「You me」と一致するもの

interview with Shintaro Sakamoto - ele-king

 この20年のあいだにリリースされた日本の音楽において、傑出したプロテスト・ミュージックに何があるのかと言えば、ぼくのなかでは、たとえばゆらゆら帝国の『空洞です』と坂本慎太郎の『ナマで踊ろう』が思い浮かぶ。が、その解説はいまはしない。いまはそんな気持ちになれない。イギリスでウェット・レグが売れるのも理解できる。いまは誰もが楽しさに飢えているのだ。
 しかしその背景は決して幸福なエデンなどではない。『物語のように(Like A Fable)』——この思わせぶりな言葉が坂本慎太郎の4枚目のアルバム・タイトルで、前作『できれば愛を』が2016年だからじつに6年ぶり、オンラインメディアがそのみだらな馬脚を現す前の話で、ドイツはなかば理想的な環境先進国だと信じられて、円安もいまほど深刻に思われていなかった時代の話だ。いや、無粋なことは言うまい。いまは誰もが楽しさに飢えているのだ。ぼくだってそうだ。しかしそんなものどこにある?
 この難問に対峙したのが、『物語のように』ではないのだろうか。アルバムは、キャッチーで、ポップで、メロディアスで、スウィートなのだ——と、知性も教養もない言葉を連発してしまった。このインタヴューの終わりには、(いつになるのかわからないが)語彙の多さに自信を持つ松村正人なる人物の文章が入ることになっているので、そのときが来たら自分の程度の低さはいま以上に際立つだろう。それでもかまわない、このアルバムをなるべく早く紹介すること、なるべく多くの人に聴いてもうこと、それがいまの自分に与えられた使命なのだ。
 取材日は、5月だというのに寒い雨の日で、場所は恵比寿リキッドルーム。その日は公演がなく、場内の明かりや人気も無く、がらーんと静かで、広々としているが暗く寂しい空間だった。これが取材の演出だとしたら見事なものだ。坂本慎太郎は、変わりなく、いつものように言葉少なめに淡々と話してくれた。一見、エネルギーが欠如しているように見えるかもしれないが、アルバムに収録された各曲を聴いたら改心するだろう。それから、そう、最後にあらためて言っておくことがある。ぼくは必然的に、この2年ほど世界の無慈悲な変化に対しての反応をおもに音楽を通して見てきているが、『物語のように』もそうしたなかの1作である。(野田)

本当は全部青春っぽい歌詞にしたいんですけど。『アメリカン・グラフティ』もそうだし、ロカビリーとかも。でもやっぱり、俺が学園生活の恋愛とか喧嘩とか、自分のないもの出せないし、青春ぽくも読めるけどリアルな自分の年齢のぼやきにも取れるギリギリを狙っていて。

すべての曲が魅力的で、無駄がないというか、ぼくの印象を言うと、メロディアスで、スウィートなアルバムだなと、キャッチーなアルバムでもあると、そう思いました。もっとも坂本慎太郎のアルバムにはつねに際どさがあって、言葉もメタファーになっていることが多いので、その表面の下にあるものが何なのかをお話いただければと思います。インターネットに載るインタヴューですから、どこまで話していただけるかわからないですけど。

坂本:はい。

"それは違法でした"は何がきっかけで作られた曲なんですか?

坂本:歌詞ってことですか? きっかけはなんですかね。ポロッとできたんですけど。

何か出来事があって、それがきっかけではなかった?

坂本:うーん……。

でもこれ、コロナ以降、ぐしゃぐしゃな世のなかになってからのアルバムなわけですよね?

坂本:はい。曲はコロナ前から作り溜めてたんですけど、歌詞がなかなかできなくて。

何かあった都度に書き留めたというより、最近ばーっと書いたんだ?

坂本:早くても去年の夏くらい。1年以内に全部書いてる。

じゃあアルバム作りの起源みたいなものがもしあるとしたら、いつになるんですか?

坂本:えーと、去年7月にLIQUIDROOMでライヴをやって、フジロックもやったのか。たぶんフジロックが終わってから、バンドで今回の曲の……いや、その前からやってるな。6月とか7月とかに曲をリハーサルしだして、12月にレコーディングをはじめたんですよ。それまでに8曲ほど練習して、でもその段階では全部の歌詞ができてるわけじゃなくて。できてるのもあったんですけど。3月に完成したんですけど、レコーディングしながら曲作り足したり、歌詞完成させたりという感じですね。

それだと起源はどこになるんだろう?

坂本:デモテープみたいなのは前のアルバム出してからコツコツ作ってたんで。

▲:いちばん古いのなんなんだろう?

坂本:1曲目ですね。これだけ家でデモテープを作ったときの音をそのまま使ってて。

リズムは、エレクトーンかなんかのプリセット音?

坂本:これはマエストロの古いリズム・ボックス。家で録ったやつで、歌とホーン・セクションだけスタジオで生で録りました。

この曲を1曲目に持ってきたのって何?

坂本:……他に置き所がないから。

一同:(笑)。

アルバムを前半と後半に分けて考えました?

坂本:分けては考えないですけど、流れは考えました。

それはサウンドの流れ? 言葉の流れではなくて?

坂本:言葉の流れも関係するのかもしれないですけど、曲を聞いててしっくりくる流れを考えました。いまはそんな聴き方する人いないらしいですね。

一同:(笑)。

坂本:前の取材で「今回曲順は考えたんですか?」と聞かれて、「当然考えましたけど」と言ったら、いまは曲順を考えない人がいると言われて衝撃を受けました。

サブスクの悪影響だね。

坂本:前回は2016年に出たんで、日本にspotifyが入る直前だったんですよね。だから今回は、あのときとは全然状況が違う。

ぼくからするともったいない聴き方だよね。アルバムを楽しむというのは音楽ファンからしたらひとつの醍醐味だから。

坂本:でもアルバムがそういう作りになってなければ意味はないですよね。そういう風に作られてるものだったら意味があるけど、作る方がそれを放棄してたら、通して聴く意味もなくなってきてるし。

▲:じゃあなんでそういう人たちはアルバム出すんですかね? シングル出し続ければ良いじゃないですか。

シングルで出し続ける人もいるんだろうね。ぼくはそういう風潮に関しては否定派なんですけど、いまはその話は置いといて、『物語のように』に話を戻すと、前半と後半というか、"スター"の前と後ろでアルバムの雰囲気が違うかな、と感じたんですよね。

坂本:ここで変えようとは意識してないです。流れでこういう流れがいいかな、とは思いましたけど。

松村君どう思った?

▲:まさしくそう思いました。A面とB面という考え方なのかな、と。"スター"より前の方がヴァリエーションがあって。

深読みをさせてもらうと、坂本君のこれまでのアルバムって、つねに時代を意識しながら作られてたと思うんですね。で、こういう時代になって、ものすごい暗い時代になってしまって、それですごく暗い音楽を作るんじゃなくて、ものすごく意識して甘くてメロディアスな音楽を作ろうとしたんじゃないかな、というのがひとつ。もうひとつは、"スター"以前の曲の歌詞というのは、すごく捻りがあるというか、意味を深読みできる言葉が並んでいると思ったんですね。それに対して"スター"以降の曲は、もうちょっと優しさが前面に出ている。だから、薄暗くはじまって、明るく終わるみたいな感じがしたんだけど。

坂本:そうですか。でもまあ最初におっしゃった、明るい曲にしようとしたというのはその通りで、そういうの目指してました。

すごくメロディーが際立っているという風に思ったんですよ。松村君は?

▲:思いました。"恋の行方"の落とし方が、やっぱり明るい感じというか。

坂本:あれ明るいですか(笑)? じゃあ良かったです。明るいっていってもあれが俺のできる明るさの限界ですけど。

アンビヴァレンスみたいなものは坂本慎太郎の特徴なのかなと思うけど、今回は1曲目がレゲエな感じで、2曲目はソウル・ミュージックな感じで、サウンドだけ聴くとアップ・リフティングなんだけど、歌詞をよく聴いていくと、決して楽天的ではない。

坂本:たしかに最初の2曲がそういう印象あるのかもしれないですね。

表題曲の"物語のように"だって……

坂本:明るくないですか?

いや、明るいか(笑)。明るいけども、ここで歌われている感情というものが、単純に昔は良かった、ということなのか。あるいは現在に対する皮肉なのか。どっちが強いんだろうか?

坂本:えー。

どうして"物語のように"なの? あと英語表記だと「Like a fable」でしょ? storyとかromanceとかではなくて。fableって作り話とか童話みたいな意味じゃない? それがなぜタイトルになったのかな。

坂本:なぜと言われると……なぜなんですかね。

あのさ、ele-kingでニュース出したときに、めちゃバズったんですけど、曲目のリスト載せるじゃないですか。多くの人が曲名のリストに反応してるんだよね。

▲:曲名がひとつのメッセージだな、とは思いました。

坂本:なんていうんですかね、考えが先にあって作っているわけじゃないんですよね。考えてないこと歌っているわけでもないんですけど、もっとイタコ的というか、無意識にポロって出た言葉に対して、これどういう曲になるんだろ、と考えて曲にするということが多くて。考えて歌詞を作るとあんまり面白くないというか、曲としてこじんまりしちゃうんですよ。これ("物語のように")の最初の歌い出しは「紙芝居」となってますけど、そこが物語のように、に繋がっていって曲になったという感じですね。

意図せず「物語のように」という言葉ができたということか。

坂本:それに対して後付けで何か言うことはできるかもしれないけど、正確に言うと考えてないです。

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そうですか。でもまあ最初におっしゃった、明るい曲にしようとしたというのはその通りで、そういうの目指してました。明るいっていってもあれが俺のできる明るさの限界ですけど。

リスナーから、「坂本さん、これは現在がひどいから過去への郷愁を歌ってるんですか」と訊かれたら、なんと答えます?

坂本:それもありですけど、あんまり「昔はよかったね」とか言いたくないんですよ。

それはよくわかるよ。コロナ禍はどんな風に過ごしてました?

坂本:もともとずっと籠ってるようなタイプなんで、ライヴはなくなりましたけど、普段の生活はそんなに変わってないです。よく考えるとライヴもそもそもやってなかったから。飲みの誘いが無くなって、その分作業に専念できる、というところでした。

▲:作業というのは曲作りの?

坂本:曲を作ったり、考えたり、でしたね。

「好きっていう気持ち」とか「ツバメの季節」という2枚のシングルを出しましたが、これはどういう気持ちだったんですか? これらの曲は、坂本君にしたらすごく素直にセンチメンタルな、当時の気持ちを表現したのかなと思ったけど。

坂本:あれは、コロナになってライヴとか、アメリカ・ツアーを予定してたのが全部飛んじゃって、やることないから宅録っぽいアルバムでも作ろうかなと思って。古いリズム・ボックスとか好きだから。そういうイメージで作業をはじめたんですけど。1回ライヴをやるかもみたいな感じになって、スタジオにメンバーと入ったんですね。ちょっと練習してたんですけど、ライヴがやっぱりできないことになって、練習していたのが無駄になったし、スタジオも予約していたので、せっかくだし今作ってる新曲をバンドでやってみたら、ひとりで作ってるよりみんなで生でやるほうが面白いな、と思って。それでシングルにしたんですよ。アルバムにするには曲が全然足りなくて、アルバムにいくのも先になりそうだし、そのときあった4曲をシングルで出したんですよね。だから、その時期のムードとか思ってることがそのまま出たって感じ。だけどちょっと、今回のアルバムはあんまりメソメソしたこととか言いたくなかったので、また違う感じになってると思うんですけど。

▲:アルバムはそういう(シングルの)感じじゃなくしようと思って作ったんですが?

坂本:いや、全然イメージが湧かなくて、歌詞が難しいなと思って、コロナになってますますですけど。インストの音楽だったらできるかもしれないけど、歌詞がある曲をわざわざリリースするときに、どんな言葉を歌うとしっくりくるかが難しくて。なんとか、こんな感じだったら歌えるかな、となったのが、さっきの4曲だったんですけど。ただそういうことがアルバムでやりたかったわけじゃなくて、もうちょっと突き抜けたものにしたかったんで。

それはすごいわかりますね。

坂本:「コロナで大変だ」みたいな感じとか、「社会状況がキツいね」みたいなのを出すんじゃなくて、そこを抜けていく、突き抜けていく感じを出したかったんです。

コロナだけじゃなくて、オリンピックがあったり、小山田圭吾君のこともあったり、海外だとBLMもあったり、戦争があったり、この3年ですっかり世界が違うものになっちゃったじゃない。

坂本:もちろんそういうの全部、感じてるし、それぞれに言いたいこともありますけど、全部を超越したような、スカッとした楽しい気分になれるような……

たしかに1曲目、2曲目はそんな感じでてる(笑)。突き抜けるような。

坂本:うまく言えないんですけど、見ないようにして、無理して明るく、というのではなく、こういう状況にありながら楽しめる、というすごい細いラインを模索して、なんとかここにきたという感じなんですけど。

素晴らしい。

▲:これまでのアルバムのなかで作るのはいちばん大変だったですか?

坂本:そうですね。歌詞が、途中からできてきたんですけど、途中まではできる気がしなかったですね。無理矢理考えてもダメなのはわかってるんで。

▲:そういうときはひたすら待つんですか?

坂本:あと散歩ですね。

ちなみに、言葉が出てきたきっかけとかなんかあるの? その後の方向性を決めたような。

坂本:最初にできたのが、"物語のように"という曲なんですけど。曲自体はけっこう前からあって、自分のなかでは悪くはないけど、とくに新基軸な感じもしないし、と寝かせてあった曲なんですけど、ある日言葉がハマって。歌詞ができる前からスタジオで演奏してたんですけど、デタラメ英語みたいな感じで。でも歌詞ができて日本語で歌ってやってみたら急に良くなって。なんてことない曲だと思ってた曲でも、言葉がハマると急激に曲になるというか、その感じを実感して。それから、簡単な言葉とか、さりげない言葉でピタッとハマって、キラキラさせる、みたいな方向性がちょっと見えたかもしれないです。

▲:"物語のように"の一節が最初に出てきたんですよね? この一節が最初に降ってきた、と。

坂本:そうなんですけど、"物語のように"という曲で「物語のように」から歌い出すといまいちかな、と思って……

▲:なるほど(笑)。それで同じ譜割りで言葉を探して?

坂本:割とスルッと出たんですけどね。

ちなみにその次の曲、"君には時間がある"もキャッチーな曲なんですけど、この歌詞はやっぱり自分の年齢があって、若い「君」ということでいいんですか?

