「You me」と一致するもの

YUMMY (DONUTZ) - ele-king

ウォームアップで使いたい新選ハウス10


1
Taylor - Noob - On The Edge

2
Solid Groove - Throwing Stones - Dubsided

3
Santos - San francisco - noir music

4
Culoe De Song - Inspiration - MULE MUSIQ

5
Steal Vybe and Leslie Carter (Chris's Bangin Da Instrumental) - I Got You - Steal Vybe

6
Dubbel Dutch - Throwback - Palms Out Sounds

7
Switch - The Lights - Unknown

8
Rune RK - Oje - Arti Farti

9
Satoshi Tomiie - Back To Basics (Motorcitysoul Remix) - Saw

10
Yummy - Blue Glass Friend Park - common ground recordings

Chart by JETSET - ele-king

Shop Chart


1

KAORU INOUE

KAORU INOUE SACRED DAYS »COMMENT GET MUSIC
名盤「Dancer」以来5年ぶりとなるKaoru Inoueの2ndアルバム!アフロ~トライバルなどの要素をハウスと融合させ、豪華なゲスト・プライヤー達のエッセンスで色彩豊かなに仕上げられた珠玉の1枚です。

2

LUVRAW & BTB

LUVRAW & BTB ヨコハマ・シティ・ブリーズ »COMMENT GET MUSIC
銀河まで届け!!横浜アーバン・メロウ・グルーヴ爆裂最高作★遂にファースト・アルバムの登場です!!当店では豪華2大特典付き。横浜系最重要レーベル、Pan Pacific Playaが全力で送り出すトークボックス・デュオ、Luvraw & BTB!!S.L.A.C.K.やPunpee、Ciazoo、サイプレス上野、Zen-La-Rock、やけのはらなど豪華ゲスト陣を迎えた全16曲。 2010年宇宙最大の話題作です!!

3

KZA

KZA I'M STARTING TO FEEL OK VOL.4 »COMMENT GET MUSIC
新曲とエクスクルーシヴ音源を余すことなく収録したMule Musiqのコンピレーション・ミックス最新作!第三弾に続きミックスを担当するのは、当店の名物企画[Vinyl Hustle]で御馴染み、Kza!全18曲、78分にも及ぶ濃厚な1枚です。

4

NAGAN SERVER

NAGAN SERVER MU-ROOTS RE-MIX EP 2 »COMMENT GET MUSIC
デビュー作『Mu- Roots』から限定12"シングルが2タイトル連続リリース!ソロ・デビュー作『Mu- Roots』からの2ndカットとなるこちらのEP2には、DJ Perro a.k.a Dogg(M.J.P.)やDJ Duct、Sato、DJ Robonoidが参加!

5

YAKENOHARA

YAKENOHARA THIS NIGHT IS STILL YOUNG »COMMENT GET MUSIC
遂にー!!やけのはら君のファースト・アルバムが登場です。当店のみのオリジナル特典付きます!!2009年にリリースされた七尾旅人さんとのコラボ・シングル"Rollin' Rollin'"が超特大ヒット!!遂に自身のオリジナル・フル・アルバムが完成です。2010年は激ブレイク間違い無し!!当店のみ「男の60分」オリジナルDVDR特典付き。

6

MR OIZO & GASPARD AUGE

MR OIZO & GASPARD AUGE RUBBER OST EP »COMMENT GET MUSIC
Flying Lotusリミックスも搭載。OizoとJustice片割れによるコラボ12"が登場!!☆特大推薦☆いつだってOizoは最高に格好良いんです。自らツイートしまくっていた自信作が遂に登場です!!絶好調の天才Flying Lotusによる新モード・リミックスA2も強烈☆

7

JAMES BLAKE

JAMES BLAKE CMYK EP »COMMENT GET MUSIC
仄かな甘みとエレガントなビート構築。ぶっちぎりの高品質でお届けする4トラックス!!☆特大推薦☆天才Untoldに見出されたパウダー・シュガー・ウォンキー超新星James Blake。今度はベルギーの古豪から極上メロウな傑作を届けてくれました~!!呼吸も忘れる美しさ。

8

KENTON SLASH DEMON

KENTON SLASH DEMON SUN »COMMENT GET MUSIC
☆特大推薦☆南アフリカ出身の天才ミニマリストPortableによる極上リミックスも収録!!当店大人気デンマークの最新鋭レフトフィールド・ミニマル名門から、バグパイプ二重奏やフラメンコ・リズムを取り入れた前作が爆裂ヒットしたデュオが再登場リリースっ!!

9

TOKIMONSTA

TOKIMONSTA MIDNIGHT MENU »COMMENT GET MUSIC
まさに待望! LA在住の才媛、Tokimonstaの1stアルバムが解禁。Brainfeederのファースト・レディが放つビート・シーン最前線のサウンド13曲! 更にOilworksから、RLPとSauce81がRemixで参戦した絶対注目の一枚。

10

MR RAOUL K

MR RAOUL K THE AFRICAN GOVERNMENT »COMMENT GET MUSIC
やはりこの男に間違いなし。待望の1st.アルバムからの先行カットが到着!!西アフリカ未来派ハウス・プロデューサーMr Raoul Kによる待望の1st.アルバム(今年末発売予定)からの先行カットとなる本作は、アフリカン・ギター"コラ"の芳醇な響きに完全に持っていかれるトランス度マックスな傑作!!

ryo of dextrax(dxtx-music) - ele-king

Summer Tune★


1
Idan K & the Movement Of Rhythm - pau do berimbau feat. Juares dossantos & Axum - Unknown

2
Devendra Banhart - White Reggae Troll - XL

3
7 samurai - Havana Strut - GAMM

4
Ronnie Richards - Jammin(soca houz dub) - Jaxx

5
Overproof Sound System - The Model - BANGERS R MASHED

6
Jebski - Oval (Kinka Tribal Wind Remix) - Master Of Life

7
Dave Angel - Patrice - Apollo

8
Yosuke Ikeda - By The Roots - Rain's Image

9
Bobby Womack - So Many Sides Of You - Motown

10
Dextrax - E-glez - Bodyshower

DJ TASAKA - ele-king

2010 Summer Chart


1
Doomwork- Fever Sax -Arearemote

2
Robert Diez- Soup Opera - Cadenza

3
Dj T. - Dis(Kink remix) - Get Physical

4
Paolo Mojo - He`s The Man - Younan Music

5
Niko Schwind - Just A Groove - Stil Vor Talent

6
Mathias Mayer - Infinity - Liebe Detail

7
Daniel Papini&dOP - Carte Balanche - Watergate

8
Edu Imbernon&Los Suruba - Pisco Sour - Noir Music

9
Uto Karem - Body Move - Plus 8

10
Dj Tasaka - Gratitude - Ki/oon

CHART by JETSET 2010.07.20 - ele-king

Shop Chart


1

GOLD PANDA

GOLD PANDA YOU EP
»COMMENT GET MUSIC
当店激プッシュのUK新世代エレクトロニカ大名曲。Seams、Osborneがリミックス!!UK盤7"を買った方には、コチラも激しくオススメしたい!!Gold Pandaの名曲がUS/Ghostly Internationalから12"リリース!!Osborneによるブリージン・シンセ・ディスコRemixが最高です!!

