「Ord」と一致するもの

SACHIHO (S) - ele-king

音攻めパーティ「S」@KOARAを、弓J、Mariiと一緒に不定期開催でオーガナイズしています。よく「S」でかけるディープ・ハウス、90'sハウス、ミニマル、ダブステップなどいろいろと選んでみました。
6/15(土) HOUSE OF LIQUID@KATAにSクルーで出演。
https://www.liquidroom.net/schedule/20130615/14701/

S blog https://ameblo.jp/s-3djs/

S select 2013.6.10


1
Marcel Fengler - Hidden Empire - IMF

2
Andre Rozzo - Storm Warning(dj rollo remix) - Trackdown Records

3
Sascha Dive - Summer Madness(Halo Feat.Blakkat Surface Remix) - Deep Vibes

4
Mechanical Soul Saloon - Shoul - Pssst Music

5
Karnak - Black Moon - Tribal America

6
MRSK - Pinkman - Skudge

7
Pariah - Rift - R&S Records

8
Las - Zikedelic - Box Clever

9
Biome - Reality - Black Box

10
Moodman,Da Abe Fela,Dot,L?K?O - Las Roturas - MOOD/LosApson

Buffalo Daughter - ele-king

 あらためて聴くバッファロー・ドーターの20年、全14曲が収録された『ReDiscoVer.』(再発見)。新曲、新ヴァージョン、ライヴ音源も入っているが、基本、『ニュー・ロック』(1998年)や『I』(2001年)、『Pshychic』(2003年)をはじめとする、バンドがこれまで残した7枚のアルバムからの収録だ。で、あらためて聴くと、あらためて格好良いと思う。サウンド的な観点で言って、もしフィッシュマンズとコーネリアスとの溝を埋めるバンドを探すなら、それはあなた、バッファロー・ドーターです。
 雑多な音楽性、グルーヴを保ちながら、直線的なサウンド、とくに1990年代の日本の音楽シーンの最良のところがすべてあるかのように、柔軟かつ禁欲的でいながら陶酔的という、これこそ日本で解体され、更新されたロックンロールです。オールドファンはもちろん、バッファロー・ドーターを知らない世代、『踊ってばかりの国』のハバナ・エキゾチカがその後結成したバンドぐらいにしか認識していない若者は、これを機に再発見すべし。小山田圭吾参加の新曲、環ROYと鎮座ドープネスのKAKATOとの共作も聴くべし。リスナーが自分のベスト盤を作れるように、書き込み可能なCDRも1枚付いての2枚組です。

Buffalo Daughter

Buffalo Daughter
ReDiscoVer. Best,Re-recordings and Remixes of Buffalo Daughter

UMA

2013年7月24日 発売
¥2,600 (tax in)

Amazon


Sports-koide (SLOWMOTION) - ele-king

DJ 予定

6/15 HOUSE OF LIQUID (LIQUID ROOM)
https://www.liquidroom.net/schedule/20130615/14701/

6/22 SLOWMOTION (神戸 塩屋 旧グッゲンハイム邸)
https://www.nedogu.com/blog/archives/7091

6月からオープンのライブスペース「神保町試聴室」にスタッフとして参加しております!宜しくお願いします!!shicho.org

スローモーションなトラック 2013.6.3


1
Low Res - Amuck - Sublime

2
Paddo - Balkon - Suger

3
Rene Breitbarth - Sphere - Deep Data

4
Ezekiel Honing - Under The Covers Remix By Someone Else - Goosehound

5
Satanic Soul - PPP - Pomelo

6
Lawrence - Rabbit Tube DJ Koze Remix - Mule electronic

7
Archie Pelago - Brown Oxford - Mister Saturday Night

8
Am/Pm - Also - Dreck

9
Roger That - Unknown - Playground

10
Elgato - We Dream Electric - Elgato

カタコト - ele-king

 楽しくて、ダンサブルで、爆弾みたいなカタコトのライヴを見たとき、「これはトラブル・ファンクの再来か」と思ったが、しかし、カタコトのカセットテープ「今夜は墓場でヒップホップ」や配信のみのEP「MARYOKU EP」を聴くと、「これはビースティー・ボーイズの『チェック・ユア・ヘッド』だ」と思った。ラップあり、ローファイ・ロックあり、ファンクあり、パンクあり、弾き語りあり、涙も笑いもなんでもあり、彼女が言うように、「これは玩具箱」ではないか。
 カタコトには、すでに"まだ夏じゃない"という秋を歌った名曲があり、"魔力"という『楽しい夕に』の頃のRCサクセションのようなアシッドな名曲があり、"GET LUNCH"という腹が減る歌がある。たとえ惑星が地球に衝突しようと、カタコトこそ、今年の日本のブラテストホープ、ナンバー・ワンであることは間違いない。
 なお、メンバーは、 RESQUE D(MC)、MARUCOM(Guitar)、YANOSHIT(MC)、K.K.C(Bass)、FISH EYE(Drum)という謎の5人。蟹が大好物で、動物とも仲が良く、事情通によれば、メンバーのうちのふたりは快速東京といういま人気沸騰中のバンドでも演奏しているらしい。また、絵を描くのが得意なメンバーがひとりいて、彼はかつてPSGのPVを作ったとか。
 とりあえず、ele-kingでは、カタコトの詳細がまたわかり次第、お知らせしよう。

https://www.katakoto.info/

interview with Deft & JJ Mumbles - ele-king

 ポスト・ダブステップ、ジューク、フットワーク、トラップ、フューチャー・ベース......と新たなスタイルが誕生し続けているダブステップ以降のクラブ・ミュージックにおいて、目下、従来のベース・ミュージック・ファン以外も巻き込んで、とりわけレフトフィールドなハウス/テクノのDJやリスナーからも一際注目を集める"UKベース"ムーブメント。それはUK発の例にもれずまたもや明確な定義が難しいハイブリッドなクラブ・ミュージックだが、"UKベース"の面白さはレゲエ由来の低音の太さやスモーキーなムードにとどまらず、むしろハウス、テクノ、エレクトロニカ、ヒップホップ、ダブ、UKソウルetc.の、様々なエッセンスを「ベース」というキーワードのもと自由に組み替えた音楽性の豊かさと、イーブン・キックのDJセットとも親和しやすい楽曲が多い点にあるのだと思う。
 また、UKにおけるダブステップのハウス・シフト傾向とも相まって、既存の各ジャンルからは少しずつはみ出したような、味わい甲斐のあるダンス・ミュージックが"UKベース"の名の下に次々と生み出されている。その事実に、遊び心に満ちたDJやレコード・バイヤーたちがいち早く反応を示しているというわけだ。この現象はかつてUKファンキー、ブロークン・ビーツ等々で見られた、隙間の音楽を愉しむ数寄心の再燃だとも言えるが、一方で「ダブ」を合言葉にディスコもサイケもハード・ロックも料理した"ディスコ・ダブ"が、ダンスフロア/レコードショップの勢力図を塗り替えた時のようなダイナミズムもまた感じられる。そうするとこの春、どうしても連想するのがドメスティック・ミックスCD三部作"Crustal Movement"におけるムードマンの『SF』である。勿論『SF』が"UKベース"だとは軽はずみには言わないし、その『SF』こそ、それが一体何なのかを容易には定義できない音楽なのであるが......。

 そんな折にロンドンから"UKベース"の寵児デフト(Deft)───かの「未来的すぎるセット」でDJシャドウもピックした新鋭アーティストと、彼を擁するレーベル〈WotNot Music〉を主宰するJJ・マンブルズ(JJ Mumbles)が来日した。彼らを招聘したのは〈ライフ・フォース〉。長期にわたるUKでの生活から90年代初頭に日本に帰国したミュージシャン、プロデューサーのMassa氏と、後に〈DOMMUNE〉、名古屋〈MAGO〉、静岡〈CLUB four〉、岡山〈YEBISU YA PRO〉などの音響設計で名を轟かすサウンド・デザイナーのAsada氏とでスタートし、いまではフェスの人気者ともなったニック・ザ・レコードを、20年前に日本へと紹介した老舗パーティである。

