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RIP Holger Czukay - ele-king

野田努

 昨日ネットのニュースを散見したところ、どうやら9月5日、ホルガー・シューカイがケルンの自宅で死んでいるのをアパートの隣人によって発見されたそうだ。79歳だった。
 シューカイは、クラウトロックにおけるもっとも重要なバンドのひとつ、カンの主要メンバーであり、パンク以降のロック・ミュージックおよびエレクトロニック・ミュージックに多大な影響を与えた人物である。
 ぼくに限らず、カンをいまでも好きな人は世界中にいるし、サルバドール・ダリに似たホルガー・シューカイを心から尊敬している人もたくさんいる。彼は前衛であり、同時にポップだった。戦争を記憶している世代であり、それがゆえの国境の無さ/アイデンティティの刷新力が、非西欧音楽への好奇心にも繋がり、1960年代末の時点ですでに作品にも残している。できないこと(can't)をやってのけ(can)、実験的でありながら商業的にもヒットしたし、知的であり、ダリのようにユーモアも忘れなかった。

 1938年ポーランドのダンツィヒ生まれのシューカイは幼い頃からピアノを習っていた。ほどなくして第二次大戦の戦場となったその地から疎開し、西ドイツに移住しても、彼の音楽への好奇心と探求心は変わらず、それはラジオの受信機の修理にまで及んだという話は有名である。
 シューカイは、1963年からおよそ3年、カールハインツ・シュトックハウゼンのもとで学んでいる(カンの拠点となったケルンは、50年代に、それこそ“少年の歌”や“コンタクテ”が演奏されることになるケルン電子音楽スタジオが建てられている)。
 2005年の『remix』の取材において、彼はこう言っている。
 「私はいつもラジオでシュトックハウゼンを耳にしていたんだが、ある日ライヴを見に行った。そこで彼が聴衆に向かって自分の作曲した作品について説明していると、突然ひとりの客が立ち上がり、『シュトックハウゼンさん、あなたのやっていることはすべて衝撃的すぎます。あなたはこうやって人びとにショックを与えることで金儲けをしようとしているのではないのですか?』と言った。すると彼は『これだけははっきりと申し上げておきましょう。私がお金のために音楽をやることは絶対にありません。なぜなら、私には金持ちの妻がいるからです』と答えた。それを聞いて私は『素晴らしい! この人についていこう!』と心に決め、さらに金持ちの妻をさがすことにしたのだ」
 慣れ親しんだ音楽にばかり惑溺するリスナーを許さなかったアドルノとも似たシュトックハウゼンには堅苦しい印象を持っていたぼくは、シューカイのこうした余裕あるユーモラスな発言に笑った。だいたい同じことの繰り返しを否定したシュトックハウゼンに逆らうかのように、1968年に結成されたカンは、繰り返しを強調したのだった。

 バンドを組んだときのシューカイは、スイスのジュネーヴ周辺で音楽の教師をしていた。クラシック、現代音楽(そしてミュジーク・コンクレートや電子音楽)、あるいはいくらかジャズを知っていたシューカイだったが、ロックに関しては、もはや若者とは呼べない30を前にして初めて知った。イルミンはクラシックの指揮者で、ヤキはプロのジャズ・ドラマーだったわけだが、ビートルズよりも年上の良い大人たちが、いままで学んできたことをまっさらにしてロック・バンドをやる。ただし、音楽を作るのではなく、音楽の作り方から作ること──それがカンだった。
 また、こうも言えるだろう。クラフトワークがエレクトロやミニマルの原型を作ったと言えるなら、カンはジャングルの原型を作っている。

 シューカイはカンのメンバーのなかではもっとも精力的なソロ作品を発表している。数々のアルバムのなかで1枚選べと言われたら最初のソロ・アルバム『Movies』だろう。(『On The Way To The Peak Of Normal 』や『Rome Remains Rome』も捨てがたいが)『Movies』に収録された4曲は必聴である。

 さらにシューカイは、ジャー・ウォーブルやデイヴィッド・シルヴィアンとの共作、Phewの最初のアルバムへの参加でも知られている。2015年にはカンの『The Lost Tapes』とも似た、まったく聴き応えのある未発表音源集『Eleven Years Innerspace』も発表している。

 ふたたび2005年の『remix』からの引用になるが、シュトックハウゼンは生前こんなことを発言したという。「私の教え子は誰も成功しなかったが、ひとりだけ例外がいた。ホルガー・シューカイだ。彼だけが私の真似をしなかった」
 シューカイは、自分の音楽のなかにいろいろなものを取り込んだ。それこそ68年のパリの暴動から短波放送から流れるベトナムの民謡、旧ソ連の音楽……、あるいは、ラジオ、カセットテープ、電話までもが彼の楽器だった。彼は自らを「ミューシャンではない」と言い切った。そうではなく、「ユニザーサルなディレッタントなのだ」と。ぼくもこういうことが言えるようになりたいものだ。
 TVのCMで使われたことで日本でもヒットした“ペルシアン・ラヴ”を聴いていると、いったいこれはどこの国のいったいなんという音楽だろうかと思った。そしてなんて美しいのだろうと思う。昨晩はこの曲を聴いた人が多かったことだろう。ぼくも家に帰って、ビール500mlを空けて、まっさきにこれを聴いた。

 「私たちが音楽を演奏させたのではない。音楽が私たちを演奏させたのだ」──ホルガー・シューカイ

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松村正人

 90年代はじめ、当時住んでいた仙台の夏のあまりの夏らしくなさ――私は夏はアスファルトに陽炎がたつくらいじゃないと夏じゃないと思っている、島の人間なので――にいてもたってもおられず、メールスのジャズ祭に行ったきり向こうに住みついてしまった叔母をたよって渡独したのは二十歳になったばかりのころ。ドイツといってもチューリッヒ近郊の叔母の家にいつまでも厄介になっているわけにもいかず、ドイツの東のほうから東欧に向かい、西におりかえし英国に向かう途中ケルンにたちよったのはここがホルガー・シューカイの町だからである。ところが駅前で数名にシューカイの自宅の場所をたずねたがラチがあかない。だれだそれ、というのがたいがいで、ひとのよさそうなオバさんはもうしわけなさそうにしているし、私よりすこし年嵩の青年はドイツならおまえ、スコーピオンズだろと「ロック・ライク・ハリケーン」を眼前で歌われる始末。スコーピオンズはファーストはコニー・プランクのプロデュースだから嫌いじゃないですが、そのコニー・プランクの仲間のカンというバンドのひとなのです、といっても伝わらない。当時の私はダモさんくらい髪が長かったのであるいは向こうが気づいてくれるかとも思ったが甘かった。宿なしらしき老婆には、どこから来たと問われ、ヤーパンだと答えたら、日本のせいで戦争に敗けたと狂ったようになじられ、駅から離れた人気のない路地の坊主頭の若者の集団にも訪ねてみたが要領をえない。いま考えるとあいつらネオナチだったろうね。

