「You me」と一致するもの

ソルトバーン - ele-king

 昨年末からTikTokが『ソルトバーン』を観た人のリアクションであふれている。とくに目立つのはバリー・キヨガン(と聞こえる。日本ではコーガンと表記)演じるオリヴァー・クィックがバスタブの残り湯を啜るシーンで、ガールフレンド(?)が撮影しているのか、このシーンを観ている男たちが一様に気持ち悪がり、「ノー」と叫んだり、あっけにとられたりしている。バスタブの残り湯にはジェイコブ・エロルディ演じるフィリックス・キャットンのザーメンが混じっているという設定で、同作のプロモーションのためにエロルディがジミー・ファロンのレイト・ナイト・ショーに出演した際は、バスタブの残り湯を連想させるロウソクのビンが6種類ほどデスクに並べられ、ひとつを選んでエロルディが口をつけようとするとスタジオの観客から悲鳴が漏れる。多岐に渡るTikTokのショート・ムーヴィには押し黙って観ている老夫婦をどうだと言わんばかりに映し出すものや2人組の女子がバスタブのミニチュアに白濁した液体を入れて飲み干すなどあまりに品がなく、リアクションの数が増えれば増えるほど僕が最初に『ソルトバーン』を観た時の印象からはどんどん遠ざかっていく。さすがにハイプだと非難する声も上がり、しかし、「ソルトバネスク」などという言葉が生まれるほど作品の訴求力が高いことも確かで、考察系の動画などTikTokや他のSNSではシリアスな内容のものも増えている。イギリス流のブラック・ユーモアを理解するために過去の映画や文学の知識が総動員され(イギリスを代表するブラック・ユーモアの作家、イヴリン・ウォーは「キャットン家の先祖を題材に小説を書いていた」というセリフもある)、あれこれと観ていたら迷路の中心に置かれたミノタウロスのほかにも作品のあちこちに銅像がちりばめられていたことや窓の外のドッペルゲンガーなど指摘されるまで気がつかなかったことも多かった。

 06年、オックスフォード大学の入学式。オリヴァーはおどおどと大学の構内に足を踏み入れる。食堂では「お前、友だちいないだろ」と嘲られ、出身地がリヴァプールに近いプレスコットというだけで指導教官からも妙な表情をされる。ポッシュ(富裕層)とサイコパスがオリヴァーの周囲ではひしめき合い、導入部だけで気が滅入ってくる。ある日、オリヴァーが自転車で図書館に行こうとすると、フィリックスが壊れた自転車の前で座り込んでいる。自分は歩いて行ける距離だからといってオリヴァーはフィリックスに自転車を貸す。フィリックスは有力者の息子で、陽キャに手足が生えているようなリーダー的存在。人に指図することに慣れきった風で、フィリックスがオリヴァーに礼を言ってもどうも素直な感じは伝わらない。ここからはスクール・カーストの存在を思い知らされるようなエピソードが畳み掛けられる。オリヴァーはフィリックスの「おもちゃ」にされながら、しかし、フィリックスには「おもちゃ」を大切にする側面もあり、対等なのか主従なのか、簡単には割り切れない奇妙な関係が育まれていく。ある日、オリヴァーの元に父親が倒れたという報が入る。オリヴァーはフィリックスの部屋に飛んでいき、オリヴァーの境遇に同情したフィリックスは優しく彼を慰めてくれる。舞踏会の日、タキシードを着込んだオリヴァーに級友たちが「似合ってるじゃないか。レンタルだろ」と続けざまに皮肉をぶつけていくなか、フィリックスはオリヴァーを会場とは正反対の方向に連れていく。小川を目の前にしたフィリックスは死んだ父親の名前を石に書いて川に投げ込めとオリヴァーに促す。しかし、石は川沿いのゴミの上に落ちて水の中には落ちなかった。

 夏休みになると、フィリックスはオリヴァーを屋敷に招待する。タクシーを降りるとオリヴァーの目の前には広大な敷地が広がっている。巨大な玄関が開くと高圧的な執事が慇懃無礼にオリヴァーを招き入れ、フィリックスが広大な屋敷の内部を案内していく。部屋の装飾はヘンリー7世の飾り棚やヘンリー8世のザーメンなど王侯貴族の遺産にルーベンスの絵画やシェイクスピアの初版本など計り知れない資産価値のものが並んでいる。フィリックスは適度に下品な言葉でそれらを紹介し、家族が待つ部屋にオリヴァーを連れていく。オリヴァーの到着を待っていた家族が「去年の人…」という言葉を使ったところで2人が部屋の扉を開け、オリヴァーは様々に声をかけられるものの、その内容はあまりに無神経でオリヴァーは体を硬くするしかない。「夕食は正装で」と言われたオリヴァーは「カフスは持ってきた?」と訊かれても「持ってない」と答えるしかなく、貸してもらうことに。

 その日からポッシュの暮らしぶりが毎日、繰り広げられる。BGMはMGMT〝Time to Pretend(それらしく振舞う)〟。イギリスのポッシュが性的に乱れると下品極まりないのはロネ・シェルフィグ監督『ライオット・クラブ』(14)と同じくで、オリヴァーの行動も少しずつ妙な方向に走り出す。フィリックスがマスターベーションしていたバスタブの残り湯をオリヴァーが啜るシーンは前述した通り。フィリックスの妹に誘惑されて自分はヴァンパイアだといって生理の血に顔を埋めたり(水の中から撮ったようなショットはとても秀逸)。ヘンリー7世や8世とつながりがあるかのように想像させる友人一家を招いたディナーでは食後にカラオケ大会が開催され、客人が自分は金持ちだという趣旨のフロー・ライダ〝Low〟をラップし、オリヴァーはペット・ショップ・ボーイズ〝Rent〟を歌わされる。歌いながら、歌詞の内容が金持ちに養われている人の気持ちだと気づいたオリヴァーは続きを歌えなくなり、キャリー・マリガン演じる友人のパメラが「自立すべきだ」とキャットン夫妻に言われて、事実上、屋敷を追い出されるエピソードも前後して差し挟まれる。パメラの生き方を評して「悲劇のヒロインぶってこちらの同情を集めている」というオリヴァーのセリフは後々に重要な意味を持ってくる。様々な心象風景が矢継ぎ早に展開し、フィリックスはオリヴァーの誕生日にサプライズがあるといって彼を車に乗せる。最初は喜んでいたオリヴァーだけれど、車の向かう先が自分の実家だと悟るや、行きたくないと騒ぎだす。オリヴァーの家に着いてみると普通に暮らしている夫婦が彼らを出迎え、すぐにもオリヴァーがフィリックスに話していたことはすべて嘘だったことがわかる。(以下、ネタバレ)オリヴァーは実は『聖なる鹿殺し』と同じく、計算通りにキャットン家に入り込んだのである。そして、フィリックスの父親による提案で200人規模の仮装パーティが開かれることとなり、翌朝、思いもかけない事件が起こる……。

 『ソルトバーン』をひと言でまとめると「中産階級が下層階級の悲惨さをエサにして上流階級の富を脅かす話」となるだろうか。『太陽がいっぱい』のように持てる者と持たざる者を対極におくのではなく、「少し持てるもの」と「多く持てるもの」の対比であり、富裕層(ここでは代々の資産を受け継ぐソーシャライト)の価値観もグロテスクに映るなら、手段を選ばずにのし上がろうとする中流の欲望も醜く歪んでいる。富裕層がことさらに悪として描かれるわけでもなく、中流が野望を持つに至った動機もとくに説明がない。TikTokなどのソーシャル・メディアでは富裕層を批判する言葉として「イート・ザ・リッチ(eat the rich)」というフレーズが2010年代後半に広まり、映画だと『パラサイト』や『ジョーカー』がそれを映像化した例といえ、現実の政治でも2021年には地方選挙のスローガンとして使用されたり、中国では富裕層の屋敷が襲われたりもしている。いずれにしろ現在の格差社会において富裕層はそれだけで悪という気分が広く共有されているから成立している話だと思うしかなく、『太陽がいっぱい』も殺人の動機には説明がなく、当時は自明の理だったものがいつしか風化してしまったために、39年後に新たな動機を付け加えてリメイク作『リプリー』がつくられたように『ソルトバーン』も時代が変われば理解不能な作品になってしまうのではないだろうか。ここで共有されている気分は、そして、フランス革命が最底辺の人々には無縁のブルジョア革命だったことにも通じている。富の偏りに耐えかね、憤っているのは最底辺の人々ではない。中産階級が「悲劇のヒロインぶって同情を集めている」のだと。

 ラスト・シーンはオリヴァーが全裸で屋敷のなかを延々と踊ってまわる。『ジョーカー』の階段のシーンを意識しているのは明らかで、これには賛否がかなり分かれる。僕も「イート・ザ・リッチ」という趣旨を体現するなら整合性のある表現だと思ったけれど、このシーンに使われているソフィー・エリス・ベクスター〝Murder On The Dancefloor〟のMVを観たところ、ダンス・コンテストで競争相手を次々と失脚させていくプロセスがあまりにチープで、オリヴァーの行動をこれになぞらえているとしたら確かに「Ruin(台無し)」だなと思うようになった(だから〝Murder On The Dancefloor〟のMVは観ない方がいい)。オリヴァーがキャットン家を「イート」していく過程はバリー・キヨガンにしか出せない説得力があり、その総仕上げとして全裸で踊っているというなら、こうした悪趣味にも意味があると思えたのに。

 バリー・キヨガンという俳優が最初に目に止まったのはクリストファー・ノーラン監督『ダンケルク』(17)だった。戦場の臨場感をひたすら描く作品で、キヨガンはチョイ役だったにもかかわらず、どこか物言いたげな表情は妙に印象に残った。2ヶ月もしないうちに同じ顔に再会できた。 ヨルゴス・ランティモス監督『聖なる鹿殺し』(17)でキヨガンはマーフィー家を恐怖のどん底に突き落とす悪魔のような役だった。「ような」どころか後半は悪魔そのものに見えた。とんでもない存在感だった。かつて『狼たちの午後』が表していた失意をオバマ時代の終わりと重ねたバート・レイトン監督『アメリカン・アニマルズ』(18)でもキヨガンは腺病質な学生強盗団の一味を演じ、クロエ・ジャオ監督『エターナルズ』(21)ではアマゾンに隠れ住んでいた不老不死の宇宙人と、もはや彼に普通の役はオファーされないという感じになってきた。かつてデニス・ホッパーが歩いた道である。その道をキヨガンは着実に歩き出している。マット・リーヴス監督『ザ・バットマン』(22)ではジョーカーの演技を研究したそうで、本編だけでなく未公開シーンも強烈。マーティン・マクドナー監督『イニシェリン島の精霊』(22)でもややこしい役割が当てはめられていた。

