「Ord」と一致するもの

ALEX FROM TOKYO (Tokyo Black Star, world famous NYC) - ele-king

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9/21 @nublu (NYC)
9/27 Better on Foot @ Red Maple (Baltimore)
10/11-10/22 ヨーロッパ・ツアー
10/30-11/26 日本ツアー

September 2012 indian summer in NYC ecclectic top 10


1
Adrian Sherwood-Survival & resistance LP [On U-Sound]
この夏からずっと家でループで聴いてる素晴らしいダブ・アルバムです!

2
Lindstrom-Ra-ako-st (smalltown supersound)
Lindstromの新アルバムからの久々のダンス・フロアー・キラー!

3
Bing Ji Ling & Alex from Tokyo-Not my day [unreleased]
7月の日本ツアーからずっとプレイしているNYCで一緒に制作したTommy Guerreroバンドの一員でもあるNYC在住のミュージシャンBing Ji Lingとのコラボ作です。

4
Junior Boys- I guess you never been loney (Moody remix) [white label]
Junior BoysとMoodymanによる最強コンビによる不思議でたまらないディ-プな世界です!

5
Hot Chip-How do you do (Todd Terje remix) [domino]
勢いが止まらないTodd Terjeによるまたもやのユーロ・クラブ・アンスムです!

6
Bobby Womack-Love is gonna lift you up (Julio Bashmore remix) [XL]
伝説のソウル・シンガーBobby Womackの黒いヴォーカルをブリストルの話題のUK nu houseの新星Julio Bashmoreがモダンでエレクトロニックにアップリフトしたダンスフロアー・キラーです!

7
Kaoru Inoue-Groundrhythm (The Backwoods remix) [ene records]
日本の野外パーティを思い出してくれる大好きな日本人クリエーターの2人がお届けする最高に気持いいオリエンタルでトリーミーな空間ハウスです!

8
Mitchbal & Larry Williams-Jack the house (Frankie Knuckles remix) [still music]
あのシカゴ・ハウスの名曲のFrankie Knucklesによる幻の未発表リミックスが何と再発として12"カット! これぞHouse Musicです!!

9
Ry & Frank Wiedeman-Howling (Innervisions)
AmeのFrankとLA在住の作曲家&歌手Ryによる今っぽい非常に個性的であるフォーキでロック色の暖かいエレクトロニック・ソウル・ハウス・アンセムです! この間FrankとAmsterdamのクラブTROUWとプレイした時にFrankがライヴのラストで演奏した時にとても盛り上がって鳥肌が立ちました! 次のInnervisionsの新作は何とIan Pooley「Compurhythm」です。

10
Michael Kiwanuka - Tell me a tale (Polydor)
話題のロンドンの若手新世代天才ギタリストーMichael Kiwanukaによる素晴らしい曲です! まさにロンドンを思わせる傑作で、ここ最近の新譜で一番心に来たライヴ演奏曲です。昨日のNYCでの初公演のライヴもとても素晴らしかったです。Jimi Hendrixの"Waterfalls"のカヴァーも感動的でした!

Chart JET SET 2012.09.18 - ele-king

Shop Chart


1

Pacific Horizons - Club Meds / Fata Morgana (Pacific Wizard Foundation)
International Feelと並びニュー・バレアリック・シーンのトップ・レーベルとして成長を続けるセルフ・レーベル"Pacific Wizard Foundation"からファン待望の新作第6弾が到着!!

2

Mungolian Jetset - Mungodelics (Calentito)
奇才、Mungolian Jetsetの強力2ndアルバムが到着!独特のサイケデリックな感覚と抜群のメロディー・センスが光る全9曲を収録。格が違います。

3

Xx - Coexist - Deluxe Edition (Young Turks)
世界的大ヒットとなり、10年代のUkインディの流れを決定付けた1st.から早くも3年。さらに深化を遂げた見事な第2作が完成しました!!

4

Les sins - Fetch / Taken (Jiaolong)
天才、Toro Y Moiが別名義で展開するシンセ・ダンス・プロジェクトのセカンド・シングル!!

5

Hot Chip - How Do You Do? (Domino)
最新アルバム『In Our Heads』収録曲を、Joe Goddard、Todd Terje、Mickey Moonlightらがリミックスした12インチ2枚組!!

6

Holy Other - Held (Tri Angle)
スクリューの手法と最新鋭Ukベースを交配させたUs名門Tri Angleからの『With U』で時代を塗り替えてみせたUkの超新星Holy Other。遂に待望の1st.アルバムを完成です!!

7

Joe - Mb / Studio Power On (Hemlock)
ジャズ断片を継ぎ接ぎしたような孤高のUkベース"Claptrap"でシーンに衝撃を与えたJoe、やはり壮絶な才能でした...。ライヒ x Swindle x Four Tetな!?ぶっちぎりの2トラックスを完成です!!

8

Being Borings - Esprit (Crue-l)
全てのダンス・ミュージック・ラヴァーに捧げる、音楽が創り出す、アートの最高峰というのに相応しい10曲を収録した、瀧見憲司と神田朋樹によるBeing Boringsのデビュー・アルバム。

9

Poldoore / Blue In Green - Shrooms / Masquerade-Night Watch (Cold Busted)
Dj Vitamin Dが主宰するコロラドはデンバーのインディー・レーベル=Cold Bustedから、夏の終わりにマッチするダブルサイダーがリリースされました! 限定プレス、ダウンロード・カード付。

10

Prince Fatty - Versus The Drunken Gambler (Mr Bongo)
Hollie Cookが歌うダンクラ"And The Beat Goes On"カヴァーがキラー!Ukレゲエ・シーンの重要人物Prince Fattyの待望となる新作!!今回もクロスオーバーな支持を得そうな会心の仕上がりです!!

Liz Christine - ele-king

 簡単に地図を描いてみよう。ライブラリー・ミュージック・レコードは、もともとは放送局が番組で使用するためのBGMとして作られたものだが、それは1980年代にレア・グルーヴの一種として再発見され、同時にモンド/ストレンジなる別称によって蒐集家のアイテムのひとつとなった。それは今日、一種のアンビエント・ミュージック、プライヴェートなBGMないしはラウンジーなトリップ・ミュージックとして再々解釈され、復刻されている。
 スフィアン・スティーヴンスのレーベルが手がけている「Library Catalog Music Series」はそのひとつの例だが、この手のものはほかにもいろいろある。その傍流には、テクノ・プロデューサーのアンディ・ヴォーテルが経営に加わるロンドンの〈Finders Keepers〉のような、超ナードなレア音源の復刻(それがB級であろうとレアであることが重要)を販売するレーベルもある。
 こうしたモンド/ストレンジな感性がワールド・ミュージックとして展開すると......〈サブライム・フリーケンシーズ〉のような東南アジアの歌謡曲の編集盤へと、アーティなサンプリング・ミュージックとして展開するとピープル・ライク・アスのようになる。ハウスのビートを加えれば初期のジ・オーブ、そして最近では、ネットで見つけたホントどうでもいいようなネタをループさせるとヴェイパーウェイヴになるのだろう。

