「You me」と一致するもの

Ulapton(CAT BOYS) - ele-king

ダンディズムな気分に浸れる10曲(動画)

Electronica “New” Essential Discs - ele-king

「こういうひとつの括り方に抵抗を感じる人がいるのはわかっているが、なかば強引にでも括った方が見えやすくなることもある。もともと踊れもしないテクノ(エレクトロニック・ミュージック)を、しかし前向きなニュアンスで言い直したのがエレクトロニカ(ないしはえてして評判の悪いIDM)なるタームである」

「2010年に〈エディションズ・メゴ〉からOPNが『リターナル』を出したときは、この手の音楽がエレクトロニカというタームを使って解釈されることはまずなかったが、しかし、エイフェックス・ツインが華麗な復活を遂げて、かたやEDMが全盛の今日において、エレクトロニカ新世紀と呼びうるシーンが拡大するのはなんら不思議なことではない」
(本特集巻頭言より)

──とすれば、フロアにもベッドルームにも収まらない今日的なエレクトロニカとはどのようなものか。ディスク・レヴューで概観する。

Akkord - HTH035 (Houndstooth 2015)


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 シーンに現れたときにはマスクを被り謎の存在だったアコード。彼らはマンチェスター近郊を拠点に活動をするシンクロとインディゴによるテクノ・ユニットだ。プロジェクトをはじめるにいたってエイフェックス・ツイン、セラ、シャックルトンといった面々を念頭に置き、この作品においてはその影響がジャングルやダーク・アンビエントを通して噴出。そのリズムをアタマで理解しようとすると複雑で脳の中枢が熱くなり、体で捉えようとすると妙なダンスが生まれる。また今作の後半にはフィスやリージスといったプロデューサーたちのリミックスを収録していて、特にハクサン・クロークによる「数多くの証人」と題された曲がトんでいる。前半の楽曲すべてをひとつにリフィックスしてまとめたもので、家でもフロアでも聴けないような音の暴力が10分続き、ド派手なSF映画のようにそれが突如パッと終わる。(髙橋)

Actress - Ghettoville (Werk Discs, Ninja Tune / ビート 2014)


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 思えば、転換期は2010年だった。アクトレスで言えば『Splazsh』の年。その後も『R.I.P』、そして『Ghettoville』へと着実に我が道を進んでいる。UKクラブ・カルチャーから生まれたモダン・エレクトロニカを代表する。(野田)

AFX - Orphaned Deejay Selek 2006-08 (Warp/ビート 2015)


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 エレクトロニカとは、いかに工夫するか。リチャード・D・ジェイムスにとってのそれは機材の選び方にも関わっている。高価なモジュラー・シンセや最先端のデジタル環境を賞揚するわけではない……という話は佐々木渉に譲ろう。『Syro』から続く3作目は、アシッド・サウンドの最新型。(野田)

Albino Sound - Cloud Sports (Pヴァイン 2015)


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 日本においてこのエレクトロニカ・リヴァイヴァルの風を敏感に感じ取ったひとりが、アルビノ・サウンド。詳しくはインタヴューを参照。(野田)

Arca - Mutant (Mute/トラフィック 2015)


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 音楽作品において、これほど強烈なヴィジュアルは、久しぶりである。若く敏感な感性は、なんとも妖しい光沢を発しているこのヴィジュアルに間違いなく手を伸ばすだろう。アルカはそういう意味で、現代のハーメルンの笛吹き男である。(野田)

Four Tet - Morning/Evening (Text/ホステス 2015)


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 好き嫌い抜きにして、フォー・テットの功績は誰もが認めざる得ないだろう。最新作は2曲収録。メトロノーミックなドラミングの上を、エキゾティズムを駆り立てるように、インド人の歌のサンプリングが挿入され、叙情的な展開を見せる1曲目。そして静かにはじまり、多幸的な協奏のなか、心憎いドラミングでエンディングを用意するもう1曲。見事、というほかない。“ストリングス・オブ・ライフ”のカヴァーも素晴らしかったし。(野田)

Holly Herndon - Platform (4AD/ホステス 2015)


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 〈リヴェンジ(RVNG Intl.)〉からの『ムーヴメント』(2012年)がクラブ・シーンにも届いたこともあって、新作は名門〈4AD〉からのリリースになったサンフランシスコ出身のホーリー・ハーンダン。簡単にいえば、ローレル・ヘイローとは対極にいるプロデューサーで、彼女の女性らしい“声”がこの音響空間では重要なファクターとなっている。「R&Bエレクトロニカ」とでも言ったらいいのかな。(野田)
https://www.youtube.com/watch?v=nHujh3yA3BE

Huerco S. - Colonial Patterns (Software / melting bot 2013)


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 ブルックリンの新世代電子音楽マスターが、2013年にOPN主宰〈ソフトウェア〉からリリースしたアルバム。デトロイトの高揚感と、ハウスの優雅さと、ミニマル・ダブの快楽性と、00年代以降のアンビエント/ドローンの浮遊感を、ポスト・インターネット的な情報量と感性で(再)構築。4/4のテクノ・マナーと、雲の上を歩いているようなスモーキーな感覚が堪らない。あの〈オパール・テープス〉などからも作品をリリースしている。(デンシノオト)

Kind Midas Sound, Fennesz - Edition 1 (Ninja Tune / ビート 2015)


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 ザ・バグことケヴィン・マーティン、イラストレイターとしても活躍するキキ・ヒトミ、詩人でありテクノ・アニマルでマーティンと共演したこともあるロジャー・ロビンソンによるスーパー・ダブ・トリオが、電子音楽化クリスチャン・フェネスと組んだ意外作。家(に籠る)系アカデミシャンを、ストリートの知性派ギャングが外へ引きずり出したらどうなるのか? いや、ここでの実験はその逆だろうか。〈ハイパーダブ〉からのリリース作で聴けるスモーキーで力強いダブステップは押しやられ、フェネスの繊細な残響プロダクションがバグのラフさをときに助長し、ときに漂白する。リズムがもう少しあってもいいかなと思う気もするが、両者のバランスを考えれば納得もできる。インテリジェント・ダブ・ミュージック。(髙橋)

Laurel Halo - In Situ (Honest Jon's / Pヴァイン 2015)


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 ローレル・ヘイローが2010年に何をやっていたかと言えば、〈ヒッポス・イン・タンクス〉からチルウェイヴ風の柔らかい作品を出していたのだった。が、ヨーロッパを経験してからは、彼女の音楽は遠近法のきいた音響のダンス・サウンドへと変容した。2013年に〈ハイパーダブ〉から出した12インチ「ビハインド・ザ・グリーン・ドア」に収録された“スロウ(Throw)”なる曲は彼女の最高作のひとつで、ピアノとサブベース、パーカッションなどの音の断片の数々は、宙の隅々でささやかに躍動しながら、有機的に絡み、全体としてのグルーヴを生み出す。テクノへと接近した新作においても、立体的にデザインされた小さな音の断片とサブベースが、独特のうねりを創出している。凡庸のテクノとは違う。女性アーティストに多く見受けられる甘い“声”(ないしは女性性)をいっさい使わない硬派による、素晴らしい作品だ。(野田)

Lee Bannon - Pattern Of Excel (Ninja Tune/ビート)


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 サクラメントのプロデューサー。2012年にアルバム『ファンタスティック・プラスティック』でデビューして以来、ヒップホップに軸足を置きつつもしなやかに音楽性を変容させ、翌年の『オルタネイト/エンディングス』ではジャングルを、そしてこの『パターン・オブ・エクセル』ではアンビエント・ポップを展開。2015年はジョーイ・バッドアスのプロデュースで話題盤『B4.DA.$$』にも参加するなど、時代にしっかりと沿いながらもジャンル性に固執しない無邪気さを発露させている。自らが「ピュア・ベイビー・メイキング・ミュージック」と呼ぶもうひとつのペルソナ、ファースト・パーソン・シューター(FPS)名義ではチルウェイヴに同調。クラムス・カジノやスクリュー、ウィッチ・ハウスとも隣り合いながら、まさにFPS(一人称視点のシューティング・ゲーム)──主観性が先行する世界をドリーム・ポップとして読み替え、2010年前後のリアリティを提示した。(橋元)

Logos - Cold Mission (Keysound Recordings 2013)


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 〈テクトニック〉や〈Keysound〉といったレーベルからリリースを重ねてきた、UKのグライム・プロデューサー、ロゴスのファースト・アルバム。マムダンスとの『プロト』(Tectonic, 2014)ではUKハードコアの歴史を遡りフロアを科学する内容だったのに対して、こちらはリズム・セクションを可能な限り廃して、空間に焦点を当てたウェイトレス・グライムを前面に出し、そこにアンビエントの要素も加えた実験作。グライムの伝統的なサウンドである銃声や叫び声のサンプリングと、尾を引くベース・キックがフロアの文脈から離れ、広大な宇宙空間にブチまけられているかのような様相は恐怖すら覚える。「グライムを脱構築していると評された」本作だが、本人は大学で哲学を学んだ経験から「ロゴス」の名前を採っているとのこと。(髙橋)

Mark Fell - Sentielle Objectif Actualité (Editions Mego 2012)


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 Sndのマーク・フェルも長きにわたってこのシーンを支えているひとり。2010年以降はコンスタントに作品を出している。これもまたミニマルを追求した作品で、NHKコーヘイとも共通するユーモアを特徴としている。(野田)

NHK - Program (LINE 2015)


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 NHKコーヘイは、本当にすごい。〈ミル・プラトー〉〈スカム〉〈ラスターノートン〉と、そのスジではカリスマ的人気のレーベルを渡り歩き、ここ数年は〈PAN〉、そしてパウウェルの〈Diagonal〉からも12インチを切っている。もちろん彼にとっての電子音楽は大学のお勉強ではない。それは感情表でもなければ研究でもない、おそらくは、意味を求める世界への抵抗なのだろう。2015年の新作では、素っ頓狂なミニマルを展開。小さなスクラッチノイズのループからはじまるこの反復の、どこを聴いても物語はない。タイトルは、あらためて言えば、NHK『番組』。(野田)

Oneohtrix Point Never - Returnal (Editions Mego 2010)


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 この1曲目から2曲目の展開を、大音量で聴いていない人は……いないよね? いい、1曲目、そして2曲目だよ。そうしたら、最後まで聴いてしまうだろう。(野田)

Patten - ESTOILE NAIANT (Warp/ビート 2014)