 〈ライフ・フォース〉といえば、そのAsada氏によるサウンド・デザイン───原音忠実再生にしてパワフル、でありながらフロアで長く聴いても耳が疲れない、箱が震える音量なのに隣の人の声は聞こえる、といった画期的なクラブ・サウンド設計は〈DOMMUNE〉の前身〈Mixrooffice〉で広く知られることとなる───が大きな特長であり、長年に渡ってパーティを支えてきた心臓部である。
 Asada氏自身も音響設計の視点から「最新のダンス・ミュージックにおける低音の構造がキックやパーカッション主体から『ベース』主体へとシフトしてきているのを感じていた」と話す。デフト、JJマンブルズ、"UKベース"、そうした新しい音楽的潮流は、Asada氏の音響実験精神をも刺激していたようだ。Asada氏は今回ふたりがプレイした渋谷〈seco〉ではウーファーを増量して低音を強調するだけではなく、ベースの輪郭と定位をいままで以上に感じられるような、新たな音響実験に取り組んでいた。それによりもたらされた極めて重く、しかもスピード感に優れたベースの鳴りは、ダンスフロアを未だ見ぬ角度で切り裂いていた。

 それではデフトとJJ・マンブルズのインタヴューをお届けしよう。なぜ〈ライフ・フォース〉が新しく彼らをフィーチュアしたのか、といまだに首を傾げている向きも、その理由をさまざまに感じ取れると思う。取材は東日本有数の労働者街、東京・山谷でおこなわれた。

ロンドンのクラブ・シーンはお金中心で回っているというのが現状なんだよね。そんな状況もある中で、音楽自体が大切にされているパーティに関われているのは嬉しいことだよ。

〈ライフ・フォース〉でプレイした感想はいかがでしたか?

デフト:すごく楽しかった! お客さんも楽しんでくれていたみたいだったし、ファンタスティックな経験だったよ。実はあの夜は、いつもとはちょっと違った感じでセットをはじめてみたんだ。というのは、日本に着いてから〈ライフ・フォース〉のクルーやその周りの人たちと一緒に音楽を聴いているときに、UKファンキーをすごく面白がってくれた人がいたんだ。だったら、パーティに来てくれたお客さんはどんな反応をするかな、と思ってUKファンキーからスタートしてみたら、実際うまく行って。その後テクノに移行してからの方がお客さんはもっと踊っていたかもしれないけど、全体的にとてもうまく行ったセットだったと思うよ。それと〈ライフ・フォース〉は映像・空間演出も素晴らしかったね。

あの日、自分が会場で聞いた声によると、ふたりはやっぱり、ベースミュージックをずっと追いかけているリスナーやDJからの注目度がすごく高くて。そうしたお客さんと、〈ライフ・フォース〉のファンとが混じり合ってそういう反応になったのかもしれませんね。

JJ:比較的年齢層の高いお客さんが集まっていたのも印象的だったよ。ロンドンで僕らがDJしたりするパーティは20歳前後の若いお客さんが多いんだけど、渋谷SECOの〈ライフ・フォース〉にはいろんな年齢層のお客さんが集まっていたよね。しかもパーティに騒ぎに来てるというよりは、音楽に対して熱心なお客さんが多いと感じたよ。

ふたりがプレイした〈ライフ・フォース〉というのはたしかにいろんな年齢層、いろんな音楽的嗜好のパーティ・ピープルから、非常に高い信頼を得ているパーティなんです。というのは、〈ライフ・フォース〉は約20年前にコマーシャルじゃないところでのレイヴをいち早く紹介したりだとか、また1990年代後半、テクノとニューヨークのハウスがメインストリームだった日本のダンスフロアに、サイケデリックなオルタナティヴ・ハウスを持ち込んだりだとか、要は常にリスナーが驚くような音楽体験を、高いクオリティで提示し続けてきたからなんです。で、その〈ライフ・フォース〉がいままた、新しい方向に舵を切ろうという段階で、そのメインアクトとしてあなたたちふたりを選んだという。そのことについて、何か思うところはありますか?

デフト:自分たちを選んでくれたことについては、もちろんすごく光栄に思っているよ。全く想像してなかったことだし、まだ全然ビッグネームではない自分たちを、新しいディレクションのメインDJとして選んでくれたことが本当に嬉しいんだ。最初に話したように、ロンドンのクラブ・シーンはお金中心で回っているというのが現状なんだよね。そんな状況もあるなかで、音楽自体が大切にされているパーティに関われているのは嬉しいことだよ。

そもそも〈ライフ・フォース〉のクルーとはどういう出会いだったんですか?

JJ:実は昨年の夏に、ガールフレンドと一緒に日本に旅行に来てたんだ。DJとかじゃなくて、本当にただの旅行で。それで、ちょうど日本にいるときに〈ライフ・フォース〉のMassaからコンタクトがあったんだ。すぐにパーティがあるからDJしないかって(笑)。以前から彼が、サウンドクラウドで僕のミックス音源を聴いてくれていたみたいで。

Cossato(LifeForce):ちょうど去年秋の〈ライフ・フォース・アルフレスコ〉のDJを探していた頃に、候補に挙がっていたJJ Mumblesの活動をフェイスブックでチェックしたところ、「どうもこの人、いま日本にいるらしい」と(笑)。それでMassaさんがコンタクトを取って、で1ヵ月後にもう一度来日してもらって〈アルフレスコ〉でプレイしてもらったという。今度、6月14日と22日の〈ライフ・フォース〉に呼ぶアントン・ザップ(Anton Zap)と一緒にプレイする予定だったんですけどね。そのときはアントン・ザップはビザの都合で来られなかったですけど。

その後、昨年12月に〈ライフ・フォース〉でJJがプレイしたときはベース・ミュージック主体、今回は四つ打ち主体と結構違うセットだった印象なんですけど、それは東京のクラウドや〈ライフ・フォース〉に合わせてきたところがあるんですか、それとも自身のなかでハウス・テクノ主体の音がホットだということなんですか。

JJ:実は12月は体調が悪くて、ジュークみたいな激しい曲をたくさんかけることで自分自身を鼓舞していたようなところがあって(笑)。今回はロシアのディープ・ハウスなんかを結構かけたんだけど、そのなかには〈ライフ・フォース〉のクルーから教えてもらった曲も多かったんだ。自分としてもその辺の音が好きだしね。自分の何となくの印象だけど、ジュークとかをかけたときよりも、今回の方が反応が良かったような気がしているよ。ツアーのアフターパーティ(インタヴューの3日後に渋谷kinobarで開催された)では、チルアウトしたUKビートをたくさんかけようと思っているんだ。

[[SplitPage]]

自分たちの音楽はハウス、ヒップホップ、ベースミュージック、そういったものを全部ミックスしてやっているものだと思ってる。レーベルのアーティスト達とは人間的にもちゃんと付き合っていけて、人間同士の関係性を築けるかどうか、というところはすごく重視している。

ところでふたりはおいくつなんですか?

JJ:26歳(1986年生まれ)。

デフト:23歳(1989年生まれ)。

パーティでプレイする側も遊ぶ側も若いんですね。ロンドンでふたりが関わっているパーティ・シーンについてもう少し聞きたいのですが、パーティ・オーガナイズもやるんでしたっけ?

JJ:〈WotNot Music〉でリリースがあったときには、レーベルとしてリリース・パーティをやっているよ。レーベルのクルーみんなでレギュラー・パーティ的なものも運営していきたいとは思うんだけど、ロンドンはいま、そういうパーティをやるには難しい状況でもあって。パーティが飽和状態なのと、日本みたいなサウンドシステムがいいクラブが少ないんだ。なのでレギュラー・パーティをやるには難しい面もあって。

デフト:去年、ロンドンで教会を借りてD.I.Yスタイルのパーティをやったんだ。メンバーは僕、DA-10、マニ・D(Manni Dee)、アルファベット・ヘブン(Alphabets Heaven)、アニュシュカ(Anushka)、チェスロ・ジュニア(Chesslo Junior)という〈WotNot Music〉周辺の仲間たちで。PAは自分たちで入れたし、ヴィジュアルはウィー・アー・イェス(WeAreYes)というチームに担当してもらって、普通のクラブ・イヴェントとは少し違った感じで、ライヴをたくさん入れて。

JJ:教会だから椅子があるよね。最初はみんな椅子に座ってチルしながら映像を楽しんでる感じだったんだけど、だんだん盛り上がってくると前の方に出て踊りだすんだ。他にない雰囲気で楽しかったよ。

デフト:なんでそういうパーティをやったかというと、クラブでパーティするというマジョリティに対して、自分たちはちょっと違うことをやりたかったんだ。DJだけじゃなくヴィジュアルやライヴ・アクトも一緒くたに楽しんでもらうというのが目的で、これまでにもウェアハウスや電車のガード下とか、クラブじゃない場所でそうしたパーティを開催してきたんだ。とはいえそうしょっちゅうやっているわけじゃないんだけど、ロンドンでマジョリティなクラバーたちも、だんだんそういうパーティの楽しさに開眼してきているように感じているよ。

ロンドンでのふたりの活動の様子をいろいろ聞いたのは、日本でもいま、ふたりがやっているようなイギリス発のハイブリッドなベース・ミュージックが「UKベース」というキーワードのもと非常に注目されてるからなんですけど、ふたりの活動や〈WotNot Music〉の音楽は、地元のロンドンでも「UKベース」というワードで盛り上がっているんでしょうか。それとも何かまた別のキーワードもあるんでしょうか?