坂本:この曲ができたとき、まだ歌詞はなかったんですけど、なんとなくアルバムが見えてきたと思ったんです。「こんな感じの曲ばっかりのアルバムにしたいな」と。ただデモの雰囲気を変えずに歌詞を乗せるのが大変でした。デタラメ英語で歌ってる譜割りを崩したくなかったし、あと曲のイメージが変わっちゃう、というところで苦労したんですけど。だから野田さんが言ったようなことを言いたくないなと思って。

(笑)。

坂本:いわゆる「我々には残り時間がない」とか、そんなこと言いたくないなと思って。本当はもっと馬鹿馬鹿しいことを言いたかったんですけど、サビのところで「君には時間がある」という言葉がハマっちゃうと、もう動かしようがなくて。

なるほど(笑)。

坂本:安田謙一さんから、「君にはまだ時間がある」「僕にはもう時間がない」の「まだ」と「もう」を省略してますね、と言われて。それ言うとさっき野田さんが言った意味になっちゃうから、俺は単に忙しい、お前は暇だ、という意味も入れたくて。最初は逆に考えてたんですよ。「俺は時間があるけど、そっちにはない」みたいな。でもそれはそれで反感買うかな、と思って。

一同:(笑)。

坂本:いろいろ考えて、そういうマイナーチェンジはしてるんですけどね。

音楽の歌詞って、サウンドと一緒になって初めて意味を成す、ということなんだけど。でも、歌詞だけ読むとすごくディープにも取れるようなね。

坂本:だから、本当は全部青春っぽい歌詞にしたいんですけど、誤解を恐れずに言うと(笑)。自分が求めてる音楽はそういうやつなんだけど。

▲:『アメリカン・グラフティ』みたいな?

坂本 そうそう。そういう単なるラヴ・ソングみたいなのなんだけど、歌詞で言ってるのとは違うこと表現してるみたいなの、あるじゃないですか? 『アメリカン・グラフティ』もそうだし、ロカビリーとかも。でもやっぱり、俺が学園生活の恋愛とか喧嘩とか、自分のないもの出せないし、青春ぽくも読めるけどリアルな自分の年齢のぼやきにも取れるギリギリを狙っていて。

なるほどね(笑)。「未来がどうなるかわからないから、いまを楽しもうよ」という風にも聞こえるよね。

坂本:そうですね。一応ギリギリのところでやったつもりなんですけど。

▲:その通りになってると思います。

坂本:でもたしかに野田さんが言ったようなことももちろん入ってますけどね。

いろんな意味にとれるから面白いんだよね。

坂本:たぶん若い子が聴いたら、そういう風にはとらないと思う。

リスナーの立場によって変わってくるのかな、と思うよ。

坂本:同世代とかは、正しくとると思うんですけど(笑)。

“まだ平気?"の歌詞も面白いなと思ったんですよ。

▲:2番の韻の踏みかたとかも素晴らしいと思いました。

これはなんで出てきたの?

坂本:これも曲が先にあって、こういう譜割りのメロディがハマってたんですけど、それを崩したくなくて、けっこう苦労したんですよね。やっぱり考えすぎると真面目っぽくなっちゃうし。

最初の2曲が時代を捉えようとしていると思ったんだよね。

坂本:どちらかというと、ぼくは後半みたいな、1、2曲目以外の曲だけで10曲作りたかったんですけど、まあいいのかなと思って(笑)。

一同:(笑)。

▲:でも流れとしてはこの2曲と繋がりもけっこうありますしね。場面として分けて考えることもできるアルバムだと。

坂本:一応流れはあるんですけど、そういう風に聴く人はいないらしいので。

いや、まだそんなことないんじゃないですかね。

▲:シングルを順番に並べてるような聴こえかたもするな、と思って。

A面B面A面B面という感じで? なるほどねー。いやーでも2曲目をB面にするのもったいないな。

一同:(笑)。

▲:そういう話じゃないですよ(笑)。アルバムの構成ということでも、聴き方をいろいろ考えさせるアルバムだな、と感じました。

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歌詞が難しいなと思って、コロナになってますますですけど。インストの音楽だったらできるかもしれないけど、歌詞がある曲をわざわざリリースするときに、どんな言葉を歌うとしっくりくるかが難しくて。

サウンド・プロダクションで、今回テーマはありました? 僕はちょっと、清志郎と細野(晴臣)さんがやったHISを思い出したりもしました。あれも歌謡曲的な、あるいはフォーク・ロックの雑食性と突き抜けた感じがあって。

坂本:ぼくは、けっこう、ロックっぽく……

ロックっぽく?

坂本:いま聴いて格好良く聞こえるようなエレキギターの感じとかを出したいなと思ったんですけど。ソロになってからはあんまりエレキギターを全面に出してこなくて、比重が少なかったので。世の中的にもエレキギターの立場が悪くなってるので。

ギターの音がクリアに聞こえていますよね。

坂本:あとは、オールディーズっぽい感じとか、アメリカン・ポップスの感じとか、ロカビリーの感じとか、サーフ・ギターとか……そういう感じは昔から好きだけど、今回はちょっと多めかもしれないですね。

▲:サーフ・ロックぽいといえば、4曲目のギターはなにを使ってるんですか?

坂本:ジャガーですね。中村(宗一郎)さんの。

SGの音じゃないですもんね。5曲目は?

坂本:えーと、わからない(笑)。

ご自分のSGだけじゃなくて、いろいろ使ってる、と。

坂本:メインは中村さんのジャガーかもしれないですね。

▲:そういうところで、サウンド的には昭和35年代感というか、60年代前半の感じがありますね。

坂本:60年代前半は好きですね。

どうしてそのコンセプトが?

坂本:前から好きだし、さっき言った、モヤモヤしたのを突き抜けていく感じのイメージがあるんですね。キラキラして。

"愛のふとさ"なんかはボサノヴァっぽいですよね。

坂本:この曲だけなんか違うんですよね。こういうのも1曲あっていいのかなと思って。これもデモ・テープのなかに入ってて、でもロックぽくないし、テイスト違うかな、と思ったけど、まあいいか、と。

一同:(笑)。

今回のアルバムでは、僕の好きな曲のひとつだけど。

坂本:うん。曲としてはすごく良くできたかな、と。

あと、1曲目のレゲエっぽい感じもいいなぁ。

坂本 レゲエっぽいですか?

レゲエっぽいよね?

▲:ホーンの入り方とか、初期のダンス・ホールっぽいですよね。なんでトロンボーン入れようと思ったんですか?

坂本:それは西内(徹)さんが……。

あのトロンボーンはすごいハマってたね

坂本:このトロンボーンは僕のアイデアですけど、2曲目のホーン・セクションは西内さんが考えてて、トロンボーンとサックスでやりたいというから任せて。で、スタジオにKEN KENと来て、1曲目はまだ途中段階で歌詞もなかったんだけど、この曲にも入れたらいいな、と思って、その場で。

▲:1曲目ってトラックとしてはワン・コードでやってるんですか?

坂本:ワン・コードですね。

▲:Cのワン・コードですよね。そのうえでリズムが変わっていく。

坂本:リズムがシャッフルのリズムと、エイトのリズムの2種類あって、リズム・ボックスがシャッフルになってて、リフが8ですね。

▲:ものすごく気持ち悪いですよね(笑)。でもその気持ち悪さに気づく人もどれだけいるのかな。

坂本:すごいねじれた感じにはなっていて、フワーっというのはスティール・ギターの音なんですけど、あれがシャッフルの周期で出てくるのでリフとズレて、ちょっと変な感じになっています。

▲:私は、こういうことをロバート・ワイアットとかがやりそうだなと思いました。すごく面白い。ところで、フジロック以降、ライヴはやってないんですか?

坂本:その後に福井のフェスに出ただけですね。

▲:これ(アルバム)が出たあとはツアーは予定されているんですか?

坂本:ツアーというほどじゃないですけど、東京とか大阪とかではやりますね。

▲:いまはだいぶライヴもやりやすいですよね。

坂本:ただ、俺もあんまり人混みに行きたくないから、来てくれとは言いづらいですね。人のライヴとかでぎゅうぎゅうだったりすると、行くの怖いので。それが染み付いてて。マスクしない人がワーワーやってるところに行きたくないって思っちゃうから。そういう状況で自分がやるのも抵抗あるし、どこからが安心でどこからがやばいという線引きは難しいんですけど、なんとなくあるじゃないですか。まあ大丈夫そうだな、とか、ここはちょっとやばいから早く出よう、とか。そういうことをどうしても考えちゃうんで。

模索しながらやるしかないみたいな。

坂本:あと、俺はそもそもライヴやりたくなかったから。でもやりだしたら楽しいや、と思ってたんですけど、ライヴをやれなくなっても元に戻るだけというところあるんですよね。

海外からオファーが来ると思うんですけど、それは行かないようにしてるの?

坂本:アメリカは延期の延期で今年の6月だったんだけど、それはこっちからキャンセルしましたね。

▲:まだ不安だということで?

坂本:あのーすごい赤字になりそうで。例えばもし隔離とかになっちゃうと……。

▲:隔離は自腹ですもんね。

坂本:全部補償してくれるわけじゃないから。向こうの滞在費とかこっちで払わなきゃいけなくなるし、お客さんも来るかわからないし。向こうでメンバーとかスタッフとかが感染して隔離というときにどうしていいかわからないし。
いまはライヴをやれば楽しいし、いい感じでやれるならやりたいけど。どういう場所でやるか、というのも関係してくるな、と思います。円安で飯も高いしね。

▲:レコードの輸入盤もますます高くなりますね。海外の配信は多いですか?

坂本:まあ多いですよ。ブラジルが多いんですよ。サンパウロとか。ブラジルで人気のあるO Ternoというバンドと一緒にやったから、それ繋がりだと思います。

▲:今回のアート・ワークは何かメッセージはあるんですか?

坂本:いや……とくにない、と言っちゃうと終わっちゃうか(笑)。

一同:(笑)。

坂本:まあこういう感じがいいかな、と思って。

坂本君にとって、いま希望を感じることってなんですか?

坂本:希望を感じること。うーん……(長い沈黙)。

乱暴な質問で申し訳ないですけど。

坂本:うーん、なんですかね? なんかありますか?

酒飲んで音楽聴いて、サッカー観たり……、これは希望じゃないか(笑)!

坂本:個人的なことで真面目に言うと、いい曲を作ることには制限がないじゃないですか? 何となくでも、こういう曲が作りたいというのがある限り、それに向かって何かやる、ということは制限ないから、それはいいな、と思う。あと、楽しみで言えば、酒飲んで……みたいな、それくらいしかない(笑)。でも作品作っておかないとね。良い作品作っておけば、しばらく酒飲んでてもいいかな、と。それなしだとちょっと飲みづらいというか。

一同:(笑)。

自分を律してると。

坂本:ほぼ冗談ですけど。でも、時代が変わって、世界の境界線が音楽においてはなくなっているので、曲を出すとタイム・ラグなく外国の人も曲を聴いてくれるじゃないですか。で、直接リアクションがあったりするし。

ぼくも海外の人から感想を言われるのは、昔はなかったので、嬉しいですね。そういう文化の良きグローバリゼーションというのはあるよね。

坂本:悪い方もいっぱいあって、インターネットとかだとそっちが目立つじゃないですか。でも普通にラジオで最近買ったレコードかけると、その本人からコメントきたりとかありますね。それは昔とは違うかな、やっぱり。

▲:たしかにそれは希望かもしれないですね。

Ghostly Kisses - ele-king

 フランス系カナダ人歌手/マルチ・インストゥルメンタリストであるマルゴー・ソヴェによるプロジェクト「ゴーストリー・キシズ」の新作アルバム『Heaven, Wait』が本年リリースされた。短調のメロデイが印象的なヴォーカル曲集である。モダン・クラシカルの可憐なミニマリズムをエレガントなエレクトロニック・ポップ・ミュージックに落とし込んだ宝石のようなアルバムだ。

 『Heaven, Wait』はケベックの自宅でマルゴー・ソヴェとミニマル/モダン・クラシカル系の作曲家ルイ=エティエンヌ・サンテ(Louis-Etienne Santais)によって録音されたという。
 プロデューサーにはスフィアン・スティーヴンスセイント・ヴィンセントを手掛け、モダン・クラシカル作曲家ニコ・マーリーとのコラボレーション作品『Peter Pears: Balinese Ceremonial Music』でも知られるニューヨークを拠点とする才人トーマス・バートレット(ダヴマン)と、イギリスからザ・ヴァーヴ、ロンドン・グラマーなどを手掛けてきた敏腕ティム・ブランらが招かれた。リリースはヘンリー・グリーンなどで知られるロンドンのレーベル〈Akira Records〉からである。

 ここでゴーストリー・キシズの軌跡を簡単に振り返っておこう。マルゴー・ソヴェは5歳のときにヴァイオリンをはじめ、数年前に曲を書き、歌いはじめた。「ゴーストリー・キシズ」という名は、ウィリアム・フォークナーの詩「Une ballade des dames perdues」を読んでインスピレーションを受けて付けたという。
 まず、ゴーストリー・キシズとしては2015年にファースト・シングル「Never Know」をセルフ・リリースした。2017年にはサンフランシスコのインディ・レーベル〈Turntable Kitchen〉からEP「What You See」を、2018年になるとふたたびセルフ・リリースでEP「The City Holds My Heart」をおくりだした。そして2019年にカナダの〈Return To Analog〉からファースト・アルバム『Ghostly Kisses』を発表する。
 2020年になると〈Akira Records〉からEP「Never Let Me Go」を、2021年には〈Return To Analog〉からアコースティック演奏のEP「Alone Together」をリリースした。
 ちなみに『Heaven, Wait』の共同制作者であるルイ=エティエンヌ・サンテの『Reflection I』(2020)もお勧めしたいモダン・クラシカル・アルバムだ。ミニマルかつ抒情的な旋律が麗しく、まるでシューベルトがミニマル化したようなアルバムである。モダン・クラシカル好きの方は機会があればぜひとも聴いていただきたい。

 このような幾多の楽曲を経て制作された『Heaven, Wait』は、ゴーストリー・キシズの集大成のようなアルバムだ。エレクトロニックでダウンテンポなビートにエレガントなトラックが交錯する美しい楽曲が全10曲収録されている。
 トラックを彩るクラシカルなピアノ、エレガントなストリングス、美麗なエレクトロニクスが、繊細に、緻密に、マルゴーのシルキーな歌声に寄り添うように展開する。何よりアルバムの多くを占めるマイナーコードのメロディがとても胸に迫るのである。
 アルバムは全曲素晴らしいのだが(こんなことはなかなかない!)、初めて聴く方におすすめしたいのは、ティム・ブランがプロデュースを手掛けた “Heartbeat”、“Heaven, Wait”、トーマス・バートレットが手掛けた “A Different Kind Of Love” あたりだろうか。まるで心を沈静する甘く苦いチョコレートのような曲たちだ。また “Blackbirds” もヴォーカルとストリングスの交錯が実に見事である(とここまでで前半5曲すべてになってしまった!)。

