnight Legend”を聴いて新境地だと思うのはまだまだ早いよ(笑)。私たちは、次のシングルを聴いてみんなを驚かせるのが楽しみでしょうがないんだよね(笑)。次に来るのは“Herman’s House”なんだけど、あれを聴いたら、スペシャル・インタレストはいったいどこに進もうとしているんだ!?ってさらに混乱すると思う(笑)。でも、どの変化も計算したわけじゃなくて、すべて自然に起こったことなんだよ。今回のアルバムは、そうやって出来上がったたくさんの種類のサウンドが詰まってる。そのひとつとして、このポップっぽい曲をまず人びとに聴かせるのは、みんながびっくりして面白くなるだろうなって思ったんだよね(笑)。新しいように感じるけど、いろいろな要素が混ざって音楽ができてるっていう点では、じつはすごく私たちらしいんだ。

ルース:それは本当に自然の流れで、ぼくたち自身、10曲も似たような曲を連続で聴きたくはない(笑)。だから、ヴァラエティ豊富なサウンドが出来上がっていったんだと思う。

Endureって、じつは未来に向かって突き進んでいることを意味していると思うんだよね。何かに向かう前向きな姿勢。

私たち日本人にはリリックがわからないのが歯がゆいのですが、今作の歌詞に込められたメッセージで、とくにこれだけは日本のリスナーに知ってほしいという言葉(ないしはテーマやコンセプトなど)があれば教えてください。

アリ:すごくディープな質問だね。答えるのが難しい。スペシャル・インタレストはアメリカ人であることについて、すごくユニークでありながらもリアルな視点を持っているバンドだと思うんだよね。アメリカのなかでクィアである自分たち、そして黒人である自分の視点を持っている。私たちが互いに求めることができるのは、耳を傾け、自分の状況を理解することだと思うんだ。私たちは、みんな苦労をたくさん経験しているけれど、その苦労の仕方は人それぞれ違うし、持っている能力だってみんな違うから。だから、お互いのストーリーを聞いて、みんながそれを聞き合って、世のなかどこでもいいことばかりじゃないんだということを理解し合える。
 日本のみんなには、曲を聴いて、日本ではどんなことが起こっているのかを考えてみてほしい。自分たちの周りにいる人びとが何と戦っているのか、私たちはどのようにお互いを大切にすることができるかをね。『Endure』は、いろいろな悲しみを理解し、それを表現しているアルバムだよ。日本のみんなには、アルバムを聴くことで日本のストリートで起こっていることを知ろうとし、それを理解し、それに共感してもらえたら嬉しいな。

アルバムは後半、“My Displeasure”〜“Impuls Control” 〜“Concerning Peace”と、非常にハードに展開します。この構成にはどんな意図があるのでしょうか?

マリア:このアルバムはパンデミックのあいだに書かれたから、その期間の経験や状態がそのまま形になっているんだ。深呼吸をするような瞬間や、深い喜びを感じる瞬間、じっと耐える瞬間。そういった経験が、アルバムのなかで展開しているんだよ。

なぜ「Endure=不快さや困難を耐える/持ちこたえる」という言葉をタイトルにしたのでしょうか?

アリ:endureという言葉には、文字通りすべてが含まれていると思う。私たちは自分の感情を感じなければならないし、それを乗り越えていかなければならないし、そこから成長していかなければならない。endureって、じつは未来に向かって突き進んでいることを意味していると思うんだよね。何かに向かう前向きな姿勢。

ネイサン:じつはぼくたちは、ボツにしたけど“Endure”というタイトルの曲も作っていたし、endureって言葉は“Herman’s House”(***)にも出てくる。

ルース:バンドが成長を続けるって意味にも感じられるし、ぼくはendureって言葉が好きなんだよね。この言葉からは耐えるという意味だけじゃなくて、進化の可能性を感じる。

とくに尊敬しているハウスやテクノのDJ/プロデューサーを教えてください。

アリ:私たち、これからジェフ・ミルズと同じフェスに出る予定なんだけど、それが楽しみでしょうがないんだ。それが本当に起ころうとしているなんて信じられない。

ルース:ジェフ・ミルズは最高。ジェフはもちろんだし、デトロイト・テクノって本当に刺激的だよね。DIY精神が感じられるし、自分の目の前で起こっていることに向き合って、未来を見ている感じ。

アリ:ドレクシアもそのひとり。あと、私たち全員が大ファンなのはポーラ・テンプル。それから、グリーン・ヴェルヴェット。まだまだたくさんいるけど、いすぎていまは答えられないな。

質問は以上です。どうも、ありがとうございました!

アリ:ありがとう。日本には本当に行ってみたいから、来年行けますように。

(*)ザ・スクリーマーズ(The Screamers)は、パンク前夜の1975年にLAに登場したプレ・パンク・バンド。ギターなしの、シンセサイザーとドラムによるテクノ・パンクの先駆者で、バンドの2人の主要メンバーはゲイだった。

(**)アサタ・シャクール(Assata Shakur)は、60年代のブラック・パワー・ムーヴメントにおいて、米国政府との武力闘争を辞さない黒人解放軍(BLA)の元メンバーで、銀行強盗や市街の銃撃戦によってFBIの最重要指名手配テロリストのリストに載った最初の女性であり、トゥパック ・シャクールの義理の叔母でもある。

(***)“Herman’s House”は、ルイジアナ州立刑務所に41年間独房で監禁されたアンゴラ スリーとして知られる、黒人革命家の一人、ハーマン・ウォレスへの頌歌。

Born Under A Rhyming Planet - ele-king

 なんというか今夏はコレばかり。デムダイク・ステアのふたりが率いるレーベル〈DDS〉よりリリースされた、1990年代の知られざるテクノ・アーティストのすばらしい未発表音源集。ボーン・アンダー・ア・ライミング・プラネットはシカゴ出身のジェイミー・ホッジのプロジェクト。1990年代中頃、当時のトップ・レーベルであるリッチー・ホウティンの〈PLUS 8〉からリリースしていたとはいえ、この名義自体も3枚ほどのシングルをリリースしているだけで、決して、その名前だけでこのようなアンソロジーが組まれるタイプのアーティストでもなく……やはり本作は〈DDS〉の賛美眼による、すばらしい発掘仕事としても評価すべきではないでしょうか。

 なかなかおもしろいキャリアを持つ人で、〈DDS〉の公式資料とも言うべき Boomkat の作品紹介ページによれば、シカゴのジャズ・シーンにそのルーツを持つアーティスト。デヴィッド・グラブスとバンディ・K・ブラウンと懇意になり、ガスター・デル・ソルのファースト・レコーディング時にも居合わせたという人物(一時期〈ヘフティ〉傘下にレア・グルーヴ系の発掘レーベル〈Aestuarium〉をやっていたり)。

