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ele-king presents
THE DODOS Japan Tour 2013
- ele-king

【THE DODOS】

 2006年にメリック・ロング(ヴォーカル ギター)がドードーバードという個人プロジェクトとして活動を開始。その後ローガン・クローバー(ドラム)が参加しドードーズとしてスタート。自主制作でアルバムをリリース、そしてツアーを繰り返し注目を浴びて行きます。 2008年からはFRENCHKISS RECORDSに在籍し、アルバムを三作リリース。特にニーコ・ケースも参加した前作の『No Color, More Life』は、ビルボードにランクインされるなど自身最高のヒットをゲットしました。 そして満を持しての新作『キャリアー』はPOLYVINYLに移籍して間違いなく最高傑作に!彼等の持ち味である確かなテクニックから生まれるパーカッシヴなギター奏法、そしてパワフルなビートは今作でもバリバリ。フォーキーに、パンキッシュに、スリリングに、カラフルに疾走しまくります。そして明らかにこれまで以上に顕著になっているのは、エモーショナルで涙腺直撃のソングライティングではないでしょうか。とんでもなくパワーアップ!王道のインディー・ロック・ファンならヨダレ垂れまくりのメロディーがとてつもなくオンパレードしているのです。 聴いて!そして来て!間違いなく2013年後半は、ここ日本でもドードー鳥が羽ばたきます!!

For Fans of...デス・キャブ・フォー・キューティー、ピンバック、ヴァンパイア・ウィークエンド、モデスト・マウス、スケルトンズ、アニマル・コレクティヴ、プロミス・リング、エリオット・スミス、アメリカン・フットボール etc etc





ライヴとの連動シリーズ、「Beckon You !!」 スタート!!!!
作品を購入→ライヴに行ったら会場でキャッシュ・バックしちゃいます!!


注目の新世代アーティストを中心に作品とライヴを連動させちゃうのが
この「Beckon You !!(来て来て〜おいでおいで〜の意)」シリーズ。
ザ・ドードーズ 『キャリアー』貼付のステッカーを公演当日にお持ち下さい。
その場で500円をキャッシュバック致します。
もちろん前売り券でも当日券でもオッケーです!


ele-king presents
THE DODOS Japan Tour 2013

(チケット発売7/20(土)〜)

10/22(火) 渋谷O-nest (03-3462-4420)
THE DODOS / allon beausoleil
adv ¥3,800 door ¥4,300 (without drink)
open 18:30 start 19:00
チケットぴあ(Pコード:207-760)
ローソンチケット(Lコード:78311)
e+

【allon beausoleil】

 オレゴン州、ポートランド出身のSSW。ギターリストやボーカリストとしてバンド活動を初め、その後ソロ活動へ。Beck, Rickie Lee Jones, The Head and the Heart, Sonic Boom, The Dandy Warholsなどと各国でステージを共にし、その後、ポートランドからニューヨークへ、そして東京へ移住。そして今は、世界を飛び回りライヴを行なっている。ニュー・アルバム 『Prince Charming of Darkness』 では、ポップ、フォーク、エクスペリメンタリズムの間を彷徨い、そして、そのあくなき音の探究者としての旅に終わりはない。






10/23(水) 心斎橋CONPASS (06-6243-1666)
THE DODOS / NOKIES!
adv ¥3,800 door ¥4,300 (without drink)
open 18:30 start 19:00
チケットぴあ(Pコード:207-760)
ローソンチケット(Lコード:56069)
e+

【NOKIES!】

 大阪南堀江にあるFLAKE RECORDS初の日本人契約アーティストとして2011年2月にデビュー。その圧倒的な洋楽感と抜群のメロディ、アレンジセンスは高く評価され、特に多くのアーティストに支持される事に。ライブパフォーマンスも定評があり、FUJI ROCK 2011のROOKIE A GO GO STAGEへの出演や8otto、miila & The Geeksとのイギリスのフェス出演やフランス、パリ含むヨーロッパツアー、世界最大の音楽見本市SXSW出演〜それを皮切りにシカゴ、ニューヨーク、サンフランシスコ、ロサンジェルス、ラスベガスと渡る全米ツアー、みやこ音楽祭では、くるりやLAMA、在日ファンク、KIMONOS、黒猫チェルシー等と並び堂々のメインステージにも抜される。更にはSTYROFOAM、FRENCH FILMS、CASIOKIDS、RAZIKA、DESMOND & THE TUTUSなどの日本ツアーもサポート。2013年にはりくるりが新たに始めたイベントWHOLE LOVE KYOTOのメインメンツに抜擢。引き続き精力的にライブ活動中。

10/25(金) 渋谷O-nest (03-3462-4420)
THE DODOS / ROTH BART BARON
adv ¥3,800 door¥4,300 (without drink)
open 18:30 start 19:00
チケットぴあ(Pコード:207-760)
ローソンチケット(Lコード:78311)
e+

【ROTH BART BARON】

 2008年結成の東京出身ロックバンド。2010年に自主制作による1stEP「ROTH BART BARON」をセルフリリース。ギター、バンジョー、マンドリン、ピアノ、和太鼓、グロッケン、マリンバ、フィドルなど多種多様な楽器を使い、壮大なサウンドスケープと美しいメロディ、剥き出しの感情と生命力に満ちあふれた歌詞が作り出す圧倒的な世界観は日本の音楽シーンだけに留まらず、SoundCloudをはじめとする音楽系SNSサイトから多くの賞賛コメントを受けるなど、海外での評価も高い。2012年12月13日には2年ぶりのNEW EP「化け物山と合唱団」をリリース。SLEEPERS FILMと制作した Music VideoをYouTubeにて公開中。




*各公演のチケット予約は希望公演前日までevent@ele-king.netでも受け付けております。お名前・電話番号・希望枚数をメールにてお知らせください。当日、会場受付にて予約(前売り)料金でのご精算/ご入場とさせていただきます。


主催・制作:ele-king / P-VINE RECORDS
協力:シブヤテレビジョン スペースシャワーネットワーク  
TOTAL INFO:ele-king / P-VINE RECORDS 03-5766-1335
event@ele-king.net
www.ele-king.net

ザ・ドードーズ 『キャリアー』

PCD-20278
定価2,100yen
Release:2013.9.4
解説:佐藤一道(Monchicon!)

Amazon


1. Transformer
2. Substance
3. Confidence
4. Stranger
5. Relief
6. Holidays
7. Family
8. The Current
9. Destroyer
10. Death
11. The Ocean
12. Reaction -Bonus Track-

interview with Airhead & James Blake - ele-king

(1)空気頭登場 (取材:野田努)


Airhead
For Years

R & S Records/ビート

Amazon iTunes

 エアヘッド、空気頭、自らを藤枝静夫の代表作を名乗る23歳のロンドン子、ロブ・マックアンドリューズがジェイムス・ブレイクのバンドのギタリストとして、去る6月上旬、来日したので取材した。彼のデビュー・アルバム『フォー・イヤーズ』がリリースされる直前のことだった。
 エアヘッドは、名前も良いが、音も良い。とくに10インチの「Wait」が僕は好きだ。ジェイムス・ブレイクの旧友だが、ビートの組み方が明らかにヒップホップ寄りで、ソウル・ヴォーカルのエディットも滑らかだ。センスが良いとしか言いようがない。
 
 会ったのは、同じ日のジェイムス・ブレイクの取材の前の時間だった。渋谷でエアヘッドと話してから、青山でジェイムス・ブレイクを取材した。
 僕がもっとも驚いたのは、ジェイムス・ブレイクの背の高さである。僕も180cmと高いほうだが、彼は190はあるぐらいに見える。学生時代はテニスをやっていたそうで、体格もがっちりしていて、どう見てもヒキコモリでもオタクでもないぞ、いかにも育ちが良さそうな、文武両道といった感じ。印象に残った言葉は、エアヘッドを指して、「あいつ、アホだろ」と呟いたブレイクの言葉。ふたりの友情、ふたりの深い関係性が読み取れやしないか。
 とまれ。時間順に行きます。まずは、ロブ・マックアンドリューズ。エアヘッドのインタヴューから。6月5日、よく晴れた正午、渋谷のカフェ。柔和で、謙虚な青年だった。

18歳未満のときも、偽のIDカードを作って、僕はクラブに入り込もうとして......、昔からジェイムス・ブレイクやベンとは友だちだったんですけど、みんなで「クラブ行こうぜ~!」って、偽のIDを作って行ったのに入れてもらえなかったり(笑)。

この後、ジェイムス・ブレイクと会うんですよ。

ロブ:ホント? アハハハハハ。

うちは基本、オンライン・マガジンなんですが、実は紙でも出していて、ほら、2011年のベスト・ワンをジェイムス・ブレイクのアルバムにしたんですよ。

ロブ:イエイエ(笑)、いいね。

じゃ、よろしくお願いします。ギターを弾きはじめたのは?

ロブ:11歳のときからです。いま23歳なので、もう12年ぐらい弾いています。

2010年に〈ブレインマス〉からシングルを出していますが、打ち込みをやる以前、ギタリストとしてはどんな活動を?

ロブ:最初は物真似で、自分で曲も作ってましたね。11歳の頃はロックにハマって、エレクトリック・ギターを弾いてましたが、途中からアコースティック・ギターにハマってカントリーを弾きました。ミシシッピ・ジョン・ハートが大好きになって、ものすごく影響を受けました。15歳になってから打ち込みにハマって、電子音楽を作るようになりました。

電子音楽を作るようになったきっかけは何だったんですか?

ロブ:友人の従兄弟が実験的な音楽を聴いていて、彼を介して知ったんです。それから、15歳のときにアンチコンのクラウデッド、オッド・ノッザムなんかにハマって、自分でも作りたいと思ったんです。自分が持っているパソコンで作れるんだってことも知って。

ああ、なるほど、アンチコンかぁ。あなたの作品を聴いたとき、ビートメイカーだなと思ったんですよね。

ロブ:なははは、アリガト(笑)。

去年、あなたのシングル「Wait」が都内のレコ屋に並んだときも、ヘッズが買ってましたよ。

ロブ:それはとても嬉しいですね。実はその曲は2009年に出来ていたんですね。でも、僕は、作るだけで出すことがうまくないんです(笑)。その曲はずっと放置されていたんですが、いまジェイムス・ブレイクのマネージャーをやっているダンが、「これは早く出したほうが良い」って、動いてくれたんです。彼はいま僕のマネージャーもやっています。

当時のアンチコンはもっともイルなレーベルでしたが、クラウデッドみたいな不気味な音楽のどこに惚れたんですか?

