「You me」と一致するもの

Thundercat - ele-king

 4月に新作『It Is What It Is』(リディム・イズ・リディムの名曲とおなじ慣用句ですね)をリリースするサンダーキャットが来日! 大阪・名古屋・東京の3都市をまわることが発表されました。アルバム発売直後という絶妙のタイミングでの公演です。これは見逃せニャい。しっかり予習しておきましょう~。

THUNDERCAT
大注目のニューアルバム『IT IS WHAT IT IS』をひっさげ
待望のジャパンツアー開催を発表!!!
チケット主催者先行は本日18時スタート!!!

THUNDERCAT JAPAN TOUR 2020
4月21日(火) 大阪 BIGCAT
4月22日(水) 名古屋 CLUB QUATTRO
4月23日(木) 東京 THE GARDEN HALL

TICKETS : ADV. ¥6,800+1D
OPEN 18:00 / START 19:00

※未就学児童入場不可

その年を代表する傑作として名高い前作『Drunk』で、超絶技巧のベーシストから正真正銘の世界的アーティストへと飛躍を遂げ、唯一無二のキャラクターで音楽ファンを虜にするサンダーキャットが、3年振りのニューアルバム『It Is What It Is』と共に単独来日決定!

ベースプレイヤー、ヴォーカリスト、ソングライター、メロディメイカーなどなど、そのどの肩書きにおいても超一流の天才&奇才、サンダーキャット。音楽だけでなく、水面から顔をつき出したジャケ写でも話題をさらった前作『Drunk』から3年、盟友フライング・ロータスとの共同プロデュースで遂に完成した待望のニューアルバム『It Is What It Is』には、チャイルディッシュ・ガンビーノ、スティーヴ・レイシー、スティーヴ・アーリントン、カマシ・ワシントン、リル・B、タイ・ダラー・サイン、バッドバッドノットグッド、ルイス・コール、ザック・フォックスら、超豪華アーティストが勢揃い! アーティスト達からの絶大な信頼を物語る驚愕のゲスト陣もさることながら、そのベースプレイ、見事なソングライティング、美しい歌声には、さらなる磨きがかかっている。デニス・ハム(key)とジャスティン・ブラウン(dr)という、これまた間違いない超一流ミュージシャンによるトリオ編成での鉄板パフォーマンス。超絶即興演奏もお約束! さあこの来日公演、見逃すわけニャ~いかないでしょう! 完売必至!!

TICKET INFO
全国共通 チケット先行
2/5 (水) 18:00〜 BEATINK 主催者先行
2/7 (土) 12:00〜 イープラス最速先行 *2/12 (水) 23:59まで

4月21日(火) BIGCAT
2/17 (月) 12:00〜2/20 (木) 18:00 イープラス先着先行
2/22 (土) 一般発売:
チケットぴあ (P:178-293) *English avilable、ローソンチケット (L:55574)、BEATINK
INFO: SMASH WEST 06-6535-5569 [https://smash-jpn.com]

4月22日(水) NAGOYA CLUB QUATTRO
2/13 (木) 10:00〜2/17 (月) 18:00 チケットぴあ *English avilable / ローソンチケット 先行
2/15 (土) 12:00〜2/17 (月) 18:00 QUATTRO WEB先行
2/17 (月) 12:00〜2/20 (金) 18:00 イープラス・プレオーダー
2/22 (土) 一般発売:
イープラスチケットぴあ (P:176-246) *English avilable、ローソンチケット (L:43092)、LINE TICKETクアトロ 店頭BEATINK
INFO: 名古屋クラブクアトロ 052-264-8211 [https://www.club-quattro.com/]

4月23日(木) THE GARDEN HALL
2/13 (木) 12:00〜2/16 (日) 23:00 ローソンチケット プレリクエスト
2/13 (木) 11:00〜2/20 (木) 11:00 チケットぴあ プレリザーブ *English avilable
2/17 (月) 12:00〜2/20 (木) 18:00 イープラス・プレオーダー
2/22 (土) 一般発売:
イープラスローソンチケット (L:73722)、チケットぴあ (P:177-137) *English avilable、BEATINK
主催: SHIBUYA TELEVISION
企画制作・INFO: BEATINK 03-5768-1277 [www.beatink.com]

サンダーキャット超待望の最新作『It Is What It Is』は、4月3日(金)に世界同時リリース! 国内盤CDには、前作の大ヒット・シングル “Show You The Way” でも共演したマイケル・マクドナルド参加のボーナストラック “Bye For Now” も追加収録され、歌詞対訳と解説書が封入される。また数量限定でTシャツ付きセットも発売決定。基本の黒ボディのデザインに加え、BEATINK オフィシャルWEBサイト限定の赤/白ボディデザイン(受注生産:3月15日予約〆切)も登場! アナログ盤は、レッド・ヴァイナル仕様、クリーム・ヴァイナル仕様、特殊パッケージ入りクリア・ヴァイナル仕様、特殊パッケージ入りピクチャーディスク仕様の4種類が発売される。

label: BEAT RECORDS / BRAINFEEDER
artist: Thundercat
title: It Is What It Is
release date: 2020/04/03 FRI ON SALE

国内盤CD BRC-631 ¥2,200+税
国内盤CD+Tシャツ BRC-631T ¥5,500+税
国内盤特典:ボーナストラック追加収録/解説書・歌詞対訳封入

TRACKLISTING
1. Lost In Space / Great Scott / 22-26
2. Innerstellar Love
3. I Love Louis Cole (feat. Louis Cole)
4. Black Qualls (feat. Steve Lacy, Steve Arrington, & Childish Gambino)
5. Miguel's Happy Dance
6. How Sway
7. Funny Thing
8. Overseas (feat. Zack Fox)
9. Dragonball Durag
10. How I Feel
11. King Of The Hill
12. Unrequited Love
13. Fair Chance (feat. Ty Dolla $ign & Lil B)
14. Existential Dread
It Is What It Is (feat. Pedro Martins)
16. Bye For Now (feat. Michael McDonald) *Japanese Bonus Track

Kamasi Washington - ele-king

 本日、カマシ・ワシントンが未発表曲 “The Bombshell’s Waltz” を Amazon Prime 限定で配信している。同曲は2007年のアルバム『The Proclamation』のために録音されたもののお蔵入りになっていた楽曲で、今回、カマシを追ったドキュメンタリー映画『Kamasi Washington Live at The Apollo Theater』公開の発表にあわせ、めでたく解禁されることとなった。同映画は2月6日より、おなじく Amazon Prime 限定で公開予定。カマシの2018年作『Heaven And Earth』のレヴューはこちら、カマシ本人へのインタヴューはこちら

KAMASI WASHINGTON
カマシ・ワシントン、ドキュメンタリー映画『Kamasi Washington Live at The Apollo Theater』が Amazon Prime で2月6日に公開決定!
未発表曲 “The Bombshell’s Waltz”も Amazon Music 限定で本日から配信開始!

新世代ジャズ勃興を象徴するサックス奏者、カマシ・ワシントンは、Amazon Prime 限定で2月6日にドキュメンタリー映画『Kamasi Washington Live at The Apollo Theater』を公開することを発表した。また、映画の発表に合わせて未発表曲 “The Bombshell’s Waltz” も Amazon Music 限定で本日から配信開始された。

米ポピュラー音楽を語る上では外せないNYハーレムに位置する伝説的音楽ホールのアポロシアターでのコンサートでのライブの様子やそのライブへの準備に取り組む姿、ハーレムのランドマークを訪れている様子などに密着したドキュメンタリー映画となっている。ライブでは『The Epic』『Harmony of Difference』『Heaven and Earth』など各アルバムからの楽曲が披露されている。

この映画の公開は、『The Epic』と『Heaven and Earth』が The New York Times、Rolling Stone、Pitchfork など数多くのメディアに「過去10年間のベストアルバム」と称賛されたワシントンの一連の栄光を締めくくるものとなる。ワシントンは昨年、『Heaven and Earth』にインスパイアされたショートフィルム『As Told To G/D Thyself』がサンダンス映画祭2019で初公開され称賛の嵐を浴びたほか、ツアーも積極的に行っておりここ日本でもライブはソールドアウトとなるなど、今ジャズ界を率いる絶対的アーティストとなっている。

label: Young Turks / Beat Records
artist: Kamasi Washington
title: Heaven and Earth
release date: NOW ON SALE

国内盤2CD: YT176CDJP ¥3,000
高音質UHQCD仕様/歌詞対訳・解説冊子封入
輸入盤4LP: YT176 ¥OPEN

Various ‎Artists - ele-king

 『Vanity Box』
幻の音源が一挙再発~動き続ける音の先端だけをとらえた記録

〈ヴァニティ・レコーズ〉ほど謎と伝説に満ちた日本のインディ・レーベルはないだろう。一昨年に亡くなった阿木譲氏が『ロック・マガジン』の刊行と並行して78〜81年に主宰した大阪のインディ・レーベル(おそらくJ-インディ界最古)であり、そこからは、フューがリード・ヴォーカルをとったアーント・サリー、エレクトロニック・ユニットのDADAやシンパシー・ナーヴァスなどの作品がリリースされていた……熱心なロック・マニアであっても、おそらくその程度が平均的な知識であり、カタログ中の数枚はきいたことがある……といったところではなかろうか。

 〈ヴァニティ〉からは4年弱の間に11枚のLP(うちひとつは2枚組オムニバス・アルバム)、3枚の7インチ・シングル盤、6本のカセット・テープがリリースされ、その他にもロック・マガジンの付録として世に出た12枚のソノシート(79〜82年)もあった。タイトル数としてはたいした数ではないが、なにしろ各タイトル(ソノシート以外)のプレス枚数が各300〜500枚であり、カセット作品に至っては数十本程度のコピー商品だったため、リアルタイムで全てを聴いていた者は極めて稀だったはずだ。
 もちろん私も例外ではない。最初に聴いたのはアーント・サリー『アーント・サリー』(79年)だったが、それは友人にコピーしてもらったカセットであり、現物を入手したのは84年、コジマ録音からの再発LPだった。80年代にはシンパシー・ナーヴァスやダダなどいくつかの中古盤やコピー・カセットを入手したが、全作品制覇はとても無理だった。6本のカセット作品に至っては、全く聴いたことがなかったし。つまり、名前だけは知っているけど全容は霧の中……そんなレーベルだったのだ。40年間も。

 しかし今、そうしたモヤモヤがやっと解消される時が来た。昨年10月の一挙再発によって。リリースされたのは『Vanity Box』、『Vanity Tapes』、『Musik』という三つの箱だ。内訳は以下のとおり。

■『Vanity Box』11CD  限定500セット
 (/)内はオリジナル盤の発売年と品番 
・DADA『浄 (Jyo)』(78年/vanity 0001)
・SAB『Crystallization』(78年/vanity 0002)
・Aunt Sally『Aunt Sally』(79年/vanity 0003)
・Tolerance『Anonym』(80年/vanity 0004)
・あがた森魚『乗物図鑑』 (80年/vanity 0005)
・R.N.A. Organism『R.N.A.O Meets P.O.P.O』(80年/vanity 0006)
・Sympathy Nervous『Sympathy Nervous』(80年/vanity 0007)
・BGM『Back Ground Music』(80年/vanity 0008)
・Normal Brain『Lady Maid』(81年/vanity 0009)
・Tolerance『Divin』(81年/vanity 0012)
・7インチ・シングル集
  Sympathy Nervous「Polaroid」(80年/VA-S1)
  Mad Tea Party「Hide And Seek」(80年/VA-S2)
  Perfect Mother「Youll No So Wit」(80年/VA-S3)
  の各3曲、計9曲を収録。

■『Musik』2CD  限定400セット
 81年に「vanity 0010-11」としてリリースされた2枚組オムニバス・アルバム『Music』をそのままCD化。13組のアーティストによる計19曲を収録。タイトルのスペル(『Musik』)とジャケット・デザインは変更。

■『Vanity Tapes』6CD  限定300セット
 81年にリリースされた6アーティストのカセットテープ作品計6本のCD化。当時は単品での発売(それぞれ数十本ずつ)と共に、『Limited Edition Vanity Records Box Set』としてセットでも販売された。
・Salaried Man Club『Gray Cross』(81年/VAT1)
・Kiilo Radical『Denki Noise Dance』(81年/VAT2)
・Den Sei Kwan『Pocket Planetaria』(81年/VAT3)
・Invivo『B.B.B.』(81年/VAT4)
・Wireless Sight『Endless Dark Dream』(81年/VAT5)
・Nishimura Alimoti『Shibou』(81年/VAT6)

 つまり今回、『ロック・マガジン』付録のソノシート音源以外の全〈ヴァニティ〉作品が計19枚のCDとして一挙に再発されたわけだ。全国の読者から送られてきたカセット音源(おそらくほとんどが宅録)である『Musik』と『Vanity Tapes』に対し、阿木譲がプロデュースしてちゃんとスタジオで録音された『Vanity Box』のLP音源の方がクオリティが高いのは当然だが、といって、すべてが秀作というわけでもなく……。
 まずは『Vanity Box』に収められた全作品を、オリジナル盤の発売順に聴いていこう。