 私は大聖堂もみずに失意のうちにケルンを去り、四半世紀(!)前のこととて記憶は遠いが、たしかベルギーのどっかから黒人の乗船率が異様に高いフェリーで、野田さんがほめていたマッシヴ・アタックの町ブリストルに渡ったはずだが、ことほどさようにカンは当時の私にとってなにがしかのものだったのである。
 それはいまでも変わっていない。おそらく死ぬまで変わらないどころか、前々々世や来々々世とかいう戯言を私は信じないが、そのようなものがあったとしてもそうだろう。

 カンのなかの音楽の鮮度は保たれている。流動的だが凝結し個人のものであれ歴史に属するものであれ、あらゆる時間を横切り大気をくぐりぬけ耳朶を打つ。ときにプログレッシヴ・ロックやサイケデリック・ロック、のちにユーロ・ロック、いまはクラウト・ロックにひとは彼らを分類するが、ポピュラー・ミュージックと民族(民俗)音楽と即興音楽と電子音楽をカットアップしモンタージュするカンはつまるところカンなのだ。その先頭に立っていたのはホルガー・シューカイそのひとにほかならない。たわわな口髭といくらか生え際が後退したホルガー・シューカイのイメージは近影でこそ痩せ細っていたものの、68年の結成時からほとんど変わらない。シュトックハウゼンの元に学んだこの男はデビュー当時すでに三十路だった。分別のある大人だったが音楽は野蛮だった。同門のイルミン・シュミット(Key)とドラムのヤキ・リーベツァイトはシューカイと同年配でギターのミヒャエル・カローリは10歳下、そこにヴォーカルとして黒人のマルコム・ムーニーが加わり、だれもが知る最初のカンができあがる。69年のファースト『モンスター・ムーヴィー』の白眉は「Yoo Doo Right」だが、空間に燎火のように延焼するカンのスタイルはすでに完成している。ヤキの非西欧的な律動とミヒャエルの音色とフレージング、イルミンのサウンドは波のようである、おのおのが特異なパーツをシューカイの反復するベースが粘っこく接着する。このトラックはセッションの抜粋を編集したもので、ホルガー・シューカイといったとき、世評ではのちにヤキやミヒャエルなどに較べ、ソロ作につながる編集(プロデューサー)的観点を功績として強調するきらいがあるが、演奏家としての比類なさにも目を向けなければならない。八分音符を弾きつづける、オクターブをくりかえす――ただそれだけのフレーズがサイケデリックな空間をつくりディスコの暗喩となり、ループするフレーズの一部を欠落させダブ化させる、単純な法則だがきわめて呪術的でありそれがなければ、『タゴマゴ』や『フューチャー・デイズ』といった傑作もなりたたなかっただろう。私はくりかえすが、カンとはつまるところその総体である磁場の謂いなのだ。ダモ鈴木在籍時(私は『タゴマゴ』が初カンだが、いまでも「Oh Yeah」が日本語歌詞なるパートを聴くと、そのヴィジョンが幻出する)はむろん、後期のジャンル音楽の擬態と変調はそれまでの求心力が希薄なぶん異質さが浮遊している。その後のシューカイのソロはバンドの集団性を離れ、いかに方法をポップに純化するかを試みた階梯であり、ワールド・ミュージックとクラブ・ミュージックの折衷があたりまえな現在の若い耳により親しみやすいだろう。

 カンに失敗は存在しない。以前取材したさいイルミン・シュミットはそのようなことをいっていたが(『アウト・オブ・リーチ』はどうなんだという意見もあるでしょうが)、カンがカンであるかぎりそれは真実であり、おそらくそのような姿勢だけが都市のなかに未開の地を拓く。
 幾多の作品をのこしホルガー・シューカイは世を去った。ヤキ・リーベツァイトを喪った年にシューカイも逝った。享年79歳。地元紙によれば、ケルン近郊のヴァイラースヴィストにある以前は映画館だったカンのオリジナルのスタジオで亡くなっているところを発見されたという。25年前、私がたどりつけなかった場所だった。(了)

Com Truise - ele-king

 これは2017年なりの機械/反復の美学であり、記憶のむこうにあるユートピアを希求する音楽でもある。ユートピアとは「80年代」のことだ。今や「80年代」は現実でも近過去でもない。過去という虚構である。マシニックでロボティック。クラフトワークでエレクトロ。80年代中期の細野晴臣。90年代的ではなく80年代のマシン・ファンクなビート。強く優雅なシーケンス・フレーズ。甘く切ないフュージョンなメロディ。ボトムを強烈に刺激するシンセ・ベース。
 つまりエレクトロニカというよりテクノポップ。いやテクノポップというよりミッド・エイティーズ的なエレクトロか。それともエレクトロというよりチップチューンか。いずれにせよ80年代的中期的な音像とムードを10年代的なメリハリ感のあるサウンドで再現し、見事に同時代の音楽として組み上げているわけである。そう、「ブレードランナー」的な都市のネオンサインを、インターネット以降のデジタリズムで再現したとでもいうべきか。これぞシーケンスとシンセ・ベースとドラムマシンによる2017年型のマシン・ミュージックだ。

