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Chart - JET SET 2013.03.04 - ele-king

Shop Chart


1

Autechre - Exai (Warp)
ご存じ名門Warpを代表する重鎮デュオAutechre。'10年リリースの前作『Oversteps』以来となる待望の新作が遂に登場です。なんとAutechre流トラップやジュークも搭載っ!!

2

Jamie Lidell - S/T (Warp)
名門Warpが誇る説明不要のエレクトロ・ファンク天才Ssw Jamie Lidellが、Beckをプロデューサーに迎えた傑作『Compass』以来3年振りとなる5th.アルバムを完成

3

Blue Hawaii - Untogether (Arbutus)
ご存じGrimsらのリリースでお馴染み、カナダはモントリオールを代表するレーベルArbutusから、美麗ハーモニーを得意とする男女デュオBlue Hawaiiによる強力2nd.アルバムが登場です!!

4

New York Ska-jazz Ensemble - Step Forward (Brixton)
ニューヨークのジャズ・スカ・バンドNysjeの人気盤が嬉しすぎるアナログ化。"Take Five"等のジャズ名曲カヴァーからヴォーカル曲まで、全11曲を収録!

5

Carmen Villain - Lifeissin (Smalltown Supersound)
Smalltown Supersound発のニューリリースは、一流モデルとしても知られるCarmen Villainのデビュー作!B面にPrins Thomasリミックスを収録。

6

Bell Towers - Tonight I'm Flying (Internasjonal)
Roman Warfers名義での活動でも知られるメルボルンを拠点に活動を繰り広げるBell Towersによる久々となる最新作が、Prins Thomas主宰"Internasjonal"より待望のリリース!

7

Spirit Of The Black 808 - Dirty Jointz (Eargasmic)
現行シカゴ・ディープハウス・シーンを代表する人気レーベル"Eargasmic Recordings"からの最新作17番、地元シカゴで暗躍してきたというSpirit Of The Black 808なるミステリアス・アクトによる'97年制作楽曲を12"リリース!

8

V.a. - Movin 2 Fast (Whiskey Disco)
Sleazy Mcqueenが指揮するニューディスコ/リエディット~ビートダウン系人気レーベル"Whiskey Disco"の2013年第一弾リリースは、リエディット・シーン新旧気鋭4組によるワイルドなディスコ・ロック~ビートダウン・ハウスを主体とした即戦力リエディッツ!

9

K-def - One Man Band (Redefinition)
11年発表のアルバム『Night Shift』や、Slice Of Spiceからの蔵出し音源3部作も話題となったJuice Crew出身のビートメイカー・K-defが、またしても素晴らしいインスト作を届けてくれました!

10

Mayer Hawthorne - How Do You Do?-12x7" Box Set (Universal Republic / Fat Beats)
傑作アルバム『How Do You Do』の限定7インチBoxセットが登場。12枚の7インチにアルバム収録曲12曲、B面にはそのインスト・ヴァージョンを収録。さらに並べると1枚の写真になるピクチャー・スリーヴ仕様で、ディスプレイ用のシートも付属という豪華仕様!!完全限定盤です。

Cankun - ele-king

 松村正人が愛してやまないレコメン系という音楽がありますが、プログレッシヴ・ロックが複雑骨折を起こしたまま頭だけはどんどんよくなって、いまひとつ爽快感には欠けることも意に介さず、やがて月日は流れ去っていくうちに、当然のことながら時代の迷子と化していったものが、なぜか〈ノット・ノット・ファン〉と結びついてトロピカル・モードで蘇ったのがカンクンことヴァンセン・ケレの4作目といえるでしょう。奥歯にモノがはさまったような南国のイメージから思いがけない楽園の諸相が浮かび上がり、いってみればティピカルな表現は使わずにいつのまにかトロピカル・ムードが構築されていく。どこことなく植民地的で、さらりとアンニュイな気分。こんな説明でなるほどーと思ったあなたはちょっとおかしいですが、知識のある方はヘンリー・カウやエトロン・フー・ルルブランがサン・アローのカヴァーをやっているところを想像してみましょう。マスタリングはサン・アローとコンゴスのジョイントにも参加していたM・ゲッデス・ジェングラス。レーベルはコーラの新作やデス・アンド・ヴァニラをリリースした〈ハンズ・イン・ザ・ダーク〉です。そう、サン・アローは、さすがにもうワン・パターンね~とか言いはじめた人には、これこそネクスト・レヴェルといえるでしょう。フランスからエスプリを交えたサン・アローへの回答というか。



 アーチャーズ・バイ・ザ・シーの名義ではアンビエント・ミュージックもやっているので不思議というほどのものではないんだけれど、これまでカンクンの名義ではサン・アローが悪魔の沼に沈んだようなことをやっていたので、ここへ来て、そうか、あの混沌とした音の渦の中心にはサン・アローがいたのかということがようやく判明できるだけのスキルに達したということであって(あー、でも、それがわかってくると、いままでの意味不明なおとぼけムードが、急に愛おしい試行錯誤の連続だったと感じられてきたりして)、ようやくスタート地点に来たと思ったら、いっきにサン・アローも飛び越していたと。そして、いいがかりでもつけるようにトロピカル・ファンクに絡みつくレコメン系のムダな装飾音がいちいち音響の快楽を増幅させ、まるでキッド・クリオール&ココナツからコーティ・ムンディがパレ・シャンブールのセカンド・アルバム『ルーパ』をプロデュースした、その先を見せたくれたような錯覚に陥るのである。サン・アローよりもドラミングが乾いていて、全体にスウィング感のあるところは〈ZEレコーズ〉も彷彿させる。大人の遊びですよね、つまり。サン・アローにはそこはかとなくある求道的なシリアスさもきれいに薄まっています。

 アベノミクスが輸入盤の価格をじょじょに押し上げ、大量の失業者を置き去りにするかどうかというご時勢に、トロピカルといえば〈ノー・ペイン・イン・ポップ〉からデビューしたLAの新人も悪くなかった。そう、ヴァイナル・ウイリアムスなのに僕はCDを買ってしまった(アナログは売り切れだった)。ははは。これは、リヴァーブをかけまくったキュアーか、南国気分のハウ・トゥ・ドレス・ウェルなのか。「チルウェイヴ通過後のサイケデリック・ロック」とポップには書いてあったけれど、なるほど最後の方ではサイケデリック・ロックを剥き出しにする部分もなくはない。しかし、ほとんど全編が重量感のないノイ!(か、むしろラ・デュッセルドルフ)が煙のなかを疾走していくスタイル。カンクンのような抑制は一切なく、うっとりとした演奏が続くあたりはやはりアメリカである。バカみたいだけど、やはりこういうのも楽しい。それは否定できない。