2

ROCHA

ROCHA FEEL THE LOVE
»COMMENT GET MUSIC
ビッグ・ヒット"Hands Of Love"でご存知"Rocha"による2作同時リリース!!やはり素晴しかった当店大人気レーベル"International Feel"最新作Part1。レーベル初作をビッグ・ヒットで飾った"Rocha"がマスト・バイ・アイテムを携え再登場!!

3

ROCHA

ROCHA FEEL THE LOVE (REMIXES)
»COMMENT GET MUSIC
ビッグ・ヒット"Hands Of Love"でご存知"Rocha"による2作同時リリース!!やはり素晴しかった当店大人気レーベル"International Feel"最新作のこちらはPart2。Greg Wilson、Thomas Bullock a.k.a. Welcome Strangerによるクオリティ・スタッフ。マスト・バイ・アイテムです!!

4

SLUM VILLAGE

SLUM VILLAGE FASTER B/W LOCK IT DOWN
»COMMENT GET MUSIC
最終作と噂される"Villa Manifesto"からの先行カット! B面では何とJ.Dillaのアノ曲を・・・。待望の6thアルバム"Villa Manifesto"から、Young RJ Pro.による"Faster"、そしてJ-DillaがPro.した"Lock It Down"が12"カット!共にインスト、アカペラ収録です。

5

ORIOL

ORIOL COCONUT COAST
»COMMENT GET MUSIC
UKの老舗レーベルPlanet Muから登場のOriolデビュー12"!うっとりする程に煌びやかなビート・トラックのOrg.をはじめ、Falty DL、Jake Slazenger、Shortstuffによる文句無しのリミックスをカップリング!

6

V.A.

V.A. PDXTC
»COMMENT GET MUSIC
爆裂オススメです★USインディ・ダンス最先端が詰まったスペシャル最高マスト・コンピ!!ポートランドの新レーベルHigh Score Andからの衝撃コンピ。インディ・ディスコもチルウェイヴも飲み込んだ完全ニュー・タイプ爆裂ダンス・キラーA-3をまずはどうぞ!!

7

MYSTERY JETS

MYSTERY JETS SEROTONIN
»COMMENT GET MUSIC
どう考えてもこの10年のイギリスで一番最高のポップ・バンド。さらに素晴らしいサード・アルバム!!爆裂マステスト★名作"Twenty One"から約2年、Rough Tradeに移籍しての3rd.アルバムが到着。大判ポスターと7インチが付いた激最高アナログ・エディション!!

8

JUJU & JORDASH

JUJU & JORDASH TATTOO'S ISLAND
»COMMENT GET MUSIC
唯一無比のアムステルダム・ビートダウン・チームも遂にPhilpotに参戦!!リミックスも含めて外しの無い高水準なリリースが続くJuju & Jordashですが、こちらもまた彼らの真髄を堪能出来るウルトラ・ディープ・トラック。Kindred Spirits Ensembleのリミックスで名を上げたTom Tragoによるリミックスも収録!!

9

V.A

V.A SPLIT EP
»COMMENT GET MUSIC
これはヒットEPとなりそう!!09年に当Cadenzaからリリースした"Descarga"が大ヒットした若手コンビがそれぞれのソロ作品を提供したスプリット・シングルをリリース!!

10

DAVE AJU & THE SOL PERCUSSION ENSEMBLE

DAVE AJU & THE SOL PERCUSSION ENSEMBLE TWO TONE
»COMMENT GET MUSIC
ヴィブラフォンとスキャットが交差する極上の美麗レフトフィールド・ミニマル特大傑作!!■'10年ベスト・シングル候補■Four TetやPantha Du Princeファンから、祝祭のチリアン・ミニマル・フリークにまで大推薦の、エレガントでドファンキーな1枚!!

interview with Anchorsong - ele-king


Anchorsong /
The Lost & Found EP(DVD付)

Lastrum

Amazon

 それは愚直なまでに直球な音楽のように思える――アンカーソングのことを教えてもらって、初めて聴いたときそのストレートさにたじろいだ。彼の音楽はテクノ、ハウス、ヒップホップのブレンドだが、ジャジーな曲をやろうがアシッディな曲をやろうが、アンカーソングの音楽はまったく直線的なのだ。
 それは複雑になりすぎたダンス・ミュージックが失ったものかもしれない。とにかく......、ジェイムス・ブレイクやアクトレスのような乱雑さが騒がれているこのご時世のエレクトロニック・ダンス・ミュージック・シーンにおいて、あるいはまたチルウェイヴの徒労感が人気を博しているような、そして他方では世界の終わりのような"憂鬱"が10代のあいだで大きな共感を得ているこの国において、彼の真っ直ぐさは例外中の例外と言える。
 アンカーソングは売れている。業界的にはほとんど無名に近いであろう彼の作品は、出せば1万枚以上を売っている。インストゥルメンタルのエレクトロニック・ミュージックとしては決して低い数字ではない。彼の作品は多くの耳を動かしているが、彼が集めているのは"若い"耳だ。
 ロンドンで暮らすアンカーソングは、この2年半、ご当地のクラブ・カルチャーに身を浸しながら、そのトレンドに左右されずに音楽を作っている。それも......愚直なまでに直球な音楽を、だ。それは情熱のほとばしりのようなものの具現化なのだろう。多くのリスナーを惹きつけている彼のライヴ・パフォーマンスを観ると、それがよくわかる。「オレのほうを見ろ」、と彼は言っているのだ。
 
 アンカーソングこと吉田雅昭が音楽活動をはじめたのはいまから6年前の2004年のことだった。MPCを使いながら、その場で打ち込みをしていくそのライヴ・パフォーマンスによって頭角を現してきた彼は、2007年5月にDJ三木祐司による〈Tailgate Recordings〉からデビュー・シングル「The Storytelling EP」を発表している。そしてそのわずか5ヶ月後の2007年の10月、アンカーソングは活動の拠点をロンドンに移すのだ。
 ロンドンでも彼は地道に活動を続けながらシーンの共感者(The Go! Teamからザ・シネマティック・オーケストラ、もしもしレコードのジェイムス・ユールまで)を増やしつつある。2009年にはセカンド・シングル「The Bodylanguage EP」を発表、続いて今年の6月に3枚目のシングル「The Lost & Found EP」を発表している。新しいシングルも、先の2枚と同様にロングセラーになりそうな勢いだ。
 ロンドンのキングスクロス駅の近くで暮らしている彼にskypeを使って話を訊いた。日本時間の午前9時、ロンドンは深夜の1時、ドイツとウルグアイの3位決定戦が終わってから3時間半後の取材だった。