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 OPNが錯視家なら、パテンは詐欺師。「D」とだけしか名乗らないロンドンの“ミステリアスな”プロデューサーによるセカンド・フル。煙に巻くようなタイトルやアートワーク、あるいは言動によって、アブストラクトなダンス・トラックにアートや哲学の陰影をつけてしまうスリリングなマナーの持ち主だ。〈ノー・ペイン・イン・ポップ〉から最初のアルバムを、〈ワープ〉から本作をリリースしたという経歴は、〈エディションズ・メゴ〉と〈メキシカン・サマー〉をまたぐOPNが同〈ワープ〉と契約したインパクトに重なり、当時のインディ・シーンにおける先端的な表現者たちがいかに越境的な環境で呼吸をしていたのかを象徴する。とまれ、Dは人気のリミキサーにして自身もレーベルを主宰するなど才能発掘にも意欲的。彼の詐術とはまさにプロデューサーとしての才覚なのかもしれない。(橋元)


Mode Of Electoronic-a - ele-king


Laurel Halo / In Situ

Tower HMV Amazon

 テクノがエクスペリメンタルなモードをまとうようになった時代……。それが2010年代初頭のエレクトロニクス・ミュージックの潮流であったと、ひとまずは総括できるだろう。
 グリッチやクリック、ドローンなど00年代のエレクトロニカにおけるサウンドの実験が、ミニマル・ダブ以降のテクノの領域に流れてこんでいったことは、デムダイク・ステアやアンディ・ストットなどを擁する〈モダン・ラヴ〉、ビル・クーリガス率いる実験音楽レーベル〈パン〉、ルーシー主宰の〈ストロボスコピック・アーティファクツ〉の諸作品を思い出してみれば即座にわかる。

 その結果、(アートワークも含め)、ノンアカデミックなエレクトロニクス・ミュージックは、よりアートの領域にシフトし、コンテクストとコンセプトと物語性が強くなった。エクスペリメンタルという言葉が頻繁に用いられるようにもなる。ビートは分断され、サウンドは複雑化した。


Laurel Halo / Quarantine
Hyperdub/ビート(2012)

 ローレル・ヘイローは、待望の新作がリリースされるワンオートリックス・ポイント・ネヴァーやアルカ(新作『ミュータント』は前作を超える傑作!)などとともに、そのような時代を代表するアーティストといえよう。同時に孤高の存在でもあった。会田誠の作品を用いたファースト・アルバム『クアランティン』(2012)のアートワークなどを見ても分かるように、繊細・緻密な2010年代前半にあって、ほかにはない独自の感性であった。とはいえ、楽曲自体はどこか瀟洒で、それこそ「テン年代的」なエクスペリメンタル・アンビエントな質感を持っていた点も新しかった。

 しかし、彼女の楽曲にはある種の「つかみどころのなさ」があったことも事実。声を存分に使ったトラックもあるが、ホーリー・ハーダン(新作『プラットフォーム』は90年代以降の音響学=ポップの領域越境のお手本のごときアルバム!)のキャッチーさとはまた違う「地味」なテイストがあったのだ。

 いまにして思えば、その「つかみどころのなさ」こそ、テクノをルーツとする彼女のストイックさの表れだったのではないかと思う。テクノとアンビエントという領域のあいだでローレル・ヘイローの音は鳴っていた。実際、『アンテナ EP』(2011)や『アワー・ロジック』(2013)などを聴けば、彼女のストイックなテクノ感覚やアンビエント感覚をより理解できる。ある意味、『クアランティン』と『チャンス・オブ・レイン』は、やや異質な作品だったのではないかとも。この『イン・サイチュ』において、彼女は自分のルーツ=テクノへと素直に回帰している(『アワー・ロジック』的?)。1曲め“シチュエーション”の洗練されたビートメイクには誰しも驚くはず。この変化は彼女がベルリンというテクノの地に移住したことが大きいのかもしれないし、〈オネスト・ジョンズ〉からのリリースということもあるだろう。
 ここから私はインダストリアル/テクノ、ジューク / フットワーク、グライム、近年のアンビエント・シーンとの関連性や交錯性もつい考えてしまう。


Jlin / Dark Energy
melting bot/Planet Mu(2015)

 そこでまずジェイリン『ダーク・エナジー』(2014)をとり上げてみたい。類似性は3ビートメイキングではなく、独自の硬質感とファッションショーなどでも用いられるモードな雰囲気にある(とくに『イン・サイチュ』のM2)。

 モード感覚は近年のエレクトロニック・ミュージックを考えていく上で重要な要素で、〈パン〉からリリースされたヴィジョニスト『セーフ』も同様だ。グライム文脈でありつつも、エレガンスでエクスペな音楽性は、アートワークにしても未来的。彫刻のような硬質なサウンドと鉱物的なビートがたまらない。そしてテクノ・フィールドからはドイツのヘレナ・ハフ『ディスクリート・ デザイアーズ』も併せて聴きたい。彼女のトラックはアシッドなビートが強調されているが、インダストリアルなダークさもある。


Powell / Insomniac /
Should Have Been A Drummer
XL(2015)

 また、スティーヴ・アルビニにサンプリング許諾申請をして怒られ、結局、承認してくれたパウエル『インソムニアック/シュドゥヴ・ビーン・ア・ドラマー』もインダス以降の現代音響テクノの最先端として聴いておきたい。ここからエンプティセットの新作EP『シグナル』における過激で優雅な実験的なサウンドに繋げていくことも可能であろう。

 個人的には〈ストロボスコピック・アーティファクツ〉からリリースされたシェヴェル『ブラーズ』と、〈オパール・テープス〉から発表されたインダストリアル・テクノとフリー・インプロヴィゼーションとアンビエントの交配を図るマイケル・ヴァレラ『ディスタンス』こそ、『イン・サイチュ』の横に置いておきたいアルバムだ。『ブラーズ』は最先端のインダストリアル・テクノで、そのストイックな感覚は『イン・サイチュ』とスムーズに繋がっていく。『ディスタンス』は、ジャンルと形式を越境していくストレンジな感覚の中に、ローレル・ヘイローの個性に近いものを感じる。

Chevel『Blurse』

Michael Vallera『Distance』

 『イン・サイチュ』にはアンビエントなテクスチャーとジャズ的な和声感が見られる曲もある(M7とM8などにととまらず、ビート入りのトラックでもシルキーな上モノなどに彼女のアンビエント感覚を聴き取ることができる)。
 そこでカラーリス・カヴァデール(Kara-Lis Coverdale)を聴いてみたい。彼女はクラシカルな感性と素養を持ったアンビエント・アーティストだが、讃美歌や宗教歌のようなエッセンスを感じる音楽家である。声を使ったり、ミニマルなフレーズによって曲を構築したりするなど、古楽のような音楽性と浮遊感のあるサウンドのテクスチャーが素晴らしい。LXVによるグリッチ・ノイズと、カヴァデールによる乾いた音と、弦のようなアンビエンスと加工されたヴォイスなどが交錯するコラボレーション作『サイレーン』も素晴らしいが、何はともあれ神話的なアンビエント『アフタータッチズ』をお勧めしたい。

Kara-Lis Coverdale『Aftertouches』
Kara-Lis Coverdale - "TOUCH ME & DIE" from Sacred Phrases on Vimeo.


Dasha Rush / Sleepstep
Raster-Noton(2015)

 また〈ラスター・ノートン〉からリリースされたダーシャ・ラッシュ『スリープステップ』もアンビエントとテクノを20世紀初頭のモダニズムで越境するような優美なアルバムである。ジャズ/フュージョン的なコード感と今日的な電子音楽のという意味では、CFCF『ザ・カラーズ・オブ・ライフ』をピックアップしたい。架空のドキュメンタリー映画のサントラといった趣のアルバムだが、ピザールな感覚もありヘイローの諸作品と並べても違和感はない。

 エクスペリメンタルかつ音響なテクノと幽玄なアンビエント/アンビエンス。そしてジャズ/フュージョン風味。ストイックでありながらローレル・ヘイローらしさもある。そのうえ2015年的な音楽的文脈すらも聴き取ることができる。今年も素晴らしい話題作・傑作が目白押しだが、『イン・サイチュ』も独自の存在感=鉱石のような光(まるでアートワークのごとき!)を放っているように思えてならない。

Note:
Jlin『Dark Energy』
Visionist『Safe』
Helena Hauff『Discreet Desires』
Powell『Insomniac/Should'Ve Been A Drummer』
Emptyset『Signal』
Chevel『Blurse』
Michael Vallera『Distance』
Kara-Lis Coverdale『Aftertouches』
Kara-Lis Coverdale/LXV『Sirens』
Dasha Rush『Sleepstep』
CFCF『The Colours of Life』


CE$ - ele-king

MY GRIME CLASSICS

Slackk - ele-king

 ヴィジョニスやマーロなど、11月はグライム・シーンの最前線で活躍するアーティストたちの来日が決定しており、スラックの名前もそこに堂々と連なっている。彼は〈ローカル・アクション〉や〈アンノウン・トゥ・ジ・アンノウン〉といったレーベルからのリリースや、ロゴスらとともに開催するパーティ〈ボックスド〉を通し、グライムの可能性を開拓する第一人者だ。ジェイムス・ブレイクからニコラス・ジャーにいたるまで、幅広い音を提供し続ける老舗レーベル〈R&S〉からも、スラックはEP「ブラックワーズ・ライト」(2015)をリリースした。今回、その凶暴なビートと端麗なメロディが混在するサウンドを携え、スラックが初めて日本の現場へやってくる。
 来日公演は11月12日に大阪、翌日13日に東京で開催。大阪公演にはCE$や行松陽介ら関西シーンの立役者たちが出演し、フォトグラファーの横山純によるUKにおけるグライム・シーンの現在をおさめた写真展も行われる予定だ。東京公演には、1-ドリンク、DXやポータルといった多彩なプレイヤーたちが、「グライム」や「ベース」をキーワードに集う。グライム・ヘッズだけではなく、新しい音に飢えている方も是非お近くの現場へ。

Slackk - Bells - R&S Records - 2015

Slackk(Boxed / R&S Records/ Local Action Records)


(Photo credit: Jun Yokoyama)

 インスト・グライムのシーンにおいて指標となる存在、Slackk。彼が創設したロンドンにおける重要なクラブ・イベントであるBoxedでは、いままさに頭角を現さんとするプロデューサーと、時代の数歩先をいく音を探求するDJがステージに立つ。そこでの活動や、週一でレギュラーを務めるリンスFMでの彼のDJセットは、まさに次なるシーンの最前線において鳴らされる音の縮図だ。
 スラックは自身の楽曲においても、細分化するグライムの核心を突いており、〈Local Action〉、〈UTTU〉、〈Numbers〉そして〈Big Dada〉といったレーベルからリリースを重ねている。それらの作品で方々から賞賛の言葉を浴びた後、2015年には伝説的なレーベル〈R&S〉と契約し、EP「Blackwards Light」を発表した。