DADA『浄 (Jyo)』

 〈ヴァニティ〉の栄えあるLP第1弾は、キーボード(シンセサイザー/ピアノ)とギターのデュオ・ユニット、ダダのデビュー作である。ダダは、キング・クリムゾンの影響を受けたプログレ・バンド、カリスマのギタリストだった泉陸奥彦と、同じくプログレ系バンド飢餓同盟で活動していた小西健司によって結成された。本作のジャケットでは、平安〜鎌倉時代に描かれた「餓鬼草紙」が流用され、「鬱雲鉢」や「六神通」といった収録曲もすべて「餓鬼草紙」から着想されている。「イーノに捧ぐ」なるクレジットどおり、サウンド全体の土台にはアンビエント・ミュージックがあり、そこに彼らのルーツであるプログレが絡む、といった感じ。あるいは、ファー・イースト・ファミリー・バンド×ポポル・ヴーとでも言うか。そのサウンド・マナーは、当時の阿木譲の志向そのものだったと思われる。
 『ロック・マガジン』15号の編集後記に、阿木のこんな記述がある。「この2年、ずっと僕の心の中で暖め続けていた自身のレーベルである〈ヴァニティ・レコード〉も、いよいよ外に向けて活動を開始する時が来たようだ。第一弾として6月25日発売のダダのレコーディングのため一日中スタジオに籠る。泉陸奥彦君のギターを前面に押し出し、それに小西健司君のエレクトロニクス機器とピアノで作り出した簡素で静謐な音世界は心が洗われる」。『ロック・マガジン』創刊が76年2月なので、つまり阿木は雑誌創刊時からレコード制作を計画し、その第一号としてダダを出そうと考えていたわけだ。
 ちなみに、79年の『ロック・マガジン』26号では、「Vanity Records は無名だが才能をもったアーティストにレコード製作という機会を活用し、このレーベルを足場により広範囲に活動できることを目的として発足された」という文言があり、続いて、レーベルの制作方針として以下の4項目を挙げつつ、カセットテープでの応募も呼びかけている。
①エレクトロニクス・ミュージック
②“家具としての音楽”シリーズ(現代音楽)
③歌謡曲業界への進出
④実験的な新しいヴィジョンを持つ音楽(パンク、ニューウェイヴ、フリー・ミュージック、現代音楽等)
 ダダのデビュー作は、この中の特に①②に該当していたと言える。実は私は、本作のリリース直後(78年10月)に彼らのライヴを観たことがある。その時点ではまだアルバムをは聴いてなかったが、プログレ・マニアの間では「〈ヴァニティ〉が送り出した関西の新しいシンセ・バンド」としてけっこう話題になっていた。ライヴの印象は“稚拙なタンジェリン・ドリーム”といった感じで、正直退屈したのだが、その後にLPを聴いた時は、かなり楽しめた。78年の時点では、アルバムのコンセプトをライヴで十分に表現できるまでにはなっていなかったということだろう。彼らはその後メジャーからもアルバムを出し、バンド解散後も個別に活動を続けてきたこと(小西はP-MODEL他で、泉はゲーム音楽作曲家として活躍)は言うまでもない。

SAB『Crystallization』

 私はYoutubeが登場するまでSABの音を一切聴いたことがなかったし、どういう人物なのかも知らなかった。いや、今でも「〈ヴァニティ〉初期に、レーベルの専属エンジニア的役割を担っていた若者」ということぐらいしか知らない。今回の『Vanity Box』リリースに際して、発売元の〈きょうレコーズ〉は各ミュージシャンに再発許可及び版権返却の連絡をとったが、結局 SABとトレランス(後述)だけは連絡がつかなかった(行方不明)という。昔も今も謎の人物だ。一部でシタールやフルートなどのゲストも参加しているが、基本的には、当時19才だったという SABがシンセサイザー、ピアノ、ギターなど様々な楽器を多重録音したワンマン・ワーク。水音など自然音を混ぜるなどニューエイジ感覚を先取りしたエレクトロニク・サウンドはオール・レーベルのコズミック・セッションや70年代後半のクラスターにも通じるし、全体のバロッキーな迷宮感と瞑想性はちょっとマジカル・パワー・マコを思い出させたりもする。SABは本作発表後、インドの神秘思想家バグワン・シュリ・ラジニーシに傾倒し、間もなく音楽の世界から消えたというが、本作の世界は現在のヤソスやアリエル・カルマ、ララージなどとも確実につながっている。

アーント・サリー『アーント・サリー』

 本作に関しては、ここで改めて言及する必要もないと思う。シンガーのフューやギタリストの Bikke 等を擁した神話的バンドによる唯一のスタジオ録音アルバム。これこそは〈ヴァニティ〉の象徴であり、唯一、広く聴き継がれてきた〈ヴァニティ〉作品だろう。サラヴァ・レーベルにおけるブリジット・フォンテーヌ『ラジオのように』みたいなものか。本作を初めて聴いた時の衝撃は今も忘れがたい。当時19才だったフューはアンチ・ロック、アンチ・ヒッピーを身上としていたとかつて私に語ったが、確かに長髪ナマステ野郎もゲバ棒全共闘も一瞬に火炎放射器で焼き尽くしてしまうような凍りつくニヒリズムに満ちている。ジョン・ライドンがジュリエット・グレコに憑依したようなフュー(彼女は神戸のカトリック系超名門女子校出身)の歌声がカトリック的原罪意識と反カトリック的逸脱熱の間で揺れ動く様はなんともエロティックだ。
 以下の発言は、20年ほど前におこなったフューへのインタヴューからの抜粋。「突然ロック・マガジンのオフィスに行って、阿木さんにカセットを聴かせた。何の根拠もなく、なぜか〈ヴァニティ〉から絶対にアルバムを出せると思ってたんですよ。録音は一日でやりました。阿木さんは自分が元々歌手だったせいもあるんだろうけど、スタジオに入ってきて、お手本を示す感じで歌い出してね。勘弁してほしかったですよ、ほんと」。阿木譲の歌う怨念と自己愛いっぱいの“醒めた火事場で”も聴いてみたいけど。

トレランス『Anonym』

 ジャケ裏に書かれた文言「dedicated to the quiet men from a tiny girl」を元にナース・ウィズ・ウーンドが80年の2ndアルバムに『To The Quiet Men From A Tiny Girl』なるタイトルを付け、更に、かの《Nurse With Wound List》でも本作がリストアップされていた。といった事情もあって、海外のマニアの間では昔から人気が高い。日本では昔も今も知名度は低いけど、〈ヴァニティ〉から2枚のフル・アルバムを出した唯一のバンドだった。つまり、阿木譲は高く評価していたということだろう。トレランスは関西ではなく東京で活動していた丹下順子のソロ・プロジェクトで、2枚とも吉川マサミがギター他でサポートしている。シンセサイザー他によるノイジーな電子音とピアノ、語り風ヴォイスなどを駆使してモノトーンのキャンヴァス上に描かれた抽象画といった感じ。その手法と冷ややかなエロティシズムは、まさにナース・ウィズ・ウーンドやSPKなど当時の海外のノイズ・コラージュ・ワーク勢とも地続きだ。

あがた森魚『乗物図鑑』

 〈ヴァニティ〉のLP群中で最大の異色作ではあるが、前述したレーベル方針の③「歌謡曲業界への進出」を念頭に置きつつ①「エレクトロニクス・ミュージック」、④「実験的な新しいヴィジョンを持つ音楽」も取り込んでいるという点で、〈ヴァニティ〉ならではの作品だとも言える。“赤色エレジー”等のレトロ・フォークで知られたあがたと阿木は以前からの知り合いだったようで、制作に際し阿木は「コンセプトはテクノ・ポップで、泣きの曲はなし」と注文をつけたという(音楽史的には一応、この「テクノ・ポップ」なる新タームは阿木が考案したということになっている)。録音は、シンセサイザーやギターなど様々な演奏とアレンジを手掛けた前述のSABと、後述するノーマル・ブレインの藤本由紀夫が中心になっておこなわれ、向井千恵、INU の北田昌宏、コンチネンタル・キッズのしのやん(篠田純)、ウルトラ・ビデのTaiqui などがサポート。また、ジョイ・ディヴィジョン風の名曲“サブマリン”ではコーラスでフューが参加し、“エアプレイン”ではあがたが敬愛する稲垣足穂の肉声(ラジオでの対談音源)をコラージュ使用している。多士済々のサポート陣による音作りは、〈ヴァニティ〉のカタログ中、いやあがたの全作品中でも際立って多彩かつ実験的であり、また、翌81年から始動するあがた版テクノ・ポップ・ユニット、ヴァージンVSヘの助走となったという点でも非常に重要な作品だ。しかし、当時まだフォノグラムとのアーティスト契約が切れてない時期だったため、発売後間もなく回収され市場から姿を消したのだった。


R.N.A. Organism『R.N.A.O Meets P.O.P.O』

 80年代J-ニューウェイヴ・シーンで異彩を放った佐藤薫のEP-4の前身プロジェクト。ロンドンからの海外郵便を偽装して〈ヴァニティ〉に送られてきたカセット音源を元に制作されたという。シンセやリズム・マシーン等によるビートフルなエレクトロニク・サウンドとコラージュ・ワークはキャバレー・ヴォルテールに対する大阪からの返答といった感じか。メンバー(3人)クレジットの匿名性やジャケット・デザインのミニマリズム等々、高度にデザインされた総合的戦略性も佐藤薫ならでは。

Sympathy Nervous『Sympathy Nervous』

 90年代以降、ベルギー〈KKレコーズ〉傘下の〈Nova Zembla〉や米〈Minimal Wave〉等から多くのテクノ系作品を発表し、晩年にはテルミン制作工房も運営していた新沼好文(2014年逝去)によるソロ・プロジェクト。このデビュー・アルバムも2018年に〈Minimal Wave〉からLP再発されている。「U.C.G.」と名づけられた自作のコンピュータ・システムとコルグのシンセサイザーを駆使した手作り感満載のエレクトロニク・サウンドに、サポートの千崎達也がノイジーなエレキ・ギターを加えるというスタイル。諧謔性と珍味溢れるノイズ・インダストリアル指向の分裂症的テクノ・ポップは、後のマックス・ツンドラやスクエアプッシャーなどにもつながっているように見える。

BGM『Back Ground Music』

 電子音楽家/プロデューサー/DJとして現在も第一線で活躍している白石隆之が初めて世に問うた作品。シンセサイザー/ギター/ヴォーカル担当の白石(当時17才の高校生)を中心とする4人組(白石以外はベイス、キーボード、ドラム)。無機質な電子ノイズをやたらとふりまく荒削りでファンキーなガレージ・ロック・サウンドは、彼らがア・サーテン・レイシオやP.I.L、あるいはキャバレー・ヴォルテールといった当時のポスト・パンク〜インダストリアル・シーンから強く影響されていたことを物語っている。演奏力はないし完成度も高くないが、日本におけるロック受容史の記録としては貴重な1枚だと思う。今回の『Vanity Box』リリースと同時期に〈Mule Musiq〉からも単品でLP再発されたが、それまでオリジナル盤は数万円で取り引きされるほどの人気盤だったようだ。

Normal Brain『Lady Maid』

 サウンド・アートのパフォーマーとして現在も世界的に活躍している藤本由紀夫のソロ・プロジェクトによる唯一のアルバム。タイトルのネタはもちろんマルセル・デュシャンの「レディメイド」。デュシャンやジョン・ケイジへの傾倒/研究を通し、オブジェとしての音/音響にこだわり続けてきた藤本の視点と姿勢は、既にこの作品でも明確に示されている。クラフトワークをパクった感じのオープニング・ナンバーからコンラート・シュニッツラー流「ディスクリート・ミュージック」風のラスト曲(B面全体を占める)まで様々なタイプのエレクトロニク・サウンドが聴けるが、いずれもドライ&ストレインジな感覚が横溢しており、デイヴィッド・カニンガム(フライング・リザーズ)の日本の兄弟といった趣。なお本作も、『Vanity Box』に先駆けてスイスのレーベル〈We Release Whatever The Fuck We Want Records〉から単品再発されている。

Tolerance『Divin』

 トレランスは前述どおり、〈ヴァニティ〉から2枚のLPを発表した唯一のユニットであり、これはその2作目にして〈ヴァニティ〉の掉尾を飾ったアルバムでもある。今回もまたほとんどメロディのない抽象的エレクトロニク・サウンドだが、溢れ出るイメージに沿って暗闇でやみくもにデッサンしていたような1作目に対し、音作りのアイデアがかなり絞られており、その分聴きやすい。多くの曲でドラム・マシーンを多用してリズミックなアプロウチをとり、テクノ・ポップの時代性を実感させる(けっしてポップじゃない)が、一方でテープの逆回転とパンニングによるファウスト〜スロッビング・グリッスルのような凶悪チューンもあったり。この孤絶し荒涼とした風景ゆえか、阿木譲は〈ヴァニティ〉のカタログ中で本作を最も気に入っていたという。

