「Ord」と一致するもの

Brandon Coleman - ele-king

 8月のソニックマニアをまえにし、俄然〈Brainfeeder〉が勢いづいております。ロス・フロム・フレンズ、ドリアン・コンセプトに続いて、ブランドン・コールマンが同レーベルと契約、9月14日に新作をリリースします。カマシ・ワシントンライアン・ポーターの作品でもおなじみの彼ですが、きたるリーダー作ではどんなサウンドを届けてくれるのか。先行公開された“Giant Feelings”を聴いて待っていましょう。

BRANDON COLEMAN
2018年型ファンク・オデッセイ!!!
LA新世代ジャズを牽引する鍵盤奏者が〈BRAINFEEDER〉と契約!
カマシ・ワシントンらLAジャズ集団WCGDメンバーも集結した
ブランドン・コールマン待望の最新アルバム
『Resistance』のリリースが決定!
リード・シングル「Giant Feelings」をMVと共に公開!

隠しディスクを含む3枚組CD(LPは5枚組)でリリースされたカマシ・ワシントンの超大作『Heaven & Earth』に続き、そのカマシ・ワシントン、サンダーキャットらと共にLA新世代ジャズ・シーンを牽引するメイン・プレイヤーにして、スティーヴィー・ワンダーやアース・ウィンド&ファイアといったレジェンドから、チャイルディッシュ・ガンビーノ、アリシア・キーズ、ベイビーフェイス、ケンドリック・ラマー、そしてもちろんフライング・ロータスまで、錚々たるアーティストに絶対不可欠なファンキー&グルーヴを注ぎ込む鍵盤奏者のブランドン・コールマンが、〈Brainfeeder〉と契約! カマシ・ワシントンやマイルス・モズレー、ライアン・ポーターらLAジャズ集団WCGD(ウェスト・コースト・ゲット・ダウン)のメンバーが集結した待望の最新アルバム『Resistance』を9月14日(金)に世界同時リリースする。アルバムの発表に合わせて、カマシ・ワシントンも参加したリード・シングル「Giant Feelings」がMVと共に公開された。本楽曲はもともと、カマシ、マイルス・モズレー、ロナルド・ブルーナー・ジュニア、サンダーキャットことスティーヴン・ブルーナーら、WCGDメンバーらとプレイすることを目的に書かれたという。

Brandon Coleman - Giant Feelings (feat. Patrice Quinn & Techdizzle)
https://www.youtube.com/watch?v=tgMHcBx_eKQ

本作『Resistance』では、パーラメント/ファンカデリックのジョージ・クリントンやザップから、ドクター・ドレー、DJクイック、デイム・ファンクにわたる、ファンク王朝の正統な後継作であると同時に、ブランドンにとってのヒーローたち、ハービー・ハンコック、ピーター・フランプトン、ロジャー・トラウトマンといった先駆者の自由と実験の精神を称え、ファンクの新時代の到来を高らかに告げる内容となっている。

カマシのバンド・メンバーでもあり、名作『The Epic』及び最新アルバム『Heaven & Earth』にも名を連ね、ほかにもフライング・ロータスの『You're Dead!』、ライアン・ポーターの『Spangle-Lang Lane』や『The Optimist』、クァンティック&ザ・ウェスタン・トランシエントの『A New Constellation』などLAジャズ周辺作品に参加する一方、ベイビーフェイス、アリシア・キーズなどR&B方面から、スタンリー・クラーク、マーカス・ミラー、ケニー・ギャレット、クリスチャン・マクブライド、ロイ・ハーグローヴら大物ジャズ・ミュージシャンに起用され、さらにスティーヴィー・ワンダー、アース・ウィンド&ファイアというレジェンダリーなアーティストとの共演も果たすなど、超一流のセッション・ミュージシャンとしての腕を磨いてきたブランドン。近年ではラッパー兼俳優のチャイルディッシュ・ガンビーノと共演し、グラミー賞授賞式のステージでバックを務めたことも話題を呼んだ。自身のソロ活動ではアルバム『Self Taught』を2013年にデシタル・リリース(2015年にCD化)している。

本作『Resistance』は、彼のマルチ・ミュージシャンぶりにさらに磨きをかけ、『Self Taught』での音楽性をより強固に、2018年の今にアップデート。主な録音メンバーには、カマシ・ワシントン(サックス)、ライアン・ポーター(トロンボーン)、ロバート・ミラー(ドラムス)、ミゲル・アトウッド・ファーガソン(ヴィオラ、ヴァイオリン)ほか、クリストファー・グレイ(トランペット)、ジーン・コイ(ドラムス)、オスカー・シートン(ドラムス)、ジェイムズ・アレン(パーカッション)、センミ・モウレイ・エルメーダウィ(ギター)らが参加。新たに新進女性ヴァイオリン奏者のイヴェット・ホルツヴァルトほか、コリー・メイソン(ドラムス)、ビリー・オドゥム(ギター)らセッション・ミュージシャンが脇を固め、カマシのバンドのリード・シンガーとして知られるパトリース・クイン、ゴスペルをルーツに持つネオ・ソウル系名シンガーのエンダンビほか、シーラ、ドミニック・シロー、トリシア・バッターニら多彩なヴォーカル陣が名を連ねている。

1980年代のブギー・ディスコ調のスタイルは、現代ならタキシードからデイム・ファンクなどに通じるもので、ジャズ以外の幅広い音楽ファンにもアピールする力を持っている。ハービー譲りのコズミックなメロウネス、スティーリー・ダン譲りのポップさも垣間見られる一方、LAの〈SOLARRecords〉、そしてPファンクやザップ、ロジャー・トラウトマンなどの流れも彷彿とさせる。ミディアム~スロー・ナンバーも秀逸だ。2017年を代表する名アルバムとなったサンダーキャットの『Drunk』と同じベクトルで、ジャズ、ファンク、ソウル、ブギー、AORなどのエッセンスをブレンドした現代のアーバン・ブラック・コンテンポラリー・サウンドが、ここに完成した。

ブランドン・コールマン待望の最新アルバム『Resistance』は9月14日(金)に世界同時リリース! 国内盤CDには、ボーナストラック“Dance with Me”が追加収録され、歌詞対訳と解説書、ステッカーが封入される。またiTunes Storeでアルバムを予約すると、公開された“Giant Feelings (feat. Patrice Quinn & Techdizzle)”がいち早くダウンロードできる。

label: BRAINFEEDER / BEAT RECORDS
artist: Brandon Coleman
title: Resistance

release date: 2018.09.14 FRI ON SALE

国内盤CD:BRC-573
ボーナストラック追加収録 / 解説書・歌詞対訳封入

[ご予約はこちら]
beatink.com: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=9795
amazon: https://amzn.asia/2b5jAHm
Tower Records: https://bit.ly/2zLZQrl
HMV: https://bit.ly/2Lh9nuY

iTunes: https://apple.co/2NuAGPX
apple music: https://apple.co/2zQL8PD
Spotify: https://spoti.fi/2LsWI8t

