「You me」と一致するもの

Bicep - ele-king

 こいつはめでたい。先日リリースされたバイセップのニュー・アルバム『Isles』が、なんと、UKチャートの2位にランクインしている。そう、彼らはUKでは1万人規模の公演を即完させるビッグなグループなのだ。

 そのバイセップの新作が「島」をテーマにしているところは興味深い。タイトルの「島々」とは、彼らの故郷たるアイルランド島と、現在拠点を置くグレイトブリテン島を指しており、そこには複雑な感情が込められている。ベルファスト生まれのデュオにとってイングランドはべつの島であり、べつの国なのだ。
 かつて地元にシャインというクラブがあったこと、そこでロラン・ガルニエがDJをしたこと、同郷の先輩デヴィッド・ホルムズがシュガー・スウィートというクラブをやっていたこと──それらが彼らにとっていかに大きなことだったか、ふたりは「アイリッシュ・タイムズ」紙に語っている。緊迫した宗教問題を背景に持つ北アイルランドにおいて、特定のコミュニティに属さないクラブという場へ足を運ぶことは、ある種の解放でもあったと。
 また同紙で彼らは現在のコロナ禍についても、じぶんたちが2009年の金融危機のときに出てきたことを振り返りながら語っている。いわく、アーティストは互いに助けあい、互いに親切であらねばならない、と。この、クラブが満足に役割を果たせない時代において、バイセップのダンス・ミュージックがチャートの上位に食いこんだことは、とても大きな意味をはらんでいるだろう。

 2月26日にはオンラインでのライヴ配信が予定されている。下記よりチェック。

UKチャート初登場2位獲得!
ディスクロージャーに続く新世代UKダンス・アクトの大器、
バイセップの最新作『Isles』は現在発売中!
2月26日には貴重なオンライン・ライブ配信も開催!

UKダンス・ミュージックの新たな大器、ここに登場 - ele-king

近未来的な音色は我々の耳と脳を揺さぶるだろう - MUSIC MAGAZINE

次代のスタジアム級ダンス・アクトがルーツを見つめ表現力を格段に向上 - bounce

UKガラージからIDMまで内包、多様に広がるダンス音楽 - Pen

ブログからスタジアムへ──フリー・シェア時代のバイセップ成功物語 - Mikiki

逆境に立ち向かうためのダンス・ミュージック - Mikiki

北アイルランドのベルファスト出身でロンドンを拠点に活動するマット・マクブライアーとアンディ・ファーガソンから成るユニット、バイセップ。UKで1万人規模の公演を即完させる人気を誇る、今最も注目を集める彼らの最新作『Isles』がUKチャート初登場2位を獲得! 伝説のブログ "FeelMyBicep" から始まった彼らのキャリアだが、今やディスクロージャーに続く、新世代UKダンス・アクトの中心であり、名実ともにアンダーワールドやケミカル・ブラザーズといったスタジアム級のアーティストにも肩を並べるであろうトップ・アーティストとして世に認められる形となった。

Bicep - Isles
https://bicep.lnk.to/isles

本日より、代官山 蔦屋書店にてバイセップとブラック・カントリー・ニュー・ロード(Black Country, New Road)のアルバムリリースを記念し、〈Ninja Tune〉コーナーが登場! 両作品の新作展示に加えて、今週末からは〈Ninja Tune〉のレーベルグッズが店頭に並ぶ予定となっている。

期間:2月1日~2月18日
https://store.tsite.jp/daikanyama/

また、彼らは2回目となるオンライン・ライブ配信、"Bicep Global Livestream”を日本時間の2月26日19:30より公開する予定となっている。配信では過去作に収録されている曲のリメイク版や、最新作『Isles』に収録された楽曲のエクステンデッド・バージョンなどが披露される予定。前回同様、スクエアプッシャーのアートワークやビデオを手がける Black Box Echo によるビジュアルを楽しむこともできる。

日時:2月26日(金) 19:30~ (日本時間)
チケット:https://bit.ly/35C5WIn

更に、リリースを記念して現在彼らのアートワークからのインスピレーションを得た "Isle Album Filter" がインスタグラムで公開中!
https://www.instagram.com/ar/1259988877720444/

2年に及ぶ制作期間を費やした『Isles』は、2017年のデビュー・アルバム『Bicep』から表現力を発展させ、さらにベルファストで過ごした若き日から10年前にロンドンに移るまでの間に彼ら自身の人生と音楽活動に影響を与えてきたサウンド、経験、感動をより深く追求しており、その期間に彼らが触れてきた音楽の幅広さが、アルバムの極めて多彩な音を形成している。ふたりとも、ヒンディー語の歌声が遠くの建物の屋上から聞こえてくることや、ブルガリア語の合唱曲の断片が通りすがりの車から耳に届いてくることや、ケバブ屋で流れるトルコのポップ・ソングの曲名がわかるかもしれないとわずかに期待しながら Shazam を起動することが楽しかったと述べる。一方で、故郷を離れて過ごす時間は、自分たちが島を渡り今の場所にたどりついたことについて、より深く考える機会にもなったという。

待望の最新作『Isles』は発売中! 国内盤CD、輸入盤CD/LP、カセットテープ、デジタルで発売され、国内盤CDには解説が封入、ボーナストラックが収録される。また、輸入盤LPは通常のブラックに加えて、限定のピクチャー盤、さらには国内盤CDと同内容のボーナストラックが収録された3枚組のデラックス盤が発売されている。

label: Ninja Tune / Beat Records
artist: Bicep
title: Isles
release: 2021/01/22

国内盤CD、輸入盤CD、輸入盤LP(ブラック)、限定盤LP(ピクチャー盤)、カセットテープ商品ページ:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11475

3枚組デラックス盤商品ページ:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11477

tracklist:
01. Atlas
02. Cazenove
03. Apricots
04. Saku (feat. Clara La San)
05. Lido
06. X (feat. Clara La San)
07. Rever (feat. Julia Kent)
08. Sundial
09. Fir
10. Hawk (feat. machìna)
11. Light (Bonus Track)
12. Siena (Bonus Track)
13. Meli (I) [Bonus Track]