ロブ:やっぱユニークで変わっていますから。クラウデッドのファースト・アルバムなんかはとくにそうだったと思います。1曲のなかに6つぐらいの違う要素があって、繋がらないものが繋がってしまうというか。あの頃のアンチコンやクラウデッドのサンプルは、古いレコードから取られていたので、オーガニックで、ナチュラルな響きがあったと思うんですね。そこが、僕のなかで、カントリー/ブルースから電子音楽への橋渡しになったんだと思います。
 完全な電子音楽......というか、シンセの音を好きになるのは、アンチコンにハマってから数年後のことだったんです。やっぱ若い頃は、シンセの音に抵抗がありました。

生まれと育ちは?

ロブ:ロンドン。

ロンドンのクラブ・シーンとはどうやって繋がるんですか?

ロブ:クラブとはすごく強い結びつきがあります。18歳未満のときも、偽のIDカードを作って、僕はクラブに入り込もうとして......、昔からジェイムス・ブレイクやベンとは友だちだったんですけど、みんなで「クラブ行こうぜ~!」って、偽のIDを作って行ったのに入れてもらえなかったり(笑)。でも、18歳になって晴れてクラブに行けるようになりました。
 僕は18歳からは、リーズという北部の街の大学に進学したので、その頃はロンドンにはいなかったんですけれど、その街にはウエスト・インディアン・コミュニティ・センターがあって、そこで初めてデジタル・ミスティックズやマーラやコーキのショーを見ました。初めてダブステップを聴いたのはそのときです。コミュニティ・センターのサウンドシステムも素晴らしくて、手作りで、ものすごい迫力のある音を出していました。だから、ロンドンのクラブと繋がっていたんではなく、ロンドンのクラブに影響を受けていたと言ったほうが正確ですね。ジェイムスと一緒に〈ヘッスル・オーディオ〉とか、マウント・キンビーとか追いかけて、あと〈プラスティック・ピープル〉にも遊びに行きましたね。いまではジェイムスたちと一緒に〈プラスティック・ピープル〉でイベントをやっているわけですから、面白いモノですね。

ジェイムスとはいつから知り合い?

ロブ:中学校が一緒だったんですね。だから、12年ぐらいの付き合いになります。

当時のふたりにとっての音楽的なヒーローは誰だったんですか?

ロブ:中学のときは別々の楽器やっていたから、お互い共通する音楽的ヒーローはいなかったと思います。ジェイムスはピアニストだったし、アート・テイタムとか好きだった。彼に直接訊いてみないとわからないけど。僕はロックが好きだったので、ジミ・ヘンドリックス、レッド・ツェペリンがヒーローで、それからブルーズが大好きになった。僕とジェイムスの好みが一致するのはダブステップ以降です。17歳、18歳の頃で、ジェイムスはディアンジェロの『ヴードゥー』をよく聴いていましたよ。

名盤ですね。

ロブ:本当にそうですね。

偽のIDを作ってまでしてクラブに行きたかった理由は何なんですか?

ロブ:ロンドンのクラブがすごく盛り上がっていたんです。ジャングルがすごくて、ゴールディーやグルーヴライダーのようなDJがプレイしていました。僕やジェイムスはとにかくそのなかの一部になりたくて......。ロンドンには本当に素晴らしいサウンドシステムもあるし、良いDJがたくさんいる。クラブで遊びたいというよりも、音楽が聴きたいっていう感じでした。音楽のためにクラブに行ってました。

がっつり踊るほうですか?

ロブ:アハハハ......、気分によります。自分のドリンクに何が入っていたかによりますね(笑)。お酒を飲んだくらいなら、まあ、静かに大人しく音楽を聴いていますが、何か別のときは騒ぐこともあります。でも、自分はあんまり踊りがうまくないので、踊らないようにしています(笑)。

ハハハハ。

ロブ:ニューヨークのディープ・スペースというパーティで、フランソワ・ケヴォーキアンのDJを聴いたときは、ちょっとお酒を飲んだだけなのに、ものすごく踊りました(笑)。ジェイムスやベンや僕の彼女と一緒に行ったんですけど、結婚式で酔っぱらったおじさんみたいに、踊ってしまいました。

フランソワの何が良かったんですか?

ロブ:まさに音楽が良かったんです。ディミトリ・フロム・パリもプレイしていました。彼のDJも良かったです。音楽の質とクラブの雰囲気がすごく良かったんです。オーディエンスも、ミーハーな感じではなく、音楽を聴きに来ている感じでした。通っぽい人たちばかりで、良い雰囲気でした。

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自分の名前がジェイムス・ブレイクみたいにキャッチーな名前だったら良かったんですけど......、まあ、何か名義が必要だなって考えていたときに、友だちが彼女に向かって「おまえはエアヘッドだ」って言ったことがあって、エアヘッドというのは、「何も考えていない」、「おばかさん」という意味なんですが、「あ、それもらった」と思って、使っています(笑)。

あなたの世代から見て、ハウス・ミュージックはどこがいいんですか?

ロブ:ハウスはいままた人気が出てきているんです。プロデューサーも、ダブステップ風のトラックよりもハウスっぽいトラックを作っています。ハウスのキックやテンポが踊りやすいからだと思います。ダブステップではひとりで下を向いて踊っている感じが、ハウスだと上を見上げたり、お互い見つめ合ったり、DJを見たり......DJをやっているほうとしてはやり楽しいんです。ハウス・ミュージックは、20年、30年前からあるものなので、僕ら世代がその伝統に新しい解釈を加えることはとても良いことだと思います。僕自身も最近はオマー・Sやムーディーマン、セオ・パリッシュを聴いているので、個人的にもハウスの影響を受けています。

僕は、1991年~1992年のロンドンのレイヴに何回か行って、当時のエネルギーを感じているのですが、あの時代のイギリスは失業者も多かったし、社会的に暗い時代が長く続いて、そうした背景がパーティへのエネルギーにもなっていたようなところがありましたが、現在のダンス・カルチャーにもそうした社会的な背景は関係していると思いますか?

ロブ:僕は、UKのクラブ・カルチャーにはドラッグ・カルチャーが関わっていると思います。91年のUKではエクスタシーが流行っていました。それがあの高まりに繋がったんだと思います。ダブステップにはウィードの影響があったんです。数年前まではクラブのなかで吸えたんですが、法律が変わっていまでは吸えなくなりました。それでダブステップは下火になって、ハウス・ミュージックに変わったんだと思います(笑)。僕は、いまのキッズがフラストレーションを爆発するためにダンスに向かっているとは思っていません。なんて言うか......、90年代とは違う気がします。たとえば、90年代にはフリー・パーティがありました。フライヤーもない、シークレットのパーティです。電話をして場所を訊いていくようなね。

行ってました(笑)。

ロブ:羨ましいです。しかし、政府がバカな法律を作ってしまったお陰で、フリー・パーティが出来なくなりました。8人以上が集まってしまってはダメっていう法律です。

その反対のデモにも行きました(笑)。

ロブ:ハハハハハ。とにかく、そういうレイヴができなくなってしまったことが僕は大きいと思います。昔といまはそこに大きく違います。

ところで、エアヘッド(空気頭)という名義はどこに由来するんですか?

ロブ:自分の名前がジェイムス・ブレイクみたいにキャッチーな名前だったら良かったんですけど......、まあ、何か名義が必要だなって考えていたときに、友だちが彼女に向かって「おまえはエアヘッドだ」って言ったことがあって、エアヘッドというのは、「何も考えていない」、「おばかさん」という意味なんですが、「あ、それもらった」と思って、使っています(笑)。


Airhead
For Years

R & S Records/ビート

Amazon iTunes

ハハハハ。今回のデビュー・アルバム『フォー・イヤーズ』にはどのようなコンセプトがあるのでしょうか?

ロブ:過去4年間作ってきた音楽の集大成という意味です。ただひたすら、僕は音楽を作っていました。アンビエントにハマってアンビエントを作ったこともあります。なので、アンビエントも入っています。ダンス・ミュージックにハマったときはダンス・ミュージックを作りました。そうやって曲を作っていって、1枚のアルバム分できたということです。決まったコンセプトはないんです。

そのアンビエントの曲は"Masami"ですよね。日本人の女の子の名前でしょう?

ロブ:そうかもしれませんね。僕は曲名を考えるのがものすごく下手です(笑)。この曲名は、たまたま友人の家に行ったときに開いてあった本のなかにあった名詞でした。

マサミさんと付き合っていたわけじゃないんですね(笑)。

ロブ:違います(笑)。でも、そう答えたほうが面白かったですよね。

ハハハハ。女性が歌っている曲が2曲ありますね。シンガーについて教えて下さい。

ロブ:ふたりともジェイムス・ブレイクを介して知り合いました。"Callow"で歌っているのは、キャサリンという人です。ジェイムスとは同じ大学でした。彼女は、ジェイムスが前回来日したときに一緒に行っています。

あー、あのときの彼女でしたか。フロントアクトのギター持って歌っていた。

ロブ:そうです。"Autumn"で歌っているのはアンドレアという人で、彼女はメキシコでのショーのサポートをしてくれました。彼女はメキシコに住んでいるので、メールで曲のやりとりをしながら、彼女がロンドンに来たときにスタジオで録音しました。

『フォー・イヤーズ』を出したことで、あなたの方向性にどのような変化があると思いますか? いままでのような、アンダーグラウンドなリリースも続けていきますか? よりポップな方向に行きますか?

ロブ:ポップ路線は考えていません。ダンス路線を考えています。最近はDJをやることが楽しいです。もっとたくさんDJをやりたいです。セットのなかに自分の曲を入れたいと思っています。ようやくダンス・ミュージックを作れるようになったので。

わかりました。どうもありがとうございました。

ロブ:サンキュー。

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(2)ジェイムス・ブレイク登場 (取材:木津毅/写真:Teppei Kishida)

E王
James Blake
Overgrown

ユニバーサル インターナショナル

Amazon iTunes Review

 どうしてひとは、愛を歌わずにはいられないのだろう。
 ジェイムス・ブレイクが"CMYK"から『ジェイムス・ブレイク』、そして『オーヴァーグロウン』へと至った道のりには、ひとりの表現者が愛を歌いはじめる、そのドキュメントを見る思いがする。『オーヴァーグロウン』はもちろん、ファースト以上に彼のトラックに対する感性が研ぎ澄まされたアルバムであり、ハウス、ダブステップ、ヒップホップの多彩なビートを使い分けながらより複雑な音の配合を施した作品である。しかし同時に、前作では多用されていた声にかけられたエフェクトが減り、より生に近い彼自身の声を......その歌を、エモーショナルに響かせることに腐心したレコードだ。それはなぜかと問われれば、僕にはどうしても、彼のなかに愛......それも、はじめて経験する愛が芽生えたことと深く関係しているように感じられる。複雑なトラックをよくコントロールしながら作ることに長けた彼が、愛を歌うことに対しては非常にプリミティヴな動機を抱いたのではないか。
 先の来日公演では、相変わらず地を這うような重々しい迫力を持った低音と、さらに肉感的になった歌唱とのそのどちらもが、けっして彼から切り離せないものとしてそこに立ち現れていた。ジェイムス・ブレイクはいま、デジタル・ミスティックズやブリアルのダブステップにかつて抱いた憧れとジョニ・ミッチェルのような古典的なシンガーソングライターへの思慕とを、自らを媒介にすることによって結びつけようとしている。それは新しい時代の、様式に囚われない新しい形の愛の歌の可能性だ......それも、たしかに彼の感情を解放するものとしての、とてもピュアなラヴ・ソング。