『7インチ・シングル集』

 同じ80年にアルバムも出したシンパシー・ナーヴァスの他、マッド・ティー・パーティ、パーフェクト・マザーの計3バンドによるシングル盤3枚(計9曲)を収録。マッド・ティー・パーティとパーフェクト・マザーは、当時メルツバウの初期音源など実験的カセット作品をたくさんリリースしていた東京のインディ・レーベル/総合アート集団《イーレム》の関係グループだ。シンパシー・ナーヴァスはアルバム同様、自作コンピューター制御されたエレクトロニク・サウンドだが、アルバムに先駆けてリリースされたこのシングル盤の音作りは、よりプリミティヴ。吉祥寺マイナーなどにも出ていたというガールズ・トリオのマッド・ティー・パーティは、ちょっとフリクションを想起させるA面の表題曲以下、全体的にダブ処理された音響実験が面白い。パーフェクト・マザーは《イーレム》の中心人物だった上田雅寛によるソロ・プロジェクトで、計4人で制作されたこのシングル盤には、後にTACOにも参加する“新人類”野々村文宏もテープ・エフェクトで参加している。リズム・ボックスとシーケンサーによる不気味な律動、ノイジーな楽器音と言葉/声のコラージュ、初期ゲーム音楽風のチープな電子音など様々なアイデアがランダムに詰め込まれた若さいっぱいの強欲宅録集。

 『Musik』(限定400セット)と『Vanity Tapes』(限定300セット)は前述どおり、〈ヴァニティ〉に全国から送られてきたカセット音源からの選集。
 2枚組CDセット『Musik』(オリジナルは2LP『Music』)に収録されたのは、Pessimist、Un Able Mirror、Mr、Adode/Cathode、Kiiro Radical、Tokyo、Daily Expression、Plazma Music、Nose、New York、Arbeit、Isolation、Necter Low の13組による計19曲。
 『Vanity Tapes』は、カセットでリリースされた6作品のCD6枚組セットで、収録アーティストと作品名は前述どおり。

 『Musik』と『Vanity Tapes』を全部聴いて、個人的に耳を惹かれたのは、電子ノイズの新たな可能性を探ったKiiro Radical、BCレモンズ(後にCDも出すサイケ・ポップ・女子バンド)の前身であるPlazma Musicによる和製スーサイド・ポップ、ピアノとメトロノームとラジオ・ノイズだけを用いた Wireless Sight によるノイズ・アンビエント・ワークス、ギターのドローン・ノイズとドイツ語の語りをコラージュしたArbeit(これだけは日本人ではなくドイツ人画家アヒム・デュホウ。彼は、ラ・デュッセルドルフのロゴ・デザインや『シンパシー・ナーヴァス』のジャケット写真も手掛けていた)といったところだろうか。また、Tokyo は数年後にハイ・ライズ等で有名になるギタリスト成田宗弘のバンド、New York「1976」は阿木譲本人によるニューヨークでのフィールド録音である。当然ながら玉石混交だが、機材の低価格化によって誰でも手軽に宅録できるようになったDIY時代ならではの奔放さと音楽的アイデアの多様性は間違いなく堪能できる貴重な記録だ。音質の悪さ(今回の再発に際し、すべてデジタル・リマスタリングされているが、元が元だし)も、ここでは逆にあの時代の空気感とリアリティを呼び起こしてくれる。


 以上、今回リリースされた三つのCDセットを駆け足で紹介してみた。それぞれが限定発売であり、しかもスイスのレーベル〈We Release Whatever The Fuck We Want Records〉が大量に予約購入したこともあり、実は10月のリリース時点で既にほとんど売り切れ状態だったという。つまり、ここで紹介しても、なかなか入手困難であることは最初から了解ずみだったのだが、本文中でも随時触れたとおり、今回各アーティストに版権が戻されたため、個別に他レーベルから単品発売されている(もしくはこれから発売される)作品も少なくないし、ネットでもある程度は聴けるので、ご了承いただきたい。
 ちなみに、〈ヴァニティ〉では当時、ヒカシューやノイズ(工藤冬里+大村礼子)、ウルトラ・ビデなどのリリース計画もあったようだ。

 最後に阿木譲の言葉を紹介しておきたい。篠原章氏の著書『日本ロック雑誌クロニクル』(初出は『クイック・ジャパン』Vol.34、34)から。『ロック・マガジン』での活動に関する発言だが、〈ヴァニティ〉に関してもそのまま当てはまると思うので。

「関心のあるのは先のことだけですね。留まるのがイヤなんですね。商売のことを考えるとどこかで留まったほうがいいんだけど、僕はやはり音楽の先端というかエッジに一番興味があって。もうそればっかり」
 「メジャーになってくると、もう僕別のところにいるんです。僕の役割は先端のもの、運動中のわけのわからない、まだ意味も判明していないものを、形にしていくことなんですね。音楽に普遍的なものなんかないっていう考えだから。──(略)──先端のことは、だいたい最初は僕がやったんじゃないかと自負していますが、評論家として確立したかっていうと、ちょっと疑問ですけどね」

日本語ラップ最前線 - ele-king

 端的に、いま日本のヒップホップはどうなっているのか? ヴァイナルやカセットテープ、CDといったフィジカルな形態はもちろんのこと、配信での販売や YouTube のような動画共有サイトまで含めると、とてつもない数の音楽たちが日々リリースされつづけている。去る2019年は舐達麻や釈迦坊主、Tohji らの名をいろんな人の口から頻繁に聞かされたけれど、若手だけでなくヴェテランたちもまた精力的に活動を繰り広げている。さまざまなラップがあり、さまざまなビートがある。進化と細分化を重ねる現在の日本のヒップホップの状況について、吉田雅史と二木信のふたりに語りあってもらった。

王道なき時代

トラップやマンブル・ラップのグローバルな普及で、歌詞の意味内容の理解は別として、単純に音楽としてラップ楽曲を楽しむ流れに拍車がかかっている感がありますよね。(吉田)

いまヒップホップは海外でも日本でも、フィジカルでもストリーミングでも、次々と新しいものが出てきていますが、初心者はいったい何から聴いたらいいのでしょう?

二木:いきなりかなり難しい質問ですねぇ……、では、すこし長くなりますが、まず国内のヒップホップについて大掴みで大局的な話をしますね。例えば、PUNPEE が星野源の “さらしもの” に客演参加、さらにNHKの『おげんさんといっしょに』に出演して日本のポップスの “ど真ん中” に現代のラップとブレイクビーツを持ち込んだ。それは画期的というよりも、2人のキャラクターもありますが、ナチュラルに実現しているように見えるのが、いまの時代の日本のラップとポップの成熟を示す出来事だなと感じました。一方でストリート系の DOBERMAN INFINITY や AK-69 らも作品を発表して変わらず存在感を示している。Creepy Nuts は作品の発表と並行してラジオ・パーソナリティとしても大活躍で、お笑いやアイドルの世界と接点をもって独自の立ち位置を確立している。R‐指定は般若から引き継いで、『フリースタイルダンジョン』の二代目ラスボスにもなった。他方で、2019年は自分のまとまった作品は発表しませんでしたけど、全国各地をライヴで回りつづける沖縄・那覇の唾奇のようなラッパーがいる。唾奇は新しい世代のインディ・シーンの象徴的存在だと思います。テレビやラジオで目立たっていなくても、全国各地のライヴハウスやクラブでのステージで腕を磨いて着実にファンを増やしていますね。彼のライヴは本当に素晴らしいのでぜひ観てほしいです。
 視点をすこしうつせば、鎮座DOPENESS と環ROY が U-zhaan、そして坂本龍一と “エナジー風呂 (Energy Flo)” を発表しました。あの教授と、です。曲名から察することができるように、“energy flow” を U-zhaan がタブラでアレンジしたラップ・ミュージック。シンプルに良い曲ですし、日本のヒップホップ史という観点でみると、ラップしているのは細野晴臣ですが、1981年にこの国の初期のラップである “RAP PHENOMENA/ラップ現象” を発表したYMOの教授と後続の世代との共作でもある。RHYMESTER は岡村靖幸と「岡村靖幸さらにライムスター」として “マクガフィン” を共作した。RHYMESTER が岡村靖幸とコラボすることそのものが彼らの日本のファンクの先駆者へのリスペクトの表明としてうつる。それら2曲は、そういう “ヒップホップ史” のような視点で見ても興味深い。それでもこれらは氷山の一角ですね。サブスクの浸透も大きいですし、単純にリリース量も尋常ではない。仮に『フリースタイルダンジョン』放送開始(2015年9月)をひとつの起点とすると、そこからのここ約4年ちょっとは、日本のヒップホップ史においても急激な変化の時代として記憶されるはずです。いろんな出来事が同時多発的に起きている。そういった数多くのアーティストの注目に値する楽曲や現象や動向を念頭に置いた上で、僕と吉田さんが2019年を振り返り、2020年に突入したいま、国内のヒップホップ、ラップについて語るといったときに、何に着眼するかということになりますね。どうでしょうか?

星野源 “さらしもの (feat. PUNPEE)”

吉田:そこでひとつの着眼点として、やはりサウンド面が挙げられると思うんですよね。ちょっとこれも長くなりそうですが(笑)、2019年の日本のヒップホップもUSと同様にざっくり、ブーム・バップ的なものとトラップ的なものの違いがまずは目に入ってきますよね。見立てとしては、前者については90年代からどうやって日本語で韻を踏むかという格闘の歴史があって、いまもその延長線上に括弧付きの「日本語ラップの歴史」的なものが続いていると。そのフィールドにトラップ的なものが新たに加わってきたとする。2019年の日本語のトラップ的な表現においては、もはやかつてのように日本語がフィットするのかしないのか、というような議論が出てくる段階にはないですよね。これはひとつには今日ラップ・ミュージックがいかにグローバルな言語となっているかということを示しているし、トラップの BPM70 にオンビートで言葉を置いていくスタイルが日本語ともいかに相性が良いかということも示していると思います。例えば LEX の『!!!』にしても、OZworld の『OZWOLRD』にしても、英語にちゃんぽんされている日本語含め、海外の人が聞いても、この曲って英語も聞こえてくるけど別の言語も少し入ってるよね、くらいの感覚で聞けるというか。トラップやマンブル・ラップのグローバルな普及で、歌詞の意味内容の理解は別として、単純に音楽としてラップ楽曲を楽しむ流れに拍車がかかっている感がありますよね。そもそも日本は90年代以前から必ずしも英語リリックの意味を理解することなしにUSヒップホップを楽しんできたという意味でも、ヒップホップ/ラップ・ミュージック先進国と言えると思いますが。

二木:ビートに関してはどうですか?

吉田:ビート面で言えば、先ほど挙げた LEX や OZworld がUSメインストリーム的な音で勝負する一方、トラップと一概にいっても、サウンドには相当の多様性があるわけですよね。USメインストリームのビートといったときに思い出すのが、2000年前後のティンバランドやネプチューンズの当時日本では「チキチキ」と呼ばれることもあったサウスのサウンド。それらがチャートを席巻したとき違和感を覚えた人たちがいた理由のひとつは、そのビートが非常にキャッチーで商業的な楽曲やアーティストと結びついていた点だと思うんです。当時のそういった新しいビートのモードを伴う商業化への反発を最近のトラップへの違和感と重ねる見方があるのはすごく理解できる。でもトラップというプラットフォームが面白いのは、かつてのホラーコアをルーツとするようなフロリダ勢のダークで激しく歪んだ表現や、トラップコアやトラップメタルと呼ばれるエクストリームなサウンドも同時に生み出していることです。例えば Tohji 『Angel』では MURASAKI BEATZ がアルバムのゴシックなムードと違わずダークで叙情的かつ歪んだビートをぶつけているし、Jin Dogg の『MAD JAKE』ではキラーチューン “黙(SHUT UP)” に象徴的なようにタイプビートを活用しながらトラップコアを展開しているし、MonyHorse の『TBOA Journey』の3chのビートも、メロウ寄りもダーク寄りもシンプルながら耳に残る異形のループを追求しているように聞こえる。

Jin Dogg “黙(SHUT UP)”

商業化への反発を最近のトラップへの違和感と重ねる見方があるのはすごく理解できる。でもトラップというプラットフォームが面白いのは、ダークで激しく歪んだ表現やエクストリームなサウンドも同時に生み出していることです。(吉田)

二木:MonyHorse といえば、MONYPETZJNKMN の “Gimme Da Dope” はやたら気持ち良い曲でした。これぞ快楽至上主義といった感じです。