Cabaret Voltaire - ele-king

 未曾有の事態のなかでまずはサウンドとして強度のある、しっかりした音楽を生み出すこと、それはやはりそれなりに人生経験を積んだ者だからこそ為しえることなのかもしれない、と昨年、26年ぶりに放たれたキャブスのアルバム『Shadow Of Fear』を聴いて思った。じっさいリチャード・H・カークは下記のように、制作はコロナ禍によってさほど影響を受けなかった、と語っている。
 そのすばらしい快作につづいて、EP「Shadow Of Funk」が2月26日にリリースされる。さらに、3月26日と4月23日には2枚のドローン作品が控えているというのだから精力的だ。いずれも『Shadow Of Fear』と関連する作品だという。大ヴェテラン、リチャード・H・カークは止まらない。

Loota - ele-king

 2015年。韓国のラッパー、キース・エイプの “It G Ma” にフィーチャーされ、翌年にはフランク・オーシャン『Blonde』に参加、近年は Tohji とのコラボもおこなうなど、着々とその存在を知らしめてきた埼玉出身のラッパー Loota が2年ぶりの新作シングル「Sheep / Melting Ice」を発表している。耳に残るフロウとパリのプロデューサー、サム・ティバによるトラックとが描き出す、寂しげな風景に注目だ。

Loota による2年ぶりの新譜「Sheep / Melting Ice」がリリース。プロデュースは Sam Tiba、MVは Mall Boyz の Yaona Sui が担当。

盟友 KOHH らと参加した “It G Ma” で世界に轟かせ、Frank Ocean 『Blonde』の制作に参加するなどグローバルな活躍で注目され続けているラッパー、Loota。近年では Sebastian、Surkin といったヨーロッパ圏のプロデューサーとの協業や、Tohji ら若手アーティストとのコラボレーションなど、さらにその活動の幅を広げ続けている。

本作は、2019年2月に 2nd album 『Gradation』のリリースから2年ぶりとなるスプリット・シングル。プロデューサーとして両曲に Sam Tiba を起用し、独自のフローと内省的なリリックが冬に合う印象的なリリースとなった。

リリースと共に公開される “Melting Ice” MVは Mall Boyz の Yaona Sui が、アートワークはスイスのデザインチーム ARMES を率いる Philippe Cuendet が担当しており、曲の持つ寂しさや肌寒い情景を見事にビジュアルに落とし込んでいる。

これまでも静かに、しかし確かな作品を発表し続けてきた Loota。国境と世代を超えたそのクリエイティビティが遺憾無く発揮されている今作を、耳や目の肥えたリスナーは是非一度聞いてみて欲しい。

“Melting Ice” MV
https://youtu.be/epI4kW8e6kI

各種配信サービスにてリリース
https://linkco.re/gBQUfc0A

◆商品情報
アーティスト:Loota
タイトル:Sheep / Melting Ice
リリース日:2021年1月29日

◆About Loota

Loota

盟友 KOHH らと参加した “It G Ma” で世界に轟かせ、Frank Ocean 『Blonde』の制作に参加するなどグローバルな活躍で注目され続けているラッパー。

近年では Sebastian、Surkin といったヨーロッパ圏のプロデューサーとの協業や、Tohji ら若手アーティストとのコラボレーションなど、さらにその活動の幅を広げ続けている。

Instagram:https://www.instagram.com/supadupaloo/
Twitter:https://twitter.com/_Loota_
Youtube:https://www.youtube.com/channel/UCv5ca0LVoMsLSs1MQjJEb_A

Teno Afrika - ele-king

 近年話題を集める南アフリカ産ハウス・ミュージックのアマピアノ。その新たな才能、21歳のテノ・アフリカが初のアルバムをリリース、日本盤が3月19日に発売されることとなった。独特の雰囲気を醸しながらも、哀愁漂うメロディが小気味良いリズムと溶け合い、非常に聴きやすい1作に仕上がっています。ぜひチェックを。

いま世界を席巻する “アマピアーノ” の最終兵器
しなやかに跳ねるビート、アフリカンなメロディーのシンセ
新しくも癖になる新感覚ビートサウンド

南アフリカで生まれたエレクトロニック・ミュージックの新たなムーブメント “アマピアーノ”。ここ5年間でアンダーグランドから全国的なメインストリームへと進化してきたサウンドの流れに加わった21歳の Lutendo Raduvha によるプロジェクト Teno Afrika。穏やかなドラム、ベース、パーカッションの上にオルガンのソロが響き渡り “アマピアーノ” を初めて聴くリスナーにも入りやすい洗練された作品となっている。今回は DJ Sumbody と Cassper Nyovest のコラボレーションや、Focalistic のリリカルなドリブルから “プレトリアのマラドーナ” と呼ばれるようになった Kwaito の影響を受けたアマピアーノをフィーチャー。ディ・バカルディの特徴であるオフテンポに近いストライドの楽曲など多岐にわたる才能を見せる。

アーティスト:Teno Afrika
アーティストフリガナ:テノ・アフリカ
タイトル:Amapiano Selections
タイトルフリガナ:アマピアーノ・セレクションズ
発売日:2021年3月19日
フォーマット :国内CD/輸入LP
レーベル名:Awesome Tapes From Africa
販売元:株式会社インパートメント
■国内流通盤CDのみボーナストラックのDLコード付き

オフィシャルHP
https://www.inpartmaint.com/site/31210/

Dance System & Mark Broom - ele-king

 これはおもしろい組み合わせのコラボだ。〈Night Slugs〉主宰者のエルヴィス(L-Vis 1990)が、テクノのヴェテラン、マーク・ブルームと手を組んでいる。両者によるシングル「Back To Business EP」は “Never Ever” と “Back To Business” の2曲を収録、いずれもハードめのダンス・トラックに仕上がっている。
 マーク・ブルームは、古くからベイビー・フォードや現プラッドのエド&アンディと交流し、〈GPR〉からシングルもリリース、プラッドのふたりとはリピート(Repeat)としても活動していた。
 なお今回のコラボは、昨年エルヴィスが同じくダンス・システム名義で発表した、ハドソン・モホークハーバートなどとの共作曲オンリーのカセット『Where's The Party At?』の延長線上にある。試聴はこちらから。

Dance System がテクノ・シーンのレジェンド Mark Broom とのコラボレーションEPを自身のレーベル〈System Records〉からリリース!

