「You me」と一致するもの

Autechre - ele-king

 長い間、オウテカのファンはふたつの陣営に分類される傾向にあった。デュオが発するあらゆる最新のメッセージを熱心に貪るリスナーたちと、『Tri Repetae』以来、ノンストップで抽象的な自慰行為に堕ちて行っていると感じていた人たちである。後者のほとんどが老人ホームに隔離されているいまとなっては、この論争は、問題がスタイルから量的なものへとシフトしている。過去10年の間のオウテカの一連のリリースは、それぞれの尺が2倍に延び、8時間に及ぶラジオ・レジデンシーを集約した『NTS Sessions 1-4』と題された作品で最高潮に達した。ここにはたくさんの素晴らしい音楽があったが、そこがまた問題でもあった──とにかく膨大だったのだ。

 オウテカのアウトプットに魅了された体験が、いつの間にか疲れ果ててしまうものへと変わってしまった人には、『SIGN』 は彼らの世界に戻ってくる良い機会となるだろう。ショーン・ブースとロブ・ブラウンの最近の作品の文脈で考えると、これほどメロディックなアルバムをリリースすること、1枚のCDに収まってしまうほど短いことは、ほとんどラディカルにさえ思える。そして『SIGN』は明らかに『elseq1-5』 と『NTS Sessions 1-4』で聞かれるようなアルゴリズミックな実験の延長戦上にあり、オウテカは、どうやって到達するのか忘れかけていたような所にまで踏み込んでいる。

 オープニングトラック“M4 Lema”では、ローラント・カイン風のサイバネティック(人工頭脳的)なノイズが、まるでコンピュータのメインフレームが咳払いをするような、シューッという音の斉射で未来を提示するが、突然、みずみずしく豊かなパッドと骨格のようなヒップホップのビートに変わり、時折サブベースがうねる。続く“F7”では、興味深いメロディが互いのまわりに円を描くように交差しながら、決着することはなく、『Oversteps』で登場していてもおかしくないようなものだが、いまやチューニングは従来の西洋的なものからは大きく外れた所で浮かんでいる。

 このトラックは、オウテカが未知のハーモニックな領域に踏み込んだ、より明白な事例のひとつで、ヴァーチャルな楽器を、平均律の暴政から離れるように促している。「esc desc」のシンセサイザーには『ブレードランナー』のような威光があるが、初めて聴くと、ヴァンゲリスがデッカードの空飛ぶ車で乗り物酔いをしているかのようだ。

 リピートして聴くことでこの違和感は薄れ、これは時間をかけて、できればまともなヘッドフォンでじっくり聴くべきアルバムであることが分かる。2018年にブースはele-kingに「ぼくはすべてのエレメントがあからさまではない、シネマティックな奥行きに惹かれるんだ」と語っており、『SIGN』 に収録されたトラックのいくつかは活気に溢れ、聴力の限界に達している。 陰鬱なトーンと貧弱な4/4拍子の“psin AM”は、ミックスのエッジの周りで踊る不安定なハーモニーがなければ、ほとんどヴォルフガング・ヴォイトのGASプロジェクトの見失われたトラックと間違えそうだ。オウテカが“sch.mefd 2”で、一定のビートを走らせるのは、他のエレメントとの間の相互作用がいかに予測不可能なものであるかを強調するために残しているのだ。

 おそらく最大のサプライズは、このアルバムの音の多くが、どれほど心を奪う響きに聴こえるかということだ。“gr4”には最も牧歌的なフェネスのような、薄織の温かさがある一方、超絶的なクロージング・トラックの“r cazt”は、坂本龍一の「async」時代のプレイリストに並べて入れても違和感がないだろう。オウテカは、エイリアンのように耳障りだと誇張されがちだが、『SIGN』 は彼らのとんでもなく〝ありえねぇ〟美しさを想い出させてくれる歓迎すべき作品だ。


by James Hadfield

For a long time, Autechre fans tended to fall into two camps: listeners who eagerly devoured every fresh transmission from the duo, and people who thought they’d been on a non-stop descent into abstract wankery ever since Tri Repetae. Now that the latter are mostly sequestered in retirement homes, the debate has shifted from questions of style to quantity. During the previous decade, each successive Autechre release seemed to double in length, culminating with the eight-hour radio residency collected on NTS Sessions 1-4. There was a lot of excellent music here, but that was also the problem: there was a lot of it.

If your experience of Autechre’s output has tipped over from enthralled to exhausted, SIGN is a good time to jump back on-board. In the context of Sean Booth and Rob Brown’s recent work, releasing an album this melodic—and short enough to fit on a single CD—feels almost radical. And while SIGN is clearly an extension of the algorithmic experiments heard on elseq 1-5 and NTS Sessions 1-4, it goes places I’d almost forgotten Autechre knew how to reach.

Opening track “M4 Lema” indicates what’s in store, when a volley of swooshing, Roland Kayn-style cybernetic noise—like a computer mainframe clearing its throat—suddenly gives way to lush pads and a skeletal hip-hop beat, bolstered by occasional surges of sub-bass. That’s followed by “F7,” whose intersecting melodies, circling around each other without ever quite resolving, could have appeared on Oversteps—except that they’re floating way outside conventional Western tuning now.
The track is one of the more obvious instances where Autechre venture into uncharted harmonic territory, coaxing their virtual instruments away from the tyranny of equal temperament. There’s a Blade Runner grandeur to the synths on “esc desc,” but on first listen, it’s like Vangelis getting motion sickness in Deckard’s flying car.

