「Ord」と一致するもの

“ディレイ”対決は加速する! - ele-king

 オウガ・ユー・アスホールとマーク・マグワイヤ。ありそうでなかった貴重なライヴである。両者をつなぐキーワードはひとまずクラウトロック(そしてイヴェント・タイトルのとおり“ディレイ”)だと言えようが、エメラルズを離れたのちのマグワイヤの活動はよりパーソナルに、より自由に柔軟に展開をつづけているし、オウガ・ユー・アスホールも一枚ごとに音楽性を深めひとつところに留まる様子がない。ロックのイヴェントではまちがいなく最高峰のステージを堪能することができるだろう。めくるめくようなディレイ体験を期待したい。

 ということで、ele-kingでは大好きなふたつのアーティストたちの競演を祝福して、みなさんをライヴへご招待いたします。以下のガイドにしたがってご応募(ele-kingツイッターアカウントの該当ツイートをRT)ください!

■応募方法
※twitterサービスをご利用されている方を対象とする企画です

・ele-kingアカウントをフォローし、同アカウントによる本件についてのツイートをRTして下さい
・3月15日(日)24時を締切として、RTをしてくださった方から抽選で3名様をライヴにご招待いたします
・当選のご連絡はツイッターのDM機能を利用して行います。3月16日(月)にご連絡予定ですが、3月19日(木)までにご返信がない場合は無効とさせていただきますのでご注意ください。
・チケットの送付はありません(受付でお名前を頂戴いたします)ので、DMにてご住所をお知らせいただくようなやり取りはございません

本件についてのお問い合わせはele-king編集部までお願いいたします。
(※アーティストやレーベル、UNIT側ではご対応できません)

■"" DELAY 2015 ""
OGRE YOU ASSHOLE × Mark McGuire

オウガ・ユー・アスホール OGRE YOU ASSHOLE
マーク・マクガイヤ Mark McGuire


OGRE YOU ASSHOLE


Mark McGuire

日程:
2015年3月29日(日)
会場:代官山UNIT
開場:17:15 / 開演:18:00
料金:ALL STANDING \4,000(1ドリンク別)
主催:HOT STUFF PROMOTION / UNIT 企画・制作:Doobie / UNIT
協力:ele-king / root & blanch / Office ROPE
INFO:HOT STUFF PROMOTION/Doobie 03-5722-3022 https://doobie-web.com
UNIT https://www.unit-tokyo.com/
チケット:
主催者先行予約受付
1月21日(水)20:00~1月29日(木)23:59
受付URL:https://doobie-web.com
一般発売日:2015年2月7日(土)
●チケットぴあ 0570-02-9999 t.pia.jp Pコード:254-739
●ローソンチケット 0570-084-003 l-tike.com Lコード:79252
●イープラス eplus.jp
●GAN-BAN 03-3477-5701 ●diskunion各店 ●Jet Set Records


OG from Militant B - ele-king

港に帰ろう 2015.3.3

ヴァイナルゾンビでありながらお祭り男OG。レゲエのバイブスを放つボムを日々現場に投下。Militant Bでの活動の他、現在はラッパーRUMIのライブDJとしても活躍中。
今回のランキングは初のノンレゲエ、ノンレコードで送る、俺の家にある女性ボーカルCDたちを紹介。やっぱ歌ってる女って最高じゃん?なあ男ども!こうやって並べると自分は分かりやすいものが好きだし、結局男は女に支えてもらってばっかなんだなあと。女の子はイケてる女性を感じてほしいです。You Tubeでも良いし、アルバムgetしてランキングに挙げてる曲以外も聴いたら楽しさ倍増!無限大!そしてお洒落してパーティーにGO!!

3/3 吉祥寺ceeky "FORMATION"
3/6 札幌plastic theater "SOUND TRAP"
3/7 函館cocoa"MUSICALITY DEMANTA SPECIAL"
3/11 新宿open "PSYCHO RHYTHMIC"
3/14 吉祥寺warp "YougonnaPUFF?"
3/15 池袋bed "GRIND HOUSE"
3/20 吉祥寺cheeky
3/21 渋谷asia "IN TIME"
3/25 池袋bed "BED ANNIVERSARY"
3/27 吉祥寺cheeky "MELLOW FELLOW"
4/7 吉祥寺cheeky "FORMATION"
4/10 中野heavysick
4/11 渋谷roots
4/25 那覇loveb

Soichi Terada - ele-king

 ようやく、寺田創一のワークが世界中で評価される時代がやってきたようです。
 ここ6ヶ月で、寺田の旧作が3枚リリースされた。2014年末、イタリアのFabio Monesiによる“Do It Again”のリミックスを収録した「The Far East Transcripts」が〈Hhatri〉からリリースされると、今年に入って、Manabu Nagayamaとの共作「Low Tension」がUKの〈Utopian〉からリリースされました。私は、かねてから“Low Tension”を高く評価していたので、やっと再発されて、ものすごく嬉しい。
 そして、今回目玉となるのが、オランダの〈Rush Hour〉からリリースされた「Sounds from the far east」というコンピレーションです。

 寺田は日本人なのに、上記のプロジェクトはすべて海外からリリースされています。

 Far East Recording (FER)のアンダーグラウンド性は相当高いので、知らない方が多いのは仕方がないでしょう。
 FERは、1988年、寺田によって創始されました。アナログからCDへのシフトのピークタイムだったので、比較的にプレス代が低くなっていました。自分の曲をDJにプレイしてもらいたかったが、当時アナログレコードで落とさないとDJがプレイできなかったため、寺田はレーベル活動を始めたそうです。しかし、ディストリビューション先がなかった。当時のレコードショップは個人取引もやっていなかった。なので、自分のレコードを販売できなかった。
 そこで寺田は、その一部をいろいろなDJに直接あげたり、店にこっそりおいたり(いわゆる万置き)していました。
 いま現在、FERのレコードが非常にレアで、高価になっている原因のひとつです。

