「You me」と一致するもの

interview with Moon Duo - ele-king


Moon Duo Shadow Of The Sun
Sacred Bones / ホステス

PsychedelicRockFolkDrone

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 ムーン・デュオといえば、ピーキング・ライツ(Peaking Lights)に負けるとも劣らぬサイケデリック夫婦。しかしノリのほうはすこし胡散臭さが勝るのがムーン・デュオかもしれない。旦那のほうが元ウッデン・シップス(Wooden Ships)のメンバーであっただけに、重心低めのブルージーなサイケデリック・ロックが底流にはあるが、たとえば本インタヴュー内でも言及される“アニマル”のMV“スリープウォーカー”のMVなど、何かふざけたネタ感をぶっ込まずにはいられないという茶目っ気がある。毎回大きく作風を変えるわけではないが、マメにツアーに出て、生活と音楽とサイケが寄り添うような生き方をしているふたりにとっては、アルバムごとの色などよりは、そうした冗談やお茶目のほうがはるかに大事なものなのかもしれない。のんびりとまどろむようなスペーシー・ロックから、クラウトロック調、ブギ、ちょっとラフなガレージ・ナンバーまで、USのアンダーグラウンド・カップルのマイペースなノリをいっしょに楽しみたい。月のように、彼らはいつもそこにいる。振り返ったらついてくる!

■Moon Duo / ムーン・デュオ
サンフランシスコ出身の人気前衛サイケデリック・ロック・バンド、ウッドゥン・シップスのメンバーであるリプリー・ジョンソンと、妻であり元教師という過去をもつサナエ・ヤマダ(父親が日本人)夫婦によるプロジェクト、ムーン・デュオ。現在はポートランドに移住して活動をつづける。ザ・メン、ゾーラ・ジーザスなどを擁するブルックリンのブティック・レーベル〈セイクレッド・ボーンズ(SACRED BONES)〉と契約し、2011年に『メイジズ(Mazes)』、12年に『サークルズ(Circles)』の2枚のアルバムを発表。本作は約2年半ぶりとなる通算3作めのフル・レンス・アルバム。13年には都内4公演から成る初来日ツアーを敢行し、日本での知名度を上げている。

普通じゃない場所でライヴをするのが大好きなのよね。

リプリーのウッドゥン・シップスに比べると、ムーン・デュオはもっと柔軟で、ライヴをしやすいのではないでしょうか。フルのドラムセットもスタック・アンプも要らないですもんね。あなたたちはアート・ギャラリーやディスコなど、つまりライヴハウスではない会場でライヴをされてきたと思います。典型的なライヴハウスで演奏するのと何か違いはありますか ? もしあるならば、それはどのような違いでしょうか?

サナエ:普通じゃない場所でライヴをするのが大好きなのよね。アート・ギャラリーや教会でもプレイしたことがあるし、そういうライヴはとくにに想い出深いわ。たしかにいままでのムーン・デュオはそういう変わった場所でのライヴがしやすい編成だったけれど、最近ではドラマーが参加するようになったから、以前ほど簡単ではなくなった。とはいえ、それでもおもしろい機会があればいまでもやりたいと思ってる。前にサンフランシスコの〈ジ・エクスプロラトリアム(科学博物館)〉でライヴをしたんだけど、本当に素晴らしかった。


新作ではドラマーのジョン・ジェフリーと制作を行ないました。彼はアルバムのレコーディングのみの参加なのでしょうか?
 それとも、彼はムーン・デュオのメンバーとしてライヴに参加する、あるいは参加していたのでしょうか?

サナエ:じつは、ジョンにはもともとツアーに参加してもらう約束だけで、いっしょにレコーディングすることは考えてなかったの。2013年の夏のツアーで、フェスや野外のライヴの予定がいくつかあったから、そういう場所には生ドラムがあったほうがよさそうだと思ってね。でもやってみたら、ジョンがこのバンドにすごくしっくりくることがわかって、いまではライヴではもちろんのこと、新作のレコーディングにも参加してもらうことになったの。

今作のタイトルやジャケットはコールド・サンの『ダーク・シャドウズ』を思わせます。あの作品が好きですか? また、今作のタイトル『シャドウ・オブ・ザ・サン』は『ダーク・シャドウズ』を何かしらの形で参照しているのでしょうか?

サナエ:あのレコードは大好きよ! いままではこの作品とのつながりを考えたことはなかったけれど、言われてみればたしかに共通点があると思う。



ムーン・デュオのサウンドはある意味で、かなりミニマルでシンプルと言えるでしょう。過去には多くのアーティストたちにリミックスをされてきました。それらのリミックス作品からどのようなインスピレーションを受けますか? 今回のアルバムの曲のリミックスを依頼したいアーティストはいますか? もしくは既に作業は進んでいるのでしょうか?  もしそうであれば、現在取りかかっているリミックスを教えてください。

サナエ:サナエ:このアルバムの曲に関しては、まだリミックスを作る予定はないけれど、やってみたい気持ちはあるわ。過去のリミックス・アルバムでは、普通はあまりリミックスをやらないアーティストを起用したかったの。そういう人たちのほうが、どういうリミックスにすべきかっていう既成概念に縛られず、ユニークで一風変わったものを作ってくれそうだと思ったから。リミックスの出来にはもちろん満足してるわ。自分たちの音楽を他の誰かが解釈したものを聴くって、とてもおもしろい経験だった。それに、その経験を通じて、自分自身もまたちがった聴き方をできるようになった気がするわ。

私たちはツアーに長い時間を費やしているし、移動したりドライヴしたりということは、人生の大きな一部になってるから。

今作のジャケットがとてもカッコいいですね。日本のグラフィックデザインの黄金期のテイストが感じられます。これはどなたが手がけたのでしょうか?

サナエ:アルバムのジャケットは、ジェイ・ショウというアーティストが手掛けたものなの。彼はアルバムのジャケットだけじゃなく、映画のポスターなどもよくやっていて、70年代風のタッチが素晴らしいと思う。少しSFっぽくて、映画的なジャケットがいいなと思っていたから、彼のデザインが本当にぴったりだった。



今回に限らず過去品も含めて、ムーン・デュオの音楽はドライブをするときのサウンドトラックにピッタリなんですよね。作曲をしているとき、ツアーのことや車を運転することを考えますか?

サナエ:それはいい褒め言葉ね! 曲を書いているときにあえて考えているわけではないけれど、たしかに私たちはツアーに長い時間を費やしているし、移動したりドライヴしたりということは、人生の大きな一部になってるから。それに私自身、ぐいぐいと進むようなサウンドに惹かれるところもあると思う。 


ポートランドの地元の音楽シーンはどのような感じなのでしょうか? あなたたちはよく演奏はされていますか?

サナエ:ポートランドの音楽シーンはすごく盛り上がってる。住んでいるミュージシャンも多いし、毎晩どこかでライヴをやってる。それに、まだまだ小さなインディのレコード屋さんが頑張ってるわ。他のアメリカの都市では、そういう文化がなくなってきているから、本当にありがたいの。私たちはツアーしてばかりで、ポートランドに戻るとバンド活動をお休みすることが多いから、自分たちが地元シーンの一部とまでは思わないけれどね。でも、今回のアメリカ・ツアーのフィナーレは土曜日のポートランドのライヴなの。すごく楽しみにしてるわ。 


あなたたちのミュージック・ビデオはどれもある意味コミカルです。“アニマル”のビデオがどんなアイディアから生まれたかが気になります。なぜ映像ではプロのスケーターがスケボーを使わずにスケートをしているのでしょうか? 曲と映像のストーリーとの繋がりがいまひとつ理解できなかったんですよ。

サナエ:“アニマル”では、リッチー・ジャクソンという監督に依頼したの。彼の作品を私たちふたりとも気に入ってたから。ビデオを作ってほしいとお願いしたら、快諾してくれたわ。彼が好きなようにやってくれればいいし、どれだけ変わったビデオになっても構わないって伝えた。スケートボード以外のもので滑るスケーターというのは、リッチーのアイデアだった。その意外性が私たちも気に入ったわ。あのビデオは“無”や“欠落したなにか”っていうコンセプトをベースにしていて、そこが『シャドウ・オブ・ザ・サン』と共通しているところなの。

ポートランドの音楽シーンはすごく盛り上がってる。まだまだ小さなインディのレコード屋さんが頑張ってるわ。

ムーン・デュオは全てのアルバムを〈スケアード・ボーンズ〉からリリースしています。同じレーベルに所属するアーティストや作品からインスパアされますか?