【大阪公演】
Hillraiser
日時:2015年11月12月 19:00開演
会場:Socore Factory
料金:2000円
DJ:
Slackk
CE$
行松陽介
satinko
ECIV_TAKIZUMI
Photo Exhibition:Jun Yokoyama

【東京公演】
T.R Radio presents Slackk From London at Forestlimit
日時:2015年11月13月 21:00開演
会場:幡ヶ谷Forestlimit
料金:2000円
DJ:
Slackk
Dx (Soi)
1-DRINK
BRF
Zodiak (MGMD)
PortaL (Soundgram / PLLEX)
NODA
Zato
Sakana
MC:Dekishi

Funkstörung - ele-king

 世はエレクトロニカ・リヴァイヴァルである。完全復活のAFX,アクトレス、アルカ、OPN、ローレル・ヘイロー、今年はプレフューズ73も復活したし……ポスト・ロックへの注目と平行してそれが存在感を増していった90年代後半の様相がそのまま移植されたかのようだ。
 ドイツのファンクステルングは、90年代後半のエレクトロニカ第一波における主役のひとつである。ビョークの「オール・イズ・フル・オブ・ラヴ」(1998年)は、オリジナルよりも彼らのリミックスのほうが人気があった。しかもそのヴァイナルは、メジャーではなく、〈ファットキャット〉という小さなレーベル(後にシガー・ロスやアニマル・コレクティヴを見出す)からのリリースだったのにも関わらず、相当にヒットした。また、その曲はビョークがエレクトロに/IDM的なアプローチを見せた最初期の曲でもあったので、エポックメイキングな曲ともなった。インダストリアルなテイストで、音をひん曲げたようなあのドラミングに誰もが驚き、「ファンクステラングって何もの?」となったわけである。当時は、「あれがグリッチ・ホップっていうんだよ」などと言っていたね。そう、彼らはその名の通り、IDMだろうがテクノだろうが、ファンキーなのだ。

 そんな伝説のプロジェクトが10年振りに復活して、新作を発表した。往年のファンはもちろん、最近この手の音にはまっている若い世代にまで評判が広まっている。そこへきて、11月7日には日本でのライヴも発表された。エレクトロニック・ミュージックの祭典、EMAF TOKYOへの出演だ(他にもアクフェンやヒロシ・ワタナベ、インナー・サイエンスなど大物が出演)。
 ここに彼らの復活を祝って、ミニ・インタヴューを掲載。記事の最後には、日本のためのエクスクルーシヴ・ミックスのリンク(これが格好いい!)もあります。
 読んで、聴いて、EMAFに行きましょう。

Funkstörung インタビュー

■マイケル、クリス、今回の来日を非常に楽しみにしています! 公演に先だって幾つか質問させて下さい。

F:ぼくらも楽しみだよ! もちろんさ。

■10年振りのニュー・アルバム『Funkstörung』のリリースおめでとうございます! 日本でもアルバムは好評ですが、先ずは再結成の経緯を教えて下さい。

F:ありがとう! 友人であるMouse On MarsのAndi Tomaが、ぼくらふたりを彼らの活動の21周年記念の作品である「21 Again」に誘ってくれたんだ。その際にぼくらふたりは多くのことを話したんだけど、Funkstörungを再結成する良い切っ掛けなのかもしれない、とお互いに考えたんだよね。いろいろな曲をふたりで聴きながら、すぐにぼくらは(しばらく活動を一緒にしていなかったんだけど)いまでも「波長が合っている」ことに気付いたんだ。

■ニュー・アルバム『Funkstörung』はModeselektor主催のMonkeytownレーベルからのリリースとなり、とても興奮しましたが、どういった経緯でMonkeytownからのリリースとなったのですか?

:とてもエキサイティングなことだよね。:-) Andi Toma(Mouse On Mars)がMonkeytown Recordsを薦めてくれたんだ。Monkeytownのリリースは好きだったし、Modeselektorを昔から知っていた事もあって直感的に良い事だと思ったね。

■本作ではAnothr、ADI、Audego、Jamie Lidell、Jay-Jay Johanson、Taprikk Sweezee(アルファベット順)という6組のゲスト・ヴォーカルが9曲で参加していますが、ヴォーカル作品を多く収録した意図やコンセプトなどを教えて下さい。またヴォーカルの人選はどのようにしたのですか?

:これと言ったコンセプトはないんだけど、敢えて言うなら成熟したアルバムを作りたかったんだ。ブレイクの多用や過剰なディテールへの拘りではなく「リアル」な曲を書きたかった。インストゥルメンタルの楽曲は、多くの場合ぼくらを満足されてくれないから、ヴォーカリストをフィーチャーしたアルバムを制作することに決めたんだ。何か人間的な要素、もしくは声が与えてくれるインスピレショーン、をぼくらは必要としていた。良い例なのが、親しい友人であり近所に住んでいる「Anothr」なんだけど、彼はいわゆる「インディ・ロック」の人で、複数の楽器を演奏するマルチプレイヤーなんだけど、何か特別な要素をぼくらの楽曲に与えてくれたよ。多くのことを彼から学んだね。SoundCloudを通して知り合ったオースラリアのシンガー「Audego」との制作も楽しかったね。彼女の声を聴いてぼくらは鳥肌が立つんだ。テルアビブの「ADI」はぼくらのマネージャーの友人なんだけど、ぼくらにとって完璧な調和と言えるモノになったよ。彼女は近くビッグスターになると思う、素晴らしいのひと言だね。「Jay-Jay Johanson」とは、古き良き時代からの知り合いで、もう15年前のになるのかな、当時の彼のアルバムをプロデュースしているんだ。「Taprikk Sweezee」はハンブルクで知り合った気の知れた友人で、過去にも多くの制作を一緒にしている。(Michael Fakeschのアルバム『Dos』のシンガーは彼なんだ)18年くらい前に初めて「Jamie Lidell」のパフォーマンスを見たんだけど、彼と制作を共に出来たことは夢の様だったね。いくつかの理由があって彼とは一緒に制作を行えていなかったんだけど、今回のアルバムでそれが叶ってとても誇りに思うよ。

■1995年に発表された「Acid Planet 1995」から20年経ちますが、制作や作品に関する一貫した考えはありますか?

:20年……。長い期間だよね? 実際には1992年に収録曲を制作していたから、20年以上音楽を作り続けていることになるよね……。Crazy! 一貫した考えと言えるのはたぶん、つまらない音楽を作りたくないということなんだと思うよ。ぼくらの楽曲は(多くの場合)いろいろな音やディテールが詰め込まれていて複雑だと思うんだけど、このアルバムに関して言うと(代わりに)いろいろなアイデアが楽曲に詰め込まれているんだ。リスナーをつまらない気持ちにさせたくないし、もっと言えばぼくら自身がつまらない気持ちになりたくないんだ。

■最新作に関する何か特筆するエピソードがあれば教えて下さい。

:一番特別なエピソードと言えば、ぼくらがこのアルバムを完成させたということだろうね。。10年間コミュニケーションを取っていなかったからね。こんなに長い期間を置いてからたFunkstörungとしてアルバムを完成させた、というのはとても特別なことだと思うね。

■現在はミュンヘンを拠点に活動されていると思いますが、ミュンヘンまたドイツの音楽やアートの状況に関して、マイケル、クリスが感じられる事を教えて下さい。

:多くの音楽、イベントなんかはたしかにあるんだけど、ぼくらはあまりそれらにコミットしていないんだ。スタジオに居て毎日音楽を作っている、只それだけなんだよ。;-)

■ 印象に残っている国、イベント、アーティスト等あったら教えて下さい。

:もちろんだよ。ビョークと一緒に仕事をした事は強烈な記憶として残っている。リミックスを2曲作っただけなんだけどね。魔法の瞬間だったよ、彼女の声をエディットしていたときっていうのは。その他にもニューヨークのグッゲンハイム美術館でパフォーマンスしたことは素晴らしかったね。Jamie Lidell、LambのLou Rhodesと仕事出来たことも特別だし……。Wu-Tang Clanのリミックスをしたことも……。オーストラリアでのツアーも……。この20年間、とても素晴らしい瞬間が幾つもあったね。

■ 今後のプラン等をお聞かせ下さい。

:新しい楽曲を制作していて、今年中に発表されるかもしれないんだ。12月には幾つかのライヴが控えている。新しいミュージック・ヴィデオも制作中だね。

■今回日本を訪れる際に、何か楽しみにしていることはありますか?

:和食を食べることだね! (本当に美味しいよね)他には、秋葉原にクレイジーなモノを探しに行くこと、渋谷のスクランブル交差点で人の波に押し潰されること、原宿で(流行の先端を行っている)ヒップスターたちを見ること、大阪のアメリカ村で買い物をする事こと。本当に日本ではクールなことがいろいろと出来るよね。今回は実現出来なさそうなんだけど、富士山に登るのも良いアイデアだね。(日本は大好きだし、いつも良い時間を過ごさせてもらってるよ!)

■最後に、日本の電子音楽リスナーにメッセージをお願いします。

:イベントで会えるのを楽しみにしてるよ!

Funkstörung▼プロフィール
 1996年結成、かつて、オランダの〈Acid Planet〉〈Bunker〉レーベルからアシッド・テクノ作品も発表していたドイツはローゼンハイム出身のマイケル・ファケッシュとクリス・デ・ルーカによるエレクトロニック・デュオ。それぞれのソロ名義ではセルフ・レーベル〈Musik Aus Strom〉からも作品を発表。
 エレクトロニカ、アンビエント、ヒップホップ、ポップスの要素を融合させたサウンドをベースに穏やかな風が吹き抜ける草原と溶岩が流れ出す活火山の風景が同居したかのような、未知のエクスペリメンタル・ポップを生み出し、爆発的人気を博す。
 99年のリミックス・アルバム『Adittional Productions』における、ビョークやウータン・クランといった大物たちのリミックスで知名度を上げ、00年に1stアルバム『Appetite For Distruction』をリリース。脱力したヴォーカルと感電したラップが絡み合う、メロウかつ鋭い金属質のブレイク・ビーツ・サウンドでその実力を遺憾なく発揮し、テクノ界に新風を吹き込んだ。クリストファー・ノーラン監督映画『メメント』の日本版トレーラーにビョーク「All Is Full Of Love (Funkstorung Mix)」が起用された事でも注目を集める。またテイ・トウワをはじめ日本のリミックスなども手掛け、国内外において非常に高い評価を得ている。 
 2015年、活動休止を経てモードセレクター主宰レーベル〈Monkeytown〉から10年振りに新作を発表、ゲスト・ヴォーカルとして、ジェイミー・リデルをはじめ、ハーバートやテイ・トウワ作品に参加してきたドイツ人シンガーのタプリック・スウィージー、スウェーデン人シンガーのジェイ・ジェイ・ヨハンソンらが参加。究極に研ぎ澄まされたトラックをポップソングまで昇華させた最高傑作が誕生した。
https://www.funkstorung.com

        **********************

★新作情報
『Funkstörung』-Funkstörung
https://itunes.apple.com/jp/album/funkstorung/id998420339

★来日情報
11月7日(土曜日)EMAF TOKYO 2015@LIQUIDROOM
https://www.emaftokyo.com

★エクスクルーシヴ・ミックス音源
Funkstörung Exclusive Mix for Japan, Oct 2015
https://soundcloud.com/emaftokyo/funkstorung-phonk-set-oct-2015



Funkstörung interview

I'm looking forward to your appearance at EMAF Tokyo. Could I have some questions prior to the event please?