[Tracklisting]
1. Live For Today
2. All Around The World
3. A Letter To My Buggers
4. Addiction (feat. Sheera)
5. Sexy
6. There’s No Turning Back
7. Resistance
8. Sundae (feat. N’Dambi)
9. Just Reach For The Stars
10. Love
11. Giant Feelings (feat. Patrice Quinn & Techdizzle)
12. Walk Free
13. Dance with Me (Bonus Track for Japan)

BRAINFEEDER XANNIVERSARY POP-UP SHOP
開催日程: 8/10 (金) - 8/12 (日)
場所: GALLERY X BY PARCO

フライング・ロータス主宰レーベル〈BRAINFEEDER〉の10周年を記念した日本初のポップアップ・ショップ開催決定!
8月10日~12日の三日間に渡って、渋谷スペイン坂のギャラリー X にて、日本初のポップアップ・ショップを開催! ここでしか手に入らない10周年記念グッズやレアな輸入グッ ズ、入手困難だった人気グッズの復刻、さらにアート作品の展示や〈BEAT RECOREDS〉のガレージセールなども同時開催! 初日にはDJイベントも!

詳細はこちら:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=9778

SONICMANIAに〈BRAINFEEDER〉 ステージが登場!
今年設立10周年を迎えたフライング・ロータス主宰レーベル〈BRAINFEEDER〉。サマーソニックに引けを取らない強力な出演陣が大きな話題となっている今年のソニックマニアでは、フライン グ・ロータス、サンダーキャット、ジョージ・クリントン&パーラメント・ファンカデリックという最 高の布陣に加え、ドリアン・コンセプト、ジェームスズー、ロス・フロム・フレンズら、フライング・ ロータスが激推しする逸材が一挙集結!

SONICMANIA 2018
www.sonicmania.jp

Ben Khan - ele-king

 トム・ミシュジェイミー・アイザックにと、エレクトロニック・ソウルの新世代たちがつぎつぎに頭角を現している昨今。先日ご紹介したカラムもその新たな息吹のひとつですが、ここへ来てさらなるニュー・カマーの登場です。彼の名はベン・カーン。これまでいくつかのシングルをリリースし注目を集めてきたエレクトロニック・ファンクの新鋭が、この8月、ファースト・アルバムを発表します。プロデューサーはフラッド。同作収録曲のライヴ映像が公開されていますので、まずはそちらをチェックしておきましょう。

・近未来エレクトロニック・ファンク! UK新鋭プロデューサー、ベン・カーンがデビュー作から“a.t.w. (against the wall)”のライヴ映像を公開!
・日本盤は8月29日(水)に発売決定!

英ロンドンを拠点に活動するエレクトロニックR&Bプロデューサー、ベン・カーン。敏腕プロデューサー、フラッド(デペッシュ・モード、スマッシング・パンプキンズ他)を迎えて制作されたセルフ・タイトルのデビュー・アルバムより“a.t.w. (against the wall)”のライヴ映像が公開された。カーン自身とライティング・デザイナーのトバイアス・ライランダー(FKAツイッグス、ドレイク、バレンシアガ他)が本映像を手掛けている。暗闇の中飛び交う無数のレーザーが近未来的な世界を表現している。

新曲“a.t.w. (against the wall)”のライブ映像はこちら
https://youtu.be/1Fzr8nuBNxM

収録曲“Do It Right”のMVはこちら
https://youtu.be/1qfhFaA6dr8

収録曲“2000 Angels”のMVはこちら
https://youtu.be/Rt7TxeZNs9Q

さらに、デビュー・アルバムの日本盤が8月29日(水)に発売されることが決定した! ダウンロード・ボーナストラックに加えて、歌詞対訳とライナーノーツが封入予定。ライナーノーツにはカーンによる1言楽曲解説も記載されているので、ぜひ日本盤を手にとってほしい。


■リリース情報
アーティスト名:Ben Khan (ベン・カーン)
タイトル:Ben Khan (ベン・カーン)
発売日:2018年8月29日(水)
品番:HSE-6836
レーベル:Dirty Hit / Hostess
価格:2,100円+税

※初回仕様限定:ボーナストラック・ダウンロードコード付ステッカー封入(フォーマット:mp3 / 発売日から1年間有効)。ライナーノーツ、歌詞対訳(予定)

Amazon / Tower / HMV / iTunes

[トラックリスト]
01. 2000 angels
02. do it right
03. monsoon daydream
04. ruby
05. a.t.w (against the wall)
06. fool for you
07. the green
08. soul into the sun
09. our father
10. love faded
11. dntwanturluv...
12. merchant prince
13. ruby1strecording
14. waterfall
15. warriors rose

新曲“a.t.w (against the wall)”含む4曲配信開始&アルバム予約受付中!
リンク:smarturl.it/j4398l

■ショート・バイオ
英ロンドンを拠点に活動するエレクトロニックR&Bプロデューサー。2013年にファースト・シングル「Drive (Part 1)」を SoundCloud に公開。同年に発表したセカンド・シングル「Eden」が Pitchfork にて「Best New Track」を獲得し、早耳リスナーを中心に一挙に注目を集める。2014年に「1992 EP」、翌年には「1000 EP」を発表。2018年8月、待望のデビュー・アルバムをリリースする。

Amen Dunes - ele-king

 60年代後半のサイケ・ロックの名盤がアニマル・コレクティヴ『サング・トンズ』を通過して蘇ったような……と書けば、褒めすぎなのはわかっている。だが、〈セイクリッド・ボーンズ〉最後の秘宝といった佇まいだったエイメン・デューンズが、この通算5作めでこれまでにない注目と称賛を集めているのは紛れもない事実だ。はっきりとブレイクスルー作である。21世紀、サイケはインディの内側でインになったりアウトになったりを繰り返してきたが、このニューヨークのサイケデリック・フォーク・バンドはシド・バレットなどを引き合いに出されながら、どこか悠然と、のらりくらりと自分たちの酩酊を鳴らし続け、ますます逃避が難しく感じられるこの時代にこそインディのフロントラインに立った。僕は今年、このアルバムをもっとも多く聴いている。

