「You me」と一致するもの

HEADZ 20th Anniversary Party - ele-king

 ここ最近も、空間現代やgoat、あるいはMoe and ghostsなど、むちゃくちゃ刺激的でユニークな作品をリリースしている、佐々木敦主宰のHEADZが今年で20周年を迎えます。GWの真っ直中5/2と5/3の2DAYS、レーベルは渋谷で20周年を記念にしてのイベントを開催します。
 これだけのメンツが揃うことは滅多にないでしょう。ぜひ、日本の音楽シーンのカッティングな局面を体験してください!

HEADZ 20th Anniversary Party
“HEADZ 2015-1995=20!!!”

日時:2015年5月2日(土)、5月3日(日)
会場:渋谷TSUTAYA O-nest

開場:16:30 / 開演:17:00
料金:2,500円+1 D(当日のみ)


UNKNOWNMIX DAY(5月2日)

伊東篤宏(Optrum)
豊田道倫
core of bells
空間現代 × Moe and ghosts
goat
ju sei
MARK
コルネリ
suzukiiiiiiiiii × youpy


WEATHER DAY(5月3日)

三浦康嗣 & 蓮沼執太
木下美紗都と象さんズ
detune.
Jimanica
minamo(杉本佳一 + 安永哲郎)
ASUNA
よだまりえ
毛玉
SUBMARINE


問い合わせ:HEADZ(TEL. 03-3770-5721 / https://www.faderbyheadz.com

80年代後半より、映画、音楽、芸術、近年では文芸、演劇とジャンルを横断し、精力的な活動を続ける批評家の佐々木敦が主宰するHEADZが今年で発足20周年を迎えます。

カッティング・エッジな音楽雑誌『FADER』、ジャンルレスな濃縮雑誌『エクス・ポ』他の編集・発行、トータス、ジム・オルーク、オヴァル、カールステン・ニコライ他の海外ミュージシャンの招聘(来日公演の企画・主催)、UNKNOWNMIXやWEATHERといった音楽レーベル業務、飴屋法水の演劇公演の企画・制作等(ままごと『わが星』のDVD他、演劇やダンス・パフォーマンスの作品を発表するplayレーベルもスタート)、HEADZはこの20年、多岐な活動を続けて来ています。

このアニヴァーサリー・イヤーを記念したイベントをゴールデンウイークに行います。
5月2日(土)は佐々木がHEADZ発足以前よりスタートさせていたレーベル、UNKNOWNMIX所縁の音楽家が、5月3日(日)は2000年よりスタートし、こちらも15年以上の歴史となったWEATHERレーベル所縁の音楽家が出演致します。

「空間現代 × Moe and ghosts 」や「三浦康嗣(□□□) & 蓮沼執太」のような、この日限りの貴重なコラボレーションも含む、HEADZが紹介して来たさまざまな刺激的な音楽をぐっと凝縮して体感出来る、この二日間の公演に是非お越し下さい。

MUST COME !!


OG from Militant B - ele-king

ラガラガ救出大作戦!

 昨年『ノーザン・ソウル』という映画が公開された。この映画でわたしが一番ウケたのは、リアルなノーザン・ソウル・ファッションである。どうも日本でノーザン・ソウルというと、どちらかと言えばスウィンギング・ロンドンやモッズ系の格好をした人びとのイメージがあったのだが、この国に住むようになって「ノーザン・ソウル同窓会」みたいな催しに行った時、わたしは度胆を抜かれた。
 おっさんたちが履いているあのフレアと呼ぶにはあまりにも幅広のズボンは、ありゃ何だっけ、ほら中学校でヤンキーが履いてたやつ。あ、ボンタン? いやボンタンは裾が締まってたし、そうじゃなくてなんだっけほら、ああドカンだ、ドカン。しかもよく見れば青いドカンに白エナメルのベルトを締めた人なんかもいるし、上半身はランニング一丁でその上からサスペンダーでドカンを吊ってたりして髪型さえ違ったらこれはまるで……。と訝っていたら、おばはんたちは裾が床につきそうなフレアースカートでくるくる回っていて、これもまさに昔のヤンキーの姉ちゃんたちの制服のスカート丈である。なんのこたあない。ノーザン・ソウラーズは70年代の日本のヤンキーだった。そしてそのファッションを忠実に再現していたのが『ノーザン・ソウル』である。
 またこのUK版ヤンキーたちの集団ダンスシーンの野太さというかマッチョさが圧巻でブリリアントなのだが、どうやら日本ではヤンキー文化は反知性主義などと言われているらしく、その文脈で言えば『ノーザン・ソウルl』なんかはもう反知性主義大爆発である。

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 5月7日の投票日を控え、UK総選挙戦がたいそうおもしろい。アナキー・イン・ザ・UKとはこのことかと思うほどのカオスである。二大政党だった保守党と労働党はどちらも不人気でマジョリティーを取れそうになく、右翼政党UKIPが台頭していたかと思えば、その勢いをスコットランドのSNPが奪った。昨年スコットランド独立投票で敗けたこの政党のシュールなまでの大躍進と、現代にあっては「極左」と呼ばれてしまうスタンスが、保守派からは危険視され、左派の心を躍らせている。それはまるでUKIPが出現したときの逆ヴァージョンのようだ。下層の人びとが右から左にまたジャンプしはじめている。
 うちの近所でもその現象は見られる。もともとブライトンはアナキストやエコ系の人が多いので以前からみどりの党が強い。が、みどりの党の支持者といえばミドルクラスのインテリと相場は決まっていたのに、今年は貧民街の家の窓にもみどりの党のステッカーが貼ってある。
「スコットランドのSNPの候補者がブライトンにいればSNPに投票するけど、いないからSNPと協力体制を組んでいるみどりの党に入れる」と言っている人がわたしの周囲にも多いのだ。
 この右からいきなり左に飛んでしまう軽さは識者に「小政党のつまみ食い」とか「危険な愚衆政治」とか言われる。彼らはこれを政治危機と呼び、「英国だけじゃない。欧州の有権者は長期的な目線でしっかり物を考えて大政党に投票しなくなった」と嘆く。
 が、大政党は何年も前から下層を存在しないものとして国を回している。はなから相手にされてない層の人たちが大政党のマニフェストを聞いていったい何を長期的に考えろというのだろう。

