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"生きる"勇気――B.I.G JOE - ele-king

この国のラップ・ミュージックにおけるイリーガルなトピックやニュースを単純に善悪の問題へと矮小化することは、つまり、その背後にある人間の苦悩や葛藤、文化や社会の複雑さや本質から目を背ける愚かな行為と言わざるを得ない。

 すでに1ヶ月以上も前のことだが、5月14日、池袋のヒップホップ・クラブ〈bed〉にビッグ・ジョーのライヴを観に出かけた。終電後、家のある中野から1時間かけて歩いた。〈KAIKOO POPWAVE FESTIVAL '10〉でのライヴを友だちと酒盛りに興じる間に見逃してしまったことを後悔していた。だから、その日は、酒は控え目にして、ライヴの時間を待っていた。ビッグ・ジョーは、「WORLD IS OURS」と冠された全国ツアーの一環で東京を訪れ、MSCの漢らが主催する〈MONSTER BOX〉に出演していたのだ。ハードでタフなスタイルを愛するBボーイが集まる、ハードコア・ヒップホップのパーティだ。DJ BAKU、CIA ZOOのTONOとHI-DEF、THINK TANKのJUBE、INNERSCIENCE、JUSWANNA、PUNPEE、S.L.A.C.K.、CHIYORI、PAYBACK BOYSのMERCYと、100人も入ればいっぱいのクラブには多くのラッパー、DJ、ミュージシャンも駆け付けていた。

 深夜3時過ぎ、ビッグ・ジョーは、圧倒的な存在感を持ってステージに登場した。オーディエンスを一瞬にして釘付けにする訴求力にはやはり特別なものがある。ステージで躍動するビッグ・ジョーは、ハードにパンチを繰り出す野性味溢れるボクサーのようであり、愛を説く説教師のようであり、また、街頭で群集に決起を呼びかける扇動者のようでさえあった。ストリートの知性とは何たるかを、スピリチュアルに、セクシーに、ポジティヴに表現し、光と影の世界を行き来していた。ライヴ前半、いま注目のトラックメイカーのBUNによるスペイシーなグリッチ・ホップ風のトラックの上で、ビッグ・ジョーが過去の追憶と未来への決意を歌う"DREAM ON"がはじまる。『RIZE AGAIN』に収録された曲だ。ビッグ・ジョーが「夢を持っているヤツら手を上げろ!」と叫ぶと、フロアが一瞬身構えたように見えたが、4、5人の女性ファンが豪快に体を揺らしながら、いかついBボーイたちを尻目に大きな歓声を上げるのが目に飛び込んできた。

B.I.G JOE / Rize Again
B.I.G JOE
Rize Again

Triumph Records /
Ultra-Vibe
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 1975年、ビッグ・ジョーこと中田譲司は北海道・札幌に生まれる。ビッグ・ジョーは、『RIZE AGAIN』のなかでひと際メランコリックな"TILL THE DAY I DIE"という曲でも自身の幼少期について赤裸々に告白しているが、リーダーを務めるヒップホップ・グループ、MIC JACK PRODUCTION(以下、MJP)のHP内のブログで、生い立ちについて次のように綴っている。

「物心がついた頃、親父がヤクザだったのが判明して、悪いことするのがそんなに悪い事だとは思ってなかったんだ。悪いことと言っても万引き、ちょっとした盗み、ギャング団みたいなのを小6までに結成して中学入ってからは、喧嘩、カツアゲ、タバコ、バイク、夜遊び、マ-ジャン、e.t.c...あげればもう片手ぐらいは出てきそうだが、YOU KNOW?? いたって普通の悪いことだよ」(『Joe`s Colum』VOL.21 「BEEF&DRAMA」 08年2月)

 ストリートで生きる16歳の不良少年を音楽に目覚めさせたのは、レゲエのセレクターの兄が勤める美容室にあった2台のターンテーブルとレゲエ・ミュージシャン、PAPA Bのライヴだった。「兄貴がレゲエを買ってたんで、俺は違うのを買おうって。ビズ・マーキーとかEPMDとかを買ったりしてた」
 ビッグ・ジョーは、レゲエのディージェーやセレクターではなく、ヒップホップのラッパーとしてキャリアをスタートする。転機は19歳の頃に訪れる。RANKIN TAXIが司会を務める『TAXI A GOGO』というTV番組のMCコンテストに出場し、北海道予選で優勝を果たしたのだ。
 その流れでDJ TAMAとSTRIVERZ RAWを結成。その後、90年代中盤にRAPPAZ ROCKを結成し、当時の日本語ラップをドキュメントしたコンピレーション・シリーズ『THE BEST OF JAPANESE HIP HOP』に、"デクの棒""常夜灯"といった曲が収録される。先日亡くなったアメリカのラッパー、グールーを擁したギャング・スターやアイス・キューブが札幌に来た際には、彼らの前座を務め、ジェルー・ザ・ダマジャらとのフリースタイルも経験している。THA BLUE HERBのILL-BOSSTINOがビッグ・ジョーのステージに感化され、ラップをはじめたエピソードは日本語ラップの熱心なリスナーの間では良く知られているが、ビッグ・ジョーは自他共に認める北海道のラッパーのオリジネイターとして名高い人物でもある。

 僕の手元には、RAPPAZ ROCKとILL-BOSSTINO(当時はBOSS THE MC)が〈NORTH WAVE〉という北海道のFM局に出演したときのCDRがある。MJPの取材で札幌を訪れた際、MJPのDJ KENからもらったものだ。そこでは、ビッグ・ジョー、ILL-BOSSTINO、SHUREN the FIREらが、荒削りなフリースタイルを30分近くに渡って披露している。ハードコアなラップ・スタイルは、たしかに90年代の日本語ラップの先駆的存在であるMICROPHONE PAGERやKING GIDDRAからの影響を感じさせるが、しかし同時に、胎動しつつあるシーンの渦中で、オリジナリティを獲得するために才能を磨き合う姿が刻み込まれている。前年に日比谷野外音楽堂で〈さんぴんCAMP〉が開かれた97年、まだ全国的に無名だった彼らの、地方都市のアンダーグラウンド・カルチャーを全国に認めさせたいという意地とプライドが札幌の分厚い積雪を溶かすような熱気となって放出されている。

 その2年後、99年にMJPは結成される。札幌、帯広、千歳、釧路など異なる出身地を持つ、ラッパーのビッグ・ジョー、JFK、INI、LARGE IRON、SHUREN the FIRE(現在は脱退)、DJ/トラックメイカー/プロデューサーのDOGG、KEN、HALT、AZZ FUNK(現在は脱退)から成るグループは、クラブでの出会いやマイク・バトルを通じて、徐々に形成されていった。そして、02年にファースト・アルバム『SPIRITUAL BULLET』を発表する。すでにMJPのサウンドのオリジナリティはここで完成している。ファンク、ジャズ、レゲエ、ダンス・ミュージックの要素を詰め込んだ雑食性豊かなこのアルバムは、全国のヒップホップ・リスナーの耳に届き、音楽メディアからも高く評価される。14分を超えるコズミック・ファンク"Cos-Moz"でラッパーたちは壮大なSF叙事詩を紡いでいるが、この曲は、SHING02の"星の王子様"がそうであるように、架空の宇宙旅行を通じて人類のあり方を問おうとする。同郷のTHA BLUE HERBと同じく、「生きる」というテーマに対するシリアスな態度は彼らのひとつの魅力である。
 また、MJPが所属する〈ill dance music〉というインディペンデント・レーベルの名が示すように、ヒップホップとダンス・ミュージックの融合はつねにMJPのサウンドの通奏低音として鳴り続けている。ライヴに行けば、MJPにとってダンスがどれだけ重要なファクターであるかがよくわかるだろう。そこでは、ハウスやテクノといったダンス・ミュージックの文化が独自の発展を遂げた札幌という土地の空気を吸い込んだ音を聴くことができる。『SPIRITUAL BULLET』はインディペンデントのアルバムとしてそれなりのセールスを記録するが、それでも彼らが期待したほどの劇的な展開をMJPにもたらしてはくれなかった。金銭的に潤ったわけではなかった。音楽だけで生活をすることはそんなに生易しいものではなかった。

 その矢先、事件は起きる。03年2月25日、ビッグ・ジョーが香港からオーストラリアに約3キロのヘロインを密輸しようとした際、シドニー空港の税関の荷物検査で摘発され、麻薬密輸の罪で逮捕、起訴されたのだ。当初は軽くても10~15年、最悪の場合は無期懲役の可能性もあった。「血の気が失せたというか、オレの人生は終わりだなって。自殺も考えました」
 黒幕の存在が認められたことなど、いくつかの要因が救いとなり、10ヶ月の裁判の後、6年間の実刑判決が言い渡される。少しずつ未来が見えはじめる。しかし、なぜ、そのような危険な仕事を引き受けたのだろう。「もちろん金もあるけど、それだけじゃないといまはっきりと言えるんです。例えば(運び屋の仕事が)成功したとしても自分にとっていいトピックになるのかなって。そこでアーティストとしてのオレはどういう風に変わっていくのかなって」
 ビッグ・ジョーは、09年2月の帰国後、渋谷のカフェで取材した際に穏やかな口調で僕にそう答えてくれた。

 犯罪行為へと向かった彼の動機を浅はかだと嘲笑することは容易だし、犯罪行為そのものを批判することも同じくである。果たして、犯罪を道徳的に断罪することにどれだけの意味があるのか。さらに、あえて書くが、断罪せずとも、この国のラップ・ミュージックにおけるイリーガルなトピックやニュースを単純に善悪の問題へと矮小化することは、つまり、その背後にある人間の苦悩や葛藤、文化や社会の複雑さや本質から目を背ける愚かな行為と言わざるを得ない。

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ビッグ・ジョーは持ち前の明るさとオープンな人柄で多様な国籍・人種―イタリア人、ギリシャ人、アメリカ人、フランス人、ロシア人、中国人、韓国人、レバノン人、アボリジヌー――の囚人たちと交流を深め、肉体を鍛え、哲学的思索に耽る。

小便やゲロまみれの裏路地で俺は生きてゆくために必要な日銭を稼いだ
小分けしたヤクをいくつも売りさばいた
UNKYのほとんどがヤクの奴隷さ
出口の無い迷宮に俺はいた
長い夜が永久にさえ思えて来た
さらに濃い霧が俺をつつみ込み
もう来た道がどちらかさえもわからないんだ "IN THE DARKNESS"

B.I.G JOE / Rize Again
B.I.G JOE
THE LOST DOPE

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 逮捕以前に制作され、ビッグ・ジョーの評価を決定付けたソロ・ファースト・アルバム『LOST DOPE』(06年)に収録された"IN THE DARKNESS"では、出口の見えない漆黒の闇のなかで孤独感に苛まれる心情が吐露されている。儚くも美しいピアノのウワモノから死の匂いは漂えども、希望の香りを嗅ぎ取ることは難しい。ある意味、ビッグ・ジョーのその後を予見しているような曲だ。『イルマティック』の頃のナズと『レディ・トゥ・ダイ』の頃のノートリアス B.I.G.が、一人の人間の中で蠢いているとでも形容できようか。数年後に興隆する、この国の都市生活者の過酷な現実を炙り出した(ドラッグ・ディールを主題とした)ハスリング・ラップのニヒリズムの極致に、すでにこの曲は到達していたのではないだろうか。

 徹底的にリアリストになるか、露悪的なニヒリストになるか。00年代、この国のラップ・ミュージックのいち部は、過酷な現実を描写することで圧倒的な説得力を有した。01年に発足した小泉政権が推し進めた、相互扶助や社会福祉を切り捨て、経済的な競争原理を優先する新自由主義が、ヒップホップの拝金主義的なメンタリティやゲットー・リアリズムに拍車をかけたのは皮肉な話ではある。カネ、セックス、ドラッグ、貧困、暴力。メジャーの音楽産業が尻尾を巻いて逃げてしまうようなハードなリリックやトピックが、アンダーグラウンド・ラップ・ミュージックのシーンを席巻した。
 たしかに、たんなるセンセーショナリズムとしての表現もあっただろう。しかし、そのシーンにおいて、少なくない才能あるラッパーが登場し、切実な音と言葉が創造され、多くの若者が共鳴し、熱狂したのだ。MSCの漢はその代表格のひとりである。

 紋切り型な表現を使うならば、彼らの音楽は、マスメディアやジャーナリスト、社会学者さえ見向きもしない社会の片隅からの叫びであり、声なき声だった。そこからは希望の言葉も絶望の言葉も聞こえてきたが、彼らの反社会性や反抗は「不良」という酷く安直なカテゴライズに回収され、片付けられることが少なくなかった。だが、「不良」はひとつの属性であって、彼らのすべてではない。重要なのは、彼らが社会の片隅から生々しい声を上げ、出自や階層や性別を越え、このどうしようもない社会で生きるという感覚を持つ人びとと響き合ったということだ。彼らの強烈に毒気のある表現は階級闘争の萌芽を孕んでいると僕は考えている。