日本にいたときにライヴの映像をYouTubeにアップしたんです。それを見つけたイギリスのジャーナリストが自分のブログに載っけてくれて。そうしたら世界中からメールが来たんですね。で、その人がロンドンに住んでいたことは知っていたので、こっち来てまずその人に連絡したんです。

ロンドンでは小さなバーからライヴをはじめたそうですね。

吉田:こっちでは小さなバーでもプロモーターがいるんですよ。だから、まずはプロモーターに話を通さなければならない。彼らに自分の作品を持っていって自分の場を確保するという手もあるんですけど、僕はそういうやり方ではなかったんです。

どうやってロンドンとのコネクションを作ったんですか?

吉田:日本にいたときに自分のライヴ映像をYouTubeにアップしていたんです。それをたまたま見つけたイギリスのジャーナリストが自分のブログに載っけてくれて。そうしたら世界中からメールが来たんですね。で、その人がロンドンに住んでいたことは知っていたので、こっち来てまずその人に連絡したんです。「こっちでライヴをやる機会はないか」「誰か紹介してもらえませか」みたいなメールを送ったんです。その人は、『ガーディアン』のジャーナリストだったんです。音楽のブログは趣味でやっていたことだったんですね。で、その人は「自分は直接、音楽業界を知らないけど、もういちどブログに載せて告知をしてみよう」と言ってくれて、「ライヴ場所を探している」ということをブログに載っけてくれたんです。そうしたらそれを通じてふたつライヴのオファーが来たんです。

それはいい話ですね。

吉田:とてもラッキーでした。

いまはそういうやり方で世界と繋がるっていうのもあるんですよね。

吉田:そうなんです。ライヴの映像をYouTubeにアップしたおかげで、ギリシャの人からもライヴのオファーがありましたから。それがロンドンに来る引き金のひとつでもあったんですよ。

で、ギリシャには行ったんですか?

吉田:はい。アテネで小さなイヴェントをやっている人だったんですけど。

アテネ、すごいですね。

吉田:YouTubeさまさまでしたね(笑)。

2007年?

吉田:2007年の10月ですね。

とはいえ、ロンドンで日本人が音楽活動するのはそう簡単なことじゃないじゃないですか。

吉田:かもしれないですね。

そういうなかで、ロンドンのライヴハウスで活動をしはじめて、いろんな共感者を増やしていくわけなんでしょ?

吉田:いやー、でもライヴをやる度にお客さんが増えていったわけではないですよ。ただ、最初にやったふたつのライヴを通して、そのイヴェントに来ていたプロモーターの人にいろいろ紹介してもらったり。それでその人の知り合いの知り合いにあってすそ野が広がっていったというか。

なんでロンドンに住もうと思ったの?

吉田:それまで東京で3年くらいやっていたんですね。東京でもそれなりに手応えはあったんです。だけど、ダンス・ミュージックの規模で言えばやっぱヨーロッパのほうがぜんぜん大きいし、違う国でやっても受ける自信はあったんです。そういった、さらなる飛躍を求めてロンドンに渡ったというのがまずあります。ただ、それ以上の理由としては......まあ、僕自身が音楽ファンなので、ポップスの歴史そのものを作ってきたイギリスという国に対する興味がありましたね。もともとロックが好きだったんです。ビートルズとかレッド・ツェッペリンとかブラック・サバスとか。そういう音楽を聴きながら育ってきたので、やっぱその国に対する強い好奇心はありましたね。

ビートルズとかレッド・ツェッペリンとかブラック・サバスとか......って、何年生まれですか(笑)?

吉田:そうですね(笑)。ただそれが受け継がれて、その遺伝子を持ったミュージシャンがたくさんいるわけですから。

まあ、そうですね。

吉田:クラブ・ミュージックに関しては最先端だと思うし、ひとりの音楽好きとして刺激を求めてきたというのはありました。

DJクラッシュみたいに逆輸入というか、海外で評価されて日本を見返すっていうカタチがあるじゃないですか。

吉田:明確に意識していなかったけど、あるかもしれないですね。ただ、僕のやっている音楽の日本での規模を考えると、3年活動してきてけっこう厳しいなというのもあったんです。

そうだね。J-POPやりながらとか、あるいは別の仕事で働きながらとかでもない限り、インストのエレクトロニック・ミュージックだけで食っていくって、現状の日本では厳しいからね。

吉田:僕のやっているような音楽(エレクトロニック・ミュージック)を聴いている人の数がこっちは圧倒的に多いんです。もちろん日本で活動してきたので、日本のリスナーのことはいつも意識してますけど、イギリスではこういう音楽を聴いている人の数が多いというのは魅力でした。

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アルバムはやっぱ、1枚通してナンボだと思っているので。最初から最後まで、ぜんぶ意味がある作品にしたいんですね。いま僕の手元にある楽曲では、まだそれができるレヴェルに達してないなと思っているんです。

先日、ele-kingでボノボの前座を務めたときの話を書いてくれたじゃないですか。3000人規模のあの会場の大きさやオーディエンスの写真を見ると、びっくりしちゃうからね。

吉田:とくにボノボみたいなアーティストは日本ではまだまだですよね。ああいう、チルアウト系と呼ばれるアーティストがあの規模でライヴをやってもお客さんがついてくるところがロンドンの音楽シーンの懐の深いところかなと思いますね。

サマー・オブ・ラヴを通過しているって感じがするよね。やっぱああいう音楽も業界全体で盛り上げていこうという気概は感じるものなの?

吉田:そうですね。だけど、やっぱそこはアーティストによって差は出ますけどね。実は昨日、デイダラスの前座をやったんですね。

おー。いいじゃないですか。

吉田:同じ音楽ではないですけど、アンダーグラウンドでエレクトロニック・ミュージック系という点ではボノボと同じじゃないですか。

しかもフライング・ロータスのレーベルだしね。

吉田:ですよね。しかもキャリアも長い。だから、集客を期待していたんですけど、ぜんぜんそうじゃなかったんです。

何で?