 オープニングは「東京->スマトラ」。オリヴァー・ストーン監督『野蛮なやつら』を観ていたら、インドネシアが楽園のイメージとして強くプッシュされていて、中国から引き上げられた資本が現在はインドネシアや東南アジアに振り向けられているので、かつての映画産業が持っていた観光の要素としては正しいイメージの配布が行われているなと思ったりもしたけれど、ライオネル・ウイリアムスが宅録でつくりあげた音楽もすべてがその楽園のイメージを補完するものになっている。植民地というよりは宗主国で、アンニュイではなく単に甘酸っぱいアドレッセンスの放出。「アラブの春」はいつのまにか「アラブの冬」に変わり、今年は「アラブの夏」がやってくるとかいわれてるけれど、ウエスト・コーストを覆ったバリアリック・ムーヴメントはぜんぜん波の引く気配がない。もう、4年ぐらい続いている。

BO NINGEN × COMANECHI - ele-king


BO NINGEN
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コマネチ
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 グローバルな現代において、海外に音楽を届けること自体は簡単なことのかもしれない。ただ、実際に足を運び、さらに海外を拠点に活動をするとなると、そう簡単にはいかない。
 だからこそ、ボー・ニンゲンとコマネチがイギリスを拠点に活動し、『NME』からも評価され、ザ・ホラーズやザ・ドラムスなどからも認められているという事実に、僕たちはもっと注目すべきだろう。ボー・ニンゲンに関しては、新作『ライン・ザ・ウォール』の国内リリースが2月27日に決定しているので、今後、日本でもより幅広く注目されることになりそうだ。

 ロンドンを拠点に活動をしているアキコは、近年、ザ・ビッグ・ピンクを辞め、コマネチの活動に専念。2月14日には、セカンド・アルバム、『ユー・オゥ・ミー・ナッシング・バット・ラヴ』をリリースしている。グランジからの影響を強く感じさせ、ボディソニック・ビートとヘヴィなギターがいろんな角度から飛んでくる。ノイジーで、ハードで、パンキッシュだが、多くのリスナーがアプローチしやすい音楽でもある。
 スタイリッシュだが型にまったくはまらないクールさという点では、ボー・ニンゲンと似ているのかもしれない。

 去る2月、同時期に新作もリリースし、共通点も多いボー・ニンゲンとコマネチが日本でツアーした。これは、バンドでヴォーカルを務めるボー・ニンゲンのタイゲン、そしてコマネチのアキコとの対談。言いたい放題過ぎるふたりの対談、どうぞ、お楽しみください。

やっぱね、人生、リスク背負った方がええよ。理由つけて親があかんとかお金ないとかそんなんばっかり。たしかに現実問題で無理なんかも知らんけど、ほんまにそれくらい真剣に考えてんやったら、飛び出せっ!!!

イギリスを拠点に活動をする日本人、そしてリリースもほぼ同じタイミングということで共通点の多いおふた方ですが、せっかくの機会なので、今日はおふたりが普段あまり話せないことや、訊けないことを対談という形式でやれたらと思っていますので、どうぞよろしくお願い致します。早速なのですが、イギリスの嫌いな点を思いつくだけ挙げてください。

タイゲン:うわ、それたぶん100個くらい出てくる! だってコマネチのイギリス人のふたりが言ってたもんね(笑)。

アキコ:そう、だってドラムのチャーリーなんか日本に住める言うてたよ。

(笑)

タイゲン:とりあえず皆パッて言うのは、間違いなくご飯。

アキコ:ご飯! 例えば、今回帰って気づくんは、24時以降とか、お腹空いたらイギリスやとケバブかチップスしかないのよ。 お惣菜とかおにぎり一個食べたいなとかそういうのがないもん。

タイゲン:あとイギリスってライヴ後の打ち上げにご飯を食べにいくっていう文化がなくて、飲むだけみたいな。

アキコ:わかる!

タイゲン:そのくせにあんまり飲まないし。

アキコ:そうそう。 あれ疲れるよなぁ、結構。

タイゲン:あと単純にイギリス・ツアーしててもご飯の替えがない。どこ行っても同じっていうか。

アキコ:そう。 名古屋やったら、うなぎとか、手羽先とか、あるでしょ? 大阪やったら、たこ焼き、お好み焼きとかさ、そういうのないもん!

タイゲン:まったくないね。コマネチのイギリス人のふたりも、日本に着いてサービス・エリアの時点で感動してたからね(笑)。

アキコ:なんか、「なんでこんな美味しいの!」って、いままで朝ご飯っていったらベーコン・エッグしか知らんかったとか言うてたわ。

(笑)

タイゲン:食文化っていうのがまずあって、バンドで言うと僕はあれですね、イギリスって怠く演奏するのがかっこいいみたいなの多くない?

アキコ:たしかに。

タイゲン:日本のバンドはイギリスに比べるとまじめじゃん?

アキコ:それはある!

タイゲン:まじめすぎるのは良くないにしろ、テクニック、モチベーション、アティチュードにしろ、心持ちというか、音楽に対する向かい方というかさ、なんか惰性的な気がする......。

イギリスで活動をするということは、必然的に同業者はイギリス人が多いわけですよね。実際、日本人とイギリス人の相性みたいなものはどうなんですか?

タイゲン:意外と合う......かな? どっちもシャイだよね。

アキコ:うん。 シャイ。

長く滞在するうえで、人間関係などはあまり苦にならないのですか?

アキコ:いやでも、なんていうか......。

タイゲン:雑だよね。

アキコ:めっちゃ雑!!

タイゲン:時間ルーズだし、適当......。

では逆に、イギリスの良い点はなんでしょうか?

アキコ:え、ちょっと待って、あたしらまだ2個しか言うてないやん。

(笑)

アキコ:あとはね、汚い。

タイゲン:汚いねー(笑)。

アキコ:道も汚いし、バスも汚いし、食べたゴミとかポイ捨てするし、こっち帰って来たら、ゴミなんか絶対捨てたくないって思うもん!