Dance System aka L-Vis 1990 がイギリスのテクノ・シーンのレジェンド Mark Broom とのコラボレーションEP「Back To Business EP」を自身のレーベル〈System Records〉からリリースした。
本EPは昨年11月にリリースされた全曲コラボレーション曲のミックステープ『Where’s The Party At?』に続く作品である。
前作の『Where’s The Party At?』は Hudson Mohawke、India Jordan、A-Trak、DJ Deeon、Sally C、Herbert、UNIIQU3 などのアーティストが参加し、ダンス・ミュージック・シーンで大いに好評を博した。イギリス BBC Radio1 のホストDJである Annie Mac 曰く「これは完璧な作品よ。唯一の問題点は、どのトラックを再生すれば良いのかわからないことぐらいね」。また、FACT Magazine では「これこそ正に本物のパーティーミュージックだ」と評された。
〈System Records〉の「ダンス・ミュージックは常に楽しいものであり、ジャンルの定義や冷笑への恐怖に縛られていない」という精神は、今回の Mark Broom と Dance System のコラボレーションEPにもよく反映されている。
今回のコラボレーションに際して Dance System は「Mark Broom は僕のヒーローだよ! 僕は彼と一緒にこのEPをリリースできることに非常に興奮しているんだ。“Never Ever” はディスコとテクノを魅力的にミックスした1曲、そして『Back to Business』はハードでダークなテクノファンクだ」。
それに応じるように Mark Broom は 「私は以前から Dance System の作品を支持しており、今回のコラボレーションで彼と一緒に仕事ができたことは本当に光栄なことだ。私たち2人の良い部分が上手く組み合わさり、ファンキーでヒップな曲を作れたと思う」と述べている。

アーティスト:Dance System & Mark Broom
タイトル:Back To Business EP
レーベル:System Records
リリース日:2021年1月28日
配信URL: https://system.promo/business

01) Dance System & Mark Broom – Never Ever
02) Dance System & Mark Broom – Back To Business

Mouse On Mars - ele-king

 マウス・オン・マーズが2月26日に新作『AAI』をリリースする。ビッグなゲストを多数招いた『Dimensional People』以来3年ぶりのアルバムだ。
 タイトルは「アナキック・アーティフィシャル・インテリジェンス」の略だそうで、すなわちA.I.シリーズのさらなる解放と拡張……というわけではなく、作曲ツールとしてガチのAIを使用していることに由来するみたい。なんでもこの新作のために、AI技術者やプログラマーたちと新たなソフトウェアまで制作したそうで。すごいです。
 現在シングルとして “The Latent Space” と “Artificial Authentic” の2曲が公開中。どちらもドラム部分と上モノの応酬がとんでもないことに。これはアルバム、かなり期待できそうじゃない?

Mouse On Mars『AAI』
マウス・オン・マーズ『AAI(Anarchic Artificial Intelligence)』

企画番号:THRILL-JP 53 / HEADZ 250(原盤番号:THRILL 537)
価格:2,100円+税
発売日:2021年2月26日(金)※(海外発売:2021年2月26日)
フォーマット:CD / Digital(デジタル配信も同時リリース)
バーコード:4582561393624

01. Engineering Systems 00:22
 エンジニアリング・システムズ
02. The Latent Space 06:26
 ※2020年10月29日リリースの海外での1stシングル(配信のみ)
 ザ・レイタント・スペース
03. Speech And Ambulation 07:06
 スピーチ・アンド・アムビュレイション
04. Thousand To One 05:31
 サウザンド・トゥ・ワン
05. Walking And Talking 06:19
 ウォーキング・アンド・トーキング
06. Youmachine 04:08
 ユーマシーン
07. Doublekeyrock 02:25
 ダブルキーロック
08. Machine Rights 01:42
 マシーン・ライツ
09. Go Tick 04:20
 ゴー・ティク
10. The Fear Of Machines 01:43
 ザ・フィア・オブ・マシーンズ
11. Artificial Authentic 03:35
 ※2021年1月13日リリースの海外での2ndシングル(配信のみ)
 アーティフィシャル・オーセンティク
12. Machine Perspective 00:43
 マシーン・パースペクティヴ
13. Cut That Fishernet 05:31
 カッツ・ザット・フィッシャーネット
14. Tools Use Tools 00:31
 トゥールズ・ユーズ・トゥールズ
15. Loose Tools 01:02
 ルース・トゥールズ
16. Seven Months 02:31
 セヴン・マンスス
17. Paymig 00:47
 ペイミグ
18. Borrow Signs 01:50
 バロウ・サインズ
19. New Definitions 04:15
 ニュー・ディフィニションズ
20. New Life Always Announces Itself Through Sound 01:16
 ニュー・ライフ・オールウェイズ・アナウンシズ・イットセルフ・スルー・サウンド
21. How Will They Talk 05:54
 ハウ・ウィル・ゼイ・トーク

※ Track 21 …日本盤のみのボーナス・トラック

Andi Toma - Instruments, Electronics, Production
Jan St. Werner - Instruments, Electronics, Production
Dodo NKishi - Drums & Percussion
Louis Chude-Sokei - Text & Voice
Yağmur Uçkunkaya - Voice
Tunde Alibaba - Percussion
Drumno - Drums
Eric D. Clarke - Loose Tool
Nicolas Gorges, Yağmur Uçkunkaya, Florian Dohmann, Rany Keddo, Derek Tingle - AI
Zino Mikorey - Mastering(Zino Mikorey Mastering)
Kitaro Beeh - Vinyl Cut
Casey Reas - Computer Graphics
Rupert Smyth Studio - Art Direction
Paraverse Studios Berlin 2020

https://www.mouseonmars.com/

あのポップでキャッチーなエレクトロニック・サウンドが戻って来た。
常に革新的なサウンドを追求しながらも、人懐っこさを失わず、ダンス・ミュージックとしても秀逸で、圧等的なオリジナリティを更新し続けるマウス・オン・マーズの最新作。

マウス・オン・マーズは(2011年より)ドイツのベルリンを拠点とした、ヤン・エスティー(St.)・ヴァーナーとアンディ・トーマの電子音楽デュオ(以前はヤンはケルン、アンディはデュッセルドルフを拠点としていた)で、1993年の結成以来、実験性とポップさを持ち合わせた、常に刺激的なエレクトリック・サウンドを追求してきた(近年、海外ではIDMにカテゴライズされることが多いが、それに留まらない多彩な音楽性を持ち合わせている)。