 80年代後半、レーガン政権下のアメリカでギャングスタ・ラップのオリジネイターであるN.W.Aが登場したとき、その暴走する反逆に議会を巻き込むほどの社会的な論議が起こり、物議を醸した。メンバーのアイス・キューブは、元ブラック・パンサー党員のアンジェラ・デイヴィスやフェミニストの論客と対談で激しくやり合った。アメリカのあるヒップホップ評論家は、ポップ・カルチャーへの影響力という観点から言えば、N.W.Aのデビュー・アルバム『ストレイト・アウタ・コンプトン』は、セックス・ピストルズ『ネヴァー・マインド・ザ・ボロックス』がイギリスに与えた衝撃に匹敵すると評価している。つまり、野蛮な反抗と最新の社会問題、そして、ストリート出身者ならば誰でも音楽を作れるというDIY精神に火を付けたという点において。

 日本のアンダーグラウンド・ラップ・ミュージックが国家を脅かしているかと言えば、もちろんノーである。あるいは、N.W.A.やセックス・ピストルズほどの社会的・文化的影響力を持っているかと言えば、それももちろんノーだ。このアンダーグラウンド・カルチャーは、積極的に平穏な昼間の世界に背を向け、メジャーの音楽産業から逸脱し、地下に潜ることで、その粗暴でアナーキーな感性を研ぎ澄ましている。現在のこの国の音楽という分野、あるいは社会においてはそのやり方しかなかったとも言える。
 話があまりにも拡散するので、その理由や詳細についてここでは書かない。いずれにしろ、この文化が新しく刺激的な才能あるアーティストを輩出し、また、日々刻々と変化するこの国のダークサイドをリアルタイムに描写し、問題を提起し続けているのは事実なのだ。

  先日リリースされたばかりのHIRAGEN(彼の存在を僕に教えてくれたのはPAYBACK BOYSのMERCYだ)の強烈なファースト・アルバム『CASTE』を聴いたとき、喉を潰したような声でスピットするラップとインダストリアルなビートに、UKのグライムに似た切迫感とノリを感じた。この乾いた路上のニヒリズムとデカダンスはどこまで行くのだろうか。そう思わせる得体の知れない荒々しいパワーが漲っている。HIRAGEN from TYRANTについては、いずれ改めて紹介するつもりだ。

 そろそろ話をビッグ・ジョーに戻そう。"IN THE DARKNESS"をアンプ・フィドラーを彷彿とさせるデトロイティッシュなビートダウン・トラックにリミックスしたDJ KENのヴァージョンは、深いニヒリズムをグルーヴィーなダンス・ミュージックの渦の中に放り込むことで未来への飛翔を試みている。ビッグ・ジョーと仲間たちのニヒリズムとの闘いの合図が鳴らされているとでも言えようか。そして、ここでの音楽的探究心こそ、ビッグ・ジョーとMJPの6年間を単なる空白期間にしなかったのだ。

 この電話は他でもなく盗聴されてるが
 ソウルまでは奪えはしないさ"LOST DOPE"

 ビッグ・ジョーがジェイル(刑務所)にいるあいだ、MJPのEP『ExPerience the ill dance music』(05年)、『LOST DOPE』、MJPのセカンド・アルバム『UNIVERSAL TRUTH』(06年)、獄中で出会ったアメリカの黒人ラッパー、エル・サディークとのEP『2WAY STREET』(07年)、ソロ・セカンド・アルバム『COME CLEAN』(08年)がリリースされる。『LOST DOPE』には、ジェイルの電話越しにラップを録音した表題曲や、ギターの弾き語りを伴奏にしたラップをテープレコーダーに録音し、テープのリールを封筒に忍ばせ札幌のMJPの元に送り再構築された曲が収められている。音楽への情熱と熱意を看守に訴えたビッグ・ジョーは、音楽スタジオのあるジェイルへの移転を許可され、そこでエンジニアとして働くことを実現させる。『UNIVERSAL TRUTH』以降のラップは、06~07年のあいだにそのスタジオで録音されている。

 オーストラリアのジェイルが日本の刑務所に比べれば、「自由」だったことは不幸中の幸いだった。僕はこれまでビッグ・ジョーに5回ほど取材しているが、そのうち3回はジェイル内の電話を通じて実現している。その貴重なコミュニケーション手段がなければ、この原稿は書けなかっただろうし、囚われの身となっている6年間にこれだけの作品がリリースされることもなかったに違いない。

 ビッグ・ジョーは持ち前の明るさとオープンな人柄で多様な国籍・人種―イタリア人、ギリシャ人、アメリカ人、フランス人、ロシア人、中国人、韓国人、レバノン人、アボリジヌー――の囚人たちと交流を深め、肉体を鍛え、哲学的思索に耽る。2パックは獄中で15世紀イタリアの政治思想家、マキャベリの『君主論』を愛読したというが、ビッグ・ジョーはドイツの詩人・小説家であるゲーテを座右の書として生き抜いた。『UNIVERSAL TRUTH』のインナースリーヴには、アメリカの詩人・批評家のエズラ・パウンドの言葉が引用されている。彼はラップで格言めいたパンチラインを時節展開する。それは、そこそこ哲学や古典文学の知識がある人間が鼻にもかけない類のものかもしれないが、彼が人生のどん底から這い上がるために、知識への飢えを満たすために獲得した言葉をいったい誰が簡単に否定できようか。

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ビッグ・ジョーが伝えたいメッセージも至ってシンプルだ。ずばりそれは、「世界は自分たちの手で変えられる」ということである。世界を変える必要はないと考える人びとにとっては、彼の直球な物言いは滑稽に聞こえるだろう。

 俺には聞こえるんだ......
 本当は病んで病んで病んでどうしようもないのに、
 一人じゃ不安で、
 何をどうしたいのかもわからず救いの無い大都会の海で、
 溺れている人間達の、澱んだ声が......
 俺達は何のためにこの世に生まれたんだ?
 何故こうして 息を吸って、今を生きているんだ?
 そこには、意味はあるんだろうか?
 そんな社会に生まれて、何かがおかしいと思ったおかげで、
 けだものあつかいにされ
 彼等の期待通り犯罪を犯し、囚われの身となり、
 もう誰にも顔は見せられない
 PSYCHO......彼等は俺の事をそう呼ぶんだ
 ......いい響きだ、最高じゃないか/
 これで良くも悪くも、彼等と境界線が引ける"PSYCHO"

B.I.G JOE / Rize Again
B.I.G JOE /
COME CLEAN

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 『COME CLEAN』は、こんな哲学的な問いかけから幕を開ける。メタファーを多用したリリックとライム、ビートに絡みつくジャジーなフロウ、寓話的で文学的なストーリーテリング、社会意識を持ったアティテュード、汚れた魂と美しい魂が交錯するスピリチュアリズム、それらの要素を併せ持ったビッグ・ジョーのラップをバックアップするのは、アメリカナイズされたトレンドのヒップホップとは違う、自分たちの音を鳴らすことに情熱を傾けるトラックメイカーたちのユニークで果敢な挑戦だ。
 トラックメイカーたちはすでに録音されたラップに合わせる形で制作を進めた。LAのアンダーグラウンドなパーティ〈ロー・エンド・セオリー〉と共振する、Olive Oil、BUNによる凶暴で繊細なビートの実験、DADDY VEGA a.k.a. REVEL BEATZ によるファンキーなビート、あるいは、DJ QUIETSTORM の妖しいサイケデリック・ヒップホップ"SPEAK 2 THE SILENT"があり、ILLCIT TSUBOIの"CLINK RAP"に至ってはスピリチュアル・ジャズとラップの対決である。

 ビッグ・ジョーは、自身の体験を基にドラッグ・ディーラーの不幸な顛末を物語化し("D.D.D-Drug Dealer`s Destiny")、逮捕直後の絶望的な状況と心境を告白し("NOWHERE")、ドラッグ・ディールで身を滅ぼすことの愚かさをメッセージする("YOU WANNA BE ME")。「道ばたでドラッグを売りハッスルしながらマッポに追われる生活なんてクソだ」、"YOU WANNA BE ME"のファースト・ヴァースではこう言い切る。だが、ここで展開されるのはありきたりな更正物語や陳腐な道徳論ではない。また、アンチ・ハスリング・ラップやポスト・ハスリング・ラップという単純な図式化に収まるものでもない。僕も最初は、前述した冒頭の数曲に耳がいった。ある種のスキャンダリズムに関心を奪われていたのはたしかだ。しかし、アルバムを何度も繰り返し聴くうちに、"PUBLIC ENENY NO.1"や"WE`RE SOULJA"といったより深く彼の人生観や哲学や内省を抉っていくような曲の虜になっていった。

 "PUBLIC ENEMY NO.1"でビッグ・ジョーは、生い立ちや犯罪者という自身の置かれた立場から、社会からの疎外と異端者の誇りについてラップしていく。
 正義とは何か? テロリズムとは何か? 反体制とは何か? 異端者とは誰か? そして自分は何者か? 自分自身と聴く者を答えのない問いの迷宮に引き摺り込みながらも、最後のところで異端者を鼓舞し続ける。そこに答えを差し出すかのように、ストリングスとビートが厳かなムードを演出する"WE`RE SOULJA"で、「誰もがたたかっている今もどこかで/命をかけ、/僕等はこの世に生きている限り/戦場の上の兵隊さまるで」と呼応する。
 愛、家族、自由、正義、理想、芸術、民衆、未来、革命......、何かのために誰もが闘っているのだと、闘うことの美しさと気高さを、ときに詩人が朗読するように、沈黙を味方につけながら官能的にフロウする。この2曲をプロデュースしたBUNの、金属片を擦り合わせたような鋭角的なビートの響きと、静謐さと躍動が入り混じるフライング・ロータス以降のセンスを感じさせる構成は、ビッグ・ジョーをひとりのラッパーから雄弁で情感豊かな説教師か扇動者へと変貌させているようである。聡明なギャングスタ・スタイルと野性的なコンシャス・スタイルの融合とでも言えようか。こういう表現が的確かどうかはわからないが、ここには――ハスラーから革命家に転身したマルコムXのように――町の不良がストリートの代弁者へと脱皮する姿が刻み込まれていると思えるのだ。なんというか、本質的なまでに闘うこと、反抗することを肯定する。その愚直さがなんとも潔く、清々しく、かっこいいのだ。

 今年発表された通算3枚目のソロ・アルバムとなる『RIZE AGAIN』のCDのインナーには、力強く突き上げた拳のなかにガーベラと思われる真紅の花が握られた絵が描かれ、"HERE I AM"というアルバムの最後を飾る曲のタイトルが上書きされている。このアートワークは、闘いと希望と平和のメタファーなのだろう。アルバムでは、SD JUNKSTAのNORIKIYOを客演に迎えた、シンセが勢いよくうねる表題曲が象徴するように、ビッグ・ジョーがこれまで溜め込んできたエナジーとファンクネスが一気に放出されている。共同プロデューサーに抜擢されたBUNが『COME CLEAN』以上に見せるユニークな表情と、現在インディペンデント・レーベル〈TRIUMPH RECORDS〉の主宰を務め、トラックメイカー/プロデューサーとしても活動するビッグ・ジョーの新たな側面も楽しめる。

 ところで、少なからず期待を寄せた民主党政権のだらしなさといったらないが、管直人新首相に至っては就任会見で「政治の役割は最小不幸社会を作ること」とやたら景気の悪いことを言い出し、しまいには消費税を上げるという。「こら! ふざけるな!」と家で酒を飲みながら心のなかで叫んでしまった。
 とはいえ、自分の生活を振り返ってみると、そこには多くの快楽があり、遊びがあり、満足がある。酒を飲んで、パーティに行って、気持ちの良い音楽と気の合う連中と酔って大騒ぎするのは最高に楽しいし、こうやって自分の好きなことを書いてお金をもらい、また発言する自由も感じている。だが、この日々の幸せは、諦めと表裏一体じゃなかろうかというアンヴィバレンツな感慨に襲われてしまうときがある。そんな時、フェラ・クティやジェームス・ブラウンやボブ・マーリーといった理想主義と闘いの結晶のような最高にファンキーな音楽を聴くと、いまでも心底感動し勇気づけられるし、そこから湧き上がる躍動と闘争心を僕は深く愛している。

 そう、ビッグ・ジョーが伝えたいメッセージも至ってシンプルだ。ずばりそれは、「世界は自分たちの手で変えられる」ということである。変化を望まず、いまの世界でそこそこ上手くやることに疑いのない人びと、あるいは世界を変える必要はないと考える人びとにとっては、彼の直球な物言いは滑稽に聞こえるだろう。何を変えるのか? どんな世界を望むのか? そして、何のための闘いなのか? 体制と反体制、右翼と左翼、資本主義と共産主義という分かり易い二項対立など誰も信じていないし、これだけ価値観が多様化している時代に、何のための闘いなのかという問いはもっともややこしいい命題だ。しかし、ただ一つ言えるのは、生きることは正しく、そもそも生きることは闘いであるということだ。

 『RIZE AGAIN』の"SHE JUST..."という曲を聴くと、僕は、ビッグ・ジョーが何を背負いどこからやって来て、誰の味方であり、これからどこへ向かおうとしているのかが見えてくる。「彼女は天使の夢を見ていた/白い翼が空に散って目を開けた」というリリックからメロウに滑り出すソウル・フィーリングに溢れた"SHE JUST..."では、社会の片隅で寄り添って生きる国籍不明の若く無力な男女の儚く切ない物語が、女性ヴォーカリスト、TSUGUMIとの掛け合いのなかで丁寧に紡がれていく。
 そこでビッグ・ジョーが強烈に発している感情は、社会からはじかれた人びとへの深い慈愛のようなものである。彼が呼びかける相手は、ドラッグ・ディーラーであり、風俗嬢であり、サラリーマンであり、ヤンキーであり、オタクであり、Bボーイであり、その誰でもあり、誰でもないのかもしれない。ビッグ・ジョーが思い描く理想は、これから彼の音と言葉に力強いレスポンスを返すリスナーやオーディエンスとともにゆっくりと具体的な形を伴って立ち現れていくだろう。

 そして、この原稿も終盤を迎えた頃、ビッグなニュースが届けられた。ビッグ・ジョーは来たる7月21日に、ILL-BOSTTINO、Olive Oilと制作した「MISSION POSSIBLE」という、大胆にも、現在のこの国におけるもっともデリケートかつ重要な政治課題の一つである沖縄基地移設問題をテーマにしたシングルをリリースする。僕はその曲をまだ聴いていないが、勇敢な理想主義者である彼らの、音楽の力で世界を少しでもより良くしたいという強い信念に間違いはないと信じている。

 僕が1ヶ月以上前に観たビッグ・ジョーのライヴは素晴らしいものだった。全国各地を回る「WORLD IS OURS TOUR 2010」はまだ続いている。自分の目と耳でビッグ・ジョーの勇姿をたしかめ、大きな声を上げて欲しい。

Chart by TRASMUNDO 2010.06.29 - ele-king

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Budamonk&S.L.A.C.K.