JJ:自分たちの音楽はハウス、ヒップホップ、ベース・ミュージック、そういったものを全部ミックスしてやっているものだと思ってる。それを言い表す名前はないけれど、他の誰かに説明する時に「UKベース」という言葉を使うことはある。けど、自分たちとしてはUKベースという言葉はそんなに好きじゃなくて。〈WotNot Music〉に関してもUKベースだけじゃなくて、いい音楽なら何だってリリースしたいと思っているんだ。例えば(WotNot Musicからリリースしているアーティストのなかでも)DA-10とチェスロ・ジュニアとでは、作っている音楽も全然違うよね。DA-10はハードウェアのみでビートミュージック的なサウンドを作るアーティストだし、チェスロ・ジュニアのサウンドはトラップ・ビートの進化型ともいえるものだし。

いま話に出たように〈WotNot Music〉のサウンドは幅が広いのが特徴ですね。そうなると、リリースする音源を選ぶ基準はどうなっているんですか?

JJ:これまでのリリースに関して言えば、レーベルに関わる全員が楽しんで聴けるものばかり、ということになる。デモもいろいろ届くんだけど、自分でいろんなところに出かけていって、レコードを掘るようにアーティストをディグするのが好きなんだ。あとリサーチの一環としてサウンドクラウドなんかでもいろいろ聴くけど、例えば100回しか再生されてないけどメチャクチャいい曲があるとするよね。そういうのを見つけるとものすごく嬉しいんだ。もっとたくさんの人に聴いてもらいたい、と思えるような人を見つけるのが楽しいんだよね。あと、アーティストのパーソナリティは重視しているんだ。人間的にもちゃんと付き合っていけて、人間同士の関係性を築けるかどうか、というところはすごく大切だと思っている。

例えば〈WotNot Music〉がフックアップしているアーティストに、沖縄在住でまだ17歳のスティルサウンド(Stillsound)という人がいますよね。彼についてもそういう感じだったんですか。

JJ:スロウ・ディスコというのかスロウ・ファンクというのか、そういう曲を作っているアーティストを1年ぐらいずっと探していて、サウンドクラウドでいろいろ聴いているなかにスティルサウンドがいたんだ。すごくツボだったね。まだ17歳ですごく若くて、例えばミキシングのやり方や音の作り方も未熟というか若さを感じるサウンドなんだけど、そこがすごく気に入ってるんだ。未完成なところもあるけどすごく才能を感じるし、これからどんどん伸びていくアーティストだと確信してるよ。今年の終わりにはロンドンに来てもらって、一緒にギグをする予定なんだ。

DA-10 - The Future Is Futureless


Chesslo Junior - Move South


Stillsound - Live A Little


[[SplitPage]]

DJシャドウ、デイデラス、ジャイルス・ピーターソン、そして〈ライフ・フォース〉......僕らは新しい音楽というものにすごく興味があって、それを常に探し続けているという共通点はあるんじゃないかな。

まあ、ふたりも若いと思いますけど(笑)、これまでにはどんな音楽を聴いてきたんですか?

デフト:いちばん最初はブリンク182とかランシド、ミスフィッツみたいなポップ・パンクが好きで、12歳のときにドラムを叩きはじめたんだ。で、いつからだったか、義理の兄が音楽制作ソフトのFL Studioを持っていたから、それをいじりはじめたんだよね。最初はそれでループを組んでるぐらいだったんだけど、だんだんプログラミングを覚えていって。そこから聴く音楽もヒップホップ、トリップホップになって、そこからサンプリングに興味を持ちはじめたんだ。大学に入る頃には、ボノボ、クアンティック、シネマティック・オーケストラとか、チルアウト/ラウンジ的な音楽を聴いていたかな。そこからドラムンベースやダブステップ。フライング・ロータスや〈ブレインフィーダー〉みたいなのを聴きはじめて。だから何か特定の、というわけではなく、興味を持った音楽をどんどん聴いていくタイプなんだよね。まわりの友だちはサッカーだとか、スポーツに熱心な人が多かったけど、自分は16歳ぐらいのときに、ずっと音楽をやっていこうと思うようになったんだ。

JJ:僕の場合は、義理の父がソウルとかルーツ・レゲエのレコードをすごくたくさん持っていて、そうした音楽がルーツなんだ。祖母もクラシックが好きだったし、家族みんなが音楽好きだったから、いろんな音楽を聴きながら育った。祖父が南アフリカのケープタウンの出身で、ジャズ・バンドでピアノを弾いていたから、自分も音楽をはじめたのは祖父からの影響もあるのかな。最初に大きく惹きつけられた音楽はヒップホップで、そこからMPCで自分でビートを作ったりしはじめたんだ。
 最初にビートを作りはじめたのは13歳のときだね。その頃はマッシヴ・アタックとかトリッキーがすごく好きだった。とくに、父親が持っていたマッシヴ・アタックvsマッド・プロフェッサーの『ノー・プロテクション』のレコードが好きで。アメコミ風のジャケットの絵も含めて、あの作品にはすごく影響を受けてるよ。家族もそうなんだけど、まわりの友だちにも昔から音楽好きが多くて、新しいCDやレコードが出るたびにいろいろ交換し合って聴いてたんだよね。

デフト:僕のまわりには、音楽好きな友だちはあまりいなかったんだ。ジェド(JJ)と知り合って、彼からもいろんな友だちを紹介してもらったりして、ようやく自分と同じような志向の人に巡り合えたという感じ。だからすごく嬉しかったんだ。

JJ:デフトの音源は元々ネットで聴いてたんだけど、たまたま共通の友だちがいて紹介してもらったのが僕らの出会いなんだ。最初に会ったのは約2年前。Wotnotの最初のパーティのときだった。あとそうそう、ヒップホップのビートをメインに作っている時期があったんだけど、その頃のクルーと一緒にUKをツアーして回ったことがあって、そのときにビジネスとして音楽をやるための基礎を学んだんだ。その経験が、〈WotNot Music〉のレーベル運営にすごく役立っているよ。

クラブ、パーティ体験については何かありましたか? クラブで忘れられない体験だとか。

デフト:初めてクラブに行ったのは16、17歳の時なんだけど、その頃のクロイドン(デフトの地元、南ロンドン。かつてあったレコード店〈Big Apple〉と共にベース・ミュージック縁の地として知られる)にはクラブ・シーンといったものはなくて、あったとしてもコマーシャルな感じで、音楽を聴きに行くというよりはお酒を飲んで騒ぐための場所という感じで、自分が行ったのもそういうクラブだったんだよね。その頃はダンス・ミュージックというよりもヒップホップにハマってたし。
 自分がクラブ・ミュージックに目覚めたのはブライトンの大学に入ってからで、ある時にDJシェフ(DJ Chef)のプレイを聴いたんだ。そのとき彼が、当時はまだリリース前の、フライング・ロータスのマーティン・リミックスをかけた瞬間があって。それで初めて、クラブのサウンドシステムや空間でクラブ・ミュージックをすごく楽しむことができた。その瞬間にクラブミュージックに開眼したというか、「これだ!」と思ったんだよね。自分もこういう音楽がつくりたいと思って、その時から音楽をやってるつもりだよ。

JJ:自分はクラバーだったことは一度もないんだ。クラブ・ミュージックは部屋でヘッドフォンで楽しむもので、クラブという場所はナンパしに行く場所だと思っていた(笑)。自分の好みとしてはクラブで遊ぶよりも、ライヴ演奏を聴くことの方が好きかもしれないな。ラップトップでもバンドでも。

さっき音楽遍歴について伺いましたけど、デフトのバイオグラフィを見ると、トキモンスタのリミックスコンペティションであったり、デイデラスのツアー・サポートだったり、またDJシャドウがあなたの曲『Drop It Low』をプレイしたらしい、など、国境や世代に関わらずいろんなアーティストとの絡みが出てきますよね。彼らと自分自身との間で、共有しているものは何だと思いますか?

