「Ord」と一致するもの

Mura Masa - ele-king

 UK出身のムラ・マサが通算2枚目、メジャー・デビューとなるアルバム『ムラ・マサ』をリリースした。

 3年程前にサウンドクラウドでよくチェックしていたムラ・マサのことを思い出したのは、今年の3月にロンドンのオールドストリートの人気クラブ、XOYOのグライム・パーティでKahn & Neekがプレイしたのを聴いた時だった。その時かかっていたのは、ムラ・マサのヒット曲“ロータス・イーター(Lotus Eater)”のジャロウ・バンダル(Jarreau Vandal)のエディットで、アジアンなフルートに客は合唱する大盛り上がりだった。盛り上がりに応えてKahn & Neekは4回リワインドした。

 Kahn & Neekだけでなく、ムラ・マサのリリース・パーティを〈ナイト・スラッグス〉マムダンスがサポート、自身はグライムMC、ストームジーのプロデュースをするなど、ロンドンのクラブ・カルチャーとの関わりも強いアーティストだ。

 ムラ・マサことアレックス・クロッサンは、イギリス海峡の島ガーンジー島に生まれた。音楽教育を受け、10代のはじめにはゴスペルやパンク・バンドでプレイしていたという。16歳でAbleton Liveを使って打ち込みを始め、サウンドクラウドから人気を広げた彼は、他のサウンドクラウドのプロデューサーが流行らせた「フューチャーベース」とは趣を異にし、こじんまりしていて音の粒を大切にするような空間づくりがユニークなプロデューサーであった。先述した“ロータス・イーター”が収録されているファースト・アルバム『サウンドトラック・トゥ・ア・デス(Soundtrack to a Death)』では、ストイックにメロディを聞かせるインスト曲がメインである。

 その後、自身のレーベルを立ち上げて、リリースしたEP「サムデイ・サムウェア(Someday Somewhere)」は、ベッドルームからスタジオへ拠点を移し制作されたのだろう、シンガーとのコーラスワークを特徴とするプロダクションへと成長していく。特に今作に再録されている“ファイヤーフライ(Firefly)”で歌っている、ライヴでのサポートシンガーも務めるナオ(NAO)のコーラスワークは、今作へ繋がる重要な要素である。

 今作は、ロンドンのバスがニュー・パーク・ロードへ到着するアナウンスから始まり、少し狂気じみたラヴ・ソング“メシー・ラブ(Messy Love)”から、マリファナをチキンナゲットに例えた“ナゲッツ”、そしてエイサップ・ロッキーを迎えた“ラヴシック(Love$ick)”へと流れていく。“ラヴシック”のイントロのタイトなドラムは、クラシックなヒップホップ・ブレイクスの質感を匂わせる。曲中のスチールパンのメロディに対して、エイサップ・ロッキーは「イビザにいるみたいな気分だ」と言ってリリックを書いたらしいが、自分にはむしろトリニダード・トバゴの祝祭をルーツに持つ、ロンドンのノッティングヒル・カーニヴァルが思い浮かんだ。

 チャルリ・XCXを迎え、ワンナイト・ラヴを歌う“1 Night”では、iPhoneの着信音「マリンバ」を彷彿とさせるメロディが印象的だが、チャルリ・XCXがサビで少しだけ高めに外れる声に、彼女の歌唱力の高さを感じられた。続く“オール・アラウンド・ザ・ワールド(All Around the World)”では、USのラッパー、デザイナー(Desiigner)が共演している。しかしこの曲については、オリジナルのテーマを生かしたUKのギャングスタ・ラップ・グループ、67(シックスセヴン)によるシックなリミックスの方が素晴らしかった。

ショーで前の晩酔っ払っても、朝の飛行機に乗り遅れない
海外のショーの方が多いけど、それはイギリスが退屈だから

I'm drunk from the show last night but I gotta catch a flight in the morning
More time we overseas doing shows 'cause the UK got boring

... Liquez - Mura Masa - All Around the World (67 Version) より

(67のラップ・ショーは大人気なのにも関わらず、「治安上の問題から」イギリスの警察によって弾圧され、イギリス国内ではショー自体が中止になってしまうことが多い。)

 後半の客演陣の中で、ジェイミー・リデルがプリンス顔負けの80sバイブスを披露する「ナッシング・エルス!(NOTHING ELSE!)」のポップネスが素晴らしく、ブラー(Blur)のヴォーカリスト、デーモン・アルバーンを客演に迎えたラスト・ソング“ブルー(Blu)”のコーラスには、ムラ・マサのルーツのひとつであるゴスペルを感じさせた。

 全体を通して漂うドライな雰囲気と空間の隙間は、ラウドで感情的なメインストリームの音楽とは真逆である。ひとつひとつの音はバランスが取れていて、ヘッドルームに余裕があり、ひとつひとつの楽器の音の粒までがきちんと聴こえる。こうした音像は、ヘビーな808ベースに則ることが「ルール」となってしまったエレクトロニック・ポップスの流行のなかでとりわけユニークに響くし、2018年以降のエレクトロニック・ポップスのルールを書き換えてしまうだろう。そして、808ベースに代わりコーラスとメロディが再び主役となる。しかし、コーラスによって曲がエモーショナルになりすぎぬよう、ファットな生ドラムやスチールパンのメロディ、そしてロンドンの街のフィールド・レコーディングが添えられ、全体に乾いたクールネスを醸している。

Nicola Cruz - ele-king

 〈MULTI CLUTI〉や〈ZZK〉からのリリースで知られるニコラ・クルースが初来日、神戸Troop Cafeと東京・代官山Unitでライヴを行います。ニコラ・クルースは、ニコラス・ジャーのステージでフロント・アクトをつとめたり、彼の主宰レーベル〈クラウン&サンセット〉のコンピにその名を連ねたことをきっかけに注目を集めた南米エクアドルの首都キトを拠点とするエレクトロニック・プロデューサーです。〈MULTI CLUTI〉や〈ZZK〉に加え、ニコ・デマスのワンダーホイールやエジプトのマジック・ムーヴメントにも楽曲やリミックスを残し、直近では、現在日本をツアー中のトーマッシュ主宰、ヴードーゥー・ホップのコンピ『Entropia Coletiva』のCD版にも新曲「Elephant」を提供しています。
 東京公演は野外フェスティバルRe:Birth主催のパーティで、ミニローグ、クニユキ・タカハシ、ミックスマスター・モリスも出演します。