 本コンピに揃っている曲は、FERの初期音源(1988年から1995年まで)になります。寺田のプロダクションスタイルのひとつの大きいな特徴は、ベースの使い方です。あのころの彼の曲を聞くと、「寺田プロダクションだ!」と、ベースから判明できます。ベースが必ず曲の主要エレメントになっているのです。彼は、ドラムキックと同じように、ビートを刻んでくるスレーミングなベースを使います。“Low Tension”や“Hohai Beats”が良い例です。
 寺田は完全にサンプリングの子供です。彼がプロダクションに入ったきっかけもそうでした。友だちからLED ZEPPELINのレコードをもらい、それが気に入ったからサンプリングして、初めてリミックス作りました。今回のコンピにおいても、“Purple Haze”では、ジミ・ヘンドリックスをサンプルしています。“Saturday love Sunday”ではCherelle & Alexander O’Nealをサンプルしています。、Shinichiro Yokotaの横田“Shake yours”はI.C Love Affairの89年リミックスをサンプルします。
 とはいえ、サンプルの仕方も独特です。カットした分をほぼエディットせず、そのまま自分の曲に使います。あくまでその曲が好きだから、トリビュートする気持ちでそうしています。
 寺田はすごく素直でやさしい人です。自作について語ると、そのサンプルで使った曲への愛が伝わります。ピュアな気持ちがそうさせるのでしょう。
 そして、寺田のスタイルの大きいな特徴は、やはりディープとムーディーな雰囲気づくりです。パッと聞いて「あ! 90sハウスだね!」と思わせるキーズの使い方(“CPM”や“Voices from Beyond”)。Downtempoに近いビートを使った“Binary Rondo”も、パッドのカットでムーディーで懐かしい気持ちを体験させてくれます。

 結論を言いますね。このコンピを見逃したら大間違いです。寺田は日本のアンダーグラウンド・ハウス・シーンを創始した数の少ない人のひとりです。いまでもOMODAKAという名義の下で、まだアンダーグラウンドシーンで活動しています。ジニアス・プロデューサーであり、島田なみの“Sunshower”リミックスは、NYCのParadise GarageとLarry Levanにも影響を与えました。収録曲はすべてオリジナルではアナログ・レコードはとして存在していますが、人生で一度見たら奇跡だと思えるほどレアな盤です。
 今回のコンピは、寺田がプロデュースした、素晴らしい曲をVinylで手に入れる最高のチャンスだと思ったほうがいいでしょう。

interview with Shotahirama - ele-king

ワナダイズのマネなんですけどね

 Shotahiramaの名前を覚えたのは、東北大震災の後だった。しばらくして『アンビエント・ディフィニティヴ』を編集していたときに『サッド・ヴァケイション』(2011)を聴いたほうがいいのかどうか迷ったものの、結局、聴くことはなかった。ヴィンテージ盤に金を使い過ぎたせいもあるし、ジャケット・デザインがあまりにもそれらしくなかったことも大きい。魚がパクっと口を開けているようなヴィジュアルはあまりにグロい感じが強かった。

「あれはハンバーガーですよ(笑)。ジャケットと内容は関係ない方がいいと思ってるんです」

 その後の『ナイス・ドール・トゥ・トーク』(2012)や『ポスト・パンク』(2014)に女性の写真を使っているのも内容を想像させないためらしい。

「ワナダイズのマネなんですけどね」

 女性が地面にスッ転がっている姿を写した『バグジー・ミー(Bagsy Me)』(1996)のジャケット・デザインが彼の心を深いところで刺激したのだろう。さすがにスウェデッシュはこれだけだったけれど、この日のインタヴューで彼が口にしたミュージシャンは7割ぐらいがロック・バンドだった。彼の音楽はロック的な衝動をグリッチやミュージック・コンクレートに移し変えたもので、方法論的に行き詰ったエレクトロニカが試行錯誤の末に突破口を見出したというような修養の産物とは言わない方がいいのかもしれない。むしろ取材が終わった後で、彼は「シュトックハウゼンとかの名前をもっと出せばよかった」と悔しがっていたぐらいで、そういえば「Shota Hirama」と2語に分けず、ドットを省略してShotahiramaと綴られると、目が悪い僕などは一瞬、Stockhausenと勘違いしてしまうのも彼の巧みな計算から来ているにちがいない。橋元“めっちゃ”優歩がめっちゃ間違えてShitahiramaとメールで書いてきたときはシタビラメの仲間かとも思いましたけれど。めっちゃ。

 Shotahiramaはセールスマンのような男だった。いや、あまりにきちっとし過ぎていて、取材というよりは何かのセット販売に立ち会っていたような気分に近かったのである。まー、たしかに、彼がこれまでにリリースしてきた『クラスター』や『ポスト・パンク』が合わせて4枚組のボックス・セットとしてパッケージし直されるので、彼が何をどのような口調で語ろうともその軸にある行為はセット販売であることは間違いないのだけれども……。


