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interview with Fever The Ghost - ele-king


Fever The Ghost
Zirconium Meconium

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 テンションの高い、エキセントリックなサイケ・ポップはいま流行らないだろうか? しかし、まさにテームなドリーム・ポップ化を遂げてしまったテーム・インパラを多少歯がゆく感じている人などは、ぜひこのフィーバー・ザ・ゴーストにぶっ飛ばされてみてほしい(ドゥンエンの新譜もいいけれど)。テームなインパラがノンアルコール・ビールだとすれば、FTGはさしずめドクターペッパーか、ソーダ・フロートに花火の刺さったやつというところ。それは子どもが大好きな、目に悪い色をした、極端な味の、高カロリーの、悪趣味すれすれの、おいしい体験である。

 西海岸というサイケデリック・ロック揺籃の地から現れたサイケデリック・ロック・バンド、フィーバー・ザ・ゴースト。骨太なガレージ感、圧巻のグルーヴ、酩酊感も十分(このライヴが楽しい→https://www.youtube.com/watch?v=s97ZqaFv-O0)、ここでも答えてくれているようにキャプテン・ビーフハートあるいはラヴといった西海岸の先達の影響を奥底にしのばせながら、ホークウインド的なスペーシーなプログレ要素、あるいはグラム・ロックのカブいたポップ・センス、そしてフレーミング・リップスやオブ・モントリオールのエキセントリシティを放射する……とにかく派手なエネルギーを充溢させた4人組である。

 それでいてチャイルディッシュなヴォーカル・スタイルをはじめとして、PVから一連のアートワークにいたるまで、幼形成熟的で得体の知れないキュートさが大きな特徴になっている。彼らの奇矯さの象徴たるこのヴォーカル=キャスパーには、近年のロック・バンドにおける「コレクトな感じ」──グッド・ミュージック志向で行儀のいい、あるいはファッショナブルにヴィンテージ・ポップを奏でる器用さといったものから程遠い、ひとつの業のようなものも感じるだろう。リズム隊が年長でテクニカル、シンセ・マニアがいるのもいいバランスだ。ショーン・レノンによって発見され、ウェイン・コイン(フレーミング・リップス)が入れ込んだというエピソードにもうなずかされる。

 さて、今回取材したのはベースのメイソンだが、じつにマインド・エクスパンデッドな回答を戻してくれた。キャスパー(オバケのあれ)ばかりではない、みながそれぞれに大らかな世界観を持っているのだろう。フィーバー・ザ・ゴースト、そのアンチ・ビタミン・カラーのサイケデリアは、2015年というタイミングにおいてはとくに美味に感じられる。召されませ。

■Fever The Ghost / フィーヴァー・ザ・ゴースト
テンプルズを輩出した〈Heavenly Recordings〉と契約したロサンゼルス出身の4人組バンド。2014年にデビューEP『クラブ・イン・ハニー(Crab In Honey)』をリリース。これまでザ・フレーミング・リップス、ショーン・レノンやテンプルズとツアーを周り、2015年のレコード・ストア・デイには、テンプルズとお互いの楽曲をカヴァーするスプリット・シングルを発売。そして同年9月、デビュー・アルバム『ジルコニウム・メコニウム』の発売が決定した。ラインナップはキャスパー(vocal /guitar)、ボーナビン(synth)、ニコラス(drums)とメイソン(bass)。

僕らに影響を与えたものはたくさんあるんだ。拡張現実、テクノロジーの発達、森、YouTubeのフード・レヴュー……

結成はいつで、どのような経緯で集まったメンバーなのでしょう? 年齢はみなさん近いのですか?

メイソン(bass):結成は2年半くらい前で、もともとはヴォーカルのキャスパーがひとりでシングルをいくつかレコーディングしたところからはじまった。その後いくつかの幸運な偶然が続いて、キャスパーとキーボードのボビーがいっしょにリハーサルをしたり、ショウで演奏するようになって、その少しあとに、僕らのプロデューサーでありゴッドファーザーのルーター・ラッセルが、ベーシストの僕(メイソン)とドラマーのニックをキャスパーに紹介したんだ。ニックと僕はそれ以前にも他のバンドでいっしょに演奏していて、いっしょにロサンゼルスに移ってきた。年齢は僕らのうち2人が30歳で、もう2人が23歳だから、少し離れているね。

西海岸はサイケデリック・ロックの揺りかごともなった土地ですが、実際に生まれ育った場所として、そうした影響の残る土地だと思いますか? また、自分たちの音楽性を決定する上で影響があったと思いますか?

メイソン:たしかにそういう面はあるし、僕ら自身も間違いなく西海岸出身のミュージシャンからの影響は受けていると思うよ。キャプテン・ビーフハートやアーサー・リーのラヴとか。でも僕らがどこで生まれたかに関わらず、そういった音楽に惹かれていたと思うし、それらが僕らが影響を受けた唯一の音楽ってわけでもない。僕らに影響を与えたものはたくさんあるんだ。拡張現実、テクノロジーの発達、森、YouTubeのフード・レヴュー……

(通訳)フード・レヴュー?

メイソン:うん、とくに「ゲイリーズ・フード・レヴューズ(Gary’s Food Reviews)」。ゲイリーは僕らバンドにとってのヒーローみたいな存在だよ。食べ物が好きだから観るというよりもゲイリーのレヴューの仕方が好きだから観るような感じさ。

あなたがたは、エキセントリックな雰囲気があるのに、とてもスキルフルなバンドだと思います。曲作りをリードしているのはどなたですか?

メイソン:曲作りのプロセスは、まずキャスパーが曲を書いて、バンドの他の全員にそのヴィジョンを共有する。そして僕らそれぞれが自分のパートを作って、曲が発展していくんだ。

視覚的な表現においても、斬新でありながら、ある意味では正統的なサイケの伝統を引いていると思います(“バーベナ/Vervain (Dreams Of An Old Wooden Cage)”など)。MVやアートワークのディレクションは誰が行っているのですか? また、その際にとくにこだわる部分や哲学について教えてください。

僕らの美学は、「何であれナチュラルに感じることをする」ってことだよ。

メイソン:誰かひとりがディレクションをしているというよりも、バンド・メンバー全員と、バンドのまわりに不思議と現れた人たちとのコラボレーションだよ。オリバー・ハイバートと弟のスペンサー・ハイバートとは人からの紹介で知り合って、それ以来いろいろなことをいっしょにやることができた。それと同じようにキャスパーはゲーム・デザイナーのテイト・モセシアンを家族ぐるみで子どもの頃からよく知っているんだけど、僕らの新しいアルバムのジャケットのアートはテイトが作ってくれた。そういうふうに僕らのまわりにはたくさん興味深い人たちがいて、僕らはいつもそういうまわりの人たちからインスピレーションを受けたり、コラボレーションしているんだ。僕らの美学は、「何であれナチュラルに感じることをする」ってことだよ。僕らが作る音楽、アート、着る服まで、どれも自由さの産物で、僕らは自分たちをひとつのスタイルやジャンルに縛ったりはしないんだ。表現の自由が僕らの哲学だよ。

ライヴ・ヴィデオなどでは、録音環境もあるのでしょうが、非常にガレージ―でラフなプロダクションが目指されているように感じます。対して、アルバムの方はクリアに整えられていますね。今作のサウンド・プロダクションについて、何か目指すところがありましたら教えてください。

メイソン:目指していたのは、僕らが自信を持って出すことができて、自分たち自身で聴きたくなるようなレコードだった。サウンドについて、バンド内でとくにはっきり「こういうサウンドにするべきだ」みたいな会話をしたわけじゃなくて、僕らが使ったスタジオや、制作に費やすことのできた時間といったいろいろなファクターが組合わさって、自然と彫刻が彫り出されるように、結果的にこのアルバムができ上がったんだ。

とはいえ、“サーフズ・アップ! ネヴァーマインド(Surf's UP!...Nevermind.)”などは絶妙にワイルドですね。エンジニアはどんな方なのでしょう?