吉田:ロサンジェルスということなのか......、こっちで暮らしてて感じるのは、ひとりでラップトップでやっていることへの厳しさみたいなことなのかなと。バンドでやっている人とラップトップでやっている人とでは、明らかに見方が違うように思うんです。とくにお客さんの見る目が違いますね。

あー、それってイギリスっぽいのかも。ラップトップではお客さんのほうがライヴだと認めてくれないのかね。

吉田:そうかもしれないです。

アンカーソングはどのくらいのペースでライヴをやっているの?

吉田:月に2~3本、多いと4本ぐらいですか。

ライヴはじゃあ、けっこうやっているんだね。作品に関しては、イギリスのレーベルと契約しているわけじゃないんだよね?

吉田:そうなんですよ。そこがいまの課題なんです。自分の力不足っていうのもあるんですけど、だけどどのレーベルでも良いってわけじゃないし、出しっぱなしでノー・プロモーションのレーベルも見てきているので。

慎重にならざる得ない?

吉田:ですね。ないわけないんです。メールを送ってくれたレーベルもあったんです。でも、やっぱそこは考えてしまいますね。

アンカーソングはこれまでアルバムを出してないですよね。3枚ともepでしょ。これはどんな理由で?

吉田:ヴォーカリストを起用せずに、インストだけでアルバムを作りたいという目標があるんです。たとえばアルバム1枚、12曲、50分だとしたら、本当に最後まで飽きさせることなく聴いてもらえるアルバムを作ることはとても難しいと思うのです。僕自身、インストだけのアルバムで好きなアルバムとなると数えるほどしかない。考え過ぎかもしれないけど、作るんだったらそういうものにしたいんです。アルバムはやっぱ、1枚通してナンボだと思っているので。最初から最後まで、ぜんぶ意味がある作品にしたいんですね。いま僕の手元にある楽曲では、まだそれができるレヴェルに達してないなと思っているんです。

シングルでいろいろ試したいという感じなのかな?

吉田:自分の音楽性がまだガチっと固まっていないと思うんですよ。

「ザ・ボディーランゲージEP」がジャジーで、メロウなフィーリングのシングルだとしたら、最近出した「ザ・ロスト&ファウンドEP」はよりダンサブルになっていると思ったんですけど。この変化みたいなのは意図的なものなの?

吉田:いや、違いますね。たまたま入れたかった曲があって、それを軸に構成したらそうなっただけなんです。

ロンドンのライヴ活動の経験がフィードバックされたってわけではないんだ? あるいはロンドンのクラブ・カルチャーに触発されるとか。

吉田:こっちに来てからクラブに遊びに行く回数もかなり多いんですけど、正直、その影響を真正面から受けている感じでもないんです。ロンドンに来た最初の頃は、たしかにそういう気持ちもあったんですよ。自分の音楽性がこういうものだという確固たるモノがなかったですし、こっちに来て最先端のもの、モダンなものを取り入れたいという思いがあったんです。それでクラブに遊びに行くんですけど、2年半暮らしてみてわかったのは、ダンス・ミュージックのシーンのサイクルの早さですよね。いまはダブステップが流行の頂点にいるような感じになってますけど、先を見ている人たちからするとすでに廃れはじめているというようなことも言われているんです。

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僕がこっちに来てからの2年半だけでも、ダブステップが急成長して、そしていま下りはじめているのがよくわかるんです。最先端を追いかけていることの空しさも感じるんです。そのことは、僕がこっちに来てわかったいちばん大きなことかもしれないなと思うんです。

ロンドンは昔からそれがありますよね。だけど、ジェイムス・ブレイクみたいなのを聴いているとまた新しい波が来ているのかなというのも感じるんですけど。

吉田:はい、そうですね。ただ、これはシニカルな言い方かもしれないですけど、ダブステップはじきに終わると思うんです。ブリアルみたいな本当に突出した人たちは残っていくと思うんですけど......。変な話、いまレコード契約を狙っている人たちはみんなダブステップを作っていますよ。

それはそうだよね。ムーヴメントってそういうものだから。90年代のテクノのときだってそうだったし、シニカルというよりも「そういうもの」ってことだと思うし、それを土台にまた違う展開があるわけだしね。

吉田:そうですね。僕がこっちに来てからの2年半だけでも、ダブステップが急成長して、そしていま下りはじめているのがよくわかるんです。最先端を追いかけていることの空しさも感じるんです。そのことは、僕がこっちに来てわかったいちばん大きなことかもしれないなと思うんです。

なるほど。

吉田:それで僕は、モダンとレトロの狭間をいくような音楽を作りたいと思うようになったんですよね。周囲からジャンル名を与えられるような音楽もいいんですけど、僕はそういうのとはまた違う音楽を目指したいなと思うようになったんです。風化されない音楽を目標にしたいんです。いまでもクラブに頻繁に遊びに行っていますけど、自分が本当に感じることができた「これだ」というものは、そういうことです。

それは頼もしい話だね。

吉田:ただ、そう思えるようになったのも最近のことで、作品にそれが活かされるのは次からでしょうね。

最近のアンカーソングの音楽を聴いて、ロンドンの流行に左右されている感じは受けなかったし、わかる人ににだけわかればよいという閉鎖性も感じなかったけどね。もっと幅広く聴かせたいという気持ちは伝わったけど。

吉田:はい、そこはそうですね。

目標としているアーティストはいるんですか?

吉田:尊敬しているミュージシャンはたくさんいますけど(笑)。

尊敬しているのはミュージシャンを3人挙げてください。

吉田:ビョークと、DJシャドウと......。

ビョークというのはアンカーソングという名義を聞いたときにすぐわかった(笑)。

吉田:ビョークと、DJシャドウと......まあ、ビートルズですかね。

はははは。その組み合わせすごいね。ちなみに新作の「ザ・ロスト&ファウンドEP」というタイトルはDJシャドウの曲名から来ているの?

吉田:それは関係ないです。本当の意味は駅の落とし物の拾得所みたいな意味なんですけど、「無くしたモノが見つかる」というような意味と同時に、「ひとつの物語が終わって、また新しくはじまる」みたいなニュアンスもあるんです。

アートワークのリンゴの地球っていうのが面白いなと思ったんですけど。

吉田:それはデザイナーさんのアイデアです。いびつなカタチが良いっていうことで、時計とかも試したんですけどね。でも、結局、世界地図になったんですけど。削ったことでカタチが表れるというのも、「ザ・ロスト&ファウンドEP」というタイトルに重なっていいかなと思ったんです。

ところで、ライヴのあの派手なパフォーマンス、MPCを打ち込んで、鍵盤を弾きながらやっていくような生演奏にも近いスタイルは最初からだったんですか?