 エメラルド・フェネル監督 『ソルトバーン』を僕が観ようと思ったのは、そう、単にバリー・キヨガンが出ていたからだった。フェネルは『ソルトバーン』にも陰を落とす『アルバート氏の人生』(11)や『リリーのすべて』(15)などセクシュアリティを扱った重要作で役者を務めたのち(『バービー』にも出演)、イギリスで近年、問題となっているフェミサイドをひっくり返した『プロミシング・ヤング・ウーマン』(20)で初監督を務めたばかり。『ソルトバーン』は長編2作目にあたり、本作について本人は「狂気じみた愛の強迫性」を表現したとコメントしていて、参考にした作品は『時計じかけのオレンジ』『召使い』『テオレマ』『クルーエル・インテンションズ(『危険な関係』のリメイク)』『バリー・リンドン』と、わかったようなわからないラインナップを挙げ、パトリシア・ハイスミスによる『太陽がいっぱい』の原作ももちろんリストに加えられていた。また、上下を逆さにした構図や夜の植物の撮り方などフェネルの映像センスはかなり素晴らしく、スパイダーネットの衣装や『真夏の夜の夢』の仮装、そして、ポッシュの生活様式に『スーパーバッド』やDJシャドウなど隙間なくポップ・カルチャーが詰め込まれているところもたまらない。(2月16日に加筆・訂正)

 今年で設立から15周年を迎える〈ブレインフィーダー〉にとって、故オースティン・ペラルタが2011年に発表した『エンドレス・プラネッツ』は特別な存在だ。主宰者のフライング・ロータスはじめ、ヒップホップを起点とするビート・ミュージックのイメージが強い〈ブレインフィーダー〉は、それまでジャズと接点があるレーベルという認識はあまりなかったが、『エンドレス・プラネッツ』はそれを一変した。よくあるジャズの要素を持ち込んだ作品というより、エレクトロニック・ミュージックのレーベルとしては異例の純粋なジャズ・アルバムで、内容を評価する以前に驚きを与えるものだった。数か月後にサンダーキャットが『ザ・ゴールデン・エイジ・オブ・アポカリプス』でデビューし、カマシ・ワシントンが彼の名を決定づけた『ジ・エピック』(2015年)をリリースする以前のことで、彼らが登場する門戸を開いたのも『エンドレス・プラネッツ』だったと言える。『エンドレス・プラネッツ』のリリースから一年後の2012年11月21日、オースティンは22歳の若さで急逝してしまった。音楽家としてこれからというとき、ロサンゼルスのジャズ・シーンの現在のような隆盛をみることもなく、まさに早過ぎる死であった。彼がいまも生きていたら一体どんな作品を作っていたか、そんな思いを馳せながら彼の人生と『エンドレス・プラネッツ』を振り返りたい。

 オースティン・ペラルタは1990年10月25日にロサンゼルスで生まれた。父親はスケーターでドキュメンタリー映画監督のステイシー・ペラルタ、母親は映画監督のジョニ・コールドウェルという映像関係の一家の出だが、オースティン自身は5歳でピアノを弾きはじめ、すぐに周囲からピアニストとしての才を認められる早熟児だった。最初はクラシック・ピアノを学んでショパンなどを弾いていたが、10歳のころにビル・エヴァンスのレコードを聴いてジャズに目覚める。12歳のときにロサンゼルスの若手ジャズ・コンクールで優勝するなど天才ぶりを発揮し、ピアノ以外にベース、ドラムス、サックスなどもマスターするようになる。学業と並行して演奏活動もおこなうようになり、ジェラルド・ウィルソン・オーケストラなどで演奏していたオースティンだが、そんな彼の才能にいち早く目をつけたのは日本で、伊藤八十八氏が主宰する〈エイティー・エイツ〉というレーベルが、2006年にファースト・アルバムの『メイデン・ヴォヤージ』をリリースする。オースティンが15歳のときだ(録音時は14歳)。ベースが大物のロン・カーターというピアノ・トリオ編成でのこのアルバムは、タイトル曲はハービー・ハンコックのカヴァーで、ほかにマッコイ・タイナーチック・コリアジョン・コルトレーンらの作品を演奏するスタンダード中心のアルバム。レーベルとしては若き正統派のジャズ・ピアニストとして売り出したかったことが伺える。若くハンサムな男の子ということで、早速日本のジャズ・メディアから持ち上げられ、同年の東京ジャズ・フェスティヴァルにも出演し、チック・コリア、ハンク・ジョーンズらと共演している。

 その勢いで2007年に2作目の『マントラ』を発表。こちらはベースがベテランのバスター・ウィリアムスだが、サンダーキャットの兄であるロナルド・ブルーナー・ジュニア、マーカス・ストリックランドなどの新しい世代のミュージシャンも参加している。ハービー・ハンコック、チャールズ・ミンガス、ジョー・ヘンダーソン、モンゴ・サンタマリアなどをカヴァーする一方、オリジナル作品も4曲ほどやっており、作曲家としても力をつけてきたことを伺わせる内容だ。この頃のオースティンはハービー・ハンコックやマッコイ・タイナーなどの影響を伺わせる演奏スタイルで、楽曲もポスト・バップやモードに基づくオーセンティックなもの。ただ、『マントラ』というアルバム・タイトルや “アストラル・タイズ” という曲名にも見られるように、マッコイ・タイナーを経由してジョン&アリス・コルトレーンファラオ・サンダースなどの音楽観、宇宙観といったものを身につけようとしていたのかもしれない。ホレス・タプスコットが創設したパン・アフリカン・ピープルズ・アーケストラに参加してフリー・ジャズやスピリチュアル・ジャズを演奏していた時期もあり、正統派のジャズ・ピアニストから次第に変容していく。アダム・ルドルフ率いるゴー:オーガニック・オーケストラにも参加し、フリー・ジャズのアルバムを制作していたのもこの時期のこと。カルロス・ニーニョやミゲル・アトウッド・ファーガソンらも参加していたこのプロジェクトでは、ピアノではなくバンブー・フルートを演奏していた。

 アルバム2枚をリリースした後はしばらく学業にも専念し、ペパーダイン大学で再びクラシックを学ぶと同時に、ジャズ・ピアニストのアラン・パスクアとジャズ・サックス奏者のバディ・コレットに師事している。アラン・パスクアはトニー・ウィリアムスのライフタイムに参加してジャズ・ロックをやっていたことがあり、バディ・コレットはラテン・ジャズ演奏もやっていたことがある。そうした人たちに師事することで、より幅広いジャズの表現力を身につけていった。学業のほかではエリカ・バドゥ、シャフィーク・フセインなどのセッションに参加していたオースティンだが、在学中の2010年にカリフォルニア芸術大学でドクター・ストレンジループとのコラボ・インスタレーションをおこなっている。ストレンジループはVJ及びエレクトロニック・ミュージックのプロデューサーで、〈ブレインフィーダー〉からのリリースもおこなっている。クラシックから現代音楽、フリー・ジャズ、電子音楽などが結びついた実験的なコラボだったが、これをきっかけにオースティンと〈ブレインフィーダー〉との接点が生まれた。ストレンジループを介してオースティンの存在を知ったフライング・ロータスは、すでにでき上がっていたオースティンのアルバムノデモ・テープを聴き、〈ブレインフィーダー〉からリリースしたいと申し出る。それが『エンドレス・プラネッツ』である。

 『エンドレス・プラネッツ』はオースティンのピアノ、ハミルトン・プライスのベース、ザック・ハーモンのドラムスのピアノ・トリオを軸に、ベン・ウェンデルのテナー・サックス、ゼイン・ムザのアルト・サックスが参加し、ストレンジループのエレクトロニクスがエフェクトを加えていく(ストレンジループはアルバムのアートワークも担当)。オースティンはピアノ以外に “イントロダクション:ザ・ロータス・フラワー” でソプラノ・サックスも演奏し、最終曲の “エピローグ:ルネッサンス・バブルズ” では当時ツアー・メンバーをやっていたザ・シネマティック・オーケストラと、そのシンガーを務めるハイディ・ヴォーゲルがエレクトロニクスとヴォーカルで参加する。メンバーの中ではベン・ウェンデルがグラミー賞にノミネートされたことで知られる。プリンスからティグラン・ハマシアン、アントニオ・サンチェス、ルイス・コールらと共演し、オルタナティヴなジャズ・ファンク・バンドのニーボディーのメンバーでもある。ゼイン・ムサはアルトゥーロ・サンドバル、ロイ・ハーグローヴ、メイシー・グレイなどとの共演で知られるが、2015年に事故で他界している。プロデュースとミックスはオースティンとポール・ペスコが共同でおこない、作曲はすべてオースティンによるもの。ポール・ペスコはマドンナやホール&オーツのプロデュースなどで知られる人物だ。

 アルバムは1曲目から6曲目までがライヴ録音で、曲間は大体シームレスに繋がり、その隙間をサウンド・エフェクトやエレクトロニクスが埋めていく構成。“イントロダクション:ザ・ロータス・フラワー” や “エピローグ:ルネッサンス・バブルズ”、“アルジェ” の後半部あたりではエレクトロニクスの比重が増し、ストレンジループとのコラボを彷彿とさせるところがある。そのあたりで〈ブレインフィーダー〉っぽさを感じさせるところがあるものの、基本的にはオースティンのピアノ演奏を軸とした純粋なジャズ・アルバムである。“アルジェ” は表題どおり北アフリカから中東に至るエキゾティックなムードに包まれたモード・ジャズで、マッコイ・タイナーからの影響を物語るような楽曲だ。タブラを交えたエスニックなモチーフがあり、パン・アフリカン・ピープルズ・アーケストラやアダム・ルドルフとの共演を通じて得たアフリカ的な音楽観を感じさせる。5拍子の複雑なリズムとハーモニーを持つ “キャプリコーナス” でも、オースティンのマッコイ張りの力強いピアノ・タッチがあり、ベン・ウェンデルやゼイン・ムサのサックスもアグレッシヴなフレーズで対抗する。“オード・トゥ・ラヴ” でのオースティンのピアノ、ベンのソプラノ・サックスによるアンサンブルも非常にスリリングだ。