メイソン:エンジニアはクリス・ステフェンって名前で、〈セージ・アンド・サウンド〉ってスタジオで仕事をしている。彼はキャスパーの父親と長いこといっしょに仕事をしていて、キャスパーともレコーディングをしたことがあった。すごくいいヤツで、パイレートって名前のすごく可愛い犬を飼っていて、その犬がいつもいっしょにいるんだ。それとヴィクター・インドリッゾ(キャスパーの父)も僕らのガイドになってくれたよ。

(通訳)ヴィクターがプロデューサー?

メイソン:うん、というか、プロデュースは基本僕ら自分たちでやったんだけど、彼は僕らのカウンセラー、ガイダンス、グル、友人としていっしょにいてくれたんだ。

僕らみんなきゃりーぱみゅぱみゅや(初音)ミクの大ファンなんだ。サウンド面でも、ヴィジュアル面でもかなり影響を受けているよ。

このアルバムの制作の進め方についても教えてください。

メイソン:制作のプロセスは曲によってかなりちがっていたよ。いくつかの曲は実際のスタジオの中でキャスパーが作りはじめて、他のいくつかはAbleton Live上で作りはじめて、そのあとスタジオに持ち込んでバンドが加わって、さらに他の曲はバンドでライヴ・トラックとして生まれて、いったんそれを破棄して、それぞれのメンバーが別々に自分のパートを録音して作られた。それぞれの曲に必要な方法で形作っていったんだ。レコーディングのプロセスは全部で18ヶ月くらいにわたったよ。ときにはまったくレコーディングをしない時期があったり、逆に一週間毎日レコーディングを続けたり、スケジュールや時間が許すときに断続的にレコーディングを進めたんだ。

“1518”はドラムマシンを用いてダンス・ビートが敷かれていますね。ファンキーですが、曲調もくるくるとめまぐるしく表情を変えていきます。どんなプロセスででき上がった曲なのでしょう?

メイソン:“1518”にはドラムマシンも少し使っているけれど、大部分は生のドラムの録音なんだ。ニックのドラムに加えて、ヴィクター・インドリッゾの演奏するコンサート・タムもレコーディングに入っているよ──コンサート・タムを演奏できるとヴィクターはすごくハッピーになるから、少し彼に演奏する機会をあげる必要があったのさ。もともとキャスパーが以前に自分の部屋でレコーディングしたセッションからのステム・ファイルがあって、それを僕の家でドラマーのニックに聴かせたんだ。そのとき家の上階の住人からストラトキャスターを買って、僕らのヴァージョンのナイル・ロジャース・サウンドを作ろうとしたんだ。その後にそれを〈セージ・アンド・サウンド〉スタジオに持っていって、他のシンセサイザーのトラックや、ヴォーカルの大部分を加えていった。だから3つのちがったレコーディング環境の組み合わさった曲だと言える。

“イコール・ピデストリアン(Equal Pedestrian)”も非常に自由です。ヴォーカルにはオートチューンまでかかっていますね。とても意外な展開でもありましたし、あなたがたが柔軟なバンドだということもわかりました。少しJ-POP的であるとさえ思ったのですが……

メイソン:そう言ってくれてすごくうれしいよ! 僕らみんなきゃりーぱみゅぱみゅや(初音)ミクの大ファンなんだ。きゃりーぱみゅぱみゅはプロダクションも素晴らしいし、ミュージックビデオも最高で、サウンド面でも、ヴィジュアル面でもかなり影響を受けているよ。僕らのお気に入りのミュージックビデオのいくつかはきゃりーぱみゅぱみゅのビデオさ。

Massiveは複雑なシンセサイザーだから、たとえばキャスパーが「ボビー、フワフワのピンクのスパイダーがたくさん空から降ってきて、地上2フィートのところに着地して、その下を屈んで歩かなきゃいけない、みたいなサウンドが欲しいんだけど」とか言ったとしても、それに対応することができるんだ。

これにヴィデオをつけるとすれば、どんな作品にしますか?

メイソン:この曲のヴィデオはほぼ間違いなく実際作ることになると思うよ。できればきゃりーぱみゅぱみゅのMVの監督に作ってもらいたいな。もしもこのインタヴューを読んでいたら、ぜひお願いしたいね!

ムーグも非常に大きな役割を果たしていると思います。あなたはシンセにも好みがありますか?

メイソン:僕らのキーボーディストのボビーはムーグのLittle Phattyを使っていて、このアルバム中の曲にもかなり使われているよ。それとネイティヴ・インストゥルメンツのデジタル・シンセであるMassiveもかなり多用しているよ。ボビーはサウンドデザインのエキスパートで、MassiveはLittle Phattyよりずっと複雑なシンセサイザーだから、それを使って、たとえばキャスパーが「ボビー、フワフワのピンクのスパイダーがたくさん空から降ってきて、地上2フィートのところに着地して、その下を屈んで歩かなきゃいけない、みたいなサウンドが欲しいんだけど」とか言ったとしても、それに対応することができるんだ。

デヴィッド・ボウイとマーク・ボランだとどっちに共感しますか?

メイソン:うーん、たぶんデヴィッド・ボウイかな。彼の方がマーク・ボランより宇宙が好きだと思うから。

シド・バレットとジム・モリソンなら?

メイソン:間違いなくシド・バレット。彼の方が自転車に乗るのが好きだから。レザー・パンツを履いてちゃ自転車に乗れないもの。

(シド・バレットとジム・モリソンなら)間違いなくシド・バレット。彼の方が自転車に乗るのが好きだから。レザー・パンツを履いてちゃ自転車に乗れないもの。

(通訳)ジム・モリソンは何に乗ると思いますか?

メイソン:彼はたぶん虎から生えた女性の頭に乗るね。

ニンジャとサムライなら?

メイソン:ニンジャとサムライ? いいね、この質問。ニンジャかな、サムライはもっとタフガイっぽいっていうか、英語で言う「bro」って感じがするけど、ニンジャはシャイだと思うから。ニンジャはきっと感情面が発達していると思う。

アリエル・ピンクは好きですか?

メイソン:うん、アリエル・ピンクは好きだよ。ときどきフランク・ザッパの、まるで子どもみたいな性格を思い起こさせるところがあってさ。新しいアルバムはいつも聴くといい時間が過ごせるよ。

現実と非現実というふうに世界を分けるのは馬鹿げていると思いますか?