■Nicola Cruz Japan Tour in Kobe

2017.11.23 THU

16:00 START - 23:00 CLOSE
Mail Resevation \2000(w/1D)Door \3000(w/1D)Under23 \1500(w/1D)

LINE UP :
Nicola Cruz -Live-
Shhhhh
KND -Live-
halptribe
FUKAMIDORI
職人
TAIPEIROD
KEYWON

SHOP :
DUMBO

FOOD :
tamu tamu cafe
Beinelmilel

COFFEE :
nomadika

https://troopcafe.jp/music-program/1388

■Nicola Cruz Japan Tour in Tokyo
Re:birth feat. El Folclore Paradox supported by Global Chillage

2017.11.24 FRI

OPEN : 23:00
START : 23:00
CHARGE :
ADV 3,000yen
DOOR 3,500yen
You must be 20 and older with photo ID

【UNIT】

LIVE :
Nicola Cruz
Marcus Henriksson aka Minilogue x Kuniyuki

DJ:
Shhhhh (El Folclore Paradox)
Kojiro (Re:birth)

【UNICE】

[new album "KiraKira" release special]
Mixmaster Morris
Peter Power (voodoohop)
Koss aka Kuniyuki
Hiyoshi (Labyrinth/Global Chillage)
7e

DECO:
聖紅 (seiko-nose.com)

LIGHTING:
Yamachang

https://www.unit-tokyo.com/schedule/2017/11/24/171124_rebirth_featefp.php

【Nicola Cruz ~ニコラ・クルス~】
彼は自分のサウンドを”andez step”と定義するDJ / プロデューサー。南米はエクアドルの都市キト在住。パーカッショニストとしてキャリアをスタートし、次第にそのリズムの感性と興味はエレクトリック・ミュージックにも向かう。同時に自身のルーツである南米大陸の儀式や音楽現象への探求を開始。2015年にデジタル・クンビアのレーベルとして日本でも紹介されたZZK Recordsよりアルバム、"Prender el Alma"をリリース。Nicolas Jaarの前座に指名され、翌年のバルセロナのソナー・フェスティバルを始めとする、欧米から南米のビッグフェスやBoiler Room にも出演。2017年、モントリオールのレーベル、Multi CultiよりEPを数タイトルリリース、他にもsoundcloudやBandcampにて、クオリティの高いトラックをハイペースで発表し続けている。2018年には新アルバムをリリース予定。
2010年代中盤から南米を中心に勃発した、過去と未来、伝統とモダンを行き来する進行系の現象。ナチュラルでオーガニック、世界各地の土着性を吸収した、BPM控えめで、ミニマル、スローハウス、ラテン/クンビアらを通過した酩酊しトランスするダンス・ミュージック・ムーヴメント。その動きの中でも代表的なアーティストである。待望の初来日。

Nils Frahm - ele-king

 モダン・クラシカルを牽引する〈Erased Tapes〉の看板、ニルス・フラームがついに、約4年ぶりとなるスタジオ・レコーディング・アルバムを完成させた。今回のレコーディングはなんと、そもそもスタジオを作る(!)ところから始められたのだという。これまでele-kingでも『Screws』『Solo』といった作品を取り上げてきたけれど、どうやら来るべき新作は、従来のアルバム以上に重要な意味を帯びた作品になっている模様。発売は来年1月26日。詳細は下記をご覧あれ。

ニルス・フラームが約4年振りとなるスタジオ・レコーディング・アルバムをリリース。スタジオを作るところから始めた壮大な計画は、自分の理想の音を自由に追求し続けた初めての作品。シンセサイザー/ハーモニウム/パイプオルガン/ピアノ/ヴォーカルなど多くの楽器が織りなす夢のような新世界。

彼のいままでのアルバムでは物語性を伴うものがいくつかありました。『Felt』(2011年)では、自身の古い寝室内のスタジオで夜遅く録音するとき、隣人への配慮からピアノのハンマーに気を使った事で生まれたに独特のピアノの音、続くアルバム『Screws』(2012年)では、親指を怪我したために残りの9本の指での演奏を強いられた事で生まれた繊細なタッチのサウンド。彼の制作してきた作品は何かに制限を受けてきたものが多く、思いついた多くのアイデアを自由に形にすることは行ってきませんでした。ベルリンに建築された自分の理想的なスタジオが完成した事で本当の意味での自由な音作りをする環境が整い、そして制作されたアルバム『All Melody』。今までの作品がすべてここに繋がっておくための準備期間だったのではと思わせるサウンドは、いままで聴き慣れたピアノからシンセサイザー/ハーモニウム/パイプオルガン/竹製の楽器、そして新たに取り入れたヴォーカル。間違いなく彼の今後の音楽活動の分岐点となる最重要作品の完成と言えるでしょう。

[セルフライナーノーツから一部抜粋]
完成までの過程で、どのようなアルバムにおいても何を作り上げたという事だけでなく、もっと重要なことだと思えるのは何ができなかったかを明らかにすることだ。『All Melody』には時間の経過とともに非常に多くのイメージがあり、以前にもずっと沢山ありましたが、私がそれらを制作しようとした事はこれまでありません。いままで見た事も聴いた事もない、少女や少年たちによる人の声を伴った美しいドラムを聴きたかった。彼らはまさにこの世界で歌を唄い、別の場所から来たかのように聴こえるでしょう。私は『All Melody』を演奏するハーモニウムのような音を奏でるシンセサイザーを聴き、それらはシンセサイザーのようなハーモニウムの音色と共に混ざり合います。私のパイプオルガンはドラムマシーンとなり、私のドラムマシンは、息づかいを感じさせるフルートによるオーケストラのように聴こえるでしょう。ピアノはまさに声へと変わり、声は共鳴するストリングスとなります。私自身の中で聴いている音楽は決してレコードとして完成しないでしょう。それは自分のためにしか演奏することができないと思えるのです。このレコードには私が思いついたものを収録し、私が想像できる最良の方法で導き出した音楽について表現しています。
2017年10月 ニルス・フラーム

