「You me」と一致するもの

Rider Shafique - I-Dentity / Freedom Cry - ele-king

Rider Shafique - I-Dentity / Freedom Cry (Young Echo Records - YE001)

 〈ノー・コーナー〉、〈ホットライン〉、〈ペン・サウンド〉といったレーベルを運営しながら、ブリストル新世代の音楽を世に送り出してきたヤング・エコー。ゴーゴン・サウンドとしても知られるふたり、カーンとニークの他、ヴェッスル、エル・キッド、ジャブ、アイシャン・サウンドなど、個々の活動においても注目を集めるプロデューサーたちが参加しているコレクティヴだ。彼らがカバーする音楽範囲はグライム、ダブ、パンク、エレクトロニカと幅広く、これまでに発表されてきた作品では、いずれにおいても過去の焼き直しに終わることのないエッジの効いたサウンドを聞くことができる。そんな彼らが多岐にわたる活動を集約することを目的に、コレクティヴ名を冠した〈ヤング・エコー・レコーズ〉を始動した。

 コレクティヴの運営面を主に手掛けているオシア曰く、「ダンスフロア向きではないリリースが増えていきそうだから、できるだけ多くの人に届けられるようにしたい。これまでのレーベル運営で得た経験を活かしてコレクティヴの音源から特別なものを作っていければと思っている」とのことで、〈ヤング・エコー・レコーズ〉では以前よりも広義の意味でのエレクトロニック・ミュージックが対象とされていくようだ。そしてレーベルの第1作を担当するのはコレクティヴに所属するMC、ライダー・シャフィーク。「I-Dentity / Freedom Cry」は、彼の個人体験に根付いた葛藤を深く掘り下げたメッセージ性の強い作品となっている。

 「もともと、どこからやってきた?」という問いに対し、「俺は母親の子宮からやってきた。多くの人と同じように。みんなと何も違わない」と坦々とした声で自らの出自を表明するライダー・シャフィーク。幼少期に自分はブラックなのだと母親から告げられたものの、ベージュに近い肌を持つ彼はその言葉に違和感を覚える。魂を映し出すのは肌だけではない、ブラックとは肌の色よりも深く、表面的なものではないと教え、社会が彼をどのように見るのかを説明する母親。白人ではない人々が受ける扱いは、かつてとは幾分変わってきたのかもしれないが、それでもなお、先述の質問のように差別的な言葉使いとは違うかたちで日常のちょっとした場面に表出する。アイデンティティは誰に証明するためにあるのか。その問いに対し、彼の思いを綴った“I-Dentity”。独白しているような声の向こう側で金属摩擦のような甲高く不穏に起伏するドローンを鳴らすのは、今年、ミューザックをテーマに作品を発表したサム・キーデルことエル・キッドだ。

 一方“Freedom Cry”では、アイシャン・サウンドとのプロジェクトであるゾウとしても活動するジャブが厳かな雰囲気のホーンセクションに合わせてジャズのドラムブレイクをループさせ、そこへライダー・シャフィークが人種差別撤廃運動を繰り広げた人物を挙げていきながら、ブラック・パワーの詩を読み上げる。「俺の使命は人間が人間として繁栄している姿を見ること。もともとシンプルなものを俺たちはなぜ複雑にしてしまうんだ? とてもシンプルなのに」と彼は説く。本作では、気付かぬうちに意識へ根付いている先入観や境界がライダー・シャフィークの個人体験を通じて浮き彫りにされている。

 数ある才能を抱えるヤング・エコーから、なぜライダー・シャフィークをレーベル1作目としてフィーチャーすることにしたのかをオシアに尋ねてみたところ、「現在の世界情勢を考えたとき、今、聞かれるべき重要なメッセージになるんじゃないかって思ったんだ」という答えが返ってきた。以前からポリティカルな姿勢を取っている彼らしい回答だが、レーベルは必ずしも本作のようにメッセージ性の強いものになるとは限らないようだ。ブリストルの次世代を牽引してきたコレクティヴによる、これからの展開には今後も注視したいところ。

interview with POWELL - ele-king

 俺は間違っても君がやっている音楽のリスナーではない。俺は機械化されたダンス・ミュージックが大嫌いなんだ。それがプレイされるクラブも、クラブに行くような連中も、連中が摂っているドラッグも、話している内容も、着ている服装も、やつらのなかのいざこざも、基本的に、100パーセント、そのすべてを憎んでいる。
 俺が好きなエレクトロニック・ミュージックは、ラディカルで他と違ったもの──ホワイト・ノイズ、クセナキス、スーサイド、クラフトワーク、それから初期のキャバレー・ヴォルテール、SPKやDAFみたいな連中だ。そういうシーンや人たちが/クラブに吸収されたとき、俺は敗北感すら覚えたものだ。俺はダンスこの地球上の何よりも深くクラブ・カルチャーを憎んでいる。そう、俺は君がやっていることに反対しているし、君の敵なんだ。 

──パウウェルがビッグ・ブラッグをサンプリングしたことを
スティーヴ・アルビニに知らせたところ、
本人から返信されたメールより

 いや、だからこっちはそれどころじゃないんだって。日曜日のサッカーの時間がはじまる1時間前からもうほかのことは考えられない。時間がずれていたらライヴァルたちの試合も見なければならない。試合後は、監督インタヴュー/選手コメントを3回以上は読み返す。ホント、応援するほうもたいへんだよ。J1昇格、すなわち人生がかかっているんだから。
 もちろん某君にとってはどうでもいいことだった。アレックス・スモークもゾンビーも、アルバム、いまひとつだったな、と彼はぶっきらぼうにつぶやいたのだ。それから、彼はこういう。もっとできたはず。
 もっとできたはず? いや、いまはどんなに泥臭くてもいいから勝って欲しいし、こう言ってはナンだが、連中はまだずっとマシな部類に入る。多くのクラブ・ミュージックがいま見失っているものはアティチュードにほかならない。テクノというジャンル名は、ホアン・アトキンスによってアルビン・トフラーの『第三の波』の“テクノ・レベル”から取られたという話は有名だが、早い話、その“レベル”の部分が欠落している。つまり、スリーフォード・モッズと〈Editions Mego〉との溝を埋める存在はおらんのかと。パウウェルが注目されなければならない理由はまずここにある。
 「絶え間なく新たな難題に直面しているような感覚……」と、パウウェルは説明する。台頭する右翼勢力、シリア内戦と難民、あるいはブリグジットにトランプ、いまやネットで世界中のニュースにアクセスできる。この10年で、未来/フューチャーという、80年代~90年代のハウス/テクノの楽天的な合言葉も喪失したわけだが、パウウェルときたら、まさに日々更新される恐怖のなかで、それでもぼくたちは楽しくやっているんだと言わんばかりだ。笑いがあるんだな。ここにもうひとつ、パウウェルに惹かれる理由がある。
 ジョン・サヴェージの『イングランズ・ドリーミング』によれば、否定者とは時代を切り拓くものであるから、期待しましょう。『スポート』は、パンク40周年の2016年にリリースされたテクノ界のブライテスト・ホープの最初のアルバム、アンダーグラウンド・ロックンロールの声明である。
 え、もっとできたはず? 

エレクトロニック・ミュージックにはもっとアティテュードが必要だ。極端に味気なく(flat)になってるし、政治性も閃きもアイデンティティも欠落しきっている。あまりにも無難で刺激がない。いまや、フェスティヴァルが音楽界の風景をコントロールしているような気分になってるどこかのエージェントがつまらない出演者ばっかりブッキングして悦に入っているが、ぼくは音楽でエンターテイナーになるのはごめんだ。


Powell
Sport

XL Recordings/ホステス

Techno not TechnoUnderground Rock'n'Roll

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最初の質問はちょっとファニーに聞こえるかも、ですが、なぜスイカ(https://www.youtube.com/watch?v=8bYsnJfRcdA)なんですか?

パウウェル:えぇと……、全部は話せないな、ちょっと汚い話なんで。その……どうしよう、誰にも裏話は教えられないな、ちょっと恥ずかしいから。ただ、14才のとき、ぼくの身にあるおかしな出来事が起こった、とだけ言っておく(笑)

それだと余計に興味を持たれそうだけど(笑)、とにかく何かを象徴してはいるんですね、スイカは。

P:象徴するものはあるよ。ただ、メロン自体はぼくが自分のラジオ番組をメロン・マジックにしたり、ちょこちょこ使ってるうちにぼくのファニーなアイデンティティのようになっていたんで、今回はそれを茶化したってとこだね、ほんとのところ。

なるほど。じゃあ、こちらで

P:うん。

さて、あなたは作っているヴィデオもおかしくて興味深くて行間を読みたくなるという……

P:うん、もちろん。

観る人に「これはどういうこと?」と考えさせようという意図もあるんでしょうか。

P:いや、そんなことないよ。なんだろう……ぼくがやることはみんな、音楽もそうだし、音楽について語るときも、自分の見せ方にしても、ありのままの自分を可能な限り真実で正直な姿で表現しようとしているだけなんで、ヴィデオも……あのメロンにしても、ぼくが友だちとツアー先でメロンで遊んでるっていう、それだけのこと。ぼくが作るヴィデオはどれも自分自身を反映しているにすぎない。みんなに、何がぼくの動機付けになっていて、ぼくがどういう人なのかをわかってもらいたいだけで、わざとらしいものを作ろとしてるわけじゃない。そういう意味じゃ、推測すべきことなんて何もないんだよね。すべてはぼくなんであって、これが真実ってこと、基本的に。

“ジョニー”のヴィデオもそうだし、“アンダーグラウンド・ロックンロール”(https://www.youtube.com/watch?v=bamMBFc8AtU)も……

P:あぁ、“アンダーグラウンド・ロックンロール”のヴィデオはぼくも好きで、何が好きかっていうと……ぼくはポピュラー・カルチャーの搾取が大好きなんだよ。アンダーグラウンドのどん底あたりにいるアーティストがポピュラー・カルチャーを利用して、搾取して、それで遊んでしまうというのが面白い。ぼくは前からその手のものが大好きだった。ポップ・アートが好きだから、アンディ・ウォーホルを真似て自分の顔を描く、なんてことも、もっと若い頃にはやってみたし。そうやってカルチャーを搾取することには、前々から関心があったんだ。そういうのって、やっていることに注目してもらう手段として面白いし、そこに周囲とのインタラクションを生み出すのもまた面白い。
 ぼくはけっこう肯定派なんだよね、その……、マーケティングとかプロモーションとかいう言葉を使うのは好きじゃないけど、ぼくがアートとしてやっていることと別物だとは思っていなくて、実は同じことだと考えているんだ。ぼくは自分の音楽をみんなに聴いてもらう術を探し出すこともまた楽しいと思ってる。だって、結局のところぼくはこれを生涯ずっとやっていきたいんだから、みんなに聴いてもらいたいよ。じゃないと、作り続けていけないし。

アクセスしやすさ、というのもアートの一環、ということでしょうか。祭り上げるのではなく。

P:そうだね。ただ、アクセスしやすい、という言い方は間違いかも。というのも、ぼくはとっつきやすいものを創ろうとしたことはないんで。出来たものに対して人びとを呼び込もうとはするけど、わかりやすい音楽を作って気に入ってもらおうとしているわけじゃない。ぼくはぼくのやることをやって、その上でみんなに入ってきてもらうための方法を模索する、ということ。入って来ずらいようにはしたくない。

同じことがタイトルにも言えますか。『スポーツ(SPORT)』というのは、どう解釈したらいいのか。

P:“SPORT”って、ぼくは素敵な概念だと思うんだ。人びとが競い、闘い、苦しみ、努力し……スポーツにはそういうのがみんな詰まってる。精神的なものも、肉体的なことも、そして難しくもあり、楽しくもあり。そこがぼくにはすごく重要なんだよね。ぼくにとってこのレコードは心と体と両方に働きかけるものだ。いまのダンス・ミュージックは体だけ……になっているとぼくは思うんだけど……じゃなくて、もっと全方向的な体験……ゲームみたいな感じかな。多角的で、進んだ先々で予想もつかない楽しみが待っている。ぼくとしては、レコードを中心にゲーム的な感覚を生み出す、という発想が気に入っていて、作りながら自分でもそんな感覚を味わっていたんだ。だから、この言葉がいちばん相応しいように感じた。それに、なかなか素敵な言葉だと思うよ、スポーツって。人によって意味するものがいくらでも変わってくるだろうから、好きに解釈してもらえるのもいいところだ。