We are looking forward to it, too!!! Sure.

Congratulations on the release of your new album entitled "Funkstörung".
1. How the reunion of the unit come about?

Arrogate Gozaimasu!
Our friend Andi Toma (Mouse On Mars) invited us to do a song with Mouse On Mars for their anniversary record '21 again'. We met and talked a lot and soon we thought this might be a good chance to reactivate Funkstörung. After listening to loads of songs we instantly recognized that we are still on the 'same wavelength'...

The album "Funkstörung" has been released on Monkeytown Records run by Modeselektor.
2. What has made you decide to release the album on the label?

I'm so excited about this. :-)
Andi Toma recommended Monkeytown to us...and since we liked the MTR releases and knew the Modeselektor guys from back in the days, we had a good feeling about it.

There are 6 vocalists featured for 9 tracks in this album. (To name all alphabetically, ADI, Anothr, Audego , Jamie Lidell, Jay-Jay Johanson and Taprikk Sweezee)
3.  What was your intention / concept about these vocalist selections?

We had no real concept, but somehow we wanted to do a grown-up album. Instead of focusing on breaks and an overload of details we wanted to write 'real' songs. Since instrumental tracks don't satisfy us most of the times we decided to do a vocal album. We needed that human element and as well the inspiration vocals give us. Anothr, who is a close friend and neighbour is the best example: He added some special flavour to our songs since he is more a kinda 'Indie Rock' guy and multiinstrumentalist...we learned a lot from him. Australian singer 'Audego' we found via soundcloud was really a pleasure to work with, Her voice really gave us goose bumps. ADI from Tel Aviv is a friend of our manager and for us it was a perfect match. She is going to be a big star soon...she is brilliant! Jay-Jay Johanson we knew from 'the good old times'...we have been producing one of his albums almost 15 years ago. Taprikk Sweezee is a good friend from Hamburg with whom we have been working a lot together in the past (he is the singer on Michael Fakesch's album 'Dos'...) Jamie Lidell was a dream to work with from the day we saw him playing for the first time (which is about 18 years ago)...due to different reasons we never managed to work with him and so we are extremely proud that this time it really happened.

20 Years have been passed since the release of "Acid Planet 13" in 1995.
4. Is there any consistent thoughts behind your production throughout?

Long time...isn't it? In fact we did those track back in 1992, which means we are doing music since over 20 years...crazy!

Maybe the most consistent thought is that we don't wanna do boring music. That's the reason why our songs are often so complex with loads of sounds and details and -like on this album- with loads of ideas within the song. We just don't wanna bore people...and even more important we don't wanna bore ourselves.

5. If there's a special story / episode regarding the latest album, it would be great to hear it.

The most special story is that we really did this album...after not talking to eachother for 10 years. I think this is something very special if you re-unite after such a long time.

You are currently based in Munich, Germany.
6. Could you tell us about your opinions on a situation music (and/or) art in Munich / Germany are in? (from each of you, please?)

There is definitely a lot music, events, etc. going on but we are kind of isolated from all that. We are sitting in our studios all day making music and do nothing else ;-)

7. Please let us know of any countries, events or artists you have been impressed by and would still remember?

Of course one of the most intense memory from the past was working with Björk. Even if we only did two remixes, but to work with her vocals was a very magic moment. Besides to that playing at Guggenheim Museum New York was amazing...also working with Jamie Lidell or Lou Rhodes from Lamb was very special....or remixing Wu-Tang...and our Australia tour...oh man...we had some great moments over the last 20 years.

8. Please let us know of your upcoming plans. (Excuse me if this is too fast to ask..) 

We are working on new tracks right now (which might be released already this year) and we're going to play some live shows coming up in December. There is also a few new videos in the making.

9. Is there any particular thing(s) you've been looking forward to do in Japan? 

...to eat Japanese food (which we love!), to check out all the crazy toys in Akihabara, to get squashed a Shibuya crossing, to see all the super hippsters at Harajuku, to do some shopping at american village Osaka...oh man, there is so much cool stuff to do in Japan. Actually it would have been great to walk up Mount Fuji, but unfortunately it's not the right time :-(...anyway...we love Japan and always had a great time there!

10. Lastly, please leave a message for electronic music listeners in Japan.

Come to our concerts!! We hope to see you guys there!


interview with tha BOSS - ele-king


tha BOSS
IN THE NAME OF HIPHOP

THA BLUE HERB RECORDINGS

Hip Hop

Amazon

 北海道・札幌をリプレゼントするTHA BLUE HERBのラッパー、tha BOSSが全国から敬愛するビートメイカー、ラッパーを招き、初のソロアルバム『IN THE NAME OF HIPHOP』を完成させた。
 BOSSといえば常にO.N.Oと二人三脚で作られるTHA BLUE HERBの音源のイメージが強いが、本作はトラックメイカー陣にPUNPEEの名があったり、客演陣にYOU THE ROCK★の名があったりと、かなり外に開かれた内容になっている。
 BOSS自身このインタヴューで、参加アーティストに寄り添って作ったと話しているように、このアルバムは18年前にマイク稼業を始めたひとりのMCのユナイトの賜物だ。トピックもシンプルで、聴き手を選ぶ類のものではない。
 とはいえ、もちろんBOSS“節”は健在で、さらに磨きがかかったといってもいいほどだ。tha BOSS名義のソロ作品ゆえ、彼の純度が増したのだともいえるし、デビュー当時の攻撃性は鳴りを潜め、作品そのものの深みが増したともいえるだろう。
 この“節”に関しては作品を聴いていただく他ないが、『IN THE NAME OF HIPHOP』=“ヒップホップの名のもとに”というアルバム・タイトルは、この作品を実によく表している。「ユナイト」や「純度」や「深み」の意味を象徴し、よく伝えている。インタヴュー時間はジャスト30分、雑談はなし。一気呵成に訊きたいことを聞いた。

ファーストの頃は自分の居場所を作るために命を張って勝負をかけるという意味では、俺にとってその時代の俺のヒップホップは、俺に力をくれたし、その大 義っていうものを信じて生きてきた。けど、それと同時にヒップホップはユナイトする音楽、人と人を繋げる音楽という側面もあって、18年後にやっとここに 辿り着けたよね。

このアルバムに関しては、昨年末に制作を発表して、そこから1年を待たずに、この高密度なアルバムが完成されたわけですが、そこに至るまでの経緯から伺いたいです。

tha BOSS:そうだね。まずは1997年からマイク稼業をはじめて、今日まで18年か、その間に出会った人と曲を作ってみたいっていうのがまずはじめにあって。現場でいつか曲を作ろうよっていう話をしていた人たちもたくさんいたし。でも、それだけじゃなくて、やっぱり自分がそんなにまだ、なんていうんだろう……たとえ現場ですれ違う程度の人でも、この人のビートに乗せてみたいだとか、いろんなスタッフも含めて、ヒップホップに詳しい人は俺の周りにたくさんいるから、みんなとも話して、一緒にやりたいと思った人に声をかせさせてもらった感じだね。

いまのお話の住み分けをもう少し具体的に伺いたいです。

tha BOSS:DJ KRUSHさんとかDJ YASとかDJ KAZZ-K、INGENIOUS DJ MAKINOとかは俺にとっては昔からの知り合い。Olive Oilもそうだし。 NAGMATICとかPENTAX.B.FとかPUNPEEやHIMUKIとかは、なんていうのか、今回は俺の方から一線を越えてオファーした人たちだね。

HIMUKIのビート(2“I PAY BACK”)は凄かったですね。この曲を聴いた瞬間、このアルバムの意味というか、アルバム全体が持つ高揚感みたいなものが駆け抜けた気がしました。

tha BOSS:HIMUKIのトラックは一番最初にレコーディングした曲なんだよね。今年の2月にレコーディングを始めたんだけど、、それが実はこの曲。聴けばわかるけど、俺的にも、力も入ってるし。弾みをつけたかったという気持ちを感じられるというか。すごい、なんかねぇ……HIMUKIとの曲が最初で良かったなと思う。

全国どこのヒップホップのアーティストも、最初は地元のトラックメイカーだったり自分たちでビートを作ったりするわけですが、ことTHA BLUE HERBに関しては最新作に至るまでですし、O.N.Oさんとの結びつきが強いですよね。THA BLUE HERBとはO.N.Oさんでもあるわけで。

tha BOSS:そうそう。まさにその通り。

だから、これだけまとまった楽曲群を他の人と作るというのは、BOSSさんにとって、かなり新しい体験だったと思いますし、発見もあったと思いますが、その辺はいかがですか?