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 昨年、『ノーザン・ソウル』とほぼ同時期に公開されたのが『ライオット・クラブ』だ。こちらは前者とは正反対の特権階級のポッシュな青年たちを描いた作品だ。オックスフォード大学でも両手で数えるほどのトップエリートしか入れない架空のクラブが、田舎のパブでチャヴも真っ青の反社会的行為を行う話なのだが、これはオックスフォードに実際に存在しているブリンドン・クラブをモデルにしている。実際このクラブにはあの映画の若者たちのように正装してレストランでディナーし、その後で店舗を破壊して店主に金を握らせる伝統があるそうだ。クラブ出身者の若者たちが政界に入り、国を支配する立場になるのも映画と同じである。ブリンドン・クラブの元メンバーには英国首相デヴィッド・キャメロンやロンドン市長ボリス・ジョンソンがいる(彼らは同期)。 
 ある日本のサイトを読んでいたら、「愛」、「夢」、「友情」、「仲間」などはヤンキー用語であり、よって反知性主義の言葉でもあると書かれていた。なるほど『ノーザン・ソウル』にもたしかにこのヤンキー概念はすべてあった。が、『ライオット・クラブ』ではこれらの概念は片っ端から否定されている。代わりにポッシュな青年たちが叫んでいる言葉は「レジェンド(伝説)」と「パワー(権力)」である。「愛」や「夢」を下層のコンセプトと否定し、「伝統」と「権力」を奉ずる青年たちは、自分たちが借り切ったパブの(店主と従業員が一生懸命に装飾した)一室をゲラゲラ笑いながら破壊し、庶民階級の女学生を呼び出して「3年分の学費を払ってやるから俺たち10人に口淫しろ」と言い、「もう金はいらないから出て行ってくれ」というパブの店主に暴行を加える。で、その店主が瀕死の状態になるので警察沙汰になるのだが、「出て行け」と言った店主にクラブのメンバーが札束をちらつかせながら言う台詞が印象的だ。「君たちは僕たちを嫌いだと言う。でも、君たちは本当は僕たちが大好きなんだよ」
 だがパブの店主はふふんと笑い「あんたたちはそこら辺でストリートを破壊しているガキどもと何の変わりもないじゃないか」と言うものだから死ぬ寸前までボコられるという、はっきり言って胸糞の悪い映画だ。この映画は選挙前の年に公開されたアンチ保守党プロパガンダ映画として物議を醸した。

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 いま「英国の政界で最も危険な女」と呼ばれているスコットランドのSNPの女性党首は、「希望の政治」と「オルタナティヴな政治」という言葉をよく使う。
 ホープ。なんてのもまたいかにもヤンキーな響きだし、オルタナティヴという言葉だってけっこうヤバい。引用文献や歴史的&数字的裏付け等々の証拠を見せてから代替案を説明することもなく、大雑把に「オルタナティヴ」なんて言葉を投げるのはいかにも反知性的ではないか。「知識」より「感じ」を重んじるのはヤンキーの専売特許だ。
 こう書いてくるとロックなんてのもまた相当ヤンキーであり、「転がる石のように生きる」なんつうのも何の石がどの角度の傾斜で転がり、どの水準におけるライフを生きるのかグラフ化して解説しない点でフィーリング本位だし、「僕はドリーマーかもしれない。でも国なんてないとイマジンすれば僕たちは一つになれる」に至ってはもう「夢」とか「一つになろう」とかヤンキー概念の連発だ。
 かくしてロックは単なるバカと見なされ衰退し、伝統という名の世襲のものや、権力、財力といった計測可能な目に見えるものだけが世間で幅を利かすようになり、社会を牛耳ることになる。ロックというヤンキーが没落すると共に、息苦しいほど社会に流動性がなくなったのは偶然のことなのだろうか。
 『ライオット・クラブ』では特権階級の青年たちが「あいつらは上向きの流動性のことばかりバカの一つ覚えのように語っている」と言ってゲラゲラ笑っていた。
 一方、『ノーザン・ソウル』ではランカシャーの工場に勤める労働者階級の青年たちが下から上に向かって拳を突き上げながら力強く踊っている。

                
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 下側にいる人間が拳を上に突き上げられない時、その拳はどこに向かうのだろう。
 行き場のない拳はさらに下方に振り下ろされたり、横にいる人びとの中でちょっと毛色が違う者に向かうことになる。
 が、そんな鬱屈しきった救いのない社会で「希望」や「オルタナティヴ」といった言葉を恥ずかしげもなく口にし、本当に拳を向けるべき方向を指す者がいれば時代の空気は豹変する。ということを示しているのがいまのUKのムードではないだろうか。
 とはいえ、社会は下層だけで構成されているわけではないから、今度の選挙でも再び『ノーザン・ソウル』は『ライオット・クラブ』に負ける可能性もある。
 「反緊縮だの核兵器撤廃だの一昔前のロック・ミュージシャンのようなことを言っている。そんなことをすれば財政は崩壊するし、自国の防衛もできなくなる」
大政党のSNPに対する批判もワンパターンの様相を呈してきた。
 が、では現代の知性というやつは要するに喧嘩に強くなることと金勘定に長けることを意味するのかと思えばそれはそれでまたずいぶんと反知性主義的である。少なくとも貧困に落ちる家庭の数を増やし、飢えて汚れた子供たちをストリートに放置している為政者たちのエモーショナル・インテリジェンスの低さは、ヤンキーやチャヴに劣りこそすれ勝るものではない。

HOLY (NO MORE DREAM) - ele-king

~HR/HM COVER TUNE 10選~

Young Fathers - ele-king

 White Men Are Black Men Too.とはまたポリティカルな。というのは誰しも思うところだが、うちの連合いと隣家の息子の反応は、「ほんなん聞いたらブラックの男どもが怒るだろ」だった。「なんで?」と言うと、「一緒にすんなって言うぜ。あいつら自分たちのことすげえクールだと思ってるから」「そうそうそう」とか言って頷き合ってるので笑ったが、ガーディアン紙が「UKのアイデンティティ・ポリティクスとブラック・マスキュリニティを想起させるタイトル」と書いていた後述の部分がその辺だろう。
 昨年10月、かのFKAツイッグスを押さえて「番狂わせ」で彼らがマーキュリー賞を受賞したとき、個人的には「スコットランド出身だからじゃないのか」と思った。英国中を騒然とさせたスコットランド独立投票は9月だった。あれから半年が過ぎ、またなぜかスコットランドが英国総選挙の主役に躍り出るというシュールな状況になっているが、「スコッツにUKを支配させてたまるか」という感情が皆無のわたしのような外国人にすれば、いまスコットランドがおもしろい。右傾化と緊縮でノー・フューチャーな英国に揺さぶりをかける力が、意外なところから出現した。リベラルや左派で当たり前のUK音楽メディア界にも、スコットランドに夢を感じている人は少なくない筈だ。
 そのスコットランドは昨年の独立投票で、在住外国人には投票権を与えたが、仕事の関係で国境の外に住んでいるスコットランド人には投票権を与えなかった。White Men Are Black Men Too. という言葉がそうした場所から出てきていると思えば、これはプログレッシヴ・ポリティクスをも想起させる。

