「Ord」と一致するもの

別冊ele-king ブラック・パワーに捧ぐ - ele-king

世界はなぜ黒い物語を必要とするのか

インタヴュー:
ムーア・マザー
アンダーグラウンド・レジスタンス
ジェフ・ミルズ
グレッグ・テイト

Black Lives Matter とは何か
2010年代ブラック・ミュージックの50枚
2010年代デトロイトの50枚
コンシャス・ラップの30枚
ほか、映画、文学、歴史、黒人文化の大カタログ!


CONTENTS

■Interview
Greg Tate グレッグ・テイト──ブラック・カルチャーを読み解く (野田努)
Moor Mother ムーア・マザー──言葉と音、詩とタイムトラベル (ジェイムズ・ハッドフィールド/James Hadfield、五井健太郎訳)
Underground Resistance アンダーグラウンド・レジスタンス──受け継がれる抵抗のスピリッツ (野田努)
Jeff Mills ジェフ・ミルズ──記憶、そして未来へのオマージュ (三田格)

■Disc Guide
2010年代の黒人音楽の50枚 (選・文=三田格)
デトロイトこの10年の50枚 (選・文=M87)
BLMとリンクするヒップホップ30枚 (選・文=大前至)

■Columns
[Music]
Beyoncé ビヨンセ──そのラディカリズムを解説する (ジェイムズ・ハッドフィールド/James Hadfield、五井健太郎訳)
Nina Simone ニーナ・シモン──ただひたすら、革命を夢見た音楽家 (野田努)
John Coltrane ジョン・コルトレーンを追いかけて (平井玄)
James Brown ジェイムズ・ブラウン──はじめにリズムありき、そして黒いということ (野田努)
Archie Shepp アーチー・シェップ──自由と闘争の黒人音楽としてのジャズ (松村正人)
George Clinton ジョージ・クリントン──政治を好まないPファンクの政治表現について (河地依子)
Prince プリンス──彼はいつから「政治的な黒人」になったのだろうか (三田格)
Gil Scott-Heron ギル・スコット・ヘロン──黒いアメリカの本質をあらわすブルース学者 (ジェイムズ・ハッドフィールド/James Hadfield、五井健太郎訳)
Public Enemy パブリック・エナミー──政治とエンターテイメント (三田格)
Wu-Tang Clan ウータン・クラン──殺されないように自分を守りな (二木信)
Run The Jewels ラン・ザ・ジュエルズ──社会正義のヒーローなんぞにならない (ジェイムズ・ハッドフィールド/James Hadfield、五井健太郎訳)
Deforrest Brown Jr. ディフォレスト・ブラウン・ジュニア──なぜいまアミリ・バラカであり、フリー・ジャズであり、デトロイト・テクノなのか (野田努)
[Thought]
Amiri Baraka アミリ・バラカ──いつも新しい隣人 (平井玄)
Angela Davis アンジェラ・デイヴィス──すべての人にとっての先生、いまも闘い続ける哲学者 (水越真紀)
Kodwo Eshun コジュウォ・エシュン──アフロ・フューチャリズムの理論家 (髙橋勇人)
[Litetature]
James Baldwin ジェイムズ・ボールドウィン──黒人文学の可能性を広げた小説家 (松村正人)
Alice Walker アリス・ウォーカー──フェミニズムではなくウーマニズム (水越真紀)
Samuel Ray Delany, Jr. サミュエル・R・ディレイニー──ブラック・トゥ・ザ・フューチャー (髙橋勇人)
[Sports]
Muhammd Ali ムハメド・アリ──スーパースターにしてトリックスター (松村正人)
[Films]
ライアン・クーグラー『フルートベール駅で』 (三田格)
リー・ダニエルズ『大統領の執事の涙』 (野田努)
リー・ダニエルズ『プレシャス』 (三田格)
スパイク・リー『ドゥ・ザ・ライト・シング』ほか (大前至)
スパイク・リー『ゲット・オン・ザ・バス』 (三田格)
バリー・ジェンキンス『ビール・ストリートの恋人たち』 (木津毅)

■Essay
BLMの版図、あるいは警察予算の撤回をめぐって (新田啓子)
真に驚くべきこと (平井玄)
暗喩としてのアングリー・ブラック・ウーマン (押野素子)
100年後のパンデミックとポリス・ブルータリティ (日暮泰文)

■Chronicle
黒い年代記 (小林拓音)


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世界文学の21世紀 - ele-king

「世界」の意味が変わりつつある時代の「世界文学」とは?