デフト:うーん、自分ではよくわからないけど、ひとつ挙げればヒップホップが好きで、それが基本にあることなのかなぁ......。
 シャドウに関しては、自分の曲をデモで送ったりしたわけじゃないから、彼がただ自分のトラックを見つけて気に入ってくれて、自分のセットに入れてくれたんだよね。シャドウはすごく有名になったいまでもアンダーグラウンドな音楽にちゃんと目を向けて、ずっとディグし続けている人なんだっていうことを実感できたし、すごく嬉しい出来事だったよ。
 デイデラスとはツアー・サポートをした時に結構長く話をしたんだ。すごく情熱的な人だった。一緒のツアーがきっかけで、今もビートを交換したりしているんだ。うん、いま名前が挙がった人たちと僕とで何か共有していること......ひとつ言えるのは、僕らは新しい音楽というものにすごく興味があって、それを常に探し続けているという共通点はあるんじゃないかな。

Deft - Drop It Low


そういう、アンダーグラウンドのフレッシュなサウンドを一貫してディグし紹介し続けている存在としては、あなたたちの国にはジャイルス・ピーターソンもいますよね。そしてデフトは、ジャイルスのレーベル〈Brownswood〉から出ているギャング・カラーズ(Gang Colours)のEPにリミックスを提供しています(『Fancy Restraunt (Deft Remix)』)。



デフト:そのリリースのオファーにはものすごく驚いたし、同時に本当にすごく嬉しかったんだよ。ギャング・カラーズ自身から「サウンドクラウドで君の曲を聴いたんだけど、リミックスをやってくれないか。マシーンドラムのリミックスなんかと一緒にリリースしたいと思ってるんだけど」というメッセージが届いて、それを読んで即決したんだ。彼の曲は以前から好きだったし、「自分の曲を聴いてくれて、好きになってくれる人がいるんだ」という意味でもすごく自信となったし。自分のキャリアもそれをきっかけとして上がっていったところがあるしね。

なるほど。ジャイルス・ピーターソンについてはどう思いますか。

デフト:彼がホストしているラジオ番組でも常に新しい音楽をプレイしているし、自分も影響を受けてるね。〈Brownswood〉を運営しているスタッフも人間的にもすごく良くて、そういうところも尊敬しているんだ。ジャイルスの凄いところは、エレクトロニック・ミュージックだけでなくてワールド・ミュージックやヒップホップとかも含めて、常に新しいものを、幅広く紹介し続けているところだよね。UKでそういったことを続けているのは、もしかしたらジャイルスただひとりかもしれない。ベンジ・Bも昔はそういうところがあったけど、いま彼はハウスやベース・ミュージック寄りの活動が中心だしね。

JJの方は、単独名義での初リリースは〈WotNot Music〉カタログ2番の『Boxes & Buttons EP』になると思うんですけど、美しいUKソウルのオリジナル・ヴァージョンと、6ヴァージョン収録されたリミックスとで、ノース・ロンドンとUKのベース・ミュージックのいまが象徴されているように思えるんですよね。フィーチャーしている女性シンガーのナディーナ(Nadina)も魅力的ですし。このシングルが完成した背景を教えてください。

JJ Mumbles - Boxes and Buttons (Jamie Wilder remix)


JJ:ナディーナは当時、僕の友だちと付き合っていたんだけど、彼女の声が最初から好きで。どんな風に唄ってもらうかというシンガーとしてのプロデュース、ディレクションも僕がやったんだ。あのEPに入ってる僕のビートが完成して2、3日後に彼女を家に呼んで、そこで歌ってもらって完成した。EPに6ヴァージョンもリミックスが収録されているのは、そう、いろんな音をつめ込んだEPにしたかったからだね。友人の中には「ヴァージョンの数が多すぎるんじゃないか」と言う人もいたんだけど。
 『Boxes & Buttons』は、歌詞も僕が書いたんだ。音楽をしている者として「あまりお金はないけれど、楽しくやるのにそういうことは関係ないんじゃないか」みたいなことを唄っているんだ。一方で自分のなかにある、不安な気持ちだったりね。いまは別の男性シンガーと、新しい曲に取り組んでいるところなんだ。これはファンクというか、スロウなハウスのようなトラックになりそうだよ。

デフト:その曲は僕もまだ聴かせてもらってないんだ。

[[SplitPage]]

未来は若者の力にかかっているというのは、日本もUKも同じだよね。若者をきちんと育てていかなくてはならない、というのは日本にもUKにもすごく重要なことなんじゃないかな。

音楽を世に出すことで、何か伝えていきたいメッセージはありますか?

デフト:メッセージ性は曲にもよるけど、何で音楽をやっているのかというと一番はやっぱり楽しいからだし、メシを食っていくために頑張るものでもあるよね。曲を作る、ということはすごくパーソナルな行為なので、その動機に関しても、やっぱりパーソナルな部分が大きいよ。つまり何かのメッセージを伝えたいというよりは、自分はこれまでいろんな音楽を聴いて育ってきたし、それによっていまの自分があるわけだから「他の人にも自分の音楽を聴いてもらいたい、自分が音楽にしてもらってきたことを他の人にも経験してもらいたい」ということが目的やモチベーションになっている。だからとくに何か、ポリティカルなメッセージとかがあるわけではなくて。あとは「自分の感情を表現する手段」という部分もあるかな。その時のフィーリングによってつくる曲も違ってくるしね。感情やフィーリングを曲を通じて表現するために、昇華するために音楽を作っているというのはある。

JJ:自分は本当に、曲を作っていれば1週間でも2週間でも作り続けられるような人間だし、本当に楽しいということが第一だよ。ただ自分の場合はそれと同時に、メッセージを伝えたいという気持ちもある。さっき話したような、歌詞のある曲を作っているのもそういう理由、動機からで。自分は良質なポップ・ミュージックを作りたいという思いがあるんだ。それは17、18歳ぐらいのキッズのための音楽というよりは、もっと大人が楽しんで聴けるような音楽、そういうものを作りたい。それは自分がソウル・ミュージックなどを聴いてきたというバックグラウンドがあるからなんだけど、自分もそういうところを目指してみたい。あと自分の場合はポリティカルな部分で思うこともあるから、もしそれを音楽を通じて表現できるのであれば、やっていきたいとも思っている。

それはどういった思いなんですか。

JJ:仕事でユースワーカー(若者の自立を支援する専門職)をしているから、10代の子たちと日常的に接しているんだけど、2011年のイギリス暴動に見られるように、僕らの国でも若者を取り巻く状況は厳しいんだ。お金があれば大学に進んだりもできるけれど、そういうチャンスがない人も多くて。若い人たちになるべくたくさんのチャンスが与えられるような社会にしていきたい、と僕は思っている。

音楽のメッセージ性というのは、JJの場合はずっと親しんできたソウル・ミュージックなどの影響なんですよね、きっと。あと、例えばルーツ・レゲエにもいわゆるレベル・ミュージック、被抑圧者の音楽という面がありますけど、現在のUKのベース・ミュージックにもそうした面は引き継がれているのでしょうか?

JJ:まず、いまのUKで言う「ベース・ミュージック」というのは、ルーツ・レゲエの系譜というよりは、パーティ・ミュージックとしての側面が強いと思う。ルーツ・レゲエみたいに、抑圧された人たちが声を上げるための音楽としては、グライムやロード・ラップがそれにあたるだろうね。グライムやロード・ラップで唄われていることや音楽のスタイルはすごくアグレッシヴなのはたしかだけれど、それは彼らが正直に自分たちの気持ちを表現していることの表れなんだ。

デフト:ベース・ミュージックにも「コミュニティ」があるけど、それは政治的なものというよりもパーティをするために集まっているものだよね。一方、グライムやロードラップのコミュニティは自分たちの声を上げて、何とかして状況を変えるために力を合わせているんだけど。誤解している人も多いみたいだけど、グライムやロードラップはギャングスタ・ラップとは全然別物だよね。

JJ:2011年のイギリス暴動に話を戻すと、アッパー・ミドル・クラスといわれる人たちよりも上の階層の人たちは、何で暴動が起きたのかをまったく理解していないんだ。単にトラブルメーカーの若者たちが起こした騒ぎだとしか認識してないし、ちゃんとした形で理解しようという動きもない。若者がトラブルを起こしたから静かにさせなきゃ、というぐらいのことしか考えてないんだよ。
 「階級の低い」子どもたちがそこから抜け出すための機会が全然与えられずにそこにとどまるしかなくて、抜け出そうとしても抜け出せないという状況になっている。だからこそ子どもが犯罪に走ってしまうという悪循環があるわけだし、あの暴動にはそういう背景があるんだけど......僕は、これからそういう若者に力を与えることで、社会を変えていかなくてはいけないと思っている。〈WotNot Music〉も、レーベルがもうちょっと大きくなったらインターンを募集したりして、若者たちが犯罪など以外で生きていく術を見つけるための手助けをしていきたいと思っているんだ。