ジャスティン・ヴァーノン(ボン・イヴェール)、アーロン&ブライス・デスナー(ザ・ナショナル)、ザック・コンドン(ベイルート)、サム・アミドン他が参加した(生楽器や生演奏をフィーチャーし)壮大で重層的な2018年のThrill Jockey帰還作『ディメンショナル・ピープル』以来、約3年振りとなる新作アルバムは、AI(人工知能)技術を大胆に導入し(作曲ツールとしても活用)、アルバム・タイトルそのものが『AAI(Anarchic Artificial Intelligence)』となった。

ライブではドラム&ヴォーカルとして欠かせない存在であったドド・ンキシがドラム・パーカッションで復帰して(前作には未参加)、作家・学者・(英語)教授であるボストン大学アフリカン・アメリカン学部長Louis Chude-Sokei(ルイス・チュデ=ソキ)の言葉(彼のテキストをベースにした)や声を大々的にフィーチャーし、新進気鋭のコンピュータ・プログラマー集団(AI技術集団のBirds on MarsのNicolas Gorges、Yağmur Uçkunkaya, Florian Dohmannの3人と、元SoundcloudプログラマーのRany KeddoとDerek Tingle)と共に、またしても独創的で革新的な、最先端なサウンドを創り上げた。

ヤンとアンディは、Birds on Mars、Rany Keddo(ラニー・ケド)、Derek Tingle(デレク・ティングル)と共同で、スピーチをモデリングすることができる特注のソフトウェアを制作し、Louis Chude-SokeiやYağmur Uçkunkaya(ヤムア・ウツコンカヤ)のテキストや声を入力し、シンセサイザーのようにコントロールして、演奏できるようにした。ナレーションとして聞えるものも実際はAIが話しているものだったりする。

タイトルや、コンセプト、制作方法から難解な作品を想像されがちであるが、意外にも近年では最もポップで、フュー_チャリティックなダンスフロアーの高揚感を期待せずにはいられない、ユーザー・フレンドリーな内容となっており、サウンドだけでも十二分に楽しめる作品に仕上がっている。
まず、海外で先行シングルとなった「The Latent Space」と「Artificial Authentic」を聴いて欲しい。

本作のアートワークは、電子アートとヴィジュアル・デザインのためのプログラミング言語Processing(プロセシング)の開発者であるCasey Reas(ケイシー・リース)が担当している。
(ICCでも展示を行っているCaseyはマウス・オン・マーズの二人が参加したザ・ナショナルの2017年作『Sleep Well Beast』収録曲の4曲のMVの監督をしている。Caseyはザ・ナショナル結成前の Scott Devendorf、Matt Berningerとバンドも組んでいた)

マスタリングは、Nils Frahmの2020年の『All Encores』や2018年の『All Melody』、Penguin Cafeの2019年の『Handfuls Of Night』等のErased Tapes作品のマスタリングも手掛けているZino Mikorey(Zino Mikorey Mastering)が担当している。

◎ 全世界同時発売
◎ 日本盤のみ完全未発表のボーナス・トラック1曲収録


Mouse on Mars, the Berlin-based duo of Jan St. Werner and Andi Toma, approach electronic music with an inexhaustible curiosity and unparalleled ingenuity. Operating in their unique orbit within dance music’s nebulous echosystem, the duo’s hyper-detailed productions are inventive, groundbreaking but always possessing a signature joyful experimentation. A genre-less embrace of cutting-edge technologies have ensured that each Mouse on Mars release sounds strikingly modern, a fact made more remarkable when one reflects on the duo’s 25 years of making music. New album AAI (Anarchic Artificial Intelligence) takes Toma and Werner’s fascination with technology and undogmatic exploration a quantum leap further. Collaborating with writer and scholar Louis Chude-Sokei, a collective of computer programmers and longtime Mouse On Mars collaborator/percussionist Dodo NKishi, the duo explores artificial intelligence as both a narrative framework and compositional tool, summoning their most explicitly science-fiction work to date.

AAI compiles some the most immediate and gripping music in Mouse on Mars’ extensive catalogue. Emerging from a primordial ooze of rolling bass and skittering electronics, hypnotic polyrhythms and pulsing synthesizers propel the listener across the record’s expanse. Hidden in the duo’s hyper-detailed productions is a kind of meta-narrative. Working with AI tech collective Birds on Mars and former Soundcloud programmers Rany Keddo and Derek Tingle, the duo collaborated on the creation of bespoke software capable of modelling speech. What appears to be Louis Chude-Sokei narrating through the story is in fact the AI speaking. Text and voice from Chude-Sokei and DJ/producer Yağmur Uçkunkaya were fed into the software as a model, allowing Toma and Werner to control parameters like speed or mood, thereby creating a kind of speech instrument they could control and play as they would a synthesizer. The album’s narrative is quite literally mirrored in the music - the sound of an artificial intelligence growing, learning and speaking. Artwork was provided by the inventor of the computer graphics language Processing, Casey Reas, a further exploration of technology’s application in the context of art.

In Chude-Sokei’s text, as machine learning advances, robots begin to develop language, conscience, empathy - “anarchic” and unpredictable qualities. Drawing parallels between the evolution of human and machine, AAI uses technology as a lens to examine deep philosophical questions. The question of how we use technology and world resources feels particularly poignant and timely as we head into 2021. AAI posits that we must embrace AI and technology as a collaborator to break out of our current cultural and moral stagnation, and to ensure our survival as a species. As Werner explains: “AI is capable of developing qualities that we attach to humans, like empathy, imperfection and distraction, which are a big part of creativity. We need to get past the old paranoia that fears machines as the other, as competitors who will do things faster or better, because that just keeps us stuck in our selfishness, fear and xenophobia. Machines can open up new concepts of life, and expand our definitions of being human.”