メイソン:現実と非現実を分けずに考えるのは不可能だと思うよ。現実っていうのはそれを認識する個々人や存在ごとに分裂していっているから、現実と非現実で世界を分けるのは自然な認識で、馬鹿げているとは思わないな。そしてテクノロジーの面について言えば、僕らの世界の上によりよい世界が構築されて、そこに行けるようになるといいなと思うよ。

マインド・エクスパンディングとは、いまの世界を生きていくのに有効な考え方だと思いますか?

メイソン:マインド・エクスパンションはいつでも有効な考え方だよ。必ずしも達成されなければいけないものだとは思わないけれど、マインドを発達させていくことこそが、人間のもっともよい資質のひとつだと思うし、それをやめてしまったら(人間)みんながストップしてしまうよ。いまの時代だけじゃなくて、これまでも、人類の進歩の途上から現在に至るまで、ずっと人間はマインドを成長させてきたと思う。いつか『スター・トレック』の世界が実現したらいいなと思うんだ。すべてが受け容れられて、すべてが与えられて、みなが芸術や科学や探求にフォーカスする世界。それがいちばん楽しいことだと思うし、人々はそういうことを十分していないと思うからさ。

マインド・エクスパンションはいつでも有効な考え方だよ。マインドを発達させていくことこそが、人間のもっともよい資質のひとつだと思うし、それをやめてしまったら(人間)みんながストップしてしまうよ。

アニメやゲームが好きなんですか? 好きな作品を挙げてもらえませんか?

メイソン:うん、アニメやゲームは僕らみんな好きだよ。『アドベンチャー・タイム』とか、『マインクラフト』なんかがお気に入りかな。

日本の作品で好きなものがあったら、ジャンルを問わず教えてほしいです。

メイソン:いろいろあるけど、さっきも言ったようにJ-POPは僕らみんな大好きだし、アニメだったら『(新世紀)エヴァンゲリオン』とかにはかなり影響を受けていると思う。

(通訳)『エヴァンゲリオン』はアメリカでも広く知られているんですか?

メイソン:うん、かなり有名だよ。もちろんメインストリームとしてのレベルで有名なわけではないけど、サブカルチャーとしては有名だと思う。

いまおもしろいなと思う同時代の音楽があれば教えてください。

メイソン:アワー・オブ・ザ・タイム・マジェスティ・トゥエルヴ(Hour Of The Time Majesty Twelve)っていって、略してHOTT MTっていうバンドがいるんだけど、彼らはクールだよ。あと、ヴァイナル・ウィリアムス(Vinyl Williams)も。彼はもうすぐアンノウン・モータル・オーケストラ(Unknown Mortal Orchestra)のサポートをすることになっているんだけど、アンノウン・モータル・オーケストラも好きだよ。HOTT MTとは、他の僕らの友だちのバンドも含めて12月にいっしょに大きなショウをしたいと思っているんだ。同じようなラインアップで日本にも行けたら最高だね!

休まず動悸する音と映像 - ele-king

 エレクトロニカ、IDM、ダブステップ以降のクラブ・ミュージックの交錯点において確実に新たな流れを予感させるアーティストの一人、アルビノ・サウンド。まさにいま世に問われようとしているデビュー・アルバム『Cloud Sports』から、新たなミュージック・ヴィデオが公開された。

Albino Sound - Restless

 廃墟の壁や天井のカットアップにはじまり、塀を越える少年が映し出される。彼が歩きはじめてから駆け出すまでの奇妙な緊迫感は、やがてさまざまな建造物の映写に重なりながら増幅し、主体の出発/前進/衝動もしくは脱出/逃亡/混乱をオブセッシヴに描き出す。モノクロームなサウンドと乾いたビートは、いつしか映像の心拍数にシンクロして、早鐘を打つようにその動悸を高めていく──気鋭の若手ディレクター石田悠介が監督する、日本人離れしたMVセンスも楽しみたい。

 また、来月にはリリース・パーティーも予定されているようだ。あわせてチェックされたし!

電子音楽界の新たな才能、デビューアルバム『Cloud Sports』が好評のAlbino Sound<アルビノ・サウンド>が新MV「Restless」を公開した。映像は短編映画「Holy Disaster」の監督:石田悠介がドイツのベルリンで撮影した映像で作られている。

MVはアルバムのリード曲であり、都会の夜に合うアーバンな世界を持ちつつも、チル効果もあり、反復するビートが非現実的な中毒性を持った楽曲となっている。

またAlbino Soundはデビューアルバム『Cloud Sports』のリリースパーティーを11/19(木)中目黒solfaで開催する。詳細は後日公開予定。

■Albino Soundプロフィール
Albino Soundはプロデューサー兼マルチ・プレイヤー梅谷裕貴(ウメタニ・ヒロタカ)のソロ名義。今までに世界の第一線で活躍するアーティストをその卒業生に名を連ねるレッドブル・ミュージック・アカデミーが世界中から集まった応募者たちの中から選び抜いた日本人アーティスト。その活動は多岐にわたり、TAICO CLUBやRAINBOW DISCO CLUBへの出演の他、ウェブサイトTheDayMag.jp の制作した短編ドキュメンタリー・シリーズのサウンドトラックなどの提供を行っている。デビューアルバム『Cloud Sports』を10月7日にリリース、ミックスは日本を代表するエレクトロニカ/テクノ・アーティストAOKI takamasaが担当。マスタリングは中村宗一郎、MVの映像は短編映画「Holy Disaster」で知られる気鋭の若手ディレクター石田悠介が監督している。

■イヴェント
Albino Sound 『Cloud Sports』 リリースパーティー
日程:11月19日(木)
会場:中目黒solfa
詳細:後日公開

■リリース情報

Albino Sound / Cloud Sports
品番: PCD-20362
発売日:2015年10月7日
価格:¥2,000+税
発売日: 10月7日

<Track list>
01 Airports 1
02 Cathedral
03 Culture,Over again
04 library
05 Restless
06 Jump Over
07 Escape
08 Airports 2


HOUSE OF LIQUID - ele-king

 今週末金曜日、ハウス・ミュージックの魅力をとことんお伝えする、リキッドルーム主催の「ハウス・オブ・リキッド」。今回の出演者は、このパーティのレジデンツ、ムードマン、そしてフランスからはDJディープ(硬派とはこの人のことを言う)、そして我らが大先輩、高橋透──その復活の夜でもある。
 2015年といえば、キミはジェイミーXXやレヴォン・ヴィンセントに夢中になったかもしれない。だとしたら、自分の好奇心を信じて、もう一歩、階段を下りてみるのもいいだろう。このジャンルには、まだこんなにも面白いところがあったのかと、嬉しい発見が待っている。そして、ト・オ・ル……待ってました~。という黄色い歓声に包まれることだろう。

10月23日@恵比寿リキッドルーム
OPEN / 23:00~

ADV / DOOR
adv. 2,000yen / door 3,000yen(with flyer/HOUSE OF LIQUID MEMBERS/under 25:2,500yen)
LINE UP
feat.
DJ DEEP(Deeply Rooted)
TOHRU TAKAHASHI(GODFATHER)
MOODMAN(HOUSE OF LIQUID/GODFATHER/SLOWMOTION)
TICKET
チケットぴあ [277-115] ローソンチケット [76899] e+ LIQUIDROOM DISK UNIOIN(SHIBUYA CLUB MUSIC SHOP/SHINJUKU CLUB MUSIC SHOP/SHIMOKITAZAWA CLUB MUSIC SHOP/KICHIJOJI)、JET SET TOKYO、Lighthouse Records、LOS APSON?、TECHNIQUE、clubberia、RA
INFO
HOUSE OF LIQUID https://soundcloud.com/house-of-liquid https://www.mixcloud.com/house-of-liquid
LIQUIDROOM 03-5464-0800