スポーツって、アートとは対極のイメージがありますが。

P:ぼくも子供の頃はスポーツやってたけど、いまはスポーツが得意なタイプじゃない。いまでも観るのは好きだけどね。とはいえ、POWELLのショウを持ちこたえるには、かなり運動能力が必要だから、ね、その意味でも相応しいかも。

ダンス・ミュージックはおっしゃるとおりフィジカルだし。

P:そう。

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いま、悪いことばっかりあるだろ? シリアもそうだし、ドナルド・トランプも、BREXITも、経済もそう。常にこう、カオスの淵に立たされているような感じがする。落ちてしまったらすべてがダメになる、と。でも、実際にそうなってしまう気配はない。その感じがぼくの音楽に表れている。絶え間なく新たな難題に直面しているような感覚……。

ところで、質問者はあなたのやっていることのパンクな側面に注目しているようで、このアルバムも幕開けはあなたのトレードマークでもあるノイズで始まりますが、ペル・ウブやザ・フォールやフガジをサンプリングしているあたりなど……

P:うん。

あなたの音楽はシカゴのハウスとかではなく、スロビング・グリッスルズやコイルなど、もっと政治性のある音楽と比較できるのではないか、と。もっとも、あなたのやっていることはまったく政治的ではありませんが……。

うん。

そういった側面と関わることは避けているのか……。

P:ぼくの音楽は常に、ある意味政治的だと自分では思ってる。自分の信じるものを目指して本気で闘っているから。わかる? ぼくはそう思うんだ。狙いとしては、反発なり、行動なりをぼくが思うところの非常に退屈なエレクトロニック・ミュージックに対して起こしているつもりだ。過去20年、リサイクルばかりで同じことしかやっていないからね、ああいう音楽は。
 あと、質問者の指摘はまったくそのとおりで、ぼくの育ちは、DIYクラブに通ったりギターをブッ壊したりボトルを人の顔に投げつけたりするタイプのパンクではなかったけど、やっていることにはたしかにパンクな側面がある。なぜかというと、パンクって必ずしもパンク・ミュージックを聴いていることをいうんじゃなくて、姿勢に表れるものだから。あと、意思を持って……刺激を与えることで何かを変えようとする姿勢、それがぼくの音楽の根本にあることは間違いない。いま、名前が挙がったようなバンドの方が、物事との対峙を迫るというか、音楽に限らずアートや世界や色んなものに対する見方を変えてしまうというか、そういう点でワクワクさせられるんだ。こうやって、ちゃんとしたレコード会社で作品をつくれるようになっても、その発想を固持できているというのは、ぼくとしてはすごく恵まれていると思う。エクセルみたいなレコード会社が、こういう音楽と、こういう音楽を作る人間をそこまで信じてくれているんだから本当にありがたい。
 ぼくは、エレクトロニック・ミュージックにはもっとアティテュードが必要だと思ってる。最近、極端に味気なく(flat)になってるし、政治性も閃きもアイデンティティも欠落しきっているからね。あまりにも無難で刺激がない(dull)。いまや、フェスティヴァルが音楽界の風景をコントロールしているような気分になってるどこかのエージェントがつまらない出演者ばっかりブッキングして悦に入っているが、ぼくは音楽でエンターテイナーになるのはごめんだ。レコードの冒頭に残虐なノイズを持ってくるのも、そこに理由がある。「あんたを楽しませるつもりはない、ぼくなりに音楽に大切だと思うものを届けにきただけだ」という、ぼくからの宣言さ。だから、取りようによっては警告、だね。でも、それを理解しないバカなやつをそこで排除する策でもある。

ただ、そういうのを直球で深刻にぶつけてくるだけではなく、そこはかとなくおかしいユーモアに包んでいる感じもあなたの音楽にはありますよね。前述のパンクなバンドにもあった要素です。それもまた、あなたがパンクに共感する部分ですか。

P:ユーモアはぼくにはすごく重要だよ、うん。ただ、やっぱり意図的なものではない。さっきも言ったように誠実に、正直にやっていれば人間性が滲み出るんだと思う。世のなかにはシリアスな音楽がいっぱいあるよね、実験音楽の世界とか、まあ、名称は何でもいいけど。でも、そこにも楽しんでしまう隙間はあるんじゃないか、とぼくは感じてる。自分も楽しんで、聴く人を笑わせてしまう余地が。ぼくは前から、カオス&ノイズと遊び心&ノリ(groove)の狭間の微妙な境界線がすごく好きで、そのギリギリのところに佇んで、いつどっち側に転がるかわからない、みたいな感じを楽しんでいる。カオスの方に落ち込んでいくのか、はたまた遊び心に誘われてパーティに行ってしまうのか。ね? その感覚が、ぼくはすごく興味深いと思ってる。そんな感覚で音楽を体験することが。先を読み切れないっていうのは、最高に興奮するよ。

どっちかに転がり落ちてしまうこと、あるんですか。

P:曲によると思う。難解だったりカオスだったり、それだけのモーメントは作りたくないけど、そうなってしまうときはあるね。でも、カオスがあったら、それに対してもっとこう……グルーヴ主体のものとか、コントラストがあるのがぼくは好きだから、ぼくの音楽は基本、そういうふたつの対照のあいだを行ったり来たりしてるんじゃないかな。それも、できるだけ普通じゃない、ヘンなやり方で。

世界的にそうですが、特に英国では BREXIT以降、ユーモアが失われて緊張感が高まっているように思えます。そんな現状に対するひとつの答として、こういう音楽を提示している、という意識はありますか。

P:夕べ、ガールフレンドと一緒にぼくの音楽について話をしてたんだけど、まあ、ぼくら、よく音楽論議をするんだけどね、昨日は特に、あるインタヴュアーからこのレコードは時代を興味深く反映していると言われたんで、そのことについて……、いま、悪いことばっかりあるだろ? シリアもそうだし、ドナルド・トランプも、BREXITも、経済もそう。常にこう、カオスの淵に立たされているような感じがする。落ちてしまったらすべてがダメになる、と。でも、実際にそうなってしまう気配はない。その感じがぼくの音楽に表れている、と指摘されたんだ。自分では考えたことがなかったんだけど。絶え間なく新たな難題に直面しているような感覚……。でも、それは注意力欠陥というふうにも捉えられるのかな、とぼくは思った。
 ぼくの音楽って、どんどん跳ね回って跳ね返されて変化しながら聴いている人をどこかへ引っ張って行っては何か珍しいものを見せていく、というような。なんでそうなるのかは自分でもよくわからないけど、何もかもがこう……短くて、早くて、シャープで、どんどん変化して、常に何もかもが変わっていく世のなかの動きと繋がっているところは確かにあるのかも。

ある意味ではぼくの音楽もたしかにテクノだとは思うけどね、アルビン・トフラーがその言葉を使ったときの、未来を意味するものだったテクノという本質的な意味においては。ぼくの音楽にとって“未来”はとても大切だ。過去を引き合いに出して語ろうとする人は多いけど、ぼくの希望としては、みんなにこれを古い音楽ではなく新しい音楽として見てもらいたい。


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ところで、あなたは自身のレーベル〈Diagonal〉を持っていますが、その立ち上げから「The Ongoing Significance Of Steel & Flesh」(2011)のリリースに至るまでの経緯を教えてもらえますか。

P:うん、といっても別に経緯ってほどのことはなくて、15年間ずっと作ってきた音楽をリリースしたいと思ったのがきっかけなんだ。それで、色んな人に相談して実現させた。いまの時代、レコード・レーベルを始動させるのは実に簡単なことだからね。ただ、レコード1枚だけ出して終わるレーベルにはしたくない、という思いはあった。で、2作目を出して、気が付いたら35作になってた。ぼくは音楽をプレイするのも大好きだけど、同じくらい自分のレーベルを愛してるんで、もっとそっちに費やす時間があったら、と思う。ここ1年は本当に異常に忙しかったから。

ここでいくつか既存のレーベルの名前をあげますので、あなたがそのレーベルや出している作品についてどう思うかコメントしてもらえますか。まずは〈Blackest Ever Black〉と〈Modern Love〉。

P:うん、〈Blackest Ever Black〉を運営してるキーランのことはよく知ってるよ。20年~10年だったか、ぼくの最初のレコードが出る前、〈Blackest Ever Black〉もはじまる前に会ったことがある。その時、キーランはレインの連中と一緒で、みんなで自分たちのレコードをリリースする話で盛り上がった。その後、〈Blackest Ever Black〉がやるようになったパーティの、最初の2回ぐらいはぼくも参加してプレイしたし、キーランの活動とはぼくは何かと繋がりを持ってきた。〈Modern Love〉も同じで、運営してるシュロム・アブンカはぼくの友だちで〈Diagonal〉のディストリビューションをやってくれてるんだ。だから、すごく近い関係だよ。音楽的には当然、違いがあるけどね。それぞれのアイデンティティがあるし、重要視するものも、提示の仕方もそれぞれだから、音楽的にはそのふたつのレーベルと必ずしも親近感を持ってはいない。でも、姿勢の面では間違いなく共感する。

ふたつ目のグループは〈Pan〉、〈Editions Mego〉、〈Raster-Noton〉.

P:うん、〈Pan〉と〈Mego〉はぼくも大好きだ。理由はやっぱり、〈Pan〉をやってるビルも〈Mego〉をやってるピーターも友だちだからね。音楽に関してぼくがいちばんワクワクするのは、好きなことをやっているなかで出会ったそういう友だちができることなんだ。音楽をやっているから行けるような場所へ旅して、人生や音楽やアートについて素晴らしい考えを追っている人たちと出会って話をしてパーティをして楽しむことができる。そういうレーベルはどれもリスペクトしてるよ。大変な努力と献身が必要だということはぼくもよくわかっているからね。しかも、結局のところそれでほとんど儲かるわけでもない。この手のレーベルを運営している人はみんな尊敬に値する。

そして、いきなりなんですがスリーフォード・モッズは好きですか。

P:あぁ、好きだよ。最高だ。演奏しているところを実際に見たことはないけど、レコードはけっこう持ってる。音は好きだし、すごくいいと思う。いまの時代にすごく必要だ。

必要というのは、メッセージの面で?

P:うん、というか……要は声(voice)、だよね。代表する声……、イングランドの状況を描き出しつつ、それを極めて新しい、独創的でスタイリッシュで革新的なやり方で提示している。だから人は耳を傾ける。そこが素晴らしいとぼくは思う。

彼らが伝えているいまのUK社会は、あなたも同意するところですか。

P:正直、あんまり歌詞には注目していないんだ。いつも音楽の方に耳がいってしまうから。ぼくが感じとっているのは感覚的な……、いや、もちろん言葉は聞こえているし、めちゃめちゃおかしいから印象にも残るけど、具体的にここがこう、というのは必ずしもないな。彼らは自分たちの暮らしを題材にして、その暮らしが自分たちの目にどう映っているか、を表現しているんだと思う。だから、怒りとか、募る不満とか、そういうのは感覚的に伝わってくる。いまこの国で暮らす人の生活が浮き彫りになってくるんだ。別に攻撃的な言葉を使わなうても、敵意みたいなものが伝わってくる彼の声がぼくは好きだな。ああいう音楽にああいう言葉、という組み合わせから伝わるフィーリングが多くを伝えてくる。そこがぼくにはエキサイティングだ。なんかこう、エネルギーが炸裂している感じがする。あと、やってる人の姿勢が伝わってくる。ぼくはそういう音楽が好きだ。

話は戻りますが、あなたがテクノ・ミュージックを好きになったきっかけは何ですか。

P:っていうか、ぼくはテクノ・ミュージックに入れ込んだこと、ないよ。

あら……

P:(苦笑)、正直テクノはすごく退屈だと思ってるから。とはいって、18歳から25歳ぐらまではそれなりにテクノも聴いていて、レコードもずいぶん買った。ただ、テクノの大ファンだったことはなくて、いまとなってはもう、テクノのクラブで一晩中をテクノを聴くなんて無理。退屈しきってしまう。良質なテクノなら好きだけどね。かつてのテクノの本質とか、その成り立ちなんかは興味があって、つまりは音楽を未来へと方向づけよう、そのためにマシーンを使って何か新しいものを創ろうとしていたわけだけど、いまのテクノにそういう意味合いはないと思う。いまのテクノの意味するものは、4拍子のキックドラムさ。あとハイハット。
 まあ、ある意味ではぼくの音楽もたしかにテクノだとは思うけどね、アルビン・トフラーがその言葉を使ったときの、未来を意味するものだったテクノという本質的な意味においては。ぼくの音楽にとって“未来”はとても大切だ。過去を引き合いに出して語ろうとする人は多いけど、ぼくの希望としては、みんなにこれを古い音楽ではなく新しい音楽として見てもらいたい。