tha BOSS:うん。それ(体験や発見)はたくさんあったよ。なんていうかな……基本的にその……O.N.Oとのやり取りという意味では、俺的にはある意味『TOTAL』で頂点を極めた感覚があったんだよね。『TOTAL』というアルバムの細部に渡るまでに、いまも崩れずに傷つけられずに、汚れずに、いまだに全曲ピシッと成立している世界というのは、俺にとってはある意味パーフェクトで。あれを作り終わったあとには、しばらくあれを乗り越える作品を作るというのは、ちょっともう……ってくらい、俺たちは『TOTAL』でデカい山を登ってきたんだ。
 だからやっぱり、そのTHA BLUE HERBの次作の前に、ソロ・アルバムを作ってみたいなと思って、今回こういう、たくさんの人たちとやらせてもらったんだけど、みんな育ってきた環境も使ってる機材も年齢も違うからね。ひとりひとりと、メールなり電話なり、作業なりをずっとしていくと……O.N.Oと俺の場合は、THA BLUE HERBというひとつの人格を最初から最後まで成長の過程として共有してるわけだけどさ、今度のは15曲、特典のセロリ(Mr.BEATS a.k.a. DJ CELORY)くんを含めて16曲、2曲提供してくれたのがふたりだから、つまり14人との制作だったんだ。1対1が×14人分あって、それがみんな違うから、ずっとひとりのビートメイカーとやってきた人間からすると、それはやっぱり全然違うよね。
 でも、そこを本気で誠実に向き合うことで……対決して音楽を作るというよりは、せっかくこういう人たちとやるんだし……ハーモニー……調和した音楽を作るというか、その人と一緒に最高の曲を創りたいというか……そういう気持ちが強いからね。その人それぞれの違いに寄っていくと、自分も自分の中になかった感情であり、手法であり、声の質であり、言葉遣いでありが14人分出てきたよね。だから新鮮で楽しかったよ。

トラックメイカーとの顔合わせ(食い合わせ)の話で言えば、もうひとり、やっぱりPUNPEEさんが面白かったのですが、PUNPEEさんいかがでしたか?

tha BOSS:PUNPEEも最高だったよ。PUNPEEと一緒にやるのも俺にとっては結構挑戦だった。今回参加してくれているのは、みんな、今すごいと言われてる人たちで。でも実際外から見てるだけではわからないし、一緒に作ってみないとわからないから誘ってみたんだけど、本当だね。みんながすごいと言うには、ちゃんとした理由があるっていうのは、仕事をするとわかるよね。
 PUNPEEはずっと一緒に、お互いに意見を出し合ってスタジオで作ったんだ。そこはみんな同じで、遠慮なしに「ここはこうして欲しいし、こうした方がいい」と言い合って作ったけど、そういう意味じゃPUNPEEは、1回か2回現場で会って、そこから俺がオファーして実現したんだけど、キャリアのことは知っていてもお互いのことを知っているわけじゃなかった。俺の性格とか人間に関しては付き合いは深いわけじゃないところで、スタジオに入ったけど、相当PUNPEEも切り込んでくるし、俺も逆にそれ待ちだったからね。PUNPEEに俺を操縦して欲しいという感覚が強かったし、ビートメイカーとプロデューサーの違いという意味でも、PUNPEEはどっちかというとプロデューサー。ラップもできるし、アレンジもできるし、ミックスもできるし、ビートも作れるっていうマルチでそれぞれがすべてハイクオリティな人間だから。PUNPEEのリクエストは、こっちも耳を傾けたし楽しかったね。

PUNPEEさんは、すごい俊敏な印象があります。

tha BOSS:そうだね。俊敏だね。メロウだしね。言葉にすると誤解を招くかもしれないけど、PUNPEEが持ってるポップさって、逆にTHA BLUE HERBではなかなか接近できない世界なんだけど、今回は挑戦してみたいと思ったんだよね。ポップなフィーリングっていうか。ポップにもいろいろあるんだろうけど、PUNPEEのトラックは今回の中ではすごい開かれているというか。この曲が、ここの9曲目にあるかないかで、随分印象が違うからね。一緒にやれて本当に良かったよ。

そうですね。元々のTHA BLUE HERBという存在は、ポップという言葉が多様な意味を持つものであるにせよ、それでもポップという語と結びつく存在ではなかったですし。今回のインタヴューにあたって、ファースト・アルバムをあらためて聴いたんですけど、“孤憤”とか(単刀直入にいえば、BOSSが「業界」じみたMCやメディアをdisった曲)を聴いて、あのアルバムからはじまったのかと思うと、やっぱり今回のアルバムの広がり、そういった多様性には奇跡のようなものを感じてしまいます。

tha BOSS:俺もそう思うよ。このタイトル自体もそうなんだけど、ヒップホップがあったからやっぱりここまで来れたと思うよね。ファーストの頃は自分の居場所を作るために命を張って勝負をかけるという意味では、俺にとってその時代の俺のヒップホップは、俺に力をくれたし、その大義っていうものを信じて生きてきた。けど、それと同時にヒップホップはユナイトする音楽、人と人を繋げる音楽という側面もあって、18年後にやっとここに辿り着けたよね。
 俺の……なんて言うんだろう……俺のTHA BLUE HERBのファーストの頃のアティチュードからの変化に、もしかしたらクエスチョンの人もいるのかもしれないけど、俺は俺の思ったままに生きてるだけなんだよね。俺は俺のこの道で良かったと思う。ヒップホップを長くやってきて、走り続けてきてよかったと思った。こういうオチがあるんだったら、うん、最初に中指立てたことも、そして変化を否定せずに続けてきて良かったなと思ったね。

ただ、ファーストの言葉はたしかに中指も立っていましたが、あのアルバムで確実に「草冠に音と言葉(THA BLUE HERBのロゴ)」の旗も全国に立ちましたし。たんなるネガティヴ・メッセージでは全然なかったですよね。そういう力を持った音楽だった。

tha BOSS:なんで俺がその……中指を立てたかっていうと、自分の居場所が欲しかったのと、日本中のヒップホッパーに対して、ただたんに俺と俺らのヒップホップ、俺らの街、俺がずっと住んでいる札幌という街を認めさせたかったんだよ。それだけのためにずっと中指を立てていたから、認めてくれた人に対しては、さらにそこからツバを吐くような真似は俺はしないし。認めてくれたら逆に相手のことも知ろうとするっていうのが人としての礼儀というか、それが俺にとってのヒップホップのマナーだから。そこを経たあとは……ここに集まった人たちは……みんな友だちだしね。それもヒップホップだよなぁと思う。お互い認め合ったら、なんていうのかな……曲を作ろうよっていう風に14人分帰結したっていうのは、ヒップホップ好きなら当たり前のことだよねと思う。

田我流はね……田我流はもうある意味俺がファンだから。いつか一緒にやりたいっていう、なんて言うの、初めて会ってからずっとだけど……田我流は本当に凄い。やりたいラッパーはもっとたくさんいたんだけど、でも、そういう意味では、この世代では田我流だったね。

今度はフィーチャリングについて伺いたいのですが、それこそ、こうして完成した作品、結実したものを聴けば、これもまた必然だとは思えるのですが、それでも、すごいバランスだと思います。このメンツはたんなる計算では絶対にありえないと思いますし、BUPPON(ブッポン)さんとYUKSTA-ILL(ユークスタイル)さんの楽曲(4“HELL’S BELLS”)ひとつとっても、2人とも昨日今日はじまったMCではないとはいえ、フレッシュでした。

tha BOSS:俺のラップ稼業の中では三重に行けば必ずYUKSTA-ILLとリンクしてたし、BUPPONも何度も俺らを山口に呼んでくれたし。東京のラッパー、山口のラッパー、三重のラッパーは俺にとってはみんな同じ、札幌以外のラッパーだから。そういう中で普通に同じラインで見たら、このふたりは本当に昔から俺のことをサポートしてくれた……なんていうのかな……超大切な友だちっていうか。ふたりに関しては昔から本当に俺のことを励まして受け入れて世話してくれてる人たち。いつか一緒に曲を作りたいと思ってた。だからYUKSTA-ILLもBUPPONも若いけど、俺にとっては友人だし、若い奴にチャンスを……なんてことはまったく思ってない。俺はただ昔からの友だちとマイクリレーをしたかっただけだね。

たしかに、ふたりともソリッドなヴァースをカマしていますね。ソリッドなヴァースをカマしているといえば、もうひとり、札幌のELIAS(エリアス)。この楽曲(6“S.A.P.P.O.R.A.W.”)がまたトンデモなくタイトで……。

tha BOSS:ELIASに関しては……本当に札幌という街で、B.I.G. JOEと俺のふたりがいて……、次は誰だって言えば、ELIASだというのはずっと言われ続けてきて。それは札幌のアンダーグランドでは常識なんだけど。昔から札幌のアンダーグラウンドの最前線にいる。そういう意味では、本当にラッパーとして、大きな世界に出て行くためにやらなきゃいけないことは、これまでずっとやってきている人間だから。フックアップとかではなくて、ELIASに関してはこれが何かのいいきっかけになればいいなと思ってる。YUKSTA-ILLとBUPPONと同じくELIASもアンダーグランドヒップホップの世界では常識なんだけど、まだまだその広がっていく余地がたくさんあるアーティストだと思ってるよ。3人とも違うし、すごいおもしろいし格好良いよね。ELIASは本当ソリッドだよ。

田我流(5“WORD…LIVE”)は前の3人とはまったく違う色合いで……もう……凄いですよね。

tha BOSS:田我流はね……田我流はもうある意味俺がファンだから。いつか一緒にやりたいっていう、なんて言うの、初めて会ってからずっとだけど……田我流は本当に凄い。やりたいラッパーはもっとたくさんいたんだけど、でも、そういう意味では、この世代では田我流だったね。

20代、30代、40代……と、見える視線によって、ヒップホップというのは変化していくわけで。20代のヒップホップを否定する気もないし、格好良い音源も多い。でも、俺らみたいな40代のヒップホップにも価値があると思ってやってるから。