いま、文学の世界では何が起こっているのか。世界の中で文学はどんな位置にあるのか。

人気の翻訳者であり研究者であり教育者である著者が、ドラマや映画、音楽など異なるジャンルも絡めつつさまざまトピックから現代文学の潮流を紹介!

音楽、美術、ノンフィクション、建築、情報技術といった分野で活躍するゲストとの対談も掲載、現代文学の最先端との交点に迫ります。

目次

単純な脳への抵抗──まえがき

第1話 「ジュノとコンマリ」
第2話 韓流のアメリカ
第3話 韓国文学の恵み

対談「ヒップホップと反ロマン主義」(大和田俊之)

第4話 半沢と渋沢
第5話 前立腺の教え

対談「言葉と意味から離れて」(椹木野衣)

第6話 世界の狭間
第7話 温もりと尊敬
第8話 すべてのものに仏性あり

対談「ちゃんとしたことって窮屈ですよね」(寺尾紗穂)

第9話 みんな娘がほしいわ
第10話 家に蛇がいると幸せになる

対談「モダン、ポスト・モダン、そしてオルタナティヴ・モダン」(五十嵐太郎)

第11話 フランスお洒落帝国
第12話 アイス売りのおじさんとの再会

対談「身体という他者と共存する」(ドミニク・チェン)

第13話 聖霊とテクノロジー
第14話 空に書かれた名前

あとがき

都甲幸治(とこう・こうじ)
1969年福岡生まれ。翻訳家、早稲田大学文学学術院教授。著書に『引き裂かれた世界の文学案内──境界から響く声たち』(大修館書店)、『「街小説」読みくらべ』『今を生きる人のための世界文学案内』(立東舎)、『21世紀の世界文学30冊を読む』(新潮社)、訳書にジュノ・ディアス『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』(共訳、新潮社)、『わたしの島をさがして』(汐文社)、チャールズ・ブコウスキー『勝手に生きろ!』(河出文庫)、ジャクリーン・ウッドソン『みんなとちがうきみだけど』(汐文社)などがある。 読売新聞(2010-2011)、朝日新聞(2018-)書評委員。


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Chari Chari - ele-king

 冒頭から私ごとで恐縮だが、自粛期間でジャズをたくさん掘る機会に恵まれた。見つけたアルバムのひとつにアルバート・アイラー『Music Is the Healing Force of the Universe』という作品がある。1969年リリース、遡ること約50年前のフリー・ジャズ。内容もさることながら、アルバムのタイトルにとくに強く惹かれるものがあった。『音楽は万物の癒しの力』音楽と同時に言葉の持つチカラは本当に偉大だ。そしていまから紹介するChari Chari『We hear the last decades dreaming』も音楽、そして言葉の持っている「癒しの力」を携えた1枚になっている。

 20年以上のキャリアを誇るDJ/プロデューサー、井上薫がChari Chari名義で放った新作。この名義では実に18年ぶりとなるアルバムで、2016年に12インチレコードでリリースされた「Fading Away / Luna De Lobos」などを含む全12曲が収録。「作曲、ミックス、マスタリング、という行程をある時期から完全に独りの作業として行っていった」と自身のブログでも語るように(是非このブログもレヴューと併せて読んでいただきたい)細部まで非常に拘り抜かれたアルバムになっている。

