「You me」と一致するもの

Maria Minerva - ele-king

 音楽的にも、そして文化的にも、今日のシンセ・ポップがたんなる"リヴァイヴァル"ではないことを証明する1枚で、まだレヴューしていないけれど性文化への揺さぶりという点では、リル・Bの『アイ・アム・ゲイ(アイム・ハッピー)』とも共振するアルバムなんじゃないかと解釈する......。
 ロサンジェルスの〈ノット・ノット・ファン〉レーベルが揺さぶりをうながすようなレーベルだ。低俗を装いながら、実験的でアーティで、ぶっ飛んでいるようで思想をほのめかす。「正解」を振りかざすような暴君から1億光年離れたところで、作品性という観点から言っても自由気ままにやっている。エストニア系のマリア・ミネルヴァ(音楽評論家の娘らしい)の音楽も、そうしたDIY音楽の今日的な自由のなかで生まれたひとつだと言えよう。

 『キャバレ・シクスー』――これはパリに「女性学センター」を立ち上げた先駆的なフェミニスト、エレーヌ・シクスーにちなんだタイトルだが、マリア・ミネルヴァは性(ジェンダー)の問題、つまり「男らしさ」「女らしさ」というこの手の変革可能な人工物の問題にを主題にしている。そして、『キャバレ・シクスー』にはタイトルが言うように、彼女のキャバレ・ヴォルテール(ポスト・パンク時代におけるダダ中毒)へのシンパシーとポスト・ライオット・ガールとしての視座、そしてポップへの情熱(アバのカヴァー)が詰まっている。
 それは彼女が『FACT』マガジンのために提供したミックスの選曲にも表れている。L.A.ヴァイパイアーズとクリス&コージー、ホアン・アトキンス(コズミックなデトロイト・テクノ)、シェ・ダミエ(セクシャルなシカゴ・ハウス)のトラックが並べられるそのミックスは、彼女の野心的な折衷主義、それから性文化への挑発と前向きさがよく出ている。
 『キャバレ・シクスー』を喩えれば、"ナグ・ナグ・ナグ"とベスト・コーストの残響音の融合、そしてファンカデリックとリー・ペリー、そしてドリーム・ポップとシカゴのゲイ・ハウスがブレンドされているようなズブズブの音で、この官能と皮肉が混じった彼女の型破りな音楽からは社会派と言われている音楽が見落としがちな自由を感じる(収録曲の"Soo High"のソフト・ポルノを用いたPVも面白い)。「居ることができる家があるというのに何故、出るの?」と、彼女はインナーで簡潔な言葉を用いてリスナーに問うている。「何故、安全な場所からわざわざ出たがるのかと、私は尋ねる。部屋に居ることができるのに、何故、こんな下世話な音楽を一晩中聴くんだろう。私の大好きな歌を聴いて下さい」
 マリア・ミネルヴァは今年〈NNF〉のサブレーベル〈100%シルク〉からも12インチ(しかもユーロビート!)を発表している。また、〈NNF〉からカセットテープでもう1枚のアルバムも出している。そっちの『Tallinn At Dawn』は、彼女の実験色がより強く出ている。

interview with Amanda Brown - ele-king

 その奇矯なエロティシズム、挑発的でビザールなヴィジュアル、ノイズ、ドローン、アンビエント、ダブ、ファンク、それから低俗なディスコまでもがミックスされる奇異な音楽性、混乱、混乱、また混乱、キッチュ、キッチュ、またキッチュ......あるいはヴァイナルとカセットで限定リリースされる大量の作品群(たとえば2005年の1年だけでも20枚以上の作品を限定リリースしている)。2004年にはじまったロサンジェルスの〈ノット・ノット・ファン〉は、現在リスナーにとってもっともミステリアスなレーベルのひとつである。
 アマンダ・ブラウンはレーベルの創始者のひとりだ。彼女は......強いて喩えるのなら、ポスト・ライオット・ガールを代表する存在、ないしはUS ローファイ・アンダーグラウンド・シーンにおけるリディア・ランチ(ないしはマドンナ)のごとき存在である。彼女は政治的にも性文化的にも、そして社会的にも、旧来のコンテクストに組まれることを拒むかのように自由気ままに活動している。
 アマンダ・ブラウンは、この5年は、レーベルの看板バンド、ポカホーンティットとしても何枚もの作品を発表し続けてきた。昨年はメンバーのひとり、ベサニー・カンテンティーノがバンドを脱退(ベスト・コーストとしての活動をはじめたため)、残されたアマンダ・ブラウンはL.A.ヴァンパイアーズと名義を変えてあらたな道を進んでいる。
 2011年は12インチのダンス・ミュージックに的を絞ったサブレーベルとして〈100%シルク〉をスタートさせ、すでに11枚ものシングルをカットしているが、これが日本でも人気がある。数が少ないというのもあるが、わりとすぐに売り切れる。だいたい、ヒップホップ系、ハウス系、そしてインディ・ロック系のDJが同時に注目するようなレーベルはそう多くはない。もっともそれ以上に興味深いのは、ゼロ年代のUSアンダーグラウンドにおけるノイズ/ドローンがミラーボールがまぶしいディスコの世界へと到達したという事実である。男性的な実験音楽の世界に揺さぶりをかけるように、アマンダ・ブラウンはユーロビートとポルノをそこに持ち込む(マリア・ミネルヴァにもそれがある)。
 『WIRE』誌の表紙を飾り、いよいよヨーロッパでその評価を高めている〈NNF〉レーベルにメールを送ったところ、返事はすぐに来た。「私はアマンダ! 質問を待っているわ」

女性はアンダーグラウンド・シーンでもっと評価されるべきなのよ。音楽のメインストリーム世界では女性をよく見る。稼ぎ手、ビジネス権力者、トレンドセッターといったところでね。しかしアンダーグラウンドの世界では、ショーにいる大多数は男性なのよ。

今回、メール・インタヴューを引き受けていただき、ありがとうございます。ヨーロッパ・ツアーはいかがでしたか?

アマンダ:いや、結局ヨーロッパにはいかなかったんだけど、オーストラリアにいたわよ。とくに興味もなかったし、オーストラリアに行くなんてまったく思っていなかったのに、そしてそのツアーで、私の人生最高の音楽経験をするなんて、おかしいわよね。私は新しいセットをプレイするのに、とても緊張していたわ。でも、都市のバイブやエネルギーが自分のパフォーマンスをインスパイアして、はっきりいってオーストラリアでいちばん良いショーをすることができたのよ。

あなたの〈100%シルク〉レーベルが日本のアンダーグラウンド・シーンで人気なのは知ってますか? ヒップホップ系、ハウス系、そしてインディ・ロック系のDJが買っているんですよ。

アマンダ:それは素晴らしいわ。欧米のミュージシャンにとってのゴールは日本で愛されることだよ思うのよ。日本人は何か、すばやくて、強烈で、アートへの情熱に満ち溢れているように思う。もし日本に行って、DJが〈シルク〉のレコードを回しているのを聴いたら、驚くでしょうね。

あなたのレーベル〈NNF〉のどれもが独特の音だし、いくつかのリリースは実験的です。まずはあなたの歴史から教えてもらえますか?

アマンダ:私はロサンジェルスに80年代初頭に生まれた。実を言うとね、音楽を演奏することには、そこまで興味がなかったのよ。ずっとライターになりたいと思っていた。その学位を取って、芸術のアウトレットとして続けていくものだと思っていたわ。音楽は別の方向から何となくやって来たのよ。ブリット・ブラウン(Robedoorとして数多くの実験作品を出している)と私はデートをしていて、彼はカシオとギターを持っていた。私たちはそれを面白おかしく使い、曲と歌詞を書いて遊んでいた。私たちは、この初期の空想を、大きな規模になったけど、まだプレイし続けているのだと思うわ。

どんな10代を送りましたか?

アマンダ:いわゆる変人よね。普通に学校に通っていたけれど、 同時にモヒカンで口にピアスをしていたという意味でね。

パンクに少し脱線した優等生ですか?

アマンダ:私はパンクではなかったのよ。R&Bやヒップホップが好きだったの。異常者でもなかった。私はただたんにクールでいたかったし、いまもそうなのよ。

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真面目な話、ドラッグの影響はないわ。ドラックは退屈で、興味を持ったことがないの。外の世界では私はかなりのストーナーだと思われているのかもしれないけど、それは私ではない。

あなたにとっての音楽とは何でしょう?

アマンダ:私は音楽を作るってことよりも、まずは音楽の大ファンなのよね。インスパイアされる、すばらしいアーティストと仕事をするのが好きなのよ。すばらしい音楽に圧倒されるのが好きだし、ダンスするのも好きよ。

音楽はどうやって学んだんですか?

アマンダ:いや、まったく学んでないわ。

ブリット・ブラウンとはどのように〈NNF〉レーベルをはじめたんですか?

アマンダ:ブリットはファッション雑誌の仕事の私の上司だったのよ。私は、彼と出会ったとたんすぐに好きになったの。彼が私を好きになるまでは時間がかかったけどね(笑)。そして私たちはレーベルをスタートしようと思い立った。それがフルタイムの感情になるなんて考えてもいなかったけど。「音楽を作っている友だちがいて、私たちには彼らをサポートするお金がある。じゃあ、レコードを作ろう(let's make a record!)」、こんな感じだったのよ。

〈NNF〉レーベルのポリシーについて教えてください。

アマンダ:ブリットと私が音楽とアーティストが作るモノを信じているということだけ。信頼と真実は私たちにとって大きいのよ。ファンが私たちがいままでリリースした作品についてどう思っているのか、すべて知っているわけではないけれど、私たちは音楽が好きで、アンダーグラウンドへの愛にふさわしい、という信頼を持たれるべきだと思っているわ。私たちは流行先導者ではないけれど、強い意見と特有なテイストを持っている。もし私たちが、あなたが「いけている」と思ったら、あなたも仲間よ。

レーベルはなぜヴァイナル、カセット、あるいはCDRでリリースするのですか?

アマンダ:CDRは触れたりプレイしたり聴いたりするには楽しいものではないわ。まず美学的に面白くないし、メディアとして記憶に残るものでもない。

CDを嫌っている理由は?

アマンダ:傷がつくし、ケースは壊れるし、たったひとつのシミでスキップするし、かなり迷惑よね。

ちなみに〈Not Not Fun〉というレーベル名はどこから来たんですか?

アマンダ:これは昔私がよく言っていた言葉で、まぬけ風に使ってたのよ。最悪と、そんなに楽しくないの中間ぐらいの意味よ。

あなたは長いあいだポカホーンティットとして活動してましたが、このバンドはどうやって生まれたんでしょう?

アマンダ:まずね、「ポカホーンティットというバンドをはじめた夢を見たのよね」と、私がベスアニー(現、ベストコースト)にかけた電話からはじまっている。いま聞いたらバカみたいだけど、本当の話よ。ベスアニーは素晴らしい声を持っているわ。私には、彼女の歌があり、言葉に表せないほど至福があって、ディストーションのギターがなり響く......というバンドのヴィジョンがあった。ラッキーなことに、彼女は私の空想を満足させることが好きだったのよ。

初期の音はノイズ/ドローンでしたよね。これは何の影響なんですか?

アマンダ:正直言うけど、直接影響を受けているものはない。あなたが聴いているのは、(ノイズ/ドローンというよりも)アマンダとベスアニーが純粋に即興している音なのよ。私も彼女もドローン音楽を聴いたことがない。私はファンクやダブ、ビョーク、シャーデー、ア・トライブ・コールド・クエストが好きで、彼女はビリー・ジョエル、スプリングスティーン、ブリンク182、ビーチ・ボーイズが好きだった。どこから私たちの音楽が来たのかわからないけど、私たちのあいだで何か生まれたんでしょうね。

すごくサイケデリックな音楽だと思うんですけど、何を目的として作られたんでしょう?