Surf

Tower HMV Amazon


Stiff Kittens

Tower Amazon


myspaceに曲を上げたら、スペインのレーベルから連絡が来たんです

 Shotahiramaはニュー・ヨークで生まれた。それから大体、6年おきぐらいに日本で暮らしたり、アメリカに戻ったりと、ピンポン玉のような人生を展開してきたらしい。アメリカではブロンクスヴィルというところに住んでいたので「黒人は見たことがなかった」そうである。デヴィッド・リンチの映画を観ていても『ブルーベルベット』の冒頭で雑貨屋の主人が黒人だった以外、まったく黒人は出てこないので、それだけを見ているとアメリカに黒人はいないと思いがちだけれど、スパイク・リーの初期作を観ると、今度は黒人ばっかり出てくるので、アメリカは黒人だらけだと勘違いするのに似ている(*反知性主義の人にはちょっと難しかったかな?)。

「だからヒップホップを知らないんですよ」

 音楽を聴いただけではそれには気がつかなかった(ウソ)。

「小さい頃はバック・ストリート・ボーイズとか、そういうのがよく流れていました」

 しかし、彼自身が音楽に興味を持ったきっかけはロックだった。

「意識的に聴きはじめたのはストロークスが最初ですね」

 そう言いながら、彼の表情はまるでギターを搔き鳴らしているキッズのそれになっていた。ペイヴメント、ソニック・ユース、ジョン・ゾーンと、彼の興味はどんどん先鋭化し、いつしか「ライヴがしたい、録音したい、人に聴かせたい」の三拍子が揃ってしまい、彼を中心とする流動的なメンバーで構成されたエレクトロノイズ・グループ(ENG)としてデビューする。

「マイスペース(myspace)に曲を上げたら、スペインのレーベルから連絡が来たんです」

 2007年に4曲入りの「バルセロナ」、2008年にはフル・アルバムで『コラープス』がリリースされる。アブストラクトかイルビエントといった形容がこれらを指して並んでいるけれど、僕は聴いたことがないのでなんともいえない。イギリスや香港など世界各地でライヴも行ってきたらしい。

「まだやっているんですよ。現在は休業中ですけど、やめたわけじゃないんです」


日本かアメリカかというアイデンティティの問題で悩んだことはないんです。自分は自分でしたから。

 そうした活動の前、彼はディスクユニオンの本社などで働き、最終的にはクビになっている。同じくディスクユニオンで働いていた橋元“めっちゃ”優歩と時期が重なるために、それからしばらくふたりのあいだで固有名詞がめっちゃ飛び交い、なにがなんだかわからないので、うどんでも食べに行こうかなと思っていると、彼がクビになった理由に話が及びはじめた。簡単にいうと、相手の佇まいから、その人の気持ちを察するという日本文化に馴れていないために、彼は接客でトラブルを起こしまくり、袖から見えるタトゥーがそれに拍車をかけたというのである。

「日本かアメリカかというアイデンティティの問題で悩んだことはないんです。自分は自分でしたから。でも、日本の習慣を理解するにはとにかく時間がかかったんです。なんで直さなければならないのかがわからなかったんです」

 ここまで彼と話をしていて、話しにくいと感じたことはなかった。どちらかというとコミュニケイションはスムーズで、接客でトラブルを起こすようなタイプには思えなかった。日本で働くうちに、彼がすっかり変わってしまったということなんだろうか。あるいは、そうした片鱗さえ窺える部分はなかった。強いて言えば彼は素直すぎると感じたことが精一杯の違和感である。印象に残った彼のひと言がある。

「オトナがコワい」

 そのようにして日本で働いているときに、彼はそう感じたというのである。上手くは言えないけれど、この感覚は彼の音楽にある破壊的なニュアンスや「シグナル・ダダ」と名付けられたレーベル名にどこか通低するものがあるような気がしないでもない。ダダは単に彼がダダイズムが好きだから付けたそうだけど。


オトナがコワい

 2007年に彼はギターをラップ・トップに置き換える。

「PC一台ですべてのことができるというのは、それなりに革命的な気分でした」

 香港の〈リ-レコーズ(Re-Records)〉からリリースされたソロ・デビュー・アルバムのタイトルが興味深い。『アンハッピー・アメリカン・ロスト・イン・トウキョウ』(2010)である。反知性主義者の方に訳して差し上げると「不幸せなアメリカ人は東京で自分を見失う」となる。「アイデンティティの問題で悩んだことはない」という彼の発言にウソがあるとは思えなかったけれど、でも、やっぱりそれはウソだと思いたくなるようなタイトルではある。そして、続くセカンド・アルバムが『サッド・ヴァケイション』。

「東北大震災があった日に出荷の作業をやってたんです」

 タイトルは地震の前からあったもので、同作のテーマは「エレメントの衝突」。プレス資料を写すのが面倒なほどコンセプチュアルなことがあれこれと書いてある。冒頭にも書いたように、この作品はアンビエント・テイスト。続く『ナイス・ドール・トゥ・トーク』は14分ちょっとのミニ・アルバムで、カットアップが以前よりも暴力的な響きを帯びてきた。

 現在の作風に直結してきたといえる『クラスター』(2014)はちょっと考えさせる。

「そのままです。クラスターへのオマージュです」

 一定のテンションを保ちながらも、低音部がカットされているため、ダイナミクスはまったく生じない。いわば平坦でありながら、飽きさせないという意味では初期のケン・イシイを思わせる。ヒップ・ホップを知らなかったことと同じ意味合いなのか、「ダンスものはやりたくなかった」ということが面白い方向に出た例といえるだろう。即興にエフェクトをかけたりしているのかと思ったら、流れるような展開は細かい断片を繋ぎ合わせたものだという。