 リオデジャネイロで暮らすリズ・クリスティーンは、街のレコード店で集めたさまざまなレコード(サントラ、ラウンジ、効果音、ムード歌謡などなど)のコレクションをカット・アップして、なんとも奇妙で、美しく、そして愛らしい音楽を作り上げた。それが彼女のデビュー・アルバム『スウィート・メロウ・キャット』だ。
 古いレコード盤のパチパチ音、針飛び、そこに刻まれた音楽のサンプリング、ルーピング、電子ノイズ、そして加工、ミキシング......手法的にはミュージック・コクレート/サウンド・コラージュで、ザ・ケアテイカーグレアム・ラムキンやなんかと、つまりザ・ビートルズの"レヴォリューション・ナンバー9"やザ・レジデンツの『サード・ライヒン・ロール』やなんかとも同じで、いまさら珍しいものでもなんでもないが、ここには月並なベッドルーム・ミュージック以上の魅力──音を聴くことのみずみずしい楽しさがある。太古の人類が風や木の音を面白がったように、リズ・クリスティーンは名もない音の記録=レコードの溝から鳴る音に新鮮に反応している。彼女とターンテーブルに載せられたレコードとのあいだには、ロマンティックな関係がある......と思う。
 空想的なこの音楽はある意味シュールだが、日々の営みの悦びを表現しているに違いない。題名に「猫」とあるのは彼女の家に住んでいる4匹の猫もこの作品に参加しているからだ。音の合間から、絶妙なタイミングで「にゃーにゃー」と声が聴こえてくる。犬の声や鳥のさえずりも聴こえる。これもアイデアとしては特別なものでもなんでもないが、とにかくまあ、『スウィート・メロウ・キャット』は嬉しい発見の連続のように時間が流れる。生き生きとしていて、いわゆるジョワ・ド・ヴィーヴルを有する音楽。視聴はこちら→https://soundcloud.com/flaurecords/liz-christine-sweet-mellow-cat
 
 リズ・クリスティーンは、2008年にベルリンの〈モニカ・エンタープライズ〉(三田格が持っているすべてのレコードにサインをもらったという、元マラリア!なる女性ポスト・パンク・バンドのメンバーが運営する)からリリースされているコンピレーション『4ウイメン・ノー・クライ vol.3』(ele-king vol.6参照)に、ジュリア・ホルターとともに参加している。本作をリリースしている〈flau〉は、自らも作品を発表しているausが主宰する東京のレーベルで、今年は女性アーティストのCuushe、エレクトロニカの新星Madeggなど、基本ドリーミーなエレクトロニック・ミュージックで、質の高い作品をリリースしている。

 いよいよ来週末の土曜日(祝日・秋分の日)9/22の開催が迫ってきました!!! 日本科学未来館、GALLERY360°、原美術館、新潟・ビュー福島潟、YCCヨコハマ創造都市センターといった独自の雰囲気と圧倒的な存在感をもった環境で、近年精力的に公演を行っている稀代の音楽家マエストロ、ヤン富田が、恵比寿へ移転して8周年を迎えるリキッドルームで、満を持して初となる大型ライヴハウスでのコンサートを行います。最高音響といわれるあのリキッドルームの空間で果たしてどんな体験ができるのか? そのパフォーマンスのひとつひとつが新作ともいえる、その体験はきっと忘れられない夜に、そして皆さんの今後の音楽生活への新たな道しるべとなることでしょう。
 最先端の前衛音楽から誰もが口ずさめるポップ・ソングまでを包括する音楽家にして、日本初のスティール・ドラム奏者、日本で最初のヒップホップのプロデューサー、また自身の音楽の研究機関、オーディオ・サイエンス・ラボラトリーを主宰し、さまざまな角度と視点で、全方位の音楽と科学の研究をおこなっている世界でも稀な音楽家であり、音楽探検家であるヤン富田の現在と過去と未来を繋ぐであろう記念すべきこの日をお見逃し無く。世代を超えてひとりでも多くの人たちに、このまたとない機会を是非体験していただけたらと願っております。(コンピューマ)

 未体験の方は、まずはここからどうぞ! オーディオ・サイエンス・ラボラトリーからの予告編的なDr.Yann's Bionic Musicのお蔵出し映像の登場です!!!

https://www.liquidroom.net/schedule/20120922/11331/

未知なる知覚の扉を開け放つヤン富田。そのミラクルな刺激に溢れた至福の時。

 この20年余り、機会があればこの人の音楽に耳を傾けようとしてきた。電子音楽家、プロデューサー、スティール・ドラム奏者という肩書きだけでは収まりきらない音楽の探究者として、いまではヤン富田は私の中でひとつのジャンル、いや、深い森の奥へ誘うジャングルとなっている。
 最初に触れたのはWATER MELON GROUP だったと記憶するが、いとうせいこう『MESS/AGE』に衝撃を受け、1992年の初のソロ・アルバム『ミュージック・フォー・アストロ・エイジ』以降、他の音楽では決して得られないミラクルと刺激に夢中になった。主に20世紀後半のポップ・ミュージックを聴いて育ち、それがルーティンになりつつあった頃、ヤンさんの音楽はそれとは違う扉を開けてくれたのだと思う。まだどこかに聴いたことがない素晴らしい音楽があるのではないか。あるとしたら、それはどんな音楽なのか。そんな夢見がちな好奇心からヤンさんに近づいていった身ではあるが、はたして類を見ない面白さで未知なる知覚を刺激され、時に洒脱なユーモアに笑い、時に至福の音の洪水に涙した。主宰するオーディオ・サイエンス・ラボラトリーのテーマである「音楽による意識の拡大」が成されたかどうかは不明なれど、新しい音楽の楽しみ方と視座を注入されたのは間違いない。
 20世紀型の音楽産業が終焉を迎えつつあるいま、「悲観するのは簡単じゃん」というヤンさんの言葉に私は眩しいくらいの光を見る。ライヴという生命の輝く現場でその好運に授かりたいと思う。 (佐野郷子/ Do The Monkey)

▼ヤン富田
最先端の前衛音楽から誰もが口ずさめるポップ・ソングまでを包括する希代の音楽家。音楽業界を中心に絶大なるフリークス(熱烈な支持者)を国内外に有する。音楽の研究機関、オーディオ・サイエンス・ラボラトリー (A.S.L.) を主宰する。近年では、日本科学未来館/1F シンボルゾーン ( お台場)、原美術館/ 中庭( 品川)、潟博物館/ 展望ホール ( 新潟) 等、特別な空間に於いて「ヤン富田コンサート」が開催された。近作に2011年3月発表のアート作品集「YANN TOMITA A.S.L. SPACE AGENCY」( 写真集、エッセイ、ライブ・ドキュメンタリーCDx2 からなる書籍、宇宙服のパジャマ、T- シャツ、キャップ、トランク・ケース、以上 TOKYO CULTUART by BEAMS) がある。また2011年より A.S.L.主催にて「音楽による意識の拡大」をテーマとした研究発表会「アシッド・テスト」のシリーズを開講する。

▼公演概要
公演名:LIQUIDROOM 8TH ANNIVERSARY WITH AUDIO SCIENCE LABORATORY PRESENTS
YANN TOMITA CONCERT
出演:ヤン富田
日時:2012年9月22日(土曜日/秋分の日)
開場/開演:17:00 / 18:00 *17:30~The Sounds of Audio Science Lab.
会場:リキッドルーム

前売券(8月5日(日)発売) :5,000円[税込・1ドリンク代(500円)別途]
当日券:6,000円[税込・1ドリンク代(500円)別途]
* オールスタンディング/整理番号順のご入場になります。

前売券取り扱い:チケットぴあ[Pコード 176-227]、ローソンチケット[Lコード 74822]、イープラス、オトノマド、BEAMS RECORDS、bonjour records Daikanyama、DISK UNION(新宿本館/新宿クラブミュージックショップ/渋谷クラブミュージックショップ/渋谷中古センター/高田馬場店/池袋店/お茶の水駅前店/下北沢店/吉祥寺店/町田店/横浜関内店/横浜西口店/津田沼店/千葉店/柏店/北浦和店/中野店/立川店)、GALLERY 360°、JET SET、Lighthouse Records、LOS APSON?、TOWER RECORDS SHIBUYA(1F)、windbell、リキッドルーム
問い合わせ先:リキッドルーム 03-5464-0800 https://www.liquidroom.net