 思っていた以上に長身だったジェイムス・ブレイクは、幼なじみの名前を出した瞬間に顔が綻ぶような、素朴な青年であった。そんな彼がいま、真摯に自らの愛に向き合っている姿は、どうにも胸を打つものだ。
 取材の時間が限られていたため、用意していた最後の質問を訊くことができなかった......「あなたにとっての理想のラヴ・ソングとは?」
 だが、ジェイムス・ブレイクはきっと未来に、美しくそれを歌うことでその問いに答えてくれるだろう。

女性っていうのはユニークな視点を持って音楽に取り組んでいくってところがあると思うんだけど、ただ、いまの音楽業界では残念なことに女性アーティストは注目を浴びるためにどうしてもやらなきゃいけないことがあって......もちろん、そういうことを訊いてるんじゃないってわかってるんだけど(笑)。

野田:ちょうど1ヶ月ほど前にマーラの取材をしたんですけど、じつはあなたとすごく若いときから知り合いで、今度あなたがリミックスしてくれたシングルを出すって言ってましたよ。

ジェイムス:うん、そうなんだ。リミックスをやったんだけど、今後もっとちゃんとした形で何かいっしょに仕事をしたいなと思ってるんだ。じつはスタジオまで行ってちょっといろいろやってみたんだけど、まだ何も形にはなっていなくて。昔のダブ・レコードとかアウトキャストとかを聴いてたりしたんだけど。
 そもそも、こういう音楽をやろうと思うきっかけを作ってくれたのがマーラなんだ。彼はナイスな上に謙虚で、人間としてもとても温かみのあるひとなんだ。またいっしょに仕事したいな、また会いたいなと思いながらも、僕が友だちとも会えないような忙しい状況だから、いつ実現するかわからないんだけど。

野田:そうなんだ。ちなみに、さっきまでエアヘッドにインタヴューしてたんですよ。

ジェイムス:ほんとに? 今日?

野田:ええ、すごくいい話をしてくれましたよ。

ジェイムス:ちゃんとたくさん話してた? 普段はシャイで、インタヴューなんかだとあんまり喋らないタイプなんだよ。

野田:ちゃんと話してましたよー! 中学校時代あなたと同じ学校で、彼がギターであなたがピアノだって聞かせてくれましたよ(笑)。

ジェイムス:あいつはアホなんだよ。

野田&木津:だはははは!

野田:17歳のときいっしょにクラブに行って、IDカード偽装して追い返された話とか(笑)。

ジェイムス:そういう話ならいくらでもあるよ(笑)。

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オートチューンやピッチ・シフトに関しては、メロディ的な要素として使う以外に求められるものはもはやないね。想像力をかき立てるものがそれ以上は何もないから、何か新しい要素が加わらない限りは自分としてはやり尽くしたかな、と。

(笑)じゃあ、アルバムについて話を聞きたいんですけど。『オーヴァーグロウン』は前作よりもさらに、あなたのシンガーソングライターとしての側面が前に出た作品だと感じました。ただそれ以前に、いま思えばその布石のようにしてファイストやジョニ・ミッチェルのカヴァーを作品として発表されてますよね。そこでフィメール・シンガーのラヴ・ソングを選んでいたのはなぜなのでしょうか?

ジェイムス:女性っていうのはユニークな視点を持って音楽に取り組んでいくってところがあると思うんだけど、ただ、いまの音楽業界では残念なことに女性アーティストは注目を浴びるためにどうしてもやらなきゃいけないことがあって......もちろん、そういうことを訊いてるんじゃないってわかってるんだけど(笑)、いまちょっとふとそう思って。でも実際は、シンプルにポイントをついて曲を作るのが上手な女性ミュージシャンが多いと思うんだ。男性にはできないような──もしくは男性がそれをやるためには、意識的にある面を押さえつけないといけないようなところがあると思うんだけど、そうじゃない、女性のそういうユニークな視点が大好きなんだ。
 たとえばジョニ・ミッチェルの曲なんかは本当に的確だし、ファイストのコード使いだってすごく的確だ。ポップなんだけど、他の曲ではできないような的確な音使いで、そこに「タ、タ、タ、ターン」と僕には思いつかないようなメロディが入ってきたりして、すごく上手くまとめてるんだよね。僕もジョニの"ア・ケース・オブ・ユー"なんかはライヴでやってるんだけど、ジョニのほうがもっと端的にピアノを弾いていて、僕はもうちょっとあれこれ装飾をつけつつ弾いてるんだ。とにかく、そういう視点が好きなのかな。女性のラヴ・ソングが好きっていうよりは、彼女たちのあの2曲が好きで、それがなぜかと言うと、こういうことなんだろうな、と。

なるほど。こういう質問をしたのは、僕も多くのひとと同じように、シングルの"CMYK"をはじめて聴いたときにすごく衝撃を受けたんですよ。それで当時は、あなたがシンガーとしての側面にこれほどフォーカスすると思っていなくて。もともと「歌う」っていう行為自体、あなたにとって自然なことだったんでしょうか?

ジェイムス:うん、自然なことだったね。というのは、"CMYK"とかサンプリングを多用した曲は別として、僕は基本的に曲を作るときは歌からはじめることが多くて。そもそも、このアルバムは他のひとのサンプリングをしたくなかったところから始まってるんだよ。それだったら自分のものを作ろう、ということで。クリエイティヴな側面で言っても、他のひとのサンプリングよりも自分の歌のほうが自由を得られるというか。
 あと、いまはサンプリングも多用されすぎていて、新しいことが逆になかなかできなくなってるんだ。僕にとってサンプリングの行為っていうのは、その瞬間を捉えるってことだから、自分が作りたいその瞬間のためのものとして使いたいんだよ。一般的なサンプリングのプロセスっていうのは、もう飽き飽きしちゃってて、何も楽しいと思えるところがないんだよね。アカイのサンプラーでもiPhoneでも、はっきり言ってサンプリングの技術っていうのは10年前とあんまり変わらなくて......速度がちょっと速くなったぐらいだね。だから、サンプリングを使って革新的なことはなかなかできなくなっている。自分が音楽をやっていて、他とは違う新しいことをやるってなると、自分のもので作っていく......それしかないんじゃないかな、と思っているよ。

その、サンプリングに飽き飽きしているなかで、歌??演奏だけじゃなくて、自ら声を出して歌う、って方向に進んだのはどうしてなんでしょう?

ジェイムス:ファーストを作ったときはサンプリングにうんざりしていたわけじゃなくて、そのことにはっと気づいたのはここ最近のことなんだ。同じ作業を3年間もやってるじゃないかって。録音したものを断片的にカットしたりくっつけたりする作業がバカバカしくなっちゃって。ファースト・アルバムのころはまだその作業にワクワクしていたから、その興奮ぶりが伝わる内容にはなってると思うんだけど。わりとそのときの自分のブームっていうのがあるんだけど、すごく熱しやすく冷めやすいタイプで。

ああ、そうなんですか。

ジェイムス:すぐ気が変わるところがあるんだよ。でもいまの自分としては、ヴォーカルをサンプリングして切り貼りした作業を考えただけで、窓から飛び降りたくなるよ。いまだったら、楽器がいろいろあるなかでロブとベンとのバンドで演奏して、その3人のシナジーみたいなものをレコーディングするほうが楽しいかな。

あるいは、あなた自身の声にかけられたピッチ・エフェクトが減ったっていうのも??。

ジェイムス:うん、サンプリングと同じように、自分の声にエフェクトをかけるのも飽きてしまったんだ。世のなかっていうのはテクノロジーが好きで、たとえばiPhoneだってみんなが4Sにだんだん飽きはじめたころに5が出て、するとみんな、わっとそれに飛びつくよね。少ししか違いはないのに、それでも何百万人ってひとが興奮してそれを買ってる。新しいテクノロジーっていうのは新しい可能性を生み出すものだから、僕も「これからどういう音楽ができるんだろう」っていう想いから興奮して、やる気が出てくるところはたしかにある。新しい何かを使うってことは、暗闇のなか手探りで何かを作っていく興奮といっしょなんだ。
 エフェクトに関しては、たとえばリヴァーブだったらまた別の効果があって、特定の空間的なサウンドを生み出すことができる。使い方によっては宇宙からのサウンドみたいにもできる。ただ、オートチューンやピッチ・シフトに関しては、メロディ的な要素として使う以外に求められるものはもはやないね。想像力をかき立てるものがそれ以上は何もないから、何か新しい要素が加わらない限りは自分としてはやり尽くしたかな、と。

では、そうやってバンド・スタイルで、よりストレートにヴォーカルを取るっていう方向に移っていったことと、作品のテーマが「愛」に向かって行ったこととは何か関係はあるんでしょうか。アルバムのテーマは「愛」だとお聞きしていますが。

ジェイムス:まず、愛がテーマになっているという最大の理由は恋に落ちたからなんだ。誰かを愛していなければ、愛についてはなかなか語れないからね。それまでは愛というものは経験したことがなかった。ファースト・アルバムはその、愛のない自分の人生について嘆いていたアルバムだった。だからファーストはすごく悲しげだし、作ったときの自分もぜんぜんハッピーな状態ではなかったし。
 今回のアルバムは......僕たちは遠距離恋愛なんだけど、彼女といっしょにいるときもふたりきりになれるような空間があんまりなかったんだ。だから、いろんなひとといっしょの空間に押し込められているっていう気持ちと、離れているときの心が引き裂かれるほどの寂しさ、その両極端の想いがこのアルバムには入っているんだよ。

なるほど、すごくよくわかります。少ない言葉で歌うエモーショナルなラヴ・ソングが多かったので、ご自身の経験がダイレクトに反映されたのではないかと想像していました。ただ同時に、たとえばあなたが好きなジョニ・ミッチェルであるとか、クラシックなシンガーソングライターたちがやってきたように、「ジェイムス・ブレイクとしてのラヴ・ソング」というものに挑戦したかったところはありましたか?

