「You me」と一致するもの

edbl - ele-king

 トム・ミッシュ以降を担うロンドンのプロデューサー、エドブラック。シングル曲で注目を集め、それらをまとめた編集盤『South London Sounds』で日本デビュー、新作『Brockwell Mixtape』も好調の彼だが、日本独自企画だった前者『South London Sounds』がアナログ化されることになった。しかもクリア・レッド・ヴァイナル。限定販売とのことなのでお早めに。

サウス・ロンドンから登場した新世代の才能=エドブラック(edbl)による日本デビュー・アルバム『South London Sounds』がクリア・レッド・ヴァイナルでリリース! 日本国内ではVINYL GOES AROUNDでの独占販売が決定。

トム・ミッシュやジェイミー・アイザックなど、ここ数年音楽シーンを賑わせているサウス・ロンドン・シーンから登場した新たなる才能の持ち主であるエド・ブラック。

トラックメイカーであり、プロデューサーであり、そしてギタリストでもあるアーティスト、エドブラックがこれまでデジタルのみでリリースし話題を呼んだトラックの数々を厳選/集約した日本独自企画による注目のアルバムがクリア・レッド・ヴァイナルでリリースされます。

日本国内はVINYL GOES AROUNDでの独占販売。限定数につきお早めにお買い求めください。

・VINYL GOES AROUND 販売ページ
https://vga.p-vine.jp/exclusive/vga-7749c/

・edbl - The Way Things Were Feat. Isaac Waddington (Official Music Video)
https://youtu.be/Mb95_G2bSxU

[リリース情報]
アーティスト:edbl
タイトル:South London Sounds
品番:PLP-7749C
フォーマット:LP(CLEAR RED VINYL)
価格:¥3,850(税込)(税抜:¥5,500)
※商品の発送は2022年6月中旬を予定しています。
※限定品につき無くなり次第終了となりますのでご了承ください。
※商品は一部他店にて流通するアイテムとなります。

[TRACK LIST]
・SIDE A
1. Charmaine Feat. Zach Said
2. Symmetry Feat. Tilly Valentine
3. Hard To Tell Feat. Carrie Baxter
4. Nostalgia Feat. Taura Lamb
5. Less Talkin' Feat. JAE
・SIDE B
1. Cigars Feat. Alfie Neale & Jarki Monno
2. (Baby Can We) Lift This Up? Feat. Hemi Moore
3. Table For Two Feat. Tilly Valentine & Bran Mazz
4. The Way Things Were Feat. Isaac Waddington
5. Breakfast In Bed Feat. Joe Bae

Lucrecia Dalt - ele-king

 昨年アーロン・ディロウェイとのすばらしい共作を送りだしたルクレシア・ダルト、コロンビア出身で現在はベルリンを拠点に活動しているこのプロデューサーが新作をリリースする。
 今春サム・ウォーカー監督のホラー映画『The Seed』で映画音楽デビューを飾っている彼女だが、つづいて今回はHBOのホラー・コメディ『The Baby』シリーズのスコアを担当。5/27に〈Invada〉と〈RVNG〉から発売される28曲収録のLPにおいて彼女は「奇妙な声、肉体の音、喉歌」を探求しているそうだ。現在 “Mareterna” が先行公開中です。


Nicolás Jaar, Other People - ele-king

 ニコラス・ジャーが新たにコンピを編纂している。20世紀後半のポーランドの前衛音楽/実験音楽を集めたもので、2枚に分散してのリリース。1959年から2001年まであったワルシャワのスタジオで録音されたもの。マトモスが先日発表した新作でもとりあげていたボグスワフ・シェッフェルはじめ、クシシュトフ・クニッテルやボフダン・マズレク、ヴォジミエシュ・コトニスキやエルジュビェタ・シコラなど、ポーランドの前衛音楽家/実験音楽家が多数ピックアップされている。これはチェックしておきたい。

artist: Various
title: Would It Sound Just As Bad If You Played It Backwards? A Collection of Sounds from the Studio Eksperymentalne Polskiego Radia (1959​-​2001) Vol. I
label: Other People
release: 20th May, 2022

tracklist:
01. Krzysztof Knittel - Lapis (1985)
02. Bohdan Mazurek - Canti (1973)
03. Magdalena Dàugosz - Yes and No (1990)
04. Barbara Zawadzka - Greya III (1991)
05. Barbara Zawadzka - Greya IV (1990)
06. Barbara Zawadzka - Greya II (1987)
07. Rudnik - Epitaph of Stones (1984)
08. Bogusław Shaeffer - Symphony. Electronic Music for Tape (perf. by Wolfram) (1964-66) - I
09. Bogusław Shaeffer - Symphony. Electronic Music for Tape (perf. by Wolfram) (1964-66) - II
10. Bogusław Shaeffer - Symphony. Electronic Music for Tape (perf. by Wolfram) (1964-66) - III
11. Bogusław Shaeffer - Symphony. Electronic Music for Tape (perf. by Wolfram) (1964-66) - IV


artist: Various
title: Would It Sound Just As Bad If You Played It Backwards? A Collection of Sounds from the Studio Eksperymentalne Polskiego Radia (1959​​-​​2001) Vol. II
label: Other People
release: 20th May, 2022

tracklist:
01. Wlodzimierz Kotoński - Study For One Cymbal Stroke (1951)
02. Symphony. Electronic Music For Tape Part I (performed by Bohdan Mazurek) (1966)
03. Elżbieta Sikora – Letters to M. (1980)
04. Bernadetta Matuszczak – Libera me (1991)
05. Elżbieta Sikora - View From the Window (1978)
06. Magdalena Długosz - Mictlan I (1987)
07. Barbara Zawadzka - Greya part V (1991)
08. Krzysztof Knittel - Poko (1986)

7g classic's - ele-king

 ジャズを出自に持ちながら、80年代はRCサクセションのキーボーディストとして活躍、バンドにニューウェイヴのセンスを持ち込んだり、エレクトロな名盤「BΛmp!」はいまだマニアには評価の高い、gee2wo(当時はG2と表記)。1990年4月のRC脱退後、いっさいの声明を出していなかったgee2woだったが、昨年リリースされたRCサクセション『PHAPSODY NAKED』のデラックス盤のブックレットには、東芝EMI時代の担当だった高橋康浩氏によるgee2woのインタヴューが掲載されている。その貴重な取材によれば、RC脱退後は世界中(おもに中東)を旅して、それら行き先で演奏し、現在は長野にスタジオを作って、ミュージシャンとして、プロデューサー‏‏‏/エンジニアとして音楽活動をしているとのこと。
 gee2woの新プロジェクト、7g classic'sが先月、デビュー・アルバム『くろすけ』をリリースした。これは八ヶ岳南麓に暮らすシンガーソングライター、ナナマリとのデュオで、ギターとピアノが心地よい、エレガントなポップ・アルバムに仕上がっている。RCのメンバーとして数々の名演を果たしてきたgee2woのピアノ——ジャズやブルースなどなど——がおよそ30年ぶりにたっぷり聴けるのも嬉しい限りだ。チェックしましょう。

7g classic's
くろすけ

Forest Group
発売中
https://nanamari.com/cdkurosuke

【ナナマリ (Vocal, Guitar, Composer etc.)】
高校生の時にギターと出会い、ロックやポップスバンドを組んで音楽活動をスタート。独学で音楽理論を学び、TV番組やメジャーアーティストなどへの楽曲提供も行う。2004年に山梨へ移住後は、ブラジル音楽(特にボサノヴァ)に傾倒し、ギター弾き語りスタイルでのライブ活動を開始。2008年1st Album「雨粒」をはじめ、カヴァー作品を含む計5枚のCDをリリース。

【gee2wo (Piano, Keyboard, Composer etc.)】
1980年代ロックバンド「RCサクセション」にてキーボードを担当。RC退団後は世界(主に中東)を旅し、のちに自然豊かな信州に移住。ジャズ、ブラジル音楽、ロック、レゲエなど様々なジャンルの音楽を追求し、新たなスタイルの確立を目指す。2020年長野市内にプライベートスタジオが完成。

【2022年ライヴ・スケジュール】
6/17 GNU 2nd(長野県松本市)
6/18 Booze Shelter(長野県信濃町)
6/26 メルローズイタリアーノ(山梨県北杜市)
7/29 Live Jazz ケルン(静岡県富士市)
7/30 DOXY(愛知県名古屋市)

Pervenche - ele-king

 ele-king books でもデザインでお世話になっているお二方が所属する東京のギター・ポップ・バンド、1995年から活動をつづける Pervenche(ペルヴァンシュ)がなんと、2001年のファースト・アルバム以来となる2枚目『quite small happiness』をリリースする。20年前からつくりためてきた楽曲に加え、ボブ・ディランとピーター・アイヴァースのカヴァーも収録。レーベルは〈KiliKiliVilla〉、8月8日発売。「小さな幸せ」とのことで、どんな音楽が鳴っているのか楽しみだ。

40年後の遠い渚、もしくはノース・マリン・ドライブ
ポストパンク以降脈々と流れ続けた地下水脈、変わらぬ気持ちによって濾過されたピュアなサウンドが2022年の東京にひそかに湧出
ヴエルヴェッツ発ポストパンク経由ギター・ポップゆきの静かでながい旅

『quite small happiness』
 2001年リリースの1stアルバム『subtle song』から20年を経ての2ndアルバム。1stアルバム収録曲から3曲をリアレンジ、2001年当時から創り貯めた曲からセレクトした7曲にBob DylanとPeter Iversのカバーを含めた計12曲を収録。タムもしくはスネアだけのミニマムなリズムセクションの上にクリーントーンのギターとイノセントなボーカルによる、ポストパンクのビックバンから飛散した胞子の一粒。「The Velvet Underground III」の仄暗さと暖かさ、「Young Marble Giants」の孤独と癒し、「The Beat Happening」の先鋭と静謐、「Florist」の哀しみと優しさ。これら彷徨う魂に触発された、実験性と優しさが同居したフォークロック・アルバム。
 セルフプロデュースによるDIYレコーディングでの制作。元800cherriesのタカハシマサユキによるレコーディングとミックスはリビングにチューブアンプを持ち込んでライブ録音したような親密でいて蒼い炎のゆらめきを思わせる音像。皆さんの新たなスタンダードに加えてもらえたら、そんな小さな幸せを期待してこの作品をお届けします。

