「Ord」と一致するもの

Michinori Toyota - ele-king

 00年代における日本のフォーク・リヴァイヴァルの先駆者、パラダイス・ガラージ名義でも知られるシンガーソングライターの豊田道倫が、去る3月26日、急遽路上ライヴの映像を公開している。96年に上京した豊田は50歳という区切りを迎え、同日地元・大阪へと帰郷したそうで、その区切りとなるパフォーマンスを収めたものだ。演奏されているのは新曲の “tokyo” で、撮影・編集はカンパニー松尾が、音調整は宇波拓が担当している。「ようやく歌をちゃんとやろうという気になった」とのことなので、今後の豊田の活躍に期待しよう。

地元大阪に帰ることを決めた、変幻自在のシンガーソングライター豊田道倫の珍しい路上ライブを緊急公開!

新宿のとある公園、別れ際、サプライズで歌い出す豊田道倫。
グッバイ東京。
多くの思い出と共に。
行ってらっしゃい大阪へ。
けど、歌があるかぎり、また会える。

豊田道倫 「tokyo」2020年3月 公園にて
https://www.youtube.com/watch?v=NH--YnpMeP8

撮影・編集:カンパニー松尾
音調整:宇波拓

1995年、パラダイス・ガラージと名乗り、地元大阪でCDデビューし、96年に上京して以降、
変幻自在の音楽活動を続けて来たシンガーソングライター豊田道倫が、
約25年に渡る東京での生活に区切りを付け、2020年3月26日、大阪に帰る。
18時台の新幹線に乗って東京を発つという豊田道倫へのはなむけとして、
過日、サプライズで披露された路上での弾き語りライブを公開します。
「これからのことはまだ何も決まってない」と豊田道倫は言うが、
「ようやく歌をちゃんとやろうという気になった」とも言う。
今まで残したたくさんの歌やライブを破り捨てるような、こてこてのおっさんになるのかな。
いってらっしゃい、気をつけて。
そしてまた、新しい歌を聴かせてください。
そんな気持ちを込めて作りました。

2020年3月 ハマジムレコーズ カンパニー松尾

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「tokyo」

幻のようなパン屋
妖精のようなおじいさん
しけた都会の片隅
夜中に開いて朝しめる

クリームパンは美味しかった
もう食べることは出来ない
君に昔 話したっけ
勘違いだったらごめんね

どっちに行こう あっちに行こう
こっちに行こう どこにも行かない
たった一つの道 見つけるまで
 
雪のようなビルディング
虹のようなスーサイド
しけた弁当かきこんで
男は今日も働いてる

恋とか愛は嫌いだった
映画や本も見なかった
ただ 信じていたかった
女と子どもと 友達

どっちに行こう あっちに行こう
こっちに行こう ゆっくり歩いて
たった一つの道 見つけたから

幻のようなパン屋
妖精のようなおじいさん
しけた都会の片隅
夜中に開いて朝しめる

長い話しは終わり
お茶がさめたから帰ろう
君住む街を想う
ずっとずっと想う

KANDYTOWN - ele-king

 昨秋セカンド『ADVISORY』を発表し、クルーとして大きな成長を遂げたキャンディタウンが、2020年初となる新曲 “PROGRESS” をリリースしている。ナイキの AIR MAX 2090 から着想を得た楽曲とのことで、Gottz、MUD、KEIJU、Dony Joint の4MC が参加。ティザー映像は各方面でひっぱりだこの山田健人が手がけている。彼らの次なる一歩を見逃すな!

KANDYTOWN
NIKE AIRMAX2090 にインスパイアされた新曲 “PROGRESS” をリリース。

昨年2ndアルバム『ADVISORY』をリリースし東阪での Zepp TOUR を成功させるなど、様々な話題を振りまいた国内屈指の HIP HOP CREW:KANDYTOWN が2020年第一弾となる新曲 “PROGRESS” を3月26日にリリースすることが発表された。

この楽曲は同日に発売となる AIR MAX 2090 の制作コンセプトにインスパイアされた楽曲で、Neetz が手掛けたトラックに Gottz, MUD, KEIJU, Dony Joint の4MCが参加している。また、リリース情報とともに同作品のアートワークと MUSIC VIDEO のティザー映像が公開となっている。

ティザー映像では AIR MAX 2090 DUCK CAMO をはじめとする様々なモデルを着用したメンバーの姿が映し出されており、こちらの映像作品は山田健人がディレクションを担当している。

なお、早くも2020年第一弾となるリリースを迎えた KANDYTOWN は5月24日(日)に横浜赤レンガ倉庫野外特設会場にて行われる「GREENROOM FESTIVAL’20」への出演も決まっているのでそちらもお見逃しなく。

【KANDYTOWN「PROGRESS」】
Rap:Gottz, MUD, KEIJU, Dony Joint
Music:Neetz
DL/ST URL: https://kandytown.lnk.to/prog
Teaser URL: https://youtu.be/uVTAaGO2Njs
MUSIC VIDEO Director: 山田健人

【KANDYTOWN PROFILE】
東京出身の総勢16名のヒップホップ・クルー。
2014年 free mixtape 『KOLD TAPE』
2015年 street album 『BLAKK MOTEL』『Kruise』
2016年 major 1st full album 『KANDYTOWN』
2017年 digital single 『Few Colors』
2018年 digital single 『1TIME4EVER』
2019年 e.p. 『LOCAL SERVICE』, major 2nd full album『ADVISORY』

【開催概要】
名称:GREENROOM FESTIVAL’20
場所:横浜赤レンガ倉庫野外特設会場
出演日:2020年5月24日(日)
オフィシャルサイト: https://greenroom.jp

【事務局一般先行チケット】
事務局一般先行チケット販売中!
[1日券] 価格 ¥12,000
[2日通し券] 価格 ¥19,000
https://greenroom.jp/tickets/

【NIKE AIR MAX 2090 “進化を恐れない姿勢” SHORT MOVIE MUD(KANDYTOWN) Direction by atmos】
https://www.atmos-tokyo.com/lp/air-max-day-2020-duck-camo

Battles - ele-king

 結成17年を経ていまだなお意欲的な姿勢を崩さないバトルスが、なんとオンライン・リミックス・コンテストを開催する。指定のサイトにアクセスして最新作『Juice B Crypts』の素材をダウンロード、めいめいがそれを自由に料理し、バトルスがそれにフィードバックを返す、という流れ。詳しくは下記をご参照いただきたいが、しっかり賞品も用意されているので、われこそはという方はぜひチャレンジしてみよう。〆切は5月24日。

最新アルバム『Juice B Crypts』のリミックス・プロジェクトを開始!
優勝者には豪華賞品も!

バンド・サウンドの常識をことごとく脱構築し、音楽ファン達に強烈な衝撃を与えてきた現代エクスペリメンタル・ロック・バンドの最高峰、バトルスが、最新アルバム『Juice B Crypts』のオンライン・リミックス・プロジェクトをスタート!

Battles Remix Project
https://rmx.bttls.com

ウェブサイト上ではアルバム中に使用されているシンセ、ドラム、ギター、その他様々なサウンドが分解され、インタラクティブな地下鉄マップに配置されている。それぞれのサウンドは自由にダウンロードできるようになっており、サンプリングしたり、ストレッチしたり、歪ませたり、リミックスしたりすることが可能だ。

バトルスは様々な人からのアイデアを聴きたいとの想いからこのプロジェクトをスタートさせたという。ファンにとっては自分でリミックスした音源を直接バンドに聴いてもらうことのできる絶好のチャンスだ。最終的に数名の優秀作品が選ばれ、Native Instruments、〈Warp〉、そして Battles から賞品が贈られる。音源提出の締め切りは2020年5月24日。

賞品一覧

最優秀賞
Native Instruments Komplete Kontrol S49
Native Instruments Komplete 12 Ultimate
好きな Native Instruments の拡張音源 (Expansion)
Native Instruments Store の200ドル分のクーポン
バトルスとのスカイプでのスタジオセッション
バトルスのサイン入りグッズ
『La Di Da Di』のハンドスタンプが押されたテストプレスを含む〈Warp Records〉からの賞品
シングル、EP、アルバムに使える Spinnup の無料クーポン
Melodicsの12ヶ月分のサブスクリプション

第2位
Native Instruments Komplete 12
好きな Native Instruments の拡張音源 (Expansion)

第3位
好きな Native Instruments の拡張音源 (Expansion)

JUICE B CRYPTS
バトルスの最新アルバム『Juice B Crypts』は現在好評発売中!国内盤にはボーナストラック “Yurt” を追加収録し、歌詞対訳と解説書が封入される。

label: BEAT RECORDS / WARP RECORDS
artist: BATTLES
title: Juice B Crypts
release date: NOW ON SALE

国内盤CD
国内盤特典:ボーナストラック追加収録/解説書・歌詞対訳封入
BRC-613 ¥2,200+税

国内盤CD+Tシャツ
BRC-613T ¥5,500+税

DJ Mitsu the Beats - ele-king

 仙台を拠点とするヒップホップ・グループ、GAGLE のメンバーであり、一人のプロデューサー/DJとしても多彩な活躍を繰り広げてきた DJ Mitsu the Beats。2003年リリースのファースト・ソロ・アルバム『New Awakening』に収録された、R&Bシンガーの Dwele をフィーチャした “Right Here” によって、彼はヒップホップ・プロデューサーという殻を見事に打ち破り、さらに2009年にリリースされたセカンド・アルバム『A Word To The Wise』では、ジャズ・ヴォーカリストの Jose James をゲストに迎えて “Promise In Love” というビッグ・チューンを生み出す。以降、ソロ・アーティストあるいは GAGLE として、その時代ごとにエッジの効いたヒップホップを追求してきたわけだが、“Promise In Love” に続く、Mitsu the Beats ならではの歌モノを求めていたファンも少なくなかったであろう。初の試みともいえる、歌とインストゥルメンタル曲のみで構成されている今回のアルバム『ALL THIS LOVE』は、そんなファンにとっても待望の一作となったに違いない。

 本作には4名の日本人シンガーと2名のゲスト・ミュージシャン、さらに Mitsu the Beats の原点とも言える “Promise In Love” のリミックスが加えられており、純度100%のソウル/R&B/ジャズ・アルバムとなっている。Mitsu the Beats の音楽性を表すのに、“ジャジー・ヒップホップ” という言葉は一つの代名詞のようにもなっているが、本作における彼のサウンド・プロダクションは、ヒップホップの基礎であるループという概念は保ちながらも、着実に進化している。ピアノを含む様々なキーボードの音色やベースなどによってビートに魂が吹き込まれて、巧みにトラックが展開してゆき、さらにそこに歌が乗ることで永遠の広がりさえも感じ取ることができる。もちろん、シンガーやミュージシャンといったゲストが加わることによる効果も大きいであろうが、Mitsu the Beats が本来持っている音楽性がより増幅された結果、本作のサウンドが完成しているのは疑いようがない。