「エディット狂なんですよ(笑)。これは2週間でつくれと言われて。このときの集中力は二度と再現できません」

 ここから一足飛びに『ポスト・パンク』へ話を進めたいところだけど、次にリリースされたのは〈ダエン〉からのカセット、『モダン・ラヴァーズ』。

「ジョナサン・リッチマンが好きなんです。最初のノイズは実際にジョナサン・リッチマンのアナログ盤をかけたときのもの」

 そうかなとは思ったけど、本当にジョナサン・リッチマンから来ているとは驚いた。2014年は坂本慎太郎にマック・デマルコと、話題作を生み出したミュージシャンが共通してジョナサン・リッチマンに惹かれていたとはどういうことか。ちなみにShotahiramaがジョナサン・リッチマンのことを知ったのは田中宗一郎が「ストロークスだったか、リバティーンズだったかのことを書いていて、それと関係づけていた」からだったという。『モダン・ラヴァーズ』はひと言でいえばノイズで、「ハーシュ・ノイズは嫌いなんです」という彼が練り上げた繊細なノイズ・ドローンと聴いたほうがいいだろうか。


最初のノイズは実際にジョナサン・リッチマンのアナログ盤をかけたときのもの。

「ノイズといっても、ナース・ウインズ・ウーンドみたいにドロドロしたものが好きなんですよ。ビザーレというか。コリン・ポッターも好きです。アンドリュー・ライルズやダレン・テイト、アンドリュー・チョークも……」

――予感はあった?

「まったくなかったです」

 本人も予想しないところで、いきなり『ポスト・パンク』で火が点いた。

――どんな反響が?

「ないですけど、売れたんですよ」

 そんなことが急に……起きたのである。初期のケン・イシイがマウス・オン・マーズと出会ったようなファニーさが『ポスト・パンク』には付け加わった。これも実際に会った彼からは感じられなかった性格ではある。もしかすると、興醒めになってしまうかもしれないけれど、タイトルも含め、この変化がどこから来たのかは彼自身が語ってくれた。

「パレ・シャンブルグです」

 あー、なるほど。アンビエント・ミュージックに聴こえるサウンドにハンバーガーのジャケットを持ってくるセンス。おそらくは彼に元から備わっていた性格なのである。それがようやく音の表面に出てきたのが『ポスト・パンク』だった。そう考えた方がよさそうではないだろうか(どうでしょう、反知性主義の皆さん?)。どう見てもセールスマンにしか見えないShotahiramaが真面目な顔で彼の音楽について語れば語るほど、何かが決定的にズレていく。あるいは、まずは笑わせてくれるのがダダイズムだとも。



*『クラスター』『モダン・ラヴァーズ』『ポスト・パンク』を含むボックス・セット『サーフ』はポスター、缶バッチ2個、ブックレット付きでshrine.jpより発売中。橋元“めっちゃ”優歩もめっちゃ好きみたいです。めっちゃ。


■shotahirama / 平間翔太
ニューヨーク出身の音楽家。国内外のさまざまなメディアから注目を浴び、Oval、Kangding Ray、Mark Fell 等のジャパン・ツアーにも出演。代表作に『post punk』や4枚組CD ボックス『Surf』などがある。
オフィシャルサイト:https://www.signaldada.org

■新譜『Stiff Kittens』

発売日: 2015 年2 月22 日
定価: 2,000 円+消費税
レーベル: SIGNAL DADA
詳細: https://signaldada.tumblr.com/

「新譜『Stiff Kittens』発売記念ライヴ+特典引換会」についての詳細はこちらから

Chicklette - ele-king

 2011年春、某クソバンドでクソな活動をしていた僕はLAにていくつかのクソなショウをこなし、オースティンまで13時間のドライヴで〈SXSW(サウス・バイ・サウス・ウエスト)〉へ向かった。僕以外の同乗者全員が運転できない過酷な状況の下、車内から見える、ただ永遠と広大な荒れ地と砂漠がつづく光景は、まさしくループするようで猛烈な眠気を誘い、時折道中に転がる大型野生動物の屍骸をよけて死にかけつつ疲労困憊の限界を超えて到着した先で無銭で同乗していたハイウルフが交換条件として提示していた宿先が確保できていなかったことはいまだに忘れることができない。

 ……といったことは以前に紙版『ele-king』のほうにも書いていて、何をくどくど同じことをほざいているかというと、そんな最悪な思い出もいまにつながる妙な縁を自分に残しているからである。はたしてそれが自分の現在を良いものにしているどうかは別として。

 DJ ドックディックとのユニット、ドッグ・レザーをはじめたばかりのソーン・レザー、現スカル・カタログ(SKULL KATALOG)のグリフィンを誘って、初めて対面したのもこのときであったし、エンジェルス・イン・アメリカ(Angels in America)のエスラに出会った(ナンパした)のもこのときであった。

 チックレット(Chicklette)は現在NY在住のエスラによるソロ・プロジェクトである。エンジェルス・イン・アメリカではシンガーを務め、DJデュオ、バンビ&チェブス(BAMBI & C.H.E.B.S.)としてモントリオールからボルチモア、ファー・ロカウェイを股にかけリジデントのパーティを主催する。ザリー・アドラーによる秀逸なアート・ピースとしても定評のあるカセット・レーベル、〈ゴーティー・テープス(Goaty Tapes)〉よりリリースされた初音源である前作『ロンリエスト・ビッチ(Loneliest Bitch)』(──そう、僕はいつだって誇り高きアバズレに人生を振り回されているのだ)は、USヘンテコ・ミュージック愛好家の間で話題を呼んだ。