 コム・トゥルーズは、NY出身・LAを活動拠点とするセス・ヘイリーによるレトロ/フューチャーなシンセティック・ミュージック・プロジェクトである。この『イテレーション』は、2011年にリリースしたファースト・アルバム『Galactic Melt』以来、実に6年ぶりのセカンド・アルバムだ(2012年の『イン・ディケイ』は未発表曲集なのでオリジナル・アルバムにはカウントされていない)。リリースはデビュー以来のお馴染みの〈ゴーストリー・インターナショナル〉から。
 過去にはダフト・パンクにリミックスを提供しており、2017年は、あのクラークとツアーを回っていた(ふたりのスプリット・シングルもリリースしている)。そのうえコム・トゥルーズ=セス・ヘイリーはグラフィック・デザイナーでもあり、アルバムのアートワークも自身で手掛けているほどの才人である(それにしても最近の〈ゴーストリー・インターナショナル〉のリリース作品は、音楽性とアートワークの両方から2010年代後半的な電子音楽のポップ・アートを見事に実現しているように思う)。作風は、先にも書いたように80年代的なレトロ/フューチャーなトラックで、あのティコ以降の〈ゴーストリー・インターナショナル〉を代表するアーティストといえる。
 じじつ本作『イテレーション』は、ポップで聴きやすい音楽性で、80年代のゲーム・ミュージックや70年代後半のTVのCM、80年代の企業広報BGM的な電子音楽を思わせる。つまりは良い意味で「B級」的なポップ感がある。このアップデートされた77年代~80年代中期風の電子音楽をずっと聴いていると、80年代という過去に対する諦念とも憧れとも違う何か、いわばユートピア的な夢想を感じてしまう。これは今の30代以下の世代に共通する全世界的な傾向かもしれない。1970年の「大阪万博」というより、1985年の「つくば科学万博」だ。
 今、70年代後半から80年代のポップ音楽を掘ることが世界的に30代以降の若い世代のなかで浸透している。諸外国では日本のポップ・ミュージックやアンビエントが良く掘られてもいる。少し前に紹介したヴィジブル・クロークスも80年代の日本の音楽を掘っていたし、吉村弘の1982 年発表のアンビエント作品『Music For Nine Post Cards』が再発される時代でもあるのだ(最近、話題になった某TV番組で、大貫妙子の『サンシャワー』を探し求めてLAから日本にやってきた彼もまた同じだろう。ちなみに彼=スティーヴン・デルガド(Steven Delgado)はアーティストでもあり、Chubs The Magnanimous名義でブレイクビーツを巧みに用いた素敵なアルバムをデータでリリースしていた。『宇宙刑事シャイダー』を用いたアートワークの80年代特撮感覚と、80年代的音楽性へのサンプリング/ブレイクビーツ的センスの融合でなかなか良い。それにしても彼はもうすぐ日本でリイシューされる細野晴臣がスーパーバイザーを務めた元祖テクノポップ・アイドル(?)真鍋ちえみ『不思議・少女』(1982)を知っているのだろうか。いや、多分、知っているだろう)、そのような感覚を共有しているのではないだろうか。
 諦念とも憧れとも違うミッド80年代への夢想、もしくはユートピア的願望。過去が理想郷として表れてくること。本アルバムが意味する「イテレーション=反復」も音楽それ自体の反復という意味だけではないだろう。いわば亡霊のように再帰する80年代音楽全般への反復=希求という感覚とでもいうべきではないか。
 アルバム冒頭を飾る“…オブ・ユア・フェイク・ディメンション”のシーケンスが80年代的な夢想へとわれわれを誘う。硬い音色のジャストなビートとベースとの絡みが強い中毒性を生んでもいる。また、2曲め“エフェメロン”の終わり近くで古いテープのように音がどんどん歪んでいくサウンドもミッド80年代という過去を表現しているといえる。そして不安な記憶をえぐるような焦燥と緊張感に満ちた5曲め“メモリー”、その不安からの解消のごときメロディック・ファンクな6曲め“プロパゲーション”、ミディアム・テンポのなか電子音とスライスされた声が重なる7曲め“ヴァキューム”、テクノ化したテリー・ライリーか80年代の久石譲を思わせるシンセ・リフとファットなビートの8曲め“ターナリー”、夢の中を浮遊するようムードの10曲め“Syrthio”など、アルバムは「今は1985年か?」と思ってしまうようなシンセティック・サウンドを存分に展開するのだが、私には、それらが単なるノスタルジアにはどうしても思えない。そもそも1986年生まれのセス・ヘイリーにとって、ミッド80年代はもの心つく前の時代のはずで、記憶の中にうっすらと残っている程度の「過去」のはず。

 幼少期のおぼろげな記憶ゆえに、過去(80年代)をユートピア(既知と未知の弁証法的理想郷?)とする感覚が、本作には確かにある。だからこそアルバム・ラスト曲の“イテレーション”が、やや1990年代初頭の質感を僅かに感じさせるのではないか。「80年代の終わり」からの反復? 「反復」という名の曲で、『反復』というアルバムを終わらせる意味は、それなりに意味深である。
 80年代の終わり/現実の始まり。それはつまり幼少期の終わり。このポップなサウンドの裏側には、どこか現代社会への不安と希望が混じり合った感覚があるように思えてならない。

Broken Social Scene - ele-king

 今年の5月にアリアナ・グランデのコンサート会場で起きた痛ましい爆発事件の翌日、同じ市内のマンチェスターでライブを行ったブロークン・ソーシャル・シーンは、ゲストにマンチェスターのレジェンドことジョニー・マーを迎えて代表曲“Anthems for a Seventeen Year Old Girl”を一緒に演奏した。その日のステージでバンドの中心人物のケヴィン・ドリューは客席に向かってこう話した。
 「もっとも大事なことは、僕らがこうしてみなで一緒にいるってことなんだ」

 トータスのジョン・マッケンタイアをプロデューサーに迎えて制作した2010年の『Forgiveness Rock Record』を最後に活動を休止していたカナダ出身のブロークン・ソーシャル・シーンが再び集まったのは2015年。その年の11月にパリのコンサート会場などで起きた銃乱射事件がきっかけだったという。そこで仲間たちは再び集まる。別々の活動に散らばっていたメンバーはみな、空白の時間と同じ数だけ歳をとっているし、各々がソロとしても活動できる経験と才能を持ち合わせている。いまや誰もがひとりで音楽を作って簡単に発信できるような世のなかで、同じパートを担当する人間が何人もいるスーパーバンドなどは、もはや時代錯誤かもしれない。それでも彼らは集まった。かつてのように、一緒に音楽を奏でるために。