アーティスト: Nils Frahm (ニルス・フラーム)
タイトル: All Melody (オール・メロディー)
品番: AMIP-0126
価格: 2,400円+税
発売日: 2018年1月26日 (金)
バーコード: 4532813341262
レーベル: Erased Tapes
※ライナーノーツの日本語訳
※ボーナストラック1曲のDLコード収録

トラックリスト:
01. The Whole Universe Wants To Be Touched
02. Sunson
03. A Place
04. My Friend The Forest
05. Human Range
06. Forever Changeless
07. All Melody
08. #2
09. Momentum
10. Fundamental Values
11. Kaleidoscope
12. Harm Hymn

■プロフィール
ドイツのベルリンで活動する作曲家/ピアニスト。Peter Broderickがプロデュースした『The Bells』、友人へのクリスマス・プレゼントとして制作した『Wintermusik』をリリース。その後Efterklamgのレコーディングやツアーに参加。2011年のアルバム『Felt』で高い評価を受け大きな注目を受ける。『Screws』では負傷した親指を使わずゆっくり大事に演奏した作品はピアノ・ファンの枠を越え多くの人に愛される。彼が最も力を入れているグランドピアノ+ローズ+アナログシンセというセットでのライヴ音源を含む『Spaces』をリリース。2015年にはイギリスのBBC PromsによるRoyal Albert Hallでの圧巻のパフォーマンスを披露。2年の歳月をかけて制作したファンクハウス・スタジオでプロデューサーとしても活動する。

国内盤オフィシャルHP
https://www.inpartmaint.com/site/22483/

Flava D - ele-king

 昨年1月にスウィンドルとともに来日し、UKハウス、ガラージ、グライムなどを変幻自在に操るDJスタイルでフロアを熱狂させたフレイヴァ・Dが待望の再来日を果たす。前回の来日後も『FabricLive88』や、今年に入ってからはロイヤル・TおよびDJ Qとのユニット、t q dのアルバム『ukg』など快進撃を続けているだけに、いまの彼女がどこを向いているのか確認する良い機会となるだろう。ベース寄りになるのかハウス寄りになるのか、それとも……。詳細は下記より。

"FLavaD" Japan Tour 2017

UKガラージ、グライム、UKベース・ミュージック・シーン
最重要、女性プロデューサー/DJに君臨するFlavaD、待望の再来日決定!

[ツアー日程]
●11.21 (火) @Dommune (東京)

●11.22 (水/祝前日) @OUTER (高知)
https://outerkochi.strikingly.com/
open 21:00 adv: 2000 yen (+1d) / door: 3000 yen (+1d)

●11.24 (金) @CIRCUS TOKYO (東京)
https://circus-tokyo.jp/
open 23:00 adv: 2500 yen door: 3000 yen
ticket: https://ptix.co/2w9gyKQ

●11.25 (土) @CIRCUS OSAKA (大阪)
https://circus-osaka.com/
open 22:00 open 23:00 adv: 2000 yen (+1d) / door: 2500 yen (+1d)
ticket : https://ptix.co/2fcJnPN

[プロフィール]
■Flava D (Butterz, UK)
UKガラージ、グライム、UKベース・ミュージック・シーンにおいて最重要、女性プロデューサー/DJに君臨するFlavaD。幼少からカシオのキーボードに戯れ、14歳からレコード店で働き、16歳から独学でプロデュースを開始。当時住んでいたボーンマスでは地元の海賊放送Fire FMやUKガラージの大御所、DJ EZの『Pure Garage CD』を愛聴、NasやPete Rockにも傾倒したという。2009年以降、彼女のトラックはWileyを始め、多くのグライムMCに使用され、数々のコンピに名を残す。12年にはグライムDJ、Sir Spyroの〈Pitch Controller〉から自身の名義で初の「Strawberry EP」を発表、13年からは自身のBandcampから精力的なリリースを開始する。やがてDJ EZがプレイした彼女の“Hold On”を聴いたElijahからコンタクトを受け、彼が主宰する〈Butterz〉と契約。「Hold On / Home」のリリースを皮切りにRoyal Tとのコラボ「On My Mind」、またRoyal T、DJ Qとのユニット、tqdによる「Day & Night」などのリリースで評価を高め、UKハウス、ガラージ、グライム、ベースラインなどを自在に行き交うプロダクションと独創的なDJプレイで一気にブレイク。16年の『FabricLive88』を経て17年5月にtqdのデビュー・アルバム『ukg』をリリース、その勢いはますます加速している。

https://flavad.com/
https://soundcloud.com/flava_d
www.facebook.com/FlavaDMusic/
www.twitter.com/flavad

Taylor Deupree & Marcus Fischer - ele-king

 最近ではマーカス・フィッシャーの『Loss』など、順調に優良な作品のリリースを続けているブルックリンのレーベル、〈12k〉。その主宰者であり、坂本龍一や青葉市子とのコラボでも知られるサウンド・アーティスト、テイラー・デュプリーが、マーカス・フィッシャーとともに急遽来日することが発表された。11月18日のTokyo Festival of Modular 2017を皮切りに、奈良、岡山、東京を巡回する。ILLUHA伊達伯欣の相棒を務めているコーリー・フラーらも参加。最終日の東京公演は、今年で20周年を迎える同レーベルの記念公演となっており、世界で唯一のアニヴァーサリー・イベントだそう。いやあ、これは行きたい。

坂本龍一や青葉市子とのコラボレーションも行なうサウンド・アーティスト、テイラー・デュプリー主宰の電子音響レーベル〈12k〉が今年20周年を迎えます。

これまで数多くのアーティストを輩出した同レーベルは20年間の長きに渡り電子音楽界において多大なる功績を残してきました。 その主宰であるテイラー・デュプリーと所属アーティスト、マーカス・フィッシャーが来日し、Tokyo Festival of Modularを皮切りに、奈良、岡山、東京と4公演に出演します。奈良、岡山、東京公演には日本在住の〈12k〉アーティストCorey Fuller(ILLUHA)、Sawako、Moskitooらも出演し、最終日の東京公演は、世界で唯一の〈12k〉による20周年記念イベントが開催されます。すべてのアンビエント~実験音楽~電子音楽ファンに。絶対にお見逃しなく!