 00年代のアニマル・コレクティヴのようなゆるいパーカッションの打音とヨレた歌があるが、ただし、『サング・トンズ』~『フィールズ』ほど音響化しているわけではない。よく聴けば奥のほうでノイズや細かな音の処理がされており、モダンな空間設計はあると言えばそうだが、本作を魅力的にしているのはクラシック・ロックの伝統の血筋を引いたソングライティングのたしかさである。これまでも光るものが確実にあったが、TVオン・ザ・レディオ、ビーチ・ハウス、ギャング・ギャング・ダンスなどの仕事で知られるプロデューサー、クリス・コーディの手腕が大きいのだろう、過去のローファイ作よりメリハリの効いた音づくりでメロディが立っている。ギターのアルペジオの柔らかく余韻たっぷりの響きもじつにいい。気持ちよく酔わせてくれる。アルバム冒頭の“Intro”を経て、実質的なオープニング・トラック“Blue Rose”で軽やかにコンガが聴こえてくれば、そこはすでに楽園である。ゆっくりと広がるユーフォリア。エイメン・デューンズは実質デイモン・マクマホンのプロジェクトだが、彼の歌と演奏は力が抜けつつもたしかに人間の体温を感じさせる。
 もうひとつ、『フリーダム』を特徴づけているのは反復だろう。時間が引き伸ばされるようにギターのアルペジオのリフとドラミングが繰り返されるが、それはクラウトロックのマシーナリーさではなく、あくまでオーガニックなものとしてある。シンプルなコード進行の循環と懸命な歌で聴かせる“Time”、ゆるい躁状態にあるようなラリったダンス・フィールが感じられる本作中もっとも軽快な“Calling Paul the Suffering”、存外に厚みのあるギター・サウンドを持った“Dracula”、よりモダンなアンビエントの音響が聴けるクロージング“L.A.”、どれも捨てがたいが、ベスト・トラックには眩いフォーク・ソング“Believe”を推したい。スロウなテンポでメロウなメロディを大事そうになぞる歌。上がりきらずに、しかし静かな盛り上がりを演出する抑揚の効いたリズム。ラスト1分におけるギターの情緒たっぷりの反復がいつまでも続けばいいのにと思う。

 その“Believe”は、マクマホンの母親が末期癌を患った経験から影響を受けてできた歌だそうだ。「あなたのためにしよう/ぼくは落ちこんでなんかない」。これはとてもパーソナルな心の動きがもとになった作品で、彼の震える声はそのまま彼の内面の機微である。前作の『ラヴ』に引き続いての『フリーダム』……と、この期に及んで愛に続いて自由とは、どれだけレイドバックしているんだと思うが、それは愛の夏とは違うもっと小さなものだ。アンノウン・モータル・オーケストラやフォキシジェンなどのいまどきのサイケ・ロック勢にはユーモアや皮肉を交えた知性が感じられるが、エイメン・デューンズはもっと率直に内省的だ。彼が歌う「フリーダム」ははっきりとした言葉にすらならない。「ナナナ、ナナナ、イー、イー、ナナナ、ナナナ、自由を手に、自由を」……。
 足元がフラつくフォーク・ソング“Miki Dora”で歌っているのは、5~60年代のカリフォルニアにおける伝説的なサーファーであるミキ・ドーラのことだという。ファッション・リーダーでカリスマ的な魅力を備えた彼は有名な波乗りとなったが、詐欺でのちに収監されている。アウトローのアイコンなのだという。マクマホンがニューヨークにいながら、なぜ西海岸の夏の海を憧憬せずにいられないのかはわからない。が、彼はここで欠点を持った人間のことを思い出しているのではないだろうか。この、ポップ・ミュージックに立派なステートメントがごった返す時代に。そして歌う……「波は行ってしまった」。ミキ・ドーラは、そして、刑務所のなかにいてもなお「終わらない夏」の象徴なのだと言うひともいたという。『フリーダム』のサイケデリック・フォークの温かさは、行ってしまった「愛の夏」ないしは「終わらない夏」の残響なのだろうか。それでもここに溢れ返る揺らぎと震えは、人間の欠点や弱さをも飲みこんでわたしたちを陶然とさせる。

Gaika - ele-king

 昨年の来日公演で強烈なパフォーマンスを見せてくれたガイカ、オルタナティヴなダンスホール・サウンドを聴かせる異才が、ソフィーと共同で作り上げた新曲“Immigrant Sons (Pesos & Gas)”のMVを公開しました。この曲は7月27日にデジタルで配信されるデビュー・アルバム『Basic Volume』収録曲で、同アルバムは9月28日にフィジカル盤もリリースされます。これは楽しみ。

ジャム・シティも参加したニューアルバム『Basic Volume』より、
ソフィーと共同プロデュースをした楽曲、
“Immigrant Sons (Pesos & Gas)”のミュージック・ビデオを公開!
また『Basic Volume』のフィジカル・リリースも9月28日(金)に決定!

代名詞であるゴシック・ダンスホールとインダストリアル・エレクトロニックの融合が一つの到達点に達した作品となっている、ガイカのデビュー・アルバム『Basic Volume』。その中から新たに“Immigrant Sons (Pesos & Gas)”のミュージック・ビデオが公開された。

MV「Immigrant Sons (Pesos & Gas)」
https://youtu.be/1zesioegOY0

今回公開された“Immigrant Sons (Pesos & Gas)”はガイカとソフィーが共同プロデュースを行っており、ガイカがガイカたる所以である、彼特有のエッジーなサウンドを保ちつつも新たにメロディアスな領域に彼自身を突入させた一曲となっている。
また、映像は先日公開された“Crown & Key”と同じ、Paco Ratertaによって製作されたビデオとなっており、撮影はフィリピンで行われた。
スモーク、廃墟、ギャング等々、荒廃した景色を映し出す中、集団の中でリーダーのように振る舞うガイカ本人が暴力的かつどこか神秘的な感じも漂わせる映像に、ガイカのキャリア史上一番ポップで感情を揺さぶるような楽曲が乗り、まさにガイカ・ワールド炸裂といった内容に仕上がっている。

また、待望のデビュー・アルバムとなる『BASIC VOLUME』は、7月27日(金)にデジタル配信で世界同時リリースが決まっていたが、9月28日(金)にフィジカルでもリリースされることが決まった。

label: Warp Records
artist: GAIKA
title: BASIC VOLUME

release date: 2018.09.28 Fri On Sale

[ご予約はこちら]
BEATINK: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=9780

digital release date: 2018.07.27 Fri
iTunes: https://apple.co/2xTIA2b
Apple Music: https://apple.co/2HtiXVy