 ストロークスの『Angles』を手掛けたジョー・チッカレリをプロデューサーに起用した7年ぶりのアルバム『Hug of Thunder』。雷にハグされたような衝撃の後に生まれた作品。そのつど人数が変わるバンドは、今回18人のメンバーがクレジットに名を連ねている。先に公開されていた曲の素晴らしさにまず歓喜し、これはブロークン・ソーシャル・シーンの過去の名盤に並ぶクオリティになるだろうと確信を持っていた。今作から新たに参加したアリエル・エングルが3曲でリード・ヴォーカルを担っているのだが、同メンバーのファイストにも似たハスキー且つ儚さがプラスされたような歌声が、バンドの名だたる女性ヴォーカリストたちに引けを取らないような魅力を醸し出し、楽曲に淡い色彩を美しく落とす。もちろんケヴィンやブレンダン・カニング、ファイストやエミリー・ヘインズやリサ・ロブシンガーなどお馴染みのメンバーも曲ごとに代わる代わる歌っているし、歌詞カードを覗くと“Skyline"のところに元ジェリー・フィッシュの名前も見つかったり(まあヴォコーダーで参加なのでよくわからないけれど)、相変わらずドラマチックなホーンの音色といい、大所帯バンドの醍醐味を改めて確認できる。ファイストが歌うタイトル曲は、同時期に出したソロ・アルバムの尖ったギター・ロックとはまた違う浮遊感のあるサウンドで印象的。出はじめの頃はポスト・ロックなどとも括られ、じょじょにエクスペリメンタル・ミュージックの要素を深めてきた音楽は、ときにたくさんの輝きがぶつかり合って得体のしれないパワーを発揮していたこともあったけれど、今作は少しシンプルでより誠実なサウンドに変化を遂げている。バラバラの個性はそのまま残しながら、内側に暖かく強いエネルギーを放つ。何かを隠して白く塗り潰された壁の前で共に並んで自由に絵を描くみたいに。

 ブロークン・ソーシャル・シーンの音楽を聴いていると、自分がそのクリエイティヴなものに混じって一緒に何かを作り上げているような気分にすらなる。そして“Halfway Home”で、演奏する男性たちの真んなかで女性たちが向かい合いながら

 And yon'll forget
 Call out for a change
 But not believe in anything!
 (そして君は忘れるだろう
  変化を求めて叫べ
  だけどなにも信じるな)

 と何度も何度も繰り返し腕を掲げて歌う凛々しい姿を見ると、たまらず胸が熱くなる。何だってできるような気がする。


Mumdance - ele-king

 インスト・グライムの奇才、マムダンス――彼は本当にこの国で過小評価されている。2015年に〈Tectonic〉から放たれたロゴスとの共作『Proto』、その衝撃はどれくらい多くの人びとに伝わっているだろうか。ほかにも〈Tectonic〉や自身のレーベル〈Different Circles〉からコンスタントにEPを発表し続け、来る9月8日にはピンチとの共作EP 「Control / Strobe Light」のリリースも控えているマムダンスが、ついに単独での来日を果たす。9月17日(日)、会場はCONTACT。当日は2時間のロング・セットとなる模様。この日はとにかくCONTACTまで足を運んで、UKベース・ミュージックの尖鋭に触れておこう。

ハードコア・スピリッツを根底に置く才人の登場

これまでにコラボレーションしたアーティストを数えれば切りがないといえるほど、多種多様なアーティストと共同作業をこなしてきたMumdanceがContact初登壇。その記念すべき夜には、ドメスティックな出演者たちからジャンル特定不能といえようアーティストも集結し、バラエティ豊かなビート、空間に広がるアンビエンスと様々な音が散りばめられた空間を演出してくれるだろう。
デビュー当初Mumdanceがセルフリリースしていた『DIFFERENT CIRCLES THE MIXTAPE』を聴いたときのような斬新さ、特異さを十二分に感じられる夜となるはずだ。

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9/17(日・祝前)
Mumdance
Open 10PM
Before 11PM ¥1000, Under 23 ¥2000,
GH S members ¥2500, w/f ¥3000, Door ¥3500
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Studio:
Mumdance (Different Circles | Tectonic | XL Recordings | Rinse FM | UK)
DJ Fulltono
100mado (Back To Chill | Lo Dubs | Murder Channel)
Albino Sound -Live
DAIGO (D.A.N.)

VJ: SO IN THE HOUSE

Contact:
asyl cahier (LSI Dream)
Prettybwoy (POLAAR | SVBKVLT)
Nao (rural | addictedloop)
Sunda
Romy Mats (解体新書 | procope)
K_yam (Remedy)


■Mumdance
ブライトン出身のMumdanceはハードコア、ジャングルの影響下、15才頃から〈S.O.U.R〉レーベルが運営するレコード店で働き始め、2階のスタジオでプロダクションの知識を得る。やがてD&Bのパーティ運営、『Vice』誌のイベント担当を経てグライムMCのJammerと知り合い、制作を開始。ブートレグがDiploの耳に止まり、彼のレーベル、〈Mad Decent〉と契約、数曲のリミックスを手掛け、10年に「The Mum Decent EP」を発表。また実質的1stアルバムとなる『DIFFERENT CIRCLES THE MIXTAPE』で《Kerplunk! 》と称される特異な音楽性を明示する。その後Rinse FMで聴いたトラックを契機にLogosと知り合い、コラボレーションを始め、13年に〈Keysound〉から「Genesis EP」、〈Tectonic〉から「Legion / Proto」をリリース、そして2ndアルバム『TWISTS & TURNS』を自主発表、新機軸を打ち出す。14年には〈Tectonic〉からPinchとの共作「Turbo Mitzi / Whiplash」、ミックスCD『PINCH B2B MUMDANCE』、グライムMC、Novelistをフィーチャーした「Take Time」〈Rinse〉でダブステップ/グライム~ベース・シーンに台頭、またRBMAに選出され、同年東京でのアカデミーに参加したほか、Logosとのレーベル、〈Different Circles〉を立ち上げ、ミュジーク・コンクレート、ニューエイジなどの影響を反映した「ウェイトレス」と自称する無重力感覚のサウンドを創造する。15年には名門〈XL〉からNovelistとの共作「1 Sec EP」、自身の3rdアルバムとなるMumdance & Logos名義の『PROTO』、Pinchとの共作「Big Slug / Lucid Dreaming」のリリースを始め、ミックスCD『FABRICLIVE 80』を手掛け、Rinse FMのレギュラーを務める。その後もLogosと精力的な活動を続け、17年に入り『WEIGHTLESS VOL,2』、「Perc & Truss Remixes」、「FFS / BMT」といった注目作を連発している。90’sハードコア・スピリッツを根底にグライム、ドローン、エクスペリメンタル等を自在に遊泳するMumdanceは現在最も注目すべきアーティストのひとりである。