ジェイムス:うん、それは絶対にそう。歌詞とか曲作りの面ではすごく簡単で、ぱっと思い浮かぶんだけど、そこから構成して曲として完成させていくプロセスのほうが難しい。というのは、やっぱりありきたりなラヴ・ソングにはしたくなかった。地雷がたくさん埋まってる原っぱみたいなものだよ(笑)。安易なトラップにはまらないようにして、オリジナルなものを作っていくのはすごく難しい。自分にとっては新しい試みだったから、いくつか地雷を踏んじゃったと思うんだけど。

そんなことないですよ(笑)。すごくエモーショナルな美しいラヴ・ソング集だと思いました。

ジェイムス:ありがとう(笑)。

Baiana System - ele-king

 ブラジル北東部バイーアのグループ:バイアーナ・システムのファースト・アルバム。彼の地の音楽のファンはもちろん、ロック・ギター好き、(本作のトラックの重要な基礎を成している)レゲエやエレクトロ=ダブの愛好家、プログラミング・ビート、ラップ/トースティング、あるいはバイーアの音楽に色濃い影響を及ぼしているアフリカ音楽に興味を持つ人や、単純にパーカッション好きの人など、様々な種類の耳にとって聴きどころ山盛りで、かつ他ではなかなか味わえない音楽体験ができる1枚だ。

 このグループの音楽性をひとことで説明するなら、バイーアのカーニヴァル・ミュージックのスタイルである〈トリオ・エレトリコ〉を、ライヴ・プレイによって、上述したような様々な音楽要素が渾然とするクラブ・サウンド方面にアップデイトするもの、ということになるだろう。〈トリオ・エレトリコ〉とは、トラックの上にバンドとサウンドシステムを乗せ、演奏を轟かせながらパレイドするカーニヴァル用の"エレクトリファイ"されたバンド形態のことで、その最大の特色が、このバイアーナ・システム・サウンドの要でもある小型エレキ・ギターの〈ギターハ・バイアーナ〉だ。
 この楽器は、その昔ドドーとオズマールという二人組がカーニヴァル用に弦楽器の音を増幅させるために"電化"しようとし、マンドリンをモデルに考案したものだ(サウンドカー上の限られたスペイスで演奏する際の便宜上、小型な楽器を理想としたのではないか?)。そのせいで〈ギターハ・バイアーナ〉は通常のギターよりネックが短い分、音が高く、マンドリン式に調律されるのが特徴だ。

 さらに興味深いことに、その試作品は1940年代の末に作られ、実用化するのは50年代に入ってからなのだが、つまりこの〈トリオ・エレトリコ〉は、ロックン・ロールの時代以前にアンプリファイされたエレキ・ギターを大音量で鳴らしていたのだ。その〈トリオ・エレトリコ〉の様式が時代とともに進化していくなかで、〈ギターハ・バイアーナ〉も進化を遂げ、開発者オズマールの息子が、低音弦を1本足した5本弦ヴァージョンを考案、音のレンジに厚味を持たせた。本作のジャケットは、その5弦のモダンなバイーア式エレキ・ギターとサウンド・システム(そこにはジャマイカ流の"クラブ様式"としてのそれも含意されている)を図案化したものだ。

 様々な音楽の要素を飲み込んでいる(シタールが使われている曲もある)彼らの楽曲に首尾一貫したものを感じ取れるのは、それが曲調にかかわらず、基本的にそのギター・サウンドを芯にして組み立てられているからだ。その〈ギターハ・バイアーナ〉奏者としてバンドの中心にいるホベルチーニョ・バレットは、バイーアのラジオでアフリカ音楽の番組も手掛けているアフリカ音楽通で、とくにザイール(現コンゴ民主共和国)発祥のスクス(リンガラ・ポップ)やルンバ・コンゴレーズ特有の連綿と繋がる繊細できらびやかなギター・プレイの響きを、カーニヴァル・ダンス・ビートの"フレーヴォ"や、あるいは伝統的な"ショーロ"のなかに、それらの源流として強調させている。同時に、その円環状に延々と繋がっていくギター・プレイと、きょうびのループ・シーケンサー製の電子的サウンドとの音感的な類似点を意識してもいるだろう。

 プログラミングされたビートと〈ギターハ・バイアーナ〉のプレイの絡み方のヴァリエイションがこのバンド・サウンドの骨組みを形成し、そこを重くウネる弦ベイスが下支えする。さらにはプラスティック・ヘッドを張った、ソリッドで少々メタリックな高音域の倍音が特徴的な、バイーア・サウンドに欠かせないパーカション:チンバウ(timbau)の音色がエレクトリック・ビートにフィットし、このクラブ・サウンドと生バンド・サウンドとの絶妙な折衷感に寄与している。(ちなみに、バイーア出身の人気パーカッション奏者カルリーニョス・ブラウンがこのチンバウを全面に出したストリート・パーカッション集団チンバラーダ(Timbalada)を結成し、プロデュースして注目を集めたことが知られているが、ホベルチーニョ・バレットは長らくその一員だった。)

 新世代の音楽がクラブ・サウンドとの親和性を高める方向に向かうのは、ご存知のように、ブラジル音楽もご多分に漏れない。一方で、いつの時代もすべての老若男女に開かれているカーニヴァルの文化は、それ自体に、伝統を守り次代へ伝える宿命がある。バイアーナ・システムの、音楽的視野を広げながらの、この伝統と革新のバランスの取り方には、聴き返すごとに瞠目している。アルバムの最後には10曲目"Frevofoguete(フレーヴォの宇宙船)"のブギーニャ・ダブ(ブラジルのダブ・マスター)によるダブ・ミックスが収められているが、これなんかはその最たる例だろう。カーニヴァル・ビート:"フレーヴォ"の未来型を思わせる曲を、さらにダブ処理したものだが、若者はおろか、カーニヴァルに軽く半世紀以上通っている人たちも、ビートとギターをむき出しにするこのラディカルさを前にして、即座に、目尻を緩めて腰を揺らすだろう。そんな風に、世代を越えて同じ"高揚"を共有できるなら本当に素晴らしいことだ。


「Frevofoguete(フレーヴォの宇宙船)」ダブ・ミックス

Jah Jah Revolta

ここが「辺境」だ、ここでとべっ - ele-king

 いまから10年以上前のシアトルで、サン・シティ・ガールズのアラン・ビショップを中心に設立されたレーベル〈サブライム・フリーケンシーズ(Sublime Frequencies)〉は、いまやもっとも先鋭的なワールド・ミュージック・レーベルとしてその名をワールド中に轟かせているというか、ひとくくりに「ワールド」というと語弊があるというか〈サブライム・フリーケンシーズ〉の視点はかつて非西欧圏と位置づけられ、エキゾチシズムと無縁ではなかったワールドが辺境と呼ばれ珍重され、白地図を塗りつぶすように濫費された時代を過ぎても、音自体をあるアングルから聴き取ればそこに意味以上に語るべき音のあることを教えてくれた。耳ざといリスナーは避けて通れない。お世話になった方も多いのではないか。
 〈サブライム・フリーケンシーズ〉というとアラン・ビショップにフォーカスが当たりがちだが、そもそも2002年の設立当時のメンバーはビショップに映像作家のヒシャム・マイェット、それに今回来日するマーク・ジャーギスの3人だった。ジャーギスは作曲家、演奏家、プロデューサーにしてDJ、つまり全方位音楽人であり、レーベル活動を通して、長年にわたる研究成果と、東南・中央アジアなどを旅して得た音楽、映像、フィールド・レコーディングを共有するためのプラットフォームをづくりに携わる制作者でもあるが、ビョークのリミックスで知られるシリアの歌手、オマール・スレイマンを発掘した辣腕(?)A&Rにしてフォーク、ポップスまで視野に入れたオリジナリティあふれるコンパイラーといったほうが通りがいいだろうか。マーク・ジャーギスはまた、ソロ・プロジェクト「Porest」をやっていたりする。1993年から2004年まで活動したベイエリアの実験的なパフォーマンスの集団「Mono Pause」の創立者でもあり、そこから派生した「Neung Phak」では、タイと東南アジアのポップスをデフォルメしたというか擬装したというか、とにかく素っ頓狂なエスノ・ロック~ポップスに踏みこんでいる。

マーク・ジャーギスのDJは彼の膨大なサウンド・ライブラリーからの選りすぐりで、伴走するVJも、東南・中央アジアの映画、テレビ番組、そして独自に撮影された映像から構成するということなので、ワールド・ミュージック・ファンならずともサイケ~オルタナ~クラブ・ミュージック~ドローンのファン、これを読んでいるそこのあなた。みなさんにお楽しみいただけること請け合いですので、ぜひ会場に足をお運びください。(松村正人)

スケジュール

■7/14(日) 静岡 ラジシャン
OPEN START18:30 Adv / Door 2500yen (w/1d)
<DJ>
Mark Gergis
山辺圭司(LOS APSON?)、CITY BOY、ICHIYA、岸野雄一

■7/15(祝) 神戸 旧グッゲンハイム邸
OPEN/START 15:00 Adv / Door 2500yen
<DJ>
Mark Gergis
BACON Crew、キング・ジョー
「お気楽アジア音楽寄港」
[batopaha mar (plantation)+武村篤彦(泊)+山本信記(popo、かきつばた)]
<Talk>
江村幸紀(em records)/岸野雄一
<food>
喫茶ゆすらご

■7/17(水) 熊本 (仮)A-Z LAND
※会場名の(仮)は正式名称の一部です。
OPEN/START 17:00 Door 2500yen(w/1d)
<DJ>
Mark Gergis
岸野雄一、前田TYX$ON、POLYPICAL(ex Saihate)
<LIVE>
オオルタイチ、NONCHELEEE

■7/18(木) 東京 Dommune
OPEN/START 19:00 Door 1000yen
<第1部:Talk>
Mark Gergis
大石始、松山晋也、岸野雄一
<第2部:DJ>
Mark Gergis、L?K?O

■7/19(金) 東京 スーパー・デラックス
OPEN/START 22:30 Adv 2500yen / Door 3000yen (w/1d)
<DJ>
Mark Gergis
SOI48、幻の名盤解放同盟(根本敬、湯浅学、船橋英雄)
MOODMAN、Bing a.k.a Toshio Kajiwara、サラーム海上
<VJ>
SphinkS

■7/20(土) 沖縄 南国の夜
OPEN START20:00 Door 2500yen(w/1d)
<DJ>
Mark Gergis
常盤響、馬場正道、岸野雄一、KengShing、Yu-chang

○来日情報サイト:
https://www.anttkc.com/sf2013/

○Face Book Event Page:
https://www.facebook.com/events/383713831733725/

○お問合わせ:
info@outonedisc.sakura.ne.jp(岸野/渡辺)

 



Ryo Kawahara - ele-king

https://soundcloud.com/ryokawahara

比較的最近リリースされた曲を中心に、フロアでかけているものをセレクトしました。
最近は特にsoul,discoなど旧譜を中心とした現場が多いですが、
今回のチャートはハウスミュージックに的を絞って選んでみました。

<DJスケジュール>
7/14(祝前日)Third Eye @ Organ Bar
https://www.facebook.com/events/476064709155076/