タイゲン:紳士の国と言われていますが、紳士の割合は相当低い! あと教育が行き届いてないですね。

アキコ:マナーとか礼儀みたいな。

タイゲン:格差もある。親が金持ちでプライヴェート・スクールというか、それと公立とのね。

アキコ:食べ物も凄いよ。

タイゲン:また食べ物になっちゃうけど(笑)。

しかし、おふたりはそんなイギリスに拠点を置いて実際に生活しているわけであって(笑)、良いところももちろんありますよね?

タイゲン:うん(笑)。とりあえず音楽活動に関しては、凄いやりやすい。

アキコ:やりやすい! やりやすい!

具体的にどういったところがですか?

タイゲン:例えば、日本だとノルマというものがあって、えっと、ちなみにアキコちゃんは日本で活動してた?

アキコ:してない。 ちなみにノルマってどういう意味?

タイゲン:「ペイ・トュー・プレイ」。

アキコ:うそー!!! 自分らでお金払って演奏させて貰うの?!

タイゲン:というか、チケットが売れないと自分たちで払うの。

アキコ:えーーーーーー!!!!!  あ、でもイギリスにもそういうセコいプロモーターおるよね。

タイゲン:セックス・ピストルズがDJするからとか言って釣ってくる奴とかいるけど、でもだいたいはないじゃん? ちょっとはお金貰えるかもしれないし、赤にはならない気がする。

アキコ:たしかになー。

タイゲン:あと人がよく混ざってライヴに来るよね。ホラーズがぽつっと来たりさ、ファッションの人とか、アートの人とかが普通にお客さんとして観に来てくれて、それがコラボに繋がったりするし。

アキコ:日本やったら、上下関係みたいなのあるでしょ? そんなん関係ないもん、イギリス。日本だとあれがあるじゃん、えーっと、ほら、あれ、なんやったっけ?

タイゲン:ごますり?

アキコ:そうそう。

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うちらがやってるようなアンダーグラウンドとメインストリームがちゃんと繋がってるよね、階段が架かってるというか。バンドのノルマとかもないから、最初は1回のライヴ20ポンドみたいなところからはじまって、だんだん50~100くらいに上がってって、っで、メジャーになっていくっていうかさ。

堅苦しくないという意味では、イギリスは良いと。

タイゲン:そうそう! 砕けてるっていうか、友だちみたいな感じでお客さんがライヴ後に話しかけてくれるし、そういうアーティストとお客さんの関係みたいなものは凄くいいなって思って。日本だと、物販で本人が手売りしてたけど、申し訳なくなって、家帰った後にアマゾンでCDポチった(購入)とかツイッターで書いてあったりして(笑)。

アキコ:あー! それ私も言われた。前回コマネチで日本ツアーした時に、なんか7インチのシングル買って、サインして貰いたいから会場に持ってきたのに恥ずかしくて頼まれへんかったって!

でもそれ凄いわかりますけどね(笑)。

タイゲン:あとイギリスの良い点でいうと、日本だとどうしてもアーティストとプロモーター、会社の人でも、イコールに成りづらいというか、上から見てくるか、下から見てくるかどっちかになっちゃうかなっていう感じがする。イギリスは結構そういった意味では対等っていうかさ。

アキコ:イギリスやとお客さんとアーティストが一緒みたいな感じやけど、こっちやったらファンの人が崇めてるような感じがあるもんね。

タイゲン:そこらへんに関しては凄く自然体だよね。あと音楽的にも、うちらがやってるようなアンダーグラウンドとメインストリームがちゃんと繋がってるよね、階段が架かってるというか。さっきも言ったけど、バンドのノルマとかもないから、最初は1回のライヴ20ポンドみたいなところからはじまって、だんだん50~100くらいに上がってって、っで、メジャーになっていくっていうかさ。

アキコ:そうそう! 繋がってる、繋がってる。

タイゲン:日本だとメジャーになるときに、凄いステップ・アップがあって、ノルマが無くなるまでがまず大変っていうか、めちゃくちゃジャンプしなくちゃダメで、しかもそこからギャラが出るまでがあって、ギャラがあってから食えるようになるまでがまたあって、凄い階段が一段一段デカいんだけど、イギリスだと逆に一段一段、じょじょに上がっていく感じというか。

アキコ:うん、わかる。

タイゲン:だからイギリスに関しては、まず音楽活動がやりやすいっていうのがあるかなーって僕は思うけどね。


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先ほど、コラボまでの流れもイギリスだと自然だと仰っていましたが、例えば、ボー・ニンゲンの"Nichijyou"という曲ではサヴェイジズのヴォーカル、ジェニー・ベスがフューチャリングで参加しています。あのコラボはどういった成り立ちで生まれたものなのでしょうか?

タイゲン:もともと凄い前に、彼女が以前やってたプロジェクトで対バンしてて、うちのレーヴェルとも仲良かったからたまに話してて、っでゲスト・ヴォーカル探してる時に、彼女は? って言われて、いいかもねって。普通に友だちのノリで聞いてみて、じゃあやるよって。本当そんな感じ。

アキコ:そういうのよくあるよ。お金払うからリミックスしてくださいとかさ、そういう風に頼んでやるんじゃなくて、「レッツ!」 ていうかさ、一緒にやろう! みたいなね。

タイゲン:うんうん!

以前、たいげん君がエレキングのインタヴューで、海外(イギリス)を拠点に活動をする理由に対して、「日本にいないからこその日本人らしさや日本の良さをちゃんと見ることが出来るから」って言ってたのが凄く印象に残っているのですが、アキコさんにとっての海外を拠点に活動する理由ってなんですか?

アキコ:単純に世界に飛び出したいと思ったからかな。日本で活動してたら日本語で歌わなきゃとかやっぱり思うし、でもイギリスやったら、まあロックの発祥地やし、自由に音楽やりやすそうなイメージはあったし、さっきの話じゃないけど、もっと広がりやすいかなって、おっきく世界に。日本で活動するんもええんやけど、あたしはそれが嫌やった。

タイゲン君も、まず高校を卒業した時点で、日本という選択肢はなかったと言ってましたよね。

タイゲン:うん。

アキコ:あたしもそうやった。日本出たときに、帰らへんって思ってたから。そういう気持で行ったからね。例えば日本で売れて、おっきくなっても、あたしにとってそれは成功じゃないから、他の国の人、このバンド知ってんの? ってなるでしょ。

なるほど。では次に、逆に日本の良い点はなんだと思いますか? これも思いつくだけ挙げてください。

タイゲン:飯はもういろいろ話尽くしたから(笑)、音楽的にいったら、お客さん凄い観てくれるよね?