アマンダ:目的は、私たちの友情、女らしさ(femininity)、ユーモア、そして創造性を祝うために接合することだった。それはともに、私たちの時代のタイムカプセルだった。注目されはじめたとき、私たちは自分たちの幸運を信じることができなかったわ。

ドラッグ・カルチャーからの影響はありましたか?

アマンダ:いいえ、真面目な話、ドラッグの影響はないわ。ドラックは退屈だし、興味を持ったことがないの。外の世界では私はかなりのストーナーだと思われているのかもしれないけど、それは私ではない。

〈NNF〉の初期のウェアハウス・パーティについて教えてください。

アマンダ:ロサンジェルスでは大きなフォロワーはつかなかったけどね。ほとんどのパーティは75~100人規模で、それ以下のときもたくさんあるほど親密だったわ。自分たちが何かかっこ良くて特別という感覚だったし、そんなにたくさんの人に気づかれなかったということでもある。正直言って、私たちはいつでもこれで良かったのんだけどね。

2010年のポカホーンティット名義の最後のアルバム『Make It Real』はダビーで、ユニークなビートを持った作品でした。Pファンクのようなアートワークも面白かったし、そのファンキーな感じとか、それ以前のポカホーンティットとは別物というか......。

アマンダ:バンドが5人編成に変わるということはすべてのジャンルにおいて、かなりの変化なのよ。部屋に5人の人間がいるということは、ドローン音楽やアンビエント音楽にはエネルギーが高すぎるの。生のドラマーがいて、ファンキーなベース・プレイヤーがいて、それで突然、こんなグルーヴィーでサイケ・ワールド・ビート・アンセムを書いたのよ。リスナーに、よりアカデミックな音楽を......という初期のヴァージョンとは違って、私たちは人びとを動かしたかったし、自分たちも動きたかったの。私は自分の歌詞を信じると言うことにも気づいたし、何かモットー(従来の物語より深い自己表現)のようなモノに変えた。

あなたのなかにそのような進化があったんですか?

アマンダ:私たちは新しい方向に行こうと意図的に発展した。どんなリスナーにむけてもまったく違う経験ができるように、古い音を洗い流すという、重大な意図を持って、何か震える、新しいものを作り出そうとした。私たちに1日目から最後の日までファンがいることを知ってびっくりしたけどね。

何か特別な影響があったら教えてください。

アマンダ:私はいまでも音楽が好きで、音楽への愛がどんどん成長している。トリップ・ホップ、R&Bやヒップホップ、ダンス・ミュージック、そしてデジタル・アンダーグラウンド、ディー・ライト、ブラック・ボックス、ビギー、ポーティスヘッド、ミスター・フィンガーズ、ア・ガイ・コールド・ジェラルドが大好きなのよ!

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私たちは音楽が好きで、アンダーグラウンドへの愛にふさわしい、という信頼を持たれるべきだと思っているわ。私たちは流行先導者ではないけれど、強い意見と特有なテイストを持っている。

女性アーティストだけを集めて『My Estrogeneration』というコンピレーション・アルバムを作りましたね。これはどんな経緯で生まれたんでしょう?

アマンダ:女性はアンダーグラウンド・シーンでもっと評価されるべきなのよ。音楽のメインストリーム世界では女性をよく見る。稼ぎ手、ビジネス権力者、トレンドセッターといったところでね。しかしアンダーグラウンドの世界では、ショーにいる大多数は男性なのよ。オンライン・バイヤー、ブログ運営者、ミュージック・ジャーナリストも男だらけよね。もっとも私たちが女性というだけでゲットー扱いされる考えは好きではないけどね。フェミニストの最善の提案は、パイのスライスを欲しいことではなく、自分たちの別々のケーキが欲しいってこと。私たち女性がみんなひとつの場所で、創造的な力、重要な存在として知覚されるのはいいわよね。

サブレーベルの〈100% Silk〉をはじめた動機について話してください。

アマンダ:アンダーグラウンド・ダンス・ミュージックのアートを強調したかったからレーベルをはじめたのよ。ダンスのほとんどのチャンネルは健康的だと思う。ダンスというヴィジョンには、教養ある男性に美しいコンピュータや複雑な機材もある。ダンスのなかにソウルと優雅さ、ランダムと興奮、アウトサイダーの感覚を組み入れてやっている連中を知っていたので、私は彼らにハイライトを当てて、アーティストをサポートしたかった。コンセプトはダンスで、そう、本物のダンシングよ。

チルウェイヴやシンセ・ポップは好きですか?

アマンダ:チルウェイヴはよくわからない。シンセ・ポップは好きじゃない。私はあくまでディスコを崇拝しているの。大好きよ。〈シルク〉からでている音楽はたんに電子楽器で作った音楽ではない。あなたをダンスさせ、グルーヴさせなければならないの。

でもあなたの音楽には80年代のニューウェイヴからの影響がありますよね?

アマンダ:自分では80年代的だと思ってないんだけどね。ニューウェイヴでもないと思うけど、幾何学的なニューウェイヴのアートは好きよ。スペンサー・ロンゴは私を素晴らしいナーゲルの女性として描いてくれた。それが80年代の審美からの借りてきた物だとしても、スペンサーは古い物を新しい感覚で再生できる人だと思うわ。

クラブ・カルチャーに関するあなたの考えを教えてください

アマンダ:クラブ・ミュージックは文字通りにいってセンセーショナルよね。ほとんど知覚の音楽で、大袈裟で、人を楽しませ、ドラマティックで、遊び心があって、セクシーで、催眠効果がある。私は踊るのも、汗をかくのも、ダンスフロアで自分の体を失うのも好きなのよ。もし私が他人のなかの同じ反応を刺激する音楽をリリースすることができたら、私が望んでいたよりも良いモノができたと満足するでしょうね。

いろんなスタイルを楽しんでいるって感じですか?

アマンダ:そのときの感覚をね。その瞬間に何に惹かれているかによるわ。あるときはダブだったり、エクスペリメンタル・ポップだったり、ハウスだったり......。音楽を探しながら変化することが好きなのよ。ひとつのことを20年続けためにここにいるわけではないから。


LA Vampires
So Unreal

Not Not Fun

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2010年末にL.A.ヴァンパイアーズ名義で出した『Unreal』はとてもパワフルな作品でしたけど、あのタイトルはどこから来たんですか?

アマンダ:あのアルバムをレコーディングしていたとき、私の人生すべてが非現実的に感じられた。ポカホーンティットは解散して、仲の良い友だちを失って、レーベルが私のフルタイムのジョブになって、私の最初の小説が売れたばかりで、かなり圧倒されていた。『Unreal』(非現実的)は、このセンセーションを表すいちばんの方法だった。

アメリカであなたの音楽は受け入れられているんでしょうか?

アマンダ:答えるのに難しい質問よね(笑)。何人かは嫌いで、何人かは好きで、ひとりかふたりぐらいは大好きであって欲しいけど。

あなたの音楽は、アメリカの主流文化とはどのような関わりがあると思いますか?

アマンダ:いいえ、私はアメリカ文化のメインストリームから外れているからね。人は私の音楽をただの騒音だと思っているし、ローファイのエクスペリメンタル・アーティストだと思っている。まあ、反論はしないけどね。

音楽を通じて言いたいことは何でしょう?

アマンダ:まずはあなた自身が楽しむってこと。

レディ・ガガについてどう思う?

アマンダ:深く考えたことはないけど、少なくともあの音楽が良いとは思えないわよね。でも彼女の体はすごいと思う。綺麗な形をしているし、ファッションも大好きで、その部分は尊敬している。ただ、彼女の音楽が彼女の個性やアウトサイダー感のように奇妙で壊れていれば良いのにと思う。そうすれば、彼女はメインストリームでもアンダーグラウンドでも重要人物になれるからね。

今後の予定は?

アマンダ:仕事,仕事,仕事,仕事。良い音楽を作る。ベストな音楽をリリースする。愛し続ける。自分が楽しむ。


message from AXIS - ele-king

 デトロイト・テクノにおける偉大なるミニマルの父、そして手のつけられないSF中毒者でもあるジェフ・ミルズから新しいプロジェクトに関する連絡を受けた。以下は、彼自身からのメッセージである。

文:ジェフ・ミルズ

 『Fantastic Voyage』(「ミクロの決死圏」)プロジェクトはパリのシテ・ラ・ミュージックというベニューからの依頼ではじめたものだ。そのベニューでいくつかの映画上映をスペシャルな形で行う企画があり、僕にも好きな映画の音楽を制作してほしいと言われ、すぐにこの映画を選んだ。1966年発表以来毎年のようにどこかで上映されていて、僕も長年お気に入りだったし、他のSF映画とは一線を画した内容でいちど観たらその感動はなかなか忘れない印象的なフィルムだ。
 『Fantastic Voyage』を新しいサウンドトラックとともに上映するにあたって、僕は観客を巻き込んで体験するような内容を考えた。映画のなかで、病気の科学者の体内に潜水艦が入っていくところで、観客も同様なフィーリングを感じるようなシナリオを考えた。観客が体感できるように、映画内で風が吹く場面では会場に設置した巨大扇風機を回し、床を振動させるべく第二のサウンドシステムを用意したり。スクリーンもふたつ用意し、体内に入る前は1枚目のスクリーン、2枚目のスクリーンのまわりにはデコレーションやライティングを施し体内の雰囲気をだし、その他にも観客が体内にいるような感じを体験できるよう工夫した。
 サウンドトラック制作には数か月を要し、実際に使用したよりもっと多くのサウンド、80~90曲を用意していた。制作初期の段階から、このサウンドトラック制作ではテクノロジーに頼るような音はつりあわないと考えていた。人間の体のなかに入っていくのはとてもオーガニックなことで、それがテクノロジーの進歩、コンピュータや機械より重要なことだと思った。音が複雑に絡み合い、多次元的な層を織りなすようなサウンドをつくりあげていく必要があると感じた。あえてシンクされていないシーケンスを組み合わせることで、血流や内臓の自然な感じを表現しようとした。映画のために制作したスケッチ(曲)をぜひリリースしたいと思って今回2枚組のCDにした。
 映画『Fantastic Voyage』のおもしろいところ、他の映画とは違うところは、信じられない体験が宇宙や海などではなく、人間の体内で起きるというところだ。だからどんな人でも興味を持つはずだし、身近なこととして感じられるはずだ。医学的な知識がなくても、わかりやすいように科学者たちの冒険とともに説明されており、若い人たちは一度は見るべき映画だし、すべての人が自分たちの体がスペシャルだということを再認識する機会を与えてくれると思う。




Chart by Underground Gallery 2011.10.06 - ele-king

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KRAMER...

KRAMER... #House Revenge #502 (HOUSE REVENGE) »COMMENT GET MUSIC
FIRST CHOICE「Let No Man Put Asunder」幻のDERRICK MAY & ASHLEY BEEDLEリエディットが遂に復刻!DERRICK MAYが90年代中期に毎回必ずプレイしていた、FIRST CHOICE「Let No Man Put Asunder」のリエディットが遂に復刻! DERRICK MAYのミックスCD「Mix Up」でも一部分がリエディットされ使用されていたので、聞いたことがある方も多いと思いますが、実はコレ、ASHLEY BEEDLEとDERRICK MAYが、RON HARDYのリエディット・ワークをお手本にして制作した、アンオフィシャルなリエディット作品なんです!電車が走り去るSEをバックに、抜群にファンキーなパーカッシブ・グルーヴで展開していく、とにかくアガるディスコ・ハウス!!ASHLEY BEEDLEによるA面、DERRICK MAYによるB面、どちらも本当にカッコイイ!!!オリジナル盤は欧州の中古市場では100竄ャを超える値段で取引されることもある正真正銘"幻"のトラックです

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MO MOODY (MOODYMANN)

MO MOODY (MOODYMANN) Doin Ya Thang (White Label) »COMMENT GET MUSIC
MOODYMANNの新プロジェクトMO MOODY!超限定プレス! 既にyoutubeにPVが公開され、ファンの間で大きな話題を集めていた新曲「I Got Werk」、初期の[KDJ]の作品を思い出させるような、ライブフィーリング溢れるディスコ・チューン「Doin Ya Thang」など、全3曲を収録!ここ最近のMOODYMANNの作品の中でも群を抜いた一枚だと思います!