 ほんの少しだけ悲しみが満ちているとき、かすかに嬉しいとき、小さな宝石のような美しさに震えたいとき、微細な喪失感を感じているとき、このアルバムの楽曲たちは、あなたの心に潤いを与えてくれるだろう。そして薄明かりがさすような仄かな輝きを放つアルバム最終曲 “Your Heart is Gold” に至ったとき、あなたの心にささやかな救済が訪れるのではないかと思う。そして自然と冒頭の “Heartbeat” をまた聴きたくなるのではないか。
 夜の都市の情景をさりげなく染み込む全10曲は繰り返し聴くことで、日々の暮らしのなかにかすかな憂いや美を与えてくれるに違いない。季節や時間を選ばないモダン・クラシカル/エレクトロニカ・ヴォーカル・アルバムである。

Funkadelic - ele-king

 昨年から「リリースから50年」にかこつけた再発盤が出ているので、この機会に書こうと思ったものの、すでにネット上には良いレヴューが多数あるので、止めておこうかなとも思った。ピッチフォークのレヴューも素晴らしかったし、あれ以上のことが自分に書けるのだろうかと。……なんてことを言いながら、いまこうして書いているのには理由がある。今年の初めに取りかかっていたエレキング別冊イーノ号において、ブライアン・イーノにとってファンクを好きになったきっかけがPファンクだったという原稿を書きながら、つまりPファンクがいなければトーキング・ヘッズの3部作も生まれなかったんだよなぁとしみじみ考えたりしていたのである。あまり語られていないけれど、UKのポスト・パンク時代のザ・ポップ・グループやザ・スリッツといったバンドにもジョージ・クリントンは影響を与えている。当然『サンディニスタ!』にも『バムド』にも『スクリーマデリカ』にも。
 で、いま書いたどこに理由があるのかと言えば、イーノはPファンクをきっかけにファンクを好きになりましたと、まずはそれを書いておきたかったという点にある。CANはジェイムズ・ブラウンに影響されたがイーノは違っていたと、どうですか、これだけでも音楽好きの酒の肴になるでしょう。

 「『マゴット・ブレイン』は、黒人グループが到達したことのない場所まで向かっていた。アメリカはいまも正しい道を進んでいるのだろうか? 60年代後半の約束は、完全に消滅してしまったのか? こうした疑問を投げかけていたのだ」
 ジョージ・クリントの自伝『ファンクはつらいよ』(押野素子訳‏/原題:Brothas Be, Yo' Like George, Ain't That Funkin')に記されているこの言葉は、現在ネットに散在する多くのレヴューに引用されているが、実際ここには、当時のPファンクとは何だったのかを知る上での重要事項が凝縮されている。「60年代後半の約束」——ジョージ・クリントンが率いたこの時期のPファンクのコンセプトには、サマー・オブ・ラヴの終焉(ないしはポスト公民権運動)に関する調査結果がリンクしているという事実は見落としてはならない話だし、ことにサイケデリックで、なおかつ階級闘争的なこのアルバムではそうした季節の変わり目に対してのクリトンの解釈が作品の骨子となっている。

 その苦い思いは、『マゴット・ブレイン』の前作にあたる、セカンド・アルバム『Free Your Mind And Your Ass Will Follow(心を解き放てば、ケツの穴がついてくる)』において先んじている。「ウォール街の芸術/金に敬意を表する私たちの父‏‏‏‏‏‏/あなたの王国だ/あなたの時代だ」(Eulogy and light=賛辞と光)は、LSDにまみれた当時のこのバンドのひたむきな理想主義への情熱が打ち砕かれ、そして同時に空しい70年代における利己主義の到来を、激しい混乱のなかで正気を保ちながら予見している。もっとも貧しい人たちのコミュニティが物質主義に翻弄されて破壊していく様を、クリントンは直視していた。

 ジョージ・クリントンが希有だったのは、アフロ・ディアスポラとして60年代後半の革命の時代に参加したことで、しかもそれは、教会の熱気やストリートの荒廃から離れることなく、ボブ・ディランやジョン・レノンがやったことを感情と知性をもって享受したということだった。リッキー・ヴィンセントが名著『ファンク』のなかで述べているように、それまで白人文化の特権だと思われていた「知性、教養、洗練」といったものを、Pファンクは「黒人であること」に結びつけることができたのである。

 ファンには有名なフレーズ「俺にはかつて人生があった/むしろ人生が俺を持っていた」——カントリーとファンクそしてゴスペルが交錯する『マゴット・ブレイン』の2曲目の〝Can You Get To That〟は、ぼくのお気に入りの1曲で、キング牧師の演説のなかの比喩(アメリカが黒人に押しつけたinsufficient funds=不渡りという言葉)を流用し、愛の時代の終焉を歌っていながらこの曲にはどこか可笑しさがある。ディランの歌詞のようにメタファーとナンセンスをもって語るこの曲は、絶望を押しつけない。その認識さえも表現の仕方によっては楽しさにひっくり返せるという知恵を実践している。

 スライ&ザ・ファミリー・ストーンの洗練されたファンクを彷彿させる“You And Your Folks, Me And My Folks”は、貧しい人たちの団結を訴えている力強い曲で、サンプリングの標的にされている曲でもあるが、本作においてもっともカットアップされることになったティキ・フルウッドのドラミング(ブレイク)と言えば、クリントンの自伝によると“Back In Our Minds”になる。本作を聴いたマイルス・デイヴィスは、そのリズムに感銘を受けてフルウッドを自分のバンドに起用したというが、『マゴット・ブレイン』は、伝説の初期メンバーが揃った最後のアルバムでもあった。河内依子の労作『P-FUNK』によれば、本作には後にメンバーとなるゲイリー・シャイダーほか数人のゲストが参加していたということだが、基本となっているのはフルウッドのほかバーニー・ウォーレル(k)、ビリー・ネルソン(b)、エディ・ヘイゼル(g)、タウル・ロス(g)。ネルソンはギャラの件でクリントンと揉めて、ロスはアシッドを過剰摂取したうえにスピードを鼻から吸い込んで、すっかりイカれたしまったと言われている。が、もうひとりのギタリストのヘイゼルは、実存的な悲しみをその表題曲“Maggot Brain”においてみごとに表現した。曲の主題は彼のギターソロと、クリントンの言葉によっても描かれている。

 『マゴット・ブレイン』の表題曲におけるクリントンの、これまた超有名なフレーズ「俺は宇宙の心でウジ虫を味わった」とは、言うまでもなく最悪などん底状態を意味している。本作は、ピッチフォークが言うように、アルバムの最初の最後に肝があるのだが、そのはじまりは、とてつもない絶望と喪失感だったりする。ちなみに何回目かの再発盤で、すべてのパート(ドラム、ベース、キーボード)が入った最初のヴァージョンがお目見えになっているが、ヘイゼルのギターのみを残したミックスを最終ヴァージョンとしたジョージ・クリントンは、この時期本当に冴えていたのだ。

 とはいえこんなアルバムは、リアルタイムでそうそうよろしく理解されたわけでもなかったようだ。ゲイトフォールド・ジャケットの内側には、「最終審判教会プロセス」なる架空のカルトによって書かれたという一節が引用されている。それは地球を覆い尽くしている恐怖や暴力や憎悪についての警鐘めいたものだが、「教会プロセス」という名称がチャールズ・マンソンのカルト教会名と似ていたため、あるいはまた、アルバムのアートワークが土に埋められ叫ぶ女性の顔(裏ジャケットはその骸骨)で、しかも「ウジ虫」がタイトルとくれば、この時期のファンカデリックが不遜で不吉なバンドだといちぶの人たちから思われても仕方がなかったのかもしれない。収録曲の“Super Stupid”は、その曲名(超バカ)のファンキーさとは裏腹に、エクストリームなヘヴィメタル・スタイルの先駆けとなった。要するに、サウンド面においても『マゴット・ブレイン』は先走っていたと、そのもっともインパクトのあるファンキーな成果が、アルバムを締める“Wars Of Armageddon(アルマゲドン戦争)”だ。この曲は、リー・ペリーがその5年後にやることをすでにやっているし、20年後にデトロイトのアンダーグラウンド・レジスタンスがエレクトロニックに再現する原型とも言えるだろう。そして、フルウッドの、それこそマイルスを魅了したドラミングが疾駆し、ウォーレルのキーボードやヘイゼルのギターがうねり、ナンセンスきわまりない具体音が突き抜けるこの曲は、クリントンが表題曲に込めたもの——いわく「喪失感と無力感、絶望の精神性、どん底に足が着いたときにわずかに沸き上がる希望」における「希望」があざやかに噴出している。曲の後半では「More power to the people(人々によりパワーを)/More pussy to the power(パワーによりプッシーを)」という言葉がぶっきらぼうに繰り返されているが、そこには同時に、おならのような音や脈絡のない奇声、動物の声がオーヴァーダブされている。クリントンは、なんだかさっぱりわからないが、なんとかなるんじゃないかと思えてくるという離れ業を、9分以上のこの曲においてばっちり実現しているのだ。

 ぼくが高校時代に読んだ、当時はまだハードカバーしかなかった村上春樹の処女作『風の歌を聴け』は、たしか太陽の光には夜の暗さがわからないというような言葉で締められていた。当時のぼくは、なるほど、その通りだと思ったものだが、それから10年後に聴いたPファンクは、夜の暗さにもわからない暗さがあって、だけど、そこに光を当てることもできなくはないんじゃないかと思わせてくれた。まあ、ファンキーでありさえすればの話だが、『マゴット・ブレイン』は、いま聴いてもぼくにそう思わせてくれる。

 

Ron Trent - ele-king

 彼が16歳のときに発表した “Altered States” は、いまなお色褪せぬエレクトロニック・ミュージックのクラシックだ。シカゴ・ディープ・ハウスの重要人物、ロン・トレントがなんと11年ぶりに新作『What Do The Stars Say To You』をリリースする。新名義「ウォーム(WARM)」の名のもと放たれる同作では、トレント自身によってプレイされたドラムやキーボード、ギターがエレクトロニクスと融合されているという。ゲストも豪華で、クルアンビンアジムスのふたり、ジャン=リュック・ポンティ、ジジ・マシンと、そうそうたる顔ぶれだ。さらにはフランソワ・ケヴォーキアンによってミックスされてもいるらしい。生ける伝説の現在を、この耳でたしかめたい。

Ron Trent, Francois Kevorkian
「ハウス・ミュージックの伝説」として第一線で活躍を続けるロン・トレント
11年ぶりの最新作を発表!!!
CDはフランソワ・ケヴォーキアンによる超スペシャル・ミックス音源!!!

クルアンビン、イヴァン・コンチ(アジムス)、
アレックス・マリェイロス(アジムス)、ジャン=リュック・ポンティ、
そしてジジ・マシンら超豪華ゲストが参加!!!

アーティストが監修を務めるオリジナル・コンピレーション・シリーズで人気を博す〈Late Night Tales〉から派生した姉妹レーベルで、第一弾アーティストのクルアンビンがいきなり世界的ブレイクを果たし、その独特の美学が評価を高めているレーベル〈Night Time Stories〉より「ハウス・ミュージックの伝説」として、さらには超一流のミュージシャン/ソングライター/プロデューサーとして第一線で活躍を続ける、ロン・トレントの最新アルバム『RON TRENT PRESENTS WARM: What do the stars say to you』が6/17にリリース! 現在、アルバムからクルアンビン参加の新曲のMVとアルバム・サンプラーが公開されている。

Ron Trent presents WARM - Flos Potentia (Sugar, Cotton, Tabacco) feat. Khruangbin (Official Video)
https://youtu.be/8dXR5B8GDuA

Ron Trent presents WARM - What do the stars say to you (Album Sampler)
https://youtu.be/0fU31j2S4hc

アルバムの参加ゲストとしては前述のクルアンビンに加えて、ブラジルの伝説的バンド、アジムスのドラマー、イヴァン・コンチとベーシストのアレックス・マリェイロス、フランスのジャズ/フュージョン界のスター、ジャン=リュック・ポンティ、そしてアンビエントのパイオニア、ジジ・マシンといった面々が名を連ねており、マスタリングはフランソワ・ケヴォーキアンが手がけた超豪華なコラボレーション作品となっている。

また、作品中ドラム、パーカッション、鍵盤、シンセ、ピアノ、ギターなどをロン自身が奏でており、生楽器とエレクトロニクスの調和がディープで陶酔的なサウンドを生み出している。ジャズ・ファンク、ポップ、ニュー・エイジ、ニューウェーブ、コズミック、バレアリック、サンバ、アフロビート、ラテンロック他……彼の飽くなき探究心で培われた音楽的豊かさが詰め込まれたキャリア最高傑作がここに誕生している。

本作はCDとLPで6/17にリリースされ、CDはフランソワ・ケヴォーキアンによるミックス音源となっており、5曲のボーナス・トラックが収録、更に国内流通仕様盤CDには解説が封入される。
また、LPにはアンミックス音源が収録され、通常のブラック・ヴァイナルと限定のホワイト・ヴァイナルで発売され、フランソワ・ケヴォーキアンによるミックス音源とアンミックス音源、両方のDLコードが付属する。

label: Night Time Stories / Beat Records
artist: Ron Trent, Francois Kevorkian
title: RON TRENT PRESENTS WARM: What do the stars say to you
release date: 2022.06.17

国内流通仕様盤CD BRALN68 定価 ¥2,100+税(税込 ¥2,310)
国内盤特典:解説封入

ご予約はこちら:
BEATINK.COM:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=12808

TRACKLISTING


CD tracklist
フランソワ・ケヴォーキアンによるミックス音源、5曲のボーナス・トラック入り
*がボーナストラック

01 Melt into you feat. Alex Malheiros (Azymuth)
02 Cool Water feat. Ivan Conti (Azymuth) and Lars Bartkuhn
03 Flos Potentia (Sugar, Cotton, Tabacco) feat. Khruangbin
04 The ride*
05 Cycle of Many
06 In the summer when we were young*
07 Flowers feat. Venecia
08 Sphere feat. Jean-Luc Ponty
09 Admira feat. Gigi Masin
10 Endless Love*
11 Rocking You*
12 WARM
13 On my way home
14 What do the stars say to you
15 Cool Water Interlude*


Vinyl tracklist
フランソワ・ケヴォーキアンによるミックス音源とアンミックス音源、両方のDLコードが付属

A1. Cool Water feat. Ivan Conti (Azymuth) and Lars Bartkuhn
A2. Cycle of Many
A3. Admira feat. Gigi Masin
A4. Flowers feat. Venecia
A5. Melt into you feat. Alex Malheiros (Azymuth)
B1. Flos Potentia (Sugar, Cotton, Tabacco) feat. Khruangbin
B2. Sphere feat. Jean-Luc Ponty
B3. WARM
B4. On my way home
B5. What do the stars say to you

black midi - ele-king

 昨年意欲的なセカンド・アルバム『Cavalcade』を送り出したロンドンのバンド、ブラック・ミディ紙エレ最新号のインタヴューで「新しい実験をいくつかやってみた」「ポップな感じの曲を作って、その極論まで突き詰めてみた」「いままでで最高の作品になる」と次の作品について語っていた彼らだが、ついにそのサード・アルバムのリリースがアナウンスされた。題して『Hellfire』、7月15日発売。

 そしてさらに喜ぼう。コロナにより延期となっていた来日公演が、ようやく実現することになった。12月4日東京 SHIBUYA O-EAST、5日大阪 UMEDA CLUB QUATTRO、6日名古屋 NAGOYA THE BOTTOM LINE。前売券をお持ちの方など、詳しくは下記をご確認ください。

black midi
地獄の業火、環状高速道路M25、燃え盛る炎、27個の謎
一体我々はどこへ辿り着くのか.....
ブラック・ミディ最新アルバム『Hellfire』堂々完成。
延期となっていた来日公演も遂に実現!!