ベルリンを拠点に活動しているヤン・エスティー・ヴァーナーとアンディ・トーマのデュオ、マウス・オン・マーズは、尽きることのない好奇心と比類のない創造力で、エレクトロニック・ミュージックにアプローチしている。
ダンス・ミュージックの漠然とした残響(エコー・)システムの範囲内で、唯一無二な軌道で活動している彼らデュオの、非常にきめ細かいプロダクションは、独創的で、革新的でありながらも、常に楽しそうな実験性を有しているのが特徴となっている。ジャンルレスな最先端のテクノロジーを積極的に取り込むことで、マウス・オン・マーズの各リリース作品のサウンドは際立って現代的なものとなっており、デュオの音楽制作の25年間を振りかえってみると、この事実は更に注目に値するものとなっている。ニュー・アルバム『AAI』(Anarchic Artificial Intelligence:アナーキク・アーティフィシャル・インテリジェンス:無秩序な人工知能)は、トーマとヴァーナーのテクノロジーへの強い興味と教養にとらわれない調査を、なお一層、飛躍的に前進させる。作家であり、学者であるLouis Chude-Sokei(ルイス・チュデ=ソキ)、コンピュータ・プログラマー集団、長年のマウス・オン・マーズのコラボレーターでパーカッショニストのドド・ンキシとのコラボーレーションにより、デュオはAI(人工知能)を物語の構想(フレームワーク)として、また作曲ツールとして、これまでで最も明確なSF作品を呼び集めながら、探求している。

『AAI』はマウス・オン・マーズの豊富なカタログの中で、最も即時的で、とても面白い(人を魅了する)音楽をコンパイルしている。
とどろくような低音と素早く軽快に動いているエレクトロニクスの根源的な分泌物から生まれた、催眠術のようなポリリズム、パルシング・シンセサイザーが、リスナーをレコードの範囲を超えたところに駆り立てる。デュオの非常にきめ細かいプロダクションの中には、ある種のメタ・ナラティヴ(歴史的な意味、経験、または知識の物語)が隠されている。AI技術集団のBirds on Mars(Nicolas Gorges、Yağmur Uçkunkaya、Florian Dohmann)、元SoundcloudプログラマーのRany KeddoとDerek Tingleと協力して、デュオは、スピーチをモデリングすることができる特注のソフトウェアを共同制作した。Louis Chude-Sokeiが物語を終始ナレーションしているように思えるのは、実際にはAIが話しているものである。Chude-SokeiとDJ/プロデューサーのYağmur Uçkunkaya(ヤムア・ウツコンカヤ)のテキストと声がモデルとしてソフトウウェアに入力され、トーマとヴァーナーが速度やムードのようなパラメーターをコントロールすることが可能になり、それによって彼らがシンセサイザーのように制御して、演奏することが出来る音声楽器のようなものが作成された。アルバムの物語は、まさに文字通り、人工知能が成長し、学習し、話すというサウンド(音)が、音楽に反映されている。アートワークは、コンピュータ・グラフィックス言語「Processing」の発明者であるCasey Reas(ケイシー・リース )によって提供されており、アートの文脈におけるテクノロジーの活用の更なる探求となっている。

Chude-Sokeiのテキストでは、機械学習が進歩するにつれて、ロボットが言語、自制心、共感、つまり「無秩序」で予測不可能な資質を発達させ始める。人間と機械の進化の間での類似点を引用しながら、『AAI』はテクノロジーをレンズとして、難解な哲学的な問題を検討する。私たちがテクノロジーと世界の資源をどのように使用するかの問題は、2021年に向けて、とりわけ切実で、時宜を得ているように感じる。『AAI』は、現在の文化的で道徳的な停滞を打破し、種(人類)としての生存を確保するために、AIとテクノロジーを協力者として受け入れなければならないと、結論を下している。ヴァーナーが説明しているように、「AIは、共感、不完全さ、気晴らしのような、人間に付随している資質を開発することが出来、創造性の大きな部分を占めている。私たちは、機械を別のものとして、物事をより速く、またはより良くする競争相手として恐れる、古い被害妄想を克服する必要がある。なぜなら私たちがずっと、身勝手さ(利己主義)、恐怖、外国人恐怖症(外国人排斥)で行き詰まったままでいることになるからだ。機械は人生の新たな概念を解放し、人間であることの私たちの定義を拡大することが出来る。」

R.I.P. Phil Asher - ele-king

 ロンドンの職人的なDJのひとり、フィル・アッシャーが去る1月21日に亡くなった。享年50歳という早すぎる死は心臓発作によるものだったが、近年はロンドンの喧騒から離れてパートナーと一緒に海辺の町のブライトンに移り住んでいて、そこで亡くなったそうだ。
 彼の死が発表されてからSNSにはカーク・ディジョージオ、ファビオ、アレクサンダー・ナット、マーク・ファリナ、ケリー・チャンドラーなどDJ仲間や音楽界から追悼のメッセージが寄せられた。アレクサンダー・ナットのツイートにあるフィルのポートレイトは、とあるレコード・ショップで腕組みしながらにこやかに笑っているものだ。イギリス人の父とスペイン人の母の間にロンドンで生まれたフィルは、もともと〈クアフ〉や〈ヴァイナル・ソルーション〉といったレコード・ショップの店員をしながらDJをやっていて、そこから一流プロデューサーの道を究めていった。そんな彼らしい写真だ(そもそも父親がレコード屋の店員だったから、親子2代に渡っての天職なのかもしれない)。彼がディーゴをはじめウェスト・ロンドンの面々と交流を深めていったのもレコード屋の店頭だし、その頃はカーク・ディジョージオやパトリック・フォージなどのDJ/プロデューサーもみなレコード屋で働いていた。私自身もかつてレコード屋で働いてDJをしていて、当時はフィルのレコードもよく扱っていたので、そんなところからフィルは他人とは思えなかったものだ(ちなみにその写真のレコ屋にはJディラからジェイムズ・ブラウン、タニア・マリアなどのレコードが飾ってあって、ダンス・ミュージック専門店だと思うのだが、なかなかいいチョイスである)。DJにとってレコード屋で働く利点は、より早くたくさんの音楽に接することができること。新譜メインの店なら最新の音を聴くことができるし、中古店なら世界中の珍しい音に出会うことができる。そうやってフィルは自分の耳を鍛えていったのだろう。

 フィルの名前が広く知られるようになったのは1990年代後半に勃興したウェスト・ロンドンのブロークンビーツ・ムーヴメントによってだが、それより少し前から彼はハウスDJ/プロデューサーとして自身の音楽性やプロダクションを確立していった。最初は自動車修理工をしていたが、音楽への情熱が捨てきれずにレコード・ショップ店員へ転職し、セカンド・サマー・オブ・ラブやレア・グルーヴ・ムーヴメントを通過した1980年代後半。ただ、その頃流行ったアシッド・ハウスやレイヴ方面に行くことはなく、周りに黒人の友だちが多かったこともあって、ハウスの源流であるガラージ・クラシックとか、ファンクにジャズ・ファンク、そうしたネタを使ったヒップホップにも傾倒していった。DJではハウスやテクノをプレイして、初期のシカゴ・ハウスやアンダーグラウンドなNYハウス、ニュージャージー・ハウス、それからちょうどロンドンでも広がってきたばかりのデトロイト・テクノが主なレパートリーだった。