7/25(木)ブロークンビーツ酒場@club Ball
https://www.facebook.com/events/268548589950377/

8/2(金)cheek cheek cheek@club BALL
https://www.facebook.com/events/645449485482849/?fref=ts


1
Jimpster - Hold my Hand - Freerange

2
Claes Rosen - Daydreaming - Local Talk

3
Djeff - Make Me Stronger - Tribe Records

4
Pablo Fierro - Whistle (Atjazz Astro Remix) - Atjazz Record Company

5
Azymuth - 'E Mulher' (Ashley Beedle 'Afrikanz On Marz Voyage Remix) - FAR OUT RECORDINGS

6
Paul Randolph - Soldier - Offering Recordings

7
Blackbelt Andersen - Klapp Og Trans - FULL PUPP

8
Masanori Ikeda - Mu - Flower Records

9
Become One - Toto Chiavetta - Yoruba

10
Urban Sound Lab feat. Selina Campbell - Nothing New - Room Control

 今月の24日、結成20周年を祝する編集盤『ReDiscoVer. Best, Re-recordings and Remixes of Buffalo Daughter』のリリースを控えたバッファロー・ドーター、アルバムのなかでもとくに注目曲のひとつ(というか、最大の注目曲)、KAKATO (環ROY×鎮座DOPENESS) のラップを加えた"New Rock"のセッション風景の動画がアップされました。格好いいですよ。
 なにせスタジオは、エンジニアを担当するzAkのホームスタジオ"ST-ROBO"、ドラマーはZAZEN BOYSのメンバーであり、長年バッファロー・ドーターのライヴ・サポートをつとめている松下敦。どうぞ!

「 KAKATO Freestyle 3 with Buffalo Daughter」

interview with Seiho part.2 - ele-king

part.1から続く
interview with Seiho part.1- テクノ新世紀・立志編

Interviews

レコード聴くのとCD聴くのは、明らかに感覚が違うじゃないですか。それは理解してるんですけど、CDをiTunesに入れて聴くのと、CDをコンポで聴くのと、僕のなかでは違うんですよ。まったくおんなじデータのはずやのに。それに近いです。

セイホー君はガキの頃からネットに馴染んで、ナップスターも経験してている。音楽はカネで買うもんじゃないってことを最初に覚えてしまった世代かもしれないじゃない? それなのにレーベルやって、配信ではなく、CDというモノとして売るってさ......

セイホー:僕がお金を出して買っているものは、さっき言ったような〈12K〉とか、どっちかって言うと美術品として買ってるようなCDが多かったんですよね。それと、TSUTAYAに並んでるシングルCDとは明らかに違うじゃないですか。そこですかね。

ああ、そういう感覚って僕らの世代ではあんまりないけど、たしかにセイホー君ぐらいの世代から見たら、その辺の線引きがはっきりしちゃってるのかもな、って感じがするね。

セイホー:レコード聴くのとCD聴くのは、明らかに感覚が違うじゃないですか。それは理解してるんですけど、CDをiTunesに入れて聴くのと、CDをコンポで聴くのと、僕のなかでは違うんですよ。まったくおんなじデータのはずやのに。それに近いです。
 ほんとに感覚だけの話なんですけど。別にiTunesから出そうが、そのPCが繋がってるスピーカーは同じやし、これが読み取ってるだけなんですけど、それをコンポに入れてスピーカーで聴くのと、なんか違うんですよね。わかんないですけど。それと、パッケージを開けて聴く、その行為も含めて。

レーベルとしてとくに意識してること、作り手として意識してることってありますか?

セイホー:大阪も含め地方都市のイヴェントに行って思うのは、まあそれも対東京になっちゃうんですけど、東京は「チャラい」っていうジャンルでも細分化されてイヴェントがあるんですよ。「ひとりでどうにかせなあかん」ぐらいの感じなんですよね(笑)。僕らはどっちかって言うと、全員集めてどうにかせんとパーティとして完結できないっていうのがあって。だから、4つ打ちのビートをやってる子らも、ジュークやってる子らも、ヒップホップから来てビートやってる子らも、同じ場所に来てお披露目っていうかライヴをせんと、パーティとして成立しないっていうのがひとつです。
 もうひとつは、そんなガチャガチャやってるなかでお客さんが「今日はやっぱりジューク良かったなー」ってなると、ダンス・ミュージックをやってる子のBPMが上がっていくんですよね、やっぱり(笑)。そのなかで、135とかで作ってた子が、155ぐらいまで行ったときのジュークっていうのもまた、新しくて。それで違う進化をしていくというか。更新されていくところが楽しいなと。

PCがここまで普及したこんにちでは、家でユースト観たらいいやってやつも逆に増えてきちゃって。べつにクラブに行かなくてもいいや、っていう人もセイホー君の世代では多いじゃない? 

セイホー:うーんと、ひとつは、ユーストリーム観てて楽しいのはほんまにわかります、っていう。やっぱこう、再生数が上がっていく感じのテンションの上がり方っていうのは、ドミューンができる直前ぐらいにオカダダくん(註:関西拠点の、その界隈で人気のDJ)がクリスマスの日に自宅からぽっと放送したら、すごい数の再生になったんですよ。なんかもう、爆発しちゃって。べつに、なんとわなしにDJしてただけなんですけど。「寂しい夜にひとりでDJします」みたいな感じで。ツイッターが盛り上がってきたときと、ユーストリームができ出した頃やったんで、ドミューンができる前にバーンと再生数が増えて。
 ああいうのがあって、やっぱ面白いなっていうところと、けれども、さっき言ったジュークとかハドソン・モホークのトラックとかをヘッドフォンで聴いても面白くないですよね、みたいな。クラブのウーハーが鳴っているところでしか味わえないもの、僕のなかでは「アトラクション音楽」って呼んでるんですけど。

はははははは。

セイホー:アトラクションっぽい音楽ってやっぱあるんですよね、クラブ・ミュージックでは。

音を体感するっていうね。

セイホー:そうですね。だから3D映画は自宅でもいいけど、USJぐらいの規模になるとやっぱ行きたいな、みたいな。

なるほどね。橋元が観たのはゴールド・パンダのときだよね。

橋元:そうですね。

わりと最近、いろんなところに呼ばれてるでしょ? 〈ロウ・エンド・セオリー〉とか、そのゴールド・パンダ、あるいはソナーであるとか。やっぱ意識してるの? 壁を作らないようにというか、小宇宙化しないようにとか。

セイホー:僕はそうですね。僕はけっこう意識してます。

いまはDJが専門家化しているから、それが意外と難しいんだよね。

セイホー:そうですね。だからさっきの大阪の話で言うと、対応力だけはついてるんですよ。場数は踏んでて。たとえば全然知らんバンドの前座に呼ばれてみたいなときにどうするか、ってさんざん悩んだ挙句、編み出した方法とか(笑)。あと4つ打ちのパーティに呼ばれて、「こんなオシャレなとこで俺どうしたらええねん」みたいなときに編み出した手法とか。っていうので積み上げてきたものがあって、それをフルに生かしてる感じですね、いまは。

あと、なんでそんなにカセットが好きなの?

セイホー:カセット好きなのはさっき言ったのといっしょで、フェティッシュな部分っていうか、CDをコンポで聴くのといっしょで、カセット・ウォークマンで聴く行為そのものが好きで。で、〈リーヴィング・レコーズ〉がやっぱ好きやって、マシュー・デイヴィッドから〈リーヴィング〉のカセットを直接こっちに送ってもらったりしてて、カセットが好きやっただけですね。レーベルを立ち上げたちょうどぐらいのときに、〈リーヴィング〉をずっと聴いてたっていうのがありますね。

〈リーヴィング〉やマシューデイヴィッドって、日本ではストイックに受け止められてるフシがあるからさ。もっとイージーというか快楽的というか、いい意味でテキトーだと思うけど。

セイホー:そうなんですよ。雑多な音出すし、それこそカセットテープとかもチャチいしひずんでたりもするんですけど、でもそれが面白いなっていうか。ほかに〈ノン・プロジェクツ〉っていう、もうちょっとマイナーなレーベルなんですけど、そことかは......うちのマジカル・ミステイクがLA出身ニューヨーク育ち、で、いま日本で仕事してるんですよ。で、彼がアメリカ行ったときにカセットのレーベルからカセット買って来てくれたり。

音はめちゃくちゃデジタルなのに、そういうアナログ愛みたいなものがあったり、いろんなところで重層的に矛盾があるんだね。

セイホー:そうなんですよ! その矛盾をずっと話し合ってるんですけど、結果的によしとしようかってなってるんで。いろいろ話し合ってても、「あれ? さっき言ってた美的感覚とちょっとズレてない?」ってことがよくあるんですよ、僕らのなかで。

矛盾がないものなんてつまらないからね、ほんと。

セイホー:それはその瞬間に立ち会ったときに、どっちがカッコいいかを言えればいいか、ぐらいの(笑)。

(笑)じゃあその辺りも話し合うんだ。

セイホー:話し合いますね。それこそ美的感覚をきっちりしたいって言ってる連中もいるし、でもけっこう雑多な人間が集まってくるんで。

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フィジカルで僕がいちばん大事にしてるのは、アーティストの責任というか。バンドキャンプでデータで3枚4枚出してても、「うわーあれダサいなー」と思ったら消せるんですよ。でも、フィジカルで出しちゃうと残るんですよね。

E王
Seiho
Abstraktsex [Limited Edition]

Day Tripper

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今回のアルバムのアートワーク。あれは外国人の女性?

セイホー:そうです。

アリエル・ピンク(笑)?

セイホー:(笑)でもあのジャケットは、僕のなかで言うタンブラー感というか。タンブラーであれが流れてきたらファボるな、みたいな。いいね! つけるな、みたいな。ちなみにあの人はフィンランドですね。北欧のほうですね。あの子も、PVを撮ろうって決めてスタジオを押さえてから、クラブいろいろ行って、ナンパしたんですよ(笑)。

ナンパして、「いいよ」って?

セイホー:1日だけ空けてもらって。

あのポーズとかも全部決めて?

セイホー:そうです。僕のなかでは"アイ・フィール・レイヴ"の映像も、断片的なGIF画像の積み重ねのなかのエモーションみたいな部分があって。短く印象的なものが積み重なって1本になってるみたいな。プラス、僕らのジャンルはユーチューブとかでああいう女性の写真とかとくっつけられてアップされまくるんですよ。

へえー。そうなの?