The strangeness is less apparent with repeat plays, and this is definitely an album to spend time with, preferably listening through a decent set of headphones. Speaking to ele-king in 2018, Booth said he was increasingly interested in “cinematic depth, where not every element is obvious,” and the tracks on SIGN teem with activity, some of it on the threshold of audibility. With its sepulchral tones and anaemic 4/4 beat, “psin AM” could almost be mistaken for a lost track from Wolfgang Voigt’s GAS project, if it weren’t for the unstable harmonies dancing around the edge of the mix. When Autechre leave a steady beat running, as on “schmefd 2,” it just serves to highlight how unpredictable the interplay between the other elements is.

Perhaps the biggest surprise is how inviting a lot of the album sounds: “gr4” has a gauzy warmth that recalls Fennesz at his most bucolic, while transcendent closing track “r cazt” wouldn’t sound out of place on a playlist alongside async-era Ryuichi Sakamoto. Autechre’s reputation for alien harshness is overstated, but SIGN is a welcome reminder that they can be pretty goddamn beautiful.

Nightmares On Wax - ele-king

 まさに90年代を象徴する1枚、ナイトメアズ・オン・ワックスの『スモカーズ・デライト』の25周年記念を祝して、〈Warp〉が12インチ・シングル「SMOKERS DELIGHT: SONIC BUDS」をリリース。レコードには、4月にリリースされた『Smokers Delight』25周年記念盤に収録された新曲「Aquaself」と「Lets Ascend」、そして『N.O.W. Is The Time』(2014) 収録の「Dreadoverboard」のファンクミックス「Dreadoverboard (Funk Mix)」の計3曲が収録されている。


SMOKERS DELIGHT: SONIC BUDS

 さらに、リリースに併せてナイトメアズ・オン・ワックスことジョージ・エヴリンが実際に見たという夢にインスパイアされた12分のショートフィルム (日本語字幕付) が公開されている。

Nightmares On Wax • ‘Smokers Delight’ (The Film)

プログレッシヴ・ロックのアルファにしてオメガ

69年の結成前夜から50年にわたり、形を変え、スタイルを変えながらも常に先鋭的であり続けたキング・クリムゾンの全てがここに!

2001年に刊行された Sid Smith “In The Court of King Crimson” に大幅に増補加筆されたバンド・ヒストリーに加え、詳細な楽曲解説と膨大なライヴ音源レヴューを加えた決定版。

著者:シド・スミス
フリーランス・ライター。『クラシック・ロック』『プログ』『Uncut』『レコード・コレクター』『BBC Music』など、多数の雑誌、オンライン・マガジンで記事や評論を書く。またラジオやテレビで音楽記事の書き方について教えるほか、数百本にのぼるライナーノーツをメジャー、インディペンデント双方のニュー・リリース、リイシュー盤に寄せている。詳しくは@thesidsmith facebook.com/thesidsmith

監修:大久保徹
リットーミュージックが刊行するドラムとパーカッションの専門誌『リズム&ドラム・マガジン』編集部に在籍し、数多くのアーティスト取材を経験。2012~2014年には編集長を務め、別冊『パーカッション・マガジン2013』や国内唯一のヴィンテージ・ドラム専門書『Vintage Drum ReView』も制作する。2014年にフリーランスとなり書籍/ムックを数多く編集。主な編集/寄稿本は『THE DIG Special Edition キング・クリムゾン』『THE DIG Special Edition キング・クリムゾン ライヴ・イヤーズ1969-1984』『THE DIG Special Edition エマーソン、レイク&パーマー』『THE DIG Special Edition ピンク・フロイド』『THE DIG Special Edition ジョン・ウェットン』『ヒプノシス全作品集』『プログレ「箱男」』『すべての道はV系に通ず。』(以上、シンコーミュージック刊)、『イエス全史』『ダフ・マッケイガン自伝』『NOFX自伝』『誰がボン・スコットを殺したか?』(以上、DU BOOKS刊)など。キング・クリムゾン関係では、これまでビル・ブルーフォード、ジョン・ウェットン、パット・マステロット、ジャッコ・ジャクスジク、ギャヴィン・ハリソンにインタヴューを行なった。2018年刊行の編著『人生が「楽」になる 達人サウナ術』(ele-king books 刊)も書籍&電子書籍で好評発売中。

翻訳:島田陽子
早稲田大学第一文学部英文学科、イースト・アングリア大学大学院翻訳学科卒。(株)ロッキング・オン勤務などを経て、現在フリー翻訳者として様々なジャンルで活動。『レディオヘッド/キッドA』『レディオヘッド/OKコンピューター』『プリーズ・キル・ミー』(以上 ele-king books)、『ブラック・メタルの血塗られた歴史』(メディア総合研究所)、『ブラック・メタル サタニック・カルトの30年史』(DUブックス)、『フレディ・マーキュリーと私』(ロッキング・オン)他、訳書多数。