アキコ:うーん......、でもノリ悪くない?

タイゲン:まぁ、そういう場所もあるけど(笑)、いやでも場所次第だと思うよ。さっきの姿勢の話じゃないけど、日本の場合は全体的に、音楽をやることに対してのストイックさみたいなものは、イギリスにはなかなか無い点だと思う。ノルマ制度があるからこその敷居の高さみたいなものは実際ある気がするし、下手だったらライヴ・ハウスで演奏出来ないんじゃないか? みたいな、いい意味での争いがあるよね。

"海外に出ていない"と仮定するとしたら、現在どのように日本で活動しますか? そもそも、日本で活動しますか?

タイゲン:うーん......、してるとは願いたい(笑)。

アキコ:ねぇねぇ、あたし、たいげん君に質問したいねんけど?

あ、どうぞ!(笑)

アキコ:イギリス行ったときに、日本人のメンバー探してた?

タイゲン:ううん。

アキコ:じゃあ、なんで日本人だけのメンバーになったの?

タイゲン:僕、最初バンドを5個くらいやってたんだけど、ちなみに担当は全部ベースで、イギリス人やらフランス人やら、いろんな国の人と活動してた中で、ギターのこうへい君にまず出会って、外人とジャムってるうちに、ギターのゆうきに出会って、もんちゃんに出会って、っで気づいたらこの形になってたっていう(笑)。でも別に日本人を募集してたわけじゃないよ。イギリス人と一緒にやってたバンドとかも、引き続き活動はしてたんだけど、解散したり、国に帰ったり、そうこうしてるうちにボー・ニンゲンが忙しくなってった感じかな。

逆に、アキコさんはどうだったんですか?

アキコ:あたしは海外に出て、向こうの音楽やりたいってなったから、日本人と組む気はなかったね。って、なんかレイシストっぽいかな?(笑)。

タイゲン:いやいや(笑)、日本出てきたわけだから、それは普通じゃん?

[[SplitPage]]

日本出たときに、帰らへんって思ってたから。そういう気持で行ったからね。例えば日本で売れて、おっきくなっても、あたしにとってそれは成功じゃないから、他の国の人、このバンド知ってんの? ってなるでしょ。


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ちなみに、タイゲン君とアキコさんとの出会いはどのような感じだったんですか?

タイゲン:スタジオだ!!

アキコ:違う! 前から知っとったんやで。

タイゲン:うそ!

アキコ:スクリーミング・ティー・パーティが〈ストールン・レコーディングス〉で頑張ってたときに、コマネチで対バンしたのよ。っで仲良くなって、スクリーミング・ティー・パーティのマイスペース見たら、ボー・ニンゲンがトップ・フレンドに入っとって(笑)。

マイスペース懐かしいですね(笑)。

タイゲン:マイスペースっていい時代だったよね(笑)

アキコ:いい時代やった(笑)。そんでクリックしたら、もう一発で気に入って。

タイゲン:ああ、ありがとう(笑)。

アキコ:そんとき流れたのが、"人生一度きり"で、そんでこのバンドむっちゃええ! ってなって、まわりの友だちとかにも言っとった。あたしがビッグ・ピンクやってたときとかも、サポートはボー・ニンゲンがいいってお願いしてたもん。 実現せえへんかったけど。

タイゲン:でも最初に会ったのはスタジオだよね?

アキコ:うん、スタジオ(笑)。別のバンドやっとったときにスタジオで会って、あたし写真撮るの好きやから、写真撮らせて貰って

タイゲン:いきなり第一声にして、「あれやろ? "人生一度きり"やろ?」 って言われたの覚えてる(笑)。

アキコ:「歌詞もめっちゃいいし、わかるわ~!!!」言うて(笑)。

タイゲン:ははははははは!

(笑)

タイゲン:なんか、スタジオとかでもさ、日本だと同じスタジオで練習してるバンドとあんまり仲良くなったりしない気がするんだけど、だってスタジオの紹介でチャーリーもコマネチに入ったんでしょ?

アキコ:うん。なんかそういう場所での対抗意識はないよね!

タイゲン:うんうん! 友だちの紹介とか、スタジオで知り合ったとかさ、そういう人間関係がいい意味で軽いノリっていうか。

アキコ:軽いノリ。だから「バンドやんねん!」とかそういうことを深刻に考えるんじゃなくてね。あっ、そうそう、話が逸れるけど、この間ね、とある人があたしに、LAに住んでる日本人の友だちがバンドはじめたいって言ってんねんけど、どうしたらいいんかアキコちゃん、アドヴァイスしてあげてくれませんか? って、え? アドヴァイスするようなことちゃうやん! って、バンドやりたかったら普通に友だちとか、音楽好きな子らとかと話したりして、この子らこんな音が好きやねんなって、それでじゃあバンドやってみーへんってなるやん。

(笑)。

タイゲン:ギターのこうへい君と出会ったとき、まだギター歴2年とかだったし、こうへい君に出会えたのがイギリスだったっていうのは大きかったのかなってたまに思う。お互い。

おふたりは、ヤックのマリコさんともお知り合いなんですよね? 現地のシーンにも、日本人のコミュニティみたいなものがあるんでしょうか?

タイゲン:とくにはないかな。イギリス人、日本人関係なく、音楽とか人柄とかで共鳴しあってるだけだと思うし、たまたまそこが日本人だったっていうだけで、日本人だから連むっていうわけではないかな。

アキコ:まぁ、家が近いからっていうのもあるよね(笑)。でもそういうのはまったくないよ。気が合うから。

タイゲン:日本のシーンの良い点は、いわゆる、何々系って言われるくらい、イギリスと比べたら、実際めっちゃたくさんかっこいいシーンで溢れてる印象だけど、逆に閉鎖的な気もする。コマネチもボー・ニンゲンも、あとヤックとかもさ、音は違うけど、ちゃんと交流があるし、対バンもするじゃん。

アキコ:なんか、自分らのやってるジャンルじゃなくても、みんな他の音楽も気に入って観に行ったりするし、イギリスは観に行きやすいよね。安いし、いろんなところでライヴがあるし、皆、オープン!