はい(笑)。そして、このアルバムのひとつの白眉だと思います、YOU THE ROCK★を招いての“44YEARS OLD”、トラックはDJ YAS。先ほども触れたファーストのときの東京dis、業界disというのは、具体的に言えば、対「さんピンキャンプ」的な……と言っていいと思うんです。「さんピン」が象徴したものというか。YOU THE ROCK★さんはその象徴の中の、さらに最たるキャラクターといってもいいラッパーですから、本当に驚いたし、感動もしました。これがまた凄いヴァースで……。なので、YOU THE ROCK★さんに関しては、おふたりの出会いから、この曲に行き着く流れまで伺いたいです。

tha BOSS:YOU THE ROCK★と俺がここで一緒に曲をやるっていうのは、いまの子たちにはなんのことやらって感じかもしれないけど、あの時代、90年代の後半からのヒップホップ、THA BLUE HERBの最初からを知っていた人にしてみれば、これぞ奇跡みたいな。俺は彼をdisったし、彼はこの街(東京)でボスのひとりだったから、俺以外の人間からもいろんな攻撃に晒されたし、そこで頑張ってやってて、いま2015年になって……。
 俺はお手手つないで仲良くじゃなかったから、YOU THE ROCK★とかのことをどかして、居場所を作ってきたという気持ちも強くて。そうは言っても、同じ齢というのもあったし、YOU THE ROCK★は俺のことを受け入れてくれてはいたし、この18年の間にも同じ現場でちょいちょいは会ってたんだよね。まあ乾杯して楽しんで話したりとかって、そういうときは別に一杯飲むとかそんなレベルだったけど、そんなことが3年に一度とかのスパンで続いてて。俺もYOU THE ROCK★という人間をだんだん知ってきてたし、今回のタイミングで、ラッパーで誰を誘いたいかって、一番最初が彼だったんだよね。
 曲がりなりにも、俺自身がYOU THE ROCK★という人間を削って上がってきた人間だったから、今度は俺がひとつ、ちゃんと落とし前を付けなきゃいけないと思ってた。他人が介入して「ボスとユーちゃん一緒に曲やんなよ」「俺の曲でユナイトしなよ」という話じゃなくて、仕掛けた俺がその場所を作って、彼に来てもらって、「で、今何を歌うんだ?」っていう場所を俺が作りたかったんだ。それで俺が今年、彼に連絡して、中目黒の居酒屋でふたりでがっつり飲んで、そこはもう超ガチだったね。俺も超ガチだったし、あいつも超ガチだった。2、3時間、はたから見たら口喧嘩してるんじゃないかっていうテンションでずっと話して、俺は「俺はおまえを削ってここまで上がってきた。ここでおまえも一発ライムかまして、俺の曲を聴いてくれてるお客さんたちを俺から奪うつもりでやれや」って言って。彼も「やってやるよこの野郎」みたいな感じになって。それで曲を作った。それで、ビートメイカーはDJ YASで、3人とも44歳だから“44YEARS OLD”っていう曲にしようって。
 あいつも本当にいろいろあったし、俺もあったけど、たぶんYOU THE ROCK★をひとつの、わかりやすいハイプなキャラクター、陽気なピエロみたいなやつという認識で終わってるやつもいたと思うし、彼も意識的か無意識的にかは俺は知らないけど、それを自分のキャラとしてやってた時期もあった。ただ、その後の……あいつの人生で起きたこと、あいつがそれを乗り越えてきたこと、孤独だとか、そういうことっていうのは、まだあいつは語ってないし。でも、俺は語られるべきだと思ったんだよね。それはこれからの若いラッパーたちにとっても、俺とか彼とかみたいな人間がどういう感じで、もう一度、ここでユナイトするのか。YOU THE ROCK★がいままで乗り越えてきたことについてのリリックは残されるべきだと思ったという感じだね。

僕は音源についての取材やインタヴューをするとき、基本的にいつも資料をいっさい読まずに音源から聴くようにしているんですよ。それはまずまったく先入観抜きに楽しみたいと思ってのことなのですが、だからどういうアルバムかまったく考えもせずに聴いていたら、YOU THE ROCK★の声が耳に入ってきて、もうびっくりしました。「ええ!?」って。

tha BOSS:「俺にもあるぜBOSS」って入ってきたでしょ(笑)。間違いない。でも、やっぱり、さっきの話じゃないけど、さんピン時代とか……そういう時代にヒップホップを聴いてた人、いまはKOHHとかの時代だからさ、が、その時代に聴いてたいま30代後半とかの人が、どこで何をしているのかって考えると……それは人それぞれだけど、でも、そういう人たちにもまだやってるぜっていうか、そういうメッセージを投げかけたかったんだよね。20代、30代、40代……と、見える視線によって、ヒップホップというのは変化していくわけで。20代のヒップホップを否定する気もないし、格好良い音源も多い。でも、俺らみたいな40代のヒップホップにも価値があると思ってやってるから。しかも歌っていくのは、その20代の子たちに向けたラップというよりは、自分の目線で歌う、自然と自分の同じ年代の曲になっていくわけで、そういう時代にいた人たちに、俺とYOU THE ROCK★がやってるぜっていう。もう一度クラブに来いとは言わないけど、「もう一回俺らのヒップホップを聴いてみないか?」みたいな。彼を誘った時点で、そういうメッセージがあるよね。彼もすごいさらけ出してリリック書いて、俺のオファーをシリアスに重く受け止めてくれたから、やっぱり誘ってよかったなと思う。

客演に関して、もうひとり。同じく札幌のB.I.G. JOE(6“WE WERE,WE ARE”)。これは顔合わせのおもしろさという次元の話ではなく、ヴァースのクオリティーが圧倒的でした。

tha BOSS:B.I.G. JOEのヴァースは……神がかってたね。本当に……それこそB.I.G. JOEは俺がラップやる前からの付き合いだから、20年以上の付き合いになるけど。この人と同じ街でラップをやり続けて、こうやってお互い、いまもこうして一緒にレコーディングできているのは素晴らしいことだよね。本当にもう……神がかったバースを残してくれて感謝してる。

今度はアルバムで扱われるトラックについても少し伺いたいのですが、これまで歌われたことのない、BOSSさんの幼少期の光景が歌われたり(“REMEMBER IN LAST DECEMBER”)もしています。こういったことも、僕には少し不思議な気がしました。

tha BOSS:THA BLUE HERBではそこまでいけないからね。自分のパーソナリティーまでは曲にならないから、そういうとこもやっぱり違うよね。書いてるトピックが。

それってなんでなんですかね。要するにお互い何もかも知り尽くしているO.N.Oさんのビートではなく、初めてのトラックメイカーたちとの中で、そういうトピックが出てくるというのは……

tha BOSS:それはそうだよ。O.N.Oとだからというわけではなくて、THA BLUE HERBとしてやってるわけだから。THA BLUE HERBにはTHA BLUE HERBっていう人格があるんだよ。97年に「SHOCK-SHINEの乱」から始まったTHA BLUE HERBって存在があって、それは97年に産まれた存在で、そこから成長して、のし上がっていくわけだよ。でも、これに関しては俺だからね。俺は97年にマイク稼業を始めたけど、そこが俺の始まりではないっていうか。そこの違いはやっぱりあるよね。

ああ、なるほど。そう伺うと、それもそうですね。ちなみに、このアルバムのライヴはやるんですか?

tha BOSS:やる。THA BLUE HERBで12月からリリースツアーを始めるよ。THA BLUE HERBの曲たちの中に、この曲が入っていく。そういうことになるよ……。今言ったTHA BLUE HERBの世界観と俺個人の世界観が違うという中で、それがライヴの中でどう混ざっていくのかが楽しみなところだよね。

では、時間が迫ってきたのでシメたいと思います。『IN THE NAME OF HIPHOP』、ヒップホップの名のもとに……というのは、このアルバムのタイトルとして、いかにもふさわしいと思いました。先ほども曲名に挙がりました“SHOCK-SHINEの乱”ではじまったTHA BLUE HERB。そのMCのBOSSさんが、いまこうして全国のビートメイカー、ラッパーとユナイトして、1枚のヒップホップアルバムを作り上げたという……これは制作当初からのコンセプトだったのですか?

tha BOSS:だんだん途中からそう思い始めていったんだよね。アルバム制作中も俺はこのパソコンでずっと仕事をしていたんだけど(インタヴュー前もBOSS氏はノートパソコンに向かって仕事しており、すぐ前にパソコンがあった)、作業の終盤に入ってくると、その受信トレイに入ってくる名前がさ……KRUSHさん、PUNPEE、grooveman Spot、YAS、YOU THE ROCK★、BUPPON、B.I.G. JOE……って、いろんな人と同時にやり取りしてたからさ。うわ~、この並びすげぇなと思って。本当にヒップホップの名のもとにとしか言いようがないなと思ったんだ。

ありがとうございました!

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History of TBH

 北海道・札幌をリプレゼントするTHA BLUE HERBのラッパー、tha BOSSが、初のソロアルバム『IN THE NAME OF HIPHOP』をリリースした。これまでにもコラボ経験のあるDJ KRUSH、DJ YASといった顔触れから、PUNPEEやHIMUKIといったまったく新しいメンツ、客演には田我流やYOU THE ROCK★など、全国のビートメイカー、ラッパーを招いた画期的な作品である。
 THA BLUE HERBについてはいまさら説明されなくてもよく知っているという方は、ぜひこの画期的なアルバムを手にとり、これをいま聴けることの喜びを共有したい。
 だが、最近になってTHA BLUE HERBを聴き始めた(tha BOSSを知った)という方は、tha BOSSが今度のソロ作品を出すまでの経緯を把握すれば、このアルバム『IN THE NAME OF HIPHOP』をより楽しめることがあるように思うので、以下に少し書いてみたい。

 18年前に始まったTHA BLUE HERBが世に放ったファースト・アルバム『STILLING STILL DREAMING』(1998)は、リリース当時から熱烈な賛否を持って迎えられた。
 これはBOSS THE MC(その頃はこう名乗っていた。以下BOSS)とビートメイカーのO.N.Oの2人の「シンプルな音と言葉」による、東京中心のヒップホップシーンへのほとんど宣戦布告といってもいい1枚だった。たしかにその頃のBOSSの言葉は、ファースト・アルバムを一聴すればわかるように、かなり攻撃的である。ヒップホップでのdisは具体的であるほど意味を持つものだから、攻撃の対象は聴いていても明らかだったし、当時のBOSSのリリックはほのめかしという類のものではなかった。
 そうである以上、そこに賛否の「否」が生まれるのは必然である。ヒップホップもショービジネスであり、そのdisがTHA BLUE HERBの名を広く流布したひとつの大きな要素と考えれば、そこにはBOSSの戦略めいたものもあったのかもしれない。だが、それはやはりプロレスでいうストロング・スタイルのようなショー的なものではなく、極端な話生きるか死ぬかの類の、もっと切迫したものであった。