XL Recordings Chapter VIが東京で開催決定 - ele-king

 イギリスの名門レーベル<XL Recordings>のショウケース、XL Recordings Chapter VIが、ロンドン、マンチェスター、そして東京での開催が決定した。来日するのはスペシャル・リクエスト、ヒューゴ・マシアン、そして実現すれば今回初来日になるゾンビーの三組だ。

 現在〈XL〉周辺からは良質のダンス・ミュージックが多くリリースされている。先日公開されたスペシャル・リクエストの新曲は、90年代ハードコアをアップデートしたかのようなサウンドに仕上がっており、発売前にも関わらず大きな反響を呼んでいる。



 ゾンビーの新曲はひと足先に発表され、今週ここ日本でもレコードが店頭に並んだ。彼はここにきてベース・トラックに加え、アシッド・ハウスやテクノなども披露。スタイルが違う曲でも、そのダークなサウンドはまさにゾンビー。その素性と言動とともに謎が多い彼だが、当日無事にステージに立っていることを願おう。



 彼らと来日するルーキ、ヒューゴ・マシアンはまだ〈XL〉からのリリースはないが、現在発表されているディープ・ハウスのトラックやミックスから、その才能をうかがい知ることができる。大御所ふたりと同じステージで、彼はどのようなセットをプレイするのだろうか?

 イベントは11月27日金曜日、代官山UNITで行われる。Saloonではゾンビーにゆかりのある、あのクルーがプレイする予定。追加情報に期待。

XL Recordings Chapter VI

日時/会場: 2015/11/27(金)代官山UNIT / Saloon
OPEN/START: 24:00
出演:
Zomby / Special Request / Hugo Massien
チケット: 10月17日(土)よりプレイガイド( E+ / ローソンチケット)にて発売!
その他店舗でも順次販売開始!
価格:前売り 3,500円(税込/1ドリンク別途)、当日 4,000円(税込/1ドリンク別途)
チケット詳細情報はこちらから:(リンク入れ込み)
※20歳未満の方はご入場いただけません。
※写真付きIDチェック有り。身分証明書をご持参ください。
※アーティストの変更・キャンセルによる払い戻しは致しません。

主催・招聘:Ynos
XL Recordings Chapter VIオフィシャルサイト:https://ynos.tv/hostessclub/schedule/20151127.html

interview with Yppah - ele-king


Yppah
Tiny Pause

Counter / ビート

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 筆者が初めてイパの音楽を聴いたのは、セカンド『ゼイ・ノウ・ワット・ゴースト・ノウ(They Know What Ghost Know)』(2009)が出た頃で、当時はエレクトロ・シューゲイズと謳われていた。ノイズ+疾走感+甘いメロディというシューゲイズ・ポップの黄金律が、穏やかなエレクトロニクスと清新なギター・ワークによってほどよく割られていて、同種のタグの中で比較するなら、ハンモックよりもビート・オリエンテッド、ウルリッヒ・シュナウスよりもミニマル……とてもバランスも趣味もいいという印象のプロデューサーだった。チルウェイヴの機運もまさに盛り上がろうというタイミングで、そうした時代性とも響き合うアルバムだったと記憶している。

 そうしたバランスのためでもあるだろう、後年『ラスベガスをぶっつぶせ』『CSI: 科学捜査班』など、映画やドラマ、ゲームなどに使われる機会も増えたようだ。そもそもサントラを作ってみたくて音楽制作をはじめたというから、イパことジョー・コラレス・ジュニアにとって、その約10年にわたるキャリアは理想的な歩みだったとも言える。

 そして4枚めとなる『タイニー・ポーズ』がリリースされた。本作を特徴づける一曲を挙げるならば、“ブッシュミルズ(Bushmillls)”だ。それは彼がフェイバリットのひとつだと語るカリブー(マニトバ)の『アンドラ(Andorra)』(2007)を彷彿させ、ブロードキャストや、あるいはソフトサイケの埋もれた名盤といった趣を宿し、ドゥンエンの本年作の隣で、ハイプ化したテーム・インパラよりも一層奥のサイケデリアを引き出してくる。
 彼のドリーミーさ甘美さは砂糖ぐるみなのではない、それはもうちょっと深いところにある情感から生まれたものだ。そして年齢や経験とともに彼はより自然な手つきでそれを引き出すようになった──のではないか。本作はその意味で成熟したイパを示しており、前作『81』でやや野暮ったく感じられたパーソナルな感触を完全に過渡期のものとして、その先の音とスタンスをポジティヴに描き出している。以下語られている犬の影響というのは……よくわからないけれども。

■Yppah / イパ
イパことジョー・コラレス・ジュニアによるソロ・プロジェクト。2006年のデビュー・フル『ユー・アービューティフル・アット・オール・タイムズ(You Are Beautiful At All Times)』以降、これまでに〈ニンジャ・チューン(Ninja Tune)〉から3枚のアルバムをリリース。映画『ラスベガスをぶっつぶせ』やゲーム『アローン・イン・ザ・ダーク』、連続テレビ番組『ドクター・ハウス』『CSI: 科学捜査班』などにも楽曲が起用されるほか、世界ツアーなど活動の幅を広げている。

カリフォルニアに越してきてから犬を飼いはじめたんだけど、彼らはこのアルバムのライティングのプロセスに大きく影響していてね(笑)。

前作はもう少しアンビエントなものだったと思います。『81』という生まれ年をタイトルに据えた、パーソナルな内容でしたね。今回はその意味ではどんな作品でしたか?

イパ:新作は、前作の続きのような作品なんだ。類似点がたくさんあると思う。2つの作品のちがいは、前回のほうはもっと純粋で感情的だったけど、今回はもっとディテールにこだわっているところかな。もっと内容が凝縮されているんだ。

いったいどういう点で「小休止」だったのでしょうか?

イパ:これは、犬に餌をやるときに使う「待て」の意味だよ。カリフォルニアに越してきてから犬を飼いはじめたんだけど、彼らはこのアルバムのライティングのプロセスに大きく影響していてね(笑)。家で作業してるから、制作中、ずっと犬たちと過ごしていたんだ。
 彼らとすごしていることでサウンドに影響があるわけではないけど、作っている間、彼らにずっと囲まれていたから、そういう意味で影響を受けてるんだよ。製作期間の大半を犬たちと過ごしていたから、そのタイトルにしたんだ。

たとえば『ゼイ・ノウ・ワット・ゴースト・ノウ(They Know What Ghost Know)』(2009)などには見られたフィードバック・ノイズや、いわゆる「シューゲイザー」的な表現は、その後、音の表面にはあまり出てこなくなりましたね。イパというのはあなたにとってそもそもどういうユニットなのでしょう?