 アルバムのタイトルの通り、本作のテーマは「愛」であるが、〈Jazzy Sport〉ファミリーでもある Marter が歌う “Togetherness” は、新型コロナによって世界中が混乱しているいまのこのタイミングにこそ最も聞いて欲しい一曲であり、暖かいメロディの中に “人類愛” という普遍的なメッセージが強く響いてくる。Marter 以外の日本勢3名は全て女性シンガーなのだが、テーマの捉え方も含めて、三者三様の異なるアプローチが試みられている。すでに共演歴のある Mahya との “You Are Mine” や、シンガーソングライターの Akiko Togo (東郷晶子)が英語で歌う “Moon & Sun” などは、比較的ストレートなソウル/R&Bチューンとして隙のない仕上がりであるが、一方で Naoko Sakai との “密” はビートのパターンがかなり独特で異質を放っている。それと同時にビートに乗るピアノやシンセのレイヤーが実に美しく、Naoko Sakai の歌の絡みも実に濃密で、アルバム中盤の良い意味でのアクセントとしても機能している。そして、もう一つのヴォーカル曲である “Promise In Love” のリミックスであるが、あの印象的な黒田卓也のトランペットが控えめになっていることに驚きつつ、オリジナルの良さが上手く現代に引き継がれている。

 一方、ゲスト・ミュージシャンに関してだが、“Intimate affairs” にクレジットされている cro-magnon のキーボーディスト、Takumi Kaneko (金子巧)は、実はこれ以外の複数の曲に参加しているそうで、本作の温かみある生のグルーヴを引き出した張本人とも言えるだろう。そして、もう一人、“Slalom” にフィーチャされている Mark de Clive-Lowe は、おそらく『New Awakening』以来の共演となる。“Intimate affairs” と “Slalom” ともにビートが4つ打ちで根底にはジャズという共通項も感じられる上で、パーカッシヴな前者、ブギーなグルーヴ感の後者と、それぞれの個性が見事に出ているのも非常に面白い。さらにゲストのクレジットのない3つのインスト曲も秀逸で、特に後半にセットされている “It’s Time” は実に気持ちの良いラヴァーズロック・チューンになっており、Mitsu the Beats の引き出しの豊かさに改めて驚かされる。

 ちなみにすでに制作中という次のアルバムでは、打って変わって、ラップ・アルバムを予定しているという。すでに Frank-N-Dank をフィーチャした “Splash” という曲のデモ・ヴァージョンが Spotify にて配信されており、Mitsu the Beats のハードな一面が引き出された実にタイトな仕上がりで、間違いなく本作とは全く異なる作風になるだろう。こちらも期待大だ。

Playlists During This Crisis - ele-king

家聴き用のプレイリストです。いろんな方々にお願いしました。来た順番にアップしていきます。楽しんで下さい。

Ian F. Martin/イアン・F・マーティン

This is a multi-purpose playlist for people stuck at home during a crisis. The first 5 songs should be heard lying down, absorbed in the music’s pure, transcendent beauty. The last 5 songs should be heard dancing around your room in a really stupid way.

Brian Eno / By This River
Nick Drake / Road
Life Without Buildings / The Leanover
Young Marble Giants / Brand - New - Life
Broadcast / Poem Of Dead Song
Holger Czukay / Cool In The Pool
Yazoo / Bad Connection
Lio / Fallait Pas Commencer
Der Plan / Gummitwist
Electric Light Orchestra / Shine A Little Love

野田努

週末だ。ビールだ。癒しと皮肉と願い(冗談、怒り、恐怖も少々)を込めて選曲。少しでも楽しんでもらえたら。問題はこれから先の2〜3週間、たぶんいろんなことが起きると思う。できる限り落ち着いて、とにかく感染に気をつけて。お金がある人は音楽を買おう(たとえば bandcamp は収益をアーティストに還元している)。そして本を読んで賢くなろう。いまのお薦めはナオミ・クラインの『ショック・ドクトリン』。

Ultravox / Just For A Moment
フィッシュマンズ / Weather Report
Talking Heads / Air
Funkadelic / You Can’t Miss What You Can't Measure
New Age Steppers / Fade Away
RCサクセション / うわの空
Horace Andy / Rain From the Sky
Sun Ra / We Travel the Spaceways
Rhythim is Rhythim / Beyond the Dance
Kraftwerk / Tour De France

小林拓音

考えることはいっぱいあるけど、暗くなってしまいそうなのでちょっとだけ。被害は万人に平等には訪れない。割を食うのはいつだって……。問題の根幹は昔からなにも変わってないんだと思う。そこだけ把握しといて、あとは明るく過ごそうじゃないか。

Skip James / Hard Time Killing Floor Blues
The Beatles / Money
Public Enemy / Gotta Give the Peeps What They Need
Drexciya / Living on the Edge
Milanese vs Virus Syndicate / Dead Man Walking V.I.P.
Mark Pritchard / Circle of Fear
Erik Truffaz & Murcof / Chaos
Ata Ebtekar and the Iranian Orchestra for New Music / Broken Silence Cmpd
Psyche / Crackdown
Autechre / Flutter

河村祐介

怒るべきことにはちゃんと怒りましょう。僕らの生活と文化を守るために。そして、リラックスと快楽の自由も。

The Specials / Ghost Twon
Bob Marley / So Much Trouble In the World
Tommy McCook / Midnight Dub
Nightmares on Wax / Mores
7FO / Waver Vapour
石野卓球 / TRIP-O-MATIC
Nehoki / Morgentrack
Kodama And The Dubstation Band / かすかな きぼう
思い出野郎Aチーム / 灯りを分けあおう
Janelle Monáe / Smile

Neil Ollivierra/ニール・オリヴィエラ(The Detroit Escalator Co.)(LA在住)

Absorbing Songs for Armchair Traveling

Robin Guthrie, Harold Budd / How Close Your Soul
Thore Pfeiffer / Alles Wird Gut
Cortex / Troupeau bleu
Milton Nascimento / Tudo O Que Você Podia Ser
The Heliocentrics / A World of Masks
Kodo / Shake - Isuka Mata
Miles Davis / Indigo
Gordon Beck / Going Up
Funkadelic / Maggot Brain
Simply Red / I’m Gonna Lose You

Matthew Chozick/マシュー・チョジック

自己隔離生活にぴったりの癒し曲を集めてみました。コロナ野郎のせいで新しいレコード発表は激減、そんなときこそ古いアルバムを聴き直してみよう。家でパジャマパーティでも開きながら、僕のプレイリストをエンジョイしてくれたら嬉しいな。目に見えないもの同士、ウィルスとの戦いには心を癒す良薬で対抗だ!

Björk / Virus
The Knife / Afraid of You
The Velvet Underground / After Hours
John Lennon / Isolation
Harold Melvin & The Blue Notes / I Miss You
Grouper / Living Room
Beat Happening / Indian Summer
ゆらゆら帝国 / おはようまだやろう
Nico / Afraid
高橋幸宏 / コネクション

細田成嗣

つねにすでにオリジナルなものとしてある声は、しかしながら変幻自在のヴォーカリゼーションや声そのものの音響的革新、あるいは声をもとにしたエクストリームな表現の追求によって、より一層独自の性格を獲得する。見えない脅威に襲われる未曾有の事態に直面しているからこそ、わたしたちは「ひとつの声」を求めるのではなく、さまざまな声を聴き分け、受け入れる耳を養う必要に迫られているのではないだろうか。

Luciano Berio, Cathy Berberian / Sequenza III for voice
Demetrio Stratos / Investigazioni (Diplofonie e triplofonie)
David Moss / Ghosts
Meredith Monk, Katie Geissinger / Volcano Songs: Duets: Lost Wind
Sainkho Namchylak, Jarrod Cagwin / Dance of an Old Spirit
Fredy Studer, Ami Yoshida / Kaiten
Alice Hui Sheng Chang / There She Is, Standing And Walking On Her Own
Senyawa / Pada Siang Hari
Amirtha Kidambi, Elder Ones / Decolonize the Mind
Hiroshi Hasegawa, Kazehito Seki / Tamaki -環- part I

沢井陽子(NY在住)

非常事態が発生し、仕事もない、やることもない、家から出られないときには元気が出る曲を聴きたいけれど、いつもと変わらないヴァイヴをキープしたいものです。

Deerhunter / Nothing Ever Happened
Unknown Mortal Orchestra / Necessary Evil
Thin Lizzy / Showdown
Janko Nilovic / Roses and Revolvers
Courtney Barnett / Can’t Do Much
Big Thief / Masterpiece
Brittany Howard / Stay High
Kaytranada, Badbadnotgood / Weight Off
St Vincent / Cruel
Gal Costa / Lost in the Paradise

デンシノオト

少しでもアートという人の営みに触れることで希望を忘れないために、2018年から2020年までにリリースされた現代音楽、モダンなドローン、アンビエント、電子音響などをまとめた最新型のエクスペリメンタル・ミュージック・プレイリストにしてみました。

James Tenney, Alison Bjorkedal, Ellie Choate, Elizabeth Huston, Catherine Litaker, Amy Shulman, Ruriko Terada, Nicholas Deyoe / 64 Studies for 6 Harps: Study #1
Golem Mecanique / Face A
Werner Dafeldecker / Parallel Darks Part One
Yann Novak / Scalar Field (yellow, blue, yellow, 1.1)
3RENSA (Nyatora, Merzbow, Duenn) / Deep Mix
Beatriz Ferreyra / Echos
Anastassis Philippakopoulos, Melaine Dalibert / piano piece (2018a)
Jasmine Guffond / Degradation Loops #1
Dino Spiluttini / Drugs in Heaven
Ernest Hood / At The Store

Paolo Parisi/パオロ・パリージ(ローマ在住)

Bauhaus / Dark Entries
Sonic Youth / The End of the End of the Ugly
Mission of Burma / That’s How I Escaped My Certain Fate
Wipers / Return of the Rat
Pylon / Feast on my Heart
Gun Club / Sex Beat
The Jim Carroll Band / It’s Too Late
Television / Friction
Patti Smith / Kimberly
The Modern Lovers / Hospital

末次亘(C.E)

CS + Kreme / Saint
Kashif, Meli’sa Morgan / Love Changes (with Meli’sa Morgan)
Tenor Saw / Run From Progress
Phil Pratt All Stars / Evilest Thing Version
坂本龍一 / PARADISE LOST
Beatrice Dillon / Workaround Three
Joy Orbison, Mansur Brown / YI She’s Away
Burnt Friedman, Jaki Liebezeit / Mikrokasper
Aleksi Perälä / UK74R1721478
Steve Reich, Pat Metheny / Electric Counterpoint: II. Slow

木津毅

If I could see all my friends tonight (Live Recordings)

ライヴハウスがスケープゴートにされて、保障の確約もないまま「自粛」を求められるいま、オーディエンスの喜びに満ちたライヴが恋しいです。というわけで、ライヴ音源からセレクトしました。来日公演は軒並みキャンセルになりましたが、また、素晴らしい音楽が分かち合われるライヴに集まれることを願って。

Bon Iver / Woods - Live from Pitchfork Paris Presented by La Blogothèque, Nov 3 2018
James Blake / Wilhelm Scream - Live At Pitchfork, France / 2012
Sufjan Stevens / Fourth of July - Live
Iron & Wine / Sodom, South Georgia
Wilco / Jesus, Etc.
The National / Slow Show (Live in Brussels)
Jaga Jazzist / Oslo Skyline - Live
The Streets / Weak Become Heroes - One Live in Nottingham, 31-10-02
LCD Soundsystem / All My Friends - live at madison square garden
Bruce Springsteen / We Shall Overcome - Live at the Point Theatre, Dublin, Ireland - November 2006

髙橋勇人(ロンドン在住)

3月25日、Spotify は「COVID-19 MUSIC RELIEF」という、ストリーミング・サービスのユーザーに特定の音楽団体への募金を募るキャンペーンを始めている。