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 彼らがマーキュリー賞を獲った1stは所謂オルタナティヴ・ラップだったので、昨今の風潮からすればスコットランド→ポリティカル→ラップという構図は非常にわかりやすいので「ブリット・アワードのオルタナティヴ」を自称するマーキュリー賞が彼らに賞をやりたくなった気持ちもわかるが、2枚目は一転してポップ・ソング・アルバムになっている。
 で、これがやけにいい。ラジオから聞こえてくる懐かしいポップ・ソングの肌触りがするのだ。音楽性は全く違うが、わたしがこの肌触りから思い出したのは、ザ・スペシャルズの”Ghost Town”だ。ガーディアン紙に「UKチャート史で最も重要なポップ・ソング」と評され、いまでも史上最高の流行歌と呼ばれるあの名曲は、ロンドン暴動後に再評価された。
 ポップ・ソングとは、好いたのはれたのふられて泣いただのいうことを歌うだけのものじゃない。ということを十代のわたしに教えてくれたのはUKだった。政治や社会や時代のムードを鋭く抉ったポップ・ソングが普通にチャート1位になり、幼い子供たちがそれを口ずさみながら育つというポップの伝統が英国にはあった。
 が、いつしかその伝統は途絶えた。UKチャートは公開オーディション番組出身のボーイバンドや、白人の兄ちゃんや姉ちゃんたちが黒人の声を真似た歌い方で好いたのはれたのふられて泣いただのいうことを歌っているばかりで、”Ghost Town”のようなポップ・ソングが聞こえなくなった。ここは本当にUKなのか。

 白人を責めるのは飽きた
 彼の軽率さは本心じゃない
 黒人だって彼のように振る舞うことがある
 白人には黒人でもある奴らがいる
 奴らはニガー
 君たちはジェントルマン
 白人には黒人でもある奴らがいる
 ニガー
 ニガー
 ニガー
 目を覚ませ              ‟Old Rock’n Roll″

 “Old Rock’n Roll”のシンプルな歌詞と歌いやすさは、むかし子供たちが歌っていたオールド・ポップ・ソングを思い出させる。本作のレヴューを読むと、エレクトリック、クラウトロック、ゴスペル、ロック、ソウル、ヒップホップ、グライム、ミニマリズム等々、ありとあらゆる音楽のジャンルや、ビーチ・ボーイズからレディオ・ヘッドまで、ボ・ディドリーからアウトキャストまで節操がないほど広範な人々の名前が「like(〜のような)」という言葉の後に使われている。が、個人的には「like」の後につけたいのはザ・スペシャルズの”Ghost Town”だ。彼らがやろうとしたのはきっとその現代版だ。何よりもこのアルバムは、UKのポップ・ソングが先鋭的で政治的でユーモラスでクールだった時代を思い出させる。

 英国全土を揺るがすスコットランドのSNPが掲げるマニフェストの一つがスコットランド沖の核兵器トライデント撤廃だが、科学者や芸術家によるトライデント撤廃運動Time to Move On Tridentのテーマ曲に使われいてるのが本アルバム収録の‟Rain or Shine″だ。

 僕に力をくれ 僕に痛みをくれ
 永遠なんてすべて同じこと
 未知のものを探し続けて
 力をつけても救いにはならない
 力をつけても救いにはならない       ‟Rain Or Shine″

 スコットランドには昔の英国にあった気骨のようなものが残っている気がする。その古臭さがいま進歩的と注目されているとすれば、それは時代が動く兆しだろう。
 「White Men Are Black Men Too」は、プログレッシヴ・ポリティクスの地から出て来たプログレッシヴ・ポップだ。

Prurient - ele-king

 ドミニク・フェルノウ(Dominic Fernow)がやり過ぎなのは誰の目にも明らかだ。レインフォレスト・スピリチュアル・エンスレイヴメント(Rainforest Spritual Enslavement)やヴァチカン・シャドウ(Vatican Shadow)としてあいも変わらず怒濤のリリースを続けるなか、プリュリエント(Prurient)とエクスプローリング・イザベル(Exploring Jezebel)の新作も発表。一体どうやって〈ホスピタル・プロダクション(Hospital Production)〉代表を務めながらこれだけの制作をこなすことができるのか、完全に理解を超えているとしか言いようがない。

いまでこそUSインディの先端を担う〈ホスピタル・プロダクション〉も元をたどればドミニクが若干16歳でスタートさせたDIYノイズ・レーベルであったわけで、ドミニク自身から止めどなく溢れんばかりに湧出する、かたちを成さない感情であるノイズをひたすらにアーカイヴ化することでその複雑な自身の表出にコンセプトを見出し、ラベリングすることが当初の目的であったと言える。

ノン及びボイドライスやデス・イン・ジューン、カレント93やコイルにSPK、ナース・ウィズ・ウォンド等のニューウェーヴ/インダストリアルからの多大な影響とブラック・メタルへの偏執的な傾倒をノイズ/エクスペリメンタルといった実験的な手法で自身の表現を模索してきたドミニクにとってプリュリエントはつねに彼の主たるプロジェクトであった。