「北から陽が昇ることに慣れてないお前達は俺達の存在そのものにまだ戸惑っているんだろう?」

 “ONCE UPON A LAIF IN SAPPORO”におけるBOSSのこの挑発的な言葉は、それを象徴しているだろう。だが、同時にこういった挑発が生む「否」と「賛」は表裏の関係にある。
 初期のTHA BLUE HERBに対する「賛」には、列島の「北」から下すべてに中指を立てるようなリリックが一役も二役も買っているといっていい。まだ無名のハングリーな新人が、優遇された有力な相手を叩きのめすのがカタルシスであるのは言うまでもない。言わば、強烈なカウンターによるノックアウト劇。それが初期のTHA BLUE HERBの賛否の「賛」にはあった。
 ここに書いた「強烈なカウンターによるノックアウト劇」の意味はシンプルで、北海道の無名のTHA BLUE HERBの記念すべきファースト・アルバム『STILLING STILL DREAMING』は売れたのだ。そのヒットは、彼らが地方でくすぶっているB-BOYのハートを鷲掴んだだけでなく、それまで日本人のラップを聴かなかったリスナーまでをも一気に取り込んだゆえでもあった。
 筆者は当時からヒップホップや日本人のラップを聴いていたし、アーティストによってはライヴを見たこともあったが、クラブに日常的に顔を出すというタイプではなかった(結局、いまもほとんど変わっていないのだが)。レディオヘッドやベックやアンダーワールドを聴きながら日本人のラップにも興味津々な、ただ自分にフィットするレベル・ミュージックに出会いたいという願望を抑えられない、つまり、どこにでもいる至極普通の学生だった。BOSSの言葉やTHA BLUE HERBの音楽が取り込み光を当てたひとつにあるのは、パーティのノリが苦手で(楽しみ方を知らないだけなのだが)、鬱屈した煮え切らない日常の中で自分のためのレベル・ミュージックを探す筆者のような人間だったと思う。
 上に引用したリリックにある「北」という語が、北海道・札幌を拠点に活動する彼らのフッドを指すのはいうまでもないわけだが、それはまた「魂の極北」といったときに使われる、ある種の極限的状況を彷彿させる機能も果たしていた。同アルバムの収録曲の“STOICIZM”というタイトルや、THA BLUE HERBファンが好きな曲の1位、2位にランクするだろうクラシックス“BOSSIZM”の「焦点の合わぬ目はそのまま明け方、氷点下の証言台に立つ」といったリリックは、すべて「極北」に含まれる“北”という語が象徴するものと響き合っている。
 THA BLUE HERB初期のこうしたBOSSの言葉群は、自身に本質的な変革を導くには、まずその(つまり自分自身の)極北で孤独を知ることだという普遍的な訴えであり、その訴えの場として北海道はふさわしい詩的フィールドだったと言っていいかもしれない。

 言うまでもないことだが、THA BLUE HERBの音楽がB-BOY以外のリスナーを取り込んだことを語るためには、ビートメイカーのO.N.Oの存在も不可欠である。これはTHA BLUE HERBの音楽の前提だ。つまりTHA BLUE HERBは=BOSSだが、まったく同じ強度で=O.N.Oでもある。それは最新アルバム『TOTAL』まで微塵も揺らがないTHA BLUE HERBの不文律だ。
 THA BLUE HERBでO.N.Oが鳴らすビートは圧倒的なドープなヒップホップであり、日本でこんなにソウルフルな音を鳴らすビートメイカーが他にいるだろうかと思わせるものだが、同時に彼の描き出す、たぶんな静謐を含んだ高揚や荒涼は、たとえばアイス・ランドのロックバンド、sigur rósが作り出す美しい奥行きを持った音像を筆者には彷彿させる。
 これは個人的な見解だが、O.N.Oは演奏家というより建築家に近い。O.N.Oが打ち出すビートは、機能美と前衛、未来的な遺跡とでもいった一見矛盾を孕みながら、だが確かにそれは圧倒的な存在感を持って目の前にあるのだという、ある種の印象的な現代建築を思わせるのである。BOSSのリリック同様、O.N.Oのビートの完成度と中毒性があまりに高いからこそ、ヒップホップのファンに限らずTHA BLUE HERBの音楽は幅広く聴かれているのである。

 BOSSの言葉はセカンド・アルバム『Sell Our Soul』でまた別のベクトルへの深化へ向かうのだが、それでもいまだ挑発的であり、彼らの孤独な進軍は続いていた。

 「はっきり言って同業者がつくった曲はつまらん。さぁこれでまた敵さんが増えてくれるかな?」

 “STILL STANDING IN THE BOG”でBOSSがラップする、このワンラインをとってもそれは明らかだろう。この時点で曲のタイトル通り、彼らはまだ泥濘(BOG)に立っているわけだ。
 THA BLUE HERBはこうしてふたりだけで他を寄せつけぬスタンスではじまり、連帯を拒み、孤独こそ美学と信じるヘッズを数多く培養していた。筆者は信者という表現を好きではないし正確と思わないのだが、THA BLUE HERBがそういう語られ方をするアーティストであったことは否定できない。そうしたヘッズにとって、THA BLUE HERBのすべての音源、BOSSのヴァースはすべて貴重であり、リアルであり真実だった。

              ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎

 3rdアルバム『LIFE STORY』(2007)はTHA BLUE HERBのターニングポイントとなる作品だ。

 「今回は策は立てない 水面に硬い石を投げるだけさ 伝わる波紋が辿る場所は果てない 音楽の力に全て任せた」
 「今や俺等とは君を含めた四人だ」(“The Alert”)

 「勝ちたい負けない ただそれだけじゃ レースを生き残る事は諦めな」(“Hip Hop番外地”)

 上に引用したリリックにあるように、ここにもはや策(つまり戦略)はないし、具体的な敵が祭り上げられているわけでもない。そうかと言って日和ったり客演が参加しているわけではないし、全国的に認知されて評価を勝ち得たという王者や勝者の余裕が歌われているわけでもない(収録楽曲“Motivation”に〜挑戦者のマナー噛み付いたら放さず〜というリリックがある)。
 そうではなく『LIFE STORY』において、O.N.OのビートとBOSSの言葉、THA BLUE HERBの音楽はシンプルに、さらに純化されたのだ。そして「音楽の力に全て任せた」というリリックを証明するように、このアルバムを引っさげTHA BLUE HERBの音楽は、BOSSとDJ DYEの1MC1DJという形で全国を旅する。その模様は仙台から宮崎までのツアーの行程を収めた“STRAIGHT DAYS/ AUTUMN BRIGHTNESS TOUR '08”(2009)、また2010年の春以降の(北海道の北見から沖縄の辺野古の米軍基地の境界ギリギリまでの)ツアーの模様を収録した“PHASE 3.9”というふたつのDVD作品で確認できる。


 ひとりのMCとひとりのビートメイカーで作られた音楽を持って、1MC1DJで全国を回る。最小限の構成で作られるTHA BLUE HERBの音楽だが、膨大な数のオーディエンスの前で(なんせ野外フェスまで含む日本全国のツアーだ)膨大な言葉を吐くことで、その残響は否が応でもTHA BLUE HERBの言葉を変質させていく(これは日本刀を鍛えるのに似ている気がする)。その変質を文章で説明するのは難しいが、上のふたつの映像作品はその変質の過程が見て取れることでも興味深いものだ。

 実に3年半におよぶツアーを終え、THA BLUE HERBは新たなアルバムの制作に入る。来たるべきアルバムは長いツアーで言葉を鍛え上げ、そして言霊の力、重さ、怖さを誰よりも熟知したBOSSというMCが、2011年3月11日を経て書き上げたものでもある。その4thアルバムに、彼らは『TOTAL』(2012年)と名付けるのだ。

              ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎

 駆け足でTHA BLUE HERBの4thアルバムまでの流れを見てきたが、今では以前よりBOSSのヴァースは身近に聴ける(我々はTHA BLUE HERBのツアーに行くことができる)ようになったし、映像作品も増えた。もちろん時を経るごとに、BOSSが客演で参加した楽曲も増えていった。THA BLUE HERBが始まって18年と考えれば、そのとき生まれた子供が高校を卒業する年である。そう考えれば、人が成長するように、アーティストが変化するのも当たり前のことだ。しかし、それでも、THA BLUE HERBが初めて他のアーティストを自分たちのブースに迎え入れるのは、昨年2014年の般若との楽曲“NEW YEAR'S DAY”において。まだわずかに1年前のことなのである。そして2014年12月26日、東京・恵比寿のリキッドルームにて、tha BOSSと般若による1MC1DJ同士によるショウケース「ONEMIC」が開催され、この夜のステージでBOSSは全国のビートメイカーを招き、ソロアルバムを制作すると発表したのだ。
 そう考えれば、tha BOSSのソロアルバムが決して一朝一夕に生まれたものではないことがわかるだろう。

 THA BLUE HERBは=BOSSだが、まったく同じ強度で=O.N.Oで、それはTHA BLUE HERBの不文律だと前述した(今ではDJ DYEも然りだろう)。この不文律にはいまもいささかの揺らぎも感じない。だが、同時に、「誰彼構わず中指を立てていた」(これは今度のアルバムでBOSS自身が言っていた言葉だ)BOSSが、今では魅力的なアーティストであればユナイトすることを疑いなく知っている。またごく自然な欲求として、BOSSとコラボして欲しいと思うような魅力的なアーティストが日本に数多いることも知っている。
 tha BOSSの初のソロアルバム『IN THE NAME OF HIPHOP』は、タイトル通り“ヒップホップの名の下に”18年の歳月をかけて、北海道は札幌のTHA BLUE HERBから広がった美しい波紋なのである。

(山田文大)

JAH SHAKA JAPAN TOUR 2015 - ele-king

 昨年ジャー・シャカが東京でプレイしたとき、日本には〈リヴィティ・サウンド〉の3人、マムダンス、DJフェット・バーガーらがいた。それぞれ現代のテクノ、グライム、ディスコ・ダブを語る上で外すことはできないプレイヤーたちだ。そこには重低音という共通点があり、そのタイム・ラインの上流にはジャー・シャカがいる。ステージ上で踊るシャカを見ながら、音だけはなく、その歴史の広がりにも圧倒されてしまった。
 今回の来日でジャー・シャカは6都市を巡る。東京公演は11月2日に開催。なんとオープニングからラストまで彼が巨大なサウンド・システムの前に立つ。
そのセレクトを通して、日本のどこかでダブの歩んできた道を感じてみたい。ちなみに、王様は30年前、こんな姿をしていた。



King of Dub
JAH SHAKA
DUB SOUND SYSTEM SESSIONS JAPAN TOUR 2015

- An all night session thru the inspiration of H.I.M.HAILE SELASSIE I -

東京公演

日時:2015.11.2 (MON/Before Holiday) open/start: 23:30
料金:adv.3300yen door 3800yen
会場:代官山UNIT
出演:
JAH SHAKA
JAH IRATION SOUND SYSTEM + JAH RISING SOUND SYSTEM

Saloon:
E-JIMA(DISC SHOP ZERO)
RIBE WORKS(ORANGE STREET)
YO-JI (UP DOWN RECORDS/MILITANT ITES),
JUNGLE ROCK
KENJI HASEGAWA
info.:
UNIT
03-5459-8630
https://www.unit-tokyo.com

Ticket Outlets:NOW ON SALE
PIA (0570-02-9999/P-code:277-802)、LAWSON (L-code:73499)、
e+ (UNIT携帯サイトから購入できます)
clubberia/https://www.clubberia.com/store/