吉田:そうですね。ソロで初めてライヴをやったときから基本はあのスタイルでしたね。ただ、意図的にやったわけではないんです。僕はもともとバンドをやっていて、事情があってメンバーがいなくなったとき、「どうしようか?」と思ったんですけど、アコギ一本で歌うシンガーソングライターには興味がないし、ダンス・ミュージックをやりたいと思ったんです。そのとき、まずはライヴをやりたいと思ったんですね。で、自分にラップトップとターンテーブルは使わないという制限を課したんです。で、MPCは楽器っぽいなと思ったんですね。最初は部屋でヒップホップのトラックみたいなのを作っていたんです。そしたら、作っているプロセスそのものが面白いんじゃないかと気がついたんです。「これをそのままステージでやってみよう」って。

こんど(7月29日)DOMMUNEであのライヴをやってもらえるということで、とても楽しみにしています。

吉田:こちらこそ。

しかし、なんでロック好きがダンス・ミュージックをやろうと思うようになったんですか?

吉田:バンドが好きだったので、バンドを止めたときに音楽を止めようかと思いました。でも、結局、諦めきれなかったんです(笑)。

インストに目覚めたのは、やっぱDJシャドウが原因なの?

吉田:初めて聴いたインストものがシャドウっていうわけじゃないんですけど、シャドウの音楽がずば抜けてすごいと思えたんですよね。ライヴの良かったんですよ。インストの音楽を聴くようになって、ケミカル・ブラザースからエイフェックス・ツインまで、いろんなライヴを観に行ったんです。でも、どれも心の底から楽しめなかったんです。音楽はすごい好きなのにライヴが面白く思えないという、悲しみすら感じていたんです。でも、シャドウだけはライヴが良かったんです。『In Tune And On Time』というDVDを観ました?

いや、そこまで追ってないなぁ。

吉田:『ザ・プライヴェート・プレス』(2002年)の頃のツアー・ライヴを収めたDVDなんですけど、素晴らしいですよ。

シャドウでいちばん好きなのはどのアルバム?

吉田:『ザ・プライヴェート・プレス』が初めてリアルタイムで聴いたアルバムだったんです。いまは『エンドトロデューシング.....』が好きですけど。最初はサンプリング主体の音楽に憧れがあったんです。実際、「ザ・ボディーランゲージEP」の頃はまだそれを捨て切れていないんです。ただ、僕自身がレコード・コレクターではないので、その方法論では限界があるなとも思っていたんです。

アンカーソングの音楽は純粋なエンターテイメントなんですか?

吉田:エンターテイメントですね。もちろん個々の楽曲に意味はあるんですけど、それをリスナーに押しつけたくはないんですよね。伝えたいモノはないです。

※7月29日、AnchorsongはDOMMUNEにてライヴ演奏を披露します。 7時からトークショー。9時からLIVE:Anchorsong(FEAT. サイプレス上野)+ DJ: MIGHTY MARS & 三木祐司 (T-SKRABBLE DJ'S)

ele-king - ele-king

ele-king Chart


1
M.I.A. - Born Free - XL Recordings

2
James Blake - CMYK - R&S Records

3
Oneohtrix Point Never - Returnal -Editions Mego

4
砂原良徳- Sublimenal - Ki/oon

5
Zs - New Slaves - The Social Registry

6
七尾旅人 - Billion Voices - Felicity

7
Rockasen - Welcom Home - Assasin Of Youth

8
Budamonky & S.l.a.c.k. - Bud Space - Dogear Records

9
Buffalo Daughter - The Weapons Of Math Destruction - Buffalo Ranch

10
Ariel Pink's Haunted Graffiti - Before Today -4A

ECD - ele-king

 ラッパーは自分を語りたがる、と人は言う。ECDのような、そのステレオタイプとはかけ離れた人でさえそうだ。たとえばECDの音楽史を綴った『いるべき場所』を読めば、彼の音楽人生が見えてくる。ゼロ年代というひとつのディケイドに関しても、アル中と鬱、メジャー離脱と自主制作スタート、サウンド・デモ......彼の人生にいろいろあったことを知ることができる。

 そうは言ってもECDは、ラッパーの自己顕示欲から遠く離れたところで自分を語っている。たとえばネットでの連載コラム「WE ARE ECD+1」や「ECDの休日」を読んで欲しい。結婚して、五十路で二児の父になった自身の私生活が赤裸々に綴られている、それはエンターテインメント性とは無縁で、語り口はいつも通り淡々としている。
 
 "10年後"と名付けられたECDの通算13作目となる新作もそうだ。いつものように社会への批評精神を持ちながら、彼は自分自身の生活について語っている。"Time Slip"、"M.I.B."、"Play The Game"、"And You Don't Stop"といった曲では以前の生き様について、その他の多くの曲では日常の機微について言葉を書きつらねている。
 同時にその視線は10年後の未来へも向いている。"Alone Again"では、「どんな気分のあと十年後/はっきりわかるわけがある/今とたいしてかわるわけじゃない」のだが、でも「軽くしたいとは考えないのは/放り出したらまたひとりだから」とラップする。いままで通りの諦観を滲ませながら、彼の正直な感情を吐露している。日常を決意をもって生きる、そして明日へと踏み出すその姿がいつになく力強い。アルバムはこう締めくくられる。「願いかなうなら少しでも長く/このでかいからだ故障などなく/このでかい頭縮むことなく/動いてほしい十年後も」
 今回のECDは、ちょっぴりドラマチックに見える。
 
 そして『テン・イヤーズ・アフター』は、4作目の『BIG YOUTH』(97年)以来の久しぶりのヒップホップらしいアルバムとも言える。
 『FINAL JUNKY』(04年)と『CRYSTAL VOYAGER』(06年)はエレクトロ・ファンクとアシッド・ハウスの定番機材を使いながら、それらの音楽からファンキーさを引っこ抜いて、この国の殺伐とした空気を反映した音だったが、新作のバックトラックにはサウス系ヒップホップからの影響が聴きとれる。
 リリックにもヒップホップ臭さはうかがえる。"Rest In Peace"や"Paid In Full"、(「Life Is Bitch」ならぬ「Money Is Bitch」の略で)"M.I.B"、"トニー・モンタナ"といった曲のリリックは、型にハマったヒップホップへの批評だろう。

 アルバムにはもうひとつ、ラッパーとしてのECDを強烈に印象づける場面がある。彼のラップの面白さだ。たとえば「~く(ク)」で踏みたおす"how's my rapping"や、「安 らか に 眠れ/たす から ね ておくれ」(最後は「寝ておくれ」と「手遅れ」をかけている)という"Rest In Peace"のサビなどは秀逸だ。キャリア25年にして、ヴェテラン・ラッパーのライムは鋭さを増している。