Pervenche
『quite small happiness』

8月8日発売
KKV-138VL
LP+CD
3,850円税込

収録曲
Side-A
1. Be Long
2. Cat Horn(Good Night)
3. Blue Painting
4. I'll Keep It With Mine
5. Simple Life
6. Out of The Room
Side-B
1. We Surely Become Happy
2. I Think So
3. Miraculous Weekend
4. Fade Away
5. Quite Small Happiness
6. What's New

Pervenche
1995年、Clover Recordsの創設者であるサイトウマサトのバンドPeatmosとして活動を開始し、1997年からPervencheへ改名。1998年のフランス・ツアーを経て、2001年に1stアルバム「subtle song」をリリース。800 cherriesのタカハシマサユキを加えたラインナップで2016年から活動を本格的に再開し2ndアルバム「quite small happiness」を制作。タムもしくはスネアだけのミニマムなリズムセクションの上に蒼い炎のゆらめきを思わせるクリーントーンのギターとイノセントなボーカル。Feltなどのポストパンクに触発された実験性と優しさが同居したフォークロックバンド、もしくはフォークの影響を受けたYoung Marble Giants。

LPと同時発売のCDは2枚組でリリース、2010年に録音した未発表プロトバージョン。
1stアルバムからのミッシングリンク『Another Quite Small Happiness』にプレ・ペルヴァンシュ Peatmosの音源を収録。

Disc 1 収録曲
01. Be Long
02. Cat Horn(Good Night)
03. Blue Painting
04. I'll Keep It With Mine
05. Simple Life
06. Out of The Room
07. We Surely Become Happy
08. I Think So
09. Miraculous Weekend
10. Fade Away
11. Quite Small Happiness
12. What's New

Disc 2 収録曲
Pervenche - Another Quite Small Happiness
01. Simple Life
02. Quite Small Happiness
03. Cat Horn(Good Night)
04. Out of TheRoom
05. Mess
06. Blue Painting
07. Earl Gray Tea
08. What's New
Peatmos - Watching Us With Archaic Smile
09. earl grey tea
10. many suns
11. to my little friends
12. mad cow disease
13. mess
14. picnic
15. d'yer wanna dance with kids
16. out of the room
17. blue painting
18. play the wind

COMPUMA - ele-king

 ベテランDJのCOMPUMAが、長い活動ののなかで、初の本人名義によるアルバム『A View』のリリースを発表した。アルバムには、北九州の劇団〈ブルーエゴナク〉の作品『眺め』のための制作した楽曲をもとに共同制作者hacchiとともに作り直されたオリジナル楽曲9曲、そして内田直之によるダブ・ヴァージョン2曲を加えた計11曲が収録される。いったい、どんなサウンドなのだろうか、注目だ。リリースは自身のレーベル〈SOMETHING ABOUT〉から。アートワークは五木田智央。発売は6月17日(金)。

COMPUMA
A View

SOMETHING ABOUT
発売日:6月17日(金)

■プロフィール■
COMPUMA 松永耕一、1968年熊本生まれ。ADS(アステロイド・デザート・ソングス)、スマーフ男組で の活動を経て、DJとしては国内外の数多くのアーチストDJ達との共演やサポートを経ながら、日本全国の 個性溢れる様々な場所で日々フレッシュでユニークなジャンルを横断したイマジナリーな音楽世界を探求し ている。自身のプロジェクトSOMETHING ABOUTよりMIXCDの新たな提案を試みたサウンドスケープ・ ミックス「SOMETHING IN THE AIR」シリーズ、悪魔の沼での活動などDJミックスを中心にオリジナル楽 曲、リミックスなど意欲作も多数。Berlin Atonal 2017、Meakusma Festival 2018への出演、ヨーロッ パ・ラジオ局へのミックス提供など国内外でも精力的に活動の幅を広げている。近年のリミックス/リリー ス・ワークは、OGRE YOU ASSHOLE「朝(悪魔の沼 remix)」、YPY「Cool Do!(COMPUMA remix)」、 MAJOR FORCE PRODUCTIONS「Family(COMPUMA Mx)、COMPUMA & 竹久圏 「Reflection」等。 一方で、長年にわたるレコードCDバイヤーとして培った経験から、コンピレーションCD 「Soup Stock Tokyoの音楽」など、BGM選曲を中心に、アート・ファッション、音と音楽にまつわる様々な空間で幅広 く活動している。
https://compuma.blogspot.com
https://soundcloud.com/compuma

interview with Kikagaku Moyo - ele-king

 5枚目のアルバム資料にさらりと綴った「最後の作品」の文字──2018年の4作目『マサナ寺院群』のそれまでの階梯を一段階昇りきったかのような充実ぶりと、それにつづくクルアンビン、コナン・モカシンらとジョイント、北米、欧州、北米、欧州、北米、豪州、欧州また米国とオセロのごとくつづくツアーの活況ぶりを知るものには先のいち文はにわかには信じがたい。「最後」というからには幾何学模様名義のスタジオ・アルバムは本作以降出ないということなのであろう。思えば、2013年高田馬場の路上に蝟集した若者たちの集合体としてはじまった幾何学模様は、既存のアシッド・ロック~サイケデリアのフィールドにおさまらない活動を模索するなかで、国内シーンを一足飛びに海外に活路をみいだすと、ほどなくその特異な音楽性と風貌で異彩をはなちはじめる。むろん止むことのないライヴの日々あったればこその評価だが、多国籍とも無国籍ともつかない折衷性とロウファイなテクスチャーをおりこんだ幾何学模様サウンドには中毒的な魅力があり、その存在感が増しつつあるいま、活動休止の報はいかにも唐突である。
 どのような経緯で彼らはそのような結論をみいだしたのか。そのまえに『Kumoyo Island(クモヨ島)』といういっぷう変わった題名のアルバムの、トライバルでヒプノティックな魅惑の音世界はどのようにできあがったのか。トモ・カツラダとともに幾何学模様をたちあげ、ドラマーとしてバンドの屋台骨をささえるゴウ・クロサワにオンラインで話をうかがった。バンド活動への明解な考え方が気持ちのよい取材だった。

ミニマルな音楽ってつくるのは簡単そうですが、グルーヴがちゃんととれていないと気持ち悪いと思うんです。

こんにちは。東京はいま午後5時ですが、そちらは──

Go:朝10時すぎです。仕事をはじめる時間です。

会社員みたいですね。

Go:それやらないために音楽やっていたはずなんですが(笑)、そういう感じになっています。

アムステルダムに拠点を移されたのはいつからですか。

Go:5年ほど前、2017年くらいです。いまメンバーも3人こちらにいるんです。僕とギターのTomoのふたりで来たんですが、去年の12月くらいに弟のRyu(シタール)が引っ越してきました。

もう5年もいると慣れたものなんじゃないですか。

Go:そうなんですけど、一昨年のコロナ(パンデミック)までツアーからたまに帰ってきて2週間くらいすごしてまたツアーに出ることのくりかえしだったので街をディグるまもなく、おちついたかと思ったらコロナになっちゃって、半年前くらいからようやくここに住んでいるんだなと実感がわいてきました。でも住みやすくていいところですよ。物価はヨーロッパの中ではちょっと高いですけど、ほぼ英語だけで生活できるし治安もいいし。自転車だけでどこでも回れるのでいい感じです。

オランダ語が話せなくてもなんとかなるんですか?

Go:オランダ語はまったく話せなくても大丈夫だと思います。アムスにかんしては外国人が35%なので公的な書類や税金関係もすべて英語で対応できますし外国人には楽な街です。

ロシアのウクライナ侵攻の余波ありますか。

Go:目にみえる範囲ではないんですが、友人に聞いたらベルリンでは(ウクライナから避難してきたひとを)受け入れているみたいで、体制も整いつつあるようです。僕はアムスの街のど真ん中に住んでいてふだんまわりは観光客ばかりで、いろんな国の言葉が聞こえてくるんですが、最近は東欧の言葉の響きが目立ってきたような気はします。ウクライナの方もおそらくいると思うんですが、見た目だけでは判断できません。ただ街中にウクライナの国旗が掲げてあるという感じで、オランダもEUの一員なんだなという感じはあります。ただロシアのひとも多いですから違和感を感じているひともいるかもしれません。

Ryuさんが移られてきて、現在は3人がアムステルダム在住ということは新作の制作はどのように進めたのでしょう?

Go:2020年の2月まではツアーだったんですね。僕はオランダに来る前までは物流関係の会社に勤めていたので仕事と並行でツアーをしていたんですよ。有給をとってツアーに行く感じだったんです。仕事を辞めからは5年くらい、100箇所を5~6ヶ月かけてまわるツアーをほぼノンストップでくりかえしていました。2019年までそれがつづいて、2020年はちょっと休もうということになったんです。休んでゆっくり曲をつくりたいね、と話していたらいきなりパンデミックになって、はじめは休む予定でしたからちょうどよかったんです。そのときは夏まで、東京オリンピックまでにはなんとかなるという雰囲気もあったので。曲を書きはじめたのはその春先から夏にかけてです。2020年の夏にはメンバー全員オランダにそろってみんな曲をゆっくりつくろうかとなって、一ヶ月くらい泊まりこんだんですけど意外に進まなかったんですよ。

基本的なことをうかがいますが、幾何学模様はどのように曲作りを進めるんですか。

Go:曲の作り方もよくわからなくなっていたんですよ(笑)。それまでもやっていたはずが、あれ!? どうやってつくっていたんだっけって(笑)。それまではフェスのシーズンに間に合わせるために、適当というと語弊があるかもしれないですが、ライヴでできればいいやという感じで、60~70パーセント仕上がりで十分だったんですよ。曲のはじめと終わりさえ決まっていれば、あとは舞台にかけながらアレンジしていくようなやり方でした。ただ(パンデミックで)ライヴが想像できなくなってからはお客さんのもりあがり方を想像するのが難しくなかったんです。それでひと月ほど試行錯誤しつついろんな方法をためしていきました。

2020年の夏の時点では完成した曲はほとんどなかった?