 なお、今回は〈ブレインフィーダー〉の15周年にちなんだデラックス・エディションとして再リリースとなり、2011年7月にロンドンのBBCにあるメイダ・ヴァレ・スタジオでのセッションが4曲収録される。ザ・シネマティック・オーケストラのジェイソン・スウィンスコーとハイディ・ヴォーガル、シネマティック・オーケストラにも参加していたリチャード・スペイヴン(ドラムス)やトム・メイソン(ベース)、ジェイソン・ヤード(アルト・サックス)たちとの共演で、ロサンゼルスとはまた異なる空気感を持つ。フライング・ロータスのアルバム収録曲でもある “DMTソング” のカヴァーなど、『エンドレス・プラネッツ』本編とはまた異なるタイプの演奏となっており、オースティンが持つ音楽性の幅広さを見せてくれる。『エンドレス・プラネッツ』は作曲や演奏は丹念に練られており、高度な演奏技術を要する複雑なものであるが、オースティンを含めたロサンゼルスの若いミュージシャンならではの勢いやパッションを感じさせるものである。そして、そうした楽曲と演奏がエレクトロニクスや〈ブレインフィーダー〉というレーベル・カラーと結びついたことにより、既存のジャズに基づきつつも新しさを感じさせるものとなっている。そして、そうした自由でフレッシュな精神は、サンダーキャットやカマシなどオースティンと交流の深かったミュージシャンはもちろん、〈ブレインフィーダー〉全体に継承され、いまもオースティンの魂は息衝いている、そんなアルバムだ。

Mount Kimbie - ele-king

 前作『MK 3.5: Die Cuts | City』から早2年。カイ・カンポスのほうは同年末の来日公演で非常にかっこいいエレクトロニック・ダンス・ミュージックを楽しませてくれましたが、それぞれのソロ・アルバムのカップリングというその形式から「解散するんじゃないか?」とちょっぴりはらはらしていたのも事実だったり。そんなわれわれの不安をきっちり追い払ってくれるニュースの到着です。マウント・キンビー、通算4枚目のオリジナル・アルバム『The Sunset Violent』のリリースが4月5日に決定しています。アルバムごとに変化を遂げるかれら、今回はどんなサウンドに仕上がっているのでしょう。まずは新曲 “Fishbrain” をチェック。

MOUNT KIMBIE
待望のニュー・アルバム『THE SUNSET VIOLENT』を発表!
新曲「Fishbrain」のミュージックビデオを解禁
盟友キング・クルールも参加のアルバムは4月5日発売

UKのインディー・エレクトロニック・シーンで確固たる地位を築き、メンバーのドム・メイカー参加曲がグラミー賞にノミネートされたことも記憶に新しいマウント・キンビーが4枚目となるスタジオ・アルバム『The Sunset Violent』を〈Warp〉からリリースすることを発表した。アルバム発表に合わせ、新曲「Fishbrain」がミュージックビデオと共に解禁されている。

Mount Kimbie - Fishbrain
YouTube >>> https://youtu.be/-YDoLuPm6Qk

最新作『The Sunset Violent』は、前作のスタジオ・アルバムである『Love What Survives』(2017)の方向性を引き継ぎながら、現代のインディー・サウンド、シューゲイザー、エレクトロニカをシームレスに融合させ、今やロンドンのシーンを代表する存在となったマウント・キンビーの特異性と先進性の両方を見事に反映させている。

本作は、ロンドンでの仕上げ作業の前まで、カリフォルニアのユッカ・バレーという西部の田舎町で制作された。砂漠に囲まれた赤褐色の色調と寂れたアメリカーナの風景が、アルバム全体に漂い、一つ一つの楽曲の抽象的なストーリーテリングとモダンなソングライティングに完璧にマッチし、ここにマウント・キンビーの新たな名盤が誕生した。

ドム・メイカーとカイ・カンポスを中心に、長年のコラボレーターであるアンドレア・バレンシー・ベアーンとマーク・ペルが加わり4人体制となったマウント・キンビーは、ジェイムス・ブレイクとともにポスト・ダブステップという潮流を作り出し、シーンに影響を与える作品群を15年近くにわたって発表してきた。2010年のデビュー作『Crooks & Lovers』(Pitchfork、Mixmag、Resident Advisorを含む30以上のメディアで「Best Albums of the Decade」リストの上位にランクイン)以降、UKエレクトロニック・ミュージックの伝統を引き継ぎながら、現代のインディー・バンドの先駆的存在としての役割も果たしてきた。その評価をあらためて決定づけた前作『Love What Survives』にはキング・クルール、ミカチュー、ジェイムス・ブレイクらが参加、また2022年にはカイとドムそれぞれの才能を突き詰めた意欲作『Die Cuts | City Planning』をリリースしている。カイが、DJとしてのキャリアを成功させると同時に、ドムは、トラヴィス・スコットやシザ、メトロ・ブーミン、ジェイムス・ブレイクらのトラックを手がけるプロデューサーとしても活躍し、プロデュースしたジェイムス・ブレイクの「Loading」はグラミー賞にもノミネートされた。

マウント・キンビー待望の最新作アルバム『The Sunset Violent』は、4月5日(金)にCD、LP、デジタル/ストリーミング配信で世界同時リリース。国内盤CDにはボーナストラックが追加収録され、歌詞対訳と解説書が封入される。LPは通常盤(ブラック・ヴァイナル)のほか、限定盤(オレンジ・ヴァイナル)と初回生産限定日本語帯付き仕様盤(オレンジ・ヴァイナル)も発売される。

label: Warp Records
artist: Mount Kimbie
title: The Sunset Violent
release: 2024.04.05
CD 国内盤:解説・歌詞対訳/ボーナストラック ¥2,600+税
CD 輸入盤:¥2,000+税
LP 輸入盤:¥4,000+税
LP 限定盤:数量限定/オレンジ・ヴァイナル ¥4,000+税
LP 国内仕様版:数量限定/オレンジ・ヴァイナル/日本語帯付き/解説書封入 ¥4,300+税

https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13900

TRACKLISTING:
01. Right This Way
02. Home Alone
03. Lucky
04. The Princess
05. ice (ft. They Hate Change)
06. Test It
07. ooh
08. Believe It
09. Anxious
10. Ex-Girlfriend (ft. Shygirl)
11. Toxic
12. My Day Off
13. Twice (ft. Blood Orange)
14. Someone

bar italia - ele-king

 当初は正体不明の謎めいたバンドとして登場してきたロンドンのバー・イタリア。ディーン・ブラントが自身のレーベルから送り出したという点でも注目しないわけにはいかない彼らだが、その後〈Matador〉からのリリースで徐々に顔を見せていくようになる。昨年は『Tracey Denim』『The Twits』と2枚もアルバムを発表、高評価を受けたことは記憶に新しい。さまざまなロックへのオマージュやパスティーシュによって織りなされるその魅力的なサウンドから、「いまいちばんイケてるバンド」なんて声もあったり。初来日公演は5月29日@渋谷WWWX。そなえましょう。

bar italia

伝説を目撃せよ!!!
ロンドンの最注目新人バンド、
バー・イタリアの初来日公演が
遂に決定!

噂のbar italiaがとうとう日本にやって来る!
奇才ディーン・ブラントのレーベル〈World Music〉から2枚のアルバムリリースを経て、ロンドンで最もエキサイティングなバンドとして大注目を浴びる中、昨年2023年3月に〈Matador Records〉と電撃契約を発表、その後は怒涛のように1年に2枚のアルバム『Tracey Denim』を5月に、『The Twits』を11月にリリース、英CRACK誌の表紙を飾り、異例とも言えるヴォリュームで大特集され、年末には多くの主要年間アルバムチャートに選出されるなど大きな注目を集めた。ここ日本でも、インディーズ音楽の発信源として世界中から支持を集め、多くの海外アーティスト達も訪れるBIG LOVE RECORDSの年間アルバムチャートの第1位を獲得した。

メンバーは、アート界隈でも活躍してきたイタリア人女性ニーナ・クリスタンテと、ヴィーガン(Vegyn)のレーベル〈PLZ Make It Ruins〉から作品をリリースしていたダブル・ヴァーゴとしての活動でも知られるサウス・ロンドン拠点のジェズミ・タリック・フェフミとサム・フェントンの3人、そしてベースとドラマーを加えた5ピースバンドでライブを行って来た。2022年以降、彼らは自身のヘッドライン公演に加え、ピッチフォーク・ミュージック・フェスティヴァル、コーチェラをはじめ多くのフェスからも引っ張りダコで、世界中のインディ・リスナーから大きな注目を集めている。そんな彼らの一夜限りの初来日公演! これは見逃し厳禁だ!