 その傍らで〈PLUS 8〉の1991年のコンピ『From Our Minds To Yours Vol.1』を友人に聴かされテクノに開眼、シカゴのレイヴ・シーンに通い詰め、自身でも楽曲制作を開始、そして母親の車で東海岸の大学見学へと赴いた際に、直接リッチーにデモを渡し、上記のリリースに至ったのだという(当時17歳)。ボーン・アンダー・ア・ライミング・プラネットの当時のリリースは、その後のハーバート作品のようにミニマル・ハウスの出現を予期させる楽曲があったり、本作にも通じるIDM作があったりと、本作の視座から聴き直すと驚く作品ではないでしょうか。その後はドイツへとおもむき、ムーヴ・Dことデヴィッド・モウファン周辺と意気投合。こうしてジャズやテクノを経た彼は、当時のキャリアを昇華したようなプロジェクト、コンジョイント(Conjoint)を、デヴィッドおよびヨナス・グロッスマン(デヴィッドとともにディープ・スペース・ネットワークとして活躍するジャーマン・テクノ・シーンのベテラン)、さらにはふたりのジャズ・ミュージシャンと結成します。いわゆるドイツのエレクトロニックなフューチャー・ジャズと呼ばれたシーンの先鞭をつけるように1997年にアルバムをリリース。そしておそらく本作のきっかけになったであろうコンジョイントのセカンド『Earprints』を2000年にリリースします。1990年代後半、ドイツのいわゆるフューチャー・ジャズ~ラウンジーなダウンテンポ、例えばトゥ・ロココ・ロットあたりのサウンドから、2000年代に入ったヤン・イェリネックのようなチルなグリッチ・ダウンテンポの中間にありつつ、どこかトータス『TNT』への回答とも言えそうなサウンドの『Earprints』。これが2018年に同じく〈DDS〉からリリースされていて、本作のリリースに繋がったのではないでしょうか。またデヴィッドとはよりディープ・ハウス、ダウンテンポに寄った、Studio Pankow 名義でも2005年に『Linienbusse』(今回恥ずかしながらはじめて聴いたのですがこちらも名盤)をリリースしています。

 そして本作は上記の〈PLUS 8〉からドイツ・コネクションへの移行時期の作品(いくつかの曲は〈PLUS 8〉からリリースされる話もあったらしい)とのことで、基本的にDAW以前のアナログ機材で制作された楽曲が中心とのこと。当時のマテリアルから編まれた作品ですが、ある意味で同名義での初のアルバムとも言えるでしょう。こうした流れで整理をすると、本作は、1990年代中頃のデトロイト・フォロワーらによるリスニング・テクノ──アンビエント・テクノを経て、やがてはIDMと呼ばれるもの──や、その後グリッチ系の作品へと展開する直前の、エレクトロニックなダウンテンポ作品(ブレイクビーツ系ともまた別の、シンプルな電子音が主体のもの)と言えるのではないでしょうか。
 〈DDS〉のふたりによってエデットを施された、円環的な “Intro” と “Outro” 以外はほぼ当時のマテリアルを使用しているということで、驚愕の完成度というか、シンプルな電子音の滋味がじんわりと広がり、何度でも聴ける作品になっています。イントロから、Studio Pankow と同じ座組で作られたダウンテンポ “Siemansdamm” を経て、ディープ・ハウス路線の “Handley”、IDMなダウンテンポ “Hyperreal” “Skyway”、またはエクスペリメンタルなビートもの “Intermission” “Traffic” あたりに躊躇ですが、そのダブ処理感も彼の作品の魅力ではないでしょうか。このあたりはトゥー・ローン・スウォーズメン初期のハウス、またデトロイト・エスカレーター・カンパニーなどの作品も想起させる感覚もありつつ、また前述の初期のシングルにも通じるミニマル・ハウスな “Avenue” と、“Menthol” や “Fete” あたりは、上記のラウンジーなダウンテンポ路線(この辺はちょいとハーバート/ドクター・ロキットを彷彿とさせますね)、さらには圧巻のドローン・サウンドを聴かせる “Interstate” ではまたそれぞれ別の表情をみせていて、その才覚の振れ幅に驚かされるばかりです。シンプルかつ抑制されたクリアなエレクトロニック・サウンド、ダブ処理、ときに見せるメランコリックなサウンドは、わりと作品全体に通底していて、やはりそこに彼のサウンドに対する美学が現れているのではないでしょうか。

 曲の長さから、恐らく楽曲として完成させるというよりもスケッチの段階で録りためていた楽曲もありそうですが、やはり本作はジェイミーの作品としての品質はもちろん、〈DDS〉の発掘師としての卓越した能力も感じさせる作品です。今春リリースの、フエアコ・Sの『Plonk』あたりとも共振しそうな、時代を超えたスタイルを持っている感覚もあり、そのあたりも含めて、出るべくしていまここにリリースされた作品と思わざるを得ない、そんなすばらしい作品ではないでしょうか。

interview with Bibio - ele-king

 はじめにビビオの10枚目のアルバムが『BIB10』であることを知ったときはその飾り気のなさに少し笑ってしまったが、しかしこれは、堂々としたセルフ・タイトルということでもある。10枚目にしてたどり着いた、ビビオ以外のなにものでもないもの。20年足らずの間にコツコツと10枚もアルバムを作りながら音楽性を拡張してきたこと、ビビオの揺るがない個性を確立したこと、その両方に対する誇りが伝わるタイトルだ。
 一聴して『BIB10』は、ヴァイオリンの演奏を学んだことによってトラッドでフォーキーな路線だった前作『Ribbons』~EP「Sleeping on the Wing」から踵を返すように、70~80年代のブラック・ミュージック──ヴィンテージ的なファンク、ソウル、ディスコからの影響が色濃いアルバムに思える。以下のインタヴューのスティーヴン・ウィルキンソン自身の言葉に頼ると、夜のアルバムだ。ジャケットの妖艶なサテンのギターが示しているように、シンセやエレキによるエレクトロニックでセクシーなサウンドとともに、ファルセット・ヴォイスで歌いまくっている。歌うこと自体を遠慮していたようだった初期を思うとずいぶんな変化だし、家でのリラックスした時間に寄り添うことに長けたビビオの音楽のこれまでの傾向を考えると、ファンキーでグリッターなディスコ・チューン “S.O.L.” でのダンスフロアへの祝福、その思い切りのよさには驚き気持ちよくなってしまう。それに、これまででもっともプリンスへの敬愛がストレートに炸裂したアルバムでもある。煌びやかで、官能的なのだ。
 ただ、『Ribbons』にソウルの要素が入っていたように、『BIB10』にもヴァイオリンの演奏を生かしたトラッドなムードもあれば(“Rain and Shine”)、アルバム後半、ビビオが得意とするアコギの弾き語りを骨格としたメロウなフォーク・ソングもある(“Phonograph”)。このアルバムで言えば、(歌詞というよりサウンドが)夜になってダンスフロアに向かうところからはじまって次第に朝が訪れるようなストーリーになっているが、様々な音楽が無理なく有機的に混ざり合っているのはこれまでのアルバムと同様だ。