 いまはひとまず歌詞カードを置いて、この通算13作目『テン・イヤーズ・アフター』を、とにかく楽しみたい。

[house & techno] #3 by Kazuhiro Abo - ele-king

1. Munk / La Musica | Gomma


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 このところは梅雨のバッドヴァイブスに完璧に日々ノックアウトされている。今年は入梅が遅かったせいか梅雨のジメジメに夏のムンムンまでプラスされ、それこそヴァイナルもカビれ! もしくは曲がれ! という勢いだ。そういえば、友人曰く日本の気候っていうのはだんだん亜熱帯に近づいているらしい。たしかに最近スコールのようなゲリラ豪雨も多いし、ともすると未来には日本もマラリアの流行地帯になる可能性すらあるとか。また、レコードディガーの別の友人曰くやっぱりレコード文化が残っている国というのは湿度が低い国が多いらしい。だから東南アジアとかの古いレコードをいい状態で手に入れるのは至難の業なのだとか。そんな話を思い出しつつ、我が家のレコード部屋の行く末を遠い目で案じる日々だ(水とりぞうさんを設置しながら)。
 そんなわけで、前回のサウンドパトロールでは「梅雨どきには暗いレコードが聴きたくなる......」などと書いておきながら、今年の梅雨の予想を超えたハーコーっぷりに完璧、前言を翻している。雨だけなら良いが、この暑さとのダブルパンチを食らいながら陰鬱なレコードなんか聴いてしまっては苦笑ひとつできなくなってしまう。そこは僕も人の子なので、こういうときはついつい景気がいい音に手が伸びる。
 そこでまず紹介するのは、先日ジョナス・インベリーが脱退し、マティアス・モディカのソロユニットになったムンクのEPだ。どことなくラテンの匂いがするベースラインにピアノがユニゾンするフレーズや、フックの清涼感溢れるシンセのコードワークだけとればコテコテのサマーチューンなのだが、そこはムンク、一筋縄ではいかない。いたるところにエレクトロ・パンクやニューウェイヴの毒っけを混ぜてくる。過剰にゴリゴリしたベースの音色も軽い違和感をもって耳に残るし、後半登場してくるFM変調を過激に使ったアシッド風シーケンスも印象的だ。夏っぽい女性ヴォーカルとスキャットが心地よいが、そこに暑苦しいダミ声のオヤジヴォイスが絡んでくるというのもいろいろな意味でニクい。
 この感じ、どこかで聴いたことがあるな? と思いつつ聴いていたのだけれども、思い出した! DAFのヴォーカル、ガビ・デルガドと元リエゾン・ダンジュルーズのサバ・コマッサとのユニット、デルコムだ。ジャーマン・ニューウェイヴ×バレアリック×アシッドという組み合わせからはやっぱりデルコムの匂いがする。スエーニョ・ラティーノの影響を受け当時ラテン・アシッドとすら言われたあの折衷感に、かなり通じるところがあるんじゃなかろうか。
 リミックスには昨年の日本ツアーも好評で、先日DJ CHIDAのレーベル〈Ene〉からシングルをリリースしたポルトガルの奇才ティアゴを起用。こちらはシンセ・ベースが裏打ちになり、よりサイケディスコ感を強めたリミックスになっている。ダビーな音響処理が施されたシンセリードは空間を切り裂くように鋭く、ロッキンだ。azari & IIIのリミックスに至ってはシンセ・ストリングスのコード弾きとベンドするシーケンスがモデル500みたいだ。
 なんにせよ折衷的なシングルになっているが、どのミックスもジャーマン・ニューウェイヴというところで1本筋が通っている。ラテン・フレーヴァーがするのに極めてドイツっぽい1枚。

2. Tiago / Rider | Ene Records

 DJ CHIDAが主催し、東京地下シーンとワールドワイドな地下シーンをシームレスに接続しているレーベル〈Ene〉の3枚目は、前述のムンクのリミックスもかっこよかったティアゴの12インチ・シングルだ。4月のサウンド・パトロールでも取り上げた前作は東京屈指のコズミック・ディスコ・バンド、スライ・マングースvs北欧のディスコ王子、プリンス・トーマスという組み合わせだったが、今回はリミキサーにイセネエヒヒネエ所属のデュオ、コス/メス(COS/MES)がフィーチャーされている。
 ティアゴによるオリジナルは、プログレやクラウトロックの影響を感じるドラムレスなサイケ・チューンだ。3連のシンセベースが延々ステイし、ビートはシンプルなパーカッションのみ。ミニマルに反復するリズムの上に、サイケロック調のピアノやハモンド・オルガン、そしてスパイス的にマリンバとシンセストリングスが添えられる。シンセ・ストリングスも基本的にはピアノのフレーズと同調するもので全体としては押し殺したようにストイックかつヒプノティックな作風だ。ジャン・ミッシェル・ジャールの作品に通じるような暗さもある。ムンクのリミックスで見せたアグレッシブなアプローチは完全に影を潜めている。
 そもそもティアゴはその作風の広さに定評がある。いままでも数多くの変名を使い分けて音楽活動をおこなっており、例えば変名のひとつであるスライト・ディレイ(Slight Delay)名義では、90sピアノ・ハウス・ミーツ・ビートダウンといった趣のトラックや、オールドスクールエレクトロ・ミーツ・バレアリックのようなクロスオーヴァーな作風を見せるなど、とにかく多才だ。
 コス/メスのリミックスは、そもそもドラムが鳴らないこのトラックをヒプノティックな側面を保ったまま10分越えのサイケ・ディスコに昇華している。クイーカの音が印象的な2分に渡るイントロの後ようやくと太いキックが鳴りはじめ、その後も派手な展開は無く、ひたすらストイックに10分間をフルに使ってジワジワと楽曲をビルドアップしていく。中盤ではデニス・フェラーの"サンド・キャッスル"をぐっとピッチダウンしたようなフレーズが現れ、そして終盤で頭上を旋回するようなシンセ・ソロとオルガンのリフが現れるという構成はとにかく「ハメる」ためのトラックという意図を強く感じる。
 このシングルには、このコス/メスのリミックスをDJ CHIDA自身がさらにリエディットしたヴァージョンも収録されている。こちらは、ダンストラックとしての強度をさらに増して、90'sハウスのエッセンスを追加したような仕上がりだ。オールドスクール・ハウス的なリズムマシンによるフィルインや、レイヴ感のあるシンセリフが追加されており、よりトラックにメリハリがついている。個人的にDJで使うならこのヴァージョンだろうな。