Budamonk&S.L.A.C.K. 『Buda Space』 »COMMENT GET MUSIC

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ONE-LAW

ONE-LAW 『FAMILY RE:UNION #8』 »COMMENT GET MUSIC

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HIRAGEN from TYRANT

HIRAGEN from TYRANT 『CASTE』 »COMMENT GET MUSIC

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DJ PK presents(CIAZOO、SEMINISHUKEI)

DJ PK presents
(CIAZOO、SEMINISHUKEI)
『TEKNO BOMBING』 »COMMENT GET MUSIC

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Sunouchi Kemm

Sunouchi Kemm 『deconstruction』 »COMMENT GET MUSIC

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SONETORIOUS(SEMINISHUKEI)

SONETORIOUS
(SEMINISHUKEI)
『Bedtime Beats vol.1』 »COMMENT GET MUSIC

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KRBT A.K.A.DON.K(SEMINISHUKEI)

KRBT A.K.A.DON.K
(SEMINISHUKEI)
『Bed yu to eat』 »COMMENT GET MUSIC

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LIL' MOFO(WAG.)

LIL' MOFO
(WAG.)
『BAJO EL SUELO spanish underground peeping』 »COMMENT GET MUSIC

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平塚デコーダー

平塚デコーダー 『Drip On Sugar』(DEMO) »COMMENT GET MUSIC

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ISEHARA KAIDO BOYS

ISEHARA KAIDO BOYS 『FUCK MONDAY』(DEMO) »COMMENT GET MUSIC

Chart by JETSET 2010.06.28 - ele-king

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THE BACKWOODS

THE BACKWOODS SUN STREAM / MIDNIGHT RUN »COMMENT GET MUSIC
DJ Chida主宰の注目国産レーベル"ene"から3タイトル同時入荷です!!ご存知日本を代表するニュー・ディスコ・ユニット"Force Of Nature"のDJ KENTがラウンチしたニュー・プロジェクト"The Backwoods"による待望のデビュー・アルバムから先行12"カットが到着です!!

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ALLO DARLIN'

ALLO DARLIN' S.T. »COMMENT GET MUSIC
無条件降伏しかありません。正統派UKキューティー・バンドの超感動ファースト・アルバム!!LPも到着しました!!大人気爆発のロンドンの4ピース、Allo Darlin'。瑞々しいヴォーカルと、躍動感溢れる爽やかなサウンド、愛らしく儚げな雰囲気、全てがスペシャルです!!

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9DW

9DW CALIFORNIA EP »COMMENT GET MUSIC
DJ Chida主宰の注目国産レーベル"ene"から3タイトル同時入荷です!!サイトウケンスケ率いる日本が誇る世界標準コズミック・ファンク・バンド"9dw(Nine Days Wonder)"の'08年傑作アルバム"9dw"から、豪華気鋭アクトによるリミックス・カットがドロップ!!

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ADMIRAL FREEBEE

ADMIRAL FREEBEE MY HIPPIE AIN'T HIP »COMMENT GET MUSIC
ベルギーのグルーヴィー・シンガー・ソングライターをDJ Harveyがリミックス!!当店人気のArsenalをリリースするPlay Out!から、ベルギーのディランな男気S.S.W.、Armiral Freebeeのシングル!!

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KAORU INOUE

KAORU INOUE THE INVISIBLE ECLIPSE FEAT. JEBSKI »COMMENT GET MUSIC
ニュー・アルバムからの先行12"カット第2弾!!名作"Dancer"から5年振りのリリースを控える待望のニュー・アルバム"Sacred Days"から、DJ Yogurtとのコンビで御馴染み"Jebski"をフィーチャーした"The Invisible Eclipse"に加え、エンジニアNagとの共作"Ground Rhythm"の2トラックスを収録した先行12"カットが到着です。

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D BRIDGE

D BRIDGE PRODUCER NO2 REMIX EP »COMMENT GET MUSIC
最新鋭UKGシーンを牽引する天才RamadanmanによるリミックスB1を搭載!!☆特大推薦☆UKブロークン・ヒップホップ最重要レーベルの一角を成す名門Fat Cityからの傑作コンピ・シリーズ第2弾収録トラックを、鬼才2組がリミックスした強力カット!!

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TIAGO

TIAGO RIDER »COMMENT GET MUSIC
DJ Chida主宰の注目国産レーベル"ene"から3タイトル同時入荷です!!ene待望のニュー・リリースは、先日のHands Of Timeからのリリースも素晴しかったポルトガルの大注目アクト"Tiago"が登場!!加えてこちらも大注目の国産ユニット"Cos/Mes"が手掛けるリミックス・トラックも収録!!

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SILENT FREQUENCIES & VIBROMASTER / SILENT FREQUENCIES

SILENT FREQUENCIES & VIBROMASTER / SILENT FREQUENCIES EAST TALES / SILENT PROPHECIES »COMMENT GET MUSIC
☆大推薦☆姫神がダブステップ化したかのようなA1が激フレッシュです~!!フレンチ新興レーベルNeo Stepからの第1弾リリースを飾るのは、新鋭デュオSilent Frequenciesによるこちら。ヒーリング/ニューエイジ・ダブステップ特大ボムっ!!

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FEMI KUTI

FEMI KUTI FEMI REMIXES »COMMENT GET MUSIC
アフロ・ビートの申し子、Femi KutiのリミックスEPが登場!リミキサーにGeneral Elektriks、Chinese Man、Boom Bass、Bost&Bimを迎え、より幅の広がったアフロ・グルーヴに仕上がっています!

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AEROPLANE

AEROPLANE WE CAN'T FLY »COMMENT GET MUSIC
傑作トラックを引っ提げ久々の登場。確実に押さえて頂きたい名作です!!同郷"Eskimo"から4作目のシングル・リリースとなった人気アクト"Aeroplane"。リリース控えるファースト・アルバム"We Can't Fly"から話題のリード・トラックが先行12"カットです!!お見逃し無く~

Flying Lotus - ele-king

 やはり、アニマル・コレクティヴの『Merriweather Post Pavilion』がティッピング・ポイントということになるのだろうか、ここ数年、USインディ・ロックはすっかりサイケデリックづいていて、今年に入ってからも、MGMT『Congratulations』のビッグ・ヒットを筆頭に、ザ・ウッズ主宰〈Woodsist Records〉周辺のローファイ・リヴァイヴァルや、ザ・フレーミング・リップスとスターデス・アンド・ホワイト・ドワーフスによる、そのものズバリな『The Dark Side of The Moon』のカヴァー・アルバム等、ますます勢いを増している。しかし、それらの音がオリジナル・サマー・オブ・ラヴ世代と趣を異にしているのは、その深いディレイが、現実に対してかけられるのではなく、自分たち自身に対してかけられているというか、実に現実逃避的で、しかし、内省的というよりは、そう、母体回帰的な響きを持っているということだ。そこには、バラク・オバマでさえ焼け石に水だった政治への圧倒的な不信感が表れているのだろうが、彼らが現代のヒッピーだったとして、Pファンクやスライ&ザ・ファミリー・ストーンといったブラック・サイケデリアの役割を反転させつつ担っているのが、キッド・カディの『Man on The Moon』であり、トロ・イ・モワの『Causers of This』であり、この、フライング・ロータスの『コスモグランマ』だ。何しろ、母体回帰的という点で言うならば、スティーヴン・エリソンは本作を、母の死から受けた精神的なショックを芸術的に昇華するため、ジメチルトリプタミンでファックト・アップしながらつくったという。これ以上の例があるだろうか。

 あるいは、本作のタイトルである、ギリシャ語で"文字"を意味する"gramma"と、やはりギリシャ語で"秩序"や"美"を意味する"kosomo"より派生した"cosmo"を合わせた造語を下に、母体を、スター・チャイルドを包み込む宇宙と読み解けば、自身の生まれた年を掲げた06年の『1983』から、自身の生まれ育った街を掲げた08年の『Los Angeles』、そして、本作へという飛躍は、彼が敬愛するMC、NASの初期三作のジャケットにおける三段活用(少年→青年→ツタンカーメン)を思わせるし、つまり、この26歳のトラックメーカーは、サン・ラにはじまり、ジェフ・ミルズを経由して脈々と続くアフロ・フューチャリズムーーその世界認識では、ホーム・タウンと、宇宙として象徴化されたアフリカ大陸という失われた故郷が、媒介なしに繋がっているーーの歴史に名を連ねることになったのだ。または、"空飛ぶ睡蓮"というアーティスト・ネームがすでに予告していたように、彼の身体の中に受け継がれていたジョン・コルトレーンとアリス・コルトレーンのスピリチュアリズムが、いよいよ花開き、空へと舞い上がったのだと。

 00年代版『エンドトロデューシング...』として多くのフォロワーを生んだ前作の、そのリミックスを纏めた『LA CD』は、言わばLAを中心とした新たなシーンの見取り図だった。しかし、本作で、故郷を背に、宇宙へと旅立ってしまったフライング・ロータスは、フォーマット化されたグリッチ・ホップなど見向きもせず、早くも新たな領域に踏み込んでいる。ただし、かつて、音楽的な成長を求めて、同じ様にスピリチュアル・ジャズを模倣しようとしたものの、イージー・リスニングに成り下がってしまった所謂クラブ・ジャズやいち部のドラムンベースの轍を踏んでいないのは、生演奏を意欲的に取り入れつつも、全体の軸となっているのが、初期のジャングルを連想させる、チープで高速な、奇妙極まりない打ち込みのビートであるというところが大きいだろう。そんなハリボテ感は、一見、サイケデリックを演出する上では邪魔になっているように思えて、サーラーとスーサイダル・テンデンシーズという、LAが生んだ両極端なふたつのバンドに参加するスティーブ"サンダーキャット"ブラナーの蛇のように撓うベース・ラインや、自らの手による狼のように唸るサイン波ベースと絡み合いながら、深いエフェクトのブラックホールへと吸い込まれて行く時、えも言われぬトリップを生む。実際、サイケデリックを体験したことある人ならば、それが、子供騙しと深遠さが共存する感覚であることをよく知っているはずだ。その試みは、スクエアプッシャーの『Feed Me Weird Things』の時期や、我が国の誇るべきアンダーグラウンド・ダンス・ミュージック・シーンを引き合いに出せば、DJ Shhhという注目すべき才人とリンクしているようにも感じられる。あるいは、『鉄男』のヴィジュアルが浮かぶ、鋼鉄がグニャグニャと変化していくかのごとく、ヘヴィなのに軽やかなリズム・アプローチは、グッチ・メインの『The State vs. Radric Davis』をリキッドでヒタヒタにしたようにも。つまり、この、馬鹿馬鹿しくも崇高なアルバムは、伝統的であると同時に実験的であり、すでにグリッチ・ホップという文脈で語ることはできないどころか、同時代のサイケデリック・ミュージックの中でも頭ひとつ抜きん出ているのだ。政治性の欠落という点ではご他聞に漏れないが、いや、それこそが現代的なのだし、この空飛ぶレコードは、あなたをお望み通り、高く、遠く、そして奇妙な場所へと連れ去ってくれることだろう。

interview with Tim Lawrence - ele-king


アーサー・ラッセル
ニューヨーク、音楽、その大いなる冒険

P‐Vine BOOKs
ティム・ローレンス (著), 野田努 (監修), 山根夏実 (翻訳)

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ラヴ・セイヴス・ザ・デイ 究極のDJ/クラブ・カルチャー史
P‐Vine BOOKs
ティム・ローレンス (著)

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 ティム・ローレンスによる著書『アーサー・ラッセル(原題:Hold On to Your Dreams)』は、意義深い本である。自分が監修しているから言うわけではない。この本が売れようが売れまいが、僕のギャラは変わらない。

 最初出版社のY氏からこの仕事を依頼されたとき、内心「嘘でしょ!」と思った。いくらなんでもアーサー・ラッセル......それは無謀である。職業音楽ライターのあいだでもたいして知られていないし、ただでさえ本が売れないこの時代にアーサー・ラッセルとは......、たしかに偉大なアーティストに違いないが......、僕はY氏に「大丈夫ですか?」と訊き直したほどだった。
 ところがこの仕事に携わり、訳のほうが2章まで進んだ時点で、僕は素晴らしい著書に関われたと感激した。モダン・ラヴァーズの話まで出てくるとは思わなかったし、『アーサー・ラッセル』は、当初僕が想像していたよりもずいぶんスケールの大きな本だった。

 たしかにアーサー・ラッセルは、90年代半ばからゼロ年代にかけて再評価された、というか初めて真っ当に評価されたひとりである。『Wire』やデヴィッド・トゥープ、あるいはジャイルス・ピーターソンや〈ソウル・ジャズ〉レーベルのお陰で、彼の先鋭的なディスコ作品をはじめ、フォークやカントリーの諸作、あるいは意味不明な歌モノとしてあり続けた『ワールド・オブ・エコー』や回転数違いの録音で〈クレプスキュール〉から出されたままだったミニマルの作品『インストゥルメンタル』にいたるまで、ほとんど彼の作品は容易に聴けるようになった。
 と同時にアーサー・ラッセルに対するミステリーはますます高まった。いったいこの男は本当は何をしたかったのか? ディスコなのか? 現代音楽なのか? ロックなのか?