サナエ:ええ、もちろん。サイキック・イルズやフォラクゾイドは大好きだし、それにジョン・カーペンターは特別ね。それに、〈セイクリッド・ボーンズ〉からリリースされているファーマコンやゲイリー・ウォー、アーメン・デューンズの作品はどれもおもしろくてユニークだと思う。

最近共演したミュージシャンやバンドで、誰が素晴らしかったですか?  また、見つけたお気に入りのレコードはなんですか?

サナエ:今回のツアーでは、ケヴィン・モービー、ネスト・エッグ、レキシー・マウンテン、ミラーズ、ホリー・ウェーヴに参加してもらったわ。個人的にやられたのは〈SXSW〉でいっしょにライヴをしたシタールとタブラのデュオ、Gourishankar Karmakar and Indrajit Banerjeeね。彼らを見ていると、まるで自分が宙に浮かんでいるかのような気分になったわ。最近のレコードだと、〈サヘル・サウンズ(Sahel Sounds)〉からのリリースにはずっと注目していて、Mdou Moctarの『Anar』とか、Mamman Saniの2枚のアルバムはよく聴いてるのよ。





サイケデリックな紳士淑女のみなさま、〈Sacred Bones〉のことはご存知?──ムーン・デュオ来日記念! セイクリッド・ボーンズの10枚+1

ムーン・デュオのインタヴューでも言及されている、彼らのもうひとつのホーム、〈セイクリッド・ボーンズ〉は、USアンダーグラウンドの2000年代から現在を語る上で重要なレーベルのひとつでございます。ゾラ・ジーザス(Zola Jesus)やクリスタル・スティルツ(Crystal Stilts)などはよくご存知かもしれませんね。レーベルのベースにあるのは、ムーン・デュオやサイキック・イルなどどっぷりと振り切れたガレージ・サイケですが、ゾラやクリスタル・スティルツをはじめ、ラスト・オブ・ユース(Lust Of Youth)やゲイリー・ウォー(Gary War)など、2010年前後のトレンドでもあったシンセポップやニューウェイヴ/ポストパンク・マナーが、やはりトレンドであった独特のローファイ文化と結びつき、さらにもうひとつトレンドであったインダストリアルやシューゲイズまで巻き込んでいったことは、このレーベルの鋭さを証すものでしょう。
彼らがマイナーでカルトなサイケ集団のようなたたずまいにもかかわらず、諸トレンドの奇妙な合流地点となっていたことは、次の10枚を眺めてみてもよくおわかりになるかと思います。じつにおかしな、そしてキュートなレーベルでございます。

Pharmakon - Abandon

NY出身の可憐な少女、マーガレット・チャーディエットによるファーマコンのデビュー・アルバム。絶叫、グロ、オカルティズム、ノイズ……こじらせすぎた女子による、振り切れすぎたエレクトロニクスは、ゲテモノとアートの狭間で凄まじい緊張感と違和感を放ちながら、ギリギリの官能を現出させてみせる。このジャケ同様、狂気のライヴ映像は閲覧注意!

Crystal Stilts - Delirium Tremendous

そもそもは〈スランバーランド(Slumberland)〉からのデビュー作『オールライト・オブ・ナイト』で脚光を浴びたオサレなバンドだったが、当時ネオ・シューゲイズなどと目されたあの淡麗なフィードバック・ノイズやポストパンク・マナーの影にはドロドロとアンダーグラウンドの血が流れていたのだろう。このサード・フルにはドラッギーなフォークやカントリー色までうかがわれる。

Lust for Youth - Perfect View

スウェーデンはコペンハーゲンの現在を象徴するレーベル、〈Posh Isolation〉を主宰するHannes Norrvideによるユニット。その持ち味であるスマートなダーク・ウェイヴには、皮肉やパロディではなしに、若いいらだちやポジティヴな攻撃性が感じられて清々しい。本作は2010年前後のシンセ・ポップ・リヴァイヴァル群のなかでも、ひときわナイーヴな美しさを放っている。

Amen Dunes - Through Donkey Jaw

本作の隣には、〈キャプチャード~〉と双璧をなす2000年代のローファイ・コロニー、〈ウッジスト(Woodsint)〉のウッズ(Woods)を並べずにはいられない。2014年の新作ではよりクリアに「歌」を取りだしてみせたエイメン・デューンズことデイモン・マクマホンだが、より混沌とした本作の、こだまのようにのんきで音響的なヴォーカルには、どこか神聖ささえ宿っているように感じられる。

Blank Dogs - On Two Sides

2000年代後半のUSインディを語る上で絶対に避けては通れない重要レーベル〈キャプチャード・トラックス〉主宰のマイク・スニパーによるユニット、その記念すべき〈トラブルマン・アンリミテッド〉からのファースト・アルバム。なんとセカンド・プレスからは〈セイクリッド~〉からも出ていたのだ。ダム・ダム・ガールズなど当時トンガっていたガレージ、ポストパンクから、シューゲ・カタログの発掘・リイシューにも余念ないブルックリン・アンダーグラウンドの雄。

Zola Jesus - Stridulum EP

ゴシックや〈4AD〉再評価の機運が高まる2010年前後のシーンに颯爽と現れた才媛。無機質なビートと不穏なノイズが構築するダーク・ウェイヴに、ケイト・ブッシュに比較されるヴォーカル。幼少から学んだというオペラの素養は、どこかトラウマチックで険のある彼女のアルトを艶めかせ、かつフラジャイルな魅力を加えている。本作はデビュー・フルの後のEP。ジャケももっともコンセプチュアルだ。

Gary War - Horribles Parade

世間的にはサード・フル『ジャレッズ・ロット(Jared's Lot)』が有名だろうか。アリエル・ピンクのバックも務めていたグレッグ・ダルトンによるセカンド・アルバム。激渋ジャケとは裏腹に、ファズとフィードバック・ノイズが効きつつも、〈キャプチャード・トラックス〉と同時代性を共有するローファイぶりがコミカルかつ愛らしい、アリエルの初期カタログを思わせるようなスキゾ系ポップ。

Psychic Ills - Hazed Dream

タイトルどおりヘイジーなサイケデリック・フォーク。ドリーミーというにはドープな空間性、〈リヴェンジ(Rvng Intl.)〉からのリリースにもうかがわれる、遠くアンビエントやドローンに接続していくような音響、ブルージーな楽曲、絶対に跳ねないヴォーカル。NYを拠点とし、現在は3人編成で活動。〈セイクリッド~〉らしさを構築する存在のひとつだ。

The Men - Open Your Heart

NYのなんともストレートなガレージ・サイケ・バンド。サーフ、ガレージ・パンクを軸に、かすかにメタルやハードコア的な要素も聴き取れるが、特筆すべきはそのポップ・センス。ぺなぺななプロダクションに愛唱すべきメロディが乗る。本当、憎めない。リリース量でも〈セイクリッド~〉において無視できない存在である。スタジオ・アルバムらしい完成度を求めるなら『トゥモロウズ・ヒッツ』を。

Slug Guts - Playin' In Time With the Deadbeat

プッシー・ガロア(Pussy Galore)やバースディ・パーティ(Birthday Party)の影響も色濃い、オーストラリアの“サバービア”・バンド。本作は2枚めのフル・アルバムとなる。参照点は渋いものの、絶妙に垢抜けないことを仮に「ぜつあか」と呼ぶなら、彼らはまちがいなくぜつあかマスターである。しかしそれが愛らしい……と思わせられるのは、そう、このレーベルの呪いである。

プラいち!- David Lynch - Eraserhead: Original Soundtrack Recording

言わずと知れた鬼才映画監督。彼が音楽制作も行うことはすでに周知のことだが、〈セイクリッド~〉からサントラもふくめなんやかやと7タイトルもリリースしているというのはなかなか本質的な事実! メジャー・リリースだと見え方もずいぶんと変わっていたのではないだろうか。

Jesse Ruins - ele-king

 チルウェイヴからインダストリアル/ダークウェイヴへと舵を切ったジェシー・ルインズが、5月20日、リミックス・アルバムを出す。
 リミキサーのメンツには、Black Rai、Taquwami、食品まつり、あらべぇ、sanm、DJ Soybeans、Djwwww、LSTNGT、Nicole Brennan、Schwartz Brotchen、Castration Fear、Ultrafogなどなど、最近の彼の幅広い音楽性と、いろんなジャンルと繫がっていくどん欲ささが反映されていると言えるだろう。
 現在の日本のシーンを知る上でも、注目のリミックス盤だ。