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REEL BY REAL

REEL BY REAL Surkit Chamber - The Melding (A.R.T.Less) »COMMENT GET MUSIC
デトロイトの隠れた重要人物REEL BY REALが約20年振りに新作を発表! 90年代初めに、JUAN ATKINSが運営していた幻のレーベル[Interface Records]や、当時のデトロイト・テクノを積極的にUKへ紹介していた名門レーベル[10 Records]から作品を発表し、コアなデトロイト・ファンの間では伝説のアーティストとして語られたいたMARTIN BONDSによるプロジェクトREEL BY REALが、何と20年ぶりの新作をリリース!ジャケットのアートワークは、[Underground Resistance]や[Red Planet]、[Transmat]のデザインでもお馴染みのABDUL HAQQによるもの!デトロイト・ファン・マスト!

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RONNY & RENZO

RONNY & RENZO Heartbreak Theme (Rekids) »COMMENT GET MUSIC
CARL CRAIGリミックス収録!ベルギーのカルトレーベル[King Kung Foo]で知られる RONNY & RENZOが、盟友 RADIO SLAVE主宰の[Rekids]から新作をリリース! QUIET VILLAGE名義でリミックスを提供していたこともあるRADIO SLAVEが、自身主宰の人気レーベル[Rekids]より、ベルギーのカルトレーベル[King Kung Foo]で御馴染み RONNY & RENZOによる最新作をリリース。低くドープにウネりを上げるスローモーなグルーブにシリアスなムード漂うアンビエンスなウワモノやディープな声ネタ、シンセリフなどを響かせ、10分を超える長尺世界の中ジワジワとハメに掛かる 超強烈トラックを披露。さらにカップリングには、ファンクネスなグルーブとスペーシーなシンセメロを響かせ、より壮大な世界を展開していく御大 CARL CRAIGによるリミックスを収録。当然、こちらも間違いありません!大・大・大推薦!

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QUINTUS PROJECT

QUINTUS PROJECT Night Flight (Derwin) »COMMENT GET MUSIC
UGヘビー・プッシュ!87年に限定300枚でリリースされたQUINTUS PROJECTのアルバム「Moments」に収録の「Night Flight」をPSYCHEMAGIK、LEXXがリミックス!しかもカップリングには、オリジナルも収録されています! JAZZANOVAのALEX BARACKが主宰する新レーベル[Derwin Recordings]新作は、87年にドイツ[NGM]よりリリースされた激レアアルバム「Moments」より、可憐な鍵盤が印象的に響く、緩やかなチル・コズミック/フュージョン・シンセ・クラシック「Night Flight」が世界初の12インチ化!このオリジナルを再発させてくれただけでも本当に嬉しい1枚ではあるのですが、さらにカップリングには[Ambassadors Reception]からアルバムリリースが予定されている PSYCHEMAGIKによるリミックス、KAWABATAこと LEXXによる'Night Crusin'なレイトバック/バレアリック・リエディットを収録。

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STRANGER SON

STRANGER SON Inside Many Summers (WHITE BOX) »COMMENT GET MUSIC
A MOUNTAIN OF ONE辺りのサイケデリック縲怎oレアリックなロッキン・ディスコは絶対に要チェックです!!限定250枚プレス。 元TVH3のGARETH SMITH率いるマンチェスターの大所帯ポストパンク・バンドSTRANGER SON OF WB改め、STRANGER SONによる待望のニューシングルが、ホーム・レーベル[Whitebox]から登場! A MOUNTAIN OF ONEのサウンドを彷彿とさせるようなサイケデリック縲怎_ブ縲廸.W縲怎Iルタナロック縲怎oレアリックな要素を、独自フィルターを通し昇華させた、オリジナリティー溢れるロック・サウンドを披露。収録3作、どれも本当に良いですので、コレはホントいオススメです!

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DON PAPA & SUBMARINE

DON PAPA & SUBMARINE Kambo Super Sound (Sex Tags Amfibia) »COMMENT GET MUSIC
ノルウェーのカルト・レーベル[Sex Tags Mania]傘下[Sex Tags Amfibia]新作は、昨年リリースされ話題となった DON PAPA & SUBMARINEによるレゲエ/ダブスプリットシングル!! レーベル看板 DON PAPAがSUBMARINEと共に手掛けるレゲエ/ダブ・スプリット・シングル 第2弾。ジャマイカン・ダブ手法な深く打たれるダブ・グルーブにスモーキーなヴォーカルを響かす DON PAPA手掛ける Side-A「Come 2gether」、カップリングには同曲のダブヴァージョン「Moss Dub Massive」を収録。ジャンルレスにコレは本当にオススメしたいです!! 限定プレスでのリリースとなると思いますので、コレだけは是非お早めに縲

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BRYAN FERRY

BRYAN FERRY Alphaville (Leo Zero Remix) (White) »COMMENT GET MUSIC
しばらく前から話題となっていた1枚が遂にヴァイナル・リリース!ROXY MUSICのフロントマン BRYAN FERRYのリミックスアルバムからのホワイト・ヴァイナル・カット!LEO ZERO、TIME & SPACE MACHINEのリミックスを収録!! 知らなかった人も多くいるとは思いますが、実はコレ、[Virgin]傘下[The Vinyl Factory]より、今年春先頃にほぼUKオンリーの取り扱い(日本にはほとんど入っていなかったと思います)で超限定リリースされていた「Alphaville Remixes」が、ホワイトながらも原盤と同じカップリング仕様で再登場!!!まず Side-Aでは、A MOUNTAIN OF ONEの中心人物 DJ LEO ZEROが、どこかトロピカルなムードを醸しだす、暖かくメランコリックな雰囲気が◎なミッドテンポなチル/バレアリックなディスコリミックスを披露し、Side-Bには、THE JOUBERT SINGERS「Stand On The World」の印象的なオルガンプレイをネタとして使ったと思われる TIME & SPACE MACHINEのリミックスを披露。どちらも本当に最高ですね縲怐B恐らく今作も限定プレスでのリリースになると思いますので、Nu-Disco縲怎nウス派の方は絶対にお見逃しのないよう、お早めのチェックをオススメします!当然、当店一押しの1枚です!

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DJ DEEP AND JOVONN

DJ DEEP AND JOVONN Back In The Dark (Clone) »COMMENT GET MUSIC
2000年にフランス[Distance]からリリースされた、DJ DEEP & JOVONNのディープハウス・クラシックが[Clone]より復刻![Blance]やCHEZ DAMIER辺りにも通じるミニマルなリフをバックに、セクシーにうねる黒いベース・グルーヴ、ワンコードながら絶妙のタイミングで刻まれるオルガン・リフを絡めながら、ジワジワとビルドアップする最高のディープ・ハウス・サウンド!ポエトリーも良い感じです!リリース当時は、それ程ヒットした訳ではありませんが、当時よりも今のムードに合っているように気さえする、ハウス・ファンなら絶対に聴いて頂きたい一枚です!傑作!

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KASSEM MOSSE

KASSEM MOSSE Enoha Ep (Nonplus) »COMMENT GET MUSIC
[Workshop]や[Mikrodisko]からのリリースでお馴染み、ベルリンのカルトアーティストKASSEM MOSSE、 ダブステップ縲怎eクノ越境レーベル[Nonplus Records]からの新作!モノ・ミニマル縲怎Gレクトロまで、全曲◎!MAURIZIO「M5」を"酸"を加えたような、ドープ・モノ・アシッド・ミニマルのA1がとにかくカッコイイ!うねるようにビルドアップしていく展開も素晴らしい!その他にも、DREXCIYAを思われるようなダーク・エレクトロや、ベルリン産らしい、インダストリアル・テクノなど、全4曲、全て◎!ここ最近のKASSEM MOSSEの作品の中では、ずば抜けてカッコイイです!

interview with Love Me Tender - ele-king

あんなに小さな声で歌ったのに
みんなにきこえちゃったみたい RCサクセション"君はLove Me Tenderを聴いたか?"


LOVE ME TENDER
トワイライト

Pヴァイン

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 東京にはボヘミアニズムがある。それはクラブ・カルチャーよりもさらに地下に降りていったところに広がっている。経済効率とはあまり縁のなさそうな、しかし心優しい音楽好きな不眠症の連中によるかなりゆるいコミュニティだ。ラヴ・ミー・テンダーというバンドはそういう場所で生まれている。

 メンバーはMaki 999(歌とドラム)、Arata(ギター)、Teppei(ベース)、Takagi Sota(鍵盤)、Ackky(サックス)の5人。Maki 999はHBという女性3人によるバンドで、昨年は『ブラック・ホール・イン・ラヴ』を発表している(マニ・ノイメイヤーの現代版)。長年DJとして活動しているAckkyも、昨年最初のソロ・アルバム『コンポジション』を発表している(コズミック・ディスコ)。高木壮太は、日本の早すぎたチルウェイヴ・バンドとも言えるシュガー・プラントの元メンバーとしても知られている。すでにキャリアのある人たちがラヴ・ミー・テンダーで試みているのは、清々しいまでのシティ・ポップスで、そして少々ユーモアの詰まった危険な言葉の歌なのだ。
 震災直後にリリースされ評判となった自主制作の『FRESH!』を経て、バンドが震災後に録音したミニ・アルバム『TWILIGHT』が最近〈Pヴァイン〉からリリースされた。それが夜の深い旅が好きでたまらない人にとってのポップスで、"STAR"や"TWILIGHT"のような新たに収録された曲では、空想的な童話的世界とヴェルヴェット・アンダーグラウンドの溝を埋めつつも、山下達郎にも接近するという離れ業にも取り組んでいる。バンドの代表曲である"シャーマン青春サイケ"が言うように、「あふれ出す光の海/終わらない夜明けの旅」へようこそ......という感じである。

 9月なかばの大雨の晩、ちょうど筆者が下北沢のお店で飲んでいる深夜の12時過ぎに、「明日の深夜か明後日なら取材できます」とレーベルの担当者からいきなり電話。翌日「明日の3時に渋谷で」と伝え、そして取材当日の3時20分になったとき、その場にいたのはAckky(ほぼ時間通り)、そしてTakagi Sota(10分遅れ)のふたりだけだった......。

自分たちのやっていることを言葉で表すとしたら何になるのかという話になって、「シャーマン・ロック」って。「サイケ」も絶対に入ってるし、じゃあ、「シャーマン・サイケ」、でも何かが足りない、「青春じゃん!」って。

まだ他のメンバーが来てませんが、はじめてましょうか。

Ackky:はははは、すいません。

そもそもラヴ・ミー・テンダーってどうしてはじまったんですか?

Sota:俺とアッキーは途中から入ったから結成の経緯はぜんぜん知らない。

それじゃあ、ダメですね(笑)。

Sota:だいたいドラッグ絡みじゃないですか。×××××が同じだったとか、そういうことでしょう。

(笑)オフレコはなしでやりますから。

Sota:でも何なんだろう。聞いた話では......。

Ackky:ミルクバーで3人でセッションしたら調子が良くて、それがのちのちカタチになっていったと聞いているよ。

その3人とは?

Ackky:マキ、テッペイ、アラタの3人です。

まさにいまこの場にいない3人ですね(笑)。

Sota:それがラヴ・ミー・テンダーになったという話は聞いている。

いつの話ですか?

Ackky:4年前とかじゃないのかな。

そんな前なんだ。

Sota:バンドの名付け親はミユキちゃんですよ。

ミユキちゃん?

Sota:MCチェルノブイリです。

ミユキちゃん?

Sota:そう、いまナカシマミユキというユニットをやってます。

ハハハハ。

Sota:危なすぎて人前には出せません。

ハハハハ。

Ackky:ミユキ・シーベルトっていう別名義もあるんですよ。

すごいね。

Ackky:ラッパー、ミユキ・シーベルト。

そのミユキちゃんが何故ラヴ・ミー・テンダーって名前を付けたんですか?