 イントロやアウトロなどを除けばほぼ全てが6分〜10分を超える非常に濃い内容の楽曲が揃っており、電車窓の情景を思い起こさせるような1曲目“Tokyo 4.51”が現実からアルバムが秘める異世界への橋渡しになっている。アルバムを何度か聴いていくと大きく分けて3つの構成に分かれているように感じており(是非機会があればご本人に確認したいところ)、それぞれのトラック・タイトルに“Dream = 夢”“Agua = 水”“Haze = 霧”と一寸先の見えないような幻想的な世界観が広がる1〜4曲。幻想を飛び出し、山奥や草原といった大自然の力を感じるような5〜8曲。そしてエレクトロニックでダンス・ミュージックのグルーヴも併せ持った9〜12曲。どれも井上薫自身のバックグラウンドでもある民族音楽やアンビエント、ミニマルなサウンドがこのアルバムの随所にも散りばめられており、それらが絶妙なレイヤーで増えたり減ったりを繰り返す。

 サウンドと並行してアートワークやタイトルにも強烈なメッセージが印字されており、ジャケットに記された「Music for Requiem Ritual」= 「安息の儀式のための音楽」がこのアルバムの最大のコンセプトになっている。奇しくも2020年、コロナ禍という人類の価値観や経済活動を覆す節目でリリースされたこのアルバムは18年という時を超えて本当に奇跡のような絶妙のタイミングでリリースされたとしか言いようがない。引き続き先行きの見えない世の中に不安を抱えながらも、このアルバムが持つ「癒しの力」にどっぷりと浸かりながら、過去そして未来の10年、20年(decades)に想いを馳せるのがリスナーとしてのアルバムのアンサーになるのかもしれない。

 往年の井上薫 / Chari Chariファンはもちろん、今回初めてChari Chariの存在を知った人にとっても、この挑戦的でコンセプチュアルなアルバムを是非一度聴いて欲しいと思うし、このレビューが少しでもそれを後押しできれば幸いだ。

STONE ISLAND - ele-king

 〈STONE ISLAND〉といえば、サッカー・ファンにはもうカルト的人気のファッション・ブランドです。日本でもプレミア・リーグが好きだったりすると、このブランドに憧れてしまうものなんですよ、理由は省きますが。まあ、〈フレッド・ペリー〉のようにライフスタイルにまでおよぶブランドのひとつですね。
 で、その〈STONE ISLAND〉が地元イタリアで評判のオルタナティヴやエレクトロニック・ミュージックに特化したフェス〈C2C〉と手を組んで、「STONE ISLAND SOUND」なる音楽プロジェクトをはじめた。プレイリスト作成やレコードのリリースなど、いろいろやっていくようです。ショップでもいろいろ音楽関係が売られるそうんで、楽しみです。
 なお、プレイリストはBandcampやBuy Music Club、Spotify、Tidalといった様々なプラットフォーム上で展開されるとのこと。たとえばこんな感じです。いいじゃないですか、ele-kingとも親和性が高いリストですよ。


https://buymusic.club/list/stoneisland-stone-island-sound-curated-by-c2c-festival-selection-1

Eartheater - ele-king

 アースイーターが〈PAN〉から4枚目となるアルバムをリリースする。前作『IRISIRI』とは打って変わって電子音響をほとんど使わず、ギター中心の作品となっている。アルバムのタイトルは『Phoenix: Flames Are Dew Upon My Skin』。スペインのサラゴサに滞在して制作されている。リリースは10月12日。以下、先行で公開されたMVです。彼女らしいというか、なんとも異形なアコースティック・サウンドですねぇ。

A Certain Ratio - ele-king

 これがじつに格好いい曲なんですよ。ACR(ア・サートゥン・レシオ)の12年ぶりのアルバム『ACR ロコ』に収録された“Yo Yo Gi”。ラテン・パーカッションからはじまりハウスへと展開するダンス・トラックで、長年マンチェスターでニュー・オーダーとともにバンド形態によってダンス・カルチャーにコミットしてきたベテランだけのことはある。今年のはじめに来日した際にフィールド・レコーディングした山手線のアナウス入りの曲で、MVにも東京で撮影された風景が流れている。