 重要なのはそういうことではない。著者であるティム・ローレンスは、『アーサー・ラッセル』の前には『ラヴ・セイヴス・ザ・デイ』という本で、70年代のニューヨークのディスコの歴史を綴っている。セカンド・サマー・オブ・ラヴに触発された彼は、70年代のニューヨークのディスコのなかに、とくに孤児院で育ったデヴィッド・マンキューソのなかにその理想主義の萌芽を見出している。『アーサー・ラッセル』はそれに続く本である。いくらなんでもアーサー・ラッセル......実は著者でさえ最初はそう思っていたと告白している。果たして需要はあるのかと。が、研究が進むにつれて、そうした懐疑はすべて消去された。それはこの物語がアーサー・ラッセル個人のそれではなく、彼と彼を取り巻く人びと、彼が暮らした都市の共同体的な物語だからである。

ティム・ローレンス(Tim Lawrence)
1967年ロンドン生まれ。1990年から1994年にかけてジャーナリストとして活躍。BBCに勤務しながら大学で学び、サセックス大学で英文学博士号修得。現在、東ロンドン大学で教えながら数多くのダンス・ミュージックのライナーノーツを執筆している。『アーサー・ラッセル』は『ラヴ・セイヴス・ザ・デイ』に続く2冊目の著書。

私の人生は新自由主義的な政策によって形作られたものです。私は著書で、新自由主義的な現在を改めて思い描く方法を模索していますが、それは現在と未来を豊かなものにできるように、それに力強い声を与えることが目的だと言えるでしょう。

あなたの『アーサー・ラッセル(原題:Hold On to Your Dreams)』、とても興味深く読ませていただきました。あなた自身も書いているように、あの本はアーサー・ラッセルという素晴らしい異端者の伝記であると同時に、それだけでは完結し得ない示唆的な内容となっています。おそらくあなたが望んでいるのは、アーサー・ラッセルを神格化することでもなければ、70年代ニューヨークのダウンタウンの文化的コミュニティへのノスタルジーに浸ることでもない。あなたは新自由主義がもたらす競争社会に翻弄されながら生きている私たちに、そうした冷酷な窒息状態を突破できるような可能性を、音楽を通していっしょに考えたいと願っている。そうじゃありませんか?

ティム:私が著書を通して成そうとしていることを雄弁に描写してくださいましたね。しかし厳密に言うと、アメリカで展開され、〈ザ・ロフト〉やさらに広義のダウンタウン・ダンス・ムーヴメントの形成に影を落としたカウンター・カルチャー運動に対する一種の弾圧は、新自由主義の台頭以前にまで遡るものなんです。同時に新自由主義への言及は、私がサッチャー・レーガン時代の申し子であるのと同じくらい正しいものでもあるとも言えます――なぜなら私はマーガレット・サッチャーとロナルド・レーガンが政権をとって間もなく政治を意識するようになり、それ故に私の人生は彼らの新自由主義的な政策によって形作られたものだからです。私は著書で、社会の境目に存在した文化的な歴史を研究することで新自由主義的な現在を改めて思い描く方法を模索していますが、それはその文化的な背景が現在と未来を豊かなものにできるように、それに力強い声を与えることが目的だと言えるでしょう。言い換えれば、歴史的な見地のためだけにそういったものを書くことには興味がないんです。私はそれが私たちの注目に値するから書き、そしてそれが私たちの注目に値するのは、その慣習に深い意義があり、今日的な意味を帯びているからに他ならないのです。

 もちろん〈ザ・ロフト〉やその後継的な〈パラダイス・ガラージ〉などのパーティは、いまでも多くのパーティ主催者、ダンサーやDJにとって非常に大きな意味を持ち続けていますし、デヴィッド・マンキューソもいまだにニューヨークのみならず日本やロンドンで〈ザ・ロフト〉やロフト・スタイルのパーティを主催し続けています。しかしアーサー・ラッセルに関して言えば、彼は表面的にはいち個人ですが、究極的に、彼が個人としての人生を歩むのではなく、飽くなき情熱で多岐にわたる音楽シーンで活動した共同的なミュージシャンだったからこそ私は彼について書きたいと思ったんです。そういった意味では、「アーサー・ラッセル」は反個人的な伝記、もしくは反伝記的な伝記だと言えるでしょう。この本は、ひとりの人間についてではなく、たまたま20世紀後半でもっとも美学的かつ社会的に進んでいると言われたシーンの数々で活動していたひとりのコラボレーターについての物語なのです。またアーサーは彼の時代の遥か先を行ってもいました。彼の音楽とコミュニティのヴィジョンに関して言えば、彼は私たちのまだ先を行っているでしょう。

あなたにとって(そして私たちにとって)考えるうえでの大いなるヒントのひとつ、それをあなたは(そして私たちは)クラブ・カルチャーに求めています。『ラヴ・セイヴス・ザ・デイ』をあなたは、デヴィッド・マンキューソの話からはじめています。また、彼の"生き方"ないしは"やり方"を、クラブ・カルチャーがなしうる最善のもののひとつとして記していると思います。都会で暮らす私たちにとって、あるいはノーマティヴな社会からはじき出された人たちにとって、あるいは競争社会の負け犬たちにとって、クラブ・カルチャーというのは社会的な役目を果たす可能性を大いに秘めているし、あなたはそこに期待しているわけですよね?

ティム:最初に少し訂正させてください。デヴィッドは〈ザ・ロフト〉をクラブとして運営していたわけではありません。プライヴェートなパーティとして主催していたんです。私やみなさんが誕生日を祝うためにパーティを開くように、彼は厳密には自宅でパーティを開催していただけなんです。デヴィッドが山のような煩わしく制限的な規制を守る必要がなかったことを考えると――アルコールを売らないかぎり――その区別はいまも昔も重要です。その結果、〈ザ・ロフト〉は普通のディスコテークやクラブよりも遥かに親密な場所となり、パーティも長く続けることができ、それによって音楽的・肉体的な表現行ための幅も広がった。いっぽうで上手に運営され、強い倫理観を持つクラブは、〈ザ・ロフト〉やそこから派生したヴェニューで培われてきた価値から多くのものを模倣できるのではないでしょうか。

 この質問のより広範な面に関して言えば、まさにその通りだと思います。プライヴェートなパーティや公共のクラブは、人びとが集まって異色の、しかし非常に重要なコミュニティの形態を形成する場を提供しています。近頃ではみんなで集まってグループとしてともに過ごせる場所はますます少なくなりつつあるじゃないですか? 映画館もそういった場を提供しているものの、映画館の観客はとても受け身でしょう。スポーツのイヴェントもひとつの場ですが、こちらは男性主体の傾向が強く、競争に根差したものです。公園も素晴らしい場所だとは思いますが、そこでの社交的な体験はごくまばらです。その他の音楽イヴェントも良いでしょうが、参加者は通常他の観客に対してではなく、出演者に意識を向けます。クラブのようなダンス・スペースはまったく違う何かを提供するもので、その相互作用の形式は非常にダミナミックです。私たちは視覚的な文化が支配する社会で生きていますが、音楽とダンスは私たちに耳を傾け、身体を使うことを促してくれるんです。そしてそれが極めて感情豊かなコミュニティに繋がるのです。

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アーサーは知的な根拠で書かれた音楽よりも情感豊かなものを好んでもいたことから、フィリップ・グラスの作品は評価してもより知性派のスティーヴ・ライヒの作品には親しみを感じなかったようです。

『アーサー・ラッセル』で、あなたは現在のiPod世代の多元主義について言及しています。アーサー・ラッセルは、さまざまなジャンルを越境することのできた人で、それはあらゆる価値が並列された現代の音楽鑑賞の価値観とも重なるかもしれない。しかし、アーサー・ラッセルは、現代の多元主義が陥る退屈な平等性とは正反対の態度で生きていた。つまり、彼には、音楽芸術の善し悪しを判断する彼なりの基準というモノがあったということですよね? あなたなりにアーサー・ラッセルの持っていたその"基準"についてもう少し説明してもらえないでしょうか?

ティム:私がアーサーの代弁をするのは難しいですよ――彼がまだ生きていて自分の言葉で答えてくれたらと願わずにはいられません。ですが私が受けた印象では、アーサーはあらゆる類いの音楽に耳を傾ける人間でしたが、おしなべて優劣がないかのような、無粋な多元主義的なスタンスに陥ることはいっさいありませんでした。アーサーはクラシック音楽からディスコ、ニューウェイヴ、ヒップホップ、フォーク、そして正統派のポップに至るまでの信じられないほど幅広いサウンドにはまっていました。彼はいつもヘッドフォンで音楽を聴きながらダウンタウン・ニューヨークの街を歩き、友人が彼に出くわしてヘッドフォンを借りればアバと同じ確率でモンゴルの喉歌が流れてきたそうです。言い換えれば、彼の好みは折衷的で予測不可能だった。もちろんアーサーがアバのあるトラックを他のトラックよりも気に入っていたとか、モンゴルの喉歌でも特定のスタイルを特に楽しんでいたということはあったでしょう。ですが概して、彼はあまりにもありきたりかつ型にはまりすぎている曲は気に入らなかったし、もしかしたらそれこそが彼がいつでもとても新鮮に響くアバの曲を好んでいた理由だったかもしれません。
 そういった条件以外に、アーサーの仏教的な思想が彼にオープンかつ民主的で肯定的な音楽のスタイルを受け入れさせた。そしてその結果、彼は必要以上に個人主義的な形式や自己中心的な演奏スタイル、そして独善的に複雑な演奏形式に支配された音楽を嫌うようになったのです。同じ価値観が彼にアシッド・ロックやプログレッシヴ・ロックを敬遠させ、けれどより直接的かつ包括的なミニマリスト・ロックを受け入れさせた。
 またアーサーは、彼があまりにも攻撃的で虚無的だと判断していたというノーウェイヴ・ムーヴメントにはいっさい関心を示しませんでした。そして彼のレコーディングのいくつかにはジャズ的な要素も含まれていたものの、その即興者を英雄的な個人として祭り上げる傾向のせいか、彼が心からジャズを受け入れることもありませんでした。
 最後に、アーサーは知的な根拠で書かれた音楽よりも情感豊かなものを好んでもいたことから、フィリップ・グラスの作品は評価してもより知性派のスティーヴ・ライヒの作品には親しみを感じなかったようです。アーサーが好き嫌いの基準のマニフェストを作っていたとかそういうことではありませんが、私が拾い集めることができた基準はこんなところでしょうか。

アーサー・ラッセルの芸術は、言ってしまえば資本主義にとっては決して都合の良いものではありませんでしたが、逆に言えば商業主義の罠にはまっている現代の音楽シーンに対してのひとつの"批評"としてもこの本を書いたのではないかと思います。もしそうであるなら、いまいちど、今日の社会におけるアーサー・ラッセルの芸術 の重要性をその文脈で説明していただけないでしょうか?