[TRACKLISTING]
01. Basic Volume
02. Hackers & Jackers
03. Seven Churches For St Jude
04. Ruby
05. Born Thieves
06. 36 Oaths
07. Black Empire (Killmonger Riddim)
08. Grip
09. Clouds, Chemists And The Angel Gabriel
10. Immigrant Sons (Pesos & Gas)
11. Close To The Root
12. Yard
13. Crown & Key
14. Warlord Shoes
15. Spectacular Anthem

PSYCHEDELIC FLOATERS - ele-king

 不肖柴崎の監修により新たなリイシュー・シリーズがスタートします。その名も「PSYCHEDELIC FLOATERS(サイケデリック・フローターズ)」。

 「サイケデリック」というと、その語自体が伝統的なロック・ミュージック観と分かちがたく結びいている故に、1967年のサマー・オブ・ラヴ、ヒッピー、LSD、ティモシー・リアリー、サイケデリック・アート、ジェファーソン・エアプレイン、……という連想を反射的に起こさせるものだったし、そういった理解がいまだ一般的なものだろう。ドラッグ・カルチャーと変革の時代が生んだ徒花的存在として、その徒花性が故に「あの時代を彷彿とさせる」アイコニックなカルチャーとしてその後も生きながらえてきた。70年代にはアンダーグラウンドに潜伏しながらもオーセンティックなサイケデリック・ロックを演奏するバンド群は根強く存在していたし、80年代にはオルタナティヴ・ロックの胚珠として「ペイズリー・アンダーグラウンド」なるリヴァイヴァルも勃興し、90年代以降も特定のテイストとして都度アーティストたちに取り入れられる一要素として「サイケデリック」という意匠は生き長らえてきた。

 しかし、本来この「サイケデリック」には、そうした単線的な視点・史観のみでは捉えきれない複層的な空間が広がっている。幻夢的な酩酊感、あるいは静的覚醒感。そういった、サイケデリックから抽出される特有の質感を「浮遊感=フロートする感覚」として捉え直すことで、大きく視野が切り拓かれることになる。快楽性とテクスチャーにフォーカスして音楽を捉え直すという感覚は、90年代に、かつてのソウル観に対する概念として「フリー・ソウル」というタームが出現したときのそれに近しいと言えるかも知れない。そう、ドアーズやエレクトリック・プルーンズ、ブルー・チアー(も素晴らしいけど)ではなく、後期ヴェルヴェット・アンダーグラウンドやカン、マニュエル・ゲッチング、ウェルドン・アーヴィン、ピーター・アイヴァース、ネッド・ドヒニー、ヨ・ラ・テンゴ、アンノウン・モータル・オーケストラフランク・オーシャン……。それらから共通して抽出されるタームこそを「サイケデリック・フローターズ」と呼びたい。

 そして、昨今のポスト・ヴェイパーウェイブ的趨勢の中、ニュー・エイジ、アンビエント、バレアリック、あるいはシティ・ポップやヨット・ロックが次々と注目・再発見されていく流れにあって、「サイケデリック・フローターズ」という切り口をそこに加えることで、いまこそ再び聴きたい(聴かれるべき)多くの隠れた名作が浮かび上がってくるのだった。これまで「サイケデリック」という文脈では一般的に語られることのなかった幅広いジャンルに存在する「無自覚なサイケデリック」とでも言うべき作品を発掘し、これまでのリイシュー・シリーズとは一線を画した視点で数々のタイトルを紹介していくつもりだ。

 では、今週7/18にリリースとなる第一弾の2作品を紹介しよう。

Jack Adkins / American Sunset

 米ウェストバージニア州出身のシンガー・ソングライターによる84年作の世界初CD化。
 少年期よりガレージ・ロック・バンドで演奏活動を始め、その後も全米サーキットで音楽活動を続けてきたジャック・アドキンス。80年代に入りマイアミに移住しその地の風景に心を打たれたことをきっかけに、北米各地の夕暮れ(Sunset)の風景を歌い綴ったアルバムを制作することにした。歌とギター、リンドラム、そしてシンセサイザー(ローランドジュピター8)を中心に、ほぼ全ての楽器を自身で演奏し録音されたこのレコードは、当時はごく少数のみプレスの超激レア作。
 まさに知る人ぞ知る存在だったこの盤の存在が知られるきっかけは、ダニー・マクレウィンとトム・コベニーというハードなディガーふたりによるユニット PSYCHEMAGIK が選曲を担当したヴァイナル・コンピレーション『PSYCHEMAGIK PRESENTS MAGIK SUNSET PART 1』(2015年)に、アルバム・タイトル曲が収録されたことだった。
 ジュピター8の独特の音色に80’s的風情を強く吹き込むリンドラムの響き、そしてジャック・アドキンス本人のマンダムな歌唱が融合した世界は、まるでルー・リードとアーサー・ラッセルが邂逅したかのような至高のニューエイジ・フォーク作となっている。キラキラと海を照らすオレンジ色の黄昏のような音楽に、バレアリックな哀切が掻きてられる。

Jack Adkins - American Sunset
Boink Records / Pヴァイン

Amazon Tower HMV


Chuck Senrick / Dreamin’

 米ミネソタ州出身のジャズ系シンガー・ソングライター、チャック・センリックによる唯一作(76年作)の世界初CD化。
 地元のバー・ピアニストとして演奏活動をおこなっていた彼が、愛する新妻との結婚生活を綴ろうと制作した作品で、自身のヴォーカルとフェンダー・ローズ、そしてKORG社製のリズムボックス「ドンカマチック」を伴い、友人宅のリヴィング・ルームでひっそりと録音されたものだ。マイケル・フランクスやケニー・ランキンといったヴォーカリストを思わせる切々としたクルーナー・ヴォイスに、透明感のあるローズの響き、そしてキッチュとも言えるドンカマのリズムが融合し、シンプルながらも不可思議な酩酊感を湛えた世界が(ささやかに)繰り広げられる。
 ヨット・ロックのブームを決定づけることになった米〈Numero〉からリリースされたコンピレーション『SEAFARING STRANGERS: PRIVATE YACHT』(2017年作)に、本作から“ドント・ビー・ソー・ナイス”が収録されたことでも一部ファンの注目を集めていた。そういったAOR再評価の最深部的作品としても実に味わい深いが、やはり注目すべきはその幸福な浮遊感に満ちたイノセントかつナイーヴな肌触りだろう。
 これぞまさしくアンコンシャス(無意識的)なサイケデリック・ミュージックの最良の例だと言えるだろう。