 1978年に始動したACRは、ジョイ・ディヴィジョン/ニュー・オーダーとともにマンチェスターの〈ファクトリー〉を代表するバンドとしてデビュー。レーベルの1枚目のシングルがACRだった。また、ニュー・オーダーはエレクトロを介してダンスフロアへと接近したのに対して、ACRはファンクとラテンのリズムをもって向かった。80年代なかばに脱退した初期メンバーは、のちにクアンド・クアンゴへと、そしてUKで最初期のハウス・プロジェクトのT-COYへと発展する。いっぽうのACRはメジャー契約後の80年代後半にいきなりシングル「The Big E」とフランキー・ナックルズのリミックス擁する「Backs To The Wall」をリリースするという、まさにUKダンス・カルチャーととに生きてきている。2000年代初頭におきたポストパンク・リヴァイヴァルにおいて、もっとも再評価されたのがACRで、12年ぶりのアルバムになる新作『ACR ロコ』は彼らの40年の集大成的な内容になっている。9/25発売まで待とう。

Bottom of Tokyo - ele-king

 週末はJリーグ! ……なのですが、なんとも悩ましい時間帯に、Wool & The Pantsのライヴ配信があります。
 どういうことかというと、思い出野郎AチームのパーカッショニストでありMAD LOVE Recordsを主宰するDJサモハンキンポー、DJ不時着によるレギュラー・パーティ「Bottom of Tokyo」が8/8(土)に東京・幡ヶ谷のforestlimitで開催。そこにウールが出演することになりました。また、PPUから7inch「Omae / Wagamama」をリリースした鶴岡龍もDJとして参加。
 ライヴハウスは限定20人、forestlimitの配信サービスforestlimittvでもライヴ配信されるという。いや~~、これは本当に悩ましいですな。しかし、ウールのライヴは滅多に見れませんから……。

“Bottom of Tokyo”

2020.8.8.SAT
Open/Start : 19:30
Streaming : 1,000JPY
Venue Entrance : 2,000JPY (Limited 20)

LIVE:
Wool & The Pants

DJ:
鶴岡龍
サモハンキンポー
不時着

https://www.tv.forestlimit.com/event-details/bottom-of-tokyo

Contact:
info@forestlimit.com
https://www.tv.forestlimit.com/

Yunzero - ele-king

 コロナがもしもゾンビだったら。そんなことあるわけないと早々に逃げ遅れて死ぬのが安倍やトランプ。いち早く危機を察知して助かるのがアーダーンやメルケル。そんなもの叩き潰してやるといって向かっていくのがボルソナロやルカシェンコ。僕の母親の家族は5000人以上の死者や行方不明者を出した伊勢湾台風の時に「こっちに逃げろ」と行政が指導した方向とは逆の方向に逃げたら助かったそうで、行政の指示に従った人たちは全滅だったという。そう、リーダーの指導力がソンビ映画の脇役と同程度だと判明してしまった国の人々はマジでどんよりとするしかない。コロナ禍を受けたイギリス人のジョークに「ニュージーランドに宣戦布告をしてすぐに降伏し、アーダーンに英連邦を支配・統治してもらいたい」というのがあったけれど、日本も……いや。イタリアですらスペランツァ保健相がこの25日に危機的状況は脱したという認識を示したというのに……だらだらと……いつまでも……

 長引くステイホームがもたらしたものは、そして、IDMの充実だったかもしれない。ベッドルームが活気づけばIDMが勢いを増すか、子どもが生まれるか。それはつまり「新たな非日常」をどう構築するかということで、それはそれで異様なテンションに包まれていたのかもしれない。