ティム:アーサーの音楽には奇妙な緊張感があって、私はそこにも惹かれるんです。その緊張感というのは、アーサーは商業的に成功することを望んでいたけれど、その成功を手にするために自身の音楽的なヴィジョンで譲歩することは決してしたがらなかったという点です。私はこのスタンスが非常に興味深いと思うんですよ。まず、商業的に成功したいというアーサーの願望を私は評価しているんですが、それは彼がエリート主義者ではなかったことを表しています。簡単に言えば、アーサーは物質主義的だったからではなく、できるだけ多くの人に自分の音楽を聞いてもらいたかったから成功したかったのです。その姿勢は、人気が自分の名声に傷をつけたり、望むほど特徴的でいられなくなることを恐れる、自意識過剰的にアヴァンギャルドな作曲家やミュージシャンとは対照的です。つまり私はそんなまどろっこしいやり方には付き合っていられないんですよ。
 でもアーサーの魅力は、より多くの聴衆に聞いてもらいたいという彼のその願望にも関わらず、彼は何度もそのチャンスを逃しているんです。その原因のひとつはマネージャーやレコード会社、そしてときには友人までもがもっと認知されるために彼の守備範囲を狭めようとしたことで、自分の音楽的な自由を何よりも重んじていた彼は、そのアドヴァイスに従うことを頑なに拒否していました。もうひとつには、彼の美学は売り込みが難しいものだったということもあります。アーサーは脱線や予測不可能な要素の導入、それにハイブリッド的な組み合わせの作業を好み、それらはどれひとつとして営業マンを喜ばせる類いのものではありませんでした。アーサーは利益を出すために、もしくはレコード会社が利益を出せるように自身の自由を譲歩することを拒み、その結果困難な状況に陥り、彼が望んだほどの名声を得ることができなかったのですが、まさにそれこそが私たちが今彼の作品を振り返って、その幅と奥深さに感嘆することができる理由なのです。彼は商業的な横やり抜きで音楽を収録する権利を主張し、そのことは当時だけでなくいまも変わらず美しい行為だと思いますね。

インターネットの可能性をどのように考えていますか? 僕はWEBマガジンを主催しています。アクセス数がそれなりにありますし、まだはじめて半年くらいですが、インターネットによってアウトサイダー・ミュージックがより広く伝わる可能性が大きいことも実感しています。それでもアンヴィバレンツな気持ちになるのも事実です。たとえばクラブで踊りながらiPhoneを見ながらTwitterをしているような人たちがいます。すぐ目の前にいる人とコミュニケーションを持つのではなく、どこか遠くにネットで繋がっている人に「つぶやく」というのは、どうにもわからない感性です。あなたはこうした新しいネット時代の状況に関してどんな見解を持っていますか?

ティム:それは壮大な質問ですが、いくつか見解を挙げてみましょうか。本質的に進歩的、もしくは退行的な技術など存在しません。いつだって肝心なのは、いかに私たちがその技術を使うかと、その行為がもたらす影響は何なのか、という点です。私もインターネットは刺激的だと感じていますが、同時にいくつか疑問も抱いています。そもそも私はアーサー・ラッセルの音楽に対する関心の再燃は、多くの面でインターネットの台頭が原因だと考えています。それはファイル共有やダウンロードが人びとのリスニング習慣の大きな変化に貢献したからで、それまでひとつかふたつのジャンルしか聞いていなかったリスナーも、インターネットによってそれがあまりにも容易になったいまではさまざまなサウンドに耳を傾けることが当たり前になっています。同様にそういった幅広いリスニングは、それまでは非常に困難だったであろうやり方で私たちがアーサーの複雑さの全貌を把握する助けとなってくれました。要するに、私たちの鑑賞習慣はついにアーサーの複雑かつ理想主義的な音楽作りのヴィジョンに追いついたのです。
 こういったことは、すべてインターネット主導のいわゆる「ロングテール」の台頭、もしくはそれまで入手できなかったさまざまな無名のアーティストの音楽がアクセスできるようになったいっぽうで、人気の高いアーティストのレコードが以前ほど売れない現在の状況と時を同じくしています。しかしそのいっぽうで、私はリスナーがおよそ聴ける以上の音楽を一心不乱にiPodに詰め込み、その鑑賞体験が持つポテンシャルを損なう低音質のフォーマットでダウンロードするやり方には懐疑的だと言わざるをえません。

 インターネットを介して幅広いサンプルを見つける行為は、一見非常にオープンで進歩的に見えますが、私はこういった行為の根底にある社交性の乏しさにも衝撃を受けているんです。アーサーはハイブリッドなサウンドを作るとき、まず音楽的なコミュニティに入り、そこで人間関係を築きました。その結果、彼の産物はとても有機的で、ある程度の文化的な知識が染み込んだものでもあったのです。しかし手当たりしだいにサウンドに手を伸ばし、コンピュータで音楽を作るミュージシャンに対しては同じことは言えないでしょう。また音楽にアクセスすることとその曲を聴くことのプロセスがあまりにもかい離していて、その音楽の持つ歴史に対する関心も薄く、非社交的であることを考えると、リスナーが自分の聴いている音楽についてどれだけ理解しているのか疑問に思うこともあります。事実、iPodで音楽を聴くことは多くの点において孤立的な体験なのです。私は個人的には「オープン」で「空間を漂う」音楽を聴くほうが、物理的・社交的な相互作用を促すことができて好きですね。Facebookやなんかの交流も良いとは思いますが、友だちと同じ部屋で過ごすことの代わりにはなりませんよ。いちばん良いのは、一種のバランスが取れることでしょうか。インターネットが多くの人に音楽の興奮を伝え――これはもう明らかにそうなっていますが――そしてその人たちがそこから社交的な輪のなかで、良いオーディオを使って音楽を聴けるようになること、ですね。

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それまでアーティストやミュージシャンたちが片手間の仕事で生計を立てていたのに対して、1980年代中盤以降、彼らは自分の芸術でお金を稼ぐことをより真剣に考えざるを得なくなったんです。

東京もそうですが、いま都市は監視下におかれ、また、商業施設の増設や地上げにも遭い、70年代前半のダウンタウンのようなコミュニティは作りづらくなっていると思います。ニューヨークはジュリアーニ市長の浄化政策が有名ですが、東京も石原都知事以降、街には荷物検査をする警察が目に付くようになりました。それでも都市は、いまはまだ、さまざまな人びとが交錯する猥雑な場所としてあります。とはいえ、近い将来、さらに監視が厳しくなる可能性もあります。そういった現在の厳しさを踏まえたうえで、それでも70年代前半のダウンタウンのなかに"現在でも通用する希望"があるとしたら、それは何だと思いますか?

ティム:以前よりもパーティーやニッチな観客――もっと具体的に言えばあまりお金を持っていない観客――相手の音楽イヴェントが開催しにくくなっているという点は、まさにその通りだと思います。監視についても同意見で、ニューヨークやロンドン、東京といった大都市での地価の高騰がその状況をさらに悪化させている点も付け加えさせてください。
 ダウンタウン・ニューヨークは、1970年代から1980年代前半にかけて物価があまりにも安かったからこそ、社会的にも美学的にも進んだコミュニティを数多く生み出しました。軽工業の転出によってある集中的な期間に不要なスペースが山ほど出て、またほぼときを同じくして市が財政破たんしたことから、家賃や地価がさらに下がったのです。この流れのおかげでミュージシャン、芸術家、作家、映像作家、そして現代舞踊家たちはただ同然でこの地域で生活し、コラボレートできるようになり、同時にこのスペースをクリエイティヴに使うことに熱心だった実業家はこれまでにない機会を享受していました。音楽のことだけを考えて暮らせる、その結果は驚異的なものでした。この時代に現代ダンス音楽文化が台頭し、パンク、ニューウェイヴ、ノーウェイヴが出現し、そしてミニマル的な現代音楽も発展を遂げました。同時期にロフト・スペースではフリー・ジャズが繁栄し続け、ヒップホップはダウンタウンにおける重要な足がかりをロキシーに築きました。

 ニューヨークは1980年なかば以降生産的かつ創造的であり続けていますが、その生産性と創造性の度合いは、ウォール街の市場が飛躍的に上昇して以来、地価が天井知らずに高騰し、困窮しているアーティストが上がり続ける物価に折り合いをつけられなくなってきたことで著しく減退しています。それまでアーティストやミュージシャンたちが片手間の仕事で生計を立てていたのに対して、1980年代中盤以降、彼らは自分の芸術でお金を稼ぐことをより真剣に考えざるを得なくなったんです。そしてそれは芸術作品を作ることのコンテクスト、そして芸術そのもののコンテクストすら変化しはじめたことを意味しています。ですがデヴィッド・マンキューソ――わかりやすい例として――が実質的には非営利とはいえ、そしてそれ故にそれだけで生計を立てていけるわけではないパーティをいまでも市内で開催できていることを考えると興味深いですね。
 また多くのアーティストやミュージシャンがニューヨークやそれと同等に物価の高い都市から比較的安いスペースがあるベルリンに向けて去ったことも面白い点だと思います。その結果、この20年間ベルリンでは創作的なルネッサンスが到来していて、いまだ衰える兆しは見えません。物価は高いものの、ロンドンも力強いアートと音楽シーンを擁しています。ウェストエンドやロンドン西部には大して何もないのですが、ショアディッチやハックニー、ベスナル・グリーンにダルストンといった東側は活発に動いています。こういったエリアでも地価は上がっていますが、みんなどうにかしてやりたいことをやり続ける術をみつけているようです。その創作し、コミュニティを作るという決意は驚くほど柔軟であると同時に、楽観的な気持ちの源でもあります。

ザ・キッチンの素晴らしかった点について、あなたなりの意見を教えてください。

ティム:ザ・キッチンは芸術的・音楽的な自由のための重要なスペースであり、いろいろな意味で1960年代の終わりのカウンター・カルチャー運動の――公民権デモ参加者、ゲイやレズビアンの活動家、そして男女同権主義者や反戦運動家、ヒッピーや学生が多くの国の抑圧的な政策に抗議しはじめた時間の産物です。ザ・キッチンは、若い作曲家が彼らにセリー主義か新古典主義の枠組みの中で作曲することを強いた楽壇に対して反発する場となったんです。そういった狭い規範に反抗するために、作曲家たちはジョン・ケージのような作曲家の急進的な手法を基に成長することを試み、時代に合わせた形でそれを実行しました。いわく、新しい楽器編成を試し、聴衆に訴えかける音楽を作ろうとし、インド、アフリカ、インドネシアなどの民族音楽学的なサウンドに取り組んだのです。
 当初この運動から出現した音楽はミニマリズムと称されましたが、すぐにそこから生み出されるサウンドの幅にはミニマリズムという言葉は限定的すぎることが判明し、ザ・キッチンやエクスペリメンタル・インターメディア・ファウンデーションなどのスペースを中心に形成された作曲コミュニティは、その年代の終盤には自分たちの音楽を"ニュー・ミュージック"と称するようになりました。
 アーサー・ラッセルは自身の音楽監督としての任期中にプレパンク・バンドのモダン・ラヴァーズを招く決定を下し、その翌年にはトーキング・ヘッズにそこで演奏するよう手配したことでザ・キッチンの裾野を広げた非常に重要な人物です。音楽監督の椅子をアーサーから引き継いだガレット・リストは幅広いジャズ志向のグループにザ・キッチンで演奏させて同会場の人種的な間口を広げましたし、リストの後にはリース・チャタムがこのスペースで作曲的なノーウェイヴのサウンドを築く助けをしました。
 要するに、現代音楽の構成要素の定義は極めて短期間で引っかき回されてもっとずっと幅広い音楽が入ってきたんです。とはいえザ・キッチンの寛容さにも限界がありましたし、アーサーの管弦楽的なディスコがそれほど熱狂的な反応をえられなかった時には彼も動揺していたと聞きましたが、それでもあの曲があそこで演奏され、その後間もなくヒップホップも舞台に上がったという事実そのものが、ザ・キッチンが他の現代音楽や非現代音楽系のヴェニューに比べて音の実験やハイブリッド性に寛容だったことを証明していると思います。

『ラヴ・セイヴス・ザ・デイ』や『アーサー・ラッセル』のような本を出してみて、あなたにとってどんな嬉しいリアクションがありましたか?