 ビビオは10枚目のアルバムを自ら祝いたいと話しているが、長くビビオの音楽を聴き、その変遷を追ってきたリスナーからしても祝福ムードのある作品だ。わたしたちは彼が地道にプロデューサー、プレイヤー、ソングライター、そしてシンガーとしての幅を広げてきたのを知っているし、何よりも、どんなスタイルでもどこかノスタルジックな温かさを醸すその音楽に親しみを覚えてきた。初期に強く影響を受けていたボーズ・オブ・カナダのノスタルジーがそこはかとなく不気味さを滲ませているのに対し、ビビオのそれは素朴で優しい。
 せっかくの機会なので、『BIB10』の話だけでなく、本人にこれまでのキャリアを少し振り返ってもらった。ここでは新しいビビオと懐かしいビビオが溶け合っているから。

『Fi』と『Hand Cranked』に関しては、機材があまりないという「制限」がもとになって生まれたテクニックがたくさんあったし、それがあのローファイの美学を生んだんだよね。

音楽メディア〈ele-king〉です。あなたの音楽を長く聴いてきた読者が多いので、今回は10作目となる新作『BIB10』を起点としつつ、はじめにこれまでのディスコグラフィについても聞かせてください。あなたは2015年に『Fi』(オリジナル・リリース2005年)を、2021年に『Hand Cranked』(オリジナル・リリース2006年)をリイシューしていますが、こうした初期の作品を振り返ることは、近年の活動に影響を与えることはありましたか。

スティーヴン・ウィルキンソン(以下SW):どのようにかを言葉で説明するのは難しいけど、影響を受けることはときどきある。そのアルバムを作ったときの考え方や姿勢に影響を受けるんだ。今回のアルバムはそこまで影響は受けていないけど、『Ribbons』(2019年)は『Fi』のアイディアやテクニックみたいなものを受け継いでいると思う。『Fi』で使ったギアを、実際に使ったりもしたからね。

では、『BIB10』のインスピレーションは逆に何だと思いますか? 何から影響を受けているのでしょうか?

SW:それは、僕にとってはすごく面白い質問なんだ。なぜなら、何を「インスピレーション」と呼ぶのか、そしてそれが作っている作品にどう機能するのかというのを、僕自身、まだ学んでいる途中だから。アイディアっていうのは降りてくるし、それが何かははっきりしているんだけど、そのアイディアがなぜ出てきたのか、それを実らせた種が何だったのかは、本当に小さくてわからなかったりする。でもたとえば、『Fi』と『Hand Cranked』に関しては、機材があまりないという「制限」がもとになって生まれたテクニックがたくさんあったし、それがあのローファイの美学を生んだんだよね。そして、そこで学んだことは、いまでも生かされている。ギターのレイヤーを作ることはそのひとつ。いま、そのローファイの美学は前よりも洗練されているけど、いまだにあのときに戻ろうとするときもあるんだ。

〈Warp〉からの初リリースとなった『Ambivalence Avenue』(2009年)はあなたのキャリアにおいても重要な作品であり、『BIB10』においても『Ambivalence Avenue』でのエレクトロニックとアコースティックが両立していたのを意識していたとのことですが、いまから振り返って、あのアルバムのどんな点が秀でていると感じますか?

SW:あのアルバムを振り返ると、自分が思い切ったことをやったときを思い出す。とくにプロダクション。ローファイでフォークっぽいサウンドから、あのサウンドになったのは、僕にとっては大きな一歩だったんだ。そして、あのジャンルの幅広さも褒めていい部分だと思う。あのときはたくさんのことを一度にやっていて、結果、僕はそれをすべてあのアルバム一枚に落としこんだんだ。そして、それをみんなが気に入ってくれたから、自分のスタイルを変えてもいいんだという自信がついたものあのアルバムだったね。ローファイやフォークだけじゃなく、いろんなサウンドにチャレンジしていいんだという自信をもらえた。あと、20代のときに作ったアルバムだから、若い精神みたいなものも感じられるんだ。

2019年の〈Warp〉の企画『WXAXRXP Session』のときにもとは『Ambivalence Avenue』に収録していた “Lovers’ Carvings” のセルフ・カヴァーをシングル・カットしていますが、あの曲をピックアップしたのはどうしてでしょうか?

SW:あのカヴァーは、〈Warp〉の30周年記念のためのものだったんだけど、僕が〈Warp〉と契約したのは〈Warp〉の20周年のときで、“Lovers’ Carvings” はそのボックスセットに収録されている曲なんだ。僕にとってあの曲は、僕と〈Warp〉のキャリアの印みたいな作品なんだよ。

ヴァイナルって大事だと思うんだ。レコードだと、ストリーミングやCDみたいに簡単にトラックを早送りしたり、スキップしたりすることができないから。

『BIB10』はあなたの様々な音楽的要素が混ざった作品かと思いますが、単純にオリヴィエ・セント・ルイスが参加しているというのもありますし、ソウル・ミュージックの要素でわたしは第一印象では『A Mineral Love』(2016年)との共通点を強く感じました。あなた自身は、『A Mineral Love』のときに得た経験で大きなものは何でしたか?

SW:パッと思いつかないけど、あの作品も、それまでに自分がトライしたことがなかったものに挑戦したアルバムだった。僕にとっては、それが上手くいけば成功を意味するし、そして自信をもらえるんだ。『A Mineral Love』は、確実に新しいスタイルにチャレンジしたアルバムだった。オリヴィエとコラボしたのも、得た経験で大きなもののひとつ。あれがすごく上手くいったから、彼とはコラボをし続けたし、今回のアルバムに至っているからね。僕は、同じひとたちと共演するのが好きなんだ。そうすると数はあまり増やせないけど、そのアーティストと信頼関係を築いていくのはすごく良いことだと思う。その関係か築けているからこそ、オリヴィエとは本当に心地よくいっしょに曲を書くことができるんだ。

『BIB10』はフォーキーな要素が強かった『Ribbons』、あるいはEP「Sleeping on the Wing」からの反動もあったとのことですが、“Rain and Shine” のあなた自身のヴァイオリンなど、その時期の経験が生きている部分もあるように思います。『Ribbons』~『Sleeping on the Wing』のフォーキーな作品で得た経験で大きかったのは、やはりヴァイオリンやマンドリンをご自身で演奏されたことだったのでしょうか?