【bar italia 来日公演】
bar italia
SUPPORT ACT: TBC

2024.05.29 (WED)
渋谷 WWWX
OPEN:18:00 / START:19:00
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13898

【TICKETS】
前売¥7,200(税込/オールスタンディング)
※別途1ドリンク代 ※未就学児童入場不可

先行販売
●BEATINK主催者先行:2/8 (thu) 10:00~
[https://beatink.zaiko.io/e/baritalia]
※先着/Eチケットのみ
●イープラス・プレイガイド最速先行受付:2/10 (sat) 10:00~2/14 (wed) 23:59
[https://eplus.jp/baritalia/]

一般発売:2/23 (fri) 10:00~
●イープラス [https://eplus.jp/baritalia/]
●ローソンチケット
●BEATINK [https://beatink.zaiko.io/e/baritalia]

企画・制作 BEATINK: http://www.beatink.com/
INFO BEATINK: http://www.beatink.com/ E-mail: info@beatink.com

label: Matador / Beat Records
artist: bar italia
title: The Twits
release date: Now On Sale

Beatink.com:
https://beatink.com/products/detail.php?product_id=13700

tracklist
01. my little tony
02. Real house wibes (desperate house vibes)
03. twist
04. worlds greatest emoter
05. calm down with me
06. Shoo
07. que suprise
08. Hi fiver
09. Brush w Faith
10. glory hunter
11. sounds like you had to be there
12. Jelsy
13. bibs

label: Matador / Beat Records
artist: bar italia
title: Tracey Denim
release date: Now On Sale

CD:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13377
LP:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13378

tracklist
01. guard
02. Nurse!
03. punkt
04. my kiss era
05. F.O.B
06. Missus Morality
07. yes i have eaten so many lemons yes i am so bitte
08. changer
09. Horsey Girl Rider
10. NOCD
11. best in show
12. Clark
13. harpee
14. Friends
15. maddington

claire rousay - ele-king

 ここ数年の注目すべきエクスペリメンタル・ミュージック~アンビエント作家のひとり、テキサスはサンアントニオのクレア・ラウジーが新たなアルバムを発表する。今回のリリース元は〈Thrill Jockey〉だ。『sentiment』と題されたそれは4月19日発売。収録曲 “head” が本日2月6日(火)より配信されています。日本盤CDには完全未発表のボーナス・トラック2曲が追加収録されるそうなので、さあフィジカルを買おう。

EMO AMBIENTの旗手にして歌姫、クレア・ラウジーが、驚くべきアルバムを提げて、遂に日本デビューを果たす。
風景と日常、響きと調べ、知性と情動、ポップ・ミュージックは、ここまでたどり着いた。
間違いなく本作は2024年最高の話題作になるだろう。
全感覚を押し拡げて聴いてほしい。
──佐々木敦

現在、米LAを拠点に活動するアーティスト・ミュージシャンで、エクスペリメンタル・ミュージック(実験音楽)やアンビエント・ミュージックの既成概念に挑戦することで知られているclaire rousay(クレア・ラウジー)が、米シカゴの老舗インディー・レーベルThrill Jcckeyに移籍し、機械的にエフェクトされたヴォーカルとギター演奏を大胆に取り入れ、claire rousay流ポップ・ソングに果敢に挑んだ、(しかし、これまでの彼女の作品とも確実に地続きな)驚きの最新アルバム『sentiment』(センチメント)を4月19日(金)に発表することが決定しました。
アンビエンスを意識した現代的なフォーキー感覚やヴァイオリンをフィーチャーしたメランコリックなメロディーが全体的に流れ、フィールドレコーディングが印象的に散りばめられ、ドローンやミニマル・サウンドも効果的に登場する、エレメンツのバランス感覚が圧倒的に素晴らしい、あるようで無かった革新的なマスターピースとなっています。
日本盤CD(THRILL-JP 59 / HEADZ 263)も、完全未発表の2曲のボーナス・トラックを追加収録して、同時発売する予定です。
このアルバムのリリースに先行し、ファースト・シングルとしてアルバムの2曲目に収録されている「head」(ヘッド)が2月6日(火)より(日本を含む)全世界同時にデジタル配信されます。

アーティスト:claire rousay(クレア・ラウジー)
アルバム・タイトル:『sentiment』(センチメント)
企画番号:THRILL-JP 59 / HEADZ 263
価格(CD):2,200円+税(定価:2,420円)
発売日:2024年4月19日(金)
フォーマット:CD / Digital
バーコード:4582561400988

01. 4pm
02. head
03. it could be anything
04. askin for it
05. iii
06. lover's spit plays in the background
07. sycamore skylight
08. please 5 more minutes (feat. Lala Lala)
09. w sunset blvd
10. ily2 (feat. Hand Habits)
11. ruby
12. shameful twist

tracks 11, 12 …日本盤のみのボーナス・トラック

1月のジャズ - ele-king

 2024年1回目のコラムだが、1月は年初でリリースが少なく、紹介すべきものがこれといってない。そこで、2023年を振り返ってリイシューや未発表作品からピックアップしたい。特にアフリカや南米のアーティストで目につく作品が多かった。



Vusi Mahlasela & Norman Zulu, & Jive Connection
Face To Face

Strut

 『フェイス・トゥ・フェイス』は1994年に録音された未発表作品で、スウェーデンの音楽プロデューサーのトルステン・ラーションのアーカイヴから発見された。アフリカ南部のバントゥー系民族であるソト族のフォーク・シンガーのヴーシ・マハラセラ、南アフリカのシンガー・ソングライターのノーマン・ズールーと、スウェーデンのジャズ~ソウル集団のジャイヴ・コネクションが共演した記録である。ちなみにジャイヴ・コネクションにはリトル・ドラゴンのドラマーのエリック・ボディンや、スウェーデン民謡グループのデン・フールなどで演奏するベーシストのステファン・バーグマンらが在籍した。

 スウェーデンは昔からジャズが盛んで、ドン・チェリーらアメリカから移住したジャズ・ミュージシャンも少なくない。南アフリカでは元ブルーノーツのジョニー・ディアニが移住している。ジョニー・ディアニなどのジャズ・ミュージシャンはアパルトヘイトから逃れるために他国へ移住したのだが、そうした反アパルトヘイト運動を支援した国のひとつがスウェーデンで、政府はアフリカ民族会議への資金援助をおこなっている。そのANC議長だったネルソン・マンデラが反逆罪で投獄された後、出所して初めて訪れた国がスウェーデンである。1994年のマンデラ大統領就任式で歌を披露したのがヴーシ・マハラセラで、ノーマン・ズールーを含めて彼らと交流を深めていたジャイヴ・コネクションが一緒に録音したのが『フェイス・トゥ・フェイス』である。

 ヴーシの歌は自由を求めての闘争に彩られており、南アフリカの伝統的な寓話に基づく『プロディガル・サン(放蕩息子)』や、児童虐待に対する嘆きを歌った『フェイスレス・ピープル』などを力強く歌う。音楽的にはジャズやアフリカ民謡だけでなく、レゲエやダブ、ファンク、ポスト・パンクなどの要素を交えたものとなっており、実に興味深い。“フェイスレス・ピープル” はカーティス・メイフィールド風のニュー・ソウル的な歌や演奏にダビーなエフェクトを交え、まるでガラージ・クラシックと言ってもおかしくないようなものだ。ニューウェイヴとアフロ・ディスコが融合した “プッシュ” はピッグバッグを彷彿とさせ、強烈なダブ・サウンドの “フェイス・トゥ・フェイス” や “ルーツ” はデニス・ボーヴェルがミックスしているかのよう。アフロ・ジャズの “ウマザラ” にしても、楽器の録音やミックスなどダブやレゲエを意識したものとなっている。



Orchestre Poly-Rythmo De Cotonou Dahomey
Le Sato 2

Acid Jazz

 オルケストル・ポリリトモ・デ・コトヌー・ダホメイ(別名T・P・オルケストル・ポリリトモ)は西アフリカにあるベナン共和国のコトヌー出身の楽団で、1968年にシンガー兼ギタリストのメロメ・クレマンによって創設され、1980年代の終わりまで活動した。アフリカ民謡、アフロビート、ハイライフ、アフロ・キューバン・ジャズ、サイケデリック・ファンクなどが融合した音楽を演奏し、地元のヴードゥー教にも繋がりを持つ存在だった。欧米諸国などでは長らく知られざるバンドであったが、2000年代に彼らの音源がUKの〈サウンドウェイ〉から紹介されて広まり、ガーディアン紙は「西アフリカで最高のダンス・バンドのひとつ」と評価している。そうした再評価を受けて2009年にバンドは再結成され、2枚の新録アルバムの発表とワールド・ツアーもおこなうが、創始者のメロメは2012年に亡くなった。

 アルバム・リリースは数十枚に及び、原盤はどれもが入手困難なものだが、〈アナログ・アフリカ〉ほか欧米のレーベルもリイシューを手掛けている。1974年作の『レ・サト』は2021年にUKの〈アシッド・ジャズ〉からリイシューされ、その第2弾として同年に録音された『オルケストル・ポリリトモ・デ・ラ・アトランティーク・コトヌー・ダホメイ』が『レ・サト・2』としてリリースされた。原盤は『レ・サト』と全く同じレコード・スリーヴで販売されており、裏面に第1弾と異なるカタログ番号が記載されるという体裁だったため、長らく謎のレコードとされてきたもので、彼らの作中でももっともレアな1枚である。原初的な歌と催眠的なファンク・グルーヴに包まれた10分を超す “ジェネラル・ゴウォン” はじめ、伝統的なヴードゥーの儀式とパーカッションによるポリリズムが結びついた独特の世界を作り出している。



The Yoruba Singers
Ojinga’s Own

Soundway

 ヨルバ・シンガーズは1971年に結成された南米のガイアナ共和国のバンドで、アルバムは1974年の『オジナズ・オウン』、1981年の『ファイティング・フォー・サヴァイヴァル』のほか、リーダーのエズ・ロックライフとヨルバ・シンガーズ名義による2009年作『アー・ウィ・ライク・デム・ソング・ディス』などがある。隣国のトリニダード・トバゴのカリプソやスティールパン演奏の影響を受け、ほかにジャマイカから流れてくるロックステディやルーツ・レゲエ、ガイアナ住民の祖先であるアフリカの伝統的な民謡などを育み、プロテスト・ミュージックへと昇華したのがヨルバ・シンガーズの音楽である。ヨルバというアフリカのナイジェリア南西部に住む部族をグループ名に冠している点で、彼らのルーツ的なところが見えてくる。欧米では全く知られた存在ではなかった彼らだが、2018年に『ファイティング・フォー・サヴァイヴァル』がUSの〈カルチャーズ・オブ・ソウル〉からリイシューされ、陽の目を見ることになる。そして2023年には『オジナズ・オウン』がUKの〈サウンドウェイ〉からリイシューされた。

 彼らの初期のレパートリーは、農園での労働の合間に歌ったり、または宗教儀式の場で歌われるといったもので、『オジナズ・オウン』はそうした彼らの姿をとらえた素朴な作品集である。演奏は原初的な打楽器やギター、フルートなどによるシンプルなもので、10名ほどのコーラス隊が合唱するというスタイル。“オジナズ・オウン” や “アンコンプレヘンシデンシブル・レディオマティック・ウーマン” など、ガイアナの自然や大地、生活や宗教と密着したプリミティヴな作品集である。