吉田:一方でトラップ的なもの以外ではどうだったかというと、全編ビートを担当する Illmore がブーム・バップを再解釈する Buppon の『I’ll』、シングルですけど相変わらずぶっ飛んだ Ramza と Campanella の “Douglas fir”、全編アトモスフェリックなテクノ・サウンドの Hiyadam の『Antwerp Juggle』、田我流の『Ride On Time』も自身のビート・メイキングが満を持してすごく面白いところに到達したし、かと思えば釈迦坊主の『HEISEI』もそれこそカテゴライズを拒絶するようなサウンドで、少し前ならエレクトロニカと呼ばれたかもしれない。そういう状況だから MEGA-G のブーム・バップが超目立つわけですよね。そこには英語を内面化するトラップとは違って、これまでの日本語におけるライミングの格闘の蓄積をベースにさらにそれを突き詰めようとする、いわば良い意味でガラパゴス的な日本語ラップが追求してきた日本語のライムが乗る。例えば THA BLUE HERB、ZORN、田我流、舐達麻らが、それぞれブーム・バップを基軸にしたビートで、それぞれの日本語表現を追求する作品をリリースした。こうやってみると、王道と言われるようなサウンドは存在しないといっても過言じゃない。というか、日本のヒップホップが王道なき時代に突入していることを確認させられた2019年ですよね。

Campanella “Douglas fir (Prod by Ramza)”

二木:王道なき時代だからこそ、Campanella と Ramza の曲とかはもっと騒がれてほしい。2019年のこの国で、あえて言えば、菊地成孔の言う “ヒップホップはジャズの孫” をもっとも先鋭的に提示した曲のひとつではないでしょうか。ちなみにこの曲のMVを撮っている土屋貴史は、先日公開され話題となっている SEEDA の伝記映画『花と雨』を撮った監督でもあります。ところで、吉田さんがおっしゃった “ガラパゴス的な日本語ラップ” の追求で忘れてならないのは、Creepy Nuts ですよね。R‐指定がライターの高木 “JET” 晋一郎を聞き手にして日本語ラップについて語りまくった『Rの異常な愛情──或る男の日本語ラップについての妄想──』(白夜書房)がとても面白い。この本の Mummy‐D との対談を読むと、R‐指定の “日本人のヒップホップ” へのこだわりが内包するアンビヴァレントな感情が彼のラップのアプローチや方法論に直結しているのがわかる。『よふかしのうた』収録の表題曲は、「オードリーのオールナイトニッポン10周年全国ツアー」のテーマソングということもあると思いますが、フックのメロディには “ラップ歌謡” 的な側面がある。一方 “生業” ではトラップでセルフ・ボースティングを展開するわけですが、吉田さんの言葉を借りれば、これぞ “日本語におけるライミングの格闘の蓄積” の賜物。2019年時点でその最高峰のひとつと言って間違いないと思います。彼の、まさに異常ともいえる日本語ラップの知識量を考えれば、いろんな引用やオマージュが散りばめられていると推測できますが、ひとつ、イントロの「アカペラでも聴けるラップだぜ」というリリックは Maccho の「アカペラで聴けねえラップじゃねえぜ」(“24 Bars To Kill”)のオマージュだと思われます。
 そして、“日本人のヒップホップ” という課題にたいして、R‐指定とはまた異なる角度からアプローチをしていたのが、2018年2月に惜しくもこの世を去った FEBB ではないでしょうか。去年、GRADIS NICE & YOUNG MAS (FEBB)名義の『SUPREME SEASON 1.5』が出ています。この作品は、『L.O.C -Talkin' About Money-』(2017)に連なる作品です。『L.O.C』に収録された “THE FIRST” で FEBB は日本語を英語の発音に近づけたり、英語を日本語の発音に近づけるようにするのではなく、ふたつの言語を同居させて、おのおのの発音の特性を素直に活かして明瞭にフロウしている。言い換えると、ガラパゴス的な日本語ラップと英語を内面化したラップを1曲のなかで共存させている。彼がこの曲で歌う「引けを取らない日本人のヒップホップ」を体現したクラシックだと思います。

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ブーム・バップとトラップ

いまでもブーム・バップとトラップはどこかで対立するものとして語られたり、捉えられがちだけど、そういう二元論で思考していると聴き逃してしまうものがあまりに多くてもったいない。(二木)

吉田:USでは、ミーゴスやフューチャーのマンブル的な楽曲に加えて、毎年新人の注目ラッパーを紹介する XXL のフレッシュマンのサイファーの2016年版に、21サヴェージ、コダック・ブラック、リル・ウーズィ・バートらが登場してそのスキルが疑問視されたりした。5人もいてまともなのはデンゼル・カリーしかいないじゃないか!って(笑)。それでどうしても「マンブル・ラップ対インテリジェント・ラップ」のような図式が生まれて、ベテランのスキルフルなラッパーがマンブルを否定するというような対立構造になっていますよね。日本でも、両者が完全に異質なもの、相容れないもののように見えている感がある。でも、USでも、そもそもクリエイティヴな表現を追求しているアーティストは、いろんなスタイルでラップしたいと思っているはずですよね。エミネムの『Kamikaze』(2018)のように、トラップという文法に対して自分ならどうアンサーするかっていうのかっていうのがモチベーションになる。例えばケンドリックもリッチ・ザ・キッドとの “New Freezer” (2018)で俺だったらこう乗りこなすぜって感じの圧巻のフロウを披露しているし、フレディ・ギブスなんかも『Shadow of a Doubt』(2015)の頃から一枚のアルバムのなかにマーダ・ビーツとの曲もありつつ、ボブ・ジェームスネタのブーンバップでブラック・ソートと一緒にラップしちゃう(笑)。J・コールにしても、あからさまなトラップらしいビートはなくても、BPMがトラップ並みに遅い曲を挿入してブーム・バップ曲とのメリハリをつけている。BPM 90や100のブーム・バップでフロウするのと、60や70のトラップビートで三連符や32分音符でやるのはルールの違うゲームみたいなものだから、アーティストとしては自分でも試したくなるだろうと。

二木:そのようなルールの違いを認識していたからこそ、GRADIS NICE は “THE FIRST” について「トラップについていけない人たちのためだったりもする」とCDジャーナルの小野田雄のインタヴューで発言したのだと思います。FEBB とも共有されていたその目的意識のもとに作られたのが、『L.O.C』、そして『SUPREME SEASON 1.5』だったと考えられます。つまり、ブーム・バップとトラップというある種の “分断” をこえる、あるいはビートにしてもラップにしても両者の良さを融合してオリジナルのヒップホップを作る、そういった明確な目的のもとに作られているのではないか。後者では “THE FIRST” とは異なり、たとえば “skinny” という曲では日本語と英語の切り替えを短い尺のなかでより頻繁にくり返して、ガラパゴス的な日本語ラップと英語を内面化したラップを融合させようとするような高度なフロウを披露してもいる。そのように FEBB はとても短い期間のなかでいろんな試みを凄まじいスピードでやっていた。この連作からは、FEBB と GRADIS NICE の高い志が強く感じ取れます。

吉田:ブルックリンのアンダーアチーヴァーズやフラットブッシュ・ゾンビーズなんかも、特に初期の音源はトラップと同様の遅いBPMでブーム・バップを再解釈して、マンブル・ラップではないスキルを見せることがひとつの特徴になっている。プロ・エラとも組んでいる彼らは、ブーム・バップ・ルネッサンスを単に原点回帰だけではなくて、トラップとのハイブリッドという方法論で表現しようとしているところがあると思います。だから、FEBB が志向していたことと、共通する部分もあるんじゃないですかね。

二木:たしかに。僕もそう思います。たとえば、それこそプロ・エラのジョーイ・バッドアスも参加したスモーク・DZAの『Not for Sale』(2018)というアルバムもそういう文脈で聴くとより楽しめる作品ですね。また、さきほど名前が出た MEGA-G は素晴らしいソロ・アルバム『Re:BOOT』収録の “808 is coming” で彼なりのユニークなトラップ解釈を披露している。ビートは I-DeA です。タイトルが暗示していますが、オールドスクール・ヒップホップとトラップを直結させる試みですね。ぜひ聴いてほしいです。だから、これは自戒も込めて語りますが、いまでもブーム・バップとトラップはどこかで対立するものとして語られたり、捉えられがちだけど、そういう二元論で思考していると聴き逃してしまうものがあまりに多くてもったいない。さらに、それによって世代間対立みたいなものまで不必要に煽られてしまうのはネガティヴですよね。そういう定着してしまったジャンル分けや言語を使うことで耳の自由が奪われるときがある。そういう分節化はとても便利だし、もちろんこの対談でもそういう分節化に頼って語らざるを得ない側面はあります。ただ、ときにそれによって失うものがあったり、分断させられてしまう現実の関係があるというのは常に注意しておきたいなと。

吉田:日本でもそういう表面的な二元論とは別に、現場では様々な面でクロスオーヴァーが見られるのかなと。たとえば Red Bull の「RASEN」のフリースタイル。1回目は LEX、SANTAWORLDVIEW、荘子it (Dos Monos)、 Taeyoung Boy で、2回目は Daichi Yamamoto、釈迦坊主、dodo、Tohji。両方とも素晴らしいクオリティとセッションの緊張感で無限に繰り返し見ていられるんですが(笑)、この中だと荘子it や Daichi Yamamoto、dodo が日本語ラップ的なフロウをしているように聞こえる。確かに荘子it はエイサップ・ロッキーではなくて元〈デフ・ジャックス〉のエイサップ・ロックが好きだそうで、彼のインテレクチュアルなスタイルに照らすと頷けるけれど、SANTA はいわゆるトラップよりもフラットブッシュ・ゾンビーズとか、スキー・マスク・ザ・スランプ・ゴッド、レイダー・クランへのシンパシーを口にしていたり、釈迦坊主は志人から影響を受けたそうなんです。彼らのようにオリジナリティが際立っているアーティストたちは、一見全然別のことをやっているように見えるけど、結局はそんな風にエッジィな表現に惹かれていて、互いにコネクトするんだなと。だから、分断して考えたくなるのは外側だけなんだと改めて感じました。こういう風なメディアでの語りにしても、ある程度ジャンル分けしないと整理できないし、大きな潮流も取り出せないけれど、自分の好みはどのジャンルなのか線を引きやすくなってしまう弊害もありますね。あるサブジャンルを代表するいくつかのアーティストが肌に合わなかったときに、そのサブジャンル全体を否定的に見てしまうことのもったいなさがある。

LEX/ SANTAWORLDVIEW/ 荘子it/ Taeyoung Boy – RASEN

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ラップ~ビート~音響、それぞれの変質

マンブル・ラップの多様性もそうですし、そうやって自分のスタイルやイメージを規定せず、自分のなかに多様なスタイルを持つのもいまのラッパーのあり方だと思うんです。(二木)

二木:今年の1月に入ってから SANTAWORLDVIEW が出した『Sinterklass』も良かったですね。YamieZimmer のビートのヴァリエーションも面白かった。

吉田:それから SANTA や Leon、あと Moment Joon も “ImmiGang” で披露しているトラップビート上の32分音符基調の早口フロウにしても、Miyachi の『Wakarimasen』収録の “Anoyo” や JP The Wavy らが乗りこなす三連フロウにしても、近年のトラップとの格闘を通じて再発見された、日本語のラップ表現にとって大きな財産だと思います。オンビートの早口は子音と母音がセットになるいわゆる開音節言語の日本語とすごく親和性が高いし、Leon はサウンド重視と自分でも言っているけど、例えば『Chimaira』収録の “Unstoppable” なんかは早口であっても非常にメッセージが伝わってくる楽曲になっている。これは90年代の終わりにチキチキビートが世を席巻したときに、日本語でどうやって倍速の譜割でラップを乗せるか格闘した時期にもダブるものがありますね。

二木:わかります。TwiGy が『FORWARD ON TO HIP HOP SEVEN DIMENSIONS』(2000)というアルバムでいち早くサウス・ヒップホップにアプローチしたのとも被りますね。“七日間”、“GO! NIPPON”、“BIG PARTY”、“もういいかい2000”、特にこの4曲は TwiGy の先駆性を如実に示している。彼は日本のトラップ・ラッパーのパイオニアですね。スリー・6・マフィアなどのサウスのラップだけではなく、倍速/早口ラップの参考にしたのは、『リズム+フロー』にも登場していたシカゴのトゥイスタやUKのダンスホールのディージェー、ダディ・フレディだったという主旨の話も ele-king のインタヴューでしてくれました。もうひとつ、Leon Fanourakis の『Chimaria』から、自分のような世代の人間が個人的に連想するのは、DABO の『PLATINUM TONGUE』(2001年)でした。それは Leon が DABO を意識しているとかそういう意味ではなくて、セルフ・ボースティングの手数の多さで猪突猛進するスタイルという点において、ですね。DABO の “レクサスグッチ” を久々に聴きましたけど、この曲が20年前に切り拓いたものってでかいなとあらためて痛感しました。