このインタヴューを行っている山谷という地域は日雇い労働者の宿場街なんですけど、いまはこの街に長期滞在している労働者の多くは、生活保護を受けて過ごしているんです。日本もイギリスに追随して新自由主義主義の道を進んでから格差がどんどん広がってきていて、このまま行くと、いまJJが教えてくれたイギリスの状況のようになりかねないですね。そんななかで2年前の原子力発電所の爆発事故に際して政府への不信・怒りが強くなっていて、日本でもかつてないほど、社会運動に自発的に参加する若者が増えてきているんです。パーティ・ピープルのなかにもそういう子は多いですし、彼らの精神的支えであるようなラッパーやミュージシャンも出てきています。社会運動に関しては、イギリスは日本の大先輩ですから。

JJ:未来は若者の力にかかっているというのは、日本もUKも同じだよね。そうでなければディストピアというか、『ブレードランナー』みたいなお金持ちだけがいいところに住んで、それ以外は皆スラムに追いやられる、という世界になってしまうよ。そうならないためにも若者に投資して、若者をきちんと育てていかなくてはならない、というのは日本にもUKにもすごく重要なことなんじゃないかな。
 たしかに僕も日本人には、例えば「労働時間がメチャクチャ長くてもそんなに文句を言わない」みたいなイメージを持っていた(笑)。一方でUKは反政府運動の歴史がすごく長くて、行動の参考にできるものがたくさんあるから、その点はいいといえるね。日本もUKも、お互い勉強しあって進んでいけばいいんだと思うよ。

本当にそうですよね。

JJ:あと、そうだ。さっきも言ったけど僕の祖父母は南アフリカのケープタウン出身で、まだアパルトヘイトが実施されていた時代をそこで過ごしたんだよ。当時のケープタウンは、アパルトヘイトにちょっと反対するようなことを言っただけで牢屋に入れられたりするような状況だったという。その点、いまの自分は政治的なメッセージを発したり、行動したぐらいでは逮捕されたりはしないから、それを思うと勇気をもらえるね。祖父母から学んだことというのは「その人を憎むのではなくて、その人がそういうことをしている理由は何かというのを考えなさい」というメッセージなんだ。

最後に、今後の予定を教えてください。

デフト:まずはリミックスを提供した、フランスのアーティスト・123MRKの作品が〈インフィニト・マシーン(Infinite Machine)〉というレーベルから5月早々に出る。それと〈WotNot Music〉からも新しいEPを出す予定で、これはほぼ作り終わっているんだ。あとはオランダの〈Rwina〉からの新しいEPとか、ほかにもいくつかリリースの話が来てる。リリース先は未定だけど、アルバムの制作も進行中だよ。あとはフェスでのDJ。ヨークシャーとマンチェスターとでフェス3本、あとカンタベリーのフェスでは〈WotNot Music〉でステージを1つ用意するんだ。DJじゃなくてライヴのセットも準備しているよ。

JJ:僕自身のリリース予定は、先ほど言った、DA-10のDAnalogueをシンガーにフィーチャーしてのシングル。〈WotNot Music〉としてはDA-10の新しいEP『The Shape Of Space』と、それから僕がコンパイルするコンピレーション『Dancefloor Sweets vol.1』が出たばかり。これはヨーロッパのアーティスト中心の内容で、これをチェックしてもらえば、いま自分がどんな人たちに注目しているかががわかると思う。次のリリースにはグレン・ケリー(Glenn Kelly)というロンドン郊外のディープ・ハウス・ガイのシングルが控えている。その後はK15というアーティストのアナログ・リリース。これには大阪のメトメ(Metome......3月にファースト・アルバム『OPUS cloud〈moph records〉』をリリースした新鋭)と、カイディ・テイタム(Bugz In The Atticのメンバー)とによる2ヴァージョンのリミックスを収録予定なんだ。
 アルバムも2枚出したいと思っていて、ひとつはさっき話に出た沖縄のスティルサウンド。あともうひとつはサッカー96という名義でも活動するDAnalogueと10-Davidによるふたり組・DA-10。彼らは〈WotNot Music〉が初めてリリースしたアーティストなんだけど、プログラミングではなくて、自分たちでハードウェアを叩いたり弾いたりして曲を作るんだ。そういうスタイルのアーティストがいることが、〈WotNot Music〉としてはすごく重要なんだよ。あとは、〈ライフ・フォース〉と〈WotNot Music〉でコラボレーションしてコンピレーションCDをリリースする話も進行中なんだ。

Volcano Choir - ele-king

"ウッド"と題されたボン・イヴェールの隠れた名曲を知っているだろうか。ボン・イヴェール=ジャスティン・ヴァーノンがひとりでひたすら「僕は森のなかにいて 自分の心を責めている/静寂を作り上げて ときを緩やかにする」とヴォコーダー・ヴォイスで繰り返すゴスペル・ナンバーで、すなわち、雪に閉ざされた孤独がそこではひっそりと震えていた。そのナンバーは、前身をペレとするポスト・ロック・バンド、コレクションズ・オブ・コロニーズ・オブ・ビーズとジャスティンが組んだ新バンド=ヴォルケーノ・クワイアで、"スティル(静けさ)"と名前を変えられて再演されている。そこではまるで、雪が一斉に溶けて新しい季節の訪れを告げるように......静寂から狂おしいほどの昂ぶりまでが、ダイナミックで叙情的なバンド・アンサンブルとなって奏でられていた。その曲が収められた彼らのファースト・アルバム『Unmap』の、その実験的ポップス、美と熱の掛け合いは当時の編集長も感動させ、それはweb版ele-kingの記念すべき一本目のレコメンド・アルバムとなった......。
 そして、どういうわけかアメリカよりも日本で初の実現となった、ライヴ・ツアーでの生の演奏の素晴らしさも足を運んだひとならば頷いてくれるだろう。ヴォルケーノ・クワイアの音にはどこか、地面を触ったときの温かさや光を見たときの眩しさのような、非常にロウな感触がある。

 そのヴォルケーノ・クワイアがセカンド・アルバムを出すというのだから、ele-kingが盛り上がらないわけにはいかない。ジャスティンは時折、「ヴォルケーノ・クワイアは"ボン・イヴェールのメンバーのサイド・プロジェクト"じゃなくて、"バンド"なんだ」と苛立ちを露にしているが、その通り、ヴォルケーノ・クワイアは紛れもなくバンドである。コレクションズ・オブ・コロニーズ・オブ・ビーズのポスト・ロックの素地に加えて、ジャスティンのゴスペル/ソウルやフォークにアンビエント、(USアンダーグラウンドではけっこう有名な)ジョン・ミューラーのドローン、(オール・タイニー・クリーチャーズの)トーマス・ウィンセックのシンセ・ポップにエレクトロニカ......が織り込まれ、融合している。



 彼らの盟友の映像作家、ダン・ヒューティングが監督したオフィシャル・トレーラーにはこのバンドのあり方がよく表れている。つまり、アメリカの片田舎の素朴で親密なコミュニティと、つねにそこにある自然を前にした際のどこか厳粛とした心情だ。そしてそこで流されるのは......バンドの徴である雄弁なギター・ワークと逞しいアンサンブル、そして、より率直にエモーショナルになったジャスティンの歌唱。さらにダイレクトに、パワフルになった音が到着するに違いない。アートワークも素晴らしい。
 セカンド・アルバム『Repave』は9月発売、もちろん<ジャグジャグウォー>から。日本でのライヴで自信をつけたバンドは、アメリカ・ツアーも予定している。そして......。いや、まだ何もわかっていないが、美しい思い出による感傷と期待をこめて、2010年の日本でのライヴの映像も紹介しておこう。



Vol.8 『BioShock: Infinite』 - ele-king

 


Bioshock Infinite
テイクツー・インタラクティブ・ジャパン

Amazon

 皆さまこんにちは、NaBaBaです。今回は『BioShock: Infinite』のレヴュー。前回の『Dishonored』に引き続き、〈Looking Glass Studios〉(以下LGS)特集としていままで勿体ぶってきたわけですが、ついに書くときが来ました。