スポティファイ・テクノロジー社から直接ドネーションするわけじゃないんかーい、という感じもするのが正直なところだし、その募金が渡る団体が欧米のものにいまのとこは限定されているのも、日本側にはイマイチに映るだろう。現在、同社はアーティストがファンから直接ドネーションを募れるシステムなどを構築しているらしいので、大手ストリーミング・サービスの一挙手一投足に注目、というか、ちゃんとインディペンデントでも活動しているアーティストにも支援がいくように我々は監視しなければいけない。

最近、Bandcamp では、いくつかのレーベルが売り上げを直接アーティストに送ることを発表している。そういう動きもあるので、この企画の話をいただいたとき(24日)、スポティファイが具体的な動きを見せていないので、やっぱり Bandcamp ともリンクさせなければと思った。ここに載せたアーティストは、比較的インディペンデントな活動を行なっている者たちである。このプレイリストを入り口に、気に入ったものは実際にデータで買ってみたり、その活動をチェックしてみてほしい。

ちなみに、「こんなときに聴きたい」という点もちゃんと意識している。僕はロックダウンにあるロンドンの部屋でこれを書いている。これらの楽曲は人生に色彩があることを思い出させてくれる楽曲たちだ。さっきこれを聴きながら走ってきたけど(友達に誘われたらNOだが、最低限の運動のための外出はOKだと総理大臣閣下も言っていたしな)、最高に気持ちよかった。

object blue / FUCK THE STASIS
Prettybwoy / Second Highball
Dan-Ce / Heyvalva Heyvalva Hey
Yamaneko / Fall Control
Tasho Ishii / Satoshi Nakamoto
Dayzero / Saruin Stage
Chino Amobi / The Floating World Pt.1
Brother May / Can Do It
Elvin Brandhi / Reap Solace
Loraine James / Sensual

松村正人

MirageRadioMix

音楽がつくりだした別天地が現実の世界に浸食されるも、楽曲が抵抗するというようなヴィジョンです。Spotify 限定で10曲というのはたいへんでしたが、マジメに選びました。いいたいことはいっぱいありますがひとまず。

忌野清志郎 / ウィルス
Björk / Virus
Oneohtrix Point Never / Warning
憂歌団 / 胸が痛い
The Residents / The Ultimate Disaster
The Doors / People Are Strange
キリンジ / 善人の反省
坂本慎太郎 / 死にませんが?
Can / Future Days - Edit
相対性理論 / わたしは人類(Live)

三田格

こんなときは Alva Noto + Ryuichi Sakamoto 『Virus Series Collectors Box』(全36曲!)を聴くのがいいんじゃないでしょうか。ローレル・ヘイローのデビュー・アルバム『Quarantine(=伝染病予防のための隔離施設)』(12)とかね。つーか、普段からあんまり人に会わないし、外食もしないし、外から帰ったら洗顔やうがいをしないと気持ち悪い性格なので、とくに変わりないというか、なんというかコロナ素通りです。だから、いつも通り新曲を聴いているだけなので、最近、気に入ってるものから上位10曲を(A-Reece の “Selfish Exp 2” がめっちゃ気に入ってるんだけど Spotify にはないみたいなので→https://soundcloud.com/user-868526411/a-reece-selfish-exp-2-mp3-1)。

Girl Ray / Takes Time (feat. PSwuave)
Natz Efx Msaki / Urban Child (Enoo Nepa Remix)
DJ Tears PLK / West Africa
Afrourbanplugg / General Ra (feat. Prettyboy)
SassyBlack / I Can’t Wait (feat. Casey Benjamin)
Najwa / Más Arriba
Owami Umsindo / eMandulo
Cristian Vogel & Elektro Guzzi / Plenkei
Oval / Pushhh
D.Smoke / Season Pass

AbuQadim Haqq/アブカディム・ハック(デトロイト在住)

These are some of my favorite songs of all time! Reflections of life of an artist from Detroit.
Thanks for letting me share my favorite music with you! Stay safe and healthy in these troubling times!

Rhythim is Rhythim / Icon
Underground Resistance / Analog Assassin
Public Enemy / Night of the Living Baseheads
Orlando Voorn / Treshold
Drexciya / Hydrocubes
Oddisee / Strength & Weakness
Iron Maiden / Run To The Hills
The Martian / Skypainter
Gustav Holst / Mars: Bringer of War
Rick Wade / First Darkness

Sk8thing aka DJ Spitfi_(C.E)

10_Spotify's_for_Social _Distancies_!!!!List by Sk8thing aka DJ DJ Spitfi

Francis Seyrig / The Dansant
Brian Eno / Slow Water
The Sorrow / Darkness
Owen Pallett / The Great Elsewhere
DRAB MAJESTY / 39 By Design
Our Girl / In My Head
Subway / Thick Pigeon
Einstürzende Neubauten / Youme & Meyou
Fat White Family / I Believe In Something Better
New Order / ICB

矢野利裕

人と会えず、話もできず、みんなで食事をすることもできず……という日々はつらく寂しいものです。落ち着きのない僕はなにをしたらいいでしょうか。うんざりするような毎日を前向きに乗り越えていくために、少なくとも僕には音楽が大事かもしれません。現実からの逃避でもなく現実の反映でもない、次なる現実を呼び寄せるものとしての音楽。そのいちばん先鋭的な部分は、笑いのともなう新奇な音楽(ノヴェルティソング)によって担われてきました。志村けんのシャウトが次なる現実を呼び寄せる。元気でやってるのかい!?

ザ・ドリフターズ / ドリフのバイのバイのバイ
雪村いずみ / チャチャチャはいかが
ザ・クールス / ラストダンスはCha・Chaで
セニョール・ココナッツ・アンド・ヒズ・オーケストラ / YELLOW MAGIC (Tong-Poo)
Negicco / カリプソ娘に花束を
スチャダラパー / レッツロックオン
4×4=16 / TOKISOBA Breakbeats
イルリメ / 元気でやってるのかい?
マキタスポーツ / Oh, ジーザス
水中、それは苦しい / マジで恋する五億年前

Sinta(Double Clapperz)

大変な時ですが、少しでも肩の力抜けたらいいなと思い選曲しました。

徳利 / きらめく
gummyboy / HONE [Mony Horse remix]
Burna Boy / Odogwu
Stormzy / Own It [Toddla T Remix feat. Burna Boy & Stylo G]
J Hus / Repeat (feat. Koffee)
LV / Walk It / Face of God
Free Nationals, Chronixx / Eternal Light
Pa Salieu / Frontline
Frenetik / La matrice
Fory Five / PE$O

Midori Aoyama

タイトルに色々かけようと思ったんですがなんかしっくりこなかったので、下記10曲選びました。よく僕のDJを聴いてくれている人はわかるかも? Party の最後でよくかける「蛍の光」的なセレクション。1曲目以外は特にメッセージはないです。単純にいい曲だと思うので、テレワークのお供に。
ちなみに最近仕事しながら聴いているのは、吉直堂の「雨の音」。宇宙飛行士は閉鎖されたスペースシャトルの中で自然の音を聴くらしい。地球に住めないのであればやっぱり宇宙に行くしかないのだろうか。

Marvin Gaye / What’s Going On
The Elder Statesman / Montreux Sunrise
12 Senses / Movement
Culross Close / Requiem + Reflections
Children Of Zeus / Hard Work
Neue Grafik Ensemble feat. Allysha Joy / Hotel Laplace
Aldorande / Sous La Lune
Michael Wycoff / Looking Up To You
Stevie Wonder / Ribbon In The Sky
Djavan / Samurai

高島鈴

コロナ禍のもとで生じている問題はひとつではないから、「こういう音楽を聞くといい」と一律に提言するのはすごく難しい。危機を真面目に受け止めながらどうにか生存をやっていくこと、危機を拡大させている政治家の振る舞いにきちんと怒ること、今私が意識できるのはこれぐらいである。みなさん、どうぞご無事で。

Kamui / Aida
Moment Joon / TENO HIRA
Garoad / Every Day Is Night
Awich / 洗脳 feat. DOGMA & 鎮座DOPENESS
Jvcki Wai / Anarchy
田島ハルコ / holy♡computer
Rinbjö / 戒厳令 feat. 菊地一谷
田我流 / Broiler
ASIAN KUNG-FU GENERATION / 夜を越えて
NORIKIYO / 神様ダイヤル

Mars89

一曲目はゾンビ映画サンプリングの僕の曲で “Run to Mall” って曲だけど、今は Don’t Run to Mall です。
それ以外は僕がお気に入りでずっと聞いてる曲たちです。部屋で悶々と行き場のない感情を抱えながら精神世界と自室の間を綱渡りで行き来するような感じの曲を選んでみました。

Mars89 / Run to Mall
Tim Hecker / Step away from Konoyo
Burial / Nightmarket
Raime / Passed over Trail
KWC 92 / Night Drive
Phew / Antenna
The Space Lady / Domae, Libra Nos / Showdown
Tropic of Cancer / Be Brave
Throbbing Gristle / Spirits Flying
Paysage D’Hiver / Welt Australia Eis

大前至

桜が満開な中、大雪が降りしきる、何とも不思議な天気の日曜日に、改めて自分が好きな音楽というものに向き合いながら選曲。今自分がいる東京もギリギリの状態ですが、昔住んでいたLAはすでにかなり深刻な状態で、そんな現状を憂いながら、LA関連のアーティスト限定でリラックス&少しでも気分が上がるような曲でプレイリストを組んでみました。

Illa J / Timeless
Sa-Ra Creative Partners / Rosebuds
NxWorries / Get Bigger / Do U Luv
Blu & Exile / Simply Amazin’ (steel blazin’)
Oh No / I Can’t Help Myself (feat. Stacy Epps)
Visionaries / If You Can’t Say Love
Dudley Perkins / Flowers
Jurassic 5 / Hey
Quasimoto / Jazz Cats Pt. 1
Dâm-Funk / 4 My Homies (feat. Steve Arrington)

天野龍太郎

「ウイルスは生物でもなく、非生物とも言い切れない。両方の性質を持っている特殊なものだ。人間はウイルスに対して、とても弱い。あと、『悪性新生物』とも呼ばれる癌は、生物に寄生して、防ぎようがない方法で増殖や転移をしていく。今は人間がこの地球の支配者かもしれないけれど、数百年後の未来では、ウイルスと癌細胞が支配しているかもね」。
氷が解けていく音が聞こえていた2019年。まったく異なる危機が一瞬でこの世界を覆った2020年。危機によってあきらかになるのは、システム、社会、政治における綻びや破綻、そこにぽっかりと大きく口を開いた穴だ。為政者の間抜けさも、本当によくわかる。危機はテストケースであり、愚かさとあやまちへの劇的な特効薬でもありうる。
ソーシャル・ディスタンシング・レイヴ。クラブ・クウォランティン。逃避的な音楽と共に、ステイ・ホーム、ステイ・セイフ・アンド・ステイ・ウォーク。

Kelly Lee Owens / Melt!
Beatrice Dillon / Clouds Strum
Four Tet / Baby
Caribou / Never Come Back
Octo Octa / Can You See Me?
tofubeats / SOMEBODY TORE MY P
Against All Logic / Deeeeeeefers
JPEGMAFIA / COVERED IN MONEY!
MIYACHI / MASK ON
Mura Masa & Clairo / I Don’t Think I Can Do This Again