Sota:さあ、わからない。ドラッグっぽいセンスだと思いますよ。

どこもドラッグっぽくないじゃないですか(笑)!

Sota:意味がわからないじゃないですか。検索しづらいし......まあ、思いつきで付けたんだろうね。

Ackky:こないだギャラクティックというジャム・バンドと伊豆で会ったときに、バンド名を言ったら大爆笑してましたよ。

それは何処に笑いのツボがあるの(笑)?

Ackky:いや、俺にもわかんないすけど......。

Sota:プレスリーの話はいっかいも出たことないすけどね。

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俺たちは複雑な楽曲で微妙なものを......高価な楽器とちゃんとしたスタジオで伝えたいというブルジョア的な価値観が根底にあります。


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ふたりが参加したのはいつから?

Sota:俺はセッションによく参加してましたね。はじまった1年目ぐらいのとき、ギターとかキーボードで参加してましたよ。バンドはもう人前でジャム・セッションをやってましたね。

どんなスタイルの音楽だったんですか?

Sota:コード進行がありましたね。ジャム・バンドってコード展開がないでしょ。だいたいワンコードで演奏していく。それがラヴ・ミー・テンダーにはコード進行があるんですよ。というか、コード進行マニアなんですよ。

へー。そんなに難しいんだ。

Ackky:難しいと思いますよ。

Sota:俺たちは複雑な楽曲で微妙なものを......高価な楽器とちゃんとしたスタジオで伝えたいというブルジョア的な価値観が根底にあります。

ああ、そうした贅沢さは出ているよね。それは最初からあったコンセプトなんですか?

Sota:アラタのキャラクターなんじゃないかな。お坊ちゃんだし。

ラヴ・ミー・テンダーに関してよく言われるのが「シティ・ポップスとドラッグ・カルチャーとの出会い」とかさ、「シンナーを吸ったシュガーベイブ」とかさ、とにかく音楽的にはシティ・ポップスなんだよね。

Sota:いやー、それはコンセプトでもなんでもないですけどね。ただのコード進行マニアなんですよね。ティン・パン・アレーとか、細野晴臣さんとか、やっぱコード進行マニアでしょ。

Ackky:意識はしてないけど、全員やっぱそこは共通して好きですね。

アッキーはいつから入ったの?

Ackky:1年半前、いや2年くらい前かなー。マキちゃんからミクシィで「やんない?」って言われて。昔、サックスを吹いていたんですよ。その映像がYouTubeに上がっていて。

Sota:「アッキーがサックス吹けるらしい。こんどスタジオに呼んでみよう」って。

俺もアッキーがサックスを吹いているっていうのは驚いた(笑)。

Ackky:17年ぶりですよ(笑)。

アッキーは加入する前から、バンドの存在は知っていたんですか?

Ackky:もちろん。好きだったし。

どこが気に入ったの?

Ackky:楽曲も歌詞も。

ポップスを目指すところが良いとか?

Ackky:DJ的に聴いても耳障りがいいんですよ。

アッキーが知ったときにはもうオリジナルの楽曲はあったんでしょ?

Ackky:"シャーマン青春サイケ"もあったし、"TWILIGHT"もありましたね。"ヤブレターラブレター"もやってましたね。『FRESH!』に入っている曲はほとんどあった。

Sota:つねに、作ってはボツにして作ってはボツにして、ライヴで何回もやっても飽きない曲が残っていくんですよ。

Ackky:持ち曲が多いんです。

Sota:30曲くらいはある。

なのに何でミニ・アルバムが続いてんですか?

Sota:『FRESH!』の曲はそれぞれ録音した時期が違うんですよ。で、最近出た『TWILIGHT』は震災以降。

Ackky:1週間後だったね。

Sota:『FRESH!』のほうは2年ぐらい前のトラックが入っているからね。

とにかく、聴いていて感心するのは、洗練と言うことを目指していることなんですよね。はじまった頃は混沌としていたんだろうけど。

Sota:いまでも混沌としてますよ。

でもちゃんとポップスになっているじゃないですか。

Sota:それはね、人力テクノとか、人力トランスと言われるようなものへのアンチテーゼがありますね。

Ackky:いわゆるジャム系にありがちな感じが嫌いなんですよ。

なんで?

Sota:ダサいからですよ。

Ackky:ダサいよね。

好きそうじゃない(笑)。

Ackky:だいっ嫌い!

ハハハハ。

Ackky:好きなバンドもいますけどね。

なるほど。作曲は誰がやっているの?

Sota:誰かがアイデアを持ってきて、それをみんなで膨らませる。

Ackky:スタジオで1~2時間かけてカタチにしていく。

代表曲のひとつだと思うんですけど、"シャーマン青春サイケ"はいつできたんですか?

Ackky:これは初期の曲だよね。

Sota:俺、最初なんて歌っているのかわからなくて、「湘南新宿ライン」って聞こえてたんですよ。

Ackky:うちらがよくいるバーカウンターでできたんだよ。

Sota:そうなの?

Ackky:マキちゃんがそう言ってたよ。

Sota:そうなんだ。

Ackky:マキちゃんが来ればわかるよね。

しかしそのマキちゃんがなかなか来ないですね......(汗)。

Sota:お化粧してるから。

ハハハハ。ソウタくんは誘われて入って......。

Sota:いや、押し掛けて行ったんです。いちども誘われたことはない。いまでも正式メンバーって気がしない。

Ackky:俺は誘われたんだけどね(笑)。

ハハハハ。で、ソウタくんから見て、彼女の歌詞っていうのは......。

(ここでMAKI 999登場)

Sota:あ、来た。

Ackky:やっとで来たね。

Sota:結局ラヴ・ミー・テンダーって、マキちゃん親衛隊なんです。騎士なんですよ。つまり俺たちは使い捨てなんです。

いや、実はもう、かなり話が進んでて(笑)。

Maki:あ、もう。

Sota:可愛いし、女の子だし、命の価値が高いんですよ。

Ackky:ハハハハ、命の価値!

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結局ラヴ・ミー・テンダーって、マキちゃん親衛隊なんです。騎士なんですよ。つまり俺たちは使い捨てなんです。


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"シャーマン青春サイケ"がどうやって生まれたのか? っていう話で、そしたらバーカウンターのなかで作られたって。

Maki:みんながよく集まるバーで、私とアラタくんとテッペイの3人でやっていた頃に、ドラムセットを広げて、リハーサルをやっていたんですよ。

おー、あそこでリハやってたんだ。

Maki:そう。で、自分たちのやっていることを言葉で表すとしたら何になるのかという話になって、「シャーマン・ロック」って誰かが言って。で、「サイケ」も絶対に入ってるし、じゃあ、「シャーマン・サイケ」、でも何かが足りない、「青春じゃん!」って。

ハハハハ。

Maki:それで"シャーマン青春サイケ"。

なんで「シャーマン」? 霊と交信しているの?

Sota:それは「ジャーマン」のパロディ。

Maki:言葉遊び。だって「ジャーマン(ドイツ人)」じゃないし。

でもジャーマン・ロックっていう感じの音でもないでしょう。

Maki:感じないですよね。

HBには感じるけど。じゃあ、オリジネイターが来たので、もういっかい最初から質問するんですけど、「どうしてはじまったのか?」という質問に、ソウタくんは押し掛けていったと、で、アッキーは誘われていったと。

Maki:スカウトしたから。

とにかく、ふたりともどうやってラヴ・ミー・テンダーがはじまったのかよくわかってていないんです。

Maki:2007年7月7日に、セッションがあったんですよね。そこにアラタくんとテッペイと3人で集まって、ミルクバーっていうバーで。で、後日、「これ、バンドにしちゃわない?」っていう話になって。ぜんぶバーなんです。話が進んでいく場所がぜんぶバー。

渋谷のバー。

Maki:三茶にむちゃ狭いバーがあって。

Sota:日本一狭いバーです。狭すぎて、ナンシー関が入れないようなバー。世田谷通りの奥のほうにいる芸大生が集まっていたようなバーでね、みんなジャーマン・ロックとか好きでね。初めて行ったときにはマグマとかかかっていたな。

もとはジャーマン・ロック好きの集まりだったんだ。

Sota:あとはライフ・フォーサーだね。

Ackky:〈ライフ・フォース〉のお客さんが集まっていた。

アッキーがなんで〈ライフ・フォース〉のDJになったのかいつか訊きたいけどね。

Ackky:いやもう、「やれ」って言われて。

まあ、それはそれで長い話になるのでいまは止めておくとして。

Maki:バンドの名前もそのときに決まったのかな。

Ackky:ミユキちゃんね。

いや、だからミユキちゃんって誰ですか(笑)。DJチェルノブイリだっけ。

Maki:そう、チェルノブイリ。そう言われているんだけど、しかしなんでラヴ・ミー・テンダーになったのかは......わからない(笑)。覚えていない(笑)。

誰も覚えていない(笑)。

Maki:そのときのいちばん良い名前になった。

で、どこが気に入ったんですか?

Maki:響きと、そしてまあ、「優しく愛して」という意味も含めて。これで行こうと。「ラヴ」も入っているし。

いつからそれを名乗っているんですか?

Maki:だから2007年の7月。

え、じゃあ、さっき言った......。

Maki:バンドが始動して2日後ぐらいです。

最初はジャム・セッションだったんでしょ?

Maki:そう、ジャム・セッションして、代々木公園なんかでも広げてやったりとか。あとはバーでやっていた。最初は歌も入ってなくて、ホント、ただひとすら3人でセッションする感じで、それが飽きてきて、歌を歌おうって。マイクを3本立ててみたんですけど、最初は誰も歌わなかったんですけど。いちばん最初にできた曲が"マリフレ"なんですよね。歌と言うよりも、ああいう言葉のループですね。

その頃はシティ・ポップスじゃなかったんだ。

Maki:そんなではなかったですね。

何がどうしていまのようなシティ・ポップスになったんですかね。

Maki:なんでしょうね。歌モノを意識しはじめて、ソウタくんが入ってきたときに、なんかどんどんゴージャスになっていったんですよね。

Sota:ケレンミなく、青春賛歌を高らかに歌い上げようっていうところです。まさに『けいおん!』ですね。「バンドやろう」、「ここに楽器がある」って。「早くこれを使ってなんかやろう」って。

それがなんでアシュ・ラ・テンペルやスペースメン3にはならずにシュガーベイブになったんでしょうね。

Sota:血ですね。

Maki:都会派の生き様がでてしまったんですよね。

じゃあ、それはごく自然に自分たちのなかから出てきたと。

Sota:そうなんじゃないですか。メジャー7thの響きなんじゃないですか。

Ackky:ディジリドゥ持って、フレアパンツ履いてるバンドに誘われても絶対にやらないですからね。

HBとはかなり距離を感じますけどね。

Maki:HBとは違いますね。同じことやっても仕方ないし。

音楽的なリーダーみたいな人はいるんですか?

Sota:アラタがそうかな。モチーフ持ってくるのがいちばん多いですね。スタジオ自体がワークショップみたいで、こういうコード進行があるとか、こういうリズムがあるとか、研究しているんです。

ポップスを目指していることに関しては、やっぱ研究の成果?

Sota:目指してないです。自然にやっているだけで。

Maki:メンバーみんなポップスが好きなんですよ。

でもホント、自然にやったらアモン・デュールとかマグマとかになりそうなのにね。

Ackky:ハハハハ、たしかに。

Sota:セカンド・アルバムでは逆回転の音から入って、ずっとディレイのウェット音だけで構成されているようなものになっているかもしれないですね。

しつこいけど、そういうことをやってそうな感じなのに、なんでポップスなんでしょうね。

Sota:俺たちにはポップスができる。演奏できる。そういう自負があるんです。

Ackky:マキちゃんが歌ったのが大きいよね。

マキちゃんはそれ以前は歌っていたんですか?