■Tokyo Festival of Modular 2017
日時:11月18日(土) 17:00~21:00
会場:渋谷contact (渋谷区道玄坂2-10-12 新大宗ビルB2)
料金:1day Pass ¥3,000(当日券のみ)(※2day Passもあり。詳細はTokyo Festival of Modular公式ウェブサイトをご覧ください)
出演:Marcus Fischer & Taylor Deupree, Baseck, Sarah Davashi, Hataken featuring SUGIZO, Rodent, Hisashi Saito and more...

チケット・イベント詳細:Tokyo Festival of Modular
https://tfom.info/tfom-2017/

■岡山公演
日時:11月19日(日) OPEN 17:30 / START 18:00
会場:cafe moyau (岡山市北区出石町1−10−2)
料金:予約 ¥3,500 / 当日 ¥4,000(全席自由)
出演:Corey Fuller (ILLUHA), Taylor Deupree, Marcus Fischer, 松本一哉, nensow

◎メール予約:madronemu@gmail.com
※公演名・お名前・人数・連絡先をご明記のうえお申し込み下さい。
チケット取扱店:padang padang、cafe moyau、グリーンハウス倉敷店、グリーンハウ
ス岡山店、レコード屋、FOLKLORE
協力:全ド連 / padang padang / night cruising / moderado music / cafe moyau
詳細:moderado music
https://moderado.jugem.jp/?eid=360&PHPSESSID=rd5ok709t6gpb8romtglih3391

■奈良公演
日時:11月22日(水) OPEN 18:30 / START 19:00
会場:sonihouse (奈良市四条大路1-2-3)
参加費:¥3,600(1drink order)
出演:Corey Fuller (ILLUHA), Taylor Deupree, Marcus Fischer

◎メール予約:「11/22の参加予約」をタイトルに「お名前・人数・電話番号」を記載の
うえinfo@sonihouse.netまでご連絡ください。
*静寂を大切にした音楽のため、小学生未満のお子様のご来場はご遠慮いただいております。
詳細:sonihouse
https://www.sonihouse.net/journal/?p=8096

■東京公演 / 12k 20th anniversary in Tokyo
日時:11月25日(土) OPEN 16:30 / START 17:00
会場:光明寺 (港区虎ノ門3-25-1)
料金:予約 ¥2,500 / 当日 ¥3,000
出演:Taylor Deupree & Corey Fuller (Illuha), Marcus Fischer & Sawako, Moskitoo

◎ご予約:Peatixご予約受付ページ
https://12k20.peatix.com/
※Peatixへのご登録が必要となります。
※前売りが予定枚数に達した際は当日券の発売はございません。
主催・制作:cubic music
協力:Fly sound、誰そ彼、Inpartmaint Inc./ p*dis、安永哲郎事務室
詳細:cubic music
https://12k20th.cubicmusic.com/

Keith & Tex - ele-king

 ビースティ・ボーイズ『Paul's Boutique』の最後を飾るメドレー、“B-Boy Bouillabaisse”でサンプリングされていたロックステディの名曲“Stop That Train”をご存じでしょうか。あの名曲を歌うロックステディのレジェント2人組、キース&テックスが3年ぶりに日本に帰ってきます!
 前回の来日公演では、〈Rocksteady Legend〉でカールトン&ザ・シューズ、リロイ・シブルス、ストレンジャー・コールらと共演してきた日本が誇るジャマイカン・ヴィンテージ・ミュージック・バンド、マット・サウンズがバックを務めていましたが、今回もふたたびその共演が実現するとのこと。
 60~70年代のジャマイカ音楽愛好家のかたは必見ですよ~。

 前回の来日公演の模様は、以下のヴィデオをチェック。

Keith & Tex JAPAN TOUR 2017

【東京公演概要】
出演:Keith & Tex、Matt Sounds、Tommy Far East
日時:2017年12月10日(日) 開場 19:00 / 開演 20:00
会場:渋谷クラブクアトロ
INFO:OVERHEAT MUSIC(03-3406-8970)
特設サイト:https://www.overheat.com/keithandtex2017

前売りチケット:4,500円(+Drink Charge)
前売り【Tシャツ付限定割引】チケット(ローソンチケット):7,000円(+Drink Charge)
当日チケット:5,500円(+Drink Charge)

■チケット取扱店
Far East Records(042-705-3374)
HESHDAWGZ(03-3475-3475)
Dub Store(03-3364-5251)
Coco-isle(03-3770-1909)
JET SET 下北沢店(03-5452-2262)
HMV record shop 渋谷(03-5784-1390)
REDPOT(048-854-0930)
OR GLORY 神宮前店(03-3423-9368)

【Keith & Tex 他会場ツアー日程】
大阪公演 12月8日(金)SOCORE FACTORY


Keith & Tex(キース・アンド・テックス)
誰でも一度は聴いたことがある“Stop That Train”と“Tonight”という大ヒット曲を持つKeith & Tex。特に“Stop That Train”はジャマイカ最初の映画『The Harder They Come』でScottyの「Draw Your Brakes」名義で使用され、その後89 年にはBeastie Boysの“B-Boy Bouillabaisse: Stop That Train”で使われ、そのトラックは何度もリメイクされている超メジャー・チューン。他に“Let Me Be The One”などたくさんのヒットを持ち世界中のライヴで大合唱となる。現在もニュー・アルバムが完成しツアーを続ける現役バリバリのアーティスト。


Matt Sounds(マット・サウンズ)
今年4 月に1st アルバム『Matt Sounds』を発売、5 月にはBB シートンと東名阪ツアー、7 月にはフジロックフェスへの出演と順調に実力を発揮しているMatt。すでにジャマイカン・ヴィンテージ・ミュージックを演奏させたら世界でも右に出るものはいない? と噂されている。記念すべきキース&テックスのバックから始まり、カールトン&ザ・シューズ、リロイ・シブルス、ストレンジャー・コール、クリストファー・エリスらのバックを完璧に努め、彼らから「こんないいバンドがあったのか?」と驚嘆されてきた。それもそのはず直接ジャマイカン・レジェンドたちからリハと本番で細かく手ほどきを受け60 年代ジャマイカ音楽の黄金期を再現できる世界にも稀なバンドが誕生。Matt が遂にKeith & Texと3 年ぶりの再会。
https://www.mattsounds.tokyo