Chuck Senrick - Dreamin'
A Peach Production / Pヴァイン

Amazon Tower HMV


 「サイケデリック」についてあれやこれや考察するよりも、あるいは「いまっぽい」という視点ばかりに拘泥するよりも、何よりもまずはその浮揚するサウンドスケープに耳を委ねてみるのが良い。
皆さんのリスニング・ライフに少しの刺激と安らぎを与えてくれるであろう本シリーズ、今後も様々な知られざるレア作や埋もれた名作のリリースを予定していますので、是非ご愛顧のほど宜しくお願いします。

追記:
「サイケデリック・フローターズ」をより楽しんでいただけるように、Apple Music と Spotify 上にプレイリストを作成しました。是非併せてお楽しみください。

AppleMusic

Spotify

※配信曲有無の関係で、AppleMusic と Spotify で若干プレイリスト内容が異なります。

The Sea And Cake - ele-king

 あのザ・シー・アンド・ケイクが、『Runner』(2012)以来、6年ぶりの新作アルバム『Any Day』を発売した。相変わらずとても良い。手に入れてからというもの何度も繰り返し聴いている。リリースはお馴染みの〈スリル・ジョッキー〉だ(日本盤リリースは〈HEADZ〉)。
 初夏から夏にかけてのムードに合う爽やかなアルバムだが、むろん、それだけが繰り返し聴き込んでしまう理由ではない。彼らの音楽は「間」のアンサンブルが絶妙なのだ。このアンサンブルの独特さはなんだろう? と思いつつ、気が付けば20年以上もずっとアルバムを買い続けている。
 なぜだろう。いわゆる最小限のアンサンブルが風通しが良いからだろうか。だが、ザ・シー・アンド・ケイクは、ヴォーカル、ギター、ベース、ドラムスという、ごく普通のロック・バンド編成にも関わらず、まったく普通ではない妙味がある。演奏とヴォーカルの関係性、ドラムとベースの関係性など、これまでのアルバムを聴き込んでいけば一目瞭然だ。こんなロック・バンドはほかにない。ポップであっても変わっている。変わっているけど変ではない。聴きやすく、ポップで、やさしくて、まろやか。一筋縄ではいかなくて、それでも音楽は親しみやすい。少し不思議な音楽。それがザ・シー・アンド・ケイクの印象だ。

 もちろん、サム・プレコップ、アーチャー・プルウィット、ジョン・マッケンタイア、エリック・クラリッジら希代の演奏家・音楽家らがメンバーなのだから、豊穣な音楽性を有していることは当然といえば当然である。じっさい、サム・プレコップのフローティングするようなヴォーカル、アーチャー・プルウィットの味わい深いギター、ジョン・マッケンタイアの複雑にして軽やかに弾むドラミング、エリック・クラリッジの個性的なベースというアンサンブルは「必然と魔法」のように、ザ・シー・アンド・ケイクの本質を形作っていた。
 だからこそ、前作以降、病で演奏活動ができなくなったエリック・クラリッジの脱退は、バンドにとって、ほとんど存続にかかわる事態だったのではないか。そう、本作は、エリック・クラリッジが不在のままサム・プレコップ、アーチャー・プルウィット、ジョン・マッケンタイアら3人によって制作されたアルバムなのである。
 彼らはエリック・クラリッジの代わりに新たなベーシストを入れることをしなかった。たしかに3曲め“Any Day”に、ザ・ジンクスや、ユーフォンで知られるニック・マクリがゲスト・ベーシストとして参加しているが、そのほかの曲はジョン・マッケンタイアがシンセ・ベースを演奏している。

 空白をほかの誰かですべて埋めるのではなく、空白は空白のままにしておくこと。彼らはエリック・クラリッジ脱退以降、そんな方法をとった。これは素晴らしい選択に思える。
 なぜか。その「間」を活かした方法論が、とてもザ・シー・アンド・ケイクらしいのだ。むろん、エリック・クラリッジのベースがなくなったことでバンドのアンサンブルは変わった。当然だ。しかしジョン・マッケンタイアのシンセ・ベースは、その空白を埋めようとはしていない。彼のベースを模倣するのではなく、あくまで空白を空白のままにしておくように、シンプルなベースラインを刻んでいる。
 これは新しいベースを全面的に導入するよりは、ザ・シー・アンド・ケイクがザ・シー・アンド・ケイクであるための重要な選択だったと思う。むろんベースという文字通りバンド・アンサンブルを支えていた存在を失った事実は途轍もなく大きい。だが彼らは「間」のアンサンブルのバンドなのだ。不在を不在のまま存在に変えること。

 喪失から継続へ。このアルバムは人生における喪失への哀しみと、しかしそれでも続いていくこの美しい世界への慈しみがある。全10曲、まるでアートワークに用いられたサム・プレコップの写真そのもののような作品だ。こうして新作が録音され、リリースに至ったことは、ひとつの「奇跡」にすら思える。人生の傍らで鳴り続ける音楽がここに。

Actress × London Contemporary Orchestra - ele-king

 ここ日本からは想像しにくいかもしれないが、海の向こうにおいてアフロフューチャリズムは一定の文化的地位を獲得している。たとえば昨秋アテネでは、世界各地から多くのアーティストを招いたアフロフューチャリズムのフェスティヴァルが開催されており、サン・ラー・アーケストラを筆頭に、ドップラーエフェクトやア・ガイ・コールド・ジェラルドといったヴェテラン、ムーア・マザーやンキシといった新世代がパフォーマンスを披露している(アブドゥル・カディム・ハックやオトリス・グループなどもゲスト・スピーカーとしてレクチャーを担当)。アクトレスことダレン・J・カニンガムもそのフェスティヴァルに出演していたひとりだ。
 自らをホアン・アトキンスの系譜に位置づけるアクトレスがデトロイトのエレクトロ~テクノから多大な影響を受けていることは間違いない。けれども彼はそのサウンドをあからさまに模倣することはせず、むしろ他のさまざまな音楽を参照し、それらの要素を独自に結び合わせ、まったくべつのものとして提出してきた。そのあり方にこそダレン・カニンガムのオリジナリティが宿っていたわけで、ようするに彼は物真似をしないということ、すなわち己自身の想像力を研ぎ澄ませるということをこそURやドレクシアから継承したのだろう。
 そのアクトレスの新作『LAGEOS』は驚くべきことに、オーケストラとの共作である。これまでさまざまな趣向でリスナーを唸らせてきたアクトレス、彼はいま、どのような想像力をもって自身の可能性を押し広げようとしているのだろうか。