 モスクワのinFXがまずは秀逸だった。オウテカをカジュアルにしてフレッシュにしたようなデビュー作『Consume Your Own Identity』〈Klammklang Tapes〉は思い切りよく叩きつけるビートが気持ちよく、ヒステリックな音使いが閉塞感とは対極にあった。マイナー・サイエンス『Second Language』〈Whities〉のデビュー・アルバムも期待通り。ベルリンのアンガス・フィンレイソンがボーズ・オブ・カナダをダンスフロアに引きずり出そうとして、そのアイディアをカール・クレイグに横取りされたようなサウンドはいまさら〈ワープ〉の「アーテフィシアル・インテリジェンス」シリーズに加えてもおかしくはない1枚と言える。アルカもポップになり、ローレル・ヘイローの弟子たち(?)が集まったらしき『Fossilized Air Bubbles Popped Themusicfire』〈CAMP Editions〉も聴き応えがあった。そして誰よりもメルボルンのジム・セラーズによる『Blurry Ant』である。ユーチューブやインターネットから集めてきた音で、つまり、本人いわく「家に居ながらにしてフィールド・レコーディングが可能だった素材」を元にグルーヴィーな現代音楽が窒息しそうな勢いで並べられている。冒頭からエレクトロアコースティックをスラップスティックにねじ上げ、つかみはOK。

 バックグラウドがどうにも見えづらい音楽だけれど、まあ、その方が当分、楽しめるともいえる。リズム・パートとドローンを自在に行き来し、既成のフォームよりも混沌とした世界観を優先し、「僕はそう簡単には汚れない(I Didn’t Smudge So Easily )」などというタイトルをつけてきやがる。で、確かにどこかピュアな感覚は保たれていて、何度聴いても嫌なところがない。デビュー作『Ode to Mud』〈.jpeg Artefacts〉よりも全体にかなり複雑で、ここ数年、ちらちらと見かけるようになったイルビエント・リヴァイヴァルにも分類される音響。イルビエントいうのは開放感のないダブというのか、DJスプーキーが『Songs Of A Dead Dreamer』(96)で編み出した都会の袋小路を表現したサウンドで、ケヴィン・マーティンやハイプ・ウイリアムズもその系譜に位置している。彼らに共通しているのは最初はわかりにくいけれど、キャリア的には長持ちしているということ。『Blurry Ant』にもそのようなポテンシャルはびしびし感じられる。

 リリース元はこれまでにスパークリング・ワイド・プレッシャーやエンジェル-1、最近ではテキサスのモア・イーズや日本のイナー・サイエンスをリリースしてきたレーベルで、収益のすべてを警察の暴力に抗議するシカゴの「Assata's Daughters」に寄付されるそうです。例の「こぶし」マークの団体で、アサタというのはブラック・パンサーのアサタ・シャクール。2パックの叔母さんです。

DJ NOBU - ele-king

 ファッション・ブランド〈C.E〉から DJ NOBU のカセットテープがひっそりと発売されている。〈The Trilogy Tapes〉のバンドキャンプで先行発売されるや否や、速攻でソールドアウトになっていた貴重なブツである。〈C.E〉の実店舗が先週18日に営業再開となり、めでたく日本でも発売されることになった次第。なくなる前にゲットしておこう。
 ちなみに内容は、今年の3月12日(木)に開催された渋谷 MITSUKI でのパーティ《対人対物無制限》にて録音されたもので、現時点でぼく=小林が最後に行ったクラブ・イベントである。ぐぬぬ、新型コロナウイルスめ……。

アーティスト:DJ NOBU
タイトル:Recorded live at 対人対物無制限 (Taijin-Taibutsu Museigen) Tokyo, 12 March 2020
発売日:発売中
販売店舗:C.E (https://g.page/cavempt
販売価格:1,000円(税抜)