《Mumdance レギュラーラジオ最新アーカイヴ》
https://soundcloud.com/rinsefm/mumdance290817

Throbbing Gristle - ele-king

 問答無用のインダストリアル帝王、コンセプチュアルなエクスペリメンタル集団……そうか、もうそんなに経つんですね。スロッビング・グリッスルがファースト・アルバム『The Second Annual Report』をリリースしてから40年。それを記念し、〈Mute〉からかれらの全カタログがリイシューされることが発表されました。まずは11月3日にそのファースト・アルバムと、かれらの代表作である『20 Jazz Funk Greats』(“Hot on the Heels of Love”は必聴です)、そしてベスト盤の『The Taste of TG』の3タイトルが発売されます。ボーナス・ディスクには当時の貴重なライヴ音源が付属、さらに日本盤はHQCD仕様となっております。これを機にスロッビング・グリッスルの偉大なる遺産に触れておきましょう。


スロッビング・グリッスル、デビュー作発売40周年を記念し全カタログをリリース!
リイシュー・シリーズ第1弾として、デビュー作と、歴史に燦然と輝く金字塔
『20 ジャズ・ファンク・グレーツ』、そしてベスト盤の計3作を11/3にリリース!
日本盤はHQCD(高音質CD)仕様。収録曲音源公開。

インダストリアル・ミュージックのオリジネーターであり、今なお現在の音楽シーンのみならず、カルチャー /アート・シーンにまで絶大な影響を与え続けているスロッビング・グリッスル。彼らのデビュー・アルバム『ザ・セカンド・アニュアル・レポート』の発売40周年を記念して、〈MUTE〉より全カタログがリリースされることとなった。

そのリイシュー・シリーズ第1弾として、新たなる音楽の可能性を切り開いた衝撃のデビュー・アルバム『ザ・セカンド・アニュアル・レポート』、彼らの代表作としてだけでなく『ピッチフォーク』で10点満点を獲得するなど歴史的名盤『20 ジャズ・ファンク・グレーツ』、そしてベスト盤『ザ・テイスト・オヴ・TG』の計3タイトルが11月3日(金)にリリースされる。なお日本盤のみHQCD(高音質CD)仕様でのリリースとなる。また、彼らの代表曲“United”が公開された。この曲は1978年に7インチ・シングルとしてリリースされ、今回リイシューされる『20 ジャズ・ファンク・グレーツ』と『ザ・テイスト・オヴ・TG』に収録される。


■“United”試聴リンク
https://youtu.be/5XpqCxJZdGs

全カタログは以下のスケジュールでリリースされ、また未発表曲などが収録されるボックス・セットも来年中にはリリースの予定となっている。

[2018年1月26日]
『D.o.A. The Third And Final Report』
『Heathen Earth』
『Part Two: Endless Not』

[2018年4月27日]
『Mission Of Dead Souls』
『Greatest Hits』
『Journey Through A Body』
『In The Shadow Of The Sun』


■商品概要(11月3日発売/3タイトル)

『ザ・セカンド・アニュアル・レポート』(2CD)

「産業社会に生きる人々の為の産業音楽」という風刺を効かせたキャッチコピーと共に、インダストリアル・ミュージックというジャンルを作り出し、新たなる音楽の可能性を切り開いた衝撃のデビュー・アルバム。1977年11月発売。アルバム発売40周年。
CD-1は、スタジオ&ライヴ音源、そして前身のパフォーマンス・アート集団クーム・トランスミッション時代の映像作品のサウンドトラックの全9曲を収録。
CD-2は、当時のライヴ音源6曲、シングル「United」とそのカップリング曲の全8曲を収録。

・アーティスト:スロッビング・グリッスル / Throbbing Gristle
・タイトル: ザ・セカンド・アニュアル・レポート / The Second Annual Report (2CD)
・発売日:2017年11月3日(金) *オリジナル発売:1977年
・価格:2,650円(税抜)
・品番:TRCP-218~219
・JAN:4571260587199
・紙ジャケット仕様
・HQCD(高音質CD)仕様(日本盤のみ)
・解説付
・Tracklist:https://bit.ly/2wJhDfO
[amazon] https://amzn.asia/1jXuNhD
[Spotify] https://spoti.fi/2vnmZZH


『20 ジャズ・ファンク・グレーツ』(2CD)

1979年発売の3rdアルバム。燦然と輝く歴史的名盤。
インダストリアルの代表作としてのみならず、その後のエレクトロニック・ミュージックへ与えた影響は計り知れない。ジャケット写真の撮影場所は、自殺名所で有名なイギリスのビーチー・ヘッド。
CD-1は全曲スタジオ録音。CD-2は当時の貴重なライヴ音源9曲を収録。

・アーティスト:スロッビング・グリッスル / Throbbing Gristle
・タイトル: 20 ジャズ・ファンク・グレーツ / 20 Jazz Funk Greats (2CD)
・発売日:2017年11月3日(金) *オリジナル発売:1979年
・価格: 2,650円(税抜)
・品番:TRCP-220~221
・JAN:4571260587205
・紙ジャケット仕様
・HQCD(高音質CD)仕様(日本盤のみ)
・解説付
・Tracklist:https://bit.ly/2x5qw38
[amazon] https://amzn.asia/1A1zYlw
[Spotify] https://spoti.fi/2vnmZZH