 4月25日の国内発売からここ1ヶ月、メディアからは絶賛の嵐でしたが、僕の身のまわりでも本作は大きな話題になり続けていました。僕自身も2回クリアし、今日まであれこれ考えを巡らせていたのです。それぐらい本作は事件性の強い作品だったのですね。

 この『BioShock: Infinite』は、Ken Levine率いる〈Irrational Games〉の最新作。前回ご紹介した『Dishonored』や『Deus Ex: Human Revolution』等と同じく、いまは亡き〈LGS〉の遺伝子を備えた作品ですが、とくに99年に発売された『System Shock 2』との繋がりが深い。『System Shock 2』はKen Levineの実質デビュー作であり、以降のいわば『Shock』シリーズは、〈2K Marin〉が開発した『BioShock 2』を除き、氏が一貫してディレクターを務めています。

 彼が手掛けるこの『Shock』シリーズは他の〈LGS〉系の作品とシステム的に共有している部分が多々ありますが、一方で主観視点での没入型のストーリーテリングに重きを置いている点が、他とは異なる特徴になっています。

 99年の『System Shock 2』は、当時最新鋭だった『Half-Life』的なサヴァイヴァル演出を基調としつつ、オーディオ・ログや成長システムなどRPG的な要素も盛り込んだ傑作。ここでできあがったゲーム・システムの骨子は後の『Deus Ex』や『Dishonored』にも引き継がれています。

『System Shock 2』はGOGの他、今月からSteamでの再販も開始された。

 続く07年の『BioShock』は、ゲーム的には前作と比べより即興重視になり、ストーリーテリングも前作同様、閉鎖空間でのサヴァイヴァルを基本にしつつ、ビデオ・ゲームの一方的な側面とそれを疑わないプレイヤーの関係をメタ的に批判する表現も盛り込んだ、やはり当時を象徴する傑作でした。

 
『BioShock』は海中都市というケレン味溢れた世界観も特徴で、このコンセプトは『BioShock: Infinite』では空中都市という形で引き継がれている。

 こうした流れのなかにあって『BioShock: Infinite』はいままで以上に物語重視の作品となることが予告されていました。彼のいままでの作風と実績、またここ数年の主観視点の表現の停滞感に、何か一石を投じてくれるに違いない、もしかしたら『Half-Life 2』に匹敵する革新性を見せてくれるのではないかという期待感を業界全体に募らせていたと思います。

 はたしてその期待は実現したのでしょうか。メディアの評価を見る限りはあちこちで大絶賛ですが、一方で海外のファン・コミュニティの間ではかなりの物議を醸しているという話も聞きます。

 じつは僕もファン・コミュニティの反応は納得できてしまう。本作は確かにめちゃくちゃすごい。極まっていると言ってもいいぐらいです。しかし逆に極まっているからこそ、手放しには褒められない今世代のFPS全般にまたがる、宿命的な問題を感じたのです。今回のレヴューではその点を中心に論じていきたいと思います。

[[SplitPage]]

■物語の高度化がゲーム・プレイとの間に乖離を起こす

 いきなり結論から言ってしまえば、『BioShock: Infinite』は、『Half-Life 2』型FPSの到達点であると同時に限界点でもあると言えます。本作には今世代のFPSが『Half-Life 2』を起点として方々で進化発展させてきた表現手法が、まさに全部入りという感じで濃縮されています。しかしそうであることが、この表現手法が構造的に持っている弱点をいままでになく際立たせてもいるのです。

 何より本作は、前評判どおりに物語が非常に強くクローズ・アップされており、『BioShock』以前のサヴァイヴァルを主眼にした内容から、囚われの少女との空中都市からの逃避行という、よりヒロイックで劇的な演出を盛り込んだものに変化しました。なおかつ既存の様式に縛られない、FPSとしてはかなり複雑なシナリオとテーマを描いているのも特徴です。

 また物語をプレイヤーに体感させるためのギミック、リアリティを裏打ちするための世界観構築も超一流で、今世代のゲームの一側面である「体験する映画」としては、最上級のものであることに異論の余地はありません。

 
空想世界の作り込みは圧倒的で他の追随を許さない。

 しかしその反面、『Half-Life 2』型のゲーム共通の課題も本作には見られました。そのなかでももっとも深刻に感じたのが、物語が高度になり見た目のリアリティが増すにつれ、実際のゲーム・プレイにおけるリアリティとの乖離が顕著になるという問題です。

 本作の主人公のBookerやヒロインのElizabethはFPS史上最大級とも言える緻密な人物造形がされており、リアリティを表現するための演出も幾重にも散りばめられています。そのなかには戦闘で深手を負ったBookerをElizabethが介抱するシーンもあり、そこで巻いてもらった包帯はゲームの最後までつけていくことになるのです。

 負った傷は現実ではそうすぐには治らない。そういうことを象徴しているかのような演出ですが、しかしいざ戦闘になるとBookerは結局他のゲームと変わらず、アイテムで何度でも回復し、ひとりで何百という敵を倒す超人になってしまうのです。しかも本作はそのあたりにある食べ物でも回復できるため、状況によってはひたすら拾い食いして回復しまくるというシュールな事態にもなってしまう。せっかくの演出もこれでは興ざめです。

ファンが作ったパロディ・ムーヴィー。本作の仕様を面白おかしく皮肉っているが、問題の本質を鋭く抉ってもいる。

 とりわけ本作はインドアの複雑な攻防が主体だった前作から一転し、大量の敵を相手にするアクション重視のゲーム性になっており、これもまた現実離れ感に拍車を掛けています。

 こうした現象は本作に限らず、およそ現代のすべてのゲームに見られる問題であります。いままではそれをゲームのお約束として見てみぬふりをしてきたわけですが、『BioShock: Infinite』レヴェルになると物語も見た目も素晴らしいがゆえに、いよいよ見過ごせない違和感が生まれてきたと感じます。

 この問題に関連性がある話として、Ken Levineはインタヴューで「FPSにおける戦闘は映画のミュージカル・シーンのようなもの」と語っています。彼のその考えが反映されているのか、本作も中盤までは戦闘時と非戦闘時がかなり明確に分けられています。舞台となるコロンビアの街並を、インタラクティヴな仕掛けとともに眺め歩く時間がしばらく続いたと思ったら、ある瞬間いきなり戦闘になり、それ以降は再び切り替わるまでずっと続くのです。

 
それまで平和だったのが突然阿鼻叫喚の場面に。こうした転換はたびたび見られる。

 ここには敢えてお約束感を強調することで、そういうものとしてプレイヤー側に受け入れさせるような意図を感じました。しかしそれは物語とゲーム・プレイとの一致という点では一種の敗北ではないのでしょうか。

 また後半でコロンビアがほぼ戦争状態になり、ゲーム的にも戦闘が占める割合が増えてくることで上記のような不和は若干解消されていきます。しかしそれはそれで、やはりFPSでゲーム・プレイと物語を一致させようと思ったら戦争を描くしかないという事実に、残念な気持ちにもなるのです。

■守るべきなのに守る必要が無いヒロイン

 こうした問題点を解決する一発逆転的なものとして、僕はElizabethというコンパニオン・システムにいちばんの期待を寄せていました。うまくいけば彼女の存在が接着剤となり、物語とゲーム・プレイの一致を果たしてくれるのではないかという期待があったのです。

 少なくとも彼女は物語的にはとても重要な役割を発揮して深みを与えているし、健気だけど危うさも感じるキャラクター像も魅力的。恐らく洋ゲー史上最も可愛く、ある意味日本の美少女像に近づいたキャラだと思います。要するに守ってあげたい気持ちになるのです。

 
洋ゲーのヒロインがこんなに可愛いわけがない、と真面目に思ってしまうぐらいElizabethは魅力的。

 またAIとして見た場合も、彼女の行動にいっさいの破綻がないのは、これまでのコンパニオンの歴史を考えると感慨深い成果と言えます。広く高低差が激しいマップをプレイヤーが縦横無尽に駆け巡っても、しっかり後についてくる点などは素直に驚きました。FPSで初めてコンパニオン・システムを導入し、歴史に残る大爆死を遂げた『大刀』の登場から苦節13年。コンパニオンはついにここまで成長しました。

 しかしここまでは素晴らしいのに非常に残念でならないのは、彼女をゲーム・システムとして見た場合、存在意義が希薄なことです。彼女は無敵なので敵にやられる心配はいっさいなく、なおかつ直接戦闘に加勢してくれるわけでもありません。かわりに戦況に応じてアイテムをくれたり、プレイヤーの指示で別次元から戦闘をサポートするギミックを呼び出してくれるのですが、これがあまりよろしくない。