ティム:反響はかなり大きく、非常に実り多いものでした。たくさんの好意的なレヴューもいただきましたし、何よりもこの本が学術的な読者とそうでない読者のどちらにも等しく訴えかけたことが嬉しかったです。最初からそういう本にしたいと思っていたので。なんだかんだ言っても私はジャーナリズムの出身で、昔からできるだけ多くの人びとに伝えたいと思っていたのですが、それと同時に一般的なジャーナリズムの形式には完全に満たされた気がしなくて、それで前々からもっと発展的かつ専門的で分析的な仕事をしてみたいと考えていたんです。
 個人の読者の反応は書評よりもさらに嬉しいものでした。何人もの方々が『ラヴ・セイヴス・ザ・デイ』や『アーサー・ラッセル』が彼らの初めてまともに読んだ本で、しかも1週間かそこらで読破してしまったという話をメールに書いてくれたり、直接伝えてくれたりしたんです。これには思わず息をのみましたね。何せどちらも普通の本ではありませんから――重くて、ひどく分析的な部分もある、相当に長い本じゃないですか。ですがあの2冊はどちらも多くの人びとが本当に熱中し、今でも大切にしたいと願い続ける文化的瞬間に強く訴えかけたんです。この2冊の取材をして、そのシーンの数々を支えた多くの素晴らしい人たちに出会えたことを非常に光栄に思います。彼らの物語は語られるべきものでしたが、その物語の語り手になれた私は本当に幸運です。

あなた個人がもっとも好きなアーサー・ラッセルの曲はなんですか? またはその理由も教えてください。


Dinosaur L /
24-24 Music

Sleeping Bag

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ティム:それは間違いなく"Go Bang"でしょう。あとは"Platform on the Ocean"に、『World of Echo』のアルバム、"This Is How We Walk On the Moon"もですし、"Kiss Me Again"も......。正直たくさんありすぎてきりがありませんし、アーサーのいちばん重要な要素は彼が複数の美学をまたいで活動したことだと考えると、1枚のレコードだけを選び出すのはほとんど不適切だとすら感じられます。ですが1枚だけを選ばなければならないとしたら、それは絶対に"Go Bang"、もしくは"Go Bang"のふたつの主だったヴァージョン――アルバム・ヴァージョンとフランソワ・ケヴォーキアンによる12インチ・リミックス――でしょう。私にアーサー・ラッセルについて書きたいと思わせたのはこのレコードで、初めてこの曲を聴いたときには内心で「こんなレコードを作れるなんていったい何者なんだ?」と考えましたよ。このレコードには無数の要素が含まれていて――現代音楽、ロック、R&B、ジャズ、そしてもちろんディスコ――それらがすべてひとつにより合わされた後に接続された二台の24トラック・テープレコーダーを介して細切れにされているんです。
 またこのレコードには素晴らしい演奏家たちが参加しているじゃないですか。トロンボーンにピーター・ズモ、サックスにピーター・ゴードン、キーボードとヴォーカルにジュリアス・イーストマン、同じくヴォーカルにジル・クレセン(アルバム・ヴァージョン)、そしてドラム、ベース、リズム・ギターにはイングラム兄弟。アーサーは彼らがジャムして自由に表現するよう背中を押し、また大胆にもリスクを冒して普段は決してしないことをするよう推奨しました――ですからローラ・ブランクはクレイジーな声で、ジュリアス・イーストマンはまるでオルガズムを経験しているような声で歌うなど、枚挙に暇がないわけです。〈ザ・ロフト〉のダンサーたちに歌手やパーカッションとして参加するよう誘うという決定も同じく抜きん出ていて、トラックの世俗的なエネルギーにひと役買っています。
 それに加えてあの不朽のヴォーカル、「I want to see all my friends at once go bang」ですよ。これほど的確に私たちが踊りに行く理由を言い当てた人間は他にいないのではないでしょうか。リミックスに関して言えば、見事のひと言に尽きると思います――フランソワは曲のダイナミクスを簡略化して、最高潮の瞬間を強調しています。デヴィッド・マンキューソはいまでもこのレコードのどちらものヴァージョンをかけていますし、ラリー・レヴァンはこのトラックが彼のいちばんのお気に入りだと言っていたそうです。何の不思議もないと思いますよ。

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アーサーは、世界を簡単に変えられる方法など存在しないということに気づき、さほど壮大ではない目標を掲げ、それに応じて人びとがコラボレートし、お互いを求めあい、創造的であれる一端を築こうとしました。

アーサー・ラッセルが海辺でフィールド・レコーディングしている写真がとても印象的です。海は彼にとって特別な場所だったのでしょうね。彼の音楽のほとんどが都会的ですが、あなたが彼の音楽のなかに海を感じる作品があるとしたらどの曲ですか?

ティム:伝記でもかなり詳細にわたって書いたように、アーサーは水辺を愛していました。彼は海なし州のアイオワで育ち、その結果彼にとって水はとても魅惑的なものだったんです。なかには「Let's Go Swimming」や「Platform on the Ocean」のように直接的に水に言及しているレコードもありますが、流れや逆流による流動的な美学を作り上げているレコードはもっとたくさんあるんですよ。ですがアーサーの音楽の多くがとても都会的に聞こえるとおっしゃるのはまさにその通りで、彼自身ボーイフレンドのひとりに、ジョン・ケージの作品も都会で生活しながら作曲されていればまったく違うものになっていただろうと話していたそうです。究極的には、アーサーはさまざまな環境に影響を受けた音楽家でした。彼の音楽からはアイオワ州のなだらかな平原も聞き取れますし、サンフランシスコに住んでいたときには、彼と友人たちはギターやその他の楽器を携えて何日も山のなかでハイキングして過ごしたそうです。アーサーはこの世界の多種多様な神秘を体験し、その素晴らしさを自身の音楽に表現しようとしていたんです。

いま世界はとても不安定な状態になっています。とくにここ10年は、さまざまな都市でデモや抗議運動が起きています。また、いまや国家よりも大企業のほうが力を持つようになってしまいました。こうした新しい世界においても音楽は貴重な気休めや娯楽として機能すると思いますが、もし音楽に娯楽以上のものを望むとしたら、あなたは願わくば音楽にどうなって欲しいと思いますか?

ティム:まずはじめに、「たんなる娯楽」はさほど悪いスタートラインではないと私は思うんですよ。音楽が厳しい環境のなかでの楽しみや気休めを与えてくれるのであれば、それはとてつもなく重要なことです。でも私は音楽にはそれ以上のことが――人と人を結びつけて、進歩する新しいコミュニティを作ることができるとも思っています。1970年代のニューヨークではそれが非常に顕著で、それはいまでも続いています。緊密で進歩的なコミュニティの形成では不充分だと言われる方もいるでしょうが、アーサーはカウンター・カルチャー運動の時代を生き、それが掲げた途方もなく野心的な目標の多くを達成し損ねた様をその目で見ているんです。アーサーとその友人たちは、世界を簡単に変えられる方法など存在しないということに気づき、さほど壮大ではない目標を掲げ、それに応じて単純に進歩主義の重要な一端を――人びとがコラボレートし、お互いを求めあい、創造的であれる一端を築こうとしました。私はそういう一端が後にそれに触れる人びとに大きな影響を与え、より進歩主義的な未来の礎を築いてくれるものだと固く信じています。
 押し潰されたい人間なんてどこにもいません、みんな喜びや機会に溢れた人生を生きたいと願っているのです。そして人間は音楽のなかにこそ他の社会の面影を見出すことができるのだと思います。

ちなみにあなた個人は、どのようにクラブ・カルチャーと出会い、どのようにその世界の思索者となったのですか?

ティム:私は小さな子供のころから踊るのが好きでした。大学時代は政治にのめりこんでいたのですが、ある夏地元に帰らずにアルバイトをして過ごしたことがあって、その年が偶然にもセカンド・サマー・オブ・ラヴだったんです。私はマンチェスターでハウス・ミュージックが爆発していたときに、幸運にも水曜日の夜に〈ハシエンダ〉に行く機会に恵まれ、その体験は一生忘れられないものとなりました。それが私が初めてハウス・ミュージックを聴いたときだったんですが、私が以前から聞きたいと願っていた音楽――濃厚なまでにリズミカルで肉体的でありながら、同時に知的で概念的な音楽であるように響きました。結局私はその瞬間からダンス・シーンにはまったわけではないんですけどね。私は結構世間知らずで、夜遊びにはまっていた友人もなかったんですよ。
 ですがロンドンに戻って記者として働くようになると、政治家の友だちがレイヴ・カルチャーを紹介してくれて、少しのあいだそっちに激しく熱中していたのですが、その後同じ友人がDJがニューヨーク発のダブっぽい、ジャズっぽい、ソウルフルなハウス・ミュージックを流す〈ガーデニング・クラブ〉のフィール・リアル・ナイトに連れていってくれたんです。〈ガーデニング・クラブ〉でルイ・ヴェガの演奏を聴いたそのときが、私がニューヨークに移住したいと思った瞬間だったと思います。
 結局私は1994年に向こうに移り住み、2年間ほどルイが毎週水曜日の夜にサウンド・ファクトリー・バーでプレイするのを聴いた後に、『ラヴ・セイヴス・ザ・デイ』を書きはじめました。当初私は1985年から現在に至るまでについての本を書く予定だったんですが、その後紹介されたデヴィッド・マンキューソに、1970年まで遡る必要があると言われてしまって。当時私はそこまで遡ることに消極的だったのですが、すぐに〈スタジオ54〉と『サタデー・ナイト・フィーヴァー』を中心とした1970年代の主流な記述をおさらいする必要があることが判明しました。結局私はデヴィッドと〈ザ・ロフト〉、そして多くの刺激的なDJやヴェニューの物語に夢中になって丸々一冊を1970年代に割いてしまいましたが、それについては欠片ほども後悔していません。

いまでもクラブに踊りに行くんですか?

ティム:ええ、最近は少し足が遠のいてしまっていますけどね。正直言って、私はいまでもニューヨークで踊るのが他のどこで踊るよりも好きで、あちらに取材に行ったときには集中的に踊りに行きます。〈ザ・ロフト〉、〈シエロ〉のフランソワ・ケヴォーキアン・ディープ・スペース・ナイト、ダニー・クリヴィットの718セッション、〈サリヴァン・ルーム〉のリベーション、他にもいろいろな場所に顔を出します。
 ロンドンでは、デヴィッド・マンキューソに協力している関係で縁のある〈ザ・ライト〉のお世話になりっぱなしです。ここのサウンドシステムは本当にずば抜けていて、音楽も多彩で雰囲気もものすごく力強いから、他の店に行ってまったくがっかりしないというのはちょっと難しいんですよ。でも頻繁に素晴らしいパーティをやってくれる〈プラスティック・ピープル〉の近くに住んでいられたのは幸運だと思っていますし、ドラムンベースとダブステップの夜をもっと覗いてみたいですね。私には幼い娘がふたりいて、あの子たちのために朝起きてあげたいと思っているのですが、ふたりともぐんぐん育っていますし、私の踊りたい病もまだ治まってはいないので、近い将来にはまた頻繁に踊りに行くようになるんじゃないかと思います。

緻密に設計されたサウンドシステム、素晴らしいDJ、ぶっ飛んだ客......ただそれだけでクラブ・カルチャーを評価してしまう風潮にあなたは逆らっているとも言えますよね? いまクラブ・カルチャーから失われているモノがあるとしたら、あなたの言葉で言えば"愛"だと思います。なんで"愛"は失われてしまったのでしょうか? そして私たちはどのようにして"愛"を回復したらのいいのだと思いますか?

ティム:愛で満たされるには社交的な環境が整っていないから、踊りに行ってもバウンサーに凄まれたり、水を1本買うためだけに法外な価格を要求されたりするじゃないですか。それは思いやりのある環境ではないから、人がダンスフロアで横柄に、身勝手に、そして強引に振る舞うことを助長するのです。この風潮を変えるのは容易なことではないでしょうが、デヴィッドとともに仕事をした経験は、かなりのお手頃価格でも進歩的かつオープンでフレンドリーなセットアップを作れることを教えてくれました。
 ロンドンのパーティで、私たちは素晴らしいビュッフェを用意し、ドアも歓迎してくれる入りやすい場所であるように気をつけ、パーティの最初の2時間は子供やその保護者も無料で入れるようにして部屋を風船で飾り、サウンドシステムには最大限の予算を割き、フロアも清潔で濡れていないよう注意し、デヴィッドが多様な音楽をかける後押しをし、音量を100dB強に抑えることで社交的交流を促しながら人びとの耳にも配慮しています。その成果は、私たちのところで踊ったことのある人間なら誰の目にも明らかです。雰囲気は非常にフレンドリーでオープンで、誰もが信じられないくらい激しく踊り、ダンサーはその夜の終わりには変容的な何かの体験した感覚とともに残されるのです。こういったパーティには相当量の労力と極めて高いやる気が必要ですが、それが普通ではいけない理由なんてどこにもないじゃないですか。もしそれができるなら、あなたが"愛"と呼ぶものも自然に流れるようになるでしょう。

次に書きたいと思っているテーマがあれば教えてください。

ティム:実はもう次の本に着手していて、『Life and Death on the New York Dance Floor: A History, 1980-84(ニューヨーク・ダンスフロアにおける生と死 1980-84年の歴史)』と仮題された内容になっています。実質的に、この本はアーサーの伝記というプリズムを通して振り返る『ラヴ・セイヴス・ザ・デイ』の延長線上にあると言えます。それというのも、ダウンタウンのダンスシーンは1980年から84年にかけて、明らかにより折衷的になるからです。〈ザ・ロフト〉や〈パラダイス・ガラージ〉などのパーティは1980年から84年の間もまだまだ繁盛していましたが、同時期にロック、ダブ、それにヒップホップもダンスシーンと相互作用しはじめたことで、当時の状況は非常に複雑で、ぶっちゃけとても素晴らしく、刺激的になったんです。
 当初私はこの本を〈ガラージ〉が廃業した1987年、もしくは〈ザ・セイント〉が閉店した1988年まで進めるつもりだったのですが、1980年から84年はあまりにも豊かで難解であることが判明したので、1987年/88年まで持って行くことは無理だと諦めざるを得なかったんです。現時点では、この本はそれ自体がすでに膨大な『ラヴ・セイヴス・ザ・デイ』の倍の長さになりつつあるので、今後かなり真剣に編集しなければいけなくなりそうです。ですがもっとも大切なことは、あの歴史的な瞬間が本当に圧倒的なものであったという点なので、その時代について書くネタがないよりは多すぎる情報に四苦八苦する状況のほうを私は選びますね。自分が信じていない時代について本を書けるとは思えないんですよ。正直言って、このプロジェクトには本当に興奮しています。たまにこの本の作業がまったくできない日もあるんですが、そんなときは本当に辛いですよ。

Chart by JETSET 2010.06.21 - ele-king

Shop Chart


1

DAICHI

DAICHI MBILITE EP »COMMENT GET MUSIC
エレクトロニクスとジャズ・ファンクを高レヴェルで融合させたダンス・トラックが到着!SoftやBased On Kyotoの一員として活動を行い、アンダーグラウンド・ダンスミュージック・シーンを中心に熱い指示を受けるDaichiのソロ作がついにリリース!