セイホー:僕もこの現象が何なのかよくわかんないんですけど、音源をエロい女の子の画像と合わせてアップされるんですよ。有名なサイトやったら〈マジェスティック〉とか、ユーチューブのサイトで。フォトグラファーの紹介でもあると思うんですよ、あの場所は。向こうのフォトグラファーとモデルといまの音楽っていうのを3つ同時に紹介する場所としてあって。だからまったく知らん女性のちょっとエロい写真と、〈マジェスティック〉のロゴと、自分らの曲がアップされてるんですよ。まあ、そこのサイトはフリー・ダウンロードの曲に限るんですけど。〈マジェスティック〉を運営してるやつらとも、いまはもう知り合いになって、フェイスブックとかでコミュニケーション取ったりするんですけど。向こうではそれはそれで一種のメディアになってるんですよね。〈マジェスティック〉さえ聴いといたら最近の音楽聴けるみたいな感じで、みんな〈マジェスティック〉から聴いてますね。

へえー。全然知らなかったよ。

セイホー:で、海外のアーティストはけっこう〈マジェスティック〉に嫌悪感があるらしくて、「〈マジェスティック〉に発表せんといてほしい」って感じなんですけど、僕は敢えて面白がってああいう感じのジャケットにしてるんですよ。だからタイトルの感じも、見てもらったらわかるんですけどユーチューブの動画まんまなんですよね。

デジタルな世界とリアルな世界を両立させるっていう。

セイホー:くっつけてるというか。とにかく、エロいっていうのが僕のなかでは重要ですね。

セイホー君は大雑把に言えばオタク世代だからさ、エロと言えばアニメじゃない? 日本のアニメって、あれがフランスで受けているのはエロだからだと思うし。

セイホー:そうなんですよ! そこは僕もあんまりわからない。僕はやっぱり、生身の女性が好きなんで。

しかもロリータだしな。

セイホー:そうなんですよ。わかんないですね、そこは。

橋元からはどう?

橋元:わたしが面白いなと思ったのは、お父さんとの関係が大きいのかなって。いまごろ音楽のモチーフで父が出てくることってあんまりないっていうか。

セイホー:でも僕のなかでも、おかんもデカいですよ。服は全部おかんのお下がりなんですよ。

えっ、それも!?

セイホー:これ、おかんのお下がりです。

お母さんすごくいいセンスしてるね! 

セイホー:最近、アルバムを見てたらおかんがこれ着てるの見つけて、「これどうなってるねん」みたいな(笑)。で、「押入れのなかにあるはずや」ってなって、実家帰って押入れのなかから探したら出てきたっていう(笑)。ここに僕を抱っこしたときのヨダレがついてるんですよね(笑)。

そうなんだ! 

セイホー:だからいまだにおかんとふたりで服買いに行きます、僕は。

橋元:なるほど、おかんですか。共有できる服をいっしょに買いにいくとか、母と息子の関係としてはわりと新しいですよね。一種のフェティシズムとして先ほど生身の肉体の女性の話も出てきましたが、そういうおかんからの連続性ってあるんですかね?

セイホー:そうですね。僕のアルバムの1曲目でランス(RHEIMS)って入ってるんですけど、それはベティーナ・ランスのことで。ベティーナ・ランスのマドンナとかを撮ってる写真って、その両面を持ってるんですよね。エロいんですけど、男だけがわかるエロじゃないエロさみたいな。そこにけっこうこだわって作りましたね。

ダンス・ミュージックはそこ重要だよね。セイホー君が赤ちゃんだった頃に比べて、情報社会っていうのはさらにカオティックになってるじゃない? 

セイホー:そうですね。さっき、CDをコンポで聴く話をしたじゃないですか。あれが僕のなかでいちばんやりたいことで。データのなかでももっともフィジカルに近いデータっていうものが僕らのなかであるんですよね。「もの」に近いデータっていうのがあるはずなんですよ(笑)。この感覚は、僕らのなかで話してても誰にも通じないんですけど、iTunesで買ったなかでも大事じゃないデータと大事なデータってあるじゃないですか。でも、おんなじはずなんですけど。でも、それが好きな曲か嫌いな曲かってことだけじゃなくて、フィジカルに近いデータっていうのがあるんじゃないかって僕のなかでは思ってて。

なるほどねー。

セイホー:で、その感覚っていうのを突き詰めたことをしたいなっていうのがいちばんにあります、いまは。難しいんですけどね(笑)。

セイホー君が「レイヴ」っていう言葉を使うときの「レイヴ」っていうのがさ、ダンスの「レイヴ」だけじゃなく、こんにちの情報社会のカオスのなかにおける「レイヴ」って感じだと思うんだよね。

セイホー:それはあります。

セカンド・サマー・オブ・ラヴみたいなああいう60年代ぽいものではなくて。カオスなんだけど、カオスとして受け入れたなかでのある種の祝祭空間みたいなものだから、すごくアッパーになってるのかなって。

セイホー:サンプリングができた頃からそういうような感覚があったのかもしれないですけど、たとえば808のカウベルが鳴るだけで、「はい、80年代っぽい」とか、1音のマイクロ・サンプリングのなかに文脈を感じられるっていうのをみんな持ってて。たとえば「このキックやったら、はい、誰々で」、「このキックやったら○○年代ぽくって」、みたいなものが、すごく複合的に頭のなかで処理できるスピードの勝負みたいなものが――。

すごいところで勝負してるんですね。

セイホー:それと、文脈をどう併せ持つか、というか。

インターネットと、セイホー君や〈デイ・トリッパー・レコード〉がどのようにして付き合っていくか、どんな考えがある?

セイホー:〈デイ・トリッパー〉は、この形態を続けようと思うんですよ。で、もしも変わるとしても、データ配信10本、20本して、10枚組のボックスめちゃくちゃ高いのを出すみたいなものになったりするのかな、って思ってるんですけど。まあでも、〈デイ・トリッパー〉は〈デイ・トリッパー〉で単純に場所なだけなんで。〈デイ・トリッパー〉としては、まあ〈ファクトリー・レコード〉みたいになりたいな、と。装丁がいまみても、やっぱ豪華やし。あんだけカネ使ったフィジカル出せる余裕っていうか......まあそれで潰れるんですけど(笑)。でもそれがおもろい、やっぱあれぐらいやりたいなっていう。
 フィジカルで僕がいちばん大事にしてるのは、アーティストの責任というか。バンドキャンプでデータで3枚4枚出してても、「うわーあれダサいなー」と思ったら消せるんですよ。でも、フィジカルで出しちゃうと残るんですよね。そこのケジメを踏むか踏まんかっていうので、ミュージシャンが進むか進まないかっていうのが僕のなかではけっこう大きくあって。同世代よりも下の世代にそれを踏ませたいっていうか。だからフィジカル・リリースに関しては、対お客さんに関してはどうでもいいことなんですけど、僕のなかではけっこう重要なことで。やっぱそこを踏んだアーティストと踏んでないアーティストは、僕のなかではライヴの質が違うような感じがするんですよ。

いまは、下手したら現在の音楽よりも過去の音楽のほうが売れる時代だと言われていて、新しい音楽をやってる立場としてはさ、いま起きてることにもうちょっと注目してほしいという気持ちはない? 

セイホー:僕のなかのさっきのバランスの話で言うと、僕らが直面してる問題として、1回きりの音楽が大量にあるんですよ。僕らの仲間で言うと。ツイッターで流れてきてサウンドクラウドで聴いて、しかも30秒ぐらいだけ聴いて、一生聴かれない音楽が山ほどあるわけじゃないですか。それと繰り返し聴けるアルバムが両方あったときに、僕らはどっちがいいか決められないんですよ。「明らかにこっちやろ」っていうのはないし、1回きりの音楽も、スリリングで魅力的なんですよ。一生出会えへんけど、ツイッターで流れてきたから聴いた音楽のスリリングさとか、アーティストもそれが誰かの耳に1回きりしか入らんことを前提に作ったスリリングなものへの魅力と、通して聴く作品の魅力と両方あるから、そこは何とも言えないですよね。

音楽が売れなくなった理由として、非合法のフリーダウンロードがあるからだって意見があるわけだけど、それに関してはどう思う?

セイホー:それはまったく関係ないですね、僕のなかでは。フリーダウンロードして良かったら、買うっていう(笑)。

俺も、そう思う。

セイホー:そうですよね。そこはあんま関係ないっていうのと、あと作り手も多くなってるし、聴き手も減ってはないと思うんですよ。だから分散されただけで、危機的な状況じゃ全然ないと思う。だからノイズとかやってる人らからしたら、状況はずっと変わらないんかな、みたいな。

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誰と会っても音楽の話しかしないですからね。まあ僕がかもしれないですけど。立ち呑み屋行って、まあ僕も1杯2杯なら飲むんで、5、600円だけ使って、飲んで出て、あとはファミレスでずっとコーラで音楽の話みたいな。

トーフビーツみたいな人はさ、無料配信した曲が後からパッケージして売れているわけで、ポップスのあり方を更新していると思うんだけど、セイホー君はそういうことは考えない? メインストリームに自分がどう絡んでいくかっていう。

セイホー:僕が相方とやってるシュガーズ・キャンペーン(Sugar's Campaign)は、けっこうメインストリームのバンドなんですよ。そっちはメインストリームに行きたいなと思うんですけど。

バンド?

セイホー:バンドっていうよりは......でもふたりともビート・メイカーなんですけど、ドラムとギターなんですよ。

ニューウェイヴ・ユニット?

セイホー:ふたりとも久保田利伸と山下達郎が好きなんで、そういう感じっす。AORみたいなバンドをやってて、そっちはスキマスイッチになりたいなと(笑)。

(笑)おおー。それは聴かせてほしかったね。

セイホー:ユーチューブで"ネトカノ"っていう曲を1曲だけアップしてます。アヴェック・アヴェックとふたりでやってます。

〈デイ・トリッパー〉としては、音楽的なコンセプトを曲げないまま、もうちょっと大多数にアピールするってことはすごく意識してる?

セイホー:意識はしてます。繰り返しになるけどバランスの話で言うと、僕のなかで譲れる部分は100パーセント譲りたいんですよ。音を作ってる上で譲れない部分はあるじゃないですか、絶対。それもあるけれども、どうでもいい部分もけっこうあって(笑)、たとえばツイッターでの発言とかも管理するレーベルは管理するらしいんですけど、そんなんはどうでもよくて。広がったらいいんちゃう、ぐらいの感じで。譲れる部分を100パーセント譲ることで、どうにかメインストリームに行けへんかな、みたいな。

ははははははは! やっぱ音楽性で行かないと、そこは(笑)。

セイホー:まあ音楽性の部分でも、譲れる部分はあって。「や、これ4つ打ちに変えてください」って言われたときに、その音楽が本質的に4つ打ちじゃないって思ったら譲れないですけど、これ4つ打ちでもいいなと思ったら、そこは譲るみたいな。たぶん音楽のなかで譲れる部分と譲れない部分があって、譲れる部分を多くの人に聴いてもらうっていう目標は確実にあります。自分の音楽性を変えないって目標よりも、多くの人に聴いてもらいたいってほうが優先されます。僕のなかでは。

じゃあ自分たちの上の世代の文化で、これは違和感があるっていうものはある?