目次
Preface――序
LEVEL 1 The tournament's begun... 闘いが始まる……
LEVEL 2 And reels of dreams unrolled... そして夢が広がる……
LEVEL 3 A tangle of night and daylight sounds... 夜と昼の音が絡み合う……
LEVEL 4 It remains consitent... 常に変わらず流れるもの……
LEVEL 5 The jaws of life, they chew you up... 終わりが生む始まり……
After Crimson――キング・クリムゾンを去っていったメンバーたち、その後
Track by Track――楽曲解説
 チアフル・インサニティ・オブ・ジャイルズ・ジャイルズ&フリップ
 クリムゾン・キングの宮殿
 ポセイドンのめざめ
 マクドナルド・アンド・ジャイルズ
 リザード
 アイランズ
 太陽と戦慄
 暗黒の世界
 レッド
 ディシプリン
 ビート
 スリー・オブ・ア・パーフェクト・ペアー
 スラック637
 ザ・コンストラクション・オブ・ライト
 ザ・パワー・トゥ・ビリーヴ660
Annotated Gigography 1969-2003――ライヴ音源レヴュー

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Nubya Garcia - ele-king

 昨今異常な盛り上がりを見せるUKのジャズ・シーンにおいて、ユセフ・カマールジョー・アーモン・ジョーンズらと並び日本でも人気を集めるアーティスト、ヌバイア・ガルシアのニューアルバム『Source』がリリースされた。僕が最初に彼女の存在を知ったのは2017年に〈Jazz Re:freshed〉から出た『Nubya's 5ive』(アルバムの中の “Red Sun” を初めて聴いたときはジョン・コルトレーンの楽曲かと勘違いしてシャザムしたのをいまでも覚えている……)。そこから約3年間の飛躍を考えると驚くべき成長速度である。UKジャズの決定版とも言えるコンピレーション『We Out Here』(9曲中5曲に参加するという異例の抜擢)や女性メンバー主体の7人編成のアフロビート・バンド「ネリヤ」、そして盟友ジョー・アーモン・ジョーンズのソロ・アルバムにも参加するなど、活動は多岐に渡り、まさに駆け抜けるような素晴らしいキャリアをここ数年で築き上げた。デビュー当時は「女性版カマシ・ワシントン」という呼び声もあったが、様々なコラボレーションや活動を通して自身独特の演奏と音楽を披露しているのがこのアルバムを聴いてもわかる。

 リード曲となる “Source” では『We Out Here』周辺のコミュニティーに共通して見えるレゲエやカリビアンなサウンドの縦ノリに力強くサックスが絡み合い、曲の展開が進むにつれてその熱量がさらに高くなっていく。ハウスやブロークンビーツ界隈のアーティストとも交流があってか、とにかく彼女のサックスは非常にグルーヴを感じる。激しすぎず、緩すぎずな絶妙なバランスが常にキープされていて、メロウなジャズから激しいレゲエ調まで緩急も素晴らしい。アルバムのなかで僕がいちばんオススメしている T.4 の “Together Is A Beautiful Place To Be” はジョー・アーモン・ジョーンズの美しいピアノのソロに乗せて、まるで歌っているかのような美しい音色を奏でてくれる。アルバム終盤ではコロンビアのマルチ・インストゥルメンタル・トリオ「ラ・ペルラ」とのコラボレーションで “La cumbia me está llamando (featuring La Perla)” を披露。ロンドンのローカル・ラジオ「NTS Radio」にてラジオDJも務める彼女はジャズやレゲエに混ざって時折クンビアも紹介していたが、まさかアルバムにこのような形で入ってくるのはサプライズだった。スタンダードなジャズ・アルバムというよりは彼女のサックスを軸に自身の吸収した様々な音楽をヌバイア・ガルシア流に表現したと言ってもいいだろう。DJ的な目線でも色んなジャンルの間に挟んでも違和感がないし、幅広いジャンルのリスナーに受け入れられるアルバムに仕上がっている。

 ジャイルス・ピーターソンも彼女を絶賛し、次の10年、20年の音楽シーンの担い手としても期待のかかる彼女のフル・アルバムは様々なジャンルを内包したUKジャズ・シーンのマイルストーン的な作品と言っても過言ではないだろう。今頃であればアルバムをリリース後、順調にワールドツアーもおこない、ここ日本の地でもライヴを披露してくれただろうがしばらく実現できないのは残念。代わりに先月披露された NPR Music の名物企画 Tiny Desk (なんと彼女の自宅から放送)もぜひお見逃しなく。観葉植物で囲まれた空間が逆にUKジャズ特有のDIYなコミュニティーを象徴するかのようだ。