Holy Other - ele-king

自己憐憫さえも愛らしい砂糖菓子へ 文:三田 格

E王 Holy Other
Held

Tri Angle

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 キリスト教社会におけるホーリー=聖なる存在は、唯一神というぐらいで、アザー=もうひとつの存在はありえない......し、他の多くを示唆するような修飾表現もないということは多神教をイメージさせるものでもないし......。タイトル曲とともにシングル・カットが予定されている「ラヴ・サム1」のように暗く、激しい感情が渦巻いている曲を聴いていると、安直に思い浮かぶのは、ツァラトゥストラが開祖だとされるゾロアスター教のような善悪二元論の悪(=好戦的なダエーワ)のことで、仮定の上に立って話を進めていくと、ゾロアスター教というのはイラン高原の北東部を起源とする宗教であり、イスラム教に蹴散らされてきた過去もあったりするため、背後からそれを狙い撃ちしているような不穏さを嗅ぎ取ることもできなくはない。実際、彼(女?)のデビュー・シングル『ウイ・オーヴァー(=全員、終了)』は明らかにイラン高原をヴィジュアルに使用していて(スコットランドのような標高ではない)、その佇まいはノイズのレコードにも等しい。曲も何かマントラを唱えているようだし(カップリングは『ウィズ・U』に採録された「ユア・ラヴ」)。

 とはいえ、フードを被ったままライヴをやり、いまだに実名を明かさないことに宗教的な背景が潜んでいるわけではないだろう。ネットを介したインタヴューはけっこう受けているようだし、〈トライ・アングル〉というレーベルそのものがいわば宗教コレクティヴと化している側面もあるだろうし(〈トライ・アングル〉のリリースにはKKKをイメージさせるものもあったりして、僕にはとうていわからないけれど、倉本諒によればそれは単にパロディとして使われているだけということもあるらしい。こういうセンスを正確に把握することはとても難しい)。

 いずれにしろホーリー・アザーというユニット名が正しくウィッチ・ハウスのイメージを踏襲するものであることは間違いない。『ヘルド(=開催)』で追求されている価値観は非キリスト教的なイメージに救いを求め、リヴァーブの深さや重いベースによって(仮想の)共同体意識を強くすること。それはつまり、『ジーザス・キャンプ』であらわになったキリスト教右翼がアメリカ人口の3分の1(=約8000万人)に達したといわれるゼロ年代前半のアメリカで否応もなく隆盛を誇ったドゥーム・メタルがここへきてモーション・シックネスメデリン・マーキーのような優しいドローンに変化したことと並行して起きた現象ともいえ、ドローンが継承されるのではなく、下部構造をダンス・ミュージックに置き換えたことでいわばドゥーム・ハウスとして成立したものがウィッチ・ハウスと呼ばれるようになったと解してもいいのではないだろうか。アレイスタ・クローリーの小説がイサドラ・ダンカンの描写から始まったように、希薄な身体性によって欺かれた世紀末の闇が再びダンス・カルチャーを侵食し出したのである(ガイ・リッチーが『シャーロック・ホームズ』をスチーム・パンクとして再生させたことも記号的には符号が合う)。

 そして、ドゥーム・メタルにはなかった徹底的な甘ったるさがホーリー・アザーのサウンドをエソテリックな秘境へと導いていく(ジェイムズ・ブレイクハウ・トゥ・ドレス・ウェルがレイディオヘッドなら、ホーリー・アザーやココ・ブライスはアラブ・ストラップだと言い換えてもいい)。捉えどころのないメランコリーのなかに、それを楽しむ甘美さが入り混じり、自己憐憫さえも愛らしい砂糖菓子へと変えていく。どこにもトゲらしきものはない。落ちていたのは1本の髪の毛。いくらでも自分のなかに逃げ込むことができる。人生には時としてこんな魔法が必要だろう。チルウェイヴというのがダフト・パンクとレイディヘッドの合体にしか思えなくなってきた昨今は、とくに(ああ、またしてもポップの魔法が解けていく......)。


文:三田 格

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ゴーストリー・テクノの美しい結実 文:竹内 正太郎

E王 Holy Other
Held

Tri Angle

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 たとえば、世界の絶景やディズニーランドよりも、打ち捨てられた名もなき廃墟に、非日常としての美しさを見出すこと。人ごみそのものの賑やかさよりも、人の気配がごっそり失われた空間の沈黙にこそ、強く惹かれるような感性。そういったゴシック的な(ヨーロッパ的な)、ある種の怪奇趣味は、現在のアンダーグラウンド・ミュージックの世界において、(欧米の批評でよく使われる)「ゴーストリー(ghostly)」という傾向のなかにリヴァイヴァルしているのかもしれない。穿った見方をすれば、裏表なく、前向きで、典型的な余暇を楽しむ、互いに互いが「ふつうの人間」であることを牽制的に確認し合うような、Facebook型ヒューマニズムの裏側にしまい込まれてしまったものを、それらは召還しようとしているようでもある。当たり前の話、世間の表面において規制されたものは、より多義的に、より抽象的に、より地下的になって発展する。

 そう、〈トライ・アングル〉が送り出すホーリー・アザーのファースト・フルレンス、『ヘルド』は、廃墟に住む幽霊のための新たなるR&Bだ。重々しいベース・ドローン、空間を包むシンセ・アンビエンス、そこに割り込むグリッチ・ノイズ。ワン・フレーズのみ採取されたヴォーカル・サンプルは、ピッチを変えられ、エフェクトされ、短周期で何度もペーストされ、キックの轟きは現れては消え、消えては現れ、アブストラクトな高揚を効果的に援助している。言葉遊びのようで嫌になるが、ポスト・ダブステップというタームにあえて偏執するならば、ウィッチ・ハウスないしはゴシック・アンビエントの領域から登場したホーリー・アザーは、それをある種の臨界点と認めた上で、それでも『ジェイムス・ブレイク』(2011)以外の歌のあり方、あるいはビート・プロダクションとの共存の手段、その可能性を突き詰めているように思える......。

 鍵となるのは、やはりゴーストリーと形容するほかない、そのヴォーカル・プロダクションである。『ヘルド』は、『ジェイムス・ブレイク』を疑ってみることからはじまり、展開している。ここにはメロディを伴った人間の声が溢れているが、それが歌であることはほとんどない。歌は徹底的に断片化され、声は溢れてはただ消えていく。それでも、比較的ヴォイス・サンプルが強調されるアルバム後半部には、息をのむような美しさがある。電子ピアノがきいた"イン・ディファレンス"のダーク・トリップ、シューゲイズ的な感性でノイズとの戯れを見せる"パスト・テンション"のディープ・サイケ、そして表題曲"ヘルド"の後半、まったく別の曲へとミックスされていくような展開の先に、ピアノとキックが清らかな世界に強く脈打っている。スモークを焚いたベッドルームで、カーテンの隙間に射すひとすじの光が揺らめいて見るような......本当に美しい音楽だ。