スカル・カタログやDJドッグディックらとともに多くの時間をボルチモアのスクワット生活で過ごした、エンジェルス・イン・アメリカのクラストパンク・フォークとでも形容すべきサウンドが、この小汚い連中に多大なリスペクトを送りつづけるドラキュラ・ルイス(Dracura Lewis)ことシモーネ・トラブッチによる〈ハンデビス・レコーズ〉からのリリースとなったのは必然であったと言えよう。〈ハンデビス〉よりカセット音源『VH1 DRUNK』をリリースしたエンジェルスは同レーベルによるサポートの下、ヨーロッパ・ツアーも敢行したようだ。

 このたび、ハンデビスより満を持して発表されるチックレットのカセット音源がこのアンフェイスフル(UNFAITHFUL)である。シモーネによる毎度最高なCMはこちら。

 このアンフェイスフル、正直カセット音源であることがもったいない。

 ファルマコン(※リンクおねがいしますhttps://www.ele-king.net/review/album/004087/)と同等、いや、それ以上の女子的な闇と病巣を宿していながらも非常にバカバカしく、キッチュかつポップに聴かせてしまうセンスにはまさしく戦慄をおぼえる。エンジェルスでは、ある種拷問的に聴者に襲いかかっていた彼女の狂気は、このような形にまとめあげられるべきであったのかもしれない。ハンマービート、EBM、フォークソングと、ヴァリエーション豊かなトラック群にさらりと乗る底抜けに病んだリリック、それはまさしく1ドルショップに並ぶ、毒々しい蛍光色で輝く有害物質が桁外れに含まれた幼児玩具のようでもある。

 また、エンジェルスの相方であるマークもプロヴィデンスを拠点にフェアウェル・マイ・コンキュバイン(Farewell My Concubine)として活動する。こちらも『チックレット』に劣らない最高のポップ・センスとヘロイン・ライクな心地よすぎるダウナー・トリップ。ぜひともチェックしていただきたい。

NODA - ele-king

1989年、長崎生まれ、東京在住、DJ。

Sakana、Zatoとともに月1でネット・ストリーミングを行なう〈T.R Radio〉を2014年に始動。その他、渋谷LXで開催されるパーティFallにDJ Teiと共にレギュラー出演中。

今後のDJスケジュール
2/25 TBA at 渋谷 OTO
2/28 T.R Radio with Mincer
3/6 Leisure System presents New Build at Liquidroom Guest: Shackleton, Objekt

Soundcloud
https://soundcloud.com/noda-kohei

T.R
https://mixlr.com/tr--2/

NODAが選ぶ、2月の10枚。

Praezisa Rapid 3000を知っているか? - ele-king

 2012年、world's end girlfriendやSerphなどのリリースで知られる〈noble〉が、海外バンドとして初めて手掛けたPraezisa Rapid 3000。彼らはドイツはライプチヒを拠点として活動するトリオで、マウント・キンビー(Mount Kimbie)やアントールド(Untold)などベースミュージック勢との共演がある一方で、今回のツアーでもコラボレーションするように、〈Morr Music〉のSing Fangなどカラフルでドリーミーなエレクトロニカとも共振する音楽性が魅力的だ。今回報ぜられた来日情報は桜の頃を過ぎるが、楽しみに待ちたい。

■Praezisa Rapid 3000 - Japan Tour 2015

ドイツはライプチヒの新世代トリオ、Praezisa Rapid 3000。待望の初来日ツアーが今年4月に決定しました。
ドイツ東部ザクセン州の音楽都市、ライプチヒを拠点に活動するPraezisa Rapid 3000は、Simon 12345、Devaaya Sharkattack、Guschlingの3名からなるトリオバンド。ネパールやインド、中近東など、多国籍なエキゾチック・サウンドに最新のベース・ミュージックを掛け合わせた2nd アルバム『Miami/Mumbai』のリリースも記憶に新しい彼らが、今年4月に待望のジャパン・ツアーを行います。

東京公演には、昨年12月に1stフル『White Girl』をnobleよりリリースしたmus.hibaと、100%サンプリング製法を謳い、昨年11 月にVirgin Babylon Records より初のCD アルバムをリリースしたcanooooopyも登場。京都では、ベルリンのMorr Musicからリリースする共にアイスランドのアーティストSoleyとSin Fangとのコラボでの来日公演を行います。山形公演には、nobleとも何かと縁の深い現地在住のアーティスト/DJ のSHINYA TAKATORI も出演。埼玉公演には、kilk 勢に加え、2nd『Miami/Mumbai』にもリワークで参加した服部峻も大阪より駆けつけます。

今回のツアーには、Simon12345による別動トリオSimon12345 & The Lazer twinsのメンバー二人もサポート・ミュージシャンとして来日し、5人編成でのパフォーマンスを行います。

世界中の好事家たちを魅了する、錬金術師めいた抜群のコラージュ・センスで生み出されるレフトフィールド・ポップス、どこかユーモラスで謎めいた、新世代のハイブリッド・サウンドを、ぜひ生でご堪能ください。みなさまのお越しをお待ちしております。

■Tour Details

Praezisa Rapid 3000 - Japan Tour 2015

東京公演:
Miami/Tokyo
4月22日(水)
東京・渋谷 O-nest(https://shibuya-o.com/category/nest
Live Act: Praezisa Rapid 3000、mus.hiba、canooooopy
開場:19:00/開演:19:30
料金:3,000円(前売)/3,500円(当日)_ドリンク代別
チケット:ローソンチケット(Lコード:71522)/e+
問い合わせ:O-nest(https://shibuya-o.com/category/nest