James Hadfield/ジェイムズ・ハッドフィールド

Splendid Isolation

皆どんどん独りぼっちになりつつある事態で、ただ独りで創作された曲、孤立して生まれた曲を選曲してみました。

Alvin Lucier / I Am Sitting in a Room
Phew / Just a Familiar Face
Massimo Toniutti / Canti a forbice
Ruedi Häusermann / Vier Brüder Auf Der Bank
Wacław Zimpel / Lines
Kevin Drumm / Shut In - Part One
Mark Hollis / Inside Looking Out
Magical Power Mako / Look Up The Sky
Arthur Russell / Answers Me
Mike Oldfield / Hergest Ridge Part Two

小川充

都市封鎖や医療崩壊へと繋がりかねない今の危機的な状況下で、果たして音楽がどれほどの力を持つのか。正常な生活や仕事はもちろん、命や健康が損なわれる人もいる中で、今までのように音楽を聴いたり楽しむ余裕があるのか、などいろいろ考えます。かつての3・11のときもそうでしたが、まず音楽ができることを過信することなくストレートに考え、微力ながらも明日を生きる希望を繋ぐことに貢献できればと思い選曲しました。

McCoy Tyner / For Tomorrow
Pharoah Sanders / Love Is Everywhere
The Diddys feat. Paige Douglas / Intergalactic Love Song
The Isley Brothers / Work To Do
Kamasi Washington / Testify
Philip Bailey feat. Bilal / We’re Winner
Brief Encounter / Human
Boz Scaggs / Love Me Tomorrow
Al Green / Let’s Stay Together
Robert Wyatt / At Last I Am Free

野田努(2回目)

飲食店を営む家と歓楽街で生まれ育った人間として、いまの状況はいたたまれない。働いている人たちの胸中を察するには余りある。自分がただひとりの庶民でしかない、とあらためて思う。なんも特別な人間でもない、ただひとりの庶民でいたい。居酒屋が大好きだし、行きつけの飲食店に行って、がんばろうぜと意味も根拠もなく言ってあげたい。ここ数日は、『ポバティー・サファリ』に書かれていたことを思い返しています。

Blondie / Dreaming
タイマーズ / 偽善者
Sleaford Mods / Air Conditioning
The Specials / Do Nothing
The Clash / Should I Stay or Should I Go
Penetration / Life’s A Gamble
Joy Division / Transmission
Television / Elevation
Patti Simth / Free Money
Sham 69 / If the Kids Are United

Jazzと喫茶 はやし(下北沢)

コロナが生んだ問題が山積して心が病みそうになる。が、時間はある。
音楽と知恵と工夫で心を豊かに、この難局を乗り切りましょう!(4/6)

Ray Brayant / Gotta Travel On
Gil Scott Heron / Winter In America
Robert Hood / Minus
Choice / Acid Eiffel
Armando / Land Of Confusion
Jay Dee / Fuck The Police
Liquid Liquid / Rubbermiro
Count Ossie & The Mystic Revelation Of Rastafari / So Long
Bengt Berger, Don Cherry / Funerral Dance
民謡クルセイダーズ / 炭坑節

中村義響

No winter lasts forever; no spring skips it’s turn.

Ducktails / Olympic Air
Johnny Martian / Punchbowl
Later Nader / Mellow Mario
April March / Garden Of April
Vampire Weekend / Spring Snow
Brigt / Tenderly
W.A.L.A / Sacrum Test (feat. Salami Rose Joe Louis)
Standing On The Corner / Vomets
Babybird / Lemonade Baby
Blossom Dearie / They Say It’s Spring

野田努(3回目)

Jリーグのない週末になれつつある。夕暮れどきの、窓の外を眺めながら悦にいる感覚のシューゲイズ半分のプレイリスト。

Mazzy Star / Blue Light
The Jesus & Mary Chain / These Days
Animal Collective / The Softest Voice
Tiny Vipers / Eyes Like Ours
Beach House / Walk In The Park
Hope Sandoval & The Warm Inventions / On The Low
Devendra Banhart / Now That I Know
Scritti Politti / Skank Bloc Bologna
Yves Tumor / Limerence
Lou Reed / Coney Island Baby

ALEX FROM TOKYO(Tokyo Black Star, world famous)

この不安定な時代に、ラジオ番組のように Spotify で楽しめる、「今を生きる」気持ち良い、元気付けられる&考えさてくれるポジティヴでメッセージも響いてくる温かいオールジャンル選曲プレイリストになります。自分たちを見つめ直す時期です。海外から見た日本の状況がやはりとても心配になります。みなさんの健康と安全を願ってます。そしてこれからも一緒に好きな音楽と良い音を楽しみ続けましょう。Rest In Peace Manu Dibango & Bill Withers!(4/7)

Susumu Yokota / Saku
Manu Dibango / Tek Time
Final Frontier / The warning
Itadi / Watch your life
Rhythim Is Rhythim / Strings of Life
Howlin’ Wolf / Smokestack Lightin’
Massive Attack / Protection
Depeche Mode / Enjoy the Silence
Tokyo Black Star / Blade Dancer
Bill Withers / Lean on me (Live from Carnegie Hall)

Kevin Martin(The Bug)

(4/9)

The Necks / Sex
Rhythm & Sound / Roll Off
Miles Davis / In A Silent Way / It’s About That Time
William Basinski / DLP3
Thomas Koner / Daikan
Talk Talk / Myrrhman
Nick Cave + Bad Seeds / Avalanche
Jacob Miller / Ghetto on fire
Marvin Gaye / Inner City Blues
Erykah Badu / The Healer


増村和彦

最近は、「音楽やサウンドに呼吸をさせて、ゆがみや欠陥の余地を残して流していくんだ」というローレル・ヘイローの言葉が妙に響いて、その意味を考えるともなく考えながら音楽を聴いている。いまは、できるだけ雑食で、できるだけ聴いたことがなくて、直感で信頼できる音楽を欲しているのかもしれない。人に会わないことに慣れているはずのぼくのような人間でも、あんまり会わないと卑屈になってくるので、冷静にしてくれる音楽を聴きたくなります。(5/15)

Laurel Halo / Raw Silk Uncut Wood
Alex Albrecht pres.Melquiades / Lanterns Pt1 & Pt2
Minwhee Lee / Borrowed Tongue
Moritz von Oswald & Ordo Sakhna / Draught
Grouper / Cleaning
Moons / Dreaming Fully Awake
"Blue" Gene Tyranny / Next Time Might Be Your Time
Sun Ra / Nuclear War
Tony Allen With Africa 70’ / Jealousy
Tom Zé / Hein?

ダニエル・ミラーからのメッセージ - ele-king

みなさんこんにちは、ミュート・レコードのダニエル・ミラーです。
1978年のはじめ頃、ケンジントン・パークロードにあったRough Tradeショップでの出来事をよく覚えています。
ちょうど私がやっていたバンド"The Normal"の最初の納得のシングルを持ち込んだ時のことです。
その時に店番をしていた、Rough Trade創設者のジェフ・トラヴィスとリッチ・スコットがその曲を少し聴いてくれて、その場で契約してくれることになりました。
まさに人生が変わったような瞬間でした。
それによって私は、ミュートレコードを発足させ、自分が大事に思い敬愛するアーティストたちと一緒に働くことができるようになりました。
言ってみれば、それはインディペンデントのレコードショップが持つ最高の力であり、
アーティストをサポートし勇気づけるものだと思います。

もちろんその時からは音楽を取り巻く環境も大きく一変しました。
それでも、私は今でもインディペンデントのレコード店の力を信じています。
そこはミュージック・ラヴァーの中心であり、音楽をよく知る人々が
みなさんの音楽の好みを良く理解してくれています。

みなさんもご存じの通り、いますべての店が閉まっています。
しかし、彼/彼女らはオンラインサービスやメールオーダーを通じて営業しています。
私はみなさんにそのサービスを使って注文し、サポートていただくことを奨励します。
レコードショップが生き残るのはとても重要なことです。
現在起こっている危機は永遠に続くことはありません。
私たちは、ミュージックラヴァーやアーティスト、レーベルの未来についてよく考える必要があります。
どうぞ、みなさまお大事になさってください。
ありがとうございました。

MUTE創始者 ダニエル・ミラー

Squid - ele-king

 下着の次はイカときた。30周年という節目を終え、また〈Warp〉が活気づきはじめている。先日のジョックストラップにつづいて、新たにブライトンの若き5人組、スクイッドがファミリーに加わった。現在お披露目として “Sludge” が公開されているが、なんでもこの曲は、最近新作をリリースしたばかりのレジェンド、ワイアーのサウンドチェックをしていたときに着想を得た曲なのだという。ポストパンクの新星としてUKインディ・シーンに新たな風を巻き起こすのか? ちなみに仕掛け人は、昨年ブラック・ミディをフックアップしたプロデューサーのダン・キャリーとのこと。注目です。

Squid
BBC【SOUND OF 2020】にも選出! UKツアーは全てソールドアウト!
ダン・キャリーが仕掛ける注目の大型新人バンド、
スクイッドが〈WARP〉との電撃契約を発表!
ポストパンクな新曲 “SLUDGE” をリリース!

ブライトンで結成された、オリー・ジャッジ(ドラム&リードボーカル)、ルイス・ボアレス(ギター&ボーカル)、アーサー・レッドベター(キーボード、弦楽器、パーカッション)、ローリー・ナンカイヴェル(ベース&ブラス)、アントン・ピアソン(ギター&ボーカル)から成る5人組バンド、スクイッド。

アデルやサム・スミス、ハイムなどのトップスターたちを輩出してきた BBC【Sound of 2020】にも選出され、現在予定されているイギリスツアーは完全にソールドアウトとなるなど、ブラック・ミディやソーリーらの登場で勢いを増す次世代UKインディ/オルタナ・シーンの中でも、最大級の注目を集める彼らが〈Warp〉との電撃契約を発表! 合わせて〈Warp〉からの初リリースとなる新曲 “Sludge” をリリースした。

Squid – Sludge (Official Audio)
https://youtu.be/b0GHHmjovM8

この楽曲のアイデアはポストパンクを代表するバンド、ワイアーのサポートとしてサウンドチェックをしていた時に着想を得たという。過去の楽曲に比べてパーカッシブさが増し、音楽的にも進化を遂げた新曲 “Sludge” の中では、たった一年ほど前に彼らがシーンに登場した時から抱き続けているワクワクするような実験性と遊び心を放棄することなく、そのエネルギッシュなサウンドをより開かれたものにしている。非の打ちどころのない音楽的センスと扇情的なライヴ・パフォーマンスで評判を呼んできたバンドにとって、この楽曲は新章の幕開けにふさわしい作品と言えるだろう。

またフランツ・フェルディナンド、リリー・アレン、テーム・インパラ、ザ・キルズ、ブラック・ミディらを手掛けるプロデューサー、ダン・キャリーが彼らをサポートしていることも見逃せない。そんな名匠をも味方につけ、野生的かつ唯一無二な創造性を見せつける彼らの動向に今後も目が離せない!