 今回アクトレスの相方を務めているロンドン・コンテンポラリー・オーケストラ(以下、LCO)は、2008年にヒュー・ブラントとロバート・エイムスによって立ち上げられたアンサンブルで、近年ではレディオヘッド『A Moon Shaped Pool』への参加や、あるいはリン・ラムジー監督作『You Were Never Really Here』やポール・トーマス・アンダーソン監督作『Phantom Thread』といった映画のスコアなど、ジョニー・グリーンウッドとの絡みで注目されることが多い。
 他方で彼らはこれまでマトモスやミラ・カリックスといったエレクトロニカ勢ともコラボしてきており、その経験が良き蓄えとなっているのだろう、エレクトロニクスと器楽が手を取り合うと、それぞれの歩んできた歴史の長さが異なるためか、往々にして音色/音響面で後者の支配力が大きくなってしまうものだけれど、本作においてLCOの面々はアクトレスの本懐を削がないことに苦心している。そのために彼らがとった方法は、それぞれの楽器を可能な限り器楽的な文法から遠ざけるというものだ。その奮闘ぶりは「RA Session」の動画を観るとよくわかるが、たとえばチェロのオリヴァー・コーツ(最近〈RVNG〉と契約)もコントラバスのデイヴ・ブラウンも、自身の相棒を打楽器的に利用している。

 そのようなLCOのお膳立てのおかげで、ダレン・カニンガムには大いなる想像の余白が残されることとなった。彼の卓越した編集術はまず、冒頭の表題曲に素晴らしい形で実を結んでいる。か細いパルス音をバックに、ヴァイオリンとヴィオラが独特の酩酊をもたらす2曲目“Momentum”では、ゆったりとヴィブラートをかけることによって紡ぎ出された妖しげな揺らぎが、カニンガムによるエディットを経由することで何かの声のような奇妙な響きを獲得している。3曲目“Galya Beat”では、跳んだり跳ねたりする低音とノイズの背後で弦がドローンを展開しようと試みるものの、途中で弓を折り返さねばならないからだろう、持続は完遂されず、ここでも不思議な揺らぎが生み出されている。ミニマルに反復する高音パートを少しずれた間合いで低音がかき乱していく4曲目“Chasing Number”も、グルーヴという曖昧な概念をメタ化しようとしているようでおもしろい。
 後半もよく練り込まれていて、パンダ・ベアからインスパイアされたという“Surfer's Hymn”では鍵盤とノイズがじつにスリリングなかけ合いを繰り広げているが、そこにさりげなくエレクトロのビートを差し挟まずにはいられないところがアクトレスらしい。「器楽インダストリアル」とでも呼びたくなる“Voodoo Posse, Chronic Illusion”も聴きどころ満載だけれど、キャッチーさで言えば、昨年シングルとして先行リリースされた“Audio Track 5”に軍配が上がる。坂本龍一がラジオでかけたことでも話題となったこの曲は、機能的なビートがひゅーう、ふゅーうとさえずるストリングスと手を組むことで、素晴らしい陶酔を生み出している。

 とまあこのように、『LAGEOS』はカニンガムのたぐいまれな編集センスを堪能させてくれるわけだけれど、本作にはその逆、つまりLCOが既存のアクトレスの楽曲を再解釈したトラックも収められている。『Splazsh』の“Hubble”と『R.I.P.』の“N.E.W.”がそれで、いずれもまったくべつの曲へと生まれ変わっている。LCOの面々も負けていない。
 アフロフューチャリズムがSF的な想像力を駆使することによって現実を捉え直したように、つまりは逃走することによって新たな闘争を実現したように、既存のテクノからもオーケストラからも遠ざかることによって未知の音楽の可能性を開拓した本作は、アクトレスとLCO双方のキャリアにとって画期となるのみならず、テクノとオーケストラとの、エレクトロニクスと器楽との共存のあり方をも更新している。これはもう素直に、LCOの寛容さ・柔軟さと、ダレン・カニンガムの冒険心を讃えたい。コラボたるもの、かくあるべし。


Krrum
Honeymoon

37 Adventures / ホステス

SoulElectronic

Amazon Tower HMV iTunes

 2017年のアップル・ウォッチのCMを見た人はいるだろうか? 「ゴー・スウィム」というシリーズの第2弾で、時計をつけたままプールで泳ぐというフィルムなのだが、そのバックに流れていたのがカラム(綴りはKrrumで、発音的にはクラムが近い)というアーティストの“イーヴル・ツイン”という曲である。近年のアップル社のCM曲に起用されたUK勢には、ハドソン・モホーク、サム・スミス、ムラ・マサなどがいるのだが、旬の人だったり、またはこれからブレイクしそうな人だったりと、人選がいいところをついている。これらCM曲は、エレクトリックな佇まいを感じさせながらも、どこかソウルフルで人間的、温かみだったり、可愛らしさだったりを感じさせる作品が多いのだが、カラムの“イーヴル・トウィン”もそうした1曲である。なお、この“イーヴル・ツイン”のミュージック・ヴィデオもあって、何かのオーディション会場にマイケル・ジャクソン、ボーイ・ジョージ、ニッキー・ミナージュ、ブリトニー・スピアーズのソックリさんが現れるのだが、彼らはみな年季の入った太めのLGBTという感じで、重たそうな体でキレのないダンスを繰り広げるコミカルなものだ。そして、カラム自身も審査員役で登場している。