SW:そうだね。ヴァイオリンは独学で勉強したんだけど、すごく難しかった。でも、どうしてもアルバムで使いたくて頑張ったんだ。それが僕の新しいチャレンジになり、没頭することができた。新しい楽器を自分のサウンドに持ちこむというのは、プロデューサーとしての僕も興奮させられることなんだ。ヴァイオリンをはじめたきっかけは、『Ribbons』のふたつのトラックで友人がヴァイオリンを弾いてくれて、それを見て、僕も学びたいと思ったから。それで、2曲目以降は僕がヴァイオリンのパートを引き継ぐことにした。そして、そこから派生したのがマンドリンだったんだ。

独学でいくつもの楽器を弾けるようになるのはすごいですね。

SW:僕は、アルバムを出すたびに新しいチャレンジに挑むのが好きなんだよ。簡単なことをやるだけじゃつまらないからね。まったく新しいものにしたいのではなく、僕の場合、すでにあるものをさらに築きながら、新しいものを取り入れるというミックスだと思う。新しいことを学ぶことが好きだし、ビビオの意味を広げていきたいとも思うし、何かを発見し続けることがモチベーションになるんだ。

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80年代はデジタルが普及しはじめたときで、みんながよりエレクトロニックなサウンドを作ろうとしていた。未来的というか、機械的というか。でもそれなのに、そこには人間味と、素晴らしいミュージシャンシップがこめられている。

あなたのこれまでの作品は、様々な音楽的要素がミックスされていつつ、それぞれ個性を持っていると思います。ストリーミング・サーヴィスが一般化した現在、シャッフルやプレイリストでのリスニングが増えていると言われますが、そんななかでも「アルバム」という単位が表現しうるものは何だと思いますか?

SW:いまは違う聴き方をしていても、僕らはやっぱりアルバム世代で、いまになってもアルバムというフォーマットを好むひとはいると思うんだよ。それがストリーミングであれ、レコードであれ、CDであれ、アルバムという単位で作品を楽しみたいひともいるはず。僕自身も、スポティファイは使ってないし、プレイリストも作らないしね。アルバムがいまだに重要だという人たちは、必ずいるんじゃないかな。ある意味、アルバムを楽しむには、リスナーはすべてを捧げなければならない。そしてアルバムだからこそ、のめりこみたいと思う旅をみんなに提供できると思う。そして、だからこそ、ヴァイナルって大事だと思うんだ。レコードだと、ストリーミングやCDみたいに簡単にトラックを早送りしたり、スキップしたりすることができないから。針を乗せて、そのままにしておくのがヴァイナルの聴き方だからね。僕がアルバムをヴァイナルで聴くのが好きな理由のひとつはそれなんだ。

では、『BIB10』についても詳しく聞かせてください。先ほども言ったように様々な音楽的要素が有機的に入った作品ですが、前作『Ribbons』との対比で言うなら、エレキ・ギターの活躍が大きいアルバムではあるとは思います。ここ2、3年でエレキ・ギターをよく演奏していたとのことですが、何かきっかけがあったのでしょうか?

SW:エレキ・ギターは、11歳のときから弾いてる。子どもの頃は、メタル・ロックにハマってたからさ(笑)。最近よりエレキ・ギターを弾くようになった理由は、『Ribbons』がもっとアコースティックが多かったから、その反動なんじゃないかな。何か違うことがやりたくなったんだと思う。エレキって、サウンドのバラエティがすごく豊富だよね。ひとつの楽器で、いろいろなサウンドを奏でることができる。そこが好きなんだ。

あなたのようにマルチ・プレイヤーだと、楽器の選択が多く表現の幅が広がると同時に、選ぶのが難しい場面もあると想像します。実際のところ、楽曲のイメージが先にあって使う楽器を吟味していくのか、作曲するときに楽器が先に選ばれていて曲ができていくのと、どちらが近いですか?

SW:ほとんどの場合、まずはギターを使って曲ができあがる。家やスタジオでギターを手にとって、曲を作るんだ。で、そこで面白いと思うものが出てきたら、それを弾いているビデオをスマホで録る。だから、僕の携帯には短い動画の音楽のアイディアがたくさん溜まってるんだ。なぜ録音ではなくビデオを録るのかというのは、自分が何をどうやってプレイしたかが観られるから。で、そうやって曲ができあがったあと、ピアノとかシンセとか、ギターのほかにどんな楽器を使ったら面白いかなと考えはじめる。どの楽器を選ぶかの基準は、その曲の世界観によるね。ソウルなのか、エレクトロなのか、フォークなのか、その曲が持つムードによって、どの楽器を求めるかが変わってくるんだ。

また、本作ではアナログ・シンセや808などクラシックなドラムマシンを使っているとのことですが、そうした古くからある機材を意図的に使った理由は何でしょう?

SW:僕のスタジオには、新しいシンセと古いシンセの両方がある。アナログって、ソフトウェアには真似できない、すごく豊かなクオリティを生み出すことができると思うんだ。そして、古くからある機材はどれも、その機材にしか出せないアイコニックなサウンドを持っていると思う。あと、それを使いながらも何かモダンなことをするっていうのが好きなのも理由のひとつだね。

あなたはこれまで、ご自身の音楽にあるノスタルジックな要素について話されてきたと思います。『BIB10』には70年代ファンクや80年代の音楽のムードがありますが、そこにも何かあなたにとってノスタルジックな感覚があるのでしょうか?

SW:そうだと思う。僕は、その時代の音楽のプロダクションにすごく魅力を感じるんだ。とくに80年代はデジタルが普及しはじめたときで、みんながよりエレクトロニックなサウンドを作ろうとしていた。未来的というか、機械的というか。でもそれなのに、そこには人間味と、素晴らしいミュージシャンシップがこめられている。エレクトロニックでありながも、グルーヴやハーモニーといった要素がきちんと入っているところが素晴らしいと思うんだよね。僕は、そのコンビネーションが好きなんだ。

今回は曲によってドラムマシンだったり、イアン・ヘンドリーの生ドラムだったりしますが、「この曲に生楽器が必要だ」との判断は直感的なものなのでしょうか?