Maki:歌っていないですね。ずっとドラムです。

歌詞もマキちゃんが書いてますよね。

Maki:だいたいそうです。アラタくんが書くこともありますけど。"DIET"なんかはアラタくんです。それを人に言ったら驚かれてしまって。「えー、あの曲、アラタくんの歌詞なの? 気持ち悪ぃー」って。

Ackky:女の子の気持ちになって書いたってね(笑)。

Maki:なので、もうこれからは、私が書いていることにしようと思っています。

普通に歌詞を読むと、ドラッグ・カルチャーからの影響を感じるんですが、実際はどうなんですか?

Sota:いやー、酷いものですよ。

ハハハハ。

Sota:ドラッグ・ソングばっかですよね。

Maki:ねぇ。

ハハハハ。"マリフレ"とか"花と盆"とか、自分の耳を疑うぐらいにびっくりした(笑)。

Sota:みんなその週にあったトピックを歌詞にしたり。珍事件とかね。どうしてもそうなるんですよね。

欧米にはポップスのなかにドラッグ・ソングがけっこうありますよね。ビートルズなんかもすごく多いでしょ。"アイム・オンリー・スリーピング"とか"シー・セッド・シー・セッド"とか"トゥモロー・ネヴァー・ノウズ"とか。

Sota:まあ、ラヴ・ミー・テンダーはドラッグ・ソングをやっていると受け取ってもらわなくてもいいんですけどね。いくらでも解釈はあるので。

Maki:いろんな意味がね。

ストーン・ローゼズの"ディス・イズ・ザ・ワン"とか、ハッピー・マンデーズの"ルーズ・フィット"とか、ああいうのって、ある意味すごくメタファーとして楽しんでいるっていうか、ドラッグやるやらないとか、その是非じゃなくて、ある種のユーモアとしてのドラッグ・ソングの面白さってありますよね。

Maki:それはある。歌詞の反応を見るのが面白いっていうは。

Sota:俺の見極め方は、この人は知ってるか知らないかだからね。

ハハハハ。日本のポップスではそういうのがほとんどないよね。RCサクセションの"うわの空"とか、"つ・き・あ・い・た・い"とか。

Sota:「LとSはDまでいった」(不思議)とか歌ってるしね。

そうそう。日本ではそれがホントに極端にない。ポップ・カルチャーの重要ないち部なのに、音楽リスナーのなかにさえ偏見が多いというか、すごく抑圧されているよね。最近のインディ・ヒップホップはけっこう表現しているけど、やっぱ日本の不自由さを象徴しているように思うよね。

Ackky:ただ、俺らは力コブシをこめて「リーガライズド・イット」という感じではないんだよね。

でも、歌のネタとしては面白さを感じているんでしょ。

Sota:日常がそうですからね。

はははは。

Maki:たしかにそうなんです。"円山町ラプソディ"もreloveというバーが円山町にオープンしたときの話を歌詞にしているんですね。とくに作り込んでいる感じでもないんですよね。

ドラッグのような危ういモチーフを持ってくるとき、どうしても日本では暗いアングラ臭がついてしまって、シメっぽくなるか、過剰な幻想を抱きがちだったと思うんですけど、ラヴ・ミー・テンダーはそれをもっとドライに、ユーモラスに表現してるし、音も洗練されている。そこがいままでにはないかなって思ったんですよね。

Sota:やっぱもう、そこは行くところまで行って彼岸に着いたらメジャー7thが鳴っていたということでしょう。

(笑)負の感情がないよね。

Sota:ないですね。『マゴット・ブレイン』的なものもぜんぜんないです。

『マゴット・ブレイン』は乾いているじゃないですか。

Sota:俺はもっと、(デトロイトではなく)カリフォルニアです。ドロドロしていないんです。

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まあ、ラヴ・ミー・テンダーはドラッグ・ソングをやっていると受け取ってもらわなくてもいいんですけどね。いくらでも解釈はあるので。


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はははは。そういう意味ではラヴ・ミー・テンダーのドラッグ・ソングはちゃんと相対化されているんですよね。ところで今回リリースされた『TWILIGHT』にも、自主でリリースした『FRESH!』にも"シャーマン青春サイケ"と"円山町ラプソディ"が入っているんですけど、まずその、「円山町」という地名に関しては、やっぱ思い入れがあるんですか?

Sota:マキちゃんが円山町で生まれたような人間なんです。

Ackky:住んでいるのも円山町だしね。

Maki:愛着がありますね。

Sota:バンドでライヴで田舎行って、車で走りながら、「アー、良いなぁ、この辺り、安いんだろうなー、住みたいね」とか言ってると、マキちゃんだけひとりでガタガタ震えているんです。「朝までやってるバーがない」って。

ハハハハ。それすごいね。

Maki:「絶対に住めない」「帰る!」ってね。

いいですねーそれ(笑)。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドを地でいってる感じが。

Sota:マキちゃんは都会の頽廃を地でいってるから。

Maki:好きなんです。

僕も好きです。しかし、アルバムが楽しみですね。ホント、期待されてるんですから......。

Sota:もう制作に入ってますよ。しかし、いまどき誰がレコードを買うんですか。

いや、ラヴ・ミー・テンダーとか普通に売ってますよ。ジェトセットとかで。ちゃんとキャプション付きで。シュガーベイブや相対性理論を持ち出して説明されてますよ(笑)。ちなみに今回リリースされた『TWILIGHT』にはテーマやコンセプトはあるんですか?

Sota:『TWILIGHT』って、パーティのタイトルなんです。

Maki:2年前に1回しかやってないんですけど、人生のベストにはいるようなパーティでしたね。そのときにテッペイが失恋するんですけど、それが曲のモチーフです。"円山町ラプソディ"も円山町のバーのパーティ名です。

都内の小さなバー・シーンから出てきたというか。

Maki:そう、バー・シーンです(笑)。

なんでバーが好きなんですか?

Sota:日光が嫌いなんですよ。

アッキーとか日光、好きでしょ!

Ackky:俺、好き。俺はアウトドアなんでね。

Sota:俺も好きなんだよな。

で、なんでバーなんですか?

Maki:別にお酒が好きなわけじゃないですしね。

音楽バー?

Sota:誰が店員かお客かわからないバー。

僕はこの取材で、ソウタくんが逮捕されるんじゃないかと心配なんですけどね(笑)。

一同:(笑)。

ソウタくんは、ツィッターのシーンでは有名人だという話をうかがっていますが。

Sota:いやもう、行き詰まりました。

Ackky:ハハハハ。

Sota:思ったようにいかないです。何にも伝わらない。

つねに議論を提供しているんでしょ?

Sota:言いたいことはなんでも言う主義なんで。

マキちゃんから見て、このバンドのメンバーはどんな集まりなんですか?

Maki:酒場で出会った人たちですよね。

シュガー・プラントを見ていたとか?

Maki:でもホント、友だちって感じですよ。自然に集まっていたという感じです。

僕、HBが好きなんですけど、あのバンドはもうはじまっていたんですか?

Maki:HBは、2004年にははじまってましたね。

それ以前は?

Maki:違うバンドをやってました。METRO999っていう、サンプラーとドラムのユニットだったり、その前は淺野忠信くんとLMっていう、LちゃんMちゃんっていう、双子の女の子がヴォーカルのバンドをやったり。

Ackky:ナチュラル・カラミティとかもやってるんでしょ?

Maki:レコーディングにちょっと参加した。

へー、すごい輝かしいキャリアじゃないですか。ソウタくんはシュガー・プラントみたいなバンドにいながら、日本のアンダーグラウンドなシーンをずっと見てきていると思うんですけど、ラヴ・ミー・テンダーはどういう風に位置づけられますか?

Sota:ヴェルヴェット・アンダーグラウンドを砂浜に連れ出したようなバンドじゃないですか。

たしかに(笑)。......しかし、結局、他のメンバーの人は来なかったですね。

Ackky:来るとしたらアラタくんなんですけどね。

アルバムの発売日は決まってますか?

Maki:春ぐらいにはってテッペイが言ってたよね。

けっこう先なんですね。

Sota:俺は昔から録音してからリリースまでがなんでこんなに時間がかかるのかわからない。モータウンなんか、月曜日に会議して、火曜日に録音して、水曜日にミックスして、金曜日には出荷していたわけでしょ。あのスピード感が欲しいですね。

ジャマイカもすごいよね。

Sota:店の奥で録音したものを店先で売るみたいなのがいいですね。

じゃあ、そろそろ撮影しましょうか?

Ackky:結局、アラタくん、来なかったね。

Maki:アラタくん、携帯持ってないんですよ。

いまどき携帯持ってないってすごいね。思想でもあるのかね。

Sota:アーミッシュと言いますかね。そういえば、最近、渋谷の街自体が移動していると思いませんか? どんどん神泉とか、そっちのほうに移動しているというか。

ああ、たしかにセンター街や宇田川町あたりに個人商店を出すのって、もう難しいもんね。この10年で、そうした渋谷の文化もどんどん辺境へと移ってるよね。

Sota:バーの数で言えば三茶がすごいですよ。最強ですね。いま、バー・シーンは三茶ですね。

Maki:三茶はいますごいね。

Sota:音楽関係とかアート関係とか、来ない。鬱病のシステム・エンジニアとか、気が狂ったAV監督とか、そういう人たちがぶいぶい言わせている町で、オラオラの感じもあって最高です。

Ackky:不良が多いんですよ。

Sota:バビってますよ。

なるほど。じゃあ、今日はどうもありがとうございました。

Sota:えー、もう終わりなんですか。

アッキーは昨年、ソロ・アルバム出しているけど、ソウタくんは出す予定はないんですか?

Sota:自分の死後、いくらでも出せるようにプリンス並みに録りダメしています。

まあ、とにかく、ラヴ・ミー・テンダーの今後が楽しみです。今日はどうもありがとうございました。

Alva Noto & Blixa Bargeld - ele-king

 およそ1週間前にマシュー・ハーバートの"ワン・ピッグ"ライヴを観ている。その同じ会場で、もっとも先鋭的なドイツの電子音楽家(アルヴァ・ノト=カールステン・ニコライ、坂本龍一との共演者としても知られる)と......ポスト・パンクの時代にチェインソーを金属に斬りつけるノイズを音源として、くず鉄を打楽器としたバンド、つまり、いわゆる既存の楽器のすべてを放棄したバンド、アインシュテュルツェンデ・ノイバウテンの中心人物にしてヴォーカリスト、ブリクサ・バーゲルトとのプロジェクト、ANBBのライヴである。破壊に憑かれ、ダダイズムに深く共振し、そして実験音楽に人生のすべてを捧げていると自ら語るアーティストの久しぶりの来日だ。オーディエンスの数は......意外なほど少なかったが、しかしそのライヴは耳と心にこってりと焼き付くものだった。

 フロント・アクトのNHKyxは、大阪とベルリンを往復する国際派の電子音楽家で、〈スカム〉〈ラスター・ノートン〉、あるいはセンセーショナル(元ジャングル・ブラザースのぶっ飛んだラッパー)との共作を〈ワードサウンド〉から......とにかくいろんなレーベルからたくさんの作品を出しているプロデューサーである。インダストリアルなビートを操作しながら、ノイズをかき鳴らし、IDMとハードコアなダンス・ミュージックの溝を埋めるような、インパクトのあるステージを披露した。続いて登場した伊藤篤宏のウルトラ・ファンクターは、蛍光灯のノイズを音源としながら、NHKyxの冷たいグルーヴをバトンタッチするかのように、彼の白い熱を展開した。昔、あるオーガニック系の人物から、家では絶対に蛍光灯は使わないと言われたことがある。ウルトラ・ファンクターはそうしたハイソなエコ人間へのアンチテーゼでもあろう。
 そうした強力なフロントアクトを経て、ステージに登場したふたりのベルリナーは、それまでの騒音とは真逆で、曲のなかには多くの静寂があった。ライヴは......ノイバウテンのリスナーにとってはお馴染みのバーゲルトのヴォーカリゼーション、あの水蒸気のような声(口笛のような音)ではじまった。