Go:僕がつくった曲が1~2曲あったんですが、時間だけはふんだんにあるので展開なんかをガチガチにかためてしまうんですよ。そういうのばかりだとプログレっぽくなっちゃうというか、サイケのバンドがプログレになってどんどん巧くなってジャズ・ロックにいく流れがあるじゃないですか。
■あるある(笑)。

Go:そういう感じになるからみんなでもっと曲書こうよ、と書いたことのないメンバーにも、全部つくれなくてもフレーズだけ、メロディのアイデアだけでも出すとか、読んだ本や観た映画からのインスピレーションなんかをおたがいにインプットし合って、どうにかしてやろうと声をかけました。Dropboxに月ごと週ごとのフォルダを作って、各自アイデアを入れていったり、あとは週一でオンライン・ミーティングしてただ近況報告しあったり。

制作期間はそれなりに長かったということですね。

Go:時間があったのと自分たちでレーベルもやっているし、締め切りもないし、つくらなくてもだれも困らない、という感じがあったんです。いままでもそうだったんですが(笑)、あれ、これやらなくてもだれも困んないじゃんって、ハッと気づいた。音楽ってありまくるから、そんなにプレッシャー感じず、できたらできたで出せばいいんだな、と思う反面、このままつくれずにみんなのモチベーションが下がっていってツアーもできず、みんなほかのことをはじめて自然崩壊したらイヤだなという思い、どっちもありました。

リリースにさらっと書いてますけど、本作が「最後」なんですか。

Go:去年の夏、アメリカのツアーが終わったあとにみんなで話し合って活動休止を決めました。アルバムをつくりはじめたときは、これが最後とは思っていなかったんですが、コロナの状況もあり、今後メンバー全員が100%の力を注げなくなるのがわかった。そうなったとき、バンドがだんだんアートワーク、MVを含めた全体の作品にもこだわりが薄くなっていったり完成度が低くなったり、見た目も尖った感じがなくなっていって、もうフォローできないわ、という感じになるのはイヤだなというのがあったんですね。自分の好きなバンドでもそういうことになったりするじゃないですか。

あるかもしれません。

Go: アルバムでいうと6枚目、7枚目(笑)。つづけるのはそれはそれでかっこいいけど、パッとやめるのも自分たちらしいなと思ったんですね。友達同士で “遊び” を初めて、友達どうしでその遊びを終える。開いた円を閉じるような感覚です。

Goさんがいいだしたの?

Go:Tomoがいいだして、それはみんなで話し合うべきだということになりました。100%妥協なくやりたいことがやりたかったのと5人の築き上げてきた絆を大事にしたいなという気持ちが大きくて、無理に続けて行こうということもなかなか想像できなかったし、10年間やってきて、あと何年やってどういうバンドになりたいとか、どういうヴェニューに出てどんなフェスに出たいというヴィジョンもなくなっていたんですね。

ある程度実現したということですか。

Go:それこそ去年クルアンビンとツアーしたときに5000~6000人規模の会場が多かったんですが、それだと自分たちのよさもあまり出ないという気もしました。(お客さんの)表情もみられないし、僕らの危なっかしい感じが、遠くからだと伝わりにくいとも思いました。クルアンビンやキング・ギザードみたいに遠くからみていてチルしながら楽しめるバンドでもないし、お客さんと一緒に自分たちの世界をつくっていくバンドだと再認識して、自分たちのベストなキャパシティがみえたのと、現状を維持するのにLAなら1000人規模の会場で3回のショーをするのか、というようなことを考えたとき、わかった感じがひとつあったんですよ。新しいチャレンジがほしいときにそういう感じになったので、はじめはみんなもびっくりして話し合って、ひとりずつ電話で相談したりしました。

脱退という言い方が正しいかはわかりませんが、どなたかがそうなっても別のメンバーが加入してつづけることはバンドではよくある話ですが、そういう選択肢はなかった?

Go:僕らがふつうのバンドと違うのは、(メンバーに)兄弟もいるし2~3年一緒に住んでいたので、スタジオで会って、終わったらじゃあねといって別々になるような関係じゃないというところなんですね。いろんなところを共有してそういう濃さでバンドをやっていたのでその濃さをほかのところからもってきて、ジャムでいい感じになるのがまったく想像できなかった。自分たちの結びつきの強さはよさでもあるし脆さでもあるのだと思います。これまで20代から10年間つづけてきて、みんないろんなひとに会っていろんなこと考えて、いろんな方向に個人個人がいきたくなったりするなかで、バンドはみんなのエネルギーをどうやって集中させてやるかというチャレンジだったという感じです。

老婆心ながらもうしあげると、1000人単位のキャパシティを埋められる認知度はあるわけですから収入としては安定してきたところじゃないですか。それをなげうつのはもったいないという意見もありそうですが。

Go:ただ僕は音楽を仕事にする、プロになってキャリアを積んでいくんだという目標をもっていなかったんですね。

そうなんですか。

Go:いちばんはじめの目標はツアーに出ているあいだの家賃をどう補うかということでした。ツアーに出ているあいだはギャラが出たりご飯も食べさせてもらえたりするからいいんですが、日本の家賃どうすんだという問題があったんです(笑)。バイトもできませんから、ツアーに一ヶ月半出るのであれば、そのあいだに稼げたはずの額をあらかじめ稼いでおかなければならない。そうしないと、帰ってきて超ビンボーになってつづけていけなくなるとわかったんです。どんな楽しいことも、サステイナブルにするにはモチベーションはもちろん経済的な問題も出てくる。そうなるとCD、レコードやTシャツをこれくらい売らなきゃいけないということや、このペースでツアーしなければならない、大きな街ならこの規模でできなきゃいけないんだとか、逆算でわかったんですけど、これで生活していくとは考えていなかったです。メンバーももともと音楽畑のひとじゃないというのもありますし、僕は音楽ビジネスをアメリカで勉強して、どちらかというとバンドよりは音楽のレーベルをやりたかったんですよ。

ミュージック・ビジネスの学校を歩かれたんですか?

Go:ミュージック・ビジネスを専攻して、それこそライターやパブリッシャーに興味があったんですよ。音楽が好きなひとが集まって、音楽をやらないというのはどういうことだろうと思ったんですね。

そういう考え方もあるかもしれないですね(笑)。

Go:音楽を好きなひとたちが集まって違う文化が生まれてくるというか、音楽が好きということだけが共通で出版物をつくったりイベントをやったりフィジカルをつくったり、そういうことに僕は興味がありました。ほかのメンバーも映像を勉強していたり文章を書いていたりで、バンドがなくなることによる収入面での変化を考えるよりも、友だち関係がヘンになってツアー中ケンカしたりするほうがイヤだと直観的に思ったんですよ。だれかがSOSを出しているのに、仕事だからとか決まっているからといってつづけたり、ひとりが抜けたからだれかを入れて関係性が変わったりすることへの、拒否感というほど強くはなくてもイヤだなという思いです。


向かって左下が、今回取材に応じてくれた Go Kurosawa

友だちのライヴに行く? ってなったとき、3000円だと躊躇するけど500円ならまあいいやと思えるというか。そういうことをバンドやりながらも試行錯誤していました。ライヴハウスのノルマ制に疑問もあったので。

お話をうかがうとすごく客観的ですね。人気者なのに過分な自己評価がない。

Go:そもそも日本でやっていたときはこういうバンドはムリだろうなと思っていましたから。最初期にぐちゃぐちゃなジャムみたいなことをやっていたときはお客さんが来る気配もなかったですしね。「ele-king」も読んでましたけど──

ありがとうございます。

Go:そこでとりあげられている音楽と自分たちがやっているのはちょっと違うというか、どこにもつながっていない気がしたんです。アシッド・マザーズの弟子みたいな感じで出てくるわけでもなかったし、先輩後輩的なつながりもなく、だれもバンドをやったことのないところからはじまっていましたから。バンドをはじめるのって高い趣味じゃないですか。機材買ってスタジオに入ってノルマまで課せられてライヴをする、だからといってメジャーになるのも想像できない。それ以外にできる方法としては海外に出ることしか考えられなかったんです。

海外でミュージック・ビジネスを勉強されてきたGoさんにとって日本の音楽産業の構造は異質だと思いますか。

Go:すごくヘンだと思います。

どのへんが?