Nas - ele-king

 90年代にデビューした年齢的にも現在40代後半以降のラッパーのなかで、いまもなおヒップホップ・シーンおよび広くアメリカ社会に対しても大きな影響力を持つアーティストとして真っ先に名前の挙がるのは、おそらく Jay-Z と Nas のふたりであろう。アーティストとしての活動だけでなく、ビジネスマンとしても(それぞれ規模の違いはあれど)大きな成功を収めているふたりであるが、自らのレーベルである〈Mass Appeal〉を通じてアンダーグラウンドなシーンのサポートなども積極的に行なっている Nas は、リリース作品に関しても年々よりストイックな方向性を貫いているように感じる。
 Kanye West をトータル・プロデューサーとして迎え、ソロ・アルバムとしては6年ぶりのリリースとなった前作『Nasir』に続く今回のアルバム『King's Disease』では、Jay-Z、Kanye West、BeyoncéASAP Rocky、Drake、Kendrick Lamar、Jay Park など錚々たるアーティストたちの楽曲を手がけてきた Hit-Boy が全曲のプロデュースを担当。様々なヴァリエーションのサウンド・スタイルでありながらも、そこには一本の真っ直ぐな芯が貫かれており、ワンパッケージのアルバムとして非常に完成度の高い作品に仕上がっている。
 先行シングル曲でもある “Ultra Black” は間違いなく本作を象徴する一曲であるが、タイトルが示す通り、BLMムーヴメントとも連動して、Nas の黒人としての高いプライドがこの曲には込められている。様々なヒットチューンを生んできた Hit-Boy であるが、この曲のサウンドはサンプリングを多用し、おそらく楽器も足しながら全体のトーンをコントロールして抑制を効かせることで、Nas のラップのなかにあるエモーショナルな部分を見事に引き出す。Lil Durk と共に黒人女性の持つ強さについてラップする “Til the War Is Won” や、さらに直接的に切り込んだ “The Definition” など、“Ultra Black” と同様にBLMと深くリンクした曲を盛り込む一方で、Big Sean をフィーチャした “Replace Me” や Anderson .Paak との“All Bad” では恋愛(および失恋)をテーマにしていたりと、このリリックのトピックの振れ幅も実に Nas らしい。そして、サンプリングと打ち込みのビートのバランス感が絶妙な Hit-Boy のトラックとの相性も実に見事だ。その反動というわけでもないだろうが、ボーナストラック的なラストチューンの “Spicy” では Fivio Foreign と ASAP Ferg というヤンチャな若手勢を引き連れながら、強烈なトラップ・ビートの上でダーティなストリート臭を思いっきり吐き出すのもまた痛快である。
 本作の最大のサプライズが、90年代に Nas が一時的に組んでいたスーパーグループ、The Firm のメンバーである AZ、Foxy Brown、Cormega が参加した “Full Circle” という曲だ。The Firm、あるいは Nas “Life's A Bitch” をリアルタイムに聞いていた人であれば、AZ が登場する瞬間、頭が20年以上前に持っていかれる感覚になるだろうし、Foxy Brown の相変わらずのラップの格好良さに身震いするだろう。さらにこの曲の最後にシークレットゲストとして The Firm のプロデューサーでもあった Dr. Dre がスピットする演出も実に見事としか言いようがない。
 ベテランならではの貫禄を見せながら、通算13枚目というアルバムでこれだけ強い満足感を与えてくれる Nas。まだまだ枯れることのない彼のクリエイティヴィティが今後も末長く続くことを期待したい。

Last Life - ele-king

 1985年から遅くとも88年までにデトロイト・テクノは確立されている。そこからジェフ・ミルズがハード・ミニマルを分岐させたのが1992年で、ひとつのジャンルから新たな飛躍が起きるまでに5~6年はかかったことになる。その変化は徐々にというよりも一気に起きたように感じられたので、デトロイト・テクノとハード・ミニマルを連続体として捉えられなかった人もいたことだろう。ビートがハードになると、それだけで根本的なことまで変わったと感じてしまうのは仕方がない。それはジェフ・ミルズが意図的に上げようとしたハードルだったわけだし。何が言いたいのかというと、イタリアのラスト・ライフことマウロ・ピッチャウ(Mauro Picciau)のファースト・アルバム『Recon(偵察)』がまさに「ジェフ・ミルズの登場」を思い出させる作品で、ジェフ・ミルズが初めてリキッドルームのDJブースに立った日を蘇らせてくれたのである。ただし、ここで用いるタームは「ハード・ミニマル」ではなく「ハーフタイム」。ハーフタイムというのは一般的には8ビートだったら8で刻むのではなく、オフビートを駆使して4しか叩かずに8ビートを表すリズムのことだけれど、ここ最近、ジャンル名として使われているハーフタイムはドラムンベースを16ではなく8で刻むスタイルを指し、ロンドンのエイミット(Amit)が00年代前半に完成させたスタイルのこと。エイミット自身はハーフタイムを主軸とせず、ドラムンベースに雪崩れ込む前半の展開としてハーフタイムを用いるだけで、そのポテンシャルを最大限に引き出したのは2010年代に入ってDブリッジを待ってから。カリバー “Steptoe”(10)やダブ・フィジックス “Marka”(11)も話題を呼び、ストゥラテジィをMCに起用した後者のヒットによってラガマフィンのサンプリングやフォックスのような現役のダンスホールMCを起用することが増え、ハーフタイムとダンスホールはヒップホップとラップのようにワンセットとして動くようになっていく(そうではない動きももちろんあった)。イキノックスやデムダイク・ステアがダンスホールとテクノを結びつけてリヴァイヴァルさせた際にもハーフタイムは不可分のものとしてあり、エイミット自身もそうした余波に煽られたか、最後までハーフタイムで押し通したシングルは”Acid Trip”(14)が最初だったはず。おそらく、どの流れであれ、ハーフタイムを包括的に扱っていたのはDブリッジと彼の主宰する〈イクジット・レコーズ〉で、僕が最初に飛びついたハーフタイムもDブリッジとスケプタによる“Move Way”(13)だった。そして、彼らが8人編成のモジュール・エイトを名乗ってアルバムをリリースしたのが2015年だから、ラスト・ライフがハーフタイムを一気にハードに展開させるまでにはやはり「5~6年はかかったことになる」。しかも『Recon(偵察)』にはジェフ・ミルズの用いるクリシェがふんだんに重ね合わされ、ジェフ・ミルズがハーフタイムをやればこうなるでしょうと言わんばかりな面も。オープニングのタイトルが“The Minimal”だし。