 一見すると有能のようにも感じますが、プレイヤーが彼女の能力発動を完全にコントロールでき、またリスクもまったく無いわけです。これではほとんどプレイヤー自身の能力の一部といった感じで、独立した他者というイメージが弱い。わざわざコンパニオン・システムにしている意味が感じられません。

 
別次元のものを呼び出す超能力のTearは、便利すぎてElizabethがやってくれることの意味がほとんど無い。

 おそらくコンパニオンがプレイヤーの足を引っ張る事態になるのを避けたのでしょう。駄作の代名詞『大刀』を例に挙げずとも、なまじコンパニオンをプレイヤーに近い立場にしたばかりに、すぐ死んだり不用意に戦況を掻き乱したりして、最早コンパニオンのお守りをするのがメインみたいな、破綻したゲームは枚挙に暇がありません。

 本作はそんな先人を教訓にして、徹底して面倒が掛からないコンパニオンを目指したのでしょうが、逆にお利口すぎて存在感があまり無いという、何とも皮肉な事態になってしまっています。

 じつはここにもまた物語とゲーム・プレイとの乖離が生じているのにお気づきでしょうか。本作の物語でElizabethは守るべき存在であることが何度も強調されます。しかしゲーム・プレイの面では守るどころかまったく気にかける必要がない。この矛盾により物語への感情移入がし難くなり、ゲーム・プレイでの彼女との関わりは淡白なものになってしまっているのです。

 僕の意見としては、やはりストレスが生じるリスクを多少踏んででも、Elizabethを守ったりいたわるような要素がゲーム・システム的に必要だったと思います。むしろこんな可愛いキャラならお守りしてあげてもいいと思わせるぐらいの開き直りが見たかった。それができればプレイヤーにより深い感情移入を促し、物語とゲーム・プレイを一致させる文字どおりの革新になり得たかもしれないのです。

 結局のところ、僕にとってElizabethにもっとも興奮させられたのは発売前のトレーラーでした。能力の使いすぎで息も絶え絶えになっていたり、敵に連れ去られそうなのを必死に抵抗していたり。そんな危うさをプレイヤーが守ってあげる、それが楽しくできるゲーム・デザインというのが、本作がすべき挑戦だったと思わずにはいられません。

大変驚かされたE3 2011でのゲーム・プレイ・デモ。Elizabethに限らず、このとき見られた要素の多くが製品版では無くなったりスケール・ダウンしてしまったなぁ。

[[SplitPage]]

■まとめ

 ゲームを含めたコンテンツへの評価軸は、完成度と革新性の2種類があると思います。『BioShock: Infinite』は、完成度の観点から見ると非常に高く評価できる作品です。それはまさに今世代の集大成と言っていい仕上がりであり、これまでのFPSの歩みを感じさせるとともに、その一歩一歩を最高品質で結実させていて感動的。これだけでも本作は傑作の称号を得るにはあり余る成果を上げています。

 一方、その輝かしい歩みの陰で、物語とゲーム・プレイとの乖離という問題は、本作の下ではもはや見逃せないばかりに膨らんでおり、目前には暗く厚い雲がたちこめています。僕はこの行き止まりをさらに突き破ってくれることを本作に期待していましたが、しかしそこまでの革新性を示すまでには至らなかった。そこが本当に残念でした。

 ある意味、本作はいまの時勢を象徴しているとも言えるでしょう。05年のXbox 360の登場によりはじまった今世代機の歴史は、いままさに終わりを迎える直前で、今年の年末にはいよいよ次世代機がリリースされる機運が高まってきています。本作は、そんなハードの事情と歩調を合わせて、今世代のFPSの終焉を告げているような気もします。

 次世代のFPSはどうなるのでしょうか。誰しもが予想できるのが、よりグラフィックスや演出が強化されていく方向性だと思いますが、そんな単純な拡張主義が続く限りは、本作が到達したその先に行くことは本質的に不可能だと思います。必要なのは発想の抜本的な転換であり、それによってゲーム・プレイと物語との乖離が解消されて初めて、FPSの真の次世代がはじまる気がします。

 それまでしばらくは、本作を覆う暗く厚い雲が、ゲーム業界全体をも包みつづけることでしょう。

 

LowPass - ele-king

 LowPassの新譜『Mirrorz』は聴いた? え、まだ!? それはマズイよ、じゃあGIVVNのフリー・ミックステープ『Garbage Can』もまだ聴いてないってこと?

 一昨年YouTubeにあげた"Ruff"、それに続く1stアルバム『Where are you going?』からはじまり、ラッパーのGIVVNが映像ディレクターとしてOMSBの"Hulk"を手がけたりと、着実に周囲の注目を巻き込みながらバズを生みつつある1MC1DJのヒップホップ・デュオ、それがLowPass。GIVVNの抽象度高めかつ言葉遊び的で抜けのよいラップ、Tee-rugの引き出しが多くユニークな展開と強度の高いビートが魅力のトラックはさらなる飛躍を遂げ、最新作『Mirrorz』でLowPassは一躍シーンの最前線に躍り出たと言っていい!

 『Mirrorz』はエンジニアとしてillicit tsuboiが参加し、マスタリングはUKの名門メトロポリス・スタジオで行われたという意欲作で、ヒップホップファンのみならず全音楽ファンを照準にいれた作品となっている。おまけに今作リリース後に、GIVVNはソロでフリーのミックス・テープ『Garbage Can Vol.0』を自身のbandcampで投下
 きたる6/1(土)には、O-nestで異なる2作品の世界観を敷いた2部構成によるワンマン・ライヴを予定している。客演陣も豪華で、物販もこの日にしか購入できないレア・アイテムを販売するそう。LowPass、コイツらはマジでヤバイんだって!



LowPass ワンマンライヴ 情報

6/1に渋谷o-nestでおこなわれるLowPassのワンマン、予約を絶賛受付中!
当日の物販ではココでしか買えないスペシャルグッズも販売予定!!

LowPass ワンマンライヴ
『Garbage in the Mirrorz』
@渋谷O-nest
2013年6月1日(土)
18:00開場 / 19:00開演
前売¥2000 / 当日¥2500 / 学割当日¥2000
《1部》
GIVVN / Riki Hidaka / DyyPRIDE / 呂布 / DARTHREIDER / YURIKA / Sati (RYUKI & KRA) / The S.I.M.S
《2部》
LowPass / 呂布 / MALIYA
https://shibuya-o.com/nest/2013/06

*公演の前売りチケット予約は希望公演前日までevent@ele-king.netでも受け付けております。お名前・電話番号・希望枚数をお知らせください。当日、会場受付にて予約(前売り)料金でのご精算/ご入場とさせていただきます。
https://p-vine.jp/news/4161


Sylvester Anfang II - ele-king

 先日、シルヴェスター・アンファングIIとしても活動するベルギーのヘルヴェトことグレンに教えてもらって度肝を抜かれたタイのチンドン屋バンドのYoutubeをまずは見てもらいたい。

 まったく覇気の感じられないメンバー、チンドン・サウンド・システム、何だか妙に儀式じみた周囲の状況、そして何より言語の隔たりによって何も詳細がわからないことが僕に与えるロマン、どうやら最近また持病のアモン・デュール症候群がぶり返してきた僕は完全に心を奪われてしまった。
 じつを言うと現在まで僕にこの病の自覚症状はなく、かなり最近になって他人からそれがすでに手の施しようがないほど進行していることを知らされた。出羽三山での山伏修行の体験談、カスタネダの夢見の実践を試みていた学生時代の恐怖体験などと音楽的嗜好を打ち明けた相手の多くにそれが重度のアモン・デュール症候群であることを診断されたのだ。

 時として社会生活に支障をきたす(注釈:1)この病は、現代の日本において認知度が低く、患者の多くが困難を抱えているのが実状だ。そういった意味ではベアボーンズ・レイ・ロウことエルネスト・ゴンザレスやヘルヴェトことグレン・ステンキステらの僕以上である重傷患者のコミュニティであるベルギーのシルヴェスター・アンファングIIは画期的な治療法とリハビリテーションを提案し、多くの患者に希望を与えていると言えよう。そう、ことヨーロッパにおいてのアモン・デュール症候群への関心は高く、ゆえに非常にさまざまな処方が普及しているのだ。フィンランドのサークルは最たる成功例のひとつだ。