たしかに、出始めのテクノにはパンクに通じる姿勢がよく指摘されましたが、その部分は失われているかも。

P:同じ感じはしないよね、もう。

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セックス・ピストルズとぼくが共有するものがあるとすれば唯一、彼らが登場したときの状況ぐらいかな。興味深い時代ではあったよね。そこで彼らはガラリと方向転換をはかった。音楽の可能性における別の選択肢を示したわけだ。ああいう姿勢を、もっとみんな示すべきだとぼくは思うな。何でもそうだけど、何か違うことをやろうとするのなら、ジワジワと違う方向へ押していくんじゃなくて、過激なまでに違うものをいきなり提示するのがいい。


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じゃあ、パンク・ミュージックとの出会いについて教えてもらえますか。

P:さっきも言ったように、いわゆるパンクスだったことはないんだ。聴いてたのはジャングルとかドラムンベースだから。それからテクノ・ミュージックを知って、その後は2004年、2005年あたりにダブステップが出てきてからは2年ぐらい、本気で入れ込んだ。でも、それでエレクトロニック・ミュージックに飽きてしまって、あらためてパンクやポストパンク、インダストリアル・ミュージックを聴いたり、本で読んだりするようになった。ノイズとか、実験音楽、コンピュータ音楽も含めて、そこから5年ぐらいかけていろいろ消化していったんだ。後追い、だよね。「ジーザス、なんでこんなに色んなのをぼくは知らずに来てしまったんだろう!」って感じで。
 なんで、ずっと音楽の旅を続けていて、どこか特定の場所に沈没することはなかったんだ。その代わり、あらゆる音楽を楽しんでこられた。とくに……、なんだろう、それぞれ理由があって何でも好きなんだよな、明瞭な姿勢があるやつ、とか、そういう条件はあるけど……、まあ、願わくばぼくの音楽に、何か特定のひとつからの影響だけでなく、あらゆるものから受けた影響が組み合わさった何かが聞こえていてほしい。だからこそのPOWELLミュージックだと思ってるんで。

たしかに折衷的な音楽性で、いったいどこから作りはじめるんだろう、何がヒントになるんだろうと考えてしまうわけですが、例えばアルバム冒頭の不快にも思えるノイズとか。多幸感溢れるクラブ・ミュージックとは対極ですよね。

P:うん、だけど、自分ではあれが不快だとは思っていない。まあ、ある意味そうなのはわかるけどね。アルバムの冒頭であれが鳴るのは不快ではあるかもしれない。でも自分ではそうは思わないし、耳障りな音だから使った、というのでは決してない。気に入ったから使ったんだ。だから、あの音楽をクラブでプレイするときは、やっぱりみんなを不快な気持ちにさせたいからじゃなくて、純粋にその音がいいと信じているからで。

はい。

P:イライラさせるのが狙いではなく、ぼく自身は大好きで、すごくいい音だと思って使っているわけ。あと、ぼくが使う音って、けっこうブライトでプラスチックなんだよね。歪んでるって言う人が多いんだけど、そんなことはない、かなりのハイディフィニションだ。そういう高周波がぼくは大好きで、脳みそに聴いている音楽について考えさせる効力があるように思う。いつもベースとキックドラムとサブベースにばかり依存するんじゃなくて。そういう低音は伝統的に体に訴えてくるものとされているけど、ぼくは頭のど真んなかと胸の真んなかと、両方にドリルをねじ込んでくるような音のコンビネーションが好ましいと思ってる。

さっき名前を挙げたレーベルの作品は、とても知的だけれどもときにシリアスでオタクっぽさもあるのに対して、あなたのレーベルの作品はそれもありつつ、実験的で、すでに話に出たようにユーモアが必ず含まれている。そこがあなたやあなたのレーベルの作品の好きなところだ、と質問者は言っています。

P:それはまったくその通りだし、ぼくらの見解そのものだよ。ぼくらはみんな、背景は似ていて、音楽的にも……クレイジーで意外性があってファニーで美しくて……というのが好きだし、そういうのをライヴでも、リリースするレコードを通じても届けたいと思ってやっているのも同じだけど、要は自分らしさ、だね。

あなたのクラブ・ミュージックEPをフランケンシュタインのモンスター・サウンドと称した人がいるそうですが……

P:うん。

それは認めます?

P:あぁ。

わかりました。ところで、その後、スティーヴ・アルビニから折り返しの連絡はありましたか。

P:Yeah yeah yeah!  Eメールで話してるよ。あれはぼくが彼を攻撃する意味合いじゃなかったんだ。彼が言っていることをぼくもその通りだと思ったから、発言を引用したんだよ。コミュニケーションの機微ってやつをみんなわかってないんだな、と思った。ぼく自身は間違いなく、スティーヴと同じ考えだ。あのEメールに名前が出たバンドをぼくも大好きなんで、スティーヴ・アルビニの声を借りてぼくがしゃべっている、という主旨だったんだけど……。彼は理解してくれている。
 でもま、あれがきっかけで興味深い会話があちこちで生まれて、みんなが音楽の状況について語り合うようになったらしいから、ね。ロック・シーンからパンク、エレクトロニックからEDMに至るまで、色んなジャンルの人を巻き込んで、あの一風変わった広告から議論が巻き起こったんだから面白い。ヘンな広告ではあったけど、あれはぼくがスティーヴの言うことに賛同したから出したんであって、反論の意味ではなかった。

みんな誤解してますね。しかし、ホワイト・ノイズ、ゼネキス、スーサイド、クラフトワーク……とくれば、あなたのやっていることと共通点は多いですもんね。

P:まったく、その通り。

では、ここでNHKのコーヘイ・マツナがの話を。あなたのレーベルから出していますが、彼の作品についてはどう感じていますか。

P:コーヘイはスゴイよね。たしか2008年に彼はラスター・ノートンから1枚、「アヌミニアム(Unununium)」ってレコードを出している。黄色と白のやつ。〈Raster-Noton〉がやってたシリーズの一環だったと思う。あれで俺が考えていた音楽の可能性が、ガラリと変わったのを覚えてる。ぼくは最初のレコードをやるにあたってコーヘイに 「ハイ! ロンドンのオスカーっていいます……」 みたいな手紙を書いたことがあったんだけど、それからまたたまに話しをするようになったり……って感じで、割と自然な流れでリリースが決まったんだ。それってスゴくない? ヒーローだったコーヘイと5年ぐらいしたら一緒に仕事してるんだから。最高だよ。すごく感謝してる、彼に対しても、だけど音楽というものに対して。音楽のおかげでぼくは彼に信頼して任せてもらえるようになったんだから。音楽ってスゴイよ。

イーロン・キャッツは?

P:イーロンもだけど、みんな経緯は似たり寄ったりで、自然と出会った人たちなんだ。知らない人のレコードをリリースしたことはない。決まって、家族なり友だちなりってのが先にある。インターネットの中だけに存在する実体のないレコード・レーベルを作るのなんて、お安い御用さ。ただ、それがどういう方向へ進んでいくか、となるとレーベルに関わる人間どうしのつながりがすごく重要になってくるからね。

ふたつ名前をあげます、まずはセックス・ピストルズ。彼らと音楽的に、あるいはメッセージなど姿勢の上で、何か自分と共通するものはありますか。

P:う~ん、ないな、別に。パンクを踏まえてるって意味では通じるところはあるけど、う~ん……、セックス・ピストルズとぼくが共有するものがあるとすれば唯一、彼らが登場したときの状況ぐらいかな。興味深い時代ではあったよね。そこで彼らはガラリと方向転換をはかった。音楽の可能性における別の選択肢を示したわけだ。ああいう姿勢を、もっとみんな示すべきだとぼくは思うな。何でもそうだけど、何か違うことをやろうとするのなら、ジワジワと違う方向へ押していくんじゃなくて、過激なまでに違うものをいきなり提示するのがいい。

もうひとつの名前はアンドリュー・ウェザオール。知っていますか?

P:もちろん! 会ったことあるし。

あ、面識もあるんですね。

P:うん、一度だけ、あれは……スイスか、去年の夏に。すごい人だよね。イギリスの音楽界ではアイコンのような存在だから、みんなリスペクトしてるよ彼のことを。ぼく自身はあんまり彼の活動をフォローしてなくて、長年追いかけてますって感じじゃないけど、英国の音楽に大きく貢献した人だから当然のようにリスペクトしている。

ありがとうございます。最後に、POWELLという自身の苗字でレコードを出すことにしたのはどうしてですか。

P:ほかに名前を思いつかなかったから。

(笑)

P:いや、他にも名前は山ほど考えた。でも、どれもピンとこなかったから本名にしたんだよ。

(以上)

Ishan Sound & Rider Shafiqu - ele-king

 尖ったサウンドの伝統を持つブリストルで現在もっとも尖っているポッセ、ヤング・エコーのメンバーでもあるIshan Sound(アイシャン・サウンド)とRider Shafique(ライダー・シャフィーク)の2人が来日する。
 アイシャン・サウンドは、〈Peng! Sound〉や〈Hotline Recordings〉、〈Tectonic〉などからもリリースする、現在20代半ばのプロデューサー。マーラやザ・バグなどからもイヴェントに招かれ、またリリースされる曲はレゲエ系サウンドシステムでも好評を得ている。ルーツへの興味を示しつつ、ダブステップ~グライム~トラップ~ダンスホールを折衷する、まさに新世代感覚。
 もうひとりのライダー・シャフィークは、もっか注目もMC。ヒップホップ~ジャングル~ダブステップなど多くのDJやプロデューサーに招かれ、そのラップを披露している。Kahn、Sam Binga、Epoch、Gantz、Submotion Orchestraなどなどの作品に参加している。
 最近Young Echoはレーベルを立ち上げたが、その第1弾は、El KidとJabuがトラックを提供した、ライダー・シャフィークのスポークン・ワード作品(https://bs0jukebox.tumblr.com/post/152601400294/i-dentity-rider-shafique-official-video
 詩の邦訳: https://dsz-instagram.tumblr.com/tagged/ye001

 とにかく、ブリストルのアンダーグラウンド・ミュージックの気鋭の2人の来日、ぜひ生で体験してほしい。11月22日から、東京、名古屋、京都、福岡、金沢、宇都宮をまわります。

■Ishan Sound & Rider Shafique Japan Tour Nov/Dec 2016

The xx - ele-king

 きました。ついにきました。
 全英1位を獲得した前作『コエグジスト』から4年半。ザ・エックス・エックスが新作を来年1月13日にリリースします。タイトルは『アイ・シー・ユー(I See You)』。レーベルは〈ヤング・タークス〉。プロデューサーはロディ・マクドナルドと、メンバーのジェイミー。現在、同アルバムから先行で新曲“On Hold”が公開されています。

 どうです? これはアツいでしょう。ザ・エックス・エックス新章の幕開けです。いやがうえにもアルバムへの期待が高まります。また、ザ・エックス・エックスは新作にさきがけて12月に来日することも決定しています。この年末年始はエックス・エックス漬けでいきましょう!