コマネチで言えば、ザ・ドラムスとのツアーが記憶に新しいのですが、彼らとのツアーもまさにそういう感じで動き出したんですか?

アキコ:そうなんですよ。昔はあたしも閉鎖的で、聴く耳を持たないときもあってんねんけど、先入観というかね、でもビッグ・ピンクやってたときに、『NME』ツアーで仲良くなって、そんときも音が全然ちゃうし、最初ドラムスのことはそんなに良いとか思ってなかったんけど、聴くたんびに好きになって、ポップやなぁ~思て、コマネチでやるときも、ほんまに、ブッキング・エージェンシーなく、今度こっち来んねんてね! サポートしていい? って連絡したらすぐオーケー出て、ベス・ディットーのゴシップもそうやし。彼らは昔からツアーを頑張ってて、そんときからあたしよくライヴ観に行ったりしてて、コマネチでも小さい会場のときからサポートもしてたんけど、いまでも、イギリス帰って来たらコマネチでサポートしてって、どんなにおっきくなっても向こうから連絡来る。見捨てへん、うちらのこと。

タイゲン:地に足ついてるバンド多いよね。ホラーズも本当にそうだし、めっちゃ良い奴らだよね!

アキコ:なんかあたしいまレストランでバイトしてんねんけど、そこに毎日来るんですよ、ホラーズ(笑)。

ははははははははは

タイゲン:売れっ子のロック・スター感ゼロだよね! なんか初めてうちらのライヴ観に来てくれたときも、すげー良かったってベースのリースが言ってきてくれたんだけど、オレもバンドやってるんだって、最初から偉そうな感じじゃなくて、僕がどんなバンドやってんの? って聞いてから、ちゃんと、ホラーズって凄く丁寧に答えてくれて。

アキコ:電話番号も向こうからくれるし、それで今度お好み焼き作るから食べにおいでって言うたら、ほんまに来てん(笑)。

タイゲン:はははははははは

アキコ:うちに(笑)。

タイゲン:共鳴しあって、単純に何かやろうってときに、少なからずの壁みたいなものが無いからこその、やりやすさみたいなものはやっぱりあるかな。それはイギリスの良い点、だね。

イギリスとその他ヨーロッパの違いはどのように感じていますか?

タイゲン:国によって反応は違うけど

アキコ:違う! でも他のヨーロッパより、イギリスのほうが音楽を発信してるよね。

タイゲン:やっぱり、他のヨーロッパのバンドもイギリスに来たがってるし、逆にイギリスは来られ成れてるから、まぁホスピタリティーは最悪なんだけど(笑)、でもさっきも言ったけど、チャンスが多い環境があるからね、イギリスには。イギリスの音楽業界、僕は健康だと思うんだよね。

アキコ:うん。

現在のアメリカのシーンについてはどう思いますか?

タイゲン:最近ジュークっていうのが流行ってるでしょ、知ってる?

アキコ:知らん。

タイゲン:僕も知らなくて、それでツイッター見て、あれはアメリカだよね。

アキコ:ジュークって日本のあの......

タイゲン:違います! 違います! うちのドライヴァーと同じジョークを言わないでくれ(笑)!

(笑)

タイゲン:あとイー・ディー・エムとか。イギリスだとあんまり聞かないけどね。なんかでも影響的な部分で言ったら、アメリカが強くなってきてるのかなってちょっと感じるけどね。日本はとくに。

以前、イギリスのティースやザ・ビッチズなどのバンドは、イギリス・シーンの不満を吐露し、ティースに関しては実際にアメリカに拠点を移しました。現状としては、個人的に、僕もアメリカの方がシーンが活発な印象を受けているのですが、それに関してはどう思いますか?

タイゲン:残念だね、でもアメリカはまだ行ったことがないからなぁ~。なんとも言えないんだけど、コマネチは行ったことある?

アキコ:コマネチの前のバンドで行った!

タイゲン:どうだった?

アキコ:うーん......、シーンとかはよくわからんけど、活動をするうえでは大変やよ、辛い! なんかやりにくかったなぁ、アメリカはデカイから、移動が12時間やったり。

タイゲン:なるほどね。

では、海外のバンドとしっかりコンタクトを取りながらも、日本でのツアーもしっかりこなし、非常に上手いヴァランスで活動をされているおふた方ですが、これから海外に活動を展開しようと思っている日本のバンドやアーティストにメッセージを送るとしたら、どんな言葉を送りますか?

タイゲン:とりあえず、出て、やるしかない(笑)。

アキコ:それしかないやろ(笑)。やっぱね、人生、リスク背負った方がええよ。理由つけて親があかんとかお金ないとかそんなんばっかり。たしかに現実問題で無理なんかも知らんけど、ほんまにそれくらい真剣に考えてんやったら、飛び出せっ!!! 

ふたたび浮かび上がる巨影 - ele-king

 明日はいよいよアンディ・ストット東京公演を目撃することができるわけだが、マンチェスターのアンダーグラウンド・ヒーロー、デムダイク・ステアの再来日もまた外すわけにはいかない。〈ファンダーズ・キーパーズ〉の一員でもあるショーン・キャンティ、ドーター・オブ・ザ・インダストリアル・レヴォリューションとしても知られるペンドル・コーヴンの片割れMLZによる同ユニット。行き過ぎた音の発掘屋と絶対零度なドローンの使い手が、われわれに見せてくれる風景とは......。
 紙ele-kingも絶賛準備中の次号は「新工業主義(ニュー・インダストリアル)」特集。ちょうど1年前にも本誌ではきっちりと記事を組んでいるが、ひきつづき彼らの活躍やその意義を次号の特集内にてもキャプチャーしていきたい。シーンに横たわる黒々とした巨影、デムダイク・ステアふたたびの公演を見逃すな!