2

WILD NOTHING

WILD NOTHING GEMINI »COMMENT GET MUSIC
ひとりRadio Dept.あるいはPainsなネオアコ・シンセ・ポップの爆裂感動アルバム!!メチャクチャ最高です。。。Captured Tracksの新星、ヴァージニア在住の天才Jack Tatumによるソロ・ユニット、Wild Nothing。2枚のシングルを経て、初のアルバム到着しました!!

3

RANKIN TAXI

RANKIN TAXI チンチンピンピン »COMMENT GET MUSIC
遂に7"で出ました!B面にはサイプレス上野参加のBuzzer Beats Remixも収録!ジャパニーズ・レゲエのオリジネイター、ランキンキン・タクシー!!昨年末から配信限定でリリースされ話題炸裂の超ビッグ・チューン(通称"CCPP")が遂にアナログ盤で登場です。これは絶対マストです!!スプリット・カラー・ヴァイナル。CCPPオリジナル・コンドーム付。

4

ALLO DARLIN'

ALLO DARLIN' S.T. »COMMENT GET MUSIC
無条件降伏しかありません。正統派UKキューティー・バンドの超感動ファースト・アルバム!!LPも到着しました!!大人気爆発のロンドンの4ピース、Allo Darlin'。瑞々しいヴォーカルと、躍動感溢れる爽やかなサウンド、愛らしく儚げな雰囲気、全てがスペシャルです!!

5

REBOOT

REBOOT SHUNYYATA »COMMENT GET MUSIC
パーティー・ピープルから注目度はピカイチの旬なクリエイターReboot!!Lucianoによるリミックスが話題となった先行シングル"Rambon"も只今ヒット中、Ricardo VillalobosやLucianoが認める才能の持ち主、Rebbotによるファースト・オリジナル・アルバムが遂に登場です!!

6

INFINITE BODY

INFINITE BODY CARVE OUT THE FACE OF MY GOD »COMMENT GET MUSIC
めちゃくちゃイイ・・・戻ってこれない・・・快楽指数マックスのドリーミー・ドローン・アルバム!!No Age主宰P.P.M.から、西海岸のKyle ParkerによるユニットInfinite Bodyの大傑作ファースト・アルバムが登場。これは参りました。

7

V.A.(DJ KIYO A.K.A DULO, DJ KEN, AKT THE JN, DJ HAL)

V.A.(DJ KIYO A.K.A DULO, DJ KEN, AKT THE JN, DJ HAL) TIGHTBOOTH PRODUCTION PRESENTS LENZ EP »COMMENT GET MUSIC
スケーター目線で日本のアングラ・シーンを切り取るドキュメンタリーからの12"がコチラ!日本が誇るクリエーター/トラックメイカー達がスケートボードの既痣哀楽をイメージし作り上げた音源を収録した映像作品『LENZ』から待望のアナログ・カットが実現!

8

MARK SEVEN

MARK SEVEN SWEPT AWAY »COMMENT GET MUSIC
スウェディッシュ・バレアリック大注目プロデューサーが早くもMule Musiq系列からデヴュー!!前作"Travelogue"の爆発的な売れ行きにも驚かされたスウェーデンのディープ・ディガー/DJ、Mark Sevenが国内Mule Musiqにフックアップされ、Endless Flightから2nd.シングルをリリース!!

9

DJ SPRINKLES VS K-S.H.E.

DJ SPRINKLES VS K-S.H.E. A SHORT INTRODUCTION TO THE HOUSE SOUNDS OF TERRE THAEMLITZ »COMMENT GET MUSIC
テーリ・テムリッツさんがSkylaxから初登場!!DJ Sprinkles名義での未発表曲"Hush Now"と、"上作延ハウス・エクスプロージョン"ことK-S.H.E.名義での'06年度アルバム『Routes Not Roots』から"B2B"をカップリング。

10

BOBMO

BOBMO FALLING FROM THE CRESSENT MOON »COMMENT GET MUSIC
師匠Oizo直系の痙攣エディテッド・ハウスへと仕上げられたFeadzリミックスB2も!!☆特大推薦☆盟友SurikinとのデュオHigh Powered Boysとしても大人気、Institubesが誇る若き精鋭Bobmoが2年振りにぶっ放す特大ボムがこちらっ!!

Chart by ZERO 2010.06.18 - ele-king

Shop Chart


1

UNTOLD

UNTOLD I CAN'T STOP THIS FEELING / ANACONDA HESSLE AUDIO / UK / 2009.05 »COMMENT GET MUSIC
番外編:POST-DUBSTEPチャート #01
5月のDBSプレゼンツDUBSTEP WARZに出演したLOEFAHが口にしていた(『ele-king』掲載のインタヴューも必読!)"POST-DUBSTEP"を、ZEROの視点を交えて10枚だけ紹介します。"GET MUSIC"リンク先からコメントを読むこともできます。6月22日の「DUBSTEP会議#2@DOMMUE」に向けて、サラリと予習的に......。

2

ADDISON GROOVE

ADDISON GROOVE FOOTCRAB / DUMBSH*T SWAMP81 / UK / 2010.03 »COMMENT GET MUSIC
番外編:POST-DUBSTEPチャート #01
5月のDBSプレゼンツDUBSTEP WARZに出演したLOEFAHが口にしていた(『ele-king』掲載のインタヴューも必読!)"POST-DUBSTEP"を、ZEROの視点を交えて10枚だけ紹介します。"GET MUSIC"リンク先からコメントを読むこともできます。6月22日の「DUBSTEP会議#2@DOMMUE」に向けて、サラリと予習的に......。

3

RAMADANMAN

RAMADANMAN GLUT / TEMPEST HEMLOCK / UK / 2010.05 »COMMENT GET MUSIC
番外編:POST-DUBSTEPチャート #01
5月のDBSプレゼンツDUBSTEP WARZに出演したLOEFAHが口にしていた(『ele-king』掲載のインタヴューも必読!)"POST-DUBSTEP"を、ZEROの視点を交えて10枚だけ紹介します。"GET MUSIC"リンク先からコメントを読むこともできます。6月22日の「DUBSTEP会議#2@DOMMUE」に向けて、サラリと予習的に......。

4

INSTRA:MENTAL / SKREAM

INSTRA:MENTAL / SKREAM NO FUTURE (SKREAMIX) / MINIMALISTIX NONPLUS / UK / 2009.12 »COMMENT GET MUSIC
番外編:POST-DUBSTEPチャート #01
5月のDBSプレゼンツDUBSTEP WARZに出演したLOEFAHが口にしていた(『ele-king』掲載のインタヴューも必読!)"POST-DUBSTEP"を、ZEROの視点を交えて10枚だけ紹介します。"GET MUSIC"リンク先からコメントを読むこともできます。6月22日の「DUBSTEP会議#2@DOMMUE」に向けて、サラリと予習的に......。

5

COSMIN TRG

COSMIN TRG NOW YOU KNOW TEMPA / UK / 2010.03 »COMMENT GET MUSIC
番外編:POST-DUBSTEPチャート #01
5月のDBSプレゼンツDUBSTEP WARZに出演したLOEFAHが口にしていた(『ele-king』掲載のインタヴューも必読!)"POST-DUBSTEP"を、ZEROの視点を交えて10枚だけ紹介します。"GET MUSIC"リンク先からコメントを読むこともできます。6月22日の「DUBSTEP会議#2@DOMMUE」に向けて、サラリと予習的に......。

6

HYETAL & SHORTSTUFF

HYETAL & SHORTSTUFF DON'T SLEEP / ICE CREAM PUNCH DRUNK / UK / 2010.01 »COMMENT GET MUSIC
番外編:POST-DUBSTEPチャート #01
5月のDBSプレゼンツDUBSTEP WARZに出演したLOEFAHが口にしていた(『ele-king』掲載のインタヴューも必読!)"POST-DUBSTEP"を、ZEROの視点を交えて10枚だけ紹介します。"GET MUSIC"リンク先からコメントを読むこともできます。6月22日の「DUBSTEP会議#2@DOMMUE」に向けて、サラリと予習的に......。

7

BRACKLES

BRACKLES 6AM EL GORDOS BRAINMATH / UK / 2010.05 »COMMENT GET MUSIC
番外編:POST-DUBSTEPチャート #01
5月のDBSプレゼンツDUBSTEP WARZに出演したLOEFAHが口にしていた(『ele-king』掲載のインタヴューも必読!)"POST-DUBSTEP"を、ZEROの視点を交えて10枚だけ紹介します。"GET MUSIC"リンク先からコメントを読むこともできます。6月22日の「DUBSTEP会議#2@DOMMUE」に向けて、サラリと予習的に......。

8

GREENA - TENZADO

GREENA - TENZADO ACTUAL PAIN APPLE PIPS / UK / 2009.12 »COMMENT GET MUSIC
番外編:POST-DUBSTEPチャート #01
5月のDBSプレゼンツDUBSTEP WARZに出演したLOEFAHが口にしていた(『ele-king』掲載のインタヴューも必読!)"POST-DUBSTEP"を、ZEROの視点を交えて10枚だけ紹介します。"GET MUSIC"リンク先からコメントを読むこともできます。6月22日の「DUBSTEP会議#2@DOMMUE」に向けて、サラリと予習的に......。

9

MOUNT KIMBIE

MOUNT KIMBIE SKETCH ON GLASS HOTFLUSH / UK / 2009.08 »COMMENT GET MUSIC
番外編:POST-DUBSTEPチャート #01
5月のDBSプレゼンツDUBSTEP WARZに出演したLOEFAHが口にしていた(『ele-king』掲載のインタヴューも必読!)"POST-DUBSTEP"を、ZEROの視点を交えて10枚だけ紹介します。"GET MUSIC"リンク先からコメントを読むこともできます。6月22日の「DUBSTEP会議#2@DOMMUE」に向けて、サラリと予習的に......。

10

D1

D1 JUS BUSINESS / PITCHER DUB POLICE / UK / 2010.02 »COMMENT GET MUSIC
番外編:POST-DUBSTEPチャート #01
5月のDBSプレゼンツDUBSTEP WARZに出演したLOEFAHが口にしていた(『ele-king』掲載のインタヴューも必読!)"POST-DUBSTEP"を、ZEROの視点を交えて10枚だけ紹介します。"GET MUSIC"リンク先からコメントを読むこともできます。6月22日の「DUBSTEP会議#2@DOMMUE」に向けて、サラリと予習的に......。

Chart by UNION 2010.06.17 - ele-king

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1

MALIK PITTMAN

MALIK PITTMAN From Jzz To Jlb WHITE / JPN / »COMMENT GET MUSIC
RE-STOCK!!! THEO PARRISH、MOODYMANN、RICK WILHITEに続く3 CHAIRSのメンバー、MALIK PITTMANNによるMIX-CD!! トラック・メイカーとしては、実験的でアングラテイストのDEEP BEATDOWNをプロデュースしますが、こちらのMIX CDは、彼のバックボーンの一つでもある80'Sのメロウ・フュージョンををMIXしたリスニング仕様のMIX CD!

2

INNER SCIENCE

INNER SCIENCE Theme of the Transitions BLACK SMOKER RECORDS / JPN / »COMMENT GET MUSIC
毎回、こちら側を飽きさせない、深いMIX CDをリリースし続けるBLACK SMOKERから、INNER SCIENCEが2年振りに再登場!! 大幅にダンスミュージックにアプローチした快作の流れをそのままに、MINIMAL、DUB、DISCO RE-EDITなど、ハメ+アゲのMIX CDになってます!!

3

CV313

CV313 Infiniti-1 ECHOSPACE / US / »COMMENT GET MUSIC
KING OF MINIMAL DUB、DUB TECHNOのトップ・レーベル「ECHOSPACE」の中心的アーティスト、CV313による新作!! 年内リリースのアルバムの先行12"との事。常に変わらない、深スギル、リヴァーヴ&ディレイの世界。REMIXERに、これまた独自のセンスを貫くSTLが参加。ECHOSPACE的アトモスフィック処理とインダストリアルな四つ打ちで素晴らしくハマる。

4

ROUND TWO

ROUND TWO New Day MAIN STREET / GER / »COMMENT GET MUSIC
RE-STOCK発見!!! BASIC CHANNEL傘下「MAIN STREET」レーベル!!2番は、今も現場でフルに活用されて、中古でも毎回即売れです。A面は、ソウルフルに歌い上げるNY HOUSE系のVOCALを活かしたDEEP HOUSE。B1がクラシック!! 渋いほどに、展開なしで、ねちっこいGROOVEのみで踊らせるTECH DUB。

5

ROUND THREE

ROUND THREE Acting Crazy Feat. Tikiman MAIN STREET / GER / »COMMENT GET MUSIC
RE-STOCK発見!!! BASIC CHANNEL傘下「MAIN STREET」レーベル!! 1番2番は、DEEP HOUSE的要素が強めでしたが、ここら辺からMAURIZIO節が効きはじめます!! TIKIMANをフューチャーし、トビ要素も高まり、ウラ打ちのハイハットと、おなじみのディレイの利いたリフは永遠に飽きない名曲です!!!