吉田:当時 DABO のバウンスビートへのアプローチは早かったし、地声ベースの低音ヴォイス中心のアプローチも共通するところはありますよね。

二木:SANTAWORLDVIEW、Leon とともに、YamieZimmer がプロデュースを手掛ける Bank.Somsaart も素晴らしいラッパーですよね。さっき GRADIS NICE & YOUNG MAS “THE FIRST” について日本語と英語の発音のそれぞれの特性を活かして同居させていると話しましたけど、『Who ride wit us』の Bank はむしろ日本語と英語それぞれの発音やアクセントの境界線を消滅させて、ウィスパー・ヴォイスで呪文のようなフロウをくり出していく。さらに彼のルーツのひとつであるタイ語も含まれるということなのですが、正直に告白すれば、タイ語の部分がどこなのかまだ自信をもって聴き取れていない側面もあります。ただ、こんなにささやくようにラップしてリズミカルなのがすごいな、と。

吉田:Bank もまさにそういう境界を曖昧にするスタイルですよね。彼のラップがマンブル的かどうかという問題は別としても、マンブル・ラップの解釈もすごく多様になってきている。「日本語」ラップといっても、例えばブッダ・ブランドの頃から英語をミックスするラッパーたちは、もともとマンブル性というか、何を言っているかわからないところがあった。バイリンガル・ラップの系譜に Bank のようなラッパーもいるとして、日本語を徹底的に崩すという点では、釈迦坊主もそうですよね。最初は脱構築された日本語の発音に阻まれて、全然言っていることが分からないんだけど、歌詞を見ると間違いなく日本語だし、意味が途端に入ってくるという。かつて LOW HIGH WHO? 時代の Jinmenusagi や Kuroyagi がやっていたことにも近くて、曖昧母音を多用したり、あるいは開音節から母音を引いて閉音節にしてしまったりと、子音や母音のレヴェルで発音を英語的なものに近づけているわけですよね。5lack や冒頭で触れた LEX もそのような系譜にあると思います。でも釈迦坊主がとてもユニークなのは、日本語のアクセントや子音母音の仕組みを壊しているけど、だからといって個々の語の発音自体を英語に近づけているわけではないところです。日本語には聞こえないけど英語に空耳するわけではないという、まるで架空の言語を創造しているような。Tohji が “Hi-Chew” で聞かせるようなマンブル的発語なんかとも合わせて、これまでの日本語と英語の対立軸を超えているし、それは釈迦坊主が時々見せるインドへの目配りやエスニックなサウンドやスケールの導入ともリンクしている。最新EP「Nagomi」でも独特のメロディセンスが突き抜けてるのは勿論、ラップの声が持つパーカッシヴな側面をそれこそミーゴス並みに引き出してると思います。

釈迦坊主「NAGOMI」

二木:僕は釈迦坊主の「NAGOMI」のなかで、UKブレイクス×ラップ・シンギン×ニューエイジと言いたくなるような “Alpha” がとても好きでした。でも全曲良いですよね。ここですこし補足しますね。マンブル・ラップをざっくり定義すれば、歌詞の意味よりもリズムやノリを重視するラップとなります。それゆえに、マンブル・ラップは一部では否定的な意味合いを込めて使われる。これは FNMNL の記事で知りましたが、チーフ・キーフが自分がマンブルを発明したと主張する一方、ブラック・ソートのようなベテランまで自分が元祖だと主張したりもしているという。ただここで僕と吉田さんはマンブルだから良いとか悪いとかそういう価値判断をしたいわけじゃない、そういうことですよね。Bank が去年の11月にサンクラにアップした “you're not alone” という曲はこれまでとガラリとスタイルが異なり、前向きなメッセージを日本語の発音を明瞭にすることで伝えようとしていた。マンブル・ラップの多様性もそうですし、そうやって自分のスタイルやイメージを規定せず、自分のなかに多様なスタイルを持つのもいまのラッパーのあり方だと思うんです。

吉田:じゃあそういうマンブル的な状況でラッパーがどう表現していくかというと、やっぱりフレージングが重要になりますよね。先ほどの「RASEN」のサイファーでいえば Tohji や LEX が顕著ですが、フリースタイルでいかに2小節や4小節の印象的なフレーズを次々と繰り出すかということを競っている。従来のフリースタイルは2小節ごとに踏む韻を変えながらひとつの物語を作っていった。でもいまは2小節ごとに異なったリズムやメロディのフレーズを切り替えて、それでいかに耳をひけるかを追求する。韻ではなくてフレーズが牽引するという。USのトラップ以降のラップ・ミュージックは、いかにこのフックでリスナーを掴めるかの戦いですよね。かつてのヒップホップ・ソウルの時代はフィーチャーしたR&Bシンガーがコーラスを歌ったけど、ドレイク以降はラッパーが自分で歌う。より音楽的になったとも言えるし、メロディだけじゃなくてリズムの解像度も高くて、トラップのような隙間の多いビートを彩る新しい解釈が求められる。

従来のフリースタイルは2小節ごとに踏む韻を変えながらひとつの物語を作っていった。でもいまは2小節ごとに異なったリズムやメロディのフレーズを切り替えて、それでいかに耳をひけるかを追求する。韻ではなくてフレーズが牽引する。(吉田)

二木:“USのトラップ以降のラップ・ミュージック” というラインが出ましたが、Leon、SANTAWORLDVIEW、Bank.Somsaart、そして YamieZimmer にふたたび話を戻すと、彼らは FNMNL の磯部涼のインタヴューで特に YamieZimmer がサウス・フロリダのヒップホップを熱心に聴いていると語っていましたね。ただ、その発言ももう2年前ぐらいのことですから、そのあいだに本人たちのなかにもいろんな変化があったとも推測できます。それはそれとして、僕が最初に彼らの音楽に惹かれたのは、ダーティ・サウスのファンクネスを継承する音楽に通じるものを感じたからなんです。彼らの音楽を聴いて2000年前後の TwiGy や DABO を連想したのもそういうことかもしれない。ちなみに、スモークパープが昨年出した『Dead Star 2』というアルバムに入っていたデンゼル・カリーとの “What I Please” のMVが今年に入って公開されましたね。

吉田:スモークパープがようやくアングラから浮上してまるで新人のように扱われていることに複雑な思いもありつつ(笑)、フロリダはアトランタと比較しても洗練されていなくて、歪んでいて、ときに不穏で、ときにユーモラスという、ダーティ・サウスになぜ「ダーティ」という形容詞がついていたかを体現しているようなサウンドですよね。スキー・マスクやデンゼル・カリーは、トラップコア的な冷たい暴力性や、ウィアードな音を多用するところに作家性を感じます。Leon のアルバムはロニー・J 的というか、BPMもトラップ以降の遅さで統一されてるけど、一方で Bank のアルバムはドレやマスタードのファンクをもっとダーティでロウなサウンドで更新するようなBPM速めのビートも多くて、YamieZimmer の懐の深さを感じますよね。

二木:実際に、Leon の『Chimaria』に収録された “Keep That Vibe” はサウス・フロリダのベース・サンタナのビートです。ここから語るのは多少強引な極私的解釈ですが、スヌープ・ドッグとファレルの大名曲 “Drop It Like It's Hot” をサンプリングしたスキー・マスクの『STOKELEY』(2018)収録の “Foot Fungus” は、少ない音数と音色でファンクを捻り出すいわば “ミニマル・ファンク” です。そして、そういうファンクの源流にはスライ&ザ・ファミリー・ストーン『暴動』(1971)があるのではないかと。YamieZimmer が作り出すファンクの律動とグルーヴはその最先端を行っているのではないか。そんなことを考えたりしました。ちなみに彼は Bank の “Who ride wit us” という曲では、80年代後半のマーリー・マールを彷彿させる原始的なブレイクビーツ、それこそブーム・バップと言ってもいいようなビートを作っています。そういう柔軟性も YamieZimmer の魅力だと思います。彼が前述したインタヴューで Budamunk について言及していたのがまた印象的でした。「今の日本語ラップは全く聴かない」と前置きした上で、Budamunk のビートを称賛している。そういう日本のヒップホップの聴き方もある。例えば、Budamunk が90年代、00年代のヒップホップやR&Bのインストをミックスする『Training Wax』というミックス・シリーズが昨年2枚出ましたよね。

吉田:あれめっちゃいいよね! 完全に音響の世界に行ってて、元のハイファイ寄りの音源をいかにかっこよくローファイに汚せるかということをやっている。「あの曲がこういうふうに聞こえるのか!」という驚きがある。

二木:まさにそう! 吉田さんがあのミックスを聴いているのが、めちゃうれしいですし、信頼できます(笑)。フィジカルでこっそり流通していただけですもんね。あまりにもあの音響が衝撃的で、Budamunk 本人に「あの音響はいったい何なんですか?」って訊いたんですよ。これは、僕の記憶が間違っていたら謝るしかないんですけど、「EQをいじっているだけですよ」って答えてくれたと記憶しています。EQいじるだけでこんなにも独創的な作品を作れるのかとさらに驚いた。

吉田:当時多かった「ヒップホップ・ソウル」とも呼ばれていたような、ヒップホップマナーのサンプリングループでビートが作られたR&B曲を、単にDJミキサーのEQでモコモコにフィルタリングするだけで彼の色にしてしまうという。ヒップホップ的な価値転倒が全編で表現されていて最高です。

二木:そう。ヒップホップ・ソウル色が強かった『Training Wax VOL.1』も素晴らしかった。たとえば、セオ・パリッシュのDJが好きな人にはぜひ聴いてもらいたいし、絶対気に入ると思う。それと、これは、僕のいささかロマンチックな歴史認識のバイアス込みで語りますが、『Training Wax』は Budamunk のオリジナルのビートではないものの、DJ KRUSH の『Strictly Turntablized』のリリースから25年つまり四半世紀のときを経た2019年のビート・ミュージックのひとつの成果を示している、それぐらい重要な作品だと感じています。

吉田:Budamunk は基本サンプルを使うんだけど、ミニマルで音数が少ないから、空間が多くて、リズムと同じく一音一音のテクスチャーというか、音質にも凄く耳がいきますよね。2019年は仙人掌の『Boy Meets World』の傑作リミックス盤が出たけど、そのなかの “Show Off” の Budamunk リミックスは音響的にかなりこだわっていて、中央で鳴るサブベースにリヴァーブの効いたコードのスタブに、ざらついたスネアが少し右のほうで鳴っている。このスネアは中央で鳴るハットと位相がズレていて、さらにそのスネアの残響音は左の方から聞こえるという確信犯的な立体感。終盤ではさきほど話した得意のEQフィルタリングも聞こえてきます。ミニマル・テクノやアンビエントを聴く耳で、細かい音の肌理やテクスチャーを追うと全然違う楽しみ方ができると思います。ひとつひとつの音の追い込み方と、その結果生まれている快楽がずば抜けている。

仙人掌 “Show Off - Budamunk Remix”

日本という地域のローカルな言語で表現されるラップ。その2019年の代表格である舐達麻が、グローバルに耳を刺激するビートメイカーと組む。こういうことがいま起きている。(二木)

二木:『Boy Meets World』のリミックス盤の制作の相談役が Budamunk でしたからね。彼はLA、ニューヨーク、中国のヘッズにも知られていると聞きます。SoundCloud や Bandcamp を通したビート・ミュージックの世界的なネットワークのなかにいる、日本のビートメイカーの先駆的存在じゃないでしょうか。

吉田:Bugseed にしても GREEN ASSASSIN DOLLAR (以下、GAD)にしても海外のオーディエンスがたくさんついてますよね。Bugseed は『Bohemian Beatnik』の衝撃からもう10年なのか……ウィズ・カリファにビートを使われた事件で脚光を浴びたりしましたが、SoundCloud でワールドワイドに認知度を上げて Bandcamp で作品を販売する日本のビートメイカーの先駆けとなった感がありますよね。

二木:いま GAD の名前も出ましたが、彼が2019年に大躍進した埼玉・熊谷のグループ、舐達麻の作品における主要ビートメイカーである事実は忘れてはならないですよね。彼はドイツのレーベルから作品を発表していますね。対談の冒頭で吉田さんから、ガラパゴス的な日本語ラップという言葉が出ました。つまり日本という地域のローカルな言語で表現されるラップということですね。その2019年の代表格である舐達麻が、グローバルに耳を刺激するビートメイカーと組む。こういうことがいま起きている。この話の流れで付け加えておくと、冒頭で触れた星野源が PUNPEE を客演にむかえた “さらしもの” のトラックを作ったのは、チャンス・ザ・ラッパー “Juke Jam” (『Coloring Book』収録)のビートを手掛けたり、『ブラック・パンサー』のサントラに収録された “I AM” という曲にもクレジットされているドイツ人のプロデューサー、ラスカルでした。ということで、次は舐達麻の話からはじめましょうか。