2013.03.19 TUE
root&branch/UNIT presents DEMDIKE STARE

<UNIT>
DEMDIKE STARE (MODERN LOVE, UK) LIVE A/V
DJ NOBU (BITTA/FUTURE TERROR)
MLZ (MODERN LOVE, UK)
STEVEN PORTER (10LABEL/SEMANTICA RECORDS/ WEEVIL NEIGHBOURHOOD) LIVE

<SALOON>
COMPUMA
Shhhhh

OPEN/START : 23:00
CHARGE : ADV 3,000yen / DOOR 3,500yen(TIL 24:00 3,000yen)
※未成年者の入場不可・要顔写真付きID

TICKET : 【一般発売】3/3(SUN) on sale
Lawson Ticket / e+ / CLUBBERIA ONLINE SHOP / TECHNIQUE

INFO : 代官山UNIT 03-5459-8630

Andy Stott、DeepChird等と並びUK、Modern Loveレーベル所属の代表アーティストとしてマニアから絶大なる指示を得るDemdike Stare。2011年末からリリースを開始した1000枚限定のアナログ4部作をコンパイルしたダブル・アルバム『Elemental』も話題のダーク・エクスペリメンタルなエレクトロニック・ミュージックの最先鋒の再来日が決定。
当日はDemdike Stareのライブに加え、Demdike Stare、Pendle Covenのメンバーでありソロでも数多くの作品をリリースしているMLZがDJとしてもプレイ。日本からはFuture Terror、Bittaを主宰し現在最もその動向が注目されるDJ NOBUのDJとSuvrecaの主宰するSemantica Recordsのカタログにも名を連ねるSteven Porterが貴重なLive Setで参加。更に階下のSaloonではワールド・ミュージックから現代音楽までを網羅するCompumaとShhhhhが特異な空間を演出する。





〈シュラインドットジェイピー〉の肖像 - ele-king

 97年に設立され、ひとつの哲学のもとに独自のIDMを模索しつづけてきた国内レーベル、〈シュラインドットジェイピー〉。2011年よりほぼ毎月のペースでリリースされてきた21タイトルをele-kingの視点でご紹介しよう。主宰である糸魚健一のブレない音響観やアート・ワーク、繚乱と展開される各アーティストのサウンド・デザインを楽しみたい。国産のエレクトロニカやIDMの水準をしっかりと感じ取ることができるだろう。

 倉本諒、デンシノオト、橋元優歩、野田努、松村正人、三田格によるレヴュー21タイトル掲載ページは、以下からご覧いただけます。
https://www.ele-king.net/special/shrine.php


■Pick Up

intext - fount
SRCD025

言語=フォント=シニフィアンの「美」が、形式=デザインの「美」へと遡行し、そこからサウンド=音響・音楽が生まれること。京都在住の外山央・尾崎祐介・見増勇介らによるこのエレクトロニクス・サウンド・アート・プロジェクトのミッションは、テクスト・フォント・デザイン・サウンドのマッピングを拡張していくことで、電子音響作品における「形式の美」を刷新する試みのように思えた。電子音の清冽な持続、陶器のような質感のクリッキーなリズム、記憶を解凍のようなサウンド・コラージュ。それらが精密に重なりあい、一切の濁りのない清流のようなサウンド・レイヤーを生成していく。そのサウンドのなんという美しさ! (デンシノオト)

plan+e - sound-thinking
SRCD038

レーベルを主催するサイセクス(PsysEx)とアームチェアー・リフレクションによるアティック・プランに萩野真也が加わって名義が短縮され、さらにE(Ekram)こと古舘健をフィーチャーした即興ユニットの1作目。前半はムーヴ・Dのディープ・スペース・ネットワークを思わせつつ、音数を減らしていないラスター・ノートンというか、ドイツ産にはない情感が随所から滲み出してくる。あるいはマッシヴ・アタックをグリッチ化したような泥臭さをそこはかとなく漂わせ、無機質な音だけで構成されているとは思えない豊穣なニュアンスへと導かれるとも(闇のなかを手探りで進んでいるのに、どこか安心感があるというか)。後半は発想の源がさっぱりわからない“cycloid”や、雅楽(?)にジャズを持ち込んだ“bon sens”など意外な展開が目白押し(後者は今西玲子を琴でフィーチャーし、法然院で録音)。全9曲、似たようなパターンはまったくなく、アンビエント係 数の高い“thinking reed”や“cosmology”にしてもなかなか一筋縄ではいかないややこしさに満ちている。つーか、またしてもピッチフォークあたりに「日本人はなんでオウテカばっかり聴いて、自分の国の......」とか嫌味を書かれそうな予感も? (三田格)

Toru Yamanaka - sextant
SRCD027

睦月、如月は例年僕の生体バイオリズムが最も降下を記録するシーズンである。それは自身のなかと外の世界に最も顕著なズレが生じることを意味する。芸術表現における主たるモチヴェーションのひとつはこのズレを補正することだ。この『セクスタント』には彼の内省的事柄を音像とその配置によって丁寧に具現化していく根源的行為が各トラック毎に完遂されていて、それが聴者の心象から新たなるスケッチを描き出す。セクスタント(航海計器)はいかなる聴者の内なる大海原にても正確な航路を導き出してくれるに違いない。〈shrine.jp(シュラインドットジェイピー)〉なる独自のブランディングを施されたリリースをハイペース継続している現代型のレーベルが畑は違えど存在しているということは、いい加減正月ボケから目を醒ますべきだと僕に告げているのかもしれない。(倉本諒)

ieva - il etait une fois
SRCD036

最初にヘッドフォンで聴いて、数分後、このアルバムにすっかり魅せられた。イエバによる『Il Etait Une Fois(昔々)』は、聴覚による想像的景色の万華鏡だ。まどろみを誘い、夢と記憶の茂みをかき分け、日々の生活では忘れている感情の蓋を開ける。アンビエント・ミュージックはこの10年で、より身近な音楽となった。ただ、そう、ただ耳を傾けさせすれば、景色は広がる。そして、フィールド・レコーディングとミュージック・コンクレートも、アンビエントにおいてより効果的な手法として普及している。クリスチャン・フェネスやクリス・ワトソン、グレアム・ラムキン、あるいはドルフィン・イントゥ・ザ・フューチャー......本作もこうした時代の新しい静寂に連なっている。女性ヴォーカルの入った最高に美しい曲が2曲あるが、それらは歌ではなく、あくまで音。フィールド・レコーディング(具体音)の断片たちが奏でる抽象的で想像的な音楽のいち部としてある。まったく、なんて陶酔的な1枚だろう。(野田努)

polar M - the night comes down
SRCD022

エレクトロニカにおけるアンビエント以降の音楽/音響はいかにして成立するのか。京都出身のpolar Mことmuranaka masumが奏でる音のタペストリー/層は、この「難題」に対して柔らかな返答を送っているように思えた。電子音響のクリスタルな響き。ヴォーカル・トラックが醸し出す透明な感情。ロード・ムーヴィのサントラのようなギターの旋律。ガムランでクリッキーなビート。これらの音が緻密にエディットを施され音楽作品として成立するとき、「音楽/音響」の対立は綺麗に無化されていくのだ。まるで氷の密やかに重なり合うような結晶のようなデジタル・サウンド。ずっとずっと浸っていたい。(デンシノオト)