Go:今回はビートインクさんとのお仕事で、取材もセッティングしていただきましたが、このような流れは海外ではまずないです。レーベルの仕事は音源を出すことであって、PRは基本的にバンド側がエージェントを雇うパターンがほとんどです。マネージメントがレーベル側にいる感じが大きく違うと思います。

日本の音楽ビジネスは芸能事務所の方法論に由来しますからね。

Go:そことちょっと似ている気がしますね。それが良いか悪いかではなくて、合うか合わないかを考える必要はあると思います。そのうえでいろんな選択肢がバンド側にあるといいなと思います。いまならその手の本とかネット上にも情報はいっぱいありますよね。僕らもはじめたときに本屋さんに行って音楽ビジネスについて書いてある本をまわし読みしたこともあるんですよ。そうしているだけで、まわりのバンドから「おまえら気にしすぎ!」みたいなことをいわれたりする(笑)。でも好きなことをやってお金をもらうはよくないのかなと思ったら、若いころはさておき、つづかなくなるんですよね。

独立精神が旺盛だったんですね。

Go:はじめはシーンというものをつくりたかったんですよ。「ゼロ年代シーン」とかあったじゃないですか。

ありましたね。

Go:シーンがどういうふうにできていくんだろうと思っていたんです。アメリカに住んでいたときポートランドのシーンはおもしろいよとか、オースティンのインディ・シーンがおもしろいとか、ロンドンにこういうシーンがあるよとか、そういう話を聞くと東京にどんなシーンがあるんだろうと考えてしまうんですね。当時僕が好きだった新大久保のアースダムとかでみていたライヴで、ノイズっぽいバンドやハードコアのバンドが灰野(敬二)さんと出たりとか、そういうのがシーンなのかはわからないですが、そういった体験から自分たちにとってのシーンについて考えるようになったんですよ。ちょうど僕らが活動をはじめたころ、世界的にサイケフェスが増えてきたんですね。オースティン・サイケ・フェスにはじまりベルリン、シドニー、南アフリカでもサイケ・フェスがはじまり、こういうのがインターナショナルなシーンなのかなと思いはじめて、日本にはそういうのがあまり知られていなかったから自分たちで「TOKYO PSYCH FEST」と銘打って渋谷のルビールームで月1でライヴを企画していました。

月1はけっこうな頻度ですね。

Go:仕事しながらですから大変でした(笑)。それでやりたかったのはちゃんとお金がまわるようなシステムをつくることだったんですね。ライヴハウスだと平日でも2500円でワンドリンクつけると3000円超えちゃって、それで物販のCDを買おうと思ったら5000円になって、もう一杯飲むとさらにかかる。そうなると、ほんとうに伝えたいティーンやキッズ、これから文化をつくっていく、エネルギーにあふれているけどお金のないひとに会えないんですね。よくわからないけど楽しそうと思っているひとはそういうところに来ない。来ないと好きなバンドもみつからないし、ふらっと来られるようにするにはエントランスを500円くらいにして、損したと思わせなきゃいいと考えました。家で遊んでいて、友だちのライヴに行く? ってなったとき、3000円だと躊躇するけど500円ならまあいいやと思えるというか。そういうことをバンドやりながらも試行錯誤していました。ライヴハウスのノルマ制に疑問もあったのでノルマあるライヴハウスに出ているバンドをこっちに連れてきて、逆転してやろうぜとも声をかけたんですけど、キャリアがないから説得力がないんですよ(笑)。

日本でそのときつくろうとしたサイケ・シーンはどれくらい完成したと思いますか?

Go: いやーできなかったなー(笑)。

その夢のさなかで拠点を移されたんですね。

Go:そこはもう「ele-king」に任せておこうと(笑)。時間がなかったのもありますね。僕ドラムをはじめたのが27とかなんですよ。

ほんと!?

Go:そうなんですよ。フェスをやっていたのが28とか29でサラリーマンをやりながらですから。27からドラムをはじめてもふつうのバンドには入れないんですよ。(メンバー募集に)経験不問と書いてあっても、30手前でやったことないひとなんて入れてくれないから自分ではじめるしかないというのはありました。

幾何学模様のほかのみなさんは楽器の心得はあったんですか。

Go:できるといっていたんですが、ギターの弦の巻き方も知らないし、だれもバンドをやったことはありませんでした。

メンバーはGoさんがひきいれた?

Go:まわりの友だちで音楽経験があるとか関係なく、誰も彼もひきいれました(笑)。はじめて会ったひとにも、スタジオに入りましょうよ、と誘って深夜パックでグチャグチャのジャムやって、つかれたなーといって朝ご飯をみんなで食べて帰るみたいな。

バンドというよりはコミューンですね。

Go:はじめはそうでしたよ。共同で生活したり友だちの友だちが急に入ってきて笛を吹いていたり、そういうのがいいと思っていました。ギターがEのワンコードで、そのうえで適当にみんなが演奏して歌って録って、それでいいじゃんというイメージですね。

それがしだいにバンドにかたまっていったのはなぜですか?

Go:曲がないと、拍手する場所がないとひとはお金払わない、と路上での経験から学んだからです。終わり方を知らないとつかれて止めるしかないじゃないですか。路上で演奏しているとたまに立ち止まるひともいるんですが、なかなか演奏が終わらないから飽きて立ち去っていくんですよ。止まってもらわないと、「おお!」という感じにもならない。そうするにはどうしたらいいんだということで学びました。拍手する場所を設けないと一生やっちゃうから(笑)。曲っていうのははじめと終わりがあればいいんだなというのに気づいて、それをつけくわえてだんだん曲になったという感じですかね。

それもラ・モンテ・ヤングみたいでいいですけど、おさまるべき場所におさまっていったということですね。

Go:だんだん音楽の話をするようになって、こういうのいいよね、じゃあやってみようか、という流れでした。当時は自分たちの好きなバンドも自分たちにもできるかもしれない、というようなバンドだったので参考にしたこともあります。

そのとき聴いていたバンドをあげてみてください。

Go:アシッド・マザーズはその筆頭ですよね。騒々しくて見た目が魔術師っぽかったらかっこいいというのはアシッド・マザーズから学んだし、ラリーズみたいなリフを延々くりかえして歌がたまに入ってくるんだけどあくまでギター・ソロをバーンとやるための導入部分にすぎないようなバンドとか、アメリカのオネイダのミニマル・ジャンクっぽい感じとか、イギリスのトラッドも好きだったですね。そういう音楽もやりたかったですが、それにはそういうのを歌えるヴォーカルが必要なのでなかなかむずかしかったです。土着っぽい要素と新しい要素が結びついた音楽がいいなと思っていました。自分たちが日本人なのもあって、日本人にしかできない音楽ってなんだろうともずっと考えていました。

日本というものにたいしての意識も当時からおもちだったんですね。

Go:その前に海外に住んでいて帰ってきたというのもあるので、(日本人が)英語で歌ってもダメだなというのもあったし海外のバンドが好きで、それと同じことをやっても、こっちにいるじゃんといわれるから、それをいわれないためにはどうしたらいいんだろうとずっと考えていました。

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島ということを再度考えてみると、アイソレイトされていて独自の文化があり、島民に通じる言葉があるけど島から出ると通じなくなっちゃったりするようなおもしろさがあると思ったんですね。ことにこの5~6年、日本のことをすごく考えるようになっていたのもあります。あたりまえだったことがじつは特殊なことなんだと気づくことも多かった。

前置きが長くなりましたが、新作『Kumoyo Island』は日本語にすると「クモヨ島」だと思いますが、「くもよじま」と読むんですか、それとも「くもよとう」?

Go:「くもよとう」です。

「クモヨ島」とは日本という島国の暗喩ですか?

Go:僕らはいままでも場所をけっこう提示してきたんですね。「Temples(寺院群)」「Garden(庭)」「Forest(森)」「House(家)」などです。それらの場所は現実には存在しませんが、聴いたひとに情景を思い浮かべつつ聴いてほしいという気持ちがあったんです。今回もアルバムのタイトルを決めようとしたとき、場所がいいなと思っていました。そのタイミングで、今年でバンドを止めることになり、「Kumoyo Island」というタイトルが決まったのはその後です。収録曲にも海っぽいイメージ、青っぽいイメージがあったので、もしかしたらこれは島なのかな、島っぽいなという気がしたんです。それでよく考えると、日本って島じゃんって(笑)。当たり前ですが、島ということを再度考えてみると、アイソレイトされていて独自の文化があり、島民に通じる言葉があるけど島から出ると通じなくなっちゃったりするようなおもしろさがあると思ったんですね。ことにこの5~6年、日本のことをすごく考えるようになっていたのもあります。(住んでいたときは)あたりまえだったことがじつは特殊なことなんだと気づくことも多かったので。もしかしたらそれはものすごく未来的なことなのかもしれないし、すごく古い体制かもしれなくて、それらは紙一重のかもしれないと考えたことがあったんです。今回のアルバムでは島から出て、島の外でワーッとやっていた僕らがまた島に帰って曲をつくった。自分たちの(旅の)ループがそこで最後クローズするなというイメージがありました。

「Kumoyo」というのはどういう意味なんですか。

Go:それは「きかが/くもよう」の「くもよう」なんです。いまちょうど着ているんですけど(といって上着の前をはだけると自分たちのバンドTを中に着込んでいる)こういうマーチャンダイズがあってグラフィックのなかでバンド名が「KIKAGA – KUMOYO」と区切ってあるんですよ。このマーチは去年つくったものですが、日本語で「きかが/くもよう」とわけて考えることはあまりないと思うんですけど、それがアルファベットになって「KIKAGA – KUMOYO」とわかれてきたときに、アルバム・タイトルにループ(回帰)するという意味合いをこめたのと同じように「KUMOYO」というバンド名がループしているのもおもしろいと思ったんですね。

「Moyo Island」だったらわかりやすいけど、「Kumoyo Island」だとわからなくなりますね。

Go:その不自然感が言葉の響きとして新しかったしバンドのお尻の部分だし、ということでつけました。

最後は日本で仕上げたんですよね。停滞気味だった2020年夏からお尻に火がついてきた?

Go:ヤバいなって。

日本に戻ってレコーディングしていたのはいつですか?

Go:2020年の11月から2021年の1月くらいまでです。

曲ができてから戻ってきたんですか?