■リリース情報
アーティスト:The xx(ザ・エックス・エックス)
タイトル:I See You(アイ・シー・ユー)
レーベル:Young Turks
発売日:2017年1月13日(金)

トラックリスト
01. Dangerous
02. Say Something Loving
03. Lips
04. A Violent Noise
05. Performance
06. Replica
07. Brave For You
08. On Hold
09. I Dare You
10. Test Me

■公演情報

東京  12月6日(火)豊洲PIT

開場18:00 開演19:00 前売:¥9,000(standing、1ドリンク別)

問い合わせ:03-3444-6751(SMASH)

企画/制作:SMASH

総合問合せ:SMASH 03-3444-6751 smash-jpn.com smash-mobile.com



■チケット詳細

一般発売 : 発売中

東京 :e+(pre order:10/26-30)、ぴあ(P:313-155)、ローソン(L:73355)



■バイオグラフィー

サウス・ロンドン出身のドラムレスな男女混合3人組。08年初めのNME誌「今年の注目新人」特集でいきなり大フィーチャーされ、09年『エックス・エックス』でデビュー。アンニュイでメランコリーな独特の世界観が口コミで評判となり、主要メディアの年間ベストアルバムに次々に選出。10年5月には初来日公演をソールドアウトさせ、同年フジロック'10でもレッドマーキーを埋め尽くす満員のオーディエンスを熱狂させた。12年にセカンド・アルバム『コエグジスト』を発表。イギリスを含む全世界5カ国でチャート1位を獲得。翌年フジロック'13ではホワイト・ステージのヘッドライナーを務めた。16年12月に豊洲PITにて来日公演を行うことを発表した。

新作リリース記念 - ele-king

 10月19日に『TOSS』をリリースしたトクマルシューゴと、11月9日に『ハンドルを放す前に』をリリースしたOGRE YOU ASSHOLEの出戸学。ほぼ同じタイミングでアルバムを発表したこのふたりは、実は古くから交流があるそうです。この絶好の機会を逃すわけにはいかない! ということで、おふたりに対談していただくことになりました。これまで聴いてきたもの、これまでやってきたこと、音楽に対する熱意や誠意……互いに似ているところや逆に異なっているところを、思う存分語り合っていただきました。


「俺がソロ弾くから、ブルースのスリー・コード弾いてろ」みたいに、シークエンサーとして使われてた(笑)。それに乗せて親父が熱血ソロを弾くみたいな感じだったね。(出戸)


トクマルシューゴ
TOSS

Pヴァイン

Amazon Tower


OGRE YOU ASSHOLE
ハンドルを放す前に

Pヴァイン

Amazon Tower

おふたりが最初に出会ったのはいつ頃なのでしょうか?

トクマルシューゴ(以下、トクマル):僕とミラーとタラ・ジェイン・オニールのツアーが2004、5年にあったと思うんですけど、その時に松本にライヴをしに行ったんですよ。その時に一緒に出ていたのがオウガ・ユー・アスホールで、それが初めてでしたね。めちゃくちゃかっこいいバンドだなと思って、それからの付き合いだからもう10年以上になるのかな。

初めて会った時のお互いの印象はどうでしたか?

出戸学(以下、出戸):ギターをディレイで重ねたり、いろんな意味でギターがすごくうまくて、そういう感じで弾き語りをするというのを初めて観て、それまで弾き語りってフォーク・ギターで歌う感じだと思っていたので、びっくりはしましたね。何をやっているんだ、という感じはありました。

トクマル:東京にも当時いろいろなバンドがいたんですけど、それとはまた違った概念で活動しているバンドがいるなと思って、すごいびっくりした記憶があります。やっていることもめちゃくちゃ面白くて、それこそ「普通じゃないロック・バンド」でした。今のオウガの形とも全然違うんですけど、相当面白かったので東京に帰ったあとにいろんな人に吹聴した覚えがありますね(笑)。

出戸:本当?(笑) 当時の僕らは今と比べて何も考えていなかったんですよ。変なことをしようというか、聴いたことのない感じにしようとは思っていたんだけど、それをどうやってやればいいのかがわからなくて、高い声を出してみたり、変なフレーズや展開を出してみたり、頭じゃなくて肉体的に聴いたことのない感じをやろうとしていた頃だね。

トクマル:まだCDを出してなかった頃だよね。5曲入りのCDをもらった記憶はあるんだけど。その後ってどうなの?

出戸:その後にファースト・アルバムを出したのかな。それは吉本興業の〈R&C〉というレーベルから出たんだけど、小室哲哉のスタジオで録ったんだよね。ファースト・アルバムを録ることになった時、ちょうど小室哲哉が吉本興業に入っていて、なぜか彼のスタジオでレコーディングすることになった。ポップスを録るスタジオだったから、ファースト・アルバムは独特の音なんだよね。変なことをやろうと思っているのに、録り音がポップスっていう、今聴くと余計ねじれたものになっていて(笑)。当時はなんでロックっぽくならないんだ、と思っていたんだけど、今一周回ってから聴くと面白かったりするんだよね。逆に今は録れない音だよね。

おふたりはそれぞれ違うタイプの音楽をやられていると思うのですが、お互いの作品を聴いて刺戟されることはあるのでしょうか?

トクマル:僕はGELLERSというバンドもやっていて、ロック・バンドなんですけれども、そちらの方ではいろいろなバンドのサウンドを研究して、取り入れてみたり真似してみたりしているんですが、オウガのエッセンスを取り入れてみようとしたこともあるんです。いかんせんGELLERSというバンドがとても難しいバンドで、そういうことを一切できないバンドなので(笑)。やろうとしても、一切できなくて、それが歪んだかたちになってGELLERSというバンドになっていくので。そういうことはあったかもしれないですね(笑)。

出戸:僕らはGELLERSとよく対バンしたりしていたから、(バンド・メンバーの)みんなGELLERSは好きだった。トクマル君の新譜も欠かさず聴いていますね。会った頃からずっと。

トクマル:僕も全部聴いていますね。全部マスタリング前段階のものばっかり聴いている気がする(笑)。先に聴いちゃっていますね。

音楽をやろうと思ったきっかけはいつ頃までさかのぼりますか?

トクマル:僕(のきっかけ)はあんまり面白くなさそうなんですけど、出戸君は面白そうだなと思っていて。そもそも育ちがおかしいじゃないですか(笑)。僕は徒歩10分で小学校に通えるような都市部に住んでいたんですね。でも出戸君はたぶん違うんじゃないの? その時点で音楽を知っていたというのはすごく不思議に思っていて。

出戸:まあ親(の影響)だよね。家に楽器がある状態だったから、自然と中学1年生くらいの時にビートルズのコード・ブックを見ながら“イエスタデイ”とか“レット・イット・ビー”をギターで弾くところから始めたね。

トクマル:それまではギターとか弾いてなかった?

出戸:弾いてなかった。(ギターが)あるな、と思っていたくらい。いくつくらいから弾いてた?

トクマル:俺はピアノをやっていて、音楽は元々すごい好きだったんだけど。

出戸:俺もピアノはやってた。

トクマル:ピアノは難しくてやめて、ギターをやりたいとは思っていたんだけど、(自分では)持っていないし家にもなくて。でもコード譜を買ってきてエアーで練習して(笑)、いつか弾いてやるぞと思っていた。14、5歳の時に自分で買ってきて弾いたね。

出戸:エアーはすごいね(笑)。何を最初に弾いてたの?

トクマル:その頃はパンクが大好きで、パンクのコードがわりと簡単だったこともあって弾いていたね。あとはビートルズとかも一通りやってたかな。

出戸:速弾きに目覚めたのはいつなの?

トクマル:目覚めたってわけではなくて(笑)、ギターが大好きでギターの世界を追求しようとするとどうしてもそっちへ行くというか。『ギター・マガジン』を買うと、タブ譜に数字がたくさん書いてあったりするんだよね。曲は知らないんだけどその数字を追うのが楽しくて、「これ、どういう曲なんだろうな」と思ってその曲を買いに行くと「こんな速いんだ!」と知って頑張ってみるという。ギターはそうやって続けていたね。ギターはお父さんに教えてもらったりしたの?

出戸:いやあ、教えてもらうというか、「俺がソロ弾くから、ブルースのスリー・コード弾いてろ」みたいに、シークエンサーとして使われてた(笑)。それに乗せて親父が熱血ソロを弾くみたいな感じだったね。

ライヴをやろうと思ってバンドをやり始めたね。(出戸)

僕は別にライヴをやらなくてもいいし、一緒にいられるならいいやというバンドかな(笑)。(トクマル)

初めて買ったレコードやCDを教えていただけますか?

トクマル:たぶん子ども(向け)の童謡を買ってもらったんだと思いますね。あとはピアノを弾いていたのでピアノのレコードとか。CDが流行りだして、「レコード屋」(という呼び方)があったのに、みんな「CD屋」ってあえて言うようになってきた時に、駅前のCD屋にみんなで行って、当時流行っていたチャゲアスを買ってきたことがありましたね。

出戸:俺は子どもの時に親から買い与えられたものもあるけど、自分のお小遣いで初めて買ったのはビートルズの『ヘルプ!』だったな。白いジャケに4人が立っているアルバム。廉価盤でちょっと安くなっているようなCDだけど。街まで降りて、本屋とCD屋が一緒になっているようなところで買ったね。

自分が音楽をつくる側になって、これはすごいなと思った作品などはありますか?

トクマル:難しいですね。自分はこういうことをやりたかったんだなと思い返せたアルバムはありますね。僕はレス・ポールという人が大好きで、「レスポール」(というモデル)はギターとしてすごく有名なんですけど、レス・ポールという人自体が発明家として面白いんです。その人のアルバムを聴いた時に、これがやりたかったのかもなという発見があったんです。そもそも僕が(初めて)ギターを買った時に、なぜこんな形をしているのかとか、なぜギターは音が出るんだろうとかギターの構造自体に興味をもっていたんですけど、その構造を作った人のひとりであるレス・ポールの音楽がめちゃくちゃ面白くて、編集も凝っていたりしていたので、それは衝撃を受けた1枚かも。しかもある楽器フェアにたまたま来ていたレス・ポールと握手をして、2回くらいすれ違ったことがあって(笑)。その思い出もあって、いまだにすごく尊敬していますね。

出戸:それこそ最近、馬渕(啓)がミュージシャンの方のレス・ポールがいいとなぜか急に言い出したんだよ。偶然だね。じゃあトクマル・シューゴ・モデルのギターは作らないの?

トクマル:作りたい。木から作りたいですよね(笑)。

出戸:俺は何かなあ。ひとりに絞るのは難しいですね。

トクマル:ビートルズのあとに聴いていたのはなんだったの?

出戸:ベックとかニルヴァーナとか90年代のバンドだね。ベックが〈K〉レーベルから出してた流れでUSのインディは聴いていたけど、だから初期はUSインディの感じなのかな。ちゃんとしてない音楽がけっこう好きかも。ジョー・ミークみたいな感じの。〈K〉レーベル周りでも、ちゃんとしていないようでちゃんとしている人たちがいい。ジョー・ミークも演奏としてはちゃんとしているんだけど、どこかネジが外れているし、そういう音楽が好きかな。ひとりには決められないんだけど。

音楽を制作していく上で、技術的な部分や精神的な部分で、お互い似ていると思う点や、逆にここは全然違うという点はありますか?

トクマル:音楽に対する考え方というか、音楽に対する接し方が似ているとは少し思うかも。付き合う上でも楽だし、やっている音楽が全然違っても、互いに普通に接することができるのは、(音楽に対する接し方が似ているから、というのが)あるかも。

出戸:表面的なことで言えば、違うところのほうが多いのかもしれないけどね。

トクマル:なんでライヴをやろうと思ったの?

出戸:ライヴをやろうと思ってバンドをやり始めたね。

トクマル:そっか。初めてライヴをやったのはどこ?

出戸:もうなくなったけどトクマル君ともライヴをやった松本のホット・ラボというバーみたいなところで、高校生の時に(初ライヴを)やったね。

トクマル:文化祭とかじゃないんだ。

出戸:頼まれてギターでは文化祭に出たけど、歌ったのはホット・ラボが初めてかな。

トクマル:元々オリジナル曲をやろうということになっていたの?

出戸:そうそう。GELLERSはライヴをやろうと思っていなかったの?

トクマル:思ってなかったかも。いつも(メンバーで)集まっていて、たまたまみんながギターを買いだして、俺は参加していなかったんだけど、中学生の時に彼らが文化祭に出ると急に言いだして(笑)。文化祭に出るということはライヴをやるんだよ、と僕は言ったんだけど、それもよくわかっていなかったのかもしれない(笑)。ベースもギターもふたりいて、ヴォーカル、ドラムがいるという編成もよくわからないし、なんでも良かったのかもしれない。とにかくみんなで一緒にいたくて、僕も一緒にいたかったから照明として参加してた(笑)。(ライヴには)出てないんだけど、照明を良いところに当てていたね。だからみんなは違うのかもしれないけど、僕は別にライヴをやらなくてもいいし、一緒にいられるならいいやというバンドかな(笑)。グループ? サークル?(笑)

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めちゃくちゃ辛いんですね、登山。辛いし、登り始めるとやめたいと思うんですけど、でも上まで行って帰ってくると「また行きたいな」と思うようになっているのが、僕のアルバム作りとすごく似ていて。(トクマル)












トクマルシューゴ

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音楽をやっていて良かったことはなんですか?