 カラムはプロデューサー/シンガー・ソングライターのアレックス・キャリーによるプロジェクトで、英国のリーズを活動拠点とする。長い山羊髭に黒縁のロイド眼鏡と、ファッションもなかなかユニークでキャラが立っている。彼はダービーシャー州のダーク・ピークスという田舎町出身で、13才の頃から作曲を始め、地元のスカ・バンドでトランペットを演奏していた。その後、リーズの大学に進学して音楽制作を学び、その頃にゴリラズからボン・イヴェールなどいろいろな音楽の影響を受け、吸収していった。2016年1月に同じアパートに住む友人のハリソン・ウォークと“モルヒネ”というシングルを発表し、この曲や“イーヴル・ツイン”を含む初EPを同年3月にリリース。Shazamやハイプ・マシーンのチャートを賑わせた後、前述のように“イーヴル・ツイン”がアップルCMに使用され、さらに話題を呼んだのである。その後、楽曲制作と並行してピッチフォークやBBCなどが主催するフェスティヴァルにも参加し、人気を伸ばしていったカラム。そして、“イーヴル・ツイン”ほか、“ハード・オン・ユー” “スティル・ラヴ” “ムーン”などのシングル曲を含むファースト・アルバム『ハネムーン』が満を持して発表された。盟友のハリソン・ウォークがソング・ライティングで参加しているが、彼もギタリスト兼シンガー・ソングライターで、ニック・マーフィー(元チェット・フェイカー)を彷彿させる味のあるヴォーカルだ。基本的にアレックスがトラックを作り、ハリソンが歌うというのがカラムのスタイルである。そして、ミキサーにはアデル、ベック、アルバート・ハモンド・ジュニアなどの作品に携わるベン・バプティ、そしてトゥー・ドア・シネマ・クラブ、ムラ・マサなどを手掛けるティム・ローキンソンが参加。また、コリーヌ・ベイリー・レイの楽曲を手掛けたジョン・ベックとスティーヴ・クリサントゥが、それぞれ“フェーズ”と“ハニー、アイ・フィール・ライク・シンニング”でソング・ライティングに加わっている。

 カラムは『ハネムーン』について、ややシニカルな見方をしている。「たいていハネムーンというと、ポジティヴなとらえ方をする人が多いけど、その反面、子供でいることや自由であることが終わりを迎えたという時期を意味するのではないのかな」ということで、このタイトルをつけたそうだ。物事に対して客観的で斜に構えた見方をしており、たとえばラヴ・ソングの“スティル・ラヴ”も「恋愛関係を前進させたい思いが強いけれど、踏みとどまってしまう自分がいる。なぜなら直感的に、その関係より先に進めなくてもいい、妄想で終わらせてもいいと思っている自分がいるから」という思いを表現している。“フェーズ”は「あなたは私の人生の通りすがりの男だから」と、自らを言い聞かせて関係を断ち切るという切ないラヴ・ソング。“ムーン”は「好きな人と関係性を結ぶためには、通らなくてはいけない告白という儀式がある。でも、その引き金を引くと、自分が思いもよらなかった結果が待ち受けていることがある」という具合に、彼の歌にはどこか鬱屈した感情が見受けられる。“アイ・ソート・アイ・マーダード・ユー”や“ハニー、アイ・フィール・ライク・シンニング”などの曲名も意味深だ。このように屈折したフィーリングをデジタル・プロダクション主体のサウンドに乗せるスタイルで、基本的にはエレクトリック・ソウル~オルタナR&B系のシンガー・ソングライターと位置づけられるだろう。そして、シニカルでクールに物事を俯瞰する視線は、とてもイギリス人らしいと言えそうだ。

 ジェイムズ・ブレイクやサム・スミスの成功以降、UKの男性シンガー・ソングライターにはジェイミー・ウーン、クワーブス、クウェズ、サンファなど逸材が多い。今年ブレイクした筆頭のトム・ミッシュほか、ジェイミー・アイザックやプーマ・ブルーなど、若く才能のあるシンガー・ソングライターが続々と登場している。カラムもこうした中のひとりであるが、たとえばトム・ミッシュあたりと比較するとプロダクションはずっとエレクトリック寄りである。トム・ミッシュがギター・サウンドを主体とするのに対し、カラムの軸となるのはシンセ・サウンドで、そこにホーン・サンプルとオート・チューンなどで加工したコーラスを加えていく。“イーヴル・ツイン” “ウェイヴズ” “スティル・ラヴ”がこうしたプロダクションの代表で、“アイ・ソート・アイ・マーダード・ユー”あたりに顕著だが、全体的に1980年代風のエレクトロ・テイストを感じさる点も特徴だ。“ユー・アー・ソー・クール”のようにポップで爽快感を感じさせる曲も魅力的だが、“ブレッシング・イン・ア・ドレス”や“ドーム・イズ・ザ・ムード・アイム・イン”などヘヴィーなヒップホップ系ビートの骨太の曲、“イフ・ザッツ・ハウ・ユー・フィール”のようにオルタナ感満載のベース・ミュージック寄りの曲と、いろいろとヴァラエティにも富んでいる。そして、どの曲からもポップなセンスが感じられる。アップル繋がりではないけれど、ムラ・マサの楽曲や、そのアルバムにも参加していたジェイミー・リデルの作品に通じるところも見受けられるし、クワーブス、ソン(SOHN)あたりに近い部分も感じさせる、というのがカラムの印象だ。“ハード・オン・ユー”のようにソウルフルなフィーリングとエレクトリック・サウンドの融合が、彼の真骨頂と言えるだろう。


21世紀ブラジル音楽ガイド - ele-king

ブラジル音楽の新世代と現在進行形の決定版、600作以上を紹介!

リオのインディー・ポップ/ノヴォス・コンポジトーレスとサンパウロ・シーン/ミナス新世代/MPB/Samba Soul/Hip Hop/インスト/各地の音楽……ほか

今世紀に入りブラジル音楽が以前にも増して多様化、
並行してブラジル音楽に興味を持つ他ジャンルのリスナーも増えていることを受け、
今世紀に入って頭角を現してきた新世代を中心に、
現在進行形のブラジル音楽を、間口を広げて紹介。

誰もが待ち望んでいた21世紀のブラジル音楽ガイド、ついに登場!

【執筆陣】
伊藤亮介、江利川侑介、KTa☆brasil、佐々木俊広、宿口豪、高木慶太、橋本徹、花田勝暁、堀内隆志、村田匠

CONTENTS

序文
本書の見方・表記について
ブラジル地図

CHAPTER 01
+2とリオのインディー・ポップ

+2(モレーノ、ドメニコ、カシン)
+2ファミリー
Los Hermanos とメンバーのソロ作
Rio-Bahia connection
+2周辺の次世代
+2の弟世代
女性
男性
男性、BAND

[コラム] 音楽の都リオ~ドメニコ・ランセロッチに見る21世紀のリズムの継承と革新 KTa☆brasil(ケイタブラジル)

CHAPTER 02
ノヴォス・コンポジトーレスとサンパウロ・シーン

ダニ・グルジェルと周辺
シンコ・ア・セコとメンバーのソロ
ノヴォス・コンポジトーレス
タチアナ・パーハ
サンパウロ・シーン/女性
サンパウロ・シーン/男性
エクスペリ・サンバ