interview with Kamaal Williams - ele-king

 カマール・ウィリアムスの前作『The Return』から2年、ユセフ・カマールの『Black Focus』から数えると4年が経過した。僕もあのアルバムを聴いてから4年が経ってあっという間の年月を感じると同時に、ここ4年間でUK発の Boiller Room や NTS Radio がシーンの軸に変貌し、「UKジャズ」なるコトバが生まれ、世代や国境、人種を超えてあらゆるミュージック・ラヴァーを魅了した非常に濃い年月になったと思う。「一体どんだけこの土地から新しいアーティストが出てくるんだ?」と、毎月、毎年のUK勢の快進撃に僕もいまだに魅了されっぱなしだ。そんな中でも、カマール・ウィリアムスつまりヘンリー・ウーはどことなく独特な雰囲気と音楽を放ち続けている。過去のインタヴューを読んでも、自分自身のパフォーマンスに揺るぎない自身と絶対的なコンセプトがひしひしと伝わってくる。ここ2年で大幅にスキルアップも果たし、LAのレジェンド、ミゲル・アトウッド・ファーガソンなど、アメリカのアーティストとの新たなコラボレーションにも注目したい新しいアルバム『Wu Hen』は20年以降、そしてコロナ禍以降の音楽シーンを見据える上でも是非聴き逃して欲しくない1枚になっている。そんなアルバムの制作秘話を本人の口から直接聞くことができた。誰かと特別群れるわけでもなく、音楽が導く「運命」に身を委ね、孤独に高みを目指し続けるアーティストの裏側に迫った。

俺は音楽を「書く」ということはしない。いまを生きている。そのとき演奏した音楽が、俺の人生を物語っている。考えるということはしない。感じるんだ。

アルバム・リリースおめでとうございます。音楽とは少し離れたプライベートな質問になりますが、今回のコロナ禍はどのように過ごしていましたか?

カマール・ウィリアムス(Kamaal Williams、以下KW):参ったよね、本当に。まあ、できることをやるしかないから。

世の中がクレイジーな状況に見舞われてますが、アルバムはいつ頃完成していたのですか? それと、制作にかかった期間はどれくらいでしょうか?

KW:8月に作りはじめて、今年のはじめごろに作り終わってた。だから、制作期間は5、6ヶ月ってとこ。だいたいいつもそれぐらいの期間で終わるね。今年の1月ぐらいに俺がやることは終わってて、そこからアートワークとかハード面の作業をして、今回のリリースに至ったっていう感じ。リリース時期に関しては、このパンデミックとかそういうのは関係ないね。

あなたの音楽作りのプロセスについて教えてもらえますか?

KW:俺は音楽を「書く」ということはしない。いまを生きている。そのとき演奏した音楽が、俺の人生を物語っている。考えるということはしない。感じるんだ。

前アルバムと違いバンドのメンバーが大きく変わっていますね。『LIVE AT DEKMANTEL FESTIVAL』のときにはすでにその原型ができているように感じましたが、今作はどのようにしてメンバーを選びましたか?

KW:俺は運命を信じてる。誰と出会うかは、はじめから定められていることなんだ。だから、このアルバムに参加するメンバーが誰なのかも最初から決まっている。今回のメンバーに関しては、俺がアメリカに行ったときに会った。アメリカでは俺は外国人で、だからこそアメリカ出身の奴と音楽がやりたいと思ったんだ。それでマークという友人に、アメリカ人のミュージシャンを引き合わせてくれと頼んだら、LAのグレッグ・ポールと、(リック・レオン・)ジェームスを紹介してくれた。それでLAに飛んで彼らと会い、相性がいいことが分かったんで一緒にやることにしたのさ。セッションは最高だったね。そしてアトランタでは、クイン(・メイソン)と出会った。奴も最高のミュージシャンだ。そういう風に、出会うべき人間は最初から決まっている。

ドラマーのグレッグ・ポールとはLA現地で会ったんですね。ということは、いくつかの楽曲はLAでレコーディングしたんでしょうか?

KW:彼に出会ったのはLAだが、レコーディングはロンドンのサウス・イーストにあるウェストウッドというところでやった。俺のいるべき場所はサウス・ロンドンだからね。

ミゲル・アトウッド・ファーガソンとのコラボレーションはリスナーにとってサプライズですね。アルバムに参加したキッカケを教えてください。

KW:もともと、お互いの音楽が好きでね。マスターと仕事ができて光栄だったよ。彼に会ったとき、言われたのさ。「カマール、お前と仕事をすることに対して、俺には全く迷いがない。なぜって、お前は神に認められた神童だからな」って。あとはご承知の通り。今回のコラボレーションが実現した。制作のプロセスにおいて、彼の演奏やアイディアはなにひとつ変えていない。全てそのまま使わせてもらった。素晴らしい経験になったよ。彼の音楽は俺を高みに連れていってくれる。このアルバムが最高のものになったのは、彼のお陰に他ならないね。