label: WARP
artist: Squid
title: Sludge
release date: NOW ON SALE

TRACKLISTING
01. Sludge

interview with Little Dragon (Yukimi Nagano) - ele-king

 スウェーデンのイェーテボリから登場したリトル・ドラゴンはどこかミステリアスで、でもポップさとか可愛らしさも持つ風変わりなバンドだ。ヴォーカリストのユキミ・ナガノ、キーボードのホーカン・ヴィレーンストランド、ベースのフレドリック・ヴァリン、ドラムス&パーカッションのエリック・ボダンからなる4人組で、学生時代の仲間がそのまま大人になってバンドを組んでいる。ユキミ・ナガノが日系スウェーデン人ということもあり(父親が日本からスウェーデンに移住した日本人のインテリア・デザイナーで、母親がスウェーデン系アメリカ人)、またかつてクラブ・ジャズの世界で知られた存在だっただけに、親近感を抱く日本のファンも少なくないが、彼女のどこか妖精のようにフワフワとしながらコケティッシュさも持つヴォーカルと、エレクトロ・ポップ、インディ・ロック、オルタナティヴR&B、ハウス、ニューウェイヴ・ディスコ、シンセ・ブギーなどさまざまな要素がきらめくサウンドが結びつき、ほかになかなか見ないような独自の個性を生み出している。

 これまでに5枚のアルバムをリリースし、特に『ナブマ・ラバーバンド』はグラミー賞にもノミネートされるなど高い評価を得て、世界中のさまざまなフェスでも大活躍している。そんなリトル・ドラゴンにはいろいろなアーティストから共演やコラボのオファーが届き、ゴリラズフライング・ロータスサブトラクトケイトラナダバッドバッドナットグッドDJシャドウマック・ミラーリトル・シムズなどの作品にフィーチャーされてきた。そんなリトル・ドラゴンが心機一転してレーベルを〈ニンジャ・チューン〉へと移籍し、ニュー・アルバムの『ニュー・ミー、セイム・アス』を完成させた。進化を続けるリトル・ドラゴンがまた新たなステージに進んだことを象徴する作品であり、堅実でありながら型にはまらないR&B、ポップ、エレクトロニックという独特のスタイルに新しい方向性を見いだしながら、変わることなく若々しい精力的なサウンドを鳴らしている。同時にアルバムには内省的な空気も感じられ、ユキミの特徴的な歌声は、移り変わるものごとや憧れの感情や別れを告げることに思いを馳せている。今回はそんなユキミ・ナガノにリトル・ドラゴンを代表して話をしてもらった。

クープでは曲を書いているわけでも歌詞を書いているわけでもなく、操り人形のような気持ちになることもあった。誰かが作ったものをそのまま運ぶ仲介人みたいなね。だからジャズを聴くのがイヤになったことさえあった。

1996年にイェーテボリの学校仲間が集まって結成されたリトル・ドラゴンは、アマチュア時代を経た後、2007年にファースト・アルバムを発表してから『マシーン・ドリームズ』(2009年)、『リチュアル・ユニオン』(2011年)、『ナブマ・ラバーバンド』(2014年)、『シーズン・ハイ』(2017年)と5枚のアルバムをリリースしてきました。いろいろキャリアを重ね、『ナブマ・ラバーバンド』はグラミー賞にもノミネートされるなどアーティストとしても確立された存在になったと思いますが、ここまでの活動を振り返ってどのように感じていますか。

ユキミ・ナガノ(Yukimi Nagano、以下YN):いろいろあったわね。いろいろ(笑)。ここまで来るのに一晩しか経っていないような気がするけど、たくさん曲も作ったし、たくさんライヴもしてきた。いいことも悪いことも経験したわ。でもそれができたのは、私たちについてきてくれるファンがあったからよ。だから、ファンのみんなにはすごく感謝してる。

誰かひとりが突出するのではなく、メンバー4人が作曲、演奏などすべてに渡って平等な形で参加する民主的なバンドのリトル・ドラゴンですが、学校の仲間ということはあるにしても、ここまで長くやってこられた秘訣などあるのでしょうか?

YN:私たちは初期の頃からお金を全部均等にしてきた。誰が書こうが、誰が作ろうが、収入を山分けしてきたのね。その作品自体は全員で作ったという意識だから。それがみんなの意識につながって、うまくいっているのかもしれない。バンドが有名になっていくと、5人のうち2人だけどんどんお金持ちになって、他のメンバーは全然なんてことよくあるでしょ(笑)。ツアーにはみんなで出るし、労力はそんなに変わらないはずなのにね。それが解散の原因になったりする。それは避けたいわ。

新作の楽曲のパブリッシングについても、メンバーが関わった分だけそれぞれパーセントで印税の分配比率が記されていました。ほかのバンドなどではこうした記載を見ることがなく、とても面白く感じたのですが、いつもこんな感じでクレジットするのですか?

YN:そうね。全員が全力で作品制作に取り組んでいるから、毎回そうしてる。どの曲も全員の手が入らないと完成しないと思って制作してるの。だからクレジットにそれを書くのがフェアかなと思ってね。

ユキミ・ナガノさん自身についてはかつてクープというニュー・ジャズ・ユニットに参加したのがシンガーとしてのデビューで、スウェル・セッション、ヒルド、日本のスリープ・ウォーカーにも客演するなど最初はクラブ・ジャズ・シーンで知られる存在でした。それがリトル・ドラゴンのエレクトロ・ポップ調の作品へと変わったとき、戸惑いを感じたリスナーも多かったことを覚えています。そもそも音楽のスタートはリトル・ドラゴンだったわけですが、あなた自身はこうした変容についてどう捉えていましたか?

YN:どのフェーズも自分のキャリアにおいてはなくてはならなかったと思う。いまだから冷静になって言えることだけどね。当時は複雑な気持ちだったわ。クープではフロント・ウーマンだったけど、曲を書いているわけでも歌詞を書いているわけでもなく、操り人形のような気持ちになることもあった。誰かが作ったものをそのまま運ぶ仲介人みたいなね。そこに自分の気持ちは入っていないのに。だからジャズを聴くのがイヤになったことさえあった。ジャズ・シーンから距離を置きたくて。でもいまはもう何も気にならない。ジャズは大好きだし、もちろん聴くようになったしね。だから現状を変えようと思ったら、多少は大胆なこともしないといけないと思う。男性主導の業界の中で若い女の子が生きていこうと思ったら、強すぎるぐらい強くないといけない。それが自分の意に反しててもね。私はそれが得意じゃなかった。いま思えば、クープでの経験にはたくさんの気づきがあったから、私にとって必要なことだったと思う。大勢の人の前で歌うのが好きなんだってことが分かったし、自分のキャリアの序章になったと思ってる。

「私って、これが得意なのかも」って気づく感覚は、ある意味で罠なのよ。その気づきを機に、それしかできなくなってしまうから。成長しようと思ったら、心地が悪いと思う状況に身を置いて、ビギナーに戻らないと。

リトル・ドラゴン、クラブ・ジャズ・シーンでの活動、そしてホセ・ゴンザレスと共演するなどシンガーとして非常に広い間口を感じさせ、またフェアリーなヴォーカルによってビョークに比較されたこともありますが、シンガーとしての自身をどのように分析しますか?

YN:「変わったね」って言われるのは最高の褒め言葉だと思っているの。いちアーティストとして、そういう風に言ってもらえるのは嬉しい。同じことを繰り返すのはいやだから。アーティストとして、シンガーとして、常に新しい私を開拓し続けたい。「私って、これが得意なのかも」って気づく感覚は、ある意味で罠なのよ。その気づきを機に、それしかできなくなってしまうから。私はそれを恐れてる。成長しようと思ったら、心地が悪いと思う状況に身を置いて、ビギナーに戻らないといけないものなのよね。でもそれってすごく難しいことだから、「変わった」って言われることでその努力が認められている気がして嬉しいの。

ユキミさん個人への質問が続きますが、あなたはお父さんが日本人の日系スウェーデン人です。お父さんから何か日本のこと、文化などについて教えてもらったことはありますか?

YN:たくさん教えてもらった。父は70年代にスウェーデンに移住してきたけど、彼自身もアーティストで、自分では気づいていないかもしれないけど、父は私にすごく影響を与えてるわ。日本人的な規律ある人で、働き者だった。生き方を背中で教えてくれたって感じね。毎日必ず家に帰ってきたら、自分の制作をしてた。家賃を払うのに必死になってしまうかもしれないけど、自分が好きだと思えることがあるんだったら、少しでもいいからそれを毎日必ずやるべきよ。それを自分の行動で示してくれた。だから私もそれを見て、毎日詩を書いていたわ。そんな父の存在がなかったら、音楽で食べていけるようにはならなかったと思う。普通の父親とは違って、私の音楽に対する情熱をすごく応援してくれたのよね。「これをやりなさい」なんて言われたことは、一度もないわ。彼が心配してたのは、私が頑張りすぎることぐらい。ただ父は純粋な日本人だけど、日本の音楽を聴かせられた記憶はないのよね。あの世代の人たちって、ボブ・ディランとかジョニ・ミッチェルとかが好きでしょ(笑)。父もそうだから。

スウェーデンのローカル・バンドだったリトル・ドラゴンですが、ファースト・アルバムに収録された “トゥワイス” がアメリカのTVドラマに使用され、ロバート・グラスパー・エクスペリメントもカヴァーしたことによって、アメリカから世界へとリトル・ドラゴンが知られるようになったと思います。『ブラック・レディオ』(2012年)をリリースした頃にグラスパーへインタヴューした際、ユキミ・ナガノの声がとても好きで、コラボしたいアーティストの筆頭に挙げていたのですが、彼のことはどう思いますか?

YN:知らなかった。すごく光栄だわ。ぜひ一緒に仕事したいわね。彼の音楽ももちろん好きだし、人間的にも尊敬してる。“トゥワイス” のカヴァーも本当に光栄なことよ。さっきも言ったみたいに、10年前だったらジャズと聞いただけで嫌悪感を抱いてたから、断ったかもしれないけど!(笑)。いまは、ジャズへの愛を取り戻したからね。こういうのって、面白いのよね。予想もしてない人が私たちの音楽を好きって言ってくれたりする。全然関係ないジャンルとかね。びっくりすることがよくある。私はいつも思っているんだけど、一度曲をリリースしたら、その曲はもう自分のものではないの。みんなのものになる。子どもと一緒よね。成長したら一人前になって、もう親のものではなくなる。曲にも命があって、どう成長していくのかを見るのが楽しいの。

これまでコラボしてきたアーティストはゴリラズ、フライング・ロータス、サブトラクト、フルーム、ケイトラナダ、バッドバッドナットグッド、ビッグボーイ、デ・ラ・ソウル、DJシャドウ、ティナーシェ、マック・ミラー、フューチャー、ラファエル・サディーク、フェイス・エヴァンス、リトル・シムズなど多岐に渡ります。特に印象深かったコラボ、また影響を受けた共演者はありますか?

YN:これまでやってきたコラボレーション全てにいい影響をもらってる。中でもフェイス・エヴァンスは私たちが初めてコラボしたアーティストなんだけど、私がもともと大ファンだったの。アイドルみたいな存在。それで会いたかったけど、叶わなかった経験もあったりして。オファーしてみたら、彼女自身は私たちのことを知らなかったんだけど、お子さんが聴いてくれてたみたいでね。子どもたちが「この人たちかっこいいからやった方がいいよ!」って言ってくれたから、実現したのよ。嬉しかったわ。憧れのヴォーカリストとコラボできて、夢が叶った気持ちだった。

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私たち人間は地球という同じ惑星にいて、生きて、死んで、そして違う生命に生まれ変わるけど、地球に生きる生命であることには変わりがないということね。

これまで〈ピースフロッグ〉 〈ビコーズ・ミュージック〉から作品をリリースし、今回の新作『ニュー・ミー、セイム・アス』は〈ニンジャ・チューン〉からのリリースとなります。アルバムに先駆けて2018年に「ラヴァー・チャンティング」というEPをリリースしているのですが、〈ニンジャ・チューン〉へ移籍したきっかけは何ですか?