(後編へ続く)

interview with Squarepusher - ele-king

 古くからのファンなら、冒頭の和音とドラムを耳にしただけで涙がこぼれてくることだろう。スクエアプッシャー通算15枚目、5年ぶりとなるニュー・アルバム──といってもそのあいだにプレイヤーとしての側面を強く打ち出したショバリーダー・ワンのアルバム(2017)や、逆にコンポーザーとしての側面に重きを置いた、BBCの子ども向けチャンネル CBeebies による睡眠導入ヴィデオのサウンドトラック(2018)に、オルガン奏者ジェイムズ・マクヴィニーへの楽曲提供(2019)という、対照的な性格の1+2作品があったわけだけれど──『Be Up A Hello』は、ぶりぶりとうなるアシッド、切り刻まれたドラム、ジャングル由来のリズムなど、往年のスクエアプッシャーを彷彿させる諸要素に覆いつくされている。とはいえこれをたんなる懐古趣味として片づけてしまうことはできない。アルバムは序盤こそメロディアスで昂揚的な展開を見せるものの、ビートレスな “Detroit People Mover” を経て次第にダークさを増していき、おなじくビートレスでなんとも不穏な “80 Ondula” で幕を下ろす。
 フィジカルのシンセやミキサーを用いて制作されたという今作は、自身で新たにソフトウェアまで開発してしまった『Damogen Furies』(2015)とは正反対のアルバムだといえよう。その対照性はテーマにもあらわれている。前作では政治や社会にたいする怒りが原動力となっていたのにたいし、今回のアルバムをつくりはじめる契機となったのは、親友クリス・マーシャルの死というきわめて私的な出来事であった。クリスとは90年代初頭に一緒に音楽をつくって遊んでいた仲だったそうで、ようするにまだレコード・デビューするまえの、10代だったころのトム・ジェンキンソンに大きな影響を与えた存在だったわけだ。そのときのわくわくするような感覚、これからなにが起こるのか予測できない危険な感覚を取り戻したかったと、素朴にトムは語っている。ゆえに本作はアナログ機材を多用することになり、また90年代初頭の音楽から大いにインスパイアされることにもなった。ハードコアであり、レイヴである。
 その点においてこのアルバムは、いわゆるベース・ミュージックではないにもかかわらず、2010年代後半以降の──それこそ『92年におまえはどこにいた?』と問うゾンビーが体現しているような──当時を体験できなかった、けれどもかわりにグライムやダブステップを通過した世代によるいくつかの表現とリンクしうる一面を有しており、そういう意味ではきわめて今日的な作品であるともいえる。そしてそのような再帰性を用意することになったのが、かけがえのないひとりの人間の死であり、共有不能なかなしみであったこと、それについてわたしたちはどう思考を巡らすべきだろう?
 彼はやさしくほほえんでいた。そんな表情の写真はこれまで見たことがなかった。今回のアルバムは彼にとって、そしていまの音楽シーンにとってどのような意味を持つのか──昨秋〈Warp〉30周年イヴェントのために来日していたトム・ジェンキンソン本人に、新作の背景やそこに込められた想いについて語ってもらった。

あのころの感覚を取り戻したいというのがあったと思う。

2019年、〈Warp〉は設立30周年を迎えました。あなたはそのうち24年間〈Warp〉に関わっています。

トム・ジェンキンソン(Tom Jenkinson、以下TJ):30年のうちの大多数だね。

じつに8割を占めます。レーベルがアニヴァーサリーを迎えてどういう気持ちですか?

TJ:振り返れば契約したのは96年だった。ほかのレーベルからのオファーもあったけど、〈Warp〉を選んだんだ。理由は、90年代初頭に彼らがリリースしていた音源に興味があったから。それが当時の僕のインスピレイションでもあったんだ。

契約した当時といまとで、レーベルの変わらないところはどこでしょう?

TJ:正直にいって、リリースしているもののすべてが良いとは思っていない。でもそれは当然のことだよね。僕はレーベルがリリースを選ぶ過程に絡んでいないからね。そういう意味では、ほかのレーベル以上に〈Warp〉に興味を抱いているわけではないんだ。でも友だちもいるし、関係も良好に続いているから、いまにいたっている。正直、〈Warp〉のすべてをフォロウしているわけではないんだ。

では〈Warp〉の作品で良いと思っているものは? できれば友人ではない方の作品で。

TJ:イェー。ナイトメアズ・オン・ワックスのすごく初期のやつとか。とくに “Dextrous” は当時いちばん好きだったね。あとは LFO の “LFO” というトラック。それ以前の僕はエレクトロニック・ダンス・ミュージックにとくに興味を持っているわけではなかったんだけど、あれを聴いて初めて、その手の音楽の世界観に注意を払って聴くようになったんだ。それ以前のダンス・ミュージックはいわゆるコマーシャルなブルシットばっかりだったから。ラジオで聴くようなものにかんしてはね。だから興味をひかれなかったんだけど、LFO のあのトラックは深みがあるし、刺戟的だったし、挑んでくるような感覚があったし、聴いていてわくわくした。カタログのなかでメジャーかどうかはべつだけど、僕にとってはあの1曲だね(註:このエピソードはすでにいろんなところで語っている。たとえば『別冊ele-king Warp 30』をお持ちの方は123頁を参照)。

新作『Be Up A Hello』はジャングルのリズムの曲が多く、またアシッドもよく鳴っています。前作『Damogen Furies』ではじぶんでソフトウェアまで開発していましたけど、今回はアナログ機材が多用されているように聞こえました。原点回帰の意図があったのでしょうか?

TJ:このアルバムには個人的な側面があるんだ。かなしいことに、友人のクリス・マーシャルが去年(2018年)亡くなってしまってね。彼にたいするデディケイトの意味あいもこの作品にはあるんだ。そういう意味で今回のアルバムはトリビュートのかたちをとっている。そのために、今回使っている機材と出会ったときの、つまり90年代にクリスと一緒に音楽をつくっていた当時の……彼と僕はテクノロジーにすごく興味を持っていたから、これを使ったらどういうふうになるんだろう、どんなことができる機材なんだろう、ってふたりで探りながらやっていたんだけど、あのころの感覚を取り戻したいというのがあったと思う。当初のああいう古いマシーンって音のキャラクターも独特だしね。だから、今回の楽曲には機材の存在が刷り込まれているんだ。そうなってくると、機材から逃れることは完全には無理なんだよね。もちろん逃れようとはしたんだよ。新しい使い方をしたいとも思ったけど、割り切れないところもあった。だからそれを超えて、おなじ機材だけれど、むかしはやっていなかったようなやり方をしたいなと。そういう試みはしたつもりだね。

いちばん当てはまる言葉は、「アンプレディクタブル(予測不可能な)」だったと思う。先が読めない、なにが起こるかわからない。そもそも型が決まってなかったから毎回状況がちがう。それがいまのじぶんの音楽にも生きているんだ。

オフィシャル・インタヴューでは、レイヴ初期のシーンからインスパイアされたとも語っていましたね。

TJ:当時90年から93年くらいまでのクラブで流れていた音楽にはおおまかなくくりがあると思うけど、そのなかにもいろいろなものがあって、具体的に僕がそのインタヴューで触れていたのはアメリカのハウス・ミュージック、それから影響を受けた英国の音楽、それと当時のオランダやベルギーから出てきていた音楽だね。一時期オランダ、ベルギーからよりハードなダンス・ミュージックが爆発的に出てきていたからね。あとはブレイクビートの導入期のころでもあったと思う。当時ハードコアと呼ばれていたものは、のちにジャングルという呼び方に変わっていくわけだけど、そういうものにかんしてインタヴューで触れていたと思う。でも僕はとくに明確に分け隔てをしているわけではなくて、僕が聴いてエキサイトできるものを、大きな音で楽しむ。あとはヘドニスティック(快楽主義的)な体験ができる音楽がいいね。音楽そのものだけではなく、その周辺も含めて、ね。だから、使っているものがブレイクビートであれ、ドラムマシーンでつくったビートであれ、そういうことは関係なくて、じぶんが聴いて腹に響くみたいな、そういう体験ができる音楽のことをインタヴューでは話したと思う。

じっさいレイヴの場には行っていました?

TJ:ああ、もちろん、行っていたよ。当時はまだじぶんではパフォーマンスをしていなかったから、オーディエンスの一員としてそれを体験していたね。僕がパフォーマーとして最初にやったのは、いわゆるバンドの形態で。10代のころにやっていたのは、ジャズとかロックとか、名称はなんであれ、むかしからある音楽の提示のしかただった。でも一方で、じぶんの楽しみやリラクゼイションのために、そういったレイヴ的なイヴェントに行くことが多かったね。

レイヴにはDIYで自由で革命的な側面がある一方で、ドラッグの問題もありました。レイヴのムーヴメントについてはどう思っていますか?

TJ:いちばん当てはまる言葉は、「アンプレディクタブル(unpredictable:予測不可能な)」だったと思う。ようするに先が読めない、なにが起こるかわからない。ああいうものがすべてにおいて初めての時代だったから、決まったかたちがいっさいなくてね。ダンス・ミュージックを聴くためのイヴェントに前例がなかった時代だから。そもそも型が決まってなかったし、だから毎回状況がちがう。環境もさまざまで、場所だってパブのバックルームでやっていたり、巨大な倉庫みたいなところでやっていたり。音楽のためにつくられた場所ではないところからはじまっているんだ。いわゆるダンス・ミュージックのクラブというものが発展する以前の世界だよ。だからとうぜん危険な要素も絡んでいたとは思う。でも、危険だからこそ、なんかわくわくするというか、楽しいとか、いったいなにが起こるんだろうって感覚がすごくあったことを覚えている。その感覚がいまのじぶんの音楽にも生きているんだ。なんでも探訪してやろうっていうメンタリティーだね。あえてまだしっかり理解されていないもの、みんなが把握しきれていないものを探っていこうっていう感覚、それは当時のあの雰囲気にすごく近いと思うんだ。つまりパターンがないということだね。
 あともうひとつは、企業のスポンサーがなかったということ。つまりレイヴのイヴェントというのは、その場にいる人たちだけのものだった。いまのフェスティヴァルって規模は大きいけど、なにかのプロダクトのプロモーションに使われている感じがあるよね。そこに僕が出る場合も、僕の音楽がなにかを売るために使われているんじゃないかと思ったり。販売のヘルプだよ。あるものをかっこよくみせるためにじぶんの音楽が使われているような感じがして、僕はすごくいやだね。往年のあの雰囲気を知っている者としては、いまのあり方はちがうなってすごく思う。当時いちばんプレシャスだったのはそこかもしれないな。

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レイヴはその場にいる人たちだけのものだった。いまのフェスって規模は大きいけど、なにかのプロダクトのプロモーションに使われている感じがあるよね。僕の音楽もなにかを売るために使われているんじゃないかと思ったり。販売のヘルプだよ。

スクエアプッシャーはアルバムごとに新しいことに挑戦してきましたけれど、どのアルバムにもかならず1曲か2曲、とてもキャッチーで美しいメロディの曲が入っていますよね。今回だと1曲目の “Oberlove” がそれにあたると思うんですが、いつもそういう曲を入れるのは、実験的な試みとのバランスをとろうとしているのでしょうか?

TJ:たしかにそのとおり。その洞察はひじょうに興味深いな。僕が魅力を感じるのは未知の世界なんだ。いま売れているもの、いま流行っているものとそうでないもののあいだの境界線を僕はあまり意識していないけど、基本的には良い曲が好きで、良いメロディに惹かれる。これはじぶんではどうしようもない部分だよ。それを楽しみたいじぶんをあえて引きとめて、ちがうこと、そうじゃないことをやろうとするとしたら、それはじぶんにたいしてすごく残虐な行為だよね。じぶんへの裏切りだと思うんだ。僕自身はポップ・ミュージックもすごく好きだけど、でも一方では前衛的なものも大好きで。それからフューチャリスティックな試みをしている音楽も大好きだ。それらぜんぶをひっくるめてじぶんだと思っているから、たぶんそのさまざまな世界に橋渡しをするような音楽をつくりたいんだろうなって僕は思っている。聴いていてスウィートな気持ちになるような音楽ももちろん大好きだけど、おもいっきり実験的な、テクノロジーを用いてつくる音楽も大好きだからね。ときには音楽をつくるときも、メロディから入っていくことだってあるんだ。そのメロディはとてもわかりやすいものだけど、つくっていく過程でそれがだんだん発展していって、ぜんぜんちがうものに突然変異することもあるから、その過程じたいがそういう橋渡しをしていることになるのかな。そんな気もするね。ストレートでわかりやすい音楽からブルータルに実験的なものまで、そのあいだにあるのがたぶんジャズなんだろうな。ジャズでも、たとえばインプロが入ってくることによって、おなじ素材を扱っていてもぜんぜんちがう角度からその音楽を見ることができるような、ね。そういう橋渡しのようなことは意識的にしているよ。

最後の “80 Ondula” はノンビートでとてもダークで、ほかの曲と雰囲気が異なります。この曲でアルバムを終わらせたのにはなにか意図があるのでしょうか?

TJ:言っていることはわかる気がするよ。ほんとうに単純に言ってしまえば、「ライトからダークへ」。だんだんより暗くなっていくんだ。

暗くして終わらせたかったと?