 1990年代初頭にはコンピの編纂や音楽制作も開始して、いろいろ試行錯誤するなかでエンジニア/プロデューサーのルーク・マッカーシーと出会ってレストレス・ソウルというプロダクションを立ち上げる。このプロダクションはジャジーでソウルフル、そして四つ打ちにとらわれない幅広いリズム・アプローチを持つハイブリッドなディープ・ハウスを得意とし、当時で言えばUSのマスターズ・アット・ワークやブレイズ、ジョー・クラウゼルなどに対抗するものだった。
 それからアーロン・ロス、モダージ、マイク・パトゥーなどいろいろな仲間が加わる集団となっていったレストレス・ソウルだが、1990年代半ばのフィルはここを土台にベーシック・ソウル、エレクトリック・ソウル、バック・トゥ・アースなど様々な名義を使って作品をリリースするようになる。同時にいろいろなアーティストと組んでコラボをおこなうようになるが、その多くがウェスト・ロンドンを根城とする人たちで、またパトリック・フォージとやっていたパーティーの「インスピレーション・インフォメーション」がノッティング・ヒル・ゲイトのクラブだったりと、いつしかウェスト・ロンドンの中心人物となっていった。

 ブロークンビーツはこうした交流や情報交換の中から生まれたもので、フィルの土台にあるハウスやテクノ、ファンクやジャズ・ファンクなどとほかの人が持つ別の音楽的要素をブレンドし、そこから新たなビートを作り出すことからはじまっている。そのオリジネイターの一角がヒップホップやR&Bをバックボーンに持つIGカルチャーで、もう一角がフィルだったのである。
 1990年代後半から2000年代にかけ、ウェスト・ロンドンではもうひとつのプロデューサー集団のバグズ・イン・ジ・アティックがあり、ドラムンベースの世界からブロークンビーツ・シーンへ入ってきた4ヒーローのディーゴとマーク・マックはじめドムやGフォース、アシッド・ジャズ時代にヤング・ディサイプルズやガリアーノに関わってきたディーマス、レストレス・ソウルにも加わったモダージ、スイスから来たアレックス・アティアス、ニュージーランド出身のマーク・ド・クライヴ・ローなどが集まっていて、こうしたコアな輪のすぐ傍にもカーク・ディジョージオ、イアン・オブライエン、ジンプスター、トム・ミドルトン、マーク・プリチャードなど多士済々な面々が交友関係を広げていた。
 さらにウェスト・ロンドンにとどまらずに、フィラデルフィアのキング・ブリット、デトロイトのリクルース、ドイツのジャザノヴァ、フランスのDJジルベールといった具合に、世界中のアーティストがお互いに影響を受けたり、与えあっていた。2000年にはディーゴ、ディーマス、Gフォース、IGカルチャーと「Co-Op」というパーティーをソーホーのヴェルベット・ルームズではじめ(後にプラスティック・ピープルへと会場を変えている)、そこは一種のラボのような場となり、次々と新しいブロークンビーツを開拓していった。

 フィルは前述のベーシック・ソウル以外にも、フォーカス、フラッシュ、ウールフなどいろいろな名義を用いて作品リリースやリミックスをおこない、またレストレス・ソウル以外にもブラック&スパニッシュ、ミュージックラヴライフ、フュージュンなどさまざまなプロダクションに参加してきた。DJフレンドリーな12インチやリミックスがメインだったため、自身のアルバム・リリースはフォーカス名義での『スウィート・アンド・サワー』(2002年)のみだが、これにはバグズ・イン・ジ・アティックのカイディ・テイサン、マーク・ド・クライヴ・ロー、レストレス・ソウルのフェリックス・ホプキンス、マイク・パトゥー、ダ・ラータのクリス・フランク、ニュージーランド出身のネイサン・ヘインズなど、フィル周辺の仲間が一挙参加していて、ウェスト・ロンドンのファミリー・アルバムの一枚に位置付けられる。
 サウンドもディープ・ハウスの “マーヴィン・イズ・ワン” (自身の子供のために作った曲)や “ファインド・マイ・セルフ”、デトロイト・テクノ調の “ハル”、R&B系の “ハヴィング・ユア・ファン”、ダイメンツィオをカヴァーしたブラジリアン・フュージョンの “バンバ”、レゲエ~ダブを取り入れた “スペースシップ・ロケット” と幅広く、いろいろな音楽性を融合したブロークンビーツの在り方を示したものと言える。
 また、バー・サンバなどプロダクションに関わって成功を収めたグループやアーティストも少なくなく、そうした中でサックス&フルート奏者のネイサン・ヘインズによる『サウンド・トラヴェルズ』(2000年)は全面的にレストレス・ソウルが関わったアルバム。ネイサン・ヘインズがフロントに立つジャズ・アルバムだが、実質的にフィルとレストレス・ソウルによるコラボレーションで、ジャズとソウルとブロークンビーツが最良の形で融合した傑作である。同じくマイク・パトゥーも参加したリール・ピープルのアルバム『セカンド・ゲス』(2003年)にもフィルとヴァネッサ・フリーマンら周辺人脈が深く関わっていて、こちらもブロークンビーツとソウルやR&Bの架け橋となった金字塔である。

 ブロークンビーツ全盛期に比べてリリース量は少なくなったが、近年も地道にDJ活動は続けていて、ここのところはマイティ・ザフと組んだディスコ/ブギー系の12インチを出していた。派手な活躍こそないが、堅実にビートを編み出す様はまさに匠の技そのもので、ダニー・クリヴィットのように本当に職人という言葉がふさわしいDJのひとりだった。フィルとは一緒にDJをさせてもらったこともあるし、インタヴューをしたりライナー・ノートやレヴューを書いたりといろいろ縁のあるアーティストだったが、何よりもレコード好きな仲間という印象が強い。レコードの話になると目を輝かせていたことをいまも思い出す。

以下は、初代『ele-king』27号(1999年)に掲載されたフィル・アッシャーのインタヴュー(文:野田努/通訳:アレックス)からの抜粋です。ベイシック・ソウルの “オーヴァー・ザ・ムーン” は90年代エレキング(とくに三田格)のアンセムでした。(編集部)