セイホー:うわー、これはいっぱいありそうやなー。

はははは。遠慮しないで言っていいよ。

セイホー:でも、いちばん僕のなかで大きかったのはドラッグですね。さっき言ったアルコールお話もそうなんですけど、ものすごくクリーンなんですよね、僕らのまわりって。

橋元と同じだね!

橋元:いやー、ほんとに共感します。

ははははは! いま活動しているレーベルで、すごく気になるレーベルっていうと何になる?

セイホー:〈ラッキー・ミー〉ですかね。レーベルがやってることというより、〈ラッキー・ミー〉に関してはやっぱキャラですね。キャラが全員立ってるっていう。

ああー、そうだよね。

セイホー:あとはディプロの〈マッド・ディセント〉。そのふたつは憧れですね。

音楽以外では遊ばない?

セイホー:誰と会っても音楽の話しかしないですからね。まあ僕がかもしれないですけど。立ち呑み屋行って、まあ僕も1杯2杯なら飲むんで、5、600円だけ使って、飲んで出て、あとはファミレスでずっとコーラで音楽の話みたいな。

いや、素晴らしいですね。それは、うちらの世代も同じですよ。お金ないし、そんなに酒も飲めないしね、若い頃って。友だちと音楽の話してるのがいちばん楽しいもんね。

セイホー:たぶん僕らのなかでは、遊びのフィールドそのものが拡張されてて、「インスタグラム」のおもしろ写真とか、ツイッターのおもしろワードとかがそこに置き換わってるのかもしれないです。より面白い写真撮ってきたもん勝ちのフィールドで、世界を相手に戦うみたいな(笑)。

Day Tripper Records Discography

文:Redcompass
コンピレーション企画"FOGPAK"主宰。 魔術とおばけをキーワードとした選曲で、DJにはiPadを使用する。フリーフォークからはじまり、アブストラクト・ヒップホップやIDMなどを経由、そしてチルウェイヴの海に漕ぎ出す。 その後の消息は不明。曲の買いすぎで瀕死になることもしばしば。 甘いもの全般とコーラが大好き。健康診断は苦手。
https://fogpak.bandcamp.com/ 

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Seiho - MERCURY (DTR-001)
Seihoの第一作目のアルバムであり、〈Day Tripper Records〉の第一弾のリリースでもある本作は、まさに関西のもうひとつの「水星」ともいえよう。マーキュリーという名前の元となったメルクリウスという神は、商業や旅人の守り神であり、まさに「デイトリッパー」の門出に相応しいアルバム名である。収録曲には全体を通して"濡れた"空気感があり、鍾乳洞や湖面などの水辺を連想させる。内側にたたずむ山羊のアートワークも象徴的で、"No Space... No Time..."には今の作風にも通じるものを感じる。

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mfp - Mindful Beats Vol.2 (DTR-002)
前作『Mindful Beats Vol.1』は〈OILWORKS〉より、Ichiro_とのスプリットとして発売されたが、今作のVol.2は〈Day Tripper Records〉からのリリースとなった。サンプリングを駆使した多面鏡のようなきらびやかなビーツが印象的だ。かすれたテープのようなシンセに存在感のあるベースが蛇のようにうごめき、複雑な動きのドラムがそれを刻み、脳をほどよく刺激してくれる。

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And Vice Versa - E.Tender (DTR-003)
一概にどのようなジャンルといえばいいのか難しいが、エレクトロニック寄りのBibioといった印象だ。瞬間瞬間で放たれるマイクログルーブが心地良く、一発一発のキックと後を引いていくベースラインが、水平線上に浮き上がる波のうねりのように視界に現れる。低音の圧や処理が都市のような整然さを持つのに対して、メロディを構成するサンプルにはアコースティックギターや巻き戻したような声が使われており、それらが不思議と調和しているのがなんとも面白く、魅力的に感じられる。たとえるなら、終電の地下鉄の中で故郷の星空を思い出す時のような。

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Leggysalad - Verda Planedeto (DTR-004)
第四弾のリリースとなった「緑の惑星」という名前をもつこのアルバムは、fhánaとしての活動でも知られるkevin mitsunagaによるソロプロジェクト、Leggysaladの作品だ。〈Day Tripper Records〉からのこれまでのリリースの中で、最も強く「昼」を意識させるアルバムである。ギター、ドラム、ヴォーカル、使われているありとあらゆる音とその結びつきが、太陽に照らされた新緑のような爽やかな心地良さを描き出している。metomeとLASTorderによる特典リミックスも素晴らしい。

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Magical Mistakes - Everything Uncertain (DTR-005)
海外から日本に移り住み、大阪のエレクトロニックシーンに立つErik Luebsによるソロ・プロジェクト。ポスト・ロックの影響下にある生音を用いた独特のビートミュージックを奏でる。メロディの音色には「哀愁」のようなものがあり、それは昔のRPGの海沿いの村のような空気を感じさせる。ジャケット光るキノコの灯台だが、パッケージを開くと内側には日没(あるいは日の出)のアートワークが姿を表す。それを踏まえて考えると、輝く盤面がまるで太陽のようにもみえ、まわる1日、そして過ぎていく日々の時間を意識させてくれる。

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Ogiyy - Duality (DTR-006)
第六弾のリリースとなるこのアルバムは、ヒップホップの影響を受けた良質なシティービーツだ。本作においてもっとも注目すべきトラックは2曲目のYadosu Kono Toki (feat. Nadsroic)だろう。NadsroicはHudson Mohawkeにも曲提供を受けている女性ラッパーだが、実は日本に板敷もあるそうだ。街を遠目にながめる川を月のゆりかごがゆっくりとしたBPMで流れていく、その川はやがて海へと繋がりどこか遠くの岸辺にたどり着き、やがて誰かの手に渡る。果てなき旅路への一歩を表す作品だ。

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DEATH FLAMINGO into the Memai - fictional pop (DTR-007)
まず断りを入れさせてもらうと、実はこのアルバムには本人たちによる曲解説があるので、ぜひネットの荒野を探していただきたい。ここでは私が感じたことを書かせていただく。ブロークンなビートにありとあらゆるジャンルから引っ張ってきた要素を絡みつかせており、ピンボールの針という針に片っぱしから色とりどりの紐を巻きつけて遊んでいるような音楽だ。普通の遊び方に飽きた人が、色々と工夫して自分なりのやり方を見つけるような、そういう面白さを感じる。この緻密なアートワークも自作というこだわりである。

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Madegg - Kiko (DTR-009)
彼の音楽が語られるとき、その年齢の若さが引き合いに出されることも多いが、彼が何歳であるかなど関係なく、この作品は本当に素晴らしいと思える。インディー・ロック、フリーク・フォーク、ローファイなどといった音の質感のもっとも良いところを"参考"にして構成されており、サンプリングではなく、音という文字を作るところからはじめ、曲という文を書き連ね、それを綴った本がこのアルバムだ。本作にはFour Tetの影響も感じられるが、私には既にそれを超えているように感じる。青は藍よりいでて藍より青しという言葉があるが、まさにその通りであると。

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Seiho - ABSTRAKTSEX (DTR-01-)
そして、今回リリースされたSeihoの2枚目のアルバム、"ABSTRAKTSEX"は、これまで彼が聴いてきた音楽の道標であり、さらにそれらを吸収して構築した"これから"でもある。同時に、彼が率いるDay Tripper Recordsに所属する全てのアーティストのエッセンスが組み込まれているようにも感じる。特に、4曲目の"Diamond Cloth"には同レーベルからカセットをリリースしているEadomnnの気配がある。このアルバムには「これがDAY TRIPPER RECORDSだ!」という彼からの強いメッセージがあるのではないだろうか。内側のアートワークに書きこまれた"「ヴァーチャル・リアリティと柔らかな肌」という"文面には、彼がこのレーベルを設立した存在意義の全てを象徴している。(そして、この内側の文面は他のリリースと異なり、ネット上では閲覧することができない! まさに、手に取り開封して初めて出会うことのできる体験である!!)そうこれは、リアルとネットを繋ぐ、まさに「アブストラクト・セックス」なのである。

SGROOVE SMOOVE (SPECTA / FLOWER RECORDS) - ele-king

DJスケジュール
7月5日(金) URABANITE @ 頭バー
7月13日(土),音音(NEON) @ CREAM (熊本)
7月20日(土),NOUVEAU @ CLUB BALL
FACEBOOK
https://www.facebook.com/suguru.miyazaki.9

7月に聞きたい雑多な大人HOUSE10曲


1
The Secret Life Of Us - Feat Donna Gardier & Diane Charlemagne(Director's Cut Signature MIx) - The Sunburst Band

2
My Moody Life(Original Mix) - Kerri Chandler - Suss

3
Fantom Finger - Masanori Ikeda - Flower Records

4
Warm(Original Mix) - Loaded Dice - Defected

5
Choice(Original Full Version) - Specta - Flower Records

6
The Ride(Original Mix) - Lovebirds - Knee Deep Recordings

7
Sugar(Joey Negro Mix) - Roy Ayers - Rapster Records

8
Your Body(Louie Vega EOL Mix) - Josh Milan - Honeycomb Music

9
Talia Feat Stering Ensemble(Main Mix) - Sterling Ensemble,Aaron Ross - Restless Soul Music House

10
Love Love Love(Main12) - Those Guys - Basement Boys Records

DJ Yogurt (Upset Recordings) - ele-king

2013年前半に自分がクラブなどで頻繁にDJ PlayしたTechnoやTech House系の12inchレコード収録曲を10曲選びました。ダンスフロアを熱くした記憶が生々しい曲ばかり。毎週レコード店に行き、計100枚前後の新譜を数時間かけて聴き、その中から選んで購入しています。

HP : https://www.djyogurt.com/
Twitter : https://twitter.com/YOGURTFROMUPSET
Facebook : https://www.facebook.com/djyogurtofficial

DJ Schedule
7/5(Fri.) @中目黒・Solfa
7/6(Sat.) @福島・会津Birdland
7/14(Sun.) @渋谷・AMRAX
7/16(Tue.) @腰越海岸・KURA
7/19(Fri.) @渋谷・SECO
7/27(Sat.) @名古屋・VIO
7/28(Sun.) @岡崎・Ragslow

8/9(Fri.) @原宿・Bonobo
8/10(Sat.) @渋谷・AMRAX
8/13(Mon.) @千葉・中滝アートヴィレッジ
8/16(Fri.) @吉祥寺・Cheeky
8/17(Sat.) @青山・Oath
8/23(Fri.) @沖縄・コザ・音洞
8/24(Sat.) @沖縄・那覇・Loveball
8/31(Sat.) @山梨・野外・Sense Of Wonder