6

VARIOUS PRODUCTION

VARIOUS PRODUCTION Keep Her Keen VARIOUS PRODUCTION / UK / »COMMENT GET MUSIC
THEO PARRISH MIX CD" Suggested Use Pt.2"収録、FRANCOIS K WANT!! ACTRES REMIX!! 一度聴いたら忘れない、悪夢的なコーラスと、初期THEO PARRISH、OMARS あたりのLOW-FIなリズム。真っ暗なフロアで聴いたら、酩酊間違いない危険極まるダークな変態HOUSE。レコメンド!!!!

7

SLAM MODE FEAT.THE BAULS OF BENGAL

SLAM MODE FEAT.THE BAULS OF BENGAL Apreketa (Black Vinyl) SPIRITUAL LIFE MUSIC / US / »COMMENT GET MUSIC
SPIRITUAL LIFEが2003年にリリースしたコンピ「NEW BIRTH」に収録されていたSLAM MODEのJEFF MILLS REMIXが初のヴァイナル化!! JEFFらしい、ミステリアスなウワモノと、トライバルはリズム、浮遊するアフロ・チャント。異常なまでのトランス感を漂わせた三次元トライバル・ハウス!!

8

ALTZ VS DJ NOBU

ALTZ VS DJ NOBU Mariana JAPONICA / JPN / »COMMENT GET MUSIC
アフロジャズ・トライバルチューン傑作!!! ALTZとDJ NOBUによる脅威のジャパンアングラ合戦!!! フリーキーでアクティヴなトランペット、ファンキーなVOICEサンプル、ススペーシーで密林ジャングル系のリズムを擁するアッパートラック!! DJ NOBUによるREMIXは、チャント要素とミニマル要素をより強化し、クラップも気持ちいいRICARDO、LUCIANOラインのTOPチューン!!!

9

BRENDON MOELLER

BRENDON MOELLER Mainline EP ECHOCORD COLOUR / DEN / »COMMENT GET MUSIC
ヨーロッパにおける、DUB TECHNOの中心的レーベル「ECHOCORD」から、ベテランのBRENDON MOELLER A.K.A. ECHOLOGISTがリリース!! 曇りガラスの向こう側から鳴るような独特のキックと、NEW WAVE的なシンセのリフが気持ちいいDUB TRACK。逆面に、最近好調のROBAG WRUHMEがREMIXERとして参加。ぶっ壊れたビートと演説っぽいスポークン・ワードを使った流石の内容!!

10

CLAUDIO FABRIANESI & DONATO DOZZY

CLAUDIO FABRIANESI & DONATO DOZZY Disco Infecta MULE ELECTRONIC / JPN / »COMMENT GET MUSIC
PETER VAN HOESENはじめ数々のコラボーレーションを成功させてきた鬼才・DONATO DOZZYが今回タッグを組んだのは、同郷イタリアの新鋭・CLAUDIO FABRIANESI! ウォーミーなシンセと緩やかな打ち込みが身体に浸透していくタイトルトラックも良い出来ですが、ヘビーなキックが静かに変化していくドローンの海を切り裂くB面"Fade Out"が秀逸!

Chart by JETSET 2010.06.17 - ele-king

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1

TODD TERJE

TODD TERJE REMASTER OF THE UNIVERSE »COMMENT GET MUSIC
Remaster Of The Universeからのシングル・カット!!ニュー・ディスコ・シーンに新風を巻き起こしたリエディット職人"Todd Terje"のリミックス/エディット・ワークをコンパイル/ミックスした"Remaster Of The Universe"から、文句なしの選曲で12"カットをドロップ!!

2

BULLJUN

BULLJUN BULLJUN & FUNKY PRESIDENTS 2029 »COMMENT GET MUSIC
コレこそヴァイナルで欲しかった!2ndアルバムが遂にジャケ付2LPで登場!A.Y.B. イズムをクレイツに詰め込み、NY~東京~宮崎とさすらう中でかすかに覚えたゼロ年代への違和感と、無関係に加速するソウル~ファンク~ジャズ~ラテンへの愛情。それら全てを16パッドに込めることで自らのBボーイ美学を表明した、正に【Mo' Music, Less Talk】な2枚組です!

3

JOHN TALABOT

JOHN TALABOT SUNSHINE REMIXES »COMMENT GET MUSIC
トロピカル・フロウティン・サマー・ディスコ最高曲!!Delorean Remixもグレイトです。Permanent Vacationからの12"でオナジミのバルセロナの新鋭、John Talabot。地元レーベルHivern Discsからの超限定カラー・ヴァイナル!!

4

BINGO PLAYERS / EDWARD'S WORLD

BINGO PLAYERS / EDWARD'S WORLD TOM'S DINER / SOUL & ROOTS »COMMENT GET MUSIC
永遠のカフェラテ・アンセム"Tom's Diner"をダーティ・ダッチ・リミックス!!☆特大推薦☆Suzanne Vega feat. DNAによる歴史的アンセムを、大人気のダッチ・リミキサー・デュオBingo Playersがリミックスした特大ボムが登場っ!!

5

BIZ MARKIE

BIZ MARKIE TRIBUTE TO SCRATCH »COMMENT GET MUSIC
JET SET独占入荷!昨年以降噂になっていた垂涎の一枚・・・緊急入荷しました!Bizの1st収録曲ながら、12"化は勿論初!しかもインストやアカペラ、更にJackson 5やMarvin Gaye楽曲をふんだんに盛り込んだ危険過ぎるお蔵入りバージョンまで収録!

6

DVS1 (ZAK KHUTORETSKY)

DVS1 (ZAK KHUTORETSKY) LOVE UNDER PRESSURE EP »COMMENT GET MUSIC
Derrick May氏率いるTramsmat復活第2弾が早くも登場です!!Greg Gowの"Pilgrimage EP"でドラマティックな復活を果たしたTransmatがまたもや新作をリリース!!間もなくリリースが予定されているベルリン最高峰のクラブ BarghainからのBen Klockによる最新ミックスCD『Berghain 04』にも収録予定と話題です。

7

MYLES COOPER

MYLES COOPER GONNA FIND BOYFRIENDS TODAY »COMMENT GET MUSIC
超オススメです★スーパー・カラフルなベッドルーム・トロピカル・エレポップのニュー・ジーニアス!!快調リリースが続くTransparentから、またもや新しい才能が登場!!カリフォルニアの宅録シンガー、Myles Cooperのデビュー・シングル。今年のサマー・ポップ定番はコレです!!

8

DUBBEL DUTCH

DUBBEL DUTCH THROWBACK EP »COMMENT GET MUSIC
☆特大推薦☆ダーティ・ビーツをルーツに持つUKファンキー超新星が遂に正規デビュー!!ダーティ・ビーツ系US最強ブログが主宰する同名レーベルからのヴァイナル・リリース第2弾。Girl UnitのFactミックス収録で話題を集めたキラーA1を搭載ですっ!!

9

ERIC COPELAND

ERIC COPELAND DOO DOO RUN »COMMENT GET MUSIC
Gary Warを超える衝撃のグニャグニャ不定形サイコ・ポップ。これは普通じゃ作れません。ブルックリン最重要バンドのひとつBlack Diceの中心メンバーEric Copelandのソロ7"が、No Age主宰P.P.M.より!!大判ポスター・スリーヴの限定盤!!

10

1000NAMES

1000NAMES ILLUMINATED MAN LP »COMMENT GET MUSIC
得意の壮絶カットアップに加え、明滅アルペジオ・シンセも組み込まれた大傑作!!Team AcreからのEP"Paradise"も当店ヒットしたブルガリアンDJデュオが、ウォンキー/ブロークンヒップホップ大人気レーベルBlack Acreからアルバム・リリース!!

CHART by STRADA RECORDS 2010.06.11 - ele-king

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1

ANTONIO & ANTOINETTE OCASIO

ANTONIO & ANTOINETTE OCASIO ONE DREAM,OUR DREAM TRIBAL WINDS (US) »COMMENT GET MUSIC
TRIBAL WINDSから女性ヴォーカルものがリリース!パーカッシヴなビートにギターのカッティングやサックス、ピアノが絡むライヴ・フィーリング溢れるトラック、それにメロディアスなヴォーカルがフィーチャーされた盛り上がる作品!B面にはDJ UCHIKAWA a.k.a. LOFTSOULによるリミックスも収録!

2

JOINT MOVEMENT PROJECT

JOINT MOVEMENT PROJECT FIND A LOVE BALANCE ALLIANCE(FR) »COMMENT GET MUSIC
MOODYMANNのMAHOGANIやTRACKMODE等からのリリース、更には自身のレーベルN.D.ATLの運営で人気のKAI ALCEと、ニューヨークのアンダーグランド・シーンで古くから活動を続けるJOVONNとの強力コラボレーション!JOVONNによる陶酔系ヴォーカルにエレピが絡むグルーヴィーなオリジナルに加え、図太いビートで押しまくるSPENCER KINCY(a.k.a. GEMINI)によるリミックスをカップリング!

3

RON DEACON

RON DEACON SECRET GARDEN EP FARSIDE (GER) »COMMENT GET MUSIC
新鋭アーティストRON DEACONによる12インチが人気レーベルFARSIDEから登場!メランコリックな女性ヴォーカルもので、A面にはLOWTWCによるダブ・ミックスを収録!女性のヴォイス・サンプリングを絡ませた超ディープなハウス・チューンで途中で唐突に水が流れる音が入ったりするのも◎!NAKED MUSICのようなムーディーなB面もグッド!

4

HENRIK SCHWARZ AND KUNIYUKI

HENRIK SCHWARZ AND KUNIYUKI ONCE AGAIN REMIXED-SOULPHICTION REMIXES MULE MUSIQ (GER) »COMMENT GET MUSIC
人気作「ONCE AGAIN」にリミックス盤登場!PhilpotやSonar Kollektivといったレーベルで活躍中のビートダウン系ユニットSoulphictionをリミキサーに起用し、パーカッシヴで渋みを増した仕上がりに・・・!しかしそれ以上に注目なのがKuniyuki自身によるインスト・ヴァージョン!ヴォーカルを省くことにより、研ぎ澄まされたビートやピアノがダイレクトに伝わってきます!

5

ANDRE CROM & MARTIN DAWSON

ANDRE CROM & MARTIN DAWSON GONNA BE ALRIGHT OFF(EU) »COMMENT GET MUSIC
このレーベルではお馴染みのANDRE CROMがTWO ARMADILLOSの片割れMARTIN DAWSONとコラボレート!ディスコ・サンプリングにフィルターを効かせたB1、空間的な鳴りがカッコいいディープなハウス・チューンのB2が特にオススメ!

6

PHONIQUE

PHONIQUE OUR TIME OUR CHANCE-WAHOO REMIX DESSOUS (GER) »COMMENT GET MUSIC
USハウス好きをも反応させる音作りで当店でも人気のPHONIQUEがまたまたやってくれました!渋い男性ヴォーカルをフィーチャーしたテック・ハウスで、クール且つ繊細なトラックにヴォーカルがバッチリはまっています!一押しはオリジナル・ヴァージョンですが、バレアリックな雰囲気も併せ持ったWAHOOによるヴァージョンもグッド!Ben Watt、The Revenge、Brothers' Vibe、Will Saul、Laurent Garnier、Milton Jackson、Funk D'Voidらもプレイ!

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PHLASH & FRIENDS

PHLASH & FRIENDS JUNGLE ORCHIDZ(feat.ALMA HORTON) DIPIU(ITA) »COMMENT GET MUSIC
Restless Soul名義での活躍で有名なPHIL ASHERによる別名義PHLASH & FRIENDSの12インチ!まるでKENNY DOPEのようなファットなビートが圧巻のA面もさることながら、パーカッシヴなアフロ・トラックのB面がキラー!ブーミーなベースや民族っぽいヴォイス・サンプリング等も入った熱い仕上がり!

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JEPHTE GUILLAUME

JEPHTE GUILLAUME DEJA VUE(feat.WILTRUD WEBER) TET KALE (US) »COMMENT GET MUSIC
100枚限定のプロモも話題だったこの曲が遂に正規リリース!SPIRITUAL LIFEやIBADANからのリリースで知られるJEPHTE GUILLAUMEが久々に自分のレーベルから放つ強力盤で、彼らしいパーカッシヴなハウス・トラックに伸びやかな女性ヴォーカルがフィーチャーされたシリアス且つカッコイイ作品!

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MASSIVE ATTACK

MASSIVE ATTACK PARADISE CIRCUS-GUI BORATTO REMIX WHITE (US) »COMMENT GET MUSIC
MASSIVE ATTACKのアルバム「Heligoland」収録曲を、KOMPAKTなどからのリリースでもお馴染みのブラジル生まれのクリエイターGui Borattoがリミックス!メランコリックなディープ・ハウス・リミックスで、繊細なバック・トラックに可憐な女性ヴォーカルがグッとくる最上級の仕上がり!DOMMUNEでDJ AGEISHIさんがプレイしてました!

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ALEEM

ALEEM RELEASE YOURSELF NIA(UK) »COMMENT GET MUSIC
映画「MAESTRO」でも使われ大人気のこの1枚がオリジナル仕様で復刻!オリジナル盤は中古市場で高騰していたので嬉しい!A面以上に人気のB面ダブ・ミックスはMARLEY MARLが手掛けています!
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