シンセ・ダークウェーヴとパワー・エレクトロニクスの融合を試みてきたプリュリエントが、ドミニクのコールド・ケイヴへの参加を機に劇的な変化を迎えたのが2011年に発表されたバミューダ・ドレイン(Bermuda Drain)である。それまでになくメタル、もといロック的な起承転結が明快なダイナミズムとシーケンス/ビートにプリュリエントの手法を落とし込んだ意欲作であった。BEBからの前作、スルー・ザ・ウィンドウ(Through The Window)で90年代ハード・テクノを骨抜きにしたような作風を披露し、ヴァチカン・シャドウのサウンドと重複したことを危惧したのか、本作フローズン・ナイアガラ・フォールズ(Frozen Niagara Falls)ではドラマティックな展開を強調して再びプリュリエントの明確な差別化を意識したように聴こえる。ツインピークス風の不穏かつ幽玄なダークウェーヴからアコースティック・サウンドを基調とした激情、お馴染みの激昂とパワエレは以前より洗練された形でヴァリエーション豊かなトラックと共存している。活動歴約20年に及ぶ彼のプリュリエントな(卑猥な)試みの集大成として放つロック・アルバムだ。USインダストリアルの今後を占う90分近い圧倒的ヴォリュームの意欲作。


interview with East India Youth - ele-king


East India Youth
Culture Of Volume

Indie PopElectronic

Tower HMV Amazon iTunes

 ファースト・アルバムのジャケットには、人肌の表現としてはいささか大胆な色づかいの、抽象的な自画像が用いられていた。『トータル・ストライフ・フォーエヴァー(Total Strife Forever)』と名づけられたその作品は、タイトルやアートワークにたがわず混沌とした印象のサウンドだったが、人気もメディアによる評価も高く、同年の英マーキュリー・プライズにノミネート。彼自身、その後はロンドンという舞台を同じくして活躍するファクトリー・フロアとのツアーを行ったり、ジーズ・ニュー・ピューリタンズのサポート・アクトを務めるなど、目ざましい──そして自身にとってもかけがえがないと述べる体験や活動を経てきた。
 イースト・インディア・ユースことウィリアム・ドイル。彼は特定ジャンルにおけるフロンティアの掘削者というよりも、英ポップ・シーンの表舞台でマイペースに自己探求をつづける、みずみずしいプロデューサーである。エレクトロニックな方法を用い、実際にテクノ、インダストリアル、エレクトロ・ポップ、あるいはジェイムス・ブレイクなどと比較されて語られるのを目にするが、大仰にそうしたジャンル名をかぶせるよりは、たとえば“エンド・リザルト”などがそうであるように、レディオヘッドが、キーンが、ザ・スポットライト・キッドが、つまりは英国ロックのある傍系の遺伝子が現在という空気と時間のフィルターをかぶって表出したものだと言うほうがしっくりくるだろう。しかしもちろん、さまざまに比較を受けているエレクトロニック/ダンス・ミュージック的な要素・傾向もまた、アンダーグラウンドの成果やトレンドの渦を反射するようにEIYの音楽を豊かにしている。

 そうした充実の中でかたちを成したこのセカンド・アルバムにはふたたび自画像があしらわれた。今回はより写真的なかたちで自身を映し出しているのが興味深い。それはこのインタヴューのなかでも述べられているように、「プロデューサー気質を発揮するよりも、自分がラップトップの前に出たかった」という気持ちをいくばくか象徴するものなのかもしれない。その意味で、多様性はそのままに、しかし格段に整理され、ポップ・パフォーマンスという方向性を得た音は、前作に比較してもすばらしく表現の威力を増している。

ちなみに、これまた以下に回想されているのだが、ファクトリー・フロアとのツアーの興奮や影響は冒頭の“ザ・ジャダリング(The Juddering)”に思いきり顕著で、微笑ましい。

■East India Youth / イースト・インディア・ユース
現在はロンドンを活動の拠点とする、ウィリアム・ドイルによるソロ・プロジェクト。デビュー作『トータル・ストライフ・フォーエヴァー』が高い評価を受け、FKAツイッグスやボンベイ・バイシクル・クラブとともに2014年度のマーキュリー・プライズにノミネートされた。第10回Hostess Club Weekenderで初来日、本作はその後初にして2枚めのフル・アルバムとなる。

昔のコンピュータにもかかわらず、そんなにレトロな感じがしなくて、どちらかというといまっぽいものになっているんじゃないかと思って

今作も自画像がジャケットのアートワークに用いられていますね。しかしいくらか抽象度が下がりました。これは前作と今作の音における表現の差でもあるでしょうか?

ドイル:たしかに今作は、音としても以前よりカラフルで、それがアートワークに反映されているかもしれないな……。これは80年代のアミーバ(Amoeba)というコンピュータを使ってつくったものなんです。もっとピクセルが粗くって、それによってローファイなアートになっているんだけれど、それをキャプチャー画像として使用していて。おもしろいのは、昔のコンピュータにもかかわらず、そんなにレトロな感じがしなくて、どちらかというといまっぽいものになっているんじゃないかと思って……そのへんが今回のアートワークとしておもしろいところかなと思いますね。

あなたがプロジェクトを始めた当時は2012年ということですね。今作までで機材環境にはどのような変化があったのでしょうか。可能でしたらどのようなものを用いていらっしゃるのかということもふくめて教えてください。

ドイル:メインの機材はラップトップなんだけど、すべてはそこからはじまっていて、ソフトウェアをたくさんつかっているけど、ハードウエアはそんなに使用してないんです。それはライヴでもいっしょで、最近、ベース・ギターはライヴでも楽曲制作のときでもよく使うようにしているんですけど、それ以外はツールも少なくて。どちらかというと個人的にはソフトウェアに興味があるんだけど、プロデューサーやエンジニアさんというのはやっぱりハードに関心のある人が多いんですよね。だからヴィンテージな機材を掘り出して使う人も多いと思います。
僕の場合はソフトの中からいろんな音を出すというのが好きで、そうやって遊んでいますよ。もともとは、前にいたバンドではアコギをメインとして弾いていたし、10歳のころからすでに自分のメインの楽器はギターだったんです。これからはもっとギターをこのプロジェクトにも投入していきたいなと思っていますよ。ただ、機材ということでいえば、このプロジェクトがはじまってからいまでもベーシックは変わっていないですね。3年に一度くらいは自分のセットアップを更新しているというか、コンピュータやソフトを見直して変えていて、それが環境の変化といえばいえるかもしれないです。

音楽をつくりはじめることになったきっかけは? 最初からいまのようなDAWソフトを用いたエレクトロニックなものだったのですか?