 「芸術の進歩に対して大きな貢献をしている、なんて全然思わないよ。本当にパーソナルなものをただ作ることの方が、よほど挑戦的なことなんだ。」――1年前のインタヴューとは言え、『ファクト』に対するこうした回答は、どこか危うくも思える。が、現在、多くのパーソナルな音楽表現が、活動名としてのソロ・ユニットとしてなされ、内容的にもヴィジュアル的にも高度に抽象化ないしアンダーグラウンド化せざるを得ない状況からは、彼が感じている(のであろう)現代特有の息苦しさを推察できるのも事実だ。もっと言うなら、インターネットの登場によって自由であることを支援されたはずの個人が、相互監視的にクラウド化されることをむしろ望んでいる、昨今の倒錯した情勢に対する彼なりの対抗措置のようですらある。それは筆者にとっても、これを読むあなたにとっても、他人事ではないはずである。BBCは、すでにこの音楽のなかにもヒット・ポテンシャルの片鱗を認め、「マイケル・ジャクソンを18bpmにスローダウンさせたような、もしくはR.Kellyを地獄に突き落としたような音に聴こえる」などとはやし立てているが、そうしたポテンシャルの有無を、本人は気にとめないだろう。ウィッチ・ハウスという、よく言えば最新のインディ・ダンス、悪く言えば細分化時代のフェティシズムとして登場した〈トライ・アングル〉のホープはいまや、UKアンダーグラウンドの冷え冷えとした態度を引き継いでいる。『ジェイムス・ブレイク』の歌がトラウマティズムの剥き出しの表出だったとすれば、『ヘルド』はむしろ暗黒の世界の不明瞭さを好んで迎え入れている。ジェームズ・ブレイク、ザ・ウィークンド、もしくはハウ・トゥ・ドレス・ウェルよりは、ローレル・ヘイローに近いとする意見もあるだろうか。2012年は本作を明確に記憶するだろう。ゴーストリー・テクノの美しい結実、それは暗黒との背徳的な戯れである。


文:竹内 正太郎

vol.39:ジュリア・ホルター in N.Y. - ele-king

 LAのジュリア・ホルターがNYでショーをおこなった。
 最初にショーの知らせを聞いたときは、シガーロスのオープニングとのことだったので、シガー・ロスとジュリア・ホルターなんて素敵な組み合わせとぬか喜びしたのだが、この日程はウエスト・コーストのみで、NYはハンドレッド・ウォーターズ、サイレント・ドレープ・ランナーズというバンドが対バンだった。その週には『ニューヨーカー・マガジン』が、今週のナイトライフ欄に「彼女の浮遊感漂う歌を」と素敵なドローイングを掲載した

 ショーの2、3日前には、新しいヴィデオ"Goddess Eyes"が公開されてる

 期待が高まる、レイバー・ディのロング・ウィークエンドの金曜日の夜、バワリー・ボールルームは、たくさんの人で溢れていた。ふだんよく行く、ショーのオーディエンスとは違い、パーク・スロープやクイーンズ、アッパー・イーストサイドなどに住んでいそうな、インテリで、読書が趣味のタイプが多いように感じる。男の子やゲイも多そうだ。

 ステージ部屋に行くと、オープニングのハンドレッド・ウォーターズがプレイ中。クラリネットやホーンを使って、低音ビート震えるようなヴォーカルが特徴のアート色の強いバンドで、最近スクリレックスのレーベル〈OWSLA〉と契約したばかり。ジュリア・ホルターとはツアーメイトだ。
 地下のバーで、〈RVNG INTL〉のマットに会う。ジュリアナ・バーウィックと一緒に来ていたので、彼女も掲載されている『エレキング・ブック』を渡す。
 ジュリアナ・バーウィックはブルックリン在住。音楽の印象と違い、とても気さくで親近感が沸いた。〈RVNG INTL〉のマットは、著者が以前コンタクトから出していたコンピレーションCDに参加してくれていて(vol.16 ノースイースト)、何度か会っていることも発覚。インディ・ミュージックの世界は狭いのだ。

 ジュリア・ホルターは、スパンコールのミニスカート(木星柄)、黒の外腕部分が広く開いたディテールの凝ったカットソーで登場、にっこりと笑って挨拶する。オープニングは"Our Sorrows"。
 彼女はとても美しい女性で、ステージに立つだけでも華がある。編成は、彼女がキーボードと歌。クラシカルなチェロ・プレイヤーとコーラスも務めるジャジーなドラマーのトリオ。バスドラの上にトライアングルがちょこんと乗っていた。

 彼女は、優しく語りかけるように、ときには恐ろしげに、そして一貫して夢のなかにいるような浮遊感を漂わせる。歌声には深みがあり、クリアで水滴が落ちるように張りがある。多重にリヴァーブをかけた歌は、決してランダムではなく、注意深く構造されている。エスケーピズムというよりは、もはや音楽治療と言えそうだ。
 それは彼女の表情を見ながらが聴いていると、さらに効果的だった。少しはにかんだ笑顔は、フェアリー・ファーナシスのエレノア嬢に似ていた。キーボードとチェロ、ドラムという構成は、厳かな神聖さを醸し出す。

 最新アルバム『Ekstasis』からの曲がほとんどで、アンコールは、カセットでリリースされた「ライヴ・レコーディングス」から"Sea called me Home"。「みんな口笛ふける?」と観客に聞いたこの曲は、その晩のハイライトだった。けだるい朝のポップ・ミュージックのようだったが、彼女の表情も生き生きしている。お客さんの反応も特別だった。

 今回のショーで新鮮だったのは、アヴァンギャルドとベッドルームポップ、クラシック音楽などがしっかり融合していることだ。しかも、カテゴライズしづらい彼女の音楽を見にきていたのが、勉学に励んでいる学生風だったり、身なりの良い老紳士だったり、音楽好きのゲイ男子だったり、いずれも、このショーでないとクロスしない層だったことだ。彼女の音楽のボーダレス性を感じた。
 LAという暖かいレイドバックな地域性がそれに影響しているのだとも思う。観客の表情は終始緩んでいた。日本人としては、もう少し歌詞がすんなり入ってくれば、別の楽しみ方もできたのだろうが、充分に満足のショーだった。



セットリストは以下:
Our Sorrows
Fur Felix
Marienbad
Gaston
This Is Ekstasis
Try to Make Yourself a Work of Art
Moni Mon Amie
Four Gardens
The Falling Age
In The Same Room
Goddess Eyes
アンコール:
Sea Called Me Home

HPrizm - ele-king

 思わずビールを吹き出してしまった。世田谷区の環八をちょっと入ったところの、周囲は畑に囲まれた小さな神社だ。蒸し暑い日曜日の夕暮れ時に、友だちが祭の演目で踊るというので、子供と一緒に出かけた。和服を着た友だちは祭り囃子に合わせて練習した踊りを踊っている。それが終わると、続いて5~6人の小学生の女の子が登場、おそろいの真っ赤なバスケのユニフォームには大きな英語で「remix」と記されている(笑)。
 しかし本当に笑うのはこの後だった。神社の舞台に設置されたBOSEのスピーカーが低音を鳴らすと、ブローステップがかかりはじめた。ぶんぶんうなるベースとダークなビートの隙間からは「マザファッカ」という英語が連呼されている。「マザファッカ」「マザファッカ」......、もっとも汚い英語であり、僕がアフリカ系アメリカ人の友人にふざけて言っても、本気で嫌がるような卑語だが、女の子たちは楽しそうに踊り、父兄や老人はニコニコしながら団扇を扇いでいる。女の子たちが踊っている背後には、「絆」という文字が大きく描かれている。

 R&Bとヒップホップはいま旬だ。それらはいつだって旬だとも言えるが、ハウスがいまイケているのと同じ次元において旬だ。この10年で広がっていたアンダーグラウンドとオーヴァーグラウンドの溝が埋められつつあるし、何より他ジャンルへの波及がすごい。〈ハイパーダブ〉のクーリー・GのアルバムにもR&Bテイストは注がれ、ジェームズ・ブレイクの新作はロール・ディープ(グライムと呼ばれるUKヒップホップの初期からのでっかいグループ)のラッパーとの共作だ。クラウド・ラップ以降の動きは面白いし、フランク・オーシャンのアルバムは出る前から騒がれていた。チェット・フェイカーのアルバムも良かったし、来月にリリースされるハウ・トゥ・ドレス・ウェルのセカンドがとにかくやばい(デルフォニックスのアンビエント・ヴァージョンのようだ!)。