Terri Lyn Carrington
TLC And Friends

Candid / BSMF

 現在のUSジャズ界のトップ女性ドラマーであるテリ・リン・キャリントン。1965年生まれの彼女は、ウェイン・ショーターの1988年作『ジョイ・ライダー』への参加で名を上げ、1989年のリーダー・アルバム『リアル・ライフ・ストーリー』でグラミー賞にノミネートされるなど、着実にキャリアを重ねていった。女性アーティストのみで結成されたモザイク・プロジェクトを興すなど、ジャズ界における女性演奏家の地位向上を謳うリーダー的な存在でもある。父親のソニー・キャリントンがサックス奏者だったこともあり、7歳のときからドラムをはじめた彼女は、11歳でバークリー音楽院に奨学金を受けて入学した天才児で、在学中にさまざまなプロ・ミュージシャンとのセッションをはじめ、16歳のときの1981年に自主制作でアルバムを作ってしまった。それが『TLC・アンド・フレンズ』である。一般的に『リアル・ライフ・ストーリー』がファースト・アルバムとされる彼女だが、実は『TLC・アンド・フレンズ』が正真正銘の幻のデビュー・アルバムなのである。

 この度リイシューされた『TLC・アンド・フレンズ』は、ケニー・バロン(ピアノ)、バスター・ウィリアムズ(ベース)、ジョージ・コールマン(サックス)という、1960年代より活躍してきた名手たちとの共演となっている。そして、父親のソニー・キャリントンもゲスト参加して1曲サックスを吹いている。バップを中心としたオーソドックスな演奏だが、アレンジも自身でおこなうなどすでに神童ぶりを発揮するものだ。楽曲はコール・ポーターの “恋とはどんなものかしら”、マイルス・デイヴィスの “セヴン・ステップス・トゥ・ヘヴン”、ソニー・ロリンズの “セント・トーマス” と “ソニー・ムーン・フォー・トゥー” など大半がカヴァー曲で、ビリー・ジョエルの “素顔のままで” もやっている。そうしたなか、唯一の自作曲の “ラ・ボニータ” がラテン・タッチのモーダル・ジャズとなっており、とても16歳とは思えない奥深く豊かな表現力を見せる。

第2回目:テイラー・スウィフト考  - ele-king

 彼女はすぐにショウを完売させて、チケットの販売窓口のプラットホームを圧倒する。彼女はファン文化を変えたと高く評価されている。そして、2023年――戦争、経済不安や地政学的不安に見舞われた12カ月間――『タイム』誌は彼女をパーソン・オブ・ザ・イヤーに選出した
 個人的な好みはさておき、私はいまだに混乱している。テイラー・スウィフトの何がそれほど革新的なのか? 誤解はしないでほしいのだが、彼女の人気が唖然とするほどとんでもないことはわかっている。その需要は非常に高く、Erasツアーでのチケット収入は一晩で1300万米ドルを超えたと推定されている。増殖しつつあるテイラー・スウィフトの研究者コホートを含む多くの専門家が、このスターの経済的な威力が彼女の文化遺産を証明するものだと指摘している。「彼女のErasツアーがもたらした経済効果は……前例のないものだ。彼女は文化的アイコンであるだけでなく、グローバル・エコノミー(世界経済)である」と、バージニア工科大学の学生担当副学部長、アリアナ・ワイアットは書いている
 が、しかし私がここで提言したいのは、テイラー・スウィフトの人気は彼女の持ち前のスター性を示しているものではなく、彼女が現代のメディア文化そのものであるのに加え、さらには彼女がメディアと適合してきた結果として人気を得ているのではないかということだ。つまり、ミュージシャンとして、そして現象としてのテイラー・スウィフトは、メディアとしてのポップへの畏敬の念が音楽としてのポップを凌駕していることを示していると。

I そう、私たちはメディアへの関心を、以前の主体への関心に変える必要がある。 これは、メディアが自分たちを旧来の世界の代替物にしてしまっていることへの論理的な答えなのだ!*1

 私たちは大好きなミュージシャンについて語られる無数のインタヴュー、ヴィデオやメッセージの掲示板に、タップするだけでアクセスできる時代(era)に生きている。私たちの誰もがそうであるように、メディアによって飽和状態になったイメージは、音楽ファンにとっては音楽そのものと同程度に(あるいはそれ以上に)重要になっている。そしてスウィフトは、ブロンドの髪で青い目をしたカントリー歌手からポップスに転向して成功した神童が、カニエ・ウェストのようないじめっ子体質の男や裏切り者の元カレのオンパレードに苛まれるという〝アメリカの恋人(American Sweetheart)〟の典型を呼び起こすことでパワフルなイメージを作り上げた。*2  彼女が楽器を演奏し、自分で曲を書く(あるいは共作する)ことも、真新しさという点において長年にわたって彼女の役に立っている。
 〝音楽〟という概念が〝ブランド〟の概念と結びついてしまったことで、ファンの消費パターンはより経済的にホリスティック(全体論的)なものとなった――とくにスウィフティーズにとっては、TSが創り出すすべてに対する彼らの熱狂が実際に〝ミクロ経済学ブーム〟を生み出している。最近の『ニューヨーク・タイムズ』の記事では、タフィー・ブロデッサー・アクナーが、テイラー・スウィフトの悪名高いファン集団の一員であるということには、どのようなことが伴われるのかを明らかにしている。

  最高レベルのスウィフティーであるということは、すべてのエネルギーを費やし、すべてを吸収するエヴイデンスと言う名の帝国へのアクセスが可能になることを意味する。それは、あらゆる質問への答えを持ち、謎が解決し、興奮して賢くなった気分になり、自分自身より大きなものに関わっていることを、スマホから顔を上げることなく感じることが可能になるということだ。

 つまり、基本的にファンであるということは、もはや音楽が好きということだけではない。スウィフティーズにとってそれは崇拝に近い。記事の著者は、彼女のライヴ・パフォーマンスについて下記のように述べている。

  厳粛なムードが漂っていた――スピリチュアル、と言ってもいい。私は夜明けに神殿の丘で祈りを捧げたことがある。聖書の祖先の墓で、震える嘆願者たちの中に立ったことも。身震いするほどの静寂の中、バチカンの奥深くの、さらに先の至聖所まで歩いたこともある。これは、(会場にいた)女の子たちの存在を除けば、まさにそのようなものだった。*3

 だからといってスウィフトの社会的な(かつ文字通りの)資本は、世界的な影響力の証拠なのだろうか。あるいは、過剰なメディアがポップ・スターをあらゆるレベルで崇拝できる神へと変えてしまったのか? おそらく両方の要素が少量ずつ含まれているのだろう。彼女の魅力のひとつは、『タイム』が「パーソン・オブ・ザ・イヤー」特集において「驚異的」とまで評したそのストーリー・テリングの才能にある。私もそれには同意する――そのストーリーが彼女のメディア上のペルソナである限りは。スウィフトが元友人や恋人(ケイティ・ペリー、ジョー・ジョナス、カルヴィン・ハリス、ジョン・メイヤー……)を暴露した音楽カタログの膨大さは有名だ。彼女は恋人に振られた話ばかりを歌っているわけではないが、その他の曲も大部分が自己を反映したもので、とくにメディアからの不当な描写について言及されることが多い。

 “Shake it Off”がすぐに思い浮かぶ。

  私は夜遅くまで出歩いている
  私の脳みそは空っぽ
  みんながそう言うの……
  私がデートばかりしている
  なのに誰とも長くは続かない
  みんながそう言うの……

 そして、“Mean”も。

  あなたは、寝返って
  ものすごい嘘と屈辱的な態度で
  私の欠点をあげつらった
  まるで私が気付いていないみたいに
  あなたをブロックするために下を向いて歩く
  もう二度とあなたを楽しませるつもりはないし
  私はもう一度、大丈夫な自分に戻りたいだけ

 彼女はまず主要なターゲットとなる聴衆を10代の苦悩を歌った曲で引き込んでから、尽きることのない自伝的な、ドラマティックな話題を提供して聴衆を虜にしてきた。そのようにして彼女は負け犬であると同時に女王としての地位を確立した。これは“Anti-Hero”の歌で見事に描写されている。

  私よ、ハーイ! 問題児の私だよ
  お茶の時間にみんなが同意するように
  私は太陽を直視できるのに、鏡を見ることはできない
  いつもアンチ・ヒーローを応援するのは、すごく疲れるだろうね

 説得力のある負け犬の物語でオーディエンスの情(パトス)に訴えかけると、皆が彼女を自分ごととして共感し始める! なんと賢いビジネス戦略なのだろう。これにより、スウィフトは両方のいいとこ取りができるようになった。彼女は〝誤解されている〟ものの、間違いなく今日生きている最大のポップ・スターであり、スタジアムでのショウの合間にフットボール・スターの彼氏のもとへプライベート・ジェット機で飛んでいく普通の女の子(エヴリーガール)だ。*4 ゴシップをめぐってのインタヴューにおける "信頼問題 "を抱えたスター、今回は誰のことを歌っているのかについてのジューシーな手がかりは、彼女のアルバムのために彼女が復活させたとされるヴァイナル上でも購入できる。*5
 いまではクリエイターが自伝からインスピレーションを得るのは普通のことだ(回顧録の筆者として自分も例外ではない)。これは、個人的なことが普遍的であるという逆説的な真実を表している。だが、テイラー・スウィフトの生活の特殊性は、我々庶民には決して親近感が持てるようなものではない。彼女が金持ちの出であることはよく知られており、家族は彼女の思春期に、音楽業界へ入るのに有利になるようナッシュヴィルに移住した。前出の『ニューヨーク・タイムズ』の記事によれば、その頃、彼女の友人たちが彼女抜きでショッピングモールに出かけていたという、〝少し死んでしまった〟出来事をきっかけに、急激に芽生えた彼女のアイデンティティーが結晶化し始めたという。銀のスプーンを持って生まれ、あきらかに有利なスタートを切った20年にもおよぶキャリアにおいて、その事件やいくつかの安っぽい失恋がリヴェンジの材料となっているのだろう。
 はっきり言うが、良い音楽を作るためにトラウマを持つ必要はないし、テイラー・スウィフトが不当な経験をしていないと言うつもりはない。メディアで活躍する女性として、彼女が男性であれば気にもされないようなことをいちいち詮索されてきたのは想像に難くない。*6 とはいえ、たとえばカニエ・ウェストがMTVアワードのスピーチで邪魔をしたとか、スーパーモデルのカーリー・クロスが彼女とはもうBFF(Best Friend Forever =ズッ友)ではいたくないと言ったことなどについて、私は限定的にしか共感できない。そもそもこのような問題を抱えること自体がじつに大きな特権なのだ。そして、私がスウィフトのカタログに欠けていると思うものは、そういうところからきている。つまり、真の才能から生まれたセンスと想像力で技巧を研ぎ澄まし、人生における残酷さで鍛え上げた鋼鉄のように洗練されたサウンドというような唯一無二のものが欠けている。それはルイ・アームストロングの、「私たちが演奏するのは人生そのものだ」という言葉が意味しているものだ。