ドイル:10歳のときに父がエレキ・ギターを買ってくれたんです。それが音楽人生のはじまりでしょうか。当時、アコギを友人から借りて自分なりに独学で弾いていたのを親が見て、それでギターを買ってくれたんだと思います。いっしょにアンプなども買ってくれたので、自分でももっと練習するようになったし、見よう見まねで曲もつくりはじめました。10歳か11歳のときにバンドも組んだりして、13歳か14歳の頃にはコンピュータを使いはじめたかな……。というのも、生まれ育った町から引っ越したので、友だちもいないし、バンドも組めなかったから。仕方なく自分だけで音楽をつくる方法を探すしかなかったし、ちょうどベックとかモービーとかを好きになりはじめてもいたから、アコースティック要素はあるけどエレクトロニックなところもあるような音楽に心が向かったというところもあったかなあと。そのときキューベース(Cubase)を独学で学ぶようになっていまにいたりますね。10年経ったいまでも同じプログラムを使って音楽を書いています。とくに音楽的な家庭に育ったわけではないし、環境としても音楽的だったわけではないけど、いまでは本当に音楽が人生の一部という感じですね。

マイ・ブラッディ・ヴァレンタインの『ラヴレス』を最初に聴いたときっていうのは、いまでも覚えているんだけど、その音の印象や衝撃がすごく自分の中に焼きつきましたね。

シーンとして、たとえばベースミュージックだったり、ダンス・ミュージックの流れを意識していますか?

ドイル:じつはぜんぜんシーンやジャンルを意識したりということはないんですよ。自分がどういうところにカテゴライズされているのかとか。ある楽曲はすごくダンス寄りだったり、ある曲はシンセ・ポップだったり、急にインストゥルメンタルなものが入ってきたり、クラシック寄りのものだったり。それから、シーンやジャンルっていうものにずっぷりとはまってしまいたくないなとも思います。そういうものが嫌いなわけではないし、テクノのイヴェントやレイヴなんかに遊びにいくのも大好きですけど、自分がどこにも該当しないというポジションがとても気に入っているので、これからもそんなかたちで活動していきたいとは思っていますね。

“マナー・オブ・ワーズ(Manner of words)”などにとくに顕著ですが、今作においてはリヴァーブや歪(ひず)みがサウンドのひとつの特徴になっているようにも思います。M83など、エレクトロニックな特徴をもったシューゲイザーなどを思い浮かべました。そういった音楽やギター・ノイズ、その増幅によってつくられる音楽に興味があるのですか?

ドイル:そうですね、意識しているというほどではないですが、たとえばマイ・ブラッディ・ヴァレンタインの『ラヴレス』を最初に聴いたときっていうのは、いまでも覚えているんだけど、その音の印象や衝撃がすごく自分の中に焼きつきましたね。それは根づいているからこそ知らないうちに表現の中に出てきているものだと思います。たしかにそう言われると、この“マナー・オブ・ワーズ”のどの部分を指しているのかということがすごくよくわかります。ただ、それは意識したものではなくて、自分の中の感覚としてすごくナチュラルに出てくるものなんだろうなと思いますね。おもしろいのは、『ラヴレス』とか、いま日常的に聴いているものじゃないのに、そうやって影響を及ぼしているってことですよね。最初の印象が強いばかりに、そんなふうになるのかな。

資料によると、あなたは今回、プロデューサーとしてよりもポップ・アーティストとして歌い、パフォーマンスを行ってみようというひとつの転換点を迎えたということですね。それはマーキュリー・プライズにノミネートされるというような出来事にもきっかけがありますか?

ドイル:そうですね、マーキュリー・プライズにノミネートされたというのもひとつのきっかけだったと思います。このイースト・インディア・ユースのパーソナリティをもっと表に出して、みんなに知ってもらいたいたかったんですよね。自分が前に出ようと思った。以前はラップトップの後ろにいて、地味な感じだったんです。でもライヴをやるごとにみんなが楽しめる要素を増やしてきているかなと思います。そういうことに対するリアクションを見ながら、もっと自分としてもエネルギッシュなパフォーマンスを楽しんでもらいたいと思っていたんですが、まさかこんなに人気の出るプロジェクトになるとは思ってもみなかったので、こうやってノミネートしてもらったり楽しんでもらったりすることで、そうやって好まれるようなかたちになっていきたいなという思いも自然にふくらみましたね。それが、こうやってプロデューサー気質を前に出すというよりも、パフォーマンスを楽しんでもらうというような、そしてそんな道をもっと突き進みたいというような気持ちになっています。

プロデューサー気質を前に出すというよりも、パフォーマンスを楽しんでもらうというような、そしてそんな道をもっと突き進みたいというような気持ちになっています。

詞はどのようにつくるのですか? ご自身が観念的なタイプだと思いますか?

ドイル:じつは、歌詞を書くっていうのが自分にとってもっとも難しいことなんです。苦手なので、いまでもなんで自分がこんなことをしているんだろうって不思議な気持ちになります。いつも苦しむところなんですよ。自分がおかれている環境や場所をモチーフにはしていて、それを最終的には抽象的なかたちで表現するので、歌詞によってはすごくアブストラクトになっていると思います。どちらかというと、空間を絵具で塗ってつくっていくような感覚で言葉をつくっていますね。……本当に自分ではいつも苦しむ、もっとも音楽制作のなかで難しいことだと感じています。

今作にはより大きなスケール感が備わっていて、映像表現との相性もよいのではないかと感じましたが、あなたの「ポップ」なあり方は、今後どのような展開をしていくものなのでしょう?

ドイル:自分の理想的なポップのかたちは、みんなが聴いて楽しめるもの、ですね。でもその背景にはアンダーグラウンドなものの要素が隠れているというのが目指すところでもあります。聴いてすぐに楽しめるものだけれど、何度聴いても発見があったり、耳に冒険を与えられるものだったり、そんなものが見え隠れする曲をつくりたいですね。すぐに惹かれるようなメロディやリズムがあって、ポップ感のあるものがいいけど、その後ろに複雑な要素が見え隠れするもの──でも、そうやってうまく成功している人たちもたくさんいますよね。1曲でそれをやるのは難しいけれど、アルバムを通してそれが感じられるようなものをつくりたいなと思います。自分の好きな要素、ポップに反した要素なんかも、ね。

ファクトリー・フロアとのツアーはいかがでしたか? 印象に残っていることと、もっともよかったと感じるショウの模様について教えてください。

ドイル:そうですね、僕にとってすごく多大な影響を与えてくれている存在です。自分のいまの道すじや、制作において重要な人々につないでくれたキーマンともいえるかも。彼らがツアーにきてくれないかと言ってくれたときは本当に二つ返事で、自分自身もこれはぜったいに行くべきだって心から思えたしうれしい出来事でしたね。彼らとツアーをしてあらためて思ったのは、毎回誰とツアーをやっても素晴らしいなと思うんだけど、そのうちそう思いながらも最初の数曲だけ聴いて場を離れるようなことが増えてきたんですね。でもファクトリー・フロアについては、最初から最後まで本当に目が離せなくて、毎晩ライヴを楽しんでましたね。セット・リストが同じだったりするのに、毎回ちがうワクワク感があって、とくにドラムのゲイヴがライヴで披露するダイナミックさというのはそれぞれの晩で異なっていたんですよね。それが「ゾーン」に入ると、もう言葉では表せないくらいすごいものになっていて……。いまでもその興奮はうまく言い表せないですね。アルバムも大好きですけど、ライヴがとにかく素晴らしい。多大な影響を与えてくれた人だし、よき友人たちです。

ジェイムス・ブレイク、よく較べられるんですよ(笑)。その理由は顔が似てるからだと思うんですよね。

ジェイムス・ブレイクなどはどうでしょう?