Go:その時点で曲づくりをはじめました。さっきいったように、曲づくりができなくなっちゃって、なんでできないんだと考えたときに、みんなでスタジオに毎日入るからできないんだと結論づけたんです。スタジオに毎日入ると練習みたいになっちゃうんです。曲をつくるのと練習は違うじゃないですか。

そうですね。

Go:アイデアを発展させていくのもみんなそれぞれ違ったスペースが必要だし、各人のキャパシティもいろいろですからその場で思いつくひともいれば、家に帰って何回も聴いて1フレーズ出てくるひともいる。日本に住んでいたときは週1、週2のペースでスタジオに入ってのこりの日で消化することができたんですけど、毎日入っちゃうとそれもないから、うちらが東京に帰ってきて1ヶ月半時間をとって週1ペースでスタジオに入るサイクルでつくればできるんじゃないかと思って帰国しました。東京では初期のころから入っていた浅草橋のツバメスタジオのすぐそばにAirbnbで部屋とって、夜の12時以降と平日の使ってない時間帯を自由に使わせてもわらってデモをつくっている感覚で曲作りしていたら、デモがデモじゃなくなっちゃったんですよ。

スタジオで録っているからね(笑)。

Go:(笑)デモって家でつくるからリズムマシン使ったりギターをラインで録ってショボくなっちゃったりするけど、レコーディング・スタジオだとそんなこともなく、ああこれでできるかなと思い、やっちゃっいました。

じっさいそれで曲になったんですか。

Go:ならなかったんですが、プロセスが楽しかった。メンバーがちょっと顔出して音入れさせてよ、みたいな、そのプロセスが楽しかったからそれでいいんじゃないか、これが楽しかったんだからこれ以上のものはできないんじゃないかと(笑)。いいとかわるいとかではなく、楽しければいいという原点に戻って、これでよいのではないかということですね。

それでいろんな音が入っているんですね。

Go:いままではライヴでやっていた曲をスタジオで録ってオーヴァーダブすることが多かったんですが、今回にかんしては宅録にちかいというか、コロナというのがあってライヴが想像できなかったのもあって再現できなくても関係ないやという感じでした。

「世界に出よう」と考えたときに、白人の文化にたいして了承をもらうような流れをうちらの世代で変えていきたいとは思っています。海外に出るには英語をしゃべれなきゃいけない、歌詞も英語じゃないとわからない、ということではないと思うんですね。

曲の話に移ります。冒頭の「Monaka」はなかなかのキラーチューンですが、どのように誕生したのでしょう。

Go:Tomoは石川の加賀温泉の出身なんですね。

ええ。

Go:そこに民謡があるらしく、それがメインのインスピレーションなんですね。

途中のペンタトニックっぽいパートですか?

Go:それとコブシを思わせる部分ですね。それらをどうやってバンド・アレンジに発展させるかというのは、さっきいったようにスタジオでいろいろ試した結果です。歌詞の「もなかのなかなか」というのはTomoの適当さの真骨頂です。

あんまり説明になっていないけどね(笑)。

Go:なってないかもしれないですけど(笑)、Tomoの実家はお菓子屋なんです。

それで「もなか」なんですね。

Go:その影響下にあるんでしょうね。それがパッと出てきて、そこにいまで聴いてきたクラウトロックやサイケの要素が加わり、ああいうふうになったんですね。

アイデアをもちより固めていったらそうなったと。

Go:あれをやりながらみんなで適当にジャムしていくんですが、あんまりできることはないんですね。僕だったらふつうのビートかハンマービートか、変拍子でどうのこうのとかあまりできないですし、みんなもだいたいそうなんですね。いろんなことを思いついても技術的にできないので、ああいうかたちにおちつきました。

変拍子できないとおっしゃいますけど『Forest Of Lost Children』の “Smoke And Mirrors” なんかは変拍子ですよね。5、5、5、6だから。

Go:あれは変拍子と知らずにやっていました(笑)。たまに6拍子になったらいいんじゃない、くらいな感じです(笑)。

そういうことをやっていたから冒頭にプログレっぽくならないよう気をつけたというのがちょっと意外な気がしたんですよね。

Go:意図するのと自然にそうなるのとの違いですよね。

ロジックではなく感覚、フィーリングですね。

Go:そうです。

できることがあまりないということですが “Monaka” でもイントロや途中のパートでも、場面の転換のさせ方に意外性があってよく練られているなと思いますが。

Go:フリー・ジャズなんかのスピリチュアルな感じってあるじゃないですか。あの曲はそういった感じのイントロをクラウトロックにつなげた感じです。いろんな楽器がウワーッて鳴っていたのが、リフがはじまるとキュッとひきしまるというか、開いたり閉じたりというか、緩急といいますか、そういうのが曲のなかであると飽きないと思うんですね。ミニマルな音楽ってつくるのは簡単そうですが、グルーヴがちゃんととれていないと気持ち悪いと思うんです。僕はクリックでは叩けないですしジャストなリズムからはブレているんですが、だったらブレても大丈夫なように展開をつけるといいますか、展開があればごまかされるというのは語弊がありますが、聴いている方も飽きないと思うんですよね。

視界が変わりますからね。

Go:そうですね。

でもそれが幾何学模様の特徴になっていると思うんですね。サンプリング的な折衷感といいますか、いろんな要素がカットインしてくる意外性があってワンコードのセッションで即興をまわしていくのとも違う特徴だと思います。

Go:ありがとうございます。

それが今回のアルバムではコクが出てきたと思いました。

Go:新しいことをやるという目標はあまりなくて、自分たちが楽しければいいと思っているんですよ。うちらはツアーをやるにしても、アルバム・ツアー名目でアルバムからの曲を中心にセットリストをつくることはあまりないんですね。ツアーでも毎回セットも違うから、いままでのセットリストに1~2曲、できれば3曲新しい曲が加わればいいね、くらいのノリなんです。となると “Monaka” と “Dancing Blue” と “Yayoi Iyayoi” の3曲がライヴでできれば、あとはなんでもいいやというのはありました。逆にいうとそこで遊べるということでもあります。

いまあげられた3曲はアルバムでもカギになる3曲ですね。

Go:この3曲にかんしてはライヴを想像していたところはありました。いまはそれを練習しているところです。自分たちの音源を聴いて「これどうやんだっけ!?」「できんの!?」って(笑)。

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僕らが日本語にない響きと思っているものも、結局五十音からなる音でしか表現できなかったりするんです。喉をつかう音、フランス語のような発声にそもそも慣れていないから、デタラメな言葉であっても日本語訛りのデタラメな言葉なんですね。

カヴァー曲も収録していますね。エラズモ・カルロスの “Meu Mar”。この曲をとりあげた経緯を教えてください。

Go:“Meu Mar” はもともと〈Light In The Attics〉の企画で、マック・デマルコが細野さんの “Honey Moon” をカヴァーしたのと同じ7インチ・シリーズで指名されたときに “Meu Mar” を選んだんです。当初A面が原曲でB面がうちらのカヴァーでやることになっていたんですが、原曲の権利がクリアにならず、1年待って結局オクラ入りしそうだったから「勝手に使うよ」といって収録しました。ちょうどあと1~2曲つくろうか迷っていたタイミングだったときに “Meu Mar” の音源があったのでこれ入れちゃおうって。

「Meu Mar」は「My Sea」すなわち「私の海」ですから『Kumoyo Island』にピッタリでしたね。

Go:そうなんですよ。エラスモはすごく好きなんですけど、彼の曲をカヴァーするとなったときできるのがこの曲くらいしかなかったんですよ(笑)。

ブラジル音楽だからね。

Go:ドラムはもちろんギターのブラジルっぽいコードもわからない。あの曲くらいしかワン・コードの曲がないんですよ(笑)。

さっきから聞いていると、幾何学模様はネガティヴな状況をいい結果に導く能力が高いバンドだということになりますね。

Go:それしかないって感じで(笑)、それをやってどうおもしろくするかということですね。ほかに好きな曲もいっぱいあるんですけど、いろいろ聴いた結果 “Meu Mar” しかできなかったです。

エラズモ・カルロスはサイケ文脈でもとりあげられるようになりましたけど、トロピカリア的なものもリスナーとしておさえていましたか?

Go:バンドはじめたときにサイケデリックな音楽が世界中にあるとは思わなかったんですね。サイケは英米だけだと思っていました。それがだんだん聴きすすめるうちに、いろんな国に自分たちなりにサイケを解釈した音楽があると知って、オリジナリティを感じて掘っていた時期もありましたよ。トロピカリアとの出合いもそのときです。ああいう実験的な感じ、あとちょっとテキトーな感じ(笑)、独特な音の質感はいいなと思っていました。

レーベル〈Guruguru Brain〉の運営にも欧米圏にはない視点が活かされていると思います。

Go:ポピュラー音楽やロックにかんして、イギリスとアメリカの白人文化がもとにあったうえでほかの国の文化がつくられている──「世界に出よう」と考えたときに、白人の文化にたいして了承をもらうような流れをうちらの世代で変えていきたいとは思っています。海外に出るには英語をしゃべれなきゃいけない、歌詞も英語じゃないとわからない、ということではないと思うんですね。しゃべれないのが当たり前なんだからそれ以外のこと、言葉以外のコミュニケーションやコネクションを最大限に活用していきたいということです。

日本語の扱い方、たとえば “Yayoi Iyayoi” の歌詞は日本語で、幾何学模様にしては意味がとれる内容になっていますが、日本語についてはどう考えていますか。

Go:日本語の言葉の響きには独特な言い回しや粘っこさのようなものがありますよね。それはほかの国にはないものだと思います。ただそれをロックに応用すると、自分たちのなかにある「ロックとはこういうものだ」という価値基準に照らし合わせて違和感のようなものを感じることもある。それをどうやってかっこよくするかという課題はずっとありました。わかっちゃうダサさってあるじゃないですか。

わかっちゃうダサさ?

Go:「I Love You」は海外でふつうにつかえるのに日本語で「愛している」といったときになぜウッとなるのか。コンプレックスや固定観念が関係しているのかもしれないですが、はじめは日本語はイヤだったんですね。日本人だけがわかってほかの国の人には響きでしかないというヒエラルキーをつくるのがイヤだったんです。それが英語が母語じゃない僕からすると、英語の歌詞がそのまま理解できる人をうらやましいと感じる感覚に通じると思ったんです。僕はそういうのが(音楽を聴くときに)なければいいのに、と思っていたので、はじめは日本語の歌詞をなくして響きだけの言葉を使っていました。そうすると歌詞も音の追求になっていくんですよ。シュ、シ、シューとか、でも僕らが日本語にない響きと思っているものも、結局五十音からなる音でしか表現できなかったりするんです。喉をつかう音、フランス語のような発声にそもそも慣れていないから、デタラメな言葉であっても日本語訛りのデタラメな言葉なんですね。いつもTomoに、これインプロで歌ってというとすぐに出てきてそれがおもしろくてそういうやり方をしていたんですけど、だんだん適当さがパターン化してきたんですね。そうすると全体的に似たような感じになってくる、そう思ったとき、すでに日本語っぽいんだから日本語が知らないひとにしたら日本語に聞こえるから「Yayoi Iyayoi」なんかは日本語でやったらいいんじゃないかなと思ったのがいちばんのきかっけです。そこからTomoが適当に歌った音を聴いて、歌い出しが「さ」だったらその口のかたちが歌いやすいんだなと思ったので「さ」ではじまるメイクセンスする単語を探したり、ブックオフで日本の昔の季節の言葉が載っている本を買って言葉を拾ったりしました。

音に言葉をあてはめていったということですか。

Go:僕がブックオフにいって本2冊買ってきて、10分くらいで、適当に並べて、それで歌ってもらった結果、OKになりました(笑)。

言葉を選ぶとき意味やメッセージみたいなものはGoさんの念頭にはなかった?