Oneohtrix Point Never - ele-king

 昨年同様オリジナル・アルバムのリリースはなかったものの、坂本龍一のリミックスイシュマイル・バトラーとのコラボなど、今年も何かと話題の尽きないワンオートリックス・ポイント・ネヴァーことダニエル・ロパティン。夏には映画『グッド・タイム』のサウンドトラックを、そして先日はそのディレクターズ・カット版をリリースしたばかりの彼が、今度はUKの音楽メディア『FACT』の企画「FACT mix」の一貫として、新たなミックス音源を公開している。ジョルジオ・モロダーから幕を開けるそのミックスは、ロパティンが『グッド・タイム』の劇伴を制作するにあたって影響を受けた曲を集めたものとなっており、彼の音楽的なバックグラウンドの一部を探ることができる。しっかり芸能山城組も入っており、じつに興味の尽きないミックスである。

ONEOHTRIX POINT NEVER
話題の映画『グッド・タイム』のUKプレミアに合わせて
映画音楽制作のインスピレーションになった音源ばかりをフィーチャーした最新MIX音源を公開!

本年度のカンヌ国際映画祭コンペティション部門に選出され、主演のロバート・パティンソンが彼のキャリア史上最高の演技を披露していると話題を呼んでいる映画『グッド・タイム』が、先週の日本公開に続き、11月17日(金)よりUKでも公開される。それに合わせ、音楽を手がけたワンオートリックス・ポイント・ネヴァーが、本映画の音楽制作において、インスピレーションになったという音楽ばかりをフィーチャーした最新MIX音源を、『FACT』にて公開した。

FACT mix 627: Oneohtrix Point Never
https://www.factmag.com/2017/11/13/oneohtrix-point-never-fact-mix-good-time/

Giorgio Moroder – "Cacophony"
Bernard Szajner – "Welcome (To Death Row)"
Alan Parker – "Synchrotech"
Abigail Mead – "Ruins"
Brad Fiedel – "Tunnel Chase"
Daft Punk – "Television Rules The Nation"
Geinoh Yamashirogumi – "Requiem"
Dopplereffekt – "Z Boson"
Howard Shore – "01 – 9PM"
Harold Faltermeyer – "Main Title, Fight Escape"
Giorgio Moroder – "Chase"
Sick Le Lapin – "Flashcore Mix"
Heldon – "Le Retour Des Soucoupes Volantes"
Lewis – "Like To See You Again (OPN Remix)"
John Abercrombie – "Timeless"
Steve Hillage – "Palm Trees (Love Guitar)"

アメリカで8月に公開された際には、セレーナ・ゴメスやザ・ウィークエンドが大絶賛するなど注目を集めると同時に、音楽を手がけたワンオートリックス・ポイント・ネヴァーことダニエル・ロパティンが、本年度のカンヌ・サウンドトラック賞を受賞。映画のエンディング・テーマにもなっている“The Pure and the Damned”でイギー・ポップとコラボレートしたことも大きな話題となった。

同映画のサウンドトラック『Good Time Original Motion Picture Soundtrack』は、8月のアメリカ公開に合わせてリリースされている。また日本公開時には、監督を務めたジョシュ・サフディの意向で、『グッド・タイム』の世界観をより深く理解するためのフォーマットとして、全曲フィルム・エディットで収録されたディレクターズ・カット版『Good Time... Raw』も日本限定でCD化されている。また対象店舗にて、『Good Time... Raw』、『Good Time Original Motion Picture Soundtrack』のいずれかを購入すると、オリジナル・クリアファイルが先着でもらえるキャンペーンを実施中。

label: Warp Records / Beat Records
artist: Oneohtrix Point Never
title: Good Time... Raw
cat no.: BRC-561
release date: 2017/11/03 FRI ON SALE
国内限定盤CD: ジョシュ・サフディによるライナーノーツ、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーとジョシュ・サフディによるスペシャル対談封入
定価: ¥2,000+税

【ご予約はこちら】
beatkart: https://shop.beatink.com/shopdetail/000000002199
amazon: https://amzn.asia/gxW5H63
tower records: https://tower.jp/item/4619899/Good-Time----Raw
hmv: https://www.hmv.co.jp/artist_Oneohtrix-Point-Never_000000000424647/item_Good-Time-Raw_8282459

【商品詳細はこちら】
https://www.beatink.com/Labels/Warp-Records/Oneohtrix-Point-Never/BRC-561

label: Warp Records / Beat Records
artist: Oneohtrix Point Never
title: Good Time Original Motion Picture Soundtrack
cat no.: BRC-558
release date: 2017/08/11 FRI ON SALE
国内盤CD: ボーナストラック追加収録/解説書封入
定価: ¥2,200+税

【ご購入はこちら】
beatkart: https://shop.beatink.com/shopdetail/000000002171
amazon: https://amzn.asia/6kMFQnV
iTunes Store: https://apple.co/2rMT8JI

【商品詳細はこちら】
https://www.beatink.com/Labels/Warp-Records/Oneohtrix-Point-Never/BRC-558

映画『グッド・タイム』
2017年11月3日(祝・金)公開
第70回カンヌ国際映画祭 コンペティション部門選出作品

Good Time | Official Trailer HD | A24
https://youtu.be/AVyGCxHZ_Ko

東京国際映画祭グランプリ&監督賞のW受賞を『神様なんかくそくらえ』で成し遂げたジョシュア&ベニー・サフディ兄弟による最新作。

出演:ロバート・パティンソン(『トワイライト』、『ディーン、君がいた瞬間』)、ベニー・サフディ(監督兼任)、ジェニファー・ジェイソン・リー(『ヘイト・フルエイト』)、バーカッド・アブティ(『キャプテン・フィリップス』)
監督:ジョシュア&ベニー・サフディ兄弟(『神様なんかくそくらえ』)

ニューヨークの最下層で生きるコニーと知的障がい者の弟ニック。
2人は銀行強盗を行うが、弟が捕まり投獄されてしまう。しかし獄中で暴れ病院へ送られると、それを聞いたコニーは病院へ忍び込み、警察が監視するなか弟ニックを取り返そうとするが……。

2017/アメリカ/カラー/英語/100分
(C) 2017 Hercules Film Investments, SARL

配給:ファインフィルムズ


Kelela × Bok Bok - ele-king

 エルヴィス1990とともに〈Night Slugs〉を主宰し、最新シングル「Salvage 2017」では久々のグライムを打ち鳴らし、またケレラのファースト・アルバム『Take Me Apart』にプロデュースで関わったことも話題となったボク・ボクが、『Dub Me Apart』と題してそのケレラの最新作をリミックス、25分におよぶミックス音源を公開している。

 評判の高いケレラの『Take Me Apart』はボク・ボク以外のタレントも魅了しているようで、昨年EP「Tan」で話題をさらい、今年はローレル・ヘイローの新作に参加したことでも注目を集めたラファウンダ(ラフォーンダーと読むのかしら?)が、“Frontline”のリミックスを手掛けている。こちらも要チェック。

KELELA × BOK BOK
ケレラの1stアルバムをボク・ボクが大胆にリミックスした
25分の最新ミックス音源『DUB ME APART』が公開!