TJ:友人がなくなったことで僕はすごくかなしい思いをしたから、その気持ちを、なんらかのかたちでこのアルバムで表現したかったんだ。ふだん死を意識しないで暮らしている人たちにも、命のはかなさみたいなものを感じて考えてもらえればなと思ってつくった。そのあらわれだと思うな。やっぱり生きている人間、残された人間にとって死のかなしみにひたるのはほんとうにつらいことだけど、それを含めた僕の経験みたいなものが、この暗いほうへと向かっていくアルバムの流れにあらわれているのかも。

基本的には良いメロディに惹かれる。それを楽しみたいじぶんをあえて引きとめて、ちがうことをやろうとするとしたら、それはじぶんにたいしてすごく残虐な行為だよね。じぶんへの裏切りだと思うんだ。

前作『Damogen Furies』には世界情勢にたいする怒りがありました。また3年前に国民投票でブレグジットが決まったとき、あなたは “MIDI sans Frontières” という曲を発表して、世界じゅうの人びとにコラボレイトを呼びかけました。いまのイギリスの状況についてはどう考えていますか?

TJ:とても複雑な状況だよ。手短に話すのも難しいけど、僕から見たところ、国民投票にいたるまでのキャンペーンの段階から、ひじょうに、人びとを分断する方向に動いていたような気がする。じぶんと相反する意見の人たちを悪いように見せようとして、相手にたいして疑念を持つような、そういう方向へ持っていこうとする動きがみられたと思う。それは「英国人対諸外国からきた人たち」という図式になっているけど、とにかくネガティヴで相手の悪いところばかりを増進させる、そういう政治的ゲームに巻き込まれていたように僕は思う。それを見ていてすごく気持ちが悪かったんだ。そこからどんどん下り坂で。国民投票以降、状況はさらに悪化している。見ていて衝撃的だと思うくらい、政治的な下降がみられると思っている。僕がここでなにか言ってもそれがすぐに功を奏するわけではないということはわかっているけど、少なくともじぶんのステイトメントとして、いままで見せられてきたものの対極を示したい。互いの良いところをもっと見て、つながりあおうよということだね。互いにコミュニケイションをとろうということ。それを訴えるうえで、音楽は良い道具になると僕は思っているんだ。効果のあるインストゥルメントになると思う。悪いところじゃなくて、人間の良い側面、調和性みたいなものを増進して伝える、音楽はその術になると思うね。

 訊きたいことはほかにもたくさんあったのだけれど、残念ながらここで時間切れ。蛇足ながら最後に、昨日公開された真鍋大度の手による “Terminal Slam” のMVについて少しだけ触れておきたい。
 渋谷の街中や車内に掲げられている広告を次から次へとスクエアプッシャーのものへと置き換え、それらを過剰なまでに暴走させるこの映像は、大企業や広告代理店の残虐性を見事に告発している。1月30日の深夜0時、同ヴィデオが渋谷のスクリーンに映し出されるのをじっさいにこの目で眺めるというメタ的な体験をしてみて、いかにふだんわたしたちが暴力的な広告に包囲されているのか、あらためて確認させられることになった。「僕の音楽がなにかを売るために使われているんじゃないかと思ったり。販売のヘルプだよ」という前出のトム・ジェンキンソンの発言とあわせて考えると、ひじょうに示唆的なMVである。


5年ぶりとなる超待望の単独来日公演が大決定!!

2020年4月1日(水) 名古屋 CLUB QUATTRO
2020年4月2日(木) 梅田 CLUB QUATTRO
2020年4月3日(金) 新木場 STUDIO COAST

TICKETS : ADV. ¥7,000+1D
OPEN 18:00 / START 19:00
※未就学児童入場不可

MORE INFO: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=10760

チケット情報
2月1日(土)より一般発売開始!

Squarepusher - ele-king

 いよいよ明日31日にリリースされるスクエアプッシャーのニュー・アルバム『Be Up A Hello』ですけれども、なんとこのタイミングで新曲 “Terminal Slam” のMVが公開されました。監督を務めたのはライゾマティクスの真鍋大度。渋谷の風景がすごいことになっています。下記リンクより早急にチェック!

https://squarepusher.net/terminal-slam

[2月28日追記]
 近未来の東京を舞台にした “Terminal Slam” のMVですが、その制作の裏側に迫る特設ページが公開されました。街中の広告を消去したりスクエアプッシャー由来のものに入れ替えたりする試みが、どのようなプロセスを経て映像化されていったのかが明らかにされています。かなり興味深いです。下記リンク先をチェックしましょう。また、監督・真鍋大度よりコメントも到着しています。

遠い未来ではなく近い未来を現代の技術を駆使して実装しよう、というところからアイディアが始まり、近未来の広告をテーマに議論して制作しました。最後の最後まで Squarepusher 本人にたくさんの細かいフィードバックをもらいながら映像表現を調整しました。彼のグリッチやインタラクションに対するクリエイティブなこだわりをチーム全体で享受でき、非常にエキサイティングな制作でした。また今回、撮影した動画の中に含まれる人やオブジェクト、広告を、AIを駆使して自動認識させ、それらを現実から消去したり、広告を別のものに置き換えるなどの処理をしています。かなり近い将来、デバイスを装着して街中を歩きながら今回のMVと同じように広告を自由に書き換える体験が出来るなと思いワクワクしています。 ──真鍋大度(Rhizomatiks)

https://research.rhizomatiks.com/s/works/squarepusher/

SQUAREPUSHER
いよいよ今週金曜にリリースとなる
5年ぶりの最新作『BE UP A HELLO』より
真鍋大度が監督、超近未来の東京を舞台とした
“TERMINAL SLAM” MVを解禁!

常に新しい響きと新たな試みを求め、リスナーに驚きと衝撃を与え続けている唯一無二のアーティスト、スクエアプッシャー。来日公演が4月に決定し話題となる中、いよいよ発売が今週金曜日に迫った最新作『Be Up A Hello』より、新曲 “Terminal Slam” のMVが公開!

「Terminal Slam」MV
https://squarepusher.net/terminal-slam

さきほど0:00、渋谷スクランブル交差点の巨大スクリーンにて、突如このビデオがプレミア上映された。超近未来の東京を舞台にし、街に蔓延する広告の数々とARグラスを主題とした本ビデオのプレミアにマッチしたロケーションであり、明日に迫ったリリースを待つ日本のファンにとっても嬉しいサプライズとなった。

映像はスクエアプッシャーの長年のコラボレーターでもある真鍋大度(Rhizomatiks)が監督。ライゾマティクスのディレクターであり、創設者のひとりでもある彼は、国内外の様々なアーティストとのコラボレーションを行う日本が世界に誇るアーティスト、プログラマー、DJ。スクエアプッシャーと真鍋は2013年のスクエアプッシャー x Z-MACHINES のプロジェクトで初めてコラボレート、2015年の来日公演では真鍋がオープニングアクトを務め、2017年のソニックマニアで披露されたショバリーダー・ワンのライブではビジュアルセットをライゾマティクスチームが担当するなど、親交を深めてきた。

遠い未来ではなく近い未来を現代の技術を駆使して実装しよう、というところからアイディアが始まり、近未来の広告をテーマに議論して制作しました。最後の最後まで Squarepusher 本人にたくさんの細かいフィードバックをもらいながら映像表現を調整しました。彼のグリッチやインタラクションに対するクリエイティブなこだわりをチーム全体で享受でき、非常にエキサイティングな制作でした。また今回、撮影した動画の中に含まれる人やオブジェクト、広告を、AIを駆使して自動認識させ、それらを現実から消去したり、広告を別のものに置き換えるなどの処理をしています。かなり近い将来、デバイスを装着して街中を歩きながら今回のMVと同じように広告を自由に書き換える体験が出来るなと思いワクワクしています。 ──真鍋大度(Rhizomatiks)

いよいよ明日1月31日に発売となる5年ぶりの最新作『Be Up A Hello』は、エレクトロニック・ミュージックに目覚めた当時の思いや記憶を綴った日記のようでもありつつ、直感と初期衝動に従って一気に完成させ、強烈で、スピーディで、目まぐるしくて、刺激的で、先の予測のつかない、「これぞスクエアプッシャー」と言える内容となった最新アルバム。

本日1月30日(木)には、タワーレコード渋谷店限定で「Squarepusher『Be Up A Hello』リリース前夜祭」と称し、アルバムの全フォーマット世界最速販売に加え、真鍋大度 (Rhizomatiks) & mito (clammbon) & たなしん (グッドモーニングアメリカ/タナブロ)によるトークショーを開催! 今回解禁となったこのMVについてもたくさん裏話が聞けるだろう。店頭での観覧は無料となっており、タワレコTVにてネット生配信も行われる。

【詳細はこちら】
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=10808

国内盤にはボーナストラックが追加収録、解説書封入、ボーナスDLカードが封入される。また数量限定でオリジナルTシャツ付セットも発売決定! Tシャツセットにのみ付属される限定DLカードからは、CDに収録された音源とは異なるボーナストラックがダウンロードでき、これらのバリエーション豊かなボーナストラック群からは、90年代のアナログ機材が多用されたという本作の制作中、様々なアイデアを試み、様々な形でファンに届けようとするトム・ジェンキンソンの積極的な姿勢が垣間見られる。

ここ何年かの中で、彼の最高傑作だ。 ──The Wire

25年のキャリアを経てなお、ジェンキンソンは遊び心を全く失っていない。 ──Crack ★★★★★★★★

label: Warp Records / Beat Records
artist: Squarepusher
title: Be Up A Hello
release date: 2020.01.31 FRI ON SALE

国内盤CD BRC-624 ¥2,200+税
国内盤CD+Tシャツ BRC-624T ¥5,500+税

国内盤特典:ボーナストラック追加収録/解説書封入/ボーナスDLカード封入
(Tシャツセットには限定ボーナストラックDLカードも封入)

Nervelevers (Official Audio)
https://youtu.be/qtSJA_U4W1U

Vortrack (Original Mix)
https://youtu.be/s3kWYsLYuHc

Vortrack (Fracture Remix)
https://youtu.be/59ke5hp-p3E

5年ぶりとなる超待望の単独来日公演が大決定!!

2020年4月1日(水) 名古屋 CLUB QUATTRO
2020年4月2日(木) 梅田 CLUB QUATTRO
2020年4月3日(金) 新木場 STUDIO COAST

TICKETS : ADV. ¥7,000+1D
OPEN 18:00 / START 19:00
※未就学児童入場不可

MORE INFO: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=10760

チケット情報
2月1日(土)より一般発売開始!

Little Dragon - ele-king

 いまから1年とちょっと前、〈Ninja Tune〉との電撃契約が話題になったリトル・ドラゴンだけれど、どうやらついにアルバムが完成したようである。バンドの基本に立ち返った内容になっているとのことで、新しいチャレンジを試みると同時に内省的なムードもある作品に仕上がっているようだ。新曲 “Hold On” が公開中なので、まずはそれを聴いて想像を膨らませておこう。

LITTLE DRAGON
唯一無二の歌声を持つ日系スウェーデン人のボーカリスト、
ユキミ・ナガノ率いるスウェーデン発4人組バンド、リトル・ドラゴンが
最新作『New Me, Same Us』をリリース決定!
同時に新曲 “Hold On” を公開!