3. Kyle Hall / Must See EP | Third Ear


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 先日急逝したカガミしかり、ハタチそこそこで〈R&S〉の社長のレナードに「んで、いくら欲しいんだ?」と言わしめたリチャード・D・ジェイムスしかり、若く、そして底知れぬ天賦の才を感じさせる作り手の登場は、それだけで血沸き肉踊るものがある。デトロイトのジャズ・ジャイアント、ローランド・ハンナの甥っ子としてこの世に生を受けた現在19歳のカイル・ホールもまた、そんな存在のひとりだ。17歳の頃にオマー・Sのフックアップでシーンに認知され、カール・クレイグがウォンキーをやったようなシングル『ケイチャンク/ユー・ノー・ホワット・アイ・フィール』を名門〈ハイパーダブ〉からリリースしたかと思うと、〈ムード&グルーヴス〉からはメロウなエレピをフィーチャーした小洒落たジャジー・ハウスをリリースするなど、そのオープン・マインドな作家性も魅力的だ。野田努氏的にもストライクといったところだろう。
 〈サード・イヤー〉からリリースされた今作は、独特に荒れたビートの質感が印象的なデトロイト感溢れるディープ・ハウス・トラックだ。セオ・パリッシュのくすんだ黒さにも通じる独特の汚し感覚は、彼に深く刻み込まされたデトロイトの遺伝子を感じさせる。A2に収録された"ゴーステン"は、MPC1000を使用している(YouTubeの動画で確認できる)ことに起因していると思われるヒップホップ的なビートの荒れと、流麗なピアノとシンセの対比が美しい。
 この曲や、B2に収録されている"ボディ・オブ・ウォーター"からは随分と大人びた印象を受けるが、B1に収録された"OSC2"では、リズムマシンと、タイトルどおりふたつのオシレータのみを使ってリズムがヨレヨレのヘンテコなミニマル・テクノを作るような遊び心も健在だ。コンピュータを使っておらず、MPCで完結しているからだろうか、全曲通して非常に編集が荒っぽい。ブッツリとパートがミュートされたり、「あ、ストップボタン押したな」という感じで曲が終わったりする。でも、それもまた妙にデトロイトくさくていい。願わくばこの先ずっとPC使わずにこのスタイルを貫き通して欲しいな。
 ところで、このように才能溢れる10代は実は日本でもちゃんと出現している。カイル・ホールの作品を聴くたびに、そしてYouTubeでおもちゃのキーボードやらシンセやらサンプラーと戯れているその姿を見るたびに思い出すのは、同じく19歳の奇才トーフビーツだ。高校生だった17歳の頃に石野卓球主催の屋内レイヴ〈WIRE〉のサード・ステージの新人アーティスト枠に抜擢されたり、またカイルと同じくヒップホップマナーでラフなビートの質感と、おそらく手癖なのだろう、小洒落たキーボードのフレージングなどある種のシンクロニシティとでも言うべきか、被るところが多い。彼が今年の1月にユーストリームで披露した即興ライヴ・パフォーマンスは、デトロイト/シカゴファンにが見ても相当面白いと思うので併せて紹介しておく。(https://www.ustream.tv/recorded/4067945)
 また、7月18日には早稲田のクラブ・茶箱にて18歳のDJやアーティスト出演者が全員18歳(大学受験生)のサンデー・アフタヌーン・パーティがおこなわれる。最近話題のレーベル〈マルチネレコーズ〉からもリリースしているダブステップ少年miiiや、ジロー・シロサカ、関西からはどす黒いシカゴ・ハウスを卓越したテクニックでスピンすることで話題を呼んでいるDJ、アフロミュージック(AFRMUSIC)も参加するというこのパーティ、若い芽チェッカーな人は無視できないだろう。この国にもカイル・ホールに匹敵する才能はきっとゴロゴロ眠っているはずだ。

4. Simon Hinter / Take Care EP | Phil

 さっきのカイル・ホールもそうなのだけれども、ここ最近はイーヴン・キックな曲でもビートにちょっとした引っ掛かりみたいなものがある曲が気に入っている。〈プロッグシティ・ディープトラックス〉などから有機的なテック・ハウスをリリースしているサイモン・ヒンターが新設した自身のレーベルからリリースしたのは、オーガニックな持ち味をさらに前進させた、一風変わったディープ・テック・ハウスだ。
 まず、表題曲になっている"テイク・ケア"は、6連を基調としたタップダンスのタップ音のソロとアコースティック・ピアノで幕を開ける。やがてイーヴン・キックが現れ、ベル系の音色でメランコリックなメロディを奏でる。スウィングするビートと、鍵盤の絡み、物憂げな世界観などはドクター・ロキットが〈インナーヴィジョンズ〉以降のテック・ハウスをやっているみたいだ。エレピやパイプオルガン、民謡からサンプリングしたような女性ヴォーカルなどのフォーキーなマテリアルはグラニュラーシンセシスによって引き伸ばされたり、再構築されたりしてざらついた、しかし何故か耳に優しい音に加工されている。
 B1に収録された"ナイト・ライツ"では、デトロイティッシュな寄せては返すシンセパッドにジャジーなアコースティック・ピアノを併せた白眉のアンビエン・トハウスだ。ここでもシンセ・パッドには複雑な滲みを伴ったフィルターがかけられており、エレクトロニカ以降のテクノロジーを自由自在に使いこなしているという印象を受ける。それでいても音は電子音電子音せずにどこまでもオーガニックな印象だ。
 B2収録の"ミスター・ブルー"で聴ける冒頭のアコースティック・ギターにしてもそうなのだが、実際にギターを弾くとしたら明らかに不自然なベンドの仕方をしているのに、不思議と違和感を感じさせず体に染み込んでくるようなマジックがサイモン・ヒンターの音にはある。この感動は、レイ・ハラカミのサウンドを初めて耳にしたときの感動にも近いかもしれない。
 ところでこれは余談なのだが、この盤はグレーのカラーヴァイナルになっている。最近レコード屋にいって思うのは、一時期とくらべてカラー・ヴァイナルやクリア・ヴァイナルの数がかなり増えたことだ。DJもデジタルデータを扱うのがごく一般化して久しいが、そのなかでヴァイナルにこだわってリリースするからには、物としての価値を高めようという方向に向かっているのだろう。ジャケットのアートワークも面白い物が増えた印象だ。個人的にもアートワークはやっぱりあの大きさで見たい。