メインストリーム/ポップとレフトフィールドとの見事な邂逅を果たしたと高い評価を受けるケレラのデビュー・アルバム『Take Me Apart』を、アルカやキングダムとともにプロデューサーとしてアルバムに携わったプロデューサー、ボク・ボク(Bok Bok)が大胆にリミックスした25分の最新ミックス音源『Dub Me Apart』が公開された。

KELELA X BOK BOK DUB ME APART
https://soundcloud.com/kelelam/kelela-x-bok-bok-dub-me-apart

1. Truth Or Dare (edit)
2. S.O.S. (edit)
3. Turn To Dust (edit)
4. Jupiter (edit)
5. Frontline (edit)
6. LMK (edit)
7. Bluff (edit)

また昨年〈Warp〉からデビューを果たし、ポストFKAツイッグスとして注目を集めるラフォーンダーが手がけたアルバムのオープニング・トラック“Frontline”のリミックスも公開されている。

KELELA- FRONTLINE (LAFAWNDAH REMIX)
https://soundcloud.com/lafawndah/frontline-lafawndah-remix-nov-9-l

アルカ、ボク・ボク、キングダムといった盟友たちがプロデューサーとして名を連ね、モッキーやロミー・マドリー・クロフト(Thexx)、タレイ・ライリーがソングライターとして参加したケレラ待望のデビュー・アルバム『Take Me Apart』は現在好評発売中。ポップの新基準を打ち出すと共に、革新的なR&Bの過去20年を見渡し、さらにその先へと推し進めた傑作には、ピッチフォーク「Best New Music」獲得を筆頭に、主要メディアからも続々と称賛の声が集まっている。

label: WARP RECORDS / BEAT RECORDS
artist: KELELA
title: Take Me Apart
release date: 2017/10/06 FRI ON SALE

国内盤特典
ボーナストラック2曲収録
歌詞対訳/解説書封入
BRC-560 ¥2,200+税

【ご購入はこちら】
beatkart: https://shop.beatink.com/shopdetail/000000002185
amazon: https://amzn.asia/dpODgJy
tower records: https://tower.jp/item/4589687/
hmv: https://bit.ly/2wAEwkY
iTunes Store: https://apple.co/2vrIP2G
Apple Music: https://apple.co/2w4MiRS

[Tracklisting]
01. Frontline
02. Waitin
03. Take Me Apart
04. Enough
05. Jupiter
06. Better
07. LMK
08. Truth Or Dare
09. S.O.S.
10. Blue Light
11. Onanon
12. Turn To Dust
13. Bluff
14. Altadena
15. A Message (Bonus Track for Japan)
16. Rewind (Bonus Track for Japan)

AFX - ele-king

 ランキングは難しい。候補を選び、なんらかの判断を下し、意見を交換しながら、順位を決める。一見単純に見えるこの作業、じつはとんでもなくいろんなことを考えさせられるのだけれど、きっとこの時節、数々の音楽メディアがその作業に頭を悩ませているに違いない。
 今年2017年は、『Artificial Intelligence』や『Selected Ambient Works 85-92』のリリース25周年にあたり、一部でIDM回顧の機運が高まった。たとえば『ピッチフォーク』は年明けに「The 50 Best IDM Albums of All Time」という特集を組んでいる。そのランキングは一瞥する限りではきわめて王道のセレクションのように見えるのだけれど、どこか妙に違和を感じさせるものでもあった。
 選盤や順位付けが著しく偏っているわけではない。まあ個人的には「ブラック・ドッグの『Bytes』が入っていないじゃないか」「オウテカの『Chiastic Slide』を落とすなんてけしからん」といった文句はあるものの、「IDM」という言葉から多くの人びとが思い浮かべるであろうアーティストや作品が、それなりに順当にセレクトされている。
 選ばれた50作をアーティスト別に眺めてみると、エイフェックス・トゥインが最多の4作を送り込み(ポリゴン・ウィンドウ名義含む)、次いでオウテカとボーズ・オブ・カナダが3作、スクエアプッシャーとマウス・オン・マーズが2作と続く。この並びもとりたてて不自然というわけではない。あるいはレーベル単位で眺めてみると、〈ウォープ〉が最多の20作を送り込み、続く〈ドミノ〉と〈プラネット・ミュー〉の3作を大きく引き離していて、これはやや偏っている感じがしなくもないが、かのレーベルが果たした役割を思い返せば、けっして不可解だと騒ぐほどの事態ではないし、サイモン・レイノルズによるリード文でも〈ウォープ〉の功績が強調されている。
 では、違和はどこに潜んでいるのか? それは、選ばれた50作を年代別に眺めたときに浮かび上がってくる。リストアップされたアルバムを発表年でソートすると、90年代のものが27作、00年代のものが21作、10年代のものが2作(ジェイリンとジョン・ホプキンス)となっており、これはいくら90年代がゴールデン・エイジだったからといって、だいぶ偏っているのではないだろうか。つまりこのランキングは、「10年代には取り上げるに足るIDM作品が出てきていない」、あるいはもう少し控えめに言っても、「10年代のIDMは90年代のそれを超えられていない」と主張しているのである。
 さらに細かく整理していくと、軽視されているのが10年代の作品だけではないことに気がつく。00年代から選ばれている21作も、そのほとんどが2003年以前のものであり、2007年以降の作品にいたってはフライング・ロータスとSNDの2作しかランクインしていない。90年代の27作が各年にバランスよく分散しているのとは対照的だ。すなわち、この「The 50 Best IDM Albums of All Time」という特集は、10年前の2007年の時点で企画されていたとしても、ほぼ同じランキングになっていただろうということである。要するに『ピッチフォーク』は、IDMは10年前の時点でもう「終わっている」と言っているのだ。
 興味深いのは、『ピッチフォーク』が、ジューク/フットワークの文脈から登場してきたジェイリンに関してはIDMの歴史に組み込み、「IDM」という概念そのものを更新しようと試みているのにもかかわらず、OPNやアルカに関しては完全にリストから除外している点である。たんにOPNやアルカの音楽には「IDM」の「D」、すなわち「ダンス」の要素が欠けているという判断なのかもしれないが、それにしたってかれらをIDMの歴史に位置付けることで新たに浮かび上がってくるものだってあるだろうに、それに何よりリード文を執筆したサイモン・レイノルズ自身は「IDM」の「I」、すなわち「知性」とは何かという問題を提起し、OPNやアルカ、アクトレスについても言及しているというのに、はてさて『ピッチフォーク』はいったい何を考えているのやら(「排除します」?)。