SW:そうだね。曲ができあがってから、その曲が求めているムードによって決めるんだ。たとえば “S.O.L.” だったら、あの曲ではほかのすべてが生楽器で演奏されているから、そのライヴのエナジーを保たなければと思ったんだよね。やっぱり機械より、サウンドに人間味をもたせてくれるから。あと、“Off Goes The Light” や “Potion” みたいな曲は、生楽器とシーケンスのミックスだからどちらも入れたかった。そんな感じで、曲のサウンドによって決めるんだ。

レッスンやトレーニングを受けたことはない。演奏もだし、プロダクションもそう。興味があったから、自らそれを追求してみた結果なんだ。

『BIB10』はシンガーとしてのあなたの魅力を堪能できる作品でもあります。初期には「自分が歌うことに確信がなかった」と話していたと思いますが、歌うことに自信が持てるようになったのはどの時期だったのでしょうか?

SW:自信が持てるようになるまでには時間がかかったし、いまでもまだ十分には自信は持てていない。僕はシャイな性格だから、歌うことに関しては、自信が少しもてるようになるまでかなり時間がかったんだ。でもやっぱり、いちばん大きな自信を与えてくれたのは、『Ambivalence Avenue』かな。あのアルバムへの反応が、ヴォーカリストとしてこれまでよりも大きな自信をもたせてくれたと思う。でもステージで、人前で歌う自信はいまだにないけどね(笑)。

たとえば “S.O.L.” などはダンスフロアを想起させるディスコ・ナンバーですが、あなたの音楽はどちらかと言うとホーム・リスニングに適したもののほうが多かったように思います。ダンサブルな曲と座ってじっくり聴ける曲が共存しているのも『BIB10』の魅力ですが、あなた自身は、リスナーが曲を聴くシチュエーションを想定することはありますか?

SW:たまにある。たいていは、トラックが仕上がりに近い時点でそれを考えることが多い。ひとがどんな場所でそのトラックを聴くのか、その可能性がある場所をできるだけ多く思い浮かべるんだ。車とか、地下鉄とか、今回のアルバムだったらクラブとか。それを考えると、この曲がもうすぐ外の世界にリリースされるんだ、と興奮するんだよね。作っている真っ最中は、外の世界のことを全く考えない。その作業にのめりこんでしまう。でもリスナーがどこで聴くかを考えているということは、心に余裕ができて、ゴールが見えてきた証拠なんだよ。

「明りが消える」という “Off Goes the Light” からはじまり、アルバム前半のダンス・チューンが続く展開はストーリーとしても惹きつけられます。あなたにとって、「夜」はどんな魅力を持っていますか?

SW:なぜか僕は、すべてのアルバムを夜か昼かで分けられるんだよね。たとえば『Ribbons』は昼のアルバムだと思うし、今回のアルバムは夜だと思う。でも、それがなぜかはわからない。もしかしたら、ダンスっぽい要素がクラブを連想させるのかも。どちらかというと、エレクトロニック・ミュージックが夜で、フォークが昼って印象かな。

フォーキーで穏やかな “Phonograph” も余韻の残る美しい曲ですが、クロージングの “Fools” はプリンス風のセクシーなソウル・チューンです。この曲をエンディングに置いたのはなぜですか?

SW:理由はないよ(笑)。ただ、それがしっくりきたんだ。あのトラックは、アルバムのために作った最後の曲で、できあがった瞬間、フィナーレみたいな感情がわきあがってきた。これでアルバムが完成したんだ! って気持ちになったんだ。スローなトラックだったし、エンディングにピッタリだと思ったんだよね。曲順は、あまり考えすぎず、直感で決めることが多いんだ。

『BIB10』では10枚目の作品を祝福する気持ちもあったとのことですね。実際、10枚もアルバムをリリースするのは並大抵のことではないと思います。あなた自身が、これまでのミュージシャンとしての活動でとくに誇りに感じているのはどのようなところですか?

SW:これまでのことを独学で学んだことかな。それがメインだと思う。もちろん、ほかのひとに教えてもらったこともあるけど、そのためのレッスンやトレーニングを受けたことはない。演奏もだし、プロダクションもそう。興味があったから、自らそれを追求してみた結果なんだ。機材を買って、どうやって使えばいいのかを探る。僕はそれが好きなことなんだよね。

ありがとうございました!

SW:ありがとう。またね。

John Cale - ele-king

 ジョン・ケイルのニュー・アルバム『MERCY』が、来年1月23日に〈Double Six / Domino〉からリリースされる。
 まずは客演に注目しておきたい。アニマル・コレクティヴに加え、まさかのアクトレスローレル・ヘイローといった10年代エレクトロニック・ミュージックの重要人物、近年のUKインディ・シーンで大きな影響力を持つファット・ホワイト・ファミリーなどが参加。歌手のワイズ・ブラッドをフィーチャーした先行公開曲 “STORY OF BLOOD” では驚くべきことにトラップ風のビートが鳴っている。
 現在80歳、新しい音楽に関心を持ちつづけるレジェンドによる、これは期待大のアルバムだ。

JOHN CALE
1月20日に最新アルバム『MERCY』をリリース!
新曲 “STORY OF BLOOD feat. Weyes Blood” を公開!

ジョン・ケイルが、2023年1月20日にオリジナル曲を収録したものとしては実に10年ぶりとなる最新アルバム『MERCY』を〈Double Six / Domino〉からリリースすることを発表し、新曲 “STORY OF BLOOD feat. Weyes Blood” をミュージックビデオと共に公開した。

John Cale - STORY OF BLOOD feat. Weyes Blood (Official Video)
https://youtu.be/qgwOid8vdwE

60年近くにわたって、いや、少なくとも彼がニューヨークに移り住み、ルー・リードと共にヴェルヴェット・アンダーグラウンドを結成した若きウェールズ人であった頃から、ケイルは感動すら覚えるほど革新的かつ異端な作品群をコンスタントに発表してきている。そこには例えば『Paris 1919』の妖艶なチェンバー・フォーク、『Fear』のアート性の高いロック、挑発的かつ実験的で深みのある歌曲集『Music for a New Society』(30年後に自身による変奏曲集『M:FANS』を発表)といった音楽史における重要作が含まれている。待望の新作となる『MERCY』で、またもやケイルは、自分の音楽がどのように作られ、どのように聞こえ、そしてどのように機能するかさえも再構築している。12曲からなるこの『MERCY』は、闇夜に生まれた電子音を通して、傷つきやすいラブソングと未来への希望に満ちた考察へと向かっている。

本作『MERCY』において、ケイルは、アニマル・コレクティヴ、シルヴァン・エッソ、ローレル・ヘイロー、テイ・シ、アクトレスという音楽界で最も好奇心旺盛な若手アーティストたちを起用している。いずれも、ケイルの完成された世界観の中に入り込み、そこで彼が自らの世界をデコレーションし直すのを手伝う、才能溢れるミュージシャンたちだ。ケイルは今年3月に80歳を迎え、特にこの10年間は、多くの同業者がこの世を去るのを見守ってきた。それでも『MERCY』は、彼らこれまで積み重ねてきた長いキャリアの延長上で誕生した作品と言える。ケイルは常に、疎外感、傷、喜びといった古い考えを探求する新しい方法を探してきた。『MERCY』は、その満たされない心が見つけた新たな作品だ。