インディペンデントな女性アーティストとして長年活躍する日系スウェーデン人のミステリアスなボーカリスト、ユキミ・ナガノに加え、キーボードのホーカン・ヴィレーンストランドとベースのフレドリック・ヴァリン、そしてドラムとパーカッションを担当するエリック・ボダンの4人から成るスウェーデンのバンド、リトル・ドラゴン。2014年リリースの『Nabuma Rubberband』がグラミー賞にノミネートされ、ゴリラズ、サブトラクト、フライング・ロータス、フルーム、ケイトラナダ、デ・ラ・ソウル、DJシャドウ、マック・ミラーといった錚々たるアーティスト達とのコラボレーションの経験からもわかる通り、世界的なトップアーティストとして活躍する彼らの待望の最新作『New Me, Same Us』が3月27日にリリースされることが決定した。また、同時に新曲 “Hold On” が公開。

Little Dragon - Hold On
https://www.youtube.com/watch?v=JmDvTxGeJuY

学校終わりに集まっては、ジャムセッションをしたり、ア・トライブ・コールド・クエストやアリス・コルトレーンのレコードを聴いたりして過ごしたイェーテボリでの学生時代からずっと活動を共にしてきた彼らにとって『New Me, Same Us』のサウンドは、バンドの基本に立ち返り、自分たちの楽器、つまりドラム、ベース、キーボード、ハープ、ギター、ボーカルに対する愛情を再び深めたものであり、その結果、バンド史上最も意欲的で紛れもなく最高の音楽が生まれた。

『New Me, Same Us』は、進化を続けるリトル・ドラゴンがまた新たなステージに進んだことを象徴する作品であり、堅実でありながら型にはまらないR&B、ポップ、エレクトロニックという独特のスタイルに新しい方向性を見いだしながら、変わることなく若々しい精力的なサウンドを鳴らしている。同時にアルバムには内省的な空気も感じられ、ユキミの特徴的な歌声は、移り変わるものごとや憧れの感情や別れを告げることに思いを馳せている。

あらゆる変化を経験し、それでも自分たちが信じる物語によって団結している。その物語こそが今の自分たちを築いたのだから。 ──Little Dragon

リードシングル “Hold On” は、自立して前に進んでいくというメッセージであり、“Rush” は失われた愛を懐かしがり、“Another Lover” は心の痛みを伴う白日夢として描かれ「自分のしていることが理解できない/自分たちがどこに向かっているのかわからない」と歌詞の冒頭でユキミが嘆く。“Sadness” というぴったりなタイトルの付いた曲では「誰かを理解した気になってもやがて時間が経てば新たな一面が現れる」とバンドは述べる。“Where You Belong” は、喪失と死への不安に満ちた子守歌だ。ただし、楽観主義の入り込む余地も残されている。“New Fiction” は歌の世界の中にその空白を模索し、新たな物語を創造して自らの進路を歩むことを促す。そして “Are You Feeling Sad” は、時には一歩下がることや、不安になりすぎないということを聴き手に思い出させる。

アートワークを担当したのは、数々の賞を受けてきたスウェーデンの映画監督、プロデューサー、脚本家、アニメーターであるヨハネス・ニホームが務めた。

リトル・ドラゴンの最新作『New Me, Same Us』は、3月27日(金)に〈Ninja Tune〉よりリリース! 国内盤CDにはボーナストラック “Let Me Know” が追加収録され、解説書と歌詞対訳が封入される。また、現在 iTunes でアルバムを予約すると公開中の “Hold On” がいち早くダウンロードできる。

label: NINJA TUNE / BEAT RECORDS
artist: LITTLE DRAGON
title: New Me, Same Us
release date: 2020.03.27 FRI ON SALE

国内盤CD BRC-632 ¥2,200+税
国内盤特典:ボーナストラック追加収録/解説・対訳冊子封入

[ご予約はこちら]
BEATINK.COM:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=10811

TRACKLISTING
01. Hold On
02. Rush
03. Another Lover
04. Kids
05. Every Rain
06. New Fiction
07. Sadness
08. Are You Feeling Sad?
09. Where You Belong
10. Stay Right Here
11. Water
12. Let Me Know *Bonus Track for Japan

Caribou - ele-king

 カリブーといえば、フォー・テットとほぼ同じ時期に登場したエレクトロニック・ミュージシャンで、カナダ出身の数学者でもある。カリブーの音楽にはつねに参照されるモノ(アーサー・ラッセルからセオ・パリッシュまで)があるように思われるが、しかし彼のずば抜けたアレンジ能力と咀嚼力が彼にしかできないエレクトロ・ポップへと押し上げる。『Swim』(2010)もそうだったし、『Our Love』(2014)もそうだった。
 ダフニ名義ではダンス・トラックをコンスタントに発表しているダン・スナイスが、カリブー名義で久しぶりにアルバムを出す。タイトルは『Suddenly』。2020年2月28日発売。まずは先行シングル曲 “Never Come Back” をどうぞ。

CARIBOU - Never Come Back

Artist: Caribou
Title: Suddenly
Label: PLANCHA / City Slang
Cat#: ARTPL-128
Format: CD / Digital
※解説・歌詞・対訳付き予定
※紙ジャケット仕様
Release Date: February 28, 2020
Price(CD): 2,200yen + 税

TRACK LIST:
01. Sister
02. You and I
03. Sunny’s Time
04. New Jade
05. Home
06. Lime
07. Never Come Back
08. Filtered Grand Piano
09. Like I Loved You
10. Magpie
11. Ravi
12. Cloud Song

―――――

Caribou
カナダ出身ロンドン在住、ダン・スナイスのソロ・プロジェクト。元々はマニトバ名義で活動をスタートし、名門Leafから『Start Breaking My Heart』(2001年)『Up in Flames』(2003年)にリリースした後、現在のCaribouに名義に変更する。そして2005年にサード・アルバム『The Milk of Human Kindness』を発表し、初来日を果たす(共演はフォー・テット、ムーギーソン)。その後City Slang / Mergeへと移籍し4作目『Andorra』をリリースし、カナダの”マーキュリー・プライズ” にあたる国民的音楽賞、ポラリス・ミュージック・プライズを受賞した。2010年にリリースした『Swim』も高い評価を経て、ポラリス・ミュージック・プライズにノミネートされる。2012年にはフジロックに初出演し、ホワイト・ステージでパフォーマンスを行った。2014年にリリースした『Our Love』はさらに高い評価を得て、その年の様々な媒体の年間ベストの上位に名を連ねた。リリースするたびにその評価を高め続ける中、ついに約5年ぶりのアルバムを完成させた。

渡邊琢磨 - ele-king

 映像とその場での演奏とが合わさって初めてひとつの作品となる映画『ECTO』が、2月11日に東京都写真美術館で上演される。同作は、これまで多くの映画音楽を手がけてきた渡邊琢磨が水戸芸術館ACM劇場からの委嘱でみずから監督を務めたホラー作品で、映像には染谷将太、川瀬陽太、佐津川愛美が出演、作中ではベンヤミンやバシュラールのことばがカットアップされているという。当日はそこに弦楽五重奏による演奏が生で重ねられる。ジョニー・グリーンウッドやダニエル・ロパティンなど、音楽と映画の新たな結びつきがひそかに熱を帯びているいまだからこそ、この挑戦的な試みは体験しておきたい。詳細は下記より。

奇才・渡邊琢磨が、染谷将太、川瀬陽太、佐津川愛美をキャストに迎えて放つ、謎のアンビエントホラー《ECTO》の上映+弦楽五重奏によるサウンドトラック上演が、第12回恵比寿映像祭にて2/11に開催!!

【公演情報】
第12回恵比寿映像祭「時間を想像する」
スペシャル上映 渡邊琢磨《ECTO》[サウンドトラック生演奏付き上映]
日程:2020年 2月11日(火・祝)
時間 : 昼の部 14:00 / 夜の部 18:00 ※各回冒頭に楽曲上演が付きます。
会場:東京都写真美術館 1F ホール
料金:前売 ¥2,500 / 当日 ¥3,000
演奏者:吉田篤貴 (1st Vn)、地行美穂 (2nd Vn)、須原杏 (Va)、徳澤青弦 (Vc)、千葉広樹 (Cb)、中村督 (Operation)、渡邊琢磨 (Cond)
※チケットぴあにてチケット発売中[P コード:763-342]

監督・脚本・編集・音楽・効果: 渡邊琢磨
映像出演: 染谷将太、川瀬陽太 / 佐津川愛美
抽象場面監督:TAKCOM / 撮影: 四宮秀俊 / 照明: 秋山恵二郎 / 衣装: エドストローム淑子/ 特殊効果: 伊東篤宏 / 抽象場面VFX:木村和正 / 録音: 山口宣大 / 音響: 中村督 / 監督助手: 平島悠三 / 助監督: 上野修平 / 制作: 三好安洋 /プロデューサー: 西ケ谷寿一 / 製作: 水戸芸術館ACM 劇場

【恵比寿映像祭オフィシャル・ホームページ】www.yebizo.com

◆《ECTO》オフィシャル・トレーラー
https://youtu.be/n_9hR_GuLIg

Roger & Brian Eno - ele-king

 ロジャー・イーノとブライアン・イーノによるコラボレイション・アルバム『Mixing Colours』が、クラシカルの老舗〈Deutsche Grammophon〉より3月20日にリリースされる。フォーマットはLP、CD、デジタルの3種類。両者のコラボじたいはこれまで何度もおこなわれてきたが(たとえば昨年リイシューされたダニエル・ラノワとの『Apollo』や『Thursday Afternoon』など)、ふたりが共同名義でアルバムを発表するのは今回が初めて。発売に先がけ収録曲 “Celeste” がスポティファイアップル・ミュージックで先行配信中。なおブライアンのほうは年末にも新曲を公開したばかり。

ブライアン&ロジャー兄弟による初のデュオ・アルバムリリース決定!
先行トラックも配信スタート!

ミキシング・カラーズ
ロジャー・イーノ & ブライアン・イーノ

MIXING COLOURS
ROGER ENO and BRIAN ENO

発売日:2020年3月20日(金)
CD品番:483 7771
LP品番:483 7772
オープン・プライス(輸入盤)

▼『Celeste』(セレステ)先行配信中
https://classic.lnk.to/RE_CelestePR

■収録曲
01. Spring Frost
02. Burnt Umber
03. Celeste
04. Wintergreen
05. Obsidian
06. Blonde
07. Dark Sienna
08. Verdigris
09. Snow
10. Rose Quartz
11. Quicksilver
12. Ultramarine
13. Iris
14. Cinnabar
15. Desert Sand
16. Deep Saffron
17. Cerulean Blue
18. Slow Movement: Sand

[海外プレスリリース]

ロジャーとブライアンのイーノ兄弟は、初のデュオ・アルバム『ミキシング・カラーズ』でサウンドの方向性を追求した。この2人のドイツ・グラモフォン・デビュー盤は、デジタル、LP、デジパックCDの3形態で2020年3月20日に世界リリースが予定されており、今後の活動へつながる大きな第一歩となる。アルバムに収められた18曲のサウンドスケープは、聴き手を曲の奥底に漂う永遠の空間へといざなう。

『ミキシング・カラーズ』の内容は何年もかけて磨きあげられたもので、作曲家、プレイヤー、プロデューサーとしての長年にわたる2人の経験が活かされている。アルバムづくりは、ロジャー・イーノがまず1曲ずつMIDIキーボードを使って録音するところから始まった。こうして収録されたデジタルのMIDIファイルを、ロジャーが兄に送り、兄は曲の内容に手を加えたり処理したりして、1曲ごとに独自のサウンド世界を作り上げた。この共同作業の結果、最終的にはきわめて自然なダイナミズムが生みだされた。

『ミキシング・カラーズ』には、2005年頃に書かれ、大作に組み込まれることは想定されていなかった初期の曲も収められている。

「ぼくらは当時、こういう結果になることは想定していなかった──これは15年以上にわたる、ぼくらの会話のやりとりのようなものだね」とロジャーは語る。
「ぼくは朝起きて、そのまますぐに2階へ行き、楽器の準備をして即興で曲をつくり、ブライアンが喜びそうなフレーズを彼に送った。フルアルバムにするというアイディアは、曲がいくつかまとまったとき、頭に浮かんだのさ。そして実際やってみたら、わるくないと思えた。ぼくにしてもブライアンにしても、1人じゃ到底実現できなかった内容になったからね」

『ミキシング・カラーズ』は、音楽の過去と未来のあいだに橋をかけている。
ロジャーの曲にはシューベルト後期の憧れにみちたメロディがあり、ブライアンのサウンドデザインには革新的なエレクトロニック・ミュージックを使ったコンセプチュアル・アートが取り入れられており、新しいメディアがもつ創造的可能性を追求し続ける彼の、変わらぬ姿勢が反映されている。この半世紀のあいだ、ポップス界はエレクトロニック・ミュージックがもつ巨大な可能性を追求し続け、かつては想像できなかったサウンドの色彩やインストルメンタルの響きを作りあげてきた。

収録された18曲には、1曲をのぞいてすべて色と関連したタイトルがついている。〈暗い琥珀色〉〈黒曜石〉〈緑青〉などだ──抽象画で使われる色彩と共通するところがある。そしてすべての曲が一体となり、音色や音のコントラストに対する深い瞑想が生みだされている。最後の魅惑的な〈緩徐楽章:砂〉は、音楽を音色、響き、リズムという基本に立ち返らせる作品である。

ブライアンはこう語っている。「これまで従来の楽器の世界では、クラリネットが小さな島をつくり、ヴィオラが別の島を、グランド・ピアノがまた別の島を、といったぐあいに楽器が使われてきた。どの楽器も音の可能性の面では限界があって、音の可能性という無限の海の中に浮かぶ孤島として存在していたった。だけどエレクトロニクスの世界では、こうした孤島と孤島のあいだの部分に目が向けられて、これまで存在していなかった、まったく新しいサウンドが生まれたのさ。そんな海を、ロジャーのたぐいまれな曲と一緒に渡っていけたのは、ほんとうにうれしかったね」

ロジャーは、「この作品は、ぼくらが共有するアート、音楽、文学への興味から出発し、まさにコラボレーションそのものとして実ったものだ」とつけ加えた。「このアルバムを聴けば聴くほど、とりわけブライアンが作り出したすばらしい世界に触れれば触れるほど、聴き手は巨大な風景の中に入り込み、その中で無限の時間を過ごせるようになる」と語っている。

アルバム・ジャケットに使われている絵は、ドム・セオバルドの作品で、とりわけショッキングな1枚は、ロジャーからブライアンにプレゼントされたものである。

https://www.universal-music.co.jp/brian-eno/news/2020-01-24-release/

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