 R&Bとヒップホップはいま旬だが、これらブラック・カルチャーはステロタイプについても考えなければならない。本作は、アンチ・ポップ・コンソーティアムやジ・アイソレーショニストのメンバー、ハイ・プリーストによるHプリズム名義によるソロ作品で、スイスの真新しいレーベル〈スヴェクト〉からの第一弾リリースだ。
 アンチ・ポップ・コンソーティアムにはすでに名声がある。ギャング文化を商標としながら、芸能界化するヒップホップ・シーンと前向きに決裂していった、アンダーグラウンド・ヒップホップへと分派する先頭集団だった。彼らを紹介するうえでもっとも有名な言葉に「ヒップホップとIDMの溝を埋めた」というのがある。のちに〈ワープ〉と契約するように、アンチ・ポップ・コンソーティアムにとってのヒップホップへの疑問符は、たとえるならエイフェックス・ツインやオウテカへのアプローチとなっている。もしくはゲットー・ミュージックの露悪主義(卑語の多用)に振り回されない、ステロタイプ(お望み通りの黒人像)に甘んじない......という、ある種内なる相対化が彼らにはある。

 ハイ・プーリストの1曲20分にもおよぶ新作は、シカゴのフットワークが大胆に取り入れている。というか、フットワークをやってみたくて我慢できずに作ったようなはじまりだ。ハイピッチのビートではじまり、やかましい声ネタがくどくどしくミックスされる、いつものフットワークだ。が、しかし、それは3~4分で終わらない。オーネット・コールマンの『ダンシング・イン・ユア・ヘッド』のようにフリーキーな展開を見せる。アフリカン・パーカッションへと突き進み、アシッド・ハウスの恍惚と寒々しいインダストリアル・サウンド(世界の終わり系産業グルーヴと呼ぶらしい)をダイナミックに往復する。終盤はノイズ/ドローンへとまっしぐら。
 El-pとオウテカに強くインスピアされたというこのレーベルからの次のリリースは、アオキ・タカマサだとアナウンスされている。


 ハイ・プーリストやアオキ・タカマサとの共作者でもあるNHKyxは、先日、アヴァンギャルド系を得意としているベルリンのレーベル〈パン〉からSNDとのスプリット盤に次ぐ作品として、『ダンス・クラシック・ヴォリューム・ワン』をリリースしている。故コンドラッド・シュニッツラーとの共作、〈スカム〉レーベルやUKラフトレードからのラヴコールなど、彼=NHKyx=マツナガ・コーヘイはここ数年、ポストIDM時代のキーパーソンとしてあらたな脚光を浴びているが、今回の全10曲はその題名が言うようにダンス・ミュージック集、彼なりのハウス/テクノが収録されている。
 腰に力の入ったダンス・ミュージックでありながら、NHKらしいひょうきんさ、ユーモアがある。初期のエイフェックス・ツインや初期のプラッドのような透明感、無邪気なムード、音響工作的な面白味を持っていながら、ヒップホップから来るベースがうなっている。パーティ・ミュージックではない、が、確実にダンス・ミュージックだ。すでに大量のリリースをほこるマツナガ・コーヘイだが、このアルバムは親しみやすさにおいてベストな1枚に思える。

 音楽文化はいま、ただ曲を作って、それを人が聴くという単純な構造のものではなくなっている。発表の仕方もひとつの態度表明になっている。〈パン〉にしても〈スヴェック〉にしても新しいレーベルだが、ともにヴァイナル(アナログ盤)にこだわっている。アートワークへの充分な配慮もある。ヴェイパーウェイヴが積極的にデジタル環境で遊んでいるのに対して、こちらは距離を置こうとしている。ヨーロッパにおけるポストmp3時代は、彼らのようなIDM以降の領域で顕在化しているようだ。昔、〈リフレックス〉を揃えていた人、最近〈プラネット・ミュー〉が好きな人はチェックしてみて。

interview with Grizzly Bear - ele-king


Grizzly Bear
Shields

Warp Records/ビート

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 予兆はあったのかもしれない。前作『ヴェッカーティメスト』のオープニング・トラックの"サザン・ポイント"のドラム、あるいはダニエル・ロッセンのソロEPのギターの音に。だが......グリズリー・ベアとしては3年ぶりの『シールズ』は、バンドがまったく新しい領域へと足を踏み入れたことを何よりも音で宣言している。再生ボタンを押すと、8分の6拍子のなかで、リズムは複雑にビートを刻み、ざらついた質感のギターがアルペジオを鳴らし、シンセがうねり、それらすべてが吹き荒れたかと思えば、アコースティック・ギターが繊細に歌に寄り添う。呆気に取られていると、2曲目の"スピーク・イン・ラウンズ"でそれは確信に変わる。ドラムが疾走するアップテンポのフォーク・ロックを鮮やかに色づけるフルートの調べと、どこか甘美に響くコーラス。まったくもってスリリングな演奏、先の読めない展開、あらゆる楽器のエネルギッシュなぶつかり合い。その興奮と喜びを、「インディ・バンド」がこれほど高い次元で追及し達成していることに息を呑む。
 ヴァン・ダイク・パークスからビーチ・ボーイズ、ランディ・ニューマンらアメリカの作曲家たちの大いなる遺産を正しく受け継ぎつつ、自国のフォークへの深い理解を示し、現代音楽やジャズの素養もあり、ダーティ・プロジェクターズやスフィアン・スティーヴンスらコンテンポラリー・ポップの精鋭たちと共振する音楽集団。グリズリー・ベアと言えば、まるで隙のない優秀さに支えられ評価されてきたし、実際それはその通りなのだが、本作においては緻密なアレンジでその知性を研ぎ澄ましつつも、その前提を踏まえた上でこれまでは見せなかった荒々しさや情熱を惜しみなく楽曲に注いでいる。前作でときにティンパニのように響いていたドラムは、ここではより「ロック・バンド」的なそれとして叩かれ、エド・ドロストは声がかすれるほどエモーショナルに歌い上げることを恐れない。クレッシェンドとデクレッシェンド、ピアニシモからフォルテシモまで、自在に行き来する。いまだ眠っていた熊の野性が、ここでは遠慮なく呼び覚まされているようだ。

 グリズリー・ベアの音楽は、恐れずに前を向いているように聞こえる......アカデミズムとポップの範囲に囚われず、多彩な音楽を展開するその理想主義的な態度において。以下のインタヴューでエドは「リスナーひとりひとりの解釈に委ねたいから」と歌詞については沈黙を守っている。たしかにまずアンサンブルが雄弁な作品であり、そこでこそ言葉は鮮烈なイメージをはじめて発揮するように感じられる。が、ここではひとつだけ、情感豊かなサイケデリアが広がるラスト・トラック"サン・イン・ユア・アイズ"で美しく繰り返されるフレーズを挙げておきたい――「I'm never coming back.」

エネルギーに満ちたアルバムにするためにどうすればそれがより強調されたのはたしかだね。前のアルバムが洗練されたアルバムだったこともあって、今回は粗削りでも自分たちのいまのエネルギーを反映したアルバムにしたいと思っていたし。

新作『シールズ』、素晴らしいアルバムだと思います。より、バンドとしての結束が強固になった作品だと強く感じました。

エド・ドロスト:そうだね、一緒に曲を書いたりしたことでより絆は深くなった気がするね。それにアルバムを作るにあたっていろいろな試行錯誤があったしね。
 最初にテキサスでレコーディングを試みたんだけど、長いあいだみんな個々に活動していて、個人レベルで人間的にもミュージシャンとしてもそれぞれスキルアップして戻ってきたこともあって、まずお互いのバックグラウンドがどんなものなのかを改めて知る必要があったんだ。そしてお互いの成長ぶりがわかってからはどんどん作業がはかどって、曲も予想以上にたくさんできたんだ。

メンバーがそれぞれソロや別のプロジェクトをされていましたが、それらを経てグリズリー・ベアとして集まったときに、バンドのアイデンティティを再発見するようなことはありましたか? それはどのようなものだったのでしょう?