“ハイテック・ジャズ” はバイブルで、ディーゴは俺のヒーローだ

 お店やレーベルを転々としながら、ヴァージンで1年働き、その後は〈ゲリラ〉(註:90年代初頭のUKのプログレッシヴ・ハウスの拠点のひとつで、当時の〈カウボーイ〉と並んで、DJピエールのワイルドピッチ・スタイルへの回答でもあった)でも働いた。1991年にはパスカル・ボンゴ・マッシヴの「ペレ・コンコン」に参加したり、〈ゲリラ・レコード〉からはトゥ・シャイニイ・ヘッズ名義でシングルを出したり、〈ゲリラ〉のコンピレーション『ダブ・ハウス・ディスコ』(1992年)を編集したり、ロイ・デイヴィスを〈ゲリラ〉でライセンスしたりしていた。〈ゲリラ〉を辞めた後は〈トマト・レコーズ〉でプロデュースの仕事をしていたが、まったく評価されなかった。
 アッシャーの音楽にアンダーグラウンドで評価が与えられたのは、ルーク・マッカーシーとパートナーシップを組むようになってからだった。アッシャーとマッカーシーのコンビはレストレス・ソウル、エレクトリック・ソウル、ベイシック・ソウル、バー・サンバ、ブラックン・スパニッシュといったプロジェクトでシングルをリリースしていった。
「ソウル・トリロジーだな。ベイシック・ソウルはマッド・マイクの “ハイテック・ジャズ” にインスパイアされた。マッド・マイクの魅力については何時間だって喋れるよ。“ハイテック・ジャズ” は俺のバイブルだ。俺は昔、デレク・ジャーマン(かつてモータウンのハウス・バンドのベーシストだった、ジェイムス・ジェマーソンの息子)と一緒に仕事をしたことがあって、その仕事を通じてマッド・マイクやレニー(オクタヴ・ワン)と知り合った。クールなヤツらだし、音楽は素晴らしかった」

「ベイシック・ソウルの “オーヴァー・ザ・ムーン” を作ったときに俺は泣いた。ちょうど母親が死んだ直後だった。実はベイシック・ソウルのアルバムも途中まで出来ていた。でも、俺は自分のパートナー(マッカーシー)と最近別れたし、もう俺にはベイシック・ソウルは出来ない」

「俺たちはヒップホップのやり方でハウスを作っていた。そこにディーゴも興味を持ったんだ。4ヒーローの『2ペイジズ』を初めて聴いたとき、俺は一ヶ月のあいだ何も出来なかった。こんなに素晴らしいアルバムがあるのに俺が音楽を作る必要はないとすら思った。ディーゴはマジで尊敬している。俺のヒーローだ。もしディーゴがビルの屋上から飛び降りろと言うなら、俺はビルから飛び降りる」

「俺は正直なところまだ自分がアルバムを作れるほどの人間じゃないと思っているんだ。金のためにアルバムを出すのはイヤだし、どうせなら人生を語る1枚を作りたいからな。メッセージをちゃんと伝えたいしね。真夜中に吹雪のなかをドライヴしていて、前方から光が見えたのなら、その光がどんな光かどうして光っているのかなんてことは問題じゃない。光が周囲を照らしているそのこと自体が重要なんだ。わかるかな? 俺がもし光を見失ってしまったら、そのときは潔く音楽を辞めてバスの運転手でもやるよ」

Jamael Dean - ele-king

 カマシ・ワシントン『Heaven And Earth』にも参加経験のあるLAの新星ピアニスト、ジャメル・ディーン。〈Stones Throw〉から送り出された『Black Space Tapes』につづいて、今度はソロ・ピアノ・アルバムがリリースされることになった。
 趣向を凝らした前作とは対照的に今回はピアノ1本で勝負、サン・ラーのカヴァーで幕を開けるところもイキだ。カルロス・ニーニョなどからも信頼の厚いジャメル・ディーン、その美しきタッチに耳をすましたい。

JAMAEL DEAN
Ished Tree

Thundercat や Kamasi Washington が信頼を寄せる、ロサンゼルスの天才ピアニスト、プロデューサー Jamael Dean (ジャメル・ディーン)。Mary Lou Williams や Sun Ra のカヴァーも含めて、宇宙と対話するように奏でられた、待望のソロ・ピアノ・アルバムが完成!! ボーナス・トラックを加え、日本限定盤ハイレゾMQA対応仕様のCDでリリース!!

Official HP :
https://www.ringstokyo.com/jamaeldeanishedtree

星座と幾何学にインスパイアされた多面的な美しさを持つ楽曲が、リリカルなタッチで演奏されていく。LAジャズのレジェンドであるホレス・タプスコットに捧げてネイト・モーガンが書き、一度も録音されなかった名曲 “Tapscottian Waltz” も大切に取り上げている。そして、目を惹き付けるドローイングとテキストに包まれたパッケージも、深みのある佇まいを見せる。ジャメル・ディーンは、ピュアで特別なピアノ・ソロを作り上げた。(原 雅明 rings プロデューサー)

アーティスト : JAMAEL DEAN (ジャメル・ディーン)
タイトル : Ished Tree (イシェド・ツリー)
発売日 : 2021/3/24
価格 : 2,800円+税
レーベル/品番 : rings / The Village (RINC75)
フォーマット : MQACD (日本企画限定盤)

* MQA-CDとは?
通常のプレーヤーで再生できるCDでありながら、MQAフォーマット対応機器で再生することにより、元となっているマスター・クオリティのハイレゾ音源をお楽しみいただけるCDです。

Jamael Dean - Piano
AK Toney - Vocals on "Soul Of The Griot"
Sharada Shashidhar - Album Art
Mixed and Mastered by Wayne Peet

Tracklist :
01. When There Is No Sun
02. Introspection
03. Journey In The Night Boat
04. Anpu
05. Duat
06. Cancer
07. Black Sheep
08. Tapscottian Waltz
09. Soul Of The Griot ft. AK Toney
10. Ballad For Samuel
&
japan Bonus Track

Arca × Oliver Coates - ele-king

 昨年『KiCk i』を送り出したアルカが新曲を発表、なんと、おなじく昨年アルバム『Skins n Slime』をリリースしたオリヴァー・コーツとコラボしている。

 アルカのスペイン語のヴォーカルとオリヴァー流エフェクトを施されたチェロが、じつに厳かな空間を出来させている。ドラマ用に作られた曲とのことです。同曲を収録した4曲入りEPはこちらから。

ARCA
アルカ4曲入最新マキシ・シングル配信中!
表題曲はオリヴァー・コーツ参加!!