Psysex - x
SRCD030

〈shrine.jp(シュラインドットジェイピー)〉主宰のPsySex(サイセクス)こと糸魚健一をはじめて知ったのは、まだ雑誌に勤めていたとき、〈涼音堂茶舗〉の星さんにファースト『Polyrhythm_system exclusive message』をご紹介いただいたときなので、もう10年になるが、PsySexはこの間、一貫してユニット名の由来でもある“ポリリズム - システム”、つまり揺らぎやズレを内包した機構の構築をつきつめてきた。それはIDMの金科玉条というよりシステム自体の自律性であり、そのベクトルに沿いながらPsySexは〈daisyworld〉や〈12k〉〈port〉〈imagined〉などのレーベルとリンクし、アルヴァ・ノトやAtom TMと親交を深めたが、軸は揺らがなかった。まったくブレない。アルバムごとの表情はもちろんちがうし、テクノロジーの変遷を無視するわけにはいかないが、PsySexのビートとノートとサウンドの化合物は、白地図上の国盗りゲームのようだったIDMのトレンドとはハナから距離をとっていた。『x(テン)』はその10年目の経過報告であり、時空間上に音を置いていくやり方に円熟の旨味さえ感じさせる。ストイシズムのなかに滲むものがある。アブストラクトなのにギスギスしていないのは〈shrine.jp〉の諸作にも通じるものであり、PsySexという機構はそれらとの連関のうちに語られるべき何ものかに拡張しつづけている。(松村正人)

Toru Yamanaka - ele-king

 睦月、如月は例年僕の生体バイオリズムが最も降下を記録するシーズンである。それは自身のなかと外の世界に最も顕著なズレが生じることを意味する。芸術表現における主たるモチヴェーションのひとつはこのズレを補正することだ。この『セクスタント』には彼の内省的事柄を音像とその配置によって丁寧に具現化していく根源的行為が各トラック毎に完遂されていて、それが聴者の心象から新たなるスケッチを描き出す。セクスタント(航海計器)はいかなる聴者の内なる大海原にても正確な航路を導き出してくれるに違いない。〈shrine.jp(シュラインドットジェイピー)〉なる独自のブランディングを施されたリリースをハイペース継続している現代型のレーベルが畑は違えど存在しているということは、いい加減正月ボケから目を醒ますべきだと僕に告げているのかもしれない。

猥雑さと崇高さの融合。京都の地下シーンをリードし続ける山中透が、コンポーザーとしての魅力を余すところなく発揮した傑作。

山中透は80年代より活動する作曲家、レコーディング・エンジニア、プロデューサー、DJ。Foil Records主宰。ダムタイプに結成当初から2000年まで音楽監督として参加し、代表作『S/N』をはじめ多くの作品で音楽・音響を手掛ける。また1989年より続くドラァグクイーン・イベントDiamonds Are Foreverを主催するなど、常に京都の地下シーンをリードしてきた。 本アルバムはクラブ・ミュージックとフィルム・ミュージックを組み合わせたような、独自のバランス感覚で構成されており、山中がコンポーザーとしての魅力を余すところなく発揮した作品となっている。
抑えのきいたグルーヴからジャジーなシンコペーションへと変化するリズムが印象的な"Birdy"、ヴァイブとオルガンのフレーズがクールなファンクネスを作り出す"Slide Show"など、随所に散りばめられたブラック・ミュージック特有の律動は極めてフィジカル。また荘厳なパイプオルガンの旋律が、強烈なエモーションを生み出す"Barnard 68 Part 2"に代表される、猥雑さと崇高さの融合も作品の重要なファクターとなっている。 リミックスにAUTORAやSPDILLなどでも活躍するspeedometerことJun Takayama、TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDの石川智久が参加。マスタリングはMAGIC BUS Recording Studioの沢村光が手掛けている。
(中本真生/UNGLOBAL STUDIO KYOTO)

ゆーきゃん × Rent:A*Car - ele-king

 一連のフォーク・リヴァイヴァルとは一線を画す京都派(?)シンガー・ソングライターのなかでも透き通った歌声と歌の世界で多方面で活躍する"ゆーきゃん"と、パニック・スマイルの保田憲一、battanationの岩沢卓、女性パフォーマンス集団、つむぎねのツダユキコの"Rent:A*Car"のコラボレーション。物音、環境音を弾き語りと対置する構成だが、一方が他方を添えものになるのではなく、リスナーの前をともに過ぎることで、サウンドトラック的な、というより、表題にもある「tomb mound=古墳(と訳すのが適当だろうか)」が思い起こさせる古代と、身のまわりの風景を重ね合わせる、音楽にしかできない広角かつ即時的な表現をサラリとやってのけている。

風景が奏でる音と、 風景が呼び込む詩が織りなす珠玉の文学作品。

京都を代表するシンガーソングライターゆーきゃんと、東京を中心に活動するRent:A*Carの共作。ゆーきゃんはこれまでに、くるり主催のレーベルNOISE McCARTNEY RECORDSからリリースした、ゆーきゃんwith his best friends名義の『sang』を始め、4枚のアルバムを発表している。ソロ以外には、あらかじめ決められた恋人たちへのリーダー池永正二とのユニットシグナレスなどでも活動。また京都にて10年間以上続くインディー・フェスティバルボロフェスタ主催メンバーの一人だ。 Rent:A*CarはPANIC SMILEの保田憲一とマルチ・クリエーター岩沢卓によるノイズ・アンビエント・ユニット。街の雑踏を集音及びエディットした素材を用いたり、拾ってきたガラクタを手作りの楽器に作り変えて演奏するなどして作品を制作している。 本作は愛知県豊田市の山奥に3日間寝泊まりし録音、フィールド・レコーディングした音源を元に制作されており、粗さや泥くささを残したあえて洗練し過ぎないサウンド・プロダクションが試みられている。
飛鳥時代に作られた古墳の石室内で録音された"石室の詩"、キャンプ場の東屋で録音された"lost in campsites"など、録音した場が作る音の反響、場所からインスピレーションを受けた詩の世界観が一体となってそれぞれの楽曲を作り上げている。
(中本真生/UNGLOBAL STUDIO KYOTO)