イパ:たしかにそうだね。このアルバムでは、雰囲気が前回よりももっとコントロールされているから。イパは僕のお気に入りのプロジェクトで、そうやって自由に変化を加えられるところが魅力なんだ。決まった方向性がないからこそ特別。何も考えずに、楽器を触ることから自由に曲作りをはじめることができる。そこから自分が好きなサウンドが生まれるまでライティングを続けるんだ。それがイパというプロジェクトのテーマ。考えすぎずに、直感に任せるんだよ。その過程で良いサウンドが生まれたら、そこからいろいろと考えていく。そうすることで、自分が聴いていて心地のいい音楽が作れるんだ。

(通訳)今回、その自由なプロセスの中でサウンド的に変化した部分は?

イパ:ほとんど同じだと思う。少しテンポが早いものを好むようになったり、アンビエントなサウンドをもっと広げていったというのはあるかもしれないね。ギターのグライムっぽいエッジーなサウンドをより好むようになったのもあるかもしれないし。あとは、さっきもいったようにもっとまとまりのあるサウンドを意識するようになったのもその一つだと思う。サウンドや曲同士にもっとつながりがあるんだ。

この2年、ギアをたくさん買いはじめて、それを使ってサウンド・デザインをするようになったんだけど、それを曲に使えたらとずっと思っていたんだ。

サウンド・プロダクションについて、とくに今回こだわったり気をつけた部分はありますか?

イパ:この2年、ギアをたくさん買いはじめて、それを使ってサウンド・デザインをするようになったんだけど、それを曲に使えたらとずっと思っていたんだ。サンプルしたり、レコーディングしたエレクトロニック・サウンドのまわりに生の楽器のサウンドを重ねていくっていうのが主なやり方だった。だからこそアルバムが完成するまでに時間がかかったのさ。サウンドを作る中でいろいろな変化や発見があったから、なかなか方向性が定まらなかったんだ。

“ブッシュミルズ(Bushmillls)”のヴォーカルはあなた自身ですか? 声や歌を楽曲に用いるときの基準を教えてください。

イパ:そう。前よりは自分の声を評価するようになったけど、やっぱりまだ自分の声は好きにはなれないな(笑)。基準はとくにないね。声や歌を使いたいと思う時には自分が欲しいサウンドが決まっているから、エフェクトを使ってそれを作るようにしているくらい。いまではいろいろなエフェクトがかけれるし、自分がいいと思えるものができあがるまでに時間がかかることもあるけどね。

ジャケに使われている絵の作者、パット・マレック(Pat Marek)は、物事や生命の断面を象徴的に表すような作品を多く描かれていますね。彼の絵を用いようと考えたのはなぜですか?

イパ:彼から僕にコンタクトをとってきて、自分のアートワークを僕の音楽に使う気はないかと訊いてきたんだ。で、僕もアートワークが必要だったし、彼の作品集を見てみたら素晴らしかったから、彼にデザインしてもらうことにした。彼から連絡があったのは、2年くらい前の話。彼にアルバムの制作過程や音、犬の話をしたんだけど(笑)、よく見ると、すごく抽象的だけどアルバムのアートワークの中にはさっき話した犬が描かれているんだ。ソング・タイトルや音、制作環境の雰囲気、僕が話したことを、彼が抽象的に表現してくれたのがあのアートワーク。ヴァイナルに印刷されたあのデザインを見るのが楽しみだね。

エイフェックス・ツインが昨年の新作以来元気に活動していますね。エイフェックス・ツインはあなたにとって重要なアーティストですか?

イパ:エイフェックス・ツインは大好き。彼の作品はつねに聴いているよ。おもしろいのは、彼の作品って家でじっくりと座って聴くわけではないんだけど、彼のプロダクション技術からは大きく影響を受けているんだ。僕の音楽の中のグリッチっぽい部分は、彼からの影響だね。

新作を聴かれていたら感想を教えてください。

イパ:聴いたよ。あまり言いたくないけど、正直少しガッカリしたんだ。もう少しアイディアが詰まっていてもいいんじゃないかなと思った。人の作品のことをインタヴューで批判するのはあまりいいことではないし、僕にとやかく言う筋合いはないけど(笑)、僕の感想はそれ。アルバムを聴く前に新作のシングルを聴いた時はすごく興奮したんだよね。すごくいいアルバムになるんだろうなと思った。ああいう曲をもっと収録したらいいのにっていうのが正直な意見だけど、僕の期待がきっとみんなの期待とちがっているんだろうな。

では、ボーズ・オブ・カナダでいちばん好きな作品と、好きな理由などを教えてください。

イパ:どれだろう……それぞれに魅力があるから……難しすぎて答えられないよ(笑)。すべてが好きだから、一枚は選べない。どうしてもって言われたら、『キャンプファイア・ヘッドフェイズ(The Campfire Headphase)』(ワープ、2005)って答えるべきだろうな。好きなトラックがいちばん多く入ってるから。

(通訳)彼らの魅力とは?

イパ:彼らの音楽はずーっと聴いてる。彼らのサウンドって、シンプルだけどすごくいいと思うんだ。あと、僕にとって、エレクトロニック・アーティストでいまだにミステリアスだと思うアーティストはあまりいないんだけど、彼らにはまだミステリアスな部分がある。彼らのローファイなヴィジュアルも魅力的だし、とくにヴィデオなんかはすごくおもしろいと思うね。あのランドスケープや質感にはインスパイアされているんだ。

ロングビーチに住んでいるといつだって外に出られるし、家の外にいることをエンジョイできる。サーフィンもするようになったし、そういうのも影響していると思うよ。

現在の活動拠点はカリフォルニアですか? カリフォルニアの風土やカルチャーから受けた影響はありますか?

イパ:そうそう。ロング・ビーチに住んでるんだ。テキサスの暑さに耐えられなくて(笑)。夏の間に外にいられるっていう環境は影響していると思う。ヒューストンは、夏は暑すぎて外に出ていられないからね。ここに住んでいるといつだって外に出られるし、家の外にいることをエンジョイできる。サーフィンもするようになったし、そういうのも影響していると思うよ。開放感があるから、より多くのものにインスパイアされるようになったんじゃないかな。

以前、カリブーの『アンドラ(andra)』(マージ、2007)に影響を受けているとおっしゃっていたのを読んでとても納得できました。エレクトロニックなんですが、根底にサイケデリック・ロックを感じさせます。あるいは『アンドラ』がそうであるようにクラウトロック的なトラックもありますね。あなたにとってのカリブーという存在についても語ってもらえませんか?

イパ:『アンドラ』は僕のお気に入りで、大きなインパクトを与えてくれた作品なんだ。そのアルバムのパフォーマンスを見たんだけど、そこで彼は、僕がやりたいと思っていたことをたくさんやっていて、それが刺激的だった。エレクトロと生楽器をミックスしたりね。いまでこそいろいろなギアなんかが出てきてそこまで難しくないのかもしれないけど、当時は「ワーオ! どうやってエレクトロのプログラムを楽器とつなげているんだろう!?」って衝撃だったんだ。彼は博士号も持っていて、ピアニストでもあって、とにかく何でもできる。僕も彼みたいだったらいいのにな(笑)。

テキサスといえばサーティーンス・フロア・エレヴェーターズ(13th Floor Elevators)ですが、テキサスのサイケデリック・ミュージックに思い入れがあったりしますか?