 ラスト・ライフのことはアルバムを聴くまで知らなかったので、初期のシングルを聴いてみた。デビュー作らしき「85-15 EP」は2015年のリリース。この段階ではまだハードではなく、IDMに近い印象もあり、2017年には「Nether Regions(股間とか冥土の意) EP」が続く。ここでようやく『Recon』へとつながるアグレッシヴな方向性が見え始め、同じ年に〈サムライ・ミュージック〉に移って早々と「Nootka EP」をリリース。そこから彼は独自の道を模索するために配信のみで4枚のセルフ・リリースを重ね、そのまま一直線に『Recon』へ向かったというより彼はここでやってみたいことを様々に試し、好きなだけ実験を重ねたという印象が強い。ジュークやダーク・アンビエントなど、どれもが彼の作風に染まっているのはさすがだし、それらをアルバムにまとめる力がないとは思えないほど独自のカラーは漲っている。しかし、彼に新たな集中力をもたらしたのはパンデミックだったようである。多くのプロデューサーにとって作曲と編集の能力はまったくの別の才能で、同じ課題がラスト・ライフの前にも立ち塞がっていた。タイミングよくパンデミックによってスタジオに閉じ込められたことが、そして、それを解決してくれたのではないかと。どんな方向にも行けた気がするラスト・ライフが『Recon』ではしっかりとストロング・スタイルに照準を合わせている。ラスト・ライフにもドラムン・ベースを16で刻むことには未練があるようで、中盤の3曲がやや退屈に感じられるのはそのせいだろう。しかし、それ以外は基本的にドラムが前景化せず、時には途切れてしまうこともあり、ブリープ音のループや獰猛なベース・ラインが必要以上に強迫的なムードを煽っているあたりはどうしてもジェフ・ミルズを想起させる。それに16できちんと区切っていくリズムはいまとなってはかなり単調に感じられ、トラップを早回しで聞いているような感覚はまさに同時代性のもの。ラスト・ライフがドラムン・ベースをここまで変化させた鍵はジュークにあるのではないかと思うけれど、それ以上のことはよくわからない。ハーフタイムを独自に発展させた動きはほかにもあるので、ハーフタイムが呼び込むリズムの自由さをどのように生かすかはそれぞれの才能に委ねられている時期ということか。

Sylvester - ele-king

 音楽で世界を変えようとすることは必ずしも革命を叫ぶことではない。1977年に「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン」と「アイ・フィール・ラヴ」があったように、1978年には(PiLがあり、ディーヴォがあり、トーキング・ヘッズの2ndもあり……)、そしてシルヴェスターの『Step II』があった。男が女装して街を歩けばまだ逮捕された70年代のサンフランシスコで、画期的な音楽性を伴ってポップ・ミュージックにおけるクイアー・セクシャリティの最初期の発露として未来を切り拓いた歴史的なアルバムだ。オリジナルのリリースから42年を経て、このたび『Step II』はデジタル・リマスタリングによって再発された(ずっと廃盤のままだった)。
 『Step II』は、シカゴの野球場でディスコのレコードを片っ端から燃やすというロック至上主義たちによる儀式の1年前に発売されたディスコ・レコードだ。アルバムにはふたつの重要な曲が収録されている。“You Make Me Feel”と“Dance”、どちらもセクシーで熱狂的なダンス・ミュージックで、どちらも当時ヒットしている。
 シルヴェスターの強烈なファルセットが130bpmほどの当時としては速いテンポのビート(そしてシーケンス)と絡み合う“You Make Me Feel”は、ドナ・サマーに対するアメリカ西海岸ファンクからの回答のように聴こえる。実際にこの曲は、“アイ・フィール・ラヴ”同様にその後のハイエナジー(Hi-NRG)への起点になった。
 近年ルイ・ヴェガにリミックスされたディスコ・クラシックとして有名な“Dance”では、その後ザ・ウェザーガールズを結成してビッグになるマーサ・ウォッシュとアイゾラ・ローズによるパワフルなコーラスが聴ける。その構造は──当時はとくにクイアーにとって決して安全な場所ではなかったであろう教会で歌われる──ゴスペルとの接点を強調するハウスのテンプレートのひとつになっている。『Step II』にマーサとアイゾラがいることは、『スクリーマデリカ』にデニス・ジョンソンがいることが大きかったように、おおらかな生命力が表現されているという意味において、じつに大きな効果を生んでいる。
 このレコードにはもうひとり重要人物がいる。エレクトロニクス(シンセサイザーおよびシーケンサー)を担当しているパトリック・カウリーだ。彼こそ、ゴスペル/ソウルとディスコ・ダンスフロアを繋ぐ危険な導火線だった。シルヴェスターの甘くセクシーな歌声と黎明期のエレクトロニック・ダンス・サウンドとの結合が、性の革命とアイディンティティのあらたな表明のためのエネルギーとなったことは想像に難くない。
 シルヴェスターは『Step II』以降、自らのクイアー・アイデンティティをさらに堂々と、あからさまに研磨する。「私を見ろ」と言わんばかりだ。で、カウリーのほうはと言えば、1981年の『Megatron Man 』および『Menergy』といったアルバムによってエレクトロニック・ディスコ・サウンドをさらに更新させている。そしてシルヴェスターもカウリーも、ともにHIVの合併症に屈し、ともに80年代に他界している。
 もちろんシルヴェスターとカウリーの精神は語り継がれている。『Step II』はドナ・サマー&ジョルジオ・モロダーと同じように音楽の未来の扉を開けたアルバムだった。と同時に、LGBTコミュニティから生まれた先駆的な音楽だったのだから。