YN:〈ビコーズ・ミュージック〉との契約を終える段階で関係者の人たちと話をしていて、〈ニンジャ・チューン〉でA&Rをやってるエイドリアンと繋がったの。彼は本物の音楽オタクなのよね。音楽の仕事をする相手に真の音楽好きを選ぶのは、すごく大切なこと。〈ニンジャ・チューン〉は私たちの音楽をサポートしたい、もっと多くの人のもとに届けたいって言ってくれた。インディペンデントなレーベルだから直接的にサポートしてもらえるし、今後がすごく楽しみだわ。

『ニュー・ミー、セイム・アス』というタイトルにはどのような意味が込められているのでしょう? 「新しい私、変わらない私たち」という逆説的な言葉なのですが。

YN:潜在的な意識の話なんだけど、自分は変わったと感じたとしても、身体は変わらないってこと。たしか7年で身体の細胞は入れ替わるらしいんだけど、それでも身体自体は同じ。年を取っていくだけ。まずはそれが、人間全般に対しての『ニュー・ミー、セイム・アス』の意味ね。それからバンドとしての意味は、10年前の私たちとは全然違うんだけど、一緒に音楽をやっているという事実は変わらないってこと。あとはもっと深い意味で言うと、私たち人間は地球という同じ惑星にいて、生きて、死んで、そして違う生命に生まれ変わるけど、地球に生きる生命であることには変わりがないということね。

レーベルからのインフォメーションによると、自立と前進を促す “ホールド・オン”、失われた愛についての “ラッシュ” はじめ、“アナザー・ラヴァー”、“サッドネス” とポジティヴなものから悲しみを歌ったものまで、心の動きをなぞった歌詞が多いです。アルバム全体を通して何か訴えたかったものはありますか?

YN:全体をひとつの旅として聴いてほしい。アルバムのトラック・リストはみんなで慎重に考えたものなの。最近は曲単体で聴く流れになってきてるから、曲順とかをあまり気にしない人も結構いるけど、アルバムをひとつの作品として考えたい。私たちはオールド・ファッションな人間だから。“サッドネス” の曲調は明るいけど歌詞は暗い。そのあとにはダンス・ララバイの “アー・ユー・フィーリング・サッド?” が来るわよね。「心配しないで、心配しないで、うまくいくから」って歌詞で、子守歌なんだけどダンス・トラックになってる。“アナザー・ラヴァー” のトラック自体は昔から持ってた曲だったんだけど、歌詞は付けてなかったのね。それである日マジック・マッシュルームをやったときにすごく効いて、とてもサイケデリックな体験をしたの。泣いて、泣いて……そしたら突然、一緒にいた人の痛みを私が感じたのよ。感じられるはずないのにね。そのときのことを歌詞に書いて “アナザー・ラヴァー” に付けたの。ヴォーカルをレコーディングするときにも涙が止まらなくて、鼻水も止まらなくて、ぐちゃぐちゃになって、なぜかすっごく感情的になっちゃった。だから制作過程自体がエモーショナルだったのよね。

『ナブマ・ラバーバンド』ではロビン・ハンニバル(クアドロン、元ライ)が共同プロデュースで参加し、デ・ラ・ソウルのデイヴ・ジョリコーが作曲にも加わっていました。『ニュー・ミー、セイム・アス』はメンバー4人のみですべて作っていて、その面では初期のプロダクションに近いわけですが、アルバム制作に関してこれまでと何か違う点などありますか?

YN:色々な人が携わっていると、「何か忘れているんじゃないか」「もっとできることがあるんじゃないか」って、被害妄想的になりがちなのよ。デイヴはいいミュージシャンだから音楽的にもすごく助けてくれるし、ロビンは敏腕プロデューサーで、彼のアレンジで曲が流れるようにスムーズになる。アルバムを商業的に成功させるのに、いいプロデューサーが必要なのは事実だしね。でも今回は、その妄想を払拭することに決めたの。売れるアルバムを作るのが目的だったら、もっとメインストリームな曲を作るようにするわ。もちろんメインストリームな曲がいい曲じゃないって言ってるんじゃなくてね。多くの人に好かれるのは嬉しいことよ。でも、売るためにアルバムを作るのはやめた。「マックス・マーティンに気に入ってもらえれば、ラジオでたくさん流してもらえるかも」なんて、いまはそれを望んでないのよね。音楽を作るっていうのは取捨選択的で、自分たちらしい音楽を作るか、コマーシャル・ミュージックを作るかなのよ。ミュージシャンがそれを選ぶの。だから今回、私たちは決めたの。「これを気に入ってくれる人もいれば、そうじゃない人もいる」って。「自分たちの好きな音楽を作ろう」ってね。

“ホエア・ユー・ビロング” と “ステイ・ライト・ヒア” にサックスとギターで参加しているジョエル・ウェストバーグはどんなミュージシャンですか? 確か『シーズン・ハイ』でも演奏していましたが。

YN:昔からの友人で、素敵なミュージシャンよ。ドラマーであり、サックス奏者であり、プロデューサーでもある。サー・ワズっていう名前でもやっていて、長年私たちのライヴのサポートもしてくれているの。昔からいろいろなところから声がかかるような、優れたミュージシャンなのよ。それなのにあるときを境に、何ヶ月も自分の部屋にこもるようになった。「何してるのよ?」って訊いたら、「自分の音楽を作ってるんだよ」って。聴かせてって言っても、後でね、後でねって全然聴かせてくれなくて(笑)。最終的には公に出す勇気が出たみたいで、演奏もヴォーカルも自分でやってる曲をリリースしたわ。彼のことを誇りに思う。ミュージシャンとして尊敬してるから。それで今回のコラボレーションは彼から申し出てくれたの。サックスがうまいから、私たちの曲に良いエッセンスを加えてくれたわ。

ある日マジック・マッシュルームをやったときにすごく効いて、とてもサイケデリックな体験をしたの。泣いて、泣いて……そしたら突然、一緒にいた人の痛みを私が感じたのよ。感じられるはずないのにね。

エレクトロ・ポップと形容されることが多いリトル・ドラゴンですが、その中にはインディ・ロック、オルタナティヴR&B、ハウス、ニュー・ディスコ、シンセ・ブギー、ダブステップなどさまざまな音楽がミックスされています。『ニュー・ミー、セイム・アス』に関してはどんな音楽の要素が強いと思いますか? 個人的には “ホールド・オン” や “サッドネス” などダンサブルな曲がまず印象に残り、『99.9%』(2016年)に参加したケイトラナダの作品に通じるものを感じたのですが。

YN:難しいわね。私たちにジャンルは関係ないのよ。音楽ライターにとっては大事かもしれないけどね!(笑) ジャンルにはめて説明しないといけない仕事だから。でもごめんね、ミュージシャン自身が自分の音楽をジャンルに当てはめるのはもったいないと思ってるのよ。ポップです、ロックです、ヒップホップです、っていうのはちょっと違うの。音楽は説明するものじゃないわ。ティーンエイジャーだったら、自分のレコード・コレクションのためにラベル付けが必要なのかもしれないけど(笑)。私たちはもっと折衷的でありたいし、聴く人を混乱させたい。だから、あまり説明したくないの。例えば「エレクトロ・ポップだよね」って言われたとしても、「そうね」としか言わない。そう思うんなら、そうかもって。ジャンルは気にしないわ。他の国よりもアメリカで人気があるのは、そのせいかもしれない。新しいもの好きで、典型的なものを好まないリスナーが多いから。

エリック・ボダンが演奏するメロディ・ハープ(簡単にメロディを奏でられる小型のハープ)が多くの曲で使われていて、その円やかでキラキラした音色がアルバムのカラーにも影響を与えていると思います。どのようなアイデアでこの楽器を取り入れたのですか?

YN:最初は冗談だったのよ(笑)。スタジオにたまたまあって。珍しい楽器が目の前にあると、弾きたくなるのがミュージシャンの性分だから(笑)。それで弾いてみたら、「いいね、レコーディングしよう!」って。最終的にはほとんどの曲で使って、このアルバムの象徴みたいなサウンドになった。曲と曲を繋ぐ役割を果たしてくれていると思う。

後半は “ホエア・ユー・ビロング”、“ステイ・ライト・ヒア”、“ウォーター” とメロウで内省的な曲が続くのですが、この流れは何か意識したところがあるのですか?

YN:バンドの間にそういう感情が漂っている時期があるのよね。内省的で、回顧的な感情が。生死とか、変化について考えたりとかね。だからこのあたりの曲には、バンドのそういう雰囲気が反映されてる。その一方で “アー・ユー・フィーリング・サッド?” とか、“ホールド・オン” とか、明るい曲もある。そのバランスを見るようにはしたわ。前半は明るくて、後半は暗い。A面とB面みたいな感じで、両方楽しめるようになってるの。

最後にニュー・アルバムに関してどんなところを聴いて欲しいかなど、ファンに向けてのメッセージをお願いします。

YN:アルバムを最初から最後まで、トラック・リストどおりに聴いてほしい。人生を旅してるような気持ちでね。意味は自分で作ってもらって構わない。私も自分にとっての意味を心の中に持っているし、自分なりの意味を持つアルバムを聴くのは、安心するものだから。

R.I.P. Gabi Delgado(ガビ・デルガド) - ele-king

 ガブリエル・デルガド・ロペス、通称ガビ・デルガドが3月22日に死去していたことが複数の海外メディアで報じられた。61歳だった。死因は現在のところ公表されていないようだが、彼のキャリアにおけるもっとも有名なプロジェクト、DAFの相方だったロベルト・ゲイルが彼の死を確認しているという。
 ガビがヴォーカルを務めたバンド、DAF(ドイチュ・アメリカニシェ・フロイントシャフト )は、1978年にドイツで結成されたパンク・バンドであり、やがて磨かれるその際だったサウンド──言うなればジョルジオ・モロダーのパンク・ヴァージョンとも喩えられるエロティックかつパンキッシュなエレクトロニック・サウンドによって一世を風靡した。その影響はボディー・ミュージックからデトロイト・テクノ、ウェストバムから石野卓球などじつに広範囲にわたっている。

 DAFに関しては、1979年のファースト・アルバム『Produkt Der Deutsch-Amerikanischen Freundschaft』から第一期の最終作となった5枚目の『Für Immer』までのすべて必聴盤だが、1枚選ぶとしたら3枚目の『Alles Ist Gut』だろうか。ドイツ語のヴォーカルで「アドルフ・ヒトラーで踊れ」と挑発する彼らの代表曲“デア・ムッソリーニ”は、DAFそしてコニー・プランクの3人が作り上げた強力なエレクトロ・パンク・サウンドで、極度にマシナリーなリズムと凄まじいエロティシズムが混じり合う(まさにJ.G.バラード的な)並外れた曲のひとつである。
 名曲はたくさんある。最初は7インチ・シングルでしか聴けなかった“ケバブ・トラウム”は、のちの12インチ・ヴァージョンもふくめ人気曲のひとつだ。トルコ移民を排斥しようとするネオナチへのしたたかなカウンターだが、DAFの素晴らしいところは、そうしたきわどい政治性もエロティシズムとユーモア(ポップのセンス)に包んでしまうところだった。もちろん“Liebe Auf Den Ersten Blick ”を忘れるわけにはいかない。4枚目の『Gold Und Liebe』に収録された曲で、当時このPVを見たときには本当にぶっ飛ばされた。サウンドも動きもほかのパンクとはまったくの別モノである。