II 情報過多に直面する私たちには、代替となるパターン認識が存在しない。*7

 さて、そろそろ音楽の話をしよう。正直に告白すると最初にテイラー・スウィフトの音楽を聴いたときの感想は、もしもチャットGPTに「Gapのコマーシャル・ソング用のサウンドトラックを作って」との指示を与えたら、できあがってきそうな曲、というものだった。それ以降、かなり真剣に時間を費やしてリサーチのために彼女のカタログを聴き込んだが、驚くことに、(いや、そうでもないか)私の印象は変わらなかった。
 スウィフトが全曲自作のアルバム(『Speak Now』 のように)をリリースしていることは称賛に値するし、彼女の音楽が〝キャッチー〟であることは認める。だが、メロディがおおむねモノトーン=単調音で(少し複雑な曲では、スリー・ノート)構成され、耳にこびりついて離れなくなり、頭から抜けなくなる(私は「You Need To Calm Down」を一度だけ、半分まで聴いただけで頭から消すことができなくなった)。彼女の曲の多くが瞬時に覚えられるほどシンプルで、いつまでも深く脳裏に焼き付いてしまい、彼女が何十年もの間、音楽を形成していくだろうと評価されるのも不思議ではない。
 だとしても、アルゴリズム的なメロディのセンスというものが音楽家の才能として称賛されるべきものなのだろうか? 真面目な話、私が聴いた限りでは(彼女のカタログの大部分ではあるが、網羅したというほどではない*8 )、ほとんどが1音から3音によるフックから成るものばかりだった。たとえば“Enchanted”では、メジャー・トライアド(長3和音)を上がっていき、コーラスで5度まで上がるだけ。“Cruel Summer”はほとんどがモノトーンで、文字通り1音でできており、コーラスでわずかにメロディックな企みが加えられている。“Welcome to New York”も“Blank Space”、“Maroon”他と同様にほとんどがモノトーンだ。ここには明らかに方程式が存在する。
 もういちど尋ねる。彼女は史上最高のソングライターの一人なのだろうか?  
 もちろん、いくつかの興味深い瞬間が味わえる作品もある。たとえば『Red』 でポップに転向したあとやそれ以前のギター演奏など。『Reputation』 と『Lover』、『Midnights』 といったアルバムにはそれぞれ独特の雰囲気があり、スタジオでの巧なプロデュースにより達成されたムードを醸し出している。ただ、古臭いと言われるかもしれないが、プロダクションの技術と音楽の革新性は別物だと思っている。だがその一方で、ことによったら私が他のポピュラー・ミュージックの達人たちを聴きすぎているだけかもしれない(ジャクソン5、大貫妙子、それから、伝統主義者だと思われるリスクを覚悟の上でいえば、ビートルズなど)。さらに、信頼できる語り手となるために、ここにカントリー・ミュージックのウィリー・ネルソン、ドリー・パートンにマール・ハガードの名も挙げておこう。
 私が言えるのは彼女の歌にはヒプノティックな性質があって、私などは狼狽させられるということだ。彼女の世界にいとも簡単に吸い込まれてしまう。これにはスウィフティーズも同意してくれるだろう。

III どのようなメディアにおいても、感覚を拡張して世界を満たすことによって、その領域に催眠術を施すような条件が作り出される。このことが、そのメディアが全体に及ぼす影響に、いかなる文化が過去を遡ってさえ、気付いていないことを証明している。*9 

 考えてもみてほしい。テイラー・スウィフトが人びとに喜びをもたらすのであれば、それは素晴らしいことだ。しかも、彼女の人気は、他のアーティストから何かを奪い取るものではなく、むしろ、彼女のSpotifyとの闘いは立派なもので、自分の地位を善のために使う完璧なやり方だった。私がここで強調したいのは、クリエイティヴの仕事というのは、本来、サイドビジネスであくせく働くことなく、その仕事を全うできるようになるということ。シングルマザーのもと、バーモント州の崩れ落ちそうな農家で、暖房費も稼げず、凍ったシャンプーを3分間のシャワーで解凍するような環境で育ち、ニューヨークでクリエイティヴなキャリアをスタートさせるのに狂ったように働く身としては、有名であることがいかに難しいかを、億万長者(おそらく)に一本調子のアンセムで愚痴られても、興味が持てないのだ。
 私はさらに、テイラー・スウィフトのブランドがある種の知的なチェックメイト[相手を打つ手がない状況に追い込む]のようになっていることを指摘しておきたい。もしテイラー・スウィフトの音楽を批判しようものなら、彼女自身を攻撃しているように捉えられる。もし、テイラー・スウィフト自身を攻撃するなら、その人はスウィフティーズが容赦なく攻撃するいじめっ子たち(meanies)の一人にされてしまうのだ。*10 どうやら、中立的な批評家になることは許されず、彼女の味方か敵かの、二択しかないようだ。この二分化が世界的なものかどうかはさておき、テイラー・スウィフトのブランドは「我々 対 彼ら」という音楽環境を作りだした。だが、率直に言って、いまの世のなかに必要なのが白か黒かの思考を増やすことだとは思えない。
 それにもっとも重要なのは、私がスウィフティーズではない人たちを認めるためにこれを書いていること。そう(イエス)、彼女のスーパー・スターダムは少なくともメディア漬けの現代を部分的には反映している。いや(ノ−)、しかしあなたがスウィフティーダムから外れたからといって、精神的なエクスタシーを逃しているわけではない。そして、そう(イエス)、――善の神さま、イエス――他の種類の音楽を好きでいることになんの問題はないのだ。挑戦的な音楽、真に革命的な音楽、現状を打破し、人びとを繋ぐことのできるサウンド。いち個人としての自分自身を発見させてくれる音楽——マーシャル・マクルーハン(本記事の、セクションごとの見出しの背景にいるメディア理論家)が命名した「電子情報環境における画一的な集団」の一人でも、 あるいは私なら「スワイフィー(Swifie)」と呼ぶかもしれないものの一員としてでもなく。

◆注

  • 1 マーシャル・マクルーハン :『カウンターブラスト』(ロンドン:Rapp&Whiting, 1969), 133
  • 2 スウィフトの自己プロデュースによるドキュメンタリーのタイトルでさえ、『ミス・アメリカーナ』と命名されている。
  • 3 私はこれには憤りを感じる。
  • 4 スウィフトは、自身が使用しない時は、プライベート・ジェットを頻繁に貸し出しているにも関わらず、データ報告書が歪められていると主張し、効果の怪しげな“カーボン・クレジット”を購入して自身の旅行数を相殺しているが、ここ数年で、もっとも二酸化炭素を排出するセレブだとされている。
  • 5 彼女のインスタグラムのコメントのタイム誌の記事へのリンクより引用。
  • 6 男性ミュージシャンが、露骨な女遊びでとがめられること、もしくは、あからさまには賞賛されないことがどれほどあるだろう?
  • 7 マーシャル・マクルーハン,前掲, 132
  • 8 彼女の多作家ぶりは尊敬する。
  • 9 マクルーハン, 前掲, 23
  • 10 公平を期すために。スウィフトはたまに、スウィフティーたちの悪行を注意する。元カレのジョン・メイヤーを攻撃しないように、などと。
  • 11 マクルーハン, 前掲, 142



Contextualizing Taylor Swift: A Gentle Reminder to Think For Yourself
By Jillian Marshall, PhD

She sells out shows so quickly it overwhelms ticket platforms; she’s credited with changing fan culture. And, in 2023 — twelve months marked by war, economic precarity, and geopolitical unrest — Time magazine named her Person of the Year.

Personal tastes aside, I’m still confused: what’s so revolutionary about Taylor Swift?

Don’t get me wrong— Swift’s popularity is awesome, in the literal, mind-boggling sense of the term. This woman is so in-demand that her estimated ticket revenue on the Eras tour surpassed thirteen million USD in sales per night. And many experts, including a growing cohort of Taylor Swift scholars, point to the star’s economic prowess as proof of her cultural legacy. “The economic impact that her Eras Tour… is unprecedented. She is not only a cultural icon, but also a global economy,” writes Ariana Wyatt, associate Dean of student engagement at
Virginia Tech University.

But I’m here to propose that Taylor Swift’s popularity isn’t indicative of her inherent star power; instead, Taylor Swift may be popular because of contemporary media culture itself, and the way she’s interfaced with it. In other words, Taylor Swift — as a musician and as a phenomenon — demonstrates how reverence for pop as medium has eclipsed pop as music.

I. Yes, we must substitute an interest in the media for the previous interest in subjects. This is the logical answer to the fact that the media have substituted themselves for the older world.1

We live in an era (pun intended) when countless interviews, videos, and message boards discussing the musicians we love are a tap away. Saturated by media as we are, image has become equally (if not more) important to music fans than music itself. And Swift has built a powerful one by invoking an American Sweetheart archetype2: young, blonde-haired and blue-eyed countryturned-pop music wunderkind bullied by meanies like Kanye West and a parade of backstabbing ex-boyfriends. That she played a musical instrument and wrote (or co-wrote) her own songs is also a novelty that’s served her well over the years.

With ideas of “music” now intertwined with the concept of a “brand,” fans’ consumption patterns have become more economically holistic— particularly for Swifties, as their fervor for all things TS actually creates “microeconomic booms.” In a recent piece for the New York Times,
Taffy Brodesser-Akner illuminates what membership in Taylor Swift’s notorious fan collective
entails:

Being a Swiftie at the highest level means access to an all-consuming, all-absorbing empire of evidence, where all the questions have answers, all the mysteries are solved, where you get to feel excited and smart and involved with something bigger than yourself without ever looking up from your phone.