 ちなみに『Step II』は、ほかの曲もすべて良い。たとえばヒップホップのネタにもなっているご機嫌なほどファンキーな“Was It Something I Said”、切なくメロウなソウル“Just You And Me Forever(あなたと私こそ永遠に)”、あるいは“Grateful”などはRCサクセションの“ファンからの贈り物”みたいやんけ……と思ってしまうのはそもそもシルヴェスターは、RCのその曲にも参加したタワー・オブ・パワー(先日ベーシストだったフランシス・プレスティアが亡くなられた)と同期の70年代西海岸ファンク・シーンのひとりだったりする。要するに、『Step II』の基盤には西海岸のファンクがあり、それがストーンウォールの反乱と結びついてしまったと。それがいまや歴史になった革命的レコードの背景なのだった。
 (※オリジナルのリリース元であったFantasyレーベルからもアナログ盤の再発があった模様です)

BLYY - ele-king

 池袋を拠点に2001年より活動を続けてきたというヒップホップ・グループ、BLYY (ブライ)が、活動20年目にして初のフル・アルバムとしてリリースした本作。メンバーの年齢的にもおそらく40歳を過ぎており、ベテランと言っても差し支えないと思うが、ライヴを中心に地道に(かつ着実に)キャリアを積んできた彼らの年輪のひとつひとつがしっかりと刻まれた、実に深く染み入ってくるファースト・アルバムだ。

 5MCによるマイクリレー、MCでもある alled がフルプロデュースしたトラック、そして DJ SHINJI によるスクラッチと、それら全てが、彼ら自身、リアルタイムに経験してきたであろう90年代から2000年代初頭のヒップホップがベースとなっており、現在進行形の日本のヒップホップとは全く違った空気感を放っている。例えばブーンバップ・ヒップホップの流れとも共通する部分は感じられるものの、しかし結果的に目指している方向性は全く異なる。個人的には最盛期の LAMP EYE や BUDDHA BRAND などを思い出したりもしたが、BLYY が醸し出すムードは、そういった往年のグループともまた異なる。彼らのサウンドの中にあるモノクローム感というか、ピュアでありながら薄汚れたようなダークな感触は、もしかしたら池袋という街の空気感がダイレクトに反映された結果なのかもしれない。

 勝手な想像ではあるが、彼らがグループ結成当初に作り上げたスタイルをそのまま継承し、純粋培養させながら、ひたすら磨き上げてきた結果でき上がったのが本作だとすれば、非常に納得がいく。その一方で、流行りには一切乗らずにひとつのやり方をひたすら20年も続けてきたのであれば、正直驚くしかない。アルバム1曲目の “MAN” を聞いただけでも、彼らの声質からフロウ、ライミング、リリックに込められた言葉のひとつひとつ、さらにサンプリング・ソースやトラックの出音まで、おそらく30代後半以降の日本語ラップ・ファンであれば、何か強く心に引っかかってくる部分があるだろう。単なるノスタルジーともまた違う、彼らなりの美学が作り出した究極のアートがこの作品には宿っている。

 ちなみに本作のリリース元は PUNPEE や BIM、SIMI LAB、C.O.S.A. らを擁する、あの〈SUMMIT〉だ。いまの日本語ラップ・シーンを背負って立つ存在である〈SUMMIT〉が、BLYY のようなアーティストの作品を世に送り出すというのは本当に意義深いことであり、改めてその審美眼には恐れ入る。

KMRU - ele-king

 ケニア・ナイロビ出身のKMRU(ジョセフ・カマル)は、2017年ごろからDJ活動とアーティスト活動を開始し、翌2018年には「Resident Adviser」の「15 East African Artists You Need To Hear」にも選出された。