トクマル:たいがい良かったことかもしれないですよね(笑)。悪かったことを探す方が難しいかも。音楽をやってなきゃよかった! ということはないかもしれないですね(笑)。音楽をやらなきゃ良かったな、と思う瞬間ってある(笑)?

出戸:うーん。なかなかないかもね。でもレコーディングからミックスまでひとりでやっていて辛くならない? たまにトクマル君げっそりしてるな、と思う時があるからね。

トクマル:単純に体力がなくてげっそりしているんだと思う(笑)。精神的にはずっと安定はしていて、面倒くさい作業はあるしそういうのは嫌になるけど、作ることにおいては別にストレスはなくて。

出戸:(トクマル君の)新しいアルバムを聴いて、表面上はアッパーで、賑やかな曲が多くて、大団円でみんなが肩を組んで「わーい」みたいな祝祭感があるんだけど、これをひとりで作ったと思うとちょっとゾッとするというか(笑)。そういう感じはして。

トクマル:たぶん、ひとりの世界に入り込むと鬱々としてきて暗くはなるよね。

出戸:普通はそうなりそうなのに、めちゃくちゃ人がいてすごく幸せな空間ができているじゃない。(トクマル君)本人も知っているからさ、あれが怖いよね(笑)。

トクマル:不思議なんですよ。自分でもそれはわからないですね。

音楽をやっていて困ることなどはありますか?

トクマル:僕は車とかで音楽を聴かなくなりましたね。ここ10年くらい同時に音楽を聴くことができなくなって、「ながら聴き」ができないんだよね。どうしても音楽に耳をもっていかれて疲れちゃう。同時にふたつ以上のことをやるのが苦手で、どうしてもコードとか音響とかを聴いてしまったりするんだよね。だから音楽を聴くときは、「よし、聴こう!」という感じで聴きますね。

出戸:俺も読書しながら音楽を聴くのが無理なんだよね。本が入ってこなくなっちゃう。あと、困りはしないけど、リサイクルショップとかレコ屋とかがあると寄っちゃうというのはあるね。それはバンドをやっている人はけっこう多いと思うんだよね。別に困りはしないんだけど、周りが困っているんじゃないかな(笑)。

トクマル:なるべくレコード屋を出戸君たちに見せないようにしないと(笑)。

音楽以外にやる趣味などはありますか?

トクマル:なんかある?

出戸:ない。

トクマル:ははははは(笑)。僕もね、なかったんですよ。最近ね、急に山登りを好きになってしまって。僕は機材がすごく好きで、道具がめちゃくちゃ面白いんだよね。そこには知らない世界が広がっていて、素材とかいちいち細かくて、機能性がすごいことになっていたりするのが面白くてしょうがなくて(笑)。

出戸:へえ。じゃあ最近はアクティヴになってるんだ。

トクマル:そう。前作を作った時に体がボロボロになってしまって、「これはいかん、なんとかしないとな」と思いながら何もしていなかったんだけど、今年急に思い立って「登山はいいな」と思ったね。

SPACE SHOWER TV ディレクター:登山のどんなところが音楽と通じますか?

トクマル:いろいろあるんですけど、まずは機材ですよね。機材がカッコいい(笑)。あとは計画を立てないと何も達成できないというところですかね。達成感も似たようなところがあって。めちゃくちゃ辛いんですね、登山。辛いし、登り始めるとやめたいと思うんですけど、でも上まで行って帰ってくると「また行きたいな」と思うようになっているのが、僕のアルバム作りとすごく似ていて。アルバム作り中はやっぱり、途中で辛くなるんです。作りたいけどやめたいというか、なんでこんなものを作ろうと思っちゃったんだろう、っていう。もっと簡単なものにしとけば良かった、とか思うんですけど。でもそれを目指したくなっちゃう。すごくエクストリームなものに対する憧れというか。(山の)頂上に着いても別に大した達成感はなくて、降りてきて安堵すると「ああ、良かった」ってなるのが、アルバム作りもそうなんです。完成して、(アルバムが)出て、一通りツアーが終わって、落ち着いて家に帰ってくると、「はあ、終わったー」ってなるのとすごく似ている(笑)。



トクマル君は、ひとりでここまでやるという忍耐力がすごいと思うので、そこは見習いたいような見習いたくないようなところではあるんですけど(笑)。(出戸)



僕は子どもの頃、自分の机に「忍耐」と書いたことがあって(笑)。(トクマル)

今度出るオウガの新作がセルフ・プロデュースで、トクマルさんもご自身でプロデュースされていますが、自分で楽曲をプロデュースするということの魅力や大変さを教えてください。

トクマル:元々(オウガで)セルフ・プロデュースをしたことはなかったんだっけ?

出戸:ファースト・アルバムの時は一応セルフ・プロデュースなんだけど、プロデュースもできていないというか、何もわからないで、エンジニアの人のそのままの音で録れているから、何も注文していないんだよね。セカンドは斉藤(耕治)さん、そのあとずっと石原(洋)さんとやってたから、本当の意味でプロデュースしたのは今回が初めてかもね。

トクマル:何が大きく違うの?

出戸:トクマル君にとっては当たり前なんだけど、全部の決断を自分でしなきゃいけないことだね。

トクマル:じゃあ全然外部に意見を求めたりしなかったの?

出戸:バンド内だけ(で完結)だね。あとはエンジニアの中村(宗一郎)さんとのやり取りだけだね。今までは(自分たちの)意見がそのまま通るにしても、プロデューサーのハンコが押されるか押されないかで気分が違っていたんだけど、今回はずっとハンコを誰にも押されないままずっと積み上げていかなきゃいけないから、トクマル君にとっては当たり前かもしれないけど、その違いはあったかな。だから(制作は)長くかかったね。

トクマル:最終的な決断は全員で「よし、これで行こう」という感じなの?

出戸:そうだね。基本的に俺と馬渕とエンジニアの中村さんがオーヴァー・ダビングの現場にいるから、その3人のうちの誰かが「ここどうなの?」と言ったら、また3人で考え出すという感じで、3人が良いと思うところを決めていったね。でも(トクマル君は)全部ひとりで決めるんでしょ?

トクマル:ひとりです。

出戸:でも、今回の最初のとっかかりみたいなものは違うんでしょ?

トクマル:そう。とっかかりはフワッとしたものがあって、それをチョイスしていくという方法で、むしろ今回はセルフ・プロデュースしなければ良かったなと思っていて。というのは、辛かったから(笑)。例えば、誰かが弾いてくれたものとか出してくれた提案をチョイスするんだけど、なんで俺はそれをチョイスしたんだろうという自問自答に入るというか、自分のセンスを疑うというか、そこですごく悩んでしまったんだよね。なんでこれが好きなんだっけなとか、本当に好きなのかなあとか思いながらやっていたかも。それはわりと辛くて、誰かが選んでくれたら楽だったのにとは思うけど、それをしたら自分の作品じゃなくなっちゃうからやらなかったね。

出戸:そもそもなんでそういう作り方にしたの? 異常でしょ、作り方が。

トクマル:うん。初めは、正直な話、楽をしたかった。でも、楽じゃなかった(笑)。バンドみんなで「演奏するぞ、せーの、バン!」で録って、持って帰って、それを出そうと思っていたんだけど、そんなにうまくいくわけはなくて、それ(録音素材)をチョイスして曲にするという作業になってしまったんだよね。

出戸:曲がなかった時点でレコーディングしたんでしょ? それ、どういう現場なのかすごく気になるんだけど(笑)。

トクマル:やっぱり無(の状態)ではあるし、僕の注文が「普段やっていないことをやってくれ」という感じだったから……

出戸:「普段やっていないこと」って言って、みんな何を演奏したの?

トクマル:(手で拍子をとりながら)とりあえずテンポを出して……テンポを出すときと出さないときがあって、出すときは(手拍子をしながら)「ハイ!」みたいな感じでやっていく。

出戸:キーとかも決まっているの?

トクマル:決まってない。音をくれ、という感じ(笑)。

出戸:それは勝手にアンサンブルになっていくの?

トクマル:ならないです。アンサンブルにする必要はないという感じにして。

出戸:(演奏するのと)同時に録っているの? 

トクマル:同時には録ってる。

出戸:じゃあ不協和音が鳴りっぱなしになっていたりするってこと?

トクマル:する。だから音楽って難しいんだなと(笑)。

出戸:でも、そういう過程を経ているけど、全体的にはトクマル君って感じになっているよね。今までのアルバムの流れではあるというか、ぶっ飛んで変なものになっているというよりも、ちゃんとその流れでトクマル君の新しいアルバムという感じになっている。

トクマル:わりと悩んだ挙句、自分がチョイスしたらやっぱり自分の曲になっちゃうんだな、と思う。それがやってみて面白い点だったかも。

出戸:編集権がある人が、結局いちばん個性が出るというか。

トクマル:オウガの新しいアルバムを(バンド・メンバーの)みんなで聴いたことがあって、うちのドラマーが気づいたんだけど、絶対にシンバルを打つだろうというところで「なんで打たないんだろう?」って話題になって。自制心が働いているのかわからないけど、「タカタカタカタカ、ツッツッタッ」って、「そこ(シンバル)打つだろう」というところで打たないんだ、って(笑)。ああいうのをどうやって決めているんだろうなと思っているんだけど。

出戸:レコーディングの最中とかプリ・プロの時点で決めているんだけど、今回はあまりはじけた感じにはしたくないと思っていて、ドラムがライド(シンバル)とかをバーンと叩くと空間が埋まっちゃうんだよね。それを補う音をあとで考えようと。ドラムって強力だから、ドラムのパーツを少なくしたり、スネアを入れない曲もあったりして、わざと曲を構成しにくいところから始めてみようと。それなりに全部(のパーツが)が(曲に)入ってしまうと、曲として安定感が出てよく聴いた感じのものになるから、それにはドラム(の影響)がけっこうデカいんじゃないかなと思って。当たり前のことをカットして。曲として成立するかしないかギリギリのところで止めようと。バスドラムとコンガだけとかあまり聴いたことがないから、そういうのはチャレンジでもあった。

トクマル:ドラマーとしてドラムを始めた人って、普通にシンバルを叩きたくなっちゃうよね(笑)。「タカタカタカタカ、ジャーン」みたいなやつね(笑)。

出戸:それはやりたがっていたけど、やめようということにしたね。

トクマル:バンドとしてそれが成立するのはカッコいいよ。

出戸:ドラムの音色も曲ごとに変えたりしたね。今回のセルフ・プロデュースというのは大変でしたね。

トクマル:オウガは1個1個の音がちゃんと作り込まれているから、聴き応えがあって。1音1音がちゃんと大切に作られているというのがすごくわかるアルバムだし、特に今回の(アルバム)は、なぜかはわからないけどすごく聴きやすくて。

出戸:エンジニアの中村さんのやり方なんだけど、あとで加工しないっていう。録ったときの音で、ミックスのときにEQをなるべくしない。よっぽどはまらない時はやるけど、音作りは基本的に録っているときに決める。今だとエフェクトとか、あとでリヴァーヴかけようとか、あとでディレイかけようとか、音色そのものをモジュレーションで変えたりするのかもしれないけど、それも全部その場で、エフェクターとかを通して音を作ってその場で決めていくというやり方にしたいって、中村さんに言われて。それですごく時間もかかったと思う、音色ひとつ選ぶだけで。音色選びの、機材繋ぎ直しの大変さ(笑)。音色がひとつ違うだけで急に本格的なレゲエっぽくなったり、こんなはずじゃなかったというくらい曲の像が変わったりして。1音でほどよい自分の思っていたフィールドに落とせるのか、全然違うレゲエのところにいっちゃうのかというのは、今回いろいろ試していて「ここまで違うのか」というのは発見としてあったなあ。

SSTVディレクター:自分にはない、相手から学びたい魅力は何でしょう?