 スペイン生まれであるガビがラテン(ファンク)にアプローチしたソロ・アルバム『Mistress』も名盤であり人気盤だが、ぼくはDAF解散後のデルコム(Delkom)も好きだった。スエーニョ・ラティーノに触発されたであろう、サバ・コマッサなる女性とのプロジェクトのひとつで、1990年に発表された「Superjack」はラテン・クラフトワーキッシュ・アンビエント・ハウスの名作だ。ここでも機械へのフェティシズムとエロスとの融合が見事に具現化されている。
 
 DAFは卓球主催の〈WIRE〉にも出演しているが、ぼくは2014年の来日ライヴにも行った。ライヴは往年のヒット曲のオンパレードだったが、そこにガビ(とゲール)がいるだけでぼくは満足だったし、そこいた人たち全員もそうだったに違いない。ガビはたくさんのフォロワーを生んでいるが、結局のところそれは彼らにしかできなかった音楽だったし、いまだにDAFのようなバンドなどいないのである。

野田努

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 戦争があったことを忘れたがっている時期があった。矢作&大友の『気分はもう戦争』はそういうことに苛立ちを覚えて描かれたマンガであった。「『戦争を知らない子どもたち』を知らない子どもたち」という揶揄まで飛び出し、冷戦末期ともなると戦争は確かに現実味に乏しい行為であり、感覚でもあった。リリアーナ・カヴァーニ監督『愛の嵐』(74)に影響されて沢田研二やパタリロがナチスの制服を着てもとくにお咎めはなく、『トップ・ガン』や『ランボー』といった戦争映画もアクションを見せるための「背景」でしかなかった。ところが欅坂46がナチス風のファッションでデビューした際、世界規模で避難が巻き起こったことは記憶に新しく、第二次世界大戦を扱っているにもかかわらず『野火』のリメイクや『サウルの息子』の方が現代にとって切迫感や現実味を増していることは確かである。復興が最優先の時期には戦争のことは積極的に忘れたかったのかもしれない。そして、豊かになってから呼び覚まされる政治意識というものがあり、どこかでそれは入れ替わったのである。どこが転換点だったのだろう。僕はパンクもひとつのきっかけだったと思う。セックス・ピストルズがナチスの腕章を付けたスージ・スーたちとテムズTVに出演し、スロッビン・グリッスルはアウシュビッツ収容所を曲の題材とした(前者が”No One Is Innocent”でナチスの生き残りをベースに起用したというのはさすがにウソだった)。そして、ドイツではDAFが「Der Mussolini」をリリースした。タイトルはムッソリーニだけれど、歌詞にはアドルフ・ヒトラーがフル・ネームで5回も出てくる。それ以上の内容はなく、政治思想と呼べるものとはほど遠い。とはいえ、ドイツでアドルフ・ヒトラーの名前を歌詞にのせることはかなり挑発的なことだったはず。日本では角川文庫で普通に読めたけれど、2016年にバイエルン州が歴史の資料として『我が闘争』を復刊しようとした際もすさまじい論争が巻き起こり、ドイツでヒトラーに言及することが尋常ではないことを窺わせた。それを1981年に22歳のガビ・デルガドーは大胆にもやってのけた。♪ムッソリーのダンス、アドルフ・ヒトラーのダンス、ジーザス・クライストのダンス、共産主義のダンス、右に、左に、腰をくねらせ、手を叩く!

 DAFを先頭グループとするノイエ・ドイッチェ・ヴェレは全体に政治意識が強かった。パレ・シャンブルグは西ドイツの首相官邸の名称だし、アインシュツルツェンデ・ノイバウテンは活動の起源がそもそもスクウォッターズ運動に由来する。70年代にもバーダーマインホフのような政治運動と結びついたアモン・デュールや労働問題を背景にしたと思われるクラフトワークの『Man Machine』もあることはあったけれど、大半はタンジェリン・ドリームやアシュラなど逃避傾向の音楽に傾いていた。それらが一転してノイエ・ドイッチェ・ヴェレでは覆り、「独米友好」を名乗るDAFも戦後のドイツがアメリカに依存しすぎていることを皮肉ったネーミングだと推測させるものがあり、DAFという頭文字はナチス政権下の労働組織だった「ドイツ労働戦線(Deutsche Arbeitsfront)」とのダブル・ミーニングを狙ったものとしか思えない。明確な政治目標のようなものはなくても、豊かになった社会に少しでも波風を立てたい。あるいは逃避的な音楽が社会との接点を持ちたがらなかったのとは対照的に、ドイツに限らず世界中のパンクやニュー・ウェイヴはヒッピーとは逆に社会の注目を集めることに肯定的だったという価値観の転換にも誤差はなかったので、DAFも例外ではなく、最も効率よくそれに成功した部類に入るといえるのではないだろうか。とはいえ、DAFの歌詞は政治に比重が置かれていたわけではなく、官能的なものの方が多く、「アメリカのTVにプレスリーが現れた」ようなルックスや効果が与えたショックも大きかったことだろう。ピナ・バウシュのように官能性をいっさい排除したバレエが好まれる国であり、ドイツ産のポルノは世界中のどの国にも売れないと言われてしまうわけだから。

 “Der Mussolini”が収録されたサード・アルバム『Alles Ist Gut』は最高にカッコよかった。シンプルで威圧感も適度にあり、身体性を突出させたところが他のノイエ・ドイッチェ・ヴェレにはない魅力だった。シークエンスされたベースと生ドラムのズレも気持ちよく、パワーを全開にするだけでなく、“Der Räuber Und Der Prinz”のように力を溜め込むようなアレンジを施すことによって抑制された官能性を引き出した曲もまたよかった。だけど、僕はその直前に唯一のトリオ編成で録音された”Tanz Mit Mir”がいまだにベスト・ソングである。DAFがパンクだった時代の名残りをある程度フォーマット化し、疾走するリズムを追いかけるようにかき鳴らされるヴォルフガング・シュペールマンのひしゃげたギターが小気味好く神経を刺激する。この編成でアルバムが1枚あってもよかったよなと僕はいまでも思い続けている。そうすればDAFがパンク・バンドとして残す知名度ももう少し上がり、ノイエ・ドイッチェ・ヴェレのイメージももう少し分かりやすいものになったのではないかと。4人編成から2人に人数を減らし、3枚のアルバムをヴァージンに残したDAFは6作目となる『1st Step To Heaven』で、さらにサウンド・スタイルを変えていく。生ドラムを捨て、当時でいえばヒューマン・リーグやプロパガンダを追うようにしてシンセ~ポップに切り替えたのである。ミックス・エンジニアとしてこのアルバムに参加したトム・シィエル(後にサン・エレクトリック)に聞いた話では、このアルバムはほとんどガビ・デルガドーが単独でつくり上げたものであり、ロベルト・ゲールは(クレジットはされているものの)何もしなかったに等しかったという。通訳を介して聞いた話なのでニュアンスには自信がないけれど、ガビ・デルガドーはそれだけ責任感が強いとシィエルは訴えたかったようにも聞こえた。そして、その経験はおそらくガビ・デルガドーに次の時代をもたらすことになった。

 トム・シィエルの言葉を信じるならば『1st Step To Heaven』でドラム・プログラミングに取り組んだのはガビ・デルガドーであり、ヴォーカリストだった彼が機材と格闘したことは想像にかたくない。“Voulez Vous Coucher Avec Moi Part II”にはラべルのクラシック“Lady Marmalade”もサンプリングされ(ハッピー・マンデーズが“Kinky Afro”で丸パクリしたアレである)、1986年とは思えない技術の駆使である。『1st Step To Heaven』には収録されず、DAFにとってラスト・シングルとなった「The Gun」(87)にはハウスと表記されたリミックス盤もある(どちらかというと、これはニュー・オーダー“Blue Monday”などを混ぜたディスコ・ヴァージョン)。87年の時点で、つまり、J・M・シルクの“Jack Your Body”がリリースから1年をかけてイギリスのヒット・チャートで2週に渡って1位となり、ハウス・ミュージックがオーヴァーグラウンドで初めて認知された年にはガビー・デルガドーはハウスに興味を持っただけでなく、自らハウス・リミックスにも手を出し、ベルリンで最初にハウス・パーティを開いたとされ、翌年春にはDAFのバック・カタログから“Liebe Auf Den Ersten Blick”をジョセフ・ワットにリミックスさせるところまで一気に突き進んでいる。そして、「The Gun」から大袈裟なシンセサイザーのリフを取り除き、ベース主体のトラックとして生まれ変わらせたものを2年後にデルコム“Superjack”としてリリースする。DAFが2人になった時も引き算がネクストを生み出したとしたら、ここでも余計なトラックを間引いただけで次の段階に歩を進めたのである。ただし、“The Gun”から“Superjack”に至るまでには意外と長い試行錯誤も続いている。ガビー・デルガドーとサバ・コモッサが最初にタッグを組んだらしきFX名義“Freak”はソウル・サーチャーズを思わせるゴー・ゴーとニュー・ビートの中間のような曲調で、『Alles Ist Gut』に対する郷愁がほの見えるし、〈ロウ・スピリット〉からとなった2ハード・アウト・オン・ハイ名義“One Good Nite On Hi87”はエレクトロを基調とし、それこそトーマス・フェルマンズ・レディメイドのパクリっぽい。2ラティーノ・ジャーマンズ、フューチャー・パーフェクト、フューチャー(Futur)、アンティ~タイムと、なぜか曲を出すごとに2人は名義を変え、ようやくデルコム名義でアルバム『Futur Ultra』に漕ぎ着ける。しかし、これは808ステイトやジョーイ・ベルトラムがレイヴ・カルチャーをハードな様相へと向かわせた1990年には少し合わないものになっていた。この時期の2年間はあまりにも物事が急速に展開していった時期だった。

 91年にデルコムは2ラティーノ・ジャーマン名義で“Viva La Droga Electronica”をベルリン・トランスの〈MFS〉からリリースする。これはとても興味深いことで、89年にノイエ・ドイッチェ・ヴェレからダンス・カルチャーへと乗り換えた「先駆者たち」を集めたコンピレーション『Teutonic Beats: Opus Two』のラインナップを眺めてみると、簡単にいえばパレ・シャンブルグからトーマス・フェルマンやモーリツ・フォン・オズワルドが紆余曲折を経たものの最終的にはデトロイト・テクノを目指し、DAFがトランスに向かったという流れが見えてくる(新顔ではウエストバムやマイク・インクことヴォルフガング・フォイトも参加)。決定的だったのは94年にやはり〈MFS〉からリリースしたヴーヴ・デルコム・フォース名義“Generate Eliminate”である。それこそ808ステイトやジョーイ・ベルトラムの後を追ってハード・トランスにも手を出したとしかいえない曲で、デルコムと組んだヴーヴはリエゾン・ダンジュオーズ解散後にベアテ・バーテルがグトルン・グートと組んだマタドールでもミックスを担当するなど、この時期の要注意人物である。パレ・シャンブルグはホルガー・ヒラーがいたこともあって諧謔性のイメージが強かったし、骨太で官能的なリズムに執着のあると思えたDAFがトランスに向かうというのは、なんというか、逆ではないかという疑問を僕は長いこと拭いされなかった。それこそDAFはリズムだけを突出させたスタイルがボディ・ミュージックを生み出したと考えられていることもあり、リズムに工夫のないトランスに落ち着くのは納得がいかなかったと。しかし、おそらくそのようなイメージの元になっているのはロベルト・ゲールのドラムであって、ガビ・デルガドーには実はリズムに対する深い執着はなかったのかもしれない。ガビー・デルガドーがこだわったのはいつでもスタイルであり、ルックスが重要な要素だったDAFもそうなら、ハウスに手を出した動機も同じだったに違いない。そのことが最も強く表れているのはガビ・デルガドーにとって唯一のソロ作となった『Mistress』(83)である。あの時、彼はブリティッシュ・ファンクのブームに乗ろうとしたのだろう。彼は、そして、それを本当にカッコよく決めたと思う(あのジャケットにやられて僕はアロハ・シャツを集め始めるようになってしまった)。