ED:バンド自体はつねに進化しているし、アルバムごとにつねにバンドとしての新しい発見を見つけることが出来ていると思ってる。もちろん今回も新しいアイデンティティを発見したと思うけど、それをカテゴライズすることはできないね。そこに行きつくまでに苦しんだりもがいたりしたけれど、新しいエネルギーと方向性を見出したかな。とっても長く曲がりくねった道のりだったし大変だったけれど、辿りついたときは全員が満足出来たし、最高傑作を生み出せたという自信にはつながったと思うよ。

今回はエドとダニエルが曲を持ちより、メンバー全員で作曲したとのことですが、そのプロセスを実際やってみて、これまでと大きく異なる体験でしたか?

ED:ダニエルが書いた曲を歌ったというより、一緒に共同で曲を作っていたんだ。作り方としてはダニエルがヴァースを作って僕がメロディやコーラスを乗せたり、その逆で僕がメロディを作ったものに彼がヴァースをつけたり、そんな感じでピンポン玉のように出来たものを打ち返しながら一緒に作品にしていったんだ。もちろんこれは初めて挑戦したやり方だよ。今までは歌ってるひとがそのメロディを作ってるって聞けばすぐわかるような感じだったけど、今回はこうしないとならないというルールみたいなものは何もなくて、とにかく自由にやってみたらこうなったんだ。

非常に緻密で洗練されたアレンジにもかかわらず、ライヴであなたたちを観るような野性味、パワーを非常に本作に感じました。少ないテイクで録音されたこととも関係しているのかと思いますが、そこにこだわったのはどうしてですか?

ED:長い充電期間を経て作ったこともあって、エネルギーに満ちたアルバムにするためにどうすればそれがより強調されたものになるかということを考えたのはたしかだね。前のアルバムがとても洗練されたアルバムだったこともあって、今回は無駄なことはせずもっと粗削りでも自分たちのいまのエネルギーを反映したアルバムにしたいと思っていたし。だからヴォーカルもコーラス・ワーク中心というよりもっとシンプルにありのままを録った部分もあるしね。だから前よりももっと生っぽい音にこだわってそのエネルギーを込めたものになっていると思うよ。

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たしかにクラシック的な構成は減らしたかな。もちろんいまだにピアノやストリングスを使ってはいるけど、よりシンプルにしようということを意識的に心がけた部分はあるかな。


Grizzly Bear
Shields

Warp Records/ビート

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前作までよりも、クラシック音楽的な構成が少し後退したように思います。とくに"イェット・アゲイン"や"ア・シンプル・アンサー"などは、よりシンプルにバンドの演奏が骨格になっているとわたしは感じるのですが、その辺りは意識的でしたか?

ED:たしかにクラシック的な構成は減らしたかな。もちろんいまだにピアノやストリングスを使ってはいるけど、よりシンプルにしようということを意識的に心がけた部分はあるかな。

現代音楽やジャズにも精通するあなたたちが、楽器は多くともあくまでバンド・スタイルであるのはどうしてですか? たとえばスフィアン・スティーヴンスのように、オーケストラを大々的に導入したいという欲望はないですか?

ED:たぶんオーケストラ的なアプローチは前のアルバムの時にやったと思うんだ。ただ今回はそれをやってしまうとちょっとやりすぎな感じと元々の良さを壊してしまうような気がして。
 過去にオーケストラと一緒にライヴをやったこともあって、それはそれで楽しかったし、新しい試みだったんだけど、そこで僕たちはバンドとして演奏するほうが好きなんだっていうことに気づいたんだ。とても楽しかったし、聞くには新鮮でいいと思う。でもバンドとして出すエネルギーには代えがたい感じがあったんだ。バンドで演奏すれば指揮者を気にして合わせる必要もないしね。
 なんとなくオーケストラが入ることでかしこまった感じになることで聴く人との距離を感じると思うんだ。音としてはとてもきれいだけど、オーディエンスと一体になるにはちょっと難しい面もあるなと感じたんだ。僕は個人的に音楽でリスナーと一体となって、歌詞は聴く人の解釈に委ねる、というのが理想なんだよね。

本作ではより歌がソウルフルに響いています。クレジットを見るとエドはヴォーカルとありますが、今回あなたは歌に専念したということですか? それはどうして?

ED:うーん......僕が曲をたくさん書いていることもあって、曲や歌詞もやはりヴォーカルに重きを置いている部分はあるとたしかに思う。歌詞も前よりもストーリーを上手く書けるようにもなってそれを表現する必要が出てきているからね。正直昔よりも歌詞を書くことにエネルギーを使ってると思う。曲のクオリティと同じくらいのレベルの歌詞を書いていると思うんだ。だからこそその歌詞の世界を表現するためにも、歌に重点を置いているのはたしかだよ。

グリズリー・ベアの楽曲には、ビーチ・ボーイズが引き合いに出される甘いコーラス・ワークがありながらも、つねに憂いや陰影、不穏さのようなものがあります。それはどうしてだと思いますか?

ED:とくに憂いと不穏さをコーラスに反映しているつもりはないよ。とくにこのアルバムは前のアルバムに比べて憂いはないと思うしね。

"スリーピング・ユト"が、「この曲が1曲目だ」となった決め手はなんだったのでしょう?

ED:この曲をオープニングに持ってきたのはアルバムの最初はアップテンポで始まり、終わりは真逆の雰囲気で終わるという風にしたいと思ったからなんだ。アルバムを聴いて最初にエネルギーを感じてもらうことを考えてこの曲を1曲目に持ってきたというわけさ。

ラスト・トラックの"サン・イン・ユア・フェイス"のダイナミックなアレンジには圧倒されます。

ED:この曲はある晩僕がピアノで書いた曲なんだけど、曲を作りながら自分が歌うんだろうと思ってた。自分でコーラス・パートも作って、それをダンに聴かせたんだ。そしたら彼はとても気に入って、他のパートを付け加えていいって、その後クリスが来てホーンとかを加えてくれた。最初僕はこの曲はもっとバラード的になると思っていたけど、とても長く旅に出ているような曲に仕上がった。最後に僕がコーラスを曲の中に散らばせて、出来たときは誰もがこの曲こそがアルバムの最後を締めくくるにふさわしい曲だと思ったよ。本当に素晴らしい曲になったと思う。

音楽的な前進を目指しているという点で、内省的なテーマを経ながらも、グリズリー・ベアの音楽は前を向いているように思えます。自分たちの作っている音楽は、オプティミスティックなものだと思いますか?

ED:とくに自分たちの音楽がどの方向を目指してるという明確なテーマは持っていないけど、このアルバムについて言えば、誰でもみんな孤独を感じたり誰かと一緒にいたいと思ったり、さまざまなことを日常のなかから感じていると思うんだけど、その日常で起こり得るひとの感情を表現したという感じかな。このアルバムにはオプティミスティックな部分がちりばめられているとは思う。とてもダークなトーンのものからオプティミスティックな部分まであると思うけど、たしかにいままでのアルバムの中では一番そう思える作品かもしれないね。全曲とは言えないけどね。

フォークなどルーツ音楽への理解がありながらも、主にアレンジの面において徹底的にモダンであろうとするところに、グリズリー・ベアの理想主義的な側面を非常に感じます。実際のところ、バンドはポップ・ミュージックの領域を拡大、あるいは更新したいという思いはあるのでしょうか?