『ザ・テイスト・オヴ・TG』(1CD)

ビギナーからマニアまで納得のベスト盤。全15曲収録。2004年作品。
リイシューにあたり、“Almost Kiss”(アルバム『Part Two: Endless Not』収録曲/2007年)を追加収録。

・アーティスト:スロッビング・グリッスル / Throbbing Gristle
・タイトル:ザ・テイスト・オヴ・TG / The Taste of TG: A Beginner's Guide To The Music Of Throbbing Gristle (1CD)
・発売日:2017年11月3日(金) *オリジナル発売:2004年
・価格:2,300円(税抜)
・品番:TRCP-222
・JAN:4571260587212
・紙ジャケット仕様
・HQCD(高音質CD)仕様(日本盤のみ)
・解説付
・Tracklist:https://bit.ly/2vrXQSd
[amazon] https://amzn.asia/2uwdQZH
[Apple Music / iTunes] https://apple.co/2g3paPU
[Spotify] https://spoti.fi/2vnmZZH


■スロッビング・グリッスル(Throbbing Gristle)

クリス・カーター(Chris Carter)
ピーター・クリストファーソン(Peter 'Sleazy' Christopherson / 2010年11月逝去)
コージー・ファニ・トゥッティ(Cosey Fanni Tutti)
ジェネシス・P・オリッジ(Genesis Breyer P-Orridge)

インダストリアル・ミュージックのオリジネーターであり、今なお現在の音楽シーンに絶大な影響を与え続けている伝説のバンド。バンド名は直訳すると「脈打つ軟骨」、男性器の隠語。1969年から1970年代のロンドンのアンダーグラウンドにおいて伝説となったパフォーミング・アート集団、クーム・トランスミッション(Coum Transmission)を母体とし、1975年にバンドを結成。彼らのライヴは、クーム・トランスミッションから発展したパフォーミング・アートが特徴で、イギリスのタブロイド紙でも取り上げられるほど過激なパフォーマンスを繰り広げた。1977年、衝撃のデビュー作『ザ・セカンド・アニュアル・レポート』を発売。その後彼らの代表作『20 ジャズ・ファンク・グレーツ』(3rdアルバム/1979年)を発売するなど精力的に活動をしていたが1981年に一度解散。その後、各メンバーはサイキックTVやクリス&コージーとして活動するも、2004年に再結成し2010年10月まで活動を続けた。同年11月、ピーター・クリストファーソン逝去。彼はアート集団ヒプノシスのデザイナーとしても活動し、ピンク・フロイド『炎~あなたがここにいてほしい』、ピーター・ガブリエルの初期3作など歴史に残る作品を手がけた。またセックス・ピストルズ初の宣伝用アーティスト写真の撮影、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンなど数多くのプロモーション・ビデオを制作し、自身の音楽制作のみならず革新的な作品を数多く生み出した。

www.throbbing-gristle.com
www.mute.com

Xth Réflexion - ele-king

 本作はシカゴを拠点とするレーベル〈chained library〉からリリースされたXth Réflexionのファースト・アルバムである。〈chained library〉は、カセット・レーベル〈Aught〉のヴァイナル専門のサブ・レーベルで、このアルバムは〈Aught〉から2015年に発表されたXth Réflexionの「/\\05」と「/\\06」をコンパイルしたものだ。

 〈Aught〉は2014年あたりから作品のリリース/発表を始めた超少部数プレスのマニアックなカセット・レーベルであり、Xth Réflexionに加えて、Elizabethan Collar、Topdown Dialectic、De Leon、ACI_EDITSなど謎度の高いウルトラ・マニアックなアーティストたちのスーパー・ミニマルなカセット/音源を送り出してきた。その成果を受けて〈chained library〉は2017年初頭から運営を開始し、Agnes『012016002001』とXth Réflexion 『/\\05-06』の2作をリリースする。両レーベルともにサウンド、アートワークなどが徹底的にミニマルな美意識で統一されており、00年代的な電子音響以降の新ミニマリズムを追及しようとする意志を感じる(アナログ盤はクリア・ヴァイナル仕様)。

 じじつ、彼らは完全に匿名のプロジェクトなのである。情報による先入観を可能な限りなくすことで、完全なミニマリズムの実現を遂行しているかのようだ。それは彼らの上の世代、つまり〈raster-noton〉や〈Editions Mego〉などの電子音響/グリッチ・レーベルが既に失ってしまった要素ともいえよう(むろん仕方がないわけだが)。つまり〈Aught〉/〈chained library〉は、意図的に、歴史も相互影響も情報によって作用しない環境・空間・状況を生みだそうとしているわけだ。リリースにあたっての情報がほとんどない点などからもそれは分かってくる。いわばレーベルの活動・運営自体が一種のアノニマス的なメディア論思想に貫かれているのだろうか。じっさい〈Aught〉はアルバム名がすべてナンバーで統一されていたし、〈chained library〉のアルバム名が数字であることからも、記号性/匿名性へのこだわりが理解できる。

 さて、Xth Réflexion『/\\05-06』は、1トラックめから4とラックめまでが「/\\05」(レコードだとA面・B面)、6トラックめから10トラックめ「/\\06」(レコードだとC面・D面)という構成となっている。ミニマル・マシン・アンビエント的な「/\\05」と、よりリズミックな要素が全面化している「/\\06」という流れになっており、対比的な構成ともいえる。さらに深いダブのかかったミニマリズムはどこか蒸気機関車の音のようでもあり、21世紀以降のポスト・ヒューマン的な響きのようである。つまり、このユニットのトラックは聴き飽きたグリッチでもなく、ありきたりなミニマル・テクノでもない。このダブとミニマリズムの交錯は20世紀と21世紀の歴史性を消失させてしまうだろう。この歴史の「消失」感覚にこそ、2017年以降の「新しいミニマリズム」を感じる。レーベル特有の匿名性や記号性を抜きにすれば、同時代的なサウンドとして、N1L、ZULI、DJ Sinclair、Assel、Dale Cornish、Mumdance & Logos、Machine Woman、Yann Leguayなどの分断的エクスペリメンタル・ミニマル・テクノ・トラックへと繋げてみることも可能である。つまり2017年以降の先端的な「新しさ」の系譜だ。これらのアーティストのトラックを聴くと、今という時代のサウンドには、どこか「壊れたミニマリズム」が炸裂しているように思えてならない。ポスト・ミニマルでもアフター・ミニマルでもない。いわばブロークン・ミニマルの時代を感じてしまう。破壊されたミニマリズムの破片が高密度かつ高速に再生/生成している。新しい音の快楽原則が生まれているように思えてならない。