Rexikom - ele-king

 立体的に構築された音響、そこに人と人のたてる物音のようなノイズがゴーストのように貼り付いている。ヘッドホンで聴くと何度か後ろを振り向くことになるだろう。プライヴェートな生活音ではなく、どこかしら公共空間からのサンプリングを思わせるそれは、硬質なサウンド・デザインとも相俟って、本作のインスピレーションの根源ともなったというゲオルグ・トラークルの欝や「世界苦」を現代的に解釈しているのではないかと想像させる。

電子音楽が内包する本来的な文学性をまとった フロア仕様のテクノ・サウンド。

Masahiko Takeda、Naohiro Tomisawa(Pain For Girls)、Takashi Himeoka(Etwas)の3人で構成される、京都の電子音響ユニットRexikom(レキシコン)初のCD作品。2011年の活動開始以降、電子音楽レーベルIl y a Records(イリヤ・レコード)を主宰したり、ライブ・インスタレーションを中心とするイベントIl y aを主催するなど幅広い活動を展開。それぞれがソロ・アーティストとしても活動している。 タイトルのGeläute der Stille(ドイツ語で静寂の響き) は、ハイデガーが詩人ゲオルグ・トラークルの詩を評した際に用いた言葉。アルバムはドイツ表現主義を代表するトラークルの詩世界を媒介として制作されたという。 "Grodek"や"Alton"は、テクノ・ビートに神秘的で不穏なシンセ音がのる、いわゆる黎明期のテクノ・サウンドを彷彿とさせる楽曲だ。テクノとSFの関係性など、電子音楽と20世紀の文学が切り離せない関係にあることは周知の事実だが、回帰的であるが故に、デトロイト・ディープ・サイドのアイコンDrexciyaに通底するようなテクノ特有の文学性を獲得することに成功。それがそのまま同世代のアーティストにないオリジナリティーとなっている。
(中本真生/UNGLOBAL STUDIO KYOTO)

HIRAMATSU TOSHIYUKI - ele-king

 『CHASM』はグリッチを基調にしているが、本作のノイズはかならずしも制御不能なエラーを志向するのではなく、マッシヴなビートやアンビエントな電子音、サブリミナルな効果を生むヴォイス・サンプルといったいくつかのエレメントのなかにそれを配置し、多面的に構成(コンポーズ)することで、HIRAMATSU TOSHIYUKIは古典的なIDMの方法論(というより、IDMそのもの)のアップデイトをはかるかのようである。ビートの波間をノイズがただよう点描的な"Chasm"、グリッチ・アンビエントの"Old Soil"とそれを反転させたかのような不定形のビートと音響による"Mass"、つづく"N_V_H"のコラージュ感覚、さらにビートメイカーとしての非凡さをうかがわせる "Let's Dance"、そのベースにはヒップホップからなにから、同時代のエレクトロニック・ミュージックを血肉化した身体が見え隠れするので、私は次作はもっと長尺の作品にじっくり浸りたいと思った。

オブスキュアな音像、 卓越した展開力で聴かせる上質なエレクトロニカ。

HIRAMATSU TOSHIYUKIは滋賀出身、京都在住のアーティスト。関西を拠点としており、音響だけでなく、映像を含めたライブやVJも行う。また滋賀の山中や、琵琶湖に浮かぶ離島にて音楽イベントを共同開催するなど、地域に根差した活動も展開している。楽曲制作の軸にはMax/MSPによるプログラミングがあり、パッチ式のシンセNord Modularを外部音源で使用している。 本アルバムはCDフォーマットではキャリア初リリースとなる。光る霧に包まれる中ゆっくりと歩いていくような、淡い音像を持つタイトル曲"CHASM"、William Basinskiの『The Disintegration Loops』を思わせるシンセの不安定なループとグリッジ・ノイズの重なりが、オブスキュアな空間性を作り出す"Old soil"と、冒頭アンビエント・マナーの2曲が続く。
リズムとノイズの境界線を破壊するカオティックな"Mass"以降は、一転してダンスフロア仕様のエレクトロニカへシフト。デジタル・ノイズとアンビエントを基軸としながら、巧みに変転する展開力が素晴らしい。最後にテープ・コラージュ的なループ音とダビーなエフェクトが幻想的な"Walk"でアルバムが終わる余韻も心地良い。 アートワークは関西を中心に活躍するフォトグラファーの久田元太が手掛けた。
(中本真生/UNGLOBAL STUDIO KYOTO)

Hakobune - ele-king

 トーマス・ケナーを彷彿させるアンビエント・ドローンだが、作品には、ボーズ・オブ・カナダのような、温かい郷愁が広がっている。そして、クラウトロックが好きなリスナーにも聴かせたくなるような、電子音に対するある種のフェティッシュな感性もあるように感じる。最後の曲では、パルス音めいたビートが入っている。異次元から飛来したようなこのミニマルがまた良い。2007から膨大な作品を出し続けているTakahiro Yorifujiによるハコブネによる4作目。

澄み切った夜明けの空気を連想させる、ジオメトリックな持続音。
大らかに広がっていく美しいドローン。


Hakobuneは兵庫出身、東京在住のTakahiro Yorifujiによるソロ・プロジェクト(活動を始めた頃は京都を拠点としていた)。ラップトップやギターを用い、様々な手法でドローン作品を制作している。多作家であり、これまでに世界各国のレーベルから30タイトルを超える作品を発表している。またレーベルTobira Recordsを主宰し、京都を拠点とするドローン・アーティストNobuto Sudaの作品などをリリース。ライブ活動も積極的に行っており、2011年には北米ツアーを敢行した。 本作は2008年にTobira Recordsより少部数でリリースされた、同名カセットテープ作品(現在では廃盤)に、未発表音源2曲を加えたアルバム。未発表音源のうち1曲はキャリア初のミニマル・ビートを用いた楽曲となっている。 プロセッシングされたアタック音のないギターの持続音のみで全体を構成しており、ジオメトリックな持続音が広がっていくイメージは、澄み切った仄白い夜明けの空気を連想させる。2011年にhibernate recordingsからリリースされた『Away From The Lunar Waters』のような、ドローンにギターのフレーズを重ねた作品に比べ、より純粋なドローン作品に仕上がっている。
(中本真生/UNGLOBAL STUDIO KYOTO)

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