渋谷/TECHNIQUE (5458-4143)、disk union CLUB MUSIC SHOP (3476-2627)、Coco-isle (3770-1909)
原宿/GLOCAL RECORDS (090-3807-2073)
代官山/UNIT (5459-8630)
下北沢/DISC SHOP ZERO (5432-6129)、JET SET TOKYO (5452-2262)、disk union CLUB MUSIC SHOP (5738-2971)
新宿/Dub Store Record Mart (3364-5251)、ORANGE STREET (3365-2027)、disk union CLUB MUSIC SHOP (5919-2422)、Reggae Shop NAT (5337-7558)
三軒茶屋/ふろむ・あーす & カフェ・オハナ(5433-8787)
吉祥寺/disk union (0422-20-8062)
町田/UP DOWN RECORDS (042-725-8325)
横浜/北中45レコード(045-324-3452)
Jar-Beat Record (https://www.jar-beat.com/)

JAH SHAKA JAPAN TOUR 2015
10.31 (土) 沖縄 残波 JAM-----https://zanpajam.org/
11.02 (月・祝前日) 東京 UNIT-----https://www.unit-tokyo.com
11.03 (火・祝日) 横浜 ex Bodega-----https://www.facebook.com/events/1223377354354382/
11.06 (金) 大阪 ROCKETS---https://nambarockets.com/
11.07 (土) 名古屋 X-HALL -----https://x-hall.jp/
11.08(日)福岡 MUSK-----https://www.facebook.com/CLUBMUSK

Total info: dbs-tokyo.com

(出演者)

JAH SHAKA
ジャマイカに生まれ、8才で両親とUKに移住。'60年代後半、ラスタファリのスピリチュアルとマーチン・ルーサー・キング、アンジェラ・ディヴィス等、米国の公民権運動のコンシャスに影響を受け、サウンド・システムを開始、各地を巡回する。ズールー王、シャカの名を冠し独自のサウンド・システムを創造、'70年代後半にはCOXSON、FATMANと共にUKの3大サウンド・システムとなる。'80年に自己のジャー・シャカ・レーベルを設立以来『COMMANDMENTS OF DUB』シリーズを始め、数多くのダブ/ルーツ・レゲエ作品を発表、超越的なスタジオ・ワークを継続する。
30年以上の歴史に培われた独自のサウンドシステムは、大音響で胸を直撃する重低音と聴覚を刺激する高音、更にはサイレンやシンドラムを駆使した音の洪水 !! スピリチュアルな儀式とでも呼ぶべきジャー・シャカ・サウンドシステムは生きる伝説となり、あらゆる音楽ファンからワールドワイドに、熱狂的支持を集めている。heavyweight、dubwise、 steppersなシャカ・サウンドのソースはエクスクルーシヴなダブ・プレート。セレクター/DJ/MC等、サウンド・システムが分業化する中、シャカはオールマイティーに、ひたすら孤高を貫いている。


 クラシカルな音楽的素養をバックボーンとして、何にとらわれることもなく──ある意味では“わがまま”なまでの自由さで──自らの表現のフォームを築いてきたプロデューサー、ジュリア・ホルター。アンダーグラウンドの知性派レーベル〈リーヴィング〉等からのリリースを通じてシーンに新たな女流の系譜をつけ加えた存在のひとりである。

 今年リリースされた『ハヴ・ユー・イン・マイ・ワイルダーネス(Have You In My Wilderness)』は、〈ドミノ〉と契約してシンガーとしてのアイデンティティを確立したアルバム。ある意味ではキャリアにおいてもっともシンプルな作品だが、チェンバー・ポップの固定概念を崩す発想が随所に光っている。

 さて、そのジュリア・ホルターの初来日公演が決定した! ジュリアナ・バーウィックの来日に心躍らせたのも昨日のことのようだが、ようやくお目にかかれるホルターがどんなセットを見せてくれるのか。各都市の共演者たちにも注目したい。

■ flau presents: Julia Holter Japan Tour 2015

サイト:
https://www.flau.jp/events/juliaholter2015.html

ツアー詳細:

11/24 (火) 京都
@ METRO
open/start 18:30/ 19:30
adv./door 4,000 / 4,500yen(+1D)
共演:Cuushe
チケット取扱:
チケットぴあ (Pコード:272-626) TEL0570-02-9999
ローソンチケット (Lコード:55399)
e+ (https://eplus.jp/) (PC・携帯 共通)
メール予約・お問い合わせ:event@flau.jp

11/25 (水) 大阪
@ Conpass
open 18:30 / start 19:30
adv. 4,000 / door 4,500yen(+1D)
共演:Madegg、Noah
チケット取り扱い:
チケットぴあ (Pコード:272-634) TEL:0570-02-9999
ローソンチケット (Lコード:55294)
e+(イープラス) (PC・携帯 共通)
メール予約・お問い合わせ:event@flau.jp

11/26 (木) 東京
@ WWW
open/start 18:30 / 19:30
adv./door 4,500 / 5,000yen (+1D)
共演:Cuushe、Rayons with Predawn
PA:福岡功訓(Fly sound)
SHOP: LINUS RECORDS
チケット取り扱い:
チケットぴあ (Pコード:272-562) TEL:0570-02-9999
ローソンチケット (Lコード:70466)
e+(イープラス) (PC・携帯 共通)
お問い合わせ:03-5458-7685(WWW)

■Julia Holter

LA出身の女性シンガーソングライター/マルチ・インストゥルメンタリスト。アヴァンギャルド、ベッドルーム・ポップ、オペラ、クラシックなど様々な音楽的影響を融合させ、新しい感性でポップミュージックを更新する女性アーティスト、真のDIYコンポーザー。数々の限定リリースと共に「Tragedy」「Ecstasis」の 傑作アルバム2枚を発表。Dominoに移籍後、初のスタジオアルバムとなる『Loud City Song』をリリース。Karen DaltonのトリビュートアルバムやLinda Perhacs44年ぶりの新作への参加を経て、今年9月に待望のニューアルバム『Have You in My Wilderness』をリリース。昨年グラミー賞を受賞したプロデューサーCole Greif-Neilと共に地元ロサンゼルスでレコーディングされたJulia Holter史上最もインティメイトな傑作アルバムが完成した。

'Feel You'

 なんといってもバカバカしい。そして謎の高クオリティ。何の見返りもなしに、いまの日本のどこにこんなことのできる余裕があろうというのか……? いや、敬意を込めて。

 1985年に第1作めが公開され、一大ブームを巻き起こした傑作SF映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズ。第2作となる『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』では、主人公マーティが30年後の未来──2015年10月21日を訪れる。そう、日本時間にして今日この日である。

 国内でも本シリーズに登場する車型のタイムマシン「デロリアン」の再現イベントなどが大きな話題となっているが、その『PART2』劇中にて“2015年”に上映されている『ジョーズ19』(歴史は異なる道をたどったが──)と、実際に存在している『ジョーズ4 復讐編』の間に存在するはずの『ジョーズ5~18』を勝手に製作するという、ちょっとどうでもいい作業にかまけている人々もいるようだ。

『JAWS 5 :NEW HOPE』~『JAWS 18:WORLD WAR JAWS』
アーカイヴ
https://jaws-complete.tumblr.com/



 禁断の多数決……どこかできいたことのある名前である。

 ご存知、スティーヴン・スピルバーグ監督の大ヒット映画シリーズ『ジョーズ』。平和なビーチを襲うホオジロザメの恐怖をサスペンス的に描くスリラー映画の傑作だが、禁断の多数決によって撮られた、架空の欠番を埋める第1作めの名は『JAWS 5 :NEW HOPE』。カッコ笑と付け加えたい出落ちタイトルだが、笑えないほどよく作られた笑える作品で、まずは発句として、サメによる凄惨な襲撃事件とその復讐劇というモチーフがなぞられている。
 そうした笑いやお色気、また、うす柔らかいサイケデリアの中に現実世界のチープさないしはフェイクさをぺらりと露出させるこのバンドの手つきそのままに描き出された、奇妙なパロディだ。『JAWS 9 :SUPER DUPER』などフェイクドキュメンタリーとバラエティ番組を適当に組み合わせたような作品も、『ジョーズ』その後のシュミレーションとして穿っている。

 そして音楽ももちろんすべて禁断の多数決。シンセポップの甘美なリヴァイヴァル期は過ぎ去ったが、なるほどモードとしてではなく、彼らは本質的にシンセポップが好きなのだということが了解できる。ただチープなのでも懐古的なのでもない、フェティッシュに選択されたその音色が意外に沁みる。

 しかし、なんというか、これをつくってどうするんですか? と優秀な就活生諸氏などはツッコむことだろう。売り物でも、なにかのプロモーションでも、また、この企画自体をとくに宣伝しようという感じでもない。これだけの気合いが入っていながら、ソロバンの音がきこえてこない。つまりは損得や「いいね!」欲しさなどではないのだ。彼らはアーティスト。本気で遊ぶことのできる人々である。大人が、いい歳をして、なぜに──と頭の片隅では思いながらも、実験もハッタリもある、作品としての居ずまいをキリっと放ったこの楽しい「駄菓子屋映画」、そして彼らのどこかしら突き抜けたハローならぬグッバイワーク・メンタリティに一票を投じたい。

 さて、そもそもの『BTTF』を忘れかけてしまいそうだが、2015年を祝い呪うこの無償の作品群/作品愛にリスペクトを表しつつ、気まぐれに再生してみるとしよう。いまがご帰宅途中ならば、乗り換えまでに1本観られるかもしれません。

追記:
禁断の多数決は、もともとシアトリカルなライヴを行ったり映画をアルバムのモチーフにしたりと、映像表現へのモチヴェーションを強く抱いたバンドだったが、最近は本当にヴィジュアル制作に熱を傾けているようだ。中心メンバーのひとりであるほうのきかずなりも、近々アンディ・ウォーホルの『Kiss』にインスパイアされたというエロティックで幻想的なアートフィルムをリリース予定で(https://crbn.jp/)、音楽はもちろん禁断の多数決。サウンドトラックへと関心が向いているのも興味深い。そちらは80分に及ぶ「本腰の」作品であるようで、扇情的なトレーラーにびびりながらも期待される。

Kiss me, Kiss me, Kiss me
監督:ほうのきかずなり
出演:北見えり、みほの、湊莉久、水野しず、御茶海マミ
音楽:禁断の多数決
挿入歌:hakobune、Masaki Batoh、Rippei
カバーイラスト:大島智子
デコレーション:OLEO

詳細 https://crbn.jp/

禁断の多数決『Kiss feat.あの (ゆるめるモ!)』MV


予告編『Kiss me, Kiss me, Kiss me』



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