 黒いスーツでめかし込んで、もみあげを尖らせ、髪の毛をしっかりと整えてマイクの前に立っているバーゲルトは、ある意味古風な"ヨーロッパ主義"を強く感じさせるものだった。それはいまとなってはレトロ趣味のひとつとも言えるし、1920年代のベルリンのナイトクラブと2011年のIDMとの交流会という点では新鮮にも思える。
 ライティングは、すべてバウハウス的なデザインだ。直角で、そして色彩は2色に制限される。黒と赤、黒と緑、青と黒、そうした組み合わせで構成される。それは、かつてグラム・ロック/パンク・ロック/ポスト・パンクが、アメリカ的な経済繁栄への強烈な反撃として持ち上げたドイツ的な美学(非人間性や灰色の頽廃美、終末や衰退への陶酔、人工美、表現主義などなど)を表しているように思えた。
 "ワンス・アゲイン"~"ワン"~"ミミクリー"~"エレクトリシティ・イズ"......アルバム『ミミクリー』ではオウテカ(もしくはメルツバウ)を彷彿させるような情け無用の冷酷なエレクトロニック・ミュージックに思えたような曲も、ニコライの間(沈黙)を効果的に用いたIDM、そしてバーゲルトの呼吸まで聴こえそうなライヴではむしろエロティックに聴こえる。ジャック・ブレル(まあ、彼はドイツ人ではないが)のラップトップ・ヴァージョン――そんな言葉が脳裏をよぎる。「昆虫としてのあなた(You as an insect)/あなた自身を擬態する(Mimic yourself)」......バーゲルトは"ミミクリー"における最初の英詩をゆっくりと喋ってからはじめる。アルバムのスリーヴアートには、目を奪うような、女が昆虫のように町を這っている写真が使われているが、これは1967年の映画『欲望』にも出演しているドイツ人のスーパー・モデル、ヴェルシューカの写真である。
 アンコールの"フォール"(アルバムの1曲目)にいたってはさすがというほかない。周波数を手品師のように操作するニコライは、最初鼓膜の近くでさざ波を起こし、それをいつの間にか気が狂いそうなほどのノイズとして突き刺す(アルバムでは耳をつんざくノイズに思えたそれは、より展開のある楽曲となっていた)。そして静寂とピアノ、バーゲルトの歌......。最後の"ホール・イン・ザ・グラウンド"は、僕にはファーストの頃のスーサイド風、まあ、要するにロカビリー+ノイズに聴こえた(オリジナルではそうは感じなかった)。
 先週同じ会場で観たハーバートの、英国人らしい社会風刺のライヴ・パフォーマンスとはまったく別の興奮を覚えた。それは実験音楽に人生を捧げたと自負する人間による、現代における新古典主義とも喩えられるような、しばらくのあいだ家に帰りたくなるほど感動的で美しい時間帯だった。

なお、raster-notonジャパンツアーは今週も続きます!

【R-N EXPRESS】(東京公演)
■日時:2011年10月9日(日)23:00開場 /開演
■会場:渋谷WOMB
■出演:Alva Noto / Byetone / Vladislav Delay / Luomo / Aoki Takamasa /Anne-James Chaton / AGF / NIBO / Atsuhiro Ito
■raster-notonジャパンツアー特設HP:<https://www.raster-noton.net/japantour>

また、東京馬喰町にある現代美術ギャラリー、Motus Fort(モータス・フォート)では、11月5日までブリクサ・バーゲルトの展覧会をしています。
https://www.motusfort.com/exhibition.html

vol.13 : エレファント6がやって来た! - ele-king

 エレファント6なる集団に特別の感情を抱いている人は、30代もなかばの世代だろうか......。エレファント6とは、80年代後半、アップルズ・イン・ステレオのロバート・シュナイダー、ニュートラル・ミルク・ホテルのジェフ・マンガム、オリヴィア・トレマ・コントロールのウィル・カレン・ハートとビル・ドスという4人のルイジアナ州のラストンの学生時代の同級生が4トラックのカセットレコーダーでレコーディングしたことからはじまっている。
 彼らはテープを交換しあい、アルバムのアート・ワークやライナノーツを作り、レコーディングのコラボレーションとバンドを結成した。1991年にロバートはデンバーに、残りの3人はアセンスに引っ越し、そこからエレファント6という名前とロゴが発生し、彼らが関連する作品には、エレファント6のロゴがつくようになった。これは、エルフ・パワー、ビューラー、ジャービルズ、ミュージック・テープス、オブ・モントリオールなど、さまざまな仲間のバンドに広がった。ロバートはアップルズ・イン・ステレオとして、日本のトラットリア・レーベルからアルバムをリリースしている。
 エレファント6という名前は、90年代末にピークを迎えている。よく知られているように、「エレファント6ミニ・ツアー」として、2000年にはオブ・モントリオール、エルフ・パワー、カルヴィン・ドント・ジャンプが日本に初来日した。オリヴィア・トレマ・コントロールはカヒミ・カリィなど日本のアーティストとコラボレートしたり、ソニーからリリースされたヴェルヴェット・アンダー・グラウンドのカヴァー・アルバムにも参加している。

 ジェフ・マンガムは、ニュートラル・ミルク・ホテルとして、いまでは伝説のアルバムになっている『In The Aeroplane Over The Sea』を1998年に発表している。ちなみにこの作品は、アマゾンでは100枚のグレート・ロック・アルバム、『Q』マガジンで25年のあいだでのトップ30アルバム、『ヴィレッジ・ヴォイス』では1998年のベスト・アルバムに選ばれている。
 その後活動を停止していたが、2011年のATPのキュレーターとしてついにカムバックしたのである。伝説となっている彼を一目見ようと、チケットは早々にソールド・アウトとなった。インディロック・ショー・リスティング・サイトの「オー・マイ・ロックネス」では、今週(9/29現在)は一面にジェフの話題で満載である。

 ウィル・カレン・ハートとビル・ドスは、エレファント6の中心人物だ。オリヴィア・トレマー・コントロールのオリジナル・メンバーでもある。彼らは1999年に『Black Foliage』をリリースした後、サーキュラトリー・サウンド・システムと名義を変えて活動している。また、エレファント6の「ホリディ・サプライズ・ツアー」へとライヴ参加もあった。が、今回のオリヴィア・トレマー・コントロールとしては約10年ぶりのショーである。
 共演のミュージック・テープスは、ジュリアン・コスターのプロジェクトで、彼もエレファント6にはなくてはならない存在である。ニュートラル・ミルク・ホテルのメンバーで、ニューヨークではチョコレートUSAとしてビル・ドスと一緒にプレイしていた。
 ジュリアン・コスターのミュージック・テープスは、基本的には彼と7フィートの大きさの巨大メトロノームによるプロジェクトである。
 90年代後半、著者はアセンスに住んでいた。彼がちょうどこの巨大メトロノームを作っていた頃だった。そして、ミュージック・テープスとしてのプロジェクトを話していたとき、彼は「オービタル・ヒューマン・サーカス」という名前の巨大な遊園地ツアーをしたいと、目をキラキラさせながら語っていたのを覚えている。メトロノームの裏側には、さまざまな機材が入念に作り込まれていて、自動的に演奏する仕組みになっている。見た目もプレイもびっくりな楽器である。ここ何年か、ミュージック・テープスはララバイ・ツアーとして、人の家にララバイ(子守唄)を届けるというユニヴァーサルなツアーをしていたが、ミュージック・テープスとしてのショーはオリヴィア・トレマー・コントロール同様、かなりの久しぶりなのである。

 このオリヴィア・トレマー・コントロールとミュージック・テープスのショーが9月21日、マンハッタンの ル・ポワソン・ルージュであった。観客は意外にも若い人が多かった。隣にいた子に話しかけると、「オリヴィア・トレマー・コントロールは音楽を聴いたことがあって、ずっと見たいと思っていた」と、新しい世代は顔を赤らめながら言う。「今回、彼らが見れるなんてドキドキしている。もちろん、ジェフ・マンガムがキュレートするATPのチケットも買ったよ。本物のジェフが見れるなんて、夢みたいだ」

 筆者が会場に到着するとすでにミュージック・テープスがはじまっていて、ジュリアンはミュージック・ソウ(のこぎり)をプレイし、その隣ではオルゴールのような仕掛けのオルガンが自動プレイしていた。彼の父はルーマニアのジプシーで、今日はその父が会場に来ていると、ステージ上の彼は嬉しそうに話している。バンジョー、ミュージック・ソウなど曲のたびに楽器(彼の手作りである)を代え、やがて7フィートのメトロノームが登場し、トランペット、トロンボーン、キーボードなどのサポートメンバーが加わる。目で見て楽しい、耳で聴いて驚く、素晴らしいミュージック・テープスのショーだった。


ミュージック・テープス

 続いてオリヴィア・トレマー・コントロールが登場する。筆者が個人的に知っているドラマーのエリック・ハリスの代わりに、元オブ・モントリオール、エルフ・パワーのデリック、そして〈クラウド・レコーディング〉主宰のジョン・フェルナンデスがベース、ピーター・アーシックがキーボード、ウィル・カレン・ハートとビル・ドスがボーカル&ギター、ミュージック・テープスのジュリアン、ジャービルスのスコットもメンバーとして参加した。もうひとり、初めて見るメンバーがギターで参加していた。あとで聞くと、AJという男の子で、アップルズ・イン・ステレオから紹介されて、すでに何年か一緒にプレイしているらしい。
 ウィルの横には、タンバリンや摩訶不思議な打楽器やパペットと並び、マイク・スタンドの前にレコード・プレイヤーが置いてある。その上にはレコードではなく、緑色のリンゴが回っていた。昔と比べて年を取ったのは否めないが、演奏がはじまるとあの懐かしい、90年代後半の豊かな香りが放射される。新曲の"The Game You Play Is In Your Head, Parts 1, 2, & 3"や定番のの"Jumping Fences"、 さらにフリーフォームの"Green Typewriters"(No.1からNo.10まである)......、イントロがはじまると歓声が上がったり、歌詞の最初から最後までを一緒に歌う声が場内に響いたりと、1時間のショーはとても充実したものだった。古いファンは懐かしい曲にいちいち喜んだり、新しい観客にはまったく新しいバンドとして、さまざまな思いをうながしている。彼らは変わっていなく、やっていることも90年代とほとんど変わらない。新曲もあったがオリヴィア・トレマーらしい、胸がくらりと動かされるような美しさを持つ曲だった。
 アンコールを3曲ほど披露したあと、終わったステージ上からセット・リストを奪いあうファンの姿を横に、まだレコード・プレイヤーの上でくるくる回り続けるリンゴがあった。楽屋に行くと、ジェフ・マンガムがいて(デンジャー・マウスもいた)、今回のショーのことを嬉しそうに話してくれた。「来週ニュー・ジャージーでアコースティック・ライヴをするんだ」と、自分がキュレートするATPのことも話してくれた。昔アセンスで一緒に住んでいた頃と何も変わっていない。

 オリヴィア・トレマ・コントロールはこのあとATPに出演すると、10月中旬に地元アセンスのアセンス・ポップ・フェスに参加する。10年は何かの周期なのだろうか、彼らのリヴァイヴァルはもはや回顧展以上の意味を持っているようだ。デジタル化された2011年の音楽業界においてニュートラル・ミルク・ホテルのジェフがフェスティヴァルをキュレートすると、瞬く間にソールドアウトになる世のなかなのである。これは何を意味するのだろうか、なぜいまの世のなかが彼らに惹き付けられるのだろうか......、10年のあいだで忘れそうになっていたものをあらためて見直す良い機会になるかもしれない。


オリヴィア・トレマ・コントロール

 ジェフがキュレートするオール・トゥモローズ・パーティズ〈I'll Be Your Mirror〉は今週末9月30日に、ニュージャージのアシュバリー・パーク、10月3日はパラマウント・シアター、UKでは12月2日~4日に(w/フリート・フォクシーズ、ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョン、サーストン・ムーア、ザ・フォール、ボアダムス、パンダ・ベアなどが出演)開かれる。