最新アルバム『KiCki』がグラミー賞にノミネートされているアルカが4曲入の最新マキシ・シングル「Madre」をリリースした。タイトル曲はトム・ヨークが自身のツアーのオープニング・アクトに指名し、ジョニー・グリーンウッドやアクトレス、ローレル・ヘイローとも共演するオリヴァー・コーツとのコラボレーションとなっており、アロン・サンチェスが手がけた同作のヴィジュアライザーも公開中。

Arca – Madre feat. Oliver Coates
https://youtu.be/JAS5k0xme8E

本作はHBOの人気ドラマ「EUPHORIA」のためにアルカが書き下ろしたオリジナル・スコアの一部を再構築した作品。数年前にアルカ自らがチェロを弾きながら歌った収録曲「Madreviolo」のレコーディングの際にアウトテイクとなった未加工のヴォーカルにオリヴァー・コーツがチェロを追加して完成させられた。

この「Madre」は私が思い描くことはできても、形にすることができないアレンジを必要としていた。そして、オリヴァーと音源をシェアして楽曲がその全貌を露にして戻ってきた時にはまさに強いケミストリーを感じることができた。 - アルカ

アルカが送ってくれたアカペラに伴奏を書いて送り返したら、彼女がすごく気に入ってくれた。そこから9日間缶詰でこの素晴らしい歌声に合うような繊細な演奏を何度もレコーディングした。まるで大聖堂の奥にあるゴースト・オーケストラのようなハーモニーとリズムが現れたこのヴァージョンに辿り着くまでね。 - オリヴァー・コーツ

シンガー、DJ、パフォーマー、実験音楽家、ビョークやカニエ・ウェスト、FKAツイッグスを筆頭とするプロデュース業、そしてノンバイナリーのラテン系トランスジェンダー・アーティストとしてまさに唯一無二の活動を続けるアルカ。絶賛発売中のKiCkシリーズ第1弾となる『KiCki』にはビョークやソフィー、ロザリア、シャイガールら豪華ゲストが参加し、衝撃的な美しさに満ちたエクスペリメンタル・ポップを展開。また同作は第63回グラミー賞のベスト・ダンス/エレクトロニック・アルバム部門にノミネートされている。

label: BEAT RECORDS / XL RECORDINGS
artist: ARCA
title: Madre (Maxi-Single)
release date: NOW ON SALE

https://arca.ffm.to/madre

label: BEAT RECORDS / XL RECORDINGS
artist: ARCA
title: KiCk i
release date: 2020.07.17 Fri On Sale

国内盤CD
国内盤特典:オリジナルステッカー封入/解説書・歌詞対訳封入
XL997CDJP ¥2,200+tax
LE1488CDJP ¥2,200+税

BEATINK.COM:
https://beatink.com/products/detail.php?product_id=11126

Amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/B088V97ZMJ
Tower Records: https://tower.jp/item/5056406/
HMV:https://www.hmv.co.jp/product/detail/10933205

DJ Hell - ele-king

 ドイツのヴェテラン、DJヘルが3年ぶりにニュー・アルバムをリリース……するのだが、これがとても興味深いことになっている。
 ジミ・ヘンドリックスにはじまり、ロン・ハーディ、クラフトワーク、エレクトリファイン・モジョ、ギル・スコット=ヘロンと、ハウスやテクノへと至るブラック・ミュージックの歴史を追うような曲名が並んでいるのだ。「過去、現在」のあとに「未来なし」と続くタイトルもなにやら思惑がありそうで気になってくる。これは、2020年という激動の一年を受けて思いついたコンセプトだろうか?
 日本盤は1月20日に〈カレンティート〉から発売されています。

ドイツのテクノを代表する巨匠のオールドスクール回帰な円熟の新作

ヨーロッパを代表するエレクトロニック・プロデューサー、DJヘルによる古き良きハウスやテクノへのオマージュを捧げたニュー・アルバム。
シカゴ、ニューヨーク、デトロイトからクラフトワークまで、さまざまなトピックを編み込んだ、ダンス・ミュージックの教科書のような快心の一枚。
ヘルが新たに立ち上げた新レーベル〈The DJ Hell Experience〉からのリリース。

アーティスト:DJ HELL
アルバム・タイトル:House Music Box (Past, Present, No Future)
商品番号:RTMCD-1468
税抜定価:2,200円
レーベル:The DJ Hell Experience
発売日:2021年1月20日
直輸入盤・帯/日本語解説付国内仕様

収録曲(デジタル版とは曲順が異なります)
1 Jimi Hendrix
2 Hausmusik
3 G.P.S
4 Freakshow
5 Electrifying Mojo
6 Out Of Control
7 The Revolution Will Be Televised
8 Tonstrom

◆ドイツのベテランDJ/プロデューサー、DJヘルの、『Zukunftsmusik』(2017年)以来となる新作アルバム(通算第六作)が完成。

◆前作のエレクトロ路線から一転、今回は、シカゴやニューヨークのハウス・ミュージック、デトロイト・テクノ、それらのルーツであるクラフトワークの電子音楽など、古き良き時代のさまざまなトピックをそこかしこに編み込んだ、ダンス・ミュージックの教科書のような仕上がりに。

◆硬くて冷たい無機質なビートとベース・ラインと鮮やかなコントラストを描く煽りのきいたキラーなシンセ・リフ。フロアの炎上を加速させるEBMマナーの先行シングルの “Out Of Control” は、スパイク・ジョーンズ監督の映画『マルコヴィッチの穴』からインスピレーションを得たというサイボーグなビデオも最高!

◆ジミ・ヘンドリックス生前最後のインタビューを引用した “Jimi Hendrix”、ロン・ハーディーへのオマージュを込めた “Freakshow”、オールドスクールなシカゴ・ハウス&アシッドをヘルの流儀で再構築したタイトルもそのものズバリな “House Music”、クラフトワークの自動車モチーフを取り入れた “G.P.S”、デトロイト・テクノの誕生に大きな影響を及ぼした伝説のラジオDJの名を忍ばせた “Electrifying Mojo”、ギル・スコット・ヘロンを見事にハウス化した “The Revolution Will Be Televised” などなど、いずれのトラックも、懐かしさを含みつつも、現在進行形のダンス&エレクトロニック音楽としてのパワーや機能性も、抜群。

◆ヘルが新たに立ち上げた新レーベル〈The DJ Hell Experience〉からのリリース。

https://www.djhell.de/

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