イパ:彼らのファンでもあるし、影響は大きく受けてるよ。シューゲイズの部分もそうだし、あのドリーミーな部分が好きなんだ。そのあたりは自分の音楽にも取り入れようとしている要素だね。

あなたの音楽を「シューゲイザー」と呼ぶかどうかは別として、あなたはそのように呼ばれる音楽に興味を持ってこられたのですか?

イパ:いまもそういったヘヴィーでサイケデリックな作品を好んで聴いているよ。僕が初期に受けた影響だしね。

そうだとすれば、どのようなアーティストが好きですか?

イパ:ライドはもちろんそうだし、ポスト・パンクのアーティストたちも好きなんだ。ヴァン・シーもシューゲイズっぽいところがあると思うし、スロウダイヴも好きだね。ジーザス・アンド・メリー・チェインも。あとは……スペースメン・3からも大きく影響を受けてるよ。



変化というより、今回の新作は初期に戻っている感じがする。

最初のアルバムである『ユー・アー・ビューティフル・アット・オール・タイムズ(You Are Beautiful At All Times)』(2006)からいままでで、制作環境におけるいちばんの変化を挙げていただくとすれば、どんなことですか?

イパ:うーん、変化というより、今回の新作は初期に戻っている感じがする。最初のアルバムのときはレコードをサンプルしていて、そのサウンドを使ってアンビエントな雰囲気を作り出していた。で、いまはそういうサウンドはおもにシンセで作っているんだ。モジュラー・シンセサイザーを使って、そのサウンドをサンプルしてる。だから、変化というよりは初期に戻った感じがするんだよね。すごく似ていると思う。まあ、内容はもちろんちがっているけど、メインの要素はある意味で原点回帰しているんじゃないかな。

ちょうどキャリアがもう少しで10年に差しかかろうとしていますね。この10年の間に、20代から30代へという変化も迎えられたと思いますが、アーティストとしてその変化をどのように受け止めていますか?

イパ:そうなんだ。気づいたらって感じ(笑)。変化は、ジャンルを考えなくなったことだね。前は、エレクトロの要素を使ったロック・アルバムを作りたいとか、そういう考え方をしていたけど、いまはただ、エレクトロの要素を使っておもしろいアルバムを作りたいというふうに考えるようになった。いまの時代、音楽が混ざり合っているのは当たり前だし、いろいろなアプローチをとることができるしね。

ギターはあなたの音楽の重要なキャラクターだと思いますが、ギターをつかわないイパのアルバムは考えられますか?

イパ:イエス。たまにリミックスをするんだけど、リミックスする作品の中には、シンセがメインでまったくギターが使われていないものもある。そういう作品を聴くと、自分もギターを使わない曲を使ってみてもいいかもしれないなって思うね。

(通訳)すでに作ったことはあります?

イパ:あるよ。いま作業しているプロジェクトがあって、それがミニマル・ウェーヴっぽいんだけど、いまのところギターは使っていない。だから、使わないまま進めていこうかと思ってるんだ。

(通訳)サウンドはやはりぜんぜんちがいます?

イパ:もちろん。やっぱりよりダークになるよね。80年代のミニマル・ウェーヴサウンドって感じ。でも、コピーしようとしてるんじゃなくて、そういう要素を使おうとしてるだけなんだ。

音楽を作りはじめたきっかけのひとつが映像だからね。映画のサウンド・トラックを作ってみたくて音楽制作をはじめたんだ。

曲のメイキングとしては、もしかすると弾き語りが原型となっていることも多いでしょうか?

イパ:いや、時と場合によるよ。モジュラー・シンセからはじめるときもあるし、他のものからはじめるときもある。でも大体は、雰囲気作りからはじめるかな。質感を決めたり、そこから曲作りをはじめるんだ。サンプルを使うときなんかは、サウンドはほとんど偶然に生まれるものばかりだしね。そうやって生まれたサウンドや雰囲気にインスパイアされながら、曲作りを進めていくんだ。

音楽以外で、たとえば本や映画など、この1年ほどの間でおもしろいと感じたものがあれば教えてください。

イパ:僕は映画や映像が大好きだから、フィルムに影響されて音楽を作ることが多い。おもしろいと思ったものは、タイトルさえもないビデオクリップとか、そういう作品だね。サーフィンのビデオ・クリップとか、スケボーのビデオ・クリップとか。そういったものをインターネットで見つけるんだ。ボーズ・オブ・カナダのローファイなイメージにも影響されてる。そういう映像を見ると、曲を書きたくなるんだよね。クレイジーなアーカイヴ映像の時もある。たまに、自分の50年代とか60年代の先祖のファミリー・フィルムをアップロードしている人なんかもいてさ。そういうのってすごくクールだし、見るのが大好きなんだ。

映像に音をつけることに興味はありますか? なにか音をつけてみたいと思う作品を挙げてもらえませんか?

イパ:もちろん。音楽を作りはじめたきっかけのひとつが映像だからね。映画のサウンド・トラックを作ってみたくて音楽制作をはじめたんだ。音をつけてみたい作品はたくさんあるけど、いま関わっているプロジェクトでは、アパートの中にいる人たちが、外で何か起こっているけどそれが何なのかわからなくて、でも確実に殺人が起こっている、みたいな……(苦笑)。シリアスではないダーク・コメディの映像に乗せる音を作ろうとしているところ。おもしろくなるだろうな。作るのが楽しみなんだ。あとは……わからないな。ロマンティック・コメディみたいな映像にはあまり興味がないね。もっと、ホラー・ドラマっぽい作品がいい。ホラーだと、いい意味で真剣に曲を作れるからさ。

アルカ(Arca)新作は11月! - ele-king

 アルカ。
 自主リリースのミックステープ『&&&&&』が話題となって、あれよという間にほぼ無名ながらカニエ・ウェストの『イールズ』に5曲参加、立て続けにFKAツイッグスのプロデューサーとしても『EP2』『LP1』とメモリアルな作品を残し、契約争奪戦の上で〈ミュート〉とのサインにいたり、傑作『ゼン』をリリース、今年はビョークのアルバム『ヴァルニキュラ』を共同プロデュースした、あのアルカだ。

 彼(女)の新作リリースが決定した。

 ポスト・インターネットを象徴し、アンダーグラウンドが時代とメジャーを動かすことを鮮やかに示してみせた彼(女)が、次のステージで表現するものは何か。自らのルーツや環境、社会的なコンフリクトと向かい合った上で踏み出される、その第2歩めに期待が高まる。

 「『ミュータント』は、デビュー・アルバム『ゼン』が内省的な作品だったのに対して、外に開かれ、そしてより大胆な作品となった」 プレス・リリースより

 制作上のパートナーとして、ヴィジュアル面を全面的に手掛ける鬼才ジェシー・カンダも、もちろん今回も切れっきれである。まずは新作ヴィジュアルと最新アー写、そして新作MVをお届けしよう。