今回のショーレポート
https://www.brooklynvegan.com/archives/2011/09/the_olivia_trem.html

エレファント6集団について
https://www.elephant6.com/about.html

バンドへのリンク
apples in stereo:
https://en.wikipedia.org/wiki/The_Apples_in_Stereo
neutral milk hotel:
https://en.wikipedia.org/wiki/Neutral_Milk_Hotel
olivia tremor control:
https://en.wikipedia.org/wiki/The_Olivia_Tremor_Control
https://www.oliviatremorcontrol.com/
the music tapes:
https://en.wikipedia.org/wiki/The_Music_Tapes

Chart by JET SET 2011.10.03 - ele-king

Shop Chart


1

TORNADO WALLACE

TORNADO WALLACE PART NINE »COMMENT GET MUSIC
Delusions Of GrandeurやSleazy Beatsからの人気作で知られるオーストラリアの新進気鋭Tornado Wallaceによる新作が、大注目のレーベル"Instruments Of Rapture"から登場。

2

坂本慎太郎

坂本慎太郎 幽霊の気分で (IN A PHANTOM MOOD) »COMMENT GET MUSIC
只今制作中のソロ・アルバムから、先日自身のオフィシャル・サイトにおいて先行ダウンロード販売した話題曲「幽霊の気分で(In a Phantom Mood)」と、当7インチ・シングルへの収録が初披露となる「何かが違う(Something's Different)」の2曲をカップリング。

3

VOLTA CAB

VOLTA CAB LOVED BY THE SUN »COMMENT GET MUSIC
Ism, Diner City Sound, Apersonal Musicからの傑作シングルと共にシーン前線に舞い降りたロシアの大型新人、Konstantyn Isaev a.k.a. Volta Cabによるオリジナル新作2楽曲。Daniel Bortz & Ene! Remixも見逃せません。

4

SOULPHICTION

SOULPHICTION FREEROTATION »COMMENT GET MUSIC
ShackletonやMove Dら豪華レジデントを共にする"Freerotation Festival"からのインスパイアをもとに、デトロイト~シカゴ・ハウス影響下のグルーヴを自身のライブ・セットから抽出したディープ・ナンバー。

5

WILL SESSIONS

WILL SESSIONS THE ELMATIC INSTRUMENTALS »COMMENT GET MUSIC
大人気ファンク・バンドWill Sessionsが叩き出すクラシック・ビートの数々。素晴らしい完成度を誇っていた『Elmatic』ですが、独自のアレンジが効いた彼らの演奏に度肝を抜かれた方も多いはず! これは持っておきましょう! ※ダウンロード・カード封入。

6

TROPICS

TROPICS PARODIA FLARE »COMMENT GET MUSIC
Caribouファンにも大推薦のドリーミー・レフトフィールド・ディスコ新鋭Tropicsが遂にアルバム・リリースです!!

7

SPIKE

SPIKE MAGIC TABLE »COMMENT GET MUSIC
オランダのギタリスト、Spike Woltersが'81~'83年にかけて製作/録音していた発掘音源2作品に加え、Thomas Bullock (Rub N Tug/Map of Africa)によるWelcome Stranger名義でのダブ/アカペラ・ミックスを収録!!

8

VAKULA

VAKULA SHEVC002 »COMMENT GET MUSIC
電子音を飛び交わせながら美麗な鍵盤音を轟かせるスペーシーなディープハウス・ナンバー"You Cannot Resist"。B-Side"Rural Dances"も同様に、トリッピーな電子音や奥行きあるアトモスフェリック・シンセを絡めながら、カッティングエッジなボトム・プログラムで引き込んでいくディープ・ナンバーに仕上がっています。

9

AUNTIE FLO / DJ SDUNKERO

AUNTIE FLO / DJ SDUNKERO OH MY DAYS / CHOOSING LOVE »COMMENT GET MUSIC
グラスゴー在住の大新星Auntie Floによる待望のニューシングル!!ビッグ・ヒットを記録した'11年デビュー作"Goan Highlife"と同じく"Huntleys & Palmers"からの10"作品となった、南アフリカのDJ Sdunkeroとの大推薦スプリット。

10

ONRA

ONRA EDITS (CHANGE OF HEART / KEEP ON LOVING ME) »COMMENT GET MUSIC
ダンス・クラシックスとして名高いChangeの名曲をリエディットしたA-1は、原曲の良さを十二分に生かしながら、これぞOnraといわんばかりのエレクトロ・ブギーに仕立て上げた一品。Whispersが83年にリリースした大ヒット曲"Keep On Loving Me"をリエディットしたB-1も同路線の仕上がりで、両面ともフロアを彩る必殺のダブルサイダー!

Chart by JAPONICA 2011.10.03 - ele-king

Shop Chart


1

COFFEE & CIGARETTES BAND

COFFEE & CIGARETTES BAND SESSIONS -LIVE AT FORESTLIMIT- DISQUES CORDE / JPN / 2011/9/28 »COMMENT GET MUSIC
3台のラップトップ、ドラム、シンセサイザー、フルート、ギターと総勢8名によるほぼバンド編成とも言える迫力の陣容で送る第2弾。根底としてあ るDJ視点な部分がしっかりセッションの中で息づいており耳馴染みがとても良くミックスCD感覚でも楽しめます◎そしてKUTMAHに続くジャ ケット・アートワークは勿論この人、山尾光平 as BAKIBAKI!<CORDE>主宰MASAAKI HARA氏のライナーノーツも封入。内容/仕様共に素晴らしい!

2

THEO PARRISH

THEO PARRISH PARALLEL DIMENSIONS UBIQUITY / US / 2011/9/27 »COMMENT GET MUSIC
00年に自身のレーベル<SOUND SIGNATURE>から少量限定リリースされるも即廃盤、その後当時デトロイト勢へ熱い視線を注いでいたUS西海岸の良心<UBIQUITY>より04 年にアナログ未収録曲も追加でジャケも新たにリマスタリング・リイシューされたTHEO PARRISH傑作セカンド。この度長らく入手困難となっていた、その<UBIQUITY>盤が待望のオフィシャル・リイシュー!

3

V.A. [GLOWING PALMS / RUF DUG]

V.A. [GLOWING PALMS / RUF DUG] RUF KUTZ #3 RUF KUTZ / UK / 2011/9/28 »COMMENT GET MUSIC
RUF DUGが仕掛ける限定エディット・シリーズ<RUF KUTZ>第3弾!今回は新株GLOWING PALMSとのカップリングです。リプレス無しの限定250枚!

4

DJ NATURE

DJ NATURE CELEBRATE YOUR LIFE / LET IT RING GOLF CHANNEL / US / 2011/9/22 »COMMENT GET MUSIC
ラグドなクラップ・グルーヴに淡いシンセ・フレーズ、そして味わい深いヴォーカル/コーラス・ワークが艶やかにフィーチャーされる極上ブラック・ ビートダウン"CELEBRATE YOUR LIFE"、そしてディスコ・ファンク調のミニマルな疾走系グルーヴにこちらも黒い女性ヴォーカルが絶妙に馴染むクラップ・ディスコ・ハウス"LET IT RING"の鉄壁2トラック!

5

DJ NATURE

DJ NATURE EDITS VOL.1 GOLF CHANNEL / US / 2011/9/22 »COMMENT GET MUSIC
エレクトロ~初期ハウス的色合いが強いマッシヴな重厚四つ打ちグルーヴ"C.O.A"、爽やかなフィージョン・ソウルをネタにループ/ボトム強化 でグッとフロア映えするダンス・トラックへと仕立てた"BILLY C"、そしてパーカッション/チャント/ハットのコンビネーションが絶妙すぎるアフロ/土着ネタのミニマル・エディット"BUSH BEAR"と、いずれもDJ NATURE色がはっきりと滲み出た絶品トラックに仕上がっております◎

6

WILL SESSIONS

WILL SESSIONS THE ELMATIC INSTRUMENTALS FAT BEATS / US / 2011/9/24 »COMMENT GET MUSIC
孤高のリリシストNASの大傑作ファースト・アルバムにして90'Sヒップホップを語る上では外せない超重要作「ILLMATIC」をSLUM VILLAGEのELZHIが同郷のファンクバンドWILL SESSIONSを従え並々ならぬリスペクトを込め忠実にカヴァーしてしまった強烈作、その名も「ELMATIC」・・・のインスト盤、つまりWILL SESSIONS単体での「ILLMATIC」カヴァー!

7

ONRA

ONRA CHANGE OF HEART / KEEP ON LOVING ME ALL CITY DUBLIN / UK / 2011/9/25 »COMMENT GET MUSIC
A面はCHANGE"HEAVEN OF MY LIFE"を持前の肉厚エレクトロ・ヒップ・ビートにもったりレイドバック感注入にてズルリと料理仕上げたリエディット(ほぼリミックス)"CHANGE OF HEART"、そしてC/Wではこちらも極太ボトムでTHE WHISPERS"KEEP ON LOVIN' ME"をコーラスパートのループ・エディットでスムーシーにリエディットした"KEEP ON LOVIN' ME"を収録。

8

ANTHONY JOSEPH & THE SPASM BAND

ANTHONY JOSEPH & THE SPASM BAND RUBBER ORCHESTRAS HEAVENLY SWEETNESS / FRA / 2011/9/25 »COMMENT GET MUSIC
2大レジェンド、GILL SCOTT HELON&FELA KUTIからの色濃い影響を随所で垣間見せつつも二番煎じには収まらないオリジナル風情で紡ぎだす2011年型アフロ・ソウル傑作。ANTHONY JOSEPHのヴァーカル/ポエトリーもさることながら、やはりバック演奏を務めるTHE SPASM BANDのオーソドックスを踏襲した情熱的なアフロ/ファンク・グルーヴも素晴らしスギル!

9

DJ DUCT

DJ DUCT ONE TURNTABLE LIVE MIX "TODAY : TOMORROW" THINKREC. / JPN / 2011/9/14 »COMMENT GET MUSIC
ルーツでもあるファンク/レアグルーヴに「BACKYARD EDIT」収録ナンバーを織り交ぜ小気味良く展開していく"TODAY (FUNK SET)"サイド。そしてシーンを代表する大御所JEFF MILLSもDOMMUNE競演時に驚嘆の声をあげ、初見の数多くのオーディエンスを虜にさせた話題のダンスミュージック・セットとな る"TOMORROW (TECHNO SET)"の2テイクを収録。

10

JAMES PANTS & TOM NOBLE

JAMES PANTS & TOM NOBLE SELECTED SOUND REMIXES PT. 1 FACES / LES DISQUES SUPERFRIENDS / FRA / 2011/9/11 »COMMENT GET MUSIC
抜けの良いパーカッシヴ・ドラムブレイクがリズミックに進行するロービート・ファンク・ナンバー"DRUM AROUND"をドラムブレイクそのままにいかにもJAMES PANTS"らしい"ニュー・ウェイブ/エレクトロ・ライクなシンセ・フレーズを交えつつ長尺リミックスしたA面。そしてブギー感のあるキーボード・プレ イが印象的なエレクトロ・ジャズ・ファンク"DRUMCRAZY"をパーカッションの効いたディスコ・ビートにスペース・シンセ煌くダンス・ト ラックへとアップデートしたTOM NOBLEリミックスのB面。

[Electronic, House, Dubstep] #9 - ele-king

 最近読んだUKのメディアの記事で、〈RAMP〉レーベル(UKの〈ストーンズ・スロウ〉フォロワーで、ゾンビーやSbtrktなど出している)を主宰するDJのトム・ケリッジはいまだ月に数百ポンド分の新譜のヴァイナルを買って、DJするときもほぼ100%ヴァイナルだと自慢している。デジタルかヴァイナルか......この議論をここで蒸し返すつもりはない。が、去る9月、DOMMUNEでTHA ZOROや大阪のDJ、TUTTLEのプレイを聴きながら、あらためてアナログ盤でプレイするDJの魅力を思い知った次第である。