Jesse Ruins
The Other Type of Heartless

2,200Yen + tax /
CAT No: MGNF-1024
限定盤にはオリジナル盤のカセットバージョンが付きます。

Jesse Ruins - Truth of D (Taquwami Remix)
https://soundcloud.com/jesse-ruins/truth-of-d-taquwami-remix

Jesse Ruins - She is in Photo SNS (あらべぇ Remix)
https://soundcloud.com/jesse-ruins/she-is-in-photo-sns-remix


以下、ジェシー・ルインズ本人がコメントを寄せてくれました。

「Jesse Ruinsが3年前にCaptured Tracksから音源をリリースしていたことなんか、もうみんな忘れたかもしれないし、僕も忘れそうなくらい少しづつ音楽性も変わってきてて、でも3年も経ったら変化していくのも当然かもですね。Cold Nameなどの別名義とかもそうで、そのときそのときの好きな音楽を反映させながら作りたい音楽が変わっていくのは自分的にすごく楽しいです。
 最近始めた新しい名義CVNはこんな感じです(https://soundcloud.com/cvntrack)。
 こちらもこれからリリースが控えてるので、楽しみにしててください。
 最近は聴いてるもの→やっと買えたMarshstepperの12インチなどAscetic Houseの周辺もまだまだ聴きつつ、LoticなどJanusの周りやYoung Echo界隈のFuckPunkのレコードもすごく良くて。あとはAhnnuの新しいカセット楽しみ。
 で、今回のリミックスアルバムの人選なんですが、名前は知ってるけど初めて話す方とか、新しい出会いが最近多く、ライヴやDJなど一緒になって繋がった人などを中心に人選させていただきました。
 先行公開してるTaquwamiくんは去年のリミックス盤でも声をかけてたんですが、タイミング合わず今回ようやくということで。最近の彼らしいビートに元の素材がうまく溶け込んでて突然降ってくる甘いメロディも癖になります。
 他にも食品まつりさん、あらべぇくん、DJ Soybeans/Schwartz Brotchen、Djwwww/Nicole Brennan、sanm、Ultrafog、LSTNGT、Castration Fearさんなど国内勢に加えてBlack Rain、Violence、Orphan Swordsの海外勢もみんなオリジナルの楽曲と言っても違和感ないぐらいに個性が強く出ています。是非買って聴いてください」
Nobuyuki Sakuma (Jesse Ruins / CVN / Cold Name(R.I.P.))

■リリース・パーティ
The Invention of Solitude #8 <Jesse Ruins "The Other Type Of Heartless" Release Party>
日時 5/31 OPEN/START 18:00
場所 KATA [LIQUIDROOM 2F]
出演 Jesse Ruins , 食品まつり aka Foodman , LSTNGT , sanm , Ultrafog , CVN , あらべぇ(DJ) , Naohiro NIshikawa (DJ) , and more.
チケット: DOOR 2,000 / ADV 1,500
問い合わせ先: https://www.kata-gallery.net/

FKA TWIGS - ele-king

 出るぞ出るぞとじらされながら、なかなかリリースされないFKAツイッグスのニュー・シングル(ちなみに彼女には、シングルのほうが良い! という評価もあるほどシングルへの期待値は高い)。これだけじらされると、もう快感も萎びしてしまうよと……そう、せっかちなあなたに朗報です。
 今年リリース予定のシングルからの新曲“Glass & Patron”のPVが公開されました! デビュー・アルバム『LP1』以降、初めての新曲です。どうぞご覧下さい。



※FKAツイッグスの貴重なロング・インタヴュー+撮り下ろし写真が掲載のele-king vol.16は来週月曜日(3/30)発売!

TERRENCE PARKER - ele-king

 テレンス・パーカーは、デトロイト・テクノ/デトロイト・ハウスにとって大先輩のひとりである。彼はディスコの時代からヒップホップ時代を経て、彼の地でもっとも早くハウスをスピンしたプロのDJだ。デリック・メイからURまでみんながリスペクトしているし、まだ無名だったムーディーマンをいち早くフックアップしたのもテレンス・パーカーだった。また、千葉のDJノブが初期においてもっとも大きな影響のひとりがパーカーである(パーカーはフューチャー・テラーに敬意を表する意味で、〈チバシティ〉なるサブレーベルを発足したことがある)。
 このデトロイトの重鎮は、世界の気まぐれなのか、周期的に地球に近づく彗星なのか、何年かにいちど、ものすごく脚光を浴びるときがある。2013年、ハウス・リヴァイヴァルがあらゆる位相で起きたときに、彼はいきなり表舞台に躍り出て、2014年に15年ぶりのアルバム『Life On The Back 9 』を発表した。さらにまた、つい先日は、ハウスの名門〈King Street Sounds〉からミックスCDを出したばかり。
 来日DJは4月4日。場所は渋谷のAIR。デトロイト仕込みの、ファンキーで、ソウルフルなDJを聴きたくないかい? だったら行こう。

4月4日(土)
Deeep Detroit Heat
TERRENCE PARKER MIX THE VIBE RELEASE PARTY

10PM | ¥3500 w/f ¥3000 AIR members ¥2500 Under 23 ¥2500 Before 11:30PM ¥2000 After 6AM ¥1000

MAIN: Terrence Parker (from Detroit),
DJ NOBU (Future Terror | Bitta),
DJ SHIBATA (探心音 | the oath),
You Forgot (UGFY Records)

LOUNGE: haraguchic (DAWD | FFF), Wataru Sakuraba, Akinori Shimura, Akey, Tatsuoki (Broad | Crept)

NoMad: CUTS, Tatsuya Ouchi (Drop), ABULA (choutsugai), HIROMI NOGUCHI

“MIX THE VIBE”のリリースツアーで待望のDJがAIR初登場

90年代からリリースを重ね、王道ハウス・ミュージックの象徴的存在となってきたミックスCDシリーズ“MIX THE VIBE”。TERRENCE PARKERがコンパイルを務めたその最新作がリリースされる。拠点であるデトロイトのアーティストたちに「もっとも凄いDJは誰か?」と聞くと、必ず名前が挙がるほど彼のプレイスキルは高く評価されており、現地では超絶テクニックを誇るJEFF MILLSとも並び称されるほどの名声を獲得している。AIRには、これが待望の初登場。昨年はCARL CRAIGのレーベルからのリリースも実現して話題となった男の、スリリングなプレイを体感せよ。そして共演には、TRRENCE PARKERの初来日を実現させたDJ NOBUも登場する。

■Terrence Parker

キャリア35年以上を誇り、電話の受話器をヘッドフォンとして使用する独特のDJスタイルと、テクニカルなスクラッチで知られるデトロイトきってのテクニシャン、オリジネーターの一人である。2014年、Planet E/Defectedよりアルバム 『Life on The Back 9』をリリース。

※ミックスCDにも注目!

Terrence Parker
Mix The Vibe: Terrence Parker - Deeep Detroit Heat
King Street Sounds / Nite Grooves

 ハウスの名門〈King Street〉からのMix The Vibeの記念すべき20作目は、デトロイトのカリスマDJ、テレンス・パーカーが登場。その卓越した感覚と技量に支えられた独自のグルーヴは、ハウス・ミュージックの枠に留まることなく、全てのクラブ・ミュージック - ダンス・ミュージックのファンにアピールするだろう。


tickles - ele-king

2015/4/4にNEW EP『4.5』を1年半ぶりにリリース!
https://www.mad-agascar.com/news/701.html
https://soundcloud.com/tickles-yukikamata

LIVE
4月4日土曜日 Shibuya 7th floor
open/start/18:00/18:30
door/1000+1d
LIVE
・CHUB DU
・tickles
・pepe california
DJ
・蟻(moph records)
・TSUTCHIE(SHAKKAZOMBIE)
・KENKOU

ラジオから流れてきて欲しい10曲

Leviathan - ele-king

 数年前に〈ノイジー(noisey)〉から公開された孤独なメタル野郎3人の取材をもとに制作されたドキュメンタリー、『ワンマンメタル』を観られた方はおられるだろうか。この世にはバンドを結成することすら拒絶し、全パートを独りで演奏、録音までこなし、そして多くはライヴすらおこなわないというワンマン・ブラックメタルなる精神不衛生極まりないジャンルが存在する。『ワンマンメタル』は、それぞれ孤独で歪んだ3人の男の内面と音楽性に迫るインタヴューで構成される。ストライボーグは不治の中二病、ザスターはサイコパス、そしてこのリヴァイアサンは絶望といったところであろうか。これを観て、それまで聴いたリヴァイアサンの音源に対して異常な説得力を感じてしまった。