『Mistress』というアルバムは、スイスに移住して作られたアルバムで、ドイツでは売れずに日本ではかなり売れたらしいけれど、ジャーマン・ファンクの伝統という耳で聴くと、70年代のファンク・ブームを支えたクラウス・ヴァイスの昔からベルリン・スクールやジャーマン・トランスを経て、現在のヴォルフ・ミュラーへと続く、揺れのないリズムを志向するドイツの国民性をあまりにも明瞭に浮かび上がらせ、その迷いのなさにはたじろがざるを得ない。ひと言でいうと音楽的にはあまり大したものでないにもかかわらず、スタイルだけで引きずり倒していく快感を教えてくれたのが『Mistress』だった。複雑な音楽性に耳が慣れていくことだけが音楽鑑賞ではない。デザインや時にははったりも音楽文化を構成する大事な要素である。そう、ブルー・ロンド・ア・ラ・タークやキッド・クレオールでは最後のところで満足のいかなかったラテン・ファンクのインチキ臭さをここまで存分に楽しませてくれたアルバムはほかになかった(キッド・クレオールのコーティ・ムンディはパレ・シャンブルグのプロデューサーも務めた)。コニー・プランクがスゴいのかもしれないけれど、ガビ・デルガドーが残したもののなかでは僕はどうしてもこれが最高の1枚であり、2枚の12インチ・シングルは愛聴盤の範囲を超えている。そうでなければフューチャー・パーフェクトやDAF / DOSまで追ってみようとは思わなかったし、『Mistress』でベースを弾いているバイセクシュアルの弟、エデュアルド・デルガドー・ロペスが参加するカスパー・ブロッツマン・マサカーまで追うことはなかった(カスパー・ブロッツマンはピーター・ブロッツマンの息子)。

 ヴーヴ・デルコム・フォースに思いっきり失望させられた僕はその翌々年、意外なところでガビ・デルガドーの名前を聞く。初来日したアレク・エムパイアが、彼の最初のマネージャーはガビ・デルガドーだったというのである。ある日、彼の前に現れたガビ・デルガドーがマネージメントしたいとオファーしてきたものの、アレク・エムパイアはガビ・デルガドーどころかDAFのことも知らなかったという。最初に聞いた時は僕も意外だったけれど、ヴーヴ・デルコム・フォースがハード・トランスをやろうとしていたことや、ガビ・デルガドーがDAFに加入する前はピート・ハインとチャーリーズ・ガールズというパンク・バンドを組んでいたことを知ると、そんなに意外でもないのかと思えてくる。ピート・ハインもノイエ・ドイッチェ・ヴェレのなかでは比較的ノーマルなパンク・バンド、フェルファーベンでヴォーカルを務め、ピート・ハインがファルファーベンを抜けてミタグスポーゼを結成した時にはガビ・デルガドーもDAFと掛け持ちでメンバーを務めていたことがある。ミタグスポーゼは吐き捨てるように「ドュッセルドルフの日本人!」と歌っていたグループで、さすがにあんまりいい気持ちはしなかったけれど、そのような攻撃性をクラブ・サウンドの文脈で実現していたアレク・アンパイアにガビ・デルガドーが惹かれてもおかしくないことは確かだろう。とはいえ、ガビ・デルガドーが本当に考えていたことは僕にはわからない。彼にとって最も大事なことはなんだったのだろう。2003年にDAFが再結成され、ドイツではナショナル・チャートを駆け上がったことや、2010年代には配信専門の〈ガビ・ユーザーズ・クラブ〉を設立して矢継ぎ早に彼はソロ・アルバムをリリースし始めた。そして、生前最後となった曲は“Tanzen(ダンス)”だった。R・I・P。

三田格

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 D.A.F.のヴォーカリストであるガビ・デルガドが逝去しました。この突然の訃報に大変な悲しみを感じております。ガビは、パフォーマーかつソングライターとして、果敢にその表現を前進させ続けてきたアーティストでした。彼は音楽とユース・カルチャーに関してとても強いヴィジョンを持っており、それによってバンドは全てのエレクトロニック・ダンス・ミュージックに多大な影響を与えることができました。その影響は今なお続いています。80年代に入ってMUTEの最初の作品「Die Kleinen und die Bosen」から最近に至るまでの数年間、ガビやD.A.F.と共に働けたことを、わたしはとても誇らしく思っております。D.A.F.のパートナーであるゲールと、彼の家族や親密だった方々にお悔やみ申し上げます。

ダニエル・ミラー(MUTE創始者)

ナイチンゲール - ele-king

 ジャングルの緑がとても綺麗だなと思いながら観ていた。「緑」というよりも濃厚な「グリーン」。雨に濡れて輝きを増し、それらが人間たちの暴力を覆い隠している。舞台は植民地時代のオーストラリア。窃盗の罪でアイルランドから流刑地に送られてきたクレア(アシュリン・フランシオーシ)はホーキンス中佐(サム・クラフリン)の口利きで釈放されたものの、好きな時に中佐にレイプされ、夫にはそのことを隠していた。クレアに書くと約束していた紹介状をなかなか渡さない中佐に腹を立てたクレアの夫、エイデン(マイケル・シェズビー)が中佐に抗議を試みるも、プライドを傷つけられたと感じた中佐たちは夜中にクレアたちの家を襲い、クレアはレイプされながら赤ちゃんと夫を目の前で殺される。復讐に駆り立てられたクレアは、出世のためにローンセストンに向かったホーキンス中佐たち一行を追おうとするもジャングルのなかでどっちへ進んでいいかもわからず、道案内としてアボリジニのビリー(バイカリ・ガナンバル)を友人に紹介される。オーストラリアでは当時、アボリジニと見れば撃ち殺すのが日常茶飯で、クレアもビリーには見下した態度しか取れず、銃を突きつけながら案内をさせることに。こうしてギクシャクとしながらクレアとビリーはホーキンス一行を追って奥深いジャングルに分け入り、その道中で白人とアボリジニの凄惨な殺し合いの風景を何度となく目にすることになる。

 この作品には女性差別、人種差別、ゲイ差別が最初からとめどもなく吹き荒れる。さらには差別されているもの同士が手を組めなかったり、殺すことにためらい感じる少年など、『パラサイト』や『ジョジョ・ラビット』がコメディという形式で伝えたテーマが束になってシリアスに語られていく。作品のほとんどを占めるジャングル・クルーズは緊迫感を途切らせることなく、1秒たりとも音楽が流れないのはストーリー展開に自信があるからだろう(登場人物がアカペラで歌う場面は何回もある)。そして、思いつく限り、最悪の展開、最悪のシナリオへと話は流れていく。(以下、ネタバレ)クレアが中佐の部下をひとりめった刺しにして殺すのを見てビリーがクレアの元を去ろうとし、クレアが初めて自分の身の上を語り、彼女がイギリス人ではなくアイルランド人だということをわかってもらえたことで、2人が「イギリス人憎し」で心を通わせる場面は重要なシーンである。それまでにビリーがマジカル・ニグロ(都合のいい黒人)として描かれていたシーンもなくはなかったと思うものの、ビリーが彼にできることはほとんど何もやっていなかったことが、ここからはどんどんわかってくる。

 ようやくジャングルから出られるのかと思った後半、観客は意外な展開に足を掬われる。圧倒的に有利な地歩を得たクレアが中佐に銃を向け、そのまま撃ち殺せたにもかかわらず、その場から逃げ出してしまうのである。支配層に対する「憎しみ」が最後までストーリーをドライヴさせ、白人支配層に対して一矢報いるという感情に染まり、それが果たされると思い込んでいた僕はさらなる悲劇を覚悟しなければならないのかと、より一層の緊張状態に投げ込まれた。ただ、クレアが撃てなかった気持ちに違和感はなく、1人を殺した時点でクレアが少し冷静さを取り戻し、無意識のうちに復讐の連鎖から抜け出したくなっていたということはなぜか理解できた。クレアは終盤、それでもホーキンス中佐に対して言葉で彼を追いつめるという行動に出ることで彼のことを許したわけではないという意思表示は見せる。クレアが逃げ出した後、「復讐」や「暴力」の主体となるのはビリーである。19世紀という時代設定も関係はしていると思うけれど、21世紀につくられた作品として、ここにはちょっとした差別があって、女性であっても白人は暴力衝動を言葉に昇華することはできても、黒人(アボリジニ)にはそれができないという断層が設けられていると、そのように感じられてしまうところはあった。それは否めない。アボリジニが社会をどう定義し、どういうものに制裁を加える習慣があるかを説明しているシーンもあるので、その部分を信じるならば、的外れな展開ではなさそうで、これについては専門家のアドヴァイスや実際のアボリジニたちとも多くの面でコラボレイトしているとパンフレットには記してある。ビリーにはビリーの理由があってやることなのでストーリー的にもご都合主義的なものでないことは確か。あるいは、黒人(アボリジニ)の女性が最も無力な存在として描かれ、これ以上ないというほど最悪の扱いを受けているのは歴史が経過してきた通りだとは思うものの、「復讐」の回路にさえ組み入れられていないのはやはり凄惨な印象を増幅させる。

ボーダー』のアリ・アッバシや『寝ても覚めても』(本誌23号)の濱口竜介とともに「ポン・ジュノが選ぶ20人の若手」としてイギリスの「サイト&サウンド」にリスト・アップされていたジェニファー・ケントが監督を務めた(ほかにポン・ジュノが選んだのは『幸福なラザロ』のアリーチェ・ロルヴァケル、『アトランティックス』のマティ・ディオプ、『ヘレディタリー/継承』(本誌23号)や『ミッドサマー』のアリ・アスター、『ロングデイズ・ジャーニー』のビー・ガン、『イット・フォローズ』や『アンダー・ザ・シルバーレイク』のデヴィッド・ロバート・ミッチェル、『ゲット・アウト』や『アス』のジョーダン・ピールなど)。ラース・フォン・トリアー『ドッグヴィル』(03)で助監督を務めたケントのデビュー作は『ババドック 暗闇の魔物』(14)というホラー映画だったためにヴィジュアルもそれ風につくられているものの、この作品はオーストラリアという国の成り立ちに焦点を当てた歴史ドラマであり、サスペンスものとしてもよくできた力作だと思う。「ナイチンゲール」というタイトルは鳥のように歌うクレアのことを指し、クリミア戦争で活躍した近代看護婦の祖とは関係がない。

 オーストラリアがイギリスを憎む映画はピーター・ウィアー監督『誓い』(81)もそうだったし、普段は隠蔽されている感情が一気に噴き出してくるのを見るようで、やはり心に重くのしかかってくるものがある。当然のことながら日本が韓国などを植民地にしていたことやアイヌのことも思い出さざるを得ず、他者性をないことにできてしまうニュー・エイジに走れる人が羨ましいというかなんというのか。


映画『ナイチンゲール』予告編

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