トクマル:僕は(オウガの)メンバーが全員大好きなので、精神面的なことをわりと学んでいますよ(笑)。学んでいるというか尊敬するというか、いいなあと思うポイントがいっぱいあるかも。人柄的なこともあるし、近くにいて欲しいタイプのバンドではあるかもしれないです。

出戸:トクマル君は、ひとりでここまでやるという忍耐力がすごいと思うので、そこは見習いたいような見習いたくないようなところではあるんですけど(笑)。やったら最後、自分で耐えられるかわからないような追い詰め方をしている感じがするので、それは見習うべきなんだろうけど、近寄りたくないなという感じもある(笑)。

トクマル:僕は子どもの頃、自分の机に「忍耐」と書いたことがあって(笑)。

出戸:そりゃひどい(笑)。

トクマル:俺はこの十字架を背負って生きていく(笑)。

出戸:そういうのが好きなんだね。だからそういう意味だと登山は向いているんじゃない?

トクマル:たぶん向いているのかもしれない(笑)。

出戸:俺は「忍耐」とは机に書いてないなあ。書いていないし「忍耐」じゃないなあ。

トクマル:違うと思うよ(笑)。

※今回の対談の一部が動画としてSPACE SHOWER NEWSにて公開されています。下記よりチェック!

interview with Ogre You Asshole - ele-king


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 世界に激震が走った……とニュースが言っている。ブリグジットに次いでトランプ勝利という波乱。マスコミや識者の予想もあてにならないという事実も明るみになった。そんな世界で、オウガ・ユー・アスホールを聴いている。
 以下のインタヴューで、新作『ハンドルを放す前に』とは、何かが起こる前の感覚を表していると説明している。起きてしまったときの感覚ではない。起こる前の感覚だと。ぼくはこの話を聞いたとき、彼らに意図はなくても、それは現在の社会/自分たちの生活を反映しているのではないかと、そのときは思った。何かが起きることの手前にいる感覚。
 だが、どうして、なんで彼らは……アルバムには、“かんたんな自由”という曲がある。リバタリアンの台頭、リベラル弱体のいま、充分に深読みできる。「かんたんな自由に/単純な君が/関心もなく ただ立っている/(略)/なんだっていいよ/勘だっていいよ/なんてことになっている/そんな自由が/かんたんな自由が/こんな ピタッと合っている/そうやってここにも/だんだんといきわたり/問題になり出している」

 こうした世の中との関連づけは、バンドが望むところではないことはわかっているが、この音楽が、ただのお楽しみのためにあるとも思いたくはない。なにせ新作は、出戸学の歌がいままで以上に入ってくる。と同時にアルバムでは、これまで試みてきたオウガの実験が、じつに洗練され、開かれ、そして滑らかな音楽へと結晶している。
 誰がどう見たっていまはロックの時代ではないだろう。それをわかったうえで石原洋は自らの拭いがたきロックへの幻想──それはありきたりのロックの美学とは異なる極めて独特なヴィジョンではある──を彼らに托し、バンドはそれを受け入れたわけだが、吐き出し方はドライだった。ゆらゆら帝国よりもずっと乾いていた。とにかく、2011年という年において『homely』は、日本の他の音楽のどれとも違っていたし、それから『100年後』(2012年)があり、そして『ペーペークラフト』(2015年)と、石原洋とのロック探索作業は続いた。
 新作『ハンドルを放す前に』は、石原洋との3部作を終えてからの、最初のセルフ・プロデュース作である。いったい世界はどうなってしまうのだろう。とてもじゃないが“寝つけない”……、そう、“寝つけない”、それがアルバムのはじまりだった。

このアルバムのなかで劇的なことは本当になにも起こっていなくて、ぜんぶがその予兆だけで終わっていくんですよね。

石原洋さんがいなくなってから最初の作品ということで、逆に気合いが入ったと思うのですが、『ハンドルを放す前に』を聴いていて(石原さんが)いるのかいないのかわからないくらいの印象でした。アルバムはどのようなところから始まったのでしょうか?

出戸:この(前の)三部作はコンセプトありきで作っていたのですが、今回はプロデュースを自分たちでやるかどうかも考えていなくて。どういうコンセプトでやるかということも考えず、僕と馬渕で好き勝手に1曲ずつ作ってお互いに聴かせあうというところからはじめましたね。

ゴールを決めずに作ったんですね。その、ある種リラックスした雰囲気は音楽にも出ていると思います。

馬淵:好きな音像をどんどん作っていくというのが、レコーディングの前までにしたことですかね。

出戸:ただ、実際にセルフ・プロデュースということが決まったときからリラックスはしていないんですけどね。

馬淵:むしろ石原さんがいるほうが、石原さんがいるってことでリラックスしていたね。

はははは、そういうことか。

出戸:責任は自分たちに来るし、セルフ・プロデュースだとつまらなくなった、という話になりかねないじゃないですか。そういった意味で僕はいつもより気合いが入っていましたけどね。

最初にできた曲はどれですか?

出戸:ちゃんと歌詞までできたのは“寝つけない”かな。

この“寝つけない”って言葉はどこから来たのですか?

出戸:あまりコンセプトがなくて歌詞を書いていて……、最終的には自分なりにこのアルバムは『ハンドルを放す前に』という単語に集約されるとわかったんですけど、その前までは「なんで寝つけないことを俺が書くんだ」と深追いはせず、書きたかったから書いたという感じですね。最後に全部(曲が)できたあとでこういう分析をしてみたというのはありますけどね。

清水:どうでもいいですけど、出戸君はすごく寝つける人なんですよ。

(一同笑)

ああ、そういう感じですね(笑)。僕はその真逆で寝つきがとても悪いので、自分のことを歌われている気持ちになりました。

出戸:僕はめっちゃ寝るんですよね。

それは言われなくてもわかります。

(一同笑)

寝つけない現代人はとても多いと思います。これは風刺なんですか?

出戸:いや、そこは風刺してないですよ。何かがはじまる前に次の未来のこととか先のことを考えていて、いまリラックスできないって感じがあるじゃないですか。その感じがこのアルバム全体にあって、なにかの一歩手前の感じというか、そういうことを歌いたかったんじゃないですかね。

その“なにか”というのは前向きな“なにか”ですか? それとも後ろ向き“なにか”ですか?

出戸:僕のなかでそれはどっちでもないんですね。何かが起きる前の感じ、ってのがよくて、それがポジティヴでもネガティヴでも起こっちゃったら今回の作品のテーマじゃなくなっているというか。(なにかが)起こるちょっと前の感じ。注射を打ったときより打つ前のほうが打つときよりも怖い(感じ)というか、遠足に行く前の日のほうがワクワクするというか。そういう感じなだけで、それが感情の陰か陽かということはどっちでもいいんですよ。

はぁー。出戸君の歌詞はすごく独特じゃないですか。久しぶりに振り返って(オウガのアルバムを)聴いてみたのですが、歌詞を書く際のスタンスが基本的にはそんなに変わっていないのかなと思いました。“100年後”とか

出戸:大幅には変わっていないですけど、今回の“頭の体操”とか“移住計画”はいままでと違った書き方だと自分のなかでは思っています。いままでは行間に「クエスチョン・マーク」がつくような幅をもたせて想像力を湧かせるような書き方もあったんですけど、今回はまったく行間がなくて“頭の体操”のことをただただ歌っているというか、それ以上でもなくそれ以下でもない歌詞にしましたね。でもそれをやることによって、なんでそれを歌っているんだという大きい「クエスチョン・マーク」ができるということに気づいて、その2曲に関しては自分のなかでは、いままでとちょっと違った書き方なんです。

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あんまりガツガツしすぎるとだんだん疲れてきちゃうし、ガツガツしている人を見るのも疲れるじゃないですか。自分がげんなりしない程度にはいろいろ嫉妬とかガツガツしたりもしますけど、自分があとでダメージをくらわない程度ですよね。


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みなさんは出戸君の歌詞に関してはどのような感想をもっていますか? 何について歌っているのか聞いたことはありますか?

馬淵:ありますよ。今回はけっこう(歌詞について)話していたかな。

出戸君の歌詞は二通りの捉え方があると思います。ひとつはシュールレアリズム的な捉え方と、もうひとつは世のなかに対するアイロニーという捉え方。「なんて屈折した世のなかの見かただろう」と思うような、後者の捉えられ方というのもとてもあると思います。“100年後”とかそうでしょう?

(一同笑)

「これまでの君と これからの君が 離れていくばかり」とか。たしかに出戸君本人が言ったように「クエスチョン」が立ち上がりますが……。

馬淵:勝浦さんは「自分のこと歌われている」って言っていたじゃないですか(笑)。

(一同笑)

アイロニーとして感じたことはないですか?

勝浦:たぶんもっと根っこの部分がそういう感じで、僕は本人(出戸)が思ってもいないままそういうふうになっていると思っています。だから本人は「アイロニーを歌ってやろう」とは思っていないと思います。

そのとおりだと思います。

出戸:だからいわゆるアイロニー的な感覚で作品で作りたいとはあまり思ってないんですよね。社会を風刺してやろうとかそういう思いはなくて、もっとフラットに作品をどうしようとか、この言葉の感じと歌を合わせたらいいなあとか、好みで選んでいるつもりなんですけどね。

“頭の体操”なんかは解釈次第では「なんて意地の悪い歌なんだろう」って思えるような歌詞でしょう?

勝浦:思わなかったですね(笑)。

馬淵:中村さんは言っていたけどね。

出戸:中村さんは「頭の体操をしろ」という上から目線の歌詞にも感じるって言っていました。

(一同笑)

出戸:そんなつもりはまったくないんですけど(笑)。

勝浦:なんてカッコ悪い歌詞を作るんだろうなあと思って、それがいいなと思ったんですけどね(笑)。“頭の体操”ってすごくカッコ悪い響きの言葉を使うのが出戸君らしいと思いました。

そうなんだ。世のなかを皮肉っているとしか言いようがないですけどね。

清水:本人は意識してないと思うんですけど、出戸くんには批判的な視線というのが常日頃からあると思うんですよね。わりと世のなかとか外界というものを批判的に見ているというか。

出戸:いや、自分に対しても批判的ですよ!

清水:出戸くん自身に対しても批判的だよね。なんというか外界をぜんぶ批判的に見ていて、そういう人だから、どうしても時代というものと無関係じゃなくなってしまうんです。今回のアルバムの何かがはじまる前の感覚というのも、いつからなのか、ずっとそういう時代が続いているのと無関係ではなくて。破滅しそうなしないような、ハッピーになるようなならないような、そういう中を生きてるような時代感があると思っていて。

ああ、そうですね、いま清水くんが言ったことは本当に頷けます。

出戸:俺はかなり楽観主義ですよ。そういった皮肉とか批判する視線もありますけど、半分はなんだかんだ良くなるかもしれないし、という気持ちもありますよ。

勝浦:どっちのスタンスかということじゃなくて、たぶん日常とか現実からの距離が人と違うんですよ。すごく離れているから、どっちの立場ということではないと思うんですよね。

清水:時代がどうなろうと確固とした自分があるから、出戸くんは揺るがないんだと思う。対象と距離が取れているから、現実がどう変わっていこうとそれを見つめ続けられる強さがすごく出てくるというか。そういう感じがするけどね。

3.11があって、ぼくはその年の夏に『homely』を聴いたんですよね。そのときのオウガは、日本がんばれとかいろいろあったなかで、ある種の居心地の悪さを絶妙な音で表現していたというか、その感じがぼくにはすごく引っかかったんですよね。クラウトロックとかなんとかいう註釈は後付けであって。

出戸:もちろんまったく関係ないとも思っていないですよ。社会とか、いまの時代の空気感と離れすぎてもいないですけど、野田さんが思っているほど近くないというか。どこがポイントなのか自分でもよくわからないんですけど。

歌詞を書くときはどういうところから書いていくのですか?

出戸:曲ありきで歌詞を書いていますけど、なにかひとつアイデアがあったらそれを元に絵を(頭に)浮かべて描いていくという感じですね。

『ハンドルを放す前に』というタイトルは、なにかが成し遂げられる一歩手前の感覚という話でしたが。

出戸:そうですね。でも感情とかそういう話ではなくて。ピサの斜塔って倒れそうだけど、多分あれを見て悲しいと思う人はいないじゃないですか。あんな感じのアルバムというか(笑)。

(一同笑)

勝浦:「運転する前に」じゃなくて「放す前に」なんだよね。

おかしい言い方ですよね。

出戸:「運転する前に」というか「放棄する前に」という(感じですね)。

でもその先には「放棄する」というのがあるわけですよね。

出戸:いや、それは放棄する予兆だけ、でまだハンドルは持ったままの状態でしかないです。このアルバムのなかで劇的なことは本当になにも起こっていなくて、ぜんぶがその予兆だけで終わっていくんですよね。

たしかになにも起こっていない感じはすごく音に出ていますね。でもなぜそのなにも起こっていない感じをこんな緻密な音楽で表現しようとしたのですか?