Go:あまりなかったです。自分には歌詞がいいから音楽が響くと感じたことがあまりなかったから。それこそライターさんが書くようなバンドのおいたちみたいなものに、こういうことがあるんだ、と自分で解釈していくタイプだったので。

幾何学模様のレコードで “Meu Mar” や “Yayoi Iyayoi” のような日本語詞を聴くと、CANの『Tago Mago』の「Oh Yeah」でダモさんが日本語の歌詞になるときの印象に通じるものを感じます。

Go:あれハッとしますもんね、「あれっ!? わかる!」って(笑)。

それと作り方の適当さがかえって不可思議な感じにつながっていて、いい曲だと思いました。

Go:ありがとうございます。でも偶然の産物ですね(笑)。

もうちょっとできたかもしれないというエネルギーを今後どう活かすかという。おなかいっぱいになって終わるより、そうなって終わるほうが、ライヴでもなんでも僕はいいと思います。

ここ数枚のアルバムは「~Song」で終わっていましたが、今回 “Maison Silk Road” で幕を引くのはラスト・アルバムだからですか。

Go:これまでは、僕が曲をもってきてみんなでつくり上げる感じだったんですけど、僕とTomoがこっちに移住して東京に住んでいたメンバーも、そのうちのひとりが大阪に引っ越したりで、バラバラになったときがあって、バラバラの状態でやるうえでどこまでつくりこんでいけばいいんだろう、どこまでフリーにすればいいんだろう、どうやって大阪と東京とアムスにいながら全員が自分の作品だと、100%の個性をつぎこむにはどうしたらいいかと考えたとき、みんなの曲があればいいと思ったんです。今回のアルバムの最後に入っている「Maison Silk Road」はRyuの作品で、彼が新中野で住んでいたアパートの名前なんですよ(笑)。

すごい名前だね(笑)。

Go:アパートなのでメゾンでもないしシルクロードでもない(笑)。

島から西方へ旅立つことを暗示していると思ったんですが(笑)。

Go:足元に西方への道があった(笑)。日本のアパート名ってすごくおもしろいじゃないですか。海外でレーベルをやっていると、ときどき発送業者から、これどうやって書けばいいの、と訊かれることがあるんですよ。ローマ字か綴字どおりにするのか、メゾンを「Maison」と書くか「Mezon」と書くかということなんですが、すごく日本っぽいなと思ったんですね。

たしかに。

Go:そのおもしろさがあって、Ryuがひとりでつくった曲を聴いたときに、アンビエントっぽくて溶ける感じがあったので、高田馬場にはじまったサイケデリック・トリップからやっと目がさめた雰囲気があったんですよ。喧噪が聞こえてきて街に戻ってきた、いろんな国や街に行って、閉じた目が開いて現実に戻ってくる──みたいな感じがあったので最後の曲にしました。

Ryuさんひとりで仕上げた?

Go: ほかのメンバーはノータッチです。いいじゃん、入れようって。

そういう話を聞くと幾何学模様は誰が主導的な立場と決まっているわけではないのだとわかります。

Go:こうやって僕がインタヴューを受けてバンドの考えとか話したりするんですけど、ひとりが曲をつくっているスタイルだとほかのメンバーはそれをやるだけになってしまうとみんなでやっている感覚がなくなっちゃうので、みんなでやる感覚をどうやって失わずにつくれるのかはずっと考えていました。

その関係性は現在も崩れていませんか?

Go:崩れてはいませんが変わってはいます。みんな年をとっていろんなことを考えるようになっているので、変わったこと、変わるのが前提で、どうやってみんなで話し合ってコミュニケーションして、いまはこういうことをやりたいということをバンドにフィードバックするかということでした。

アートワークも、今回は写真ですね。

Go:もともといろんなアーティストを探していて、いままではイラストだったので平面なんですね。

はい。

Go:その平面をもうちょっとなんとかしたくて壁に描いてある絵を撮ったんですよ。いまちょっとおみせしますが(といってPCをもって部屋を出て階段をくだっていく)うちの壁なんですよ(といってPCカメラをむけると『Kumoyo Island』のジャケットと同じ絵柄が壁に描いてある)。

ほんとだ。

Go:ここに直接描いてもらったんですね。

誰が描いたの?

Go:オランダのアーティストです。それを写真に撮ると絵にみえるとよくみると写真だとわかる、奥行きを感じさせるジャケットがいいなと思ったんですね。

壁の前のソファとその下のオレンジにはどんな意味があるんですか。

Go:ソファはコンフォタブルな場所という意味です。このアルバムに入っている “Nap Song” や『Masana Temples』の “Blanket Song” のように温かい、つつまれるような感じがコンセプトにありました。アートのディレクションはTomoですが、Tomoとアーティストで話して、こういうイメージでとか、アルバムのなかの曲ごとのイメージを全部話して、色使いやモチーフや構図を指示をしたんだと思います。ジャケットの上の枠がオレンジじゃないですか、それでこのドットが落ちたようにみえたらおもしろいね、ということでそこからオレンジを置いたんだと思います。

5枚目が出て、ツアーも予定されているんですよね。

Go:5月からアメリカの西海岸がはじめで、ヨーロッパに戻って主要都市をまわるのが6月です。

最後に確認しますが、バンドを10年つづけてきて、演奏も達者になり、リレーションも充実しているなかのラスト・アルバムは返す返すもったいなくないですか。

Go:そのもったいなさがポテンシャルじゃないですか。もうちょっとできたかもしれないというエネルギーを今後どう活かすかという。おなかいっぱいになって終わるより、そうなって終わるほうが、ライヴでもなんでも僕はいいと思います。もうちょっと聴きたかったのに、というところで止められるともう一回いきたくなるような気持ちになる。バンド活動も、もうちょっとできたかも、と思う反面、自分たちでこれでいいでしょうと納得できたので、ここで! ということです。

日本でのライヴは予定されていますか。

Go:7月の終わりにFujiが決まりました。それと11月か12月に、最後に東京でやりたいですね。

やってください、ぜひ。

Go:家に帰ってきた感じで、最後にみんなでトリップからめざめたいです。


Bobby Hamilton, Orang-Utan and Lemuria - ele-king

 好調の「VINYL GOES AROUND」シリーズから、貴重な3アイテムが一挙に登場だ。
 ひとつはキーボーディスト/パーカッショニスト、ボビー・ハミルトンの72年作で、その稀少さから「幻の名盤」と呼ばれていたアルバム『Dream Queen』。オリジナルのマスターテープから新たにデジタル・リマスタリングを施し、クリア・ヴァイナル仕様で限定発売される。
 もうひとつは、知る人ぞ知るUKのハード・ロック・バンド、オランウータンが残した唯一のアルバム、そのアートワークをあしらったTシャツ。
 最後はMUROとのコラボ企画第二弾。ソウル、ジャズ、ファンク、ポップを融合したハワイのバンド、レムリア唯一のアルバム『Lemuria』(1978)をカラー・ヴァイナルで復刻、Tシャツとセットでリリース(バラ売りもアリ)。
 ぜひ売り切れてしまう前にチェックを。

VINYL GOES AROUNDにて、The Bobby Hamilton Quintet Unlimited『Dream Queen』のクリアヴァイナル、ORANG-UTANのオリジナルTシャツ、そして日本を代表するDJ、MUROとのコラボレーション企画でLEMURIAのオリジナル・Tシャツとカラー・ヴァイナル、一挙3アイテムを販売。

Pヴァインが運営するアナログ・レコードにまつわるプロジェクト「VINYL GOES AROUND」にて、The Bobby Hamilton Quintet Unlimited『Dream Queen』のクリアヴァイナル、ORANG-UTANのオリジナルTシャツ、そして日本を代表するDJ、MUROとのコラボレーション企画でLEMURIAのオリジナル・Tシャツとカラー・ヴァイナル、一挙3アイテムの販売が開始しました。

The Bobby Hamilton Quintet Unlimited『Dream Queen』は鍵盤奏者、パーカッショニストでもあるボビー・ハミルトンを中心に1972年にレコーディング。当時はNYのマイナーレーベルからのリリースで、サウンドの素晴らしさと希少度が相まってディガーの間では "幻の名盤" と称されていました。A面はエレクトリックピアノとヴィヴラフォンの掛け合いからファンキーなグルーヴへとなだれ込む「Pearl (Among The Swine)」で始まり、メロウなソウル・ボッサ「Priscilla」、パーカッシヴなビートとホーン・セクションが絡み合うアフロ・ジャズ・ファンク「In The Mouth Of The Beast」。B面は印象的なベースの疾走感溢れるファンク「Roll Your Own」、そしてエレクトリックピアノとヴィヴラフォンが切なさを醸し出す極上のスローバラード「Dream Queen」。聴けば誰もが納得する全曲キラーチューンのアルバムです。オリジナルのマスターテープから新たにデジタル・リマスタリングを施した最新仕様でのリイシュー。 VINYL GOES AROUNDでは限定でクリア・ヴァイナルでの発売となります。