ED:とくに意図的にポップ・ミュージックの領域に行こうとしてるわけではないと思う。僕たちはフォークやクラシック・ロック、ジャズ、R&B、インディ・ロック、なんでも好きだと思うし、こういったすべての要素をとりいれたいと思っているんだ。だからいろんなスタイルの演奏や音がアルバムにはちりばめられていると思う。このアルバムはとくにジャズの影響が出ていると思うけどね。

タイトルの『シールズ』にこめられた意味はどのようなものですか?

ED:今回はアルバムのタイトルを決めるのにかなり苦労した。『シールズ』というタイトルは何通りもの解釈ができると思う。ひととひととの関連性や親近性、他人とどこまで関与していきたいのかということに対する防御、壁という意味もあるし、「Shield」は「何かから守る」という動詞としても使える。このアルバムを作っていた時、冬の寒い要素が身の周りにたくさん感じられたから、そういった意味合いもある。そのような場所にいたから、孤立や防御という概念があったんだ。で、『シールズ』はどこかの時点で挙がって、既にどんなアートワークにしたいかっていうイメージはあったから、この言葉が出た時にどういうわけかしっくりきたんだ。当然メンバー4人の意見はそれぞれ違うだろう。でもそれでいいと思った。聞き手がそれぞれ好きな意味を見出してくれればいいんじゃないかってね。何よりも言葉の響きが気に入ったんだ。

interview with Wild Nothing (Jack Tatum) - ele-king


Wild Nothing
Nocturne

Captured Tracks/よしもとアール・アンド・シー

TOWER RECORDS

 デビュー・フル『ジェミニ』がしずかに、しかしつよい支持をもってシーンに迎え入れられたのは、ここ数年にわたるエイティーズ・ブームのもうひとつの側面を象徴していたと言えるかもしれない。シンセ/エレクトロ・ポップなどがふたたび参照され、さらなる先鋭化がほどこされている状況は多くのリスナーの知るところであるし、インディ・ダンス・シーンも同様である。あのマーク・マッガイアですらがライヴでディスコをかけてしまうほど80年代色は強烈に機能してきた。
 ワイルド・ナッシングやそのリリース元である〈キャプチャード・トラックス〉は、そうしたものと共鳴しながらも、よりポスト・パンクやギター・ポップ、シューゲイザーといったUK寄りの音に新しい息を吹き込んだ存在だ。より内向的な音楽性を特徴として、UKインディの美しい遺産を掘り当ててきた。いま、そうしたトレンド自体は徐々に次のフェイズへと移りゆこうとしているが、変わらぬものをいとおしむように――ポップスとしての普遍性を取り出して研磨するように――、ジャック・テイタムはセカンド・アルバム『ノクターン』を完成させた。ソングライターとしての才と、レコード・コレクターとしての愛情や探求心がこぼれそうにたたえられた作品である。眠れぬ夜を相手に紡ぎだされたというそれぞれの曲には、以下の回答に明瞭に示されるとおり、彼の繊細で真面目な性質までもが陰影ゆたかに彫り込まれている。

ぼく自身はあのプロダクションにすごく惹かれるんだよね。あと、あの時代の音楽には、すごく純粋な感触がある気がする。ある意味すっごくシリアスなんだけど、同時にシリアスでもないっていう。

好きなアーティストとしてザ・スミスなどの名が挙がっていますが、まわりの同世代もザ・スミスを聴いていたりするのですか?

ジャック:別に周りが聴いてたわけじゃないな。ぼくはつねに音楽を探して、レコードを買ってるような人間のひとりなんだよ。つねに音楽をリサーチして。いまでもそう。レコード屋に毎日通って、何時間もいて、あるバンドに繋がる別のバンドを発見していって。そういうのってオブセッションになったりもするしね。

〈キャプチャード・トラックス〉には、あなたの他にもミンクスやクラフト・スペルズなど、〈クリエイション〉や〈サラ〉、〈ファクトリー〉といった80年代UKのギター・ポップ、あるいはニュー・ロマンティクスと呼ばれたようなバンドの影響が感じられます。ミンクスもクラフト・スペルズもあなたも、みなアメリカのアーティストであるということがおもしろいのですが、あなたからは80年代のUKや音楽はどのように見えますか?

ジャック:ぼく自身はあのプロダクションにすごく惹かれるんだよね。あと、あの時代の音楽には、すごく純粋な感触がある気がする。ある意味すっごくシリアスなんだけど、同時にシリアスでもないっていう。ソングライターとして、キュアーにしてもスミスにしても、何故かぼくにとってはすごくコネクトできるんだ。ぼくの音楽を好きな人も、ああいう音楽を聴いてる人、聴いたことがある人が多いと思う。だって......いい音楽だから(笑)。

〈キャプチャード・トラックス〉が埋もれていたシューゲイザー・バンドの発掘を行っている点などからみると、あなたがたは自然に集まってきたというよりは、主宰者であるマイク・スナイパーによって招き入れられたという感じなのでしょうか?

ジャック:その通り。全部マイクのアイデアなんだよね。ぼくの場合、マイクがぼくをインターネットで見つけてきた。いくつか自分の曲をアップしてたんだけど、それを聴いたマイクが「もっと聴きたい」って連絡してきて。最初はもっと曖昧な関係で、ぼくは彼のことをあんまり知らなかったし、レーベルのこともよく知らなかったんだ。その頃はまだ〈キャプチャード・トラックス〉も7インチしか出してなかったし。でもニューヨークに行って、彼に会うことになって......今ではしょっちゅう会ってるし、レーベルの全員と仲がいいんだ。ある意味ファミリーなんだよね。音楽的なアイデンティティをシェアしてるし、みんな音楽のファンで、80年代UKの音楽に参照点があるのも同じだから。

MTVに象徴されるような、アメリカの80年代の音楽へのあこがれやシンパシーはありますか?

ジャック:そういうのってないかも。コンテンポラリーなポップ・ミュージックについていくのって、僕にとってはすごく疲れちゃうんだよね。ラジオも聴かないし、テレビもあんまり観ないし、ラジオから流行ってる曲が流れるたびにびっくりしちゃうんだ。それが何か全然わからないから(笑)。遅れてるんだよ。

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いまではしょっちゅう会ってるし、レーベルの全員と仲がいいんだ。ある意味ファミリーなんだよね。音楽的なアイデンティティをシェアしてるし、みんな音楽のファンで、80年代UKの音楽に参照点があるのも同じだから。


Wild Nothing
Nocturne

Captured Tracks/よしもとアール・アンド・シー

TOWER RECORDS

『ノクターン』は、大半がツアーのために滞在したジョージア州で書かれたということですね。滞在したのはどのような場所でしたか? また、こうした生活のなかで印象深かったことがらについて教えてください。