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 その「The 50 Best IDM Albums of All Time」で見事1位の座に輝いたエイフェックス当人は、そんな面倒くさい価値判断からは1万光年離れたところで、相変わらず好き勝手にやっている。
 2014年に『Syro』で華麗にカムバックを遂げて以降、『Computer Controlled Acoustic Instruments Pt2』『Orphaned Deejay Selek 2006-08』『Cheetah EP』、と毎年欠かさずリリースを続けてきたリチャード・Dだけれど、その活力は今年も一向に衰える気配を見せない。オウテカに影響されたのか、7月に自らの音源に特化したオンライン・ストアを開設した彼は、そこで一挙にこれまで入手困難だったり未発表だったりした音源を大量に放出している。なかでも目玉となったのが以下の3作である。

 グリーンのアートワークが鮮やかな「London 03.06.17 [Field Day]」は、タイトルに記されているとおり、今年6月3日にロンドンで開催されたフィールド・デイ・フェスティヴァルの会場で限定販売されていた12インチで、今回のストアのオープンに伴い、めでたくデジタル・ヴァージョンとして再リリースされることになった(新たに6曲が追加されている)。これが相当な曲者で、「ちょっとしたサプライズ、あるいは単なるアウトテイク集でしょ」とナメてかかると痛い目を見ることになる。
 1曲目の“42DIMENSIT3 e3”からもう絶好調。その勢いは2曲目“MT1T1 bedroom microtune”からそのまま3曲目“T18A pole1”へと受け継がれる。新しいかと問われればそんなことはないと答えざるをえないが、エイフェックスらしい流儀でドラムやアシッドやメロディが並走していくその様は貫禄すら感じさせる。以降アルバムは多彩さを増していき、ワールド・ミュージックから影響を受けたのではないかと思わせるような奇妙な揺らぎを聴かせる4曲目“T03 delta t”のようなトラックもあれば、音響上の実験を探究した7曲目“42DIMENSIT10”や10曲目“T47 smodge”、声のイミテイションを試みた11曲目“sk8 littletune HS-PC202”のようなトラックもある。その合間に、鳥の鳴き声と叙情的な旋律が美しい5曲目“em2500 M253X”や9曲目“MT1T2 olpedroom”のようなメロディアスなトラックが挟まれていて、全体の構成も考え抜かれている。ボーナスとして追加されたトラックも強者揃いで、転がっていく音の配置感が心地良い12曲目“T13 Quadraverbia N+3”や折り重なる残響が耳を捕えて離さない13曲目“T16.5 MADMA with nastya”など、最後までリスナーを飽きさせない。はっきり言って、なぜこれを通常の形でフル・アルバムとしてリリースしなかったのか、さっぱりわからない。

 このように気合いの入った「London 03.06.17 [Field Day]」と比べると、ショッキングなピンクのアートワークが目を引く「Korg Trax+Tunings for falling asleep」の方は、いくらかリスナーにリラックスすることを許してくれる。こちらもタイトルが的確に指示しているとおり、Korg の機材を使用した2曲と、それ以外の試験的な11曲が収録されているが、冒頭の“korg funk 5”は件のオンライン・ストアのオープンに先駆けて公開された曲で、うねるように重なり合うシンセがじつにエイフェックスらしいサウンドを紡ぎ出しており、そこにドラムとベースが絡み合っていく様は往年のファンにとってはたまらないものがあるだろう(ちなみにときおり挿入される音声はリチャードの息子によるもの)。「眠りにつくための」と題された後者の11曲はすべてタイトルに「tuning」と冠されていて、いずれも機材の細かい残響具合をテストしているかのようなトラックとなっている。こちらはアンビエントとして聴くことも可能だろう。

 同じくオンライン・ストアのオープンと同時にリリースされたEP「Orphans」は、AFXによるルーク・ヴァイバートのリミックス2ヴァージョンと、AFX自身によるオリジナル・トラック2曲とから構成されている。前者の2曲(“Spiral Staircase”)は以前 SoundCloud で公開されていたもので、これまたエイフェックスらしい儚げなメロディとアシッドがノスタルジックな90年代の風景を想起させる。『RA』によればこのリミックスはもともと、ワゴン・クライスト『Sorry I Make You Lush』のリリース後に開催されたコンペに、リチャードがこっそり変名で参加して見事優勝してしまったときのトラックなのだそうだ(「ルークの好みがわかるから有利だったぜ」って、それほとんど八百長じゃん……)。オリジナル曲の“Nightmail 1”もエイフェックスらしいドラムとアシッドが輝くトラックで、変形されたジャングルのリズムが彼のダンス寄りの側面を強調している。そして最高に素晴らしいのが、最後に収められた“4x Atlantis Take1”だ。これは Sequentix のシーケンサーである Cirklon をテストするために作られた曲で、4月に先行公開されていたもの。ビートに頼らず、シンセの折り重ねだけでグルーヴを生み出し最後まで持っていく手腕はグレイトと言うほかなく、こんなキラーなトラックをさらりと投下してみせるあたり、ヴェテランの面目躍如たるものがある。