ORANG-UTANはLED ZEPPELINやLEAF HOUNDを彷彿とさせるブルージーでアシッドなハード・ロックで、マニアのハートを鷲掴みにしてきました。ヘヴィなギター・リフと絡み合うツイン・リード、コブシの効いた高音シャウトが交錯するサウンドはリリースから半世紀を経た今日でも鮮烈ですが、バンドは本作1枚のみで解散。イギリス出身でありながらアメリカのみでアルバム・デビューという複雑な事情も関係して流通がままならず、知る人ぞ知るアンダーグラウンド・レジェンドとしてロック史にその名を刻んできました。
今回はVINYL GOES AROUND限定でその幻のレコードジャケットをモチーフにしたTシャツを販売。表面には巨大なオラウータンがビルを襲うイラストをプリントし、背面にはバナナの皮のみになった、ジャケットの裏をプリント。

そして日本を代表するDJ、MUROとVINYL GOES AROUNDのコラボレーション企画第二弾はLEMURIAのジャケット・デザインを使用したオリジナルTシャツとカラー・ヴァイナルを販売します。
“KALAPANA”のオリジナル・メンバーでありプロデューサーとしても数々の名盤を残してきた“Kirk Thompson”率いるグループ、“LEMURIA”。1978年にリリースされた唯一のアルバム『Lemuria』は知る人ぞ知るコレクターズ・アイテムとして高額で取引されながらも、ソウル、ジャズ、ファンク、ポップを融合したハワイのバンドとして広く知れ渡り絶賛されてきた名盤です。
今回はオリジナルアルバムに加えてボーナストラック3曲に、「All I’ve Got To Give」と「MISTER U (UNIVERSE)」のオルタネイト・テイク2曲を追加した2LP、ゲートフォールド・ジャケット、ブラウン・クリアヴァイナルでリリース。Tシャツはバンド・メンバーの写真にバンドのロゴをあしらったデザインで3色展開となります。

・VINYL GOES AROUND 販売ページ
https://vga.p-vine.jp/exclusive/

■リリース情報①

アーティスト:The Bobby Hamilton Quintet Unlimited
タイトル:Dream Queen
品番:PLP-7798C
フォーマット:LP (CLEAR VINYL)
価格:¥3,850(税込)(税抜:¥5,500)
※ご注文頂いた商品は、発送準備が整い次第発送します。
※限定品につき無くなり次第終了となりますのでご了承ください。

[TRACK LIST]
・SIDE A
1. Pearl (Among The Swine)
2. Priscilla
3. In The Mouth Of The Beast
・SIDE B
1. Roll Your Own
2. Dream Queen

■リリース情報②

アーティスト:ORANG-UTAN
タイトル:ORANG-UTAN Original T-shirts
品番:VGA-1029
フォーマット:Tシャツ
価格:¥5,280(税込)(税抜:¥4,800)
カラー:BLACK
サイズ:S M L XL 2XL
※商品の発送は2022年7月上旬ごろを予定しています。
※限定品につき無くなり次第終了となりますのでご了承ください。
※Tシャツのボディはギルダン 2000 6.0オンス ウルトラコットン Tシャツになります。

■リリース情報③

アーティスト:LEMURIA
タイトル:LEMURIA ORIGINAL T-SHIRTS with “Lemuria” COLORED VINYL
品番:VGA-1021
フォーマット:Tシャツ+LP(GOLDEN CLEAR VINYL)
価格:¥10,230(税込)(税抜:¥9,300)
Tシャツ カラー:BLACK / NATURAL / CORN SILK
Tシャツ サイズ:S M L XL 2XL
★300枚限定生産(レコード)
※期間限定受注生産(~6月16日まで)
※Tシャツは受注期間が終了しましたら一色のみの販売となります。
※商品の発送は2022年7月下旬を予定しています。
※限定品につき無くなり次第終了となりますのでご了承ください。
※Tシャツのボディはギルダン 2000 6.0オンス ウルトラコットン Tシャツになります。
※商品は一部他店にて流通するアイテムとなります。

[TRACK LIST]
・SIDE A
1. Hunk Of Heaven
2. All I've Got To Give
3. Dreams
・SIDE B
1. Mister U (Universe)
2. Get That Happy Feeling
3. Moonlight Affair
4. Mystery Love
5. The Making Of You
6. The Lady And The Dude
・SIDE C
1. Don't Say Their Ain't No Heaven
2. Somebody's Talkin'
3. Who Do You Love
・SIDE D
1. All I’ve Got To Give (Alternate take)
2. Mister U (Universe) (Alternate take)

■リリース情報④

アーティスト:LEMURIA
タイトル:LEMURIA ORIGINAL T-SHIRTS
品番:VGA-1020
フォーマット:Tシャツ
価格:¥5,280(税込)(税抜:¥4,800)
カラー:BLACK / NATURAL / CORN SILK
サイズ:S M L XL 2XL
※期間限定受注生産(~6月16日まで)
※Tシャツは受注期間が終了しましたら一色のみの販売となります。
※商品の発送は2022年7月下旬を予定しています。
※限定品につき無くなり次第終了となりますのでご了承ください。
※Tシャツのボディはギルダン 2000 6.0オンス ウルトラコットン Tシャツになります。
※商品は一部他店にて流通するアイテムとなります。

■リリース情報⑤

アーティスト:LEMURIA
タイトル:LEMURIA
品番:PLP-7807/8C
フォーマット:LP(BROWN CLEAR VINYL)
価格:¥5,500(税込)(税抜:¥5,000)
★300枚限定生産
※商品の発送は2022年7月下旬を予定しています。
※限定品につき無くなり次第終了となりますのでご了承ください。
※商品は一部他店にて流通するアイテムとなります。

Boris - ele-king

 今年初頭に発売された活動30周年記念アルバム『W』にはじまり、7インチ・シリーズ、記念ライヴに北米ツアーと、怒濤の勢いでアニヴァーサリーを駆け抜けている Boris。この夏、活動30周年を記念する2枚目のアルバムがリリースされることになった。02年作・11年作同様、タイトルは『Heavy Rocks』で、節目を象徴する内容になっているようだ。発売は8月12日。Boris の追求するヘヴィ・ロックの最新型をこの耳で確かめよう。

Boris30周年記念アルバム “Heavy Rocks” 発売決定!
国内盤限定スペシャルブックレット封入

コロナ禍に突入直後の2020年に制作された『NO』、それに呼応するように連続で生み出された『W』。結成から30周年を迎えた2022年、2枚目の最新アルバム『Heavy Rocks』がリリースされる。
『Heavy Rocks』(オレンジ 2002)、『Heavy Rocks』(紫 2011)と10年毎に、Borisは自分たちの思い描くヘヴィロック最新形を同じタイトルで提示してきた。"Heavy Rocks"という言葉は自身の姿勢・態度そのものであり、過去から未来に亘る揺るぎないテーマであり、象徴である。

この2年で世界は変わってしまった
人々の思考はよりシンプルに
今はみんなそれぞれが大切なものを捉え易くなった

何を未来へ残し伝えるのか
そしてアップデートしていくロックのソウル

言葉や意味を超え貴方に届く魂
本能、直感、牙
これが今のBorisのHeavy rock

結成30周年
最新と普遍をアップデートし加速し続けるBorisの現在。
あなたの大切なものは何か?

閉塞されていた世界が再び解かれ、活発な日常を取り戻す兆しを見せる、まさに転換期とも言える今年、この運命的と言えるタイミングで、Borisは最新の『Heavy Rocks』を投下する。
未だ混迷を続けるこの時代を生き抜き、自らの血と肉として獲得し具現化した現在進行形のヘヴィロックを。
今回は「色」ではなく、過酷な状況を自らの牙でサヴァイブする獰猛な生命の「紋様」を纏い世界に提示する。
前作『W』に続きサウンドプロデュースとしてBuffalo DaughterのsuGar Yoshinagaを起用。
『NO』のエクストリームさ、静謐な『W』の空気感を塗りつぶし、さらに混沌と"Heavy"に耽溺してゆくワイルド&グリッターな世界を楽しんでほしい。


Boris / Heavy Rocks
8月12日発売
KKV-148
CD
2,800円税込

収録曲
01. She is burning
02. Cramper
03. My name is blank
04. Blah Blah Blah -お前は間違っていて俺も間違っていてそれは正しさ-
05. 光 -Question 1-
06. Nosferatou
07. Ruins -瓦礫の郷愁-
08. 形骸化イマジネーション -Ghostly imagination-
09. 幸福という首輪 -Chained-
10. (not) Last song

www.borisheavyrocks.com
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Cate Le Bon - ele-king

「立ち上がり、歩くこと。立ち上がり、歩くこと。彼がつまづかないことを示すこと。彼は大丈夫だ。大丈夫なのだ」。ジェームズ・ケルマンの『how late it was, how late』における主人公で、グラスゴー人のサミーは、家路につこうとするが、体が言うことをきかない。酔っぱらって頭にかかっていた靄はやがて晴れる。しかし彼は自分が一歩一歩、手と足を使って、身を隠すために奔走していることに思い当たる。

 哲学の勉強のためにグラスゴーを歩き回った4年間で、私は移動することに価値を見出すようになった。飲酒文化が特に有名なこの街における「移動」は、少し飲み過ぎた後でも安全に家に帰れるということを示している。6年ほど前に東京に引っ越してからは、酒の量は減った。しかし定期的に東京の終わりのない通りや小道をぶらぶらと歩き回るようになった。決まった目的地がないときには、歩いているだけで気分が高揚する。

 しかし、多くの人と同じように、パンデミック以来、私は室内から外を見て過ごすことが多くなった。ここ数年は、スコットランド文学を追いかけたり、様々なアーティストやコメディアンがTwitchというストリーミング・プラットフォームに活動の場を移していくのを見守ったりしている。そのなかでの個人的なハイライトのひとつは、「Rust」というゲームで自分の仮想上のクラブ・ナイトを作り、主催した Murlo だ。また、ちゃんとしたヘッドフォンを購入したことで、ポップとエクスペリメンタルを横断するような音楽への興味が再燃した。