京都公演:
night cruising「Praezisa Rapid 3000 Japan Tour 2015 "Döbeln/Kyoto"」+「sóley & Sin
Fang Japan Tour 2015 in Kyoto」
4月23日(木)
京都 METRO(https://www.metro.ne.jp/
Live Act: Praezisa Rapid 3000、sóley、Sin Fang、miaou
開場:19:00/開演:19:30
料金:3,000円(前売)/3,500円(当日)_ドリンク代別
予約:info@nightcruising.jp
問い合わせ:night cruising(https://nightcruising.jp/

山形公演:
Yamagata/Mumbai supported by RAF-REC
4月26日(日)
山形 sandinista(https://www.sandinista.jp/
Live Act: Praezisa Rapid 3000、SHINYA TAKATORI、about me
DJ:Satoru Akiyama (CSGB)、A-bit (slow motion)、Takatox、
Live Painting : SOLID
開場&開演:19:00
料金:2,500円(前売)/2デイズチケット : 3,000円(※27日のアフターパーティーとの通しチケット
です)/3,000円(当日)_ドリンク代別
予約:RAF-REC(https://rankandfilerec.com/)/sandinista(https://www.sandinista.jp/
問い合わせ:RAF-REC(https://rankandfilerec.com/

山形公演アフター・パーティ:
pr3k ancient spacebase
4月27日(月)
山形 RAF-REC(https://rankandfilerec.com/
DJ:Simon12345、Devaaya Sharkattack、;..(from Praezisa Rapid 3000)、SHINYA TAKATORI
(RAF-REC)
開場&開演:19:00
料金:1,000円(当日)
問い合わせ:RAF-REC(https://rankandfilerec.com/

埼玉公演:
Saitama/Detroit
4月29日(水)
埼玉・大宮 ヒソミネ(https://hisomine.com/
Live Act: Praezisa Rapid 3000、服部峻、Aureole、at her open door
開場:18:00/開演:18:30
料金:3,000円(前売)/3,500円(当日)_ドリンク代別
チケット:Peatix(https://peatix.com/event/72632)
問い合わせ:ヒソミネ(https://hisomine.com/

 

ツアー企画・制作:noble
共催:night cruising(4/23)、RANKandFILE RECORDS(4/26, 4/27)、kilk(4/29)
助成 ドイツ連邦共和国外務省
協力:Goethe-Institut ドイツ文化センター、HiBiKi MaMeShiBa (GORGE IN)
ツア


Frank Bretschneider - ele-king

 フランク・ブレットシュナイダーは東ドイツ出身の音楽家・映像作家である。1956年生まれで、あのカールステン・ニコライらとともに〈ラスター・ノートン〉の設立に関わっている人物だ(フランク・ブレットシュナイダーとオラフ・ベンダーが1996年に設立した〈ラスター・ミュージック〉と、カールステン・ニコライの〈ノートン〉が1999年に合併することで現在の〈ラスター・ノートン〉が生まれた)。

 ブレットシュナイダーは1980年代より音楽活動をはじめている。1986年にAG Geigeを結成し、1987年にカセット・アルバムをリリースした。いま聴いてみると奇妙に整合性のあるパンク/エレクトロ・バンドで、現在の彼とはまるでちがう音楽性だが、そのカッチリとしたリズムに後年のブレットシュナイダーを感じもする。その活動は東ドイツのアンダーグラウンドの歴史に大きな影響を残したという。
 そして1999年から2000年代にかけて、正確/複雑なサウンド・デザインと、ミニマルなリズム構造による「数学的」とも形容できるグリッチ/マイクロスコピックな作風を確立し、あの〈ミル・プラトー〉や〈12k〉などからソロ・アルバムをリリースすることになる。コラボレーション作品も多く、たとえば〈ミル・プラトー〉からテイラー・デュプリーとの『バランス』(2002)、〈12k〉からはシュタインブリュッヘルとの『ステータス』(2005)などを発表した(どちらも傑作!)。カールステン・ニコライ、オラフ・ベンダーとのユニット、シグナルのアルバムも素晴らしいものだった。また昨年(2014年)もスティーヴ・ロデンとの競演作(録音は2004年)を〈ライン〉からリリースした。

 2000年代中盤以降のソロ・アルバムは、おもに〈ラスター・ノートン〉から発表している。『リズム』(2007)や『EXP』(2010)などは、反復するリズム構造と、複雑なグリッチ・ノイズのコンポジションによってほかにはない端正なミニマリズムが実現されており、レイト・ゼロ年代を代表する電子音響作品に仕上がっている傑作だ。また、2011年にコメット名義でリリースした『コメット』(〈Shitkatapult〉)もフロア向けに特化した実に瀟洒なミニマル・テクノ・アルバムである。
 2013年、〈ラスター・ノートン〉からリリースした『スーパー.トリガー』は、カールステン・ニコライとオラフ・ベンダーのダイアモンド・ヴァージョンとも繋がるようなエレガント/ゴージャズなエレクトロ・グリッチ・テクノ・アルバムである。いわば「音響エレクトロ」とでもいうべきポップでダンサンブルな音響作品であり、彼の新境地を拓くものだった。

 そして、本年リリースされた新作において、その作風はさらに一転する。サージ・アナログ・シンセサイザーなどモジュラー・シンセサイザーを鳴らしまくったインプロヴィゼーション/エクスペリメンタルなアルバムに仕上がっていたのである。音の雰囲気としては2012年に〈ライン〉からリリースされた『Kippschwingungen』に近い(東ドイツのラジオ/テレビの技術センターRFZで、8台のみ開発されたという電子楽器Subharchordを用いて制作された)が、本作の方がよりノイジーである。アルバム全8曲41分にわたって、アナログ・シンセサイザーの電子音のみが横溢しており、電子音フェチ悶絶の作品といえよう。
 制作は2014年7月にスウェーデンはストックホルムのEMSスタジオに滞在して行われたという。じつはすでに2017年7月に、EMSでモジュラー・シンセを駆使する動画が公開されていたので、まさに待望のリリースでもあった。