So basically, being a fan isn’t just about liking music anymore; for Swifties, it’s closer to worship.
The author concurs when describing a live performance:

The mood was solemn — spiritual, even. I have prayed at dawn at the Temple Mount. I have stood among quivering supplicants at the graves of biblical forefathers. I have walked in trembling silence as I entered farther and farther into the inner sanctums of the Vatican. This was like that, except for girls.3

But is Swift’s social (and literal) capital evidence of universal appeal, or is it that media overload
has morphed pop stars into gods that we can worship on all levels?

Perhaps it’s a little bit of both. One aspect of her charm is her prodigious story-telling; in
their Person of the Year feature, Time magazine even called her penchant for it “extraordinary.”
I agree— so long as the story we’re talking about is her media persona. Swift’s musical catalog
exposing ex-friends and lovers (Katy Perry, Joe Jonas, Calvin Harris, John Mayor…) is famously
enormous. But while she doesn’t exclusively sing about jilted relationships, the bulk of her other
songs remain self-referential as well, particularly with regard to her unfair media portrayal.
“Shake it Off ” comes to mind:

I stay out too late
Got nothin’ in my brain
That’s what people say…
I go on too many dates
But I can’t make ‘em stay
That’s what people say…

Then there’s “Mean”:

You, with your switching sides
And your wildfire lies and your humiliation
You have pointed out my flaws again
As if I don’t already see them
I walk with my head down, trying to block you out
Cause I’ll never impress you
I just wanna feel OK again

So, after reeling in her target audience with songs about teenage angst, Swift has kept
them hooked with the never-ending drama of her autobiographical hot take. In doing so, she has
managed to establish herself as both an underdog and a queen. This is brilliantly portrayed on
“Anti-Hero,” where she sings:

It’s me, hi, I’m the problem, it’s me
At teatime, everybody agrees
I’ll stare directly at the sun, but never in the mirror
It must be exhausting always rooting for the anti-hero

What a clever business strategy: pull at your audience’s pathos with an underdog narrative so persuading that listeners begin to identify with identifying with you! This has enabled Swift has to enjoy the best of both worlds: she’s “misunderstood,” yet arguably biggest pop star alive today;
an everygirl who jets to her football star boyfriend between stadium shows4; a star with “trust
issues” about interviews who saves the best T — with juicy clues about who’s she singing about this time around — for her albums, which you can purchase on the vinyl she’s credited with reviving.5

Now, it’s normal for creatives to draw from autobiography for inspiration (as a memoirist, I’m no exception); it illustrates the paradoxical truth of the personal being universal. But the particularities of Taylor Swift’s life aren’t exactly relatable to us plebeians. It’s well-known that she comes from money, and that her family uprooted to Nashville during her adolescence to help her break into the music industry. It was around that time when, according to the aforementioned New York Times piece, Swift’s burgeoning identity began to crystallize after an incident when she “died a little”: her friends hung out at a mall without her.

Born with a silver spoon, I suppose that and some crappy breakups would constitute two decades of revenge fodder in a career kicked off with an indisputable head start.
To be clear, a person needn’t be traumatized to produce good music; I also don’t mean to say that Taylor Swift hasn’t experienced injustice. God knows that as a woman in media, she’s been scrutinized for things men get away with without mention.6 But my empathy is limited for, say, Kanye West interrupting an MTV awards speech or supermodel Karlie Kloss not wanting to be BFFs anymore. To have such problems is a mighty privilege indeed. And that’s what I find missing from Swift’s catalog: a sense of imagination, born of true grit, that sharpens craft and cultivates sound — tempered like steel the face of life’s brutality — that’s utterly unique.

What Louis Armstrong meant when he said, “What we play is life.”

II. Faced with information overload, we have no alternative but patternrecognition.7

Now let’s talk music.
I’ll come clean: my initial impression of Taylor Swift’s music was that it sounds like what ChatGPT might spit out if tasked with producing “soundtrack for a Gap commercial.” I have since clocked some serious time listening to her catalog in the spirit of research, but (un)surprisingly, my impression hasn’t changed.

I admire that Swift has released albums written entirely by herself (ala Speak Now), and I’ll acquiesce: her music is “catchy.” But with melodies more or less comprised of monotone (or, on more complex tracks, three-note) earworms, of course they get stuck in your head (I couldn’t turn “You Need To Calm Down” off in my mind after only listening to half the song one time). Many of her songs are so simple that they’re instantly memorizable, and get lodged in your brain so deeply so quickly that it’s no wonder she’s credited with shaping decades of music.

But is algorithmic melodic sensibility what were lauding as musicianship these days?

Seriously: from what I’ve listened to (a substantial portion of her catalog, but by no means exhaustive ), I really did hear mostly one to three note hooks. “ 8 Enchanted,” for example, just steps up a major triad, going up to a fifth for the chorus. “Cruel Summer” is mostly monotone — literally, one note — with some slight melodic intrigue added into the chorus.“Welcome to New York” is also almost entirely monotone, as is “Blank Space,” “Maroon,” and surely others: there’s clearly a formula here.

I ask again: one of the greatest song-writers of all time?

There are some interesting production moments that we can hear, though, particularly after she went pop with Red— and before that, of course, we got to hear her play guitar. The albums Reputation, Lover, and Midnights each have a distinct feel to them: moods achieved by clever production in the studio. Call me old fashioned, though, but production techniques are not the same thing as musical innovation. On the other hand, who knows? Maybe I’ve just listened to too many other masters of popular music (The Jackson 5, Taeko Ohnuki, and, at the risk of sounding like a traditionalist, the Beatles) — and country, for that matter, like Willie Nelson, Dolly Parton, and Merle Haggard — to serve as a reliable narrator here.

What I do know is that there’s a hypnotic quality her songs that I, for one, find unnerving. It’s a little too easy to get to sucked into her universe. Surely Swifties would agree with me there.

III. Any medium, by dilating sense to fill the whole field, creates the necessary conditions of hypnosis in that area. This explains why at no time has any culture bee aware of the effect of its media on its overall association, not even retrospectively.9

Look: if Taylor Swift brings people joy, that’s great. Plus, it’s not like her popularity takes away from other artists; in fact, I think her fight with Spotify was a noble one, and a perfect use of wielding her status for good. But I am here to emphasize that the creative’s work is never the work itself— it’s getting to the point where you’re able to do that work without toiling away at side hustles. So, as someone who grew up thawing frozen shampoo in three-minute showers (lest the well water ran out) because my single mom couldn’t afford to heat our ramshackle Vermont farmhouse — and hustling like a maniac in New York as I get my creative career off the ground — I’m not particularly interested in listening to some (estimated) billionaire complain in monotone anthems about how hard it is to be famous.

I’m also here to point out that Taylor Swift’s brand amounts to a kind of intellectual checkmate: if you criticize her music, then you’re attacking her. And if you’re attacking Taylor Swift, you’re one of those meanies who whom the Swifties will pile on, mercilessly.10 It seems that you can’t be a neutral critic; you’re either for her or against her. Whether this bifurcation was intentional or not is beside the point that Taylor Swift’s brand has created a musical environment of Us versus Them— and, frankly, the last thing our world needs right now is more black and white thinking.

Most importantly, I’m here to validate people who aren’t Swifties. Yes, her superstardom is at least partially reflective of our media-soaked times; no, you’re not missing out on spiritual ecstasy by opting out of Swiftiedom; and yes— good God, YES — it’s OK to like other kinds of music. Music that’s challenging, that’s truly revolutionary: sounds that challenge the status quo and brings people together. Music that makes you discover who you are as an individual— not as a member of what Marshall McLuhan (the media theorist behind these cool section headers) called “the uniform sphere of the electronic information environment” 11… or what I might call a “Swifie.”

1 McLuhan, 133.

2 Her self-produced documentary is even called Miss Americana.

3 I resent this.

4 Despite claiming that she frequently loans out her private jet, thereby skewing data reports, and offsets her own trips by buying dubiously effective “carbon credits,” Swift is thought to be the most carbon-polluting celebrity for years.

5 As quoted from her Instagram comment linking to the Time article.

6 How often are male musicians called out — or not overtly celebrated, for that matter — for blatant womanizing?

7 Marshall McLuhan, Counterblast (London: Rapp & Whiting, 1969), 132.

8 I admire her prolificness.

9 McLuhan, 23

10 To be fair, Swift will occasionally call out bad Swiftie behavior, like asking them to stop harassing her ex, John Mayor.

Jeff Mills - ele-king

 4月1日公演だからといってこれはエイプリル・フールではないですよ。来る4月1日(月)、新宿のZEROTOKYOにてジェフ・ミルズ総指揮の舞台作品『THE TRIP -Enter The Black Hole-』の公演が決定した。しかも戸川純が出演するという、これは驚きです。
 『THE TRIP』は、COSMIC LABと共同制作によるライヴ・オーディオ・ヴィジュアル作品で、音楽、映像、ライティング、そして歌とコンテンポラリーダンス、衣装デザインからなる、とにかく壮大な舞台アートらしい。じっさい、その場に行くとブラックホールに吸い込まれる感覚も味わえるとか。詳しくは以下のプレス資料を読んでください。

本公演は音楽、映像、ライティング、そして歌とコンテンポラリーダンス、衣装デザイン、すべてにおいてジェフ・ミルズ総指揮のもと各分野のコラボレーターを迎え入れ、5つの理論的なシナリオで宇宙の神秘に迫ります。

総合演出、脚本、音楽はジェフ・ミルズ。その宇宙観/思考をCOSMIC LABが映像演出で拡張します。また、音楽シーンにおいて圧倒的な存在感を放つ戸川純がシンガーとして参加するほか、コレオグラファー(振付)にはコンテンポラリーダンス〜デジタルアートと領域横断的な表現で世界的評価の高い梅田宏明、各出演アーティストの舞台衣装は日本を代表するブランド〈FACETASM〉のデザイナー落合宏理が手がけます。

もし私たちがブラックホールの中に入ることができたらどうなるのか? ブラックホールの反対側には何があるのだろうか? ジェフ・ミルズは今回の舞台芸術作品を通して、さまざまな理論的可能性の中で、宇宙とブラックホールの疑問について探究します。

これまで誰も体験したことのない聴覚と視覚に訴えかけるパフォーマンスは、ステージ上だけでなく会場全体を宇宙として捉え、観客を音と光の演出で包み込み、ブラックホールへと導きます。DJでもライブでもなく、ジェフ・ミルズとCOSMIC LABによる宇宙を題材とした総合舞台芸術、世界初のコズミックオペラです。