劇中のインタヴューと重複するので、興味を持った方はユーチューブで視聴していただきたいのだが、リヴァイアサンことレスト、本名ジェフ・ホワイトヘッドはカリフォルニア州オークランドで彫り師として働いている。ティーネイジャーで早々に学校をドロップアウトし、ホームレスとなったジェフは、友人宅のカウチを転々としながらスケート三昧の生活をサンフランシスコで送っていた。プロ・スケーターとして成功し、『スラッシャー』の表紙を飾り、スーファミ用のスケボー・ゲーム、『スケート・オア・ダイ2』のジャケにもなっていたそうだ。スケボー以外の居場所を見出せなかったジェフはスケート・ブランドのグラフィックを制作するなどして生活していた。本人いわく、「最高に楽しかったよ」──まるで絵に描いたようなサンフランシスコの悪ガキの夢を実現させていたと言えよう。

そのような生活の中、自然な流れでパンクやマスロックのバンドなどで活動していたジェフにとって、ブラックメタルとは、誰の力もかりずに完遂できるスケート・カルチャーに通じるDIYな方法論であったのかもしれない。ルーカー・オブ・チャリス(Lurker of Chalice)もまたジェフによるワンマン・ブラックメタル・プロジェクトで、リヴァイアサンの血なまぐさい暴力的なサウンドとは異なった美しいアンビエンスとメロディを聴かせる、USブラックメタルにおける重要なプロジェクトだ。

リヴァイアサンがジェフの憎悪であるのに対して、ルーカーの美旋律は彼のミューズへの愛である。彼は劇中で恋人がガンの長い闘病生活の末、脳への転移に苦しみ、自ら命を絶ったことを告白する。想像を絶する悲しみのなかで引き蘢り、がむしゃらに音楽制作に没頭した末、ジェフ自身も自殺を試みるが未遂に終わり、さまざまな思い出が詰まったサンフランシスコからオークランドへ拠点をうつした。

これほどまでリヴァイアサンのサウンドに説得力を与えるエピソードはないだろう。重すぎる。暴行罪で起訴された後に出された前作『トゥルー・トレーター、トゥルー・ホア(True Trator, True Whore)』以来4年ぶりに〈プロファウンド・ロア(Profound Lore)〉より『スカー・サイテッド(Scar Sighted)』がリリースされた。圧倒的な暴力性とエモ過ぎるメロディ、荒れ狂う大地に降り注ぐ月光のごときアンビエンス、疾走する黒い魂を聴くことができる。

本作はボックス・セットとして発売され、ダニエル・ヒッグスからの影響もうかがえる(そもそもスケート、タトゥー、パンクロックに育まれた生活の中で影響を受けない人間はいないと思うが……)秀逸なアートワーク/イラストレーションを存分に堪能できるスペシャルなパッケージとなっている。ジェフいわく二度とやることはないというルーカー・オブ・チャリスも、噂によると膨大な未発表音源が眠っているらしく、ぜひとも同レーベルから近い将来の再発を望む。

単なるメロドラマやファッション、エンターテイメントとは異なるブラックメタルがここにある。

Lightning Bolt - ele-king

 フロアにできたひとの渦の上をへろへろの男は笑いながら運ばれ端までいって落ちては立ちあがりまたひとの波にのまれにいった。ふつうモッシュピットといえば、ステージのハードな演奏にいてもたってもいれなくなった観客のおこす癇癪みたいなものだと相場は決まっておるが舞台上に演者の姿はない。かわりに数人のお客さんがぶらぶらしている。音の聞こえるほうに目を凝らすと人垣の向こうにマイクを仕込んだ蛍光グリーンの妙なマスクをかぶった男が歌いながらドラムを叩きのめし、脇にはコンパクト・エフェクターを前にステッカーをベタベタ貼ったベースを抱えこみ赤ん坊をあやしながら折檻するように弾く男がいる。

 私が何度か足を運んだチッペンデイルとギブソン、両ブライアンによる、ロードアイランド州プロヴィデンス、神の摂理を意味する米国いち小さな州の州都からやってきた米国いちさわがしいドラムンベース・デュオのライヴはおおよそこんなふうに進み、彼らは音盤よりもライヴで本領を発揮する連中だと評価はうなぎのぼり、まんざらでもなかったのかライトニング・ボルト、来日のたびに騒々しさはひきもきらない。ところがここには厄介な問題があった。音盤は録音物だということである。脱力めされるな、読者諸兄よ。レコードの誕生とともにはじまった、一瞬ごとに消えてはなくなる音楽と現物支給とのこのあたりまえのジレンマに私は彼らの本音は知らないが彼らほど悩まされたグループはいない。現在の録音技術をもってすれば彼らの曲であってもかなりのところまで再現可能だろう。ところが最新録音機材の分解能は渾然一体となった音の粒立ちは記録できてもライトニング・ボルトの帯電する空間感まではハードディスクでは捉えられない。デジタル・サイレンスはまったくの無音なのである。磁気テープが進化すればよかったのにと両ブライアンの嘆きが聞こえてくるようだ。そうなったからといって彼らの全部を録れるとはかぎらない。それに音楽のよしあしは音質とはなんら関係ない。70年代にパンクはその境地を拓きノーウェヴが80年代に補完し90年代のローファイが脱臼した。ライトニング・ボルトはその21世紀ヴァージョンであり、1999年のセルフ・タイトル作を皮切りに、2001年の『Ride The Sky』からきっちり2年刻みで出した『ワンダフル・レインボウ(Wonderful Rainbow)』、『ハイパーマジック・マウンテン(Hypermagic Mountain)』、やや間を置いた2009年の前作『アースリー・ディライツ(Earthly Delights)』まで、彼らは一貫してインディペンデントな音楽のやり口がインディ・ミュージックと呼ばれていない時代からの流浪の民でありつづけた。その意味でライトニング・ボルトはジャンクの血脈を継ぐオルタナの嫡子でありルインズの後輩であるとともにバズーカ・ジョーのライバルでありホワイト・ストライプスの朋輩であるだけでなくタッジオの年の離れた従兄弟でもある、かもしれない。

 『ファンタジー・エンパイア(Fantasy Empire)』でもその流れは途切れない。むかしとった杵柄をそう簡単に棄てられないということか? 否。ライトニング・ボルトはこのアルバムではじめてちゃんとしたスタジオでちゃんと録った。ちゃんとというのはこれまでがちゃんとしていなかったのではなく、音盤のもつ意味をより実体に適う方向に向けようと腐心したということだ。地元の古巣〈ロード〉を離れ、彼らは今回シカゴの老舗〈スリル・ジョッキー〉と手を組んだ。前作までと聴き較べると音質は各段に向上している。私は音楽と音質は関係ないと書いてしまいましたが、音がよくなってライトニング・ボルトのやっていることが具体的によくわかるようになったのはまるで巌となったサザレ石をひとつひとつたしかめるような、音塊の粒子に手でふれるのに似た聴き応えだった。チッペンデイルのフレーズの組み立てはつまびらかになり、ギブソンのエフェクター捌きが曲のキモであるのがよくわかる。録音のやり方が変わったからといって豪壮なオーケストレーションを施しているわけもなく、カブセは一部あるものの、それもあくまでもライヴでの再現を優先に考えている。ゆえに疾走感は減退することもなく、“ザ・メタル・イースト(The Metal East)”から“スノウ・ホワイト (& The 7 Dwarves Fans)”まで、つねにスピーディにときにダビーつまるところグランジーにライトニング・ボルトは帯電域を広げつづける。偽メタルやらモーターヘッド的なダーティなリフワークやら芸の細かさにもことかかない。日本盤は “ホエア・アー・ユア・キッズ(Where Are Your Kids?)”なるサイケデリックなボートラ入りなので、貪婪なリスナーはこちらをご所望いただきたい。