『MERCY』を構成する楽曲は、ケイルがディストピアの瀬戸際でよろめく社会を見ながら、何年もかけて書きためてきたものだ。トランプとブレグジット、コロナと気候変動、公民権、右翼の過激派、もしくは南極、北極付近で溶けている海氷の主権と法的地位についての考察であれ、アメリカ人の無謀な武装化であれ、ケイルはその日の悪いニュースを自分の言葉にする。今回のアルバム発表に先立ってリリースされた “NIGHT CRAWLING” で、(今もなお) 豊かに生きている人生からの教訓も前面に押し出されている。もし、私たちが常に過去を悔やんでいるとしたら、永久に失望を味わうことになるのではなかろうか? そして “STORY OF BLOOD” でワイズ・ブラッドと共に歌ったように、結局のところ、我々は、我々が知ることのない神に頼るのではなく、お互いを救うことができるのではないだろうか?

“STORY OF BLOOD” では、ピアノの前奏が重厚なビートと眩い太陽のようなシンセサイザーに変わった後、ケイルとワイズ・ブラッドの歌声が、現代の喧騒の中でパートナーを探そうとする2つのファントムのように滑らかに交差する。「スウィング・ユア・ソウル」と二人は願いを込めて歌う。最後のパートで、ケイルはこの存在が自分だけのものでないことを思い出す。「私は朝には私の友人たちを、彼らを迎えに戻る。彼らを光の中に連れて行くんだ」。エミー賞受賞監督ジェスロ・ウォーターズによるミュージックビデオには、ケイルとワイズ・ブラッドが登場し、不穏と静寂が混在する。その深い色調と宗教的な雰囲気は、この曲のダークでスピリチュアルなムードを強調している。

ワイズ・ブラッドの新作を聴いていて、ナタリーの清純なボーカルを思い出したんだ。「Swing your soul」というパートと、他のいくつかの部分で彼女と一緒にハーモニーで歌うことができれば、きっと美しいものになるだろうと思った。しかし、彼女から得たものは、それ以上のものだったよ。彼女の声の多様性を理解してからは、まるで最初から彼女を想定して曲を書いていたかのように感じた。彼女の音域の広さと、音律に対する大胆なアプローチは、予想外の驚きだった。彼女がニコとそっくりに思う瞬間すらあるんだ。 ──ジョン・ケイル

待望の最新作『MERCY』は、2023年1月20日にCD、LP、デジタルでリリース! 国内流通仕様盤CDには解説が封入される。

label: Double Six
artist: John Cale
title: MERCY
release: 2023.01.20

BEATINK.COM: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13095

CD Tracklist
01. MERCY feat. Laurel Halo
02. MARILYN MONROE'S LEGS (beauty elsewhere) feat. Actress
03. NOISE OF YOU
04. STORY OF BLOOD feat. Weyes Blood
05. TIME STANDS STILL feat. Sylvan Esso
06. MOONSTRUCK (Nico's Song)
07. EVERLASTING DAYS feat. Animal Collective
08. NIGHT CRAWLING
09. NOT THE END OF THE WORLD
10. THE LEGAL STATUS OF ICE feat. Fat White Family
11. I KNOW YOU'RE HAPPY feat. Tei Shi
12. OUT YOUR WINDOW

CD

ブラック・ヴァイナル

ホワイト・ヴァイナル

クリア・ヴァイナル

Crack Cloud Japan Tour 2022 - ele-king

 耳の早いインディ・ロック・ファンにはかねてから注目されてきたカナダのポスト・パンク・バンド、Crack Cloud。『nero』編集長の井上由紀子氏も大推薦していたこのインディ界の注目株が早くも来日する。
 東京公演にはNo Busesのフロントマン「Cwondo」と、DJとして村田タケル 《SCHOOL IN LONDON》
 大阪公演は「石田小榛(Vo)と角矢胡桃(Dr)で構成される2ピース・バンド「HYPER GAL」と、DAWA 《FLAKE RECORDS》がサポートアクトとして出演。

Crack Cloud Japan Tour 2022

【公演概要】
2022年11月24日(木)
東京 代官山UNIT
出演者:Crack Cloud
Support Act : Cwondo、DJ: 村田タケル 《SCHOOL IN LONDON》
開場 18:30 / 開演 19:00
【チケット情報】 前売入場券:¥6,500 + 1Drink Charge
問合わせ: UNIT 03-5459-8630 (平日12:00〜19:00)

TONE FLAKES Vol.149
2022年11月25日(金)
大阪 梅田Shangri-La
出演者: Crack Cloud + Support Act :HYPER GAL 、DJ: DAWA 《FLAKE RECORDS》
開場 18:30 / 開演 19:00
【チケット情報】前売入場券:¥6,000 + 1Drink Charge
[TICKET]11月6日 10:00
ぴあ
e+
ローソン
FLAKE RECORDS(店頭)
問合わせ:Shangri-La 06-6343-8601(平日12:00〜19:00)

ツアー先行販売はコチラから:https://linktr.ee/tamatamastudio

【公演注意事項】
※予定枚数に到達した場合、当日券の販売は行いません。
※本公演はオールスタンディングの公演となります。

東京;
※3才以上の方はチケットが必要となります。なお16歳未満の方につきましては保護者の同伴が必要となります。
※未就学児のお子様をお連れのお客様は入場時に未就学児であることの各証明書が必要となります。

大阪;
※小学生以上はチケットが必要となります。
※保護者1名同伴につき、未就学児童1名まで入場可能。

-新型コロナウイルス対策-
※会場内では常時マスクをご着用下さい。
※こまめに手指の消毒を行って下さい。
※体温が37.5℃以上のお客様は入場をご遠慮ください。
※大声や歓声を禁止させていただきます。
※ご入場は整理番号順となります。


【Crack Cloud】
2015年に結成されたマルチメディア集団Crack Cloudは、異なる角度から、異なる過去の経験を持つ、同じ志を持つ人間で構成されている。
カナダのアルバータ州出身のCrack Cloudは、社会に対する視点と理解を映し出すポストパンクの知恵を持っています。 2018 年にバンクーバーに移り、メンバーのほとんどはその時に出会いました。 2016 年に最初のセルフ タイトルの EP をリリースし、翌年には 2017 年にAnchoring Pointと呼ばれる別のEP をリリースしました。 [12]これらのリリースに続いて、グループは国際的にツアーを行い、End of the road、、およびをロスキルデなどいくつかのヨーロッパの音楽祭に出演し、2020年7月17日に Meat Machine Records からデビュー・スタジオ・アルバム、Pain Olympicsをリリースした後、 2019年 5月から 2020年10月までの間に、 The Next Fix、Ouster Stew、Tunnel Vision、Favor Your Fortuneの4つのシングルをリリースしました。
https://www.crackcloud.ca/