 本作は、リマスタリングをベルリンのRashad Becker(Dubplates & Mastering)が行っており、サウンドの質感・クオリティが一段と向上している点にも注目したい。

[編集部註:タイトルおよび文中に登場する「​\​」は、正しくは反対向きのスラッシュ(「\」の半角)です]

Iglooghost - ele-king

 まだ20歳だという気鋭のプロデューサー、イグルーゴースト。すでに〈Brainfeeder〉から「Chinese Nu Yr」(2015年)と「Little Grids」(2016年)の2枚のEPをリリースしている彼が、9月29日に待望のデビュー・アルバムを発売する。先行公開されたシングル曲“Bug Theif”の雑食性はさすが〈Brainfeeder〉と言うべきか、次々といろんな要素がぶち込まれていく展開は飽きがこない。これはジェイムスズーに続く期待の星である。要チェック。


IGLOOGHOST

フライング・ロータス主宰〈Brainfeeder〉から
待望のデビュー・アルバム『Neō Wax Bloom』を9月29日にリリースする
弱冠20歳のUK発気鋭プロデューサーのイグルーゴーストが
先行シングル「Bug Theif」を公開!


弱冠20歳のUK発気鋭プロデューサーのイグルーゴーストが、フライング・ロータス主宰〈Brainfeeder〉から待望のデビュー・アルバム『Neō Wax Bloom』を、9月29日にリリースする。2015年の4曲収録デビューEP「Chinese Nü Year」の続編とも言える本作は、ミステリアスなマムーの世界に遭遇した巨大なふたつの目玉にまつわる話をもとにしており、強烈で狂った世界観を演出している。また京都を拠点に活動するドリーム・ポップ・プロデューサーCuusheやMr. Yoteらが参加している。LPには12ページのリソプリント・ブックレットと『Neō Wax Bloom』のキャラクター・ステッカー・シートが封入される。
アルバム・アナウンスに併せて先行シングル「Bug Thief」が公開された。

Iglooghost - Bug Thief
https://youtu.be/2Y1rWasqPMA

『Neō Wax Bloom』アルバム・プリオーダー (iTunes)
https://apple.co/2wlpUGj

Label: Brainfeeder
Artist: Iglooghost
Title: Neō Wax Bloom

Release Date: Sep.29th, 2017

Format: CD/2LP/Digital

Bicep - ele-king

 アンドリュー・ファーガソンとマシュー・マクブライアからなるハウス・デュオ、バイセップ。すでに多くの12インチを発表しており、“You”(2012年)や“Just”(2015年)などで高い評価を得ている彼らだが、遂にそのデビュー・アルバムが9月1日に〈Ninja Tune〉からリリースされる。これは注目。


Bicep待望のデビュー・アルバム『Bicep』が
〈Ninja Tune〉より9月1日に遂にリリース!
そして先行シングル 「Aura」が公開!
また10月7日にContact Tokyoにて来日公演が決定!

先行シングル:Bicep - Aura [Official Audio]
https://youtu.be/Xvlym4g9SQQ

Coachella、Glastonbury、Primavera、Melt、Dekmantel、 Lovebox、Parklifeへの出演、また2016年『Resident Advisor』年間DJランキングにて第8位に選出され、現行エレクトロニック・ミュージック・シーンにおいて最も信頼のおけるキュレーターして知られるロンドンを拠点に活動するマット・マクブライアーとアンディ・ファーガソンのデュオ、バイセップが、セルフ・タイトルのデビュー・アルバムを〈Ninja Tune〉より2017年9月1日に発売する。
この10年、ふたりはFeelmybicepというブログを通じて、インスパイアの源となる音楽を紹介してきた。最初はレコード収集の趣味を披露する場として始めたが、結果的にはさまざまな活動のきっかけへとなっていった。2008年に開設したこのブログには月に10万人が訪れるようになり、ここから同じ名前のレコード・レーベルやクラブ・イベントが誕生することになる。そしてふたりはUKのみならず、ディープダグ・ハウスとディスコ(再発見され、再び機会を与えられた)をミックスしたエディットとアップフロント・トラックのブレンドなど、ブログで人気のDJセットを携えて、国際的なステージに立つようになった。その結果、今日のエレクトロニック・ミュージック界で、大きな信頼と高い評価を得るキュレーターとして尊敬を集めるようになった。バイセップは、〈Throne Of Blood〉〈Traveller Records〉〈Mystery Meat〉〈Love Fever〉といったレーベルと手を組んだ後、ウィル・ソウルの勧めで彼の〈Aus Music〉から作品をリリースしたが、その中にはすでにクラシックと化した「Just EP」も含まれている。あちこちで耳にするタイトル・トラックは、誰もが認める2015年のクラブ・トラックで、『Mixmag』と『DJ Mag』双方の「Track of the Year」を獲得した。また、もうひとつの先駆的なUKデュオ、シミアン・モバイル・ディスコとコラボし、ディスクロージャーやブラッド・オレンジ、808ステイトのリミックスもおこなっている。

「ぼくらにとって大切なのは、大きな眼で音楽を見つめているレーベルの一員になることだ」
「〈Ninja Tune〉には固定概念を持たれるような制限を感じなかった」

またアルバム・リリース・ツアーの一環として、Contact(東京)にて10月7日に来日公演が決定している。

[来日公演]
10月7日@Contact Tokyo
https://www.contacttokyo.com/

label: Beat Records / Ninja Tune
artist: BICEP
title: Bicep

release date: 2017/09/01 FRI ON SALE
cat no.: BRZN244
price: ¥1,929+tax
国内盤仕様: 帯/解説・歌詞対訳付き