 ひとつ注意しなければならないのは、音量をあげすぎると家人にスピーカーが壊れたのかと訝られるということだ。それに隣人にも迷惑がかかる。また自宅ではダイヴもモッシュも禁止である。下にお住まいの方に迷惑かかる。戸建てないしは一階にお住まいなら問題ないが、それはいずれ実現するであろう彼らの次のライヴまでとっておくことにしましょう。祈再々々々来日。

interview with Zun Zun Egui - ele-king


Zun Zun Egui
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 熱い、といったら本人に笑われてしまったけれども、この数年来の「チル」だったり「コールド」だったり「ダーク」だったり「ミニマル」だったりといったムードのなかでは、ズン・ズン・エグイはあきらかに浮いている。個人的に思い出すのは2000年代の中盤のブルックリンだ。ギャング・ギャング・ダンスらの無国籍的エクスペリメンタルからヴァンパイア・ウィークエンドの繊細に濃度調整されたアフロ・ポップまで、あるいはダーティ・プロジェクターズの汎民族的でありつつも色濃い東欧趣味まで、USのど真ん中から放射線状にエネルギーを発していたトライバル志向、その無邪気で鷹揚とした実験主義──

 一聴するぶんにはその頃の記憶を呼び覚ます音だけれども、しかしズン・ズン・エグイは実際の多国籍バンドにして中心メンバーのクシャル・ガヤはモーリシャス出身、活動拠点はブリストルとロンドン、また実験ではなくポップが身上である。どこからきてどこへ向かうのか、というコアにあるベクトルが逆向きだ。出自を売りにするどころか、彼が大きく英米の音楽に影響され、またそれを愛してきたことは音にも明らか。そして、そうした志向にミュートされながらも浮かび上がってくる自らのオリジンについては隠すことなく祝福する。以下を読んでいただければよくわかるように、彼には音楽へのとても純真な情熱や、パンクへの精神的な傾注があって、それがまたうらやましいまでに輝かしく、彼らの音の上に表れ出ている。ガヤのバンドではないが、彼がリード・ヴォーカルを務めるメルト・ユアセルフ・ダウンもまたそうしたハイブリッドを体現する存在だといえるだろう。以下で「僕らをブリストルと結びつけないでくれ」というのは、土地やその音楽的な歴史性への違和感ではなく、そのハイブリッド性や多元性を力づよくうべなうものなのだと感じられる。

 ともかくも、ファック・ボタンズのアンドリュー・ハングをプロデューサーに迎え、前作に増して注目を集めるセカンド・アルバム『シャックルズ・ギフト』のリリースに際し、ガヤ氏に質問することができた。


■Zun Zun Egui / ズン・ズン・エグイ
ブリストルを拠点に活動する5人組。モーリシャス出身で、メルト・ユアセルフ・ダウン(Melt Yourself Down)のヴォーカルとしても知られるクシャル・ガヤ(Kushal Gaya、G/Vo)、日本人のヨシノ・シギハラ(Key)ら多国籍なメンバー構成を特徴としている。2011年にデビュー・アルバム『カタング』を、本年2月にセカンド・アルバム『シャックルズ・ギフト』を、いずれも〈ベラ・ユニオン〉からリリース。今作ではプロデュースをファック・ボタンズ(Fuck Buttons)のアンドリュー・ハング(Andrew Hung)、ミックスをチエリ・クルーズ(Eli Crews)が手掛ける。


僕は自分自身の中にある、いちばん原始的で、本能的で、すごく人間くさい部分、理性や身体的なものを超えたところにある自分自身のエッセンスとも言えるような何かとのつながりを失いたくないんだよ。

どの曲にも「You」への強い呼びかけを感じます。この「You」は同じひとつの対象ですか? そして、どのような存在なのですか? もしかしてあなた自身ですか?

クシャル・ガヤ(以下KG):うーん……「You」って言葉を何度も使った理由はたぶん……僕が歌詞を書くときは、自分自身も(その歌詞の中に)含まれたものにしたいんだと思う。たとえばアルバムの中の「I Want You to Know」で「You」って言っているのは、曲を聴いている誰かとダイレクトにつながりたいからだよ。っていうのも、あの曲では、僕らがいまもまだそれぞれのいちばん本能的でワイルドな部分を通してつながることができるっていう事実を、僕自身がとても重要視しているということ──そういう個人的な事実を、みんなに伝えたいって言っているんだ。
 個人的に、僕は自分自身の中にある、いちばん原始的で、本能的で、すごく人間くさい部分、理性や身体的なものを超えたところにある自分自身のエッセンスとも言えるような何かとのつながりを失いたくないんだよ。だからあの曲では、「これが僕の感じていることで、これを聴いているみんなにわかってほしい、関わってほしい」っていうことを言っている。だからそれが「You」って言葉を使った理由かな。この答えじゃ何を言っているのかよく伝わらないかもしれないけど……(笑)。

「You」という言葉によってある種の対話のようなものを生み出したいということでしょうか?

KG:そう、僕は対話のきっかけを作りたいと思っていることが多いんだ。「これが僕の感じていることだけど、君は何を感じる?」っていうふうにさ。

あなた方と同じブリストルの、ベースミュージック・シーンの重要人物のひとりピンチ(Pinch)は、一昨年〈Cold〉という名のレーベルを発足させました──

KG:ピンチは知っているよ! 個人的には知り合い程度だけど、彼の音楽はよく知っている。

これはそのまま「冷たい音楽」という意味ではありませんが、音楽の先端的なトレンドが「コールド」という名を掲げる一方で、あなたがたの「熱い」エネルギーは非常に珍しく感じられます。自分たちの音楽が熱いものでありたいという意志や意図はありますか?

KG:ははは、「熱い」か! そうだね、ブリストルってかなりダークなエネルギーがあって、あそこではいろいろなことが起きているけど、そこには間違いなくダークでダウナーな、どこか冷たい感じのエネルギーが感じられるんだ。だからある意味それに対する反応として、僕はそれとはまったくちがった、楽しげでハイテンションな音楽をやるようになった部分はあるのかもしれない。
 それに僕はもともと、落ち着くタイプの音楽じゃなく、エネルギッシュな音楽が好きで、音楽には生命感を感じさせたり覚醒させるようなものであってほしいんだ。僕は覚醒だったりとか、目覚めていること、知覚、現在を感じることとかにとても興味があるんだよ。だから、たぶんそのせいかもしれない。


ブリストルには間違いなくダークでダウナーな、どこか冷たい感じのエネルギーが感じられるんだ。だからある意味それに対する反応として、僕はそれとはまったくちがった、楽しげでハイテンションな音楽をやるようになった部分はあるのかもしれない。

BLK JKS(Black Jacks)というヨハネスブルグ出身のバンドがいますが、彼らもまたプログレッシヴ・ロックなど西洋的な音楽に比較される要素を強く持ちながら、アフリカ音楽のエネルギーを放出する人たちです。あなたの音楽にとって、アフリカというルーツは音楽の制作上どのくらい重要なものなのでしょう。

KG:僕自身アフリカ出身で、人生のうち18年をアフリカで過ごしたから、アフリカ音楽の影響っていうのは自然に出てくるものだと思う。それは僕が意識的に獲得したり、どこかに行って得たものではなくて、自分自身から生じてくるもので、それ自体が僕自身でもあるんだ。たとえばこのアルバムに入っている“Ruby”を例にすると、そこで使われているリズムの多くは、僕の育ったモーリシャスで結婚式や葬式で使うリズムなんだ。そういうリズムを持ってきて、別の何かを作り出しているのさ。そういうふうに、僕にとってそれはすごく自然なもので、作為的なものではないよ。

では、あなたのなかでのアフリカ音楽と西洋音楽との関係についても教えてください。

KG:えーっと、僕はこの世界は国とかの概念を超えるものだと思っているんだ。国や愛国心みたいな概念は死にゆくものだと思っている。過去には西洋のミュージシャンたちがアフリカ音楽に憧れのようなものを持って、それを彼らなりに解釈したものを作っていたけど、僕はその逆をやっているように感じるんだ。僕は西洋音楽を解釈しなおして、彼らの逆側から歌っている。
 それが一点と、もうひとつは、僕は長いこと英国に住んでいるけれど、英国は多文化の合流地点になっていて、人々は「英国的」の定義とは何か、ということについて疑問を持っている。そして「英国的」の定義や、この国の文化のアイデンティティはすっかり変化しつつあるんだ。ロンドンに来れば、それがロンドンのどのエリアであっても、そこにいる人々はそれぞれまったくちがう国から来ている。それってすごく美しいことで、ロンドンという町に多様性を与えているんだ。それこそがここでいろいろな文化が生まれている理由で、人々がここに来たがる理由になっている。そして西洋文化っていうのはここ100年以上の間、世界でいちばん影響力のある文化になっているから、誰もが間違いなくそこから影響を受けていると思う。