『Cavalcade』がドラマだとしたら、『Hellfire』は壮大なアクション映画のようだ - ジョーディ・グリープ

圧巻の演奏スキルと爆発的イマジネーションで次世代UKロック・シーンの中でも突出した存在感を放つカリスマ、ブラック・ミディが衝撃のセカンド・アルバム『Cavalcade』に続く最新アルバム『Hellfire』を7/15にリリース。同作からのリード・シングル「Welcome To Hell」が公開された。戦争の恐怖から闇堕ちした兵士を歌った楽曲はファンキーなギター・リフと破壊力抜群のホーン・セクションが目まぐるしく展開していくブラック・ミディらしいハードコアなプログレッシヴ・ロックで、オフィシャルMVは「Slow」のビデオも監督したグスタフ・ホルテナスが手掛けている。

black midi - Welcome To Hell
https://www.youtube.com/watch?v=Efmq_uXt1Rk

『Cavalcade』リリース後、ロックダウンが続くロンドンで制作されたアルバムは前作のメロディやハーモニーを踏襲しながら、1stアルバム『Schlagenheim』にあった性急で凶暴なバンド・アンサンブルが復活し、希薄になっていく現代社会の道徳を炙り出す様々なストーリーが一人称で語られていく一貫したコンセプトが敷かれている。またプロデュースはバンドの新たな代表曲としてリスナーに熱烈な支持を集めた「John L」を手掛けたマルタ・サローニを迎え、これまでにないほどブラック・ミディの音楽の領域の広さや力強さ、強力なプロダクションを見せつけている。

2022年7月15日(金)に世界同時発売される本作の日本盤CDおよびTシャツ付限定盤には解説および歌詞対訳が封入され、ボーナス・トラックとしてステューヴ・アルビニ録音によるライヴ音源を追加収録。アナログは通常/限定盤ともに初回生産分にはアルバム・アートワークを手がけたデヴィッド・ラドニックによる日本語帯付仕様でのリリースとなる。本日より各店にて随時予約がスタートする。


待望の来日公演の振替日程が決定!

black midi JAPAN TOUR 新日程
2022/12/4 (SUN) 東京 SHIBUYA O-EAST (1st SHOW / 2nd SHOW)
2022/12/5 (MON) 大阪 UMEDA CLUB QUATTRO
2022/12/6 (TUE) 名古屋 NAGOYA THE BOTTOM LINE

昨年9月に予定しており新規入国禁止措置により延期となっていたブラック・ミディのジャパンツアーの振替公演の日程が下記の通り確定しました。ご協力いただいた関係各位、とりわけ前売チケットをご購入いただき、振替日程の発表を長期間お待ちいただきましたお客様には厚く御礼申し上げます。

既にお持ちのチケットは対応する各都市の振替公演にそのまま有効となります。大切に保管していただくようお願い申し上げます。

新しい公演日程に都合がつかないお客様には、お買い求めになられたプレイガイドより払戻しいたします。払戻数が確定後、キャパ制限などの状況に応じた枚数の前売チケットの販売を再開する予定です。チケット購入を希望される方は新たな発表をお待ちください。
※チケット紛失等に関しましては対応致しかねますのでご注意下さい。

詳細はこちらから:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11891


label: BEAT RECORDS / ROUGH TRADE
artist: black midi
title: Hellfire
release date: 2022/07/15 FRI ON SALE

国内盤CD
解説書・歌詞対訳封入
RT0321CDJP ¥2,200+税


国内盤1CD+Tシャツ付き
サイズS・M・L・XL
¥6,200+税


輸入盤LP(限定レッド/初回限定日本語帯付仕様)
RT0321LPE 2,850+税


輸入盤LP(初回限定日本語帯付仕様)
RT0321LP 2,850+税

BEATINK.COM:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=12794

Tower Records: https://tower.jp/artist/discography/2729064

TRACKLISTING
01. Hellfire
02. Sugar/Tzu
03. Eat Men Eat
04. Welcome To Hell
05. Still
06. The Race Is About To Begin
07. Dangerous Liaisons
08. The Defence
09. 27 Questions
10. Sugar/Tzu (Live at Electrical Audio, Recorded by Steve Albini) *Bonus Track for Japan
11. Still (Live at Electrical Audio, Recorded by Steve Albini)
*Bonus Track for Japan

Anteloper - ele-king

 昨年末、穏やかで美しい新作を送り出したトータスのジェフ・パーカー、彼がプロデュースを手がけたグループにアンテローパーなるユニットがいる。トランぺッターのジェイミー・ブランチとドラマーのジェイソン・ナザリーから成るこのデュオは、2018年にシカゴのレーベル〈International Anthem〉からファースト『Kudu』を発表。この6月には件のパーカー参加の新作『Pink Dolphins』が発売される予定なのだけれど、日本限定盤としてなんと、両作をカップリングした特別な1枚『Kudu + Pink Dolphins Special Edition』がリリースされることになった。エレクトロニクスも導入したエクスペリメンタルなジャズを一気に堪能する、絶好のチャンスである。まずは先行公開曲 “One Living Genus” を聴いてみて。

Anteloper
Kudu + Pink Dolphins Special Edition
発売日:【CD】2022/6/22

トランぺッターのジェイミー・ブランチとドラマーのジェイソン・ナザリーによる注目デュオ・プロジェクト、アンテローパー。ジェフ・パーカー・プロデュースによる最新作『Pink Dolphins』と、2018年に発表されたデビュー作『Kudu』を合わせたスペシャルエディションで、日本限定盤ハイレゾMQA対応仕様の2枚組CDでリリース!!

名門ニューイングランド音楽院で共にジャズを学んだジェイミー・ブランチとジェイソン・ナザリーは、アンテローパーではエレクトロニクスという共通言語も駆使する。さらに、『Pink Dolphins』ではジェフ・パーカーをプロデューサーに迎え、ビートのテクスチャーも加わった。これは、所謂エレクトリック・ジャズではなく、ハードコアの残響とコズミックなサウンドスケープとエレクトリック・マイルスが、無造作に生々しく繋がる真にリアルな音楽だ。(原 雅明 ringsプロデューサー)

アルバムからの先行曲 “One Living Genus (Official Video)” のMVが公開されました!
https://www.youtube.com/watch?v=aJWpp0ULPNI

アーティスト:Anteloper(アンテローパー)
タイトル:Kudu + Pink Dolphins Special Edition
発売日:2022/06/22
価格:2,800円+税
レーベル:rings / International Anthem
品番:RINC88
フォーマット:2CD(MQA-CD/ボーナストラック収録予定)

* MQA-CDとは?
通常のCDプレーヤーで再生できるCDでありながら、MQAフォーマット対応機器で再生することにより、元となっているマスター・クオリティの音源により近い音をお楽しみいただけるCDです。

Official HP:https://www.ringstokyo.com/anteloper

B.B. King - ele-king

 〈Pヴァイン〉の「VINYL GOES AROUND」シリーズ、次なる新作はなんとブルースの王者、B・B・キング。1957年のファースト・アルバム『Singin' The Blues』と1960年作『The Great B.B.King』がオビ付きの180g重量盤としてリイシューされる。さらに、同2枚をモティーフにしたTシャツも限定販売。LPとのセットもあり。これまた見逃せないアイテムの登場だ。詳細は下記をチェック。

B.B.KINGのクラウン時代の人気作『Singin' The Blues』『The Great B.B.King』が帯付き重量盤仕様で待望のリイシュー! VINYL GOES AROUNDにてTシャツの限定販売も決定!

言わずと知れたブルースの王者、B.B.KING。彼がCrown Recordsに残したアルバムから、ファースト・アルバムにしてR&Bチャート5週連続1位に輝いたブルース史上最高の名盤の1つである『Singin' The Blues』と、傑作「Sweet Sixteen」を筆頭に脂ののった彼の演奏が詰まった『The Great B.B.King』を帯付き重量盤仕様でリイシューします。

そしてその2作品のジャケット・デザインを使用したTシャツをVINYL GOES AROUNDにて限定販売することも決定しました。

ブルースの神髄が存分に堪能できるB.B.の名作とその魂を込めたTシャツ、是非この機会にチェックしてください。

B.B.KING『Singin' The Blues』『The Great B.B.King』LP,T-Shirts 予約ページ
https://vga.p-vine.jp/exclusive/

[商品情報①]
アーティスト:B.B. KING
タイトル:Singin' The Blues
品番:PLP-7824
フォーマット:LP(180g重量盤)
価格:¥4,400(税込)(税抜:¥4,000)
発売日:2022年6月8日(水)
レーベル:P-VINE
★初回限定生産 ★帯付き

■トラックリスト
A1. Please Love Me
A2. You Upset Me Baby
A3. Every Day I Have The Blues
A4. Bad Luck
A5. 3 O'clock Blues
A6. Blind Love
B1. Woke Up This Morning
B2. You Know I Love You
B3. Sweet Little Angel
B4. Ten Long Years
B5. Did You Ever Love A Woman
B6. Crying Won't Help You

[商品情報②]
アーティスト:B.B. KING
タイトル:The Great B.B.King
品番:PLP-7825
フォーマット:LP(180g重量盤)
価格:¥4,400(税込)(税抜:¥4,000)
発売日:2022年6月8日(水)
レーベル:P-VINE
★初回限定生産 ★帯付き

■トラックリスト
A1. Sweet Sixteen (Pts 1&2)
A2. (I'm Gonna) Quit My Baby
A3. I Was Blind
A4. Just Sing The Blues (aka What Can I Do)
A5. Someday Baby (aka Some Day Somewhere)
B1. Sneakin' Around
B2. I Had A Woman (aka Ten Long Years)
B3. Be Careful With A Fool
B4. Whole Lotta' Love (aka Whole Lot Of Lovin')
B5. Days Of Old

[商品情報③]
アーティスト:B.B. KING
タイトル:Singin' The Blues Original T-Shirts
品番:VGA-1025
フォーマット:Tシャツ
カラー:BLACK / WHITE / SKY
サイズ:S M L XL 2XL
価格:¥5,280(税込)(税抜:¥4,800)
期間限定受注生産(~5月30日まで)

※受注期間が終了しましたら各デザイン一色のみの販売となります。
※商品の発送は 2022年7月上旬ごろを予定しています。
※限定品につき無くなり次第終了となりますのでご了承ください。
※Tシャツのボディはギルダン 2000 6.0オンス ウルトラコットン Tシャツになります。

[商品情報④]
アーティスト:B.B. KING
タイトル:Singin' The Blues Original T-Shirts + LP
品番:VGA-1026
フォーマット:Tシャツ+LP
Tシャツカラー:BLACK / WHITE / SKY
Tシャツサイズ:S M L XL 2XL
価格:¥9,350(税込)(税抜:¥8,500)
期間限定受注生産(~5月30日まで)

※Tシャツは受注期間が終了しましたら各デザイン一色のみの販売となります。
※商品の発送は2022年7月上旬ごろを予定しています。
※限定品につき無くなり次第終了となりますのでご了承ください。
※Tシャツのボディはギルダン 2000 6.0オンス ウルトラコットン Tシャツになります。

[商品情報⑤]
アーティスト:B.B. KING
タイトル:The Great B.B.King Original T-Shirts
品番:VGA-1027
フォーマット:Tシャツ
カラー:BLACK / NATURAL / SPORT GRAY
サイズ:S M L XL 2XL
価格:¥5,280(税込)(税抜:¥4,800)
期間限定受注生産(~5月30日まで)

※受注期間が終了しましたら各デザイン一色のみの販売となります。
※商品の発送は2022年7月上旬ごろを予定しています。
※限定品につき無くなり次第終了となりますのでご了承ください。
※Tシャツのボディはギルダン 2000 6.0オンス ウルトラコットン Tシャツになります。

[商品情報⑥]
アーティスト:B.B. KING
タイトル:The Great B.B.King Original T-Shirts + LP
品番:VGA-1028
フォーマット:Tシャツ+LP
Tシャツカラー: BLACK / NATURAL / SPORT GRAY
Tシャツサイズ:S M L XL 2XL
価格:¥9,350(税込)(税抜:¥8,500)
期間限定受注生産(〜5月30日まで)