 サークルは90年代初頭から活動する本国においてはかなりのポピュラリティーを得ているクラウト・ロック・スターとも言える超重傷患者集団だ。各メンバーのサイド・プロジェクトやソロを含め自らをNWOFHM!(注釈:2)と称し、死ぬまでクラウトし続けるであろう狂気のスタイルを掲げている。カントリーからブラック・メタルまで古今東西のあらゆる音楽(アルバムごとに異なるひとつのジャンルをピックアップして)を全力でクラウト・ロックしてみるという超絶スキルに裏打ちされた圧倒的強引さを、NWOBHMよろしく80'sヘアー・メタルのトラウマから生まれた爆笑センスをもってして最高のエンターテイメントに仕上げているバンドだ。
 彼らが主催する〈エクトロ・レコーズ(Ektro Records)〉が老若男女のアモン・デュール症候群を含む永続的クラウト・ロック中毒症患者たちへ定期的に処方箋を与えてきた点も賞賛に値する。膨大な自分たちのプロジェクトからジャーマン・サイケの生ける伝説、伊藤政則氏も真っ青なカルト・ヘアー・メタルの再発まであらゆる患者の症状に応じて処方しているようだ。

 最近の強烈な処方箋は〈VHK(Vagtazo Halottkemek)〉......ってこんなもんカタカナにできるかよ。英訳で〈ギャロッピング・コロナーズ(Galloping Coroners)〉です......の最新作。この一見すると某中古レコード店のプログレ・コーナーで投げ売りされてそうなクソダサいジャケットのバンドは、実際に僕は某中古レコード店のプログレ・コーナーで投げ売りされていた同じようなクソダサいジャケットの前のアルバムをゲットして知っているのだけれども、彼等のバイオグラフィーによれば1975年頃にハンガリーのブタペストで結成され、本国やドイツでカルト的な人気を博したシャーマニック・サイケ・パンクバンドで彼等の呪術/超自然/神秘的なサウンドは万物の存在理由の宇宙的解釈である。初期はハンガリー政府からの圧力により10年以上の地下潜伏活動を余儀なくされたようだ。80年代中期頃からヨーロッパ・ツアーを積極的に開始し、当時共演したイギー・ポップやジェロ・ビアフラ、ヘンリー・ロリンズは彼等への驚嘆と賞賛を辞さなかったと言う(実際VHKのアルバムはオルタナティヴ・テンタクルスから2枚ほどリリースされている)。そしてこの度VHKは13年ぶりにスタジオ・フル・アルバム、〈Veled Haraptat Csillagot!(ヴェレ...英訳、バイト・ザ・スター!)〉を〈エクトロ〉からリリースする!
 と、これを書いて何だか妙に疲れたのだが、このツッコむのもバカバカしいほどのバイオ、バンド・イメージとこのオジサンたちの本気度、そしてそれを微塵も裏切ることのないまったく新しくないサウンド、そして何より理解できない言語の隔たりも含めすべてが多くの症状に苛まれる患者たちを治癒してくれることに間違えはあるまい。

 先のYoutube動画を見ながら改めて思うのは、この世に音楽的にも芸術的にも宗教的にも文化人類学的にも秘境などなく、すべてがフラットでのっぺりとした何だかになってしまっているのかもしれない......が、大切なのはそれに心を巡らせるロマンなのだ。これこそがこの病と恒久的につきあっていく最も大切な心得だ。

 ちなみにこのレビューは末期アモン・デュール症候群患者であるele-king野田編集長に捧げます。やっぱクラウト・ロック本も作らないですかね?


注釈:1
主に若年層の症例として挙げられる、定職につかない/やたらとコミューン思考が強い等の発作によって社会生活に困難を来す。

注釈:2
おそらくニュー・ウェーヴ・オブ・フィニッシュ・ヘヴィ・メタルだと思われる。重度の患者達はみな口を揃えて自分たちのコミューンに名を冠したがる傾向が報告されている。シルヴェスター・アンファングIIの連中が「Funeral Folk(フューネラル・フォーク)」と抜かしているように。

vol.51:オタクはヒップスター? - ele-king

 先週はアーヴィング・プラザ(Irvingplaza.com)という比較的大きめの会場に、アナマナグチという8ビット・パンク・ポップ・ダンス・バンドを見に行った。

 メンバー4人、ニューヨーク・ベースの彼らの特徴を上げる:「蛍光色」「アニメ」「ヴィデオゲーム」「ライトアップ」「かわいい」「おたく」
 サイト(https://www.anamanaguchi.com)からもわかるように、彼らには、たくさんのこだわりとアイディアがある。それに同意する人がいかに多いのかという結果として、最新アルバム「endless fantasy」を作るためにキックスターターで、189.529(=200万弱)をレイズした(https://www.kickstarter.com)。

 会場は、半分がおたく男子(ナード、ギーク、でもスタイリッシュ)。彼らに向ける声援もアイドルのようだ。目を閉じるとゲーム音楽が流れ、目を開けると蛍光カラーのライトが反射するステージが飛び込んでくる。
 このライトに関して言うと、ベースのジェイムス(彼のベースの弦は、4色とも蛍光カラー、ネットで購入したらしい)は自分の家の地下室にライト研究室を持つぐらい、蛍光ライトにこだわり、さらに映像と音のシンク、ステージでのプレゼンテーション全てをケアしている。ギターのアリーは、蛍光グリーンの髪に(最近黄色から変えた)、蛍光オレンジのキャップ、蛍光ピンクのTシャツに、蛍光イエローのギターで、見た目はアニメキャラ。

 メンバーが着ていたのは、ブルックリンのファッション・レーベルRHLS/ルフェオ・ハーツ・リル・スノッティ(https://rhls.com/)、ウィリアムバーグ・ファッション・ウィークエンドでもおなじみの彼らは、アナマナグチと同じ世界観、ファンタジーの世界を生きている。ウィリアムズバーグにmovesというコンセプトストアも運営している(https://movesbrooklyn.com/)。

 基本インストなのだが、ゲスト・ヴォーカルが入る曲もある。今回は、アイルランド人の女子(歌が下手なきゃりーぱみゅぱみゅ風)と、女性R&Bシンガーがアナマナ好みにサンプリングされていた。ライヴの最後には、今日の観客から引っ張り出されたような、ヒップスター女子ふたりが登場(柄物レギンスにボーイフレンドT)、歌い終わったあとは、客席へダイヴするのだった。
 彼らの音楽は、アメリカのアタリや日本の任天堂、サブカルのごちゃ混ぜ感を、音楽+映像をプラットフォームに表現している。インディ・バンドのように心に訴えかける力やハングリー感はないが、音楽に対する熱意やアイディアは相当ある。オタクというと気持ち悪いというイメージもあるだろうが、新世代のオタクはヒップスターなのだ。バンドというフォーマットにこだわらず、自分が操作できる装置を使って、自分たちの娯楽を作っている。



 このショーを見ながら、私はオブ・モントリオールを思い出した。どちらも現実を忘れさせるほど、ファンタジーの世界を捻り出している。ヴィジュアルやステージでのパフォーマンス、ライティングに定評があるが、その裏では果てしない奮闘を繰り広げている。
 ちょうどアナマナグチのショーの3日後に、オブ・モントリオールを見たのだが、ステージを盛り上げるゲスト(シアトリカル・パフォーマー、女性ヴォーカリスト)、ライトショー(白い布を来た人がステージの中心に立ち、そこに映像が当てられる)など、音楽以外にさまざまなおまけが付いてきて、アナマナグチよりストーリー性を感じた。
 ライトショーは前回もあったが、今回は人の体のラインや形によってライトの当て方を変え、まるで動くプラネタリウムを見ているようだった。新曲からヒット曲をまんべんなくミックスし、全曲スムースに進む。まったくソツがない。
 バンドとして全体を見たとき、勢いなのか、新しいことをやっているワクワク感なのか、アナマナグチの方にパワーを感じたが、オブ・モントリオールは経歴も長いし、今回のツアーも後半に差し掛かっている。そこを差し引いても、オブモンはオーディエンスを楽しませること、アナマナグチは自分たちが楽しむことをいちばんとしているように思えた。
 オブ・モントリオールはその足で、日本(6/1タイコクラブ)に行くので、多くの人に是非ライヴを体験して欲しい。

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358 359 360 361 362 363 364 365 366 367 368 369 370 371 372 373 374 375 376 377 378 379 380 381 382 383 384 385 386 387 388 389 390 391 392 393 394 395 396 397 398 399 400 401 402 403 404 405 406 407 408 409 410 411 412 413 414 415 416 417 418 419 420 421 422 423 424 425 426 427 428 429 430 431