CHAPTER 03
ミナス新世代

アントニオ・ロウレイロ
ハファエル・マルチニ
男性
ヘシークロ・ジェラル世代
グラヴェオーラほか
女性
インストゥルメンタル
新世代の先輩

[コラム] クルビ・ダ・エスキーナ名曲集 中原仁

CHAPTER 04
MPB

アナ・カロリーナ
ヴァネッサ・ダ・マタ
マリア・ヒタ
ホベルタ・サー
女性
女性/モニカ・サルマーゾ
女性
男性
セルソ・フォンセカ
ボサノヴァ

[コラム] アントニオ・カルロス・ジョビン作品集 中原仁

CHAPTER 05
Samba Soul / Funky Groove / Urban

セウ・ジョルジ
セウ・ジョルジの仲間
リオ・グルーヴ
サンパウロ・グルーヴ
バンド、ユニット(サンパウロ)
バンド(サンパウロ、リオ、ミナス)
女性シンガー
アーバン

CHAPTER 06
Hip Hop / Funk / Drum'n Bass / Electro / Reggae / Street Beat

Hip Hop
Funk(ファンキ)
Drum'n Bass & Electronica
Reggae
Street Beat

[コラム] 21世紀のバツカーダに見る“ボサ・ノーヴァ”! KTa☆brasil(ケイタブラジル)

CHAPTER 07
Bahia(バイーア)

イヴェッチ・サンガーロ
Axé(アシェー)
Samba & Áfro Bahia
Áfro Bahia
Pagodão(パゴダォン)

[コラム] アフロ・ブラジレイロの新潮流とカエターノ・ヴェローゾ『Livro』の遺伝子 橋本徹

CHAPTER 08
Nordeste & Norte
ノルデスチ(北東部)とノルチ(北部)

Nordeste(北東部)
Norte(北部)

CHAPTER 09
Rock / Folk & Country

Rock
Folk & Country (Sertanejo)

CHAPTER 10
Samba

テレーザ・クチスチーナと Lapa 新世代
Samba Novo
Pagode(パゴーヂ)
Gafieira(ガフィエイラ)

CHAPTER 11
Instrumental

アンドレ・メマーリ
アミルトン・ヂ・オランダ
ヤマンドゥ・コスタ
Choro
Jazz
Jazz / New Age
New Age
Large Ensemble

CHAPTER 12
90's 世代

90's 世代
Collaboration

[コラム] ブラジル音楽のプロデューサーと、ブラジルで眠りについた2人の外国人 中原仁

CHAPTER 13
Maestro, Legend

MPB
Samba
Bahia, Nordeste, Norte
Instrumental etc.
Bossa Nova Age

CHAPTER 14
International

Argentina, Uruguay
Argentina, Cuba, USA
USA, Italia
Portugal, Spain
France, UK, Áftica
Nordeste International
Special Project
アート・リンゼイ

[コラム] NYの名門レーベル Adventure Music が示す21世紀ブラジル音楽の“粋” 橋本徹

索引
筆者プロフィール

Brainfeeder - ele-king

 8月17日に開催されるソニックマニアにてオールスターの集結がアナウンスされている〈ブレインフィーダー〉ですが、それに先がけ、8月10日~12日の3日間、同レーベルの日本初となるポップアップ・ショップが展開されます。また、8月18日から1週間限定で、フライング・ロータスが監督を務めた映画『KUSO』も上映されるとのこと。さすが10周年、てんこ盛りです。これはもう祭りと言っていいでしょう。この夏は思いっきり〈ブレインフィーダー〉に染まるべし。

フライング・ロータス主宰レーベル
〈BRAINFEEDER〉の10周年を記念した
日本初のポップアップ・ショップ開催決定!

         
フライング・ロータス初長編監督作品
『KUSO』の1週間限定上映も決定!

今年設立10周年を迎えたフライング・ロータス主宰レーベル〈BRAINFEEDER〉。サマーソニックに引けを取らない強力な出演陣が大きな話題となっている今年のソニックマニアでは、フライング・ロータス、サンダーキャット、ジョージ・クリントン&パーラメント・ファンカデリックという最高の布陣に加え、ドリアン・コンセプト、ジェームスズー、ロス・フロム・フレンズら、フライング・ロータスが激推しする逸材も集結させ、ステージのひとつを完全にジャック! そんな話題沸騰中の彼らから、新たなニュースが到着! ソニックマニア1週間前となる8月10日~12日の三日間に渡って、渋谷スペイン坂のギャラリー Xにて、日本初のポップアップ・ショップの開催を発表! ここでしか手に入らない10周年記念グッズやレアな輸入グッズ、入手困難だった人気グッズの復刻、さらにアート作品の展示や〈BEAT RECOREDS〉のガレージセールなども同時開催! 初日にはDJイベントも!


BRAINFEEDER X
ANNIVERSARY POP-UP SHOP

開催日程:8/10 (金) - 8/12 (日)
8/10 (金) 18:00-23:00
8/11 (土) 12:00-20:00
8/12 (日) 12:00-18:00

場所: GALLERY X BY PARCO

企画/制作: BEATINK Inc. / PARCO CO.,LTD.

BRAINFEEDER SPECIAL GOODS
10 周年記念グッズや限定輸入グッズなど、BRAINFEEDER グッズの販売

BRAINFEEDER ART EXHIBITION
BRAINFEEDER 関連のアート作品展示

BEAT RECORDS GARAGE SALE
BRAINFEEDER ほか、BEAT RECORDS 関連作品のガレージセールやグッズ販売

『KUSO』PREVIEW BOOTH
フライング・ロータス監督映画作品『KUSO』の一部映像解禁!

DJ EVENT
開催初日の夜にはオープニング・パーティを開催。BRAINFEEDER 好きのDJ がスペシャル・セットを披露

さらに、奇才フライング・ロータス初長編監督作品『KUSO』が、2018年8月18日(土)より渋谷・シネクイントにて1週間限定レイトショー上映決定! “史上最もグロテスクな映画”とも称され、サンダンス映画祭にて退席者続出の問題作、遂に日本公開!

※チケットは 各鑑賞日の2日前より発売予定。詳しくはシネクイント公式 HPをご覧下さい。
www.cinequinto.com/shibuya

BRAINFEEDER NIGHT IN SONICMANIA
featuring
FLYING LOTUS
THUNDERCAT
GEORGE CLINTON
DORIAN CONCEPT
ROSS FROM FRIENDS
JAMESZOO

08.17 FRI MAKUHARI MESSE
www.sonicmania.jp

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