※Tシャツは受注期間が終了しましたら各デザイン一色のみの販売となります。
※商品の発送は 2022年7月上旬ごろを予定しています。
※限定品につき無くなり次第終了となりますのでご了承ください。
※Tシャツのボディはギルダン 2000 6.0オンス ウルトラコットン Tシャツになります。

interview with Mamas Gun (Andy Platts) - ele-king


Mamas Gun
Cure The Jones

Légère Recordings / Pヴァイン

Soul

Amazon Tower HMV disk union

 ロンドンに拠点を置くソウル・バンド、ママズ・ガンが2017年発表の前作『Golden Days』から約4年半を経てニュー・アルバム『Cure The Jones』を完成させた。バンドの中心メンバーであるアンディ・プラッツがショーン・リーと組んだヤング・ガン・シルヴァー・フォックスでの精力的な活動(2018年の『AM Waves』と2020年の『Canyons』、計2枚のアルバムを作っている)、そして予期せぬパンデミックの影響も受けて過去最長のスパンを開けてのアルバム・リリースになったわけだが、これは14年に及ぶママズ・ガンのキャリアにおけるマスターピースとして賞賛されることになるだろう。
 2009年にアルバム『Routes to Riches』でデビューした当時のママズ・ガンは、のちにヤング・ガン・シルヴァー・フォックスへと発展していくAORフィーリングをベースにしつつ、マルーン5ばりのポップ・センスとジャミロクワイにも通ずる洗練されたグルーヴを武器にして人気を博していくことになるが、例えば『Routes to Riches』収録の “Pots of Gold”、続く2011年のセカンド・アルバム『The Life and Soul』収録の “We Make it Look So Easy” など、随所で垣間見せていた真摯なソウル心にも強く心を惹かれるものがあった。
 そんなママズ・ガンがデビュー時からの音楽的方向性を一転してソウル・ミュージックに寄せる憧憬を前面に打ち出してきたのが、2017年リリースの4thアルバム『Golden Days』だった。マーヴィン・ゲイ流儀のしなやかなメロウネスに貫かれた内容は従来からのファンはもちろん新たなリスナーを開拓することにもつながったが、今回の新作『Cure The Jones』は『Golden Days』の路線をさらに推し進めたより純度の高いソウル・アルバムに仕上がっている。
 『Cure The Jones』の豊潤なサウンドの向こうから立ち上がってくるソウル・レジェンドたちは、マーヴィン・ゲイ、ビル・ウィザース、カーティス・メイフィールドなど。まるで彼らが憑依したような、素晴らしいヴォーカル・パフォーマンスとソングライティングによってアルバムを傑作へと導いたアンディ・プラッツに話を聞いてみた。

ママズ・ガンの音楽は、角やエッヂやテクスチャーがあって、5人の人間が一緒に演奏している音だ。一方のヤング・ガン・シルヴァー・フォックスの音楽は滑らかで丸みがあり洗練されていて、2人の人間が作っている音楽だ。

まず、2017年リリースの前作『Golden Days』について改めてお話を聞かせてください。『Golden Days』は今回の新作につながるママズ・ガンにとってのひとつの転機になったアルバムと考えていますが、現在から振り返って同作をどのように受け止めていますか?

アンディ・プラッツ(Andy Platts、以下AP):100%同感だね。『Golden Days』は、僕にとってもバンドにとっても分岐点となる作品だった。自分たちで音楽のプロデュースを手掛けつつ、正真正銘のソウル・ミュージックという観点から自分たちのサウンドを磨き上げたんだ。これまで以上に兄弟や家族のような親密さが感じられるバンドになるための第一歩になったよ。

その『Golden Days』から約4年半が経過しています。これはママズ・ガンのアルバム・リリースのスパンとしては過去最長になりますが、この時間は今回の新作の制作にどのような影響を及ぼしていますか?

AP:そのうちの2年はパンデミックによるものだったけど、この期間で僕は作曲家として、そして僕たちはバンドとして、『Golden Days』を制作したときに選択した数々のことに対して自信を感じられるようになったと思う。『Cure The Jones』を制作したときの僕たちには自信があり、成熟していた。それは僕たちのスキルや意図が自然に進化して集約されたからだと思うんだ。

『Golden Days』から『Cure the Jones』のあいだ、アンディ・プラッツさんに関してはヤング・ガン・シルヴァー・フォックスでの充実した活動がありました。YGSFの活動で得た成果は今回の新作にどのようなかたちで反映されていますか?

AP:どちらのプロジェクトも重なる部分があると思う。例えば、プログレッシヴなハーモニーやグルーヴの使い方、ソウルフルなメロディの作り方だね。ママズ・ガンの音楽は、角やエッヂやテクスチャーがあって、5人の人間が一緒に演奏している音だ。一方のYGSFの音楽は滑らかで丸みがあり洗練されていて、2人の人間が作っている音楽だ。ホーンなどについては別として、だけどね。どちらのプロジェクトも、本質的に異なるものだから、お互いを支えあっている。このふたつのプロジェクトは対照的なんだ。ソングライターとしての自分は、片方のプロジェクトに取り掛かるときにはある特定のマインドになって、もう一方のプロジェクトに取り掛かるときはまた別のマインドになる。そういう原動力が交互のプロジェクトによって得られるんだ。

アンディさんは2020年に竹内アンナさんの “Striking Gold” を彼女と共作しています。あなたはこれまでにも山下智久さんや Every Little Thing に楽曲提供していますが、こうした日本のアーティストとのコラボレーションはどのような体験になっていますか?

AP:自分のやっていることが異なる状況でどのように解釈されるかを知る良い機会だと思っている。日本のポップ・ミュージックは、とても洗練されていて冒険的だ。僕はそこがすごく気に入っているんだ。洋楽のリスナーなら引いてしまうようなコードや曲構成を試してみたいという自分の好奇心が刺激される。それに、他のアーティストと直に仕事をするのは本当に楽しいんだ。アンナは素晴らしいよ。アイデアにあふれている。


中央が、今回メール・インタヴューに答えてくれたアンディ・プラッツ

マーヴィン・ゲイ、カーティス・メイフィールド、ビル・ウィザースといったアーティストたちは、偉大な人物であり作詞家としての僕やバンドのメンバー全員に昔から影響を与えてきた。ルイス・テイラー、シュギー・オーティス、スモーキー・ロビンソンのようなアーティストたちにも影響を受けてきた。

2020年以降の世界規模での新型コロナウイルスの感染が今回の新作に及ぼした影響はありますか?

AP:たしかに影響はあった。『Cure The Jones』は作詞やサウンドや曲作りの深みという面において、僕やバンドが体験したパンデミックによって形作られたアルバムだと言えると思う。それに、録音した素材をテープに収める期間が3日間しかなかったという状況だった。

アルバム・タイトル『Cure the Jones』にはどのような意味/想いが込められているのでしょう?

AP:なにかを「Jones」するということは、なにかを渇望するとか、欲求が満たされたいと思っているという意味なんだ。そこから各自の解釈をしてもらえればいいと思う。

今回の新作『Cure the Jones』の音楽的コンセプトを教えてください。どんなアルバムを目指しましたか?

AP:基本的な意図としては、素材の大部分をアナログ・テープで録音してより豊かで深みのある音にすることだった。このアルバムではベラ・チッパーフィールドがハープを演奏して、ジョナサン・ヒルがストリングスで参加してくれている。それから “Party For One” や “You're Too Hip (For Me Baby)” などでは新たな領域を開拓した。これも意図したことのひとつだね。

こんなご時世だからこそ、楽観主義的な姿勢を強く持って自分が恵まれていることを思い出すべきだと考えている。自分の人生には良いことがあるということを認識して、それらに感謝するべきだと思うね。

今回の新作では “Winner's Eyes” を除く全曲のソングライティングをアンディさんが単独で手掛けています。曲を書くにあたってはどんな点に留意しましたか?

AP:年齢を重ねるにつれ、歌詞の質にこだわるようになった。つまり、「まあまあ」のアイデアと「最高」のアイデアの違いということ。また、アルバムの曲たちはひとつのコレクションに属するようなものにしたかった。2013年のアルバム『Cheap Hotel』みたいに、バラバラで断片的な曲ではなくてね。それも『Golden Days』から学んだことだよ。

アルバムの収録曲からは偉大なソウル・ミュージックのアーティストたち、具体的にはマーヴィン・ゲイ、ビル・ウィザース、カーティス・メイフィールド、アース・ウィンド&ファイアー、アル・グリーンなどが連想されますが、アルバムの制作にあたって指標になったアーティストや作品はありますか?

AP:バンドのメンバー全員に共通しているのは、僕たちがソウル・ミュージックを高く評価しているということ。マーヴィン・ゲイ、カーティス・メイフィールド、ビル・ウィザースといったアーティストたちは、偉大な人物であり作詞家としての僕やバンドのメンバー全員に昔から影響を与えてきた。でも僕たちは、ルイス・テイラー、シュギー・オーティス、スモーキー・ロビンソンのようなアーティストたちにも影響を受けてきた。それに加えて、スコット・ウォーカーのようなソウル系とはまた違ったアーティストからも影響を受けている。例えば “When You Stole The Sun From The Sky” は彼の影響が特に強い曲なんだ。

以前ママズ・ガンの音楽的魅力はジャミロクワイやマルーン5を引き合いにして語られることがありましたが、今回の新作のアプローチはぐっと70年代ソウル寄りでシルク・ソニックと重なるところもあると思います。先日のグラミー賞でも高く評価された彼らの作品をどのように評価していますか?

AP:僕たちの音楽の多くには昔から70年代のアプローチがあったと思うんだけど、いまのプロダクションになってようやく自分たちが思い描いていた音や出したいサウンドが出せるようになったと思うんだ。シルク・ソニックは音楽的には良い選択をしていると思うけど、歌詞が浅くて安っぽいと思うな。ブルーノ・マーズは良い音楽を作る可能性を秘めているということだね……あまり物議を醸すような言い方はしたくないんだけど(笑)。

そのシルク・ソニックがそうであるように、ママズ・ガンも70年代のソウル・ミュージックを単なる懐古趣味にとどまらない現代の音楽として表現することに成功していると思います。その点を踏まえて、サウンド・プロダクションやレコーディング、演奏などの面でどんなところにこだわりましたか?

AP:基本的にすべては曲からはじまるんだ。プロダクションの方向性は曲によって決まる。曲はすべて、僕たちが生きている時代や現代という時代に感じている感情から影響を受けているんだ。だからコンテンポラリーなサウンドになるんだよ。それに、70年代らしいサウンドに現代的なプロダクションを少々加える箇所を見出すことも大切だ。僕たちのサウンドは作曲したパートと楽器をマイクに接続して、その音を録音する特殊な方法によって作り上げられているんだ。

アルバムのリード・トラック “Good Love” はフィラデルフィア・ソウル~シカゴ・ソウル風の軽妙なグルーヴが心地よくたいへん気に入っています。この曲をアルバムの顔になるリード・トラックに選んだ理由、そしてこの曲で打ち出したかったサウンドやメッセージなどについて教えてください。

AP:こんなご時世だからこそ、楽観主義的な姿勢を強く持って自分が恵まれていることを思い出すべきだと考えている。自分の人生には良いことがあるということを認識して、それらに感謝するべきだと思うね。“Good Love” はそういうものをすべて網羅していて、とにかくポジティヴさを高らかに表現にしている。ポジティヴを拒否する人なんていないだろ?

今回の新作中、バンドにとって最もチャレンジングな試みになった楽曲はどれになりますか?

AP:“Go Through It” は、曲の雰囲気を捉えるために演奏を何度か撮り直したからチャレンジングだった。“Looking For Moses” もグルーヴがしっくりハマるように何度か録音したね。

今回の新作はママズ・ガンを新しいレベルに押し上げるキャリア最高傑作だと思います。それを踏まえて、デビュー作の『Routes to Riches』から『Cure the Jones』に至るこれまでの5枚のアルバムがバンドにとってどんな意味を持つのか、各作品を簡単な理由も添えつつ一言で表現してもらえますか?

AP:『Routes To Riches』は明るさ、『The Life & Soul』は急ぎ、『Cheap Hotel』は不確実、『Golden Days』は恐れ知らず、そして『Cure The Jones』は自信。僕たちのサウンドは作曲や音の個性において、かなり落ち着きがないという状態から焦点がしっかりと定まってきた。どんなサウンドにしたいのかというイメージが明確になって、それに自信を持てるようになってきたんだ。こういう変化には時間がかかるけれど、良い方向に向かっていることが自覚できたら、それをじっくり育んでいけば良いと思っている。進化を急かすことなんてできないからね。

バンドの最高傑作といえる『Cure the Jones』を作り上げたことによって得た最大の収穫はなんだと考えますか?

AP:いままで以上に自分の内なる声を信じることだね。

Mamas Gun『Cure The Jones』配信リンク
https://p-vine.lnk.to/G2HIMH

interview with !!! (Nic Offer) - ele-king

 言うまでもなく、パンデミックは世界じゅうのミュージシャンに甚大な被害をもたらした。部屋に閉じこめられた多くの人びとは内省へと向かい、それと関係があるのかないのか、アンビエント作品のリリース量も増えた。あれから2年。欧米ではライヴもパーティもほぼ普通に開催されるようになっている。20年間つねにダンスを追求しつづけてきたNYのパンク・バンド、!!! (チック・チック・チック)の面々はこの期間、どんなふうに過ごしていたのだろう。
 新作を再生すると、アコースティック・ギターが感傷的なコードを響かせている。なじみのある声が控えめに「普通の人びと、普通の人びと」と繰り返している。エネルギッシュなライヴ・パフォーマンスで知られる彼らが、まさか弾き語りに活路を見出す日が来ようとは。まったくコロナ恐るべし……

 嘘だ。2曲めからアルバムはフルスロットルで走り出す。ちょっとしたジョークなのだろう。R.E.M. のカヴァー(というよりはリリックの拝借と言ったほうが近いが)からデンボウ(*)にインスパイアされた曲まで、相変わらずヴァラエティに富んだ内容である。軸になっているのはやはりダンス。!!! がそれを手放すなんてありえない。
 むろん変わったところもある。ドラムマシンの存在感。通算9枚めのスタジオ・アルバムは、かつてなく打ち込みの度合いが高まっている。集まってセッションするのが困難なら、機械を活用するまで。ダンス・パンク・バンドが踊れない時代に突きつけた回答、それが新作『ブルーなままに(Let It Be Blue)』だ。パンデミックの「暗い」思い出を否定することなく、ポジティヴに前へと進んでいこう──ビートルズの曲に引っかけたこのタイトルにはきっと、そんな想いが込められているにちがいない。
 幸いなことに、日本でもだいぶライヴやパーティが復活してきている。先日《LOCAL GREEN FESTIVAL’22》への出演がアナウンスされた !!! だが、ここへ来て単独東京公演も決定した(詳細は下記)。リモートで制作されマシン・リズムに身を委ねた楽曲たちが生のステージでどのように暴れまわるのか、いまから楽しみでしかたない。

* シャバ・ランクスの(反ゲイ感情を含む)問題曲に由来し、その後ドミニカで独自に進化を遂げた、レゲトンの発展形。

普通でいたくないんだけど、普通でいたくないと思うのは他の皆が思っている普通のこと。それって感情の戦いだからね(笑)。ユニークであること、ユニークでありたいと思うことは普通のことなんじゃないかな。雪の結晶と同じさ。ひとつひとつが違って当たり前。それが普通のことなんだ。

つい最近スペインでツアーをされたのですよね。いまだパンデミックは継続中かと思いますが、オーディエンスの状況やパフォーマンスの手ごたえはどうでしたか?