 活動初期は現在のようなエクスペリメンタルな作風ではなく、シンガーとのコラボレーション・トラック/曲を発表し、ケニアのエレクトロニック・ミュージック・シーンでは知られた存在だったという。トラックメイカー時代(?)のジョセフ・カマルはドイツのレーベル〈Black Lemon〉からジョン・トーマスとのコラボレーションEP「Eternal Summer」をリリースしたり、ポエトラ・アサンテワとのコラボレーション曲 “Round Pegs” を生みだしたりするなど精力的な活動を展開していた(https://soundcloud.com/poetra-asantewa/round-pegs)。

 やがてジョセフ・カマルはアンビエントなサウンドへと変化を遂げ、本作のリリースへと行き着く。あえていえばそのサウンドはまるで別物といっても良い(サウンドの変貌は彼のバンドキャンプで発表されたトラックを追いかけていくと分かってくるだろう)。
彼はウィリアム・バジンスキーからステファン・マシューの系譜に連なるアンビエント・アーティストへと生まれ変わったのだ。本アルバムのマスタリングをステファン・マシュー/Schwebung Mastering がおこなっていることは象徴的に思える。

 ナイロビ出身のジョセフ・カマルが生み出すアンビエントには、深い安息への渇望があるように聴こえてくる(もしかするとナイロビの治安も関係しているのかもしれない)。その「安息への渇望」への感覚が、アンビエント・リスニングにおける現代的な「チル」の問題について考えるときに重要なテーゼを投げかけてくれるように思えるのだ。
 現在、アンビエント・ミュージックはいわゆる「環境音楽」から、自宅・自室のリラックスした環境で聴く「安息の音楽(チル)」としての側面が強まっている。その「ホームステイ」的な聴取・生活は、コロナ・ウィルス以降の世界においてより現実的になってきたが、しかし一方でコロナ禍以前から「チル」な音楽は一定の浸透力を持っていたことも事実だろう。なぜだろうか。
 ここでひとつの私見・私論を蛇足ながら述べさせて頂きたい。それは「こうまで00年代末期から20年代にかけてチルな音楽が広がった時代背景には世界的な経済不況と治安悪化の問題が根柢にあるのではないか。だからこそ安心できる家にいるときに過剰にくつろぎたい/安息したい欲望が高まったのではないか?」である。このように考えてみると2020年代的なチルな音楽、そしてアンビエント音楽が希求され浸透した背景には、そういった過酷な現代社会と表裏一体の関係にあったかのかもしれない。

 本作『Peel』はKMRUが現代実験電子音響の聖地〈Editions Mego〉からリリースしたアルバムである。しかも『Peel』リリースの翌月には『Opaquer』を立て続けに発表した。さらに9月にはデジタル・リリースで「while we wait」をリリースする。どれもアンビエントの楽曲であり、彼の創作意欲はとても高まっているのだろう。
 あえて簡単に分類するなら『Opaquer』の方がクラシカル、ミニマルなどの音楽的な要素が多く、音楽家/作曲家としての彼の力量を聴くと満喫できる仕上がりとなっていた。一方『Peel』は彼の特有の「チル」な感覚が全6曲・70数分に渡って持続し、アンビエントの現代性を体現するような稀有な仕上がりになっている(「while we wait」は『Peel』の音を融解したようなドローンと環境音を基調とした38分強の長尺トラックだ)。
 『Peel』にはこの時代の「空気」が濃厚に漂っているように感じられた。それもそのはずだ。カナダ・ケベック州モントリオールへと旅していたジョセフ・カマルだったが、新型コロナ・ウィルスの影響で国境が閉鎖され、ナイロビへの帰国を余儀なくされ、母国ケニアへと帰国、自宅に籠って48時間で完成させたアルバムというのだ。1曲目が “Why Are You Here” という曲名なのも本作を象徴しているように思えてくる。

 コロナ禍のロックダウン的状況のなか制作された『Peel』は、同時に体を休息し、安息へ導くアルバムである。やわらかい電子音に空気のなかを漂うかのごときノイズ、時間をかけて生成し変化するアンビエンスには「親密さ」があり、深い睡眠のように無時間的な「安息」の感覚もあり、家族たちとの穏やかな時間の記憶のような音色の色彩に横溢していた。
 1曲目“Why Are You Here” の静謐な始まりから、穏やかな波のように持続する2曲目 “Well” と3曲目 “Solace”、次第にサウンドが拡張され聴覚と知覚に浸透していくかのごとき “Klang”、夢の中のミニマル/ドローンのごとき “Insubstantial”、そして22分に及ぶアルバム最終曲 “Peel”。全6曲がシームレスにつながり、70分におよぶ音の波を生成する。なかでも “Peel” はアルバム全般を統合したような長大な曲であり、透明な空気と濃厚な霧が交錯するような美しさに満ちている。

 長々と言葉を連ねてきたが、何より「夜」の光景を捉えた印象的なアートワークが、本アルバムのムードを雄弁に表現していることはいうまでもない。深い夜にたちこめる霧の時のようなアンビエンス/アンビエント。まるで満ちる音の波のように、もしく音の空気のように70分強のあいだ濃厚なアンビエントが展開していくのだ。私たちは彼のサウンドを聴取することで、睡眠と覚醒のあいだにあるような不可思議な安息を得ることになるだろう。
 世界が危機的であればあるほど、人間には世界から隔離された睡眠のような時間が必要だ。現実には否応なく戻ることになる。人には休息が必要だ。KMRU『Peel』は、われわれにとって、そんなひとときの安息を用意してくれる美しいアンビエントだ。