[ご予約はこちら]
beatkart: https://shop.beatink.com/shopdetail/000000002175

Love Theme - ele-king

 ラヴ・テーマ。愛のテーマ。こんなバンド名で、アンビエント/サイケデリック・アルバムなのである。なんという直球と屈折か。そう、現在活動休止中というダーティ・ビーチズのアレックス・ザング・ホンタイの新バンド「ラヴ・テーマ」は、われわれに不穏と官能を教えてくれる。その意味で、ラヴ・テーマにはダーティ・ビーチズ的なエレメントが確かに受け継がれている。あの不穏と官能のフィードバック・ノイズを想起してほしい。あえていえば『ステートレス』より、EP『ホテル EP』的だろうか。異国の地の、見知らぬホテルに掛かっていたバレリーナの絵のような、あのムード、あの空気。時に表出するサイデリックなミニマル・ロックなサウンドは傑作『バッドランズ』を思わせもする。

 アートワークに目を凝らしてみよう。モノクロームのアジアか。50年代か60年代か。それとも80年代か。どこかの店先か。グラスらしきものが見える。何か飲食する店か。いや別の何かを売買する店か。その不穏なムードとフェイクなエレガンス。ブラウン管のテレビに移る女性の顔。白黒だから、というわけでもないがどこか夜のムードが漂ってくる。時間が停滞したようなムード。遠く離れたブラウン管のTV映像には時間がない。ただ点滅するだけである。イマージュの点滅・消滅。都市の記憶のようでもあり、20世紀的な都市のアンビエント/アンビエンスでもある。つまりはラヴ・テーマのサウンドのムードそのものだ。煙の中に消えていくようなツイン・サックス。36mmフィルムの持続のようなドローン。煙のようなノイズ。霞んだリズム。東アジアの地で聴こえてきたジャズ。旅人の、音楽の、淡い記憶のような音楽、音響。グローバル資本主義が世界を覆い尽くす直前の、どこか猥雑な都市の光景と記憶のアンビエンス/アンビエント。

 ラヴ・テーマのメンバーは、サックスを演奏するアレックス・ザング・ホンタイと、同じくサックス・プレイヤーでもあり本作ではアレンジも担当しているオースティン・ミルン、シンセサイザー奏者サイモン・フランクの3人だ。彼らの音が濃厚な空気のように溶け合い、交錯し、混じり合い、ラヴ・テーマならではの濃厚なアトモスフィア生み出している。アルバムは彼らの即興的セッションを素材とし、ロンドン、LA、台北のあいだでデータの交換がなされ、編集・完成したという。1曲め“デザート・エグザイル”は、人工的でありながら生々しい弦の音(シンセだろうか?)に揺らめくようなサックスの音と音響的旋律が重なる。いくつものドローン、アンビエンス、ノイズの交錯が耳の遠近法を狂わす。A面3曲め“ドックランズ/ヤウマテイ/プラム・ガーデン”では霞んだサウンドのビートも加わりミニマル・サイケなムードが満ちてくる。ダーティ・ビーチズが『バッドランズ』でサンプリングした裸のラリーズのような雰囲気とでもいうべきか。真夜中のサイケデリック。続くB面では、アンビエント・ジャズな“シーズ・ヒア”から“オール・スカイ、ラヴズ・エンド”の前半を経由し、その後半でまたもビートが鳴り始める。フリーキーなサックスと霧のごときシンセサイザーのサウンドも官能的だ。この不穏な空気感、時間感覚はデヴィッド・リンチの映画のようである(と思っていたらなんとリンチが監督する『ツイン・ピークス The Return』に、あるバンドのサックス・プレイヤーとしてアレックスがゲスト出演している。まさに「いろいろと繋がってくる」2017年、といったところか)。

 21世紀の今、ありとあらゆる場所が「蛍光灯」の光で可視化され、感情と冷酷のあいだで無=慈悲化が進行している。二極化する21世紀的環境と状況の只中で、アルバム『ラヴ・テーマ』は黒の中に溶け合うような夜のムード/真夜中の音楽のアトモスフィアを鳴らしている。まるで異郷の都市を訪れた旅行者の彷徨のように、このアルバムはわれわれを迷宮に連れて行く。不穏と官能による愛のメランコリアのアンビエンスが、ここにある。

Call And Response Records - ele-king

 近々、『Quit Your Band! (仮題:バンドやめようぜ!)』という翻訳本を出そうと思っているんですけどね。別冊エレキングの『コーネリアスのすべて』に登場して日本の音楽における「洋楽の引用/誤用」と「なぜ日本人はおかっぱ頭なのか」等々、なんとも興味深い話を展開しているイアン・マーティンさん、『ガーディアン』や『ジャパン・タイムス』に寄稿する在日13年の英国人音楽ジャーナリストの氏が昨年上梓した本で、欧米ではけっこう話題になっております。英語ですが、この記事を読めば、「むむ」っと来るかも
 簡単に言えば、イギリス人が日本のロック/ポップス・シーンをばっさりと論じた内容で、とくにJ-POPやアイドルに「?」(シニカル)な人には必読本でしょう。また、ライヴハウスで活動しているバンドには勇気が湧いてくるかもしれないです。
 で、そのイアンさん、自分でレーベル〈Call And Response Records〉なるレーベルも運営して日本のインディ・ロック・バンドをフックアップしています。先日、初のレーベル・コンピ『THROW AWAY YOUR CDS GO OUT TO A SHOW』がリリースされました。日本の音楽メディアが紹介しきれていない、商業主義とは縁のない、エネルギッシュなバンドの音源が収録されています。
 以下、レーベル資料から抜粋。
 「本コンピレーションアルバム「THROW AWAY YOUR CDS GO OUT TO A SHOW」は、イアン・マーティンによる6ヶ月間の日本47都道府県のローカルインディー音楽取材旅の際に構想を得たものであり、東京のみならず取材先で出会った東北、中部、関西、中国、九州からのバンドが参加している。本コンピリリースにあたり、各都市でリリースイベント実施予定! 」
 9月から11月にかけて 広島、福岡、仙台、京都、名古屋、東京でイベントあり。
 日本はインディ・ロック・バンドの宝庫である。ぜひ、注目して欲しい。


https://callandresponse.jimdo.com/releases/various-artists-throw-away-your-cds-go-out-to-a-show/

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