 アルバム・タイトルはドイツ語で「形式と内容」という意味で、カオス(=ノイズ)を操作して、デザイン(形式化)していくという意味にも読み込める。ジャケットの幾何学的なアートワークや、アルバム・リリースに先駆けて公開されたMVにも、そのような「形式と内容=デザインとカオス」の拮抗と融合と反復とズレを感じることができるはずだ。

 この「フランク・ブレットシュナイダーによるモジュラー・シンセサイザーのみのアルバム」というある意味では破格の作品が成立した過程には、近年のモジュラー・シンセによるコンクレート・サウンドの流行も関係しているだろう。町田良夫からトーマス・アンカーシュミット、マシーン・ファブリックまで、サージなどのモジュラー・アナログ・シンセサイザーを用いた音楽/音響作品がひとつのトレンドを形成しているのである。
 しかし、そこはサイン派やホワイトノイズを用いて、リズミックかつ建築的なウルトラ・ミニマル・テクノを作り続けてきた電子音響・グリッチ界の「美しきミニマリスト」、もしくは「世界のミニマル先生」、フランク・ブレットシュナイダーの作品だ。「ツマミとプラグの抜き差しによるグルーヴ」とでもいうべき電子音が自由自在に生成変化を繰り返すのだが、そのフリーなサウンドの中にも、どこかカッチリとしたリズム/デザインを聴き取ることができるのである。とくにシーケンスとノイズを同時に生成させる4曲め“Free Market”にその傾向が随所だ。また、5曲め“Funkstille”や6曲め“Data Mining”などは、エレクトロニカ的なクリッキーなリズムも感じさせるトラックである。
 カオスと形式(=ノイズとリズム)に着目して聴くと、複数の音のパターンがモチーフになって変化していることも聴き取れてくる。その傾向は、1曲め“Pattern Recognition”、8曲め“The Machinery Of Freedom”に特徴的に表れている。いくつもの音のエレメントが反復・変化するモチーフとして展開していくさまが手にとるように(?)わかるだろう。
 そう、このアルバムで、フランク・ブレットシュナイダーが鳴らしている電子音は、インプロヴィゼーションであっても、どこかデザイン的なのだ。たとえば、3曲め“Fehlfunktion”のように極めてノイジーなトラックであっても、そこにデザイン化されたリズム(形式化)を聴取することが可能である。

 前作『スーパー.トリガー』における「80's的なゴージャズなエレクトロとグリッチ・ビートの融合」が2013年~2014年のモードだったすると、本作の情報量豊富なフリー・インプロヴィゼーション的電子ノイズの生成・運動感覚は、紛れもなく2015年のモードだ。もしかすると、現在のわれわれの耳は、電子音楽/音響の中にあるマシニックな形式性を侵食する音響の運動性・肉体性のようなものを求めているのかも知れない。その意味で、まさに「いま」の時代ならではのアナログ・シンセサイザー・アルバムである。現在進行形の電子音楽マニア、全員必聴と断言してしまおう。

 最後に。本作に関係する重要なプロジェクトして、フランク・ブレットシュナイダーがピアース・ワルネッケ((https://piercewarnecke.blogspot.jp/)と共同制作をした同名インスタレーション作品を挙げておこう(ふたりはベルリンで開催されたエレクトロニック・ミュージック・フェスティバル“CTM”でもパフォーマンスを披露したという)。このインスタ作品は、本作を思考する上で重要な補助線を引いてくるはずである。

SINN + FORM // Preview from Pierce Warnecke on Vimeo.


BURGER RECORDS JAPAN OFFICIAL STORE OPEN - ele-king

 BURGER RECORDSのジャパンオフィシャルウェブストアがオープン!! アメリカ本国から取り寄せたカセットテープはもちろん、日本オリジナルプロダクトのアパレル&雑貨を取り揃えております!初回購入者特典もありますのでチェックしてみてください!

JAPAN OFFICIAL STORE
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■ And A BURGER RECORDS STORE OPEN

2月20日(金)からAnd A渋谷店にて、And A BURGER RECORDS STOREがオープン!!

東京都渋谷区神南1-3-4 And A 渋谷店
TEL:03-5428-6720
営業時間:12:00~20:00

And A
https://www.and-a.com

□ about BURGER RECORDS

2009 年 LA のオレンジ・カウンティにて、ザ・メイクアウト・パーティ! (Thee Makeout Party!)というバンドのメンバーであった、リーとショーンによって設立された音楽レーベル兼レコードショップ。
 「ドライブ中にカセットで音楽を聴くのが好きだから」という理由で、カセットテープでの発売を中心に展開している。西海岸を中心に個性的なアーティスト・バンドを多数輩出。
 また、サンローランのクリエイティブ・ディレクターであり、音楽好きとして知られるエディ・スリマンも絶賛。レーベル所属アーティストであるザ・ガーデンズやレックスなどをモデルとして起用。
 さらにこれまでベックやダフト・パンクが登場したサンローラン ミュージック プロジェクト(SAINT LAURENT MUSIC PROJECT)において、バーガー・レコーズ所属のカーティス・ハーディングをフィーチャーするなど、ファッション界でも熱視線が注がれている。他にも、90年代より活躍するパンク・バンド、ザ・マフスが所属。