ニック・オファー(以下、NO):すごく良かったよ。久々のコンサートだったから特別感があったし、手ごたえもすごく良かった。パフォーマンスを永遠に続けていたいような感覚だったね。まあ、メンバーのひとりでもコロナにかかったらショウをキャンセルしなきゃっていうプレッシャーはあったけど、その他はいつものライヴと同じように楽しかったし、雰囲気も同じだった。3日だったから、違いを感じる時間もなかったっていうのもあるかもしれない。アメリカに戻って長いツアーをやったらどんな感じなのかな? っていうのはいま俺も気になっているところなんだ。

住まいはいまもニューヨークですか?

NO:そうだよ。

NYはどういう状況なのでしょう? マスクをしている以外は以前のNYに戻りつつあるというような記事も見かけましたが……

NO:ニューヨークって感染者の数も多かったし、アメリカのなかではコロナを気にかけてるほうだとは思うけど、正直いまはもうコロナはあまり影響していないと思う。スーパーとかに行くと、けっこう皆マスクをしていたりするけど、それ以外は前のニューヨークと変わらないね。クラブにいったらワクチンの接種証明のカードを見せないといけないとか、以前と違うのはそれくらい。

前作もヴァラエティに富んでいましたが、今回もだいぶヴァラエティに富んだアルバムに仕上がっています。パトリック・フォードによるトラック、ドラムマシンも印象的です。こういう打ち込み寄りのアルバムに仕上がったのは、ここ2年のパンデミックと関係がありますか? たとえばエレクトロの “Panama Canal” は、ラファエル・コーヘンとマリオ・アンドレオーニのファイル共有から生まれた曲だそうですね。

NO:!!! はエレクトロニックな要素を年々増してきているけど、今回はそれがMAXになっている。やっぱりそれは、バンドとして集まることができなかったから。俺たちはエレクトロニック・ミュージックが好きだし、それは常に !!! のサウンドの要素としては存在していたけど、今回はさらにそれを強化せざるをえなかったんだ。だから逆に、次のアルバムはもっとアコースティックになるかもね。今回は、リモートでエイブルトン・セッションをやりながら曲をつくっていったんだけど、“Panama Canal” もそのひとつ。誰かがまずサウンドを作って、それにまた違うメンバーが自分の音を乗せていく、というのが主な流れだったんだ。

R.E.M. の時代は、皆もっと無知だった。だから、情報を与えられると皆がそれを信じざるをえなかったと思う。でもいまは、皆ある程度知識がある。いまは、陰謀論をつきつけられても、俺たちはそれを信じるか信じないかの選択肢を持ってるんじゃないかな。

今年は “Me And Giuliani Down By The School Yard (A True Story)” から19年、来年で20周年です。最近就任したエリック・アダムス市長はどんな印象の人物ですか? 銃の暴力からの脱却やホームレス問題の解決などを掲げているそうですが。最近は、仮想通貨で給料を受け取るというニュースも話題になりましたね。

NO:俺はあんまりそういう話題はフォロウしてないんだよね(笑)。ジュリアーニよりはマシなんじゃないかな。もちろんエリック・アダムスも大衆が嫌がることをしてはいるんだろうけど。でも、彼なりにニューヨークという街をより多くのビジネスや観光業で潤わせようとはしてると思う。それが俺が望むことかと聞かれたらそうではないけど、彼は彼のやり方でやってるんじゃないかな。完璧ではなくても、ジュリアーニよりマシなのは確か(笑)。ジュリアーニより良くなるのはぜんぜん難しいことじゃないしね(笑)。

“Me And Giuliani” が出た当時は、アメリカやイギリスがイラクに戦争を仕かけていました。いまはロシアがウクライナを侵略中です。今回バイデンはあまり積極的には介入していないように見えます。彼は、米国民からの支持は高いのでしょうか?

NO:俺はあまり政治のことを理解していないから、この質問に答えるのに適してはいないと思う。ニューヨークでは絶対に見ないのに、アメリカの真ん中なんかに行くと、トランプ支持の垂れ幕が掲げてあったりしてさ。俺もびっくりするんだ。それくらい、アメリカ全体がなにを考えているのかはわからない。バイデンの文句を言っているひとたちもいるけど、彼が完全になにかをやらかしたとも思わないし、エリック・アダムスと同じく、彼は完璧ではないけどトランプよりはマシなんじゃないかな。

初めて1曲目を聴いたとき、アコースティックな曲でびっくりしました。まるで違うバンドになったかのような印象を受けました。リスナーにどっきりを仕かけるような意図があったのでしょうか?

NO:そうそう。このアルバムにはサプライズがあるぞってことを知らせるため。あと、気に入らなかったらスキップしやすいとも思ったし(笑)。

同曲は、タイトルどおり「普通の人びと」がテーマの曲ですが、逆にあなたにとって「普通ではない人たち」とはどのような人びとですか?

NO:なにを普通とみなすかがまさにこの曲のテーマなんだ。自分自身でいることへの葛藤とかね。でも、誰だって普通なんだ。みんなそれぞれ違うし、それは当たり前のこと=普通なんだ。皆、最初は似たような希望や夢を持っていて、成長するにつれそれにそれぞれのフィルターがかかってくる。自分自身でありたい、ユニークでいたいという思いは皆が共通して持っている普通の思いだし、イコール、それは他と違う、つまり普通ではないということ。この曲は、その「もがき」について歌っているんだ。普通でいたくないんだけど、普通でいたくないと思うのは他の皆が思っている普通のこと。それって感情の戦いだからね(笑)。そういうわけで、なにが「普通でない」のかは逆にわからない。基本、皆普通だと俺は思ってるからさ。ユニークであること、ユニークでありたいと思うことは普通のことなんじゃないかな。雪の結晶と同じさ。ひとつひとつが違って当たり前。それが普通のことなんだ。

いまUSもしくはNYで「普通の人びと」が最も気にしていること、心配していることはなんでしょう?

NO:難しい質問だな(笑)。たぶん、みんなまた自由を手にして普通の生活を取り戻したいと思ってるんじゃないかと思う。パンデミックでいろいろ学んだし、シンプルなことのありがたさ、すばらしさに気づかされた。だから、皆それを恋しがり、ふたたび手にしたいと思ってるんじゃないかな。皆で集まったりとか、一緒に出かけるとかさ。当たり前だと思っていたけど、それがどんなに特別なことかを知った。俺にとっては、人前でパフォーマンスすることもそのひとつ。以前の普通の生活に戻りたい、それが皆がいちばん気にかけていることだと思う。気候変動とかも心配だけど、パンデミックがまた戻ってくるんじゃないかっていうのがいちばん心配だよね(笑)。

4曲目 “Un Puente” は歌詞も一部スペイン語ですし、サウンドもこれまでになかったタイプの曲と感じ、!!! の新機軸かなと思ったのですが、ご自身たちではどう思っていますか?

NO:この曲は、こないだスペインで演奏したときオーディエンスの皆が一緒に歌ってくれたんだ。あの時間はすばらしかった。俺たちはいつだって新しい領域に足を踏み入れようとしているし、もちろんこの曲もそれを試みた作品のひとつ。この曲が特に影響されているのはドミニカ共和国のデンボウという音楽で、なかでもエル・アルファというアーティストが大きなインスピレイションなんだ。俺たちはポップ・ミュージックが好きなんだけど、ビートルズもプリンスも、ティンバランドもアウトキャストも、ポップの流れのなかである境界線を超え、音が奇妙になる時期があった。ドミニカのポップ・ミュージックは、いまその時期に突入していて、それが俺たちにとってはすごく魅力的だったんだよ。聴いていてすごく楽しかったから、取り入れてみることにしたんだ。

“Man On The Moon” はシングルで先に出ていた曲ですね。ちょうど30年前にリリースされた R.E.M. のこの曲は、なにごとも疑ってかかるひとや、もしくはなにが真実なのかわからないということがテーマの歌かと思うのですが、これをカヴァーしたのは昨今の陰謀論の流行を踏まえてですよね?

NO:正直、なんでカヴァーしたのかは自分たちにもわからない(笑)。そのトラックをつくっていたときに、たまたま思いついて。つくっていたトラックに “Man On The Moon” の歌詞を適当にのせてたんだけど、それがすごくしっくりきて、この曲にこれ以上の歌詞は書けないなと思ったからそのまま使うことにしたんだ(笑)。逆にその歌詞にあわせてベストなサウンドをつくりたくもなったし、やっていてすごく楽しかった。だから理由は陰謀論が流行っているからではないけど、カヴァーをつくっていたとき、20年前にこの曲の歌詞を聴いたときとは時代がぜんぜん違うんだなとは感じたね。昔といまでは陰謀論の捉え方や、なにを信じてなにを信じないかも違っているから。

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自分たちなりのパンクな “Let It Be” って感じかな。パンデミックのことを明確には語らずに、パンデミックについて触れているんだ。「レコードがつくられた2020年に起こった悲劇を、いまは素直に受け入れよう」というのが “Let It Be Blue” なんだよ。

これまであなたがもっとも仰天した陰謀論はなんですか?

NO:ははは(笑)。なんだろうな。月への人類の着陸ってのはけっこうワイルドだと思う(笑)。アイディアもすごいし、その様子を撮影してつくり上げるってすごくない(笑)? あとは、19歳のときにエイリアンが政治に関わってるっていうのを聞いてさ(笑)。そのときはもう興味津々で、それについての本を読んだりもした(笑)。あのときは若かったんだな。本を読んで、そんなの馬鹿げてるとちゃんとわかったからよかったけど(笑)。でも、R.E.M. の時代は、皆もっと無知だった。だから、情報を与えられると皆がそれを信じざるをえなかったと思う。でもいまは、皆ある程度知識がある。いまは、陰謀論をつきつけられても、俺たちはそれを信じるか信じないかの選択肢を持ってるんじゃないかな。10年ごとに、人びとは騙されにくくなっていると思う。アメリカのクリスチャンみたいな宗教やその考え方だって、日に日に解体されてきているし。皆、前よりもなにを信じるかを選ぶ自由を得ていると思うんだ。それってすごく良いことだよね。

現在も、ロシアやウクライナをめぐり真偽が定かでない情報が流れてくることもあります。なにが真実かわからないとき、あなたならどう行動しますか?

NO:俺は、それが真実かどうかを無理やり見極める必要はないと思ってる。SNSで配信されることをそこまで真剣にはとらえていないし、もしなにかをツイッターで見たとしたら、それが本当かどうかは自分でもっとちゃんとしたリサーチをしないと真に受けてはいけないと思ってるしね。まあ、ニュースってどんなニュースももしかしたら真実でない可能性はあると思うし、信じるかは自分次第。俺の場合は、いろいろあるうちのひとつの情報として頭のなかに入れておく程度にしてる。情報が不確かなものが多いから、フォックスニュースやフェイスブックはあまり見ないようにしてるかな。すぐに突き止めようとしなくても、時間をかけてそれが真実かそうでないかを判断してもいいんじゃないかなと俺は思うけどね。

“Let It Be Blue(ブルーなままにしておこう)” というのは、悲しいことやつらいこと、憂鬱なことは無理に忘れようとしないほうがいいということでしょうか?

NO:理由はさまざま。ひとつはビートルズの “Let It Be” の言葉遊び。前にマイケル・ジャクソンの “スリラー” をもじったみたいに。自分たちなりのパンクな “Let It Be” って感じかな。あとは、きみがいったとおり。パンデミックのことを明確には語らずに、パンデミックについて触れているんだ。「レコードがつくられた2020年に起こった悲劇を、いまは素直に受け入れよう」というのが “Let It Be Blue” なんだよ。

ちなみに、わたしは五年ほどまえ東京での取材時にあなたに薦められたのがきっかけで Spotify をはじめたのですが、最近の Spotify についてはどう見ていますか? 利益をアーティストに還元しないという話もよく聞きます。最近はニール・ヤングやジョニ・ミッチェルが曲を引き上げたことも話題になりました。

NO:ニール・ヤングが曲を引き上げたのは良かったと思う。そういうことをするからこそ、俺はニール・ヤングが好きだしね。それは心からリスペクトする。でも俺は、Spotify はプレイリストを交換するのにも便利だし、悪くはないと思う。俺たちだって、他のミュージシャンたちと同様 Spotify に悩まされてもいるのは確か。やっぱりだれかがなにかを完全にコントロールしてしまうのはよくないことだし、Spotify だけが音楽のアウトレットになってはいけないことはじゅうぶんわかってる。そうなってしまったら、それは恐るべきことだよね。だけど、やっぱり便利な部分もあるんだよな。好きな音楽が気軽に聴けるっていうのは事実だし。

振りまわされるのは悪いことじゃない。自分を楽しませてくれるなにかのファンであること、それに影響を受けることは大切なことだからね。ビートルズもボブ・ディランも、ライヴァルでありながら互いに学び合い、ともに成長してきたんだ。俺もその流れのなかにいたい。

あなたたちはプレイリストなどのトレンドとは無縁に、自身の固有のサウンドを追求しています。“Fast Car” や “Man On The Moon” のカヴァーが原曲とは似ても似つかないのもそうです。振りまわされない秘訣は?

NO:振りまわされるのは悪いことじゃない。自分を楽しませてくれるなにかのファンであること、それに影響を受けることは大切なことだからね。でも同時に大切なのは、自分が好きなもののファンであること、影響を受けている理由が、「それが流行っているから」じゃダメなんだ。自分が興奮できるなにかのファンになることが大事。いま俺は、60年代のアーティスト同士が互いにどう影響し合っていたかという本(『The Act You’ve Known For All These Years』Clinton Heylin)を読んでいるんだけど、ビートルズもボブ・ディランも、ライヴァルでありながら互いに学び合い、ともに成長してきたんだ。俺もその流れのなかにいたい。これからの音楽を、他の音楽と影響し合いながらより良いものにできたらと思うんだ。もちろん、オリジナリティを保ちながらね。

最後の曲では「これはポップ」と連呼されます。あなたにとって「ポップ」とはなんですか? あなたにとって最高のポップ・ソング、またはポップのレコードはなんでしょう?