ジャック:ジョージアは関係してると思う。曲のほとんどは、ツアーじゃなくてジョージアに住んでたときに書いた曲だし、もともとジョージアに引っ越したいちばん大きな理由が......ある意味、当時僕のまわりで起きてたことから離れるためだったんだよ。あの頃、僕はつねにツアーをしてて、帰る家があるって感じられなかったんだよね。大学のためにヴァージニアに移ったあと、ずっとツアーが続いてて。で、休みに入ったときに、友だちが住んでるジョージアに引っ越したんだ。とにかく、いろんなことからいったん離れるのにいい場所だと思ったんだよね。ずっと旅をして、毎晩ライヴをやるのって、ほんとに疲れるから。「ジョージアだったら静かな生活が送れるだろう」って思えた。でも結局どうだったかっていうと、もちろん快適で、住み心地もよかったんだけど......やることがほとんどなくて(笑)。自分の時間を有効に使ってると思えなかったんだ。その頃もまだツアーはあったし、なんか落ち着かなかったんだよね。そのせいで眠れなくなって。でも、それがいい結果にもなった。ジョージアにいるときにいい曲が書けたし。他にやることがなくて、音楽のことばっかり考えるようになったせいでね(笑)。ずっと言ってることなんだけど、このレコードの大半は深夜に書かれたし、心が落ち着かない、うまく眠れない――みたいなフィーリングから生まれてきたんだ」
注)現在はブルックリンに居住

ファースト・アルバムはガレージ・バンドでひとりでつくりあげたということですが、今作はプロデューサーとしてニコラス・ヴェルネスが加わっていますね。はじめにあなたからどのような作品にしたいというお話をされましたか? また彼とのレコーディングの模様について教えてください。

ジャック:このレコードについて話した人たちのなかにニコラスがいたんだよね。いっしょにやる相手としては、他にも何人かプロデューサーと話したんだけど。そう、まだ引っ越す前にニューヨークでいろいろ人とミーティングをしたときに、彼とも話をしたんだ。そのときはちょっとだけだったんだけど、ニコラスの人柄やプロセス全体への彼のアプローチが気に入ったんだよ。もともと会おうと思った最初の理由は、彼がブラッドフォード・コックス――ディアハンターやアトラス・サウンドでやってた仕事が好きだったからなんだ。で、会ってみたら美意識的にも音楽的にもしっくりきて。実際、最初に会ってからレコーディングに入るまでにはかなり期間が開いてたんだよ。知り合った頃、僕はまだ曲を作りながら、セカンド・アルバムで何をやりたいのか模索してたから。で、ニューヨークに引っ越してから、またニコラスと話すようになって、彼とレコードを作ろうって決めた。

前作のラフでもこもことこもったようなプロダクションも好きでしたが、今作はすっきりとクリアに整えられたように感じました。"ディス・チェイン・ウォント・ブレイク"や"パラダイス"などのように、ベース・ラインやビートもシャープになったと思います。あなたのなかでもっとも前作とちがうと感じている部分はどのようなところですか?

ジャック:今回とりかかったときに考えてたのは、前よりもクリーンで、ああいうサウンドに頼らないものにしよう、ってことだった。最初はリヴァーブとかのエフェクトをもっと削ぎ落としたサウンドを試したんだよ。

リヴァーブやディレイはいまでもあなたのなかで新鮮なエフェクトだと感じられますか?

ジャック:いまでも重要なエフェクトだと思うよ。必ずしも不可欠じゃないけど、やっぱりつねに好きなサウンドではあるから。

ジャケットも美しく、中古レコード屋でみつけた80年代の隠れ名盤のような趣があります。こうしたヴィジュアル・イメージもあなたのアイディアによるものですか?

ジャック:もともとはひとつのカヴァーにするつもりだったんだよ。でも候補が挙がってきたときに、全部マーブル紙的なアートワークで、それからひとつ選ぶことになって......。たぶん、最初に「全部やろう」って提案したのは〈キャプチャード・トラックス〉だったと思う。パルプの『ディファレント・クラス』みたいなアイデアだね。あのアルバムのスリーヴって、表が切り抜きになってて、6枚のちがうインサートが入ってるだろ? だから僕らも6枚のインサートを作って、好きなように変えられるようにしようってことになった。いったんそのアイデアが出てくると、全員が興奮したんだよね。いまじゃもうないようなアイデアだから。僕自身レコード・コレクターだから、フィジカル・コピー、ヴァイナルとしておもしろいし、人がそれを買う理由になるのにも惹かれた。ネットからダウンロードしたりするだけじゃなくて、物としての価値があるってところにね。

日本盤のボーナス・トラックである" フィール・ユー・ナウ"などには、よりエレクトロニックな方法が試されているように感じますが、これからの音楽的な展開として思い描いているようなことはありますか?

ジャック:しばらくそういうことは考えないんじゃないかな(笑)。あれはちょっと出てきたアイデアっていうだけだと思うし。まだ次のアルバムのための新曲も書きはじめてないし。"フィール・ユー・ナウ"は確かに他の曲とちょっとちがうけど、実際、いつでも同時進行でいろんな種類の曲があるんだよ。『ノクターン』でも、他の曲と合わないから入れなかった曲がたくさんある。アルバムの一貫性が欲しかったからね。まあ、次のアルバムを作りはじめるときには僕のテイストががらっと変わるかもしれないし......まだわかんないよ。

マイ・ブラッディ・ヴァレンタインのカタログが再発されましたね。あなたはどの作品が好きですか?

ジャック:どれも大好きだよ! 僕がいちばん好きな曲は実際、EP『グライダー』に入ってるんだ。"オフ・ユア・フェイス"っていう曲。すっごくきれいな曲なんだけど、あのギター・サウンドもあって。どれも好きだけど、初期の『エクスタシー・アンド・ワイン』はすごく好きだな。

ひとりで音楽づくりをはじめる前に、バンドを組んだりしてはいないのですか?

ジャック:大学に入るまで、他の人とプレイすることはなかったんだ。バンドもやったんだけど、本気でやってたわけじゃなくて。

いまあなたがとくに関心を寄せている音楽について教えてください。

ジャック:んー、なにかな。実際、前より60年代の音楽に興味がわいてきてるところなんだ。バーズとか、ホリーズとか。クラウトロックも聴きはじめてる。あと、ビージーズの初期のレコードをかなり聴いてるんだよね(笑)。フェイクなロック・バンドだった頃。見つけたときには、そのこと知らなかったんだけど......だから、すっごくエキサイトして。なんていうアルバムだっけ? たぶん、『ビー・ジーズ・ファースト』っていうタイトルだったと思う(笑)。

Yoshi Horino (UNKNOWN season) - ele-king

2012年の夏の余韻に浸り秋を楽しんでおります。この季節感好きです。そんな中、割と最新のリリースの中から、我流どハウスを選ばせていただきました。全てインターネット上、もしくは毎月第4土曜日の頭バーで聴けると思います。
www.unknown-season.com
www.soundcloud.com/unknown-season
www.facebook.com/unknownseason
www.twitter.jp/unknown_season
毎月第4土曜日”The Saturday” at 頭バー www.zubar.jp


1
Ryoma Takemasa - Catalyst(Album) - UNKNOWN season

2
Shonky - Le Velour(Mr. Fingers Club Dub Remix) - Real Tone

3
Omid 16B - Melodica (Original Dub) - Alola Records

4
Tigerskin - 29 Hours EP - Dirt Crew Recordings

5
Steve Rachmad (aka Sterac) - Astronotes (Joris Voorn Remix) - 100% Pure

6
Michel Cleis - Amaranthus (Original Mix) - Pampa Records

7
Rhyze - Just How Sweet Is Your Love(Walker & Royce Touch) - Nurvus

8
System Of Survival - NEEDLE AND THREAD(Album) - Bpitch Control

9
Datakestra - Distance Remix Pt.2(Satoshi Fumi & Datakestra's End Of Summer Love Mix) - UNKNOWN season

10
V.A. - DESTINATION MAGAZINE meets UNKNONW season "A Day Of Rain - UNKNOWN perspective -" - UNKNOWN season
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