ドイル:よく較べられるんですよ(笑)。その理由は顔が似てるからだと思うんですよね。イギリス出身で、同じような髪型で、雰囲気がなんとなく共通しているからなのかなって……(苦笑)。自分としては音楽的にも、背景として持っているものもまったくちがっていると感じています。彼のメロディのうしろにあるものは、どちらかというとソウルとかブルースとかっていうものだけど、僕の音楽はそうではない。そして彼の音楽のほうがデリケートだと思いますよ。僕の場合は、もっとバンってみんなのまえに差し出すものだというか。スタンスも参照点もちがうので、音楽として較べられる理由はあまりよくはわからないですね。

UKにおいて、インディで活動することとメジャーで活動することの差はどんなところにありますか?

ドイル:自分がメジャーとインディのどこに属するかというようなことは、自分でもあまり考えたことはなかったんですけど、こうやって日本のインタヴューを受けさせてもらっているわけだから何かしら成功した部分はあるのかなとは思いますね。ただ、自分としては、外からの変な影響なく音楽をつくりつづけることが夢なので、その理想に近い部分ならインディでもメジャーでもいいなと思います。

出身もロンドンですか? ロンドンでの音楽体験について教えてください。

ドイル:生まれたのはボーマスという場所で、ロンドンに来たのは4年前です。ロンドンというのは音楽にまつわるカルチャーが本当にたくさんある場所で、エキサイティングで楽しいです。でも、最近は自分のライヴが忙しくなってしまって、音楽のイヴェントにはあまり行けてないんですけどね。引っ越した2年間くらいは本当にいろんなところに通いました。すごくメジャーなアーティストから、すごくマイナーなアーティストまで、たくさんのものを同じタイミングで見れる場所ですね。

昨年、今年と、あなたが観た映画や読んだ本などで印象深いものはどんなものでしょう?

ドイル:スカーレット・ヨハンソンが主演の『アンダー・ザ・スキン(邦題:アンダー・ザ・スキン 種の捕食)』という映画があるんですが、それが素晴らしかったですね。スカーレット・ヨハンソン自身もブリティッシュ・アクセントだったりするんですけども。久々にすごいものを観たと思いました。サントラもいいんですよ。それがとても印象に残ってますね。

 今週末、ファッション・ブランドC.Eとレーベル〈ヒンジ・フィンガー〉共同の主催のイベントで来日する、ウィル・バンクヘッドとピーター・オグレディことジョイ・オービソン。当日を待ちわびている皆さんのために、なんと今回が初来日のジョイ・オービソンがインタヴューに答えてくれました。
 ここで簡単に彼の経歴の説明を。音楽のバックグラウンドはジャングルのミックス・テープにあるというロンドン在住のジョイ・オービソンのデビューは2009年。そのトラック“Hyph Mngo”はいわゆるダブステップが「ポスト」へ移行した時代の象徴的な曲として記憶されており、ジャンルを越え本当に多くのDJたちがプレイしました。
 ですがその後ドラムンベースの鬼才ユニット、インストラメンタル(Instra:mental)の元メンバーであるボディカ(Boddika)とレーベル〈サンクロ(SunkLo)〉の立ち上げなどを経て、深淵なハウスやテクノの方面に舵を取りました。ツアーでヨーロッパを回るようになった彼は、デザイナーとしてのキャリアやレーベル〈ザ・トリロジー・テープス〉で知られるウィル・バンクヘッドとベルリンで出会い、よりロウなトーンを突き詰めたレーベル〈ヒンジ・フィンガー〉をふたりで始動させ現在にいたります。
 インタヴューには普段はあまり応じていないという彼ですが、最近買ったベスト・レコードから、一緒に来日するウィル・バンクヘッドについてまで、激多忙なスケジュールのなかシンプルにそして丁寧に答えてくれました。

いまどちらにいらっしゃいますか? ロンドンの自宅でしょうか?

ジョイ・オービソン(Joy Orbison、以下JO):うん。ロンドンのエレファント・アンド・キャッスルにある家の予備部屋兼スタジオの椅子に座っているよ。

あなたの来日が決定して、多くのファンが喜んでいます。が、ここにひとつ問題があります。ロンドンと東京って結構遠くて、片道10時間くらいかかるんですよね。どうやって時間を潰す予定ですか? やっぱり本を読んだり映画を見るんでしょうか? それともひょっとして機材を持ち込んで作曲ですか?

JO :ウィル・バンクヘッドと僕の彼女の間に座ることになったから、めちゃくちゃお酒を飲むことになりそうだ。少しは眠れるといいなぁ。いつもは飛行機のエンタメ・サービスを使ってチェスをするんだ。小さな子供に連敗しないように練習しないといけないからね(笑)。

今回はしかも初来日です。DJノブといった日本のDJたちもこの日は出演しますが、日本の音楽シーンや文化に関心はありますか?

JO :日本のシーンは全然知らないんだけど、いつも耳にする音楽と日本文化の関係性にはわくわくするよ。C.Eの素晴らしいスタッフたちの協力のおかげでDJノブと同じイベントへの出演が決まったことが単純に嬉しい。最高の初来日になるといいね!

最近買ったベストのレコードは何ですか?

JO :Automat & Max Loderbauerの“Verstärker”だね。

それでは最近注目しているプロデューサーは?

JO :Herronかな。

さて、あなたのキャリアを少々振り返ってみようと思います。2009年にあなたはスキューバの〈ホット・フラッシュ・レコーデイングス〉からのシングル “Hyph Mngo”でデビューを飾り、この曲はいわゆるポスト・ダブステップのアイコンのひとつとしてみなされています。ですが、あなたは〈ドルドラム〉から “BB / Ladywell”のリリース以降、テクノやハウスの方面へシフトし現在に至っています。この転機のきっかけとはなんだったのでしょうか?