Oneohtrix Point Never - ele-king

 波紋を呼んだ前作『Age Of』から早2年。多作かつコラボ大王のダニエル・ロパティンはこの間もサントラの制作やザ・ウィークエンド、モーゼズ・サムニーの作品への参加など、絶え間なく音楽活動にいそしんできたわけだけど、ついに本体=ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーとしてのニュー・アルバムを10月30日にリリースする。
 なんでも、今回はこれまでのOPNを集大成したような内容になっているとのことで、期待も高まります。現在、アルバムから3トラックを収録した先行シングル「Drive Time Suite」が配信中、試聴はこちらから。

[10月14日追記]
 くだんの先行公開曲3トラックのうち、“Long Road Home” のMVが本日公開されている。監督はチャーリー・フォックスとエミリー・シューベルトで、エロティックかつなんとも不思議なアニメ映像に。OPN の原点の回想であると同時に最新型でもあるという新作への期待も高まります。

ONEOHTRIX POINT NEVER
集大成となる最新アルバム『MAGIC ONEOHTRIX POINT NEVER』から
先行シングル “LONG ROAD HOME” のミュージックビデオが公開!
過去作品のオマージュにも要注目!
アルバム発売は10月30日! Tシャツ付セットの数量限定発売も決定!

ライヒ、イーノ、エイフェックス・ツインからバトンを受け継ぐ存在としてシーンに登場し、今や現代を代表する音楽プロデューサーの一人となったワンオートリックス・ポイント・ネヴァー(以下OPN)が、そのキャリアの集大成として完成させた最新作『Magic Oneohtrix Point Never』から、先行シングル “Long Road Home” のミュージックビデオを公開した。

Oneohtrix Point Never - Long Road Home (MV)
https://www.youtube.com/watch?v=w5azY0dH67U

アルバム発表と同時に、シングル・パッケージ「Drive Time Suite」として3曲を一挙に解禁した OPN ことダニエル・ロパティン。自身の作品だけでなく、映画音楽や、ザ・ウィークエンドの大ヒット作『After Hours』のプロデュースを経て、ポップと革新性を極めたサウンドに早くも賞賛の声が集まったが、今回ミュージックビデオが公開された “Long Road Home” は、その3曲の解禁曲の一つとなっており、メイン・ヴォーカルをロパティン本人が務め、元チェアリフトのキャロライン・ポラチェックが参加している。チャーリー・フォックスとエミリー・シューベルトの二人が監督した本ビデオは、異世界の不気味な二つの生物が、ロマンティックに絡み合う様子が描かれたストップモーション・アニメーションとなっており、人間の感情とエロティックなダークユーモアの間で展開する求愛の乱舞が、ファンタジーと現実の境を破壊していくストーリーとなっている。『R Plus Seven』のアートワークにも登場する、ジョルジュ・シュヴィツゲベルが1982年に発表した短編作品「フランケンシュタインの恍惚」へのオマージュとなっている点も楽しめる映像となっている。

これは愛と変質についてのロマンチックな寓話で、夏の間にダン(OPN)と交わした荒唐無稽で哲学的な会話から生まれたものです。グロテスクな、あるいは悪魔のような生き物を、求愛の儀式を通して、奇妙で愛らしく、また切なさを纏ったキャラクターに見せたいと思いました。親密さが切望され、同時に恐れられているこの時期に、突然変異体のような奇妙な歌声が響くこの曲に、完璧にマッチした映像だと感じました。心の底から素晴らしいと思ったし、それが滲み出てると思います。 ──co-directors Charlie Fox and Emily Schubert

これまでの OPN の音楽的要素を自在に行き来しながら、架空のラジオ局というコンセプトのもとそれらすべてが奇妙なほど見事に統合された本作『Magic Oneohtrix Point Never』は、OPN の原点の振り返りであり、集大成であり、同時に最新型である。

ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー最新アルバム『Magic Oneohtrix Point Never』は、10月30日(金)世界同時リリース。国内盤CDにはボーナストラック “Ambien1” が追加収録され、解説書が封入される。また数量限定でTシャツ付セットの発売も決定。アナログ盤は、通常のブラック・ヴァイナルに加え、限定フォーマットとしてクリア・イエロー・ヴァイナルと、BIG LOVE 限定のクリア・ヴァイナルも発売される。Beatink.com 限定のクリア・オレンジ・ヴァイナルとカセットテープはすでに完売となっている。

また、本日10/14より〈WARP〉からリリースされたワンオートリックス・ポイント・ネヴァーの過去作品を対象としたポイント還元キャンペーンが BEATINK.COM でスタート! 会員登録をして対象タイトルを購入すると、次回の買い物時に使用することができるポイントが10%付いてくる。併せて、iTunes でも対象タイトルが全て¥1,222で購入できる期間限定プライスオフ・キャンペーンが本日よりスタート!

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