■新着ミュージック・ヴィデオ「EN」

 我々の前に現れた突然変異(ミュータント)。デビュー作をはるかに圧倒する作品完成!
 昨年リリースされたデビュー・アルバム『ゼン』の尖鋭性、ビョーク、カニエ・ウェストやFKAツイッグスのプロデュース、奇妙で美しいヴィジュアル・アートとの融合作品…全世界に衝撃を与えたこれらの作品はアルカの才能のほんの序章だった。
 デビュー・アルバムから1年、アルカは、ミュータント(突然変異)というタイトルのセカンド・アルバムを早くも完成させた。まさに溢れ出るほどの才能が一気に解放されたような作品だ。

 デビュー作で末恐ろしい24歳と評され、時代の寵児となったアルカ、その今後の作品への可能性は、どきどきさせるようなものだった。そして本作はその通りの作品となった。
 デビュー作を下敷きとしながら、音楽的豊潤さ、表現力、全てにおいて圧倒している。そして彼はこれだけのことをやりながらも、まだ25歳ということも末恐ろしい。今作は全てにおいてレッド・ゾーンに突っ込んだようだ。

 発売は11月18日。

■アルカ / ミュータント
発売日:11月18日 日本先行発売 (海外:11/20)
品番:TRCP-190
JAN:4571260584884
定価:スペシャル・プライス2,100円(税抜)
ボーナス・トラック収録
解説: 佐々木渉(クリプトン)

■アルカ
アルカ(ARCA)ことアレハンドロ・ゲルシ(Alejandro Ghersi)はベネズエラ出身の24歳。現在はロンドン在住。2012年にNYのレーベルUNOよりリリースされた『Baron Libre』,『Stretch 1』と『Stretch 2』のEP三部作、2013年に自主リリースされたミックステープ『&&&&&』は、世界中で話題となる。2013年、カニエ・ウェストの『イールズ』に5曲参加(プロデュース:4曲/ プログラミング:1曲)。またアルカのヴィジュアル面は全てヴィジュアル・コラボレーターのジェシー・カンダによるもので、2013年、MoMA現代美術館でのアルカの『&&&&&』を映像化した作品上映は大きな話題を呼んだ。FKAツイッグスのプロデューサーとしても名高く、『EP2』(2013年)、デビュー・アルバム『LP1』(2014年)をプロデュース、またそのヴィジュアルをジェシー・カンダが担当した。2014年、契約争奪戦の上MUTEと契約し、10月デビュー・アルバム『ゼン』 (“Xen”)をリリース。ビョークのアルバム『Vulnicura』(2015年)は、ビョークと共同プロデュースを行い、その後ワールド・ツアーのメンバーとして参加した。2015年11月、2ndアルバム『ミュータント』リリース。

■ジェシー・カンダ
アルカのヴィジュアル・コラボレーター。アルカが14歳の時、とあるアーティストのオンライン・コミュニティーで知り合って以来の仲。「ジェシーと僕は知合ってからもう相当長いからね」とアルカが説明する。「何か疑問点があったとして、僕が音楽面でその疑問点をそのままにしてると、ジェシーがビジュアルでその答えを出してくるんだよね。ジェシーがそのままその疑問に映像で答えを出してなかった時は、それは音楽で答えを出すべきだ、という事だと思うんだ」。本作のアートワークもジェシー・カンダが担当。その加工されたヴィジュアルに関して「それは作品自身の内部で起こってる事を反映したもの」by ジェシー・カンダ。
https://www.jessekanda.com/

■ディスコグラフィー
1st AL『ゼン』(Xen) (2014年) TRCP-178 (TRCP-178X: HQCD仕様として2015年3月に再発)
2nd AL 『ミュータント』(Mutant) (2015年) TRCP-190

■デビュー・アルバム『ゼン』まとめ。
[Visual] https://bit.ly/1UUmQTd
[特集記事] https://bit.ly/1Dzi7iw

■リンク先
https://www.arca1000000.com
https://soundcloud.com/arca1000000
https://www.facebook.com/arca1000000
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■公開中のミュージック・ヴィデオ「Soichiro」 *「Soichiro」とはジェシー・カンダのミドル・ネーム


JUZU a.k.a. MOOCHY (J.A.K.A.M. / NXS / CROSSPOINT) - ele-king

最近ゲットした新譜

Obscure Rural Laid Back Rock Bandit Buggy Classics

Regis - ele-king

 〈ダウンワーズ〉総帥として、またブリティッシュ・マーダー・ボーイズ(BMB)としてサージョン(Surgeon)とともにハードテクノの一時代を築き上げ、ファンクション(Function)、サイレント・サーヴァント(Silent Servant)、フィメール(Female)らとのレーベル・コレクティヴ、サンドウェル・ディストリクト(Sandwell District)によってポストパンク/パワエレ/インダストリアルとテクノをノワールなイメージとミニマリズムで繋いだカール・オコナーことリージス。

 暗黒電子音界最高峰プロデューサーとしての近年の秀逸な仕事をまとめたコンピレーション『マンバイト』が〈ブラッケスト・エヴァー・ブラック〉から発売された。アイク・ヤードやヴァチカン・シャドウ、ダルハウスにファミリー・セックス、レイムらのトラックを完全に我が物に扱い、ほぼオリジナルとして再構築される敏腕エディット術。凍りつくように美しいミニマリズムはリージスにしか出しえないのだ。え? ヴァージョン違いばっかりじゃなくって新たなオリジナル曲はどうしたの? という疑問を忘れるくらい、あらためて関心させられる。ま、ほぼ聴いた音源で被りまくることでお馴染みのBEBですから。

 もちろん、本人としても近年はプロデュースとコラボレーション・ワークを中心に据えての活動を好んでいることに間違いはないが、誰もが彼の完全新録トラックを待ち望んでいるだろう。

 ぜんぜん関係ないけど、最近ゴッドフレッシュとのライヴ・コラボレーションを披露するとかしたとか。そこまでもろなインダストリアル・メタルとの邂逅はなにげに初めての試みなんじゃないか?

第34回:This Is England 2015 - ele-king

 『The Stone Roses:Made of Stone』日本公開用パンフのためにシェーン・メドウズにインタヴューしたとき、「わたしは『This Is England』シリーズの大ファンです。『This Is England 90』はどうなってるんですか」などという素人くさい質問をぶつけてしまったことが含羞のトラウマとなり、『This Is England 90』には複雑な想いがあった。が、あれから早くも2年の月日が流れ、わたしは自宅の居間でイカの燻製を食いながら当該作を見ていた。
(このシリーズの歴史を説明するとそれだけで連載原稿が終わってしまうので、ここではすっ飛ばす。知りたい人は拙著『アナキズム・イン・ザ・UK』のP136からP145とか、あるいはネット検索すれば日本語でもそれなりの量の情報は手に入るし、こういう映像もある)


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 『This Is England 90』は、チャンネル4で4回終了(最終回だけ長編の1時間半)のドラマとして放送された。ストーリー展開は『This Is England 86』に似ている。サブカル色濃厚、時代ジョーク満載の1回目で視聴者を大笑いさせつつノスタルジックな気持ちにさせ、2回目までそれを引っ張り、3回目でいきなりダークな方向へ走りはじめて、4回目はずっしりへヴィ。という、メドウズ進行の王道だ。