JO :個人的にはその流れを変化だとは思っていなかったんだよ。でも当時の自分が周りからどうやって見られていたのかは理解できる。 “Hyph Mngo”はそれまでの僕の曲のなかでDJやオーディエンスに一番サポートされたものだったけど、同時に僕はたくさんの曲を作っていた。当時作った曲を見てみても、ハウスやテクノっぽいものもあれば、ドラムンベースみたいなものもある。そういう曲は世間が僕に抱いていたイメージとはかけ離れているだろうね。そんな感じでこれからも縛られないスタイルで曲を作っていこうと思うんだけど、その課程でシーンや時代性の呼吸が合っていたら最高だよ。

Joy Orbison – Hyph Mngo

あなたはボディカとの共作でも知られていますが、彼とのレーベル〈サンクロ〉からの最新リリースは2014年の2月にリリースされた“モア・メイム / イン・ヒア”なので、それから1年以上が経っています。最近はボディカと曲を作っていますか? 〈サンクロ〉は日本でもすぐにソールド・アウトになってしまうので、ファンは新作を期待していますよ。

JO :ボディカとは少なくとも週に2、3日はスタジオに入るように心がけていて、しばらくの間この作業を継続していたよ。おかげで本当にたくさんの曲が完成したね。実はもうすぐ新曲がリリースされるんだ……!

ウィル・バンクヘッドは何度かDJとして来日しており、去年もアンソニー・ネイプルズやレゼットと東京でプレイしました。彼は才能溢れるデザイナーであると同時に、違ったジャンルで活動するプロデューサーをつなぎ合わせる重要な役割も果たしていると思います。そして現在、あなたはバンクヘッドとともに〈ヒンジ・フィンガー〉を運営しているわけですが、アートワークやDJスタイルを含めて彼の「作品」をどのように評価しますか?

JO :彼の作品の大ファンだよ。ユニークなものの見方をしているから、いつも僕は驚きっぱなしさ。僕の音楽やレーベルのコンセプトを可視化してくれるひとは彼くらしかいないから、出会えてすごくラッキーだ。
 それに彼のDJも本当にヤバいんだよね。たぶん僕がいままでで出会ったなかで、飛び抜けて強烈なレコード・コレクションを彼は持っているんじゃないかな。あのレコードの壁を探索するのにかなりの時間を使ったよ。あそこでは必ず特別な曲が見つかるんだ(いまそのレコードは地下室にしまってあるんだけどね)。自分自身の知識をワクワクさせるような何かに変換させることに関して、彼の右に出る者はいないと思う。なんせブジュ・バントンからフランソワ・ベイルに繋いだりするんだからね!

ウィル・バンクヘッドの作品でお気に入りを挙げるとしたら何でしょうか?

JO : うーん、難しいね……。T++の「ワイアレス」かブラワンの「ヒズ・ヒー・シー&シー」ってことにしとこうかな。

様々なスタイルを経てあなたは現在に至るわけですが、2015年に私たちはどんなことを期待できるでしょうか?

JO :目標はたくさんリリースをすることだね。とにかく目の前のことに集中しなくちゃいけないな。

それでは最後に日本のオーディエンスにメッセージを!

JO :(日本語で)「トリッキーは、お茶を作ります」

 最後のひと言がどういう意味なのか質問してみたところ、英語では“Tricky, you make the tea”と打ったようです。 “Tricky’s Team”という似た名前のタイトルの曲をボディカとリリースしていますが、それから察するにインタヴューで触れている次なる新曲の名前なのでしょうか!? 週末に期待!

Joy Orbison & Boddika – Tricky’s Team


The Trilogy Tapes, Hinge Finger & C.E presents
Joy Orbison & Will Bankhead

2015/04/24(Fri)
@ Daikanyama UNIT & SALOON

[UNIT]
Joy Orbison(Hinge Finger)
Will Bankhead(The Trilogy Tapes / Hinge Finger)
DJ Nobu(Future Terror / Bitta)
[SALOON]
Edward Occulus
Toby Feltwell (C.E)
1-Drink
Koko Miyagi
Bacon
Open/Start 23:30
Early bird 2,000yen(Resident Advisor only) / Adv. 3,000yen / Door 3,500yen
Ticket Outlets: LAWSON / diskunion 渋谷 Club Music Shop / diskunion 新宿 Club Music Shop / diskunion 下北沢 Club Music Shop / diskunion 吉祥寺 / JET SET TOKYO / TECHNIQUE / DISC SHOP ZERO / Clubberia / Resident Advisor / UNIT / min-nano / have a good time
※20歳未満の方のご入場はお断り致します。年齢確認のため顔写真付きの公的身分証明書をご持参願います。(Over 20's Only. Photo I.D. Required.)
More Information : Daikanyama UNIT
03-5459-8630 www.unit-tokyo.com https://goo.gl/maps/0eMrY

2015/04/28(Tue)
@CLUB CIRCUS

Joy Orbison (Hinge Finger)
Will Bankhead (The Trilogy Tapes / Hinge Finger)
AIDA
Matsuo Akihide
qands
Open/Start 22:00
Door 2,500yen
※20歳未満の方のご入場はお断り致します。年齢確認のため顔写真付きの公的身分証明書をご持参願います。(Over 20's Only. Photo I.D. Required.)
More Information : CLUB CIRCUS
06-6241-3822 https://circus-osaka.com

当日は東京と大阪の両会場にてイベントの開催を記念したC.EのTシャツの販売が決定!
CETTT T #2 (イベントTシャツ)
Price: 4,000yen (Tax incl.)
問い合わせ先: Potlatch Limited www.cavempt.com

Joy Orbison
2009年にHot Flush から〈Hyph Mngo〉をリリースしデビューを飾ったのち、〈The Shrew Would Have Cushioned The Blow(Aus Music)〉や〈Ellipsis(Hinge Finger)〉、Boddikaとの共作による〈Swims(Swamp81)〉など精巧かつ念密に構築された楽曲を次々とリリースし続ける傍ら、Lana Del ReyやFour Tet、José Jamesといったアーティストのリミックスを手がけている。ハウスや2ステップ、ジャングル、テクノ、ダブステップ、これらの要素が融合し生まれた〈ガラージハウス〉とはJoy Orbisonの作り出した“音”だと言っても過言ではないだろう。レーベル〈Hinge Finger〉 をThe Trilogy TapesのWill Bankheadと共に立ち上げるなど異質かつ独自な動きを行う中、最近ではBBC RADIO 1の人気プログラムである〈Essential Mix〉に登場するなど、トラックメーカー/プロデューサーとしてはもちろんDJとしても高い人気を誇っている。
https://soundcloud.com/joy-orbison
https://www.residentadvisor.net/dj/joyorbison