以前のインタヴューで前作の『The Return』は母親の家のリビングでレコーディングしたという記事を見かけたことがあります。もし事実であれば今回は少し違ったスタイルでの制作かと思いますが、前のアルバムと比較して制作環境の変化があれば教えてください。

KW:レコーディングはスタジオでやったが、今回は、前作よりも明確な形で結果が表われている。一緒にやりたいと思ったミュージシャンに参加してもらえたし、これまでやったことのないことをやりたくて、それがすべて実現できた。ストリングスやヴォーカルもいつもよりも多用していて、今回は自分のヴォーカルを使ってみたりもした。今回は、自分をより信じることができたと言える。だから前回アルバムを出したあとに集めていたアイディアの、集大成のようなアルバムになっているんだ。

9曲目の “Hold On” で共演したローレン・フェイス(Lauren Faith)はUKの今後を担うシンガーですよね。私の記憶では女性シンガーとのコラボレーションは初めて? かもしれませんが、彼女とのコラボレーションの感想を聞かせてください。

KW:ローレン・フェイスね。彼女とのコラボレーションは最高だった。素晴らしかった。彼女はロイ・エアーズの娘なんだ(*)。ロイ・エアーズは分かるか? 彼女のあの声は、父親のDNAだ。本物のファンクさ。そのDNAで、父親から受け継いだ指紋で、俺のアルバムに跡を残してくれた。素晴らしい才能だ。女性シンガーと仕事をしたのははじめてではないが、リリースするに至ったのは初めてだね。ただシンガーには、男も女も関係ない。人間でしかない。どんな人間であるか、それしか関係がないんだ。

音楽は映画なんだ。俺がいちばん好きな監督が誰か、知ってるか? クロサワだ!! 彼の映画は全て観た。クロサワはストーリーテリングの巨匠だ。だから俺の音楽も、クロサワ映画のような物語を紡ぐものにしたい。

(先行でリリースされた)2曲目の “One More Time” だけを Bandcamp で聴いていたときは正直「前作とおなじテイストかな?」と思っていましたが、アルバム全体を聴いて幅の広がりに驚きました。5曲目の “Pigalle” のようなスタンダードなジャズ・ナンバーの楽曲も最初からアルバムの構想に入っていましたか?

KW:むしろ、最初の構想としてはクラシックなジャズ・アルバムを作りたかった。自分がもと来た道を感じられるような……ライヴ音楽からはじまった俺のキャリアの、ルーツに戻るようなアルバムをね。俺がいままで辿ってきた道にあった全ての因子を摘み、集めたスペクトラムを形にしたかった。そして結果的に、ジャズ・アンサンブルからハウスまで、俺がこれまでに音楽的に経験してきたあらゆる要素を詰め込んだアルバムになった。このアルバムの中で、全てをやり尽くしたくなったんだ。それで “Pigalle” は、アルバムの中でジャズを象徴する曲になっている。皆なんでもかんでも「UKジャズ」と言いたがるが、ほらよ、これが「UKジャズ」だっていう曲だね。そこに少しのアメリカ的エッセンスも入れている。

去年の暮れは『DJ-Kicks』のリリースも話題になりましたが、ヘンリー・ウー名義で今後エレクトロニックなハウスやブロークンビーツのEPやアルバムを出す考えはありますか?

KW:まさに来年、その予定がある。日本人アーティストとのコラボレーションも考えている。色々と計画している最中だね。実は、日本のアーティストのリリースも決まっているんだ。

そういえばルイ・ヴェガの Instagram でエレメンツ・オブ・ライフの新しいアルバムに参加したような投稿を見かけました。ルイとのセッションはどうでしたか?