Vakula - ele-king

 ブライアン・イーノにベースを足せばジ・オーブ、ジョン・ケージにベースを足せばOPN、テリー・ライリーにベースを足せばジェフ・ミルズで、ペリー&キングスレーにベースを足せばジェントル・ピープル。そう、ニュー・ウェイヴにベースを足せばエレクトロクラッシュで、UKガラージにベースを足せばダブステップと、なんでもベースを足せばクラブ・サウンドに早変わりしてしまう(われながらテキトーだなー)。では、ピンク・フロイ ドにベースを足せば……『アルクトゥールスへの旅』である。TJ・ヘルツによるオブジェクトが19世紀の中編小説「フラットランド」にヒントを得れば、こちらは20世紀初頭にコーンウォールへと引きこもったSF作家の代表作を一大音楽絵巻に仕立て上げた。基本的にはシンセサイザーが波打ちつつも、曲によってはホーンが炸裂し、ギターもソロのリードを弾きまくる。風景は次から次へと移り変わる。まさに「旅」である。(1時間29分40秒)

 トーン・ホークやマーク・マッガイアーによるアメリカのクラウトロック・リヴァイヴァルとはやはりどこかが違う。ヨーロッパに特有の淀みがあり、〈デノファリ(Denovali)〉に通じる絶望感も成分としてはしたたかに含まれている。ここまでくるとディープ・ハウスという文脈もさすがに遠のいて、プログレッシヴ・ロックをエレクトロニック・ヴァージョンとして再定義したと捉えるほうがぜんぜん素直だと言える。そういう意味では2000年に再始動したブレインチケットの試みに追従するものとはいえ、全体的な瞑想性の強さでも踏襲している部分は多い。フュージョン的なセンスもまったくといっていいくらい同じ。違いがあるとすれば、それぞれの立場だろうか。ヴァクラはご存知の通り、停戦とは名ばかりの状態が続くウクライナからこの作品を発している。彼が住み、前作のタイトルにも使われたコノトープは軍事的な意味合いの多い場所だという。ヨーロッパで売れなくなった天然ガスを日本に売るため、サハリンと茨城をパイプラインで結ぶという計画がいまも話し合われていると思うと、ウクライナが置かれている立場はまったくの他人事とは行かないだろう。

 前人未踏の地へ突き進んでいく勇気を描いた『アルクトゥールスへの旅』は彼の音楽的なチャレンジ精神をトレースするものであると同時に、真実と虚偽やこの世とあの世を超越しようという哲学の書でもある。本人がそこまで意識しているかどうかはわからないけれど、戦争体験を経た水木しげるが『河童の三平』で同じ問いを投げかけていたことを思うと、彼の目の前で起きていることから人間というものについて何かを考えざる得なかったのだろうという推測はどうしても進んでしまう。そして、そのような思索のなかに彼がハウス世代であること、つまりは、プログレッシヴ・ロックの世代にはない若さやわずかな希望を聴き取れるような気がしてしまう。少なくとも〈デノファリ(Denovali)〉にはもはやこのような足掻きさえ感じられないからである。あるいはフランスのトランペット奏者とメキシコのモダン・ミニマルが組んだ『ビーイング・ヒューマン・ビーイング』である。2回めのコラボレイションとなるトラファズとムルコフのセッションはあまりにも絶望感が強く、アルクトゥールスへと旅立つ前にそのまま座り込んでしまう音楽にしか聴こえない。そして、もちろん、それには説得力がある。

 エリック・トラファズはジャズにクラブ・ミュージックの要素を持ち込もうとした先駆者のひとりである。初期の代表作となった『ベンディング・ニュー・コーナーズ』(1999)からいきなりラップをフィーチャーし、最後まで一定のテンションを保つ演奏内容はなかなか見事だった。その後もアラブ音楽を取り入れたり、トリップ・ホップをイメ-ジしているようなサウンドと、ここまでやってしまうと果たしてジャズ・ファンは聴くのかなというぐらいの逸脱ぶりを見せたものの、個人的にはどうにも締りのない演奏に成り果てていったという印象が拭えない。ムルコフとのジョイント・アルバム『メキシコ』(2008)はそのような低迷を経て彼がたどりついた新機軸であった。ベーシック・チャンネル・ミー ツ・ジョン・ハッセルとでもいえばいいだろうか。スウィングすることを拒否されたようなビートがストイックに構築され、トランペットはどこか凍りついたように悲しみを掻き立てていく。どちらかというとムルコフの世界観にトラファズが色を添えたものに思えた。

 これが6年を経て、もっと複雑な音楽性を表現するものに発展することとなった。リズムは多様性にあふれ、等しく絶望的でありながらも、そこにはさまざまな色合いが認められるような瞬間の連続に成りかわっていったのである。『人間であること』というタイトル=問いはヴァクラとそう遠くにあるものとも思えない。遠くまで行く体力はもうないかもしれないけれど、考える力なら同じかそれ以上だと言いたげでもある。社会が効率を求めれば意味と自由は失われるとマックス・ヴェーバーが予言し、それを回復するのではなく、肯定するところからはじめようといったハーバーマスの言葉を思い出す。

ジャンル的にはまったく異なるものの、『アルクトゥールスへの旅』と『ビーイング・ヒューマン・ビーイング』がどうしても合わせ鏡のように聴こえて仕方がない(ジャケット・デザインが似ていることには、いま、ここまで書いてから気がついた)。悪く言えばヨーロッパ的な観念性は堂々巡りでしかない。しかし、ヨーロッパ的な精神にはそれができることが取り柄だともいえる。ウクライナでまた兵士が4人ほど死んだらしい。 

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