■Will Bankhead
メイン・ヴィジュアル・ディレクターを〈Mo’Wax〉で務めたのち、〈PARK WALK〉や〈ANSWER〉といったアパレル・レーベルを経て、〈The Trilogy Tapes(TTT)〉を立ち上げた。現在、前述したTTTやJoy Orbisonとのレーベル〈Hinge Finger〉の運営に加え、〈Honest Jon's Records〉や〈Palace Skateboards〉などのデザインを手がけている。2014年10月には、渋谷ヒカリエで行われた〈C.E〉のプレゼンテーションのアフターパーティでDJを行うため、Anthony NaplesとRezzettと共に来日した。
https://www.thetrilogytapes.com

■DJ NOBU(FUTURE TERROR / Bitta)
FUTURE TERROR、Bitta主宰/DJ。NOBUの活動のスタンスをひとことで示すなら、"アンダーグラウンド"――その一貫性は今や誰もが認めるところである。とはいえそれは決して1つのDJスタイルへの固執を意味しない。非凡にして千変万化、ブッキングされるギグのカラーやコンセプトによって自在にアプローチを変え、 自身のアンダーグラウンドなリアリティをキープしつつも常に変化を続けるのがNOBUのDJの特長であり、その片鱗は、 [Dream Into Dream]〈tearbridge〉, [ON]〈Musicmine〉, [No Way Back] 〈Lastrum〉, [Creep Into The Shadows]〈Underground Gallery〉など、過去リリースしたミックス CDからもうかがい知る事が出来る。近年は抽象性の高いテクノ系の楽曲を中心に、オーセンティックなフロアー・トラック、複雑なテクスチャーを持つ最新アヴァ ン・エレクトロニック・ミュージック、はたまた年代不詳のテクノ/ハウス・トラックからオブスキュアな近代電子音楽など、さまざまな特性を持つクセの強い楽曲群を垣根無くプレイ。それらを、抜群の構成力で同一線上に結びつける。そのDJプレイによってフロアに投影される世界観は、これまで競演してきた海外アーティストも含め様々なDJやアーティストらから数多くの称賛や共感の意を寄せられている。最近ではテクノの聖地〈Berghain〉を中心に定期的にヨーロッパ・ツアーを行っているほか、台湾のクルーSMOKE MACHINEとも連携・共振し、そのネットワークをアジアにまで拡げ、シーンのネクストを模索し続けている。
https://futureterror.net
https://www.residentadvisor.net/dj/djnobu

■Edward Occulus
イラストレーター・グラフィックデザイナー。2011年にToby Feltwell、Yutaka.Hとストリートウエアブランド〈C.E〉を立ち上げた。www.cavempt.com

■Toby Feltwell
英国生まれ。96年よりMo'Wax RecordsにてA&Rを担当。
その後XL Recordingsでレーベル を立ち上げ、Dizzee Rascalをサイン。
03年よりNIGO®の相談役としてA Bathing Ape®やBillionaire Boys Club/Ice Creamなどに携わる。
05年には英国事務弁護士の資格を取得後、東京へ移住。
11年、Sk8ightTing、Yutaka.Hと共にストリートウエアブランドC.Eを立ち上げる。
https://www.cavempt.com/

■1-Drink
TECHNO、HOUSE、BASS、DISCOの境界を彷徨いながら現在にいたる。 DJユニット"JAYPEG"を経て現在は個人活動中。 ときどき街の片隅をにぎわせている。
https://soundcloud.com/1-drink


DJ KOPERO - ele-king

TOP 10(家でよく聞いている曲)

■初めまして! 9sari Group/BlackSwanのサポートDJをしております、DJ KOPEROです! 今回からゆるりとチャート書かせてもらいます!今回は、この2ヶ月ほどの間で家でよく聞いている曲から選んでみました。意図せずUnsignedでFREE DLのものが多いですが、楽しんでいただければと思います。iTunesの肥やしにでもDLしてみてください。最後に少し告知させてください! 毎月第一水曜にSocial Club Tokyoで開催されているパーティー"FOREMAN"ですが、5月は〈DOGMA gRASS HOUSE Release Party〉と称して、5月4日月曜日みどりの日にYENTOWNtokyoのサポートのもと開催されます! 皆様ぜひ!

一冊をつかみに - ele-king

大好評発売中! 染谷将太さんが本を手にする表紙が目印、別冊ele-king第2弾は“音楽ファンのためのブックガイド”。「やってみたらほとんどが戦前のものになってしまった……」という編集長テヘペロ号だが、われわれ編集部員もこの本のなかに無数に開いた入口から、ぜひ一冊をつかみにいきたい。素敵な導き手と友人たちにいざなわれて。

4月、読書をはじめましょう。
“音楽ファンのための”ブックガイド


表紙には映画『寄生獣』などで注目の染谷将太さんが登場!

別冊ele-king 読書夜話──音楽ファンのためのブックガイド
Amazon

■インタヴュー
保坂和志、染谷将太、友川カズキ、寺尾隆吉、佐々木敦、増村和彦(森は生きている)、高城晶平(cero)、山崎春美、湯浅学

■ブックガイド
小説
小島信夫の6冊あまり 松村正人/21世紀の国内文学10 矢野利裕/21世紀の海外文学 石井千湖/終わりから70年目の戦争の4冊 松村正人/1990年代の6冊 矢野利裕

政治、思想、批評と教育
いまだ表現の自由は可能か!? 対談:五野井郁夫×水越真紀/古典と歴史 その読み方 石川忠司/転向論を読み直す 矢野利裕/「学校では教えてくれない」が意味すること 若尾裕/実践により「社会」を読むための5冊

詩と詩人たち
21世紀の短歌研究 永井祐/詩写真 Making Time 辺口芳典

サブ/カルチャー
オラリティー(声)とリテラシー(文字)の相克 三田格/意味もなく内側のスリルだけを頂くための20冊 山崎晴美/失われた音楽書を求めて 大谷能生/シーナ『YOU MAY DREAM』を再読する モブ・ノリオ/映画を観る筋肉 いま発見すべき映画本 樋口泰人


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