僕は長いこと英国に住んでいるけれど、英国は多文化の合流地点になっていて、人々は「英国的」の定義とは何か、ということについて疑問を持っている。

日本でだって、西洋のポップスや音楽は誰が頼まなくても自動的に入ってくるでしょ? だからそういう意味で、西洋音楽には誰もがつながっているんだ。それで、僕は自分のアーティスティックな役割……役割というか、必要に迫られて自然に生まれた反応は、その影響を自分なりのかたちで利用するっていうことだと思っている。なんだか質問にちゃんと答えていない気がするけど……。それに僕は個人的に西洋の音楽はとても好きだし、ヨーロッパの70年代、80年代、あるいは2000年代以降のパンク・ミュージックや80年代のハードコア、ノイズ・ミュージックからも影響を受けている。あとちなみに日本のノイズ・ミュージックからもね! ヨシノと日本の音楽をたくさん聴いたんだ、メルト・バナナやボアダムスとかさ。

たとえばデーモン・アルバーンはあなたとは逆の立場から西洋とアフリカの融合にアプローチしようとしているように見えますが、彼の音楽に対するシンパシーはありますか?

KG:英国にアフリカのミュージシャンたちを連れてきたりっていう、彼のやっていることの意図自体は良いものだと思うけど、同時に僕にはそこでアフリカの音楽が消毒されすぎているような感覚があるんだ。西洋に持ってこられたアフリカ音楽は、あまりにもきれいに衛生処理されてしまって、元々アフリカで演奏されていたときにはあったはずの生のエネルギーが失われてしまっているような気がする。まるでそれを西洋音楽として新しく、薄まったものにプロデュースし直しているみたいで、生々しくてワイルドなエネルギーや、深みが欠けてしまっている。デーモン・アルバーンのやっていること自体はいいことだし、ポジティヴな動きだと思うけど、その一方でそこで失われてしまっている音楽のエッセンスみたいなものがあるように思えるんだよ。こちらに持ってこられた音楽が、「ほら見て、ここにアフリカのミュージシャンたちと僕がいるよ!」みたいな感じで提示されたりとか……。

西洋に持ってこられたアフリカ音楽は、あまりにもきれいに衛生処理されてしまって、元々アフリカで演奏されていたときにはあったはずの生のエネルギーが失われてしまっているような気がする。

 アフリカの音楽を西洋に持ってきて人々に見せたいのなら、それはできるかぎり生の状態、本来の本物の状態に限りなく近いものであるべきだと思うんだ。だって、多くの場合、アフリカの音楽は、売られるためや多数の人に商業的に見せるためのものじゃなくて、儀式のためのものや、日常生活と密接に結び合わさったものであるはずなんだ。結婚式や葬式や、雨の神に雨乞いをしたり、豊穣の神に呼びかけるものだったりさ。もちろんアフリカにもポップ・ミュージックはあるけど、それらふたつの音楽はまったく性質の異なったものだよ。だから、そういう音楽をこっちに持ってきたときに失われてしまうものがあるし、また同時に西洋人のために綺麗に処理されてしまっている部分もあるように感じて、それがもったいないと思うんだ。

あなたがたはまた、混合的なエスニシティを持ったバンドでもありますね。楽曲制作においてはメンバーはそれぞれ自身のルーツを主張しますか?

KG:いや、あんまり……僕らそれぞれのバックグラウンドはあまり問題ではないよ。だって、僕らはもうそういうことをあまり意識したりしないからさ。僕らはただ人間として気が合うからいっしょにいて、それゆえに音楽をいっしょに作っているってだけだよ。たとえば僕が日本に行って、日本人の友達がたくさんできていっしょに音楽を作りはじめたとしたら、そこで「君は日本人だから、日本の音楽をやろうぜ!」「僕はモーリシャス人だから、モーリシャスの音楽を作るんだ!」とはならないと思うし。だから僕らはべつに……そもそもそういうことについて考えることすらないよ。ときどきそれぞれの出身を冗談の種にすることはあるけどさ。音楽を作ることに関していえば、すべては僕らの心から生まれてくるものなんだ。僕らはただ人間なだけで、国籍とかは関係がないんだよ。


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僕はブリストルに移ってきたときにはすでにもう自分自身のはっきりしたアイデンティティと意見を持っていたんだ。

ザ・ポップ・グループを意識することはありますか?

KG:いや、あんまり。よくその質問を訊かれるけど、唯一それに対して言えるのは、僕はブリストルに住んでいたけどザ・ポップ・グループは全然聴いていなかったんだ。バンド・メンバーのスティーヴは聴いていたみたいだけど。ブリストルに住んでいたっていうことで、人々は僕らをブリストルの他のバンドといっしょいっしょのカテゴリーに入れたがるけど、僕はブリストルに移ってきたときにはすでにもう自分自身のはっきりしたアイデンティティと意見を持っていたんだ。その前にはノッティンガムに住んでいたから、ノッティンガムのほうが僕にとってブリストルよりはるかに大きな影響を与えていると思うよ。とくにノッティンガムで出会った人たち、前のバンドのメンバーとかが僕にいまのパンク・ミュージックを教えてくれたしさ。たぶんいまのバンドの他のメンバーたちの方ほうが僕自身よりもブリストルから影響されているんじゃないかな。ザ・ポップ・グループは良いバンドだけど、そんなによく聴いたことがあるわけじゃないし、自分の音楽の形成期とかにはぜんぜん聴いていなかったよ。英国にいるのに、英国の音楽よりも日本の音楽の方がよっぽどよく聴いたよ。

ブリストルの風土やシーンはあなたたちにそう影響は与えていない?

KG:僕自身は6年くらいブリストルに住んでいたけど、いまはロンドンに住んでいるんだ。バンドの他のメンバーはいまもブリストルにいるけど。バンドを結成したのはブリストルだけど、その後、新しい経験をしたくてロンドンに移ったんだよ。ブリストルに住んでいたときは地元のショウに行ったりもしていたし、そこのシーンにけっこう関わっていたと言えるけど。
 ブリストルの音楽シーンはとても多様性があるんだ、すごくいいダンスミュージックもあるし、アヴァンギャルドなショウもたくさんやっているし。僕らはキュー・ジャンクションズ(Qu Junktions)っていうグループといっしょにいろいろやっていたんだけど、彼らはいろいろおもしろいイヴェントをやっていて、僕がいちばん最近行ったのはもう使われていない古い警察署の地下にある留置所で開催されたんだ。牢屋のひとつがバーになっていて、もうひとつの牢屋は座って落ち着けるようになっていて、ショウ自体もいちばん大きな牢屋でやっていた。たぶんそれが使われていた当時は、いろいろな人が精神的に苦痛を感じるような場所だったところをアートのために使って、楽しいおもしろいことをやるっていうのはとても不思議な感じがしたよ。そういうのは他のほとんどの国ではあまり起きないだろうしね。……でも、ひとつみんなにわかっていてほしいのは、僕らはブリストルという町から音楽的なきっかけや影響を与えられたことはほとんどないっていうことなんだ。たまたまそこに住んでいたってだけで、少なくとも音楽的には、ブリストルよりも外の音楽から影響を受けているよ。強いて言うなら、ブリストルではダブやレゲエのイヴェントに行くのが好きだったし、ダブやレゲエからの影響は受けているけれど……それよりも、僕らはまわりで起きていることとは独立して、自分たち自身の音楽をやってきているんだ。

メルト・ユアセルフ・ダウン(Melt Yourself Down)は市場的には「ジャズ」としてカテゴライズされましたが、あなたにとってズン・ズンとの差はどんなところにありますか?