 IDMの古株がこれだけ高密度な作品をすまし顔でぽんぽん投下してくるのだから、『ピッチフォーク』が00年代後半以降の作品を切り捨ててしまいたくなるのも、しかたがないことなのかもしれない……なんて、エイフェックスおそるべし。


ハテナ・フランセ - ele-king

 みなさんボンジュール、今回は音楽の話題を取り上げたく。2016年世界の音楽市場でストリーミングやダウンロードなどのデジタルの収益が、全体の45%とCDやヴァイナルなどのフィジカルの売り上げを初めて上回った。フランスではまだ音楽市場の59%をフィジカルが占めているが、それでもデジタルは右肩上がりに数字を伸ばしている。このように音楽の聞かれ方が変わりつつある今、主にストリーミング配信が世界の市場で重要な位置を占め、音楽の聞かれ方は変わりつつある。音楽の好みは細分化し、音楽の聞き方も細分化しているようだ。それでも多くの人が共通してあげるツールがYoutubeだ。
 そんなYoutubeで楽曲をアップするやいなやあっという間に1千万回を超える再生数を獲得し(現在は5千万回を超えている)彗星のようにフランスの音楽シーンに現れたのがPetit Biscuit(プティ・ビスキュイ)だ。

 音楽性から取り巻く雰囲気までEDMを「下世話すぎて、音楽とは言えない」と最初から懐疑的に捉えていたフランスのインテリ層にもこの「Sunset Lover」は受けた。ロマンチックで聴きやすいけれどコード進行もちゃんとあると。この曲を発表した2015年当時、Petit Biscuitことメディ・ベンジョルンはまだ15歳だった。そして2017年11月10日、フランスでの成人年齢となる18歳の誕生日にファースト・アルバム『Presence』をリリース。18歳というのは、フランスではとても意味のある歳で、記念に残るような(裕福な家庭では高価な)プレゼントをする習慣があり、わざわざこの日に当ててリリースしたというほっこりした逸話を持つメディくん。フランスのバカロレアという高校卒業+共通一次試験のような試験で最上級評価「Tres bien(大変よろしい)」を取るような学業にも秀でた若者で、両親の方針で音楽、しかもエレクトロニック・ミュージックのような浮ついた世界でのキャリアより学業優先の姿勢を最初から貫いている。現在は大学に入学したが「あ、その月は期末テストがあるからフランス国外でのライヴはしません」とエージェントが平気でフェスティバルのオファーを蹴るような恐ろしい真似をやってのける。それもこれも2018年のコーチェラ・フェスティバルへのいいスロットでの出演が早々と決まるなど、ヨーロッパのみならず最重要マーケット、アメリカでもブレイクしたゆえの強気さと、アメリカのエージェントだときっと理解できないから、と学業優先を理解し実行するフランスのエージェントをキープする両親の厳格な管理があってからこそ。

 そんなPetit Biscuitと「Gravitation」を共作したのがMøME(モーム)。

 ニース出身現在28歳のMøME(モーム)ことジェレミー・スイラーは「Aloha」が2016年の”夏のアンセム”となり一躍トロピカル・ハウス・シーンの最前線に躍り出た。

 フランスは6月末に学期末を迎え、そこから一気に社会全てがヴァカンス・モードになる。フェスティバルやイビザ型リゾート地でのパーティなどが本格化、素人から大型フェスのDJまでいわゆるパーティ・アンセムが必要だし、スーパーからラジオまでここぞとばかり浮ついた気分を盛り上げようと今年の夏の1曲をヘビーローテーションする。その流れに乗ったMøMEはEDMとは一線を画したいけれど、オーディエンスも盛り上げたいフェスティバルにブッキングされまくった。

 そういった意味では、ダヴィッド・ゲッタのバックアップを受けたKungs(クングス)は、時に不当な扱いを受けることがあった。現在21歳のヴァロンタン・ブリュネルは2016年に発表したクッキング・オン・3・バーナーズのリミックス「This Girl」がYouTubeの再生回数で1億回を超え、ダヴィッド・ゲッタのベルシー(2万人キャパシティ)公演の前座に抜擢され、デビュー・アルバム『Layers』がフランスのグラミー賞ことLes Victoires de la Musiqueでエレクトロニック・ミュージック部門を受賞するなど、一気に大きな成功を手にした。

 先に挙げた「This Girl」はまだしもその後メジャーのレコード会社と契約し作られたMVは、Petit BiscuitやMøMEとはギリギリ同じトロピカル・ハウスというジャンルに入れられるものの、音楽的にもMVの表現としても明らかにEDMのフェスティバルで何万人ものオーディエンスが盛り上がることを想定したものになっている。そして現に彼はEDM、ロック、両方のフェスティバルでヘッドライナーの1人としてオーディエンスを最高に盛り上げている。だが、こうなるとフランスのスノッブなインテリ層に「下世話な音楽」のレッテルを貼られてしまうのもまた事実なのだ。
 そんなインテリ層に逆に愛されているのがパリのレーベル、Roch Musiqueだ。
Roch Musiqueはパリでその名前を冠したイヴェントをオーガナイズするたびに感度の高いオシャレ&音楽好きパリジャンが確実に集結し、カルチャー誌『Les Inrockuptible』では「フレンチタッチを彼らが復興させる!?」などとぶち上げるほどもてはやされている。レーベルとしては2012年にスタートしたもののその歩みは至ってマイペースで、日本でも大変な人気FKJに続いてようやくアルバムを作り上げた2人目のアーティストがDarius(ダリウス)ことテレンス・ンギュエンだ。ルイ・ヴィトンやカルティエなどのCMやM83などのMVを手がけきたLisa Paclet(リザ・パクレ)監督によるアーティスティックなMV「Lost In The Moment」も大好評を得ている。

 ベルリン在住のナイジェリア人シンガー、ウェイン・スノウをフィーチャーした浮遊感溢れるメランコリックなこの曲を含む1stアルバム『Utopia』は11月24日にリリースされる。
 フランスのエレクトロニック・ミュージック・シーンは、カッパ頭の愉快な実験家Jacques(ジャック)から芸術的だけど社会的視点も含まれた短編映画のようなMVを自ら作るTha Blaze(ザ・ブレイズ。あのハウスの大御所ではなく)までなかなか活気があるけれど、日本まで届くアーティストは稀なのでこれからも定期的に紹介していければ。


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