NO:ポップには悩まされたこともあった。ポップはダサいなんて思ってたときもあったけど、結局は、自分が子どものころにいちばん強いつながりを感じていた音楽がポップなんだ。ラジオから聴こえてくる音楽。それが聴きたくてラジオをつけてヴォリュームをあげてた。でも、ニューウェイヴやパンクが出てくると、そういうちょっとポップとは違うものがクールだと思うようになってさ。でも、ときが経つと、ポップを疑う必要はないことがわかった。自分が好きな音楽なら、なんだって受け入れていいんだ、と。俺にとっては、子どものころに直感でつながりを感じ、俺を魅了してくれたのが俺にとってのポップ・ミュージック。聴いていてそのつながりや魅力を感じられる音楽ができあがると、これはポップ・ミュージックをつくったんだ、と思える。そういう子どものころに感じた音楽の魅力を感じさせてくれる音楽はすべて、俺にとっては最高のポップ・ミュージックだね。

通訳:ひとつ選ぶとしたらどうですか?

NO:最高っていうのは選べないから、最近いいなと思ったのを言うと、ロザリアとニルファー・ヤンヤかな。2022年のなかでは、いまのところ彼女たちの作品がいちばんのポップ・ミュージックだと思う。すごく良い音楽だから、チェックしてみて。超ポップで言えば、テイラー・スウィフトも好きだし、ドジャー・キャットが賞をとったのも嬉しかった。ブルーノ・マーズとアンダーソン・パークも好きだしね。自分たちが好きな音楽をつくってるなと思う。あの70年代のソウルの感じが、すごくつくられた感もあるんだけど、それはあえてで、なんか聴いていてすごく楽しいんだよね。どうやってあの魅力がつくりだせているのかは俺にはわからない。でも、彼らの音楽のいくつかはすごくいいと思う。

通訳:ありがとうございました!

NO:こちらこそありがとう! またね。

キャリア25年を超え今もなお最狂!!!
最新アルバム『Let It Be Blue』遂にリリース!!!
LOCAL GREEN FESTIVAL’22出演発表に続き、単独東京公演も決定!!!
グルーヴの旅路の、さらにその先へ導く最狂のライブ・バンド=チック・チック・チックによる、魅せて聴かせる最新ライヴ!!!
主催者先行スタート!!!

史上最狂のディスコ・パンク・バンド、チック・チック・チックによる待望の最新アルバム『Let it Be Blue』がいよいよ日本先行リリース!!! そんな中、さらに嬉しいニュースが到着!!!

昨年、一昨年とGreenroom Festival出演が決定していたにも関わらず、新型コロナの水際対策の影響で来日を果たせなかった我らがチック・チック・チック。しかし遂に先日LOCAL GREEN FESTIVAL’22への出演が発表され、最新アルバム『Let It Be Blue』と共に3年振りに来日しリベンジを果たすことが明らかになった。そしてその発表の熱が冷めやらぬまま、何と単独東京公演が決定! 最新アルバムでは、今までよりミニマルなアプローチを取り入れながらも、ファンク、ディスコ、アシッド・ハウスからレゲトンまで、パーティ・ミュージックをゴッタ煮にしたカオティックでエネルギッシュな音楽性はそのままに、さらにはメランコリック且つほの明るい希望的なフィーリングを同時に持ち合わせ、まさに人々を解放へ導くダンス・ミュージックを展開しさらに磨きがかかった万全の状態だ。最も感染対策が難しいと思わる最狂のライブ・バンドによる、魅せて聴かせる免疫増強ライヴ!? 開催決定!

[公演概要]
!!! (Chk Chk Chk) チック・チック・チック来日公演

公演日:2022年9月5日(月)
会場:O-EAST
開場/開演:OPEN 18:00 / START 19:00

前売:¥6,800(税込) ※別途1ドリンク代
※オールスタンディング ※未就学児童入場不可

先行発売:
4/28 (thu) 12:00~ BEATINK主催者WEB先行(※限定数…Eチケットのみ)
https://beatink.zaiko.io/e/chkchkchk2022
4/29 (fri) 12:00~5/5 (thu) 23:59 イープラス最速先行(抽選)
https://eplus.jp/chkchkchk/
5/7 (sat) 12:00~5/9 (mon) 18:00 イープラス プレオーダー
https://eplus.jp/chkchkchk/

一般発売:
5月14日(土)~
イープラス
https://eplus.jp/chkchkchk/
ローソンチケット(Lコード:74982)
https://l-tike.com/search/?lcd=74982
Zaiko
https://beatink.zaiko.io/e/chkchkchk2022

チック・チック・チック待望の最新アルバム『Let it Be Blue』は、CDとLPが4月29日に日本先行で発売され、5月6日にデジタル/ストリーミング配信でリリースされる。国内盤CDにはボーナストラック “Fuck It, I'm Done” が収録され、歌詞対訳・解説が封入される。LPはブラック・ヴァイナルの通常盤と、日本語帯・解説書付の限定盤(ブルー・ヴァイナル)で発売される。また国内盤CDと日本語帯付限定盤LPは、オリジナルTシャツ付セットも発売される。

label: Warp Records / Beat Records
artist: !!! (Chk Chk Chk)
title: Let it Be Blue

release: 2022.04.29 FRI ON SALE
2022.05.06 (Digital)

国内盤CD BRC697 ¥2,200+税
解説+歌詞対訳冊子/ボーナストラック追加収録

国内盤CD+Tシャツセット BRC697T ¥6,000+税

帯付限定輸入盤1LP(ブルー・ヴァイナル)
WARPLP339BR
帯付限定輸入盤1LP(ブルー・ヴァイナル)+Tシャツセット
WARPLP339BRT

BEATINK.COM:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=12382

TRACK LIST
01. Normal People
02. A Little Bit (More)
03. Storm Around The World (feat. Maria Uzor)
04. Un Puente (feat. Angelica Garcia)
05. Here's What I Need To Know
06. Panama Canal (feat. Meah Pace)
07. Man On The Moon (feat. Meah Pace)
08. Let It Be Blue
09. It's Grey, It's Grey (It's Grey)
10. Crazy Talk
11. This Is Pop 2
12. Fuck It, I'm Done *Bonus Track

interview with Shuya Okino (KYOTO JAZZ SEXTET) - ele-king


KYOTO JAZZ SEXTET feat. 森山威男
SUCCESSION

Blue Note / ユニバーサル ミュージック

Jazz

Amazon Tower HMV disk union

 DJ/プロデューサー/作曲家/クラブ運営者として四半世紀にわたりワールドワイドな活躍を続けてきた沖野修也。その活動母体とも言うべき Kyoto Jazz Massive と並行し、彼は2015年にアコースティック・ジャズ・バンド Kyoto Jazz Sextet も始動させ、これまでに2枚のアルバム『MISSION』(2015)、『UNITY』(2017年)を発表してきた。そして先日、待望の3作目『SUCCESSION』がリリースされたのだが、アーティスト名義は “KYOTO JAZZ SEXTET feat. TAKEO MORIYAMA”。そう、山下洋輔トリオなどで60年代から日本のジャズ・シーンを牽引してきた、あのドラム・モンスター森山威男(1945年生まれ)が、Kyoto Jazz Sextet のドラマー天倉正敬に代わり全曲で叩きまくっているのだ。

 森山ファンにはお馴染みの “サンライズ” や “渡良瀬” といった名曲に沖野が書下ろした “ファーザー・フォレスト” を加えた計7曲には、沖野がずっと掲げてきた「踊れるジャズ」というテーマから逸脱せんとするポジティヴな意志が溢れ、コロナ禍によって変わりつつある世界の今現在のジャズとしての新たなヴィジョンが提示されている。もちろん、これまでの作品のようにクラブでDJが客を踊るせることもできるだろう。が、同時に、自宅のソファに身を沈めてじっくりと聴き浸ることもできる。「匠の技」とも言うべきその微妙なバランス感、匙加減に、DJ/プロデューサーとして沖野が積み上げてきた経験の豊饒さ、感覚のリアルさを改めて思い知らされよう。

 何はともあれ、破格のパワーとグルーヴを堪能すべし。過去から現在、そして未来へとジャズが「継承(SUCCESSION)」されてゆく瞬間を体験できる、格調高い作品である。

僕がやってきた踊れるジャズをベースに、どうやって森山さんを引き入れるか。いったん踊れることを実現させた上で、どうやって逸脱していくか。踊らせたいけど同時に聴かせたい曲をどこに着地させるか。そこの格闘はなかなか痺れるものがありました。

森山威男さんは昨年11月20日の《Tokyo Crossover/Jazz Festival 2021》にゲスト参加し、それと前後してこのアルバム『SUCCESSION』の録音にも参加したわけですが、あのイヴェントに森山さんが参加した経緯から話していただけますか。

沖野:新木場の STUDIO COAST の閉館に伴い、クラブ・イヴェント《ageHa》もなくなるということで、昨年7年ぶりに《Tokyo Crossover/Jazz Festival 2021》の開催が決定したのですが、コロナ禍で海外勢は呼べる状況ではない。でも、日本人の出演者だけでやる以上、海外のファンが絶対うらやましがるようなラインナップにしたいと思いました。それで、目玉となるヘッドライナーを誰にするか考えた時に思い浮かんだのが森山さんでした。誰もが知っているジャズ・レジェンドであり、近年はイギリスのレーベル〈BBE〉から『East Plants』(83年)も再発されたし。あと、KYOTO JAZZ SEXTET のトランペットの類家心平が、以前森山さんのバンドでも吹いていた。これはもう森山さんしかいないなと。「KYOTO JAZZ SEXTET featuring 森山威男」にすれば、海外のジャズ系リスナーやクラブ・ミュージック好きはきっと注目してくれると思っていました。

マーク・ジュリアナとか、ここ近年のドラマー・ブームみたいなのも関係あったのかなと思ったんですけど。

沖野:まさにご指摘の通りで。ロバート・グラスパー周りとか、今、ドラムがジャズのイニシアティヴを握っているというイメージが世界的に広がりつつあるじゃないですか。「打ち込みを生で再生しているドラマー、すげー」みたいな。日本でも若いリスナーが「新しいジャズはドラマーだ!」みたいに言ってて(笑)。もちろん僕もそういった側面を否定しないです。でも、ベース・ラインとかコード進行とか、ドラマー以外のミュージシャンが醸し出す現代性や革新性も僕は常に意識しているし、プロデューサーやヴォーカリストも含めて、総合的に進化していると思っているわけで。そういった状況下で、レジェンドのドラマーを引っ張り出すのって、言わば逆の発想ですよね。KYOTO JAZZ SEXTET の上物というか、コード楽器や管楽器がオーセンティックなジャズで、ドラマーが今っぽい若手という選択肢もありましたが、それは他の人がやっているから、あえて逆にレジェンドを起用して、更に強烈な現代感覚を僕らは表現できるんですよ、というトライだったわけです。

なるほど。

沖野:やる前は、ひょっとすると森山さんワールドに僕らが持っていかれて、いわゆるメイン・ストリームのジャズになる可能性もあったし、はたまたフリー・ジャズになってダンス・ミュージックと完全に乖離してしまうという可能性もあった。どうやってジャズの現代性を表現するか、どうやって KYOTO JAZZ SEXTET らしさを出せるか、それは僕にとっても挑戦ではありました。

今、「ダンス・ミュージックと乖離する」とおっしゃいましたが、ということは沖野さんとしては今でもやはり根底には、自分達は踊れるジャズ、ダンス・ミュージックをやっているという意識があるんですね?

沖野:ベースとしてダンス・ミュージックはありますけど、今はむしろそこから離れてみたいという思いに駆られています。特に KYOTO JAZZ SEXTET はその方向性が強いですね。KYOTO JAZZ MASSIVE はやっぱりダンスありきですけど。KYOTO JAZZ SEXTET はむしろ踊れなくてもいい、もしくは踊れない方向にどんどん踏み出していきたいという気持ちが強いです。

権力との闘争なのか、メーカーとの闘争なのか、ミュージシャン同士の闘争なのか、わかりませんが、そういうぶつかる感じは若い世代のジャズ・ミュージシャンにはない。サラッとしてるというか、スマートというか。

実際に去年11月に初めて森山さんと共演した時の素朴な感想、印象を聞かせてください。

沖野:そうですね……初めてスタジオでお会いした時、僕が思っていたのと違って、森山さん、慎ましいというか、とても遠慮がちで(笑)。コロナ禍でライヴが2年間なく、全然叩いてなかったので、引退も考えられたそうなんですよ。もちろんカリスマ性というか、レジェンドに会ったという感動はありましたが、レコードでのプレイから感じていたエネルギーみたいなものは、お会いした瞬間はなかった。小柄で、とても寡黙な方だし。ところが、ドラム・ブースに入って叩き始めた瞬間に僕らの懸念は一気に吹き飛びました。リハーサル段階からものすごい音量、ものすごい手数で。音の洪水というか。アート・ブレイキーのドラムがナイアガラの滝に例えられますけど、本当に滝が流れ落ちるような状態で。メンバー全員で滝に打たれる修行、みたいな(笑)。

滝行(笑)

沖野:びっくりしましたね。2年間叩いてないって嘘でしょ、と。とにかく音がすごかった。1音目からすごかったです。

今回のアルバムでも、いきなり1曲目 “Forest Mode” の、特に後半なんてすごいですよね。

沖野:そうなんですよ。録音にもそのまま入っていますが、レコーディング中に雄叫びを上げて。あの小さな体から、これだけのパワーがどうやって出てくるのかな、と。衝撃でした。多分いつも一緒に演奏している方は、それが森山さんだという認識があるんでしょうけど。

ライヴやレコーディングでの森山さんの反応はどうでした?

沖野:ご自分でも仰ってましたが、本当に対等の目線でセクステットのメンバーと真剣勝負してくださって。ワンテイクの曲もいくつかありましたが、曲によっては森山さんが全くOKを出さず、これは違うと言って何度かやり直したんです。実はセクステットの過去2枚のアルバムでは採用テイクは全部ファースト・テイクでしたが、今回の3枚目では初めて、ファースト・テイクが採用されなかった曲がいくつもあります。

具体的には?

沖野:ワンテイクでOKだったのは⑤ “サンライズ” と⑥ “渡良瀬”、⑦ “見上げてごらん夜の星を” の3曲だけで、それ以外は森山さんが納得いくまでやりました。たとえば④ “ノー・モア・アップル” では、納得するリズム、納得するテンポが見つからないと森山さんが言って。あと、メンバーとのコンビネーションの問題とか。これじゃダメ、これじゃダメと何度も仰って。体力的に大丈夫なのかなとか、こっちはいらぬ心配をしましたが、森山さんが妥協されることはなかったですね。これでどうでしょう? と言っても、いやー違う、正解が出てない、と。

沖野さん以下メンバーの方では、どこがまずいのかな、と戸惑う感じですか?