KG:僕はあまりそのふたつを比較することはないよ。大きなちがいといえば、メルト・ユアセルフ・ダウンでは僕はズン・ズンでやるほど曲を書いていないし、メルト・ユアセルフ・ダウンのリーダーはポーラー・ベアでも演奏しているサクソフォニストのピートなんだ。精神性の部分ではどちらのバンドも似通っていると思うけど、使っている音楽的要素がちがうと思う。
 メルト・ユアセルフ・ダウンはよりダイレクトにヌビアの音楽からの影響を受けているんだ。ピートはそういう音楽に傾倒しているからさ。僕はピートが曲を書いた数ヶ月後にバンドに参加した。あと大きなちがいとしては、ズン・ズンにはサックスがなくて、メルト・ユアセルフ・ダウンにはギターがないってことかな(笑)。だからサウンド面では大きな差があるね。ショウの雰囲気もちがっていて、メルト・ユアセルフ・ダウンはワイルドでカタルシスのある、カラフルで凶暴な感じなんだ。ズン・ズンにもそういう面はあるけど、エネルギーを引き出しつつも、より慎重に考えられたソングライティングを目指したんだ。メルト・ユアセルフ・ダウンの作曲がズン・ズンより考えられていないって意味ではないから間違えないでほしいんだけど、今回はエネルギーを失わずに、できるかぎりソングライティングの部分に挑戦してみたかったんだ。だから根っこの精神的なものは同じでも、楽器がちがうからサウンドも異なったり、直接的に影響を受けているものも別かな。


僕にとってのパンクは、それが何であれ自分のやりたいことをやるってことなんだ。自分のいちばんワイルドな部分で、自分が誰で何をするべきかってことを感じるってことさ。

メルト・ユアセルフ・ダウンにはよりパンクを、ズン・ズン・エグイにはよりロック(ブルース)を感じます。

KG:メルト・ユアセルフ・ダウンはたしかに様式的にパンクの要素が強いし、ズン・ズンはロックだね。でも、どちらとも精神的にはパンクだよ。僕にとってのパンクは、それが何であれ自分のやりたいことをやるってことなんだ。着ている服や形式じゃなくて、「時代のカルチャーに疑問を呈しているか」ってこと──さっき言ったような自分のいちばんワイルドな部分で、自分が誰で何をするべきかってことを感じるってことさ。誰かに言われて何かをするんじゃなくて、純粋に自分がそれをやりたいと感じるからやるんだ。

パンクとロックで、あなたが重要だと思うバンドやアーティストを教えてください。

KG:僕にとって、ストゥージズを聴いていたことは重大な影響を及ぼしていると思うよ。それと、(キャプテン・)ビーフハート……、みんな彼をブルーズやロックだって言うけど、僕は彼はパンクだと思う。あとコンヴァージっていうバンドも前はよく聴いていた。あとフガジは僕にとって大きな存在だし、バッド・ブレインズやアット・ザ・ドライヴ・インも……それに日本のパンクもたくさん聴いたよ、ギター・ウルフとか。「♫ジェットジェネレーション〜」(歌い出す)すごくいいよね! メルト・バナナとか、あとボアダムスを観たときはぶっ飛んだよ、彼らは完全にパンクだね。他にはマストドンの初期の2枚のアルバムなんかもよく聴いたよ、みんな彼らのことをロック・バンドだと思っているけど、あれはパンクさ。
 正直、あんまり英国のパンクは聴いていない気がするな。でもノッティンガムに住んでいた頃、ジ・ウルヴズ・オブ・グリーフ(The Wolves of Grief)っていうバンドとローズ(Lords)っていうバンドがいて、彼らは僕にとってヨーロッパでのパンク精神との直接的なつながりっていう意味で重要だった。それとは別に、リーズ出身のBilge Pumpっていうバンドもいて、これら3つのバンドすべては僕自身直接の友人で、ギターのスタイルとかは彼らから学んだことが多いよ。だから英国のパンクっていう括りで言えば、彼らは僕にとって重要な存在だね。

曲作りの手順について教えてください。誰かが曲を書いて持ってくるのですか? セッションから生まれるのですか?

KG:曲によるけど、大抵コンセプトや基本となるアイデアを思いつくのは僕の役割なんだ。時には僕がハーモニックな動きやアレンジメントをふくめて曲のほとんどを書いて、それをバンドに持って行っていっしょに完成したトラックに仕上げていくこともあるし、中にはいちからみんなでいっしょに書いた曲もある。バンド全員に会う前に、いったんメンバーのスティーヴに会うことも多いよ。ふたりで2つや3つのちがう構成の間で固めたうえで、それをバンドに持っていって、「これとこれが候補の構成だから、それぞれ試してみよう」っていうふうにして、後から皆がそれぞれの要素を加えていったりするんだ。ときによっては僕がベースラインを書いたり、キーボードのラインを書いて、アダムやヨシノに「どう思う? 演奏してみてくれる?」って言うこともあるし。

(モーリシャスの音楽の起源について)彼らが自らの苦痛や奴隷状態を利用して音楽を作ったっていうのはとても興味深くて、刺激を受けたよ。文字通りインダストリアル・ミュージックの先駆けみたいなものだし、僕にとってはナイン・インチ・ネイルズやスロビング・グリッスルよりよっぽど暴力的だと感じた。

 ただ、今回のアルバムでは、そのプロセスは曲ごとにかなりちがっているんだ。たとえばいくつかの曲はドラムビーツからできて、ビートの上にそのまま歌をのせて、そこにギターやベースラインを加えてバンドに持って行って、メンバーたちに残りの空白を埋めてもらったり、マットや最近パーカッションを演奏することの多いヨシノにそのビートを覚えてもらったりする。
 今回のアルバムのいちばんはじめのアイデアは、僕らがモーリシャスに行ったときある人に会って、彼がモーリシャス音楽の起源について話してくれたことに由来するんだ。その話では、サトウキビ畑で奴隷が強制労働をさせられていたとき、奴隷の彼らはサトウキビの圧搾機の音を聞いて、そのサトウキビを潰す機械音のリズムを使って音楽を作りはじめたらしい。そういうふうに、彼らが自らの苦痛や奴隷状態を利用して音楽を作ったっていうのはとても興味深くて、刺激を受けたよ。ある意味、文字通りインダストリアル・ミュージックの先駆けみたいなものだし、僕にとってはインダストリアル・ミュージックよりはるかに暴力的で、ナイン・インチ・ネイルズやスロビング・グリッスルよりよっぽど暴力的だと感じた。炎天下の畑で鞭打たれながら、ほとんど食べ物も与えられずに何時間も無理矢理働かされるなんていう苦痛に満ちた状況のなかで、ギヴ・アップするんじゃなく、機械のたてるタカタタカタタカタ……っていうリズムを聞いて音楽を生み出すなんて驚異的だよね。そのアイデアが、アルバムのコンセプトにおける最初のインスピレーションになったんだ。

あなたは、ギタリストとシンガーとではよりどちらをアイデンティティとしてとらえていますか?

KG:うーん、わからないな、「ミュージシャン」じゃない(笑)? 僕はいくつかの楽器を演奏するし、リズミックなアイデアもよく僕の内から生まれてくるし、大抵の楽器は自分で弾き方を見つけることができるし……。まあでも、ギタリストとシンガーのふたつがメインで、両方が柱になっているよ。

アンドリュー・ハング(Andrew Hung)はあなたがたのエネルギーを歪めることなく放射させているように感じました。かといってサイケデリックさもまったく損ないません。彼をプロデューサーに立てたのはなぜでしょう? ファック・ボタンズへのシンパシーですか?

KG:僕らはファック・ボタンズといっしょにツアーしたんだけど……彼らの名前を日本語で何て訳すのか知らないけどさ、このあいだうっかりラジオでその名前を言っちゃって、ちょっとトラブルになったんだ(笑)。彼らとツアーをしたのはけっこう前で、それ以来長いこと会っていなかったんだけど、ロンドンでのショウで再会して、よもやま話をしているうちに、僕らのアルバムにプロデューサーが必要だってことが話にのぼった。僕ら自身が思いっきり滅茶苦茶やっているあいだ、全体を俯瞰して僕らをちゃんと軌道上にとどめてくれる誰かがさ。そしたら彼がその場ですぐに「じゃあ、僕が君たちのレコードをプロデュースするよ!」って言ってくれたんだ。そんなふうに簡単に決まったんだよ。個人的なレベルでも、彼と僕は自然に友だちになったし、彼とは通じ合うのがとても簡単で、レコーディングの前も彼とけっこう長い時間をいっしょに過ごして曲を全部通して見ていったりしたんだけど、彼はそれらの曲のパワーを褒めて、僕にアレンジメントのアドバイスをくれたりした。彼はプロデュースにとても興味があって、人っていうものや人と人とのつながり、互いに与え合う影響みたいなものに興味を持っているし、とても知的で、いろいろなものへの感覚が鋭いから、とてもいっしょに仕事をしやすかったよ。
 それと、付け加えておきたいのは、このアルバムでミキシングをしてくれたイーライ・クルーズも素晴らしい仕事をしてくれたんだ。彼はニューヨーク・シティでミックスをしてくれたんだけど、彼も今回僕らの音を引き出すうえでアンディ(Andrew Hung)と同じくらい重要な役割を果たしてくれた。あと、アンディについてもうひとつは、彼の音楽は僕らの音楽とはかなりちがうから、彼の意見をもらうのはエキサイティングだったよ。僕らはギター・バンドでまぁ普通の楽器を弾いているけど、彼はビデオゲームや道具を使ってエレクトロニック・ミュージックをやっているから、彼が僕らのやっていることをどういうふうに解釈するかっていうのは興味深かった。