KW:ビッグ・アンクル・ルイ! 大好きだ。もちろんセッションは最高だった。ただ、こっちに決定権がないから彼のアルバムについては話せない。最終的に収録されるかも俺にはわからない。全てはアンクル・ルイの判断だ。だが心からリスペクトしているし、毎日彼の音楽を聴いている。超人的にドープな音楽を作る師匠だ。彼にはかなりの影響を受けてるね。ルイから連絡をもらって、実現したのさ。「よお、カマール!」って、彼のスタジオがあるニューヨークのアッパーイーストに呼ばれてね。

アートワークを務めたオセロ・ガルヴァッチオ(Othelo Gervacio)。彼の Instagram を見るとメッセージ性の強い作品が多いですね。『Wu Hen』のアートワークにも特別なメッセージは込められていますか?

KW:オセロ・ガルヴァッチオは、ケニーっていうクリエイティヴ・ディレクターに紹介してもらった。アートワークに関しては、彼に全部任せたよ。でき上がったのを見て、目が釘付けになったね。制作過程は見ていないけど、あの雲は彼が描いたらしい。すごくいいアーティストだ。

コロナの影響を受けて、フェスティヴァルやイヴェントの形や、音楽の聴き方や存在自体が変化していますね。あなた自身は今回の期間を経て何か考え方や行動、音楽に対する価値観が変わりましたか?

KW:わからない。わからないね。全部終わってから振り返ってみないと。ロンドンはまだカオスで、できることが限られているけど自分ができることをやってる。いまできるのは、音楽を作り続けることだけだね。その音楽がその状況を語ってくれるはず。音楽はこういうことがなくたって常に変化していくもの。だから変化や影響があるとすればそれは自然なことだし、むしろどう変化するのか見てみたい。どう変化するかは、自分たちに予想はできないからね。

それでは近い将来で、計画しているプロジェクトや、やってみたいことなどは?

KW:次のアルバムはもう考えてる。このまま音楽的実験を続けて、より進化した作品を出す。それがいまメインで動いてる話。ヴォーカルは俺がやるよ。これまでもずっと歌をやってきたから。もう次を作りはじめてるんだよ。

注目しているプロデューサーはいますか?

KW:将来、リック・ルービンとアルバムを作りたいとはずっと思ってる。一緒に仕事をしたいプロデューサーなんて山ほどいるが、リック・ルービンはその中でもダントツの存在だね。

ブルース・リーがお好きなんでしたよね。

KW:そう! その瞬間に感じるものが全てなんだ。俺の人生、そして他人の人生から学んだものが組み合わさって、そのとき演奏する音楽に昇華される。つまり、音楽は映画なんだ。俺がいちばん好きな監督が誰か、知ってるか? クロサワだ!! 彼の映画は全て観た。『七人の侍』、『用心棒』、『羅生門』の3本が、俺の人生の映画だ。クロサワはストーリーテリングの巨匠だ。だから俺の音楽も、クロサワ映画のような物語を紡ぐものにしたい。

そうした映画の映像からインスピレーションを受けて、即興したりも?

KW:間違いなくインスピレーションは受ける。だが映画を観ている時は、100%スクリーンに集中している。『七人の侍』の、あの素晴らしい物語に全神経を集中させている。作品を消化したあとに、その感情を音楽として表現するんだ。

自分の音源以外で最近聴いている楽曲を教えてください。

KW:ロザリア(Rosalia)というスペインのシンガーがいるんだが、あまり知られていない。彼女はすごく良い。古いのではマーヴィン・ゲイも最近聴いている。あとは『DJ-Kicks』でフィーチャーしたバッジー(Budgie)も。

ありがとうございました。質問は以上です。状況が落ち着いたら、来日も楽しみにしています。

KW:ああ、日本にはまた行きたいと思っている。日本の皆に神のご加護を。

* 訳註:ローレン・フェイス(25歳)とロイ・エアーズ(79歳)の親子関係の情報がなく、年齢的にロイ・エアーズの息子、ロイ・エアーズJr.の方の娘(=孫)という意味だった可能性もあり。

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