沖野:いや、しっかりコミュニケーションをとりました。森山さんがノレるテンポとかグルーヴ、考えているアレンジと、メンバーが一番実力を発揮できるテンポなりリズムなりグルーヴなりの接点をどうやって探すかという。もう一回音を出してなんとなくやりましょう、ではなくて、問題点が速度のことなのかリズムのことなのか、誰かの演奏なのか等々をとことん話し合った上で次のテイクに臨むという感じで。

じゃあ、レコーディングはけっこう苦労されたんですか?

沖野:とはいっても、《ageHa》の本番前の2日間で録ったので、想定内です。森山さんが加わっての僕なりのクラブDJ的グルーヴ感というか理想の照らし合わせというか、森山さん曰く「激突」みたいな部分では、苦労したというより非常に興味深かったです。だって僕は元々森山さんの曲をDJでかけていたんですから。僕がやってきた踊れるジャズをベースに、どうやって森山さんを引き入れるか。いったん踊れることを実現させた上で、どうやって逸脱していくか。踊らせたいけど同時に聴かせたい曲をどこに着地させるか。そこの格闘はなかなか痺れるものがありました。

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KYOTO JAZZ SEXTET feat. 森山威男
SUCCESSION

Blue Note / ユニバーサル ミュージック

Jazz

Amazon Tower HMV disk union

日本のジャズ・ミュージシャンは、50~60年代からやってる人たちと今現在の若手では感覚もノリも気質もかなり違う気がしますが、いかがですか?

沖野:あくまで僕の主観ですが、上の世代のジャズの人って、それこそアメリカと日本とか、メジャーとマイナーとか、闘争の歴史から音を紡ぎ出していたと思うんです。でも僕らの時代って、そういうカウンター精神はあまりない。若いジャズの子たちもスルッとメジャーに行ってブレイクしたりする。闘うことの是非はともかく、あまりないのかなというのは感じます。権力との闘争なのか、メーカーとの闘争なのか、ミュージシャン同士の闘争なのか、わかりませんが、そういうぶつかる感じは若い世代のジャズ・ミュージシャンにはない。サラッとしてるというか、スマートというか。

ですよね。端的に言うとあの世代の日本のジャズ・ミュージシャンは、全てが喧嘩という感じがするんですよ。話しててもそうだし、音聴いてもそうだし。つまり、喧嘩にこそ意義があるというか、まず喧嘩しなくちゃ始まらないというか。それがまた面白さでもあるんだけど。そういった根本的な感覚のズレみたいなものは今回はなかったですか?

沖野:いや、僕が知っているジャズ・レジェンドの中では森山さんは人間的にかなり柔和だし。ただ演奏は完全に喧嘩でしたよ。《ageHa》のライヴDVDを観ていただくとわかりますが、お互いがかなりやり合っていて。特にフリー・ジャズ・パートでは、それこそ僕もカウベルやウィンドチャイムを叩きまくり、シンセサイザーの効果音で森山さんを煽りまくって。普段、僕のようなDJ/プロデューサーがライヴに絡むのは難しいのですが、本当に喧嘩状態でした(笑)。とにかく森山さんは、予定調和はダメだとずっと仰っていました。僕らもどうやって森山さんに仕掛けていくかというのが、メンバー間のミッションでしたね。

77歳でこのオファーをもらい、《ageHa》でやれて、生きててよかったよ」という森山さんの言葉を聞いて、20年後の自分にだって生きててよかったと思う可能性があるはずだという気持ちになりましたし。本当に今回は、ミュージシャンとしてだけでなく人間として森山さんからは影響を受けました。

沖野さん自身は、森山さん世代のそういった「出会い頭の即興的な喧嘩」というものに憧れがあったりしますか?

沖野:ありますね。僕は多分、ジャズDJと呼ばれる人たちの中でもそこに一番憧れがある一人だと思います。後でリミックスしやすいようにクリックを鳴らして安定したテンポで録りたがるプロデューサーもいますし、インプロは踊れないからとカットしてテーマだけでつなぐジャズDJもいる。でも僕はやっぱりインプロがあってなんぼの世界だと思うし、想像もしなかった録音が実現した時の喜びも何回も体験してきたわけで。森山さんが今まで感じてきたことや積み上げてきたこと、森山さんだけが見てきた景色が絶対あるはずです。そういった経験から僕たちに投げかけられる疑問や挑戦や挑発は、他では絶対に味わえないものでしょう。50~60年代からやってきた人たちの出す音の説得力や迫力ってやっぱり違うと思うんですよね。技術だけでなく、ここでそういくか!?  という想像を超えた表現力はレジェンド・クラスになると別格ですね。

今のコメントがこのアルバムのタイトル『SUCCESSION』(継承)をそのまま表現してるような気がします。

沖野:そうなんですよ。うちのメンバーだけではこういう作品にならなかったと思います。僕たちが知っているつもりで実は知らなかった表現方法とか、ジャズとは何かという、音による説得力をこのレコーディングとライヴでは学びましたし、それを更に僕らが継承して次の世代に伝えていかなくてはと思いました。あと、「77歳でこのオファーをもらい、《ageHa》でやれて、生きててよかったよ」という森山さんの言葉を聞いて、20年後の自分にだって生きててよかったと思う可能性があるはずだという気持ちになりましたし。本当に今回は、ミュージシャンとしてだけでなく人間として森山さんからは影響を受けました。

近年は海外でも日本の様々な音楽が注目されています。60~70年代の日本のジャズの人気も高まっていますよね。

沖野:元々、日本のフュージョンやジャズは、海外のマニアの間では人気があったんです。僕だって最初は、ジャイルズ・ピーターソンを含むロンドンの友人やDJ、ディストリビューターなどから教えてもらって日本のジャズの魅力に気づいた人間ですし。

それはいつ頃のことですか?

沖野:25歳くらいだから、今から30年ほど前です。でも、ここ数年の盛り上がりはちょっと違いますね。層が変わってきたというか。ロバート・グラスパー人気やサウス・ロンドンのジャズの盛り上がりとかもあって、若い世代のジャズ・リスナーの規模全体も大きくなっているし。お父さんがディスコのDJで生まれた時からレコードがいっぱい家にあったとか、お母さんがアシッド・ジャズ大好きで子供の頃からブラン・ニュー・ヘヴィーズを聴いてましたとか、そういう20代のジャズ・ミュージシャンやDJもヨーロッパ中にたくさんいます。今の若い子たちにとっては、トム・ミッシュクルアンビンサンダーキャットなどが、僕らが若かった30年前のジャミロクワイやブラン・ニュー・ヘヴィーズなわけです。で、トム・ミッシュやサンダーキャットなどは、多分僕らがかけてきた音楽、僕らがやってきた音楽を好きだと思う。つまり、今は二重のレイヤー、昔からのリスナーと若いリスナーが混在し、層が分厚くなっているんです。今はその両方の層に日本のジャズが受け入れられているんじゃないかな、というのが僕の分析です。

アメリカ大統領の娘さんが KYOTO JAZZ MASSIVE とか KYOTO JAZZ SEXTET のファンだったとしたら、「お父さん、日本に核兵器落とさないで、私の好きなシューヤ・オキノがいるから」みたいになるかもしれないじゃないですか。極端な例ですけど(笑)。

昔の日本のジャズのどういった点に面白さを感じるのか、そのポイントは、外国人と日本人では微妙に違うと思いますが、沖野さん自身は、日本の当時のジャズの、欧米ジャズと比べた場合の面白さ、特殊性についてどのように考えていますか。

沖野:まずは、メロディーの独自性ですね。論理的説明は難しいのですが、民謡とか童謡などのエッセンスが作曲家の潜在意識の中にあると思います。あと、使用楽器によるエキゾチシズムというのもあるんじゃないかな。60~70年代には和楽器を導入する実験も盛んにおこなわれていたし。海外のDJからも、メロディーのことはよく言われます。すごく日本ぽいと。日本のメロディーはシンプルでわかりやすいんだと。それはきっと、母音が連なる日本語の特性とも関係していると思いますね。あと、演奏テクニックが素晴らしいというのもよく言われます。それはフュージョン系の作品を指していると思いますが。

昨年(2021年)暮れに KYOTO JAZZ MASSIVE の久しぶりのアルバム『Message From A New Dawn』も出ましたが、ここで改めて KYOTO JAZZ MASSIVE と KYOTO JAZZ SEXTET の立ち位置の違いを簡単に説明してもらえますか?

沖野:KYOTO JAZZ MASSIVE は、僕と弟(沖野好洋)の合議制によるダンス・バンド。演奏の中にジャズもフュージョンもテクノもファンクもソウルも入った、よりハイブリッドなダンス・バンドです。KYOTO JAZZ SEXTET は、僕のプロデュースのジャズ・バンドで、踊れることは特に目的にはしていません。

今日のインタヴューでも何度か「踊れるジャズ」「踊ることを目的としないジャズ」という対比がありましたが、踊れない/踊らないというのは、この2年間のコロナ禍の状況も関係あるのかしら?

沖野:関係あると思います。僕自身のことも含め、この2年間家にいて、リスニング体験を楽しむ人が劇的に増えたと思います。アルバムの中から踊れる曲を1~2曲ピックアップして繋いでいくDJの僕ですら、家ではアルバム1枚かけっぱなしです。踊れる踊れないに関わらず、自分が好きな作品を通して聴くという風にリスニング・スタイルが劇的に変化した。KYOTO JAZZ SEXTET のこの新作がこの内容、構成になったのも、家で日本のジャズのアルバムを針置きっぱなしで聴き続けたことが影響していると思います。だからひょっとすると、コロナ前に森山さんとやっていたら、全編踊れるジャズになっていたかもしれない。でもコロナ禍を経て、踊れる曲ですら、聴いて楽しんでもらえるんじゃないかな、という期待もあります。同時に、僕が踊れないと思った収録曲も別のDJがダンス・ミュージックとして再発見してくれるんじゃないかという楽しみもある。今までの KYOTO JAZZ SEXTET 以上に、リスナーにとっての音楽聴取の自由度を上げる作品になったんじゃないかなと。僕自身、解き放たれた感じなんです。

沖野さんは文筆家でもあるし、Twitter でも積極的に発言されています。普段から政治意識、社会意識が強い方ですよね。社会の中でのDJ/音楽プロデューサーとしての自分の役割をどのように考えてますか?

沖野:やっぱり世代と国境を越える、というのが自分のミッションだと思っていて。

それは最近に限らず、以前からずっと?

沖野:そうです。自分の音楽を違う国の人に聴いてほしいし、上の世代とも若い世代ともコラボレートしていきたいと思ってきました。そういう気持ち、そういう音楽は偏見や憎悪から人の意識を解放する働きがあると思うんですよ。60~66年の〈ブルーノート〉作品のカヴァー・ワークだった1stアルバム『Mission』(2015年)は、アメリカと日本のジャズの関係というのが自分のテーマでしたが、僕のオリジナル曲で構成された2作目『Unity』(2017年)は、平和とか調和とか、結構ポリティカルなことを自分なりに表現したんですよ。だからヴォーカリストにも、歌詞はそういう趣旨で発注しました。世代、国籍、人種を超えるというメッセージを音楽で発信して、この世界がより良くなることに少しでも貢献できたらいいかなとは考えています。

実際に今まで活動してきて、多少なりとも実効力があったと思いますか?

沖野:日本人に対するイメージの変化に、微力ながらも貢献できたかなとは思います。もちろん坂本龍一さんとか北野武さんとか、サッカー選手や野球選手の活躍ありきですよ(笑)。ありきだけど、実際僕がDJとして行くことで、様々な国の人が一か所に集まったりした。音楽大使と言うとおおげさですが、世界平和への貢献実績はゼロではないと思います。時々冗談で言うんですが、アメリカ大統領の娘さんが KYOTO JAZZ MASSIVE とか KYOTO JAZZ SEXTET のファンだったとしたら、「お父さん、日本に核兵器落とさないで、私の好きなシューヤ・オキノがいるから」みたいになるかもしれないじゃないですか。極端な例ですけど(笑)。音楽とか文化が持っている力は侮れないと僕はずっと思ってきました。微力ではあるけど、これからも世代と人種と国境を越えることをテーマに音楽を作り続けていきたいですし、世界を旅していきたいです。

 

[LIVE INFORMATION]

KYOTO JAZZ SEXTET feat. 森山威男
~New Album “SUCCESSION” Release Live

2022年5月26日(木)ブルーノート東京
www.bluenote.co.jp/jp/artists/kyoto-jazz-sextet

FUJI ROCK FESTIVAL’22 出演
2022年7月30日(土)新潟県 湯沢町 苗場スキー場
https://www.fujirockfestival.com/

[RELEASE INFORMATION]

沖野修也率いる精鋭たちとレジェンダリー・ドラマーの劇的な出会い。
日本ジャズの過去と現在を繋ぎ、その延長線上にある明日を照らし出す。

●ワールドワイドな活動を展開するDJ/楽プロデューサー・ユニット、Kyoto Jazz Massive の沖野修也が2015年に始動させたアコースティック・ジャズ・ユニット、KYOTO JAZZ SEXTET。単なる懐古趣味にとどまらず、“ジャズの現在” を表現することをコンセプトとし、これまでに『MISSION』(2015年)、『UNITY』(2017年)という2枚のアルバムを発表しました。
●5年ぶりの新作では、ジャパニーズ・ジャズ・ドラムの最高峰、森山威男を全面フィーチャー。両者は2021年11月20日に新木場ageHa@STUDIO COAST にて開催された Tokyo Crossover/Jazz Festival 2021 にヘッドライナーとして出演し初共演。世代を超えた気迫みなぎるコラボレーションで、オーディエンスを圧倒しました。
●アルバムには、クラブ・ジャズ・リスナーにも人気の森山の代表的レパートリーに加え、沖野修也書き下ろしの新曲「ファーザー・フォレスト」を収録。オール・アナログ録音による骨太でダイナミックなサウンドも魅力です。

artist: KYOTO JAZZ SEXTET feat. 森山威男
title: SUCCESSION
label: Blue Note / ユニバーサル ミュージック

KYOTO JAZZ SEXTET
類家心平 trumpet
栗原 健 tenor saxophone
平戸祐介 piano
小泉P克人 bass
沖野修也(vision, sound effect on 渡良瀬)
featuring
森山威男 drums

Produced by 沖野修也 (Kyoto Jazz Massive)
Recorded, Mixed and Mastered by 吉川昭仁 (STUDIO Dedé)

tracklist:
1. フォレスト・モード
2. 風
3. ファーザー・フォレスト
4. ノー・モア・アップル
5. サンライズ
6. 渡良瀬
7. 見上げてごらん夜の星を

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