9/6(Fri.) @徳島・Barチャラパルタ
9/7(Sat.) @高知
9/14(Fri.) @松本・りんご音楽祭
9/22(Sun.) @長野・東御市・湯ノ丸高原スキー場
9/28(Sat.) @江の島
9/29(Sun.) @渋谷・カフェアプレミディ

2013/06


1
Par Grindvik - Biome - Stockholm:Limited
https://www.youtube.com/watch?v=RLFhA_i5uL8

2
Casbah 73 - Ain't No Sunshine (Casbah 73 Rework) - KAT
https://soundcloud.com/kat-records/casbah-73-edits-low-bit

3
Ben Sims - Love and Hurt (Gary Beck Remix) - Hardgroove

4
Yotam Avni - A Song For Danny (Orlando Voorn Remix) - Soul Research
https://youtu.be/E61YKdJzOw0

5
Sycorax - The Pond - New Jersey
https://youtu.be/JV8PBO1_HQw

6
Teersom - Orb - Keys of Life
https://youtu.be/IM-Q5IaLs0Y

7
Cab Drivers - Beatnight 77 - Cab Drivers

8
Mathy K. & The Funky Punch - Ohh. K! (Live In New York) - 2DIY
https://youtu.be/5sAX2o4i7xg

9
Italoboyz feat. Blind Minded - Sti Drumsy - Superfiction
https://youtu.be/5zvzc1v5dKc

10
YO&KO - Power To The People(126Bpm No Break Version) - Yo&Ko

interview with Savages - ele-king

目を覚ましたとき、男の顔が見えた
誰だかしらないけど、その人には目がなかった
彼の存在は心地の悪いものだった
彼の存在は、なんだか心地が悪かった
"ハズバンズ"


Savages
Silence Yourself

Matador/ホステス

Review Amazon iTunes

 取材した人に、「どんな話が盛り上がった?」と探りを入れたところ、「とにかくジョイ・ディヴィジョンについて訊いちゃダメ」と言われたが、さきほどgoogleに日本語で「サヴェージズ」と入れたら、「ジョイ・ディヴィジョンと比較される」という枕詞がだーーーーーと出てきた。
 サヴェージズに関しては、このreviewを読んで下さい。『サイレンス・ユアセルフ』が今年上半期のベストな1枚なのは間違いないし、以下の取材でも話題に出ている"ハズバンズ"は、最高のパンク・ソングの1曲。
 この勇ましい熱が日本にどこまで伝播するか楽しみだ。答えてくれたのはジェニー・ベス、バンドのヴォーカリストである。

年上の女性が年下の女性を支配しようとしているのよね。それが見ててとても印象的でね。そして"シャット・アップ"っていう曲でも新しい世代の誕生のことにういて歌っていたわけ。それは若い世代が知らず知らずいろんなことから制限されているっていうアイディアが埋め込まれているの。

サヴェージズはどのようにはじまったんですか? みなさんそれ以前から活動していますよね。

ジェニー・べス(JB):そうよ。このバンドを組む前からみんなミュージシャンだったの。私はジョニー・ホスタイルとジョン・アンド・ジェンっていうバンドをやっていたし、ジェマ(サヴェージズのギタリスト)もその頃一緒にプレイしてくれてた。ジェマとアイセ(ベース)はその前から一緒にバンドを組んでいたことがあったの。みんなロンドンでそれぞれのプロジェクトをやっていたってこと。ジェマはまたアイセとバンドをしたいと思っていて、サヴェージズのコンセプトを持っていたの。そこに私が入って、フェイ(ドラム)を見つけたの。すごく自然な感じだったわ。

音楽にのめり込んだ経緯について教えて下さい。最初に夢中になった音楽、バンドをやるきっかけになったようなこととか、音楽に何を感じて、見出して自分でも表現しようと思ったのかなど。

JB:私が真剣に音楽を作り始めたのはジョニー・ホスタイルに会ってから。だから7、8年前かな。その前はあまりシリアスには音楽を作っていなかったの。ジョン・アンド・ジェンをやりはじめていろいろ学んでいったんだと思う。本当にゼロから積み上げていったわ。ロンドンに引っ越して、良いライヴもクソみたいなライヴもやって、アルバムを2枚リリースしたのが私にとってとても貴重な経験になったの。

サヴェージズというバンド名は、ウィリアム・ゴールディングの小説『蝿の王』(Lord of the Flies)に出てくる蛮族(Savage)取ったと聞きました。アイロニカルで、ディストピックなネーミングを選んだのは何故でしょう?

JB:その本だけじゃなく、色んな文学から影響されたんだと思う。バンド名はジェマが思いついたの。あの頃彼女はJG・バラードやフィリップ・ K ・ディックのディストピック(暗黒郷的)なサイ・ファイ小説を読んでいたの。そこで『蝿の王』や、それ以外のさまざまな文学と出会ったんだと思うわ。彼女が求めていた意味合いは、人間はみんな進化を経ても、野蛮な面をいまだ持ち続けているということ。それはふとした瞬間に露になるもの──そういったアイディアを伝えていきかったの。サヴェージズのサウンドが生まれる前に、もう名前とそのコンセプトは生み出されていたわ。

女性だけでバンドを組むことは、サヴェージズにとって重要なコンセプトですか?

JB:もともとそういうアイディアがあったわけじゃなくてね。ガールズ・バンドを組もう、と言ってたわけじゃないの。ジェマははじめ、男のヴォーカルが頭にあったの。でも私がアイサとジェマと曲を書きはじめてから、女性ドラマーでバンド構成を完成させようと決めたんだ。

サウンド面でどんなところに気を遣っているのでしょう? 

JB:正しくは、「集中している」よ。えーと、次の質問。

アンディ・ストットやブラッケスト・エヴァー・ブラックには共感がありますか? "Dead Nature"のような曲からは似た感覚を感じたので。

JB:聴いたことないわ。聴いてみたいわ! その曲はスタジオにつるしてあったギターで書いた曲で、その様子は動画にも収めてあるの。けっこう面白いわよ。だからスタジオにつるしてあるギターがいろんなエフェクトやループをしててね。そしてメンバーがそれぞれ入ってきて、いろんな叩き方をしたりしてね。だから死んだ動物がスタジオにつるされていて、それが変な音を生み出しているイメージが湧いてきたの。だから"デッド・ネイチャー"って名付けたの。

デビュー曲の"Flying To Berlin"はベルリンのどんなことについて歌っているのですか?

JB:それは飛行機でベルリンへ向かっていたとき書いた曲なの。飛ぶことに対しての恐怖、死に対しての恐怖、そういったことについてかな。もし飛行機に乗っているとき何かあったら、即死するわ。最後に思うことは何?その瞬間何を思う? ベルリンに向かっていた時、そんなことを考えていた。ベルリンではもう何回か演奏していて、とても魅力的な場所だと思っているの。観客も最高だし、いつもプレイしにいくのが楽しみなの。

アルバムの冒頭の「How old are you?」という言葉が実に印象的ですが、この言葉からはじめた理由を教えて下さい。

JB:それはジョン・カサヴェテスが監督だした映画、『オープニング・ナイト』から引用したものなの。もともとジョニー・ホスタイルが考え付いたもので、ぴったりだったのね。ジョン・カサベテスには多大なる影響を受けているの。彼の作品はもちろんのこと、彼がハリウッドの端っこでインディペンデントに働き続ける意志を持っていたのはとても尊敬するわ。彼の自由奔放な取り組み方、そして彼の映画がとても意味深いものであることはそれが真実だから。どうでもいいことを言って、くだらないものを作っていないのよ。
 このシーンは特にいいの。年上の女性と年下の女性とのあいだの会話中のもので、年上の女性が年下の女性を支配しようとしているのよね。それが見ててとても印象的でね。そして"シャット・アップ"っていう曲でも新しい世代の誕生のことにういて歌っていたわけ。それは若い世代が知らず知らずいろんなことから制限されているっていうアイディアが埋め込まれているの。そこに繋がるのよね。だから彼女は"How old are you?(あなたはいくつ?)"と尋ねてるの。

『サイレンス・ユアセルフ』という題名が興味深いのですが、なぜ「Silence」という言葉が出てきたのでしょう。

JB:映画からとったセリフなの。タイトルの意味が知りたかったら、アルバムの冒頭にあるイントロダクションを読むことをおすすめするわ。そこに全部記されてるの。

日本の現在を言い当てているような、「街は女々しく可愛い愛でいっぱい(city's full of sissy pretty love)」という言葉は何を指しているんでしょう? 

JB:あまりはっきりとした説明はあげたくないの。個人の思いを持って聴いて欲しいし、そうすることが素敵だと思うから。だけど言うとすれば、自分のことを知ろうとせず、何が自分に合ってるか、自分が何に対して喜びを感じるか、自然に自分がそう感じられるものは何か、そしてそれらをちゃんと選べているか。とくに若い人はそれがわかっていない気がして、残念だわ。愛は簡単じゃないっていうことは残念なこと。

"No Face"で歌われているのは、インターネット社会にへの苛立ちでしょう?

JB:全然関係ないわ。だけどそのアイディアは好きよ。そういう意味合いは含んでいないけど、興味深いと思うわ(笑)。

"Husbands"のような曲を歌うと、やはり女性は喜ぶのでしょうか?

JB:そんなことないわ! 女性に限らずみんなに聴いてもらいたい! ロスで演奏したときに、ゲイのカップルふたりが前列にいて、"Husbands" のコーラスを顔を合わせながら一緒に歌っていて、キスしはじめたの。その瞬間気づいたの。彼らにはこの曲は意味があるものだってね。だって彼らはお互いの"Husband"なんだもの。だからとくに誰かにあてた曲じゃないし、私たちの曲はどれもとくに性別ごとにあてられてるものじゃない。それに意味を感じないから。それは違うでしょ(笑)。

同世代のバンドで共感しているバンドやシンガーがいたら、教えて下さい。

JB:ジョニー・ホスタイルが私たちの7月の米ツアーのサポート・アクトよ。あとは私たちのアルバムのギターを担当してくれたデューク・ガーウッド。彼はとても面白いアヴァンギャルド・ブルース・ミュージシャン。あとは日本のバンド、Bo-Ningen。私たち一緒に曲を書いたの。できれば日本で7月か、年の後半に披露しようと思うわ。曲名は"Words To The Blind"で、ドラマ―ふたり、ギター3人、ベースふたり、そしてヴォーカルふたりで演奏する予定よ。ダダイストのアイディアに基づいているもので、同時に語られる詩とバンド同士の戦いについて書いたの。私たちを成長させてくれた曲だったから、とても面白かったわ。

セックス・ピストルズでいちばん好きな曲はなんですか?

JB:セックス・ピストルズが好きかって? けっこうな歳よね? わからないわ。実はつい最近ジョン・ライドンの自伝を読んで、それは興味深いと思ったけどね。

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