 スコット・ウォーカーの “It's Raining Today” を青写真に、私は、私の感覚をぶっ壊すような「歌モノ」の音楽をいつも探している。過去10年間では、ジュリア・ホルターの “エクスタシス” や、ディーズ・ニュー・ピューリタンズの “フィールド・オブ・リーズ”、クワイア・ボーイの “パッシヴ・ウィズ・ディザイア”、ガゼル・ツインの “パストラル・アンド・ソフィー”、オイル・オブ・エヴリー・パールの “アン・インサイド” の際立った、シュールな構造と興味深い歌詞に大きな影響を受けた。マルチ・インストゥルメンタリストでシンガー・ソングライターのケイト・ル・ボンの2019年のアルバム『リワード』が出たとき、アルバムではなくシングルのループ再生の面白さに気づくときまで、また別のお気に入りのアルバムを見つけたと思ったものだ。しかし3年後の新しいアルバム『ポンペイ』には、あらゆる意味で興奮させられた。

 ル・ボンは、グラスゴーの賑やかな通りから離れたウェールズの田舎で育った。しかし、スコットランドや英国の他の地域と同様に、ウェールズもパンデミックによって特に大きな打撃を受け、政府の厳しい規制によって、彼女は7枚目のアルバム『ポンペイ』の制作を受け入れることを余儀なくされた。「レコードを作るときは、どこかに行って、自分を真空のなかに置きたいんだ」と、ル・ボンは最近のインタヴューで語っている*。パンデミックが発生したとき、彼女はアイスランドにいて、ジョン・グラントの『ザ・ボーイ・フロム・ミシガン』の制作作業を終えていた。このアルバムにおける温かいプロダクションは、グラントによる、この世のものとは思えないアメリカ中西部の疲弊した物語の端々を包み込んでいる。状況が悪化したとき、彼女はなんとかウェールズに戻ることができたが、カリフォルニアにある彼女の家からは、遠いところにいなければならなかった。

 では(外的な状況によって、移動が)できないとき、人はどうやってどこかに行くのだろうか? ル・ボンの場合は、旅を内側に向け、外部からの交通が停止に近い状態で、ロックダウン中のアルバムに広大な地表を織り込むことによってだった。

 オープニングの “ダート・オン・ザ・ベッド” では、サックスとベースの方向の違いが、「移動」をシミュレーションする。サックスが、ひっかかったかのようなオフ・ビートで、音の粒子に逆らって仰け反らせる間に、重みのあるベース音が勢いよくスイングし、前方の道を探る。サム・ゲンデルとサム・ウィルクスによる『ミュージック・フォー・サクスフォン・アンド・ベース』は、当時ヘヴィー・ローテーションされていたはずで、それをこの二元論的なレコードの、オルタナティヴなタイトルにすることは容易だったはずだ。サックスはドラムスとともに、彼女が外部に委託している唯一の楽器でもある。

 低音域での歌唱がニコと比較されることもあるが、ここでのル・ボンのヴォーカルは、他の誰の声にも聞こえないくらい際立っている。『ポンペイ』のサウンドの方も、デビュー作『マイ・オー・マイ』のチェンバー・フォークや、2016年の『クラブ・デイ』の生き生きとしたポスト・パンクから離れたものになっているが、完全に異なるわけではない。アルバムのピークはメロウになり、それは、ロキシー・ミュージックのシンセサイザーと一緒に、雑談で時間を潰すには不安にすぎる、80年代のどこかに存在している。なにしろ、外では嵐が吹き荒れているのだから。

 シングル曲 “モデレーション” のプレ・コーラスでは、「節度を、持つことができない。そんなものはいらない。それに触れたい」と、すべてが快調ではないことのしるしが現れる。思考が流動的になり、「できない(can't)」は「いらない(don't want)」へと後退し、それが「したい(want)」へと反転していく。長い孤独のなかで、最大の敵である自分の心の揺らぎを前にして、自分自身のアイデンティティや価値観が混乱に変わっていく。やがて晴れやかなギターが輝きはじめ、泣き叫ぶようなサックスがヴォーカル・ハーモニーからそれていく。そして、ル・ボンは自分自身が「混乱に縛られている」ことに気づく。

 しかし、なお『ポンペイ』は前方へと進んでいる。それぞれの曲は、より広いタペストリーのなかで、際立った位置づけを保持している。不確かな曲たちは去り、その後には風景の変化が待っている。水平線には穏やかさが増しているのだ。晴朗な “ハーバー” では、彼女は自らのヴォーカルの低音域を捨てさり、浮遊感のあるファルセットを好んで使用している。彼女は、これまででもっともキャロライン・ポラチェクのように演奏していて、ゆったりとしたシンセ・ポップ的グルーヴは、ブルー・ナイルのレコードに収録されても違和感がないものだ。

 最終曲の “ホイール” に至るまで、ル・ボンはヨーロッパの海岸線と、自然災害の現場を、安全に航海してきた。「目には見えない都市のフランスの少年たち」(“フレンチ・ボーイズ”)から “ポンペイ” の「記念碑的な怒りの上に作られた都市」まで、である。泣き叫ぶサックスは鳴りを潜め、ベースは誇らしげに行進する。自己が回復し、この力強く、感動的なレコードは終わる。

 我々は元気を取り戻し、歩いている。我々はそれを乗り越えたのだ。

* https://www.undertheradarmag.com/interviews/cate_le_bon_on_pompeii

written by Ray Chikahisa

“Up and walking, up and walking; showing here he wouldnay be stumbling; he wouldnay be toppling, he was fine, he was okay”. Sammy, the Glaswegian protagonist in James Kelman’s how late it was, how lateis trying to make his way home, but his body is not cooperating. His drunken fog eventually clears, but he still finds himself scrambling for cover, using his hands and feet to navigate each step.

In the four years I spent walking around Glasgow studying for a philosophy degree, I came to value being on the move. Especially in a city famed for its drinking culture, being on the move means you’re safely returning home after a few too many drinks. Since moving to Tokyo almost six years ago, I drink less, but regularly head out to wander aimlessly through the city’s never-ending streets and pathways. Without a set destination, being up and walking takes on a state of mind.

Still, like many others, since the pandemic I have been spending a fair amount of time indoors looking out. In the past few years I have been catching up on Scottish literature, and watching various artists and comedians transition over to streaming platform twitch - one of my highlights being Murlo building and then hosting his own virtual club night on the video game Rust. I’ve also invested in a decent pair of headphones and resumed obsessing over music at cross-sections of pop and experimental.

With Scott Walker’s ‘It’s Raining Today’ as my blueprint, I’m always on the hunt for vocal music that subverts the senses. In the past ten years Julia Holter’s Ekstasis, These New Puritans’ Field of Reeds, Choir Boy’s Passive With Desire, Gazelle Twin’s Pastoral and Sophie’s Oil Of Every Pearl's Un-Insides have all affected me in a big way with striking, surreal architecture and lyrical intrigue. When multi-instrumentalist and singer-songwriter Cate Le Bon’s 2019 album Reward came out, I thought I’d found another favourite until I realised I was stuck in a listening loop with the singles and not the album. But three years on, and a new album had me all kinds of excited.

Le Bon grew up in the Welsh countryside, far removed from Glasgow’s busy streets. But like Scotland and the rest of the UK, Wales was hit particularly hard by the pandemic, and strict government restrictions forced her to adapt for her seventh album Pompeii. “When I make a record, I want to go somewhere and put myself in a vacuum,”* remarked Le Bon in a recent interview. When the pandemic hit, she had been in Iceland finishing up her production work on John Grant’s The Boy From Michigan - an album whose warm production grips at the edges of Grant’s weary tales from an otherworldly American Midwest. When conditions got worse, she had managed to return to Wales, but was kept apart from her home in California.

So how do you go somewhere when you can’t? In the case of Le Bon, you turn your travels inward, and weave an extensive geography into your lockdown album as external traffic nears to a standstill.

Right from the start of opener ‘Dirt On The Bed’, movement is simulated by the contrasts in direction from the saxophone and bass. Weighted bass notes swing forth with momentum, scouting the path ahead while saxophones, often snagging on an off-beat, brush back against the grain. Sam Gendel and Sam Wilkes’ Music for Saxofone and Basshad supposedly been on heavy rotation at the time, and it could easily have been an alternative title for this dualistic record. The saxophones, together with drums, are also the only instrumentation she outsources.

While comparisons to Nico follow her in the lower registers, by this point, Le Bon’s vocals are so distinctive it’s hard to hear anyone else. The sound of Pompeii has also moved on from the chamber-folk of her debut My Oh My, and the lively post-punk of 2016’s Crab Day, but not entirely. Its peaks have mellowed, it’s somewhere in the 80s, with a hand on Roxy Music’s synthesizers, but too anxious to stick around for the schmooze. After all, there’s a storm building outside.

Signs appear in the pre-chorus of single ‘Moderation’ that all is not well, ‘Moderation, I can't have it, I don't want it, I want to touch it’. With stream-of-thought fluidity, ‘can’t’ regresses into ‘don’t want’ which then flips into ‘want’. Our own identities and values turn to soup when facing our greatest adversary in times of prolonged isolation - our own wavering mind. Before long bright guitars begin to spark, wailing saxophones veer away from aligned vocal harmonies and Le Bon finds herself “tethered to a mess”.

And yet Pompeii travels onwards. Each song has its own distinct location within a wider tapestry. Songs of uncertainty depart, a change of scenery awaits, and calm grows in the horizon. Take the serene “Harbour,” where she casts aside the sobering lower registers of her vocal range in favour of buoyant falsetto. It’s the most she’s ever sounded like Caroline Polachek, and the slow-burner synth-pop groove wouldn’t be amiss on a Blue Nile record.

By the time of final track ‘Wheel’, Le Bon has navigated safe passage through European coastlines and sites of natural disaster, from the ‘French boys in invisible cities’ to Pompeii’s ‘Cities built on monumental rage’. The wailing saxophones have simmered, and the bass marches on proudly. The self is restored, and so draws this emphatically moving record to a close.

We’re back up and walking. We made it through.

* https://www.undertheradarmag.com/interviews/cate_le_bon_on_pompeii


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