【Cwondo】

No BusesのGt.&Vo.としても活動中の近藤大彗によるソロ・プロジェクト=Cwondo 2020年より本格的に活動開始。
1stアルバム『Hernia』、2ndアルバム『Sayounara』に続き、短いスパンでリリースし、3rd アルバム『Coloriyo』を2022年7月6日(水)にリリース
https://tugboat.lnk.to/Cwondo3rdAL

【HYPERGAL】

石田小榛(Vo)と角矢胡桃(Dr)で構成される2ピースバンドHYPER GAL
石田小榛は美術家として、角矢胡桃はノイジシャンとしての活動も行っている。
2021年には2ndアルバム『pure』をリリース
アヴァンギャルドかつミニマルなトラックのループと無機質なボーカルで構成されるサウンドはキラキラと既存の壁を破っていく。
『pure』ではジャケットを新進気鋭の美術家ナカノマサト・ミュージシャンのuamiが手掛け、MVは撮影 渡辺絵梨奈・編集 石田小榛の自主制作で行われるなど、アートワークも注目を集めている
https://hypergal.base.shop/

*海外プレスからの賞賛

"Crack Cloudのライブは素晴らしい。彼らの演奏を観た後、浮遊しているような気分になる"。- ジョン・ドーラン (Quietus、Noisey、BBC)

"...Crack Cloudをバンドとして説明することは、彼らを過小評価することになるだろう" Q Magazine- Qマガジン

「カナダの7人組、Crack Cloudは目を見張るようなスペクタクルを作り出す。- ガーディアン(イギリス)

◎「please yourself」MV
https://www.youtube.com/watch?v=BteWnj3vr1o&t=4s

◎アルバム表題曲「tough baby」のMV
https://www.youtube.com/watch?v=iuiApNB8Ug0

Wendell Harrison & Phil Ranelin - ele-king

 これはすごい復刻だ。70年代スピリチュアル・ジャズ三大レーベルのひとつ、デトロイトの〈Tribe〉の代表作が豪華ボックスセット仕様となって蘇る。
 〈Tribe〉のもっとも名の知られた作品であろう、ウェンデル・ハリスンとフィル・ラネリンによる『A Message From The Tribe』は、じつは3ヴァージョン存在している。72年発表のジャケが「崖」のヴァージョン、73年発表の「地球」ヴァージョン、74年発表の「顔」ヴァージョンだ。それぞれの詳細は下記をお読みいただきたいが、今回のリイシューではその全ヴァージョンが網羅されている。とくに「崖」ヴァージョンは、世界初のアナログでの復刻となる。
 そして忘れてはならないのが、〈Tribe〉はたんにレコードを発売するだけの組織ではなかったということだ。「ア・メッセージ・フロム・ザ・トライブ」というタイトルが示しているように、〈Tribe〉はメディアやイベントなどを通して、黒人たちが置かれている状況を発信する、ある種のコミュニティでもあった。その活動の一例が、雑誌『TRIBE MAGAZINE』の発行。今回のボックスセットがすごいのは、その『TRIBE MAGAZINE』全15巻が同梱されているところだろう。入手困難だった同誌の復刻はきっと、文化史的にも大きな意味を持つにちがいない。
 全6枚組+15冊のボックスセット、ご予約はこちらhttps://vga.p-vine.jp/tribe)から。

 なお、来週発売の『別冊ele-king VINYL GOES AROUND presents RARE GROOVE』でも、〈Tribe〉は特別な存在としてコラムを設けています。ぜひ手にとってみてください。

WENDELL HARRISON & PHIL RANELIN
A MESSAGE FROM THE TRIBE BOX SET (6 Vinyls + 15 Magazines)

70年代デトロイトの伝説、〈TRIBE〉の代表的なアルバム、PHIL RANELIN / WENDELL HARRISON『A Message From The Tribe』3ヴァージョンを全てコンプリート。加えて70年代のアメリカのジャズ誌では重要なメディア『TRIBE MAGAZINE』全15巻を復刻しBOXセットにして発売致します。

1972年、デトロイトにて初声を上げたジャズ・レーベル〈TRIBE〉。1997年にP-VINEは世界に先駆けて〈TRIBE〉のコンピレーションをリリースし、それを皮切りに一連のカタログのリイシューを手掛けました。〈TRIBE〉の活動はクラブ・ミュージック周辺で再評価され、以来その活動全体が音楽シーンの伝説となっています。
今回リリースするのは〈TRIBE〉の代表的なアルバムでもあり、3種類のタイプがあることでも有名なPHIL RANELIN / WENDELL HARRISONによる『A Message From The Tribe』。これらを全てコンプリートし、加えて70年代のアメリカのジャズ誌では重要なメディアに位置する『TRIBE MAGAZINE』全15巻をBOXセットにして発売致します。

●『A Message From The Tribe』について

1972年発表の「崖」の写真をあしらった1stヴァージョン、1973年発表の「地球」のイラストを使用した2ndヴァージョン、そしてレーベルの主宰者でもあるWENDELL HARRISONとPHIL RANELINの「顔」のイラストが使われた1974年発表の3rdヴァージョン。わずか3年間で3種類リリースされた本作。これらはそれぞれ内容が異なります。

□1stヴァージョン『崖』:他のヴァージョンとは全く内容の異なる幻の初回録音盤が初のLPリイシュー! ボーナス7インチ付き
記念すべきレーベルの第一弾アルバムが世界で初めてアナログ復刻します。Tribeのコミュニティは、発足当初はライブを主な活動としていましたが、その延長で音楽と寸劇と詩で構成されたミュージカルをデトロイト美術館にて公演。その録音を一枚のLPに収めたのがこのアルバム。激しいフリージャズから徐々にブリージンなジャズ/フュージョン・サウンドへと変化していくWENDELL HARRISONの代表曲 “Where Am I” や、自由と自立のためにいま何が必要かを問いかけたメッセージが妖艶に紡がれていくグルーヴィーなヴォーカル・ジャズファンク “What We Need” の最初のテイクがここで聴くことができます。また本作はボーナス7インチを付属。こちらは “Where Am I” と “How Do We End All Of This Madness” を収録。どちらもここでしか聴くことのできないヴァージョンです。