 わたしが前述の質問をしたとき、メドウズは「90年は俺のストーン・ローゼスへの愛が最高潮に達していた年だったから、そうしたことが何らかの形で『This Is England 90』にも出て来る」
 と答えたが、たしかにローゼスは主人公たちの物語の壁紙として梶井基次郎の檸檬のように黄色いアシッドな光を放っている。(ウディが『Fool’s Gold』のイントロを歌うシーンは今シリーズのハイライトだ)


 『This Is England 88』の最後で復縁したウディとロルの間には2人目の子供が生まれているし(1人目はウディの子供ではなく、ミルキーの子供だった)、ロルや妹のケリー、友人のトレヴは給食のおばちゃんとして働いていて、専業主夫になったウディやミルキー、カレッジをやめたショーンらのために子供たちの給食を職場からくすねているという、相変わらず底辺っぷりの著しい元ギャングたちの姿で本シリーズははじまる。

 1990年はマーガレット・サッチャーが首相官邸を去った年だ。
 それはわたしがけしからんフーテンの東洋人の姉ちゃんとしてロンドンで遊んでいた年でもあり、周囲にいた(やはりけしからん)若者たちが、サッチャーが官邸を去る日の模様をテレビ中継で眺めながら、「私はこの官邸に入った時よりもこの国を明らかに良い状態にして去ることができることに大きな喜びを感じています」というスピーチを聞いて、「私はこの国を無職のアル中とジャンキーの国にして去ることができることに大きな喜びを感じています。おほほほほほほ」とおちょくっていたことをよく覚えているので、メドウズがあの時のサッチャーの映像を『This Is England 90』の冒頭に持ってきた理由はよくわかる。

 「サッチャーを倒せ」「サッチャーはやめろ」と日本の現在の首相ばりに嫌われていたサッチャーは90年に退任した。ほなら労働者階級の若者たちも幸福になればいいじゃないか。が、彼らは全然ハッピーにならない。むしろ、不幸はより深く、ダークに進行して行く。
 ロルの妹のケリーは、ドラッグに嵌って野外パーティで輪姦される。さらに父親を殺したのは本当は姉のロルだったと知って家出し、ヘロインに手を出してジャンキー男たちのドラッグ窟に寝泊まりするようになる。
 一方、ロルの父親殺害の罪を被って刑務所に入っていたコンボの出所が間近に迫り、ロルとウディが彼の身柄を引き取るつもりだと知って、ミルキーは激怒する。黒人の彼には右翼思想に走っていた白人のコンボに暴行されて死にかけた過去があるからだ。「レイシストと俺の黒人の娘を一緒に暮らさせるわけにはいかない」と憤然と言うミルキーに、「お前だって俺の最愛の女を妊娠させたじゃないか。出産に立ち会ってたらお前の(黒人の)赤ん坊が出て来たんだぞ。それでも俺はお前を許したじゃないか。コンボを許せ」とウディは言うが、ミルキーの気持ちは変わらない。
 コンボは刑務所でキリスト教の信仰に目覚め、改心して子羊のような人間に生まれ変わっている。しかしミルキーは出所してきた彼に大変なことをしてしまう。
 というストーリーの本作は、1作目の映画版に話が回帰する形で終了する。
 一方でロルとウディがついに結婚するというおめでたい大団円もあり、ミルキーがコンボに復讐するというのも大団円っちゃあ大団円だが、こちらは真っ暗で後味が悪い。
 結婚式の披露宴にはケリーも戻って来て、みんなが幸福そうに酔って踊っている姿と、ひとり別室でむせび泣いているミルキーの姿とのコントラストで最終回は終わる。ふたつの全く異質な大団円を描いて終わったようなものだ。なんとなくそれはふたつの異なる中心点を起点にして描いた楕円形のようでもあり、おお。またこれは花田清輝的な。と思った。
それはサッチャーがいなくなっても幸福な国にはならなかった英国を体現するようで辛辣だが、同時にそれでもそこで生きてゆく人びとを見つめる温かいまなざしでもある。


               *******


 以前、うちの息子の親友の家に行ったときのことである。
 うちの息子の親友はアフリカ系黒人少年であり、その父親は「黒人の恵比須さんみたいな顔で笑うユースワーカー」としてわたしのブログに以前から登場しており、拙著『ザ・レフト』のコートニー・パイン編のインスピレーションにもなった。
 彼には4人の息子がおり、長男はもうティーンエイジャーなのだが、うちの息子を彼らの家に迎えに行った折、長男の友人たちが遊びに来ていた。で、十代の黒人少年たちはソファに座ってゲームに興じていたわけだが、恵比須さんの長男がこんなことを言っていた。
 「いやあいつはバカっしょ。しかも赤毛。しかもレイシスト。粋がって『ニガー』とか言いやがるから、俺は言ってやったね。『ふん。女も知らねえくせに。ファッキン不細工なファッキン童貞野郎』って」
 「おー、言ったれ、言ったれ」みたいな感じで2人の友人は笑っている。
 と、エプロン姿でパンを焼いていた恵比須顔の父ちゃんが、いきおい長男の方に近づいて行って、ばしこーんと後ろ頭を叩いた。
 「痛えー、何すんだよー」
 と抗議する長男にエプロン姿の恵比須は言った。
 「どうしてそんなファッキンばかたれなことを言ったんだ」
 「だってあいつファッキン・レイシストなんだよ」
 「そういうことを言ってはいけない」
 「ふん、あんなアホにはヒューマンライツは適用されない。あいつは最低の糞野郎だ」
 「俺はPCの問題を言ってるんじゃない。レイシストに同情しろなんて言ってないし、糞野郎は糞野郎だ」
 血気盛んな十代の黒人少年たちの前に仁王立ちしたブラック恵比須は言った。
 「だが、俺たちの主張を正当にするために、俺たちはそんなことを言ってはいけないのだ」
 
 きっと彼は黒人のユースワーカーとして何人もの黒人のティーンにそう言って来たんだろう。ロンドン暴動の発端となったトテナムで長く働いたという彼の言葉にはベテランの重みがあった。少年たちはおとなしく食卓について父ちゃんが焼いたコーンブレッドを食べ始めた。
 わたしと息子もタッパーにコーンブレッドを詰めてもらって持って帰った。ブラック恵比須は竿と鯛を持たせたくなるぐらいにこにこしてエプロン姿で手を振っていた。

                *******

 元右翼のコンボが黒人のミルキーの指図で殺されたことを暗示するような『This Is England 90』のラストシーンを見ながら、ブラック恵比須とミルキーは同じぐらいの年齢だと思った。
 1990年はもう四半世紀も前になったのだ。児童への性的虐待や近親相姦や殺人やレイプやドラッグ依存症は、まあ人間が生きてりゃそういうこともあるさー、お前らがんばれよ。と登場人物たちに乗り越えさせているメドウズが、レイシズムだけはそう簡単に乗り越えられない業の深いものとして最後に浮き立たせている。
 この認識を持って、この諦念に立脚して、それでもこの国の人たちはレイシズムに向き合ってきた。というか、向き合うことを余儀なくされてきたのだ。これは四半世紀経ったいま、移民・難民の問題として再び浮上している。
 ここに来て本作を見る者は、これは2015年のイングランドの話だと気づくのである。
 


 おまけ。もう一つの『This Is England 90』
(マーガレット・サッチャーVS ジェレミー・コービン。これも25年前だが、2015年の話でもある)

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