(一同笑)

出戸:そういう置物が好きだったとしか言えないですね。ちゃんと立っているやつより、斜めに立っているものが欲しかっただけです。

それはわかりやすく言ってしまうとオウガ的なメッセージというか、すごくオウガらしいですよね。ロックというのは常になにかが起こっていなければいけないし、常に物語があるじゃないですか。それは彼女との出会いかもしれないし、あるいは社会であるかもしれない。とにかくなにかが起きているということに対して、本当になにも起こっていないというスタンスですよね。

出戸:でもさっきの注射を打つ前の話とか遠足に行く前の日の話とかのように、予兆というのはいちばん重要なポイントなんじゃないかと思っていますね。

勝浦:SF映画で宇宙人が出てくる前は良いけど、出てくるとがっかりするとか、狂気の前のなにかが起こりそうな感じとか、たしかにそこが一番ピークといえばピークだよね。

出戸:ピークだし表現のしようがある場所というね。

なるほど。今回のアルバムは歌メロが違うのかな、と感じたのですがどうでしょうか?

出戸:あまり意識はしてないんですけど、これまでの三部作より全体のミックスで歌が大きくなってます。

1曲目(「ハンドルを放す前に」)や“はじまりの感じ”、“移住計画”といった曲にあるようなメロウなメロディはいままであまりなかったじゃないですか。

出戸:そうですかね、“夜の船”とかありましたよ。

簡単な言葉で言ってしまうと、“はじまりの感じ”はとてもポップな曲に思えたし、そこは今回挑戦した部分なのかと思ったのですが、どうでしょうか?

馬淵:“はじまりの感じ”は、もともとシングルに入れたヴェイカント・ヴァージョンの方をアルバムに入れようと思っていたんですけど、(結局入れたのは)わかりやすいアレンジのほうになりましたね。アルバムに入れた“はじまりの感じ”が、今回では一番バンドっぽいですよね。普通のロック・バンドがやっている演奏って感じの曲ですね。でも出戸のメロディに関しては、結局あまり変わってないと思うんですけどね。あとは歌がシングルっぽいですよね。

それは録音としてでしょうか?

出戸:録音ですね。いままではダブリングといって2回録音した歌を重ねてにじんだ声にしてヴォリュームも小さかったのが、(今回は)歌が生々しくて、わりとにじみが薄くて1本でドンとある感じで(ヴォリュームも)でかいという歌に耳がいっちゃうような作り方になっていますね。

それには出戸君の歌を聴かせたいという意図があったのでしょうか?

出戸:最初はいままでどおりのミックスで進んでいたんですけど、最後のほうで中村さんから「もうちょっと歌(のヴォリュームを)上げてみませんか」という提案をもらって、それで上げてみたらそっちのほうが奇妙で面白かったという感じです。いままで聴きなじんで当たり前だったものよりも新鮮に聴こえたというか。

馬淵:バックが無機質で上モノの音とか飛び出してくる音が少ないんですよ。そこに声を(上げて)入れてみたらバコンときたから、その対比が面白かったんです。

出戸君の歌詞というものをさっ引いて音としてメロディを聴くと、「お、いいヴォーカルじゃん」と思いました。ある意味でオウガのスタイルというものを作り上げている感じはするのですが、今回のアルバムは人によって好きな曲がバラけるのかなという感じもしました。メンバーとしてはどの曲が好きなのですか?

出戸:僕は「はじまりの感じ」のシングルにしか入っていない(アルバムから)外されたヴァージョンが好きでしたけどね。

(一同笑)

清水:詞とか含めて3曲目が好きかなあ。あとは“寝つけない”も好きかな。曲調がバラバラだから、どっちが良いってのは考えにくくて、全部好きなんですよね(笑)。個人的に今回はどれも違う味で、どれも美味しいという聴き方ができるんですけど。あえて言うなら“寝つけない”とか“なくした”が好きって感じです。単純に自分の好みですね。

勝浦君はドラマーの立場からどうでしょうか?

勝浦:僕は最初に馬渕君が“寝つけない”のデモが来たときから、今回はうまくいくなと思ったんですよね。あとは4曲目の“あの気分でもう一度”もメロウで好きですね。

馬渕くんは?

馬淵:僕も“寝つけない”ですね(笑)。いい曲ですね。

では“寝つけない”が最初にシングル・カットされたのは、みなさんが好きだったかななんですね。

出戸:そうですね。最初にできたからというのもあるし。

馬淵:12インチだったしね。

清水:みんなが(“寝つけない”を)好きというのが、いま明らかになったね(笑)

出戸:そうだね(笑)。

これまでは石原さんがいたからソースとして頼りになっていたことがあると思うのですが、今回のアルバムを作っていくなかで音楽的にどのようなところからインスピレーションを得ていたのでしょうか?

出戸:最初にコンセプトをもうけていないから、普段自分たちがいろいろ聴いて消化したものが出てきているので、これという取っかかりになったような作品は、バンド内であまり出てきていないですね。日常生活であれがいい、これがいいというものはあるんですけど。なにかあります?

馬淵:モンド感とかエキゾ感を散りばめようとか、そういったようなことはチョロっと話したような気がするけど。

勝浦:たしかに最近馬渕君の車に乗るとエキゾっぽい曲がかかっている気がするね。

馬淵:あと僕はバンドがやっているという感じではなくて、人がいなくて機械がやっている感じがいいなと思っていました。ちょっと冷めていているけど、ロボット達が血の通ったことをやろうとしているような感じをイメージしてましたね。

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石原さんの基本には多分、ペシミスティックな感覚があって、それが独特の美意識にもつながっているんだけど、もともとオウガが強く持っているものではないから、今回はペシミスティックでデカダンな感じが希薄なのかもしれません。


Ogre You Asshole
ハンドルを放す前に

Pヴァイン

Indie RockKroutrockExperimental

Amazon

どのバンドも長いことやっているとマンネリズムの問題があると思うのですが、オウガはそういうようなことはなかったのでしょうか?

出戸:昔はそんな感覚もありましたね。でも『homely』以降はないですね。“ロープ”をライヴでやりすぎて飽きてくる、とかはありましたけど(笑)。レコーディングに関しては新曲をもってくるときに「またその曲かよ」とみんなのテンションが下がることはいまのところないと思います。

清水:今回の新譜のために曲作らなきゃという話をふたりがしはじめてから、ボツになった曲がけっこう沢山あるんですよね。ライヴでやってからボツになった曲もあるし、練習だけしてやらなくなった曲もけっこうありました。でも、二人からたくさん(曲が)出てきて、それが尽きないという感じがあった。そこからどんどん削ぎ落としていくという作業が、僕の知っているなかではいちばん激しかったと思います。だから、すごく磨きこまれた感じがあるんですよね。曲が採用されるまでに戦いがあったというか。

馬淵:勝浦さんとのね。

(一同笑)

清水:やってみて、「これはやめたほうがいいんじゃない?」ってことはあったよね(笑)。

バンドを続けていくうえでのモチベーションは『homely』の頃から変わっていないですか?

出戸:そこはまだ疑問視もしてないくらい。

(一同笑)

焦りもない(笑)?

出戸:あるはあると思うんですけど……。それはありますよね。

清水:でもはたから見ていると出戸くんも馬渕くんも曲作りとかで困る状況をけっこう無邪気に楽しんでいるというか(笑)。

出戸:あんまりガツガツしすぎるとだんだん疲れてきちゃうし、ガツガツしている人を見るのも疲れるじゃないですか。自分がげんなりしない程度にはいろいろ嫉妬とかガツガツしたりもしますけど、自分があとでダメージをくらわない程度ですよね(笑)。

(一同笑)

それは長野にいるということも一つにはあるのでしょうね。

出戸:住んでいるからというか、だから長野に住めるんだと思いますけどね。もっとガツガツしていたら東京にいなきゃダメでしょということになって、(長野に)いれないと思いますよ。なにもない日々が続く感じなので。

(一同笑)

オウガは音楽的を追求するバンドですが、音楽リスナーのみんながそこまで音にこだわっているわけではないですよね。そういったことに不満やストレスといったものはあるでしょう?

馬淵:僕はないですね。リスナーの人もそうだけど、好きに聴いてもらえればいいと思っているし、わかってほしいと思う近しい人に伝わっていれば満足できるというか、自分がすごいと思っている人にいいと言ってもらえたら嬉しいというのはありますけどね。どう?

出戸:うーん……。

この沈黙はやっぱりちょっと思っているところがあるんだ。

(一同笑)

清水:ふたり(出戸、馬渕)の作品作りは、すごくよくできた椅子とかコップとかを作っているのに近いなと思っているんですね。飾り気もないんだけど実用性はあって、歴史も踏まえていて、いまの時代にあって日用雑貨として使いやすいんだけど奇をてらっていなくて、そんなふうに考えてキッチリ作られた家具とか、そういうものに近い感じがしてて。色々踏まえてきっちり作ってあるから楽しむ人は楽しんでくれるし、合わない人もいるとは思うけど、作った職人さんは「合わないよね」くらいに思うだけで、ただいいものを作ろうとして作っているだけだという。だからユーザーに対する不満なんか、職人さんは特に持ってない。そんな境地じゃないの?

出戸:大衆に向けて作ろうとしていないと言っているけど、それよりさらに(対象が)狭いかも。信頼している人が何人かいるからそういう人たちの顔は見えるけど、あとは自分のなかで(完結していて)、外部といったら10人くらいかな。「あの人はどう思うのかな」というのはちょっと思ったりしますけど。野田さんの話もたまに出ますよ。

馬淵:これは野田さん嫌いでしょ、みたいな(笑)。

(一同笑)

出戸:これは野田さんが好きそうとか、よく名前は出てきますよ(笑)。知っている人の範疇でしか想像できないからね。

清水:でもその向こうにはいっぱい人がいるわけでしょ? 野田さんの向こうにはいっぱい人がいて、その集約として野田さんがいるという感じがしますよね。

出戸:そういう意味ではお客さんに対しては(不満は)ないですけど、ライターの人とかにちょっとイラッとするときはありますね(笑)。でもそれはこっちの説明不足というのもあるし。多分誰しもがあることですよね。

さきほどアイロニーの話をしたときに出戸君が「自分に向けても」と話していましたが、歌詞のなかに自分が出てくることはあるのですか?

出戸:自分が出てくることもありますね。自分の気分が歌詞になっているから、舞台に自分を立たせているかはわからないですけど、歌詞の感じが自分の気持ちに似た雰囲気をもっていると思いますね。だから登場人物として自分がでてくるというニュアンスよりも、監督としているという感じかな。

自分のエモーションを歌うということはありますか?

出戸:ないかも。感情の出し具合というのもあると思うんですけど、すごく号泣している人を見ても一緒に泣けないというか、むしろ引いちゃう感じがあるじゃないですか。でもロボットが泣いていると「どうしたんだ」と思う感じもあるというか。

清水:ええ(笑)?

出戸:俺はそういう感じ(笑)。

清水:そもそもロボットが泣いているというシチュエーションがすごい(笑)。

勝浦:出戸くんはあんまり情動がないんだと思います。短期間の激しい上がり下がりはなくて、長くてゆるやかな変動はあるけど気分という感じなんですよ。歌詞も気分はよく出てくるけど、感情とかそういうのは歌詞に出てこないですよね。波風が立っていない海みたいな、そういうイメージですね。

はははは、すごいイメージ(笑)。勝浦君が一番付き合いが長いのですか?

勝浦:いや、馬渕君ですね。

馬淵:高校から(の付き合い)ですね。

ずっとこういう感じでした?

馬淵:いや、どんどん冷静な感じになっていますね。

(一同笑)

さすがに高校時代はそうでもありませんでしたか?

馬淵:それは若いからいまよりありましたけど、みんなそうでしょ? まあ、でも冷静ですよね。

勝浦:冷静すぎて腹が立つときもあるよね。

(一同笑)

勝浦:なにか言ってすごくまともな答えを返されたりして、合っているんだけどこっちがすごくみっともない感じがして(笑)。もうちょっと動揺してよ、と思うくらい安定しているというんですかね。

内に秘めているタイプですよね。

出戸:でも勝浦さんを見ていて「すぐ怒るなあ」と思うけどね(笑)。

(一同笑)

勝浦:この感じなんです(笑)。

勝浦君は感情の起伏が激しいのですね。

勝浦:僕は情動ですね。

清水:二人とも極端で、どっちも普通じゃないというか(笑)。

ちょうどバンド内のバランスがとれているのですね(笑)。ドラムはとてもミニマリスティックなのにね。さて、これまでコンセプチュアルな作り方をしてきて、今回のアルバムはゴールを決めずに作ったような話でしたが、最終的になにをゴールとしたのか、どうやってアルバムをまとめあげたのでしょうか?