□2ndヴァージョン『地球』:未発表のインスト・ヴァージョンがボーナス10インチとして初のレコード化
このアルバムで一番有名なジャケットと言っても良い「地球」をあしらった2ndヴァージョンは、あらたに再録音された全くの新しいテイク。1stヴァージョンとは収録曲の内容も異なり、より洗練された内容。A面にはPHIL RANELINの楽曲が収録され、1stヴァージョンよりも曲の精度を上げて作られておりファンキーな仕上がりに。B面のWENDELL HARRISONの楽曲は全曲差し替えられ、こちらもグルーヴィーな楽曲が並んでいます。全体的にも1stよりもコマーシャリズムが優先されており、それによって時流に合わせたモダンなサウンドに生まれ変わっています。そして本作には初のアナログ盤でリリースされるインストゥルメンタルを収録した10インチが付属。当時のミュージシャンの演奏力や楽曲自体の素晴らしさがあらわになり、折り重なるようなホーンセクションがクールなジャズファンクとして新しい側面を感じます。これらはジャズの音楽史でも貴重なテイクです。

□3rdヴァージョン『顔』:3つの中でもっとも良い録音に仕上げられたヴァージョンをTRIBE初の45RPM / 2枚組LPに
そして3rdヴァージョンは本作品群における最終形態。2ndヴァージョンから大きくミックスを変え、マスタリングやカッティングまでこだわりリリースされたのが本作。2ndヴァージョンと聴き比べても別物と思えるほど音の違いがはっきりとわかります。特に “What We Need” のファンキーさは、キックやベースの音圧やボーカルの輪郭などが格段にアップし、現在であればダンスミュージックとしても十分に使える音像に変化。そのほか反復するウッドベースのフレーズやローズの音色などがグルーヴィーな “How Do We End All Of This Madness” や、刻んだハットと乱れ打つスネアが印象的なウェンデル・ハリソンらしい疾走感あるジャズファンク “Beneficent” などもファットなビートに進化しています。今回は元の音源を忠実に再現しつつ、アナログは2枚組の重量盤LPでより高音質な仕様にしています。

●復刻版『TRIBE MAGAZINE』について

□全15巻を完全復刻
TRIBEがレコードのリリースと並行して出版していたマガジンがこの『TRIBE MAGAZINE』。70年代当時、アフロ・アメリカンたちのコミュニティで起こっている凄惨な出来事を明確に伝えるメディアが全く無かった中、WENDELL HARRISONが中心となって立ち上げられた黒人のための音楽情報誌兼、ニュース・メディアです。当時のデトロイト周辺のジャズや著名な音楽家などの記事に加え、黒人の歴史家/人類学者のコラムや日常の知られざる出来事をレポートしたニュースを発信。"何も知らなければ何もできない" 〜 "We can't do anything about it, if we don't know about it." を主張しアフロ・アメリカンの自立を目指して発行されていました。また誌面のデザインや写真などもローカル誌とは思えない斬新なビジュアルで、眺めているだけでも楽しめる内容です。
今回、スピリチュアル・ジャズ史上最も重要な紙媒体でもあるこのマガジン全15冊を完全復刻します。『TRIBE MAGAZINE』は現在、非常に入手困難なメディアであり、これは世界中で待たれていた待望の復刊になります。

https://vga.p-vine.jp/tribe

[商品情報]

■早期購入者特典としてオリジナルTシャツ付き!(2023年1月5日まで)

■箱のデザインは2タイプから選べます

ボックス・タイプA


ボックス・タイプB


■伝説のJAZZマガジン TRIBE MAGAZINE 全15冊を完全復刻!
■限定シリアルナンバー入り
■レーベル代表作が3バージョン、デラックスエディションで復刻!(全て見開きジャケット)
■(LP+7”)+(LP+10”)+(45RPM 2LP)
■世界初インスト・ヴァージョン・アナログ化!
■LPは180g 重量盤!
■ジャケット/TRIBEマガジンをモチーフにしたポスター(515×728mm)封入!
(The back side is TRIBE x Pharoah Sanders or Herbie Hancock from Tribe Magazine.)

価格:434.5 USD(税抜き 395 USD)

[収録内容]

□Message From The Tribe 1st Version [LP+7"]

Side A
1. Mary Had An Abortion
2. Where Am I
3. Angry Young Man

Side B
1. What We Need
2. Angela's Dilemma
3. How Do We End All Of This Madness

Side C
1. Where Am I (7" Short version)

Side D
2. How Do We End All Of This Madness (7" Short version)

□A Message From The Tribe 2nd Version [LP+10"]

Side A
1. What We Need
2. Angela's Dilemma (Instrumental)
3. Angela's Dilemma (Vocal)
4. How Do We End All Of This Madness (Instrumental)
5. How Do We End All Of This Madness (Vocal)

Side B
1. Wife
2. Merciful
3. Beneficent

Side C
1. What We Need (Full Instrumental Version)
2. Angela's Dilemma (Full Instrumental Version)

Side D
1. How Do We End All Of This Madness (Full Instrumental Version)

□A Message From The Tribe 3rd Version [2LP / 45rpm]

Side A
1. What We Need
2. Angela's Dilemma (Instrumental)
3. Angela's Dilemma (Vocal)

Side B
1. How Do We End All Of This Madness (Instrumental)
2. How Do We End All Of This Madness (Vocal)

Side C
1. Wife
2. Merciful

Side D
1. Beneficent


□TRIBE MAGAZINE(完全復刻版)全15冊

□TRIBE MAGAZINE B2サイズ・ポスター

https://vga.p-vine.jp/tribe

●〈TRIBE〉について
モータウンの発祥の地として知られるデトロイトで発足し、70年代ブラック・ミュージック/スピリチュアル・ジャズを語る上では超重要なレーベル、〈TRIBE〉。
1972年にモータウンがロサンゼルスに移転、そこでレギュラーで仕事を得ていた地元の多くのミュージシャンが突然失業していくさなか、デトロイト音楽シーンの新たなコミュニティ/クリエイティブ集団として、ウェンデル・ハリソンとフィル・ラネリンが中心となり設立。当時、アフリカ系アメリカ人達が直面していた貧困や人種差別などの困難な状況の中で、生活や社会がより良くなるよう、音楽やメディア、イベントなどを通してメッセージを発信した。その活動は90年代以降のHIP HOPやテクノなど、クラブ・ミュージック文脈で大きく評価され、2009年にはカール・クレイグによって主要メンバーが集められて作られた『Rebirth』がヒット。近年では『A Message From The Tribe』のオリジナル・レコードがオークションで1500ドルを超えるなど現在でもその影響力は衰えていない。

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