『THE TRIP』は、2008年にフランス・パリで初めてのパフォーマンスが行われ、日本では2016年に東京・浜離宮朝日ホールにてCOSMIC LABの映像演出によって作品が拡張されました。今回はブラックホールをテーマにした全く新しい作品となり、今後数年にわたって進化を遂げる壮大なプロジェクトの始まりとなります。

ブラックホールに向けての宇宙の旅で何が起こるのか、
そのテーマを探求できることをとても楽しみにしている。
テクノが創造された本当の理由がここにある。
——ジェフ・ミルズ

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開 催 概 要
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名 称:COSMIC LAB presents
JEFF MILLS『THE TRIP -Enter The Black Hole-』

会 場:ZEROTOKYO(新宿)

日 程:2024年4月1日(月)
第1部公演: 開場 17:30 / 開演 18:30 / 終演 20:00
第2部公演: 開場 21:00 / 開演 21:45 / 終演 23:15 ※第2部受付は20:30

出 演:
Sounds: JEFF MILLS
Visuals: C.O.L.O(COSMIC LAB)
Singer: 戸川純
Choreographer: 梅田宏明
Costume Designer: 落合宏理(FACETASM)
Dancer: 中村優希 / 鈴木夢生 / SHIon / 大西優里亜

料 金:
【1月26日(金)発売開始 ※枚数限定】
Early Bird入場券 7,000円
スタンディング優先入場券 11,000円
U25入場券 6,500円

【1月29日(月)発売開始 ※枚数限定】
ローチケ先行前売り入場券 9,000円

【3月1日(金)発売開始】
一般前売り入場券 11,000円

主 催:COSMIC LAB

企画制作:Axis Records、COSMIC LAB、Underground Gallery、DEGICO/CENTER

プロジェクトパートナーズ(AtoZ):FACETASM、株式会社フェイス・プロパティー、日本アイ・ビー・エム株式会社、一般社団法人ナイトタイムエコノミー推進協議会、株式会社TSTエンタテイメント

オフィシャルサイト:https://www.thetrip.jp

Squarepusher - ele-king

 パンデミック直前に発表された前作『Be Up A Hello』から4年──。延期となってしまった来日公演も2022年には無事実現され、あらためてその才能を日本のファンに披露してくれたスクエアプッシャー。3月1日にニュー・アルバム『Dostrotime』が送り出される。……のだけれど、今回ストリーミングでは配信されず、ヴァイナル、CD、ダウンロード販売のみでのリリースとなっている。なるほど、たしかにこれは「反逆」だ。アートワークからグッズまでみずからデザインを手がけている点から推すに、まずなにか意図があってのことだろう。とりあえずは先行シングル曲 “Wendorlan” を聴きつつ、新作の全貌を想像しておきたい。

鬼才スクエアプッシャー帰還!

反逆の最新アルバム『Dostrotime』のリリースを発表
新曲「Wendorlan」を解禁

アルバムはCD、LP、ダウンロードのみで
3月1日世界同時リリース

数量限定となるTシャツ・セットや
Beatink.com限定ピンク・ヴァイナルも発売決定

常に挑戦的なスタンスで音楽のあらゆる可能性を追求し続ける鬼才スクエアプッシャーが、最新アルバム『Dostrotime』のリリースを発表し、新曲「Wendorlan」を解禁した。3月1日に世界同時リリースされる本アルバムは、CD、LP、ダウンロードのみでの発売となる。国内盤CDにはボーナストラック「Heliobat (Tokyo Nightfall)」を追加収録。数量限定のTシャツ付セットも発売させる。音楽はもちろん、アルバムのアートワークからTシャツ・デザインまで全てを自らが手掛ける本作は、自らの強い意思と自由を貫き完成させた会心作。Beatink.comでは限定ピンク・ヴァイナルも発売される。

Squarepusher - Wendorlan (Scope Vid)
https://youtu.be/cLOd03UGmH8

label: BEAT RECORDS / WARP RECORDS
artist: Squarepusher
title: Dostrotime
release date: 2024.03.01

https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13872

BEATINK.COM限定
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13873

TRACKLISTING:
01. Arkteon 1
02. Enbounce
03. Wendorlan
04. Duneray
05. Kronmec
06. Arkteon 2
07. Holorform
08. Akkranen
09. Stromcor
10. Domelash
11. Heliobat
12. Arkteon 3
13. Heliobat (Tokyo Nightfall) *Bonus Track

Austin Peralta - ele-king

 15歳で初のアルバムを録音、22歳で逝去という早熟にして早逝のジャズ・ピアニスト、オースティン・ペラルタ。その遺作『Endless Planets』(2011年)がデラックス・エディション(&初LP化)となって蘇る。
 まだ本格的にジャズ作品をリリースしていたわけではなかった当時の〈Brainfeeder〉にとっては冒険的な1枚で、今日の視点から振り返ってみると、その後サンダーキャットテイラー・マクファーリンカマシ・ワシントンなどを送り出すことになる同レーベルにとっては転換点といえるアルバムかもしれない。未発表音源も収録、発売は2月9日です。


Austin Peralta
22歳で急逝した伝説の若き天才ピアニスト
オースティン・ペラルタの傑作『Endless Planets』がデラックス・エディションで再発&初LP化決定!
ザ・シネマティック・オーケストラ参加の貴重な初リリース音源4曲を追加収録
フライング・ロータス主宰レーベル〈Brainfeeder〉より2024年2月9日発売

22歳で急逝した伝説の若き天才ピアニスト、オースティン・ペラルタの傑作『Endless Planets』が2024年2月9日、フライング・ロータス主宰レーベル〈Brainfeeder〉よりデラックス・エディションとして再発されることが発表された。本作には、伝説のスタジオBBC Maida Vale Studiosで録音された未発表のセッション音源4曲が追加収録される。

Austin Peralta - 'The Garden (Jondy・BBC Maida Vale Session)' (Official Audio)
YouTube >>> https://youtu.be/UONb8fVV_tI

サウンドの広大な探検。ペラルタはこのプロジェクトを通して、彼が何者であるかを明確に表現してる。俺が何年もそうしてきたように、君もこのアルバムを愛してくれることを願っているよ。『Endless Planets』をありがとう、オースティン ──サンダーキャット

オースティン・ペラルタ、そして『Endless Planets』のリリースは、今年15周年を迎えた〈Brainfeeder〉の歴史においても、画期的な存在であり、レーベルにとって初のジャズ作品という記念すべきアルバムだ。友人であるサンダーキャットのデビュー・アルバム『The Golden Age of Apocalypse』より数ヶ月、カマシ・ワシントンの傑作『The Epic』より4年も前にリリースされている。天才ピアニストであるオースティンは、好奇心旺盛なフューチャリズムと驚異的なオリジナリティ、そしてジャズの伝統に対する純粋な敬意を、ものの見事に融合させている。そういう意味でも、〈Brainfeeder〉のその後を決定づけた最重要作品の一つと言っても過言ではないだろう。

芸術は、世俗的なしきたりの中に分類されるべきではないと思う。真の芸術はカテゴライズされることを拒み、あらゆる境界を越えていく。だから世俗的かそうでないか、という目線で語られるようなものじゃない。芸術に身を委ね、どこまでも流されていくと、それまでに体験したことのないような経験になるかもしれない。それは無限の世界への入り口になる可能性があるんだ。 ──オースティン・ペラルタ

今回リリースされるデラックス・エディションには、初リリースとなる楽曲4曲が追加収録される。それらは2011年7月にロンドンの伝説的スタジオBBC Maida Vale Studiosで録音されたセッション音源で、オースティンの指揮のもと、リチャード・スペイヴン (drums)、トム・メイソン (bass)、ジェイソン・ヤード (alto sax)ら気鋭ミュージシャン、さらにザ・シネマティック・オーケストラのジェイソン・スウィンスコー (electronics)とハイディ・ヴォーゲル (vocal)も参加した貴重な音源となっている。またそこには、オースティン・ペラルタとフライング・ロータス、サンダーキャットが共同で作曲し、オリジナル・バージョン (フライング・ロータスのアルバム『Until the Quiet Comes』に収録)では、サンダーキャットがヴォーカルを務めた「DMT Song」も含まれる。

伝説のスケーター、ステイシー・ペラルタを父に持つオースティンは、LA出身のジャズ・ミュージシャンとして知られている。それは、単に彼の音楽スタイルがジャズだということではなく、長年の練習と献身が彼を真のジャズ・ミュージシャンに育て、若くしてチック・コリア、ハンク・ジョーンズ、ロン・カーターらに認められ、共演する人間性とスキルを備え、まるで熟練ミュージシャンのようにピアノを奏で、多くの人々を魅了する楽曲を作曲したからだ。そして、彼はそれらすべてを20歳までに成し遂げた。それらはすべて、エリカ・バドゥからシャフィーク・フセインのバンドのセッション・プレイヤーとして活躍し、パン・アフリカン・ピープルズ・アーケストラに参加するなどして広く知られる前の出来事なのだ。

『Endless Planets』は、故ゼイン・ムサ (alto sax)、ベン・ウェンデル (tenor & soprano sax)、ハミルトン・プライス (bass)、ザック・ハーモン (drums) と共にレコーディングされた。また長年の友人でもあるストレンジループがアルバム全体で電子音を担当し、ザ・シネマティック・オーケストラとハイジ・ヴォーゲルが「Epilogue: Renaissance Bubbles」に参加している。

『Endless Planets (Deluxe Edition)』は、2月9日に国内盤CDとLP、デジタル/ストリーミング配信でリリース。国内盤には解説書が封入される。


label: Brainfeeder
artist: Austin Peralta
title: Endless Planets
release: 2024.02.09 (FRI)

予約リンク:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13761

トラックリスト
01. Introduction: The Lotus Flower
02. Capricornus
03. The Underwater Mountain Odyssey
04. Ode To Love
05. Interlude
06. Algiers
07. Epilogue: Renaissance Bubbles
08. Algiers (Jondy・BBC Maida Vale Session)
09. DMT Song (Jondy・BBC Maida Vale Session)
10. Eclipses (Jondy・BBC Maida Vale Session)
11. The Garden (Jondy・BBC Maida Vale Session)

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