出戸:最後まで曲順を決めるのに難航してどの曲順もしっくりこない感じがあって、曲を入れかえたり、アレンジが違うものを入れかえたり、曲をボツにしたり、削ったり尺を変えたり、最初に好き勝手に作った分まとめるのに苦労したんですけど、「ハンドルを放す前に」を1曲目にしたところからようやくまとまりそうな気配がでてきたという感じでした。それ以前はなにがどうなるのか、自分たちでもよくわからなかったですね。

どうしてアルバムができるまで2年かかったのでしょうか?

出戸:レコーディングのスケジュールを長めに取ったりしていたら、自然とそうなったんですけどね。

ではとくに難航したということでもなく?

出戸:レコーディングはもともと1ヶ月半くらいで終わる予定だったんですけど、さらにその倍の時間がかかってしまいましたね。(今回は)最初から音決めを丁寧にやっていて、ずっと中村さんに「これで本当に終われるんですか?!」って言われてたよね(笑)。

(一同笑)

出戸:(それくらい)丁寧にやっていたので、難航したというよりも積み重ねるのに時間がかかったという感じですね。

ひらたく言えば、前作より聴きやすいアルバムになったと思います。それは意図せずそうなったのでしょうか? 前作が実験作であったので、比較するのも変な話ではあるのですが……。

出戸:ミックスの感じで聴きやすくなっているというのはあるよね。いままでは聴き手側が「聴くぞ」と思ってちゃんと(聴き)取りにいく感じがあったと思うんですが、今回ももちろんそういう聴き方もしてほしいんですけど、そうじゃない聴き方でも聴けるミックスになっていると思いますね。

なんかリラックスしているというとそれは違うという話ですが、たとえば、“見えないルール”のような曲のテンションとは違う感覚を打ち出しているアルバムですよね。

清水:たぶん(三部作とくらべて)悲壮感が薄いんです。石原さんの基本には多分、ペシミスティックな感覚があって、それが独特の美意識にもつながっているんだけど。(その悲壮感は)もともとオウガが強く持っているものではないから、(今回のアルバムは)ペシミスティックでデカダンな感じが希薄なのかもしれません。だから、リラックスしたわけではないんだけど、比較的リラックスしているように聴こえるのかなと思いますね。(今回は)悲観でも楽観でもない中間に浮かんでなにもない真空みたいな感じになっていると思うんだけど。意識としてはリラックスはあまりしてないよね? 

出戸:でも重くしたくないというのはありましたよね。重くて大仰じゃないアルバムを作りたいと思っていましたね。

清水:最後の曲順とかアレンジを考えているときまでそれは話していたよね。重くなりすぎないようにとか、大仰にならないようにとか、(曲が)ほとんどできて並び替えとか曲の長さを決めているときにも話した気がする。

なぜ?

出戸:今までと違うことをしたかったからですよね。

(一同笑)

なるほど。じゃあそんなところでいいかな。

(一同笑)

『homely』はしばらく聴いていないですよね?

出戸:レコーディング中に聴きました。

あのアルバムをいま聴くと、ずいぶんトゲがありますよね。それに比べると、今回のアルバムはすごく滑らかなサウンドですよね。

勝浦:この前ちょっとひさしぶりに(『ハンドルを放す前に』を)聴いたら、おこがましいんですけどヨ・ラ・テンゴのような雰囲気を感じて、それが野田さんのおっしゃっているリラックスというかスルメっぽい感じというか、表面のゴテゴテがなくて、いままでより奥にあるものに近づいた感じがしていて。

カンでいえば『フロウ・モーション』ですよね。

勝浦:こういう感じでやれたら長くい続けられるんじゃないかなと思ったんですよね。

出戸:「後期のカンっぽい」って言っていう感想もあったなあ。

オウガもいよいよ成熟に向かったかという感じで。

出戸:残念ですか(笑)?

もっと成熟していくように思いますね。

勝浦:みんなですごくたどたどしくやっているという感じで、そのたどたどしさを僕はいいと思うんですよね。ああいう成熟した人たちって演奏もうまいし、かたちになっているんですけど、自分たちのはインディーズ感がありつつ落ち着いているというのが面白いバランスだと思いましたね。

(了)

アルバム発売記念・全国ツアー・14公演
「OGRE YOU ASSHOLE ニューアルバム リリースツアー 2016-2017」

11/26(土)  仙台 Hook
11/27(日)  熊谷 HEAVEN’S ROCK VJ-1
12/03(土)  札幌 Bessie Hall
12/09(金)  長野 ネオンホール
12/10(土)  金沢 vanvanV4
12/11(日)  甲府 桜座
12/16(金)  岡山 YEBISU YA PRO
12/17(土)  広島 4.14
01/14(土)  福岡  BEAT STATION
01/15(日)  鹿児島 SRホール
01/21(土)  名古屋 CLUB QUATTRO
01/22(日)  梅田  AKASO
01/28(土)  松本  ALECX
02/04(土)  恵比寿 LIQUIDROOM ※ツアーファイナル

Aphex Twin - ele-king

 日本標準時11月8日1時57分。エイフェックス・ツインが新しいヴィデオを公開した。「エイフェックス・ツインからの承認メッセージ」というツイートとともにシェアされたその42秒の動画は、UKから合衆国へ核ミサイルが発射されるという内容で、その冒頭には実に彼らしいやり方でデフォルメされたドナルド・トランプとヒラリー・クリントンが映し出されている。映像の制作は、これまでにレディオヘッドなどを手がけているWeirdcore が担当。

 エイフェックスは12月17日にヒューストンで開催される Day for Night フェスティヴァルにヘッドライナーとして出演することが決まっており、今回のヴィデオはその8年ぶりの合衆国でのライヴを告知する動画なのだけれど、これ、間違いなく狙ってやっているでしょう。
 彼のファンならご存じのように、エイフェックスはあまりこういうポリティカルな演出をやらないアーティストだ。そんな彼が、まさにこのタイミングで、わざわざトランプとクリントンを変形した映像をポストしているのである。たしかに、今回のヴィデオは何か直接的なメッセージを発しているわけではないし、そもそも「承認メッセージ」なんて言い回しも彼流のジョークなのだろう。でも、言葉をそのまま愚直に受け取る真摯な僕たちは、これをメッセージだと捉えることにしよう。だって、今日はそういう日だ。
 大統領選は、日本標準時で11月8日の夜から投票が開始され、明日11月9日の昼頃には大勢が決し、夕方には開票結果が確定する見通しである。ある程度結果は予測されているみたいだけれど、ブレグジットの先例だってある。何がどうなるかはまだ誰にもわからない。エイフェックスよ、きみ自身はどう思っているんだい?


TOYOMU - ele-king

 ネットで好き勝手やっている古都在住のポスト・モダニスト、TOYOMUが、星野源、カニエ・ウエストに続き、今度は勝手に宇多田ヒカルを●●●して話題になっているところ、デビューEPに先駆けてMVが公開された。これを見ながら彼のEPを妄想しましょう。

■TOYOMU / EP 『ZEKKEI』

2016年11月23日発売/ TRCP-208/ 定価:1,200円(税抜)

Coldcut - ele-king

 いったい何年ぶりだろう。ひい、ふう、みい……じゅ、10年ぶりじゃないか! ついにコールドカットが再始動する。まずはEPからだ。
 色々と思いはある。もしこのふたり組がいなければ、UKのクラブ・シーンは、いや、世界のクラブ・シーンはまったく別物になっていただろう。……が、とりあえず僕の感慨は脇に置いておいて、とにかくいまはみんなで、この伝説のデュオの帰還を祝おうではないか。リリースは11月25日。あと3週間だ!

〈NINJA TUNE〉主宰の大重鎮、コールドカットが再始動!
超待望の最新作『Only Heaven EP』のリリースを発表!
新曲「Donald’s Wig feat. Roses Gabor」を公開!


Photo : Hayley Louisa Brown

アンダーワールド、ケミカル・ブラザーズ、ファットボーイ・スリムらとともにUKクラブ・シーンの黄金期を牽引したサンプリング・カルチャーのパイオニアであり、アンクル、DJシャドウ、カット・ケミスト、DJクラッシュらと並んで、ブレイク・ビーツ黎明期の最重要ユニットにも挙げられるレジェンドがついに再始動! ジョン・モアとマット・ブラックによる伝説的ユニット、コールドカットが、〈Ninja Tune〉発足以前に初音源をリリースした伝説的レーベル〈Ahead Of Our Time〉から、超待望の最新作「Only Heaven EP」のリリースを発表! 新曲“Donald’s Wig feat. Roses Gabor”を公開した。

Coldcut - Donalds' Wig feat. Roses Gabor

「Only Heaven EP」には、“Donald’s Wig”や、M.I.Aやビヨンセのプロデュースやメジャー・レイザーの初期メンバーとして知られるスウィッチとの共同プロデュースで、ヴォーカリストに盟友ルーツ・マヌーヴァ、ベースにサンダーキャットが参加した“Only Heaven”を含む5曲が収録される。

長い沈黙を破り、ついに復活したコールドカットの最新作「Only Heaven EP」は、11月25日(金)にデジタル配信と12”でリリースされる。iTunesでアルバムを予約すると、公開された“Donalds' Wig feat. Roses Gabor”がいちはやくダウンロードできる。

label: Ahead Of Our Time
artist: Coldcut
title: Only Heaven EP

release date: 2016.11.25 FRI ON SALE
cat no.: AHED12014(12"+DLコード)

beatkart (12") : https://shop.beatink.com/shopdetail/000000002120
iTunes Store (Digital) : https://apple.co/2fkgmkO

[Tracklisting]
1. Only Heaven feat. Roots Manuva
2. Creative
3. Dreamboats feat. Roots Manuva and Roses Gabor
4. Donald’s Wig feat. Roses Gabor
5. Quality Control feat. Roots Manuva

Jlin - ele-king

 RP Boo率いるD'Dynamicsクルー所属のフットワーク第2世代プロデューサー、Jlin(ジェイリン)。僕が初めてその名を認識したのは、2011年に〈Planet Mu〉からリリースされたコンピレイション『Bangs & Works Vol.2』だったのだけれど(“Erotic Heat”のかっこよさといったら!)、その後の彼女の活躍はめざましく、あれよあれよという間にフットワークの新世代を担う中核アーティストへと成長していった。実際、昨年〈Planet Mu〉からリリースされたアルバム『Dark Energy』は、英『WIRE』誌の年間ベスト・アルバム第1位に選出されるなど、海外での彼女の評価の高さは尋常じゃない。

 このたび、そのJlin初の来日公演が開催されることとなった。大阪と東京の2ヶ所をまわる今回のツアーは、ジューク/フットワークのファンにとってのみならず、広くベース・ミュージックを愛する者たち全員にとってスルー厳禁の公演と言っていいだろう。詳細は下掲のリンクから!

フットワーク新章! 英『WIREマガジン』年間ベスト・アルバム第1位、Pitchfork Best New Musicなど2015年の年間チャートを総なめにし、シーン初の女性アーティストとして華々しいデビューを飾ったシンデレラJlinが満を持しての初来日!!

Jlin Japan Tour 2016


11.19 sat at CIRCUS Osaka | SOMETHINN Vo.18
w/ D.J.Fulltono, CRZKNY, Keita Kawakami, Hiroki Yamamura, Kakerun
OPEN / START 23:00
ADV ¥2,000+1D | DOOR ¥2,500+1D
https://circus-osaka.com/events/somethinn-vol-18-feat-jlin/


11.23 wed holiday at CIRCUS Tokyo | BONDAID #11
w/ Theater 1, D.J.Fulltono, CRZKNY
OPEN / START 18:00
ADV ¥2,500+1D | DOOR ¥3,000+1D | UNDER 25 ¥2,000+1D
https://meltingbot.net/event/bondaid11-jlin-theater1

主催 : CIRCUS
制作 / PR : SOMETHINN / melting bot

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