1.Cloud Boat - Lions On The Beach R & S Records


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 ジェームス・ブレイクの成功は、ダブステップのネクストとしての歌モノをうながしている。ジェイミー・ウーンのアルバムは本サイトではスルーしたけれど、〈エグロ〉あたりはジャズ・ファンク/ソウル・ミュージック寄りにそれを展開している。そしてクラウド・ボートは、レディオヘッドのリミックス盤のように、ダブステップをバックに歌っているトム・ヨーク、ないしはボン・アイヴァーである。つまり、ダブステップのインディ・ロックとの相性の良さを証明する1枚でもある。裏面は、ブリアルのサイケデリック・ロック・ヴァージョンといったところ。

2.FunkinEven - Rolands Jam Eglo Records


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 ロンドンのファンキンイヴンは、〈エグロ〉レーベルが発掘した新世代のアシッド・ハウス野郎で、すでにこれが4枚目のシングル。前作「彼女はアシッド」に続いて、レトロスペクティヴなアシッド・ハウスを展開している。というか、アシッド・ハウスとは、いま本当にレアグルーヴになっている。より音がクリアになって、もちろんベース・ミュージックの流れを引いてはいるものの、ウワモノのアシッド音は紛れもなく1987年のシカゴである。

3.Floating Points - Faruxz / Marilyn Eglo Records


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 今年の6月にリリースされた12インチで、A面の"Faruxz"は、以下に挙げるアーティスト名のうち3人好きな人がいたら間違いなく聴いたほうが良い曲。カール・クレイグ、初期のエイフェックス・ツイン、フローレンス、グローバル・コミュニケーション、あるいは〈FXHE〉レーベルの美しいディープ・ハウス。

4.Lucky Paul - The Slow Ground EP Somethink Sounds


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 グライム/ダブステップの荒野をあとに洗練化へと向かうネオ・ソウルからまた新しい才能が登場した。これはロンドンの新しいレーベルから、ニュージーランド出身でベルリン在住のラッキー・ポールのデビューEP......EPとは言え7曲入り。
 B面ではギャング・カラーズ(ジャイル・ピーターソンのレーベルの秘密兵器)、エリフィノ(Eliphino)がリミックスをしている。ゴンザレスやモッキーらとセッションしているドラマーだという話だが、グライム(ヒップホップ)の冷たいビートにパーカッションを与えたA-1やA-3、ジェームス・ブレイクやマウント・キンビーを意識したA-2、そしてR&Bを試みたA-4など彼の折衷的な態度を見せている。

5.Δ Δ - Sportex / Ikonika Remix Pushing Red


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 テキサスのダブステップのレーベルから、謎のプロジェクトのリリースだが素晴らしい。音は現代風のヒップ・ハウスというか、実にエネルギッシュなラップ入りのダブステップとシカゴ・ハウスとの古くて新しい幸福な出会いとなっている。B面は女流ダブステッパー、アイコニカよるジューク。前半は絵に描いたようなジュークで、しかし後半は彼女のコズミックなグルーヴで飛ばしていく。  〈プッシング・レッド〉はアメリカのレーベルだが、音はUKの影響下にある。アメリカ人プロデューサー、ジャス・ワン(Jus Wan)によるUKガラージ作品などリリースしている。

6.Duff Disco - Grand Master Duff / Slow Duff Disco


 今年はダフステップ名義でアルバムを発表したジェレミー・ダフィーのダフ・ディスコ名義のアンオフィシャルな1枚。A面はグランドマスター・フラッシュ&ザ・フューリアス・ファイヴの"ザ・メッセージ"、B面はカイリー・ミノーグの"スロー"をネタにしている。彼らしい、気の抜けたゆるいディスコだが、B面はとくにその脱力感がひかっている。

7.Untold - Bones Remixes SSSSS


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 ポスト・ダブステップにおいて、多くのリスナーにアルバムが待たれているのはピアソン・サウンドとそしてこのアントールドだろうけれど、筆者がより得体の知れない才能を感じているのは後者である。ピアソン・サウンドはプラスティックマンをなぞることができるが、アントールドは、これだけ多くのプロデューサーがハウス回帰している現在でも他とは違うところを見せている。
 これは2008年の曲をジョーとロックウェルがリミックスしたもので、ジョーのリミックス・ヴァージョンがとにかく素晴らしい。キックドラムに頼らずに最小のパーカッションで構成されるこのトラックは、機械で作られるダンス・ミュージックにはまだ創造の余地があることを証明しているようだ。

8.Owiny Sigoma Band - Tafsiri Sound Brownswood Recordings


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 アフリカ・ミュージックは新たな展開は、クラブ・カルチャーとの交流である。ナイロビのオウニー・シゴマ・バンドのリミックス・シングルは、そのことを象徴する。A面はクァンティックによる2ヴァージョン、フリップ・サイドはジェシー・ハケット(ロンドンの〈オネスト・ジョンズ〉からのジャズ/ファンクの作品で知られる)、ヘロー・スキニー(何者かわからん)によるヴァージョン。スキニーによるボンゴやコンガの響きに的を絞ったややファンキーよりのミックス以外は、ハウス・ミュージックとして機能する。すべてが良く聴こえるのは原曲がいいからだ。

9.Mark Ernestus Meets BBC - Ngunyuta Dance Remix Honest Jon's Records


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 これもアフリカとクラブ・カルチャーとの交流のひとつ。現代の南アフリカ音楽のコンピレーション・アルバム『New Wave Dance Music From South Africa』の収録曲をベーシック・チャンネルのマーク・エルネストゥスがリミックスしたものだが、まったくお見事な出来。ドイツ的な美意識による直線的なミニマル・ダブの極意というか、『ゼロ・セット』が古く思えるほど。アフリカの熱さとドイツのメトロノーミックなビートの出会い。
 ちなみに、このシリーズには他にアンソニー・シェイカー、そしてリカルド・ヴラロヴォスの2枚がある。筆者は3枚試聴してこれだけを買った。

10. Bjork - The Crystalline Series (Omar Souleyman Versions) One Little Indian


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E王"クリスタライン"はリスナーを惹きつけて止まないビョークの得意なコブシ回しの入ったパワフルな曲で、彼女の音楽にハマったことのあるリスナーなら1回聴いてすっかり好きになってしまうタイプの曲である。オリジナルはシンセ・ポップ的なはじまりから後半はエイフェックス・ツイン流のドリルンベースへと展開する。ビョークらしいエレクトロニック・ミュージックのパワーを吸収した曲である。
 リミキサーでもっとも驚いたのが、アラン・ビショップが世界に広めたであろうシリアのカントリー・フォーク歌手のオマー・ソウレイマンで、リミックスというよりは、そのオリジナルに合わせて演奏して(サンプラーをブッ叩いて)、歌っている。この濃厚なエキゾチズムはかなり魅力で......というか爆笑ものだ。B面に収録された2曲ではほとんど自分のやりたいことをやって(演奏して、うわーおーなどと高らかに歌い)さっさと切り上げるという、実に清々しい態度でビョークに接しているように思える。だいたい、リミックスを依頼されたというのに、ソウレイマンは勝手に共作にまでしてしまったようなのだ。ちなみにこれはシリーズの3作目である。2作目がマシュー・ハーバート、4作目がポップス界の大物サーバン・ゲニー。
 しかし、A面45回転、B面33回転というのがいまのトレンドなんだとあらためて認識した。

11.The Stepkids - Legend In My Own Mind Stones Throw


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 これはもう完璧なレトロマニア。甘ったるいヴィンテージ・サイケデリック・ファンクのスタイル(テンプテーションズの"クラウド・ナイン"とか、あのあたりです)を展開する3人組のヴォーカル・グループ、ザ・ステップキッズのアルバムからの先行シングル。たたみかけるシンセサイザーの感じはいまどきのチルウェイヴにも通じる......というか、最近の〈ストーンズ・スロウ〉は、ジェイムス・パンツもそうだが、インディ・ロック・キッズ向けのものが目立っている。

12.Frankie Knuckles Feat. Jamie Principle - I'll Take You There Nocturnal Groove


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 ハーキュリーズ&ラヴ・アフェアにフレンドリー・ファイアーズ......フランキー・ナックルズとジェイミー・プリンプルといった巨匠がカムバックする準備は整っていた。シンセ・ポップのアンダーグラウンド・ダンス・ヴァージョンとしてのハウス・ミュージックである。
 そういえば最近はグラスゴーの〈ナンバーズ〉からファンタジー・クラブの"ミステリー・ガール"がリイシューされている。きっと近々、DJピエールも出てくるだろう。シカゴ・ハウスは確実にいま旬なのだ!

13.James Blake - Order / Pan Hemlock Recordings


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 デビュー・アルバムとも、そして「CMYK」ともまた別の、ジェームス・ブレイクのメロディらしいメロディなしの、ミニマル・トラックがふたつ。ラマダンマンを徹底的にストイックに、反物語的にした感じで、ちょうどこのEPを買うときにプラスティイックマンのボックス・セットがレジの隣にあった。
 まあ......このアシッディな感覚は〈ヘムロック〉らしいと言えばらしいし、"Pan"の荒廃したイメージは他にない説得力を秘めているかもしれない。ダンス・ミュージックとしての面白味においては、10年前のヘロイン・ハウスを彷彿させる。そういう意味では筆者にはアンビヴァレンツな作品で、いちど評価を上げるとしばらくは何をやっても支持されるというのは、ありがちなことではあるけれど、これよりも数ヶ月前に都内のお店に出回っていたデスチャとリル・ウェインをネタにしたトラックのほうが、いまはまだ魅力を感じる。

14.Four Tet - Locked / Pyramid Text


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 フォー・テットの主宰する〈テキスト〉レーベルは、わが国の12インチ市場でいまもっとも人気のひとつである。すぐに売り切れるのだ。それもよくわかるというか、"Locked"はミニマル・ハウスのフォーマットを使って、フォー・テットらしいメロウな展開をする。カール・クレイグがペーパークリップ・ピープル名義でダブステップ少々のビートを取り入れたと想像すれば良い。"Pyramid"は、いわばフォー・テット流のシカゴ・ディープ・ハウス解釈で、オーソドックスな4/4キックドラムのグルーヴィーなダンス・ミュージック。トラックの後半にはエレガントなメロディが重なってくる。

15.Juk Juk - Winter Turns Spring Text


 何者かわからないが、このスロー・テンポのミニマル・ハウスは機能性重視のトラックではない。〈テキスト〉レーベルらしい楽曲性の魅力に重点をおいた、陶酔的な響きを有している。メロディが重なる"Winter Turns Spring(冬から春へ)"の素晴らしい叙情性を聴いたら、作者が何者かわからなかろうが、思わずレジに走るだろう。フリップ・サイドの"Frozen"もそうだ。牧歌的なアンビエントではじまって、しばらくすると遅めのビートが脈打つそれは、空想的な悦びを刺激するだろう。
 もしお店に行ってフォー・テットのEPかこれかで迷うことがあれば、筆者は迷わずこちらをオススメする。

16.DjRum - Mountains EP (Part 1)+(Part 2) 2nd Drop


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 このレーベルは、ダブステップ系の人気レーベルのひとつなのだが、前回のLV以来、2枚同時(Part 1、Part 2)にリリースしている。しかも内容が素晴らしいから、タチが悪い。90年代のダビーなブリストル・サウンド、もしくはブリアルが好きなリスナーにはたまらない音楽で、そう、ダブの恍惚なのだ。フリップ・サイドはダンスフロア愛好者向け。
 ジャマイカ声のMCが入る"Part 2"も良いし、そこに女性ヴォーカルが重なる"Part 3"への展開も申し分ない。とくに後者のずぶずぶのダウンテンポは葉族には最高のBGMだろう。"Turiya"は女性ヴォーカルを活かしたソウルフルなダブステップで、目新しさはないが、筆者はとってはこれがもっともグッと来るタイプのアーバン・ソウルである。DJラムか......覚えておこう!

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