5. Moebius / Light My Fire | Light Sound Dark


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 最後に、ともすると「珍盤」というカテゴリーにすら入りかねないがグッと来た1枚を紹介しよう。"ライト・マイ・ファイヤー"というタイトルのこの盤は、"ハートに火をつけて"の邦題でも御馴染みなドアーズの名曲"ライト・マイ・ファイヤー"のシンセ・カヴァーだ。初出は1980年だというこのヴァージョン、今回の再発にあたってマドンナをプロデュースしたことでも知られるミルウェイズによるリミックスと、エクステンド・エディットが収録されている。
 ちなみにこのレコードを作っているメビウスというアーティストには二説あって、ひとつは70年代の終わりから80年代にかけて活動していたロスのシンセバンドのメビウス。もうひとつはクラスターやハルモニアとして活動しているディーター・メビウスの作という説。個人的には前者じゃないかと思うんだけれども、はっきりしていない。
 それこそガーション・キングスレイの作品だったり、クラフトワークの『アウトバーン』なんかにも通じるように、シンセサイザーの音というのはどこかカートゥン的な側面がある。とくに80年代のシンセポップ的な音にはその傾向が顕著で、例えばダニエル・ミラーのシリコンティーンズだったり、〈アタタック〉からリリースしていたアンドレアス・ドラウの作品からは子供の遊び感がプンプンしていた。
 今回のメビウスによるカヴァーも例外ではなく、そこからはジム・モリスンが纏っていたシリアスさというのは微塵も感じられない。どちらかというと、ドラウの"フレッド・フォン・ジュピター"なんかに通じる牧歌的な感覚さえ覚える。ミルウェイズによるリミックスは流石のスキルで現代的なディスコ・エレクトロにブラッシュ・アップしているが、肝心のヴォーカルが妙にヘロヘロなのでイマイチ格好つけきれていないところが逆に良い。
 後半、ヴォーカルをオートチューンによって局所的に変調させているのだが、ミルウェイズは本来ヘロヘロなピッチをアジャストするためのテクノロジーであるオートチューンを使って、ヴォーカルにデタラメとも思えるビブラートを付加してさらにヘロヘロにしている。その開き直りっぷりが小気味よい。クールでスタイリッシュなのも大事だが、それだけじゃパーティはきっとつまらない。こういう、言ってみればバカバカしくもあるレコードもまた夜の宴には欠かせないものだと思う。

CHART by UNION 2010.07.14 - ele-king

Shop Chart


1

JOAQUIN JOE CLAUSSELL presents The World OF Sacred Rhythm Music Part One

JOAQUIN JOE CLAUSSELL presents The World OF Sacred Rhythm Music Part One MUSIC 4 YOUR LEGS / JPN »COMMENT GET MUSIC
レコードショップのチャートを席巻した数々のヒットシングルに加え、待望の新曲も収録!JOE CLAUSSELLの一晩のロングセットを凝縮したかのような高い楽曲性と「ハウス」といった枠に収まることのない多彩な選曲がリスナーを魅了するオーガニックな1枚。

2

RICK WILHITE

RICK WILHITE Godson & Soul Edge RUSHHOUR / HOL »COMMENT GET MUSIC
MOODYMANNのレーベルKDJからリリースされた3枚のレアなシングルがCD化。RICK WILHITEプロデュースの音源に盟友THEO PARRISH、MOODYMANN、話題のURBAN TRIBEによるリミックス音源と初CD化づくし。未発表音源も収録した完全限定盤!

3

URBAN TRIBE

URBAN TRIBE Program 1-12 MAHOGANI / US »COMMENT GET MUSIC
Sherard Ingramを中心に構成された伝説のユニットURBAN TRIBEがMooymannのMahogani Musicからアルバムをドロップ! Sherard Ingram, Anthony Shakir, Carl Craig, Kenny Dixon Jr.(Moodymann)というデトロイトが誇るベテランプロデューサーが織り成す化学変化は3 Chairsとはまた一味もふた味も異なる漆黒のエレクトリック・ソウルを奏でる。

4

MORITZ VON OSWALD TRIO

MORITZ VON OSWALD TRIO Live In New York HONEST JONS / UK »COMMENT GET MUSIC
2010年前半にNYのクラブでCARL CRAIG、FRANCOIS Kをゲストに迎え(!)行われたライブから抜粋された4トラックを収録! ディープなダブワイズとサンラの影響を感じさせる、という圧巻の長尺トラック! しかもなんと同内容のCDも付属した豪華盤! 限定です!

5

OMAR S

OMAR S Fya Mix CD Vol.5 FXHE RECORDS / US »COMMENT GET MUSIC
昨年に続き秋のTAICO CLUBへの来日も決まったOMAR Sが放つプライベートミックスシリーズ「FYA MIX」最新作が、渋谷クラブミュージックショップのリニューアルオープンを記念して独占先行入荷! Early 90'sのシカゴ~NYアンダーグラウンドハウスを軸に、ライヴミックスならではの生々しさを備えたレコーディング!

6

RICK WADE

RICK WADE An Angry Pimp`s Lullaby Vol. 1 HARMONIE PARK / US »COMMENT GET MUSIC
デトロイトのべテランRICK WADEのミックスCD!自身の新曲を中心に構成されたアルバム的な内容で、MoodymannやOmar S、Theo Parrishなどデトロイトの盟友達のトラックも収録。RICK WADEらしい躍動感と疾走感が全体に溢れるDJスタイルがこの1枚に詰まっています。

7

ART BLEEK

ART BLEEK Message To The Dreamer EEVONEXT / NED »COMMENT GET MUSIC
これまでRUSH HOURやRESOPAL REDなどからストレートなテクノとミニマルを使い分けてリリースを重ねてきたアーティストですが、今作は思いっきりデトロイティッシュな方向へと振れた一大傑作!NEWWORLDAQUARIUMやKIRK DEGIORGIO、VINCE WATSONなどの系譜に連なるいつまでも色褪せない輝きを放ち続けるであろう作品の誕生!

8

VARIOUS ARTISTS

VARIOUS ARTISTS 10 Years Fumakilla FUMAKILLA / GER »COMMENT GET MUSIC
人気レーベルFUMAKILLAの10周年記念盤となる本作は、全曲エクスクルーシブ・トラックのコンピとWOODYによるミックスの豪華2枚組。DISC 1/2を併せて聴くことにより、レーベルの過去と未来を繋ぐことができる秀逸な作品集となっています!

9

DJ YOGURT

DJ YOGURT Drivin' To Seaside HONCHO SOUND / JPN »COMMENT GET MUSIC
梅雨明け間近!この夏にピッタリの心地よいドライヴミュージックをデリバリーしてくれたDJ YOGURT。レゲエ、ラヴァーズ、ソウル、R&B や、レイドバック感漂うオーガニック・サウンドを縦横無尽に駆け巡らせ、どっぷりと甘く心地いいグルーヴに浸らせてくれます。

10

CRYSTAL(TRAKS BOYS)

CRYSTAL(TRAKS BOYS) Made In Japan Future Classics SWC / JPN »COMMENT GET MUSIC
Made In Japanをコンセプトに日本人アーチストのみという縛りの中で完成させた1枚。90年代~00年代の統一感ある国産音源を行き来させ、意識下で鳴り響くディープなグルーヴはなんとも確信犯的。聴くほどに独特な覚醒感をもたらす究極の展開。
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