僕はいまの音楽シーンには、「ベージュ色」をした音楽が多いように感じるんだ。

2000年代の半ばごろ、TV・オン・ザ・レディオ(TV on The RadioやDirty Projectors)、ヴァンパイア・ウィークエンド(Vampire Weekend)など、とくにブルックリンが象徴的でしたが、インディ・ロックではやはりさまざまな民俗性が参照されていました。2000年代の半ばごろ流行したもので、あなたが好んで聴いていた音楽を教えてください。

KG:その頃に流行っていたそういう音楽はあまり聴いていなかったよ、すでに僕も同じようなことをやっていたしさ。ただ彼らは有名になったけど、僕らはならなかっただけでさ(笑)。ダーティ・プロジェクターズ(Dirty Projectors)はまわりの人からよく話を聞いたからすこし聴いていたけど、でも彼らから影響とかは受けていないし。

いまのUKの音楽シーンについて、おもしろいところとつまらないと思うところを教えてください。

KG:はは、ちょっと物議を醸すような発言になっちゃうかもしれないけど……(笑)。僕はいまの音楽シーンには、「ベージュ色」をした音楽が多いように感じるんだ。ヒットチャートの上位に入るような曲はなんだか郊外っぽくて、うんざりさせられるものが多いよ。音楽が人々の心の中から生まれてきて、それが商品として売られているんじゃなくて、最初から商品として売られるために作り出された音楽のようなものが多すぎる。チャートを占めている音楽には、事前によく計画されたような感じのするものが多くて、チェックリストに沿ってすべての項目を満たすように作られたような感じで、アートとしての性質はほとんど失われつつあるんだ。少なくともメインストリームの音楽に関してはね。すごく計算された音楽が多いよ。
 最近出てきたあるアーティストは──名前を出すのは意地が悪いと思うからあえて言わないけど、彼女の音楽はとても落ち着くような音楽だけど、そのすべては彼女のイメージありきで売られている。彼女のイメージや身体性を中心にしていて、音楽はその副産物みたいな感じだよ。もしかしたら、それがこれから世界が向かう方向性なのかもしれないけど。僕もそういう方向性に向かうべきなのかもね(笑)!
 でもそれはメインストリームの話で、もっとアンダーグラウンドなところではいろいろ起きていて、たとえばケイト・テンペスト(Kate Tempest)はとてもおもしろいことをやっている。あとは……うーん、僕はあんまり英国の音楽に触れていないのかもしれないな。古い音楽とかはいろいろ聴くんだけど。あ、サム・リー(Sam Lee)っていうミュージシャンはもうすぐレコードを出すんだけど、彼はとてもいいフォーク・シンガーだよ。とても現代的なフォーク・ミュージックで、すごくおもしろいよ。
 うーんあとは……そうだ、最近買ったレコードを挙げてみよう。最近のはジョン・カーペンター(John Carpenter)の新しいレコードを買ったけど、そもそも彼はUKじゃないや。あとはハロー・スキニー(Hello Skinny)っていうUKのアーティストがいるけど、彼の音楽は大好きだよ。サンズ・オブ・ケメット(Sons Of Kemet)も。あとはリーズのカウタウン(Cowtown)もすごく好きだね。あとはエレクトロニック・ミュージックだと、キョーカ(Kyoka)っていう女性アーティストがいて、知ってる? 日本人なんだけど、ドイツに住んでるんだ……あれ、これじゃ質問の答えになってないね。質問はなんだったっけ? ああ、UKの音楽シーンについてか。いまのメインストリームの音楽にはあまり好きなものはないけど、もっと自分で聴いていまの音楽も学ぶべきかもしれないな。あ! そうだ、新しい音楽で好きなのを思い出した、ジュリア・ホルター(Julia Holter)は大好きだよ! 彼女はたしかアメリカのアーティストだけど……あとそうだ、UKのバンドでジ・インヴィジブル(The Invisible)がいた! 彼らがどんなにいいバンドか言うのを忘れていたよ。あとはポーラー・ベア(Polar Bear)はいいジャズ・バンドだね。それから、昨日は〈ラフ・トレード〉でファーザー・ジョン・ミスティ(father John Misty)のアコースティック・セットを観てきたよ、彼はすごくいいね。素晴らしい歌詞を書くよ。あともうひとつ、ザ・ウォーヴス(The Wharves)はロンドンの女性ばかりのバンドで、僕の好きなバンドだよ。これでけっこういい「僕の好きな最近の音楽リスト」ができたんじゃないかな(笑)。


アイデアからじゃなくて、強い感情から曲を生みたい。どうせアイデアは後から音楽を装飾するために出てくるから、自分の強烈な感情を音楽の形にして出したいんだよ。

これからどのような音楽を展開していきたいと考えていますか?

KG:さっきも言った、インダストリアル・ミュージックについてのアイデアをもっと掘り下げていきたいな。そしてより使う要素を少なくしていきたい。できるだけミニマルなものにしてみたいんだ。僕はもともとの性格で曲を書くときに書きすぎる傾向があるからさ。それがサウンド面での部分だけど、個人的には、僕が曲を書いているときは、自分の内側にあるとても強い感情にアクセスしたいんだ。アイデアからじゃなくて、強い感情から曲を生みたい。どうせアイデアは後から音楽を装飾するために出てくるから、自分の強烈な感情を音楽の形にして出したいんだよ。まだ今回のアルバムのツアーすらはじまっていないから、いまの時点で答えるのは難しい質問だけどね。でも正直もう次(のアルバム)について考えはじめているんだ。もう曲も書きはじめてて、3、4曲、自分で気に入っているデモもあるよ。アルバムに入るかどうかはわからないけどね!

ASHRA - ele-king

Moduleでの多国籍パーティ「Laguna Bass」でレジデントを務め、同時にトラック制作をスタート。14年NO/Visionist EPでIRMA recordsよりデビュー。09~2年間Jetset RecordsでのDJチャートを担当。6月位から新たにレギュラーパーティーやる予定です。徒然ここをチェック。
https://soundcloud.com/ashra-3
facebook.com/ashradj

3/16(月)TBA@Le Baron
4/25(土)TBA@Solfa
5/16(土)No Surface@ DJ BAR HIVE(小倉)

王道にDJで良くかけている/かけたいTOP10チャート

OG from Militant B - ele-king

港に帰ろう 2015.3.3

ヴァイナルゾンビでありながらお祭り男OG。レゲエのバイブスを放つボムを日々現場に投下。Militant Bでの活動の他、現在はラッパーRUMIのライブDJとしても活躍中。
今回のランキングは初のノンレゲエ、ノンレコードで送る、俺の家にある女性ボーカルCDたちを紹介。やっぱ歌ってる女って最高じゃん?なあ男ども!こうやって並べると自分は分かりやすいものが好きだし、結局男は女に支えてもらってばっかなんだなあと。女の子はイケてる女性を感じてほしいです。You Tubeでも良いし、アルバムgetしてランキングに挙げてる曲以外も聴いたら楽しさ倍増!無限大!そしてお洒落してパーティーにGO!!

3/3 吉祥寺ceeky "FORMATION"
3/6 札幌plastic theater "SOUND TRAP"
3/7 函館cocoa"MUSICALITY DEMANTA SPECIAL"
3/11 新宿open "PSYCHO RHYTHMIC"
3/14 吉祥寺warp "YougonnaPUFF?"
3/15 池袋bed "GRIND HOUSE"
3/20 吉祥寺cheeky
3/21 渋谷asia "IN TIME"
3/25 池袋bed "BED ANNIVERSARY"
3/27 吉祥寺cheeky "MELLOW FELLOW"
4/7 吉祥寺cheeky "FORMATION"
4/10 中野heavysick
4/11 渋谷roots
4/25 那覇loveb

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